平成17年9月27日判決言渡平成12年(行ウ)第89号療養補償給付等不支給処分取消請求事件(以下「甲事件」という。)平成15年(行ウ)第78号休業補償給付不支給処分取消請求事件(以下「乙事件」という。)判決 主文 1 被告が平成11年3月31日付けで原告に対してした労働者災害補償保険法による療養補償給付及び休業補償給付を支給しない旨の処分を取り消す。 2 被告が平成13年3月7日付けで原告に対してした労働者災害補償保険法による休業補償給付を支給しない旨の処分を取り消す。 3 訴訟費用は,甲乙事件を通じて被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 甲事件主文1項と同旨 2 乙事件主文2項と同旨第2 事案の概要本件は,航空会社の客室乗務員として勤務していた原告が,平成8年5月29日朝に,乗務のために滞在していた香港のホテルの客室内において,脳動脈瘤破裂に伴う出血に起因するくも膜下出血(以下「本件疾病」という。)を発症(以下「本件発症」という。)し療養及び休業したことにつき,被告に対し,労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)に基づき2回にわたり保険給付の請求をしたところ,被告が,本件疾病は労働基準法施行規則35条別表第1の2第9号の「その他業務に起因することの明らかな疾病」には該当せず,業務上の疾病に当たらないとして,前記各請求についていずれも不支給決定をしたため,前記各決定の取消しを求めた事案である。 1 前提事実(1) 原告の経歴原告は,昭和41年12月1日にA株式会社に入社し,昭和42年4月1日からスチュワーデスとして乗務を開始し,昭和46年4月1日にアシスタントパーサーに,昭和48年4月1月にパーサーに,昭和63年4月にチーフパーサー(現キャビン・スーパーバイザー。以下「チーフパーサー」という。 ワーデスとして乗務を開始し,昭和46年4月1日にアシスタントパーサーに,昭和48年4月1月にパーサーに,昭和63年4月にチーフパーサー(現キャビン・スーパーバイザー。以下「チーフパーサー」という。)に昇格し,本件発症前日である平成8年5月28日まで同職として主に国際線に乗務してきた。 原告は,本件発症当時,A株式会社の客室乗員部客室乗員室グループに所属し,同グループ所属の客室乗務員のグループ長を務めていた。 原告は,A株式会社から,平成9年8月4日付けで,本件疾病を理由として休職を発令され,平成12年8月3日の経過をもって,A株式会社から,休職期間の満了による退職の扱いを受けている。 なお,客室乗務員とは,A株式会社が任命したチーフパーサー,パーサー,アシスタントパーサー,スチュワード,スチュワーデス及び訓練生(本件発症当時。 平成8年10月1日付けでチーフパーサーはキャビン・スーパーバイザーに,パーサー及びアシスタントパーサーとしての乗務経験が2年以上の者はキャビン・コーディネーターに,アシスタントパーサーとしての乗務経験が2年未満の者及びスチュワーデスはフライト・アテンダントの各新職位に読み替えがなされている。)をいう。 (2) 本件発症前1年間の原告の勤務状況及び本件疾病の発症ア原告は,平成7年6月1日から本件発症の前日である平成8年5月28日まで,別紙勤務実態一覧表(以下「一覧表」という。)のとおり勤務していた。原告の同期間におけるデッドヘッド(旅客としての移動)を含まない総乗務時間は870時間31分である。 イ原告は,平成8年5月26日から,日本・香港間を2往復する4日間連続の国際線(香港シャトル便)に乗務していたが,同月29日の乗務の出頭時刻である10時15分(日本時間。以下,時刻は日本時間(24時間表示)で表す。)に 月26日から,日本・香港間を2往復する4日間連続の国際線(香港シャトル便)に乗務していたが,同月29日の乗務の出頭時刻である10時15分(日本時間。以下,時刻は日本時間(24時間表示)で表す。)になっても集合場所である滞在先の香港のホテルロビーに出頭しなかった。その後,同日11時15分ころ,同僚が原告のホテルの部屋に様子を見に行ったところ,原告は,入口ドアを開けたものの,着衣は下着のみで,間延びをした返事をし,立ったまま寝入りそうな状態であったため,同僚は,原告をベッドに寝かせた。部屋の中は真っ暗で,薬物らしきものは見あたらず,ベッドのシーツに2箇所乾いた嘔吐の痕があった。 原告は,同日12時ころ,ホテルの医師の診断を受け,脳出血又は薬物中毒の可能性があるとして,同日13時ころ,救急車で香港市内にあるB病院に運び込まれた。そして,同日22時30分,前記病院からA株式会社に対し,原告が第3度のくも膜下出血である旨の診断が伝えられた。 原告は,同月30日,前記病院において,手術を受けた。 (3) 本件各処分等ア原告は,平成10年5月28日,被告に対し,労災保険法による平成8年5月29日から平成10年3月31日までの療養補償給付及び平成8年5月29日から平成10年5月22日までの休業補償給付の支給請求をしたが,被告は,本件疾病は労働基準法施行規則35条別表第1の2に定める業務に起因することの明らかな疾病とは認められないとして,平成11年3月31日付けでこれらをいずれも支給しない旨の処分(以下「本件処分1」という。)をした。 イ原告は,本件処分1を不服として,同年4月28日,千葉労働者災害補償保険審査官に対し,審査請求をしたが,同審査官は,平成12年3月27日付けで,前記審査請求を棄却したため,更に,原告は,同年4月27日,労働保険審 1を不服として,同年4月28日,千葉労働者災害補償保険審査官に対し,審査請求をしたが,同審査官は,平成12年3月27日付けで,前記審査請求を棄却したため,更に,原告は,同年4月27日,労働保険審査会に対し,再審査請求をした(以下「本件再審査請求1」という。)。 ウ原告は,同年12月1日,甲事件の訴えを提起した。 エ原告は,同年11月13日,被告に対し,労災保険法による平成10年5月23日から平成12年10月31日までの休業補償給付の支給請求をしたが,被告は,本件疾病は労働基準法施行規則35条別表第1の2に定める業務に起因することの明らかな疾病とは認められないとして,平成13年3月7日付けでこれを支給しない旨の処分(以下,「本件処分2」といい,本件処分1と併せて「本件各処分」という。)をした。 オ原告は,本件処分2を不服として,千葉労働者災害補償保険審査官に対し,審査請求をしたが,同審査官は,同年7月3日付けで,前記審査請求を棄却したため,更に,原告は,労働保険審査会に対し,再審査請求をした(以下「本件再審査請求2」という。)。 カ同審査会は,本件再審査請求1及び本件再審査請求2を併合審理し,平成15年9月10日付けで,前記各再審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をし,同裁決書は,そのころ,原告に送達された。 キ原告は,同年12月3日,乙事件の訴えを提起した。 (4) 関連法規等業務上の事由により疾病にかかった労働者の疾病が労災保険法7条1項1号による保険給付の対象となるといえるためには,前記疾病が労働基準法による災害補償の対象となるものであることを要し,同法による災害補償の対象となる疾病は,同法75条1項所定の業務上の疾病に該当すること,具体的には同条2項,労働基準法施行規則35条別表第1の2の各号のいずれかに該当することを要す あることを要し,同法による災害補償の対象となる疾病は,同法75条1項所定の業務上の疾病に該当すること,具体的には同条2項,労働基準法施行規則35条別表第1の2の各号のいずれかに該当することを要するというべきである。そして,本件においては,原告主張に係る本件疾病は前記別表第1の2の第1号ないし第8号のいずれにも該当しないから,本件疾病が,労災保険法による療養補償給付,休業補償給付等の保険給付の対象となるといえるためには,前記別表第1の2第9号にいう「その他業務に起因することが明らかな疾病」に該当する(業務起因性がある)ことを要するというべきである。 2 争点及びこれに関する当事者の主張本件疾病は,原告の業務に起因するものといえるか。 (原告の主張)(1) 業務起因性について業務起因性とは,業務と疾病との間に合理的関連性があることをいい,業務起因性の判断にあたっては,業務が相対的有力原因であることまでは不要であり,業務により,より増悪させて発症したか否かで判断すべきである。 (2) 客室乗務員の業務の過重性ア客室乗務員の労働環境の特殊性(ア) 時差国際線客室乗務員は長距離を数時間から十数時間で高速移動することから,出発地と目的地で時間差が発生し,出発地と昼夜が短縮したり逆転したりするため,生体リズムが乱れ,その結果,疲労が蓄積する。特に長大路線勤務後の疲労は極めて高い。長大路線勤務による時差を原因とする疲労は所定休日内では完全には回復・消失しないため,休日後乗務につく者は前回の乗務による疲労を残したまま乗務することになる。なお,時差は,経験を積むことで慣れるというものではなく,乗務経験年数が長くなったとしても時差に伴う睡眠の不良が軽減することはない。 (イ) 低気圧,低酸素,低湿度,騒音客室内圧の低下により客室乗務員の動 は,経験を積むことで慣れるというものではなく,乗務経験年数が長くなったとしても時差に伴う睡眠の不良が軽減することはない。 (イ) 低気圧,低酸素,低湿度,騒音客室内圧の低下により客室乗務員の動脈血中酸素飽和度は最大で3パーセントないし4パーセント低下するところ,動脈血中酸素飽和度が低下した状態で長時間乗務した場合には,客室乗務員の肉体的疲労度は増すことになる。 また,機内では湿度が低下し,20パーセント以下になることもあるところ,低湿度内で過ごすと気道粘膜の活動が低下し,気道感染を受けやすくなる。 さらに,客室内の騒音レベルは,水平飛行時でも71デシベルないし72デシベルと高レベルで推移する。高度3万5000フィート及び速度0.84マッハでの代表的な巡航速度では,比較的前方の通路側座席,頭部の高さで最大87デシベル,比較的後方の通路側座席,頭部の高さで最大95デシベル,機内2階席通路側,頭部の高さで最大87デシベルと相当な騒音に曝される。そして,騒音によって会話が妨害されるため,客室乗務員は,乗客との対応の際に身体を曲げ中腰姿勢で顔を近付けなければならない。このように,騒音は,客室乗務員の自律神経系に影響を与え,身体的負担,ひいては疲労につながっている。 (ウ) その他の作業環境機内の床面は水平飛行時でも2度ないし3度傾いている。チーフパーサーは,ファーストクラスにおいては,ワゴンによるサービスを行わなければならないが,ワゴンはカートと対比して不安定であり,狭いファーストクラスの客室内では操作しづらい。しかも,ファーストクラスにおいては,サービスの回数が多く,傾斜床面においてワゴンを何度も操作しなければならない。ファーストクラスのない便においてはビジネスクラスを担当するが,その場合カートあるいはワゴンを押す回数は下位職と いては,サービスの回数が多く,傾斜床面においてワゴンを何度も操作しなければならない。ファーストクラスのない便においてはビジネスクラスを担当するが,その場合カートあるいはワゴンを押す回数は下位職と変わらない。そして,国内線においては下位職と同様にカートを押して,機内サービスを行う。客室乗務員がカートで行うサービスは機内床面の傾斜のために肉体的負担が大きい。 また,機内は常に振動し,度々乱気流に遭遇し,客室乗務員は,このような床面の揺れ,不安定さに対処するために姿勢保持筋を使うことになる。 客室乗務員の作業場所である調理場は狭く,引き戸の位置は高く,客室の通路は狭く,座席前後の間隔も狭いことから,客室乗務員は立位や中腰姿勢での業務遂行を余儀なくされる。このように,機内における作業は肉体的負担が大きく,疲労が大きい。 さらに,客室乗務員は高速機で温暖地から寒冷地,湿地から乾燥地へと短時日で移動することから,短時間の間における環境の変化に常に適応しようとする身体的適応を迫られ,肉体的負担となる。 イ労働態様の特殊性(ア) 不規則な勤務A株式会社では1か月単位の変形労働時間制がとられており,勤務開始・終了時刻も1日の労働時間も区々であり,スタンドバイによるスケジュール変更も頻繁にあった。スケジュールの変更については,必ずしもその4日から7日前に通告されていたわけではなく,直前に通告されたと考えられるケースも散見される。 客室乗務員は,時差・早朝深夜・長時間の不規則勤務により,疲労・過労の症状と病気から来る症状との判別が困難なまま勤務してしまっている。 就業規則に定める乗務時間,勤務時間,休日等の基準は,客室乗務員の疲労回復を考えて定められたものではないので,就業規則の基準を満たしたスケジュールに従っているからといって,客室乗務員の業 ている。 就業規則に定める乗務時間,勤務時間,休日等の基準は,客室乗務員の疲労回復を考えて定められたものではないので,就業規則の基準を満たしたスケジュールに従っているからといって,客室乗務員の業務負荷が過重なものとはならず,業務による疲労が認められない,ということにはならない。 (イ) 生体リズムに反する出発時刻客室乗務員は,徹夜乗務の後に早朝からの乗務を指示されるなど概日リズムに反する勤務を余儀なくされている。原告の平成7年12月から平成8年5月までの勤務スケジュールで見た場合,成田・羽田への出頭準備の開始時刻が6時以前となると考えられるケースは14回あり,そのうち,それに先行して徹夜便に乗務しているケースが6回ある。 (ウ) 長時間の勤務長時間飛行を伴う長大路線には,これに伴う自宅から空港への通勤時間,搭乗までの準備時間,機内での準備時間,到着後の次の出発に備えての客室の準備時間も含めれば,1日の拘束時間が20時間を超えるケースもある。 長大路線に乗務した後は,所定休日内には疲労が完全には回復せず,慢性的な疲労状態にある者がかなり存在している。 (エ) 休養,基地外での睡眠,食事,休憩基地(乗務員の所属場所。成田等がある。)外滞在中の睡眠は良好でなく,疲労回復を妨げている。特に東回便長大路線では不良睡眠が多く,復路時の疲労感が強い。原告のスケジュールは就業規則に反しないよう策定されてはいるが,具体的路線ごとに負荷や疲労の蓄積を考慮してのスケジュール策定とはなっていない。 客室乗務員の食事・休憩時間は定められておらず,食事は概ね10分ないし20分の間に,調理室内あるいは清掃中の客席で取っている。休憩は,短距離便ではなく,長距離便でも不確定であり,特にチーフパーサー職では全く休憩が取れない頻度が最も高い。 機内の設備 ね10分ないし20分の間に,調理室内あるいは清掃中の客席で取っている。休憩は,短距離便ではなく,長距離便でも不確定であり,特にチーフパーサー職では全く休憩が取れない頻度が最も高い。 機内の設備についても,臥・小休憩に使用できる休憩室はなく,客室乗務員専用のトイレもないため,常に乗客から見られているという意識が働き,精神的負担が増すことになる。クルーコンパートメントの実態は,客況がよいときは確保すべき専用座席が旅客に販売されていることもあり,決められた収納部に収納しきれない機内持ち込み手荷物の収納場所として使用せざるを得なかったり,また,乗客から返却されたり,余分に搭載されている備品の置き場所になったりで,いつでも休憩場所として使用できるスペースが確保できているわけではない。 ウ作業内容の特殊性(ア) 保安業務客室乗務員のもっとも重要な任務は旅客の安全を確保する任務であり,搭乗開始とともに五官を働かせて異常がないか注意を払い,緊急事態への対応を絶えず準備している。事故に至らなくても,客室乗務員は飛行中のタービュランス(大気の乱れによる機体の振動,乱高下)や急病人の発生への対応,機内秩序維持等を日常的に行っている。こうした事態に備える精神的負担は大変大きい。 (イ) 接客業務国内線及び短距離国際線の場合には,短い水平飛行時間内に規定のサービスを終了しなければならず,気象条件によっては更にサービスに割ける時間が短くなる。また,旅客層によりサービス内容が過重され,食事も満足に取れず,サービス内容は乗務員の体力を無視して策定されている。チーフパーサーは特に業務が過多であり休憩時間がとれないことが多い。このように,客室乗務員の負担は大きく,特に国内線では乗務回数が増えるため,その影響が多い。 長距離国際線の場合には,旅客が多 。チーフパーサーは特に業務が過多であり休憩時間がとれないことが多い。このように,客室乗務員の負担は大きく,特に国内線では乗務回数が増えるため,その影響が多い。 長距離国際線の場合には,旅客が多様なことから多様なサービスが求められるが,サービス内容は乗務員の体力を無視して策定されている。また,長時間機内で過ごすことによるストレスから多発する乗客のトラブルに対する配慮が必要となり,客室乗務員は長時間の乗務中,常に緊張状態に置かれる。実際にトラブルが発生しない場合であっても,乗務時間中にトラブルが発生する可能性は常に存在する。チーフパーサーは客室の最終責任者であるから,トラブルに対する配慮によるストレスは一層大きく,いったんトラブルが発生した際の対処を意識せざるを得ず,常に緊張を強いられている。 (ウ) チーフパーサーの業務本件発症当時,チーフパーサーが乗務中に体調を崩してもこれに代わる代替要員はなく, チーフパーサーが外地で体調を崩した場合には直ちに交代できるチーフパーサーがいないため,便が欠航したり,出発が遅延することもあり得ることから,チーフパーサーは一旦決定したスケジュールを崩すことは難しいと感じ,健康面で不調を来せないという精神的負担を感じている。 チーフパーサーは,客室内保安任務の最終責任者として緊急事態への対応を意識して,最も大きいストレスにさらされている。近時の機内における迷惑行為の増加・凶悪化により女性チーフパーサーの不安は大きく,緊張・不安とともに乗務している。 ファーストクラスの接客の際,チーフパーサーは,乗客一人一人に対するサービスの内容に高い品質が求められ,乗客からリクエストがくる前にその要望を察知してサービスを行うなど細心の注意の継続が求められている。 そして,ファーストクラスのない便においては,ビジ 一人に対するサービスの内容に高い品質が求められ,乗客からリクエストがくる前にその要望を察知してサービスを行うなど細心の注意の継続が求められている。 そして,ファーストクラスのない便においては,ビジネスクラス,エコノミークラスのサービスを配下の客室乗務員と共同で行うことが求められているため,業務の負担は大きい。 チーフパーサーは,サービス業務の最終責任者として,自身の担当クラスだけでなく,手が空けば他のクラスのサービス業務の援助に入ることが求められ,乗客の多いリクエストにも応えながら,時間内にサービスを終了する義務,アロケーションチャート(機内任務分担表又は乗務分担表)の作成,ミールサービスの調整,グループ外の乗務員,外国人乗務員も含めて乗務員間の人間関係の調整,社内管理職としてのグループ管理等,精神的ストレスにさらされている。 新たにグループを持つことになったチーフパーサーは,グループ員の把握に努めなければならず,また,チーフパーサーは,直属の上司のマネージャーとグループ運営に対する意思疎通のために緊密に連絡を取り合わなければならず,グループの販売ノルマの達成を強いられるほか,グループ員の人事考課と昇格適正考課を実施しなければならない。 チーフパーサーは,業務上業務外を問わずグループ員の管理・指導をしなければならず,帰着するまで同乗クルーの管理に責任を負う。 このように,チーフパーサー,特に原告の精神的な負担は極めて大きいものであった。 (エ) 組合問題による精神的負担原告は,A株式会社客室乗務員組合の組合員であり,A株式会社から前記組合を脱退するように選択を迫られ,強い精神的緊張とストレスを受けていた。また,チーフパーサーは,グループ員の昇格適性考課を行う際には,組合員を差別したと批判されないように気を使わなければならない 記組合を脱退するように選択を迫られ,強い精神的緊張とストレスを受けていた。また,チーフパーサーは,グループ員の昇格適性考課を行う際には,組合員を差別したと批判されないように気を使わなければならない。 エ乗務パターンに固有の業務による肉体的・精神的負担(ア) 国内線連続乗務国内線3区間・4区間連続乗務は,離着陸に伴う精神的緊張を1日に3回ないし4回経験することによる精神的疲労が大きい。労働時間が10時間以上となることが多く,早朝出社あるいは深夜帰宅の頻度が高い。離着陸時以外は立位や中腰の姿勢,重量物の取扱いの作業を強いられる業務が連続するため,最後の区間には相当の肉体的疲労が生じる。 原告の場合,平成7年6月から平成8年5月まで,国内線3区間乗務日が3日連続する回数は2回,複数区間乗務日が3日連続する回数(ただし,3区間乗務日が3日連続する場合を除く。)は10回,3区間乗務日あるいは4区間乗務日が2日間連続する回数は7回となっている。このように,肉体的・精神的疲労の大きい国内線複数区間乗務日が連続する場合には,各日の労働時間は10時間を超えることが多く,その疲労が蓄積し,疲労は以後容易に回復しない。 (イ) 南米路線(成田・ロサンゼルス,ロサンゼルス・サンパウロ,サンパウロ・ロサンゼルス,ロサンゼルス・成田便)いずれの便も乗務時間が9時間を超える長大路線であり,基地を9日間も離れるだけでなく,成田・ロサンゼルス間の時差は17時間,ロサンゼルス・サンパウロ間の時差は6時間となり,ロストナイトが生じる。そのため,滞在先において睡眠の質が悪化し,疲労が回復しない。また,緊急時の対応,乗客とのコミュニケーションの困難さ,病人発生の確率の高い便であることから精神的緊張を余儀なくされる。帰着後においても,睡眠中に何度も目覚めて眠りが浅く 化し,疲労が回復しない。また,緊急時の対応,乗客とのコミュニケーションの困難さ,病人発生の確率の高い便であることから精神的緊張を余儀なくされる。帰着後においても,睡眠中に何度も目覚めて眠りが浅くなる状態が続き,熟眠感が得られず,与えられた休日では疲労が回復しない。 (ウ) ケアンズ・ブリズベン便2日間連続しての徹夜勤務を余儀なくされ,2日目の徹夜明けにケアンズ・ブリズベン往復便に乗務しなければならず,更に,ケアンズ・ブリズベン往復便乗務後,休日を挟まずにケアンズ・成田便に乗務しなければならないため,所定休日では疲労が回復しない。 (エ) 香港日帰り便出頭時刻が早朝であるため深夜には起床して準備を始めなければならず,業務終了は21時過ぎであるため帰宅は深夜となり,また,香港で休養する時間は全く保障されておらず,往路・復路とも機内販売や機内食・飲物サービスを一通りこなさなければならず,休憩の暇もないことから,業務による疲労が蓄積する。 (オ) 香港シャトル便短い乗務時間中にサービスを終えなければならず,労働密度が高く,また,毎日乗務する緊張感とホテルでの休養時間の短さから十分な睡眠が取れず,業務による疲労が蓄積する。 (カ) ニューヨーク便乗務時間が長い長大路線であり,乗客のサービスの要求水準が高く,平成7年当時はビッグアップル便と呼ばれ,他の路線とは違うサービスを実施していたが,路線に熟知していないと適切なサービスができず,精神的に大変気を遣わなければならない。客室乗務員は,どれだけ経験を積んでも,ニューヨーク便についてはその都度大きな精神的負担を感じている。出頭時刻が10時15分と早いため,自宅において5時過ぎには準備を始めなければならず,前日の睡眠時間は不足し,更に休養時間も昼間であるために十分に休養がとれない。 大きな精神的負担を感じている。出頭時刻が10時15分と早いため,自宅において5時過ぎには準備を始めなければならず,前日の睡眠時間は不足し,更に休養時間も昼間であるために十分に休養がとれない。 また,日本とニューヨークとでは昼夜が逆転しており,ニューヨークでの滞在中には概日リズムを現地時間に同調させることは困難であり,乗務のストレスも加わり睡眠の質・量とも悪化する。復路においては,2時30分出発であるため,事実上徹夜勤務を余儀なくされるが,その間,2回のホットミール,その間にリフレッシュメントのサービスをしなければならない。このような事実による精神的・肉体的疲労は著しい。帰着後においても,睡眠中に何度も目が覚めて眠りが浅くなる状態が続き,熟眠感が得られず,その結果,4日の休日では疲労が回復しない。 (キ) マニラ日帰り便マナーが悪く,ささいなことで客室乗務員にクレームを付ける乗客が多い。また,満席に近いことが多く,業務量も多い。さらに,出頭時刻が早い一方,基地への帰着時刻が遅く,拘束時間が長時間となる。したがって,精神的・肉体的負担が大きい。 (ク) 上海日帰り便短い乗務時間中に濃い内容のサービスを2回繰り返さなければならない。また,出頭時刻が早い一方,基地への帰着時刻が遅く,拘束時間が長時間となる。したがって,精神的・肉体的負担が大きい。 (ケ) サンフランシスコ便乗務時間が往復とも9時間を超え,時差も大きい便であり,帰着後においても,睡眠中に何度も目が覚めて眠りが浅くなる状態が続き,熟眠感が得られないことが研究で明らかとなっている。乗務後に与えられた休日では肉体的・精神的疲労が回復しない。 (コ) ジャカルタ・デンパサール往復便2日間にまたがって深夜時間に乗務を強いられ,ジャカルタ帰着後の睡眠も質が悪くなる。ジャカル る。乗務後に与えられた休日では肉体的・精神的疲労が回復しない。 (コ) ジャカルタ・デンパサール往復便2日間にまたがって深夜時間に乗務を強いられ,ジャカルタ帰着後の睡眠も質が悪くなる。ジャカルタ,デンパサールは1年中高温多湿であり,特に日本が寒い時期においては身体に直接及ぼされるストレスとなり体調の維持が難しい。ジャカルタ・成田便は,出頭時刻が深夜であり,徹夜勤務を強いられ,成田帰着後の睡眠の質が悪くなる。以上により,肉体的・精神的疲労は蓄積する。 (サ) ホノルル便往路は完全に徹夜での乗務となり,また,時差が19時間もあり,昼夜が逆転することから,ホノルルでの睡眠の質が悪化し,ホノルルにおいて充分な睡眠がとれないため,復路での乗務の際,睡魔に襲われる。東行き便による時差は特に生体リズムを狂わせるものであるから,帰着後においても,睡眠中に何度も目が覚めて眠りが浅くなる状態が続き,熟眠感が得られない。与えられた休日では疲労が回復しない。 (シ) 国際線日帰り便,国際線3日連続乗務平成5年に勤務協定が破棄されるまでは,国際線日帰り便の後,1日の休日が保障されていたが,現在の就業規則上は国際線日帰り便を乗務しても休日が保障されておらず,肉体的・精神的疲労が回復しない。それにもかかわらず,休日を挟まず更に1泊2日の国際線に乗務するため,客室乗務員にとって過酷な勤務となる。 オ本件発症前6か月間の原告の業務の過重性・疲労の蓄積(ア) 年末年始にまたがる業務の過重性この時期は乗客も多く,老人や子どもなど航空機に不慣れな旅客の比率も高くなる。老人にはトイレの付き添い,食事の手助け等が必要となる場合もあり,子どもについては,お土産品の配布,動き回る子どもへの目配り,周辺の乗客への配慮が必要となる。そして,食事についても,ベビーミール 。老人にはトイレの付き添い,食事の手助け等が必要となる場合もあり,子どもについては,お土産品の配布,動き回る子どもへの目配り,周辺の乗客への配慮が必要となる。そして,食事についても,ベビーミール,チャイルドミールのリクエスト客か否かの確認,ミールの提供のタイミングの配慮,ミールの温めの作業等,客室乗務員は通常よりも業務量が増え,一層神経を使うことになる。 また,対処を求められるトラブルも増え,客室の最終責任者であるチーフパーサーの業務量も増える。 以上の事実から,原告の業務量は増加し,精神的疲労は大きくなる。 (イ) 平成7年12月及び平成8年2月のスケジュール変更による疲労の発生平成7年11月27日のスタンドバイがホノルル便乗務に変更になったため,翌日に予定されていたグループ員の人事考課資料の作成のためのGMDが同年12月2日に変更になったことに伴って,同日から同月6日までのスケジュールが変更になった。 原告は,同月4日に国内線3区間乗務を行っており,自宅への帰着が深夜零時ころとなった。同月6日,7日の休日のうち6日に国内線日帰り便を入れられてしまったため,同月8日から始まる過酷な南米路線の前の休日が1日になってしまった。同月22日のスタンドバイに国内線3区間乗務を指示され,翌日にも国内線3区間乗務を指示されている。同月26日のスタンドバイを突然休日に変更される一方,同月30日の休日が取り消され,同日から平成8年1月2日にかけての国内線のスケジュールをケアンズ・ブリスベン便に変更されている。同年2月1日のスタンドバイに成田・ソウル便の乗務を指示され,翌日の自宅待機もシンガポール便に乗務することとなった(国際線連続勤務)。以後,スケジュール変更が続き,オリジナルのスケジュールに戻る同月21日までにオリジナルスケジュールどおりの 乗務を指示され,翌日の自宅待機もシンガポール便に乗務することとなった(国際線連続勤務)。以後,スケジュール変更が続き,オリジナルのスケジュールに戻る同月21日までにオリジナルスケジュールどおりの休日はわずか2日に過ぎない。 こうしたスケジュールの変更により事前の休養の計画も変更を余儀なくされて,体調の調整が不十分なまま乗務することになり,疲労の回復が困難となった。スケジュール変更の予告は,本件発症当時,前日のことも多かった。 (ウ) 睡眠の質・量の悪化と疲労との関係原告は,平成8年1月及び同年5月の健康診断の際,問診票の不眠の項にマークをしていないが,客室乗務員においては,睡眠障害が常態化しており,客室乗務員である以上やむを得ないと考える者がほとんどである。しかも,健康診断において不眠を訴えても会社からは何らの配慮もないため,睡眠障害が病的なものでない限りわざわざチェックしない者が多い。したがって,原告は常時睡眠時間数が不足している状態が継続していたといえる。原告は生体の通常の生活リズムに従った睡眠を確保すべき時間帯に充分な睡眠をとれていない状態にあった。 ニューヨーク便,ホノルル便,フランクフルト便,サンフランシスコ便,ロサンゼルス・南米便では,時差の影響で,帰着後においても,睡眠中に何度も目が覚めて眠りが浅くなる状態が続き,熟眠感が得られないため,与えられた休日では疲労が回復しない。そして,渡航滞在先での翌日の勤務開始時刻が前日の深夜から翌日未明にかかるときは,乗務前の睡眠時間は短時間で,浅いものとなる。 翌日の乗務のために自宅での起床時刻が深夜から未明にかかるときは,早めに就寝して睡眠時間を確保しようとしても22時以前に就寝することは困難であり,実際に22時以前に就寝しても,眠りにつくことができず,睡眠時間は極めて 宅での起床時刻が深夜から未明にかかるときは,早めに就寝して睡眠時間を確保しようとしても22時以前に就寝することは困難であり,実際に22時以前に就寝しても,眠りにつくことができず,睡眠時間は極めて短いものとなる。しかも,このような深夜・早朝勤務線の場合には,絶対に遅刻できないとの緊張感からも充分な睡眠がとれない。 零時から8時までの自宅スタンドバイ(S1)の場合には,零時から8時までいつ呼出しの連絡電話がかかってきても対応できるように準備していなくてはならないため,充分な睡眠を確保することが不可能である。 平成7年10月1日から平成8年5月27日までの240日間で,原告の勤務日数は155日,そのうち外泊日数は91日に及ぶ。これは勤務日数の約58.7パーセントにも達する。自宅外での睡眠は自宅でのそれに比して不十分なものになるだけでなく,その都度異なった場所での睡眠を余儀なくされること,国外での精神的緊張により,原告の睡眠は原告の疲労回復にとって不十分であった。 (エ) 平成8年4月のグループ替えに伴う精神的負担グループメンバーと連携を取ってグループ運営を軌道に乗せるため,グループメンバーの把握に非常に神経を使い,また,チーフパーサーとマネージャーの間で,グループ運営に対する意思疎通のために非常に神経を使う。 平成8年4月28日,29日のGMM,GMでは,マネージャーあるいはグループメンバーとの意思疎通に非常に神経を使い,精神的に疲労する。 平成8年5月4日からの成田・フランクフルト往復便にマネージャーと同乗した際,同人から原告自身あるいは原告のグループの作業内容をチェックされ,精神的に緊張し,疲労を募らせた。 (オ) 原告の平成8年4月の労働の負担1年間の乗務時間制限900時間を1か月当たりで計算した75時間について,1か月当たり のグループの作業内容をチェックされ,精神的に緊張し,疲労を募らせた。 (オ) 原告の平成8年4月の労働の負担1年間の乗務時間制限900時間を1か月当たりで計算した75時間について,1か月当たり乗務可能日数を20日とすると,1日の乗務時間は3時間45分となる。平成8年4月の乗務日数で同月の総乗務時間を割ると5時間14分となり,これは,同年1月の5時間23分に続いて多く,4月の労働の負荷が大きかったことが分かる。 カ同僚との比較(ア) 原告及び被告が共に選定した比較対象者10名について,被告の作成した実地調査結果復命書の時間の計算により,本件発症前1年間の乗務時間を比較した場合,最も年齢の高い原告の乗務時間は,合計947.4時間で最も長く,平均値より35時間余り,最も短い者より77.6時間も長くなっている。そして,半年間で比較した場合であっても,原告が最も長く,平均値より35時間余り,最も短い者より67.8時間長くなっている。 また,本件発症前1年間の乗務時間数は,A株式会社の人員計画上のチーフパーサーの乗務時間の実績値(平成7年4月1日から平成8年3月31日まで)を大きく上回っている。 (イ) 原告は,ニューヨーク便に平成8年1月から同年3月まで3回連続して乗務しているが,チーフパーサー職で3か月連続してニューヨーク便に乗務するスケジュールは極めて稀である。 (ウ) 原告及び被告が共に選定した比較対象者10名の内,平成7年12月から平成8年5月までについて,労働時間の記録のない1名を除いた9名について対比すると,労働時間・乗務時間・拘束時間のすべてにおいて原告が最も長く,また,年間乗務時間の上限である900時間を12で割った数値である75時間を基準に見ると,5か月連続で75時間を超えているのは原告のみである。さらに,原告は,6か 間のすべてにおいて原告が最も長く,また,年間乗務時間の上限である900時間を12で割った数値である75時間を基準に見ると,5か月連続で75時間を超えているのは原告のみである。さらに,原告は,6か月間の乗務時間の合計では,前記9名の平均時間より約50時間長くなっているが,これは年間乗務時間の上限を12で割った数値である75時間の3分の2であり,他の同僚が6か月勤務する間に原告が6か月と3分の2を勤務したのと同視することができる。 (エ) 原告及び被告が共に選定した比較対象者10名の内,平成7年12月から平成8年5月までについて,労働時間の記録のない1名を除いた9名についてのデータをベースに22時から5時までの深夜時間帯にかかる乗務を行っている回数を分析すると,原告が32回で原告も含めた10人中上位3番の位置に付けている。また,深夜時間帯の乗務時間数は,原告は10人中上位4番の位置に付けている。さらに,原告の休日数・有給休暇数(本件発症の平成8年5月29日以後同月30日,31日の休日を含む。)は64日であり,原告が一番少ない。 (オ) 以上のように,原告の乗務時間は一貫して高水準にあり,他の同僚と比較して,乗務時間をまとめて減らすことによって疲労を回復することができなかったといえる。 (3) 原告の本件発症前の健康状態ア原告は,平成8年1月31日のA株式会社の健康診断の問診票において,疾病の存在を疑うべき諸種の症状のうち9項目につき時々あると記載している。 イ原告は,平成8年3月ころから疲れていた様子であり,本件発症1か月前くらいから疲れたと頻繁に口にするようになっていた。 ウ原告は,平成8年5月4日から同月7日までのフランクフルト便の乗務において,マネージャーから原告自身あるいは原告のグループの作業内容のチェックを受け,SUデュー 頻繁に口にするようになっていた。 ウ原告は,平成8年5月4日から同月7日までのフランクフルト便の乗務において,マネージャーから原告自身あるいは原告のグループの作業内容のチェックを受け,SUデューティのマネージャーのフォローも行っていたことから,精神的に緊張し,疲労を募らせていた。原告は,フランクフルト滞在中,マネージャーやグループ員との食事もキャンセルしていた。7日のフランクフルトからの帰路においては,ホテルを2時20分に出発し,業務が終了したのは16時12分であったため,睡眠リズムが大きく乱れた。 エ原告は,平成8年5月12日から関西・ケアンズ,ケアンズ・ブリスベン,ブリスベン・ケアンズ,ケアンズ・成田便に乗務したが,12日の関西・ケアンズ便は徹夜便であり,15日のケアンズ・ブリスベン往復便はケアンズを4時15分に出発する早朝便であることから,睡眠リズム,生活リズムは大きく狂ってしまった。 オ原告の平成8年5月20日の健康診断の問診票では,同年1月の健康診断の問診票と対比して,自覚症状が時々あるが9から19に,常にあるが0から3に増えており,体調不良の訴えが著しく増加しており,午後の体力測定も見学せざるを得なかった。 カ原告は,平成8年5月21日から4日間のスタンドバイに同日から1泊2日の国内線乗務を指示され,同日,翌22日と連続して契約制客室乗務員らと国内線3区間乗務を行った。 キ原告は,平成8年5月26日から同月29日までの予定で香港シャトル便に乗務し,同月28日の乗務後,滞在先ホテル内において本件疾病を発症した。 クすでに本件疾病を発症した時点において,原告の過去1年間の乗務時間は,A株式会社の乗務時間計算においても,A株式会社の就業規則に定められた1年間の乗務時間の上限である900時間を47.4時間も超えていた。 ケ 疾病を発症した時点において,原告の過去1年間の乗務時間は,A株式会社の乗務時間計算においても,A株式会社の就業規則に定められた1年間の乗務時間の上限である900時間を47.4時間も超えていた。 ケ当時チーフパーサーの有給休暇の取得は難しかったうえ,原告は,グループ替え直後で,上司から許可されなかったため,有給休暇の取得は極めて困難であった。 コ以上の経過からすれば,原告は本件発症前に,より著しい疲労状態にあったことが明らかである。A株式会社の健康診断では乗務に支障があっても,それが見逃される場合がある。 (4) 原告の本件疾病の発症と客室乗務員の業務上の要因・寄与に関する医学的知見ア脳動脈瘤壁の脆弱化に作用する血圧変化と睡眠の関連(ア) 血圧には日内変動があり,昼間の活動時には高く維持され,夜間の睡眠時には低下している。 (イ) 生体に与える血圧の負荷の評価については,昼間の覚醒時等の一時的な血圧の測定値のみをもって行うことは必ずしも適当ではなく,日内変動の態様をも含んだ血圧の推移がより重要であることが認識され,とりわけ夜間の血圧の低下の重要性に関する知見が注目されており,概日リズムと同調した規則的に良質な睡眠をとることによる夜間の十分な血圧の低下が脳,心臓,腎臓等の臓器に対する障害の軽減のために重要であることが認識されている。すなわち,良質な睡眠を確保できず,そのために夜間の十分な血圧の低下が得られない場合には,その血圧の状態が動脈瘤壁の脆弱化を進行させ,かつ,動脈瘤壁の脆弱化修復機序の不全を惹起するのである。 (ウ) 動脈瘤壁の脆弱化機序としての血管透過性亢進に由来する類線維素変性は,未破裂動脈瘤壁にも観察されており,この類線維素変性は,進行性のものでない限りは,むしろ「暫定的な補強作用」と解釈し得るものである。さらに, 弱化機序としての血管透過性亢進に由来する類線維素変性は,未破裂動脈瘤壁にも観察されており,この類線維素変性は,進行性のものでない限りは,むしろ「暫定的な補強作用」と解釈し得るものである。さらに,この類線維素変性は,ひとたび形成された後にも血圧を低下させることによって治癒するものであることが証明されている。しかも,この治癒機転には必ずしも血圧の持続的な低下を要するものではなく,一時的な血圧の低下でも有効に作用し得ることが明らかにされている。これらの事実は,動脈瘤壁の脆弱化は一方的に進行するものではなく,適切な血行力学的負荷の軽減によって進行の防止や治癒が得られることを確認するものである。この意味で,血行力学的負荷の軽減をもたらすものとしての睡眠による血圧の低下は,動脈瘤壁の脆弱化を抑制し,修復機序を機能させる上で,極めて重要な役割を果たしている。 (エ) 動脈瘤壁の構成要素は,主として内膜と膠原線維であり,動脈瘤壁の構造的強度は,主に後者,すなわち膠原線維に依存している。そして,膠原線維はある種の結晶構造を有しており,変形することなく比較的長時間の負荷に耐え得るが,限界があり,血管壁の緊張が定期的に解除されることが,この膠原線維の結合状態を再構築するために必要である。加えて,動脈瘤壁を構成する膠原線維は,未成熟であるために,血行力学的負荷に対する抵抗力が弱く,正常な動脈の10ないし20分の1でしかないことが実験的に証明されている。この事実は,動脈瘤壁は,正常な動脈壁よりもより強く血行力学的負荷を受けやすいことを意味している。したがって,これらの事実からも,血管壁に対する血行力学的負荷を軽減するためには,睡眠による血圧の低下が重要であることが確認される。 イ原告の脳動脈瘤破裂の機序(ア) 原告の脳動脈瘤は,発生後早期の破裂を免れた後 らの事実からも,血管壁に対する血行力学的負荷を軽減するためには,睡眠による血圧の低下が重要であることが確認される。 イ原告の脳動脈瘤破裂の機序(ア) 原告の脳動脈瘤は,発生後早期の破裂を免れた後に,傷害性に作用する因子が加えられて脳動脈瘤壁の脆弱化が進行することによって破裂に至ったものである。 (イ) また,原告の脳動脈瘤破裂は,原告の脳動脈瘤壁に類線維素変性が進行し,動脈瘤壁の修復機序を凌駕する血行力学的負荷が連続的に加えられたことにより発生したものである。 (ウ) 原告のウィリス動脈輪に変異が存在した事実はなく,それを推認できる証拠も全く存在しない。したがって,原告の嚢状脳動脈瘤の発生にウィリス動脈輪の変異による血行力学的負荷が関与したとの事実はない。また,中膜欠損の範囲の拡大と血管分岐部の開大は,成長に伴う血管径の増大と血管壁にかかる血行力学的負荷による血管中膜自体の老化,疲労によって加齢とともに次第に拡大していくものであり,個体に特異なものではなく普遍的なものであって,このような事由を原告の先天的(素因的)要因とすること自体が誤りである。 (エ) 若年性の嚢状脳動脈瘤の発生は例外的であり,原告の嚢状脳動脈瘤の破裂は原告が49歳であることからして,頻度は低いが若年性の嚢状脳動脈瘤の発生があることをもって,原告に先天的(素因的)要因が存在したと認めることはできない。また,若年性の嚢状脳動脈瘤の発生も,成長に伴って分岐角の開大等の血管構築上の特性が発生するものであり,それは後天的に生じるものである。なお,原告の嚢状脳動脈瘤の発生に関して遺伝的要因の関与を推認させる根拠は存在していない。 (オ) 嚢状脳動脈瘤が非高血圧者にも発生する場合があるとの事実については,成長に伴って血管分岐角が開大する等の血管構築の特性に基づき後天的に発生 遺伝的要因の関与を推認させる根拠は存在していない。 (オ) 嚢状脳動脈瘤が非高血圧者にも発生する場合があるとの事実については,成長に伴って血管分岐角が開大する等の血管構築の特性に基づき後天的に発生するのであり,また,血圧の負荷と嚢状脳動脈瘤の発生,成長との関係については,夜間睡眠時の血圧の低下の程度を含めた負荷の考察が必要であって,健康診断時等の一時的に測定された血圧が高血圧診断基準に該当するか否かのみにより判断することは不十分であり的確ではない。 (カ) 嚢状脳動脈瘤の成長の期間については,月単位で大きくなるものも存在し,このような嚢状脳動脈瘤は破裂しやすいという治験があり,脳ドッグ等で発見される未破裂動脈瘤が6か月ごとの定期的な検査で大きさや形がどんどん変化するものがあり,このような動脈瘤も破裂する確率が高いとの治験があることから,嚢状脳動脈瘤の成長には10年以上かかる,年余にわたって大きくなるとの医学上の知見は改められる必要がある。 ウ脳動脈瘤壁の脆弱化に対する原告の業務の負荷の影響(ア) 不規則な勤務形態や,深夜や早朝を含む勤務は,交替制勤務形態に類似した血圧日内変動の異常をもたらし,しかも,深夜や早朝を含む勤務が長時間連続勤務であった事実は,よりその負荷の影響を強くした。また,ステイ中の睡眠時間が不十分であり,睡眠が質,量ともに不良であったことは,原告にノン・ディッパー型の血圧日内変動を惹起し,睡眠による十分な血圧の低下,すなわち,血行力学的負荷の軽減を不十分なものとし,交感神経系の活動性の亢進による血圧の上昇をもたらした。さらに,時差を伴う勤務は,主要な血圧調整因子である概日リズムを撹乱することによって睡眠の質を損ったばかりでなく,休日における休養中も撹乱された概日リズムの中で過ごさざるを得ないことを強いて,疲労回復の ,時差を伴う勤務は,主要な血圧調整因子である概日リズムを撹乱することによって睡眠の質を損ったばかりでなく,休日における休養中も撹乱された概日リズムの中で過ごさざるを得ないことを強いて,疲労回復のための休養の質を不良なものとした。 (イ) 乗客に対する安全の配慮及びサービスの提供に伴う精神的緊張の持続は,精神的緊張が交感神経系の機能の亢進を介して心拍数の増加と小動脈の収縮を生じさせ,血圧を上昇せしめることからして,原告の血行力学的負荷を一段と増大せしめた。