平成12(ネ)3247 富士見交通懲戒解雇

裁判年月日・裁判所
平成13年9月12日 東京高等裁判所
ファイル
hanrei-pdf-18749.txt

判決文本文23,015 文字)

(原審・横浜地方裁判所小田原支部平成8年(ワ)第550号(原審言渡日平成12年6月6日)) 主文 原判決を取り消す。 被控訴人の請求を棄却する。 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第一控訴の趣旨主文と同旨第二事案の概要本件は、控訴人から懲戒解雇された被控訴人が、本件懲戒解雇は控訴人の就業規則に定められた懲戒解雇事由に該当する事実が存在せず、解雇権の濫用に当たり、あるいは不当労働行為で無効であるなどと主張して、控訴人に対し、雇用契約上の地位の確認と解雇された日の翌日からの未払賃金の支払を求めたところ、原審が、本件懲戒解雇は、控訴人の就業規則に定められた懲戒解雇事由に該当する事実が存在せず、かつ、不当労働行為に当たり、無効であるとして、被控訴人の請求を認容したため、控訴人がこれを不服として控訴を申し立てた事案である。なお、控訴人は、原審において、控訴人主張に係る被控訴人の非違行為の一部について本件懲戒解雇の事由とすることが許されないと判断されたため、当審において、予備的に、これら非違行為の全部を懲戒解雇事由とする懲戒解雇の意思表示をした。 本判決においては、原則として原判決と同じ略語を使用することとする。 一前提となる事実及び争点は、原判決7頁5行目の「乙六」を「乙22、24」に、同8頁6行目の「懲戒解雇にする」を「懲戒解雇する」に、同19頁3行目の「妨害した」を「阻害した」に、原判決添付別紙一「職場離脱合計時間一覧表」6頁の「10月25日」欄の「6時間00分」を「5時間00分」にそれぞれ改め、控訴人の当審における補充主張及び新主張を次項のとおり、被控訴人の当審における補充主張及び新主張を第三項のとおりそれぞれ加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄中の「 「5時間00分」にそれぞれ改め、控訴人の当審における補充主張及び新主張を次項のとおり、被控訴人の当審における補充主張及び新主張を第三項のとおりそれぞれ加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄中の「第二事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。 二控訴人の当審における補充主張及び新主張 1 営業車両のメーター不正操作に関する控訴人の認識について個人別営業明細表は、各乗務員につき、営業車両のメーターの使用状況等が機械的に記録されるものであるところ、被控訴人に関する営業明細表には、明白に不合理なメーター操作が記録されている箇所(例えば平成7年12月26日の部分)があるのみならず、走行距離、時間及び料金の関係からみて不自然と思われるメーターの使用方法が「迎車」絡みの場合に集中して記録されていることに照らし、被控訴人が営業車両のメーター不正操作を行っていたことは明らかである。そして、上記営業明細表は、最も確実な電磁的記録による料金管理に関する資料であり、控訴人としては、少なくとも上記の明白に不合理なメーター操作が記録されている箇所によって被控訴人のメーター不正操作の事実を認識していたのである。 2 平成8年2月27日における営業車両の飲酒運転に関する控訴人の認識について控訴人は、平成8年2月27日の被控訴人の職場離脱を認識したため、被控訴人が同日に行ったスナック「甲」で同席していた控訴人の従業員等から事情聴取をした結果、被控訴人の就業時間中の飲酒及び営業車両の飲酒運転の事実を認識した。 このことは、同年3月2日の本件懲戒解雇通告後間もなく、組合本部の役員と控訴人との間で本件懲戒解雇に関する交渉が数回持たれた際、控訴人が組合本部に対して被控訴人の上記飲酒運転を厳しく指摘したことからも明らかである。 3 粗暴な言動による職場秩序の侵害 、組合本部の役員と控訴人との間で本件懲戒解雇に関する交渉が数回持たれた際、控訴人が組合本部に対して被控訴人の上記飲酒運転を厳しく指摘したことからも明らかである。 3 粗暴な言動による職場秩序の侵害、脅迫・虚偽申告による業務阻害及び営業車両の違法駐車について控訴人が主張する被控訴人の粗暴な言動による職場秩序の侵害、脅迫・虚偽申告による業務阻害及び営業車両の違法駐車については、後記のとおり、控訴人は、本件懲戒解雇に先立つ約1年前の平成7年4月15日、これらが職場離脱、メーター不正操作等とともに懲戒解雇事由に該当するとして、組合本部の副委員長Aに対して被控訴人の懲戒解雇を提案していたのであり、何らの処分の検討も行わなかったわけではない。 4 平成7年4月15日における控訴人からA副委員長に対する被控訴人の懲戒解雇の提案について控訴人は、平成5年12月20日には乙支部に対し、平成7年4月15日には組合本部に対し、被控訴人の就業状態の劣悪さを告知しつつ、被控訴人の解雇につき了承を求めるべく通告したが、平成5年12月20日の通告の際には、乙支部役員から「今後は必ず指導改善させます」との懇願があり、また、平成7年4月15日の通告の際にも、A副委員長から、「1年間だけ勘弁してください。絶対に直させます。もし直らなければ、本部としても被控訴人を擁護しません」との誓約があったことから、結局、被控訴人の解雇を見送った。被控訴人は、A副委員長からこの経緯を告げられたにもかかわらず、その後も非違行為を重ねたのであり、控訴人は、それらが重大な非違行為であることを考慮し、組合本部に事前の説明等をすることなく、本件懲戒解雇に踏み切ったのである。以上の事実は、乙151(A副委員長の陳述書)等により明らかである(乙151に関する被控訴人の主張に対する反論は、後記 慮し、組合本部に事前の説明等をすることなく、本件懲戒解雇に踏み切ったのである。以上の事実は、乙151(A副委員長の陳述書)等により明らかである(乙151に関する被控訴人の主張に対する反論は、後記9のとおりである。)。 上記事実関係に照らしても、乙2の通告書(以下「本件通告書」という。)の交付により被控訴人に対して本件懲戒解雇を通告した際、控訴人が、本件通告書に記載されたもののみならず、控訴人主張に係るすべての懲戒解雇事由について検討していたことは明らかであり、また、本件懲戒解雇に先立ち、賃金カットや始末書を取るなどの「前段階的処分」をしなかったことも、何ら不自然ではない。 5 本件懲戒解雇の事由について控訴人は、本件懲戒解雇の事由が多岐にわたるため、本件懲戒解雇を最終的に決定する契機となった事由すなわち職場離脱行為のみを本件通告書に記載したにすぎず、本件懲戒解雇の事由がこれに限定されるものではない。 