平成29年2月10日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成27年(ワ)第4461号特許権侵害差止請求事件口頭弁論終結日平成28年12月14日判決原告株式会社マネースクウェアHD同訴訟代理人弁護士伊藤 真同平井佑希同丸田憲和同牧野知彦同訴訟代理人弁理士石井明夫同補佐人弁理士佐野 弘被告株式会社外為オンライン同訴訟代理人弁護士鮫島正洋同伊藤雅浩同溝田宗司同関 裕治朗 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,別紙被告サービス目録記載1のサービスを使用してはならない。 2 被告は,別紙被告サービス目録記載2のサービスに使用されているサーバを使用してはならない。 第2 事案の概要 1 本件は,特許第5525082号の特許権(請求項の数10。以下「本件特 許権1」又は「本件特許1」といい,特許請求の範囲請求項1の発明を「本件発明1」という。),特許第5650776号の特許権(請求項の数7。以下「本件特許権2」又は「本件特許2」といい,特許請求の範囲請求項1の発明を「本件発明2」という。)及び特許第5826909号の特許権(請求項の数7。以下「本件特許権3」又は「本件特許3」といい,特許請求の範囲請求項1の発明を 許2」といい,特許請求の範囲請求項1の発明を「本件発明2」という。)及び特許第5826909号の特許権(請求項の数7。以下「本件特許権3」又は「本件特許3」といい,特許請求の範囲請求項1の発明を「本件発明3」という。)を有する原告が,①被告の提供する別紙被告サービス目録記載1のサービス(以下「被告サービス1」という。)は本件発明1の技術的範囲に属する,②被告の提供する同目録記載2のサービス(以下「被告サービス2」という。)に使用されているサーバは本件発明2及び3の各技術的範囲に属すると主張して,被告に対し,特許法100条1項に基づき,被告サービス1の差止め及び被告サービス2に使用されているサーバの使用の差止めを求めた事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者ア原告は,外国為替取引業,外国為替取次ぎ業務等の事業を営む会社等の株式等を所有することにより,当該会社等の事業活動を支配又は管理することなどを目的とする株式会社である。(甲1)イ被告は,外国為替に関する業務等を目的とする株式会社である。 (2) 原告の特許権原告は,次の本件特許権1ないし3を有している(以下,併せて「本件各特許権」又は「本件各特許」という。また,本件特許権1ないし3に係る明細書及び図面を「本件明細書等1」ないし「本件明細書等3」といい,その内容は別紙特許公報記載のとおりである。)。 ア本件特許権1特許番号特許第5525082号 発明の名称金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法,プログラム出願日平成25年4月4日原出願日平成19年12月19日(特願2010-5151の分割)登録日平 金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法,プログラム出願日平成25年4月4日原出願日平成19年12月19日(特願2010-5151の分割)登録日平成26年4月18日イ本件特許権2特許番号特許第5650776号発明の名称金融商品取引管理装置,金融商品取引管理システムおよびプログラム出願日平成25年3月7日原出願日平成20年12月26日(特願2008-332599の分割)登録日平成26年11月21日ウ本件特許権3特許番号特許第5826909号発明の名称金融商品取引管理装置,金融商品取引管理システムおよびプログラム出願日平成26年11月13日原出願日平成20年12月26日(特願2013-45238〔本件特許2〕の分割)登録日平成27年10月23日(3) 本件発明1ないし3の内容本件発明1ないし3(以下,併せて「本件各発明」という。)に係る特許請求の範囲の記載は,末尾添付の特許公報該当欄記載のとおりである。 (4) 構成要件の分説 本件各発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い「構成要件1A」などという。)。 ア本件発明11A 相場価格が変動する金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法であって,1B 売買を希望する前記金融商品の種類を選択するための情報と,前記金融商品の売買注文における,注文価格ごとの注文金額を示す情報と,前記金融商品の販売注文価格又は購入注文価格としての一の注文価格を示す情報と,一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で販売した後に他の価格で における,注文価格ごとの注文金額を示す情報と,前記金融商品の販売注文価格又は購入注文価格としての一の注文価格を示す情報と,一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で販売した後に他の価格で購入した場合の利幅又は一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で購入した後に他の注文価格で販売した場合の利幅を示す情報と,前記注文が複数存在する場合における該注文同士の値幅を示す情報と,のそれぞれを,前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報として受信して受け付ける注文入力受付手順と,1C 該注文入力受付手順によって受け付けられた前記売買注文申込情報に基づいて,選択された前記種類の前記金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手順と,1D 前記金融商品の前記相場価格の情報を取得する価格情報受信手順と,1E 前記売買注文申込情報における前記注文価格と前記利幅とに基づいて,前記他の注文価格を算出するための第二注文価格算出手順とを有し,1F 前記注文情報生成手順においては,前記売買注文申込情報に基づいて, 前記注文情報として,同一種類の前記金融商品について,前記一の注文価格を一の最高価格として設定し,該一の最高価格より安値側に,それぞれの値幅が前記売買注文申込情報に含まれる前記値幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,設定されたそれぞれの前記注文価格としての第一注文価格について買いもしくは売りの指値注文を行う第一注文情報,前記第二注文価格算出手順において算出された前記他の価格を他の最高価格として設定し,該他の最高価格より安値側に,それぞれの前記第一注文に対し,購入又は販売が行われた前記第一注文に基づいて販売又は購入が行われたときの前記利幅が前記売買注文申込情報における前記利幅と 格として設定し,該他の最高価格より安値側に,それぞれの前記第一注文に対し,購入又は販売が行われた前記第一注文に基づいて販売又は購入が行われたときの前記利幅が前記売買注文申込情報における前記利幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,該設定されたそれぞれの前記注文価格としての第二注文価格について前記買いの第一注文に対しては売りの,前記売りの第一注文に対しては買いの指値注文を行う第二注文情報からなる注文情報群を複数生成し,1G 生成された前記注文情報群を注文情報記録手段に記録し,1H 一の前記売買注文申込情報に基づいて生成されたそれぞれの前記注文情報群について,有効な注文である前記第一注文の前記第一注文価格と前記金融商品の相場価格とが一致し,次いで有効な注文である前記第二注文の前記第二注文価格と前記相場価格とが一致することで前記第一注文と前記第二注文とが約定した場合,次の前記注文情報群の前記第一注文情報を有効とし,約定した前記第一注文と同じ前記第一注文価格における前記第一注文の約定と,約定した前記第二注文と同じ前記第二注文価格における前記第二注文の約定とを繰り返し行わせるように設 定することを特徴とする,1I 金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法。 イ本件発明22A 金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって,2B 前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,2C 該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,2D 該注文情報生成手段は,一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行また 基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,2D 該注文情報生成手段は,一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,2E 売買取引開始時に,前記第一注文情報に基づく成行注文を行うとともに,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文を有効とし,2F 前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる 2G ことを特徴とする金融商品取引管理装置。 ウ本件発明33A 金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって,3B 前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,3C 該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,3D 該注文情報生成手段は,一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買 備え,3D 該注文情報生成手段は,一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,3E 売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文を有効とし,3F-1 前記成行注文を決済する前記指値注文が約定されたとき,前記注文情報群の生成を行うと共に,3F-2 該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記指値注文を有効とし,3F-3 以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる3G ことを特徴とする金融商品取引管理装置。 (5) 本件特許2の審査経過原告(出願人)は,平成26年2月10日付けの手続補正書(乙11。以下「乙11補正書」という。)による補正をしたところ,特許庁審査官から同月27日付け拒絶理由通知(乙12。以下「本件拒絶理由通知」という。)を受けた。そこで原告は,同年5月7日付け手続補正書(乙13。以下「乙13補正書」という。)による補正を行うとともに,同日付け意見書(乙16。以下「乙16意見書」という。)を提出したところ,本件特許2として特許査定を受けた。(乙11ないし13,16)(6) 被告の行為ア被告は,平成26年10月1日以降,顧客に対し,業として,FX取引(外国為替取引) いう。)を提出したところ,本件特許2として特許査定を受けた。(乙11ないし13,16)(6) 被告の行為ア被告は,平成26年10月1日以降,顧客に対し,業として,FX取引(外国為替取引)の管理方法である被告サービス1及び2(以下,併せて「被告各サービス」という。)を,被告の保有するサーバ(以下「被告サーバ」という。)からインターネット回線等を通じて提供している。 イ用語被告各サービスにおける用語の意味は,以下のとおりである。(甲5,乙3)注文 :買い付け又は売却の予約をすること。 成行注文 :相場の時価で買い付け又は売却の予約をすること。成行注文を行うと即座に予約は成立し,約定する。 指値注文 :価格を指定する条件付きの注文のうち,買い付けの場合「ある価格以下になったら買い」,売却の場合「ある価格以上になったら売り」という注文のこと。 逆指値注文:価格を指定する条件付きの注文のうち,売却の場合「ある価格以下になったら売り」,買い付けの場合「ある価格以上になったら買い」という注文のこと。 注文情報(群)の生成:注文を行うために必要な情報をFX取引システム内部で生成すること。 注文が有効:行われた注文が効力を有し,約定することができるようになること。 注文の約定:注文が成立すること。注文が約定すると注文は消滅する。 注文の消滅:注文が約定した結果,当該注文がなくなること。 イフダン(IFDONE)注文:新規注文と,その注文が成立したら自動的に有効となる決済注文をセットで発注する注文方法。あらかじめ,○○円で買う(又は売る)値段と○○円で売る(又は買う)値段を決めて発注する。 OCO注文:利益確定と損切りに分けて二つ同時に発注し,一方の注文が 済注文をセットで発注する注文方法。あらかじめ,○○円で買う(又は売る)値段と○○円で売る(又は買う)値段を決めて発注する。 OCO注文:利益確定と損切りに分けて二つ同時に発注し,一方の注文が約定すると,もう一方の注文が自動的に取消しとなる注文方法。 ウ被告各サービスの概要被告サービス1(サイクル注文)は,あらかじめ指定した変動幅の中で,一定間隔の値幅で複数のイフダン注文を一度に同時発注し,決済注文成立後,あらかじめ指定した変動幅の範囲で成立した決済注文と同条件のイフダン新規注文をシステムが自動的に繰り返し発注する連続注文機能である。 被告サービス2(iサイクル注文)は,あらかじめ指定した変動幅の中で,一定間隔の値幅で複数のイフダン注文にOCO注文の特徴を備えた注文を一度に同時発注し,決済注文成立後,相場の変動に合わせて変動幅を追従させ,相場変動に追従した新たな条件の注文をシステムが自動的に繰り返し発注する連続注文機能である。(甲5,6の1及び2) (7) 被告サービス1における顧客の入力画面被告サービス1における顧客の入力画面は,以下のとおりである。(乙4)ア 「画面1」被告サービス1において,顧客は,下図の「画面1」の各欄に以下のとおり各種情報を入力する(本判決において「①」等の符号を便宜上付している。)。 【画面1(被告サービス1を選択したところ)】(ア) ①「通貨ペア」欄FX取引の対象とする通貨を選択する欄である。「USD/JPY」であれば,日本円(JPY)でアメリカドル(USD)を売買することを意味する。 (イ) ②「注文種類」欄「サイクル注文」(被告サービス1)や「iサイクル注文」(被告サービス2)等のFX取引の注文方法を選択する欄である。 (ウ) ③「参考期間 売買することを意味する。 (イ) ②「注文種類」欄「サイクル注文」(被告サービス1)や「iサイクル注文」(被告サービス2)等のFX取引の注文方法を選択する欄である。 (ウ) ③「参考期間」欄次の④「想定変動幅」を算出するための基礎となる過去の為替レートの変動期間を選択する欄である。④「想定変動幅」は,この③「参考期 間」のみに基づいて自動算出される。 (エ) ④「想定変動幅」欄「通貨ペア」の為替レートの変動幅の予測値を入力する欄である。この④「想定変動幅」は,前項の③「参考期間」のみに基づいて自動算出されるが,顧客が変更を行うことは可能である。 (オ) ⑤「ポジション方向」欄FX取引の開始に当たり,買いから入るのか,それとも売りから入るのかを選択する欄である。 (カ) ⑥「対象資産(円)」欄取引に使用する資産(日本円)を入力する欄である。 イ 「画面2」上記の「画面1」において,上記①ないし⑥の各種情報を入力し,「計算」のアイコンをクリック(タップ)すると,下図の「画面2」が表示され,顧客は各欄に以下のとおり各種情報を入力する。 【画面2(被告サービス1のもの)】(ア) ⑦「数量」欄一注文あたりの数量を入力する欄である。 (イ) ⑧「注文情報群」欄生成された複数個の「注文情報群」(「新規指定レート」及び「利食いレート」の組合せ。上記の画面2の例では5個の「注文情報群」が表示されている。)を示す欄である。この「注文情報群」欄には,被告サービス1のシステムによって自動算出された「注文情報群」が初めから入力されているが,顧客は,「注文情報群」の「新規指定レート」及び「利食いレート」の数値を適宜変更することが可能である。 (8) 被告サービス2における顧客の入力画 出された「注文情報群」が初めから入力されているが,顧客は,「注文情報群」の「新規指定レート」及び「利食いレート」の数値を適宜変更することが可能である。 (8) 被告サービス2における顧客の入力画面被告サービス2における顧客の入力画面は,以下のとおりである。(乙5)ア 「画面1」 被告サービス2において,顧客は,被告サービス1と同様に,下図の「画面1」の各欄に以下のとおり各種情報を入力する。各欄に入力すべき各種情報は,被告サービス1のものと同じである。 【画面1(被告サービス2を選択したところ)】イ 「画面2」上記の「画面1」において,上記①ないし⑥の各種情報を入力し,「計算」のアイコンをクリック(タップ)すると,下図の「画面2」が表示され,顧客は各欄に以下のとおり各種情報を入力する。 このうち⑦「数量」欄については,入力すべき情報は被告サービス1のものと同じであるが,⑧「注文情報群」欄については,「注文情報群」が「新規指定レート」,「利食いレート」及び「損切りレート」の組合せであり,なおかつ顧客が当該「注文情報群」の内容を変更することができないという点で,被告サービス1のものとは異なる。 【画面2(被告サービス2のもの)】(9) 先行文献本件特許1に係る出願の原出願日(平成19年12月19日)よりも前に公開された文献として,以下のアが存在し,また,本件特許2及び3に係る出願の原出願日(平成20年12月26日)よりも前に公開された文献として,以下のイないしエが存在する。 ア特表2002-543481号公報(公表日平成14年12月17日。 乙6。以下「引用文献1」といい,同公報に係る発明を「引用発明1」という。)イ特開2008-130002号公報(公開日平成20年6月5日。 2-543481号公報(公表日平成14年12月17日。 乙6。以下「引用文献1」といい,同公報に係る発明を「引用発明1」という。)イ特開2008-130002号公報(公開日平成20年6月5日。乙8。以下「引用文献2」といい,同公報に係る発明を「引用発明2」という。)ウ特開2002-183446号公報(公開日平成14年6月28日。 乙7。以下「引用文献3」といい,同公報に係る発明を「引用発明3」という。)エ米国特許出願公開第2002/0194106号明細書(公開日2002年〔平成14年〕12月19日。乙14の1。以下「引用文献4」といい,同明細書に係る発明を「引用発明4」という。)(10) 構成要件の充足性ア被告サービス1は,本件発明1の構成要件1A,1D及び1Iを充足する。 イ被告サービス2は,本件発明2の構成要件2Aないし2E及び2G並びに本件発明3の構成要件3Aないし3E及び3Gを充足する。 3 争点(1) 被告サービス1が本件発明1の技術的範囲に属するかア構成要件1Bの「値幅を示す情報」の充足性イ構成要件1Bの「利幅を示す情報」の充足性ウ構成要件1C,1E,1F,1G及び1Hの充足性エ構成要件1Bの「値幅を示す情報」及び「利幅を示す情報」についての均等侵害の成否(2) 被告サービス2に使用されている被告サーバが本件発明2の技術的範囲に属するかア構成要件2Fの「前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行う」の充足性イ構成要件2Fの「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」の充足性ウ構成要件2Fの「以後,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる 「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」の充足性ウ構成要件2Fの「以後,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」の充足性 エ構成要件2Fの「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」についての均等侵害の成否(3) 被告サービス2に使用されている被告サーバが本件発明3の技術的範囲に属するかア構成要件3F-1の「前記成行注文を決済する前記指値注文が約定されたとき,前記注文情報群の生成を行う」及び3F-3の「以後,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」の充足性イ構成要件3F-2の「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記指値注文を有効とし,」の充足性ウ構成要件3F-3の「以後,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」の充足性(4) 本件各特許は特許無効審判により無効にされるべきものかア本件発明1についての無効理由(引用発明1を主引例とする進歩性欠如)の存否イ本件発明2及び3についての無効理由(実施可能要件違反)の存否ウ本件発明2及び3についての無効理由(サポート要件違反)の存否エ本件発明2及び3についての無効理由(引用発明3を主引例とする進歩性欠如)の存否オ本件発明2及び3についての無効理由(引用発明4を主引例とする進歩性欠如)の存否カ本件発明3についての無効理由(分割要件違反)の存否キ本件発明3についての無効理由(サポート要件違反)の存否第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)ア(構成要件1Bの「値幅を示す情報」の充足性)について〔原告の主張〕 (1) 被告サ 3についての無効理由(サポート要件違反)の存否第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)ア(構成要件1Bの「値幅を示す情報」の充足性)について〔原告の主張〕 (1) 被告サービス1の内容は,別紙被告サービス説明書1に記載されたとおりであり,本件発明1の構成要件1Bを充足する。 本件発明1における「値幅」とは,同一種類の金融商品について,複数の価格にわたって一度に注文が行われる場合の注文同士の価格差をいう。被告サービス1においては,最も高い注文情報群を基準として,これよりも0. 5円ずつ低い注文情報群が計4組生成される。そうすると,このような各注文情報群を演算する前提として,かかる「0.5円」という値幅を示す情報(数値)が入力されているということになるから,被告サービス1は,構成要件1Bのうち「前記注文が複数存在する場合における該注文同士の値幅を示す情報」を充足する。 (2) 被告の主張に対する反論この点に関して被告は,被告サービス1においては値幅の数値そのものを顧客において入力する欄がなく,被告サーバが受信して受け付けてもいないなどと主張する。 しかし,本件発明1で金融商品取引管理システムが受信して受け付けるのは「値幅を示す情報」であるから,その内容は値幅の数値そのものに限られず,値幅を「示す」情報であれば足りる。そもそも「示す」という語は,一定程度の広がりを持つものであり,ある情報からある事柄が分かる,表される,意味が理解できるという程度の緩やかな関連性があれば,かかる情報はある事柄を「示す」ものである。 そして,被告サービス1においては,顧客の入力情報のうち,④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」の値により,「値幅」(ポジション間隔)が示されている。 すなわち,被告サービス1では,④「想 そして,被告サービス1においては,顧客の入力情報のうち,④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」の値により,「値幅」(ポジション間隔)が示されている。 すなわち,被告サービス1では,④「想定変動幅」で定めた範囲内に,全ての注文情報群の買い注文及び売り注文が収まるように,等間隔にトラップ(一定の範囲に等間隔に複数の注文情報群を生成すること)を仕掛けていく という処理が行われている。そして,複数のトラップを仕掛けることによる含み損を考慮しつつ,⑥「対象資産(円)」の額の証拠金で生成可能な数だけ注文情報群を生成する。そうすると,被告サービス1における注文入力受付手順においては,例えば0.5円といった値幅の数値そのものを「受信して受け付ける」代わりに,値幅を「示す」④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」という情報を「受信して受け付ける」のであり,そこから被告サーバにおいて,値幅(ポジション間隔)を決定しているだけのことである。 したがって,被告サービス1においては,④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」が,構成要件1Bにいう「値幅を示す情報」に当たることになる。 〔被告の主張〕(1) 被告サービス1においては,①「通貨ペア」,②「注文種類」,③「参考期間」,④「想定変動幅」,⑤「ポジション方向」及び⑥「対象資産(円)」を顧客からの入力情報として受信して受け付け,これらの情報から複数個の「注文情報群」(「新規指定レート」(例:119.07円で買う)及び「利食いレート」(例:120.24円で売る)の組合せ)を自動的に算出するので,顧客がこれをそのまま追認するか,顧客がこれを適宜変更した後に,「注文」アイコンをクリック(タップ)し,取引を開始する。 このように,被告サービス1では,「注文情報群」を算出するに当たり, るので,顧客がこれをそのまま追認するか,顧客がこれを適宜変更した後に,「注文」アイコンをクリック(タップ)し,取引を開始する。 このように,被告サービス1では,「注文情報群」を算出するに当たり,対象の通貨を所定の価格で買(売)った後,相場が予想に反して変動した場合に,追加で対象の通貨を買う(売る)場合の値幅情報を売買注文申込情報として入力する欄はなく,それゆえ,値幅情報を売買注文申込情報として受信して受け付けていない。 よって,被告サービス1では,構成要件1Bの「値幅を示す情報」を「売買注文申込情報として受信して受け付け」ていない。 (2) この点に関して原告は,値幅に相当する数字が何らかの算定式によって算 定され得るならば,当該算定式に使用される全ての数値が構成要件1Bの「値幅を示す情報」に含まれると主張する。 しかし,「示す」とは,「表示する。意味する。」(広辞苑第6版1287頁〔乙9〕)という意味であるから,「値幅を示す情報」とは,値幅を表示する情報,値幅を意味する情報ということになる。被告サービス1における④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」という情報は,値幅を表示する情報ではなく,値幅を意味する情報でもないから,これらは「値幅を示す情報」には当たらない。 2 争点(1)イ(構成要件1Bの「利幅を示す情報」の充足性)について〔原告の主張〕(1) 本件発明1における「利幅」とは,第一注文と第二注文が約定したときに得られる利益をいい,例えば,「買118.07円,売118.57円」という注文情報群であれば,その差額である0.5円をいう。 被告サービス1においては,顧客が「計算」ボタンをクリックした時点における相場価格を表す情報が被告サーバに入力され,かかる価格を第一注文価格(買い注文価格)のうち最 の差額である0.5円をいう。 被告サービス1においては,顧客が「計算」ボタンをクリックした時点における相場価格を表す情報が被告サーバに入力され,かかる価格を第一注文価格(買い注文価格)のうち最も高い買い注文価格として利用される。そして,この価格を基準として,これよりも0.5円高い第二注文価格(売り注文価格)が生成される。そうすると,このような演算をする前提として,被告サーバの演算処理を行う部分に,かかる「0.5円」という利幅を示す情報(数値)が入力されているということになるから,被告サービス1は,構成要件1Bのうち「一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で購入した後に他の注文価格で販売した場合の利幅を示す情報」を充足する。 (2) 被告の主張に対する反論この点に関して被告は,被告サービス1においては利幅の数値そのものを顧客において入力する欄がなく,被告サーバが受信して受け付けてもいないなどと主張する。 しかし,本件発明1で金融商品取引管理システムが受信して受け付けるのは「利幅を示す情報」であるから,その内容は利幅の数値そのものに限られず,利幅を「示す」情報であれば足りる。 そして,被告サービス1においては,顧客の入力情報のうち,④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」の値により,「利幅」が示されている。すなわち,被告サービス1においては,利幅(「新規指定レート」と「利食いレート」の差)と値幅(「新規指定レート」同士・「利食いレート」同士の差)は同じ値になるのであって,争点(1)アの〔原告の主張〕で述べたのと同様,④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」が構成要件1Bにいう「利幅を示す情報」に当たる。 〔被告の主張〕(1) 前記1〔被告の主張〕のとおり,被告サービス1においては,①「通貨ペア」 同様,④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」が構成要件1Bにいう「利幅を示す情報」に当たる。 〔被告の主張〕(1) 前記1〔被告の主張〕のとおり,被告サービス1においては,①「通貨ペア」,②「注文種類」,③「参考期間」,④「想定変動幅」,⑤「ポジション方向」及び⑥「対象資産(円)」を顧客からの入力情報として受信して受け付け,これらの情報から複数個の「注文情報群」を自動的に算出するので,顧客がこれをそのまま追認するか,顧客がこれを適宜変更した後に,「注文」アイコンをクリック(タップ)し,取引を開始する。 このように,被告サービス1では,「注文情報群」を算出するに当たり,対象の通貨を所定の価格で買(売)った後に他の価格で売る(買う)場合の「利幅」情報を売買注文申込情報として入力する欄はなく,それゆえ,「利幅」を売買注文申込情報として受信して受け付けていない。 よって,被告サービス1では,構成要件1Bの「利幅を示す情報」を「売買注文申込情報として受信して受け付け」ていない。 (2) この点に関して原告は,利幅に相当する数字が何らかの算定式によって算定され得るならば,当該算定式に使用される全ての数値が構成要件1Bの「利幅を示す情報」に含まれると主張する。 しかし,前記1〔被告の主張〕と同様の理由により,「利幅を示す情報」とは,利幅を表示する情報,利幅を意味する情報を意味するものであるところ,被告サービス1における④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」という情報は,利幅を表示する情報ではなく,利幅を意味する情報でもないから,これらは「利幅を示す情報」には当たらない。 3 争点(1)ウ(構成要件1C,1E,1F,1G及び1Hの充足性)について〔原告の主張〕(1) 被告サービス1の内容は,別紙被告サービス説明書 ら,これらは「利幅を示す情報」には当たらない。 3 争点(1)ウ(構成要件1C,1E,1F,1G及び1Hの充足性)について〔原告の主張〕(1) 被告サービス1の内容は,別紙被告サービス説明書1に記載されたとおりであり,本件発明1の構成要件1C,1E,1F,1G及び1Hを充足する。 (2) 被告の主張に対する反論この点に関して被告は,被告サービス1が本件発明1の構成要件1C,1E,1F,1G及び1Hを充足しない旨主張しているが,これらはいずれも被告サービス1が構成要件1Bを充足しないことを前提とした主張である。 そして,前記1及び2の各〔原告の主張〕のとおり,被告サービス1は構成要件1Bを充足するから,被告の主張はその前提を欠く。 