原告は精神的要求度の極めて高いチーフパーサーを務めており,しかも,仕事に対する裁量権が極度に制限されていたことに加えて,49歳という仕事上の緊張の影響をより強く受ける年代に属していたこと,更には,原告の乗務時間が多い状態にあったことから,原告の血圧は,その業務によって受け続けていた精神的緊張によって上昇していた。 (ウ) 本件発症前の数か月にわたって与え続けられた業務負荷は,動脈瘤壁に対して血行力学的負荷として作用し続けて血圧を上昇させ,加えて睡眠時の血圧の低下幅を減少させて,その状態が長期間にわたり繰り返されることによって,原告の脳動脈瘤壁を脆弱化させた。 (エ) 原告が平成8年5月23日から同月25日までの休日は「1日横になって寝て」過ごしていたこと,発症の1週間前には「顔色が血の気の引いた疲れた様子」であったこと,倒れる1か月位前から「疲れたと頻繁に口にするようにな」っていたこと,加えて,原告が平成8年5月20日の健康診断で「握力,筋力の低下」「頚・肩のこり,痛み」「下肢のしびれ,痛み」「背部痛」の症状を訴えており,その症状は従前から原告に存在した脊柱管狭窄症に過労が加わって発現したものであること,更には,原告が有給休暇を取得していない状態が続いていたことから,原告は,本件発 」「背部痛」の症状を訴えており,その症状は従前から原告に存在した脊柱管狭窄症に過労が加わって発現したものであること,更には,原告が有給休暇を取得していない状態が続いていたことから,原告は,本件発症直前において極度の疲労状態にあったことが確認される。そして,この極度の疲労状態をもたらした原告の過重な業務の負荷が,原告の血圧を上昇させ,また,血圧低下を妨げて,脳動脈瘤壁の脆弱化に影響を与えた。 (オ) 安静時の一時的な血圧測定では検出できない程度の血圧上昇でも睡眠による夜間の血圧の低下による血管壁の修復機能が害された場合には,それが血管壁に対して十分に傷害性に作用する。 (カ) 動脈瘤壁の構成要素である膠原線維が正常に機能するためには,定期的な血圧の低下を必要とすることに十分に着目し,その血圧低下の減少の有無と程度についての厳格な検討が必要とされる。 (キ) 脳動脈瘤の発生基礎となる血管壁の脆弱性は,高血圧や動脈硬化が存在しない場合でも,後天的,普遍的に惹起され得るものである。 (ク) 本件発症当時の年齢,職種及び業務内容が近似した同性の客室乗務員3名に対して,ニューヨーク便乗務時とホノルル便乗務時に行った携帯型自動血圧計を使用しての連続血圧測定の結果では,以下の事実が確認され,また,就業後や国外におけるステイ中の睡眠時平均血圧は,すべての例において自宅での睡眠時血圧よりも明らかに上昇している事実が確認された。 a 睡眠時の平均血圧は,自宅での血圧値がもっとも低い値を示しており,帰宅後の血圧が高い場合も第2日目には低下している。 b 外国到着後の血圧は,自宅睡眠時に比較して高く,また,ステイ中はこれよりやや低下するものの,依然として高値を示している。 c 同一人物のホノルル便乗務時とニューヨーク便乗務時の血圧を比較した結果では,ニューヨーク 圧は,自宅睡眠時に比較して高く,また,ステイ中はこれよりやや低下するものの,依然として高値を示している。 c 同一人物のホノルル便乗務時とニューヨーク便乗務時の血圧を比較した結果では,ニューヨーク便乗務時の血圧はいずれの時点も高く,業務量の負荷の差を反映している可能性が考えられる。 (ケ) 被告がその正当性を主張する脳・心臓疾患の新認定基準においては,業務の過重性を評価するための具体的負荷要因として,不規則な勤務,拘束時間の長い勤務,出張の多い業務,交替制勤務・深夜勤務,騒音,時差,精神的緊張を伴う業務が指摘されているところ,原告の客室乗務員としての業務については,それらの負荷要因のすべてが存在しており,客室乗務員の業務負荷は通常人にとって許容範囲にある負荷であるとの被告の主張は成り立ち得ない。C意見書においても,原告の労働時間数以外の業務上の負荷要因について,① (時差による変動も含め)覚醒・睡眠の生体リズムが不定であること,② 就業時間に長短があり不規則であること,③ 業務環境がエンジン音による騒音等のある航空機内であること,④ 接客業務としての精神的緊張,⑤ 同僚客室乗務員を指揮監督する立場としての精神的緊張等を考慮すべきであると考えられる,と述べられている。 (コ) 原告には,不規則な勤務,拘束時間の長い勤務,出張の多い業務,交替制勤務・深夜勤務,騒音,時差,精神的緊張を伴う業務による精神的肉体的負荷が重複して存在していたのであり,その負荷によって生じた蓄積疲労は,原告の勤務先が設けていた休養時間によって解消されることは不可能なものであった。この点,勤務態様に対する身体的馴化が,不規則な勤務,拘束時間の長い勤務,出張の多い業務,交替制勤務・深夜勤務,騒音,時差,精神的緊張を伴う業務による精神的肉体的負荷の重複による蓄積疲労を あった。この点,勤務態様に対する身体的馴化が,不規則な勤務,拘束時間の長い勤務,出張の多い業務,交替制勤務・深夜勤務,騒音,時差,精神的緊張を伴う業務による精神的肉体的負荷の重複による蓄積疲労を発生させず,その疲労の程度を弱めるということはあり得ない。 (被告の主張)(1) 業務起因性について業務起因性とは,業務と疾病との間に相当因果関係があることをいい,業務起因性の判断にあたっては,業務に内在する危険の現実化(相当因果関係)があり,当該発症につき業務危険性(過重性)が相対的に有力な原因であると認められることが必要であり,業務負荷が病変等を自然経過を超えて「著しく」増悪させる程度の負荷である場合に初めて業務の「危険性」を肯定することができるというべきである。 (2) 客室乗務員の業務の過重性ア客室乗務員の労働環境の特殊性(ア) 時差時差に関しては,A株式会社では,時差が大きい路線前後には比較的時差の少ない路線を配置するなど,スケジュール上の配慮をしている。 原告自身も,健康診断時の問診票の自覚症状として眠れないということは挙げていない。 そもそも,不規則な生活を続けている人の日内リズムはあまり頑固なものではなく,国際線の客室乗務員も,初期のうちは時差の影響に悩まされるが,経験を積むと次第に慣れてくるものである。原告は,30年近く客室乗務員を経験している。 (イ) 低気圧,低酸素,低湿度,騒音機内が低気圧,低酸素,低湿度になることは否定しないが,水分補給を制限されていないから,脱水状態になる可能性はない。また,原告に感染症の既往歴は認められない。 水平飛行中の平均的な騒音レベルはおおむね70デシベル程度であり,予防の観点から定めた日本産業衛生学会の「騒音許容基準」よりも低い。 (ウ) その他の作業環境チーフパーサー 往歴は認められない。 水平飛行中の平均的な騒音レベルはおおむね70デシベル程度であり,予防の観点から定めた日本産業衛生学会の「騒音許容基準」よりも低い。 (ウ) その他の作業環境チーフパーサーは,ビジネスクラスかファーストクラスを担当しており,カート移動業務は行わないか,行うことがあっても下位職と比べて業務が過重とはいえない。そして,カート類は軽量化等が行われ,身体的に大きな負荷が課せられるとは考えられない。 巡航中の振動や揺れは問題になるレベルではない。揺れが激しい場合にはシートベルトをして着席している。 作業空間は機能的に作られている。客室乗務員に,最も立ち働き,中腰等の姿勢が発生すると考えられるのはミールカートを使用した食事サービスの時間であるが,最大でも1時間30分程度であり,しかも,長時間継続してこの姿勢をとり続けているわけでもない。そもそも,チーフパーサーの主な仕事は,ファーストクラス又はビジネスクラスのサービス業務であり,中腰等の作業姿勢になる頻度は比較的少なく,大きな負荷があったとはいえない。 客室乗務員は,高速機で温暖地から寒冷地,湿地から乾燥地へと短時日で移動するが,客室乗務員が業務等を行うのは機内,空港,空港と宿泊場所の移動等の温度等がコントロールされた場所である。そして,客室乗務員は,各自自らに合う衣類等を持参することで対応しており,肉体的負担は問題とならない。 イ労働態様の特殊性(ア) 不規則な勤務スケジュールの変更はある程度行われているが,平成7年6月から平成8年5月までの12か月間において,原告に対して予め通知されたスケジュールがそのまま維持された割合は,全期間の平均値で78.2パーセントであり,同僚客室乗務員の平均値(77.0パーセント)を上回っている。また,勤務スケジュールの変更が通 対して予め通知されたスケジュールがそのまま維持された割合は,全期間の平均値で78.2パーセントであり,同僚客室乗務員の平均値(77.0パーセント)を上回っている。また,勤務スケジュールの変更が通知される時期は,予定勤務日の4日から7日前までに通知されることが一般的であり,原告に対しても同様の取扱いがなされていた。原告の勤務スケジュールが変更される場合には,その大多数がチーフパーサーとしての職務へ変更となっており,その他は下位の職務への変更であるから,原告が従事していた業務の不規則勤務としての負荷の程度はわずかであり,これを過重なものであると評価することはできない。 (イ) 生体リズムに反する出発時刻勤務スケジュールは,就業規則に定める乗務時間,勤務時間,休日等の基準を満たし,客室乗務員の業務負荷のバランスを考慮して作成されている。原告に,徹夜乗務の後に早朝からの乗務は認められず,また,いずれの乗務にも就業規則に定められた必要な休養時間は必ず確保されている。 (ウ) 長時間の勤務本件発症前6か月間の時間外労働時間数は,発症前1か月間は1か月当たり1時間30分,発症前2か月間は1か月当たり4時間30分,発症前3か月間は1か月当たり3時間,発症前4か月間は1か月間当たり2時間15分,発症前5か月間は1か月当たり1時間48分,発症前6か月間は1か月当たり1時間53分であり,原告の1か月当たりの時間外労働時間は,いずれも45時間を超えるどころかそれを大幅に下回っている。発症前6か月間の拘束時間も,1か月間(30日間)の総労働時間と同じか総労働時間数をわずかに上回っているにすぎず,長かったとはいえない。 (エ) 休養,基地外での睡眠,食事,休憩A株式会社では,休日の付与や,長大路線乗務の後は,時差の少ない路線を配置するようスケジュール 間数をわずかに上回っているにすぎず,長かったとはいえない。 (エ) 休養,基地外での睡眠,食事,休憩A株式会社では,休日の付与や,長大路線乗務の後は,時差の少ない路線を配置するようスケジュールの工夫をしていることから,これによって,身体的な疲労を軽減でき,身体的に障害が出ることなどないと考えられる。 ほとんどの国際線航空機では,客室とカーテンで仕切ったクルーコンパートメントと呼ぶ専用座席を確保しており,客室乗務員は,交替で休憩や食事をとっている。しかも,乗務時間が9時間を超える路線の航空機の大部分には,クルーバンクと呼ぶ寝台が備えられており,備えられていない場合でも,クルーコンパートメントと隣接する座席をブロックし,休憩場所を確保している。また,客室乗務員の乗務については,おおむね2交替で1時間ないし2時間程度の休憩が取れているのが実態である。 ウ作業内容の特殊性(ア) 保安業務イレギュラー発生時にはチーフパーサーがリーダーシップをとるのが原則であるが,実際は,イレギュラーが発生したコンパートメント担当者が第一義的に受け持ち,脱出が必要な緊急事態には,すべての客室乗務員が職位に関係なく乗客の安全を守る責務を負担している。したがって,チーフパーサー職であることによって特に強い精神的負担を受けるわけではない。 (イ) 接客業務国内線及び短距離国際線のサービス内容は,飛行時間や路線特性等を総合的に勘案し,客室乗務員にとって過大な負担にならないように設定している。また,気象条件等により作業が困難な場合は,安全を優先させ,チーフパーサーの判断でサービスを差し控えることが可能とされている。さらに,国内線,短距離国際線で食事の問題を取り上げるのは妥当性がない。 長距離国際線についても,機内での迷惑行為の件数としては,平成7年度に15 判断でサービスを差し控えることが可能とされている。さらに,国内線,短距離国際線で食事の問題を取り上げるのは妥当性がない。 長距離国際線についても,機内での迷惑行為の件数としては,平成7年度に15件,平成8年度に40件程度であり,迷惑行為に遭遇する確率としては16年に1回にすぎない。また,クレームは,本件発症前3か月間には4月に1件が発生したのみである。さらに,イレギュラー発生時には,チーフパーサーに限らず,全乗務員が協力して対処しており,クレームの事後処理は,チーフパーサーの業務ではなく,迷惑行為等による原告の精神的負担が他の乗務員に比して大きいとはいえない。 (ウ) チーフパーサーの業務チーフパーサーの乗務については,スタンドバイの者,別便予定の者,管理職の者等が代替しており,下位職の乗務員にも先任業務を代行できる乗務員を1名配置している。客室内保安任務の最終責任者としての義務があること,迷惑行為が増加していることは認めるが,平成8年以前の迷惑行為の数はわずかにすぎない。 アロケーションチャートの作成は簡単であり,ミールサービスにおいて旅客の要望に応じることは容易で,クレームの頻度は少ない。 グループ管理は,上位のマネージャーが直接グループ員を指導することもあり,精神的負担は少ない。グループの運営,管理は日常の客室乗務を通じて行う内容が大半であり,多大な時間とエネルギーを要するものではない。 グループの販売については,A株式会社が業務上の目標を定め,その達成に向け組織,社員が努力するのは当然であり,ノルマではなく,協力依頼の範疇である。 以上からすれば,精神的負担が大きいとはいえない。 (エ) 組合問題による精神的負担グループ員の人事考課,昇格適性考課については,組合所属は関係なく,神経を使う必要はない。 エ乗務パタ ある。 以上からすれば,精神的負担が大きいとはいえない。 (エ) 組合問題による精神的負担グループ員の人事考課,昇格適性考課については,組合所属は関係なく,神経を使う必要はない。 エ乗務パターンに固有の業務による肉体的・精神的負担(ア) 国内線連続乗務離着陸自体が業務であり,この対応については経験と訓練により一般日常化している。早朝出社かつ深夜帰宅となるような国内乗務割はほとんど存在しない。客室乗務員は,1区間終了の度に座ることは可能であり,離着陸時にも座っている。そして,1区間の乗務時間は1時間程度で,相当の肉体的疲労とはいえない。 本件発症前6か月の1か月平均の時間外労働時間は2時間30分程度にすぎず,毎月10日以上の休暇もあり,同僚と比較しても労働時間及び拘束時間は長くない。業務の不規則性の程度も過重なものではない。したがって,発症前6か月の業務が過重であったとはいえない。 原告において国内線4区間乗務が連続したのは年4回程度であり,また,国内線3連続乗務は1日の乗務時間は3時間程度であり負荷の高いものではない。 (イ) 南米路線(成田・ロサンゼルス,ロサンゼルス・サンパウロ,サンパウロ・ロサンゼルス,ロサンゼルス・成田便)原告が南米路線に乗務したのは,本件発症前1か年で1回,平成7年12月8日から同月16日までであるが,各滞在地での休養時間も,乗務後の休暇も就業規則を十分に満たしている。また,南米路線で病人が多く発生したという記録はない。さらに,当時南米路線には既にサンパウロ基地乗務員が乗務しており,言語障壁はまったく存在していなかった。 原告は,乗務後の健康診断(平成8年1月末)の問診票(自覚症状)の「2倦怠感・疲労感」「6 よく眠れない」にマークをしていない。 (ウ) ケアンズ・ブリズベン便平成7年1 存在していなかった。 原告は,乗務後の健康診断(平成8年1月末)の問診票(自覚症状)の「2倦怠感・疲労感」「6 よく眠れない」にマークをしていない。 (ウ) ケアンズ・ブリズベン便平成7年12月30日から平成8年1月2日までの乗務に関しては,ケアンズ・成田便はデッドヘッドでの乗務であり,機内で休むことができる状態であり,また,時差がないことから疲労を取るのに2日以上かかるものではない。 (エ) 香港日帰り便日帰り乗務の出頭準備に相当の時間を要することは考えられず,前日に準備することも可能である。適宜休憩を取ることも可能であり,過大な負荷とならぬよう,機内免税品販売品目を限定するなど路線に応じた機内サービスを設定している。休憩の暇もない程のイレギュラーの発生は稀である。 以上からすれば,業務による疲労が蓄積するとの原告の主張に根拠はない。 (オ) 香港シャトル便客室乗務員にとって過大な負荷とならぬよう,路線に応じた機内サービスを設定しており,また,長年乗務を経験する原告に毎日乗務する緊張感があることや睡眠が取れないという状況は理解し難く,以上からすれば,業務による疲労が蓄積するとの原告の主張は根拠がない。 (カ) ニューヨーク便出頭時刻は早いとはいえず,前日に準備する客室乗務員も多い。また,原告は,発症前の健康診断時の問診票(自覚症状)の「6 よく眠れない」にマークをしてない。 (キ) マニラ日帰り便トラブルが際立って多い事実や当該路線のみ満席になるという事実は存在しない。 (ク) 上海日帰り便飛行時間や路線特性に合わせた機内業務を設定しているので,他に比して業務量が多いとはいえない。したがって,精神的・肉体的負担が大きいとはいえない。 (ケ) サンフランシスコ便路線特性に合わせた機内業務を設定しているなど,他に 内業務を設定しているので,他に比して業務量が多いとはいえない。したがって,精神的・肉体的負担が大きいとはいえない。 (ケ) サンフランシスコ便路線特性に合わせた機内業務を設定しているなど,他に比して業務負荷が高いとはいえない。原告は,本件発症前,健康診断時の問診票(自覚症状)の「6 よく眠れない」にマークをしていない。 (コ) ジャカルタ・デンパサール往復便原告は,現地の気候を十分に承知していたはずである。また,原告は,本件発症前,健康診断時の問診票(自覚症状)の「6 よく眠れない」にマークをしていない。したがって,肉体的・精神的疲労は蓄積するとの原告の主張は認められない。 (サ) ホノルル便原告は,本件発症前,健康診断時の問診票(自覚症状)の「6 よく眠れない」にマークをしていない。したがって,肉体的・精神的疲労は蓄積するとの原告の主張は認められない。 (シ) 国際線日帰り便,国際線3日連続乗務間の休養時間は就業規則に則り十分に確保されており,特段負荷が高いとはいえない。 オ本件発症前6か月間の業務の過重性・疲労の蓄積(ア) 年末年始にまたがる業務の過重性原告は,チーフパーサーの職にあったのであり,年末年始の時期に,国際線のファーストクラスやビジネスクラスで高齢者や乳幼児等にどのような,あるいはどの程度の接客業務を行ったかなど記述は全くなく,また,比率についても数字は示されていない。 (イ) 平成7年12月及び平成8年2月のスケジュール変更による疲労の発生勤務スケジュールは,あらかじめ示される6か月分の勤務スケジュールであるアドバンス・スケジュールを基本として編成され,その内容は原告を含め客室乗務員に対しても周知されており,勤務スケジュールが変更される場合も,直前に変更の通知がされることは稀であり,原告にも予定勤 あるアドバンス・スケジュールを基本として編成され,その内容は原告を含め客室乗務員に対しても周知されており,勤務スケジュールが変更される場合も,直前に変更の通知がされることは稀であり,原告にも予定勤務日の4日ないし7日前には変更の通知がされている。原告の本件発症前1年間の変更の程度は,他の客室乗務員に比べてむしろ少ないうえ,勤務スケジュール変更後の業務内容は変更前の業務内容と基本的に同様の業務内容であった。以上からすれば,不規則勤務としての負荷の程度はわずかであったといえる。 (ウ) 睡眠の質・量の悪化と疲労との関係原告の主張は,原告の実際の睡眠時間を反映したものとはいえない。 健康診断時における,自覚症状にかかる問診票の記載において,原告は,「6 よく眠れない」の欄に平成7年9月,平成8年1月及び本件発症直前の平成8年5月のいずれにおいても,マークをしていない。 (エ) 平成8年4月のグループ替えに伴う精神的負担4月のメンバー入替え後,新たな環境で気を使うことなどは,通常の社会生活ではごく一般的である。また,チーフパーサーの上位にマネージャーが存在し,マネージャーが個々の状況に応じてグループ員を直接指導する場合もあることから,メンバーの入れ替えがチーフパーサーに大きな精神的負担を与えることはない。 (オ) 原告の平成8年4月の労働の負担平成8年4月の原告の労働時間は142時間17分であるが,原告が選定した比較対象者20名の中に原告の労働時間にほぼ近い130時間以上の者が4名おり,また,拘束時間は長くなく,原告が特段多いとはいえない。 原告は,原告の平均乗務時間をもって平成8年4月が他の月に比べて殊更負担が大きいと主張するが,乗務回数の観点からみれば,原告の労働態様,作業環境及び精神的緊張等の主張を考慮すれば,同月が殊更負担が 原告は,原告の平均乗務時間をもって平成8年4月が他の月に比べて殊更負担が大きいと主張するが,乗務回数の観点からみれば,原告の労働態様,作業環境及び精神的緊張等の主張を考慮すれば,同月が殊更負担が大きいとする主張は正当でない。 カ同僚との比較(ア) 原告の時差5時間を超える地域への移動頻度は同僚と比較しても少なく,乗務後の休日も規定どおり与えられていることから,時差が原告の業務に過重な負担を与えたとは認められない。そもそも,国際線の乗務員は,経験を積むと次第に時差の影響に悩まされなくなってくるものである。 (イ) 本件発症前6か月間の労働時間を計算したところ,平成8年5月は,135時間28分となるが,原告が選定した同僚と比較しても特段の差はなく,原告の労働時間が格別に長くはない。平成8年4月の原告の労働時間は142時間17分であるが,原告より長い者が1名おり,原告の労働時間にほぼ近い130時間以上の者が4名おり,拘束時間も長くなく,原告が特段長いとはいえない。平成8年3月の原告の労働時間は141時間02分であるが,原告より長い者が1名おり,原告の労働時間にほぼ近い130時間以上の者が4名おり,拘束時間も長くなく,原告が特段長いとはいえない。平成8年2月の原告の労働時間は131時間57分であるが,原告より長い者が1名おり,原告の労働時間にほぼ近い120時間以上の者が5名おり,拘束時間も長くなく,原告が特段長いとはいえない。平成8年1月の原告の労働時間は143時間21分であるが,原告より長い者が1名おり,原告の労働時間にほぼ近い130時間以上の者が1名おり,拘束時間も長くなく,原告が特段長いとはいえない。平成7年12月の原告の労働時間は119時間10分であるが,原告より長い者が12名と半数以上を占めており,原告にほぼ近い110時間以上 者が1名おり,拘束時間も長くなく,原告が特段長いとはいえない。