令和6(行コ)40 国家賠償等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年6月19日 福岡高等裁判所 福岡地方裁判所 令和2(行ウ)37
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判決文本文13,277 文字)

主文 1 一審原告の控訴を棄却する。 2 一審被告の控訴に基づき、原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。 3 前項の部分につき、一審原告の請求を棄却する。 4 訴訟費用は、1、2審を通じて、一審原告の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 一審原告(1) 原判決主文2項を次のとおり変更する。 (2) 一審被告は、一審原告に対し、148万5000円及びこれに対する令和 2年10月16日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 一審被告(1) 原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。 (2)(主位的)前項の部分につき、一審原告の訴えを却下する。 (予備的)主文3項同旨第2 事案の概要(以下、略称は、特に断らない限り、原判決の例による。)1(1) 事実経過一審原告は、死刑確定者であり、福岡拘置所に収容されている。 一審原告は、福岡拘置所に対し、Aら宛ての信書(本件信書①から③)の発信許可を求めた。Aらは、いずれも一審原告と養子縁組をしている。 また、一審原告は、福岡拘置所に対し、Gら宛ての信書(本件信書④から⑥)の発信許可を求めた。 これらに対し、福岡拘置所長は、いずれの発信も不許可とする旨決定した (本件各不許可処分)。 (2) 訴訟物一審原告は、原審において、① 刑事収容施設法139条1項1号に基づいて、Aらとの間で信書を発受することができる地位にあることの確認と、② 本件各不許可処分は違法であると主張して、国賠法1条1項に基づいて、 一審被告に対し、慰謝料等148万5000円及びこれに対する本件各不許可処分の日よりも後の日である令和2年10月1 と、② 本件各不許可処分は違法であると主張して、国賠法1条1項に基づいて、 一審被告に対し、慰謝料等148万5000円及びこれに対する本件各不許可処分の日よりも後の日である令和2年10月16日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めた。 (3) 原判決及び控訴提起 原審は、①について、原判決主文1項の限りで請求を一部認容し(Aらが刑事収容施設法139条1項1号「死刑確定者の親族」に当たらないことを理由に、信書の発受を不許可とされない地位にあることを確認する。)、②について、請求を全部棄却した。 一審原告は②の敗訴部分を、一審被告は①の敗訴部分を不服として、それ ぞれ本件控訴を提起した。なお、一審原告は①の敗訴部分について不服を申し立てていない。 2 前提事実等関連法令等の定め、前提事実及び本件の主な争点は、次のとおり補正し、後記3のとおり当審における当事者の追加・補充主張を加えるほかは、原判決 「事実及び理由」の「第2 事案の概要」1から3(原判決2頁7行目から6頁12行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決2頁8行目で引用される原判決添付別紙「関連法令等の定め」のうち、原判決43頁21行目から44頁1行目までを次のとおり改める。 「(1) 平成19年6月1日付け達示第33号「福岡拘置所死刑確定者処遇規 程」(以下「平成19年規程」という。乙3)17条1項2号は、死刑 確定者の外部交通許可基準として、発受が認められる信書について、①刑事収容施設法139条1項に該当する信書であること、②本人が希望する者において、事前に許可した者との信書の発受であり、刑事施設の規律及び の外部交通許可基準として、発受が認められる信書について、①刑事収容施設法139条1項に該当する信書であること、②本人が希望する者において、事前に許可した者との信書の発受であり、刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがないと認められる信書であることを定める。」 (2) 原判決3頁8行目と、同行目で引用される原判決添付別紙「人物目録」記載3氏名欄の各「E1ことE2」を「E」にそれぞれ改める。 (3) 原判決4頁17行目「提出した」の次に「(乙6)」を加え、21行目「福岡拘置所企画首席」から23行目までを「福岡拘置所長は、平成24年1月12日、福岡拘置所企画首席(看守長)を介して、一審原告に対し、A ら及びその他2名の養子縁組者について、外部交通を許可する方針とはしないことを告知した(乙6)。」に改める。 (4) 原判決5頁1行目、6行目、11行目、16行目から17行目にかけて、21行目から22行目にかけて、及び26行目から6頁1行目にかけての各「福岡拘置所」を「福岡拘置所長」にそれぞれ改める。 (5) 原判決6頁7行目で引用される原判決添付別紙「争点に関する当事者の主張」について、次のとおり補正する。 ① 原判決45頁8行目及び11行目の各「被告」を「福岡拘置所長」にそれぞれ改める。 ② 原判決47頁3行目から59頁9行目にかけての「争点2」に関する当 事者の主張の記載の順番は、先に一審被告の主張を摘示し、その後に一審原告の主張を摘示する。 ③ 原判決47頁23行目「適切な処遇を」の次に「行うことを」を加える。 ④ 原判決48頁26行目、49頁2行目、及び4行目の各「同法139条柱書」を「同法139条1項柱書」にそれぞれ改める。 ⑤ 原判決56頁14行目から15 「行うことを」を加える。 ④ 原判決48頁26行目、49頁2行目、及び4行目の各「同法139条柱書」を「同法139条1項柱書」にそれぞれ改める。 ⑤ 原判決56頁14行目から15行目にかけての「乱用」を「濫用」に改 める。 3 当審における当事者の追加・補充主張(1) 無名抗告訴訟であるとの主張(一審被告の主張)本件確認の訴えは、Aらとの間での信書の発受の不許可処分という将来の 処分による不利益の予防を目的とするものであるから、無名抗告訴訟に当たる。そして、当該処分に係る差止めの訴えと目的が同じであることからすれば、差止めの訴えの訴訟要件(行訴法3条7項、37条の4第1項)を満たす必要がある。しかるに、本件確認の訴えは、これら要件を欠いているから、不適法である。 仮に実質的当事者訴訟に当たるとしても、確認の利益が認められないから、本件確認の訴えは不適法である。 (一審原告の主張)ア一審被告は、本件確認の訴えについて実質的当事者訴訟であることを前提としていたのに、当審に至って、突如として無名抗告訴訟であるとの 本案前の答弁をした。これは、信義誠実の原則(行訴法7条、民訴法2条)に反する。また、時機に後れた攻撃防御方法でもある(行訴法7条、民訴法297条、157条)。 したがって、一審被告が前記主張をすることは許されない。 イ一審被告が前記のとおり主張すること自体は許されるとしても、本件確 認の訴えは実質的当事者訴訟であり、確認の利益が認められるから、適法である。 (2) 刑事収容施設法139条1項1号該当性に関する主張(一審被告の主張)ア一審原告は専ら外部交通の確保を目的として養子縁組をしたのであるか が認められるから、適法である。 (2) 刑事収容施設法139条1項1号該当性に関する主張(一審被告の主張)ア一審原告は専ら外部交通の確保を目的として養子縁組をしたのであるか ら、真に養親子関係を設定する効果意思がないと認められる。したがっ て、Aらは、刑事収容施設法139条1項1号の「親族」に当たらない。 イ仮にAらとの養子縁組が民法上無効であるとまで認められないとしても、専ら外部交通を確保する目的でなされたものであり、養親子としての情を深めるという目的意識がなく、あるいは極めて希薄である。したがって、外部交通に係る規定を適用する基礎を欠いているから、福岡拘置所 長は、一審原告の信書の発受は権利の濫用に当たるとして、これを不許可とすることができる。 (一審原告の主張)争う。 (3) 国家賠償に関する主張 (一審原告の主張)ア本件不許可処分①~③について(ア) これら処分は違法であるのであるから、それを前提に過失の有無が判断されなければならない。 (イ) 仮に、国賠法1条1項の適用上違法と評価されるのは、福岡拘置所長 が通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と判断したと認め得るような事情がある場合に限られるとしても、福岡拘置所長は、平成24年1月11日にAらとの外部交通を許可しない方針を決定し、それ以降、養子縁組の無効事由や権利濫用を基礎づける事情の有無を検討することなく、本件不許可処分①~③を決定するに至った。したがって、国賠法 1条1項の適用上違法というべきである。 