平成10(行ツ)149 第二次納税義務告知処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年12月19日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所 平成9(行コ)42
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判決文本文4,512 文字)

主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人加藤一郎,同関沢正彦の上告理由について 1 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。 (1) 上告人,同補助参加人及びその取引先である株式会社D(以下「取引会社」という。)は,平成4年12月8日,取引会社が上告補助参加人との間の継続的取引によって取得する売掛金債権を担保のため上告人に譲渡し,上告人は取引会社に対し別途締結した当座貸越契約に基づき上記売掛金債権残高を貸越極度額として貸付けを行うことなどを内容とする一括支払システムに関する契約(以下「本件契約」という。)を締結した。 (2) 本件契約においては,上告人に担保のために譲渡された売掛金債権について,国税徴収法(以下「法」という。)24条に基づく告知が発せられたときは,これを担保とした上告人の当座貸越債権は何らの手続を要せず弁済期が到来するものとし,同時に担保のため譲渡した売掛金債権は当座貸越債権の代物弁済に充てることなどを内容とする合意(以下「本件合意」という。)がされている。 (3) 上告人は,本件契約及び前記当座貸越契約に基づき,取引会社が上告補助参加人に対して有する第1審判決別紙債権目録(一)及び(二)の売掛金債権を取引会社から担保のため譲り受け,取引会社に上記各債権と同額の貸付けを行った。 (4) 被上告人は,平成5年5月20日,法24条2項に基づき,上告人に対し,上記売掛金債権から取引会社の第1審判決別紙租税債権目録の国税を徴収する旨の告知書(この告知書による告知を以下「本件告知」という。)を発出し,同告知書は同日上告人に到達した。 - 1 - 2 本件は,上告人が,被上告人に対し,本件告知(ただし,同年 録の国税を徴収する旨の告知書(この告知書による告知を以下「本件告知」という。)を発出し,同告知書は同日上告人に到達した。 - 1 - 2 本件は,上告人が,被上告人に対し,本件告知(ただし,同年6月1日に被上告人によって一部取り消された後のもの。)の取消しを請求する事案である。 3 法24条1項は,納税者が国税を滞納した場合において,その者が譲渡した財産でその譲渡により担保の目的となっているものがあるときは,その者の財産につき滞納処分を執行してもなお徴収すべき国税に不足すると認められるときに限り,上記譲渡担保財産から納税者の国税を徴収することができることとしている。他方,同条2項は,税務署長が同条1項により徴収しようとするときは,譲渡担保権者に対し,徴収しようとする金額等を記載した書面により告知しなければならないこととしており,同条3項は,告知書を発した日から10日を経過した日までにその徴収しようとする金額が完納されていないときに,徴収職員は,譲渡担保権者を第二次納税義務者とみなして,その譲渡担保財産につき滞納処分を執行することができることとしている。このように同条2項による告知がされると,譲渡担保権者が譲渡担保権を実行して譲渡担保財産に対する滞納処分を回避しようとする事態が生じ得るため,同条5項は,「第2項の規定による告知(中略)をした後」に納税者の財産の譲渡により担保される債権が債務不履行その他弁済以外の理由により消滅した場合においても,なお譲渡担保財産として存続するものとみなして,同条3項を適用すると規定している。 上記各規定にかんがみれば,同条2項による告知は,譲渡担保財産から納税者の国税を徴収することができる場合に,譲渡担保権者にとって不意打ちとならないようにするため,あらかじめ同項所定の事項を通知しようとするものである がみれば,同条2項による告知は,譲渡担保財産から納税者の国税を徴収することができる場合に,譲渡担保権者にとって不意打ちとならないようにするため,あらかじめ同項所定の事項を通知しようとするものである。そして,同条5項にいう「第2項の規定による告知(中略)をした後」とは,同条2項の告知書が譲渡担保権者に到達した時点以後を意味するが,【要旨】同条2項の告知の発出と到達との間の時間的間隔をとらえ,告知書の発出の時点で譲渡担保権者が譲渡担保権を実行することを納税者とあらかじめ合意することは,同条2項の手続- 2 -が執られたことを契機に譲渡担保権が実行されたという関係があるときにはその財産がなお譲渡担保財産として存続するものとみなすこととする同条5項の適用を回避しようとするものであるから,この合意の効力を認めることはできない。 これを本件についてみると,本件合意は,上告人に担保のために譲渡された売掛金債権について,同条に基づく告知が発せられたときは,これを担保とした上告人の当座貸越債権は何らの手続を要せず弁済期が到来するものとし,同時に担保のため譲渡した売掛金債権は当座貸越債権の代物弁済に充てることなどを内容とするものであるから,その効力を認めることはできない。したがって,本件告知が違法であるとはいえない。 4 所論の点に関する原審の判断は,是認することができる。所論違憲の主張はその前提を欠き,所論引用の判例は事案を異にし本件に適切でない。論旨は採用することができない。