平成14年(行ケ)第430号特許取消決定取消請求事件(平成15年1月20日口頭弁論終結)判決原告豊田合成株式会社原告 A原告 B3名訴訟代理人弁護士大場正成同尾崎英男同嶋末和秀同黒田健二同吉村誠同弁理士平田忠雄同藤谷修同松原等同岡本芳明被告特許庁長官太田信一郎指定代理人青山待子同畑井順一同高橋泰史同宮川久成 主文 特許庁が異議2002-70027号事件について平成14年6月27日にした決定を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文と同旨第2 当事者間に争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯原告らは,下記特許異議の申立てに係る下記特許(以下「本件特許」といい,その特許発明を「本件発明」という。)の特許権者であり,その手続の経緯は次のとおりである。 1 特許庁における手続の経緯原告らは,下記特許異議の申立てに係る下記特許(以下「本件特許」といい,その特許発明を「本件発明」という。)の特許権者であり,その手続の経緯は次のとおりである。 (本件決定までの手続)平成 4年10月29日特許出願平成 9年 9月17日原告らによる手続補正書提出平成11年11月 1日原告らによる手続補正書提出平成13年 4月27日設定登録(特許第3184341号「窒素-3族元素化合物半導体発光素子及び製造方法」)平成14年 1月 9日本件特許につき特許異議の申立て(異議2002-70027号)同年 6月 3日原告らによる明細書の訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)同年 6月27日上記訂正を認め,本件特許を取り消す旨の決定(以下「本件決定」という。)同年 7月22日原告らへの本件決定謄本送達(本訴提起後の手続)同年11月 1日原告らによる明細書の訂正審判請求(訂正2002-39231号)同年12月25日上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)平成15年 1月 9日原告らへの本件訂正審決謄本送達 2 特許請求の範囲の記載(1) 設定登録時の特許請求の範囲の記載【請求項1】サファイア基板と,前記サファイア基板上に,温度400℃~800℃において,非晶質のAlXGa1-XN;0<X<1が厚さ100Å~500Åに形成されたバッファ層と,前記バッファ層の上に形成されたシリコン(Si)がドープされたn型の窒素-3族元素化合物半導体(一般式AlX1GaY1In1-X1-Y1N,0≦X1≦1,0≦Y1≦1,0≦X1+Y1≦1)から成るn層と,前記n層の上 れたシリコン(Si)がドープされたn型の窒素-3族元素化合物半導体(一般式AlX1GaY1In1-X1-Y1N,0≦X1≦1,0≦Y1≦1,0≦X1+Y1≦1)から成るn層と,前記n層の上に形成されたインジウム(In)を含むノンドープの窒素-3族元素化合物半導体(一般式AlX2GaY2In1-X2-Y2N,0≦X2≦1,0≦Y2≦1,0≦X2+Y2<1)から成る発光層と,前記発光層上に形成されたマグネシウム(Mg)がドープされたp型の窒素-3族元素化合物半導体(一般式AlX3GaY3In1-X3-Y3N,0≦X3≦1,0≦Y3≦1,0≦X1+Y1≦1)から成るp層とを有する窒素-3族元素化合物半導体発光素子。 【請求項2】前記非晶質のAlXGa1-XN;0<X<1が厚さ100Å~500Åに形成されたバッファ層は,多結晶又は微結晶の存在割合が1~90%であることを特徴とする請求項1に記載の窒素-3族元素化合物半導体発光素子。 【請求項3】前記p層は,窒素-3族元素化合物半導体を低抵抗化したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の窒素-3族元素化合物半導体発光素子。 【請求項4】前記発光層はn伝導型であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の窒素-3族元素化合物半導体発光素子。 【請求項5】サファイア基板上に窒素-3族元素化合物半導体(AlXGaYIn1-X-YN;X=0,Y=0,X=Y=0を含む)から成る層をエピタキシャル成長させる方法において,前記サファイア基板上に,温度400℃~800℃において,厚さ100Å~500Åの非晶質のAlXGa1-XN;0<X<1から成るバッファ層を成長させ,そのバッファ層上に温度1000℃~1200℃で窒素-3族元素化合物半導体(AlXG ~800℃において,厚さ100Å~500Åの非晶質のAlXGa1-XN;0<X<1から成るバッファ層を成長させ,そのバッファ層上に温度1000℃~1200℃で窒素-3族元素化合物半導体(AlXGaYIn1-X-YN;X=0,Y=0,X=Y=0を含む)をエピタキシャル成長させる半導体の製造方法。 【請求項6】前記バッファ層を,多結晶又は微結晶の存在割合が1~90%となるよう成長させることを特徴とする請求項5に記載の半導体の製造方法。 (2) 本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載【請求項1】サファイア基板と,前記サファイア基板上に,温度400℃~800℃において,非晶質のAlXGa1-XN;0<X<1が厚さ100Å~500Åに形成されたバッファ層と,前記バッファ層の上に形成されたシリコン(Si)がドープされたn型の窒素-3族元素化合物半導体(一般式AlX1GaY1In1-X1-Y1N,0≦X1≦1,0≦Y1≦1,0≦X1+Y1≦1)から成るn層と,前記n層の上に形成されたインジウム(In)を含むノンドープの窒素-3族元素化合物半導体(一般式AlX2GaY2In1-X2-Y2N,0≦X2≦1,0≦Y2≦1,0≦X2+Y2<1)から成る発光層と,前記発光層上に形成されたマグネシウム(Mg)がドープされたp型の窒素-3族元素化合物半導体(一般式AlX3GaY3In1-X3-Y3N,0≦X3≦1,0≦Y3≦1,0≦X1+Y1≦1)から成るp層とを有し,前記バッファ層は,多結晶又は微結晶の存在割合が1~90%であることを特徴とする窒素-3族元素化合物半導体発光素子。 