〔被告の主張〕以下のとおり,被告サービス1は,本件発明の構成要件1C,1E,1F,1G及び1Hをいずれも充足しない。 (1) 構成要件1C前記1及び2の各〔被告の主張〕のとおり,被告サービス1は構成要件1Bを充足しないので,被告サービス1が構成要件1Bを充足することを前提としている構成要件1Cも充足しない。すなわち,被告サービス1には,少なくとも構成要件1Bで規定される「該注文入力受付手順」及び「前記売買注文申込情報」がないので,これらに基づいて生成される「注文情報」及び「注文情報生成手順」も存在しない。 したがって,被告サービス1は,構成要件1Cを充足しない。 (2) 構成要件1E上記のとおり,被告サービス1は構成要件1Bを充足しないので,被告サービス1が構成要件1Bを充足することを前提としている構成要件1Eも充足しない。すなわち,被告サービス1には,少なくとも構成要件1Bで規定される「前記売買注文申込情報」及び「前記利幅」がないので,これらに基づいて算出される「 することを前提としている構成要件1Eも充足しない。すなわち,被告サービス1には,少なくとも構成要件1Bで規定される「前記売買注文申込情報」及び「前記利幅」がないので,これらに基づいて算出される「前記他の注文価格」も存在せず,「第二注文価格算出手順」も存在しない。 したがって,被告サービス1は,構成要件1Eを充足しない。 (3) 構成要件1F上記のとおり,被告サービス1は構成要件1B,1C及び1Eを充足しないので,被告サービス1が上記各構成要件を充足することを前提としている構成要件1Fも充足しない。 まず,被告サービス1には,構成要件1Cで規定される「前記注文情報生成手段」がないので,この存在を前提とする構成要件1Fをそもそも充足しない。 また,被告サービス1には,構成要件1Bで規定される「前記売買注文申込情報」がないので,被告サービス1は,これに基づいて「前記注文価格」や「注文情報群」等を設定ないし生成しない。すなわち,被告サービス1は,「前記売買注文申込情報」の存在を前提とする「前記売買注文申込情報に基づいて,・・・それぞれの前記注文価格を設定し,」を充足せず,そうであるから,「該設定されたそれぞれの前記注文価格としての・・・からなる注文情報群を複数生成し,」も充足しない。 さらに,被告サービス1には,少なくとも構成要件1Bで規定される「前記値幅」及び「前記利幅」がないので,これらの存在を前提とする「該一の最高価格より安値側に,それぞれの値幅が前記売買注文申込情報に含まれる前記値幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定」することもないし, 「該他の最高価格より安値側に,それぞれの前記第一注文に対し,購入又は販売が行われた前記第一注文に基づいて販売又は購入が行われたときの前記利幅が前記売買注文申込情 定」することもないし, 「該他の最高価格より安値側に,それぞれの前記第一注文に対し,購入又は販売が行われた前記第一注文に基づいて販売又は購入が行われたときの前記利幅が前記売買注文申込情報における前記利幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定」することもあり得ない。 そして,被告サービス1には,構成要件1Eで規定される「前記他の注文価格を算出するための第二注文価格算出手順」がないので,「前記第二注文価格算出手順」の存在を前提とする「前記第二注文価格算出手順において算出された前記他の価格を他の最高価格として設定し,・・・注文情報群を複数生成し,」を充足しない。 したがって,被告サービス1は,構成要件1Fを充足しない。 (4) 構成要件1G上記のとおり,被告サービス1は構成要件1Fを充足しないので,被告サービス1が構成要件1Fを充足することを前提としている構成要件1Gも充足しない。 (5) 構成要件1H上記のとおり,被告サービス1は構成要件1Fを充足しないので,被告サービス1が構成要件1Fを充足することを前提としている構成要件1Hも充足しない。すなわち,被告サービス1には「前記注文情報群」がないので,「一の前記売買注文申込情報に基づいて生成されたそれぞれの前記注文情報群について,・・・繰り返し行わせるように設定することを特徴とする,」を充足しない。 したがって,被告サービス1は,構成要件1Hを充足しない。 4 争点(1)エ(構成要件1Bの「値幅を示す情報」及び「利幅を示す情報」についての均等侵害の成否)について〔原告の主張〕仮に,被告サービス1における④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」 が本件発明1の構成要件1Bの「値幅を示す情報」及び「利幅を示す情報」に該当しないとしても,以 〔原告の主張〕仮に,被告サービス1における④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」 が本件発明1の構成要件1Bの「値幅を示す情報」及び「利幅を示す情報」に該当しないとしても,以下のとおり,被告サービス1の構成は本件発明1と均等なものとして,その技術的範囲に属するというべきである。 (1) 相違点ア本件発明1は,注文申込情報として「値幅を示す情報」及び「利幅を示す情報」を受信して受け付けるのに対し,被告サービス1は,注文申込情報として④「想定変動幅」と⑥「対象資産(円)」を受信して受け付け,これらの情報から「値幅」及び「利幅」を一義的に算出するという相違が存する。 イ被告の主張に対する反論この点に関して被告は,入力される情報が,本件発明1においては後記〔被告の主張〕記載の構成要件1B-1ないし1B-5の各情報であるのに対し,被告サービス1においては①「通貨ペア」,②「注文種類」,③「参考期間」,④「想定変動幅」,⑤「ポジション方向」及び⑥「対象資産(円)」という合計六つの情報である点が相違する旨主張する。 しかし,被告サービス1においては,・構成要件1B-1に当たる①「通貨ペア」・構成要件1B-2に当たる⑦「数量」・構成要件1B-3に当たる⑧「注文情報群」の中の「新規指定レート」を顧客が選択し,これらの情報が被告サーバに入力されるのであるから,被告が相違点として挙げる点のうち,少なくとも構成要件1B-1ないし1B-3については相違点とはならない。 そして,本件発明1の特許請求の範囲の記載上は,構成要件1B-1ないし1B-5の各情報が入力されれば足りるとされており,これらの各情報が相互に特定の相関関係を有することは規定されていないのであるから,構成要件1B-1ないし1B-5の各情報を一体 成要件1B-1ないし1B-5の各情報が入力されれば足りるとされており,これらの各情報が相互に特定の相関関係を有することは規定されていないのであるから,構成要件1B-1ないし1B-5の各情報を一体と捉えて,そ の一部でも相違していれば全体として相違しているなどと評価すべき理由はない。 (2) 第1要件(非本質的部分)ア本件発明1は,本件明細書等1に「一の売買注文申込情報に基づいて,同一種類の金融商品を複数の価格について指値注文する注文情報からなる注文情報群を生成することにより,金融商品を売買する際,一の注文手続きを行うことで,同一種類の金融商品を複数の価格にわたって一度に注文できる。」(段落【0017】),「約定した第一注文と同じ第一注文価格における第一注文の約定と,約定した第二注文と同じ前記第二注文価格における前記第二注文の約定とを繰り返し行わせるように設定することにより,第一注文と第二注文とが約定した後も,当該約定した注文情報群による指値注文のイフダンオーダーを繰り返し行うことが可能になる。」(段落【0018】)などと記載されているとおり,一の注文手続で,同一種類の金融商品について,複数の価格にわたって一度に注文を行うことができ,さらにその注文と約定を繰り返すようにしたものである。 したがって,本件発明1の本質的部分は,「一の注文手続で,同一種類の金融商品について,複数の価格にわたって一度に注文を行うこと」及び「その注文と約定を繰り返すようにしたこと」にある。 イ一般に,複数のトラップを仕掛ける場合,トラップを仕掛ける範囲を「A」,トラップの本数を「B」,トラップ同士の値幅を「C」とすると,これらは「A÷B=C」の関係に立つのであり,三つのうち二つを定めれば,残る一つの値も自ずと定まる。 本件発明1 掛ける範囲を「A」,トラップの本数を「B」,トラップ同士の値幅を「C」とすると,これらは「A÷B=C」の関係に立つのであり,三つのうち二つを定めれば,残る一つの値も自ずと定まる。 本件発明1では,注文手続の際に,このうち「B」と「C」を指定して複数のトラップを仕掛けるのに対し,被告サービス1では,このうち「A」と「B」を指定して複数のトラップを仕掛ける。 したがって,本件発明と被告サービス1の構成の間に相違点があるとしても,このような相違は,複数のトラップを仕掛ける際に,「C」をどのように決定するのか,あるいは「A」ないし「C」の三つのうちどの二つを定めるのかという,極めて形式的な点に関する相違にすぎず,何ら本件発明1の本質的部分に係るものではない。 ウ被告の主張に対する反論この点に関して被告は,本件発明1の本質的部分が「顧客の入力を忠実に注文価格に反映させること」にあると主張する。 しかし,本件明細書等1には,「顧客の入力を忠実に注文価格に反映させる」ということは記載されていない。本件明細書等1の段落【0006】には本件発明1の課題として「システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく指値注文による取引を効率的かつ円滑に行うことができる金融商品取引管理方法を提供すること」と記載されているように,本件発明1は,顧客に事細かに情報を入力させて,これを忠実に反映させるようなものではなく,むしろ反対に,顧客が煩雑な注文手続を行うことなく,取引が行えるようにしたものである。 また,被告は,原告の主張する本件発明1の本質的部分は引用発明1で既に開示されていると主張する。 しかし,引用発明1では,注文情報群という概念すらなく,ましてや,注文情報群を複数の価格にわたって一度に注文することも,そのような注 1の本質的部分は引用発明1で既に開示されていると主張する。 しかし,引用発明1では,注文情報群という概念すらなく,ましてや,注文情報群を複数の価格にわたって一度に注文することも,そのような注文情報群の注文と約定とを繰り返すことも,何ら開示されているものではない。 (3) 第2要件(置換可能性)ア前記(2)のとおり,本件発明1は,一の注文手続で,同一種類の金融商品について,複数の価格にわたって一度に注文を行うことができ,さらにその注文と約定を繰り返すようにしたものである(本件明細書等1の 段落【0017】及び【0018】)。これにより,本件発明1は,複数の注文情報群から細かい利益を繰り返し得ることを可能にし,専門的な知識がなく,必ずしも正確に相場変動を予測することができなくても,また,常に相場に付ききりとならなくても,FX取引により所望の利益を得ることを可能としている。 被告サービス1も,「一の注文手続を行うことで,同一種類の金融商品を複数の価格にわたって一度に注文できる。」という本件発明1の作用効果の点において同じであり,複数の注文情報群から細かい利益を繰り返し得ることを可能にし,専門的な知識がなく,必ずしも正確に相場変動を予測することができなくても,また,常に相場に付ききりとならなくても,FX取引により所望の利益を得ることを可能としたものである。 そして,前記(2)のとおり,トラップを仕掛ける範囲を「A」,トラップの本数を「B」,トラップ同士の値幅を「C」とすると,これらは「A÷B=C」の関係に立つ。 したがって,仮に本件発明1と被告サービス1とが相違するとしても,それは本件発明1のように「C」それ自体を入力するのか,「C」を一義的に算出できる情報を入力するのかという,「C」をどのように決定する たがって,仮に本件発明1と被告サービス1とが相違するとしても,それは本件発明1のように「C」それ自体を入力するのか,「C」を一義的に算出できる情報を入力するのかという,「C」をどのように決定するのかについての相違にすぎず,結局,「C」が一義的に決定できること,一の注文手続で複数のトラップを仕掛けるとの作用効果を奏することができることに何ら変わりはない。 イ被告の主張に対する反論この点に関して被告は,本件発明1が「専門的な知識がなく,必ずしも正確に相場変動を予測することができなくても,・・・FX取引により所望の利益を得るということを可能としたものである。」との原告の主張は,本件明細書等1の段落【0017】及び【0018】に裏付けら れたものではないと主張する。 しかし,本件明細書等1の段落【0004】には,本件発明1が解決すべき課題として,「金融商品の価格は常に不規則に変動し,正確に予測できない。そのため,指値注文の場合,当該金融商品の価格が予め指定した金額まで下降(又は上昇)する直前で上昇(又は下降)してしまう場合や,あるいは,予め指定した金額よりも下降(又は上昇)してしまい,顧客が実質的な不利益を被る恐れがある。」と記載されている。 したがって,本件発明1は,金融商品の相場変動が不規則に変動し,正確に予測できないため,顧客が不利益を被るおそれがあるという課題に接し,これを解決するためになされたものであることが明らかである。 また,被告は,原告が主張するような作用効果は,被告サービス1のような「第3世代のFXサービス」が奏する作用効果であるなどと主張する。 しかし,金融商品の相場変動が正確に予測できないことによる顧客の不利益を回避するというのは,上記のとおり,本件発明1の作用効果そのものである。この点から が奏する作用効果であるなどと主張する。 しかし,金融商品の相場変動が正確に予測できないことによる顧客の不利益を回避するというのは,上記のとおり,本件発明1の作用効果そのものである。この点からも,被告が「第3世代のFXサービス」などと称する被告サービス1は,その実質において本件発明1と何ら異ならないことが明らかである。 (4) 第3要件(容易想到性)ア前記(2)のとおり,トラップを仕掛ける範囲を「A」,トラップの本数を「B」,トラップ同士の値幅を「C」とすると,これらは「A÷B=C」の関係に立つ。 本件発明1では,注文手続の際に,このうち「B」と「C」を指定して複数のトラップを仕掛けるのに対し,被告サービス1では,このうち「A」と「B」を指定して複数のトラップを仕掛けるという相違があるとしても,それは複数のトラップを仕掛ける際に,「A」ないし「C」 の三つのうちどの二つを定めるかという,極めて形式的な選択の問題にすぎず,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)において,「A」と「B」を選択すること,「A」と「C」を選択すること,又は「B」と「C」を選択することに,何らの困難性も存するものではない。 イ被告の主張に対する反論この点に関して被告は,原告のいう置換は当業者といえども容易になし得たことではないなどと主張する。 しかし,現に,値幅を直接入力するのではなく,トラップを仕掛ける範囲とトラップの本数などの他の情報を入力し,これらの情報から値幅を算出して決定するという構成や,あらかじめ設定された値を用いるという構成は,被告サービス1の提供開始時(平成26年10月1日)において既に公知の構成であり,技術常識とすらいい得るのであって,このような構成を採用すること 構成や,あらかじめ設定された値を用いるという構成は,被告サービス1の提供開始時(平成26年10月1日)において既に公知の構成であり,技術常識とすらいい得るのであって,このような構成を採用することに何らの困難もない。 例えば,被告サービス1の提供開始より4年以上も前の平成22年7月1日に公開された国際公開公報である国際公開第2010/074217号(甲15。以下「甲15公報」という。)には,トラップを仕掛ける範囲(「取引の上限価格」と「取引の下限価格」)と,トラップの本数(「同時に生成される注文情報群の数」)を入力し,これらの情報に基づいて,値幅・利幅(「第一注文同士の価格差」及び「同一の注文情報群に属する第一注文価格と第二注文価格との差」)を一定となるように演算して決定する構成が開示されている。 また,被告サービス1の提供開始の1年前の平成25年11月14日に公開された公開特許公報である特開2013-232051号公報(甲17。以下「甲17公報」という。)には,トラップを仕掛ける範囲(タッチパネルの上下の接触位置に対応する「発注価格帯」)と,ト ラップの本数(「注文個数情報」)を入力し,これらの情報に基づいて,値幅が均等となるように演算して決定する構成が開示されている。 さらに,他の証券会社が平成26年6月9日から提供を開始した「クイック仕掛け(買いゲリラ100pips)」という機能(甲19,20)では,顧客において値幅や利幅を直接入力することなく,あらかじめ設定された値幅及び利幅を用いて,五つの注文情報群(買いの新規指値注文,売りの決済指値注文及び売りの決済逆指値注文からなる注文情報群)を生成することができる。 このように,値幅を直接入力するのではなく,他の情報から値幅を算出,決定して発注を行うという構成 値注文,売りの決済指値注文及び売りの決済逆指値注文からなる注文情報群)を生成することができる。 このように,値幅を直接入力するのではなく,他の情報から値幅を算出,決定して発注を行うという構成や,あらかじめ設定された値幅を用いるという構成は,少なくとも被告サービス1の提供開始時点である平成26年10月1日の時点において,上記各公報等に開示され,かつ,原告が提供するサービスでも採用されていた公知の構成である。そして,甲17公報にも記載されているように,値幅そのものを直接入力するのか,それとも他の情報から値幅を算出して決定するのかは,当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎない。 (5) 第4要件(公知技術との同一性又は容易推考性)被告サービス1も,本件発明1と同様,一の注文手続で,同一種類の金融商品について,複数の価格にわたって一度に注文を行うことができ,さらにその注文と約定を繰り返すようにしたFX取引管理方法であり,このようなFX取引管理方法は,本件特許1の出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから同出願時に容易に推考できたものではない。被告自身,被告サービス1を,本件発明1よりも次世代の「第3世代のFX取引サービス」などと呼んでいるところである。 (6) 第5要件(意識的除外等の特段の事情)原告は,被告サービス1も当然に本件発明1の技術的範囲に文言上含まれ ると考えており,被告サービス1のような構成を,本件発明1の特許請求の範囲から意識的に除外したものではない。 〔被告の主張〕原告の均等論の主張は,以下のとおり,そもそも構成要件1Bについての相違点の認定を誤っており,本件発明1と被告サービス1との間に存在する全ての相違点について主張するものではない上,均等論の第1要件,第2要件及び第3要件を充足 とおり,そもそも構成要件1Bについての相違点の認定を誤っており,本件発明1と被告サービス1との間に存在する全ての相違点について主張するものではない上,均等論の第1要件,第2要件及び第3要件を充足しないのであるから,均等侵害が成立する旨の原告の主張は失当である。 (1) 相違点ア構成要件1Bにおいて,「注文入力受付手順」で「売買注文申込情報として受信して受け付ける」と規定される顧客の入力に係る情報は,以下の五つの情報である(以下「構成要件1B-1」ないし「構成要件1B-5」などという。)。 1B-1:売買を希望する前記金融商品の種類を選択するための情報1B-2:前記金融商品の売買注文における,注文価格ごとの注文金額を示す情報1B-3:前記金融商品の販売注文価格又は購入注文価格としての一の注文価格を示す情報1B-4:一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で販売した後に他の価格で購入した場合の利幅又は一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で購入した後に他の注文価格で販売した場合の利幅を示す情報1B-5:前記注文が複数存在する場合における該注文同士の値幅を示す情報他方,被告サービス1において,顧客の入力に係る情報は,①「通貨ペア」,②「注文種類」,③「参考期間」,④「想定変動幅」,⑤「ポ ジション方向」及び⑥「対象資産(円)」という合計六つの情報である。 したがって,本件発明1と被告サービス1とは,顧客の入力に係る情報であって,「注文入力受付手順」で「売買注文申込情報として受信して受け付ける」情報について,本件発明1では構成要件1B-1ないし構成要件1B-5という五つの情報であるのに対し,被告サービス1では①「通貨ペア」ないし⑥「対象資産(円)」という六つの情報である点で相違す ける」情報について,本件発明1では構成要件1B-1ないし構成要件1B-5という五つの情報であるのに対し,被告サービス1では①「通貨ペア」ないし⑥「対象資産(円)」という六つの情報である点で相違する。 原告は,相違点の認定につき,本件発明1は注文申込情報として「利幅を示す情報」及び「値幅を示す情報」を受信して受け付けるのに対し,被告サービス1は注文申込情報として④「想定変動幅」と⑥「対象資産(円)」を受信して受け付け,これらの情報から「値幅」及び「利幅」を一義的に算出する点をもって相違点であると主張しているが,誤りである。また,原告は,構成要件1Bにおける相違点についての均等論の主張しかしていないが,少なくとも,構成要件1C,構成要件1E及び構成要件1Fにおける均等論の主張も必要である。 イこの点に関して原告は,被告サービス1のうち,①「通貨ペア」,⑦「数量」及び⑧「注文情報群」の中の「新規指定レート」がそれぞれ構成要件1B-1,1B-2及び1B-3に該当すると主張する。 しかし,原告の上記主張を前提としても,本件発明1と被告サービス1は,②「注文種類」ないし⑥「対象資産(円)」の五つの情報の入力の有無で相違することになるのであるから,被告サービス1が本件発明1の均等侵害であるというためには,本件発明1において,構成要件1B-4(利幅を示す情報)及び構成要件1B-5(値幅を示す情報)の二つの情報の入力に代えて,②「注文種類」ないし⑥「対象資産(円)」の五つの情報を入力することへの置換に関し,均等の各要件について主張立証しなければならないはずである。 (2) 第1要件(非本質的部分)原告は,本件発明1の本質的部分は「一の注文手続で,同一種類の金融商品について,複数の価格にわたって一度に注文を行うこと」及び「 らないはずである。 (2) 第1要件(非本質的部分)原告は,本件発明1の本質的部分は「一の注文手続で,同一種類の金融商品について,複数の価格にわたって一度に注文を行うこと」及び「その注文と約定を繰り返すようにしたこと」であると主張している。 しかし,発明の本質的部分というのは従来技術との対比によって導かれるところ,原告の主張に係る本質的部分というものは,本件発明1にとって従来技術にあたる引用発明1に全て開示されている。したがって,原告の主張に係る本質的部分というものは,本件発明1にとって,本質的部分ではない。 そして,本件発明1と引用発明1とを具体的に対比すると,本件発明1は,顧客の入力を忠実に注文価格に反映させることに本質的部分があるのであって,本件発明1が顧客に対し,注文価格を決定するにあたり,何らかの提案を行うということはない(第2世代のFXサービス)。すなわち,構成要件1B-1ないし構成要件1B-5という五つの情報を顧客に入力させて,当該五つの情報から注文情報群を決定することに本件発明1の本質的部分があるのであって,本件発明1において,当該五つの情報に代えて,被告サービス1のように,①「通貨ペア」,②「注文種類」,③「参考期間」,④「想定変動幅」,⑤「ポジション方向」及び⑥「対象資産(円)」という六つの情報によって⑧「注文情報群」を決定する構成へと置換することは,本件発明1の本質的部分を変更するものである。 したがって,本件は,均等論の第1要件を充足しない。 (3) 第2要件(置換可能性)ア原告は,本件明細書等1の段落【0017】及び【0018】を引用し,本件発明1は「複数の注文情報群から細かい利益を繰り返し得ることを可能にし,専門的な知識がなく,必ずしも正確に相場変動を予測することができな 件明細書等1の段落【0017】及び【0018】を引用し,本件発明1は「複数の注文情報群から細かい利益を繰り返し得ることを可能にし,専門的な知識がなく,必ずしも正確に相場変動を予測することができなくても,また,常に相場に付ききりとならなくても,FX取引により所望の利益を得ることを可能としたものである。」などと 主張している。 しかし,本件明細書等1の段落【0017】及び【0018】には,原告の主張を裏付ける記載はない。本件発明1が実現する第2世代のFXサービスを用いれば,一旦情報を入力しさえすれば常に相場と付ききりでなくても利益を得ることができるかもしれないが,値幅や利幅を入力するには,相場変動を予測できなければ難しく,それゆえ,相場変動を予測できるだけの専門的知識が必要となることは明らかである。「専門的な知識がなく,必ずしも正確に相場変動を予測することができなくても,・・・FX取引により所望の利益を得ることを可能としたものである。」との原告の主張は,むしろ,被告サービス1のような第3世代のFXサービスが奏する作用効果である。 イまた,原告は,顧客に利幅及び値幅の入力をさせた上で顧客に注文情報群を全て決定させるのか,それとも,顧客に値幅及び利幅の入力をさせずに,顧客に専門的知識が不要である情報を入力させた上でシステムが注文情報群を提案するのかは,微差にすぎない旨の主張をしている。 しかし,当該主張は,値幅及び利幅の入力には専門的知識が必要であるという事実を看過しており,第2世代のFXサービスと第3世代のFXサービスとの違いを正しく認識しないものであって,失当である。 したがって,本件発明1において置換をすることは,本件発明1が奏しない「専門的な知識がなく,必ずしも正確に相場変動を予測することができなくても,・・ いを正しく認識しないものであって,失当である。 したがって,本件発明1において置換をすることは,本件発明1が奏しない「専門的な知識がなく,必ずしも正確に相場変動を予測することができなくても,・・・FX取引により所望の利益を得ることを可能とした」という格別な作用効果を奏することになるので,本件発明1の作用効果を変更するものである。 ウなお,仮に,原告の主張するとおり「必ずしも正確に相場変動を予測することができなくても,・・・FX取引により所望の利益を得ることを可能とした」ことが本件発明1の課題であるとしても,本件発明1と これに対して置換をした被告サービス1とは,課題解決原理が全く異なる。 すなわち,本件発明1では,かかる課題を,顧客に,利幅(構成要件1B-4)及び値幅(構成要件1B-5)をはじめとして,全ての注文を直接的かつ一義的に導き出すに足りる情報を入力させることにより,買いの指値注文及び売りの指値注文からなる注文のペアを複数生成させ,この複数の注文のペアからなる注文を行うことで解決している。 一方,被告サービス1の課題解決原理は,上記課題を,顧客が③「参考期間」を選択しさえすれば,④「想定変動幅」を提案し,専門的な知識が必要である利幅(構成要件1B-4)及び値幅(構成要件1B-5)を顧客に入力させることなく,複数の注文のペアからなる注文を行うことで解決するところにある。すなわち,被告サービス1においては,顧客が全ての注文を直接的かつ一義的に決定するのではなく,むしろ,顧客は専門的な知識が必要とされる情報を入力することなく注文を行うものである。 このように,本件発明1の課題解決原理は,金融商品の相場変動を正確に予測できなくても,FX取引による所望の利益を得るという課題を,顧客に,利幅(構成要件1B-4 ことなく注文を行うものである。 このように,本件発明1の課題解決原理は,金融商品の相場変動を正確に予測できなくても,FX取引による所望の利益を得るという課題を,顧客に,利幅(構成要件1B-4)及び値幅(構成要件1B-5)という専門的な知識が必要である情報を入力させることで解決するものであるのに対し,被告サービス1の課題解決原理は,同課題を,顧客に,利幅(構成要件1B-4)及び値幅(構成要件1B-5)という専門的な知識が必要である情報を入力させずに解決することにあるという点で異なっている。 エしたがって,本件は,均等論の第2要件を充足しない。 (4) 第3要件(容易想到性)ア上記(3)のとおり,本件発明1において置換をすることは,本件発明1 が「専門的な知識がなく,必ずしも正確に相場変動を予測することができなくても,・・・FX取引により所望の利益を得ることを可能とした」という格別な作用効果を奏することを意味する。したがって,本件発明1において置換をすることは,当業者といえども容易になし得たことではない。 したがって,本件は,均等論の第3要件を充足しないことが明らかである。 イこの点に関して原告は,値幅を直接入力するのではなく,他の情報を入力してこれらの情報から値幅を算出して決定するという構成や,あらかじめ設定された値を用いるという構成は,被告サービス1の提供開始時において既に公知の構成であったなどと主張する。 しかし,原告の摘示する甲15公報及び甲17公報から導き出せることは,せいぜい,顧客が任意に範囲(甲15公報でいえば,顧客の入力に係る「取引の上限価格」及び「取引の下限価格」で画される範囲)を入力し,かつ,顧客が注文を行いたい数である任意の数を入力すると,当該範囲を当該数で割って,値幅に相当す 15公報でいえば,顧客の入力に係る「取引の上限価格」及び「取引の下限価格」で画される範囲)を入力し,かつ,顧客が注文を行いたい数である任意の数を入力すると,当該範囲を当該数で割って,値幅に相当する情報を求めることができるということにすぎず,そこには②「注文種類」ないし⑥「対象資産(円)」の五つの情報は登場しない。 また,他の証券会社が平成26年6月9日から提供を開始した「クイック仕掛け(買いゲリラ100pips)」という機能についても,原告の主張によれば,利幅(構成要件1B-4)及び値幅(構成要件1B-5)はあらかじめ設定されていて,顧客が入力するものではない。したがって,利幅(構成要件1B-4)及び値幅(構成要件1B-5)が顧客の入力に係る本件発明1に対し,利幅(構成要件1B-4)及び値幅(構成要件1B-5)があらかじめ設定されている甲19及び甲20の技術を適用する基礎がそもそもないのであって,本件発明1に「クイック仕掛け (買いゲリラ100pips)」の技術を適用することはできない。そして,仮に上記技術を適用することができたとしても,本件発明1において,利幅(構成要件1B-4)及び値幅(構成要件1B-5)を,顧客に入力させることに代えて,顧客の入力とは無関係にあらかじめ設定する構成とすることができるにすぎないのであって,②「注文種類」ないし⑥「対象資産(円)」の五つの情報が顧客の入力に係る情報であるとの構成を有する被告サービス1にはならない。 したがって,甲15公報,甲17公報及び「クイック仕掛け(買いゲリラ100pips)」に接した当業者といえども,本件発明1に対して置換をすることは,容易になし得たものではない。 5 争点(2)ア(構成要件2Fの「前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注 ips)」に接した当業者といえども,本件発明1に対して置換をすることは,容易になし得たものではない。 5 争点(2)ア(構成要件2Fの「前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行う」の充足性)について〔原告の主張〕(1) 被告サービス2の内容は,別紙被告サービス説明書2に記載されたとおりであり,本件発明2の構成要件2Fを充足する。 本件発明2における「注文情報群の生成」とは,本件明細書等2の段落【0057】及び【図6】に説明されているように,新規買い,決済売り,決済売りという,三つの具体的な注文の情報(【図6】でいえば,2008年7月22日23時00分に行われた51aないし51c)を生成することを意味する。 そして,被告サービス2において「注文情報群の生成」に相当するのは,被告サービス取引明細(甲10。以下「甲10取引明細」という。)