- 1 -平成22年11月9日判決言渡平成21年第170号損害賠償請求事件判決 主文 被告らは,原告に対し,連帯して3億円及びこれに対する平成21年4月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は,被告らの負担とする。 この判決は,仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1請求主文と同旨第2事案の概要本件は,信用組合である原告がC商事株式会社(以下「C商事」という。)に対してした7億6000万円の融資について,当時の原告の理事長である被告B1(以下「被告B1」という。)及び理事である被告B2(以下「被告B2」という。)の行った融資決裁は委任契約上の善管注意義務に違反すると主張して,原告が被告らに対し,中小企業等協同組合法(以下「中企法」という。)38条の2第1項,同法38条の4に基づき,連帯して,上記融資についての回収不能額の一部である3億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年4月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 前提事実(証拠を摘示した事実以外は争いがない。)当事者についてア原告は,山梨県内の組合員との間において資金の貸付け及び預金の受入れ等を事業とする信用組合であり,平成16年2月16日,D1信用組合- 2 -が存続組合となって,D2信用組合,D3信用組合及びD4信用組合と合併し(以下「平成16年合併」という。),A信用組合と名称を変更した(以下,この合併及び名称変更に従い,平成16年2月15日以前におけるD1信用組合の呼称はそのまま「D1信用組合」とし,同月16日以降については単に「原告」とする)。 イ被告B1は 名称を変更した(以下,この合併及び名称変更に従い,平成16年2月15日以前におけるD1信用組合の呼称はそのまま「D1信用組合」とし,同月16日以降については単に「原告」とする)。 イ被告B1は,昭和39年にD1信用組合へ入り,平成元年11月,同信用組合の理事長に就任し,平成16年合併に伴って原告の理事長に就任し,平成20年6月26日に退任するまでその地位にあった。 ウ被告B2は,昭和43年にD1信用組合へ入り,平成5年5月,常勤理事に就任し,平成11年6月19日には常務理事に就任した。さらに,平成16年合併に伴って原告の常務理事に就任し,平成20年6月26日の退任までその地位にあった。 C商事についてC商事は,昭和52年10月13日にE(以下「E」という。)が設立した,不動産の売買,仲介等を目的とする株式会社である。その後,平成12年ころ,F(以下「F」という。)がC商事の代表取締役に就任したが,実質的な経営はEが担っていた。C商事は,昭和58年以降,D1信用組合の顧客となり,平成16年合併の後も,原告と取引を続けていた。 本件融資決裁及び本件融資ア被告B1及び被告B2を含む原告の常勤理事9名は,合併直後の平成16年3月10日,C商事が横浜市a区b所在の30筆の土地(以下「本件土地」という。)において墓地開発を行う事業(以下「本件事業」という。)の資金として申し込まれた融資案件について,稟議書を兼ねた「借入金(手形貸付)申込書」と題する書面(以下「本件稟議書兼申込書」という。)に,C商事に対する7億6000万円の融資を認めるという決裁のための押印をした(以下「本件融資決裁」という。)。(甲5,7,弁論の全趣- 3 -旨)イ原告は,本件融資決裁に従い,C商事に対し,同日,連帯保証人をF,E及び株式会社G(以下「G」と 決裁のための押印をした(以下「本件融資決裁」という。)。(甲5,7,弁論の全趣- 3 -旨)イ原告は,本件融資決裁に従い,C商事に対し,同日,連帯保証人をF,E及び株式会社G(以下「G」という。),支払期限を平成17年2月として,7億6000万円を貸し付けた(以下「本件融資」という)。(甲8,9,弁論の全趣旨)本件融資の支払停止C商事は,本件融資の支払期限である平成17年2月が経過しても本件融資の元金を返済せず,平成18年2月には利息の支払も停止した。(甲31の1・3,証人H,弁論の全趣旨)原告に対する業務改善命令原告は,平成16年11月,関東財務局の検査を受け,その融資審査体制等に関する問題点の指摘を受けた。 原告は,平成19年8月にも,再度,関東財務局から検査を受け,その結果,平成20年6月20日,原告に対する業務改善命令が出された。(被告B2本人,弁論の全趣旨) 争点 本件融資決裁における被告らの善管注意義務違反の有無損害額第2争点に関する当事者の主張 争点 (本件融資決裁における被告らの善管注意義務違反の有無)について(原告の主張)信用組合の理事は,信用組合との委任契約に基づき,その職務遂行に当たり善管注意義務を負っているところ(中企法35条の3,民法644条),信用組合が融資の決裁をするに当たり,銀行の取締役における場合と同様,回収不能を防ぐために融資先の経営状況及び資産状態等を調査し,確実な担保を徴求するなどして融資の安全性を確認すべきであり,これをせずに融資- 4 -を実行した場合には,上記善管注意義務に違反するというべきである。 C商事の財務・経営状況及び財産状況等ア本件融資前のC商事の財務状況C商事の財務状況については,①平成14年7月31日の貸借対照表によれば,資本については1億 意義務に違反するというべきである。 C商事の財務・経営状況及び財産状況等ア本件融資前のC商事の財務状況C商事の財務状況については,①平成14年7月31日の貸借対照表によれば,資本については1億0314万1240円の欠損が生じており,損益計算書でも売上高が2億4661万円程度,経常利益が2439万円程度とされており,②平成15年7月31日の貸借対照表によれば,資本については9705万6621円の欠損が生じており,損益計算書でも売上高が1億8999万円程度,経常利益が4200万円程度とされており,また,③平成16年7月31日の貸借対照表によれば,資本については2億6640万6663円の欠損となっており,損益計算書によれば,経常損失が274万円,当期純損失が1億6935万円とされていた。このように,本件融資前のC商事は,3期以上連続して,大幅な債務超過に陥っていた。 イD1信用組合のC商事に対する貸付金の返済状況D1信用組合は,平成13年5月30日,C商事に対する従前の16本の貸付けについて,期限を20年とする証書貸付に一本化した。この一本化以前の貸付金の返済状況を見ると,C商事に対する平成3年以降の手形貸付17本のうち,元金が返済されたものはわずかに平成6年12月8日貸付けの8000万円のみであり,その余は全く元金返済がないまま経過して,平成8年5月1日に6億6000万円の証書貸付に切り替えられている。その貸付金についても平成12年7月から元金・利息の支払いが延滞し,平成8年以降の新規の手形貸付についても,元金が返済されていないのは従来と同様で,平成12年8月からは利息の支払も滞っていた。 平成13年5月30日の貸付金一本化は,このような延滞先に対して,利息も含めて追貸しして,従前の貸付金の返済期日を大幅に延長したもの- 5 - と同様で,平成12年8月からは利息の支払も滞っていた。 平成13年5月30日の貸付金一本化は,このような延滞先に対して,利息も含めて追貸しして,従前の貸付金の返済期日を大幅に延長したもの- 5 -であり,不良債権隠しの融資であった。 また,C商事は経営破綻した株式会社I銀行から巨額の借入れをしていたが,不良債権であることが明らかなこれらの債権は,同銀行の破綻処理に伴い,平成13年6月11日株式会社J(以下「J」という。)に譲渡された。そしてJは,平成14年11月22日,残高合計8億6548万円に及ぶこれらの債権について,C商事が一部を分割弁済した時はその余の6億円以上を免除する内容の即決和解した(甲府簡易裁判所平成14年第14号。