なお、被控訴人は、本件通告書を受領するや、直ちに退席して、控訴人が懲戒解雇事由を告知する機会を奪い、また、平成8年2月29日に控訴人から事情聴取を受けた際にも、同月27日の職場離脱について「組合活動である」との強弁に終始しているのであるから、本件通告書に記載された懲戒解雇事由以外の事由について、被控訴人が本件通告書を受領した際に告知されていないこと、あるいは控訴人から事情聴取されていないことをもって、本件懲戒解雇の事由を本件通告書に記載されたものに限定する理由とすることはできない。 6 予備的懲戒解雇の意思表示について(新主張)仮に、控訴人主張に係る被控訴人の非違行為の一部について本件懲戒解雇の事由とすることが許されないとしても、これら非違行為は控訴人の就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するから、控訴人は、平成12年9月25日の当審口 主張に係る被控訴人の非違行為の一部について本件懲戒解雇の事由とすることが許されないとしても、これら非違行為は控訴人の就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するから、控訴人は、平成12年9月25日の当審口頭弁論期日において、被控訴人に対し、予備的に懲戒解雇の意思表示をした。 7 職場離脱について乙12及び14により認められる被控訴人の各乗車日毎の職場離脱時間と、職場離脱が多いと被控訴人から特に名指しのあった控訴人の従業員3名のそれ(乙107ないし109)とを比較すると、被控訴人については、大半の乗車日においてほぼ継続的・常態的に数時間(2時間を超えるもの)の職場離脱が見られ、その頻度及び程度の両面において遙かに悪質である。これは、執行委員会等の組合活動の時間を控除しても同様である。その上、被控訴人のデータは平成7年度の、上記3名のデータは平成9年度の各運行についてのものであるところ、平成7年度当時の方がタクシー業界全体の実車率が高かったことなどに鑑みると、被控訴人の乗車勤務状況が上記3名のそれよりも著しく劣悪であったことは明らかである。 8 不当労働行為について原判決は、本件懲戒解雇が不当労働行為に当たると判断しているが、①控訴人は、乙支部支部長のB及び同副支部長の被控訴人が平成7年12月ころに労働基準監督署及び陸運局に対して控訴人の本件運行管理体制について告発(本件告発)をしたこととは関係なく、被控訴人の懲戒解雇について検討していたのであって、本件告発が本件懲戒解雇の動機になったとする余地はないこと、②原判決は、「C社長は、本件告発を知るや、本件告発が控訴人の経営に与える影響を懸念し、富士見交通支部の執行委員や組合本部のA副委員長との間で協議を行っていた」と認定しているが、かかる事実を認めるに足りる客観的証拠はないこと、③控訴人が問題と 件告発が控訴人の経営に与える影響を懸念し、富士見交通支部の執行委員や組合本部のA副委員長との間で協議を行っていた」と認定しているが、かかる事実を認めるに足りる客観的証拠はないこと、③控訴人が問題としていたのは、被控訴人の組合活動ではなく、組合活動に名を借りた職場離脱であること、④原判決は、「被控訴人は、本件懲戒解雇以前にも、執行委員会終了後に食事をしながら組合活動その他の話合いをしたことがあったが、控訴人がそのことに対して職場離脱を理由に懲戒処分を行ったことはなかった」と認定しているが、平成8年2月27日の単なる飲食行為を「組合活動その他の話合い」と同視している点で誤っていること、⑤原判決は、本件懲戒解雇には懲戒解雇事由が存しないとしているが、この前提が間違っていること、以上の①ないし⑤の諸点からして、原判決の上記判断は誤っている。 9 乙151(A副委員長の陳述書)についてC社長は、原審において、A副委員長との友人関係及び同人に対する本件告発の取下げの依頼を明確に否定する旨の供述をしている。 A副委員長は、組合本部の役員という自らの立場に鑑み、原審においては陳述書の提出を差し控えていたが、控訴人の従業員であったDの自殺とその原因が被控訴人による本件告発にあることを知り、当審において乙151の陳述書を提出するに至った。 被控訴人は、後記甲59(Eの陳述書)に添付された「自交総連副委員長A氏挨拶の録音筆記」と題する書面によれば、A副委員長は、この挨拶において、本件懲戒解雇は不当であり、原点に立ち帰って組合は被控訴人を支援すべきである旨述べていると主張するが、組合本部の役員であったA副委員長がそのような発言をすることは別段不自然ではなく、むしろ、乙151の陳述書を作成するに至った経緯がいかに重大なものであったかを窺わせるものである。 ていると主張するが、組合本部の役員であったA副委員長がそのような発言をすることは別段不自然ではなく、むしろ、乙151の陳述書を作成するに至った経緯がいかに重大なものであったかを窺わせるものである。 以上のとおりであるから、乙151はA副委員長が認識している事実をありのまま陳述したものというほかない。 三被控訴人の当審における補充主張及び新主張 1 平成8年2月27日の被控訴人の飲酒について被控訴人は、平成8年2月27日午後7時ころスナック「甲」でホットウーロンハイ(焼酎のウーロン茶割り)を1杯飲んだだけで、同日午後12時ころ同店を出るまでの間に飲酒したことはない。この程度の飲酒であれば、経験則上、同店を出るころまでにはアルコールの影響は完全に除去されているとみるべきであるから、控訴人の主張するような飲酒運転の事実はない。 また、被控訴人としては、この日は、非就労届を提出していたため、就労中であるという認識がなかった上、Bに対して執行委員会の報告をしたり、春闘や違法な長時間労働の問題に対する取組み等を話し合う必要があったため、かなり長時間にわたり同店に滞在するつもりであったことなどの事情を考慮すれば、被控訴人において皆と乾杯するためにホットウーロンハイを1杯だけ飲んだことが非違行為として問題にするほどのものではないことは明らかである。 さらに、これまで、控訴人においては、労使交渉の後、社長自らが組合役員を引き連れて食堂で飲食をし、その際に就業時間中の役員も飲酒したことがあり、また、控訴人の従業員であるFは、本件懲戒解雇後の平成8年6月6日、営業車両を飲酒運転して事故を起こしたが、懲戒解雇されずに10日間の乗務停止の処分を受けたにすぎないことなどの過去の事例からしても、被控訴人の平成8年2月27日の飲酒行為を懲戒解雇事由とすること 、営業車両を飲酒運転して事故を起こしたが、懲戒解雇されずに10日間の乗務停止の処分を受けたにすぎないことなどの過去の事例からしても、被控訴人の平成8年2月27日の飲酒行為を懲戒解雇事由とすることは許されない。 