- 1 -平成27年8月25日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成26年(ワ)第25858号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成27年5月14日判決東京都新宿区<以下略>原告株式会社スピン同訴訟代理人弁護士矢野佳秀 鈴木正勇 濱田真一郎東京都中央区<以下略>被告株式会社シネ・フォーカス同訴訟代理人弁護士小林幸夫 坂田洋一 神岡信行 金沢正源 文屋秀俊 小田竜太郎同訴訟代理人弁理士樺澤聡 山田哲也主文 1 被告は,別紙被告装置目録記載1の装置を製造し,販売し,貸し渡し,使用し,又は販売若しくは貸渡しのために展示してはならない。 2 被告は,原告に対し,50万円及びこれに対する平成26年10月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用はこれを3分し,その2を原告の負担とし,その余は被告の負- 2 -担とする。 5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,別紙被告装置目録記載1及び2の装置(以下,それぞれを「被告装置1」,「被告装置2」という。)を製造し,販売し,貸し渡し,使用し,又は販売若しくは貸渡しのために展示してはならない。 2 被告は,その所有に係る被告装置1及び2を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,3300万円及びこれに対する平成26年10月9日から支払済みまで年5分の割合 は貸渡しのために展示してはならない。 2 被告は,その所有に係る被告装置1及び2を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,3300万円及びこれに対する平成26年10月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,発明の名称を「ステージの背景で動く映像を表示する装置」とする特許権の専用実施権者ないし独占的通常実施権者である原告が,被告による被告装置1及び2の製造等が専用実施権等の侵害に当たると主張して,被告に対し,① 特許法100条1項及び2項に基づく被告装置1及び2の製造等の差止め及び廃棄,② 民法709条,特許法102条2項に基づく損害賠償金3300万円及びこれに対する不法行為の日の後(訴状送達の日)である平成26年10月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)当事者ア原告は,空間立体映像総合システム販売等を業とする株式会社である。 イ被告は,映像・音響・情報機器のシステムプランニング・レンタル・オペレーション,映像音響機器の販売等を業とする株式会社である。 原告の専用実施権- 3 -ア原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許を「本件特許」という。また,その特許出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書」という。)について,特許権者から,地域を日本全国,期間を平成26年7月1日から平成28年8月31日まで,内容を全部とする専用実施権の設定を受け,平成26年8月25日付けでその登録を受けた。 特許番号第2930219号出願年月日平成8年8月31日(特願平9-512350)登録年月日平成11年5月2 とする専用実施権の設定を受け,平成26年8月25日付けでその登録を受けた。 特許番号第2930219号出願年月日平成8年8月31日(特願平9-512350)登録年月日平成11年5月21日発明の名称ステージの背景で動く映像を表示する装置イ本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(以下,この発明を「本件発明」という。)。 「画像源を使用してステージ等の背景の中で動く映像を表示する装置において,反射面(18)をステージ(28)の床(30)の中央領域に配置し,透明で滑らかなフィルム(20)の下端を反射面(18)と背景の間の一定の個所に,また上端を天井(32)のもっと前方の個所に保持するように,このフィルム(20)がステージ(28)の床(30)と天井(32)の間にその幅全体にわたり延びていて,画像源を天井(32)のところでそこに保持されているフィルム(20)の上端の前に配置し,反射面(18)の方に向けてあることを特徴とする装置。」ウ本件発明は,以下の構成要件に分説される(以下,それぞれの構成要件を「構成要件A」などという。)。 A 画像源を使用してステージ等の背景の中で動く映像を表示する装置において,B 反射面(18)をステージ(28)の床(30)の中央領域に配置し,C 透明で滑らかなフィルム(20)の下端を反射面(18)と背景の間の一定の個所に,- 4 -D また上端を天井(32)のもっと前方の個所に保持するように,E このフィルム(20)がステージ(28)の床(30)と天井(32)の間にその幅全体にわたり延びていて,F 画像源を天井(32)のところでそこに保持されているフィルム(20)の上端の前に配置し,G 反射面(18)の方に向けてあることH を特徴とする装置。 間にその幅全体にわたり延びていて,F 画像源を天井(32)のところでそこに保持されているフィルム(20)の上端の前に配置し,G 反射面(18)の方に向けてあることH を特徴とする装置。 被告の行為等ア被告装置1及び2は,いずれも画像源を使用してステージ等の背景の中で動く映像を表示する装置であり,その構成を示す図はそれぞれ別紙被告画像源(プロジェクター)からの光を反射する面(パネル又はスクリーン)が床に設けられているか(被告製品1),天井に設けられているか(被告製品2)の点で異なり,これに応じてフィルムの保持・配置位置等が異なっている。 