イ本件不許可処分④及び⑤について(ア) 本件信書④及び⑤は、刑事収容施設法139条1項3号及び同条2項の信書に該当する。そ って、国賠法 1条1項の適用上違法というべきである。 イ本件不許可処分④及び⑤について(ア) 本件信書④及び⑤は、刑事収容施設法139条1項3号及び同条2項の信書に該当する。そうであるのに、福岡拘置所長は、本件不許可処分④及び⑤に至っており、同条1項3号に違反するし、裁量の逸脱・濫 用が認められるから、同条2項にも違反する。 行政処分が根拠法令を欠く場合、又は、行政庁の裁量の逸脱・濫用が認められた場合、ただちにそれをもって国賠法1条1項の適用上違法とされなければならない。 (イ) 仮に、国賠法1条1項の適用上違法と評価されるのは、福岡拘置所長が通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と判断したと認め得る ような事情がある場合に限られるとしても、G・Hとのこれまでの面会や信書の内容はすべて記録化されているのであるから、福岡拘置所長は、一審原告が両者に師事し、深い信頼関係を築いていたことや、面会や信書の発受を切望していたことを十分に知っていたし、容易に知ることができた。 そうすると、福岡拘置所長には、本件信書④及び⑤の発信の申請がなされた際、これら信書を読めば、一審原告がG・Hとの交流を切望しており、刑事収容施設法139条1項3号又は同条2項に基づいて、発信の許可をすることが当然に期待されていたというべきである。そうであるのに、安易に不許可処分としており、職務上通常尽くすべき注意義務 を尽くしておらず、本件不許可処分④及び⑤は、国賠法1条1項の適用上違法というべきである。 ウ本件不許可処分⑥について(ア)aIによる取材は、記事を書くための準備活動であるとしても、対象者の心情の安定をもたらす効果がある。一審原告とI との面会は、平 成18 ウ本件不許可処分⑥について(ア)aIによる取材は、記事を書くための準備活動であるとしても、対象者の心情の安定をもたらす効果がある。一審原告とI との面会は、平 成18年10月12日から平成23年10月21日までの間、53回にわたっており、一審原告は、Iに心を開き、心情を安定させてきた。 そして、上記面会を通じて、取材者と取材対象者という関係を超えて、友人関係に変容した。 b 一審原告が死刑確定後の平成30年以降に、Iに民事訴訟の代理人 の委託や債権回収の依頼をしたのは、刑事収容施設法139条1項2 号に該当すれば、Iとの信書の発受が認められると考えたからである。 信書の内容が訴訟事務等に限定されるとしても、信頼をよせるIとつながることは、一審原告にとって大きな喜びであった。これは、Iにとっても同様であった。 c 刑事収容施設法139条1項3号が確保する心情の安定の主体は、 死刑確定者自身である。Iが執筆等で発表した内容は一審原告の想定内のものであり、それによってKや一審原告の姉が不快な思いをしたとしても、一審原告の心情は害されていない。 d 一審原告とIとの交流期間は本件不許可処分⑥時点で12年以上に及んでおり、両者は継続的に良好な関係を築いてきた。 e これらからすれば、一審原告とIとの間には、人格的な交流があるといえるだけの継続的で良好な交際を行なってきたとの事情が認められ、本件信書⑥は、刑事収容施設法139条1項3号「心情の安定に資する」信書に該当する。また、これら事情からすれば、本件信書⑥の発信を不許可としたことは、裁量の逸脱・濫用というべきであり、 同条2項にも違反する。 したがって、前記イ(ア)のとおり、本件不許可処分 書に該当する。また、これら事情からすれば、本件信書⑥の発信を不許可としたことは、裁量の逸脱・濫用というべきであり、 同条2項にも違反する。 したがって、前記イ(ア)のとおり、本件不許可処分⑥は、国賠法1条1項の適用上違法というべきである。 (イ) 仮に、国賠法1条1項の適用上違法と評価されるのは、福岡拘置所長が通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と判断したと認め得る ような事情がある場合に限られるとしても、福岡拘置所は、一審原告とIとの面会のすべてに立ち会い、信書を検査して、記録を残してきた。 そうすると、福岡拘置所長には、本件信書⑥の発信の申請がなされた際、これを読めば、一審原告がIとの交流を切望しており、刑事収容施設法139条1項3号又は同条2項に基づいて、発信の許可をすること が当然に期待されていたというべきである。