平成7年12月の原告の労働時間は119時間10分であるが,原告より長い者が12名と半数以上を占めており,原告にほぼ近い110時間以上の者は4名おり,合わせると過半数を占める。また,拘束時間も長くなく,原告が特段長いとはいえない。 (ウ) 乗務時間も,65時間ないし70数時間程度で,同僚と比較しても長くはなく,拘束時間も同僚と比較して長くはない。 (エ) 原告が恒常的に長時間労働に従事していたとは言い難く,本件発症前6か月間の労働時間を同僚と比較しても,特段の差は認められない。 (3) 原告の本件発症前の健康状態ア原告が平成8年1月31日の健康診断の問診票で記載した9項目の自覚症状は原告の「くも膜下出血」の前駆症状,警告症状とは考えられない。 イ平成8年5月20日の健康診断の際,原告が医師に訴えた内容は疲労,口渇,頻尿であり,検査の結果,耐糖能障害で経過観察が必要とされた。この時期に,「くも膜下出血」の前駆症状,警告症状があったとは考えられない。 ウ原告は,フランクフルト便にはチーフパーサー職ではなく下位職(パーサー職)として乗務したものであり,また,マネージャーが同乗するこうした機会を初めて経験する訳でもないことから,精神的に緊張し,疲労を募らせたとは考えられない。 エ原告は,本件発症前1週間は,通常組まれているスケジュールで勤務しており,この期間に特に業務が増加したものとは認められない。原告は,以前にも平成8年5月20日の健康診断と同程度の自覚症状を訴えたことがあった。仮に症状が重ければ,保安要員としての客室乗務員は旅客機の運航に際して支障があると判断し,休暇を申請するはずのところ,原告は,この時期には休暇を申請,取得することなく乗務している。 (4) 原告の本件疾病 状が重ければ,保安要員としての客室乗務員は旅客機の運航に際して支障があると判断し,休暇を申請するはずのところ,原告は,この時期には休暇を申請,取得することなく乗務している。 (4) 原告の本件疾病の発症と客室乗務員の業務上の要因・寄与に関する医学的知見ア脳動脈瘤壁の脆弱化に作用する血圧変化と睡眠の関連夜間血圧の低下が脳等の臓器に対する障害の軽減のために重要であることが認識されているのは,高血圧患者に関してであり,原告のような正常血圧者に関する主張としては適切ではない。 イ原告の脳動脈瘤破裂の機序原告の嚢状脳動脈瘤の大きさは内径3ミリメートルではあるが,形状は楕円形又は筒状に伸びた形状を示しており,縦方向の長径は6.5ミリメートルないし7ミリメートルに達していた。原告の嚢状脳動脈瘤が発生した理由は,血管壁の局所的な脆弱性が先行して存在していたと推定され,原因としては,高血圧や動脈硬化等の後天的要因を考慮すべき身体的根拠のないことから先天的な素因によるところが大きいと考えられる。なお,原告の定期健康診断での血圧値は一貫して正常範囲内にあり,高血圧の存在を示す根拠はない。 原告の嚢状脳動脈瘤の発生時期は不詳だが,かなりの時間を経て破裂に至るまで成長したと考えられ,他に著しくその経過を促進する要因が認められないことから,素因としてあった血管壁の脆弱性に基づく自然経過の範疇内にあったものと判断される。 ウ脳動脈瘤壁の脆弱化に対する原告の業務の負荷の影響(ア) 高血圧症ではない原告について,血圧日内変動に関する記述や,ノン・ディッパー型の血圧日内変動に関する記述を引用した原告の主張は適切でない。また,原告のステイ中の睡眠時間が不十分であり,睡眠が質,量ともに不良であったとする根拠はない。 (イ) A株式会社では,疲労回復のために相当 圧日内変動に関する記述を引用した原告の主張は適切でない。また,原告のステイ中の睡眠時間が不十分であり,睡眠が質,量ともに不良であったとする根拠はない。 (イ) A株式会社では,疲労回復のために相当な休養時間を設定しており,疲労の蓄積は少なかったというべきであり,疲労回復のための休養の質を不良なものとしたとする根拠はない。 (ウ) 原告の主張では,チーフパーサーのいずれの業務が精神的要求度が高いとするか,また,裁量権が極度に制限されているのかの主張が具体的でない。 (エ) 原告の本件発症直前の業務をともにした同僚の供述では,原告に変わった様子はなかったとしているのであって,原告の業務に過重な負荷というものはなかったというべきであり,原告の血圧値が業務により上昇し,あるいは,睡眠不足等により血圧低下を妨げたなどということはできない。また,原告が平成8年5月20日の健康診断で訴えていた「握力・筋力の低下」等の症状が,従前から原告に存在した脊柱管狭窄症に過労が加わって発現したものであるとする医学的根拠は乏しい。要するに,健康診断時の自覚症状は従前と変わらず,本件発症前に従前と異なる特段の過労があったとする根拠はない。 (オ) 嚢状脳動脈瘤の破裂は,日常生活の中でしばしば生じる一過性の血圧上昇を来す動作によって生じるものであるが,客室乗務員における業務負荷の多くは通常人にとって許容範囲にある負荷であり,くも膜下出血の発生頻度においても,客室乗務員にくも膜下出血が発生しやすいということはない。客室乗務員における業務負荷の多くは,通常人にとって許容範囲内にある負荷と考えられ,特別な健康障害要因となるもの,あるいは,くも膜下出血発症の直接的要因となるものは抽出できず,航空機内における客室乗務員業務がくも膜下出血の発症要因となったとする医学的根拠を抽 にある負荷と考えられ,特別な健康障害要因となるもの,あるいは,くも膜下出血発症の直接的要因となるものは抽出できず,航空機内における客室乗務員業務がくも膜下出血の発症要因となったとする医学的根拠を抽出することはできない。原告の本件疾病の発症時期は,就寝中あるいは就寝前後の諸動作中と推認できるところ,これは,日常生活の中でしばしば生じる一過性の血圧上昇を来す動作によって脳動脈瘤の破裂が生じるとされている機序に矛盾せず,原告の客室乗務員の業務上の要因がくも膜下出血の発症に寄与した蓋然性は低い。 (カ) 原告の嚢状脳動脈瘤は,もともと血管壁の局所的な脆弱性が存在していたことによって発生したと推定され,原告の業務上の理由によって発生したものではないと判断される。原告の健康診断での血圧値は一貫して正常範囲内にあり,高血圧の存在を示す根拠はない事実からみて,業務内容のいかんにかかわらず,長期にわたって業務上の理由によって血圧が上昇し,原告の嚢状脳動脈瘤の成長が促進されたとする医学的根拠はないものと判断される。原告の嚢状脳動脈瘤の発生時期は不詳であるが,かなりの時間を経て破裂に至るまで成長したと考えられ,他に著しくその経過を促進する要因が認められないことから,原告の嚢状脳動脈瘤の成長は素因としてあった血管壁の脆弱性に基づく自然経過の範疇内にあったものと判断される。 第3 当裁判所の判断 1 客室乗務員の業務内容,作業環境等について前記第2の1の事実及び後掲の各証拠並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 客室乗務員の業務内容ア客室乗務員の業務(ア) 客室乗務員の業務としては,主に保安業務とサービス業務がある。 (イ) 客室乗務員は,保安要員として常に旅客の健康状況や行動に気を配り,機体の状況(異臭,異音)にも敏感になってい 乗務員の業務(ア) 客室乗務員の業務としては,主に保安業務とサービス業務がある。 (イ) 客室乗務員は,保安要員として常に旅客の健康状況や行動に気を配り,機体の状況(異臭,異音)にも敏感になっていることが求められ,また,機内において発生する不測の事態に対して,離陸から着陸までの間に適切な処理をすることが求められ,更に,国際線に乗務する場合には,乗客の人種,言語,習慣等が異なる中で,各乗客に応じたサービスをすることが求められている。また,客室乗務員は,服装,体裁,言動には絶えず配慮することも求められている。 (ウ) 客室乗務員は,旅客の安全を確保する任務を負っており,搭乗開始とともに五官を働かせて異常がないか注意を払い,緊急事態への対応を絶えず準備している。また,客室乗務員は,事故に至らなくても,飛行中のタービュランスや急病人の発生への対応,機内秩序維持等を日常的に行っている。こうした事態に備える精神的負担は大変大きい。 イチーフパーサー固有の業務A株式会社では,チーフパーサーには原則としてグループ長(十数名の客室乗務員で構成されるグループの責任者)としての地位を与えて,一般の客室業務に加え,以下の安全・サービスに関する業務を行わせている。 (ア) 離陸前・出頭準備段階チーフパーサーは,同乗メンバーの経験年数,職種,旅客に関する情報等から,最良と考えられるメンバー配置を検討し,アロケーションチャートを作成する。 (イ) 出発前打合せ段階旅客に関する情報を確認した上で,アロケーションチャートに基づき,サービスの流れと各人の担当する任務範囲を各客室乗務員に伝達・指導し,保安用機材の操作方法と場所の確認及び緊急事態発生時への対応の確認,緊急脱出用滑り台の着脱操作の確認,運行乗務員との打合せを行う。 (ウ) 離陸前・搭乗準備段階各 囲を各客室乗務員に伝達・指導し,保安用機材の操作方法と場所の確認及び緊急事態発生時への対応の確認,緊急脱出用滑り台の着脱操作の確認,運行乗務員との打合せを行う。 (ウ) 離陸前・搭乗準備段階各客室乗務員から,消火器,インターホン,酸素吸入器等の保安用機材の点検確認の報告を受け集約する。 (エ) 旅客搭乗から離陸までの段階乗降口使用ドアが2箇所の場合は,先に閉鎖される後方の使用ドアの閉鎖操作完了の報告と当該ドアより搭乗した旅客の数をカウントした場合の数の報告を受け,全旅客搭乗後,チーフパーサー立会い(機内側)の下で,地上職員が(機外側)乗降口使用(前方)ドアの閉鎖操作を行い,窓越しに双方が確認後,チーフパーサーにおいて,全乗降口兼非常口の緊急脱出用滑り台の装着の指示をアナウンスで客室乗務員全員に出し,その装着終了の報告を集約し,地上職員から受け取った旅客に関する情報書類をもとに,旅客数と全乗降口兼非常口の緊急脱出用滑り台の装着完了を機長に報告する。また,ゴルフクラブ,刃物等の機内持ち込み制限品はチーフパーサーの預かり品として管理し,チーフパーサーにおいて,搭乗御礼とともに,飛行予定航路,飛行予定時間,気象状況等の案内を行い,各客室乗務員から離陸準備完了の報告を受けて集約する。 (オ) 飛行中各客室乗務員がマニュアルに従った適切な客室内サービスを行っているか,客室全体に注意を払い,必要に応じてメンバーの客室乗務員に対して指揮・監督を行い,乗客からクレームがあった場合には,率先して対応し,経験の浅い客室乗務員については,必要な教育・指導を行う。また,効果的な機内販売ができるように,メンバーの客室乗務員の役割分担を明らかにし,客室全体に注意を払い,必要に応じて指揮・監督を行い,経験の浅い客室乗務員については,必要な教育・指導を行う 行う。また,効果的な機内販売ができるように,メンバーの客室乗務員の役割分担を明らかにし,客室全体に注意を払い,必要に応じて指揮・監督を行い,経験の浅い客室乗務員については,必要な教育・指導を行う。さらに,メンバーの客室乗務員に対して,機内の安全が客室乗務員によって守られていることを周知徹底させ,客室内火災,病人,火傷,怪我,タービュランス等が発生した場合には,率先して対応するとともに,メンバーの客室乗務員を指揮・監督し,不審人物に対しては,常に観察を怠らないようにする。 なお,チーフパーサーは原則としてファーストクラスを担当し,ファーストクラスのない便ではビジネスクラスを担当している。 (カ) 着陸の準備及び旅客降機の段階食事サービス実施路線では,サービス終了を確認して,その旨を機長に報告し,音響の不具合やカーペットの汚損など機内備品の不具合が発生した場合は,整備士に引き継ぐための連絡簿への記帳を集約し,それをまとめて機長に報告し,各客室乗務員から着陸準備完了の報告を受けて集約し,着陸後,緊急脱出用滑り台の装着解除操作をアナウンスし,その操作完了の報告を受け,必要書類及び機内持込み制限品等を地上職員に引き渡し,地上職員に旅客降機開始の確認をし,降機開始案内及び搭乗御礼のアナウンスを実施し,全旅客の降機終了の報告を受けて集約確認し,機長に報告する。 (キ) その他チーフパーサーは,巡航中,大きな揺れのためにサービスが実施できなかった場合には,旅客への謝罪を行うと同時に書面で報告することが義務付けられている。その他にも,旅客に関する報告,サービスに関する報告,改善提案,災害発生傷病等に関する報告を文書にまとめる必要がある場合は,関係者及びチーフパーサーが文書作成を行い,会社に提出する。 チーフパーサーは,グループ管理業務として ,サービスに関する報告,改善提案,災害発生傷病等に関する報告を文書にまとめる必要がある場合は,関係者及びチーフパーサーが文書作成を行い,会社に提出する。 チーフパーサーは,グループ管理業務として,管理職ではないが,第一次考課者として,成績考課シート,昇格適性考課票を作成,提出することを義務付けられている。 (2) 作業環境ア時差5時間以上の時差のある地域をジェット機で急激に移動した際に見られる,一過性(時に持続性)の心身の不調状態を時差ボケという。時差症状としては,睡眠覚醒障害のほか,だるさや疲労感,集中困難,胃腸障害,能率低下等の訴えも多い。 国際線乗務の客室乗務員は,長距離を数時間ないし十数時間で,ある地点から他の地点へ乗客を安全かつ快適に移動させることを業務としており,各地における時間と日本時間との間に時差が存在するため,この移動に伴い,昼夜が短縮したり,延長したりするような形態になる。特に,国際線の東西路線(例えば,成田・ニューヨーク便等)の勤務では,時差が13時間(夏時間)となる。 人間の生体機能は通常太陽日に同調して,時とともに周期的規則的に変化している(いわゆる概日リズム)が,時差により,移動した客室乗務員の1日の長さが長くなったり短くなったりするために,生活リズムと概日リズムにズレが生じることになる。東西路線を東回りで勤務する場合には,一日の時間が短くなるため,このズレは最も大きくなる。 時差と睡眠の変化については,東行きの場合(日本からアメリカ西海岸へ行った場合)には,入眠が悪く,入眠後は徐波睡眠が多く,レム睡眠は減少する傾向が見られるとともに,睡眠の周期性も乱されやすく,脈拍等の自律神経系の変化も目立つのに対し,西行きの場合(日本からヨーロッパへ行った場合)には,入眠は早く,レム睡眠潜時が短縮し,レ 眠は減少する傾向が見られるとともに,睡眠の周期性も乱されやすく,脈拍等の自律神経系の変化も目立つのに対し,西行きの場合(日本からヨーロッパへ行った場合)には,入眠は早く,レム睡眠潜時が短縮し,レム睡眠出現率も増加し,自律神経系の変動も東行きほど目立たないという特徴があり,一般に時差ボケの程度は,東行きの方が西行きに比べて強いといわれている。そして,時差の適応に要する日数は,時差1時間について1日と考えられている。また,長大路線の乗務期間中に運行乗務員の睡眠不足の蓄積が目立っているという実験結果もある。 なお,国際線の乗務員の場合,不規則な生活に慣れてしまい,時差の影響をあまり自覚しなくなる可能性もあるが,時差によって身体や精神への負担はかかっている。 イ気候の急激な変化,振動・タービュランス,床面の傾斜客室乗務員は,温暖地から寒冷地へ,湿地から乾燥地へと短日時で移動している。 飛行機は,常に振動しており,また,航行中の気象等の条件によりタービュランスが発生することがある。 航行中の飛行機については,機首上げ飛行が一般的に行われており,通常機首を約3度上げている。そのため,機内の床は前後に傾斜している。 ウ食事・休憩(ア) 客室乗務員の食事・休憩時間は定められておらず,食事は概ね10分ないし20分くらいの間に,調理室内又は清掃中の客席で取る。 (イ) 休憩は,短距離便では無く,長距離便でも不確定である。 (ウ) 機体内に臥・小休憩に使用できる休憩室はなく,客室乗務員専用のトイレもない。 (エ) 乗務時間が9時間を超える路線についてはクルーバンクという寝台が装着されており,客室乗務員は交替で1,2時間の仮眠を取ることができ,また,クルーバンクが装着されていない機材でも,クルーコンパートメントと呼ばれる客室とカーテンで仕切られた ルーバンクという寝台が装着されており,客室乗務員は交替で1,2時間の仮眠を取ることができ,また,クルーバンクが装着されていない機材でも,クルーコンパートメントと呼ばれる客室とカーテンで仕切られた専用座席で休憩をとることができることになっている。 もっとも,クルーコンパートメント用の専用座席を旅客に販売されてしまっていることもあり,また,収納場所等に利用されることもあるなど,クルーコンパートメントについては常に休憩場所として使用できるスペースが確保されているとは限らない。 また,クルーバンクが装着されていたとしても,休憩時間は確実に保障されたものではなく,休憩がとれないこともあり,特に,チーフパーサーの場合は,客室の最終責任者であることから,他の客室乗務員と比べて休憩をとりにくい状況にある。 エ騒音(ア) 客室内の騒音レベルは水平飛行時でも約71デシベルないし72デシベルで推移している。 (イ) 高度3万5000フィート及び巡航速度0.84マッハでの代表的な巡航速度では,比較的前方の通路側座席,頭部の高さで最大87デシベル,比較的後方の通路側座席,頭部の高さで最大95デシベル,機内2階席通路側,頭部の高さで最大87デシベルの騒音にさらされている。 (ウ) 乗客との応対時には,騒音により会話が聞き取りにくく,また,国際線では乗客の話し言葉が外国語であることから,不良姿勢負担や精神的ストレスが増強されやすい。 (3) 客室乗務員の労働状況ア客室乗務員の主な勤務内容(ア) 乗務のための勤務乗務(航空機に搭乗し定められた機内業務に従事すること)及びその前後に必要な業務に従事する。 (イ) スタンドバイスケジュールの不時の変更に備え,会社の指示に従い指定場所又は休養施設において命ぜられる勤務に就きうる状態を維持する。 スタンド こと)及びその前後に必要な業務に従事する。 (イ) スタンドバイスケジュールの不時の変更に備え,会社の指示に従い指定場所又は休養施設において命ぜられる勤務に就きうる状態を維持する。 スタンドバイには,自宅スタンドバイ,指定場所における出社スタンドバイ,ホテル等における出社スタンドバイがある。 自宅スタンドバイは,自宅待機時間が零時から8時までであるS1,8時から16時までであるS2,16時から零時までであるS3に分けられている。 (ウ) デッドヘッド(デューティ・デッドヘッド)会社の指示により,前途乗務のため,又は乗務終了後(私病,忌引等を含む。)機内業務に従事することなく航空機に搭乗し,命ぜられた地点に移動する。 なお,デッドヘッドは,緊急事態が発生した場合には保安業務を手伝わなければならない。 イ客室乗務員の勤務形態等(ア) 客室乗務員については1か月単位の変形労働時間制が取られており,勤務の開始・終了時刻が一定しておらず,1日の労働時間も日によって異なる。国際線客室乗務員の場合,日帰り便から離基地日数が10日間に及ぶパターンまで乗務指示を受けることがある。また,スタンドバイ中,突然の乗務が入る可能性がある。 なお,各暦月の勤務予定については,原則として前月23日までに配布するスケジュールにより各客室乗務員に指示するものとされている。 (イ) 客室乗務員の勤務は1か月を平均して1週40時間を超えない範囲で1日8時間を超えて就業させることがあるとされている。 (ウ) A株式会社における就業規則上,制限就業時間は,1暦月175時間,3暦月495時間,制限乗務時間は,1暦月85時間,1か年900時間(4月1日から翌年3月31日までを計算期間とする。デッドヘッドは含まない。)とされている。 なお,A株式会社における平成5年1 3暦月495時間,制限乗務時間は,1暦月85時間,1か年900時間(4月1日から翌年3月31日までを計算期間とする。デッドヘッドは含まない。)とされている。 なお,A株式会社における平成5年11月までの勤務協定上の制限乗務時間は,1暦月80時間,1か年840時間であった。 (エ) 休日は,国際線の場合,基地を離れた日数に応じて休日を付与することとされており,国内線の場合,国内線連続乗務は3日を限度とし,その後基地で2日及び1日の休日を交互付与することとされている。また,国内線,国際線にかかわらず,勤務割り単位期間(1暦日単位)内における休日は少なくとも10暦日を基地において付与することとされている。なお,A株式会社では,地上職の休日数も月に10日とされている。 (オ) なお,チーフパーサーの多くはアロケーションチャートの作成等のために,出頭時刻よりも早めに出頭している。出頭時刻の2時間前には出頭している者が多い。 ウスケジュール変更(ア) 勤務スケジュールは,予め示される6か月分の勤務スケジュールであるアドバンス・スケジュールを基本として編成され,その内容は客室乗務員に対しても周知されている。 (イ) 客室乗務員の勤務スケジュールは度々変更されるが,勤務スケジュールが変更される場合,その通知は予定勤務日の4日ないし7日前には行うものとされている。もっとも,実際には,前日や当日の通知も行われている。 (ウ) 度重なるスケジュール変更によって休日が特定されないために,客室乗務員は体調をコントロールすることが困難となっており,また,予定が立たない生活は客室乗務員にとってストレスになっている。 (4) 各路線における乗務の特徴ア特徴ある路線(ア) 乗務時間が9時間を超える長大路線には,成田・アムステルダム便,成田・ミラノ便,成田・パ ない生活は客室乗務員にとってストレスになっている。 (4) 各路線における乗務の特徴ア特徴ある路線(ア) 乗務時間が9時間を超える長大路線には,成田・アムステルダム便,成田・ミラノ便,成田・パリ便,成田・フランクフルト便,成田・ニューヨーク便,成田・ロサンゼルス便,成田・サンフランシスコ便,ロサンゼルス・サンパウロ便,成田・シドニー便がある。 (イ) 時差が5時間以上ある路線には,長大路線(ただし,成田・シドニー便を除く。)及びホノルル便がある。 時差については,乗務歴が長くても慣れることはなく,身体的あるいは精神的負荷を感じている客室乗務員が多い。また,時差のある乗務後の所定の休日では体内リズムを改善できずに疲労感を抱えたまま乗務を続けている客室乗務員も多い。時差による疲労の回復については,年齢が高くなるにつれて回復に時間がかかると感じている客室乗務員が多い。 (ウ) 深夜(22時から翌日5時までの間)勤務・徹夜勤務となる路線には,長大路線,ケアンズ便,ケアンズ・ブリズベン便,デンパサール・ジャカルタ便,ジャカルタ・成田便,ホノルル便,クアラルンプール便,香港便,シンガポール便がある。また,国内線でも,深夜勤務となる場合がある。 