2 予備的懲戒解雇の意思表示について(新主張)控訴人は、本件懲戒解雇時において控訴人の主張する予備的解雇事由のすべてについて認識していたと主張するが、そうであれば、本件通告書に記載された職場離脱以外の事由はすべて処分の対象としないという認識であったとみるべきであるから、上記事由をもって再度処分の対象とすることは、一事不再理の原則からも許されない。 3 A副委員長に対する解雇提案について控訴人は、本件懲戒解雇前にA副委員長に対して被控訴人の解雇について提案したところ、A副委員長から1年間待ってほしい旨要請され、同人との約束で処分を差し控えていたなどと主張するが、本件懲戒解雇は上記提案から1年が経過する以前に行われたのであるから、仮に控訴人が主張するような事実があったとするならば、本件懲戒解雇前に、組合本部と控訴人との間でそのことについて何らかの話し合いがされてしかるべきであるにもかかわらず、相互に連絡を取り合った形跡すらない。また、甲59(Eの陳述書)に添付された「自交総連副委員長A氏挨拶の録音筆記」と題する書面は、A副委員長が平成9年9月21日に副委員長を退任するに当たり富士見交通支部第17回定期大会において組合員に対して行った挨拶の録音テープを、Eにおいて反訳したものであるが、同書面によれば、A副委員長は、上記挨拶において、控訴人の主張するような解雇提案について全く説明していないことが認められる。したがって、控訴人主張に係る解雇提案の事実が存在しないことは明らかである。 4 乙151(A副委員長の陳述書)について控訴 人の主張するような解雇提案について全く説明していないことが認められる。したがって、控訴人主張に係る解雇提案の事実が存在しないことは明らかである。 4 乙151(A副委員長の陳述書)について控訴人は、A副委員長に対する解雇提案があったことを裏付けるための証拠として乙151(A副委員長の陳述書)を提出しているが、①その体裁及び書式がC社長の陳述書(乙33)のそれと極めて似通ったものであること、②A副委員長とC社長とは個人的にも親密な付合いがあり、また、A副委員長は、C社長の働きかけに応じ、本件告発をした被控訴人らの意思を全く無視して本件告発を取り下げ、更に、その後、A副委員長が、自交総連系労働組合の副委員長を退任し、都市交通労働組合を率いて自交総連を脱退した上、ハイタク労働組合共闘会議を結成した際には、C社長は、その腹心の部下であるGらとともに、控訴人の従業員をハイタク労働組合に加盟させる工作を執拗に展開してきたのであって、A副委員長とC社長は、自交総連系労働組合の支部を切り崩し、ハイタク労働組合を育成するという共通の目的で結ばれていたこと、③前記甲59に添付された「自交総連副委員長A氏挨拶の録音筆記」と題する書面によれば、A副委員長は、この挨拶において、控訴人主張に係る解雇提案について全く説明しておらず、かえって、本件懲戒解雇は不当であり、組合は原点に立ち帰って被控訴人を支援すべきである旨述べていることなどに照らすと、乙151の陳述書が、C社長の要請に基づき、同社長の意のままに作成されたものであることは明らかである。 第三当裁判所の判断一争点1(本件懲戒解雇の理由とされた非違行為は何か)について 1 前記引用に係る原判決認定の前提となる事実、証拠(書証の枝番を省略する。 以下同じ。)(甲14、15、19、36、40ないし42、乙3な 争点1(本件懲戒解雇の理由とされた非違行為は何か)について 1 前記引用に係る原判決認定の前提となる事実、証拠(書証の枝番を省略する。 以下同じ。)(甲14、15、19、36、40ないし42、乙3ないし7、22、28、33、41、42、54、72、119、136、証人R、同W、同J、同K、同G、同Lの各証言、被控訴人本人尋問の結果、控訴人代表者C尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば、本件懲戒解雇に至る経緯及びその後の経過について、以下の事実が認められる。 (一) 被控訴人は、昭和58年12月27日付けで控訴人に雇用され、本件懲戒解雇に至るまでタクシー乗務員として勤務していた。 被控訴人は、平成元年9月に控訴人の乙営業所の従業員によって組織される富士見交通乙支部の副支部長に就任して以来、同支部長に就任した1年間を除き、本件懲戒解雇に至るまで副支部長の地位にあった。 (二) 被控訴人は、平成5年ころ、控訴人が運輸省(当時)から認可を受けていた夜間専用タクシーに昼間の女性アルバイトを乗務させていたことを陸運局に申告し、その結果、控訴人は、上記運用を是正した。 (三) 控訴人では、隔日勤務乗務員の1乗務ごとの拘束時間は午前8時から翌日午前2時までの18時間、うち就業時間は15時間、乗務に従事しなければならないハンドル時間は、始業点検、終業後の納金事務に要する時間等を考慮して、14時間30分と定められていた。 (四) ところで、控訴人の乗務員の中には、収入アップのため、所定の勤務日以外のいわゆる「明け番」の日あるいは公休日にも乗務すること(「明け出」あるいは「公出」)を希望する者が多く、控訴人にとっても、これを認めることにより営業収入が増加する点で好都合であったことから、昭和61、2年ころ、控訴人と富士見交通支部との間で、希望する 「明け出」あるいは「公出」)を希望する者が多く、控訴人にとっても、これを認めることにより営業収入が増加する点で好都合であったことから、昭和61、2年ころ、控訴人と富士見交通支部との間で、希望する乗務員に対し「明け出」、「公出」を認める協定が取り交わされて、実施されていた。 しかし、これは乗務員に対し労働基準法に違反する連続勤務、長時間勤務を行わせることになる上、控訴人では、乗務員不足を補うためにアルバイト乗務員を用いて営業を行っていたことから、控訴人は、これらの営業実態を隠すため、退職従業員の名前を勝手に使用するなどして、乗務記録を書き替えるなどの本件運行管理体制をとっていた。 (五) 被控訴人は、控訴人の違法な本件運行管理体制を是正させたいと考えていたが、公出等を希望する組合員が多い乙支部では、執行委員全員の賛同を得ることが難しい情勢にあった。そこで、被控訴人と乙支部のB支部長は、組合本部が陸運局との交渉で違法な長時間労働をさせている会社にはタクシー料金の値上げを認めないとの回答を得た機会を捉えて、監督官庁を通じて本件運行管理体制を是正させようと図り、平成7年11月30日、執行委員中本件運行管理体制の是正に消極的であった3名の執行委員には内緒で、かつ、組合の機関決定を経ることなく、富士見交通支部名義で、関東陸運局神奈川支局に本件運行管理体制を告発した。 これに対し、上記執行委員らは、被控訴人らが事前に何らの相談をすることなく告発を行ったことについて抗議し、同年12月4日、被控訴人とBが乙労働基準監督署に対して同様の告発を行おうとした際、同監督署の玄関において、まず支部の全員集会を開いて組合員の意見を聞くべきであるとして、告発を思いとどまるよう要請した。