そうであるのに、安易に不 許可処分としており、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしておらず、本件不許可処分⑥は、国賠法1条1項の適用上違法というべきである。 (一審被告の主張)ア本件不許可処分①~③について争う。 イ本件不許可処分④~⑥について本件信書④~⑥は、刑事収容施設法139条1項3号「心情の安定に資する」信書に当たらないし、同条2項の信書にも当たらない。したがって、福岡拘置所長がこれを理由に本件不許可処分④~⑥をしたことは、国賠法1条1項の適用上違法とはならない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、①地位確認の訴えについて、訴訟要件の具備は認められるものの、原判決とは異なり、一審原告の請求は認められず、②国家賠償請求について、原判決と同様、一審原告の請求は認められないと判断する。 その理由は、次のとお 訴えについて、訴訟要件の具備は認められるものの、原判決とは異なり、一審原告の請求は認められず、②国家賠償請求について、原判決と同様、一審原告の請求は認められないと判断する。 その理由は、次のとおり補正し、後記2のとおり当審における当事者の追 加・補充主張に対する判断を加えるほかは、原判決「第3 当裁判所の判断」1から4(原判決6頁14行目から37頁24行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決8頁24行目から25行目で引用される原判決添付別紙「原告とAとの間の外部交通一覧」について、次のとおり補正する。 原判決76頁番号35の行の「R22.8.30」を「H22.8.30」に改める。 (2) 原判決10頁21行目「甲94」の次に「、95」を加える。 (3) 原判決11頁12行目で引用される原判決添付別紙「原告とIとの間の外部交通一覧」について、次のとおり補正する。 ① 原判決94頁番号2の行、4列のセル内下から3行目「事件の判してい る」を「事件の話をしている」に改める。 ② 原判決95頁番号3の行、4列目のセル内下から7行目「先程のの資料」を「先程の資料」に改める。 ③ 原判決100頁番号10の行、4列目のセル内3行目「その事をを」を「その事を」に改める。 (4) 原判決11頁14行目「原告は、」の次に「平成30年12月11日付けで」を加える。 (5) 原判決12頁6行目末尾に次のとおり加える。 「一審原告は、それに先立つ同年1月18日、Jに対し、信書にて、「俺は、確定後の連絡の対作として、2~3ケ月間だけ知人に養子入りしようと思い ます。」と発信した。一審原告は、同月26日、Jから、「養子の件ですが、T(一審 1月18日、Jに対し、信書にて、「俺は、確定後の連絡の対作として、2~3ケ月間だけ知人に養子入りしようと思い ます。」と発信した。一審原告は、同月26日、Jから、「養子の件ですが、T(一審原告)の好きな様にして下さい。」との回答を得た。(乙75、76)」(6) 原判決13頁12行目末尾を改行し、次のとおり加える。 「ク一審原告は、平成21年8月24日付けで、C弁護士に対し、信書にて、 2名の者(訴外X及び訴外Y)と連絡を取りたいために、一時的に養子縁組を考えていること、接見時に打ち合わせをしてほしいことを伝えた(乙45、原告本人)。」(7) 原判決19頁11行目「前記(ア)の事情に加え、」を削除する。 (8) 原判決21頁17行目「①」を削除し、21行目「同項」を「同法139 条1項1号」に改める。 (9) 原判決22頁23行目「認定事実(6)」を「認定事実(5)」に改める。 (10)原判決23頁2行目末尾に次のとおり加える。 「その他にも、一審原告は、Jに対し、刑事裁判確定後に連絡をするための対策として、2、3か月だけ知人の養子になろうと思っていることを伝えた。」 (11)原判決23頁14行目末尾を改行して次のとおり加える。 「(カ) 一審原告は、Oに対し、平成23年11月10日付けの信書において、養子であるEが近日中に社会復帰するので、同人にも稼がせて金銭を巻きあげようとしていること、面会するのが楽しみであることを伝えた(認定事実(6)オ)。」(12)原判決23頁15行目から27頁12行目までを次のとおり改める。 「イ(ア) このように、一審原告は、養子縁組について、一時的な仮のもの、形式上のものに過ぎないとの意思を複数人に対し多数 )原判決23頁15行目から27頁12行目までを次のとおり改める。 「イ(ア) このように、一審原告は、養子縁組について、一時的な仮のもの、形式上のものに過ぎないとの意思を複数人に対し多数回にわたって表明しているのであり、これら事実からすれば、この意思こそが一審原告の真意又は本心であると推認することができる。