の各行に表示された具体的な各注文の情報の生成,例えば,112行ないし114行に表示された,新規の買い注文の情報(114行),決済の指値売り注文の情報(113行)及び決済の逆指値売り注文の情報(112行)の生成である。この被告サービス2の各注文情報群は,「注文日時」の列をみれば明 らかなとおり,取引開始前に生成されているものではなく,注文ボタンをクリックした後,繰り返し生成されているものである。 また,被告サービス2において「次の注文情報群」に相当するのは,上記の例でいえば,98行ないし100行の注文情報群である。この注文情報群が生成されるのは,「第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき」,すなわち前の注文情報群の注文情報(113行)に基づく決済の指値売り注文が約定された時点である。 したがって,被告サービス2は本件発明2の「前記第二注 文情報に基づく該指値注文が約定されたとき」,すなわち前の注文情報群の注文情報(113行)に基づく決済の指値売り注文が約定された時点である。 したがって,被告サービス2は本件発明2の「前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行う」を充足する。 (2) 被告の主張に対する反論この点に関して被告は,「注文情報」と「注文」は異なるなどと主張する。 しかし,本件明細書等2の段落【0057】に「『第一注文情報』としての第一注文51a」などと記載されているように,本件明細書等2では,「注文」と「注文情報」とは,具体的な注文とその注文の情報という意味で用いられており,それ以上の区別をしているものではない。 また,被告は,「報告書(iサイクル・サイクル注文処理概要フロー)」と題する書面(乙15。以下「乙15報告書」という。)によれば,注文情報群に基づく注文は,取引開始前に一度だけ生成された注文情報に基づいてされるのであって,注文のたびに生成されるものではないなどと主張する。 しかし,乙15報告書をみても,なぜ被告サービス2における注文情報の生成が具体的な注文のたびにされるものではないことになるのか,全く明らかではない。むしろ,乙15報告書の2頁をみると,被告サービス2においては,取引開始後,「新たな注文は前記『ナンピン最適化ファイル(iサイクル運用ファイル)』を読み込んで自動的に生成され」ると記載されている。 現に,甲10取引明細では,取引開始後に,新たに98行ないし100行の各注文からなる注文情報群や,90行ないし92行の各注文からなる注文情 報群などが生成されているのであるから,被告サービス2において,取引開始後に注文情報群が生成されていることは明らかである。「ナンピン最適化ファイル」は, いし92行の各注文からなる注文情 報群などが生成されているのであるから,被告サービス2において,取引開始後に注文情報群が生成されていることは明らかである。「ナンピン最適化ファイル」は,具体的な注文の前に生成される,いわば注文情報の前駆体のようなものであり,本件明細書等2の【図6】や甲10取引明細に示されているような注文情報(及び注文情報群)それ自体ではない。 〔被告の主張〕(1) 本件発明2においては,まず「売買注文申込情報に基づいて」最初の注文情報群を生成し(構成要件2D),その後「(最初の注文情報群の)第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行う」(構成要件2F)。つまり,取引開始前に既に生成されている最初の注文情報群に含まれる第二注文情報に基づく指値注文が約定したときに,次の注文情報群を生成するのであって,本件発明2では,最初の注文情報群と次の注文情報群を生成するタイミングが異なることになる。 これに対し,被告サービス2においては,注文情報群は取引開始前に生成され,これに基づいて注文が行われるので,最初の注文情報群と次の注文情報群の生成タイミングを問題にする余地がない。すなわち,乙15報告書からも明らかなとおり,被告サービス2では,注文情報群に基づく注文は,取引開始前に一度だけ生成された注文情報に基づいてされるだけであって,注文のたびに生成されるものではない。 したがって,被告サービス2は,構成要件2Fのうち,少なくとも「前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行う」を充足しないので,構成要件2Fを充足しない。 (2) この点に関して原告は,本件発明2の「注文情報群」とは「新規買い,決済売り,決済売り」という三つの具体的な注文の情報を意味する 群の生成を行う」を充足しないので,構成要件2Fを充足しない。 (2) この点に関して原告は,本件発明2の「注文情報群」とは「新規買い,決済売り,決済売り」という三つの具体的な注文の情報を意味すると主張する。 しかし,クレーム上,新規買い,決済売り,決済売りという用語は一切用いられていないため,かかる原告の主張は,クレームの文言から離れたもので あって失当である。 また,原告は,「注文の情報」とは本件明細書等2の【図6】の「2008年7月22日23時00分」に行われた「51a」ないし「51c」をいう旨主張する。しかし,「2008年7月22日23時00分」に行われたのは「注文」であって,「注文情報」の生成ではない。 そもそも,本件発明2のクレーム上,「注文情報」と「注文」は異なるものとして規定されていることから,原告の主張するように,「注文情報群」につき,「注文」のまとまりを意味すると解することは到底できない。すなわち,構成要件2Fの「前記第一注文情報に基づく前記指値注文」という規定から分かるように,「前記指値注文」は「前記第一注文情報に基づく」ものであるから,「前記指値注文」と「前記第一注文情報」とはそれぞれ別の概念である。また,「前記指値注文」は「前記第一注文情報に基づく」のであるから,「前記第一注文情報」が時系列的に「前記指値注文」に先行するものであって,この観点からしても,「前記指値注文」と「前記第一注文情報」とは異なるものである。 なお,原告は,甲10取引明細の98行ないし100行という具体的な指値注文が行われた注文日時が,注文情報群の生成タイミングである旨主張する。しかし,98行ないし100行の「注文日時」は,具体的な指値注文についての単なる注文履歴(実際の注文後のログ)にすぎないのであって,これら具体 文日時が,注文情報群の生成タイミングである旨主張する。しかし,98行ないし100行の「注文日時」は,具体的な指値注文についての単なる注文履歴(実際の注文後のログ)にすぎないのであって,これら具体的な注文に先立って生成される「注文情報群」それ自体が生成された日時を示すものではない。 6 争点(2)イ(構成要件2Fの「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」の充足性)について〔原告の主張〕(1) 成行注文とは相場価格(成行価格)で取引を行う注文方法であるところ, この成行注文においては,注文手続を開始してから約定するまでの間の時間的間隔により,注文手続開始当初の相場価格(成行価格)と約定した時の相場価格(成行価格)とが同じになる場合もあれば,数銭程度のブレが生じる場合もある。この時間的間隔は,採用した注文手順や,クリックのタイミング,顧客端末と取引管理システムとの通信状況,取引管理システムの処理速度等の様々な要因により生じ得るものである。 本件発明2では,注文手続開始当初の相場価格と約定した時の相場価格にわずかなブレが生じる場合であっても,これらを区別せず,単に「前記成行注文の価格」(すなわち「相場価格での注文」)と記載されているのであるから,後の指値注文が,そのいずれの「成行注文の価格」と同じ価格であるかは問題とならない。 そして,被告サービス2においては,甲10取引明細を見ても明らかなとおり,ある注文情報群(112行ないし114行)の第一注文に当たる成行注文(114行)の指定レート(「指定R」の欄)と,次の注文情報群(98行ないし100行)の第一注文に当たる指値注文(100行)の指定レートとは,同じ価格(114.28円)である。 したがって 注文(114行)の指定レート(「指定R」の欄)と,次の注文情報群(98行ないし100行)の第一注文に当たる指値注文(100行)の指定レートとは,同じ価格(114.28円)である。 したがって,被告サービス2は,構成要件2Fの「前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文」を充足する。 (2) 被告の主張に対する反論アこの点に関して被告は,「約定した時の相場価格」が指値注文の価格と同じであることを要すると主張するが,仮に,被告の主張どおりであるとしても,以下のとおり,被告サービス2が本件発明2の技術的範囲に属することに変わりはない。 (ア) 確かに,被告サービス2においては,「計算」ボタンをクリックしてから成行の第一注文が約定するまでの時間的間隔により,相場価格にブレが生じた場合には,約定価格に数銭程度のブレが生じることがあり 得る。例えば,甲10取引明細の114行をみると,成行注文が行われた場合の「指定R」と「約定R」とで2銭のブレが生じている。 しかし,被告サービス2においては,このようなブレが生じず「同じ」価格である場合も当然に含んでいるのであって,このようなブレが生じる場合があるということだけでは,被告サービス2の構成要件充足性は何ら否定されない。 また,「同じ」とは,「同類の。」とか「同程度の。」(広辞苑第6版〔甲11〕)という,一定の幅を含み得る概念であることに加え,約定までの時間的間隔に由来する数銭程度のブレは,成行注文においては必然的に生じ得るものであることも考慮すれば,このような2銭程度のブレにかかわらず,両注文は「同じ」価格であると評価されるべきである。 (イ) このことは,本件発明2の技術的意義に照らしても明らかである。 本件明細書等2の段落【0006 2銭程度のブレにかかわらず,両注文は「同じ」価格であると評価されるべきである。 (イ) このことは,本件発明2の技術的意義に照らしても明らかである。 本件明細書等2の段落【0006】及び【0016】に記載されているように,本件発明2は,第一注文と第二注文からなるイフダンオーダーを繰り返すことで,細かい利益を繰り返し得ることを可能としつつ,予想に反して相場が大きく下降してしまった場合には,含み損の拡大を防ぐために,第一注文で購入した金融商品を自動的に売却して,損切りを行うことを可能としたものである。 このような本件発明2においては,第一注文価格,第二注文価格及び逆指値注文価格は,第一注文が買い注文である場合を例とすれば,第一注文価格で購入した後,相場価格が上昇し,第二注文価格で売却すれば利益を得ることができ,相場価格が下降し,逆指値注文価格で売却すれば損切りをすることができるという関係,すなわち「逆指値注文価格< 第一注文価格 < 第二注文価格」という関係に立てば足りる。 そうすると,本件発明2における「同じ価格」についても,このよう な第一注文価格と逆指値注文価格及び第二注文価格の関係性において同じであれば足りるのであり,約定までの時間的間隔に由来する数銭程度のブレが生じる場合があるとしても,これをもって同じ価格であることを否定する理由とはならない。 イまた,被告は,「同じ前記価格」の解釈に関し,被告サービス2では取引開始直後の最初の成行注文の価格とその後の第一の指値注文の価格とが「別のルール」に従って決定されていると主張して,構成要件2Fの非充足を主張する。 しかし,本件発明2では「同じ前記価格」とされており,「同じ前記ルール」とされているのではないから,被告の 別のルール」に従って決定されていると主張して,構成要件2Fの非充足を主張する。 しかし,本件発明2では「同じ前記価格」とされており,「同じ前記ルール」とされているのではないから,被告の主張には理由がない。 さらに,被告は,構成要件2Fの「成行注文の価格」について,これを成行注文の「約定価格」のみを意味すると主張する。 しかし,本件発明2においては「成行注文の価格」と規定されているのであって,「成行注文の約定価格」と規定されているのではない。むしろ,このことからすれば,約定時点の相場価格(約定価格)だけでなく,成行注文の手続開始時点の相場価格(成行価格)も含まれるのは明らかである。 なお,被告は本件発明2の審査経過における補正等を指摘するが,被告の主張によっても,なぜ本件発明2の審査経過における補正等に照らすと「成行注文の価格」が成行注文が約定したときの価格のみを意味することになるのか,明らかではない。むしろ,被告の指摘する補正は,本件発明2の「成行注文の価格」が,「取引開始時の相場価格」に限定されなくなったことを意味するものである。 〔被告の主張〕(1) 構成要件2Fでは,「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく・・・指値注文」は,「前記成行注文の価格と同じ前記価格」とすること が規定されている。 他方,被告サービス2では,取引開始直後の最初の成行注文の価格とその後の第1の指値注文の価格とは,それぞれ別のルールに従って決定されており,当該第1の指値注文の価格は,取引開始前に生成され,決定されている注文情報群の「新規指定レート」に基づく。すなわち,「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく・・・指値注文」は,取引開始後になって初めて決定される「前記成行 始前に生成され,決定されている注文情報群の「新規指定レート」に基づく。すなわち,「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく・・・指値注文」は,取引開始後になって初めて決定される「前記成行注文の価格と同じ前記価格」にするのではない。仮に,被告サービス2において,取引開始前に決定された指値価格が成行注文の約定価格と一致する場合があったとしても,あくまで,被告サービス2において,指値注文の価格を取引開始前に決定された指値価格にしたところ,偶然一致したものにすぎないのであって,指値注文の価格を成行注文の約定価格にしたものではない。 したがって,被告サービス2は,構成要件2Fのうち,少なくとも「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」を充足しないので,構成要件2Fを充足しない。 (2) この点に関して原告は,被告サービス2においては「注文手続開始当初の相場価格」と「その後実際に約定した時の価格」の二つの価格が「成行注文の価格」に含まれると主張している。 しかし,「注文手続開始当初の相場価格」にいう「注文手続開始当初」とは,顧客が「画面1」において「計算」ボタンを押すことにより,「画面2」において注文情報群が生成されるタイミングであるにすぎず,成行注文とは何ら関係のない時点である。すなわち,顧客は,「画面2」において「注文」ボタンを押さなくてもよいし,また,任意の時間後に「注文」ボタンを押してもよいからである。そして,成行注文は,顧客が「注文」ボタンを押してから所定の時間経過後(スリッページ)に約定する。したがって,「注文手 続開始当初」の時点は,成行注文とは何の関係もない時点であるので,「注文手続開始当初」の時点の相場価格を「成行価格」であるということ 経過後(スリッページ)に約定する。したがって,「注文手 続開始当初」の時点は,成行注文とは何の関係もない時点であるので,「注文手続開始当初」の時点の相場価格を「成行価格」であるということはできない。 この点,原告は,本件発明2では「注文手続開始当初の相場価格」と「その後実際に約定した時の価格」にわずかなブレが生じる場合であってもこれらを区別せず,単に「前記成行注文の価格」(すなわち「相場価格での注文」)とされていると主張するが,この主張を裏付ける記載は本件明細書等2に存在しない。むしろ,本件明細書等2の段落【0044】には「この第二注文の約定の後,指値の第一注文(このときの指値価格は一回目の成行注文での約定価格とする)と指値の第二注文とからなるイフダンが,複数回繰り返される。」と記載されていることや,【図7】には指値の第二注文として「成行で成立したレートからの設定値または金額分の幅」と記載されていることからもうかがえるように,「成行注文の価格」とは「成行注文での約定価格」であって,「成行で成立したレート」を意味することが明らかである。 したがって,「成行注文の価格」とは,成行注文の約定価格,すなわち「その後実際に約定した時の価格」のみを意味する。 なお,原告は,本件発明2の審査時において,特許庁審査官から同様の指摘を受けている。すなわち,「成行注文の価格」とは,被告サービス2でいえば「注文」ボタンを押した時点の価格を意味するという原告の主張に対し,特許庁審査官は,「成行注文の価格」とは成行注文の約定価格,すなわち「その後実際に約定した時の価格」のみを意味すると指摘した。これに対し,原告は,特段の反論を行わず,特許庁審査官の指摘を受け入れている。 (3) また,原告は,「第一注文価格」が「逆指値注文価格 < 第一 後実際に約定した時の価格」のみを意味すると指摘した。これに対し,原告は,特段の反論を行わず,特許庁審査官の指摘を受け入れている。 (3) また,原告は,「第一注文価格」が「逆指値注文価格 < 第一注文価格< 第二注文価格」という関係を満たしさえすれば「同じ価格」であると主張している。 しかし,「同じ」とは,「同一の。」(広辞苑第6版〔甲11〕)という意味であり,完全に一致することを意味するから,「同じ価格」とは,基準となる価格と完全に一致する価格を意味するのであって,原告の主張は「同じ」の理解を誤ったものである。 したがって,「前記成行注文の価格と同じ前記価格」とは,成行注文の約定価格に完全に一致する価格を意味する。 7 争点(2)ウ(構成要件2Fの「以後,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」の充足性)について〔原告の主張〕(1) 被告サービス2では,第一注文と第二注文の約定が繰り返されており,このことは,被告自身の主張からも,また甲10取引明細の記載からも明らかである。 したがって,被告サービス2は,構成要件2Fの「以後,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」を充足する。 (2) 被告の主張に対する反論この点に関して被告は,被告サービス2においては,相場が一本調子で上昇を続けた場合には注文が相場の変動に追従していくことを理由に,第一注文と第二注文の約定を「以後,・・・繰り返し行わせる」ものではない旨主張する。 しかし,被告の主張は,「相場が一本調子で上昇を続けた場合」にそのような付加的な処理が行われることを意味するにすぎない。そのような付加的な処理が行われない状況の下では,被告サービス2においても第一注文と第二注文の約定が繰り返されるのであって,被告の主張は採用 のような付加的な処理が行われることを意味するにすぎない。そのような付加的な処理が行われない状況の下では,被告サービス2においても第一注文と第二注文の約定が繰り返されるのであって,被告の主張は採用することができない。 また,被告は,本件明細書等2の段落【0075】及び【図7】を引用した上で,第一注文と第二注文とが「相場価格の変動にかかわらず,順番が入 れ替えられることなく,常に,交互に繰り返される」態様に限定されると主張している。 しかし,被告が指摘する段落【0075】及び【図7】には,「相場価格の変動にかかわらず」繰り返されるとの記載はない。被告サービス2は,本件発明2の構成に加えて,本件発明2とは全く無関係の相場追従という別機能を併せて有するものにすぎず,そのような別機能の存在により本件発明2の構成要件充足性が影響されるものではない。 〔被告の主張〕(1) 構成要件2Fの「以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,・・・前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,・・・を繰り返し行わせる」とは,「以後,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく売買取引開始時に(行われた),前記第一注文情報に基づく成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文と,・・・売買注文申込情報に基づいて,・・・指値で行う第二注文情報に基づく指値注文と,・・・を繰り返し行わせる」ことを意味する。すなわち,構成要件2Fは,「前記第一注文情報に基づく成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文」と「売買注文申込情報に基づいて,・・・指値で行う第二注文情報に基づく指値注文」という特定の価格に係る二つの指値注文及びその約定を常に交互に繰り返すことを規定している。 他方,被告サービス2では,注文は,相場の変動に追従するために,約定され 第二注文情報に基づく指値注文」という特定の価格に係る二つの指値注文及びその約定を常に交互に繰り返すことを規定している。 他方,被告サービス2では,注文は,相場の変動に追従するために,約定されることなく次々と取り消され,それに応じて新たな注文が次々と行われる。よって,被告サービス2は,そもそも第1の指値注文の価格を取引開始の直後に行われた成行注文の約定価格と同じにするものではないし,また,第1の指値注文と最上列の「注文情報群」の「利食いレート」に基づく第2の指値注文とを繰り返し行わせるものでもない。すなわち,被告サービス2において,特定の価格の指値注文は,相場の変動にかかわらず常に行われ続 けるわけではない。例えば,相場が一本調子で上昇を続けた場合,第1の指値注文は約定することなく取り消され,消滅するのであって,本件発明2でいう「以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定」すらままならない。 したがって,被告サービス2は,取引開始後にも注文情報群が生成される旨を規定する「以後,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」(構成要件2F)を充足しない。 (2) この点に関して原告は,相場が一本調子で上昇を続けた場合の付加的な処理が行われない状況においては,被告サービス2においても第一注文と第二注文の約定が繰り返されることを指摘する。 しかし,本件明細書等2の段落【0075】及び【図7】の記載によれば,本件明細書等2に開示された発明は,逆指値注文が約定することによって以後の注文が行われないことは格別,そうでなければ,「前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の れば,「前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを」,相場価格の変動に関係なく,常に,交互に「繰り返し行わせる」ものである。すなわち,成行注文の約定価格を指値とする指値注文(第一注文情報に基づく指値注文)及び第二注文情報に基づく指値注文という特定の二つの指値注文が,相場価格の変動にかかわらず,順番が入れ替えられることなく,常に,交互に繰り返されるものである。 これを被告サービス2についてみると,被告サービス2では相場価格の変動にかかわらず特定の二つの指値注文を常に繰り返すということはないのであるから,被告サービス2は構成要件2Fの「以後,・・・,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」を充足しない。 8 争点(2)エ(構成要件2Fの「該生成された注文情報群の前記第一注文情報 に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」についての均等侵害の成否)について〔原告の主張〕仮に,被告サービス2が構成要件2Fの「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」を文言上充足しないとしても(前記争点(2)イ),以下のとおり,被告サービス2は本件発明2と均等なものとして,その技術的範囲に属する。 (1) 相違点本件発明2と被告サービス2とは,2回目以降生成される第一の指値注文の価格が,本件発明2では最初の第一の成行注文が約定したときの相場価格であるのに対し,被告サービス2では「計算」ボタンをクリックした時の相場価格であるという点で相違する。 (2) る第一の指値注文の価格が,本件発明2では最初の第一の成行注文が約定したときの相場価格であるのに対し,被告サービス2では「計算」ボタンをクリックした時の相場価格であるという点で相違する。 (2) 第1要件(非本質的部分)ア本件発明2の本質的部分は,第一注文と第二注文からなるイフダンオーダーを繰り返すことで,細かい利益を繰り返し得ることを可能としつつ,予想に反して相場が大きく下降してしまった場合には,含み損の拡大を防ぐために,第一注文で購入した金融商品を自動的に売却して,損切りを行うことを可能とした点にある。 上記(1)のような極めて形式的な相違点は,1回目の注文情報群の第一の成行注文の約定価格と2回目以降の注文情報群の第一の指値注文の価格とで,数銭程度のブレが生じる場合があるという程度のことにすぎず,上記の本件発明2の本質的部分に何ら係るものではない。 イ被告の主張に対する反論この点に関して被告は,本件発明2の作用効果が「取引開始直後に行われる成行注文の約定価格と同じ指値価格の指値注文を繰り返すことによって,取引開始直後に行われる成行注文等の注文状況を忠実に再現する」 にあると主張する。 しかし,本件発明2において1回目の第一の成行注文の価格を2回目以降の第一の指値注文の価格に用いることとしたのは,成行注文では顧客において注文価格を指定する必要がなく簡便であり,かつ,成行注文が行われる現在の相場価格付近にイフダンオーダー及び逆指値注文を仕掛けることができるためであって,被告が主張するように1回目の第一の成行注文の状況を「忠実に再現」するためではない。 そして,2回目以降のイフダンオーダーを1回目の成行注文の約定レートで行うか(本件発明2),指定レートで行うか(被告サービス2)にかかわらず,顧客はイフ の状況を「忠実に再現」するためではない。 そして,2回目以降のイフダンオーダーを1回目の成行注文の約定レートで行うか(本件発明2),指定レートで行うか(被告サービス2)にかかわらず,顧客はイフダンオーダーを繰り返し行うことができ,細かい利益を繰り返し得ることができるし,予想に反して相場が大きく下降しても逆指値注文により損切りを行うことができる。このような相違は,何ら本件発明2の本質的部分に係るものではない。 (3) 第2要件(置換可能性)ア本件発明2は,第一注文と第二注文からなるイフダンオーダーを繰り返すことで,細かい利益を繰り返し得ることを可能としつつ,予想に反して相場が大きく下降してしまった場合には,含み損の拡大を防ぐために,第一注文で購入した金融商品を自動的に売却して,損切りを行うことを可能としたものであり(上記(2)ア),これにより「指値注文により金融商品の売買を行う顧客の利便性を向上させつつ,金融商品の指値注文において,システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを繰り返し行うことができて,システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる。」(本件明細書等2の段落【0016】)という作用効果を奏するものである。 そして,被告サービス2も,第一注文と第二注文からなるイフダンオ ーダーを繰り返すことで細かい利益を繰り返し得ることを可能としつつ,予想に反して相場が大きく下降してしまった場合には,含み損の拡大を防ぐために,第一注文で購入した金融商品を自動的に売却して,損切りを行うことを可能にするという,本件発明2の作用効果の点において同じである。本件発明2と被告サービス2とで異なるのは,1回目の注文情報群の第一の成 一注文で購入した金融商品を自動的に売却して,損切りを行うことを可能にするという,本件発明2の作用効果の点において同じである。本件発明2と被告サービス2とで異なるのは,1回目の注文情報群の第一の成行注文と2回目以降の注文情報群の第一の指値注文とが,わずか数銭程度異なる場合があるという点にすぎず,これにより本件発明2の作用効果が失われるものではない。 イ被告の主張に対する反論この点に関して被告は,本件発明2には,取引開始直後に行われる成行注文の約定価格と同じ指値価格の指値注文を繰り返すことによって,取引開始直後に行われる成行注文等の注文状況を忠実に再現するという作用効果があり,被告サービス2の作用効果とは異なる旨主張する。 しかし,仮に被告サービス2において,1回目の第一の成行注文の約定価格と2回目以降の第一の指値注文の約定価格とで数銭程度のブレが生じ得るとしても,注文価格を指定する必要がない成行注文を行い,かつ,成行注文が行われる現在の相場価格付近にイフダンオーダー及び逆指値注文を仕掛け,これを繰り返すという本件発明2の作用効果を奏しているものである。 また,被告は,被告サービス2においては,取引開始前に顧客に対して注文情報群を開示することができるという,本件発明2にはない格別な作用効果を奏するなどと主張する。 しかし,何らかの新たな作用効果を「奏する」ということにより,本件発明2の作用効果を「奏しない」ことにはならない。 (4) 第3要件(容易想到性)ア被告サービス2においては,「計算」ボタンをクリックしてから「注 文」ボタンをクリックするまでの時間的間隔に由来して数銭程度の価格のブレが生じ得るが,これは単に,「計算」ボタンをクリックした後に,顧客により確認をさせるステップを設けるという注文手順を採 文」ボタンをクリックするまでの時間的間隔に由来して数銭程度の価格のブレが生じ得るが,これは単に,「計算」ボタンをクリックした後に,顧客により確認をさせるステップを設けるという注文手順を採用していることにより生じるものである。一般的なインターネットショッピングサイトを想起しても明らかなとおり,どのような注文手順を採用するか,確認画面を設けるかなどは,当業者において適宜決定すれば足りる設計事項に他ならず,被告サービス2のような構成を選択することに何らの困難性も存しない。 イ被告の主張に対する反論この点に関して被告は,原告が主張・立証しなければならないのは置換が容易想到であることであって,被告サービス2においてどのような注文手順等を採用するかが設計事項であることではないと主張する。 しかし,本件発明2と被告サービス2との相違は,一連の注文手順の中で,どの時点の相場価格(成行価格)を用いて2回目以降の第一の指値注文の価格を決定するかという点であり,この点は,どのような注文手順を採用するかによって変わるものである。後記のとおり被告は,「x0円」,「x1円」及び「x2円」という三つの相場価格(成行価格)を例示するが,これも,被告サービス2では「計算」ボタンをクリックし,「注文」ボタンをクリックし,約定するという三つの注文手順を採用していることから,このような三つの相場価格が選択肢となることを意味するにすぎない。そして,成行注文とする以上,その三つのうちのいずれかの価格を選択するしかないのであるから,このような三択の問題にすぎない設計が容易想到であることは明らかである。被告は「成行注文の価格」すなわち「t2」時点の価格(x2円)を他の時点の価格に置換することは技術的に不可能であると主張するが,現に被告サービス2においては「 計が容易想到であることは明らかである。被告は「成行注文の価格」すなわち「t2」時点の価格(x2円)を他の時点の価格に置換することは技術的に不可能であると主張するが,現に被告サービス2においては「t0」時点の相場価格に置換しているのである から,技術的には全く不可能ではない。 (5) 第4要件(公知技術との同一性又は容易推考性)被告サービス2も,本件発明2と同様,第一注文と第二注文からなるイフダンオーダーを繰り返すことで,細かい利益を繰り返し得ることを可能としつつ,予想に反して相場が大きく下降してしまった場合には,含み損の拡大を防ぐために,第一注文で購入した金融商品を自動的に売却して,損切りを行うことを可能としたものである。このようなFX取引管理装置は,本件発明2の出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから同出願時に容易に推考できたものではない。 (6) 第5要件(意識的除外等の特段の事情)ア原告は,被告サービス2も当然に本件発明2の技術的範囲に文言上属すると考えており,被告サービス2のような構成を本件発明2の特許請求の範囲から意識的に除外したものではない。 イ被告の主張に対する反論この点に関して被告は,本件発明2に係る特許の審査経過を指摘する。 しかし,乙13手続補正書による補正は,成行注文の価格を何ら限定するものではなく,単に本件発明2が成行注文により取引開始されることを明確化する趣旨で,乙11手続補正書で行った「取引開始時の前記相場価格に基づいて」成行注文を行うという構成に関係する補正を,出願当初の記載に戻したものである。原告は,審査経過において「成行注文の価格」という構成要件の解釈を述べたことはなく,無論何らの意識的除外も行っていないし,1回目の第一の成行注文の価格と2回目以降の第一の指 記載に戻したものである。原告は,審査経過において「成行注文の価格」という構成要件の解釈を述べたことはなく,無論何らの意識的除外も行っていないし,1回目の第一の成行注文の価格と2回目以降の第一の指値注文の価格との関係性についても,「同じ価格」であるということ以上に何らの意識的除外も行っていない。 〔被告の主張〕(1) 相違点 原告は,本件発明2では「2回目以降生成される第一の指値注文の価格が,・・・最初の第一の成行注文が約定したときの相場価格である」ところ,これを「計算をクリックした時の相場価格」に置き換えたものが本件発明2と均等であり,かつ,被告サービス2がこれを充足すると主張している。 しかし,前記5及び7の各〔被告の主張〕のとおり,本件発明2と被告サービス2との間には,本件発明2では「注文情報群」が取引開始後に生成されるのに対し,被告サービス2ではそのような構成を有していない点(争点(2)ア),及び,被告サービス2では「前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを」,相場価格の変動に関係なく,常に,交互に「繰り返し行わせる」のに対し,被告サービス2ではそのような構成を有していない点(争点(2)ウ)という相違点も存在している。原告はこれらの相違点について言及しておらず,これらを無視した均等の主張は,本来意味をなさない。 (2) 第1要件(非本質的部分)ア本件発明2は,取引開始直後に行われる成行注文の約定価格と同じ指値価格の指値注文を繰り返すことによって,取引開始直後に行われる成行注文等の注文状況を忠実に再現するとい 第1要件(非本質的部分)ア本件発明2は,取引開始直後に行われる成行注文の約定価格と同じ指値価格の指値注文を繰り返すことによって,取引開始直後に行われる成行注文等の注文状況を忠実に再現するという作用効果を有するものである。すなわち,成行注文の約定価格と完全に一致する指値注文を繰り返すことが本質的部分であるから,これを設計変更することはできない。 成行注文の約定価格と完全に一致する指値注文を行わなければ,取引開始直後に行われる成行注文等の注文状況を忠実に再現できないから,原告の主張する置換を行うとすると,本件発明2が奏する作用効果を変更することになるからである。 したがって,原告の主張する置換は,本件発明2の本質的部分を置換 するものに他ならない。 イこの点に関して原告は,本件発明2の本質的部分は,第一注文と第二注文からなるイフダンオーダーを繰り返すことで,細かい利益を繰り返し得ることを可能としつつ,予想に反して相場が大きく下降してしまった場合には,含み損の拡大を防ぐために,第一注文で購入した金融商品を自動的に売却して,損切りを行うことを可能とした点にあると主張する。 しかし,原告も主張するとおり,本件発明2の課題は「顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを繰り返し行うことができて,システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる」(本件明細書等2の段落【0016】)ことにある。この課題のうち,原告が「複数のイフダンオーダーを繰り返す」構成として選択したのは,構成要件2Fの「前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ として選択したのは,構成要件2Fの「前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,・・・前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」という構成である。 したがって,少なくとも,この構成が本件発明2の本質的部分であることに疑いの余地はない。 (3) 第2要件(置換可能性)ア上記(2)アのとおり,本件発明2は,取引開始直後に行われる成行注文の約定価格と同じ指値価格の指値注文を繰り返すことによって,取引開始直後に行われる成行注文等の注文状況を忠実に再現するという作用効果がある。 他方,被告サービス2は,取引開始前に生成された「注文情報群」に基づく指値注文を繰り返すのであって,取引開始直後に行われる成行注文の約定価格と同じ指値価格の指値注文を繰り返さないから,本件発明2とは,作用効果が異なる。 また,被告サービス2は,取引開始前に決定された指値価格と同じ価格の指値注文を有効にしているから,顧客に対して取引開始前に注文情報群を提示することができる。 他方,本件発明2では,取引開始後,成行注文が約定してはじめて注文情報及び注文情報群が決定されるので,顧客に対して取引開始前に注文情報群を提示することはできない。本件発明2の構成に代えて,取引開始前に決定された指値価格と同じ価格の指値注文を有効にする構成に置換すると,顧客に対して取引開始前に注文情報群を開示することができるという,本件発明2にはない格別な作用効果を奏することになってしまう。 したがって,原告の主張す の指値注文を有効にする構成に置換すると,顧客に対して取引開始前に注文情報群を開示することができるという,本件発明2にはない格別な作用効果を奏することになってしまう。 したがって,原告の主張する置換は,均等論の第2要件を充足しない。 イこの点に関して原告は,本件発明2の課題は「顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを繰り返し行うことができて,システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる」(本件明細書等2の段落【0016】)ところにあると主張する。 しかし,本件発明2の課題解決原理は,上記課題を取引開始後の成行注文の約定価格に基づき決定された指値価格の指値注文を繰り返すことで解決する点にあるのに対し,被告サービス2の課題解決原理は,同じ課題を,取引開始前に決定した指値価格の指値注文を繰り返すことで解決する点にある。 したがって,本件発明2の課題解決原理と被告サービス2の課題解決原 理とは,その指値価格が決定されるタイミング及びその内容が異なるのであって,両者は同一ではない。 (4) 第3要件(容易想到性)ア原告は,どのような注文手順を採用するか,確認画面を設けるかなどは,当業者において適宜決定すれば足りるような設計事項に他ならないなどと主張する。 しかし,原告が主張・立証しなければならないのは,本件発明2において,「2回目以降生成される第一の指値注文の価格が,本件発明2では最初の第一の成行注文が約定したときの相場価格である」という構成を「『計算』ボタンをクリックした時の相場価格」という構成に置換することが容易想到であることであって,被告サービス2においてどのような注文手順等を採用するかが設計事項に当たることではない。 構成を「『計算』ボタンをクリックした時の相場価格」という構成に置換することが容易想到であることであって,被告サービス2においてどのような注文手順等を採用するかが設計事項に当たることではない。 そもそも,「計算」ボタンを押した時点(t0)の相場価格を「x0円」,「注文」ボタンを押した時点(t1)の相場価格を「x1円」,成行注文が約定した時点(t2)の相場価格を「x2円」とした場合,成行注文の約定価格とは「t2」の時点の相場価格の「x2円」であるから,本件発明2の「2回目以降生成される第一の指値注文の価格」は「x2円」である。他方,被告サービス2において,「2回目以降生成される第一の指値注文の価格」は,「t0」の時点の相場価格の「x0円」である。そうすると,原告は,本件発明2の構成要件2Fにおいて,「2回目以降生成される第一の指値注文の価格」を「x2円」に代えて「x0円」へと置換することが容易想到であることを主張・立証しなければならないのに,原告は,「x1円」に代えて「x0円」へと置換することが容易想到であるとしか主張していない。 イこの点に関して原告は,「前記成行注文の価格と同じ前記価格」を「t0」,「t1」,「t2」の時点の価格である「x0円」,「x1 円」,「x2円」のいずれかに置換することは,当業者が適宜なし得る設計的事項である旨主張する。 しかし,「成行注文の価格」とは,成行注文の約定価格であり,「t2」という時点の「x2円」に一義的に定まってしまうものであって,顧客や金融商品取引管理装置等がコントロールできるものではない。したがって,コントロールが不可能かつ一義的に定まってしまう「t2」という時点の「x2円」(成行注文の価格)を,他の時点の他の価格に置換することはできない。当該置換を行うことは,そも ものではない。したがって,コントロールが不可能かつ一義的に定まってしまう「t2」という時点の「x2円」(成行注文の価格)を,他の時点の他の価格に置換することはできない。当該置換を行うことは,そもそも技術的に不可能である。 (5) 第4要件(公知技術との同一性又は容易推考性)仮に原告の主張が真実であるとしたら,本件発明2には,進歩性違反の無効理由が存在することになる。 よって,被告サービス2は,均等論の第4要件を充足しない。 (6) 第5要件(意識的除外等の特段の事情)原告は,本件発明2に係る特許の審査の際,乙13手続補正書において「成行注文の価格」は「前記取引開始時の前記相場価格」であるという主張を撤回し,「成行注文の価格」とは成行注文の約定価格である旨の限定をした構成を追加する手続補正をしている。 したがって,当該追加に係る限定をした構成以外の構成は,原告によって意識的に除外されたものである。 また,原告は,特許庁審査官による「また,段落【0062】には,『ここで,本実施形態の第一注文は,一回目は成行注文で行われるが,二回目以降は指値注文で行われる。このため,約定情報生成部14は,当該成行注文の約定価格を,二回目以降の第一注文の指値価格に設定する。』ことが記載されるが,『相場価格』と『約定価格』とは必ずしも一致するものでないことは当業者にとって自明であり,当該補正は新たな技術的事項を導入するも のであると認められる。」という指摘に対し,特段の反論をすることなくこれを受け入れ,かつ,当該指摘に沿うように乙13手続補正書による補正をしている。特に,特許庁審査官が引用した本件明細書等2の段落【0062】における「約定情報生成部14は,当該成行注文の約定価格を,二回目以降の第一注文の指値価格に設定する。」と 続補正書による補正をしている。特に,特許庁審査官が引用した本件明細書等2の段落【0062】における「約定情報生成部14は,当該成行注文の約定価格を,二回目以降の第一注文の指値価格に設定する。」という記載の指摘を受けて,「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」という手続補正を行ったのであるから,明らかに,「前記成行注文の価格と同じ前記価格」とは成行注文の約定価格と完全に一致する価格を意味する。 したがって,「前記成行注文の価格と同じ前記価格」とは,成行注文の約定価格と完全に一致する価格であって,それ以外の構成は原告によって意識的に除外されたものである。 よって,被告サービス2は,均等論の第5要件を充足しない。 9 争点(3)ア(構成要件3F-1の「前記成行注文を決済する前記指値注文が約定されたとき,前記注文情報群の生成を行う」及び3F-3の「以後,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」の充足性)について〔原告の主張〕被告サービス2では,最初の成行注文を決済するための売りの指値注文が約定されたときに,注文情報群を生成し,買い注文情報に基づく指値注文を有効にする。 したがって,被告サービス2は,本件発明3の構成要件3F-1の「前記成行注文を決済する前記指値注文が約定されたとき,前記注文情報群の生成を行う」及び3F-3の「以後,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」を充足する。 被告はこの点を争うが,この点についての原告の主張は前記5〔原告の主張〕のとおりであるので,これを援用する。 〔被告の主張〕前記5〔被告の主張〕のとおり,本件発明2と被告サービス2とでは注文情報群の生成タイミングが異なるが,このことは 〔原告の主張〕のとおりであるので,これを援用する。 〔被告の主張〕前記5〔被告の主張〕のとおり,本件発明2と被告サービス2とでは注文情報群の生成タイミングが異なるが,このことは本件発明3にも妥当するので,これを援用する。 すなわち,被告サービス2の設計思想は,取引開始前に注文情報を一気に生成してしまうことにあり,取引が開始されるとそれ以降は注文情報を生成しない。これに対し,本件発明3では,「前記成行注文を決済する前記指値注文が約定されたとき,前記注文情報群の生成を行」い(構成要件3F-1),「以後,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」(構成要件3F-3)。つまり,本件発明3の技術的思想は,取引開始後に注文情報を都度生成することにある。 このように,被告サービス2の設計思想は本件発明3の技術的思想と全く異なるから,被告サービス2は構成要件3F-1の「前記成行注文を決済する前記指値注文が約定されたとき,前記注文情報群の生成を行う」及び3F-3の「以後,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」を充足しない。 争点(3)イ(構成要件3F-2の「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記指値注文を有効とし,」の充足性)について〔原告の主張〕前記9〔原告の主張〕のとおり,被告サービス2では,最初の成行注文を決済するための売りの指値注文が約定されたときに,注文情報群を生成し,買い注文情報に基づく指値注文を有効にする。 したがって,被告サービス2は,構成要件3F-2の「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記指値注文を有効とし,」を充足する。 〔被告の主張〕後記17及び18の各〔被告の主張〕のとおり,本件発明3に係る特許は分割要 件違反及 された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記指値注文を有効とし,」を充足する。 〔被告の主張〕後記17及び18の各〔被告の主張〕のとおり,本件発明3に係る特許は分割要 件違反及びサポート要件違反により無効にされるべきであるが,仮に分割要件違反及びサポート要件違反を回避するような限定解釈を行うとすれば,それは,構成要件3F-2の「前記指値注文」が,先行する成行注文の約定価格を指値価格とする指値注文であるとの限定解釈をするよりほかにない。 その場合,構成要件3F-2は,実質的に,構成要件2Fのうち「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」と同じ構成と解釈されるので,構成要件3F-2には,構成要件2Fにおける「前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文」に関する議論(前記争点(2)イ)がそのまま当てはまる。 そうすると,本件発明3の構成要件3F-2では,指値注文の価格を先行する成行注文の約定価格と一致させているのに対して,被告サービス2では,指値注文の価格を取引開始前に決定された価格に一致させている点で,両者は異なる。 したがって,被告サービス2は,構成要件3F-2を充足しない。 11 争点(3)ウ(構成要件3F-3の「以後,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」の充足性)について〔原告の主張〕被告サービス2では,買いの指値注文の約定と,売りの指値注文の約定と,売りの指値注文の約定が行われた後の次の前記注文情報群の生成とが繰り返し行われる。 したがって,被告サービス2は,構成要件3F-3の「以後,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」を充足する。 被告はこの点を争うが,この点についての原告の主張は前記7〔原 れる。 したがって,被告サービス2は,構成要件3F-3の「以後,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」を充足する。 被告はこの点を争うが,この点についての原告の主張は前記7〔原告の主張〕のとおりであるので,これを援用する。 〔被告の主張〕本件発明3の構成要件3F-3の「以後,・・・繰り返し行わせる」に関し ても,本件発明2における前記7〔被告の主張〕がそのまま妥当するため,これを援用する。 すなわち,構成要件3F-3の「以後,・・・繰り返し行わせる」という記載は機能的記載であるから,当該記載は,成行注文の約定価格を指値とする指値注文(第一注文情報に基づく指値注文)及び第二注文情報に基づく指値注文という特定の二つの指値注文が相場価格の変動にかかわらず,順番が入れ替えられることなく,常に,交互に繰り返されるという意味に解釈される。しかし,被告サービス2では,成行注文の約定価格を指値とする指値注文(第一注文情報に基づく指値注文)及び第二注文情報に基づく指値注文という特定の二つの指値注文は,相場価格の変動によっては,常に,交互に繰り返されない。 したがって,被告サービス2は構成要件3F-3の「以後,・・・繰り返し行わせる」を充足しない。 12 争点(4)ア(本件発明1についての無効理由(引用発明1を主引例とする進歩性欠如)の存否)について〔被告の主張〕(1) 本件発明1と引用発明1との対比本件発明1と引用発明1を対比すると,本件発明1は「前記一の注文価格を一の最高価格として設定し,該一の最高価格より安値側に,それぞれの値幅が前記売買注文申込情報に含まれる前記値幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,設定されたそれぞれの前記注文価格としての第一注文価格について買いもしくは売りの指値 より安値側に,それぞれの値幅が前記売買注文申込情報に含まれる前記値幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,設定されたそれぞれの前記注文価格としての第一注文価格について買いもしくは売りの指値注文を行う第一注文情報,前記第二注文価格算出手順において算出された前記他の価格を他の最高価格として設定し,該他の最高価格より安値側に,それぞれの前記第一注文に対し,購入又は販売が行われた前記第一注文に基づいて販売又は購入が行われたときの前記利幅が前記売買注文申込情報における前記利幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,該設定されたそれぞれの前記注文価格としての第二注文価 格について前記買いの第一注文に対しては売りの,前記売りの第一注文に対しては買いの指値注文を行う第二注文情報からなる注文情報群を複数生成し」ているのに対し,引用発明1は「前記一の注文価格を一の最高価格として設定し」ていないため,「前記一の注文価格」が「一の最高価格」ではない点において相違し,残余の点では一致している。 (2) 容易想到性上記(1)の相違点について,引用文献1の段落【0049】には,「自動売買テーブル(700)において,(702)~(710)のごとき横列は最初の売買価を基準に上下にわたって適切な数だけ作られる。」と記載されていることから,「自動売買テーブル(700)」における「最初の売買価」の位置は,当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない点が示唆されている。 そうすると,「最初の売買価」である(706)より上に位置する(702)及び(704)を削除するようなこと,すなわち,「最初の売買価」より上の「横列」をゼロにし,もって「最初の売買価」を「自動売買テーブル(700)」の一番上に配置し,最高価格とするようなことは,当業者が容易に想到し 削除するようなこと,すなわち,「最初の売買価」より上の「横列」をゼロにし,もって「最初の売買価」を「自動売買テーブル(700)」の一番上に配置し,最高価格とするようなことは,当業者が容易に想到し得たことにすぎない。 したがって,本件発明1は,引用文献1に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) 原告の主張に対する反論この点に関して原告は,引用発明1には注文情報群が存在しないなどと主張する。 しかし,本件発明1の構成要件1Fによれば,注文情報群とは「・・・第一注文価格について買いもしくは売りの指値注文を行う第一注文情報,・・・第二注文価格について前記買いの第一注文に対しては売りの,前記売りの第一注文に対しては買いの指値注文を行う第二注文情報からなる」もの,すなわち,特定の値段で売り又は買う注文に対応する第一注文情報及び特定の 値段で買い又は売る注文に対応する第二注文情報のまとまりにすぎない。 したがって,このような注文情報群の定義に照らせば,引用文献1に実施例として記載されている「1万ウォンで100株売る」及び「9500ウォンで100株買う」という注文の組合せに係る情報のまとまりは,まさに「注文情報群」に該当する。 (4) 小括以上により,本件発明1は,特許法29条2項により特許を受けることができず,同法123条1項2号によって特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕(1) 本件発明1における「注文情報群」とは,構成要件1Fに規定されているとおり,「第一注文」と「第二注文」からなり,買いの第一注文に対しては売りの第二注文が,売りの第一注文に対しては買いの第二注文が行われる。 そして,一つの注文情報群を形成する第一注文と第二注文とは対となり,第一注文と 」と「第二注文」からなり,買いの第一注文に対しては売りの第二注文が,売りの第一注文に対しては買いの第二注文が行われる。 そして,一つの注文情報群を形成する第一注文と第二注文とは対となり,第一注文と第二注文とが交互に約定を繰り返すことになる。 これに対し,引用発明1は,自動売買条件に従って買い注文や売り注文を順次追加していく発明であるが,そこで追加される買い注文や売り注文は,新規注文と決済注文のように対となっているものではない。 したがって,引用発明1には本件発明1における「注文情報群」に対応する構成が欠けており,注文情報群の存在を前提とする各構成要件も欠けているのであって,被告は引用発明1の認定及び相違点の把握を誤ったものである。 (2) この点に関して被告は,引用文献1における「1万ウォンで100株売る」及び「9500ウォンで100株買う」という注文の組合せに係る情報のまとまりが「注文情報群」に該当すると主張する。 しかし,「1万ウォンで100株売る」という注文は単独で行われており, その発注が行われた時点では,何らこれと対となる買いの注文情報は生成されていない。すなわち,この注文の注文情報は,何ら注文情報「群」をなすものではなく,単なる個別の注文情報が生成されているにすぎないのであって,引用発明1においては,注文情報「群」という概念はない。 13 争点(4)イ(本件発明2及び3についての無効理由(実施可能要件違反)の存否)について〔被告の主張〕(1) 本件明細書等2の段落【0065】及び【0066】には,「注文情報生成部16は新たな注文情報群(以下「第二の注文情報群」と称する。)を生成する(ステップS29)」との記載があるが,当業者であったとしても,以下のとおり,この記載からは発明の技術上の意義を理解す 報生成部16は新たな注文情報群(以下「第二の注文情報群」と称する。)を生成する(ステップS29)」との記載があるが,当業者であったとしても,以下のとおり,この記載からは発明の技術上の意義を理解することができず,実施することはできない。 (2) 本件明細書等2の段落【0065】における「図7のt2時点においてステップS1での入力により生成された注文情報が全て約定していない場合」とは,例えば10万通貨のうち7万通貨しか売ることができないというような,一部約定の場合を意味するものと解される。 しかるに,本件明細書等2には,少なくとも未約定の3万通貨がどのように取り扱われるのかの記載がない。すなわち,「新たな注文情報群生成(S29)」を経て未約定の3万通貨については何も手当てをせず,これを一切無視して新たに10万通貨の買いの指値注文を行うのか,約定した7万通貨に対応して新たに7万通貨の買いの指値注文を行うのか,それとも,未約定の3万通貨についての売りの指値注文のみを行うのかなどについて,一切の記載がない。そして,これらの記載がなければ,本件明細書等2の記載は,当業者であってもその実施ができる程度に明確かつ十分であるとはいえず,ましてや,本件明細書等2の段落【0004】ないし【0008】に記載されたような課題を解決するような実施はできない。 (3) 以上のとおり,本件明細書等2の発明の詳細な説明は,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 したがって,本件発明2は特許法36条4項1号に定める実施可能要件を欠き,同法123条1項4号によって特許無効審判により無効にされるべきものである。 また,これと同様の理由で,本件発明3も特許法36条4項1号に定める実施可能要件を欠き,同法123条 可能要件を欠き,同法123条1項4号によって特許無効審判により無効にされるべきものである。 また,これと同様の理由で,本件発明3も特許法36条4項1号に定める実施可能要件を欠き,同法123条1項4号によって特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕被告の主張は,その前提である,本件明細書等2の段落【0065】の記載の解釈を誤ったものである。 被告の指摘する段落【0065】の記載は,段落【0023】以下に記載された一の実施形態に関する説明部分であるところ,これに続く段落【0066】の記載を併せ読めば,段落【0065】に記載されている「注文情報が全て約定していない場合」(ステップS26の“NO”)とは,被告が主張するような金額的な一部が約定していない場合を指すのではなく,「回数」的にまだ全ての注文情報が約定していない場合を指すことが明らかである。すなわち,本件特許2の特許請求の範囲請求項2及び段落【0010】には,第一注文の約定と第二注文の約定とを「予め定められた回数だけ繰り返すことを特徴とする」金融商品取引管理装置が記載されているところ,段落【0065】の記載は,そこで「予め定められた回数」が残っている(すなわち「全て約定」していない)場合には,当該「予め定められた回数」を繰り返すまでステップS21及びS25の処理を繰り返すことを説明したものである。 したがって,「注文の行われた10万通貨のうち7万通貨だけが約定した場合に,未約定の3万通貨がどのように取り扱われるのかの記載がない」ことを前提とする被告の主張は,本件明細書等2の段落【0065】のステップS2 6に関する記載の理解を誤ったものであり,仮に被告の指摘するように未約定の3万通貨がどのように取り扱われるのかの記載がないとしても,こ 張は,本件明細書等2の段落【0065】のステップS2 6に関する記載の理解を誤ったものであり,仮に被告の指摘するように未約定の3万通貨がどのように取り扱われるのかの記載がないとしても,これにより,本件発明2及び3に係る特許が特許法36条4項1号の実施可能要件を欠くことにはならない。 14 争点(4)ウ(本件発明2及び3についての無効理由(サポート要件違反)の存否)について〔被告の主張〕(1) 本件発明2は,構成要件2Fにおいて「以後,・・・繰り返し行わせる」と記載されているが,以下のとおり,本件明細書等2で開示されている発明は「以後,・・・繰り返し行わせ」るものではないので,本件発明2は,本件特許明細書2に開示されていない。 (2) 本件明細書等2の段落【0065】及び【図4A】を参照すると,本件明細書等2に開示されているのは,「S26」において,「図7のt2時点においてステップS1での入力により生成された注文情報が全て約定していない場合」に初めて「新たな注文情報群生成(S29)」がなされる点にすぎない。そして,前記13〔被告の主張〕のとおり,「図7のt2時点においてステップS1での入力により生成された注文情報が全て約定していない場合」とは一部約定の場合である。そうすると,本件明細書等2には,本件明細書等2の【0065】及び【図4A】の「新たな注文情報群作成(S29)」等との関係で,約定した7万通貨のみならず,未約定の3万通貨について,どのような処理が行われるのか記載されておらず,また,当業者が本件発明2を実施することができるに足りる他の記載もない。 したがって,本件明細書等2に開示されているのは,一部約定の場合にのみ「新たな注文情報群生成(S29)」し,これに基づく注文が行われる発明であるところ,これは,何 できるに足りる他の記載もない。 したがって,本件明細書等2に開示されているのは,一部約定の場合にのみ「新たな注文情報群生成(S29)」し,これに基づく注文が行われる発明であるところ,これは,何らの限定もなく,無条件に「以後,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」ものではない。また,何らの 限定もなく,無条件に「以後,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」構成は,当業者にとって自明であったり,本件明細書等2の他の記載から,当業者が導き出すことができるといったものでもない。 (3) 以上のとおり,本件発明2に係る特許は,特許法36条6項1号所定のサポート要件を充たしておらず,同法123条1項4号によって特許無効審判により無効にされるべきものである。 また,これと同様の理由で,本件発明3に係る特許も,特許法36条6項1号所定のサポート要件を充たしておらず,同法123条1項4号によって特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕被告の主張は,前記13〔被告の主張〕と同様に,その前提である本件明細書等2の段落【0065】のステップS26に関する記載の理解を誤ったものである。したがって,仮に被告の指摘するように未約定の3万通貨がどのように取り扱われるのかの記載がないとしても,これにより,本件発明2及び3に係る特許が特許法36条6項1号のサポート要件を欠くことにはならない。 争点(4)エ(本件発明2及び3についての無効理由(引用発明3を主引例とする進歩性欠如)の存否)について〔被告の主張〕(1) 本件発明2と引用発明3との対比本件発明2と引用発明3とを対比すると,両者は以下の点で相違する。 ア本件発明2は,注文情報群を「複数回」生成するのに対して,引用発明 被告の主張〕(1) 本件発明2と引用発明3との対比本件発明2と引用発明3とを対比すると,両者は以下の点で相違する。 ア本件発明2は,注文情報群を「複数回」生成するのに対して,引用発明3は,注文情報群を「複数回」生成することが明示されていない点(以下「相違点1」という。)。 イ本件発明2は,「前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注 文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせ」るのに対して,引用発明3は,そのような構成を有していない点(以下「相違点2」という。)