以下「平成14年和解」という。)。C商事が,強力な債権回収手段を有するJをもってしても巨額の債務免除をせざるを得ないような担保・経営状況であったことは,これによっても明らかである。 この和解の際,D1信用組合は,C商事が約束した一部弁済金の返済資金として,C商事に対し,平成14年10月31日及び同年11月29日にそれぞれ5000万円,同年12月20日に5300万円を貸し付けた。 しかし,それぞれ1か月ないし2か月後に定められた返済期限に返済されず,その後も全く返済されずに現在に至っている。 ウ本件融資の担保本件融資の本件稟議書兼申込書によれば,当時,原告のC商事に対する融資残高は,本件融資を含めて17億5801万0658円であったが,C商事に対する既存担保は根抵当権設定額でも合計13億6000万円であり,処分可能担保額では9億3457万円程度に過ぎなかった。これはこの書面自体から明らかであり,稟議書上,8億2000万円を超える担保保全不足であることは,一見して判ることであった。 本店営業部作 あり,処分可能担保額では9億3457万円程度に過ぎなかった。これはこの書面自体から明らかであり,稟議書上,8億2000万円を超える担保保全不足であることは,一見して判ることであった。 本店営業部作成の「融資案件協議書」においても,処分可能担保額は11億4671万5000円に過ぎず,このように評価してみても,約6億7500万円の担保不足であることは明らかであった。 被告B2は,株式会社Gを連帯保証人に加えたので,保全が十分である- 6 -かのような主張をするが,Gは,C商事のような資本欠損の会社でこそないものの,平成14年9月30日の資本合計で1億8961万円余,当期純利益は141万円,平成15年9月30日の資本合計で2億1472万円余,当期利益は2510万円の会社に過ぎず,7億6000万円もの元金返済ができるような会社ではなかった。 エ上記のほか,C商事は,かつてD1信用組合が貸し付けた貸金を否認し,その返済をめぐって1年半以上揉めた融資先であったことなどの事情に照らせば,原告は,本件融資に関する案件をそもそも取り上げるべきではなかった。 被告らに善管注意義務違反があること墓地開発事業は,一般的に挫折するリスクが高いものであるが,被告らは,本件融資決裁にあたり,次のとおり,本件事業の実現可能性について十分な調査検討をしなかったところ,本件事業の実現可能性について十分な調査検討を怠ったというべきであって,これは信用組合理事としての善管注意義務に違反する。 ア許可申請手続の調査の欠如墓地開発事業には,墓地,埋葬等にかかる法律10条1項で,経営主体に対する知事の許可が必要とされ,ほかにも条例による規制があるので,融資の際にはこれらの規制を正確に調査する必要があるが,被告らはそのような規制の調査を全くしなかった。 イ本件土地の所有権 営主体に対する知事の許可が必要とされ,ほかにも条例による規制があるので,融資の際にはこれらの規制を正確に調査する必要があるが,被告らはそのような規制の調査を全くしなかった。 イ本件土地の所有権取得の調査の欠如本件事業を成功させるには,C商事が6400坪もある広大な本件土地の所有権を確実に取得できる見込みが必要であり,また,担保権設定の有無等についても確認する必要があるが,被告らは,本件土地の不動産登記簿謄本を取得しておらず,この点について全く調査をしなかった。 ウ近隣住民の同意の調査の欠如- 7 -平成16年2月26日付け墓地開発事業用地現地実査報告書には,本件土地は,周辺にマンション,高校及び住宅地があり,墓地の開発につき近隣住民の同意を得ることが困難である,今のところ説明会は行われていないようである旨記載されている。本件事業は,融資実行から返済までの期間がわずか1年であって,その期間内に住民の同意を得られる可能性は低かったのに,被告らはこのことについて調査しなかった。 エ自己資金の確認の欠如本件融資は,C商事の当初申込額は13億2232万円であったものの,最終的には7億6000万円に減額されて実行された。C商事が減額相当分の資金を自己資金として拠出できるかは極めて疑わしかったといえるが,被告らは,これについて全く確認をしなかった。 オ売買契約書の確認等の欠如弁護士であるH(以下「H弁護士」という。)作成の平成16年3月8日付け念書案によると,株式会社K(以下「K」という。)との売買契約は未だ締結されていないことが分かるが,Kから届いた同月9日付け「ご通知」と題する書面によれば,残金9億3225万円の決済日が同月10日とされている。通常の金融機関であれば,所有権が移転してもいないのに代金全額支払は不自然であると疑問を から届いた同月9日付け「ご通知」と題する書面によれば,残金9億3225万円の決済日が同月10日とされている。通常の金融機関であれば,所有権が移転してもいないのに代金全額支払は不自然であると疑問を持つはずであり,C商事から売買契約書を徴求した上,融資実行の際には,売買代金の決済にも同席して登記関係書類の授受を確認するが通常であるが,被告らは,これらの確認を全くしなかった。 カそのほかの調査不足常勤理事らの事前協議で「検討事項」(甲45)とされた農地転用許可処分の許可証や開発許可証は,本件融資実行時までに徴求されていないし,墓地の開発について住民の同意の確認も得られていない。H弁護士の念書についても,案文が送付されただけである。このほか,融資申請書(甲8)- 8 -も本件融資実行日まで作成されなかった。 アC商事は,過去に2度の宗教法人L(以下「L」)の墓地開発を成功させたのは確かであるが,このうち,平成11年9月29日融資に関するL墓地開発事業は,開発予定地の所有者がもともとLの所有であり,墓地,埋葬等に関する法律10条2項の墓地区域の変更で処理できたことから,他人の土地を宗教法人の名を利用して墓地開発するという本件事業の内容とは異なり,リスクの相当に低いものであったといえるのであり,過去のC商事の実績が,本件事業の実現可能性を裏付けるものとはいえない。 イ本件事業にH弁護士が関与しても,原告が独自に本件融資について審査を尽くす義務があることは否定されない上,H弁護士の作成の念書案(乙1)は,署名押印のない文書案にすぎず,これをもって本件事業につき指導監督することをH弁護士が確約したともいえない。 ウ本件融資の連帯保証人であるGは,資本欠損の会社ではないが,平成14年9月30日の資本は1億8961万円余りで,当期利益141万 本件事業につき指導監督することをH弁護士が確約したともいえない。 ウ本件融資の連帯保証人であるGは,資本欠損の会社ではないが,平成14年9月30日の資本は1億8961万円余りで,当期利益141万円,平成15年9月30日の資本は2億1472万円余りであり,当期利益は2510万円余りにすぎず,7億6000万円もの元金の返済能力がないことは明らかである。 エ本件融資は,まずD1統括本部の下で融資審査が行われ,その後D1信用組合出身の常勤理事,融資審査常勤理事会が決裁するという体制となっており,業務統括本部融資部の決裁は不要であったが,D1統括本部の審査課員に審査能力はなかった。原告において審査体制が正式に整ったのは平成16年6月11日の各信用組合の統括本部廃止以降のことである。よって,本件融資当時の審査体制は,信頼しうるものでなかった。 (被告B2の主張)信用組合理事の善管注意義務について信用組合の理事の融資決裁は,当時の具体的状況に照らし,著しく不合理- 9 -であるといえる場合に初めて,善管注意義務に違反すると解すべきである。 C商事の財務・経営状況等アC商事の債務者区分は,以前「債務超過」であったものが本件融資当時は「要注意先」に回復していた。実際,C商事は,毎年数千万円の営業利益が出ており,Jに対する負債も6億円超の債務免除がなされたことで資本欠損が解消し,債務超過の状態から回復していた。 イC商事は,平成13年5月のD1信用組合による貸付金一本化の後には,順調な返済が可能になっていた。