【請求項2】前記p層は,窒素-3族元素化合物半導体を低抵抗化したことを特徴とする請求項1に記載の窒素-3族元素化合物半導体 ~90%であることを特徴とする窒素-3族元素化合物半導体発光素子。 【請求項2】前記p層は,窒素-3族元素化合物半導体を低抵抗化したことを特徴とする請求項1に記載の窒素-3族元素化合物半導体発光素子。 【請求項3】前記発光層はn伝導型であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の窒素-3族元素化合物半導体発光素子。 【請求項4】サファイア基板上に,窒素-3族元素化合物半導体(AlXGaYIn1-X-YN;X=0,Y=0,X=Y=0を含む)から成る層をエピタキシャル成長させる方法において,前記サファイア基板上に,温度400℃~800℃において,厚さ100Å~500Åの非晶質のAlXGa1-XN;0<X<1から成るバッファ層を成長させ,そのバッファ層上に温度1000℃~1200℃で窒素-3族元素化合物半導体(AlXGaYIn1-X-YN;X=0,Y=0,X=Y=0を含む)をエピタキシャル成長させ,前記バッファ層を,多結晶又は微結晶の存在割合が1~90%となるよう成長させることを特徴とする半導体の製造方法。 (3) 本件訂正審決に係る訂正後の特許請求の範囲の記載【請求項1】サファイア基板と,前記サファイア基板上に温度約400℃,厚さ約500Åで形成することにより,無定型構造の中に多結晶又は微結晶が混在した状態とした非晶質のAl0.1Ga0.9Nからなるバッファ層と,前記バッファ層の上に形成されたシリコン(Si)がドープされたn型の窒素-3族元素化合物半導体(AlXGaYIn1-X-YN,X=0,Y=0,X=Y=0を含む)から成るn層と,前記n層の上に形成されたインジウム(In)を含むノンドープの窒素-3族元素化合物半導体(AlXGaYIn1-X-YN,X=0,Y=0,X=Y=0を Y=0,X=Y=0を含む)から成るn層と,前記n層の上に形成されたインジウム(In)を含むノンドープの窒素-3族元素化合物半導体(AlXGaYIn1-X-YN,X=0,Y=0,X=Y=0を含む)から成るn型の層と,前記n型の層上に形成されたマグネシウム(Mg)がドープされたp型の窒素-3族元素化合物半導体(AlXGaYIn1-X-YN,X=0,Y=0,X=Y=0を含む)から成るp層とを有する窒素-3族元素化合物半導体発光素子。 3 本件決定の理由本件決定は,本件訂正請求に係る訂正を認め,本件発明の要旨を同訂正後の特許請求の範囲の記載(上記第2の2(2))のとおり認定した上,平成9年9月17日付け及び平成11年11月1日付け各手続補正書による補正は,いずれも願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内でされたものといえないから,明細書の要旨を変更するものであり,平成5年法律第26号による改正前の特許法40条の規定により,本件特許の出願日は平成9年9月17日に繰り下がるところ,本件発明は,特開平6-151962号公報,特開平4-242985号公報及び特開平3-218625号公報記載の各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は,特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)4条2項の規定により取り消されるべきものとした。 第3 当事者の主張 1 原告ら本件決定が,本件発明の要旨を本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(上記第2の2(2))のとおり認定した点は,本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたため,誤 本件発明の要旨を本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(上記第2の2(2))のとおり認定した点は,本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたため,誤りに帰したことになる。そして,この瑕疵は本件決定の結論に影響を及ぼすものであるから,本件決定は違法として取り消されるべきである。 2 被告本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正されたことは認める。 第4 当裁判所の判断本件決定が本件発明の要旨を本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(上記第2の2(2))のとおり認定したこと,他方,本件訂正審決の確定により,特許請求の範囲の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたことは当事者間に争いがないところ,両者の記載を対比した場合に,後者の特許請求の範囲は,前者の特許請求の範囲を減縮したのと同一の結果となっていることは明らかである。 そうすると,本件決定が,本件発明の要旨を上記のとおり認定したことは,結果的に誤りであったことに帰する。そして,これが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,本件決定は,瑕疵があるものとして取消しを免れない。 よって,原告らの請求は理由があるから認容し,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第13民事部裁判長裁判官篠原勝美裁判官長沢幸男裁判官宮坂昌利 宮坂昌利
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