。 (2) 相違点2の容易想到性ア引用発明2には,外国為替取引を管理する管理装置であって,当該外国為替取引を行うための注文内容のデータの入力を受け付ける手段と,当該注文内容のデータに基づいて注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,当該注文情報生成手段は,一の当該注文内容のデータに基づいて,当該外国為替の売り注文または買い注文の一方を指値で行う第一注文情報と,当該外国為替の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,売買取引開始時に,前記第一注文情報に基づく指値注文を行い,前記第一注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文を有効とし,前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報 く指値注文を行い,前記第一注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文を有効とし,前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の第一注文情報に基づく指値注文の約定価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる点が開示されている。 イこの点,引用文献3の段落【0041】の記載に基づけば,引用文献3の新規注文(引用発明2の第一注文に相当)は,成行注文/指値注文 のいずれであってもよいから,引用発明3には新規注文を指値注文とする発明と組み合わせる示唆があるということになる。そして,引用発明2の第一注文が指値注文であることからすると,まさに引用発明3には引用発明2と組み合わせる示唆があるのであって,引用発明3を引用発明2と組み合わせることは容易である。 また,引用発明3及び引用発明2は,共に,顧客の利便性の向上を目的とした金融商品の予約売買に係る発明であり,共通の技術分野に属した,共通の課題を有する発明である。 他にも,引用文献3の段落【0050】には,「・・・新規注文入力時には,新規注文の成立価格(約定価格)は未定である。・・・」との記載があるところ,新規注文とは,段落【0041】の記載から,成行注文/指値注文のいずれであってもよいことからすれば,結局,成行注文/指値注文の約定価格は未定である。しかるに,引用発明3の取引開始時の新規注文に基づく成行注文も,引用 【0041】の記載から,成行注文/指値注文のいずれであってもよいことからすれば,結局,成行注文/指値注文の約定価格は未定である。しかるに,引用発明3の取引開始時の新規注文に基づく成行注文も,引用発明2の取引開始時の第一注文情報に基づく指値注文も,約定価格が未定な注文である点において共通するということができ,両発明を組み合わせることの動機付けがあるといえる。 ウしたがって,引用発明3に引用発明2を適用すること,及び,その適用に際し,第一注文情報に基づく指値注文の約定価格と同じ前記価格の指値注文を有効とすることに替えて第一注文情報に基づく成行注文の約定価格と同じ前記価格の指値注文を有効とすることは,いずれも容易である。 よって,引用発明3において,注文情報群が複数回生成され,前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の第一注文情報に基づく成行注文の約定価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,以後,前記第一 注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせることは,当業者が容易に想到し得たものである。 (3) 相違点1の容易想到性上記(2)のとおり,引用発明3の注文情報群について,引用発明3に引用発明2を適用し,注文情報群の第一注文情報に基づく買い注文の約定に続き,注文情報群の第二注文情報に基づく売り注文が約定すると,新たな注文情報群を生成し,新たな注文情報群の第一注文情報に基づく買い注文を有効にするなどという構成とすることは,当業者が容易に想到し得たもので 注文情報群の第二注文情報に基づく売り注文が約定すると,新たな注文情報群を生成し,新たな注文情報群の第一注文情報に基づく買い注文を有効にするなどという構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。そうすると,引用発明3に引用発明2を適用したものは,注文情報群を複数回生成する構成を有することになる。 したがって,相違点1に係る本件発明2の構成は,引用発明3及び引用発明2に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。 (4) 小括以上のとおり,本件発明2は,引用発明3(主引例)及び引用発明2(副引例)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,本件発明2に係る特許は,特許法29条2項により特許を受けることができず,同法123条1項2号によって特許無効審判により無効にされるべきものである。 また,これと同様の理由により,本件発明3に係る特許も,特許法29条2項により特許を受けることができず,同法123条1項2号によって特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕(1) 本件発明2と引用発明3との対比 引用文献3には,先物取引一般に関する説明として,「成行注文」,「指値注文」及び「逆指値注文」という執行条件の存在が示されているにすぎず,引用発明3において,新規注文がいかなる執行条件で行われるのかは開示されていない。仮に引用文献3の段落【0041】の記載を参酌したとしても,そこから,引用発明3において,新規注文の執行条件として,指値注文でも逆指値注文でもなく,あえて成行注文を選択する積極的な動機付けを導くことはできない。 そうすると,引用文献3の記載から,引用発明3において「売買取引開始時に,前記第一注文情報に基づく成行注文を行う」こと 文でもなく,あえて成行注文を選択する積極的な動機付けを導くことはできない。 そうすると,引用文献3の記載から,引用発明3において「売買取引開始時に,前記第一注文情報に基づく成行注文を行う」ことが開示されているとはいえないのであって,被告は引用発明3の認定を誤ったものである。 (2) 容易想到性ア被告も自認するとおり,引用発明3においては,新規注文と仕切注文を「繰り返す」ということは開示も示唆もされていないのであり,これと引用発明2に開示された構成を組み合わせる動機付けはない。 イまた,上記(1)のとおり,引用発明3には「売買取引開始時に,前記第一注文情報に基づく成行注文を行う」ことは開示されていないところ,引用文献2の特許請求の範囲請求項1に「同一種類の前記金融商品を二つの価格について指値注文する前記注文情報からなる注文情報群を複数生成し,」と記載されているとおり,引用発明2における注文は指値注文において行われる。 そうすると,引用発明3及び引用発明2のいずれにも,「売買取引開始時に,前記第一注文情報に基づく成行注文を行う」ことは開示されていないのであるから,これらを組み合わせたところで,そもそも本件発明2の構成に至ることはない。 ウ本件発明2では,売買取引開始時に第一注文情報に基づく成行注文を行うとともに,以後は第一注文情報に基づく指値注文を行う。すなわち, 本件発明2においては,第一注文情報に基づき,成行注文と指値注文の双方が行われるのであり,特に1回目は成行注文,2回目以降は指値注文という組合せで行われる。 仮に,先物取引には成行注文,指値注文及び逆指値注文という各執行条件があるとの引用文献3の一般的な説明(段落【0041】)を参酌したとしても,指値注文を行う引用発明2との組合せに際し,引用発 。 仮に,先物取引には成行注文,指値注文及び逆指値注文という各執行条件があるとの引用文献3の一般的な説明(段落【0041】)を参酌したとしても,指値注文を行う引用発明2との組合せに際し,引用発明2に開示された指値注文という執行条件を,あえてこれと異なる成行注文に変更する積極的な動機付けはないし,まして,1回目と2回目以降で執行条件を変えて,1回目の新規注文のみを成行注文とし,2回目以降の新規注文を指値注文とする積極的な動機付けは皆無であるから,引用発明3と引用発明2の構成を組み合わせて本件発明2に至ることは,当業者にとって何ら容易なものではない。 エさらに,本件発明2の構成要件2Dに記載されているとおり,本件発明2において複数回生成される注文情報群は,第一注文情報と第二注文情報と逆指値注文情報を含む。 これに対し,引用発明2の注文情報群は「同一種類の前記金融商品を二つの価格について指値注文する前記注文情報からなる注文情報群」であり,ここには逆指値注文情報は含まれていない。 したがって,引用発明2には,少なくとも「逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成」することは開示されておらず,同じくこの点が開示されていない引用発明3と組み合わせたところで,本件発明2に至ることがない。 16 争点(4)オ(本件発明2及び3についての無効理由(引用発明4を主引例とする進歩性欠如)の存否)について〔被告の主張〕(1) 本件発明2と引用発明4との対比 本件発明2と引用発明4とを対比すると,本件発明2は,「該注文情報生成手段は,一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と 手段は,一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し」ているのに対し,引用発明4は,「該注文情報生成手段は,一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し」ているが,注文情報群に「前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報」が含まれていない点で相違する。 (2) 容易想到性ア引用発明2では,次の注文情報群の第一注文情報に基づく指値注文の価格を,先行する成行注文の約定価格と一致する価格とすることに本質がある。そうすると,当該指値注文によって売り又は買った金融商品をどのように買い又は売るのかは,引用発明2において,本質的な事項ではない。また,先行する売り又は買った金融商品を指値注文によって買い又は売ることに加え,損切り目的のため,逆指値注文によって買い又は売ることは,金融商品の分野において,例示するまでもなく周知・慣用の技術にすぎない。 以上からすると,引用発明2において,注文情報群に「前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報」を含めるか否かは,当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。したがって,上記相違点に係る本件発明2の構成は,引用発明4に基づいて,当業者が適宜なし得るものにすぎないので,当業者が容易に想到し得た ものである。 が適宜なし得る設計的事項にすぎない。したがって,上記相違点に係る本件発明2の構成は,引用発明4に基づいて,当業者が適宜なし得るものにすぎないので,当業者が容易に想到し得た ものである。 イ仮に,相違点に係る構成が設計的事項ではないとしても,当該相違点に係る構成は,引用発明4及び引用発明3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 引用文献3には,受託者側のシステムにおいて,委託者が入力した注文に必要な情報に基づいて,金融商品の売り注文又は買い注文の一方を成行又は指値で行う新規注文のための情報と,この金融商品の売り注文又は買い注文の他方を指値で行う仕切注文に係る情報と,この金融商品の売り注文又は買い注文の他方を逆指値で行う仕切注文に係る情報を含む情報群を生成する構成が開示されている。 したがって,引用発明3には,「該注文情報生成手段は,一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を生成し,」が開示されている。 引用発明4及び引用発明3は,共に,金融商品の新規注文及び仕切注文の組合せ注文に関する発明であって,かつ,顧客の利便性の向上を目的とした金融商品の予約売買に係る発明であるから,共通の技術分野に属した,共通の課題を有する発明であり,両発明を組み合わせることの動機付けがあるといえる。 したがって,上記相違点に係る本件発明2の構成は,引用発明4及び引用発明3に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。また,本件発明2が奏する効果は,引用発明4及び引用発明 があるといえる。 したがって,上記相違点に係る本件発明2の構成は,引用発明4及び引用発明3に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。また,本件発明2が奏する効果は,引用発明4及び引用発明3から当業者が予測可能なものであって,格別なものではない。 (3) 小括 以上により,本件発明2は,引用発明4に基づいて,又は,引用発明4(主引例)及び引用発明3(副引例)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,本件発明2に係る特許は,特許法29条2項により特許を受けることができず,同法123条1項2号によって特許無効審判により無効にされるべきものである。 また,これと同様の理由により,本件発明3に係る特許も,特許法29条2項により特許を受けることができず,同法123条1項2号によって特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕(1) 本件発明2と引用発明4との対比引用文献4の段落【0085】以下では,代替実施形態として,リンクされた新規注文と決済注文とを指定された「サイクル数」だけ繰り返すことが開示されているものの,ここで開示されているのは指値の新規買い注文と指値の決済売り注文とを繰り返すというものにすぎない。 したがって,引用発明4には,成行の新規注文から取引を開始して,2回目以降指値注文を行うという構成は開示されていない。 (2) 容易想到性ア引用発明4と引用発明3とを組み合わせたところで,本件発明2のように,1回目の新規注文を成行注文で行い,2回目以降の新規注文を指値注文で行うという構成に至ることはないのであり,これらの引用発明から本件発明2に至ることは,当業者にとって何ら容易なことではない。 イまた,引用発明4にも引用発明3にも,逆指値注 の新規注文を指値注文で行うという構成に至ることはないのであり,これらの引用発明から本件発明2に至ることは,当業者にとって何ら容易なことではない。 イまた,引用発明4にも引用発明3にも,逆指値注文を繰り返すという構成は一切開示も示唆もされていないのであり,これらを組み合わせることにより,なぜ逆指値注文まで繰り返されることになるのか,全く明らかではない。 逆指値注文は,高く買った金融商品を安く売るという,当該取引から損が発生する取引である。一方,引用文献4の段落【0085】に記載されているとおり,引用発明4は,指値の新規注文と指値の決済注文とを繰り返すことで利幅分の利益を繰り返し得ることを目的とするものである。このような損を発生させる取引である逆指値注文を,利幅分の利益を繰り返し得ることを目的とする引用発明4に採用することは,引用発明4の特徴を失わせるものであり,阻害要因がある。 ウさらに,引用発明4は,引用文献4の「図6」を見ると明らかなように,新規注文の情報を基準として,決済注文が約定した場合の利益幅たるLOCK値を指定するものである。 ここでは2種類の仕切注文を行うことも,2種類の仕切注文が行われたときに,他方の仕切注文をどのように扱うのかを決定することも,全く予定されていない。 また,仕切注文について執行条件を定めることも全く予定されておらず,ましてや執行条件の異なる2種類の決済注文を行うことなど,全く予定されていない。 その他,引用文献4のどこにも,決済注文の執行条件を指定することや,執行条件の異なる2種類の仕切注文を行うこと,2種類の仕切注文のうち一方が約定したときの他方の仕切注文の取扱いなどは,全く開示も示唆もされていないのであり,引用発明4に引用発明3を組み合わせる動機付けは皆無である 2種類の仕切注文を行うこと,2種類の仕切注文のうち一方が約定したときの他方の仕切注文の取扱いなどは,全く開示も示唆もされていないのであり,引用発明4に引用発明3を組み合わせる動機付けは皆無である。 17 争点(4)カ(本件発明3についての無効理由(分割要件違反)の存否)について〔被告の主張〕(1) 原告は,構成要件3F-2の「前記指値注文」とは構成要件2Fから「成行注文の価格と同じ前記価格」という構成を除いたものであり,あらゆる指 値価格の指値注文を含む構成であると主張している。すなわち,構成要件3F-2の「前記指値注文」は,指値価格を問うものでないから,任意の指値価格をその指値価格とする指値注文でありさえすればよく,構成要件2Fの「前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文」を上位概念化したものであるというのである。 (2) ところで,本件特許3は本件特許2(出願番号:特願2013-45238)の分割出願に係る特許である。 原出願である本件特許2に係る本件明細書等2の段落【0005】ないし【0008】の記載によると,本件特許2は,従来技術の課題として,取引開始直後の注文が成行注文のイフダンオーダーをすることができなかったこと及びイフダンオーダーを繰り返し行えなかったことを技術課題として設定している。 この課題を解決する手段として,本件明細書等2の段落【0044】及び【0062】では,「・・・,成行リピートイフダンでは,一回目のイフダンでは,第一注文で買い注文または売り注文の一方を成行で行ったのち,第二注文で買い注文または売り注文の他方を指値で行う。・・・この第二注文の約定の後,指値の第一注文(このときの指値価格は一回目の成行注文での約定価格とする)と指値の第二注文とからなるイフダンが,複数回繰り返され 注文または売り注文の他方を指値で行う。・・・この第二注文の約定の後,指値の第一注文(このときの指値価格は一回目の成行注文での約定価格とする)と指値の第二注文とからなるイフダンが,複数回繰り返される。」及び「ここで,本実施形態の第一注文は,一回目は成行注文で行われるが,二回目以降は指値注文で行われる。このため,約定情報生成部14は,当該成行注文の約定価格を,二回目以降の第一注文の指値価格に設定する。」ことが開示され,【図7】でも,2回目以降の指値の第一注文の価格を1回目の成行注文の約定価格としている(いずれの記載も出願当初から補正されていない。)。ここには,2回目以降の指値の第一注文の価格を1回目の成行注文の約定価格とすることしか開示されておらず,2回目以降の指値の第一注文の価格を任意の価格にできるといった記載はない。また,2回 目以降の指値の第一注文の価格をどのような価格にするのか,言い換えると,1回目の成行注文の約定価格以外のどのような価格に設定するための方法等は一切開示されていない。 したがって,本件明細書等2の出願当初及び分割直前の明細書等には,その技術課題及び課題を解決するための手段からみて,2回目以降の指値の第一注文の価格を任意の価格に設定できることは,形式的にも実質的にも記載されていない。 (3) そうすると,本件発明3の構成要件3F-2は,分割出願の出願日が原出願の出願日へ遡及するための要件である,①分割出願の明細書等に記載された事項が,原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること,及び,②分割出願の明細書等に記載された事項が,原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であることのいずれも満たさないから,本件発明3に係る特許出願には特許法44条2項の適用がなく,分割要件違反とな 出願の明細書等に記載された事項が,原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であることのいずれも満たさないから,本件発明3に係る特許出願には特許法44条2項の適用がなく,分割要件違反となる。 したがって,本件発明3に係る特許出願の出願日は,原出願の出願日まで遡及せず,現実の出願日である平成26年11月13日となるところ,本件発明2に係る特許出願の出願公開の公開日は平成25年7月11日であるから,本件発明3の新規性は,本件発明3を下位概念化した本件発明2によって,否定されることになる。 (4) 原告の主張に対する反論この点に関して原告は,2回目以降の第一注文の指値価格をどのようなものにするのかは,当業者において適宜選択・決定すれば足りる事項であると主張する。 しかし,システムが2回目以降の第一注文の指値価格を決定するということは,第3世代のFX取引サービスの提供を意味するのであって,本件明細書等2が開示するような,当該成行注文に基づく指値注文の繰り返しによる イフダンオーダーを繰り返すといった第2世代のFX取引サービスとは,質的に異なるサービスである。 したがって,本件明細書等2に対し,システムが2回目以降の指値の第一注文の指値価格を決定するという構成を追加することは,新たな技術的事項を導入するものであり,新規事項の追加に当たるのであって,上記(3)の①及び②の要件を満たさない。 (5) 以上によれば,本件発明3に係る特許は,特許法29条1項3号に違反してされたものであり,同法123条1項2号によって特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕(1) 分割出願に係る本件発明3は,本件発明2と同様,「顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを繰り返し行うことができ 審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕(1) 分割出願に係る本件発明3は,本件発明2と同様,「顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを繰り返し行うことができて,システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる。」(本件明細書等3の段落【0014】,本件明細書等2の段落【0016】)というものである。そのために,本件発明3は,成行注文で取引を開始し,以後イフダンオーダーを繰り返すことで,細かい利益を繰り返し得ることを可能とする一方で,予想に反して相場が大きく下降してしまった場合には,含み損の拡大を防ぐために,第一注文で購入した金融商品を逆指値注文価格で自動的に売却して,損切りを行うことを可能としたものである。 そして,このような技術思想である本件発明3は,原出願時の本件明細書等2に明示的に記載されているのであり,何ら分割要件に違反するものではない。 (2) この点に関して被告は,本件明細書等2には2回目以降の新規指値注文の価格を任意の価格にできるという記載がないことを指摘する。 しかし,2回目の新規指値注文の価格は,上記(1)の本件発明2の技術思 想とは直接の関係がなく,当業者としてはその実施態様に応じて適宜選択・決定すれば足りるものである。 したがって,この点に関して「任意の価格で良い」などと明示的に記載されていなくとも,当業者において適宜選択・決定すれば足りる事項にすぎない以上,これにより本件発明3が本件明細書等2に記載されていないことにはならない。 18 争点(4)キ(本件発明3についての無効理由(サポート要件違反)の存否)について〔被告の主張〕前記17〔被告の主張〕で引用した本件明細書等2の段落 載されていないことにはならない。 18 争点(4)キ(本件発明3についての無効理由(サポート要件違反)の存否)について〔被告の主張〕前記17〔被告の主張〕で引用した本件明細書等2の段落【0044】及び【0062】並びに【図7】は,本件明細書等3の段落【0042】及び【0060】並びに【図7】に相当する。したがって,上記〔被告の主張〕で引用した原告の主張を前提とすると,構成要件3F-2の「前記指値注文」は,本件明細書等3に記載されていない。また,原告の主張を前提とする構成要件3F-2の「前記指値注文」は,当業者といえども,本件明細書等3から導き出すことができない。 したがって,本件発明3に係る特許は,特許法36条6項1号所定のサポート要件を充たしておらず,同法123条1項4号によって特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕前記17〔原告の主張〕において主張したところと同様に,2回目の新規指値注文の価格は,本件発明3の技術思想とは直接の関係がなく,当業者が適宜選択・決定すれば足りる。 したがって,この点に関する明示的な記載が本件明細書等3にないからといって,本件発明3が本件明細書等3の発明の詳細な説明に記載されていないなどとはいえない。 第4 当裁判所の判断 1 本件各発明の意義(1) 本件明細書等1本件明細書等1には,以下の記載がある。 ア技術分野・「本発明は,外国為替等,金融商品の取引を管理,支援する技術に関する。」(段落【0001】)イ背景技術・「外国為替等の金融商品の取引方法として,注文時の価格で取引を行う成行注文の他に,指値注文が知られている。この指値注文とは,予め顧客から売買値段の指定を受ける注文形態のことであり,金融商品の取扱業者は対象 替等の金融商品の取引方法として,注文時の価格で取引を行う成行注文の他に,指値注文が知られている。この指値注文とは,予め顧客から売買値段の指定を受ける注文形態のことであり,金融商品の取扱業者は対象となる金融商品が指定された金額まで下がったときに当該金融商品の買い注文を行い,あるいは,指定された金額まで上がったときに当該金融商品の売り注文を行う。従来,この金融商品の指値注文をコンピュータシステムを用いて行う発明が知られている(例えば,特許文献1参照)。」(段落【0002】)ウ発明が解決しようとする課題・「しかし,金融商品の価格は常に不規則に変動し,正確に予測できない。そのため,指値注文の場合,当該金融商品の価格が予め指定した金額まで下降(又は上昇)する直前で上昇(又は下降)してしまう場合や,あるいは,予め指定した金額よりも下降(又は上昇)してしまい,顧客が実質的な不利益を被る恐れがある。そして,上記特許文献1に記載の発明によっては,このような不利益の恐れを回避できないという問題がある。」(段落【0004】)・「さらに,指値注文において注文件数の極端な増大や注文キャンセルの頻発が起こった場合,金融商品の取扱業者も業務の煩雑化や事実上の 損害の発生を被る恐れがある。特に取扱対象の金融商品が外国為替の場合,顧客と銀行とを仲介する取扱業者が銀行に事実上の損害を与えてしまい,銀行からの信用を失う恐れがある。従って,指値注文による取引を行う場合,金融商品の取扱業者の被るリスクを回避することにも留意する必要があるが,上記特許文献1に記載の発明においては,当該取扱業者のリスクも回避できないという問題がある。」(段落【0005】)・「本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり,金融商品の指値注文における金融商品の取扱業者及び 載の発明においては,当該取扱業者のリスクも回避できないという問題がある。」(段落【0005】)・「本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり,金融商品の指値注文における金融商品の取扱業者及び顧客の不利益を回避し,システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく指値注文による取引を効率的かつ円滑に行うことができる金融商品取引管理方法を提供することを課題としている。」(段落【0006】)エ発明の効果・「請求項1,及び請求項2に記載の発明によれば,金融商品取引管理方法においては,金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手順を有し,注文情報生成手順においては,一の売買注文申込情報に基づいて,同一種類の金融商品を複数の価格について指値注文する注文情報からなる注文情報群を生成することにより,金融商品を売買する際,一の注文手続きを行うことで,同一種類の金融商品を複数の価格にわたって一度に注文できる。これにより,顧客のリスクを軽減させうる指値注文を一の注文手続きにより簡易に行うことができ,顧客のシステム利用の利便性を向上させることができる。これにより,金融商品の指値注文における金融商品の取扱業者及び顧客の不利益を回避し,システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく指値注文による取引を効率的かつ円滑に行うことができる。」(段落【0017】)・「請求項1,及び請求項2に記載の発明によれば,一の売買注文申込 情報に基づいて生成されたそれぞれの注文情報群について,有効な注文である第一注文の第一注文価格と金融商品の相場価格とが一致し,次いで有効な注文である第二注文の第二注文価格と相場価格とが一致することで第一注文と第二注文とが約定した場合,次の注文情報群の第一注 注文である第一注文の第一注文価格と金融商品の相場価格とが一致し,次いで有効な注文である第二注文の第二注文価格と相場価格とが一致することで第一注文と第二注文とが約定した場合,次の注文情報群の第一注文情報を有効とし,約定した第一注文と同じ第一注文価格における第一注文の約定と,約定した第二注文と同じ前記第二注文価格における前記第二注文の約定とを繰り返し行わせるように設定することにより,第一注文と第二注文とが約定した後も,当該約定した注文情報群による指値注文のイフダンオーダーを繰り返し行うことが可能になる。これにより,金融商品の指値注文における金融商品の取扱業者及び顧客の不利益を回避し,システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく指値注文による取引を効率的かつ円滑に行うことができる。」(段落【0018】)(2) 本件明細書等2本件明細書等2には,以下の記載がある。 ア技術分野・「本発明は,外国為替等,金融商品の取引を管理,支援する技術に関する。」(段落【0001】)イ背景技術・「外国為替等の金融商品の取引方法としては,成行注文と指値注文とが知られている。成行注文とは,注文時の価格で取引を行う注文形態である。一方,指値注文とは,予め顧客から売買値段の指定を受けておき,その金融商品の価格が指定された価格になったときに取引を行う注文形態である。通常,指値注文の場合,金融商品の取扱業者は対象となる金融商品が指定された金額まで下がったときに当該金融商品の買い注文を行い,あるいは,指定された金額まで上がったときに当該金融商品の売 り注文を行う。従来,この金融商品の指値注文をコンピュータシステムを用いて行う発明が知られている(例えば,特許文献1参照)。」(段落【0002】)ウ発明が解決しようとする課題 の売 り注文を行う。従来,この金融商品の指値注文をコンピュータシステムを用いて行う発明が知られている(例えば,特許文献1参照)。」(段落【0002】)ウ発明が解決しようとする課題・「ここで,金融商品の指値注文においては,イフダンオーダーが行われることも多い。本願明細書において,イフダンオーダーとは,順位のある2つの注文を同時に出し,第一順位の注文(以下「第一注文」と称する。)が成立したら,自動的に第二順位の注文(以下「第二注文」と称する。)が有効になる注文形式のことを言う。実際の金融商品取引においては,一の顧客が特定の金融商品について複数のイフダンオーダーを並行して行う場合もある。」(段落【0004】)・「これに対して,特許文献1のシステムには,イフダンオーダーの指値注文に対応できないという問題がある。