なお,夜勤者の昼間睡眠は,入眠潜時が短くなる,前睡眠時間が短縮する,深い眠りに達する時間が早くなる,レム睡眠潜時が短い,最初の睡眠内サイクル(最初のレム睡眠終了までの時間)が短くなる,中途覚醒が多い,睡眠中の自律神経系が不規則になりやすい,徐波睡眠は入眠までの断眠の長さに影響されるので一定していないといった特徴があるといわれており,このような特徴が,覚醒後の睡眠不足,疲労感,身体的違和感と関連を持つものと推定されている。 深夜勤務・徹夜勤務の便については疲労度が大きいと感じている客室乗務員も多い。 があるといわれており,このような特徴が,覚醒後の睡眠不足,疲労感,身体的違和感と関連を持つものと推定されている。 深夜勤務・徹夜勤務の便については疲労度が大きいと感じている客室乗務員も多い。 (エ) 国際線日帰り便a 日帰りの国際線としては,成田・ソウル,成田・上海,成田・サイパン,成田・グアム,成田・香港,成田・マニラ便等がある。 このうち,成田・香港,成田・マニラ便は,平成5年11月までは往復勤務が1泊勤務であったが,日帰りに変更されている。 b 国際線日帰り便については,平成5年に勤務協定が破棄されるまでは,1日の休日が保障されていた。 c 拘束時間が長く,負荷を感じる客室乗務員も多い。 (オ) 国際線連続乗務数日間にわたって国際線の乗務が連続する国際線連続乗務,すなわち,1回の連続勤務で,成田を出て,再度成田に戻ってくる間に,海外の空港を起点として,成田その他の空港へ往復する乗務としては,成田・ミラノ,ミラノ・ローマ,ローマ・ミラノ,ミラノ・成田便,成田・ロサンゼルス,ロサンゼルス・サンパウロ,サンパウロ・ロサンゼルス,ロサンゼルス・成田便(南米路線),成田・ケアンズ,ケアンズ・ブリスベン,ブリズベン・ケアンズ,ケアンズ・成田便,成田・香港,香港・関西空港,関西空港・香港,香港・成田便,成田・香港,香港・名古屋空港,名古屋空港・香港,香港・成田便,成田・ジャカルタ,ジャカルタ・デンパサール,デンパサール・ジャカルタ,ジャカルタ・成田便の一連の乗務がある。 (カ) 1日に3区間以上の国内線・近距離国際線(ソウル,プサン,北京,上海便等)乗務拘束時間が長く,緊張感の持続が必要であることから,負荷を感じる客室乗務員も多い。 (キ) 国内線連続乗務各日の労働時間は10時間を超えることが多く,その疲労が蓄積し,以後容易に回 便等)乗務拘束時間が長く,緊張感の持続が必要であることから,負荷を感じる客室乗務員も多い。 (キ) 国内線連続乗務各日の労働時間は10時間を超えることが多く,その疲労が蓄積し,以後容易に回復しない。 イ主な路線について(ア) 成田・ニューヨーク便a 成田・ニューヨーク便は,成田からニューヨークまでが約13時間,ニューヨークから成田までが約14時間とA株式会社において最も乗務時間の長い便である。 b 日本とニューヨークとでは昼夜が逆転しており,復路の出発予定時刻は2時30分となっている。 cA株式会社においては,成田・ニューヨーク便については,他の路線と異なり,勤務パターンの作成資料において,30日のインターバルを確保することを明記している。 d 平成7年当時,ニューヨーク便はビッグアップル便と呼ばれ,他の路線とは違うサービスを実施していた。 e ニューヨーク便では,2回のホットミールサービスとその間のリフレッシュメントのサービスを行っている。 f 成田・ニューヨーク便は,旅慣れたビジネスマンの乗客が多く,ニューヨークの出発時間が現地時間の朝でもあるため,途中睡眠をとる乗客が少ないことから,客室乗務員のサービス量が多く,加えて,サービスの質に対する乗客の要求度も高いため,会社から要求されているサービスの内容も濃い。 g ニューヨーク便については,乗務時間が長いことや,時差が大きいこと,接客業務に精神的負荷がかかることなどから,質・量ともに特別な負荷を感じている客室乗務員が多い。 (イ) 成田・シドニー便成田・シドニー便は時差はないものの,日本とシドニーでは季節が正反対になり,往路か復路のいずれかが徹夜勤務になる。 (ウ) 南米路線(成田・ロサンゼルス,ロサンゼルス・サンパウロ,サンパウロ・ロサンゼルス,ロサンゼルス・成田便 ものの,日本とシドニーでは季節が正反対になり,往路か復路のいずれかが徹夜勤務になる。 (ウ) 南米路線(成田・ロサンゼルス,ロサンゼルス・サンパウロ,サンパウロ・ロサンゼルス,ロサンゼルス・成田便)南米路線はいずれの路線も乗務時間が9時間を超える長大路線であり,基地を9日間離れることになる。 成田・ロサンゼルスの時差は17時間,ロサンゼルス・サンパウロ間の時差は6時間であり,合計3回のロストナイトが生じる。 南米路線については,フライト時間と離日日数が11日と長いこと,時差が大きいことなどから,特別な負荷を感じている客室乗務員も多い。 (エ) サンフランシスコ便乗務時間が往復共に9時間を超え,時差も大きい。 (オ) ケアンズ・ブリズベン便日本とケアンズとの間には時差はないが,ケアンズ便もケアンズ・ブリズベン便も徹夜勤務となり,ロストナイトが1回生じる。 成田・ケアンズ,ケアンズ・ブリズベン,ブリズベン・ケアンズ,ケアンズ・成田便は,客室乗務員の間ではトライアスロンと呼ばれていた。 (カ) ジャカルタ・デンパサール便2日間にまたがり,深夜時間に乗務を行う。このうち,ジャカルタ・成田便は,出頭時刻が深夜であり,徹夜勤務を行うことになる。 (キ) ホノルル便往路は完全に徹夜での乗務となる。また,時差が19時間あり,昼夜が逆転する。 前に国際線1泊便がつくと負荷が大きい。 一番時差の影響が厳しいところと考えている客室乗務員が多い。 (ク) 香港日帰り便出頭時刻が早朝であり,業務終了時間は21時過ぎくらいと遅い。 香港で休養する時間は全く保障されていない。 機内では休憩の暇はない。 拘束時間が長く,疲労を感じる客室乗務員もいる。 (ケ) マニラ日帰り便出頭時刻が早く,基地への帰着時間が遅く,拘束時間が他の日帰り便に比べて 全く保障されていない。 機内では休憩の暇はない。 拘束時間が長く,疲労を感じる客室乗務員もいる。 (ケ) マニラ日帰り便出頭時刻が早く,基地への帰着時間が遅く,拘束時間が他の日帰り便に比べて長い。 拘束時間が長く,疲労を感じる客室乗務員もいる。 (コ) 上海日帰り便出頭時刻が早く,基地への帰着時間が遅く,拘束時間が他の日帰り便に比べて長い。また,サービスを2回行っている。 (サ) 香港シャトル便4日間連続乗務であり,クルー・コクピットも変わり,宿泊場所も変わり,休憩時間も少なく負荷を感じる客室乗務員も多い。 2 原告の勤務状況等前記第2の1の事実及び後掲の各証拠並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 本件発症前1年間の労働状況ア総乗務時間原告の同期間におけるデッドヘッドを含まない総乗務時間は870時間31分であり,デッドヘッドを含んだ総乗務時間は929時間38分である。 イ原告のスケジュールの特徴(ア) 長大路線a 原告のスケジュールのうち,長大路線は一覧表の「長大路線」欄〇印記載のとおりである。 b 原告が長大路線に乗務した回数は,平成7年6月は2回,同年7月は2回,同年8月は1回,同年9月は3回,同年10月は1回,同年11月は1回,同年12月は4回,平成8年1月は4回,同年2月は2回,同年3月は3回,同年4月は1回,同年5月は2回となっている。 c 長大路線のうち,ニューヨーク便には,平成7年8月30日から同年9月2日まで,同年10月29日から同年11月1日まで,平成8年1月17日から同月20日まで,同年2月21日から同月24日まで,同年3月31日から同年4月3日まで,それぞれ乗務している。 平成8年1月から同年3月までは3か月連続乗務となっているが,このような乗務形態はチーフパーサー まで,同年2月21日から同月24日まで,同年3月31日から同年4月3日まで,それぞれ乗務している。 平成8年1月から同年3月までは3か月連続乗務となっているが,このような乗務形態はチーフパーサー職では稀である。 また,1月の乗務と2月の乗務との間は31日,2月の乗務と3月の乗務との間は35日となっている。 d 長大路線のうち,南米路線(成田・ロサンゼルス,ロサンゼルス・サンパウロ,サンパウロ・ロサンゼルス,ロサンゼルス・成田便)には,平成7年12月8日から同月16日まで乗務している。 (イ) 時差が5時間を超える路線a 原告のスケジュールのうち,時差が5時間を超える路線は一覧表の「5時間以上の時差」欄〇印記載のとおりである。 b 原告が乗務した時差5時間を超える路線のパターンは,平成7年6月に1,同年7月に2,同年8月に1,同年9月に1,同年10月に1,同年11月に2,同年12月に1,平成8年1月に1,同年2月に1,同年3月に2,同年4月に1,同年5月に1となっている。 (ウ) 早朝勤務・深夜勤務・徹夜勤務a 原告のスケジュールのうち,早朝勤務・深夜勤務・徹夜勤務は一覧表の「早朝・深夜・徹夜」欄〇印記載のとおりである。なお,一覧表の早朝勤務とは出頭時刻が5時以前のものをいう。 b 原告が乗務した便のうち,乗務時間が深夜時間にわたり,当日の業務終了時刻が5時を過ぎるものは,平成7年6月が1便,同年7月が2便,同年8月が1便,同年9月が4便,同年10月が1便,同年11月が2便,同年12月が1便,平成8年1月が4便,同年2月が2便,同年3月が1便,同年4月が3便,同年5月が3便となっている。 c また,出頭時刻が22時を過ぎるもの又は業務終了時刻が22時を過ぎるものは,平成7年6月が2便,同年7月が6便,同8月が3便,同年9月が6便(ただ ,同年4月が3便,同年5月が3便となっている。 c また,出頭時刻が22時を過ぎるもの又は業務終了時刻が22時を過ぎるものは,平成7年6月が2便,同年7月が6便,同8月が3便,同年9月が6便(ただし,1便はデッドヘッド),同年10月が3便,同年11月が5便(ただし,1便はデッドヘッド),同年12月が6便,平成8年1月が6便,同年2月が5便,同年3月が4便,同年4月が4便,同年5月が7便となっている。 (エ) 国際線日帰り便原告が日帰りの国際線に乗務した回数は,平成7年6月が1回,同年7月が2回,同年8月が2回,同年9月が0回,同年10月が2回,同年11月が0回,同年12月が0回,平成8年1月が1回,同年2月が1回,同年3月が1回,同年4月が2回,同年5月が0回となっている。 また,国際線日帰り便の後に更に休日なしの連続勤務をした回数は,平成7年7月が1回,同年8月が1回,同年10月が1回,平成8年2月が1回,同年4月が1回となっている。 (オ) 国際線連続乗務原告が乗務した便のうち,国際線連続乗務便は,平成7年6月が0回,同年7月が1回,同年8月が1回,同年9月が0回,同年10月が1回,同年11月が0回,同年12月が2回,平成8年1月が0回,同年2月が1回,同年3月が1回,同年4月が1回,同年5月が1回となっている。 (カ) 1日に3区間以上の国内線・近距離国際線乗務原告が1日に3区間以上の国内線・近距離国際線(ソウル,プサン,北京,上海便等)に乗務した回数は,平成7年6月が2回,同年7月が5回,同年8月が2回,同年9月が2回,同年10月が4回,同年11月が4回,同年12月が4回,平成8年1月が0回,同年2月が3回,同年3月が2回,同年4月が0回,同年5月が2回となっている。 (キ) 国内線連続乗務平成7年6月から平成8年 0月が4回,同年11月が4回,同年12月が4回,平成8年1月が0回,同年2月が3回,同年3月が2回,同年4月が0回,同年5月が2回となっている。 (キ) 国内線連続乗務平成7年6月から平成8年5月まで,国内線3区間乗務日が3日連続する回数は2回,複数区間乗務日が3日連続する回数(ただし,3区間乗務日が3日連続する場合を除く。)は10回,3区間乗務日あるいは4区間乗務日が2日間連続する回数は7回となっている。 (ク) 休日・休暇a 原告に与えられた休日は,平成7年6月が10日,同年7月が12日,同年8月が10日,同年9月が12日,同年10月が10日,同年11月が11日,同年12月が11日,平成8年1月が11日,同年2月が10日,同年3月が12日,同年4月が10日,同年5月が8日であった。 なお,就業規則によって付与すべき休日は最低10日である。 b 原告は会社の就業規則上,年間20日の有給休暇,3日の夏季休暇を与えられていたが,平成7年5月に胃潰瘍の治療のためにまとまって有給休暇を取った後は,同年6月に4日の有給休暇,同年8月に3日の夏季休暇及び2日の有給休暇,同年10月に2日の有給休暇を取った以外,一切休暇を取っていない。原告は,平成8年3月から同年5月までの間に,年休の申請をしていない。 (ケ) スケジュール変更a 原告のスケジュールのうち,スケジュール変更は一覧表の「変更前スケジュール」欄から「勤務乗務便名」欄のとおりされた(「変更前スケジュール」欄に記載がないときは変更がない。)。 b 原告のスケジュール変更(ただし,有給休暇の取得による場合は除く。)の日数及びスケジュール維持率は,平成7年6月が4日(86.7パーセント),同年7月が4日(87.1パーセント),同年8月が11日(64.5パーセント),同年9月が9日(70. による場合は除く。)の日数及びスケジュール維持率は,平成7年6月が4日(86.7パーセント),同年7月が4日(87.1パーセント),同年8月が11日(64.5パーセント),同年9月が9日(70.0パーセント),同年10月が11日(64.5パーセント),同年11月が3日(90.0パーセント),同年12月が11日(64.5パーセント),平成8年1月が5日(83.9パーセント),同年2月が18日(37.9パーセント),同年3月が0日(100パーセント),同年4月が4日(86.7パーセント),同年5月が4日(85.7パーセント)となっている。 原告の同期間のスケジュール維持率の平均値は,76.9パーセントであり,客室乗務員の平均値である77.0パーセントとほぼ等しい。 c 平成8年2月のスケジュール変更平成8年2月1日から同月21日までの間に,当初のスケジュールどおりに休日となったのは2日であった。 (2) 本件発症前1か月の労働状況ア総乗務時間原告の平成8年4月の乗務日数で同月の総乗務時間を割ると5時間14分となる。これは,同年1月の5時間23分の次に多い。 イ乗務状況(ア) 原告は,平成8年4月14日から同月17日まで,成田・ジャカルタ,ジャカルタ・デンパサール,デンパサール・ジャカルタ,ジャカルタ・成田便に乗務している。このうち,15日の乗務は19時20分から翌日の零時15分までの乗務であり,17日も1時30分から8時07分までの乗務である。 (イ) 原告は,同月20日から同月23日まで,成田・サイパン,サイパン・成田,成田・ホノルル,ホノルル・成田便に乗務している。このうち,21日の乗務は21時54分から翌日の4時46分までの乗務であり,23日には5時10分に業務を開始している。 (ウ) 同月28日には,各グループ長,各グ ル,ホノルル・成田便に乗務している。このうち,21日の乗務は21時54分から翌日の4時46分までの乗務であり,23日には5時10分に業務を開始している。 (ウ) 同月28日には,各グループ長,各グループ長の直属の上司でグループメンバーの第二次考課者であるマネージャーの参加するミーティングが行われ,翌29日には,各グループのメンバーのミーティングが行われている。これらの会議は原告が担当するグループのメンバーの入れ替えが行われた直後の会議であった。 (エ) 原告は,同年5月に入り,4日の成田・フランクフルト便,2日を挟んで7日のフランクフルト・成田便に乗務した。これらの便は長時間乗務であり,また,日本とフランクフルトの時差は7時間ある。原告は,4日は,13時25分から翌日の零時55分まで乗務しており,7日も3時54分から15時12分まで乗務している。 この成田・フランクフルト便,フランクフルト・成田便は,同年4月のグループメンバーの大幅な入れ替え後,各グループ長の直属の上司で,当時原告が所属していた会社客室乗員部客室乗員室グループのマネージャーが初めて同乗するフライトであった。 原告は,フランクフルトに着いた日の夜,マネージャー及びグループ員との食事に誘われたが,疲れていると言って参加せず,翌日の夜の食事にも参加しなかった。 (オ) 原告は,同年5月11日に,成田から伊丹空港までデッドヘッドで移動した後,同月12日から同月16日にかけて,徹夜便,数日間にわたって国際線の乗務が連続する,関西・ケアンズ,ケアンズ・ブリスベン,ブリズベン・ケアンズ,ケアンズ・成田便に乗務した。 このうち,同月12日の関西・ケアンズ便は徹夜便であり,同月15日のケアンズ・ブリズベン往復便はケアンズを4時15分に出発する早朝便である。 この乗務は,日本時間 ,ケアンズ・成田便に乗務した。 このうち,同月12日の関西・ケアンズ便は徹夜便であり,同月15日のケアンズ・ブリズベン往復便はケアンズを4時15分に出発する早朝便である。 この乗務は,日本時間で,12日の21時21分から13日の4時30分,15日の4時05分から6時08分までの乗務であった。 (カ) 同月21日から4日間は当初の予定ではスタンドバイであったが,21日から1泊2日の国内線乗務に変更になり,21日及び22日と連続して契約制客室乗務員らと国内線3区間乗務を行った。 (3) 本件発症前1週間の労働状況等ア原告は,平成8年5月26日から同月29日までの4日間,日本と香港を2往復する4日間連続の国際線,いわゆるシャトル便に乗務する予定で,このうち,本件疾病を発症するまで1往復半乗務した。この4日間の業務は,同乗乗務員は9名が固定で,他の5名ないし8名が途中で入れ替わるというものであった。 イ原告は,同月28日の乗務後,本件疾病を発症した。 3 原告の健康状態等前記第2の1の事実及び証拠並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 健康診断における血圧及び自覚症状ア原告は,平成8年1月31日,A株式会社における健康診断を受診した。原告は,その健康診断の問診票において,① 咽頭部の痛み・違和感,上気道の刺激症状,② 動悸,③ 聴力低下,④ 耳鳴り,⑤ 視力低下,⑥ 眼の疲れ,⑦ 眼の痛み・かすみ,眼の刺激症状,⑧ まぶしい,⑨ 頸・肩のこり・痛みの9項目について,自覚症状が時々あると記載している。 イ原告は,平成8年5月20日,A株式会社における健康診断を受診した。原告は,その健康診断の問診票において,① 倦怠感・疲労感,② 不安・いらいら,③ 咽頭部の痛み・違和感,上気道の刺激症状,④ しわがれ声,⑤ 動 年5月20日,A株式会社における健康診断を受診した。原告は,その健康診断の問診票において,① 倦怠感・疲労感,② 不安・いらいら,③ 咽頭部の痛み・違和感,上気道の刺激症状,④ しわがれ声,⑤ 動悸,⑥ 食欲不振,⑦ 下痢・便秘・胃腸症状・血便,⑧ 聴力低下,⑨ 耳痛・耳鳴り,⑩ 集中力の低下,⑪ 眼の痛み・かすみ,眼の刺激症状,⑫ 眼の充血,⑬ 皮フのかゆみ,⑭ 握力・筋力の低下,⑮ 頸・肩のこり・痛み,⑯指・腕のしびれ,⑰ 下肢のしびれ・痛み,⑱ 背部痛,⑲ むくみがあるの19項目について,自覚症状が時々あると記載し,① 視力低下,② 眼の疲れ,③ まぶしいの3項目について,自覚症状が常にあると記載している。 ウ原告は,平成8年1月の前記健康診断の際にも,同年5月の前記健康診断の際にも,問診票の「よく眠れない」の項目について自覚症状があるとは記載していない。 エ原告の健康診断における血圧値(単位はmmHg)は以下のとおりである。 収縮期圧拡張期圧平成3年12月3日 119平成4年4月8日 116同年11月13日 103平成5年5月8日 126同年12月16日 131平成6年4月22日 136同年10月20日 91平成7年9月22日 110平成8年1月31日 123同年5月20日 116(2) 原告は,本件発症の半年前ころから,顔色が悪く,疲労がたまっている様子で,休日には寝ていることが多くなり,平成8年4月ころも,顔色が悪く,夫や同僚に対し,疲れたと頻繁に口にするようになった。原告は,そのころ,病院 症の半年前ころから,顔色が悪く,疲労がたまっている様子で,休日には寝ていることが多くなり,平成8年4月ころも,顔色が悪く,夫や同僚に対し,疲れたと頻繁に口にするようになった。原告は,そのころ,病院に行くため休暇を取りたいと考えたが,結局休暇を取ることができなかった。 原告は,夫に対し,同年5月10日ころには,偏頭痛,右手のしびれ,肩の凝り,後頭部下の首の付け根付近がパンパンに張ったような鈍痛等を訴え,本件疾病を発症する1週間くらい前は,自宅において,血の気が引いた顔色で疲れた様子であり,右手のしびれ,首から両肩にかけての凝り,両こめかみの偏頭痛,食欲不振等を訴え,吐き気を催したり,横になっていることが多かった。 (3) 喫煙の状況原告は,平成8年4月ころまで,1日11本から20本以内の喫煙をしていた。 4 本件疾病に関する医学的知見前記第2の1の事実及び証拠並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 本件疾病の概要原告に発症した本件疾病(くも膜下出血)は,左内頸動脈の後交通動脈分岐部に存在した嚢状脳動脈瘤(内径約3ミリメートル。楕円形もしくは筒状に伸びた形状で,縦方向の長径は約6.5ミリメートルないし7ミリメートル。)が破裂したことによるものである。 (2) 嚢状脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の発生の機序ア概要くも膜下出血とは,脳血管疾患の一つであるが,頭蓋内血管の破綻により,血液がくも膜下腔中に出血をきたす病態をいう。くも膜下出血の原因の約75パーセントは脳動脈瘤の破裂である。脳ドックのMR検査で未破裂脳動脈瘤が発見されることが少なくないが,未破裂脳動脈瘤の出血率は年約1パーセントと推定されている。 脳動脈瘤には,嚢状脳動脈瘤と紡錘状脳動脈瘤(動脈硬化性脳動脈瘤と解離性脳動脈瘤)がある。中膜や内 脈瘤が発見されることが少なくないが,未破裂脳動脈瘤の出血率は年約1パーセントと推定されている。 脳動脈瘤には,嚢状脳動脈瘤と紡錘状脳動脈瘤(動脈硬化性脳動脈瘤と解離性脳動脈瘤)がある。中膜や内弾性板が欠損した動脈壁に嚢状に拡張したのが嚢状脳動脈瘤であり,脳表面を走る脳主幹動脈の分岐部,具体的には前交通動脈,内頸動脈と後交通動脈分岐部,中大脳動脈分岐部,脳底動脈先端部などウィリス動脈輪周辺の分岐部に生じやすい。 脳動脈瘤破裂は,突然の極めて激しい頭痛(突然,頭をバットで殴られたような痛み)と吐き気,嘔吐で発病し,意識障害を伴う。 