平成9年3月にD1信用組合が貸し付けたc町土地購入資金9300万円については,土地売却が困難となったことから返済期限が延期されたが,その間も利息の支払がされていた。Jとの和解金としてD1信用組合から1億5000万円を借り入れたのはC商 c町土地購入資金9300万円については,土地売却が困難となったことから返済期限が延期されたが,その間も利息の支払がされていた。Jとの和解金としてD1信用組合から1億5000万円を借り入れたのはC商事の倒産を回避するためにはやむを得なかった。 本件事業の調査検討についてア本件融資決裁に当たっては,本件土地の不動産登記簿謄本を取得しないなど不十分な点があったのは確かだが,C商事が仮に本件土地を取得できないとしても,Kから返還を受けた売買代金をそのまま本件融資の返済に充てることも十分想定できた。 イまた,本件事業は,次のとおり,被告B2及びその下部機関の調査により,その実現可能性が十分に見込まれた。 墓地経営許可申請手続等本件融資に当たっては,住民説明会,農地転用許可処分,開発許可の状況,見込みについて,事前協議でも議題として挙げられており,相当程度の調査が行われていた。もっとも,住民の同意や墓地経営許可は,C商事が本件土地を取得する以前に行うことは事実上不可能であったので,融資前にこれらの有無を確認することも不可能であった。また,C商事には,後記のとおり,過去に墓地開発事業を成功させた実績があり,- 10 -本件でも専門業者に許可申請業務を委託することとされていた。 C商事の過去の墓地開発事業の実績C商事は,過去に墓地開発事業に成功するなど,墓地開発事業のノウハウを有していたので,本件事業についても,実現可能性は相当程度あったといえる。 H弁護士の関与本件事業遂行のために必要な契約締結等については,H弁護士が関与して適切に指導監督をする旨誓約した書面を原告は受領していた。したがって,本件土地の取得や後記の代理受領方式による回収について適切に行われることが見込まれた。 ウ本件融資の回収可能性について代理受領方式本 督をする旨誓約した書面を原告は受領していた。したがって,本件土地の取得や後記の代理受領方式による回収について適切に行われることが見込まれた。 ウ本件融資の回収可能性について代理受領方式本件事業においては,建墓権及び永代使用権の予定売却先であったM株式会社(以下「M」という。)が,その代金を原告に対して直接支払うという代理受領方式を採ることが予定されていたから,原告が本件融資について確実に回収する見込みがあった。これについては,上記のとおり,H弁護士が適切な指導をすることを確約していた。 Gの連帯保証本件融資に当たっては,Gが連帯保証人となっていた。同社は,経営状態が良く,公共事業も受注するなど健全な経営が行われていた優良企業である。 エ本件融資の審査手続について本件融資の審査には,D1信用組合出身者だけではなく,他組合出身の理事やN業務統括本部融資部長(以下「N融資部長」という。)及びO業務統括本部融資部審査課長(以下「O審査課長」という。)も加わっていた。複数の理事及び審査担当者で事前協議を行った上,理事が自ら現地調- 11 -査に赴くなど,当時の統括本部における一般的な審査と比べても特別な審査がなされていたといえる。その上で,本件融資は,融資審査常勤理事会において,理事全員の賛成によって可決されたのであり,全般的に慎重な審査が行われた。 以上によれば,被告B2が本件融資決裁をしたことは,著しく不合理なものであったとはいえず,信用組合理事としての善管注意義務に違反しない。 (被告B1の主張)被告B1の善管注意義務違反についてア信用組合においては,多数の業務を効率的に処理するために組織が形成されており,上位の者が決裁する場合も下位の者が調査した事実について特に疑問とすべき点がない限り,これを信頼することが許され いてア信用組合においては,多数の業務を効率的に処理するために組織が形成されており,上位の者が決裁する場合も下位の者が調査した事実について特に疑問とすべき点がない限り,これを信頼することが許される。 被告B1は,当時の原告の理事長という立場にあって,合併直後という混沌とした時期だったこともあり,各支店から上程される様々な融資案件を決裁しなければならず,多忙を極めていた。このような状況において,融資の決裁が善管注意義務に違反するといえるのは,下位の者の報告が不適切であるにもかかわらずこれを看過し,または具体的な問題点が指摘されたにもかかわらずこれを検討することなく,安易に決裁した場合に限られる。 イ本件融資については,平成16年3月10日の融資審査常勤理事会が開催される前に,被告B2をはじめとする役員及びその下部組織の従業員が二重三重の審査を行っていた。同年2月24日には,被告B2をはじめとする役員らが集まって事前協議会が開かれ,本件融資について協議を行っていたのであり,事実上,この時点で本件融資の承認がなされていた。このような本件融資の審査体制には,特に問題とすべき点はなく,信頼に足りるものだった。 そもそも,被告B1は,上記融資審査常勤理事会に至ってから本件融資- 12 -案件を知ったのである。むしろ,被告B1は,上記融資審査常勤理事会において,C商事が過去に原告の融資を否認して問題を生じさせたことがあったことから,本件融資に反対したが,H弁護士が指導監督することから問題ないとの多数意見であったため最終的に賛成せざるを得なかった。 このような状況において,被告B1が,下部機関の審査を信頼して,本件融資決裁をしたことは著しく不合理な判断とはいえない。 そのほか,本件事業の実現可能性等の調査判断に著しく不合理な点がない た。 このような状況において,被告B1が,下部機関の審査を信頼して,本件融資決裁をしたことは著しく不合理な判断とはいえない。 そのほか,本件事業の実現可能性等の調査判断に著しく不合理な点がないことは,被告B2主張のとおりである。 以上によれば,被告B1の本件融資決裁は,信用組合理事としての善管注意義務に違反しない。 争点 (損害額)について(原告の主張)不良貸付けにおいては,貸付金額全体が損害となり,返済額は損益相殺として考えるべきであるから,本件融資においてもその全額が損害額となる。 なお,本件融資の回収不能額については,平成20年12月26日,C商事らの原告に対する預金とを相殺した結果,本件融資の残元金は6億7819万5577円となった。未収利息は6981万5890円となり,遅延損害金は,約定利率の年18.25パーセントで計算すると,平成22年5月31日の時点で5億7186万9999円となる。また,本件融資では新規に担保を取っていなかったところ,C商事に対する貸付元金合計額は16億4779万7837円であり,既存担保を最大限に評価しても6億円であるから,既存担保から本件融資金を回収することは困難である。したがって,本件融資の回収不能額は,少なくとも3億円を下らない。 (被告らの主張)争う。 第4争点に対する判断- 13 - 認定できる事実前記前提事実に証拠(甲2の1~2の8,3~9,12~15,17の1,18の1・2,19~21,24の1・2,25の1~25の3,26~30,31の1,33,34の1・2,38,39,45,50,51,53,57~59,60の1・2,61,62,63の1~63の6,64の1・2,70,71,81,84,85の1・2,87,88,90,93,乙1,7,8,証人H,証人N,被告B 45,50,51,53,57~59,60の1・2,61,62,63の1~63の6,64の1・2,70,71,81,84,85の1・2,87,88,90,93,乙1,7,8,証人H,証人N,被告B2本人,被告B1本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 本件事業の具体的内容C商事は,本件土地を墓地開発地とする本件事業を計画していたところ,その具体的内容は,P株式会社(以下「P」という。)などからKが取得した本件土地をC商事が譲り受け,墓地の造成工事をした上で,宗教法人Q(以下「Q」という。)