また,特許文献1のシステムには,利用客が複数のイフダンオーダーを並行して行いたい場合には,それぞれのイフダンオーダーを個別に注文していかなければならず,顧客の注文手続が煩雑になるという問題がある。」(段落【0005】)・「一方,金融商品の相場が従来の相場よりも大きく変動してしまい当面回復の見込みがない場合には,当該金融商品を所持する取引者は,損害を最小限に留めるべく当該金融商品の売却を望む場合が多い。しかし,特許文献1のシステムでは,利用客は,指値注文の買い注文によって取得した金融商品を将来の相場の状況に応じて自動的に売却することはできず,またイフダンオーダーを相場の状況に応じて自動的に中止させることができないという問題がある。」(段落【0006】)・「さらに,特許文献1のシステムには,成行注文でイフダンオーダーを行いたい場合に対応できないという問題もある。」(段落【0007】) ・「本発 う問題がある。」(段落【0006】)・「さらに,特許文献1のシステムには,成行注文でイフダンオーダーを行いたい場合に対応できないという問題もある。」(段落【0007】) ・「本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり,金融商品の成行注文において,システム利用客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを行うことができ,また将来の相場の状況に応じてイフダンオーダーを自動的に中止させることができて,システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる金融商品取引管理装置を提供することを課題としている。」(段落【0008】)エ課題を解決するための手段・「かかる課題を達成するために,請求項1に記載の発明は,金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって,前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,該注文情報生成手段は,一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,売買取引開始時に,前記第一注文情報に基づく成行注文を行うとともに,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文を有効とし,前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格 記第二注文情報に基づく指値注文を有効とし,前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後 の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせることを特徴とする。」(段落【0009】)オ発明の効果・「請求項1,請求項6に記載の発明によれば,金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,注文入力受付手段が受け付けた売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,注文情報生成手段は,一の売買注文申込情報に基づいて,所定の金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,金融商品の売り注文または買い注文の他方を逆指値で行う逆指値注文情報を含む注文情報群を複数回生成し,売買取引開始時に,第一注文情報に基づく成行注文を行うとともに,注文情報群の第二注文情報に基づく指値注文を有効とし,第二注文情報に基づく指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の第一注文情報に基づく指値注文を有効にし,第一注文情報に基づく指値注文が約定されたときに,第一注文情報に基づく指値注文を停止するとともに,注文情報群の第二注文情報に基づく指値注文を有効にし,以後,第一注文情報に基づく指値注文の約定と,第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の第二注 情報に基づく指値注文を停止するとともに,注文情報群の第二注文情報に基づく指値注文を有効にし,以後,第一注文情報に基づく指値注文の約定と,第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の第二注文情報に基づく指値注文の約定とを繰り返し行わせる。これにより,指値注文により金融商品の売買を行う顧客の利便性を向上させつつ,金融商品の指値注文において,システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを繰り返し行うことができて,システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる。」(段落【0016】)カ図面の簡単な説明 ・「・・・【図6】同上金融商品取引管理装置がクライアント端末の表示部に表示させる注文情報群表示画面のイメージ図である。 【図7】同上金融商品取引管理装置における,イフダンオーダーによる指値注文に基づく約定処理を模式的に表したタイムチャートである。・・・」(段落【0022】)・【図6】・【図7】キ発明を実施するための形態・「・・・成行リピートイフダンでは,一回目のイフダンでは,第一注文で買い注文または売り注文の一方を成行で行ったのち,第二注文で買い注文または売り注文の他方を指値で行う。第二注文の指値は,予め指定することとしてもよいし,成行注文の価格等に応じて自動的に設定されることとしても良い。本実施形態では,第二注文は,第一注文とは反対の売買方向であり且つ同じ注文金額となるように,自動的に決定され る。また,第二注文の指値価格は,価格自体を予め指定しても良いが,成行価格との比率または金額差が予め設定された値となるように自動的に決定することもできる。この第二注文の約定の後,指値の第一注文(このとき た,第二注文の指値価格は,価格自体を予め指定しても良いが,成行価格との比率または金額差が予め設定された値となるように自動的に決定することもできる。この第二注文の約定の後,指値の第一注文(このときの指値価格は一回目の成行注文での約定価格とする)と指値の第二注文とからなるイフダンが,複数回繰り返される。・・・」(段落【0044】)・「第一注文51aに基づく成行注文が約定すると,約定情報生成部14はデータベース18中の対応するデータを書き換える。具体的には,注文テーブル181の当該成行注文に関する注文情報である,第一注文51aのデータが削除され,顧客口座情報テーブル182の“amnt”フィールド182aのデータが約定した価格分だけ増減される。ここで,本実施形態の第一注文は,一回目は成行注文で行われるが,二回目以降は指値注文で行われる。このため,約定情報生成部14は,当該成行注文の約定価格を,二回目以降の第一注文の指値価格に設定する。」(段落【0062】)(3) 本件明細書等3本件明細書等3には,以下の記載がある。 ア技術分野,背景技術及び発明が解決しようとする課題本件明細書等2に同じイ発明の効果・「請求項1,請求項6に記載の発明によれば,金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,注文情報生成手段は,一の売買注文申込情報に基づいて,所定の金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,金融商品の売り注 文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,金融商品の売り注文または買い注文の他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注 一方を成行または指値で行う第一注文情報と,金融商品の売り注 文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,金融商品の売り注文または買い注文の他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文を有効とし,成行注文を決済する指値注文が約定されたとき,注文情報群の生成を行うと共に,生成された注文情報群の第一注文情報に基づく指値注文を有効とし,以後,第一注文情報に基づく指値注文の約定と,第一注文情報に基づく指値注文の約定が行われた後の第二注文情報に基づく指値注文の約定と,第二注文情報に基づく指値注文の約定が行われた後の,次の注文情報群の生成とを繰り返し行わせる。これにより,指値注文により金融商品の売買を行う顧客の利便性を向上させつつ,金融商品の指値注文において,システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを繰り返し行うことができて,システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる。」(段落【0014】)ウ図面の簡単な説明本件明細書等2に同じエ発明を実施するための形態・「・・・成行リピートイフダンでは,一回目のイフダンでは,第一注文で買い注文または売り注文の一方を成行で行ったのち,第二注文で買い注文または売り注文の他方を指値で行う。第二注文の指値は,予め指定することとしてもよいし,成行注文の価格等に応じて自動的に設定されることとしても良い。本実施形態では,第二注文は,第一注文とは反対の売買方向であり且つ同じ注文金額となるように,自動的に決定される。また,第二注文の指値価格は,価格自体を予め指定しても良いが,成行価格との比率ま 良い。本実施形態では,第二注文は,第一注文とは反対の売買方向であり且つ同じ注文金額となるように,自動的に決定される。また,第二注文の指値価格は,価格自体を予め指定しても良いが,成行価格との比率または金額差が予め設定された値となるように自動的 に決定することもできる。この第二注文の約定の後,指値の第一注文(このときの指値価格は一回目の成行注文での約定価格とする)と指値の第二注文とからなるイフダンが,複数回繰り返される。・・・」(段落【0042】)・「第一注文51aに基づく成行注文が約定すると,約定情報生成部14はデータベース18中の対応するデータを書き換える。具体的には,注文テーブル181の当該成行注文に関する注文情報である,第一注文51aのデータが削除され,顧客口座情報テーブル182の“amnt”フィールド182aのデータが約定した価格分だけ増減される。ここで,本実施形態の第一注文は,一回目は成行注文で行われるが,二回目以降は指値注文で行われる。このため,約定情報生成部14は,当該成行注文の約定価格を,二回目以降の第一注文の指値価格に設定する。」(段落【0060】)(4) 本件各発明の意義前記第2,2(3)及び(4)並びに上記(1)ないし(3)の各記載によれば,本件各発明の意義は次のとおりである。 ア本件発明1外国為替等の金融商品の取引に関して指値注文を行う場合,従来,金融商品の価格変動によっては顧客が実質的な不利益を被るおそれがあり,また,金融商品の取扱業者が業務の煩雑化や損害の発生等を被るおそれがあった。 本件発明1は,金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手順を有し,注文情報生成手順においては,一の売買注文申込情報に基づいて,同一種 。 本件発明1は,金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手順を有し,注文情報生成手順においては,一の売買注文申込情報に基づいて,同一種類の金融商品を複数の価格について指値注文する注文情報からなる注文情報群を生成するという構成を採用することにより,金融商品を売買する 際,一の注文手続を行うことで,同一種類の金融商品を複数の価格にわたって一度に注文できるものとし,もって,金融商品の指値注文における金融商品の取扱業者及び顧客の不利益を回避するなどの作用効果を奏するものである。 イ本件発明2外国為替等の金融商品の取引に関し,従来のシステムでは,①イフダンオーダーの指値注文に対応できない,②利用客が複数のイフダンオーダーを並行して行いたい場合には,それぞれのイフダンオーダーを個別に注文していかなければならない,③利用客は,指値注文の買い注文によって取得した金融商品を将来の相場の状況に応じて自動的に売却することはできず,またイフダンオーダーを相場の状況に応じて自動的に中止させることができない,④成行注文でイフダンオーダーを行いたい場合に対応できないという問題があった。 本件発明2は,売買取引開始時に,第一注文情報に基づく成行注文を行うとともに,当該注文情報群の第二注文情報に基づく指値注文を有効とし,前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく 注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせるという構成を採用することにより,指値注文における顧客の利便性を向上させつつ,顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを繰り返し行うことができ,システムを利用する顧客の利便性を高めるとともにイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させ るとの作用効果を奏するものである。 ウ本件発明3本件発明3は,上記イの本件発明2の課題に対し,売買取引開始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文を有効とし,成行注文を決済する指値注文が約定されたとき,注文情報群の生成を行うと共に,生成された注文情報群の第一注文情報に基づく指値注文を有効とし,以後,第一注文情報に基づく指値注文の約定と,第一注文情報に基づく指値注文の約定が行われた後の第二注文情報に基づく指値注文の約定と,第二注文情報に基づく指値注文の約定が行われた後の,次の注文情報群の生成とを繰り返し行わせるという構成を採用することにより,本件発明2と同様の作用効果を奏するものである。 2 争点(1)ア(構成要件1Bの「値幅を示す情報」の充足性)について(1) 証拠(甲7,乙4)によれば,被告サービス1においては,①「通貨ペア」,②「注文種類」,③「参考期間」,④「想定変動幅」,⑤「ポジション方向」及び⑥「対象資産(円)」を顧客からの入力情報として受信して受け付け,これらの情報から複数個の「注文情報群」(「新規指定レート」(例:119.07円で買う)及び「利食いレ 幅」,⑤「ポジション方向」及び⑥「対象資産(円)」を顧客からの入力情報として受信して受け付け,これらの情報から複数個の「注文情報群」(「新規指定レート」(例:119.07円で買う)及び「利食いレート」(例:120.24円で売る)の組合せ)を自動的に算出するものであって,顧客がこれをそのまま追認するか,顧客がこれを適宜変更した後に,「注文」アイコンをクリック(タップ)することにより,取引が開始するものと認められる。 そして,上記各証拠によれば,被告サービス1では,「注文情報群」を算出するに当たり,対象の通貨を所定の価格で買(売)った後,相場が予想に反して変動した場合に,追加で対象の通貨を買う(売る)場合の値幅情報を売買注文申込情報として入力する欄はないと認められるのであって,それゆえ,値幅情報を売買注文申込情報として受信して受け付けてはいないというべきである。 したがって,被告サービス1では,構成要件1Bの「値幅を示す情報」を「売買注文申込情報として受信して受け付け」ていないものと認めるのが相当である。 (2) 原告の主張に対する判断この点に関して原告は,本件発明1で金融商品取引管理システムが受信して受け付けるのは「値幅を示す情報」であるから,その内容は値幅の数値そのものに限られず,値幅を「示す」情報であれば足りるとした上,被告サービス1においては,顧客の入力情報のうち④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」の値により「値幅」(ポジション間隔)が示されているから,④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」の数値が構成要件1Bにいう「値幅を示す情報」に当たると主張する。 しかし,「示す」とは,「物事が見る人・聞く人にある事柄をわからせる。 表示する。意味する。」(広辞苑第6版1287頁〔乙9〕)という意味である 1Bにいう「値幅を示す情報」に当たると主張する。 しかし,「示す」とは,「物事が見る人・聞く人にある事柄をわからせる。 表示する。意味する。」(広辞苑第6版1287頁〔乙9〕)という意味であるから,「値幅を示す情報」とは,見る人に対して値幅を分からせ,表示ないし意味する情報をいうと認められる。 そして,前記第2,2(7)によれば,④「想定変動幅」とは「通貨ペア」の為替レートの変動幅の予測値を表示・入力する欄にすぎず,⑥「対象資産(円)」とは取引に使用する資産(日本円)を入力する欄にすぎないのであって,いずれもこれらの数値から直ちに値幅そのものを理解することはできず,これらの数値が値幅を表示ないし意味しているということもできない。 原告は,被告サーバにおいて④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」の数値から値幅を決定していることを指摘するが,仮にそうであるとしても,④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」の数値を見ただけで直ちに値幅が分かるということにはならないのであって,この点をもって④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」の数値自体が「値幅を示す情報」に該当するというのは困難である。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (3) 以上によれば,被告サービス1は構成要件1Bの「値幅を示す情報」を充足せず,争点(1)アにおける原告の主張は理由がない。 3 争点(1)イ(構成要件1Bの「利幅を示す情報」の充足性)について(1) 前記2(1)で認定したとおり,被告サービス1においては,①「通貨ペア」,②「注文種類」,③「参考期間」,④「想定変動幅」,⑤「ポジション方向」及び⑥「対象資産(円)」を顧客からの入力情報として受信して受け付け,これらの情報から複数個の「注文情報群」を自動的に算出するものであ 種類」,③「参考期間」,④「想定変動幅」,⑤「ポジション方向」及び⑥「対象資産(円)」を顧客からの入力情報として受信して受け付け,これらの情報から複数個の「注文情報群」を自動的に算出するものであって,顧客がこれをそのまま追認するか,顧客がこれを適宜変更した後に,「注文」アイコンをクリック(タップ)することにより,取引が開始する。 すなわち,被告サービス1では,「注文情報群」を算出するにあたり,対象の通貨を所定の価格で買(売)った後に他の価格で売る(買う)場合の「利幅」情報を売買注文申込情報として入力する欄がなく,それゆえ,「利幅」を売買注文申込情報として受信して受け付けていない。 したがって,被告サービス1では,構成要件1Bの「利幅を示す情報」を「売買注文申込情報として受信して受け付け」ていないものというべきである。 (2) 原告の主張に対する判断この点に関して原告は,争点(1)アと同様,本件発明1で金融商品取引管理システムが受信して受け付けるのは「利幅を示す情報」であるから,その内容は利幅の数値そのものに限られず,利幅を「示す」情報であれば足りるとした上,被告サービス1においては,顧客の入力情報のうち,④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」の値により「利幅」が示されているから,④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」の数値が構成要件1Bにいう「利幅を示す情報」に当たると主張する。 しかし,前記2(2)で述べたところと同様に,④「想定変動幅」とは「通貨ペア」の為替レートの変動幅の予測値を表示・入力する欄にすぎず,⑥「対象資産(円)」とは取引に使用する資産(日本円)を入力する欄にすぎないのであって,いずれもこれらの数値から直ちに利幅を理解したり,これらの数値が利幅を表示ないし意味したりするということはでき ⑥「対象資産(円)」とは取引に使用する資産(日本円)を入力する欄にすぎないのであって,いずれもこれらの数値から直ちに利幅を理解したり,これらの数値が利幅を表示ないし意味したりするということはできない。原告は,被告サーバにおいて④「想定変動幅」及び⑥「対象資産(円)」の数値から利幅を決定していることを指摘するが,前記2(2)のとおり,原告の主張は採用することができない。 (3) 以上によれば,被告サービス1は構成要件1Bの「利幅を示す情報」を充足せず,争点(1)イにおける原告の主張は理由がない。 4 争点(1)ウ(構成要件1C,1E,1F,1G及び1Hの充足性)について前記2及び3で説示したとおり,被告サービス1は構成要件1Bの「値幅を示す情報」及び「利幅を示す情報」がなく,構成要件1Bを充足しない。したがって,これを前提とする構成要件1C,1E,1F,1G及び1Hについても,以下のとおりいずれも充足しない。 (1) 構成要件1C被告サービス1には,少なくとも構成要件1Bで規定される「該注文入力受付手順」及び「前記売買注文申込情報」がないので,これらに基づいて生成される構成要件1Cの「注文情報」及び「注文情報生成手順」も存在しない。 したがって,被告サービス1は,構成要件1Cを充足しない。 (2) 構成要件1E被告サービス1には,少なくとも構成要件1Bで規定される「前記売買注文申込情報」及び「前記利幅」がないので,これらに基づいて算出される構成要件1Eの「前記他の注文価格」も存在せず,「第二注文価格算出手順」も存在しない。 したがって,被告サービス1は,構成要件1Eを充足しない。 (3) 構成要件1Fまず,被告サービス1には,構成要件1Cで規定される「前記注文情報生成手段」がないので,この い。 したがって,被告サービス1は,構成要件1Eを充足しない。 (3) 構成要件1Fまず,被告サービス1には,構成要件1Cで規定される「前記注文情報生成手段」がないので,この存在を前提とする構成要件1Fをそもそも充足しない。 また,被告サービス1には,構成要件1Bで規定される「前記売買注文申込情報」がないので,これに基づいて構成要件1Fの「前記注文価格」や「注文情報群」等を設定ないし生成しない。すなわち,被告サービス1は,「前記売買注文申込情報」の存在を前提とする「前記売買注文申込情報に基づいて,・・・それぞれの前記注文価格を設定し,」を充足せず,そうであるから,「該設定されたそれぞれの前記注文価格としての・・・からなる注文情報群を複数生成し,」も充足しない。 さらに,被告サービス1には,少なくとも構成要件1Bで規定される「前記値幅」及び「前記利幅」がないので,これらの存在を前提とする「該一の最高価格より安値側に,それぞれの値幅が前記売買注文申込情報に含まれる前記値幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定」することもないし,「該他の最高価格より安値側に,それぞれの前記第一注文に対し,購入又は販売が行われた前記第一注文に基づいて販売又は購入が行われたときの前記利幅が前記売買注文申込情報における前記利幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定」することもあり得ない。 そして,被告サービス1には,構成要件1Eで規定される「前記他の注文価格を算出するための第二注文価格算出手順」がないので,「前記第二注文価格算出手順」の存在を前提とする「前記第二注文価格算出手順において算出された前記他の価格を他の最高価格として設定し,・・・注文情報群を複数生成し,」を充足しない。 したがって,被告サービス1は,構成要件1 」の存在を前提とする「前記第二注文価格算出手順において算出された前記他の価格を他の最高価格として設定し,・・・注文情報群を複数生成し,」を充足しない。 したがって,被告サービス1は,構成要件1Fを充足しない。 (4) 構成要件1G上記のとおり,被告サービス1は構成要件1Fを充足しないので,被告サービス1が構成要件1Fを充足することを前提としている構成要件1Gも充足しない。 (5) 構成要件1H被告サービス1には,構成要件1Fで規定される「前記注文情報群」がないので,構成要件1Hの「一の前記売買注文申込情報に基づいて生成されたそれぞれの前記注文情報群について,・・・繰り返し行わせるように設定することを特徴とする,」を充足しない。 したがって,被告サービス1は,構成要件1Hを充足しない。 5 争点(1)エ(構成要件1Bの「値幅を示す情報」及び「利幅を示す情報」についての均等侵害の成否)について(1) 均等侵害特許請求の範囲に記載された構成中に他人が製造等する製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という。)と異なる部分が存する場合であっても,①その部分が特許発明の本質的部分ではなく(以下「第1要件」という。),②その部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって(以下「第2要件」という。),③そのように置き換えることに,特許発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり(以下「第3要件」という。),④対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく(以下「第4要件」という。),かつ たものであり(以下「第3要件」という。),④対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく(以下「第4要件」という。),かつ,⑤対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき(以下「第5要件」という。)は,対象製品等は,特許請求の範囲 に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁平成6年(オ)第1083号平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)。 (2) 相違点本件発明1の構成要件1Bにおいて,顧客の入力に係る情報として,「注文入力受付手順」で「売買注文申込情報として受信して受け付ける」と規定されているものは,以下の五つの情報である(当事者間に争いがない。)。 1B-1:売買を希望する前記金融商品の種類を選択するための情報1B-2:前記金融商品の売買注文における,注文価格ごとの注文金額を示す情報1B-3:前記金融商品の販売注文価格又は購入注文価格としての一の注文価格を示す情報1B-4:一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で販売した後に他の価格で購入した場合の利幅又は一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で購入した後に他の注文価格で販売した場合の利幅を示す情報1B-5:前記注文が複数存在する場合における該注文同士の値幅を示す情報これに対し,被告サービス1において顧客の入力に係る情報は,①「通貨ペア」,②「注文種類」,③「参考期間」,④「想定変動幅」,⑤「ポジション方向」,⑥「対象資産(円)」,⑦「数量」及び⑧「注文情報群」という合計八つの情報である(前記第2,2 に係る情報は,①「通貨ペア」,②「注文種類」,③「参考期間」,④「想定変動幅」,⑤「ポジション方向」,⑥「対象資産(円)」,⑦「数量」及び⑧「注文情報群」という合計八つの情報である(前記第2,2(7))。 そして,このうち①「通貨ペア」は構成要件1B-1に,⑦「数量」は構成要件1B-2に,⑧「注文情報群」のうち「新規指定レート」は構成要件1B-3に該当するものと認められる(被告も明らかに争わない。)。 したがって,顧客の入力に係る情報に関する本件発明1(構成要件1B) と被告サービス1の相違点は,本件発明1では構成要件1B-4(利幅を示す情報)及び構成要件1B-5(値幅を示す情報)を入力するのに対し,被告サービス1では②「注文種類」ないし⑥「対象資産(円)」を入力する点にあるものというべきである。 そこで,以下,被告サービス1において②「注文種類」ないし⑥「対象資産(円)」を入力することが,本件発明1の構成要件1B-4(利幅を示す情報)及び構成要件1B-5(値幅を示す情報)を入力する場合と均等なものといえるかについて検討する。 (3) 第1要件(非本質的部分)についてア特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきである。 そして,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許発明の課題及び解決手段とその効果を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきである。すなわち,特許発明の実質的価値は,その技術分野における従来技術と比較した貢献の程度に応じて定められることからすれば 思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきである。すなわち,特許発明の実質的価値は,その技術分野における従来技術と比較した貢献の程度に応じて定められることからすれば,特許発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載,特に明細書記載の従来技術との比較から認定されるべきである。 ただし,明細書に従来技術が解決できなかった課題として記載されているところが,出願時の従来技術に照らして客観的に見て不十分な場合には,明細書に記載されていない従来技術も参酌して,当該特許発明の従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が認定されるべきである。 また,第1要件の判断,すなわち対象製品等との相違部分が非本質的 部分であるかどうかを判断する際には,上記のとおり確定される特許発明の本質的部分を対象製品等が共通に備えているかどうかを判断し,これを備えていると認められる場合には,相違部分は本質的部分ではないと判断すべきであり,対象製品等に,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分以外で相違する部分があるとしても,そのことは第1要件の充足を否定する理由とはならないと解すべきである(知的財産高等裁判所平成28年3月25日(平成27年(ネ)第10014号)特別部判決参照)。 イ原告は,本件発明1の本質的部分は「一の注文手続で,同一種類の金融商品について,複数の価格にわたって一度に注文を行うこと」及び「その注文と約定を繰り返すようにしたこと」にとどまると主張する。 この点,確かに,本件明細書等1には,本件発明1の課題として,「本発明は・・・システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく指値注文による取引を効率的かつ円滑に行うことができる金融商品取引管理方法を提供すること 明細書等1には,本件発明1の課題として,「本発明は・・・システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく指値注文による取引を効率的かつ円滑に行うことができる金融商品取引管理方法を提供することを課題としている。」(段落【0006】)との記載がある。この記載に,「請求項1・・・に記載の発明によれば,・・・一の注文手続きを行うことで,同一種類の金融商品を複数の価格にわたって一度に注文できる。」(段落【0017】),「請求項1・・・に記載の発明によれば,・・・約定した第一注文と同じ第一注文価格における第一注文の約定と,約定した第二注文と同じ前記第二注文価格における前記第二注文の約定とを繰り返し行わせるように設定することにより,第一注文と第二注文とが約定した後も,当該約定した注文情報群による指値注文のイフダンオーダーを繰り返し行うことが可能になる。」