平成15(行コ)112 公文書非開示決定取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成13年(行ウ)第280号)

裁判年月日・裁判所
平成15年7月10日 東京高等裁判所 情報公開
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判決文本文5,651 文字)

主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人が平成13年9月19日付けで控訴人に対してした行政情報部分公開決定のうち非公開部分を取り消す。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文と同旨第2 事案の概要 1 本件は,品川区の住民である控訴人が,平成13年9月11日,品川区情報公開・個人情報保護条例(以下「本件条例」という。)に基づき,原判決別紙一覧表記載の区長交際費に係る支出決定書及び支払証明書(以下,まとめて「本件各文書」という。)の公開請求をしたところ,本件条例の実施機関である品川区長から決定権限を委任された被控訴人により,同月19日,本件条例9条1号の個人情報(個人に関する行政情報で,特定の個人が識別され,または識別され得るもの)に該当するとの理由で,本件各文書のうち個人の氏名が記載された部分を非公開とする行政情報部分公開決定(以下「本件決定」という。)がされたため,被控訴人に対し,本件決定のうち非公開部分の取消しを求めた事案である。 原審は,本件各文書のうち個人の氏名が記載された部分は本件条例9条1号の個人情報に該当するものと認められ,また,被控訴人が裁量権を逸脱・濫用して本件条例10条による裁量的公開をしなかったと認めることはできないから,本件決定は適法にされたものと認めることができるとして,控訴人の請求を棄却したため,控訴人がこれを不服として控訴した。 2 本件条例の定め,前提となる事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり付加訂正するほか,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」1ないし3記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決2頁下から4行目を次のとおり改める。 「第3条実施機関は,第1条の目的が十分に達成されるようにこの条例 び理由」の「第2 事案の概要」1ないし3記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決2頁下から4行目を次のとおり改める。 「第3条実施機関は,第1条の目的が十分に達成されるようにこの条例を解釈し,運用しなければならない。 2 略第4条から第6条まで略第7条何人も,実施機関に対し,行政情報の公開の請求(以下「公開請求という。)をすることができる。」(2) 3頁下から7行目を次のとおり改める。 「一法令等の規定により行われた許可,免許,届出その他これらに類する行為に際して作成し,または取得した情報であって,公開することが必要であると認められるもの二事業活動によって生じ,または生ずるおそれのある危害から人の生命,身体および健康を保護するため,公開することが必要であると認められる情報三区民の生活に影響を及ぼす事業者の違法または不当な事業活動に関する情報であって,公開することが必要であると認められるもの」(3) 4頁7行目の「支払決定書」を「支出決定書」に改め,同8,9行目の「(支払決定書の記載事項は,上記と同様である。)」を削り,5頁下から2行目の「支出」を「支給」に,7頁3行目の「総務課」を「総務課長」にそれぞれ改め,10頁2行目の「第一小法廷判決」の次に「(民集56巻2号467頁)」を加え,同8行目の「条例を」を「規定を」に,同15行目及び同下から5,4行目の「非開示情報」をいずれも「非公開情報」にそれぞれ改める。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,本件非公開情報は本件条例9条1号により非公開情報とされる個人情報には該当しないものと解すべきであるから,本件決定のうちこれを非公開とした部分は違法であり,取り消すべきものと判断する。その理由は,次のとおりである。 (1) 本件条例は,2条3号において,「個人情報」を 当しないものと解すべきであるから,本件決定のうちこれを非公開とした部分は違法であり,取り消すべきものと判断する。その理由は,次のとおりである。 (1) 本件条例は,2条3号において,「個人情報」を「個人に関する行政情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。