脳動脈瘤破裂の主な警告サインとしては,頭痛,視覚障害,吐き気・嘔吐が挙げられ(内頸動脈瘤の破裂警告サインの出現率は,頭痛(62パーセント),視覚障害(19パーセント),吐き気・嘔吐(4パーセント)),頭痛の出現から大出血までの期間は約75パーセントが1か月以内,約55パーセントが14日以内であり,頭痛の持続期間は平均13日で,ほとんどの症例で頭痛が全く消失しないうちに大出血が起こっていること,吐き気・嘔吐の出現から大出血までの期間は約75パーセントが7日以内であり,吐き気・嘔吐の持続期間は平均4日で,すべての症例で,吐き気・嘔吐が頭痛に伴って認められていること,視覚障害(視力低下,視野狭窄等)の出現から大出血までの期間は約50パーセントが1か月以上であり,視覚障害の持続時間は平均56日で頭痛や吐き気・嘔吐に比べて長い傾向があることが報告されている。 イ業務と脳・心臓疾患発症との関連性(ア) 脳・心臓疾患(脳血管疾患及び虚血性心疾患等。負傷に起因するものを除く。)は,その発症の基礎となる血管病変等(動脈硬化等による血管病変又は動脈瘤,心筋変性等の基礎的病態)が,主に加齢,食生活,生活環境等の日常生活によ 疾患及び虚血性心疾患等。負傷に起因するものを除く。)は,その発症の基礎となる血管病変等(動脈硬化等による血管病変又は動脈瘤,心筋変性等の基礎的病態)が,主に加齢,食生活,生活環境等の日常生活による諸要因や遺伝等の個人に内在する要因(基礎的要因)により長い年月の生活の営みの中で徐々に形成,進行及び増悪するといった経過をたどり発症するものであるが,業務による過重な負荷が加わることにより,血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ,脳・心臓疾患を発症させる場合があることは医学的に広く認知されている。そして,業務による過重な負荷として,最近では,脳・心臓疾患の発症に近接した時期における業務による負荷のほか,長期間にわたる業務による疲労の蓄積を考慮すべきであるとされている。なお,疲労の蓄積の解消や適切な治療によって,血管病変等が改善するとする報告がある。 (イ) 就労態様による疲労への影響a 長時間労働長時間労働は,脳血管疾患への影響が指摘されているが,その理由として,① 睡眠時間が不足し疲労の蓄積が生じること,② 生活時間の中での休憩・休息や余暇活動の時間が制限されること,③ 長時間に及ぶ労働では,疲労し低下した心理・生理機能を鼓舞して職務上求められる一定のパフォーマンスを維持する必要性が生じ,これが直接的なストレス負荷要因となること,・就労態様による負荷要因(物理・化学的有害因子を含む。)に対するばく露時間が長くなることなどが考えられている。 そして,その中でも睡眠不足は疲労の蓄積をもたらす要因として深く関わっていると考えられている。一般に,睡眠不足は,循環器や交感神経系の反応性を高め,脳・心臓疾患の有病率や死亡率を高め,また,長期間にわたる1日4時間ないし6時間以下の睡眠不足状態では,睡眠不足が脳・心臓疾患の有病率や死亡 。一般に,睡眠不足は,循環器や交感神経系の反応性を高め,脳・心臓疾患の有病率や死亡率を高め,また,長期間にわたる1日4時間ないし6時間以下の睡眠不足状態では,睡眠不足が脳・心臓疾患の有病率や死亡率を高めるとする報告がある。 このように,長期間にわたる長時間労働やそれによる睡眠不足に由来する疲労の蓄積が血圧の上昇等を生じさせ,その結果,血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させる可能性がある。 b 不規則な勤務不規則な勤務は睡眠・覚醒のリズムを障害するため,不眠,睡眠障害,昼間の眠気等の愁訴を高め,生活リズムの悪化をもたらす場合が多いとする報告があり,また,通常の交替制勤務より不規則な交替制勤務の方が完全な休息が得られない可能性を指摘する報告もある。 航空機の客室乗務員の業務は,外国便にみられる大幅な離・発着の遅延があることから,大きな時間的不規則性を内包する業務と考えられ,休息・休憩時間の確保が困難な状況になりがちであるといわれている。警備員や医療スタッフなど安全確保を要求される業務や緊急の出動を要請される業務も,突然の睡眠の中断が予想される業務であり,不規則な勤務の具体例とされている。 不規則な勤務の過重性については,予定された業務スケジュールの変更の頻度,程度,事前の通知状況,予測の度合い,業務内容の変更の程度がどうであったかなどの観点から検討することが必要であるとされている。 c 拘束時間の長い勤務拘束時間の長い勤務の過重性については,拘束時間数,実労働時間数だけではなく,拘束時間中の実態等,具体的には,労働密度(実作業時間と手待時間との割合等),業務内容,休憩・仮眠時間数,休憩・仮眠施設の状況(広さ,空調,騒音等)がどうであったかなどについて十分検討する必要があるとされている。 d 出張の多い業務過度の出 時間と手待時間との割合等),業務内容,休憩・仮眠時間数,休憩・仮眠施設の状況(広さ,空調,騒音等)がどうであったかなどについて十分検討する必要があるとされている。 d 出張の多い業務過度の出張等が循環器疾患の発症に関与することを指摘する報告や出張頻度が動脈硬化性疾患の指標と関連することを指摘する報告がある。出張の多い業務の過重性については,出張中の業務内容,出張(特に時差のある海外出張)の頻度,交通手段,移動時間及び移動時間中の状況,宿泊の有無,宿泊施設の状況等がどうであったか,出張中に睡眠を含む休憩・休息が十分とれる時間が確保されていたか,出張中の疲労が出張後において回復ができる状態であったかなどについて検討することが必要であるとされている。 e 交替制勤務,深夜勤務交替制勤務,深夜勤務は直接的に脳・心臓疾患の発症の大きな要因になるものではないものの,交替制勤務や深夜勤務のシフトが変更されると,生体リズムと生活リズムの位相のずれが生じ,その修正の困難さから疲労がとれにくいということが考えられるとされている。交替制勤務や深夜勤務の過重性については,勤務シフトの変更度合い,勤務と次の勤務までの時間,交替制勤務における深夜時間帯の頻度がどうであったかなどについて検討することが必要であるとされている。 f 作業環境作業環境と脳・心臓疾患の発症との関連性に関しては,その有意性を認める報告があるものの,その関連性は必ずしも強くないと考えられており,業務の過重性の評価に当たっては,付加的要因として検討すべきであるとされている。 (a) 騒音75デシベル程度の騒音で一時的な血圧上昇が認められることや80デシベル以上の慢性的な騒音ばく露によって,収縮期血圧や拡張期血圧の上昇傾向,また,高血圧のり患率の上昇がみられることなどが報告さ 75デシベル程度の騒音で一時的な血圧上昇が認められることや80デシベル以上の慢性的な騒音ばく露によって,収縮期血圧や拡張期血圧の上昇傾向,また,高血圧のり患率の上昇がみられることなどが報告されているが,騒音の高血圧に対する相対リスクは1.2ないし1.4と低いといわれている。どの程度の騒音が脳・心臓疾患のリスクファクター(進行を促進・増悪させるような条件)になるかは,前記の騒音レベルを超えていたか,そのばく露時間・期間はどのくらいであったかなどについて検討することが必要であるとされている。 (b) 時差脳・心臓疾患は,民間パイロットとそれ以外の対照群との比較検討では,パイロット群に左心室肥大や収縮期血圧の上昇,血清コレステロールの増加等が多く認められ,その原因として交替制勤務や時差等による睡眠障害の関与も推測されており,時差と脳・心臓疾患の発症との関連性が示唆されていることから,飛行による時差の過重性については,5時間以上の時差がある地域を航空機で移動する業務であったか,時差の程度や時差を受ける頻度はどうであったかなどについて検討することが必要であるとされている。 g 精神的緊張(心理的緊張)を伴う業務精神的緊張と脳・心臓疾患の発症との関連については,仕事の要求度が高く,裁量性が低く,周囲からの支援が少なくなる場合には精神的緊張を生じやすく,脳・心臓疾患の危険性が高くなるとする報告等がある一方で,その関連を否定するものもある。しかし,精神的緊張について,疲労の蓄積という観点から配慮する必要があるとした場合,脳・心臓疾患の発症に関与する可能性のある日常的に精神的緊張(心理的緊張)を伴う業務に関連する出来事としては,危険回避責任がある業務,過大なノルマがある業務,決められた時間(納期等)どおりに遂行しなければならないような困 する可能性のある日常的に精神的緊張(心理的緊張)を伴う業務に関連する出来事としては,危険回避責任がある業務,過大なノルマがある業務,決められた時間(納期等)どおりに遂行しなければならないような困難な業務等が考えられる。 ウ脳血管疾患のリスクファクター脳血管疾患のリスクファクターとしては,① 性,② 年齢,③ 家族歴(遺伝),④ 高血圧,⑤ 飲酒,⑥ 喫煙,⑦ 高脂血症,⑧ 肥満,⑨ 糖尿病,⑩ ストレス(過度の肉体労働,精神的緊張の持続,興奮,不眠,親しい者との死別,離婚,失業,破産等の心身の負荷)が広く認知されている。 (ア) 性脳血管疾患では,男性の発症率は女性の2倍程度となっている。 (イ) 年齢脳血管疾患は年齢が増すにつれて多くなる。脳動脈瘤(破裂)の好発年齢は,40歳代から50歳代とされている。 (ウ) 家族歴(遺伝)血圧に遺伝的影響があることは明らかであるとされている。 (エ) 高血圧高血圧は脳血管疾患の最大のリスクファクターであるとされている。 (オ) 飲酒飲酒には動脈硬化を軽減させる作用があるとともに,血圧を上げる効果もある。 (カ) 喫煙喫煙は1日の喫煙本数に比例してリスクを上昇させ,特に脳梗塞に対しより強く影響するとされている。 (キ) 高脂血症LDLコレステロールの高値は動脈硬化のリスクファクターと考えられている。 (ク) 肥満脳血管疾患,高血圧,糖尿病等はいずれも肥満が要因になることが明らかになってきており,しかも,それらは相互に関連しながら進行するとされている。 (ケ) 糖尿病糖尿病患者には血管系の合併症が多発する傾向がある。 (コ) ストレスストレスが脳血管疾患の原因となり得るかについては,学問的な裏付けは難しいのが現状であるが,ストレスを引き起こすストレッサーは,中枢神経 には血管系の合併症が多発する傾向がある。 (コ) ストレスストレスが脳血管疾患の原因となり得るかについては,学問的な裏付けは難しいのが現状であるが,ストレスを引き起こすストレッサーは,中枢神経系,自律神経系,内分泌系の変調を起こし,その総合効果が循環器系に影響を及ぼすことは明らかであり,肉体的な負担,精神的ストレス及び疲労の蓄積等が脳血管疾患発症の原因となることも示唆されている。 エ脳動脈瘤の発生・成長の機序脳動脈瘤の発生及び成長に関与する要因としては,血管壁の脆弱性と血行力学的負荷がある。 オ脳動脈瘤破裂の機序脳動脈瘤壁に対して内側より作用する血行力学的圧力が,脳動脈瘤壁の構造的強度と脳動脈瘤を外側からとりまく脳脊髄液や脳実質の圧力を加えた防御力を凌駕した時に,脳動脈瘤は破裂するに至る。 この血行力学的圧力の変動要素として最も大きな影響を有するものは血圧である。動脈瘤壁の構造は,退行性変化と修復過程が入り乱れて進行し絶えず変化している。脳脊髄液や脳実質の圧力も常に変化している。 したがって,以上の因子が関与する状態の中で個々の脳動脈瘤が個々の時点で破裂するか否かは瞬時の状況の変化に応じて決定されることになる。 カ脳動脈瘤破裂の誘因と危険因子脳動脈瘤破裂に関して最も重要な意義を有するのは,動脈瘤壁の構造的強度の脆弱化を促進する因子であり,脳動脈瘤破裂の危険因子と呼ばれる。 これに対して,血行力学的圧力と脳脊髄液や脳実質の圧力に作用する因子は脳動脈瘤破裂の誘因あるいは引き金と呼ばれる。 前記の危険因子としては,高血圧,喫煙,肥満,経口避妊薬の服用等が挙げられているが,これらの危険因子の中で共通して認められているのは高血圧のみであり,他の危険因子については未だ議論のあるところである。 キ脳動脈瘤破裂の確率未破裂脳動 満,経口避妊薬の服用等が挙げられているが,これらの危険因子の中で共通して認められているのは高血圧のみであり,他の危険因子については未だ議論のあるところである。 キ脳動脈瘤破裂の確率未破裂脳動脈瘤の破裂する確率は年間1パーセント足らずと報告されている。くも膜下出血の既往歴のないグループの長径10ミリメートル以下の脳動脈瘤の年間破裂率は0.05パーセントであるとの報告がある。未破裂脳動脈瘤が生涯にわたって破裂する確率は40歳代では14.4パーセントであるとの報告がある。2786例の剖検例で4.9パーセントの未破裂動脈瘤が発見されたとの報告がある。くも膜下出血以外の診断の目的で行われた脳血管撮影で偶然に発見される脳動脈瘤の確率は5パーセントであるとの報告がある。 以上から,脳動脈瘤は必ずしも自然経過の中で全例破裂するわけではなく,生涯破裂することなく終わる可能性が存在することが明らかである。 また,脳動脈瘤破裂の機序としての血行力学的圧力が脳動脈瘤壁の構造的強度と,脳脊髄液や脳実質の圧力の破裂防御を凌駕する状況が普遍的に発生するものではないことが確認される。脳脊髄液や脳実質の圧力に関与する因子が単独で脳動脈瘤破裂の誘因として作用することも想定され得ない。 脳動脈瘤が破裂するか否かは,主として脳動脈瘤壁の脆弱性の進行度によって規定され,これが極限まで進行している段階においては,ごく僅かな血行力学的負荷の上昇によっても容易に破裂し,その脆弱化が十分に進行していない状態の下では,血行力学的圧力や脳脊髄液や脳実質の圧力に関与するより強力な因子が加わってはじめて脳動脈瘤破裂が惹起されるものである。 ク脳動脈瘤壁の脆弱化の機序(ア) 脳動脈瘤が発生してまもなく破裂に至る場合は,動脈瘤壁の脆弱化は,主として脳動脈瘤径の急速な増大に伴う動脈瘤壁 ってはじめて脳動脈瘤破裂が惹起されるものである。 ク脳動脈瘤壁の脆弱化の機序(ア) 脳動脈瘤が発生してまもなく破裂に至る場合は,動脈瘤壁の脆弱化は,主として脳動脈瘤径の急速な増大に伴う動脈瘤壁の伸展による壁組織の菲薄化に対して,膠原繊維の増生や内膜の肥厚等による動脈瘤壁の修復が十分になされないことが原因となり,内膜下に血しょう浸潤が起こり,動脈瘤壁の組織融解が惹起されて動脈瘤壁の脆弱化が進行するものと考えられる。 このような機序によって発生早期に破裂する脳動脈瘤は径が小さく,通常5ミリメートル以下のものが,これに相当するとされている。 しかし,この段階で破裂する脳動脈瘤は少なく,大部分の脳動脈瘤は壁の修復がなされて,未破裂のままで終止するものと考えられている。 (イ) 発生した脳動脈瘤が早期の破裂を免れて一定の大きさに達した後に破裂に至る場合は,壁の修復がなされながら血行力学的負荷により緩徐に増大した脳動脈瘤に傷害性に作用する因子が加えられて,動脈瘤壁の脆弱化が進行することによって破裂に至る場合であり,この種の破裂脳動脈瘤の径は,脳動脈瘤が発生してまもなく破裂に至る場合よりも大きく,5ミリメートルないし10ミリメートルであるとされている。 (ウ) 動脈瘤壁の脆弱化の機序としては,破裂動脈瘤壁のみならず未破裂の動脈瘤壁にも類繊維素変性が存在することが病理学的に明らかにされていることによって,内膜の傷害による血管透過性の亢進に起因した血しょう浸潤や壁内出血による壁組織の融解,断裂が重要とされている。そして,この血管透過性亢進を惹起する因子として高血圧や血流の乱れなどによる血行力学的負荷の増大が大きな役割を果たしている。 (エ) なお,動脈瘤壁の脆弱化は一方的に進行するわけではなく,損傷された動脈瘤壁の修復機序も存在する。 ケ脳動脈 して高血圧や血流の乱れなどによる血行力学的負荷の増大が大きな役割を果たしている。 (エ) なお,動脈瘤壁の脆弱化は一方的に進行するわけではなく,損傷された動脈瘤壁の修復機序も存在する。 ケ脳動脈瘤壁の脆弱化に作用する血圧変化と睡眠の関連(ア) 血圧には日内変動があり,昼間の活動時には高く維持され,夜間の睡眠時には低下している。 (イ) 生体に与える血圧の負荷の評価については,昼間の覚醒時の一時的な血圧の測定値のみをもって行うことが必ずしも適当ではなく,日内変動の態様をも含んだ血圧の推移がより重要であることが認識されており,とりわけ夜間の血圧の低下の重要性に関する知見が注目されている。 (ウ) 概日リズムと同調した規則的に良質な睡眠をとることによる夜間の十分な血圧の低下が脳,心臓,腎臓等の臓器に対する障害の軽減のために重要であることが認識されている。 (エ) 良質な睡眠を確保できず,そのために夜間の十分な血圧の低下が得られない場合には,その血圧の状態が動脈瘤壁の脆弱化を進行させ,かつ,動脈瘤壁の脆弱化修復機序の不全を惹起する。 (オ) 動脈瘤壁の脆弱化機序としての血管透過性亢進に由来する類繊維素変性は,未破裂動脈瘤壁にも観察されており,この類繊維素変性は,進行性のものでない限りはむしろ「暫定的な補強作用」と解釈し得る。さらに,この類繊維素変性は,ひとたび形成された後にも,血圧を低下させることによって治癒するものであることが証明されている。しかも,この治癒機転には必ずしも血圧の持続的な低下を要するものではなく,一時的な血圧の低下でも,有効に作用し得ることが明らかにされている。これらの事実は,動脈瘤壁の脆弱化は一方的に進行するものではなく,適切な血行力学的負荷の軽減によって進行の防止や治癒が得られることを確認するものである。 この意味で,血 得ることが明らかにされている。これらの事実は,動脈瘤壁の脆弱化は一方的に進行するものではなく,適切な血行力学的負荷の軽減によって進行の防止や治癒が得られることを確認するものである。 この意味で,血行力学的負荷の軽減をもたらすものとしての睡眠による血圧の低下は,動脈瘤壁の脆弱化を抑制し,修復機序を機能させる上で,極めて重要な役割を果たしている。 (カ) 動脈瘤壁の構成要素は,主として内膜と膠原繊維であり,動脈瘤壁の構造的強度は,主に後者,すなわち膠原繊維に依存している。そして,膠原繊維はある種の結晶構造を有しており,変形することなく比較的長時間の負荷に耐え得るが,限界があり,血管壁の緊張が定期的に解除されることが,この膠原繊維の結合状態を再構築するために必要である。加えて,動脈瘤壁を構成する膠原繊維は,未成熟であるために,血行力学的負荷に対する抵抗力が弱く,正常な動脈の10ないし20分の1でしかないことが実験的に証明されている。この事実は,動脈瘤壁は,正常な動脈壁よりも,より強く血行力学的負荷を受けやすいことを意味している。したがって,これらの事実からも,血管壁に対する血行力学的負荷を軽減するためには,睡眠による血圧の低下が重要であることが推認される。 5 業務起因性の有無について(1) 前記第2の1(4)のとおり,本件疾病が労災保険法による療養補償給付,休業補償給付等の保険給付の対象となるためには,労働基準法施行規則35条別表第1の2第9号にいう「その他業務に起因することの明らかな疾病」に該当する(業務起因性がある)ことを要するところ,業務起因性があるといえるためには,業務と疾病との間に相当因果関係のあることが必要であると解される。 そして,くも膜下出血は,基礎疾患である動脈瘤ないし血管病変が存在し,これが種々の危険因子の集積によっ 因性があるといえるためには,業務と疾病との間に相当因果関係のあることが必要であると解される。 そして,くも膜下出血は,基礎疾患である動脈瘤ないし血管病変が存在し,これが種々の危険因子の集積によって増悪し,発症に至るものであるが,ある業務とくも膜下出血の発症との間における相当因果関係を肯定するためには,その業務が,基礎疾患である動脈瘤ないし血管病変をその自然経過を超えて増悪させるに足りる程度の過重負荷になっていたことを要し,かつ,それで足りると解するのが相当である。なぜなら,このような場合には,その業務に内在又は随伴する危険が現実化することによってくも膜下出血が発症したものといえるからである。 そこで,この見地に立って,以下検討する。 (2)ア前記4のとおり,最近の医学的知見によれば,長期間にわたる業務による疲労の蓄積も脳疾患の発症に及ぼす負荷として認識されているので,まず,本件発症前の業務が,疲労を蓄積する程度の過重な負荷を伴うものであったか否かについて検討する。 (ア) 客室乗務員の業務の一般的特徴原告は,客室乗務員として勤務していたものであるが,前記1(3)のとおり,A株式会社における客室乗務員については,1か月単位の変形労働時間制が取られており,勤務の開始・終了時刻が一定しておらず,一日の労働時間も日によって異なっており,不規則な業務であるといえる。 また,原告は,主に国際線に乗務していたものであるが,前記1(4)のとおり,一般的に,国際線の客室乗務員の場合には,乗務時間が9時間を超える長大路線の乗務の負担,時差による負担,早朝勤務・深夜勤務・徹夜勤務による負担がある。 (イ) 総乗務時間前記2(1)アのとおり,原告の平成7年6月1日から本件発症前日である平成8年5月28日までの総乗務時間(デッドヘッドは除く。)は, 勤務・深夜勤務・徹夜勤務による負担がある。 (イ) 総乗務時間前記2(1)アのとおり,原告の平成7年6月1日から本件発症前日である平成8年5月28日までの総乗務時間(デッドヘッドは除く。)は,870時間31分であることが認められ,同じくらいの年齢のチーフパーサーとの比較等からすれば,原告の1か年の総乗務時間はA株式会社におけるチーフパーサーの中でも特に長かったといえる。また,この870時間31分という原告の1か年の総乗務時間は,前記1(3)イのとおり,現在の就業規則における1か年の制限総乗務時間(900時間)は超えていないものの,平成5年11月に現在の制限総乗務時間に勤務協定等が改定される以前の制限総乗務時間であった1か年840時間を30時間以上超えている。 以上からすれば,総乗務時間だけをとっても,本件発症前1年間の勤務はかなり過密なものであったというべきである。 (ウ) 原告の乗務パターンにおける負荷の程度長期間における疲労の蓄積という観点からすれば,個々の乗務パターンの負荷を個別に取り出して単純にその回数等を検討するのではなく,それぞれの具体的な乗務パターンの組み合わせによってどのような負荷が生じていたかを検討することが必要であると考えられるので,このような見地から,前記1(4)の事実を踏まえながら,一覧表の本件発症前の乗務パターンの特徴的な点を検討する。 a 平成7年6月(発症前1年)まず,1日から4日まで及び9日から12日まで,合計8日間のスケジュール変更があるが,このうち,1日から4日までは有給休暇に変更したものであり,9日から11日までは休日又は有給休暇が自宅待機又は休日に変更されたものである。 また,原告は,27日から30日まで,長大路線で5時間以上の時差があるアムステルダム便に乗務している。アムステルダ ,9日から11日までは休日又は有給休暇が自宅待機又は休日に変更されたものである。 また,原告は,27日から30日まで,長大路線で5時間以上の時差があるアムステルダム便に乗務している。アムステルダム便の往路の出頭時刻は9時45分と比較的早い時間となっており,業務終了時刻は翌日の零時20分であって深夜勤務となっている。