に寄付するとともに,建墓権及び永代使用権をC商事が取得して,これをMに転売するというものであった。なお,本件土地のうち12筆は農地であった。(甲2の1~2の8,弁論の全趣旨)本件融資に至る経緯アH弁護士の被告らに対する本件事業及び融資の説明H弁護士は,平成15年12月ころ,Fから,C商事が計画した本件事業の説明を受け,平成16年1月26日,D1信用組合を訪問して被告らに面会した。H弁護士は,被告らに対し,本件事業の計画に関連する書類一式を渡し,費用や利益も含めた本件事業の概略を説明した上で,C商事が本件事業の資金として13億2232万円の融資を希望していること,平成16年12月末日に一括返済する計画であることを伝えた。 これに対し,被告らは,大きな融資案件であって,直近に合併を控えてもいたことから,合併後の理事会において検討しなければならない旨述べた。なお,被告B1は,平成16年1月26日にH弁護士から説明を- 14 -受けた場には立ち会っていないと主張し,これに沿う供述をするが,被告B2のメモには,被告B1も立ち会っていた旨明確に記載され,証人H及び被告B2本人も尋問において同様の供述をしていることに照らすと,被告B1 は立ち会っていないと主張し,これに沿う供述をするが,被告B2のメモには,被告B1も立ち会っていた旨明確に記載され,証人H及び被告B2本人も尋問において同様の供述をしていることに照らすと,被告B1も同日のH弁護士の説明に立ち会ったことを認めることができる。(甲2の1~2の8,14,15,証人H,被告B2本人)H弁護士が持参した上記墓地開発計画に関連する書類一式には,要旨,次のものが含まれていた。(甲2の1,2の3,2の4,2の6~2の8,証人H,被告B2本人,弁論の全趣旨)①C商事から被告B1宛ての「墓地開発事業計画及び販売計画」と題するD1信用組合による融資の検討依頼の書類②Kが,C商事に対し,売買契約締結期限を平成16年1月末日までとして本件土地を売却することを約した平成15年12月12日付け「売渡承諾書」及びKの印鑑証明書③C商事がQに対して本件土地の所有権移転及び引渡しを行うとともに,QがC商事に対して永代使用権及び建墓権の全てを与えることを約した平成16年1月22日付け「承諾書」及びQの印鑑証明書④Mが,C商事から墓地造成工事が施された本件土地を24億0960万円で買い付けることを証明する旨のM作成の平成16年1月10日付け買付証明書⑤平成16年2月末日までに,本件土地購入代金,宗教法人契約金,許可申請設計書代金のうち1200万円,諸費用のうち2000万円の合計10億5425万円,同年6月末日までに,造成工事手付金2億円,同年8月末日までに,造成工事中間金2億円,同年10月末日までに,造成工事完成金2億8775円,許可申請設計書残代金及び諸費用残代金の合計3億4103万円(以上の総合計17億9528万円)が必要になることから,会社資金で支出するものなどを除いた- 15 -13億2232万円の融資が必要で 許可申請設計書残代金及び諸費用残代金の合計3億4103万円(以上の総合計17億9528万円)が必要になることから,会社資金で支出するものなどを除いた- 15 -13億2232万円の融資が必要である旨の本件事業の資金計画が記載された「墓地開発資金計画」と題する作成日付,作成名義人のない書面(株式会社R作成の造成工事概算見積書添付)⑥Mからの販売収入が合計240億9600万円であること,本件融資を平成16年12月末日に13億2232万円全額返済する旨の記載がされた作成日付,作成名義人のない書面(事業工程表添付)イ平成16年2月16日に平成16年合併が成立し,D1信用組合は原告となった。その直後である同月20日,原告本店営業部は,本件融資に関する協議資料である「融資案件協議書」を作成した。これには,申込人がC商事,G,Fのいずれかとなること,資金使途が横浜市a区b所在の本件土地の墓地開発事業であり,返済財源は墓地の売却代金であること,融資の申込金額は13億円であり,予定される担保物件としては,C商事に対して有していた既存担保物件の差引処分可能額である11億4254万4000円,担保とされていないEの自宅等を併せて11億4671万5000円であること,C商事,G,E及びFらに対する既存貸金は合計10億6166万4654円であること,C商事らの定期性預金は1億4000万4196円であることが記載されていた。なお,被告B2がこの融資案件協議書の作成日の6日前である同月14日に,これと同内容のメモ(甲15)を作成していたことにかんがみると,同被告の本人尋問における供述は曖昧であるが,この協議書は同被告の指示に基づいて作成されたものと推認される。(甲3,15)ウE,F及びH弁護士は,同月23日,原告を訪れ,被告B2を含めた5名の常勤 告の本人尋問における供述は曖昧であるが,この協議書は同被告の指示に基づいて作成されたものと推認される。(甲3,15)ウE,F及びH弁護士は,同月23日,原告を訪れ,被告B2を含めた5名の常勤理事及びN融資部長らに対し,返済方法を含めて本件事業の詳しい内容を説明した。その際,H弁護士は,融資額としては約13億円が必要であるが,場合によっては11億5000万円程度でも構わない旨を説明した。(甲45,証人H,被告B2本人)- 16 -エN融資部長は,同月24日,被告B2から本件融資案件に関する書類一式を受け取り,本件融資について検討したメモを作成した。これには,C商事,G,E及びFらの定期性預金が合計1億4000万4196円であること,C商事らに対する既往貸出残高合計10億6166万4654円に今回の融資申込額13億円を加えた合計額から処分可能担保額を差し引いた額がマイナス12億1494万9654円であることが記載され,さらに確認事項として,①本件土地に農地があるのでその転用についての確認,②Mの24億円の資金調達能力,③本件事業における開発行為等に関する住民の同意の可能性,④事業工程表と融資実行及び融資金の完済までの整合性がないこと,⑤13億円の融資に対する利息の計算が記載されていた。 また,これと同旨の内容で,冒頭に「事前協議願います」などと記載された同日付の「融資事前案件について」と題する書面が作成され,これに基づいて,被告B2を含む5名の常勤理事及びN融資部長ら出席の上で,事前協議が行われた。このときは,要旨,①融資額は10億円までとし,不足金はC商事に努力してもらう,②Q及び造成地の現地調査をする,③Mの企業調査をする,④農地転用許可証の写しを徴求する,⑤開発許可証の写しを徴求する,⑥住民の同意を確認する,⑦H弁 億円までとし,不足金はC商事に努力してもらう,②Q及び造成地の現地調査をする,③Mの企業調査をする,④農地転用許可証の写しを徴求する,⑤開発許可証の写しを徴求する,⑥住民の同意を確認する,⑦H弁護士の念書を徴求する,⑧Mからの代理受領方式とは何かを明らかにする,⑨C商事の既存財務1億5000万円の返済を約束させることが検討課題とされた。(甲4,45,81,被告B2本人)オO審査課長は,同月25日,理事のS及び本店営業部次長のTとともに,本件土地の現地調査に赴き,これに基づいて,同月26日,墓地開発事業用地現地実査報告書を作成した。この報告書には,要旨,①本件土地は,丘陵地の北西を向いた側面でかなりの傾斜地となっていること,②東側には分譲マンション,南側には高校が隣接し,周囲が住宅地として開発が進- 17 -んでいること,③入口に「P研究所㈱」と書かれた看板があり敷地内に入ると10棟ほど建物があったが現在は使用されていない様子であったこと,④内部は手入れがされており,自然林の大木もあるため造成の仕方によっては雰囲気の良い霊園になると思われること,⑤ただし,造成費等は相当見込まれること,⑥近隣住民の同意が得られれば,場所的にも交通の利便性も良いことに加え,所在地名「b」もネームバリューがあり良いのではないかと思われること,⑦近隣住民3名に尋ねたところ,霊園開発の話は聞いたことがあるものの説明会は行われていないということであった,との記載がされていた。