(段落【0018】)との各記載も併せれば,原告の主張する「一の注文手続で,同一種類の金融商品について,複数の価格にわたって一度に注文を行うこと」及び「その注文と約定を繰り返すようにした こと」との部分が本件発明1の本質的部分,すなわち従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であるように見えなくもない。 しかし,本件発明1に係る特許(本件特許1)の出願時の従来技術に照らせば,本件明細書等1に本件発明1の課題として記載された「システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく指値注文による取引を効率的かつ円滑に行うことができる金融商品取引管理方法を提供すること」(段落【0006】)は,本件発明1の課題の上位概念を記載したものにすぎず,客観的に見てなお不十分であるといわざるを得ない。 以下,詳述する。 ウ本件特許1に係る出願の原出願日(平成19年12月19日) 【0006】)は,本件発明1の課題の上位概念を記載したものにすぎず,客観的に見てなお不十分であるといわざるを得ない。 以下,詳述する。 ウ本件特許1に係る出願の原出願日(平成19年12月19日)よりも前に公開された文献である引用文献1には,以下の記載がある。 (ア) 発明の属する技術分野・「この発明は,データ通信ネットワークを通じて株,債券,物件,先物,オプション,指数,外国為替などを自動売買する方法およびシステムに係り,より詳しくは,投資家のあらかじめの特定条件に応じてコンピュータが自動で売買を発注する方法およびシステムに関するものである。」(段落【0001】)(イ) 発明が解決しようとする課題・「一方で,多くの株投資家は,自己が投資を望んでいる特定株の暫定的な希望買取り値および買取り量,希望売込み値および売込み量などについて思案に暮れている。ところで,前記株の現在価が自己の望む売込み値あるいは買取り値に到達しているかについて分かるためには,常時株市場の株価の変動をにらんでいなければならない。とはいえ,かように株価の変動を続けざまに見極めることはたやすい業ではない。」(段落【0015】) (ウ) 発明の実施の形態・「次に,図5~7を参照してこの発明の実施態様3について述べることにする。前記実施態様1および2は,設定された自動売買条件に応じて買取りおよび売込み中の一つを自動で発注することを特徴としているが,この発明の実施態様3は後述するごとく,設定された自動売買条件に応じて買取りおよび売込みが同時に発注できることを特徴としいる〔判決注:原文ママ〕。」(段落【0043】)・「図5に示すように,実施態様3に沿ってシステムが開始され段階(500),段階(502)で自動売買条件を設定する。自動売買条件の ことを特徴としいる〔判決注:原文ママ〕。」(段落【0043】)・「図5に示すように,実施態様3に沿ってシステムが開始され段階(500),段階(502)で自動売買条件を設定する。自動売買条件の設定は,例えば,図6のごときインターフェースをユーザーに提供することによって行われることができる。図6において,自動売買条件の設定部を除く残余部分は図4の参照番号(401)~(410)で表示された部分と同一である。ただし,この例おいては,DEF株式会社の10,000株を持ち合わせており,最初の売買条件としてDEF株式会社の100株を株あて10,000ウォンで売込むものと例示した。」(段落【0044】)・【図6】 ・「自動売買条件で基準量(602)は,毎度の自動売買時に売込みおよび買取りの基準量を設定する。欄(604)には株売買時に要される証券会社の歩合(および税金)の料率を書き込む。これは必須的なものではないが,株を売買した後の収益率の勘定に足しになれる。自動売買で買取り値および売込み量の欄(606,608,610,612)に設定する。買取り値は毎度の売込み値より所定割合の安値で設定するか,所定額の低値で設定することができる。図6おいては売込み値より毎度500ウォンと安値を自動買取り値として設定した。 自動買取り量もまた欄(610)で定量あるいは定率で設定することができる。欄(612)が空欄の場合,毎度の自動買取り発注は基準量の設定値(602)のごとく100株となる。欄(612)には+および-符号が使用されうるし,+記号が使用された場合,定量あるいは定率分だけ自動買取り発注量が増し,-記号が使用された場合は定量あるいは定率分だけ減るようになる。」(段落【0045】)・「自動売込み条件もまた同一の方式によって欄(614, た場合,定量あるいは定率分だけ自動買取り発注量が増し,-記号が使用された場合は定量あるいは定率分だけ減るようになる。」(段落【0045】)・「自動売込み条件もまた同一の方式によって欄(614,616,618,620)で設定する。この発明の実施態様においては最初の売込み値より毎度1,000ウォンずつ値上がりあるいは値下がりした値段で100株を自動売込むものと設定することにした。加重売買条件もまた欄(622,624)で定量あるいは定率として設定することができる。加重売買条件の意味については後述することにする。」(段落【0046】)・「ユーザーは欄(626)で目標収益率又は収益率を設定することができる。目標収益率が設定されないと,ユーザーが立ち入って自動売買を中止させないかぎり自動売買は継続される。ところで,毎度にわたって自動売買時にコンピュータが収益率を計算するということは決して容易なものでないことから,所定の収益率を達成した場合は,自 動売買を自動的に中止するようにするのが望ましい。」(段落【0047】)・「ユーザーは売買テーブル申込みボタン(628)を使用して図7のごとき自動売買テーブルを作ることができる。ところで,自動売買テーブルは仮想的なものでありうるし,視覚的なテーブルの作成は選択的なものである。つまり,この発明に従うシステムが自動売買テーブル(700)を作成するための公式あるいはロジックを記憶させていることだけによっても,この発明に従う実施態様3は実行されることができる。」(段落【0048】)・【図7】・「図7の自動売買テーブル(700)は,図6の自動売買の設定条件によって作られることができる。自動売買テーブル(700)売込み値の縦列(714)でそれぞれの横列の売込み値が設定されていると ・「図7の自動売買テーブル(700)は,図6の自動売買の設定条件によって作られることができる。自動売買テーブル(700)売込み値の縦列(714)でそれぞれの横列の売込み値が設定されていると おり,1,000ウォンずつの隔りをもつように作られ,買取り値の縦列(712)のそれぞれの買取り値は同じ横列の売込み値より500ウォンずつ安値で作られる。自動売買テーブル(700)において,(702)~(710)のごとき横列は最初の売買価を基準に上下にわたって適切な数だけ作られる。」(段落【0049】)・「図5を参照して,最初の売込みが成功すると,早急にあらかじめ設定された自動売買条件による自動売買テーブルに応じて第1回目の自動買取りと自動売込みが発注される(段階512)。実施態様3は“同一の株を安値で買取って高値で売り込むよう”に設計されている。 したがって,最初の売込み発注が約定されると,自動売買テーブル(700)において,約定された最初の売込み値(10,000ウォン)より真下の安値の買取り(つまり,9,500ウォンの買取り値で100株の買取り)を発注し(図7の横列(706)),約定された売込み値より真上の高値の売込み(つまり,11,000ウォンの売込み値で100株の売込み)を発注する(図7の横列(704)の売込み欄参照)。かかる売込みおよび買取り発注は口座残高および持ち株数の範囲内にあることから,段階(506)および(508)でエラーは発生しない。」(段落【0051】)・「第1回目の自動売買発注中に買取り発注が発注とおりに約定された場合には,自動売買テーブル(700)で約定された発注価に隣合う買取りおよび売込みが発注される。前述のごとく,実施態様3は寸前の約定価より“安値”で買取り,“高値で売り込む”ように設計された れた場合には,自動売買テーブル(700)で約定された発注価に隣合う買取りおよび売込みが発注される。前述のごとく,実施態様3は寸前の約定価より“安値”で買取り,“高値で売り込む”ように設計されたものであることから,第2回目の自動売買は,図5の段階(514,516,506)および(508)を径て〔判決注:原文ママ〕買取り(8,500ウォンで100株の買取り,図7の横列(708)参照)および売込み(10,000ウォンで100株の売込み)が発注 される。第2回目の自動売買で売込み発注が約定された場合,第3回目の自動発注は約定された発注価(第2回目の10,000ウォン)に隣り合う買取り(9,500ウォンで100株の買取り)および売込み(11,000ウォンで100株の売込み)が自動的に発注される。つまり,毎度の自動売買では自動売買テーブル(700)での約定価より真下の安値の買取りおよび約定価より真上の高値の売込みが発注される。」(段落【0052】)エ以上の記載によれば,引用文献1には,自動売買条件に従って複数の買取り値及び売込み値を設定し,発注が約定すると自動売買テーブルに応じて自動買取りと自動売込みが発注され,この約定と発注が繰り返されるという技術が開示されているというべきである。 そうすると,本件発明1に係る特許請求の範囲の記載のうち,原告がその本質的部分として主張する「一の注文手続で,同一種類の金融商品について,複数の価格にわたって一度に注文を行うこと」との部分及び「その注文と約定を繰り返すようにしたこと」との部分は,いずれも引用文献1に開示されていることになるから,上記各部分をもって従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であるということはできない。 オそもそも,本件発明1に係る特許請求の範 れも引用文献1に開示されていることになるから,上記各部分をもって従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であるということはできない。 オそもそも,本件発明1に係る特許請求の範囲は前記第2,2(3)及び(4)アのとおりであり,本件明細書等1の記載は前記1(1)のとおりである。 これによれば,本件発明1が解決しようとする課題は,金融商品の価格は常に不規則に変動し,正確に予測することができないため,指値注文の場合,当該金融商品の価格があらかじめ指定した金額まで下降(又は上昇)する直前で上昇(又は下降)してしまう場合や,あらかじめ指定した金額よりも下降(又は上昇)してしまい,顧客が実質的な不利益 を被るおそれがあるところ,従来技術によればこのような不利益のおそれを回避することができず(本件明細書等1の段落【0004】),さらに,指値注文において注文件数の極端な増大や注文キャンセルの頻発が起こった場合,金融商品の取扱業者も業務の煩雑化や事実上の損害の発生を被るおそれがあり,特に取扱対象の金融商品が外国為替の場合,顧客と銀行とを仲介する取扱業者が銀行に事実上の損害を与えてしまい,銀行からの信用を失うおそれがあるのであって,指値注文による取引を行う場合,金融商品の取扱業者のリスクも回避することができない(同段落【0005】)というところにある。 そこで,「請求項1・・・の発明」によれば「売買注文申込情報」に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手順を有し,注文情報生成手順においては「一の売買注文申込情報」に基づいて注文情報群を生成することにより,金融商品を売買する際,一の注文手続きを行うことで,同一種類の金融商品を複数の価格にわたって一度に注文できるとしたものであり,これにより,顧客のリスクを 」に基づいて注文情報群を生成することにより,金融商品を売買する際,一の注文手続きを行うことで,同一種類の金融商品を複数の価格にわたって一度に注文できるとしたものであり,これにより,顧客のリスクを軽減させ得る指値注文を一の注文手続により簡易に行うことができ,顧客のシステム利用の利便性を向上させることができるほか,金融商品の指値注文における金融商品の取扱業者及び顧客の不利益を回避し,システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく指値注文による取引を効率的かつ円滑に行うことができるというのである(同段落【0017】)。 以上の各記載に,上記エのとおり,引用文献1には既に「一の注文手続で,同一種類の金融商品について,複数の価格にわたって一度に注文を行う」という技術が開示されていたことも併せれば,本件発明1は,単に一の注文手続で複数の価格にわたって一度に注文を行うだけではなく,「請求項1・・・の発明」による「売買注文申込情報」,すなわち,「金融商品の種類」(構成要件1B-1),「注文価格ごとの注文金額」 (構成要件1B-2),「注文価格」(構成要件1B-3),「利幅」(構成要件1B-4)及び「値幅」(構成要件1B-5)を示す各情報に基づいて,同一種類の金融商品を複数の価格について指値注文する注文情報からなる注文情報群を生成することにより,金融商品を売買する際,一の注文手続きを行うことで,同一種類の金融商品を複数の価格にわたって一度に注文できるという点にその本質的部分があるというべきである。 カこれを被告サービス1についてみると,被告サービス1では「利幅」(構成要件1B-4)及び「値幅」(構成要件1B-5)を示す情報が入力されないのであるから,本件発明1と被告サービス1の相違点が特許発明の本質的部分ではないというこ ると,被告サービス1では「利幅」(構成要件1B-4)及び「値幅」(構成要件1B-5)を示す情報が入力されないのであるから,本件発明1と被告サービス1の相違点が特許発明の本質的部分ではないということはできない。 したがって,被告サービス1については,均等の要件のうち第1要件を満たさない。 (4) 第2要件(置換可能性)について次に,均等の第2要件について検討する。 原告は,本件発明1の課題は「専門的な知識がなく,必ずしも正確に相場変動を予測することができなくても,また,常に相場に付ききりとならなくても,FX取引により所望の利益を得ること」にある旨主張している。 しかし,仮に本件発明1の課題が原告の主張するところにあるとしても,本件発明1と被告サービス1とは,課題解決原理が全く異なる。 すなわち,本件発明1では,顧客に利幅(構成要件1B-4)及び値幅(構成要件1B-5)をはじめとして全ての注文を直接的かつ一義的に導き出すに足りる情報を入力させた上,これにより,買いの指値注文及び売りの指値注文からなる注文のペアを複数生成させ,この複数の注文のペアからなる注文を行うことで,上記課題を解決している。 一方,被告サービス1では,顧客が③「参考期間」を選択しさえすれば, ④「想定変動幅」を提案し,専門的な知識が必要である利幅(構成要件1B-4)及び値幅(構成要件1B-5)を顧客に入力させることなく,複数の注文のペアからなる注文を行うことで,上記課題を解決している。すなわち,被告サービス1では,顧客に全ての注文を直接的かつ一義的に決定させるのではなく,顧客には専門的な知識が必要とされる情報を入力させないまま,注文を行わせるものである。 このように,本件発明1と被告サービス1は,金融商品の相場変動を正確に予測する 義的に決定させるのではなく,顧客には専門的な知識が必要とされる情報を入力させないまま,注文を行わせるものである。 このように,本件発明1と被告サービス1は,金融商品の相場変動を正確に予測することができなくてもFX取引による所望の利益を得るという課題を,顧客に利幅(構成要件1B-4)及び値幅(構成要件1B-5)という専門的な知識が必要である情報を入力させることで解決するか(本件発明1),それともこれらの情報を入力させないまま解決するか(被告サービス1)という課題解決原理の違いがあり,そのため作用効果も異なってくるものといわざるを得ない。 したがって,均等の第2要件に関する原告の主張は理由がない。 (5) 第3要件(容易想到性)についてさらに,均等の第3要件について検討する。 ア原告は,甲15公報及び甲17公報並びに他の証券会社の提供した「クイック仕掛け(買いゲリラ100pips)」という機能に照らせば,値幅を直接入力せずに他の情報を入力してこれらの情報から値幅を算出して決定するという構成や,あらかじめ設定された値を用いるという構成は,被告サービス1の提供開始時において既に公知の構成であったと主張するので,以下検討する。 イまず,甲15公報の「要約」欄には,以下の記載がある。 ・「注文情報生成部は,取り引きの上限価格と,取り引きの下限価格と,同時に生成される注文情報群の数とを取得し,取得された値に基づいて,第一注文どうしの価格差が一定となり,第二注文どうしの価格差が一定 となり,かつ,同一の注文情報群に属する第一注文と第二注文との価格差が一定となるように,第一注文及び第二注文の価格をそれぞれ演算する。」また,甲17公報には,以下の記載がある。 ・「前記表示手段における上側の接触位置に対応して表示さ 注文と第二注文との価格差が一定となるように,第一注文及び第二注文の価格をそれぞれ演算する。」また,甲17公報には,以下の記載がある。 ・「前記表示手段における上側の接触位置に対応して表示された前記価格情報に基づいて上限価格を設定すると共に前記表示手段における下側の接触位置に対応して表示された前記価格情報に基づいて下限価格とを設定させると共に,前記注文発注手段に対し,前記上限価格と前記下限価格との間に形成された前記発注価格帯において前記注文情報を発注させることを特徴とする金融商品取引システム。」(【請求項1】)・「前記注文発注手段は,前記任意の発注条件として,前記金融商品の注文個数情報を備え,前記発注価格帯において,前記注文個数情報に基づく複数の前記注文情報を,それぞれの価格差が均等な指値注文を発注するように生成することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一つに記載の金融商品取引システム。」(【請求項7】)・「ポジション・ペアの数は,第一形態注文入力画面33(図8)で注文個数入力欄(図示せず)に入力された注文個数情報の数値,又は,発注価格帯の数値を値幅入力欄(図示せず)に入力された数値で割った値のうちの整数値と同じ個数に等しく設定される。」(段落【0082】)ウ上記各記載を踏まえ,原告は,甲15公報にはトラップを仕掛ける範囲(「取引の上限価格」と「取引の下限価格」)と,トラップの本数(「同時に生成される注文情報群の数」)を入力し,これらの情報に基づいて値幅及び利幅(「第一注文どうしの価格差」及び「同一の注文情報群に属する第一注文価格と第二注文価格との差」)を一定となるように演算して決定する構成が開示されており,また,甲17公報にも,トラップを仕掛ける範囲(タッチパネルの上下の接触位置に対応する「発 注価 注文価格と第二注文価格との差」)を一定となるように演算して決定する構成が開示されており,また,甲17公報にも,トラップを仕掛ける範囲(タッチパネルの上下の接触位置に対応する「発 注価格帯」)と,トラップの本数(「注文個数情報」)を入力し,これらの情報に基づいて,値幅が均等となるように演算して決定する構成が開示されていると主張する。 しかし,被告サービス1においては,そもそも注文情報群の数(原告の主張する「トラップの本数」)を顧客が入力する構成とはなっていない。すなわち,原告の主張によっても,被告サービス1では,顧客は⑥「対象資産(円)」欄に金額を入力するのみであり,被告サーバにおいてその額の証拠金で生成可能な数の注文情報群を生成するというのである。 加えて,前述のとおり,本件発明1(構成要件1B)と被告サービス1の相違点は,本件発明1では構成要件1B-4(利幅を示す情報)及び構成要件1B-5(値幅を示す情報)を入力するのに対し,被告サービス1では②「注文種類」ないし⑥「対象資産(円)」の五つの情報を入力する点にあるところ,甲15公報及び甲17公報にはこれらの五つの情報の入力については何ら開示されていない。 エさらに,他の証券会社の提供した「クイック仕掛け(買いゲリラ100pips)」という機能についてみても,原告によれば,同機能では利幅及び値幅はあらかじめ設定されていて,顧客が入力するものではないというのである。そうすると,利幅(構成要件1B-4)及び値幅(構成要件1B-5)が顧客の入力に係る本件発明1に対し,利幅(構成要件1B-4)及び値幅(構成要件1B-5)があらかじめ設定されている「クイック仕掛け(買いゲリラ100pips)」の技術を適用する基礎がそもそも存在しないものといわざるを得ない。 オ以上 構成要件1B-4)及び値幅(構成要件1B-5)があらかじめ設定されている「クイック仕掛け(買いゲリラ100pips)」の技術を適用する基礎がそもそも存在しないものといわざるを得ない。 オ以上によれば,本件発明1の構成を被告サービス1のものに置換することについて,当業者が被告サービス1の開始時点において容易に想到することができたとはいえない。 したがって,均等の第3要件に関する原告の主張は理由がない。 (6) 小括以上のとおり,原告の主張する均等侵害の主張は,第1要件,第2要件及び第3要件を欠くものであるから,理由がない。 6 争点(2)ア(構成要件2Fの「前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行う」の充足性)について(1) 本件発明2においては,まず「売買注文申込情報に基づいて」最初の注文情報群を生成し(構成要件2D),その後「(最初の注文情報群の)第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行う」(構成要件2F)ことになる。つまり,取引開始前に既に生成されている最初の注文情報群に含まれる第二注文情報に基づく指値注文が約定したときに,次の注文情報群を生成するのであって,本件発明2では,最初の注文情報群と次の注文情報群を生成するタイミングが異なることになる。 これに対し,乙15報告書によれば,被告サービス2では,注文情報群に基づく注文は,取引開始前に一度だけ生成された注文情報に基づいてされるだけであって,注文のたびに生成されるものではないものと認められる。すなわち,被告サービス2においては,注文情報群は取引開始前に生成され,これに基づいて注文が行われるので,最初の注文情報群と次の注文情報群の生成タイミングを問題にする余地がないということにな れる。すなわち,被告サービス2においては,注文情報群は取引開始前に生成され,これに基づいて注文が行われるので,最初の注文情報群と次の注文情報群の生成タイミングを問題にする余地がないということになる。 したがって,被告サービス2は,構成要件2Fのうち,少なくとも「前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行う」を充足しないものというべきである。 (2) 原告の主張に対する判断この点に関して原告は,本件発明2の「注文情報群」とは「新規買い,決済売り,決済売り」という三つの具体的な注文の情報を意味すると主張し,ここでいう注文の情報とは,例えば本件明細書等2の【図6】の「2008 年7月22日23時00分」に行われた「51a」ないし「51c」をいう旨説明する。そして,乙15報告書には,取引開始後,「新たな注文は『ナンピン最適化ファイル(iサイクル運用ファイル)』を読み込んで自動的に生成され」ると記載されているから,被告サービス2においては,取引開始後に注文情報群が生成されていることは明らかであると主張する。 しかし,原告の上記主張は,「注文」それ自体と「注文情報」とを混同するものというべきである。 すなわち,本件発明2においては,構成要件2Fで「前記第一注文情報に基づく前記指値注文」と規定されていることからすると,「注文情報」とは「〔指値〕注文」を行うための前提となる情報を指すものであって,「注文」それ自体ではないというべきである。原告の指摘する本件明細書等2の【図6】についてみても,「51a」ないし「51c」は「注文」それ自体を指すものであり,そこに記載された「2008年7月22日23時00分」とは「注文」それ自体がなされた日時を示すものであって,この日時に「注文情報」が生成され a」ないし「51c」は「注文」それ自体を指すものであり,そこに記載された「2008年7月22日23時00分」とは「注文」それ自体がなされた日時を示すものであって,この日時に「注文情報」が生成されたことを示すものではない。 そして,被告サービス2おいては,乙15報告書にもあるとおり,新たな「注文」それ自体は「ナンピン最適化ファイル(iサイクル運用ファイル)」を読み込んで自動的に生成されるというものにすぎず,その前提となる情報は「ナンピン最適化ファイル(iサイクル運用ファイル)」にあるというのであるから,当該ファイルが「注文情報」ないし「注文情報群」に相当するものというべきである。 したがって,原告の上記主張は,いずれも採用することができない。 (3) 以上によれば,争点(2)アにおける原告の主張は理由がない。 7 争点(2)イ(構成要件2Fの「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」の充足性)について 事案に鑑み,争点(2)イについても検討する。 (1) 本件発明2の構成要件2Fについて構成要件2Fでは,「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく・・・指値注文」は「前記成行注文の価格と同じ前記価格」とすることが規定されている。 (2) 被告サービス2について他方,証拠(甲6の1,2,甲8,乙5)及び弁論の全趣旨によれば,被告サービス2は次の構成を有しているものと認められる。 ア被告サービス2においては,注文情報群とは,(ア)「新規約定レート」で買う(又は売る)という第1の指値注文,(イ)「利食いレート」まで相場が上がれば売る(又は買う)という第2の指値注文,及び(ウ)「損切りレート」まで相場が下がれば売る(又は買う)という逆 レート」で買う(又は売る)という第1の指値注文,(イ)「利食いレート」まで相場が上がれば売る(又は買う)という第2の指値注文,及び(ウ)「損切りレート」まで相場が下がれば売る(又は買う)という逆指値注文に係る注文情報の組合せを意味する(前記第2,2(8)イ参照)。 イそして,被告サービス2においては,注文情報群に基づく指値注文は原則として繰り返される。 すなわち,被告サービス2においては,注文情報群に基づく第1の指値注文,第2の指値注文及び逆指値注文が行われ,第1の指値注文をまず有効にし,第1の指値注文(「新規指定レート」)が約定(=買い)して消滅し,その後,第2の指値注文(「利食いレート」)又は逆指値注文(「損切レート」)の一方の約定(=売り)により第2の指値注文又は逆指値注文の一方が消滅し,同時に第2の指値注文又は逆指値注文の他方が取消され,注文情報群に基づく指値注文が全て消滅したとしても,再び注文情報群に基づく第1の指値注文,第2の指値注文及び逆指値注文を自動的に行い,第1の指値注文をまず有効にし,相場が指値価格と一致すると当該第1の指値注文を約定(=買い)させて当該第1の指値注文が消滅し,それと同時に第2の指値注文及び逆指値注文を有効 にし,第2の指値注文又は逆指値注文の約定(=売り)により当該第2の指値注文又は逆指値注文の一方が消滅し,同時に第2の指値注文又は逆指値注文の他方が取消されたとしても,再び注文情報群に基づく第1の指値注文,第2の指値注文及び逆指値注文を自動的に行う,という処理を繰り返していくことになる。 ウもっとも,相場が一定の範囲から外れた場合,相場に追随するため,被告サービス2では,既存の注文に加えて新たに注文を追加的に行うとともに,既存の注文を取り消し,消滅させる。そうすることで なる。 ウもっとも,相場が一定の範囲から外れた場合,相場に追随するため,被告サービス2では,既存の注文に加えて新たに注文を追加的に行うとともに,既存の注文を取り消し,消滅させる。そうすることで,「注文」のアイコンをクリックした際の注文情報群に基づく注文の総数が一定となるようにしつつ,注文を相場に追従させて行くことを特徴とする。 また,「注文」のアイコンをクリックして取引が開始された後の最初の注文は,取引機会の損失を防ぐため,成行注文が採用されている。すなわち,「新規約定レート」以下になるまで注文が約定しない指値注文ではなく,相場の時価で直ちに注文が約定する成行注文が行われる。 (3) 被告サービス2の充足性以上のとおり,被告サービス2では,原則として,「注文」のアイコンをクリックした時の最上列の「注文情報群」の内容に基づき,その後の注文価格が自動的に決まる。そして,取引開始直後の最初の注文は成行注文となるが,その成行注文の約定価格を基準としてその後の第1の指値注文の価格を決めることはない。なぜなら,その後の第1の指値注文の価格は,最上列の「注文情報群」の「新規指定レート」そのものであって,取引開始前に生成され,決定しているからである。 したがって,被告サービス2は,構成要件2Fのうち,少なくとも「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」を充足しない。 (4) 原告の主張に対する判断 ア 「成行注文の価格」に関する原告の主張について(ア) この点に関して原告は,被告サービス2では「注文手続開始当初の相場価格」と「その後実際に約定した時の価格」の二つの価格が「成行注文の価格」に含まれるのであり,このうち「注文手続開始当初の相場価格」が指値 に関して原告は,被告サービス2では「注文手続開始当初の相場価格」と「その後実際に約定した時の価格」の二つの価格が「成行注文の価格」に含まれるのであり,このうち「注文手続開始当初の相場価格」が指値注文の価格と一致しているから,「成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文」を充足する旨主張する。 しかし,被告サービス2における「注文手続開始当初の相場価格」にいう「注文手続開始当初」とは,顧客が「画面1」において「計算」ボタンを押すことにより,「画面2」において「注文情報群」が生成されるタイミングをいうものにすぎず,そのため「注文手続開始当初の相場価格」とは成行注文とは何の関係もないものと認められる。すなわち,被告サービス2においては,顧客は「注文情報群」が生成されてから任意の時間の経過後に「注文」ボタンを押すものであり,また,「注文」ボタンが押されてから所定の時間経過後(スリッページ)に成行注文が約定するのであって(乙5,弁論の全趣旨),この間,相場価格は時間の経過とともに変化することからすると,「注文手続開始当初」の時点の相場価格をもって「成行注文の価格」であるなどということはできない。 原告は,本件発明2では,「注文手続開始当初の相場価格」と「その後実際に約定した時の価格」にわずかなブレが生じる場合であっても,これらを区別せず,単に「前記成行注文の価格」(すなわち「相場価格での注文」)と記載されているなどと主張するが,この主張を裏付ける記載は本件明細書等2に見当たらない。むしろ,本件明細書等2の段落【0044】には「この第二注文の約定の後,指値の第一注文(このときの指値価格は一回目の成行注文での約定価格とする)と指値の第二注文とからなるイフダンが,複数回繰り返される。」と記載されているこ とや,【図7】には指値 定の後,指値の第一注文(このときの指値価格は一回目の成行注文での約定価格とする)と指値の第二注文とからなるイフダンが,複数回繰り返される。」と記載されているこ とや,【図7】には指値の第二注文として「成行で成立したレートからの設定値または金額分の幅」と記載されていることからすると,「成行注文の価格」とは,成行注文での約定価格を意味することが明らかであるというべきである。 そして,後記8において詳述するとおり,本件発明2の審査経過に照らしても,構成要件2Fの「成行注文の価格」とはやはり成行注文の約定価格をいうものであって,それ以外の構成は原告によって意識的に除外されたものと解されるところである。 (イ) 以上によれば,「成行注文の価格」とは,成行注文の約定価格,すなわち「その後実際に約定した時の価格」のみを意味するものというべきであって,原告の上記主張は理由がない。 