そして、これら執行委員の要請によって同行した組合本部のA副委員長からも同様の 同監督署の玄関において、まず支部の全員集会を開いて組合員の意見を聞くべきであるとして、告発を思いとどまるよう要請した。そして、これら執行委員の要請によって同行した組合本部のA副委員長からも同様の説得を受けたが、被控訴人らは、結局、同監督署に告発書類を提出した。 同月10日、この問題を討議するため、乙支部の組合員全員集会が開かれたが、本件告発に反対する意見が多数を占めた。 そこで、組合本部は、被控訴人とBに対し本件告発を取り下げるよう指導したが、被控訴人らがこれに従わなかったため、結局、同月19日ころ、組合本部役員が本件告発を取り下げた。 (六) 平成8年2月10日は被控訴人の乗務日であったが、丙支部のM支部長が、控訴人の職員であるNが会社就業規則の改正を企図しているらしいとして、相談に訪れたため、被控訴人は、M及びB支部長とともに、同日午前9時ころから午前10時すぎころにかけて、3台の営業車両を付近に駐車したまま、乙駅前の喫茶店に入り、この問題への対応を検討した。 他方、Nは、警察官から上記営業車両の違法駐車を指摘する電話を受けたため、直ちに現場に赴いて警察官に弁明するとともに、駐車中の営業車両の写真を撮影していたところ、駐車場所に戻った被控訴人から強い抗議を受けた。 被控訴人らは、その足で乙営業所に赴き、さらにNに抗議するとともに、K課長に対し、写真撮影は会社の指示によるものかと尋ねたところ、同課長はこれを否定する発言をした。そして、被控訴人らが、就業規則の変更については組合との団体交渉を行うよう要求したところ、K課長は、当面就業規則の変更を予定していない旨回答した。 被控訴人は、引き続き同日午後も、B、Mらとともに春闘の方針を打ち合わせるなどして過ごし、結局同日中は乗務しなかったが、K課長に申し入れて、同日を有給休暇扱い の変更を予定していない旨回答した。 被控訴人は、引き続き同日午後も、B、Mらとともに春闘の方針を打ち合わせるなどして過ごし、結局同日中は乗務しなかったが、K課長に申し入れて、同日を有給休暇扱いに変更してもらった。 (七) 同年2月27日に乙支部の執行委員会が開かれることになったため、被控訴人とBは、前日の26日に、日時を「平成8年2月27日12時より終了まで」とする本件非就労届を控訴人に提出した。 同月27日正午ころから午後5時すぎころまでの間、乙営業所の建物内で、富士見交通支部執行委員のほか組合本部のX委員長も出席して、同支部の執行委員会が開かれ、春闘の方針等について話し合われた。被控訴人はこれに出席したが、B支部長は、他の執行委員に連絡しないまま無断欠席した。 午後5時すぎころ執行委員会が終了し、X委員長が帰った後、被控訴人がMとともに乙営業所の社員食堂で夕食をとっていたところ、Bが現れ、同人が夕食をとっていなかったことから、食事のできる場所でBに執行委員会の結果を報告しようということになり、被控訴人は、B、Mのほか、勤務日ではなかったがたまたま居合わせた富士見交通支部組合員のG及びPとともに、営業車両を運転して、乙市内のスナック「甲」に赴いた。そして、同日午後7時30分ころから午後12時ころまで飲食をしながら過ごし、被控訴人は、翌28日午前零時すぎころ、自ら運転する営業車両にB、Gら全員を乗せて、Zを自宅に送りとどけた後、一旦乙営業所に戻り、その後終業時刻である午前2時まで乗務しなかった。「甲」では、ブランデー1本、ビール3本などを注文して、飲食をしながら組合活動に関する話をしたが、それにとどまらず、カラオケやダンスに興じる者もいた。被控訴人は、ブランデーのウーロン茶割りを何杯か飲んだ。 なお、被控訴人は、28日は非就業 を注文して、飲食をしながら組合活動に関する話をしたが、それにとどまらず、カラオケやダンスに興じる者もいた。被控訴人は、ブランデーのウーロン茶割りを何杯か飲んだ。 なお、被控訴人は、28日は非就業日であったため、会社に出勤しなかった。 (八) K課長及びQは、C社長の指示に基づき、同月29日午前8時すぎころ、乙営業所において、被控訴人及びBに対し、同月27日に乗務しなかった理由及び就業時間中に飲食した理由を問い質した。これに対し、被控訴人は、組合活動に関する話合いをしていただけであるし、執行委員会の後に飲み食いをして何が悪いかと抗弁するとともに、当日を有給休暇扱いとするよう求めたが、K課長はこれを断った。 (九) K課長は、同年3月2日午前8時ころ、被控訴人とBを乙営業所に呼び出し、被控訴人に対しては、「貴殿は、平成8年2月27日の組合執行委員会終了後、正常勤務を怠り、会社は、職場放棄とみなし、同年3月2日付を以って、懲戒解雇を通告する」と記載された懲戒解雇通告書(乙2)を、また、Bに対しては、「貴殿は、平成8年2月27日の朝、平常勤務のために営業車で出庫したにも拘わらず正規の届け出もなく、正常勤務を怠り、会社は、職場放棄とみなし、同年3月2日付を以って、懲戒解雇を通告する」と記載された懲戒解雇通告書(甲7)を交付した。これに対し、Bは黙って通告書を受け取ったが、被控訴人は、「上等だ、やってやろうじゃないか」と言い放ち、通告書をわしづかみにして退席した。 (一〇) その後、組合本部と控訴人との間において、被控訴人及びBの懲戒解雇問題についての交渉が行われたが、結局物別れに終わった。しかし、富士見交通支部の組合員らの間には、被控訴人に対する同情論はほとんど見られず、少なくとも被控訴人が就業時間中に飲食をした上営業車両を運転したことにつ の交渉が行われたが、結局物別れに終わった。しかし、富士見交通支部の組合員らの間には、被控訴人に対する同情論はほとんど見られず、少なくとも被控訴人が就業時間中に飲食をした上営業車両を運転したことについては、タクシー乗務員としてあってはならないことであるとの意見が大勢を占めた。そして、組合本部の役員は、被控訴人に対し、従来の就業態度等について反省を求めるとともに、控訴人との妥協点を探るため、被控訴人に対し、退職届と乙支部執行委員を辞任する旨の誓約書の提出を求めたが、被控訴人がこれを拒否し、組合本部の支援を断ったため、組合本部は、会社との本件懲戒解雇に関する交渉を打ち切った。その後、乙支部及び丙支部においてそれぞれ組合員全員集会が開かれ、討議の結果、乙支部は多数決で、丙支部は全員一致で、被控訴人の本件懲戒解雇に対する支援を行わないことを決定するとともに、乙支部は、被控訴人の組合員としての権利を停止する旨の処分を行った。 他方、Bは、組合本部の説得に応じ、退職届を組合本部を通じて控訴人に提出したところ、控訴人は、Bの懲戒解雇を任意退職扱いに変更した上で、同年5月16日付けで同人を再雇用した。Bは、再雇用された後は、乙支部の役員に就かず、組合活動から退いた。 (一一) その後、被控訴人は、横浜地方裁判所小田原支部に対し、控訴人を相手方として、従業員としての仮の地位を定める仮処分の申立てをした。 (一二) 控訴人の営業車両にはその運行状況を自動的に記録するタコグラフが搭載されており、タコグラフから打ち出されるタコグラフチャート紙(チャート紙)によれば、当該車両の走行・停止状況及び走行距離が判明するところ、控訴人は、前記仮処分申立て後に、被控訴人の営業車両のチャート紙及び個人別営業明細表を分析し、同仮処分申立事件の平成8年9月17日付け準備書面 、当該車両の走行・停止状況及び走行距離が判明するところ、控訴人は、前記仮処分申立て後に、被控訴人の営業車両のチャート紙及び個人別営業明細表を分析し、同仮処分申立事件の平成8年9月17日付け準備書面において、平成7年1月から平成8年2月までの間の被控訴人の多数回にわたる職場離脱の明細を主張するとともに、新たに営業車両メーターの不正操作を本件懲戒解雇の事由として追加主張した。 (一三) なお、本件懲戒解雇の当時効力を有していた控訴人の就業規則には、従業員の制裁に関し、原判決44頁9行目から48頁7行目までに記載のような規定がある。 2 次に、前掲各証拠のほか、証拠(乙8ないし21、67、71、107ないし109、120)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人が本件懲戒解雇の事由として主張する事実について、次の事実が認められる。甲14(Rの陳述書)、同15(Wの陳述書)、同19(Jの陳述書)、同36(被控訴人の陳述書)、証人R、同W、同Jの各証言及び被控訴人本人尋問の結果中この認定に反する部分は、いずれも採用することができない。 (一) 職場離脱原判決添付別紙一「職場離脱合計時間一覧表」は、控訴人が、平成7年1月18日から平成8年2月29日までの間の被控訴人の営業車両のチャート紙(乙9、10)及び個人別営業明細表(乙8)に基づいて分析した結果、被控訴人の乗車日毎に職場離脱と認めた時間を合算したものである。 上記分析の具体的方法は、次のとおりである。すなわち、①1乗務日当たりの拘束時間18時間、就労時間は合計3時間の休憩時間を除く15時間、ハンドル乗務時間は、始業点検、終業時の洗車及び納金事務のための30分を除く14時間30分とする。なお、組合活動は、休憩時間を利用して行われているものとする。②タクシー乗務にはいわゆる「客待ち」の時間があ 乗務時間は、始業点検、終業時の洗車及び納金事務のための30分を除く14時間30分とする。なお、組合活動は、休憩時間を利用して行われているものとする。②タクシー乗務にはいわゆる「客待ち」の時間があるため、チャート紙が空白となり、当該車両が走行していない状態を示していても、また、営業明細表中の「停止時間H」(当該車両が空車で停止している状態を示す。)であっても、それが直ちに不就労状態にあるとは限らないが、客待ちの時間は、通常の乗務員であれば、平日で30分~40分、休日でも50分~60分を超えることはほとんど考えられない(そのような場合、空車でも他の場所に移動する)ことから、上記分析に当たっては、平日は40分、休日は60分以上チャート紙が空白となっている場合及び営業明細表の「停止時間H」がこれを超えている場合を職場離脱と評価する。③ただし、1乗車日の拘束時間は午前8時から翌日午前2時までであるから、チャート紙に示される走行状態が午前8時を過ぎて始まっている場合は、午前8時から走行状態開始時刻までの部分、午前2時以前にチャート紙が空白状態になっている場合には、その空白部分については、「客待ち」ということが考えられないので、前記の40分、60分に満たない場合でも、職場離脱と評価する(営業明細表に示される出庫時刻が午前8時より遅い場合及び帰庫時刻が午前2時より早い場合も同様)。 ④営業明細表上は走行状態を示していない場合であっても、メーターを「迎車」状態にしておくと(メーターの不正利用)、「停止時間H」に記録されず、その実態は職場離脱であるが、上記分析においては不問とする。⑤かくして算出された職場離脱時間が上記休憩時間を含む3時間30分を超過する場合に、その超過時間を不正な職場放棄と評価する。 上記の分析結果と、職場離脱が多いと被控訴人から特に おいては不問とする。⑤かくして算出された職場離脱時間が上記休憩時間を含む3時間30分を超過する場合に、その超過時間を不正な職場放棄と評価する。 上記の分析結果と、職場離脱が多いと被控訴人から特に名指しのあった控訴人の従業員3名(B、S及びT)について、同様の方法により乗車日毎に職場離脱合計時間を分析した結果とを比較すると、被控訴人については、大半の乗車日において、ほぼ継続的・常態的に数時間(2時間を超えるもの)の職場離脱が見られ、その頻度及び程度の両面において上記3名を上回っている。なお、被控訴人のデータは平成7年度の、上記3名のデータは本件懲戒解雇後の平成9年度の各運行についてのものであるところ、平成7年度当時の方がタクシー業界全体の実車率が高かった。 (二) メーターの不正操作原判決添付別紙二は、控訴人が被控訴人の営業車両のチャート紙及び個人別営業明細表に基づいて分析した結果、平成7年2月から平成8年1月までの間において、被控訴人について19回にわたり営業車両のメーター不正操作が行われたものと認められるとして、その明細が記載されたものである。上記分析結果によれば、被控訴人に関する営業明細表には、明白に不合理なメーター操作が記録されている箇所(例えば、平成7年12月26日には、メーターが「迎車」、「賃走」又は「支払」にされていた時間が1時間24分であるにもかかわらず、その間の走行距離は16.07キロメートルに止まり、受領した料金はわずか810円である。)があるのみならず、他の多くの乗務員の場合と比較して、走行距離、時間及び料金の関係から見て不自然と思われるメーターの使用方法が「迎車」絡みの場合に集中して記録されていることが判明する。 (三) 就業時間中の営業車両の飲酒運転控訴人は、平成8年2月27日の被控訴人の職場離脱を から見て不自然と思われるメーターの使用方法が「迎車」絡みの場合に集中して記録されていることが判明する。 (三) 就業時間中の営業車両の飲酒運転控訴人は、平成8年2月27日の被控訴人の職場離脱を認識したので、被控訴人が同日に行ったスナック「甲」で同席していた控訴人の従業員等から事情聴取をした結果、被控訴人の就業時間中の飲酒及び営業車両の飲酒運転の事実を確認し、本件懲戒解雇後に組合本部の役員との間で行われた本件懲戒解雇に関する交渉の際、同役員に対し、被控訴人の上記飲酒運転を厳しく指摘した。 (四) 粗暴な言動等被控訴人には、次のような粗暴な言動や他の従業員らに対する威迫行為があった。 (1) 被控訴人は、平成6年1月22日午後8時50分ころ、乙駅構内に違法駐車していた営業車両をLに写真撮影されたため、 同日午後9時ころ、就労中のLを乙営業所内の組合事務所に呼び出し、「お前は何をしているんだ。