(甲5)カ被告B2は,同年3月8日,H弁護士に電話で,弁護士として本件事業に関与することを確約した書面を提出されたい旨を依頼した。H弁護士はこれに対し,同日のうちに,宛名を「A信用組合理事長B1殿」とし,本件事業及びその資金計画の概要を記載したうえ,要旨,①借入金は最低でも11 ことを確約した書面を提出されたい旨を依頼した。H弁護士はこれに対し,同日のうちに,宛名を「A信用組合理事長B1殿」とし,本件事業及びその資金計画の概要を記載したうえ,要旨,①借入金は最低でも11億5000万円程度あれば資金繰りが可能であるとC商事が述べていること,②本件事業を遂行するにあたってKとの売買契約の締結,購入土地の墓地造成を条件とする寄付契約の締結,Mとの建墓権及びその墓地の販売権の譲渡契約の締結,造成工事契約の締結等が必要となるが,現在上記各契約について事前交渉がなされ,各相手方から,売渡承諾書,買付証明書,条件附寄付の受け入れ承諾書,造成工事の締結承認書をC商事が受領している状況であること,③C商事において過去2回実施した墓地造成事業において多額の利益を得た実績があるところ,その際も必要な各契約についてH弁護士が指導をしたが,本件事業についても,原告の融資が安全に回収するためのMからの譲渡代金の代理受領も含め,弁護士として適切な指導をすることを約するものであること,④なお,この確認は,本件融資についてC商事の返済を保証するものではないこと,以上を記載し書面を送付した。ただし,この書面は,作成者欄は単に「弁護士」との肩- 18 -書のみ記され,H弁護士の記名も署名も押印もない,単なる文書案であることが一見して明らかな書面であった。(乙1,証人H,被告B2本人)キC商事は,Kから,同月9日,本件土地の購入について,支払期日を同月10日としている売買残代金9億3225万円が未だ支払われておらず,同日までに支払がない場合は,手付金3000万円を違約金として没収するとともに本件土地を他の購入希望者に売却する旨が記載された「ご通知」と題する書面の送付を受けた。C商事のFは,同日,上記書面を,原告に持参して被告B2に対して提 金3000万円を違約金として没収するとともに本件土地を他の購入希望者に売却する旨が記載された「ご通知」と題する書面の送付を受けた。C商事のFは,同日,上記書面を,原告に持参して被告B2に対して提示し,被告B2は,H弁護士に対して,同月10日,上記書面を送付した。(甲6,84,証人H)本件融資の実行ア本件融資決裁 同月10日,本件稟議書兼申込書に原告の理事らの決裁がなされ,本件融資が承認された。本件稟議書兼申込書には,上段に被告らを含む理事,下段にD1信用組合出身の本店営業部長であるUの各決裁印が押印されていたが,業務統括本部所属の者による決裁印はなかった。なお,D1信用組合においては,借入金申込書が稟議書を兼ねる取扱がなされており,本件もその取扱に沿って決裁がなされた。本件稟議書兼借入書には,同日付け「融資申請書」と題する本店営業部がまとめた書面(以下「本件申請書」という。)が添付されていた。(甲7,8,70,87,被告B2本人)本件稟議書兼申込書には,要旨,次の内容が記載されていた。(甲7)①申込金額7億6000万円②利 率年4.5パーセント③期 間平成17年2月④資金使途墓地開発資金⑤借入希望日平成16年3月10日- 19 -⑥連帯保証人G,F,E⑦貸出金手形貸付 2億4600万円証書貸付 7億5201万0658円今回申込額7億6000万円合計 17億5801万0658円⑧根抵当権設定額13億6000万円(物件7件)処分可能見込額9億3457万円また,本件 8円今回申込額7億6000万円合計 17億5801万0658円⑧根抵当権設定額13億6000万円(物件7件)処分可能見込額9億3457万円また,本件申請書には,要旨,次の内容が記載されていた。(甲8)①売上・利益の推移(売上高)平成14年7月2億4661万8000円平成15年7月1億8999万3000円前年比5662万5000円減少(営業利益)平成14年7月8491万9000円平成15年7月7502万3000円前年比989万6000円減少(経常利益)平成14年7月2439万9000円平成15年7月4200万9000円前年比1761万円増加②資金使途墓地開発資金③返済方法平成17年2月墓地売却により一括返済④申請意見C商事が過去に2度墓地開発事業で成功したこと,本件でも既にMへの売却が決まっており,平成17年2月完成予定であること等から,融資を実行したい。 ⑤特記事項今回の申込にあたり,C商事の顧問弁護士であるH弁護士らから本件事業について説明があり,C商事の本件事業への強い意欲が感じ取れる。本件事業に関連する各種契約に- 20 -ついては,H弁護士の立会いの下に行われる。 イC商事は,原告に対し,同日,連帯保証人をF,E及びGとする額面7億6000万円の約束手形を振り出し,また,原告は,C商事に対し,本件融資決裁にしたがって,本件融資を実行した。上記手形では,支払期日が平成16年3月19日とされていたが,これは,同日に利息を年4.5パーセントから3.5パーセントに引き下げることを見越して定められたものであり,実際の支払期限は,本件融資から約1年後の平成17年2月であり,本件事業による墓地売却益で一括返済することとされていた。なお,本 から3.5パーセントに引き下げることを見越して定められたものであり,実際の支払期限は,本件融資から約1年後の平成17年2月であり,本件事業による墓地売却益で一括返済することとされていた。なお,本件融資の額は,原告の融資額としては稀有といえる高額な融資であった。(甲9,93,証人N,被告B2本人,弁論の全趣旨)本件融資の返済状況等アC商事は,Kに対し,同月11日,本件土地の代金として,本件融資により取得した金員を含めて8億1000万円を送金したが,同日,Kから,8億0700万円が返金された。(甲10,38)イC商事は,同日,Kから返金された8億0700万円のうち,7億円をV信用金庫の定期預金としたが,同年6月11日,同定期預金を解約した。 以後,上記定期預金は,C商事の普通預金への転換と普通預金から定期預金への転換を,金額の減少を伴って繰り返し,平成17年3月31日の時点において,C商事の同信用金庫における普通預金の残高は8420万1858円,同定期預金残高は5000万1480円となった。(甲38,39)ウ平成16年11月ころ行われた関東財務局の検査の際,本件融資のうち7億円がV信用金庫の定期預金口座にあるという指摘がされたことを受け,被告B2は,被告B1から上記定期預金回収の指示を受けた。被告B2は,このことをC商事のFに尋ねたところ,Fから,住民の同意が得られないために難航しているが説明会を再開する旨の回答があったので,回- 21 -収のための措置をとらなかった。(乙7,8,被告B2本人,被告B1本人,弁論の全趣旨)エしかし,本件事業が進展することはなく,C商事は,本件融資の支払期限である平成17年2月が経過しても元金返済をすることはなく,平成18年2月には利息の支払も停止することとなった。(証人H,弁論の全趣旨 し,本件事業が進展することはなく,C商事は,本件融資の支払期限である平成17年2月が経過しても元金返済をすることはなく,平成18年2月には利息の支払も停止することとなった。(証人H,弁論の全趣旨)本件土地の所有者等本件土地は,Pが所有していたほか,Wも所有しており,このいずれの土地もKに売却されたことはなかった。なお,本件土地は,平成19年,X株式会社に売却され,これに基づく所有権移転登記手続がされた。(甲50,51,53)本件融資前の原告のC商事に対する貸付状況ア平成13年5月30日の貸付金一本化原告は,平成13年5月30日,C商事に対する従前の貸付金及びGに対する債権を一本化し,債務者をC商事,連帯保証人をE及びFとして,支払期限を平成33年5月20日とする,8億4115万8522円の証書貸付をした。