イ 「同じ」に関する原告の主張について(ア) 原告は,仮に「成行注文の価格」が成行注文の約定価格,すなわち「その後実際に約定した時の価格」のみを意味するとしても,「同じ」というのは幅を含んだ概念であることや,約定までの時間的間隔に由来する数銭程度のブレは成行注文において必然的に生じ得ることからすれば,成行注文の約定価格と指値注文の価格との間にブレがある場合であっても,両者は「同じ」価格と評価される旨主張する。 しかし,約定までの時間的間隔に由来する数銭程度のブレが成行注文において必然的に生じ得るからといって,なにゆえ構成要件2Fの「同じ」が幅を持った概念であり,上記ブレがあったとしても「同じ」価格と評価されるのか,原告の主張に照らしても明らかではない。 そもそも「同じ」という用語は,名詞として「質・状態・程度などが同一であること。差異がないこ 念であり,上記ブレがあったとしても「同じ」価格と評価されるのか,原告の主張に照らしても明らかではない。 そもそも「同じ」という用語は,名詞として「質・状態・程度などが同一であること。差異がないこと。」,連体詞として「同一の。同類の。 同程度の。」という意味を有するのであって(広辞苑第6版〔甲11〕),価格同士を比較するに当たり,「同じ」という用語が,「数銭 程度」の価格差を当然に許容する意味を持つとは考え難いし,そのような示唆も本件明細書等2には存在しない。 なお,原告は,被告サービス2においては,上記の価格間に「ブレが生じない」場合もあることをもって,「同じ」との文言を充足する旨主張するようでもある。しかし,仮に価格間に「ブレが生じない」場合,すなわち価格が一致する場合があったとしても,あくまで偶然生じた結果にすぎないのであって,価格間に「ブレが生じる」場合が存在する以上は,原告の主張は失当といわざるを得ない。 (イ) 以上によれば,成行注文の価格と「同じ」前記価格とは,成行注文の約定価格と一致する価格を意味するものというべきであって,原告の上記主張は理由がない。 (5) 小括したがって,被告サービス2は,構成要件2Fのうち,少なくとも「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」を充足しないから,争点(2)イにおける原告の主張は理由がない。 8 争点(2)エ(構成要件2Fの「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」についての均等侵害の成否)について(1) 相違点原告は,被告サービス2においては「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく・・・指値注文」が「前記 記価格の指値注文を有効にし,」についての均等侵害の成否)について(1) 相違点原告は,被告サービス2においては「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく・・・指値注文」が「前記成行注文の価格と同じ前記価格」と一致する価格でされるものではなく,したがって構成要件2Fのうち「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」を文言上は充足しないとしても(争点(2)イ),被告サービス2は本件発明2と均等なものとして,その技術的範 囲に属する旨主張する。そして,原告は,本件発明2と被告サービス2の相違点として,2回目以降生成される第一の指値注文の価格が,本件発明2では最初の第一の成行注文が約定したときの相場価格であるのに対し,被告サービス2では「計算」ボタンをクリックした時の相場価格であるという点を指摘する。 しかし,前記6において判示したとおり,被告サービス2は構成要件2Fのうち「前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行う」についても文言上充足しないところ,原告は構成要件2Fに関する均等侵害の主張において,この点につき何ら言及していない。 したがって,原告の主張する均等侵害の主張は,その相違点を誤ったものであって前提を欠くものであるから,均等の第1要件ないし第5要件について判断するまでもなくそもそも理由がないというべきであるが,事案に鑑み,以下,原告の主張する相違点を前提に,均等の各要件について検討を加える。 (2) 第1要件(非本質的部分)ア本件発明2に係る特許請求の範囲は前記第2,2(3)及び(4)イのとおりであり,本件明細書等2の記載は前記1(2)のとおりである。 それらによれば,本件発明2が解決し 1要件(非本質的部分)ア本件発明2に係る特許請求の範囲は前記第2,2(3)及び(4)イのとおりであり,本件明細書等2の記載は前記1(2)のとおりである。 それらによれば,本件発明2が解決しようとする課題は,従来のシステムでは,①イフダンオーダーの指値注文に対応できない,②利用客が複数のイフダンオーダーを並行して行いたい場合には,それぞれのイフダンオーダーを個別に注文していかなければならず,顧客の注文手続が煩雑になる(本件明細書等2の段落【0005】),③利用客は,指値注文の買い注文によって取得した金融商品を将来の相場の状況に応じて自動的に売却することはできず,またイフダンオーダーを相場の状況に応じて自動的に中止させることができない(同段落【0006】),④成行注文でイフダンオーダーを行いたい場合に対応できない(同段落【0007】)というところにある。本件発明2は,これらの各課題に 対し,金融商品の成行注文において,システム利用客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを行うことができ,また将来の相場の状況に応じてイフダンオーダーを自動的に中止させることができて,システムを利用する顧客の利便性を高めるとともにイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる金融商品取引管理装置を提供しようとしたものである(同段落【0008】)。 そこで,本件発明2は,「前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,・・・前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し 行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,・・・前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」(構成要件2F)という構成を採用することにより,顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを繰り返し行うことができ,システムを利用する顧客の利便性を高めるとともにイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させる(本件明細書等2の段落【0016】)こととしている。 そして,本件発明2においては,本件明細書等2に従来技術が解決できなかった課題として記載されているところが,出願時の従来技術に照らして客観的に見て不十分であるという事情は認められない。 以上のような,本件発明2に係る特許請求の範囲及び明細書の記載,特に明細書記載の従来技術との比較から導かれる本件発明2の課題,解決方法,その効果に照らすと,少なくとも「取引開始直後に行われる成行注文の約定価格と同じ指値価格の指値注文を繰り返すこと」は,本件発明2の本質的部分,すなわち従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分に該当するというべきである。 イこれを被告サービス2についてみると,被告サービス2は「取引開始直後に行われる成行注文の約定価格と同じ指値価格の指値注文を繰り返すこと」という構成を採用していないのであるから,本件発明2と被告サービス2の相違点が特許発明の本質的部分ではないということはできない。 したがって,被告サービス2については,均等の要件のうち第1要件を満たさない。 (3) 第3要件(容易想到性)事案に鑑み,原告の主張する均等の第3要件についても検討する。 ア被告サービス2において,「計算」ボタンを押 ついては,均等の要件のうち第1要件を満たさない。 (3) 第3要件(容易想到性)事案に鑑み,原告の主張する均等の第3要件についても検討する。 ア被告サービス2において,「計算」ボタンを押した時点(t0)の相場価格を「x0円」,「注文」ボタンを押した時点(t1)の相場価格を「x1円」,成行注文が約定した時点(t2)の相場価格を「x2円」とした場合,成行注文の約定価格とは「t2」の時点の相場価格の「x2円」であるから,本件発明2の「2回目以降生成される第一の指値注文の価格」は「x2円」である。他方,被告サービス2において,「2回目以降生成される第一の指値注文の価格」は,「t0」の時点の相場価格の「x0円」である。 そうすると,原告は,本件発明2の構成要件2Fにおいて,「2回目以降生成される第一の指値注文の価格」を「x2円」から「x0円」へと置換することが容易想到であることを主張・立証しなければならない。 イそこで検討するに,本件発明2においては,成行注文が約定した時点(t2)で初めてこの成行注文に続く指値注文に係る注文情報ないし注文情報群が決定される。すなわち,本件発明2は,成行注文が約定した時点(t2)での当該成行注文の約定結果を忠実に繰り返し再現するため,当該成行注文の約定結果に基づいて,これに続く指値注文に係る注文情報ないし注文情報群が決定されるという発明である。 そうすると,本件発明2においては,注文情報ないし注文情報群が生成されるタイミングを上記時点(t2)から前に動かすことができず,そのような置換を行う動機付けがないものといわざるを得ない。 したがって,原告の主張する置換につき当業者が容易に想到することができたとはいえないのであるから,被告サービス2については,均等の要件のうち第3要件を 行う動機付けがないものといわざるを得ない。 したがって,原告の主張する置換につき当業者が容易に想到することができたとはいえないのであるから,被告サービス2については,均等の要件のうち第3要件を満たさないというべきである。 (4) 第5要件(意識的除外等の特段の事情)さらに,事案に鑑み,均等の第5要件についても検討する。 ア特許発明の実質的価値は,特許請求の範囲に記載された構成からこれと実質的に同一なものとして当業者が容易に想到することのできる技術に及び,第三者はこれを予期すべきものであるから,対象製品等が,特許発明とその本質的部分,目的及び作用効果で同一であり,かつ,特許発明から当業者が容易に想到することができるものである場合には,原則として,対象製品等は特許発明と均等であるといえる。しかし,特許出願手続において出願人が特許請求の範囲から意識的に除外したなど,特許権者の側において一旦特許発明の技術的範囲に属しないことを承認するか,又は外形的にそのように解されるような行動をとったものについて,特許権者が後にこれと反する主張をすることは,禁反言の法理に照らし許されないから,このような特段の事情がある場合には,例外的に,均等が否定されることとなる(前掲知的財産高等裁判所平成28年3月25日特別部判決参照)。 イ証拠(甲13,乙11ないし13)によれば,本件発明2に係る特許の審査経過は,以下のとおり認められる。 (ア) 本件発明2に係る特許の出願当時における特許請求の範囲請求項1には,次の記載があった。 ・「一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り 注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報とを含む注文情報 報に基づいて,所定の前記金融商品の売り 注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,」・「前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」(イ) 原告は,乙11手続補正書において,特許請求の範囲請求項1のうち上記(ア)の部分を次のとおり補正した。 ・「一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を,前記取引開始時の前記相場価格に基づいて成行で行う,第一回目に発注される第一注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う,第一回目に発注される第二注文情報とを含む注文情報群,及び,前記取引開始時の前記相場価格に基づいて指値で行う,第二回目以降に発注される前記第一注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う,第二回目以降に発注される前記第二注文情報とを含む前記注文情報群を生成し,」・「前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の,前記第二回目以降に発注される前記第一注文情報に基づく前記指値注文を有効にし,」(ウ) これに対し,特許庁審査官は,本件拒絶理由通知において次の指摘をした。 「請求項1の『一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を,前記取引開始時の前記相場価格に基づいて成行で行う,第一回目に発注される第一注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う,第一回目に発 注される第二注文情報とを含む注文情報群,及び, 相場価格に基づいて成行で行う,第一回目に発注される第一注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う,第一回目に発 注される第二注文情報とを含む注文情報群,及び,前記取引開始時の前記相場価格に基づいて指値で行う,第二回目以降に発注される前記第一注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う,第二回目以降に発注される前記第二注文情報とを含む前記注文情報群を生成』なる記載は新規事項の追加に該当する。 発明の詳細な説明の段落【0050】には,『注文情報生成部16は,第一注文を新規の成行注文の注文情報として生成し,第二注文を決済の指値注文の注文情報として生成し,逆指値注文を決済の逆指値注文の注文情報として生成する。』ことが記載されるものの,第一回目に発注される成行注文が『取引開始時の前記相場価格に基づいて』行われることは記載されておらず,かつ,新たな技術的事項を導入するものであると認められる。 また,段落【0062】には,『ここで,本実施形態の第一注文は,一回目は成行注文で行われるが,二回目以降は指値注文で行われる。このため,約定情報生成部14は,当該成行注文の約定価格を,二回目以降の第一注文の指値価格に設定する。』ことが記載されるが,『相場価格』と『約定価格』とは必ずしも一致するものでないことは当業者にとって自明であり,当該補正は新たな技術的事項を導入するものであると認められる。 請求項1を引用する2~7についても同様である。」(エ) これを受けて,原告は,乙13手続補正書において,特許請求の範囲請求項1のうち上記(イ)の記載を次のとおり改めたところ,特許査定を受けた。 ・「一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行また て,特許請求の範囲請求項1のうち上記(イ)の記載を次のとおり改めたところ,特許査定を受けた。 ・「一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情 報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,」・「前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,」(オ) なお,原告は,乙13手続補正書と同日付けで,次の記載のある乙16意見書を提出している。 「上記[理由1]におけるご指摘に鑑み,出願人は,同日付で提出の手続補正書において,平成26年2月10日付け手続補正書にて[請求項1]及び[請求項6]に追記した『前記取引開始時の前記相場価格に基づいて』等の記載を削除し,併せて,当該記載を削除した箇所を,『売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と』『該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と』という,平成26年2月10日付け手続補正書にて補正する前の記載に戻しました。・・・拒絶理由通知書の[理由1]においてご指摘のあった拒絶理由通知は解消いたしました。」ウ上記イによれば,原告は,本件発明2の構成要件2Fの「該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく・・・指値注文」につき,出願当初の特許請求の範囲請求項1ではこれが「前記成行注文の価格と同じ前記価格」と同一である旨の記載をしていたところ,乙11手続補正書により,これが「前記取引 文情報に基づく・・・指値注文」につき,出願当初の特許請求の範囲請求項1ではこれが「前記成行注文の価格と同じ前記価格」と同一である旨の記載をしていたところ,乙11手続補正書により,これが「前記取引開始時の前記相場価格」と同一である旨の記載に一旦補正している。しかるに,原告は,特許庁審査官からの指摘を受けて,再度,これが「前記成行注文の価格と同じ前記価格」と同一である旨の記載に戻したものである。 そして,原告の指摘する本件発明2と被告サービス2との相違点は, 2回目以降生成される第一の指値注文の価格が,本件発明2では最初の第一の成行注文が約定したときの相場価格であるのに対し,被告サービス2では「計算」ボタンをクリックした時の相場価格であるという点であるところ(上記(1)参照),被告サービス2における「計算」ボタンをクリックした時の相場価格とは,乙11手続補正書による補正における「前記取引開始時の前記相場価格」に該当する(原告も明らかに争わない。)。 そうすると,本件発明2については,出願人である原告が,一旦乙11手続補正書に記載された構成,すなわち,被告サービス2の「計算」ボタンをクリックしたときの相場価格を,特許請求の範囲から意識的に除外したというべきである。 したがって,均等の第5要件における「特段の事情」に当たるものといわざるを得ず,被告サービス2においては,均等の要件のうち第5要件を満たさないことになる。 (5) 小括以上によれば,原告の主張する均等侵害の主張は,その相違点を誤ったものであって前提を欠くばかりでなく,第1要件,第3要件及び第5要件を欠くものでもあるから,いずれにせよ理由がない。 9 争点(3)ア(構成要件3F-1の「前記成行注文を決済する前記指値注文が約定されたとき,前記注文情報 かりでなく,第1要件,第3要件及び第5要件を欠くものでもあるから,いずれにせよ理由がない。 9 争点(3)ア(構成要件3F-1の「前記成行注文を決済する前記指値注文が約定されたとき,前記注文情報群の生成を行う」及び3F-3の「以後,・・・次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」の充足性)について本件発明3においては,まず「売買注文申込情報に基づいて」最初の注文情報群を生成し(構成要件3D),その後「(最初の注文情報群の)成行注文を決済する前記指値注文が約定されたとき,前記注文情報群の生成を行う」(構成要件3F-1)ことになる。つまり,取引開始前に既に生成されている最初の注文情報群に含まれる成行注文を決済する指値注文が約定したときに,初め て次の注文情報群を生成するのであって,本件発明2では,最初の注文情報群と次の注文情報群を生成するタイミングが異なることになる。 これに対し,前記6で判示したとおり,被告サービス2では,注文情報群に基づく注文は,取引開始前に一度だけ生成された注文情報に基づいてされるだけであって,注文のたびに生成されるものではない。すなわち,被告サービス2においては,注文情報群は取引開始前に生成され,これに基づいて注文が行われるので,最初の注文情報群と次の注文情報群の生成タイミングを問題にする余地がないということになる。 そうすると,被告サービス2は,少なくとも,構成要件3F-1の「前記成行注文を決済する前記指値注文が約定されたとき,前記注文情報群の生成を行う」を充足しないものというべきである。 したがって,争点(3)アにおける原告の主張は,理由がない。 争点(4)カ(本件発明3についての無効理由(分割要件違反)の存否)について(1) 本件特許3は本件特許2(出願番号:特願20 したがって,争点(3)アにおける原告の主張は,理由がない。 争点(4)カ(本件発明3についての無効理由(分割要件違反)の存否)について(1) 本件特許3は本件特許2(出願番号:特願2013-45238)の分割出願に係る特許であるところ,被告は本件発明3に係る特許出願が分割要件違反になる旨主張しているので,この点について検討する。 (2) ところで,分割出願が適法な場合には,その効果は原出願の出願日に遡及する(特許法44条2項本文)が,分割出願が不適法な場合には,分割出願をした時点を基準として実態審査が行われることになる。そして,分割出願の出願日が原出願の出願日へ遡及するためには,①分割出願の明細書等に記載された事項が,原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること,及び,②分割出願の明細書等に記載された事項が,原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であることを要する。ここで,「明細書等に記載された事項」とは,当業者によって,明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,分割出願が,こ のようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該分割出願は「明細書等に記載された事項の範囲内」においてするものと解される。 (3) これを本件について検討するに,原告の主張によれば,構成要件3F-2の「前記指値注文」とは,構成要件2Fから「成行注文の価格と同じ前記価格」という構成を除いたものであり,あらゆる指値価格の指値注文を含む構成である(平成27年11月6日付け原告第5準備書面)。そうすると,構成要件3F-2の「前記指値注文」は,その価格については何の限定もなく,任意の指値価格をその指値価格とする指値注文でありさえすれば である(平成27年11月6日付け原告第5準備書面)。そうすると,構成要件3F-2の「前記指値注文」は,その価格については何の限定もなく,任意の指値価格をその指値価格とする指値注文でありさえすればよいということになる。これは,構成要件2Fの「前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文」を上位概念化したものということができる。 ところで,本件特許3は本件特許2(出願番号:特願2013-45238)の分割出願に係る特許である。 原出願である本件特許2に係る本件明細書等2の段落【0005】ないし【0008】の記載によると,本件特許2は,従来技術の課題として,取引開始直後の注文が成行注文のイフダンオーダーをすることができなかったこと及びイフダンオーダーを繰り返し行えなかったことを技術課題として設定している。 この課題を解決する手段として,本件明細書等2では,取引開始直後に約定する成行注文の約定価格を基準として,注文情報群を生成し,これに基づいて,決済注文である指値注文及び逆指値注文を行い,当該指値注文が約定すると,新たな注文情報群を生成させ,これに基づいて,先行する成行注文の約定価格と同一の価格の指値注文を行い,当該指値注文が約定すると,当該新たな注文情報群に基づいて,当該指値注文の決済注文であって,先行する決済注文である指値注文及び逆指値注文と同一の価格の指値注文及び逆指値注文を行うことが開示されている。 すなわち,本件明細書等2の段落【0044】では,「・・・成行リピートイフダンでは,一回目のイフダンでは,第一注文で買い注文または売り注文の一方を成行で行ったのち,第二注文で買い注文または売り注文の他方を指値で行う。・・・この第二注文の約定の後,指値の第一注文(このときの指値価格は一回目の成行注文での約定価格とする 文または売り注文の一方を成行で行ったのち,第二注文で買い注文または売り注文の他方を指値で行う。・・・この第二注文の約定の後,指値の第一注文(このときの指値価格は一回目の成行注文での約定価格とする)と指値の第二注文とからなるイフダンが,複数回繰り返される。」とされ,段落【0062】では「ここで,本実施形態の第一注文は,一回目は成行注文で行われるが,二回目以降は指値注文で行われる。このため,約定情報生成部14は,当該成行注文の約定価格を,二回目以降の第一注文の指値価格に設定する。」とされた上,【図7】においても,2回目以降の指値の第一注文の価格を1回目の成行注文の約定価格とする旨の記載がある。そして,証拠(乙11,13)及び弁論の全趣旨によれば,これらの段落【0044】及び【0062】並びに【図7】は,出願当初の明細書等から補正がされていないものと認められる。 (4) そこで,構成要件3F-2の「前記指値注文」の構成と,本件明細書等2の記載とを比較すると,本件明細書等2には2回目以降の指値の第一注文の価格を1回目の成行注文の約定価格とすることしか開示されておらず,2回目以降の指値の第一注文の価格を任意の価格にできるといった記載はない。 また,2回目以降の指値の第一注文の価格をどのような価格にするのか,言い換えると,1回目の成行注文の約定価格以外のどのような価格に設定するのか,そのための方法等は一切開示されていない。 そうすると,本件明細書等2の出願当初及び分割直前の明細書等には,その技術課題及び課題を解決するための手段からみて,2回目以降の指値の第一注文の価格を任意の価格に設定できることが形式的にも実質的にも記載されていないものといわざるを得ない。 したがって,本件発明3の構成要件3F-2は,分割出願の出願日が原出 指値の第一注文の価格を任意の価格に設定できることが形式的にも実質的にも記載されていないものといわざるを得ない。 したがって,本件発明3の構成要件3F-2は,分割出願の出願日が原出 願の出願日へ遡及するための要件である,上記①及び②の要件のいずれも満たさないから,本件発明3に係る特許出願には特許法44条2項の適用がなく,分割要件違反となるものというべきである。 (5) 原告の主張に対する判断この点に関して原告は,本件発明2及び3の技術思想は「顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを繰り返し行うことができて,システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際に顧客が被るリスクを低減させることができる。」ことにあり,2回目以降の第一注文の指値価格をどのようなものにするのかは,上記技術思想とは直接の関係がないため,当業者において適宜選択・決定すれば足りる事項であると主張する。 しかし,上記(3)において引用したところからすれば,本件発明2の技術思想は,先行する成行注文の約定価格と同一の価格の指値注文を行うところにもあるということになる。そうすると,本件明細書等2に対し,システムが2回目以降の指値の第一注文の指値価格を決定するという構成を追加することは,新たな技術的事項を導入するものというべきであるから,原告の上記主張はその前提を欠き,採用することができない。 (6) 以上によれば,本件発明3に係る特許出願の出願日は,原出願の出願日まで遡及せず,現実の出願日である平成26年11月13日となるところ,本件発明2に係る特許出願の出願公開の公開日は平成25年7月11日であるから(甲4の2),本件発明3の新規性は,本件発明3を下位概念化した本件発明2によって,否定されることになる。 し ところ,本件発明2に係る特許出願の出願公開の公開日は平成25年7月11日であるから(甲4の2),本件発明3の新規性は,本件発明3を下位概念化した本件発明2によって,否定されることになる。 したがって,本件発明3に係る特許は,特許法29条1項3号に違反してされたものであるから,同法123条1項2号によって特許無効審判により無効にされるべきものである。 11 争点(4)キ(本件発明3についての無効理由(サポート要件違反)の存否) について事案に鑑み,さらに争点(4)キについて検討する。 (1) 特許制度は,明細書に開示された発明を特許として保護するものであり,明細書に開示されていない発明までも特許として保護することは特許制度の趣旨に反することから,特許法36条6項1号のいわゆるサポート要件が定められたものである。 したがって,同号の要件については,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明の欄の記載によって十分に裏付けられ,開示されていることが求められるものであり,同要件に適合するものであるかどうかは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるか,すなわち,発明の詳細な説明の記載と当業者の出願時の技術常識に照らし,当該発明における課題とその解決手段その他当業者が当該発明を理解するために必要な技術的事項が発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討して判断すべきものと解される。 (2) これを本件についてみるに,原告の主張によれば,構成要件3F-2の「前記指値注文」とは,その価格については何の限定もなく,任意の指値価格をその指値価格とする指値注文ということになる(前記10(3))。しかるに,前記10(3)で引用した本件 ば,構成要件3F-2の「前記指値注文」とは,その価格については何の限定もなく,任意の指値価格をその指値価格とする指値注文ということになる(前記10(3))。しかるに,前記10(3)で引用した本件明細書等2の段落【0044】及び【0062】並びに【図7】は,本件明細書等3の段落【0042】及び【0060】並びに【図7】に相当するところ,これらの段落等にも,その技術課題及び課題を解決するための手段からみて,2回目以降の指値の第一注文の価格を任意の価格に設定できることが形式的にも実質的にも記載されているとはいえない。 そうすると,当業者において,本件発明3の解決手段その他当業者が当該発明を理解するために必要な技術的事項が,本件明細書等3の発明の詳細な 説明に記載されているものと認めることはできない。 (3) したがって,本件発明3は特許法36条6項1号に規定するサポート要件を満たしていないことになるから,本件発明3に係る特許は同法123条1項4号によって特許無効審判により無効にされるべきものである。 12 結論以上のとおり,①被告サービス1は本件発明1の構成要件1B,1C,1E,1F,1G及び1Hを充足せず(争点(1)アないしウ),均等侵害も成立しない(争点(1)エ),②被告サービス2は本件発明2の構成要件2Fを充足せず(争点(2)ア及びイ),均等侵害も成立しない(争点(2)エ),③被告サービス2は本件発明3の構成要件3F-1を充足せず(争点(3)ア),また,本件発明3は分割要件違反及びサポート要件違反により無効にされるべきものである(争点(4)カ及びキ)。 よって,その余の点について判断するまでもなく,本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40 主文 よって、その余の点について判断するまでもなく、本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 理由 事実 争点 判断 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 瀬孝 裁判官 勝又来未子 (別紙)被告サービス目録 1 「サイクル注文」という名称で提供されているFX取引管理方法 2 「iサイクル注文」という名称で提供されているFX取引管理方法 別紙「特許公報」は省略
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