お前なんかくびにできるんだ。Uのように丙に飛ばしてやるぞ」などと約30分間にわたり怒号し、威圧した。 (2) K課長は、控訴人の乗務員Lの無線営業のやりかたに問題があり組合員からの苦情が多い旨被控訴人から申告を受け、同年1月23日、乙営業所において、被控訴人及びLから事情聴取を行ったが、被控訴人が、Lに対し、「お前は反省していない。反省しないならこの会社にいられなくしてやる。俺が丁交通を紹介してやるからそこで働け。それが嫌なら丙に行け。お前は会社の犬か」などと、一方的かつ威圧的に述べたことから、K課長が、Lにも発言させるべく、「V君、ちょっと待ちなさい」と制止したところ、被控訴人は、自己の発言が遮られたことに激昂し、「K、お前は黙っていろ」と大声で威圧し、K課長の指示に従わなかった。 (3) 被控訴人は、同年6月6日午前8時20分ころ、乙 なさい」と制止したところ、被控訴人は、自己の発言が遮られたことに激昂し、「K、お前は黙っていろ」と大声で威圧し、K課長の指示に従わなかった。 (3) 被控訴人は、同年6月6日午前8時20分ころ、乙営業所における点呼の際、K課長から免許証不携帯運転を防止するため免許証を提示するよう指示されるや、突然激昂し、「会社は金のかかることはやらないくせに、運転手には時間外に仕事をさせているじゃないか」などと、関係のないことを大声で叫び、最後まで指示に従わなかった。 (4) 被控訴人は、平成7年9月1日、乙営業所において、K課長と労使協議会の日程につき協議をしていた際、自己の提案が受け入れられないことに激昂し、「言うことを聞かないなら、陸運局、監督署に行くし、組合員に仕事もさせないぞ。組合員は、俺の言うことは聞くけど、会社の言うことは聞かないぞ」などと怒号し、その場から一方的に退出した。 (5) 被控訴人は、平成8年2月10日、乙営業所において、Nが被控訴人の乙駅付近における違法駐車の現場を写真撮影していたことに激昂し、同人に対し、「何で写真を撮るんだ。フィルムを捨てろ。その写真を盾に何をするんだ」などと怒鳴り、さらに、同人が、被控訴人に代わって警察官に謝りに行き、被控訴人が違法駐車で処罰されるのを防いだことを告げた後も、同人に対し、「駐車違反で捕まろうと俺たちの勝手だろう。ばかやろう。お前は会社の犬か」などと怒号し、また、K課長に対し、「何で写真を撮らせるのだ」などと同事務所内の職員に聞こえる程の大声で怒鳴り散らした。 (五) 営業車両の違法駐車被控訴人は、上記のように、平成6年1月22日午後8時50分ころ乙駅構内において、平成8年2月10日午前10時50分ころ乙駅付近において、いずれも営業車両を違法駐車したほか、他にも同様の違法駐車行為 被控訴人は、上記のように、平成6年1月22日午後8時50分ころ乙駅構内において、平成8年2月10日午前10時50分ころ乙駅付近において、いずれも営業車両を違法駐車したほか、他にも同様の違法駐車行為を繰り返していた。 3 ところで、使用者が労働者に対して行う懲戒は、労働者の企業秩序違反行為を理由として、一種の秩序罰を課するものであるから、具体的な懲戒の適否は、その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものである。したがって、懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情のない限り、当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないが、懲戒当時に使用者が認識していた非違行為については、それが、たとえ懲戒解雇の際に告知されなかったとしても、告知された非違行為と実質的に同一性を有し、あるいは同種若しくは同じ類型に属すると認められるもの又は密接な関連性を有するものである場合には、それをもって当該懲戒の有効性を根拠付けることができると解するのが相当である。 これを本件についてみるに、前記認定の事実関係によれば、控訴人は、本件懲戒解雇の際、控訴人主張に係る被控訴人の非違行為のうち本件懲戒解雇前に行われたものすべてについて認識し、かつ、これを懲戒解雇事由とする意思であったが、これが多岐にわたるため、本件懲戒解雇を最終的に決定する契機となった事由、すなわち平成8年2月27日の職場離脱のみを本件通告書に記載したにすぎず、懲戒解雇事由をこれに限定する趣旨ではなかったものと認めることができる。 そして、証拠(乙29、31,33、151、証人Gの証言、控訴人代表者C尋問の結果)に弁論の全趣旨を合わせると、控訴人は、所属のタクシー乗務員による職場離脱、メーターの不正操作、営業 とができる。 そして、証拠(乙29、31,33、151、証人Gの証言、控訴人代表者C尋問の結果)に弁論の全趣旨を合わせると、控訴人は、所属のタクシー乗務員による職場離脱、メーターの不正操作、営業車両の違法駐車、飲酒運転が多いことを重視して、警告を繰り返し、平成元年ころには、被控訴人ら組合役員が就業時間中の職場内において控訴人に対する中傷や不当な非難を行い、このため正常な業務運営が妨げられているとして、組合本部に対し警告書を発するなどしていたこと(乙29)、特に、被控訴人及びBについては、その勤務成績が悪く、営業車両の違法駐車、遅刻、無届けの職場離脱行為のほか、会社職制や他の職員に対する暴言、威迫行為が目立つとして、組合本部の役員らに対し、その是正指導方を要請していたこと、しかし、一向に是正されなかったことから、平成5年ころからは、組合本部のA副委員長に対し、このままでは被控訴人を解雇することもやむを得ないと警告していたこと、A副委員長は、その都度、組合役員である被控訴人を解雇することは影響が大きいので避けてほしい旨要請するとともに、被控訴人及びBに対し繰り返し忠告していたが、被控訴人らの就労態度は改まらなかったこと、このため、控訴人のC社長は、平成7年4月15日ころ、K課長の同席の下で、A副委員長に対し、「被控訴人の職場離脱等については改善努力の跡が見受けられず、課長や他の職員を事務所内で大声で怒鳴ったり罵倒したりするようなことでは、職場の秩序も守れず、勝手気ままを許すことはできない。組合本部と争いになったとしてもやむを得ない」として、被控訴人の解雇に踏み切らざるを得ないとの通告を行ったこと、これに対し、A副委員長が、「もう1年だけ待ってほしい。今度こそ絶対に真面目に勤務させる」旨言明したので、もう一度だけ猶予を与えることになったこ 訴人の解雇に踏み切らざるを得ないとの通告を行ったこと、これに対し、A副委員長が、「もう1年だけ待ってほしい。今度こそ絶対に真面目に勤務させる」旨言明したので、もう一度だけ猶予を与えることになったこと、A副委員長は、Gの立会いの下で、被控訴人及びBに対し強く注意したが、その効果が上がらないまま、結局、本件懲戒解雇に至ったこと、以上の事実が認められる。 