当時のD1信用組合が査定したC商事の債務者区分は「破綻懸念先(延滞,債務超過)」であった。同証書貸付は,平成16年2月20日の時点において残高が7億4832万1981円となった。(甲16,17の1~17の3)上記の債務一本化に先立ち,C商事が,原告に対する借入金を否認して返済を拒否する等の問題が生じたため,D1信用組合とC商事との間で,H弁護士を仲介人として,要旨,C商事,G及びYを実質的に分離し,C商事又はGからD1信用組合に融資の申込みがあった場合には,原告はYに対する貸付金の返済を要求しないこと,C商事の延滞を解消するため,債務を一本化する新規貸付けを行うこと等を内容とする和解- 22 -が成立した。上記の債務の一本化は,上記和解に基づくものであった。 また,上記和解のための協議には被告らも参加していた。(甲33,34の1・2,証人H)イ平成9年3月25日の手形貸付原告は,C商事に対し,平成9年3月25日 化は,上記和解に基づくものであった。 また,上記和解のための協議には被告らも参加していた。(甲33,34の1・2,証人H)イ平成9年3月25日の手形貸付原告は,C商事に対し,平成9年3月25日,貸付期限を平成17年10月5日として9300万円の手形貸付をしたが,平成21年時点においても貸付残高は9090万円であった。(甲17の1,31の1)。 ウ平成14年和解の際の手形貸付C商事は,平成13年6月11日に株式会社東京I銀行からJに譲渡されたC商事に対する貸金残元本8億6548万円及び利息損害金について,Jとの間で,平成14年11月22日,C商事が期限の利益を失うことなく合計1億9000万円を支払った場合には,残代金の請求の放棄を受ける旨の和解(平成14年和解・甲府簡易裁判所平成14年第14号)をした。(甲18の1・2,弁論の全趣旨)原告は,C商事に対し,上記の平成14年和解で定められた和解金の支払のため,平成14年10月31日及び同年11月29日に各5000万円,同年12月20日に5300万円を,それぞれ貸し付けた。 なお,上記各貸付けの際に作成された稟議書兼借入金申込書には,当時の役員の決裁印がされていない。しかし,上記各貸付金は,返済期限を徒過したにもかかわらず,平成16年2月20日の時点において未だ返済されていなかった。(甲17の1,19~21,24の1・2,被告B1本人,弁論の全趣旨)エ平成15年12月5日の貸付け原告は,C商事に対し,平成15年12月5日,700万円を貸し付けた。この貸付金の残高は,平成16年2月20日の時点において残高が678万3169円であった。(甲17の1,24の1)- 23 -オ本件融資当時におけるC商事の原告に対する残債務額平成16年3月10日の本件融資時におけるC商事の原告に対 の時点において残高が678万3169円であった。(甲17の1,24の1)- 23 -オ本件融資当時におけるC商事の原告に対する残債務額平成16年3月10日の本件融資時におけるC商事の原告に対する本件融資を除いた残債務額は,9億9801万0658円であった。(甲7)本件融資前のC商事の財務・経営状況平成14年から平成16年のC商事の資本,経常利益及び当期利益ないし当期純損失は次のとおりである。(甲26~28)ア平成14年7月31日時点の資本合計マイナス1億0314万1240円平成13年8月1日から平成14年7月31日までの経常損失2439万9728円前記期間における当期利益1253万2847円イ平成15年7月31日時点の資本合計マイナス9705万6621円平成14年8月1日から平成15年7月31日までの経常利益4200万9978円前記期間における当期利益608万4619円ウ平成16年7月31日時点の資本合計マイナス2億6640万6663円平成15年8月1日から平成16年7月31日までの経常利益マイナス274万4694円前記期間における当期純損失マイナス1億6935万0042円本件融資時の担保の状況ア本件融資当時のC商事の既存担保物件について,根抵当権設定額は13- 24 -億6000万円,処分可能評価額は9億3457万円であり,原告に優先する先順位担保権について残債権額を差し引いた上,担保外のEの自宅等の価値を考慮すると,11億4671万5000円であった。(甲3,4,7,25の1~25の3,乙1)。 イ本件融資当時のGの財務状況本件融資の連帯保証人であるGは,昭和4 た上,担保外のEの自宅等の価値を考慮すると,11億4671万5000円であった。(甲3,4,7,25の1~25の3,乙1)。 イ本件融資当時のGの財務状況本件融資の連帯保証人であるGは,昭和49年5月30日(当時の商号は株式会社Z)に設立された資本金1000万円の会社であり,本件融資当時はFが代表取締役であった。本件融資当時のGの財務状況については,要旨,次のとおりであった。(甲29,30,弁論の全趣旨)平成14年9月30日の資本合計1億8961万6161円平成13年11月1日から平成14年9月30日までの経常利益8451万6179円前記期間における当期純利益141万0785円平成15年9月30日の資本合計2億1472万4157円平成14年10月1日から平成15年9月30日までの経常利益7867万1596円前記期間における当期利益2510万7996円C商事の過去の墓地開発事業原告は,本件融資以前に,C商事等に対し,墓地開発事業を資金使途として,平成7年から平成9年にかけて数回にわたって融資を実行し,また,平成11年9月29日にも融資を実行したことがある。このうち,平成11年9月29日の融資は,L所有の土地上で墓地開発を行うため,C商事に対し- 25 -て2億7000万円,Fに対して2億2000万円をそれぞれ融資するというものであって,これらは平成11年に全額返済された。なお,D1信用組合においては,上記融資の際,限度額,担保物件,資金使途,契約書等の問題について3度の常務会を開いて融資の可否が検討された。上記事業は,開発予定地がLの所有であり,かつ,Lの隣接地であったことから,上記融資前の平成11年7月15日には既に宗教法人Lから神奈川 等の問題について3度の常務会を開いて融資の可否が検討された。上記事業は,開発予定地がLの所有であり,かつ,Lの隣接地であったことから,上記融資前の平成11年7月15日には既に宗教法人Lから神奈川県知事に対して墓地,埋葬等に関する法律10条2項の墓地区域変更許可申請が行われていた。(甲57~59,60の1・2,61,62,63の1~63の6,64の1・2,弁論の全趣旨)原告の融資審査体制ア平成16年合併直後の原告の審査体制平成16年合併直後は,原告において統一的な審査体制が確立されておらず,合併前のD1信用組合,D2信用組合,D3信用組合及びD4信用組合にそれぞれ対応して,D1統括本部,D2統括本部,D3統括本部及びD4統括本部が設置され,それぞれが従来採用していた融資審査基準に基づき審査をしていた。なお,本件融資は,D1信用組合において受け付けられた案件であり,その結果,D1統括本部担当の案件であった。(甲71,証人N,被告B2本人,被告B1本人)平成16年合併直後の原告には,上記4つの統括本部のほかに業務統括本部が置かれていた。その下部機関には,融資部及びその下部に審査課が置かれていたが,融資部長にN融資部長が,審査課長にO審査課長がそれぞれ就いていたのみで,そのほかには代理業務を行う者らが所属していた。なお,前記アのとおり,本件稟議書兼申込書には,業務統括本部の関係者の決裁印はなかった。(甲7,70,71,87,証人N)原告において統一的な審査体制が整備されたのは,平成16年6月以- 26 -降のことであった。(甲85の1・2,88,証人N)イD1信用組合の審査体制貸出権限aD1信用組合においては,借入れの申込みを受けると,「借入金申込書」と題する書類が作成されており,これが稟議書を兼ねていた。 (甲7 の1・2,88,証人N)イD1信用組合の審査体制貸出権限aD1信用組合においては,借入れの申込みを受けると,「借入金申込書」と題する書類が作成されており,これが稟議書を兼ねていた。 (甲7,57,90,被告B2本人,被告B1本人)b本部決裁の必要な融資本店においては担保による与信が600万円,信用与信が200万円,支店においては担保による与信が700万円,信用与信が100万円の範囲を超える融資については,本部の決裁が必要とされていたところ,その権限については次のとおり定められていた(平成13年1月4日実施の本部貸出金決裁権限内規第2条)。(甲12,13)①審査部長与信額1000万円まで②融資審査常勤理事会与信額1000万円超c融資審査常勤理事会融資審査常勤理事会は,常勤理事により構成され,原則として常勤理事全員の出席により開催され,決裁は,常勤理事の過半数により決するものとされていた(同内規第3条)。(甲13) 争点 (本件融資決裁における被告らの善管注意義務違反の有無)について信用組合の理事は,信用組合に対し,善良な管理者の注意をもって組合のために忠実にその職務を執行する義務を負うところ(中企法35条の3,民法644条),いわゆる経営判断の原則が妥当する余地はあるとしても,その業務の内容や性格等に照らすと,いかなる場面においてもこの原則が適用されるわけではない。殊に融資においては,信用組合は,回収不能による損失を避けるべく,融資先の経営状況,資産状況等を調査した上で,確実な担保を徴求するなど融資の安全性を確保するための相当な措置を講じなければ- 27 -ならないのであるから,理事としては,融資の実行の決裁にあたり,この点を十分に確認すべきである。また,仮に確実な担保を徴求しないまま融資をす 性を確保するための相当な措置を講じなければ- 27 -ならないのであるから,理事としては,融資の実行の決裁にあたり,この点を十分に確認すべきである。また,仮に確実な担保を徴求しないまま融資をする場合があったとしても,その場合には,融資によって行われる事業の内容を精査し,その事業から元利金相当額の収益が確実に得られるか否かを確認すべきである。以上を懈怠して信用組合に回収不能などの損害を与えた場合には,理事はその損害を賠償する義務を負う(中企法38条の2第1項)といわなければならない。 平成13年5月時点において,当時のD1信用組合は,C商事の債務者区分を「破綻懸念先(延滞,債務超過)」として扱っており,その後もD1信用組合ないし原告がC商事の経営状態について客観的な調査をした形跡がうかがわれないこと,実際にも本件融資当時のC商事の原告に対する残債務額が9億9801万0658円にも達していたことからすると,本件融資当時においても原告がC商事の経営状態に関する評価を変更していたとは考えられない。なお被告B2は,原告におけるC商事の債務者区分が,本件融資当時は「要注意先」に回復していたと主張するが,これを裏付ける証拠はないばかりか,客観的にみてもC商事は,本件融資当時,資本合計が約1億円欠損している状態であって,経常利益及び純利益もその欠損を解消できる状態にまでは至っていなかったことにも照らすと,この主張は到底措信できない。 D1信用組合とC商事との従前の経緯に照らせば,本件融資当時,C商事が破綻懸念先としてその信用に重大な問題があったことは,原告内部において十分に認識されていたと考えるのが自然であって,被告らはいずれも原告の理事として,C商事に対して融資を実行する場合には,確実な担保を徴求するなど,相当な措置が講じられていることを確 原告内部において十分に認識されていたと考えるのが自然であって,被告らはいずれも原告の理事として,C商事に対して融資を実行する場合には,確実な担保を徴求するなど,相当な措置が講じられていることを確認すべきであった。 しかしながら,本件融資当時,本件融資以外に原告のC商事に対する貸付金残高が9億9801万0658円もあり,その結果,本件融資を含めるとC商事の原告に対する貸付金債務は合計17億5801万0658円にも上- 28 -るところ,既存担保については,処分可能評価額が9億3457万円であり,優先債権者の残債権額を控除し,担保外のEの自宅等の価値を考慮したとしても11億4671万5000円にとどまっていて,元利金を既存担保から回収することが極めて困難であることは,本件稟議書兼申込書の記載から十分にうかがわれた。また,本件融資に際し,新たに設定された物的担保はなかった。 以上によれば,被告らは,融資の安全性を確保するための相当な措置をとることについて,確認を怠ったというほかない。 次に,被告らが,融資の契機となった本件事業から元利金相当額の収益を得られることを確認していたといえるかについて検討することとする。 ア本件土地及びその売買契約等に関する調査本件事業は,前記1のとおり,Pが当初所有していた土地を,Kが買い受け,C商事が買い受けるというものであって,C商事の土地取得は,PとKの売買の成否にかかわるという不安定な要素を抱えていた。それにもかかわらず,本件融資の決裁に先立って,この売買が確実であるか否かの調査はもとより,本件土地の不動産登記簿謄本を取得するなどして,所有名義及び抵当権設定の有無を調査した形跡すらない。しかも,本件土地には,Pだけでなく,W所有の土地も含まれており,KはWからも土地の譲渡を受ける必要が 土地の不動産登記簿謄本を取得するなどして,所有名義及び抵当権設定の有無を調査した形跡すらない。しかも,本件土地には,Pだけでなく,W所有の土地も含まれており,KはWからも土地の譲渡を受ける必要があったが,不動産登記簿謄本を取得していなかったために,この点についても認識していなかった。 イ本件土地の売買契約書の徴求本件融資前日の平成16年3月9日に,KからC商事に前記1キのとおりの「ご通知」と題する書面が送付されており,同日の時点で既に本件土地の売買契約が締結されていたことがうかがえたから,C商事に対して本件土地の売買契約書を徴求して,代金支払日や所有権移転日等を調査する必要があったが,このような調査がなされた形跡は全くない。 - 29 -ウ墓地経営許可及び農地転用許可等に関する調査墓地は,墓地,埋葬等に関する法律10条1項の規定により,都道府県知事の許可を要することとされており,また,横浜市墓地等の経営の許可に関する条例によると,自己所有の要件が課される(7条)とともに,標識の設置(13条),周辺住民に対する説明を行うこと(14条)が規定されており(甲54),本件事業の実現のためには,これらの要件を充足する必要があった。しかしながら,被告B2は,本人尋問において,墓地経営規制の内容について十分な認識を持っていなかったのを認めており,本件事業にあたって墓地経営の許可が得られる見込みの有無の調査をしていなかったものと推認される。墓地開発は,一般に,周辺住民の反対に遭うおそれが高いことが容易に推認でき,墓地経営の許可のために必要な住民説明会の開催状況については十分な確認が必要であるところ,本件融資にあたっての事前協議でも住民説明会の開催の有無が挙げられており,同月25日には,O審査課長らが現地に赴いて調査を行い,住民説明会は未 明会の開催状況については十分な確認が必要であるところ,本件融資にあたっての事前協議でも住民説明会の開催の有無が挙げられており,同月25日には,O審査課長らが現地に赴いて調査を行い,住民説明会は未だ行われていないという調査結果が出されていたのであるから,引き続き住民説明会開催の有無を注視すべきであったが,同日以降,住民説明会の開催に関する確認は全くされなかった。 また,本件土地には一部農地が含まれていたのであるから,本件事業を遂行するには農地転用許可を受ける必要があり,このことは,同年2月24日の事前協議の際にも検討課題として挙げられていたが,本件融資決裁に至るまでに,許可の見込みに関する調査が行われた形跡はない。 なお,被告B2は,C商事が本件土地を取得しない限り,農地転用許可や墓地経営許可の取得,住民説明会の開催は事実上困難であったなどと主張するが,本件土地の譲渡を受ける前に住民説明会を開催することが困難であるなどとは考えられないし,墓地経営許可や農地転用許可の見込みについても,仮に融資後に不許可とされた場合には,たちまち事業の遂行が- 30 -困難になるのであるから,少なくとも融資前から上記農地転用許可や墓地経営許可が得られる見込みを十分調査する必要があったというべきである。