この点、一審原告は、J及びKに対する認定事実(6)アからエの各信書について、そもそも養子縁 組に消極的な意向を持つ同人らを納得させるためのものに過ぎないと主張し、同趣旨の供述をする。しかし、一審原告は、実父母のみならず、C弁護士に対しても「外部交通のために養子縁組を考えており、そのための打ち合わせの実施を要望」しているのであって、元々の親族に養子縁組を納得してもらうためというのでは、C弁護士に対しこのような発 信をしたことを合理的に説明できない。このことは、一審原告が証拠調べ手続で、訴外X及び訴外Yを特定がないと、C弁護士宛ての信書の趣旨について回答できない旨供述しているとしても、変わるものではない。 また、一審原告がEに対し離縁をすると外部交通ができなくなるとして、離縁を再考するよう求めていることからも、J及びKに対する説明に過 ぎないなどということはできない。一審原告の上記供述は採用することができないし、その他に上記主張を認めるに足りる証拠もない。一審原告の上記主張は採用することができない。 加えて、在社会時に一審原告とAらとの間に交流はなかったこと、A自身、養子縁組当時、刑事施設に収容中であったし、縁組に先立つ平成 22年2月2日、実母に対し、信書にて、「Tくん(判決書注:一審原 告のこと)との養子縁組の件ですが、この縁組は、俺自身の養子として縁組をするので、A家には何も迷惑をか 先立つ平成 22年2月2日、実母に対し、信書にて、「Tくん(判決書注:一審原 告のこと)との養子縁組の件ですが、この縁組は、俺自身の養子として縁組をするので、A家には何も迷惑をかけません。形式上で4か月程度の期間だけの縁組なので、今後の仕事(オリジナルシャツ等)にも支障が生じるので理解してくださいね。」と発信しており(乙84)、形式的なものであると自認していたこと、S及びEもまた養子縁組当時、刑 事施設に収容中であり、一審原告との交流は信書によるものしか想定できなかったこと、以上の事実が認められる。 これらからすれば、一審原告は、縁組によって確保される外部交通を通じて養親子関係を設定しようとしたというのではなく、専ら外部交通を確保する便法として、縁組によって形式的に生じる養親子関係に仮託 したものということができる。 (イ) また、養親子関係が生じることで、相互に扶養義務を負うことになる上、相続が開始すれば、積極財産のみならず消極財産をも承継することになる。養親子関係の設定は、親子としての精神的安寧をもたらすのみならず、義務負担をも生じさせ得るものである。本件で、そのような ことも考慮して養子縁組がされたとは認められない。 (ウ) 刺青絵の指導を受け又はその指導をし、それらを通じた交流を持つことが、一審原告の人格的生存にとって一定の意味のあるものということができるとしても、それは、いわゆる師弟関係を意味するものであり、義務負担をも生じさせ得る養親子関係とは、次元を異にする。 一審原告がいうところの人格的生存に関わるとの事情は、刑事収容施設法139条1項1号「親族」の問題ではなく、同項3号又は同条2項の各該当性において検討されるべきものである。 (エ) 縁組意思が、他の目的(本件では、刺 の人格的生存に関わるとの事情は、刑事収容施設法139条1項1号「親族」の問題ではなく、同項3号又は同条2項の各該当性において検討されるべきものである。 (エ) 縁組意思が、他の目的(本件では、刺青絵の指導を含む外部交通の確保)と併存し得るとしても、前記(ア)ないし(ウ)のとおり、一審原告に は、そもそも真に養親子関係の設定を欲する効果意思はなかったと認め られるから、Aらとの間の各養子縁組はいずれも無効である。したがって、Aらは、刑事収容施設法139条1項1号「親族」には当たらない。 同人らが同号により信書を発受することができる地位にあるとも、不許可とされない地位にあるともいえない。 なお、本件の判断は、あくまでも一審原告とその親族とされるAらと の間における信書の発受の許否の場面におけるものである。訴訟法上、本件における養子縁組の無効が対世効を有することはないし、理由中の判断にとどまることを付言する。 ウ(ア) 一審原告は、信書による外部交通しか想定されないことから、養親子として精神的なつながりを形成するためには外部交通に頼るほかなく、 外部交通は親子関係から生じる法律的又は社会的な効果そのものであって、これを目的としたとしても、養子縁組意思の存在と矛盾しないと主張する。