以下同じ。)で,特定の個人が識別され,または識別され得るものをいう。」と定義し,9条1号において,同号イ又はロに掲げる情報を除き,個人情報を非公開情報としており,公務員に関する個人情報と非公務員に関する個人情報とを区別していない。 本件非公開情報は,本件各文書に記載された個人(区議会議員)の氏名であるから,これが個人に関する行政情報で,特定の個人が識別されるものに該当することは明らかである一方,事業を営む個人の当該事業に関する情報に該当するものとはいい難い。また,本件各文書は,区長交際費の支出に際し,支出を決定し,又はその支払を証明するために作成された文書であるから,本件非公開情報について,公表することを目的として,実施機関が作成し,又は取得した情報(9条1号ロ)に該当するということも困難である。したがって,本件条例の規定をその文言どおりに解釈適用すると,本件非公開情報は,9条1号により非公開情報とされる個人情報に該当すると解されなくもない。被控訴人の主張は,以上と同旨を主張するものと解される。 (2) しかしながら,本件条例は,個人の権利利益を擁護しつつ,区政の透明性を確保し,もって区民と区政との信頼関係の強化に資することを目的として(1条),何人にも行政情報の公開を請求する権利を保障し(7条),行政情報を原則公開すべきものとしている(8条)。また,本件条例は,1条の目的が十分に達成されるように,条例を解釈し,運用しなければならないものと定め(3条),本件条例の解釈・運用 保障し(7条),行政情報を原則公開すべきものとしている(8条)。また,本件条例は,1条の目的が十分に達成されるように,条例を解釈し,運用しなければならないものと定め(3条),本件条例の解釈・運用の指針を明らかにするとともに,そのような解釈・運用を実施機関の責務とし,そのような責務の一環として,非公開情報であっても,非公開とすることにより保護される利益に優越する公益上の理由があると認めるときは,実施機関の裁量により,当該行政情報を公開することができるものとしている(10条)。 これらの規定によれば,本件条例は,地方自治の本旨にのっとり,区政の透明性を確保する上での行政情報の公開を図ることの重要性にかんがみ,何人にも行政情報の公開を請求する権利を保障し,行政情報を原則公開とする一方,個人情報については,個人の権利利益の保護を図る観点から,非公開とし,もって行政情報の公開の要請と個人の権利利益の保護の要請との調和を図っているものと解される。本件条例が個人情報を非公開としているこのような趣旨・目的及び本件条例が定める上記のような解釈・運用指針に照らすと,本件条例9条1号の規定の文言上は個人情報に該当するものであっても,それを公開することにより当該個人の権利利益を侵害するおそれがないことが明らかなものについてまで,一律に,その公開が禁止されると解することは,個人の権利利益を保護するとの名目で不当に行政情報の公開を妨げるものであって,上記の趣旨・目的及び解釈・運用指針に反するものといわざるを得ない。したがって,本件条例の解釈においては,9条1号のイ及びロは,非公開情報から除外される個人情報を限定列挙したものと解すべきではなく,これらのいずれにも該当しない個人情報であっても,その内容・性質等に照らして,これを公開することによって当該個人の権利利 ロは,非公開情報から除外される個人情報を限定列挙したものと解すべきではなく,これらのいずれにも該当しない個人情報であっても,その内容・性質等に照らして,これを公開することによって当該個人の権利利益を侵害するおそれがないことが明らかなものについては,同号イ又はロに掲げる情報に準ずるものとして,同号により非公開情報とされる個人情報から除外され,非公開情報には該当しないものと解するのが相当である。 (3) そこで,本件非公開情報(本件各文書に記載された個人の氏名)が,これを公開することによって当該個人の権利利益を侵害するおそれがないことが明らかなものといえるかどうかを検討する。 