復路の出頭時刻は零時55分であって深夜勤務となっている。このアムステルダム便の乗務前にはスケジュールどおりの休日が2日確保されており,乗務後にもスケジュールどおりの休日が3日確保されている。 なお,6月のデッドヘッドを除いた乗務時間の合計は56時間46分となっている。 以上からすれば,6月の時点では,原告に,疲労の蓄積の観点から特に過剰な負荷が生じていたものとは認められない。 b 平成7年7月まず,原告は,5日に,関西・札幌日帰り便に乗務しており,その業務終了時刻は22時05分であって,多少深夜勤務となっている。翌6日には国内線3連続乗務を行っており,その業務終了時刻は22時18分であって,多少深夜勤務となっている。関西・札幌日帰り便の翌日の乗務の出頭時刻は13時45分となっており,国内線3連続乗務の翌日からはスケジュールどおりの休日が2日確保されている。 また,原告は,11日から18日まで,成田・ミラノ,ミラノ・ローマ,ローマ・ミラノ,ミラノ・成田便に乗務している。成田・ミラノ便は,長大路線で5時間以上の時差がある。成田・ミラノ便の往路の業務終了時刻は翌日の1時15分であって深夜勤務となっており,ミラノ・ローマ便の往路の出頭時刻は零時10分,業務終了時刻は3時22分であって深夜勤務となっており,成田・ミラノ便の復路は出頭時刻が21時10分,業務終了時刻が翌日の11時20分であって徹夜勤務となっている。この一連の 出頭時刻は零時10分,業務終了時刻は3時22分であって深夜勤務となっており,成田・ミラノ便の復路は出頭時刻が21時10分,業務終了時刻が翌日の11時20分であって徹夜勤務となっている。この一連の乗務の4日前にはスケジュールどおりの休日が2日確保されており,香港日帰り便の乗務を1日挟んで,更に,前日にスケジュールどおりの休日が1日確保されている。乗務後にもスケジュールどおりの休日が4日確保されている。 さらに,27日から30日までのスケジュールが変更され,原告は,自宅スタンドバイ(S1)であった27日にはグアム日帰り便に乗務し,28日から30日までは,時差が大きいホノルル便に乗務している。ホノルル便の往路の出頭時刻は19時45分,業務終了時刻は翌日の5時25分であって,徹夜勤務となっている。ホノルル便の乗務後にはスケジュールどおりの休日が2日確保されているが,その翌日の広島日帰り便の出頭時刻は5時45分と早朝に近くなっている。もっとも,広島日帰り便の後にはスケジュールどおりの1日の休日とスケジュール変更による3日の夏季休暇が取得されている。 なお,7月のデッドヘッドを除いた乗務時間の合計は82時間49分となっている。 以上のように,7月には,長大路線で時差があるミラノ便の乗務とスケジュール変更による時差の大きいホノルル便の乗務があり,また,客室乗務員にとって,月別の総乗務時間が75時間を超えると負担感が大きいところ,乗務時間の合計も80時間を超えていることから,ある程度の負荷が生じていたものと推認される。しかし,ミラノ便については乗務前後の休日がそれなりに確保されており,ホノルル便についても,スケジュール変更と時差という二重の負担はあるものの,乗務後にある程度まとまって休日が確保されていること,6月の総乗務時間は56時間程度 前後の休日がそれなりに確保されており,ホノルル便についても,スケジュール変更と時差という二重の負担はあるものの,乗務後にある程度まとまって休日が確保されていること,6月の総乗務時間は56時間程度であったことなどからすれば,平成7年7月の時点で,原告に,疲労の蓄積の観点から特に過剰な負荷が生じていたものとまでは認められない。 c 平成7年8月まず,前記のとおり,4日から6日まで自宅スタンドバイ(S1)が夏季休暇にスケジュール変更された後も,7日の休日が札幌日帰り便に,8日及び9日がそれぞれ国内線3連続乗務に,10日が休日にそれぞれスケジュール変更されている。そして,12日がオフ日に,13日及び14日が自宅スタンドバイ(S1)にそれぞれスケジュール変更されている。 また,原告は,16日から18日まで,クアラルンプール便に乗務しており,その復路の出頭時刻は22時30分,業務終了時刻は翌日の7時37分であって徹夜勤務となっている。クアラルンプール便の乗務の前日は上海日帰り便に乗務しているが,その前の5日間は,休日,オフ日及び自宅スタンドバイ(S1)となっている。そして,クアラルンプール便の乗務後はスケジュールどおりの2日の休日と,スケジュール変更による2日の休暇となっている。 さらに,原告は,スケジュール変更により,23日に香港日帰り便に乗務している。この香港日帰り便の業務終了時刻は22時45分であって,多少深夜勤務となっている。香港日帰り便の乗務後は,スケジュールどおりの2日の休日に加えて,スケジュール変更により更に1日の休日が確保されている。 また,27日は国内線3連続乗務(ただし,デッドヘッドを1便含む。)に,28日は国内線4連続乗務に,それぞれスケジュール変更されている。 これに続いて,原告は,30日から9月2日まで,長大 いる。 また,27日は国内線3連続乗務(ただし,デッドヘッドを1便含む。)に,28日は国内線4連続乗務に,それぞれスケジュール変更されている。 これに続いて,原告は,30日から9月2日まで,長大路線で5時間以上の時差があり,客室乗務員の負担感が非常に大きいニューヨーク便に乗務している。ニューヨーク便の往路の出頭時刻は10時15分,業務終了時刻は翌日の1時であって深夜勤務となっており,復路の出頭時刻は1時,業務終了時刻は17時29分であって徹夜勤務となっている。ニューヨーク便の乗務の前にはスケジュールどおりの休日が1日確保されているだけで,前々日には前記の国内線4連続乗務(業務終了時刻は21時10分)に乗務している。乗務後には,スケジュールどおりの休日が4日確保されているが,その翌日である9月7日は,健康診断の予定が国内線3連続乗務(ただし,デッドヘッドを1便含む。)にスケジュール変更されており,その出頭時刻は6時40分と早朝に近くなっている。 なお,8月のデッドヘッドを除いた乗務時間の合計は59時間26分となっている。 以上のように,8月には,徹夜勤務となるクアラルンプール便,多少の深夜勤務となるスケジュール変更による香港日帰り便,長大路線で時差があり,客室乗務員の負担感が非常に大きいニューヨーク便の乗務がある。しかし,前2者については,乗務前後の休日がそれなりに確保されているし,ニューヨーク便については,乗務前の休日が1日しか確保されておらず,乗務後の休日は4日確保されているものの,その翌日はスケジュール変更により,出頭時刻が早朝に近い国内線3連続乗務となっていることからすれば,多少の疲労感は残っていた可能性も考えられるが,8月の乗務時間の合計は60時間に達していなかったことを併せ考えると,平成7年8月の時点で,原告に,疲 近い国内線3連続乗務となっていることからすれば,多少の疲労感は残っていた可能性も考えられるが,8月の乗務時間の合計は60時間に達していなかったことを併せ考えると,平成7年8月の時点で,原告に,疲労の蓄積の観点から特に過剰な負荷が生じていたものとまでは認められない。 d 平成7年9月まず,前記のとおり,7日の健康診断が国内線3連続乗務にスケジュール変更され,続いて,8日は国内線3連続乗務に,9日は国内線2連続乗務に,それぞれスケジュール変更されている。そして,11日は自宅スタンドバイ(S1)が同(S2)に,12日は健康診断に,13日は国内線4連続乗務に,14日は国内線2連続乗務に,15日は国内線3連続乗務(ただし,デッドヘッドを1便含む。)にそれぞれスケジュール変更されている。 また,原告は,18日から20日まで,シンガポール便に乗務している。 このシンガポール便の往路の出頭時刻は20時45分,業務終了時刻は翌日の6時03分であって徹夜勤務となっている。復路の出頭時刻は23時10分,到着時刻は翌日の9時34分(さらにデッドヘッド後の業務終了時刻は15時30分)であって徹夜勤務となっている。シンガポール便の乗務前にはスケジュールどおりの休日が2日確保されており,乗務後にもスケジュールどおりの休日が2日確保されている。 もっとも,シンガポール便乗務後の前記2日の休日の後に,原告は,23日から26日まで,長大路線で5時間以上の時差があるパリ便に乗務している。パリ便の往路の出頭時刻は9時45分,業務終了時刻は翌日の1時35分であって深夜勤務となっており,復路の出頭時刻は1時45分,業務終了時刻は16時26分であって徹夜勤務となっている。パリ便の乗務後には,スケジュールどおりの休日が3日確保されている。 なお,9月のデッドヘッドを除いた っており,復路の出頭時刻は1時45分,業務終了時刻は16時26分であって徹夜勤務となっている。パリ便の乗務後には,スケジュールどおりの休日が3日確保されている。 なお,9月のデッドヘッドを除いた乗務時間の合計は71時間54分となっている。 以上のように,9月には,徹夜勤務が2日間連続するシンガポール便の後,2日の休日を挟んで,長大路線で時差のあるパリ便に乗務していることから,多少の疲労感は残っていた可能性も考えられるが,平成7年9月の時点で,原告に,疲労の蓄積の観点から特に過剰な負荷が生じていたものとまでは認められない。 e 平成7年10月まず,4日が自宅スタンドバイ(S1)から長崎日帰り便に,5日が自宅スタンドバイ(S1)から休日に,6日が休日から北京日帰り便に,7日が休日に,8日から11日が香港シャトル便に,12日及び13日が休日に,14日及び15日が休日から有給休暇に,それぞれスケジュール変更されている。そして,21日は自宅スタンドバイ(S1)から出社待機にスケジュール変更されている。前記香港シャトル便の1日目の業務終了時刻は23時25分であって深夜勤務となっている。 また,原告は,24日から26日まで,シンガポール便に乗務している。 このシンガポール便の復路の出頭時刻は22時30分,業務終了時刻は翌日の7時25分であって徹夜勤務となっている。シンガポール便の乗務の前日はソウル日帰り便に乗務しているが,前々日である22日はスケジュールどおりの休日,21日は前記のとおり,出社待機にスケジュール変更,19日及び20日はスケジュールどおりの休日となっている。シンガポール便の乗務後にはスケジュールどおりの休日が2日確保されている。 もっとも,シンガポール便乗務後の前記2日の休日の後に,原告は,29日から11月1日まで,長大路 おりの休日となっている。シンガポール便の乗務後にはスケジュールどおりの休日が2日確保されている。 もっとも,シンガポール便乗務後の前記2日の休日の後に,原告は,29日から11月1日まで,長大路線で5時間以上の時差があり,客室乗務員の負担感が非常に大きいニューヨーク便に乗務している。ニューヨーク便の往路の出頭時刻は10時15分,業務終了時刻は翌日の1時10分であって深夜勤務となっており,復路の出頭時刻は1時,業務終了時刻は17時57分であって徹夜勤務となっている。そして,前記のとおり,ニューヨーク便の乗務の前にはスケジュールどおりの休日が2日確保されている。乗務後には,スケジュールどおりの休日が4日確保されており,その翌日もスケジュールどおり,自宅待機(S2)となっている。 なお,10月のデッドヘッドを除いた乗務時間の合計は77時間37分となっている。 以上のように,10月には,前半にスケジュール変更が続いており,徹夜勤務となるシンガポール便の復路の後,2日の休日を挟んで,長大路線で時差があり客室乗務員の負担感が非常に大きいニューヨーク便に乗務しており,乗務時間の合計も75時間を超えていることから,ある程度の負荷が生じていたものと推認される。しかし,ニューヨーク便の乗務後にスケジュールどおりの休日が4日確保され,その翌日も自宅スタンドバイ(S2)となっていることからすれば,平成7年10月の時点で,原告に,疲労の蓄積の観点から特に過剰な負荷が生じていたものとまでは認められない。 f 平成7年11月まず,原告は,8日から11日まで,時差が大きいホノルル便に乗務している。ホノルル便の往路の出頭時刻は18時20分,業務終了時刻は翌日の3時40分であって,徹夜勤務となっており,復路の出頭時刻は2時30分,到着時刻は12時30分(デッ が大きいホノルル便に乗務している。ホノルル便の往路の出頭時刻は18時20分,業務終了時刻は翌日の3時40分であって,徹夜勤務となっており,復路の出頭時刻は2時30分,到着時刻は12時30分(デッドヘッド後の業務終了時刻は16時07分)であって,徹夜勤務となっている。ホノルル便の乗務後にはスケジュールどおりの休日が2日確保されているが,その翌日の国内便3連続乗務の出頭時刻は5時35分と早朝に近くなっている。 また,原告は,20日に国内便2連続乗務(ただし,デッドヘッドを1便含む。)をしており,その業務終了時刻は23時であって,深夜勤務となっている。その後にはスケジュールどおりの2日の休日が確保されている。 さらに,原告は,27日から29日まで,スケジュール変更により,再び時差が大きいホノルル便に乗務している。ホノルル便の往路の出頭時刻は16時50分,業務終了時刻は翌日の2時25分であって,徹夜勤務となっており,復路の出頭時刻は5時,業務終了時刻は15時50分であって,ほぼ早朝勤務となっている。ホノルル便の乗務の前日はスケジュールどおりの1日の休日があるだけで,前々日には国内線3連続乗務(ただし,デッドヘッドを1便含む。)となっている。乗務後にはスケジュールどおりの休日が2日確保されている。 なお,11月のデッドヘッドを除いた乗務時間の合計は65時間46分となっている。 以上のように,11月には,1日のニューヨーク便の復路に乗務した後は,長大路線の乗務はないものの,時差が大きく徹夜勤務となるホノルル便に2度も乗務しており,しかも,2度目はスケジュール変更によるもので,乗務前には休日が1日しかなかったことからすれば,ある程度の負荷が生じていたものと推認されるが,平成7年11月の時点で,原告に,疲労の蓄積の観点から特に過剰な負荷が生 スケジュール変更によるもので,乗務前には休日が1日しかなかったことからすれば,ある程度の負荷が生じていたものと推認されるが,平成7年11月の時点で,原告に,疲労の蓄積の観点から特に過剰な負荷が生じていたものとまでは認められない。 g 平成7年12月(発症前6か月)まず,2日がグループ会議にスケジュール変更され,3日は福岡便に,4日は国内線3連続乗務に,5日は休日に,6日は休日から広島日帰り便に,それぞれスケジュール変更されている。4日の国内線3連続乗務の業務終了時刻は22時50分であって多少深夜勤務となっている。 また,原告は,7日のスケジュールどおりの1日の休日を挟んで,8日から16日まで,長大路線で5時間以上の時差があり,ロストナイトが生じ,客室乗務員の負担感が大きい南米路線(成田・ロサンゼルス,ロサンゼルス・サンパウロ,サンパウロ・ロサンゼルス,ロサンゼルス・成田便)に乗務している。このうち,成田・ロサンゼルス便の出頭時刻は15時35分,業務終了時刻は翌日の3時25分であって徹夜勤務となり,サンパウロ・ロサンゼルス便の出頭時刻は10時35分,業務終了時刻は翌日の零時40分であって深夜勤務となり,ロサンゼルス・成田便の出頭時刻は3時10分,業務終了時刻は17時35分であって,再び徹夜勤務となっている。南米路線の乗務後にはスケジュールどおりの休日が5日確保されているが,その翌日である22日は自宅スタンドバイ(S1)が国内線3連続乗務(ただし,デッドヘッドを1便含む。)にスケジュール変更されており,その出頭時刻は6時30分と比較的早い時間になっている。 さらに,その翌日である23日も自宅スタンドバイ(S1)が国内線3連続乗務に,24日は福岡・羽田便に,26日は出社待機が休日に,それぞれスケジュール変更されている。24日の福岡 時間になっている。 さらに,その翌日である23日も自宅スタンドバイ(S1)が国内線3連続乗務に,24日は福岡・羽田便に,26日は出社待機が休日に,それぞれスケジュール変更されている。24日の福岡・羽田便の業務終了時刻は22時55分であり,多少深夜勤務となっている。 これに続いて,30日から平成8年1月2日まで,スケジュール変更により成田・ケアンズ,ケアンズ・ブリズベン,ブリズベン・ケアンズ,ケアンズ・成田便に乗務している。成田・ケアンズ便の出頭時刻は17時55分,業務終了時刻は翌日の3時40分であって徹夜勤務となっている。そして,ケアンズ・ブリズベン便の出頭時刻は2時45分,折り返しのブリズベン・ケアンズ便乗務後の業務終了時刻は11時15分であって再び徹夜勤務となっている。この一連の乗務の前日はスケジュールどおりの1日の休日があるだけで,前々日には業務終了時刻が21時50分である国内線3連続乗務に乗務している。乗務後にはスケジュールどおりの休日1日に加えて更にその翌日である1月4日にもスケジュール変更により休日が確保されている。 なお,12月のデッドヘッドを除いた乗務時間の合計は77時間51分となっている。 以上のように,12月には,長大路線で時差があり,ロストナイトが生じて客室乗務員の負担感が大きい南米路線に乗務し,その後,スケジュール変更により,徹夜勤務が続くケアンズ・ブリズベン便に乗務していること,南米路線の乗務前の休日は1日であり,その前の5日間はスケジュール変更となっていること,徹夜勤務となるケアンズ・ブリズベン便の乗務前の休日は1日であること,12月の乗務時間の合計は75時間を超えていることなどからすれば,原告にはある程度の負荷が生じていたものと推認されるが,平成7年12月の時点で,原告に,疲労の蓄積の観点から の休日は1日であること,12月の乗務時間の合計は75時間を超えていることなどからすれば,原告にはある程度の負荷が生じていたものと推認されるが,平成7年12月の時点で,原告に,疲労の蓄積の観点から過剰な負荷が生じていたものとまでは認められない。 h 平成8年1月まず,前記のとおり,1日及び2日は,ケアンズ・ブリズベン,ブリズベン・ケアンズ,ケアンズ・成田便にスケジュール変更されており,4日は休日に,5日は休日から香港日帰り便に,6日は自宅スタンドバイ(S1)から休日に,それぞれスケジュール変更されている。 また,原告は,7日から9日までクアラルンプール便に乗務している。その往路の出頭時刻は11時25分,業務終了時刻は翌日の零時10分であって深夜勤務となっており,復路の出頭時刻は23時15分,業務終了時刻は翌日の7時35分であって徹夜勤務となっている。クアラルンプール便の乗務の前日は前記のとおり,スケジュール変更により休日が確保されているが,前々日はスケジュール変更により業務終了時刻が21時09分である香港日帰り便に乗務している。そして,クアラルンプール便の乗務後はスケジュールどおりの2日の休日と,出社待機となっている。 さらに,原告は,17日から20日まで,長大路線で5時間以上の時差があり,客室乗務員の負担感が非常に大きいニューヨーク便に乗務している。ニューヨーク便の往路の出頭時刻は10時15分,業務終了時刻は翌日の1時30分であって深夜勤務となっており,復路の出頭時刻は零時40分,業務終了時刻は17時30分であって徹夜勤務となっている。ニューヨーク便の乗務の前日はスケジュールどおり自宅スタンドバイ(S1)に,前々日は休日になっている。乗務後には,スケジュールどおりの休日が3日確保されており,その翌日である24日もスケジュールど ニューヨーク便の乗務の前日はスケジュールどおり自宅スタンドバイ(S1)に,前々日は休日になっている。乗務後には,スケジュールどおりの休日が3日確保されており,その翌日である24日もスケジュールどおり,自宅待機(S3)となっている。 もっとも,原告は,25日から28日まで,時差はないものの,長大路線であるシドニー便に乗務している。シドニー便の往路の出頭時刻は19時30分,業務終了時刻は翌日の7時15分であって徹夜勤務となっており,復路の出頭時刻は7時と比較的早い時間になっている。シドニー便の乗務後には,スケジュールどおりの休日が2日確保されている。 なお,1月のデッドヘッドを除いた乗務時間の合計は77時間29分となっている。 以上のように,1月には,12月の長大路線で時差があり,ロストナイトを生じ,客室乗務員の負担感が大きい南米路線及び徹夜勤務が続くケアンズ・ブリズベン便に続き,スケジュール変更を挟んで徹夜勤務となるクアラルンプール便に乗務していること,南米路線から31日の間隔で,長大路線で時差があり,客室乗務員の負担感が非常に大きいニューヨーク便に乗務していること,ニューヨーク便の乗務の前々日は休日であったが,前日は零時から8時までの自宅スタンドバイ(S1)であったこと,ニューヨーク便の乗務後の休日は3日であり,その翌日も自宅スタンドバイ(S3)にはなっているものの,その翌日から長大路線であるシドニー便に乗務していること,乗務時間の合計は12月に引き続き75時間を超えていることからすれば,原告には,平成8年1月の時点で,かなりの負荷が生じていたものと推認される。 i 平成8年2月まず,1日は自宅スタンドバイ(S1)がソウル日帰り便に,2日から4日まではシンガポール便に,5日及び6日は休日に,7日は国内線4連続乗務に,8日 生じていたものと推認される。 i 平成8年2月まず,1日は自宅スタンドバイ(S1)がソウル日帰り便に,2日から4日まではシンガポール便に,5日及び6日は休日に,7日は国内線4連続乗務に,8日は国内線3連続乗務に,9日は休日から関西・羽田便に,それぞれスケジュール変更されている。このうち,シンガポール便の復路の出頭時刻は22時45分,業務終了時刻は翌日の7時25分であって徹夜勤務となっている。そして,9日の関西・羽田便の業務終了時刻は23時15分であって,深夜勤務となっている。 また,スケジュールどおりの10日の休日を挟んで,再び11日から14日までが香港シャトル便に,15日が休日に,それぞれスケジュール変更されている。このうち,香港シャトル便の1日目の業務終了時刻は22時25分であって多少深夜勤務となっている。 さらに,16日の休日を挟んで,再び17日が休日から出社待機に,18日の自宅スタンドバイ(S1)が小松日帰り便に,19日の自宅スタンドバイ(S1)が休日に,20日の自宅スタンドバイ(S1)が自宅スタンドバイ(S2)に,それぞれスケジュール変更されている。 これに続いて,原告は,21日から24日まで,長大路線で5時間以上の時差があり,客室乗務員の負担感が非常に大きいニューヨーク便に乗務している。ニューヨーク便の往路の出頭時刻は10時15分,業務終了時刻は翌日の1時30分であって深夜勤務となっており,復路の出頭時刻は零時40分,業務終了時刻は17時15分であって徹夜勤務となっている。