養親子関係の設定を目的として養子縁組をしたというのであれば、この一審原告の主張は合理性を有するといえる。 しかし、一審原告は、前記判示のとおり、専ら外部交通を確保するた めに、一時的な、仮のものとして養子縁組に仮託したというべきである。 一審原告の上記主張は前提を欠くものであり、採用することができない。 (イ) 一審原告は、Aら各人との間で形成された、真摯で強度の精神的なつながり等を指摘し、真に養親子関係を設定しようと 。 一審原告の上記主張は前提を欠くものであり、採用することができない。 (イ) 一審原告は、Aら各人との間で形成された、真摯で強度の精神的なつながり等を指摘し、真に養親子関係を設定しようとするものであると主張する。 しかし、一審原告とAらとの間に上記のような真摯な心理的関係性があるとしても、それは師弟関係又は友人関係であり、養親子関係とは別のもの(価値)であって、本件に係る縁組が、専ら外部交通を確保するための便法として、一時的な、仮にされたものとの認定は覆らない。一審原告の上記主張は採用することができない。 (ウ) 一審原告はその他に種々の主張をするが、いずれも採用することがで きない。 エ以上の次第であるから、一審原告の本件確認の訴えは認められない。」(13)原判決27頁14行目から29頁7行目までを次のとおり改める。 「(1) 本件不許可処分①~③について一審原告とAらの養子縁組は無効であると認められ、Aらは刑事収容施 設法139条1項1号の「親族」に該当しないから、福岡拘置所長がそれを理由になした本件不許可処分①~③は国賠法1条1項の適用上違法との評価を受けない。 一審原告の主張は採用することができない。」(14)原判決31頁14行目「前記3(2)ウ(ア)」を「認定事実(3)」に、18行 目から19行目にかけての「31~33」を「31、32」に改める。 (15)原判決33頁3行目から16行目までを削除し、17行目「(エ)」を「(ウ)」に改める。 (16)原判決33頁26行目「前記3(2)ウ(ア)」を「認定事実(3)」に改める。 (17)原判決35頁10行目から20行目までを削除し、21行目「(エ)」を 「(ウ)」に改める。 る。 (16)原判決33頁26行目「前記3(2)ウ(ア)」を「認定事実(3)」に改める。 (17)原判決35頁10行目から20行目までを削除し、21行目「(エ)」を 「(ウ)」に改める。 (18)原判決36頁17行目「認定事実(7)」を「認定事実(6)」に改め、21行目から22行目にかけての「本件信書⑥は、」の次に「取材者と取材対象者、又は訴訟代理の委任者と受任者という関係性において、差入れを求めるものにとどまり、」を加える。 (19)判決37頁11行目「前記(ア)aのとおりであり、」の次に「取材の対象又は訴訟代理の委託者という関係であるし、さらに加えて、」を加える。 2 当審における当事者の追加・補充主張に対する判断(1) 無名抗告訴訟であるとの主張について一審被告は、前記第2の3(1)一審被告の主張欄のとおり主張する。 しかし、一審原告が求めた請求の趣旨は、前記第2の1(2)①のとおり、 信書を発受できる地位の確認である。訴訟物を設定する権限を有する一審原告は、本件において、個々の信書の発受を求めた場合の当該申請に対してその都度なされる個々の不許可処分をあらかじめ予防しようとしたのではなく、死刑確定者という地位の特殊性に鑑み、刑の執行までの間、その将来にわたって信書の発受ができる地位の確認を求めたと解される。そうすると、本件 確認の訴えは将来の不利益処分の予防を目的とする無名抗告訴訟ではなく(それでは、一審原告の目的を達成することはできない蓋然性がある。)、公法上の法律関係の確認を求める実質的当事者訴訟として提起されたということができる。 その上で、確認の利益が認められるのは、補正後の原判決が判示するとお りである。 したがって、本件確認の訴えは 係の確認を求める実質的当事者訴訟として提起されたということができる。 その上で、確認の利益が認められるのは、補正後の原判決が判示するとお りである。 したがって、本件確認の訴えは適法であり、一審被告の上記主張は採用することができない。 (2) 刑事収容施設法139条1項1号該当性に関する主張について前記1に判示したとおりである。 (3) 国家賠償に関する主張についてア本件不許可処分①~③について一審原告とAらとの養子縁組は無効と認められ、Aらが親族に該当しないのはこれまで判示したとおりであり、福岡拘置所長の処分は国賠法1条1項の適用上違法とは認められない。 