前提となる事実,証拠(甲3の1~49,4,5の1~7,6の1・2,9の1・2,10,11)及び弁論の全趣旨によれば,本件各文書は,現職の区議会議員又はその後援会が主催した区政報告会,区議を励ます会,区政報告新年交流会,区議新年会,区議総会新年会,品川区議会議長を祝う会,品川区議会議長就任祝賀会,区議会議員在職10周年記念又は区議会議員藍綬褒賞受賞祝賀会という名称の会合に区長が出席した際,儀礼経費として支出した区長交際費に係る支出決定書又は支払証明書であり,本件非公開情報は,当該議員の氏名であること,これらの会合のうち,区政報告会は,一般に,区議会議員の支援者を中心とした区民が集まり,1時間半から2時間程度,当該議員の区議会での活動状況の報告,当該議員と関係の深い国会議員,都議会議員,著名人等の挨拶や講演等が行われるものであること,区政報告会以外の会合には,当該議員の区議会議長就任を祝う趣旨や当該議員の長年の実績等を称える趣旨などから開催されるものも含まれるが,いずれも,基本的には区政報告会と同様の内容の会合であること,区長は,各会合の主催者から招待あるいは要請を 議長就任を祝う趣旨や当該議員の長年の実績等を称える趣旨などから開催されるものも含まれるが,いずれも,基本的には区政報告会と同様の内容の会合であること,区長は,各会合の主催者から招待あるいは要請を受けてこれに出席し,儀礼的挨拶等をするとともに,参加者との懇談において,区政の方針や課題に関する意見交換をするのが通例であること,会合の開催場所は,区民会館等の公的施設のこともあれば,ホテル等の私的施設のこともあるが,いずれの場合も,区議会議員が議員活動の成果を積極的に披露し,アピールする場になっており,会合の開催の事実はもとより,区長の出席の事実も公にされており,不特定の者に知られ得る状態で開催されていること(被控訴人は,控訴人が相当な調査をすれば,本件非公開情報を容易に知り得る旨主張し,また,当審の口頭弁論期日において,本件各文書に記載された区長の交際事務には,その相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交際に関するものといえないものはない旨自認している。),区長交際費の支出金額を決定するに当たっては,主として,会合の場所,飲食の有無及び一般参加者の会費額を考慮し,一般参加者について会費の定めがあるものについては,おおむね会費相当額を支出しており(ただし,会費が5000円未満の会合については5000円を,1万円未満の会合については1万円をそれぞれ支出額としている場合がほとんどであり,区議会議員が議長の職にあった場合等に,会費相当額を多少上回る金額を支出したことがある。),原則として,区と会合の主催者たる区議会議員とのかかわりの濃淡等を個別に斟酌して決定することはないことが認められる。 以上の認定事実によれば,本件各文書に氏名の記載された区議会議員は,自ら又は自らの後援会が主催した会合に区長を招待し,あるいは区長に出席を要請し,会 別に斟酌して決定することはないことが認められる。 以上の認定事実によれば,本件各文書に氏名の記載された区議会議員は,自ら又は自らの後援会が主催した会合に区長を招待し,あるいは区長に出席を要請し,会合の開催及び区長の出席の事実を公にした上で,これを自らの議員活動の成果を披露し,アピールする場として積極的に利用しているものであり,自らの氏名が不特定多数の者に広く知れ渡ることを容認しているものということができる。また,区議会議員としての活動には,区議会内の活動だけでなく,区議会外での有権者との意見交換等も含まれるものと解されることを併せ考慮すれば,区議会議員が区政報告会又はこれと同様の会合を開催し,これに出席することは,当該議員にとって,私的な出来事ではなく,議員として不可欠な公的活動又はこれに準ずるものに当たるものと評価することができる。 このような事情にかんがみれば,本件非公開情報(本件各文書に記載された区議会議員の氏名)は,一般に公表,披露されることがもともと予定されているものであって,これを公開しても当該議員の権利利益を侵害するおそれがないことが明らかなものというべきであり,他に,上記のおそれがあることをうかがわせる証拠はないから,本件非公開情報は,本件条例9条1号により非公開情報とされる個人情報には該当しないものと認めるのが相当である。 なお,本件条例9条3号イは,区政執行に関する情報のうち,交渉の方針その他実施機関が行う事務事業に関する情報であって,公開することにより区政の公正又は適正な執行を著しく妨げるおそれのあるものを非公開情報としている(甲1)が,上記の認定事実によれば,本件非公開情報を公開することによって上記のおそれがあるとは認められないから,本件非公開情報は,同号イの非公開情報にも該当しないものというべきである。 している(甲1)が,上記の認定事実によれば,本件非公開情報を公開することによって上記のおそれがあるとは認められないから,本件非公開情報は,同号イの非公開情報にも該当しないものというべきである。 2 よって,控訴人の請求は理由があるから,これを棄却した原判決を取り消して,控訴人の請求を認容することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第7民事部裁判長裁判官横山匡輝裁判官佐藤公美裁判官萩本修

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