このような経緯をも総合して考えると、被控訴人の平成8年2月27日の職場離脱及び飲酒の上での営業車両の運転行為は、前記認定に係る他の非違行為ともども、被控訴人の勤務態度の劣悪さを示すものであるとともに、被控訴人がA副委員長からこれを改めるよう忠告を受けていたものであって、一体として密接な関連性を有するものとみることができる。 したがって、本件通告書に記載された平成8年2月27日の職場離脱のみならず、それ以外の前記認定に係る被控訴人の非違行為もまた、本件懲戒解雇の有効性を根拠付けることができるものというべきである。 被控訴人は、控訴人が本件懲戒解雇時においてその主張に係る解雇事由について認識していたとしても、本件通告書に記載された職場離脱以外の事由はすべて処分の対象としないという認識であったとみるべきであり、平成8年2月29日の事情聴取の際にも、また、本件懲戒解雇通告の当日も、本件通告書に記載された職場離脱行為以外の非違行為について何らの言及もされなかったことはこのことを示すものであると主張するが、上記認定説示したところに照らし、採用することができない。また、被控訴人は、乙151(A副委員長の陳述書)の信用性について縷々主張するが、その内容が十分信用できるものであることは、他の証拠に照らして明らかであり、被控訴人主張の事実のうち、A副委員長が自交総連を脱退してハイタク労働組合共闘会議を結 書)の信用性について縷々主張するが、その内容が十分信用できるものであることは、他の証拠に照らして明らかであり、被控訴人主張の事実のうち、A副委員長が自交総連を脱退してハイタク労働組合共闘会議を結成した際、C社長が、控訴人の従業員をハイタク労働組合に加盟させる工作を行ったとの事実を認めるに足りる証拠はないし、被控訴人主張の他の事情をもってしても、その信用性を否定することはできない。 二争点2(本件懲戒解雇の懲戒解雇事由の存否)について 1 職場離脱前記認定の事実に照らすと、被控訴人が、平成8年2月27日午後5時すぎころ富士見交通支部の執行委員会が終了した後、Bらとともに、営業車両を運転してスナック「甲」に赴き、同日午後7時30分ころから午後12時ころまで飲食をしながら過ごし、翌28日午前零時すぎころ「甲」を出た後も、終業時刻である午前2時までの間、乗務しなかった行為は、違法な職場離脱と認めるのが相当である。その間、一部組合活動に関する話がされたとしても、それにとどまらず飲酒の上でカラオケやダンスに興じる者がいたことに照らし、違法な職場離脱に当たるとの判断を左右するに足りない。 また、前記認定の事実関係によれば、原判決添付別紙一「職場離脱合計時間一覧表」の「当日の職場離脱時間合計」欄記載の時間のすべてが違法な職場離脱と認めることはできないものの(例えば、前記認定のとおり、控訴人の承諾を得て、有給休暇扱いとされた平成8年2月10日など)、職場離脱が多いとして被控訴人から特に名指しのあった控訴人の従業員3名に関する分析結果とを比較して、その頻度及び程度の両面において上記3名を上回っていること(もっとも、証拠(甲39、43、乙64、74、76)によれば、この3名のチャート紙のうちには、控訴人において、後日、チャート紙の外側円周上の空白部分 及び程度の両面において上記3名を上回っていること(もっとも、証拠(甲39、43、乙64、74、76)によれば、この3名のチャート紙のうちには、控訴人において、後日、チャート紙の外側円周上の空白部分に当該車両の走行を示す棒線を書き込み、控訴人の前記算定方法による職場離脱時間を少なく見せかけるための捏造を行った上で提出されたものがあり、それが排除されるべきことは当然であるが、これを除外しても、この判断が左右されることはない。)などに鑑みると、平成7年1月18日から平成8年2月29日までの間に、被控訴人において相当回数の違法な職場離脱があったものと認めることができる。 これに対し、被控訴人は、控訴人主張に係る被控訴人の職場離脱時間とされるもののうちには、客待ち、組合活動、始業点検などの正当事由のあるものも含まれる旨主張する。しかしながら、被控訴人が主張する点は上記3名(この中には、乙支部の役員であったBも含まれる。)の場合も同様であると考えられる上、職場離脱時間の算出に用いられた、各営業車両のチャート紙及び個人別営業明細表の分析手法は合理的で、格別の問題があるとは認められないから、被控訴人の主張は採用することができない。 また、被控訴人は、平成5年12月分の賃金カット以後本件懲戒解雇に至るまでの間、被控訴人が控訴人から処分を受けたことがないことは、控訴人が主張するような職場離脱等の非違行為がなかった証左である旨主張するが、前記認定のような経緯に照らすと、控訴人は、A副委員長からの要請があったため、被控訴人の処分を見送っていたものと認められるから、被控訴人の主張は採用することができない。 2 メーターの不正操作前記認定の事実関係によれば、原判決添付別紙二記載のすべてが営業車両のメーターの故意による不正操作と認めることはできないものの(無 被控訴人の主張は採用することができない。 2 メーターの不正操作前記認定の事実関係によれば、原判決添付別紙二記載のすべてが営業車両のメーターの故意による不正操作と認めることはできないものの(無意識的な操作ミスによるものも一部含まれると考える余地がある。)、前記認定のとおり、被控訴人については、明らかに不合理なメーター操作が認められ、他の乗務員と比較して、不自然なメーターの使用方法が「迎車」絡みの場合に集中して記録されていることに照らすと、平成7年2月21日から平成8年1月12日までの間に、被控訴人による相当回数のメーターの不正操作があったものと認めることができる。 これに対し、被控訴人は、控訴人主張に係る被控訴人のメーター不正操作とされるもののうちには、十分注意しても操作ミスをしてこれに気付かないものが含まれている可能性があるほか、食事休憩、私用、組合活動等が途中で介在するときに意識的にメーターを「支払」などにしておくこともあり、この場合には、控訴人に損害を与えることはないので、処分されることはないなどと主張し、甲36(被控訴人の陳述書)中には上記主張に符合する陳述記載がある。たしかに乗務員が無意識的な操作ミスを犯す可能性は否定できないとしても、控訴人のようなタクシー会社にとって、料金管理及び労務管理上適正なメーター操作が不可欠であって、控訴人が主張するようなメーターの恣意的操作が行われた場合には、会社の存立にもかかわる事態に結び付くおそれがあることを併せ考えると、控訴人が主張するようなメーターの恣意的操作が許されないことは明らかである。 したがって、被控訴人の主張及びこれに符合する上記陳述記載は、採用することができない。 