被告B2の前記主張は採用できない。 エ融資減額部分の資金調達の可能性の調査本件融資の当初申込額が13億円の融資で,H弁護士の説明によると最低11億円程度の融資でも可能とされていたものの,本件融資においては,最終的にその額が7億6000万円にとどまった。3億円以上も減額したのであるから,C商事が資金不足によって事業遂行が不可能になるおそれは十分考えられたはずである。不足部分について,C商事の資金調達がはたして可能であるのか,同社の関係者から聴取し,本件事業 減額したのであるから,C商事が資金不足によって事業遂行が不可能になるおそれは十分考えられたはずである。不足部分について,C商事の資金調達がはたして可能であるのか,同社の関係者から聴取し,本件事業が完遂できる見込みについて十分に確かめる必要があったといわなければならない。しかしながら,この点について十分に検討された形跡はない。 オ以上のアないしエの事情を総合すると,本件融資決裁にあたって,本件事業が完遂されることが確実であることの調査は十分になされておらず,本件事業から本件融資による元利金相当額の収益が得られることの確認がなされていなかったことは明らかである。 これに対し,被告B2は,本件融資決裁について,①経営状態が健全であったGが連帯保証人となったこと,②墓地売却代金を,Mから原告に直接支払う代理受領方式が採用されることとなっていたこと,③H弁護士が責任をもって本件事業を監督する旨の誓約があったこと,④C商事が過去に墓地開発事業を成功させたことから,被告B2には善管注意義務違反はないと主張する。しかしながら,下記のとおり,いずれも同被告に善管注意義務があることを否定できる事情とはいえない。 アGが連帯保証人となったことについてGは,前記1イのとおり,平成14年及び平成15年とも資本欠損の状態にはないが,平成13年11月1日から平成14年9月30日までの- 31 -経常利益が8451万6179円,当期利益が141万0785円,平成14年10月1日から平成15年9月30日までの経常利益が7867万1596円,当期純利益が2510万7996円にとどまっている。したがって,同社が,7億6000万円もの融資につき,約定に従って平成17年2月に一括返済をすることは極めて困難であったといわざるを得ない。 イ代理受領方式を採用していた 96円にとどまっている。したがって,同社が,7億6000万円もの融資につき,約定に従って平成17年2月に一括返済をすることは極めて困難であったといわざるを得ない。 イ代理受領方式を採用していたことについて本件融資の担保としては,MがC商事に対する売買代金を直接原告に支払う代理受領方式をとることとされていたが,この代理受領方式は,本件事業が完遂することを前提とした回収の手段であって,本件事業が失敗に終わった場合には何ら機能を果たさない不十分な担保であったといえる。 ウH弁護士の関与について前記1カのとおり,本件事業に当たっては,H弁護士が適切に指導監督して行く旨の文書案が提出されていたものの,これは同弁護士の署名のない単なる文書案であるうえに,同弁護士が原告に損害を与えないことを何ら法的に保証しているわけではないのであって,上記誓約書文案が作成されたからといって,当然に本件事業の成功の確実性について確認する義務が軽減されるということはできない。 エC商事の過去の墓地開発事業前記1のとおり,C商事は,過去に2度墓地開発事業を成功させていた。しかしながら,このうち,平成11年9月29日の融資によって行われたLの墓地開発事業は,当初からLの所有する土地に墓地開発をしたものであって,所有権取得及び墓地経営許可のリスクがほとんどなく,本件事業とは明らかに性質が異なる事業だったといえる。また,一般に,墓地開発事業の条件はその都度さまざまなものであり,過去に成功させたからといって,そのことが単純に新たな事業の成功を導くはずもない。 - 32 -被告B1は,審査体制が整備された信用組合の理事長として,下部機関の審査を信頼して決裁することが許され,善管注意義務にも違反しないなどと主張する。 しかしながら,業務統括本部の融資部及び審査課には 被告B1は,審査体制が整備された信用組合の理事長として,下部機関の審査を信頼して決裁することが許され,善管注意義務にも違反しないなどと主張する。 しかしながら,業務統括本部の融資部及び審査課には,N融資部長とO審査課長の2名が所属するほかは代理業務を担う者が複数所属していたのみで,個々の統括本部から上げられた案件を重畳的に審査する部署としては余りにも小規模であること,本件稟議書兼申込書の下段には,D1統括本部長の決裁印があるのみで,業務統括本部の者による決裁がないことからすれば,本件融資当時は,未だ,業務統括本部が実質的に融資審査を行う体制として整備されていなかったと認められる。しかも,前記1ウのとおり,D1信用組合においては,被告B1も本人尋問において認めるとおり,平成14年和解に当たり,C商事に対して理事らの決裁がないまま融資がされたことがあるなど,元々の審査体制にも不備があったといえる。 このような不十分な審査体制の下においては,被告B1は,原告の理事長として,7億6000万円もの多額の本件融資について,その安全性を確認した上で決裁をすべきであったというべきであって,被告B1の前記主張は直ちに採用することはできない。 被告B1は,本件融資決裁の直前に融資審査常勤理事会が開催され,その場で本件融資に対して反対意見を述べたとも主張し,被告B1本人及び被告B2本人もこれに沿う供述をする。しかしながら,仮に被告B1が,上記理事会に当たって,本件融資に反対の意見を述べたとしても,他の理事を説得しないどころか,結局は自らも本件融資の安全性について確認しないまま本件融資決裁をしたのであり,これをもって被告B1の善管注意義務違反を否定することはできず,被告B1の前記主張は失当であるというほかない。 以上ないしに述べたところからする て確認しないまま本件融資決裁をしたのであり,これをもって被告B1の善管注意義務違反を否定することはできず,被告B1の前記主張は失当であるというほかない。 以上ないしに述べたところからすると,被告らが本件融資決裁をしたことは,原告の理事としての善管注意義務に違反するものといわざるを得な- 33 -い。 争点 (損害額)について本件融資は,原告が,平成20年12月26日,本件融資元本について,C商事,G,E及びFが原告に対して有する預金債権合計8180万4423円と対当額で相殺した結果,元本残高6億7819万5577円となり,このほか未収利息6981万5890円,平成22年5月3日現在の遅延損害金5億7186万9999円が発生している(甲31の1~3,44,105)。そして,前記認定のとおり,本件融資をするに当たって,原告は,新たな担保の設定を受けておらず,また,既存担保によっても本件融資の回収は不可能であるから,本件融資元本残高6億7819万5577円が回収不能となっていることが明らかであって,前記1で認定した事実経過に照らすと,この全損害と被告らの善管注意義務違反との間に相当因果関係があるのも明らかである。 第5 結論 以上によれば,原告の被告らに対する本訴請求はいずれも理由があるから認容することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,65条1項本文を,仮執行宣言につき同法259条1項を,それぞれ適用して,主文のとおり判決する。 甲府地方裁判所民事部 裁判長裁判官 林正宏 裁判官 岡田紀彦 - 34 -裁判官 伊賀和幸 正宏 裁判官 岡田紀彦 裁判官 伊賀和幸
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