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官福田博,同亀山継夫の各補足意見がある。 裁判官亀山継夫の補足意見は,次のとおりである。 私は,法廷意見に賛成するものであるが,本件の事実関係次第では,被上告人が本件合意の無効を主張することが信義則に反して 亀山継夫の各補足意見がある。 裁判官亀山継夫の補足意見は,次のとおりである。 私は,法廷意見に賛成するものであるが,本件の事実関係次第では,被上告人が本件合意の無効を主張することが信義則に反して許されないと解する余地があったと考えているので,この点を補足しておきたい。 強行規定の趣旨を没却するような私人間の合意は,脱法行為として,あるいは当該規定の解釈として無効であるとする考え方は,一般論としては是認することができるが,当該規定が租税の賦課,徴収に係るものであるときは,租税法律主義の趣旨にかんがみ,当該規定の立法の経緯及び文理,当該合意を明文をもって禁止することの容易さ,当該合意の社会的,経済的合理性,相当性の有無,程度,当該合意に関する当事者と徴税当局とのかかわり合いの状況等諸般の事情を総合的に考慮し- 3 -て,当該合意を無効とすることが一般法理によって制限される場合があるかどうかを検討すべきものと考える。 これを本件についてみると,法24条5項が本件合意のやり方を明文をもって禁止しているとはいえないこと及びこれを明文をもって禁止することに特段の困難があるとは考えられないことは明らかである。また,本件合意を含む本件一括支払システムは,手形による決済システムの難点を解消するために開発されたものであって,単に徴収回避のみを目的としたものではなく,それ自体相応の経済的合理性及び相当性を有するものであることも,明らかである。なお,この観点からは,手形は,法24条の適用除外となっていること(法附則5条4項)も考慮されるべきであろう。そうすると,本件においては,本件合意をもって明白な脱法行為であると即断するのは一面的にすぎるといわなければならない。 加えて,上告人は,一括支払システムの開発に当たり,当時の監督官庁である大蔵省銀行局にそ ,本件においては,本件合意をもって明白な脱法行為であると即断するのは一面的にすぎるといわなければならない。 加えて,上告人は,一括支払システムの開発に当たり,当時の監督官庁である大蔵省銀行局にその内容を説明し,実施について了承を得ていたというのである。そうであるとすれば,同システムに本件代物弁済条項(以下「本件条項」という。)が導入される際にも,当然,実施時におけるのと同様の事前の説明と了承があったと考えられるし,その説明が同局を介して国税庁にも伝達されていたことは想像するに難くない(大蔵省銀行局と国税庁とが権限の分掌を異にするなどといった理由でこれを否定することは,到底国民の納得を得られるものではない。)。そうすると,本件は,人目をはばかって脱法行為が行われたような事案ではなく,監督官庁を通じて税務官庁に対し,その可否について正面から意見が求められていたとみることすらできる事案なのである。しかるに,本件告知に至るまでの数年間,同銀行局や国税庁が上告人をはじめとする銀行に対して本件条項を是正させるための措置を執った形跡は全くうかがわれない。かえって,記録によれば,同銀行局銀行課長・中小金融課長が本件条項が導入された後の平成4年4月に発した事務連絡は,一括- 4 -支払システム実施上の留意点を挙げながら,本件条項の法的問題点に特に言及していない。また,国税庁は,本件告知に至るまでの数年間,本件条項を締結していた譲渡担保権者に対し法24条2項に基づく告知を行っていない。このような経過の下に,本件システムに本件条項が導入され,数年間が経過していたとすれば,国税庁が上告人をはじめとする銀行等に対して信頼の対象となる公的見解を表示した(最高裁昭和60年(行ツ)第125号同62年10月30日第三小法廷判決裁判集民事152号93頁参照)と同視す とすれば,国税庁が上告人をはじめとする銀行等に対して信頼の対象となる公的見解を表示した(最高裁昭和60年(行ツ)第125号同62年10月30日第三小法廷判決裁判集民事152号93頁参照)と同視することができるような状況にあったとみる余地がないわけではない。 以上のような状況をすべて肯定することができるのであれば,租税法律主義の趣旨にかんがみ,本件合意を直ちに強行規定に反して無効であるとすることはできず,かえって,本件告知は信義則に反し違法であるというべきこととなろう。しかしながら,本件全記録に徴するも,本件条項の導入にあたって銀行側から監督官庁に対して具体的にどのような説明がなされたのかについては,主張も立証もなされておらず,また,本件条項が導入されてから本件告知までの間,同条2項に基づく告知をすることが可能な事例が実際に生じていたこと,さらには,そのような事例が生じていたのに税務官庁があえて手をこまねいていたということを確認させるに足りる資料もない。また,上告人が,本件訴訟において信義則違反を正面から主張していないことも考慮せざるを得ない。そうすると,本件においては,本件合意をもって明白な脱法行為であると即断するのは一面的にすぎると考えられるものの,国税庁のした本件告知が信義則に違反しているとまで認めるには足りないといわざるを得ない。 裁判官福田博は,裁判官亀山継夫の補足意見に同調する。 (裁判長裁判官梶谷玄裁判官福田博裁判官北川弘治裁判官亀山継夫裁判官滝井繁男)- 5 -

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