3 営業車両の飲酒運転前記認定のとおり、被控訴人は、平成8年2月27日午後7時30分ころから同日午後1 したがって、被控訴人の主張及びこれに符合する上記陳述記載は、採用することができない。 3 営業車両の飲酒運転前記認定のとおり、被控訴人は、平成8年2月27日午後7時30分ころから同日午後12時ころまでの間、スナック「甲」においてブランデーのウーロン茶割りを何杯か飲み、かつ、就業時間中であるにもかかわらず、同月28日午前零時すぎころ、他の従業員を乗せて営業車両を運転して乙営業所戻ったのであるから、被控訴人が就業時間中に営業車両を飲酒運転したことは明らかである。 かかる営業車両の飲酒運転行為は、直接交通事故につながるおそれのあるものであって、タクシー乗務員としての自覚を著しく欠く行為といわざるを得ず、到底許されるものでないことは、敢えて多言を要しないというべきである。 4 粗暴な言動等による職場秩序の侵害、業務阻害前記認定に係る被控訴人の粗暴な言動及び他の従業員らに対する威迫行為は、その内容、態様に照らし、正当な行為としての限度を超えたものというべきであり、それにより控訴人の職場秩序が乱されるとともに、控訴人の従業員及び控訴人の業務が阻害されたことが認められる。 5 営業車両の違法駐車前記認定のとおり、被控訴人は、平成6年1月22日午後8時50分ころ及び平成8年2月10日午前10時50分ころの2回にわたり、公共の場所に営業車両を違法駐車したほか、他にも同様の違法駐車を繰り返していたことが認められるところ、かかる行為は公共に迷惑を及ぼすもので、タクシー乗務員としての自覚を著しく欠く行為であるとともに、控訴人のタクシー業者としての信用を傷つける行為であると認めるのが相当である。 6 以上のとおりであるから、本件懲戒解雇については、上記1ないし5で認定したとおりの事由が存在し、これらは、控訴人の就業規則第42条第2号(他人に対し暴行 ける行為であると認めるのが相当である。 6 以上のとおりであるから、本件懲戒解雇については、上記1ないし5で認定したとおりの事由が存在し、これらは、控訴人の就業規則第42条第2号(他人に対し暴行、脅迫を加え又は教唆煽動し業務を阻害したとき)、第3号(職務上の指示命令に従わず粗暴な言動をし職場の秩序を乱したとき)、第5号(会社の名誉、信用を傷つけたとき)、第11号(料金メーターの不正行為が重なり悔悛の見込みがないとき)及び第12号(その他前各号に準ずる程度の不都合な行為をしたとき)に該当するものということができる。 三争点3(本件懲戒解雇は解雇権の濫用に当たるか)について 1 本件懲戒解雇に先立ち控訴人のとった前記認定のような措置等に照らすと、控訴人は、被控訴人の度重なる非違行為にもかかわらず、被控訴人の更生を期待し、組合本部とも連絡をとりながら、懲戒解雇権の発動を見送ってきたのであり、本件懲戒解雇に至るまでに被控訴人に更生、弁明の機会を十分与えたものということができ、前記認定に係る被控訴人の非違行為の内容、態様、程度等を併せ考えると、本件懲戒解雇は正当であり、解雇権の濫用には当たらないというほかはない。 2 したがって、本件懲戒解雇は解雇権の濫用に当たるとの被控訴人の主張は、採用することができない。 四争点4(本件懲戒解雇は不当労働行為に当たるか)について 1 乙支部の副支部長であった被控訴人及び同支部長であったBに対する本件の懲戒解雇は、被控訴人及びBが本件運行管理体制を是正する目的で本件告発をした約3か月後に行われたこと、被控訴人は、本件懲戒解雇後、組合本部から退職届と乙支部の執行委員を辞任する旨の誓約書の提出を求められたが、これを拒否したのに対し、被控訴人とともに懲戒解雇されたBは、組合本部を通じて控訴人に退職届を提出し、控訴人 戒解雇後、組合本部から退職届と乙支部の執行委員を辞任する旨の誓約書の提出を求められたが、これを拒否したのに対し、被控訴人とともに懲戒解雇されたBは、組合本部を通じて控訴人に退職届を提出し、控訴人から懲戒解雇を任意退職扱いに変更されて再雇用され、その後は乙支部の役員に就かず、組合活動の第一線から退いたことは、前記認定のとおりであり、被控訴人本人の供述及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、本件懲戒解雇以前にも、執行委員会終了後に食事をしながら組合活動その他の話合いをしたことがあったが、控訴人がそのことに対して職場離脱を理由に懲戒処分を行ったことはなかったことが認められる。 2 しかしながら、他方、いわゆる「公出」等による控訴人の乗務員の長時間労働は、控訴人と富士見交通支部との間で締結された協定に基づいて行われていたものであること、このため本件運行管理体制を告発することは、多くの組合員の意に反することでもあり、被控訴人らが執行委員の一部の意見を聞かず、かつ、組合の機関決定を経ることなく、本件告発を行ったことに対する組合員の反発が強かったことから、組合本部は、Bと被控訴人に対して本件告発を取り下げるよう指導したが、両名がこれに従わなかったため、組合本部役員が本件告発を取り下げたこと、被控訴人は、A副委員長から就業態度の改善是正を促されていたにもかかわらず、これに応じようとせず、非違行為を重ねた上、本件懲戒解雇の直接の契機となった前記のような職場離脱及び営業車両の飲酒運転という重大な非違行為に及んだばかりでなく、その後もこれについて反省する態度が窺われなかったこと、本件懲戒解雇後、乙支部及び丙支部は、それぞれ被控訴人の本件懲戒解雇問題に関する支援をしないことを決定するとともに、乙支部は、被控訴人の組合員としての権利を停止する処分をしたことなど なかったこと、本件懲戒解雇後、乙支部及び丙支部は、それぞれ被控訴人の本件懲戒解雇問題に関する支援をしないことを決定するとともに、乙支部は、被控訴人の組合員としての権利を停止する処分をしたことなどの事実が認められるのであって、これらの事実を併せ考えると、本件懲戒解雇は、被控訴人の就業態度の不良を理由として行われたものと認めるのが相当であり、労働組合の役員であった被控訴人の組合活動を嫌忌し被控訴人を排除する意図で行われたものと認めることはできない。 3 したがって、本件懲戒解雇が不当労働行為に当たるとの被控訴人の主張は、採用することができない。 第四結論以上のとおりであるから、被控訴人の請求は理由がないものとして棄却すべきである。 よって、被控訴人の請求を認容した原判決は不当であるから、これを取り消し、被控訴人の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第67条第2項、第61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第5民事部裁判長裁判官魚住庸夫裁判官飯田敏彦裁判官菅野博之

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る