乗務後には,スケジュールどおりの休日が4日確保されているが,その翌日である29日には,出頭時刻が5時40分と早朝に近い国内線4連続乗務に,翌々日である3月1日も出頭時刻が7時15分と比較的早い時間である沖縄日帰り便に,3月2日には出頭時刻が7 れているが,その翌日である29日には,出頭時刻が5時40分と早朝に近い国内線4連続乗務に,翌々日である3月1日も出頭時刻が7時15分と比較的早い時間である沖縄日帰り便に,3月2日には出頭時刻が7時と比較的早い時間である名古屋・札幌便に乗務している。 なお,2月のデッドヘッドを除いた乗務時間の合計は76時間59分となっている。 以上のように,2月には,1日からニューヨーク便の前日である20日までの間でスケジュール変更がなかったのはわずか2日間であること,前記1(3)ウのとおり,スケジュール変更は4日から7日前までに通知することとされているものの,実際は前日や当日に通知されることもあったということからすれば,2月21日のニューヨーク便に乗務するために体調を整えることは非常に困難であったものと推認されること,前記1(4)イ(ア)のとおり,勤務パターンの作成資料においてニューヨーク便については30日間のインターバルを確保することが明記されているところ,12月の南米路線から31日の間隔で1月にニューヨーク便,更に31日の間隔で2月にも再びニューヨーク便に乗務していること,ニューヨーク便の乗務前は前記のとおりスケジュール変更が続いており,乗務後の休日はスケジュールどおり4日確保されているものの,その翌日から早朝勤務に近い勤務の国内線乗務が続いていること,乗務時間の合計は12月,1月に引き続き75時間を超えていることからすれば,原告には,遅くとも平成8年2月の時点で,過剰な負荷が生じていたものと推認される。 j 平成8年3月まず,原告は,7日から10日まで,長大路線で5時間以上の時差があるサンフランシスコ便に乗務している。サンフランシスコ便の往路の出頭時刻は16時15分,業務終了時刻は翌日の4時15分であって徹夜勤務となっており,復路の 10日まで,長大路線で5時間以上の時差があるサンフランシスコ便に乗務している。サンフランシスコ便の往路の出頭時刻は16時15分,業務終了時刻は翌日の4時15分であって徹夜勤務となっており,復路の出頭時刻は3時15分,業務終了時刻は16時40分であって深夜勤務となっている。サンフランシスコ便の乗務前にはスケジュールどおりの休日が1日確保されており,乗務後にはスケジュールどおりの休日が3日確保されているが,その翌日である14日は出頭時刻が5時20分と早朝に近い国内線3連続乗務となっており,15日も出頭時刻が7時20分と比較的早い時間である国内線の乗務が続いている。 また,原告は,25日から28日まで,香港シャトル便に乗務している。その1日目の業務終了時刻は22時34分であって多少深夜勤務となっている。香港シャトル便の乗務前にはスケジュールどおりの休日が2日確保されており,乗務後にもスケジュールどおりの休日が2日確保されている。 これに続いて,原告は,31日から4月3日まで,長大路線で5時間以上の時差があり,客室乗務員の負担感が非常に大きいニューヨーク便に乗務している。ニューヨーク便の往路の出頭時刻は10時15分,業務終了時刻は翌日の1時45分であって深夜勤務となっており,復路の出頭時刻は1時,業務終了時刻は17時10分であって徹夜勤務となっている。 乗務後には,スケジュールどおりの休日が3日確保されているが,その翌日である7日は休日から自宅スタンドバイ(S3)に,8日は自宅スタンドバイ(S1)から出頭時刻が8時15分である上海便3連続乗務(ただし,デッドヘッドを1便含む。)に,9日は自宅スタンドバイ(S1)が休日に,10日は自宅スタンドバイ(S2)が伊丹日帰り便にそれぞれスケジュール変更されている。 なお,3月のデッドヘッドを除い だし,デッドヘッドを1便含む。)に,9日は自宅スタンドバイ(S1)が休日に,10日は自宅スタンドバイ(S2)が伊丹日帰り便にそれぞれスケジュール変更されている。 なお,3月のデッドヘッドを除いた乗務時間の合計(31日のニューヨーク便往路の乗務時間も含む。)は88時間36分となっている。 以上のように,3月には,スケジュール変更は1日もない。しかし,前記1(4)イ(ア)のとおり,ニューヨーク便は,A株式会社においても,スケジュール作成時に30日のインターバルを空けるという特別の配慮をしていることからしても,客室乗務員にとって非常に負担がかかる乗務であると推認できるところ,原告は,12月の南米路線,31日の間隔で1月にニューヨーク便,31日の間隔で2月にニューヨーク便,11日の間隔でサンフランシスコ便,更に20日の間隔(2月のニューヨーク便からは35日の間隔)で3か月連続してニューヨーク便に乗務していること,このような3か月連続したニューヨーク便の乗務はチーフパーサーのスケジュールでは通常見られないこと,サンフランシスコ便の乗務前はスケジュールどおりの休日が1日であり,乗務後の休日はスケジュールどおりの休日が3日確保されているものの,その翌日からは早朝勤務に近い勤務が続いていること,ニューヨーク便の乗務前はスケジュールどおり休日が2日確保され,乗務後もスケジュールどおりの休日が3日確保されているものの,その翌日からスケジュール変更が続いていること,乗務時間の合計は前月まで3か月間75時間を超えていたことに加えて,88時間36分と就業規則における乗務時間の上限85時間を超えていることからすれば,原告には,平成8年3月の時点で,前月に引き続き,更に過剰な負荷が生じていたものと推認される。 k 平成8年4月前記のニューヨーク便乗務及 おける乗務時間の上限85時間を超えていることからすれば,原告には,平成8年3月の時点で,前月に引き続き,更に過剰な負荷が生じていたものと推認される。 k 平成8年4月前記のニューヨーク便乗務及びその後のスケジュール変更の後,原告は,14日から17日まで,成田・ジャカルタ,ジャカルタ・デンパサール,デンパサール・ジャカルタ,ジャカルタ・成田便に乗務している。ジャカルタ・デンパサール便の出頭時刻は18時10分,折り返しのデンパサール・ジャカルタ便の業務終了時刻は翌日の零時45分であって深夜勤務となっている。そして,ジャカルタ・成田便の出頭時刻は零時15分,業務終了時刻は9時07分であって徹夜勤務となっている。この一連の乗務の前は,スケジュールどおり,休日,定期救難訓練,自宅スタンドバイ(S2)となっており,乗務の後はスケジュールどおりの休日が2日確保されているが,その翌日の20日には,出頭時刻が8時15分と比較的早い時間のサイパン日帰り便に乗務している。 また,原告は,その翌日である21日から23日まで,時差が大きいホノルル便に乗務している。ホノルル便の往路の出頭時刻は20時15分,業務終了時刻は翌日の5時40分であって,徹夜勤務となっており,復路の出頭時刻は5時10分,業務終了時刻は16時15分であって,早朝勤務に近い勤務となっている。ホノルル便の乗務の前日は前記のとおり休日はなく,乗務後にはスケジュールどおりの休日が2日確保され,自宅スタンドバイ(S1)後,休日が1日確保されている。 なお,4月のデッドヘッドを除いた乗務時間の合計は63時間25分となっている。 以上のように,4月には,4か月ぶりに乗務時間の合計が60時間台となっているが,3日まで前記のとおりニューヨーク便に乗務しており,その後も徹夜勤務となるジャカルタ・デ 3時間25分となっている。 以上のように,4月には,4か月ぶりに乗務時間の合計が60時間台となっているが,3日まで前記のとおりニューヨーク便に乗務しており,その後も徹夜勤務となるジャカルタ・デンパサール便,時差が大きく徹夜勤務となるホノルル便が続いていることからすれば,平成8年4月の時点で,前月までの過剰な負荷が解消できる状況ではなかったものと推認される。 l 平成8年5月まず,2日には国内線2連続乗務をしているが,その業務終了時刻は22時50分であって多少深夜勤務となっている。 また,4日から7日まで,長大路線で5時間以上の時差があるフランクフルト便に乗務している。フランクフルト便の往路の出頭時刻は11時15分,業務終了時刻は翌日の1時25分で深夜勤務となっており,復路の出頭時刻は2時20分,業務終了時刻は16時12分であって徹夜勤務となっている。フランクフルト便の乗務前にはスケジュールどおりの休日が1日確保されているが,前々日である2日は,前記のとおり,業務終了時刻が22時50分の国内線2連続乗務となっている。そして,フランクフルト便の乗務後には,スケジュールどおりの休日が3日確保されている。 その後,11日のデッドヘッド乗務を経て,原告は,12日から16日まで,関西・ケアンズ,ケアンズ・ブリズベン,ブリズベン・ケアンズ,ケアンズ・成田便に乗務している。関西・ケアンズ便の出頭時刻は19時55分,業務終了時刻は翌日の5時であって徹夜勤務となっており,ケアンズ・ブリズベン便の出頭時刻は2時45分,折り返しのブリズベン・ケアンズ便乗務後の業務終了時刻は10時58分であって再び徹夜勤務となっている。この一連の乗務の前日は前記のデッドヘッドであり,その前はスケジュールどおりの3日の休日が確保されている。乗務後にはスケジュールど 務後の業務終了時刻は10時58分であって再び徹夜勤務となっている。この一連の乗務の前日は前記のデッドヘッドであり,その前はスケジュールどおりの3日の休日が確保されている。乗務後にはスケジュールどおりの休日3日が確保されている。 さらに,21日は自宅スタンドバイ(S1)から国内線3連続乗務に,22日も自宅スタンドバイ(S1)から国内線3連続乗務に,23日は自宅タンドバイ(S1)から休日に,25日は休日から自宅スタンドバイ(S2)に,それぞれスケジュール変更されている。このうち,21日の国内線3連続乗務の業務終了時刻は22時52分であって多少深夜勤務となっている。 また,原告は,26日から本件発症の前日である28日まで,香港シャトル便に乗務しており,その1日目は業務終了時刻が23時15分であって,深夜勤務となっている。 なお,5月のデッドヘッドを除いた乗務時間の合計は71時間53分となっている。 以上のように,5月には,長大路線で時差があるフランクフルト便に乗務し,更に徹夜勤務となるケアンズ・ブリズベン便にも乗務していることなどからすれば,平成8年4月までの過剰な負荷が解消できる状況ではなかったものと推認される。 イ前記1のとおり,客室乗務員の勤務形態はもともと不規則なものであること,国際線の客室乗務員の場合には,勤務時間が早朝,深夜,徹夜と様々であり,長大路線や1日に複数の路線に乗務する場合等には拘束時間が非常に長くなること,5時間以上の時差のある地域への乗務も度々こなさなければならないこと,長時間の乗務であっても一定の休憩時間を必ず取ることができるとは限らず,その休憩場所の設備も必ずしも十分に整っているとまではいえないことなどに照らすと,一般的に,国際線の客室乗務員の業務は,一定量の良質な睡眠を確保することが困難であることな ることができるとは限らず,その休憩場所の設備も必ずしも十分に整っているとまではいえないことなどに照らすと,一般的に,国際線の客室乗務員の業務は,一定量の良質な睡眠を確保することが困難であることなどから疲労を蓄積させやすい業務であるといえる。 また,前記1(1)によれば,保安業務とサービス業務をその主な内容とする客室乗務員の業務はある程度の精神的負担を伴うものであり,特に客室の最終責任者であるチーフパーサーの場合には,チーフパーサー固有の業務もこなしているため,一般の客室乗務員と比較してより大きな精神的負担を伴っていることが推認される。 さらに,前記ア(イ)の総乗務時間数や前記ア(ウ)の事実からすれば,特に本件疾病を発症する6か月前である平成7年12月から平成8年3月までの4か月間の原告の乗務パターンは,内容面からしても,乗務時間数からしても,非常に密度が高く,同年1月以降,身体的にかなりの負荷ないし過剰な負荷をもたらすものであったことが推認できるのに対し,他方で,原告に付与されている休日は,前記2(1)イ(ク)のとおり,就業規則によって付与すべきとされている休日の最低限である10日から12日であり,原告は,有給休暇もほとんど申請していなかったことからすれば,休日・休暇による疲労の回復もあまり期待できない状況にあったといえる。そして,前記ア(ウ)k,lのとおり,平成8年4月及び5月においても,同年2月からの乗務による過剰な負荷が解消されておらず,疲労が回復しているとはいえない。 加えて,証拠によれば,遅くとも平成8年4月ころには,原告には,その所属する労働組合からの脱退問題による精神的負担が存在していたことも認められる。 以上を総合すれば,原告は,少なくとも平成8年1月ころから継続して業務による相当ないし過剰な身体的及び精神的 ,その所属する労働組合からの脱退問題による精神的負担が存在していたことも認められる。 以上を総合すれば,原告は,少なくとも平成8年1月ころから継続して業務による相当ないし過剰な身体的及び精神的負荷を受け続けており,そのような業務の継続が原告に慢性的な疲労をもたらしたことは否定し難い。このことは,前記2(2)イ(エ),3(2)のとおり,原告が,平成8年4月ころ,夫や同僚に疲れたなどと訴えたり,同年5月には,フライト先で,疲労を理由に上司や同僚による食事の誘いを断ったり,家庭において,頭痛・手のしびれ・肩のこりなど体調不良を訴え,吐き気を催したり,職場の健康診断において,倦怠感・疲労感など19項目について時々,視力低下など3項目について常に自覚症状があると述べていたこととも符合するのである。 そうすると,本件発症前の業務は,疲労を蓄積する程度の過重な負荷を伴うものであったとみるべきである。 (3)アこの点,被告は,原告の乗務スケジュールについては,乗務時間,休養時間,乗務後の休暇など就業規則を満たしており,特段負荷が高いとはいえない旨主張する。 しかしながら,就業規則を満たしているからといって,直ちに業務の負荷が高くないということにはつながらず,負荷の有無については,その業務内容から個別に判断されるべきであるから,被告の前記主張は採用することができない。 イまた,被告は,症状が重ければ,休暇を申請するはずのところ,原告は,休暇を申請,取得することなく乗務しているとして,原告に疲労が蓄積していたということはできない旨主張する。 しかしながら,有給休暇の申請は義務ではないし,証拠によれば,本件発症前,原告に休暇の申請を躊躇させていた可能性も否定できず,原告が有給休暇の申請をしていないことをもって,直ちに本件発症前に疲労が蓄積してい がら,有給休暇の申請は義務ではないし,証拠によれば,本件発症前,原告に休暇の申請を躊躇させていた可能性も否定できず,原告が有給休暇の申請をしていないことをもって,直ちに本件発症前に疲労が蓄積していなかったとはいえないから,被告の前記主張は採用することができない。 ウさらに,被告は,原告が平成8年5月20日の健康診断の問診票において,特に眠れないとは記載していないことなどから,睡眠不足の状態にあったわけではない旨主張する。 確かに,原告は,平成8年5月20日の健康診断に限らず,それ以前の健康診断においても,睡眠不足は訴えていないことからすれば,睡眠自体はそれなりに確保できていたものと推認できる。しかしながら,睡眠の量はそれなりに確保できていたとしても,前記のとおり,時差の影響や不規則な勤務形態であることに照らせば,睡眠の質が良かったとまではいえず,被告の前記主張は採用することができない。 (4)アまた,被告は,原告の健康診断での血圧値は一貫して正常範囲内にあり,高血圧の存在を示す根拠はない事実からみて,業務内容のいかんにかかわらず,長期にわたって業務上の理由によって血圧が上昇し,原告の嚢状脳動脈瘤の成長が促進されたとする医学的根拠はないものと判断されるとして,原告の嚢状脳動脈瘤の成長は素因としてあった血管壁の脆弱性に基づく自然経過の範疇内にあったものと判断されると主張し,これに沿う証拠もある。 確かに,前記3(1)のとおり,原告の健康診断における血圧は,いずれもいわゆる高血圧症の範疇に入るものとはいえない。 イ(ア) しかしながら,原告に対して24時間血圧の測定が行われていたわけではなく,前記の原告の血圧は,かなり期間があいている健康診断におけるデータにすぎず,しかも,一覧表によれば,平成8年1月の健康診断も同年5月の健康診断も,乗 て24時間血圧の測定が行われていたわけではなく,前記の原告の血圧は,かなり期間があいている健康診断におけるデータにすぎず,しかも,一覧表によれば,平成8年1月の健康診断も同年5月の健康診断も,乗務の直後ではなく,一般に血圧が上昇しない休日後に行われたものである。 (イ) 前記4のとおり,最近では,長期間にわたる業務による疲労の蓄積も脳疾患の発症に及ぼす負荷として認識されるようになってきており,証拠によれば,長時間残業,休日なし労働,深夜労働など生体リズムに反する労働での過重負担が持続したり,睡眠リズムの乱れなどにより生活習慣が破綻している場合に生じるストレスにより,大脳皮質に過剰ストレス反応が発生し,カテコーラミン等が増加し,血圧が上昇するというメカニズムがあることが認められるところ,原告の業務は,前記(2)のとおり,不規則で,長時間勤務や早朝・深夜・徹夜勤務もあり,また,時差の影響を度々受けるものであって,特に本件発症前の原告の業務は疲労を蓄積する程度の過重な負荷を伴うものであったといえることからすれば,少なくとも乗務中や乗務直後には前記メカニズムによる血圧上昇が生じていたとみるのが自然である。 そして,前記1(2)エのとおり,高度3万5000フィート及び巡航速度0.84マッハでの代表的な巡航速度では,比較的前方の通路側座席,頭部の高さで最大87デシベル,比較的後方の通路側座席,頭部の高さで最大95デシベル,機内2階席通路側,頭部の高さで最大87デシベルの騒音にさらされているところ,前記4(2)イ(イ)f(a)によれば,75デシベル程度の騒音で一時的な血圧上昇が認められることや80デシベル以上の慢性的な騒音ばく露によって,収縮期血圧や拡張期血圧の上昇傾向がみられるとの報告があることからすれば,少なくとも,乗務中の客室乗務員の血 の騒音で一時的な血圧上昇が認められることや80デシベル以上の慢性的な騒音ばく露によって,収縮期血圧や拡張期血圧の上昇傾向がみられるとの報告があることからすれば,少なくとも,乗務中の客室乗務員の血圧は上昇しているものと推認される。また,証拠によれば,客室乗務員の乗務直後の血圧は通常の血圧よりも上昇する傾向があることが認められる。 (ウ) また,前記4(2)ケのとおり,血圧の低下により血管壁の修復作用が働くところ,睡眠の質・量が不良である場合には血圧の十分な低下が起こらないという知見があることからすると,不規則で,早朝・深夜・徹夜勤務があり,時差の影響も受け,過度に疲労が蓄積していた状況で,その疲労回復のための休養も必ずしも十分にはとれていなかったと考えられる原告の場合も,血圧の十分な低下が起こらずに血管壁の修復作用が十分に機能していなかった可能性も否定できない。実際,夜間に血圧が高くなる仮面高血圧症という病態も存在しているのである(エ) さらに,前記4(2)エのとおり,脳動脈瘤の発生及び成長に関与する要因としては,血管壁の脆弱性と血行力学的負荷があるところ,証拠によると,脳動脈瘤の成長という観点からすれば,ここにいう血行力学的負荷とは,高血圧症の場合による負荷のみを指すのではなく,血管壁に圧力をかけるものとして,通常の血流によっても常に負荷がかかっていると捉えるべきであるとする見解があることが認められる。そうすると,高血圧症の場合に比べれば,負荷の度合いは低いとしても,高血圧症に至っていない場合であっても,その者の血圧を上昇させる要因があれば,血行力学的負荷を増大させているとみることができる。 (オ) 以上を総合すれば,原告が高血圧症であることのデータがないとしても,前記(2)のとおりの過重な負荷を伴う本件発症前の業務により,血圧 ば,血行力学的負荷を増大させているとみることができる。 (オ) 以上を総合すれば,原告が高血圧症であることのデータがないとしても,前記(2)のとおりの過重な負荷を伴う本件発症前の業務により,血圧の上昇が生じて血行力学的負荷が増大し,また,血圧の低下が阻害されて血管壁の修復作用が十分に機能せず,原告に発生していた脳動脈瘤の成長が促進されたものと考えることもできる。したがって,前記アの原告の嚢状脳動脈瘤の成長は素因としてあった血管壁の脆弱性に基づく自然経過の範疇内にあった旨の被告の主張に沿う証拠は採用することができない。 (5) 次に,前記3(3)及び4(2)ウ(イ)のとおり,原告は,本件発症当時,脳動脈瘤(破裂)の好発年齢である40歳代であり,また,危険因子の1つとして挙げられている喫煙の習慣も,1日11本から20本以内ではあるもののあったことが認められるが,こうした加齢や喫煙の習慣が原告の基礎疾患である脳動脈瘤の確たる増悪要因となったとは認められない。 また,前記4(2)キのとおり,未破裂脳動脈瘤の破裂する確率は年間1パーセント足らずであり,くも膜下出血の既往歴のないグループの長径10ミリメートル以下の脳動脈瘤の年間破裂率は0.05パーセント以下であるとの報告があり,脳動脈瘤は必ずしも自然経過の中で全例破裂するわけではなく,生涯破裂することなく終わる可能性があるところ,原告の基礎疾患である脳動脈瘤が,本件発症当時,その自然の経過によって一過性の血圧上昇があれば,直ちに破裂を来す程度に増悪していたと認めるに足りる証拠もない。 (6) 以上のような原告が本件発症前6か月間に従事していた業務の内容,態様,遂行状況等に加えて,他に確たる脳動脈瘤の増悪要因を見い出せないことなどを併せ考えれば,原告が本件発症前に従事した業務による過重な精神的,身 な原告が本件発症前6か月間に従事していた業務の内容,態様,遂行状況等に加えて,他に確たる脳動脈瘤の増悪要因を見い出せないことなどを併せ考えれば,原告が本件発症前に従事した業務による過重な精神的,身体的負荷が基礎疾患である原告の脳動脈瘤をその自然の経過を超えて増悪させ,本件疾病の発症に至ったものとみるのが相当であり,原告の業務と本件疾病の発症との間には相当因果関係があるということができる。 したがって,本件疾病は労働基準法施行規則35条別表第1の2第9号にいう「その他業務に起因することの明らかな疾病」に該当するといえるから,本件各処分は違法である。 第4 結論以上によれば,原告の各請求はいずれも理由があるから,これらを認容することとし,主文のとおり判決する。なお,甲事件の主文の仮執行宣言については,相当でないからこれを付さないこととする。 千葉地方裁判所民事第3部裁判長裁判官山口博裁判官武田美和子及び裁判官島根里織は,転補につき,署名押印することができない。 裁判長裁判官山口博(別紙省略)
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