イ本件不許可処分④及び⑤について(ア) 本件信書④及び⑤が刑事収容施設法139条1項3号「心情の安定に資する」信書に当たるにも関わらず、福岡拘置所長が本件不許可処分④及び⑤としたこと、これらは同法139条2項に反し、裁量権の逸脱・濫用があること、以上のとおりに認められるのは、補正後の原判決が判 示するとおりである。 (イ) 一審原告は、前記第2の3(3)一審原告の主張イ(ア)のとおり、行政処分が根拠法令に違反する場合や、行政庁の裁量の逸脱・濫用が認められる場合は、ただちに国賠法1条1項の適用上違法となると主張する。 しかし、国賠法1条1項の適用上の違法は、損害填補の責任を誰に負わせるのが公平かという見地に立って行政処分の法的効果以外の要素も 対象として総合判断されるべきものである。そのため、行政処分の効力発生要件に関する違法性とはその性質を異にする。したがって、国賠法1条1項上の違法性が認められるのは、補正後の原判決が判示するとおり、福岡拘 て総合判断されるべきものである。そのため、行政処分の効力発生要件に関する違法性とはその性質を異にする。したがって、国賠法1条1項上の違法性が認められるのは、補正後の原判決が判示するとおり、福岡拘置所長が不許可処分をする上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と判断したと認め得るような事情があ る場合とするのが相当である。一審原告の上記主張は採用することができない。 (ウ) 一審原告は、前記(イ)の基準によるとしても、前記第2の3(3)イ(イ)のとおり国賠法1条1項の適用上違法となると主張する。 しかし、本件信書④及び⑤の内容は近況報告や刺青絵の指導等に関す る依頼等であり、一般にそれが死刑確定者の「心情の安定」に資するとまではいえないとする判断が不合理とまではいえない。また、本件不許可処分④及び⑤に当たって、福岡拘置所長が従前の一審原告とG・Hとの間の発受信や面会内容を子細に検討した様子は見受けられないものの(乙13、14)、それまでの信書及び面会の内容からすれば、G・H と在社会時に交流はなく(例えば、一審原告が絵を職業としていたとか、G・Hに師事していたといった事実はない。)、GやHから指導はなされてはいるものの、趣味に止まると解された可能性は極めて高いし、そのように判断されてもやむを得ない。その意味で、補正後の原判決が指摘するように、絵を通じた交流の実情及びその効果を把握することは容 易でなかったということができる。 その他補正後の原判決が摘示する各事情も併せて見れば、福岡拘置所長が本件不許可処分④及び⑤をする上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と判断したと認め得るような事情は認められない。したがって、国賠法1 する各事情も併せて見れば、福岡拘置所長が本件不許可処分④及び⑤をする上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と判断したと認め得るような事情は認められない。したがって、国賠法1条1項の適用上違法とはいえず、一審原告の上記主張は採用することができない。 ウ本件不許可処分⑥について一審原告は、前記第2の3(3)一審原告の主張欄ウ(ア)のとおり、本件信書⑥について刑事収容施設法139条1項3号に該当し、これを不許可としたことは同条2項にも違反すると主張する。 しかし、一審原告とIとの関係性に一定の変化があり、相互の信頼が高 まったとしても、取材する者と取材を受ける者という関係は本質的に変わらない。 そして、一審原告は、本件信書⑥で、ふとIの顔が浮かんだので手紙をしたためたのであって、特に理由があったわけではないこと、書籍等の差し入れを求めていることを述べていて(甲33)、本件信書⑥は、外 部交通をしたいという欲求に基づき作成されたものにとどまるというほかない。 その他補正後の原判決が摘示する各事情も併せて見れば、本件信書⑥は刑事収容施設法139条1項3号及び同条2項の信書に当たるとはいえない。したがって、一審原告の上記主張は、前提を欠いており、採用す ることができない。 3 結論よって、一審原告の控訴は理由がなく、一審被告の控訴は一部理由がある。 福岡高等裁判所第1民事部 裁判長裁判官高瀬順久 裁判官古川大吾 裁判官野々垣隆樹は、差支えのため署名押印することができない。 裁判長裁判官 裁判官古川大吾 裁判官野々垣隆樹は、差支えのため署名押印することができない。 裁判長裁判官高瀬順久

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