平成18(う)120 殺人

裁判年月日・裁判所
平成18年12月6日 広島高等裁判所 岡山支部 破棄自判 岡山地方裁判所 平成17(わ)46
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判決文本文2,506 文字)

- 1 -主文原判決を破棄する。 被告人を懲役7年に処する。 原審における未決勾留日数中330日を上記刑に算入する。 理由 本件控訴の趣意は,弁護人渡辺勝志作成の控訴趣意書に記載されたとおりであるから,これを引用する。 そこで,記録を調査し,当審における事実取調べの結果をも併せて検討し,次のとおり判断する。 控訴趣意中,事実誤認について論旨は,要するに,原判決は,本件犯行当時,被告人が完全責任能力を有していたものとして,刑の減軽をしなかったが,被告人は,本件犯行当時,うつ病のため,少なくとも心神耗弱の状態にあったから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある,というのである。 しかしながら,原判決の挙示する証拠によると,被告人が本件犯行当時,心神耗弱の状態になかったことが優に認められ,原判決が被告人に責任能力を認めたのは正当であり,原判決に上記のような事実の誤認があるとは認められない。 所論は,被告人は,うつ病のため,倫理観が揺らぎ,人格が崩壊していたもので,本件犯行当時,是非弁識能力及び行動制御能力が著しく減弱していた旨主張するが,原判決が(弁護人の主張に対する判断)において適切に説示するとおり,鑑定書その他の関係証拠によると,被告人は,本件犯行当時,是非善悪の弁識能力があったことは明らかであり,かつ,行動制御能力が減弱していたとはいえ,その程度は著しいものではなかったというべきであり,所論は,被告人の原審公判廷における供述内容に過度に依存した立論であって採用できない。 論旨は理由がない。 控訴趣意中,量刑不当について- 2 -論旨は,要するに,被告人を懲役8年に処した原判決の量刑は重過ぎて不当である,というのである。 本件は,被告人が,平成17年1月6日午前9時30分ころ,岡山市内の被告人の実弟で について- 2 -論旨は,要するに,被告人を懲役8年に処した原判決の量刑は重過ぎて不当である,というのである。 本件は,被告人が,平成17年1月6日午前9時30分ころ,岡山市内の被告人の実弟であるA方において,殺意を持って,同人の妻で当時63歳のBの胸部及び背部等を刃体の長さ約14.3センチメートルのアジ切包丁で数回突き刺し,同日午前11時15分ころ,搬送先の病院において,同女を胸背部刺創に基づく多量出血によるショックのため死亡させて殺害したという,殺人の事案であるが,被告人は,無防備の被害者に対し,手に持った前記包丁で,いきなりその胸部を数回突き刺し,心臓を貫通した深さ約18センチメートルに及ぶ胸部刺創等を負わせた上,逃げようとした被害者の背後からも攻撃を加えたものであり,その態様は冷酷非情で,残虐であったこと,また,被告人は,かねてより被害者から見下されているように感じて不快に思っていたところ,平成16年11月20日から実弟方で世話になり被害者と同居を始めると,被害者に嫌みを言われたり無視されたりするとして腹立たしさを募らせた挙げ句,犯行前日と当日の被害者の発言が引き金となって被害者を殺害したもので,その動機には酌量の余地が乏しいこと,更に,被害者は,同居中の被告人によって唐突に生命を奪われたもので,その無念さは察するに余りあり,被害者の夫や娘が受けた衝撃は甚大で,その悲嘆の程度は筆舌に尽くし難く,被害感情には厳しいものがあったことなどを考慮すると,被告人の刑事責任は重大であるといわなければならない。 しかしながら,被告人は,本件犯行時,責任能力の著しい低下はなく是非善悪を区別し,これに従って行動することが一応できていたものの,双極性感情障害(躁うつ病)の軽度ないし中等度のうつ病期にあったため,行動の抑制力が減弱していたもので ,責任能力の著しい低下はなく是非善悪を区別し,これに従って行動することが一応できていたものの,双極性感情障害(躁うつ病)の軽度ないし中等度のうつ病期にあったため,行動の抑制力が減弱していたものであり,上記疾患に罹患したことの責任を被告人に帰することはできないこと,被告人は,昭和54年から平成2年にかけて上記疾患で入通院していたが,その後平成14年12月にリストラされたことなどが原因となり,再び上記疾患の治療のため通院を始め,平成16年6月10日から同年11月20日- 3 -まで入院し,その後も抑うつ気分が持続し,定期的に通院していた上,本件犯行前日には医師に入院を希望したものの,必要性がないとして断られたもので,その経緯には同情の余地があること,被告人は,被害者や遺族に申し訳ないと深く反省し,平成17年9月には遺族との間で示談が成立して損害賠償金3500万円を支払ったこと,これまで前科がないこと,妻子が被告人の帰りを待っていることなど,被告人のため斟酌すべき諸事情に徴すると,本件が冷酷非情な犯行で,動機に酌量の余地が乏しく,その結果が重大かつ悲惨であることを考慮してもなお,精神的疾患の存在及びこの種事犯としては異例の損害賠償がされていることに照らすと,被告人を懲役8年(求刑懲役12年)に処した原判決の量刑は重過ぎて不当というべきである。 論旨は理由がある。 よって,刑訴法397条1項,381条により原判決を破棄し,同法400条ただし書により当裁判所において更に判決する。 原判決が認定した罪となるべき事実に原判決が掲げる法令を適用し,上記諸事情を勘案して被告人を懲役7年に処し,刑法21条を適用して原審における未決勾留日数中330日を上記刑に算入し,原審における訴訟費用については,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させ 事情を勘案して被告人を懲役7年に処し,刑法21条を適用して原審における未決勾留日数中330日を上記刑に算入し,原審における訴訟費用については,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととし,主文のとおり判決する。 平成18年12月6日広島高等裁判所岡山支部第1部裁判長裁判官安原浩裁判官河田充規- 4 -裁判官西川篤志

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