イ被告装置1は本件発明の技術的範囲に属するものであり,被告はプレスリリースに被告装置1の写真を掲載した(甲2。ただし,その製造,販売等の有無については当事者間に争いがある。)。 ウ被告は,少なくとも平成26年7月9日から11日までの間に開催された展示会において,被告装置2を使用した。 エ被告装置2の構成は,次のとおりである。 a プロジェクターから投影される映像を使用してステージ等の背景の中で動く映像を表示する装置において,b スクリーンをステージの天井の中央領域に配置し,c 透明で滑らかなフィルムの上端をスクリーンの背景側端先に,d また下端を床の観客席側寄りに保持するように,e フィルムが幕で仕切られたステージの床と天井の間にその幅にわ- 5 -たり延びていて,f プロジェクターから投影された映像を反射するミラーを床のところでそこに保持されているフィルムの下端の前に配置し,g スクリーンの方に向けてあるh 装置。 2 争点被告装置1の製造等の有無被告装置2に係る文言侵害の成否被告装置2に係る均等侵害の成否本件特 ルムの下端の前に配置し,g スクリーンの方に向けてあるh 装置。 2 争点被告装置1の製造等の有無被告装置2に係る文言侵害の成否被告装置2に係る均等侵害の成否本件特許の無効理由の有無差止めの必要性損害の有無及びその額 3 争点に関する当事者の主張 (被告装置1の製造等の有無)について(原告の主張)被告は,平成26年7月から現在までの間,被告装置1を製造し,販売し,貸し渡し,使用し,又は販売若しくは貸渡しのための展示をしている。 (被告の主張)否認する。 (被告装置2に係る文言侵害の成否)について(原告の主張)被告は構成要件B,C,D及びFの充足性を争っているが,以下のとおり,いずれも充足する。 ア構成要件B構成要件Bの「床」とは,画像源から投影された映像をフィルムに反射投影するための反射面を配置する場所をいう。 - 6 -被告装置2のスクリーンは,ステージの天井(上部)に配置されているが,本件発明の反射面と同様の機能を果たすものであるから,その配置場所である天井は構成要件Bの「床」に相当する。 イ構成要件C本件発明の物理的原理からすると,画像源が天井(上部)・反射面が床(下部)に配置された場合には,フィルムの下端が反射面と背景の間の一定の個所(観客席から見て奥側)に,フィルムの上端が天井の前方の個所(観客席から見て手前側)に保持されることになり,これとは反対に,画像源が床・反射面が天井に配置された場合には,フィルムの上端が奥側に,フィルムの下端が手前側に保持されることになるが,いずれの場合であってもフィルムの機能に差異はない。 したがって,被告装置2においては,フィルムの上端がスクリーンと背景の間の一定の個所に保持されているが,この 端が手前側に保持されることになるが,いずれの場合であってもフィルムの機能に差異はない。 したがって,被告装置2においては,フィルムの上端がスクリーンと背景の間の一定の個所に保持されているが,このフィルムの上端は構成要件Cの「下端」に相当するというべきである。 ウ構成要件D被告装置2のフィルムの下端は床(下部)の前方の個所に保持されているが,上記ア・イと同様の理由により,この床は構成要件Dの「天井」に,このフィルムの下端は構成要件Dの「上端」にそれぞれ相当する。 エ構成要件F被告装置2のプロジェクター及びミラーは,床(下部)のところでそこに保持されているフィルムの下端の前に配置されているが,本件発明の画像源と同様の機能を果たすものであるから,その配置場所である床は構成要件Fの「天井」に相当する。また,上記イと同様の理由により,被告装置2のフィルムの下端は構成要件Fの「上端」に相当する。 (被告の主張)争う。 - 7 -「床」(構成要件B)と「天井」(同D,F)は,文言上,異なることが明らかである。また,「上端」(同D,F)と「下端」(同C)の意義は明確であり,天井(上部)の側を「上端」,床(下部)の側を「下端」としている。 したがって,これらの配置が上下逆となっている被告装置2は,構成要件B,C,D及びFのいずれも充足しない。 (被告装置2に係る均等侵害の成否)について(原告の主張)本件発明と被告装置2が画像源,反射面及びフィルムの具体的な保持・配置位置の点で相違するとしても,以下のとおり,本件特許の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,その技術的範囲に属する。 ア本件発明の本質的部分は,①フィルムを反射面に向かい合うように傾斜させて保持することにより,反射面に投影さ 本件特許の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,その技術的範囲に属する。 ア本件発明の本質的部分は,①フィルムを反射面に向かい合うように傾斜させて保持することにより,反射面に投影された映像がフィルムに向け垂直方向に投影され,フィルムに投影された映像が観客席に向かって水平方向に反射されること,②画像源から映像を直接フィルムに投影せず,反射面の反対側に画像源を配置して,画像源から映像を反射面に投影し,反射面が映像をフィルムに投影するようにすることにあり,画像源と反射面の上下,フィルムの上端及び下端の前後その他具体的な保持・配置関係を本質的部分とするものではない。したがって,上記の相違する部分は本件発明の本質的部分ではない。 イ画像源,反射面及びフィルムの保持・配置関係が上記アの①及び②を満たすものであれば,本件発明と同様の作用効果が生ずる。 したがって,被告装置2は本件発明と同一の作用効果を奏するので,上記の相違する部分を被告装置2のように構成することについては置換可能性がある。 ウ被告装置2は本件発明における画像源,反射面及びフィルムの具体的な- 8 -保持・配置関係の天地を逆にしたものにすぎず,また画像源となるプロジェクターを床に設置することができることは公知であるから,当業者であれば,被告装置2の製造時点において,上記の相違する部分を被告装置2の構成に置換することは容易である。 (被告の主張)争う。 ア本件発明の本質的部分は,反射面をステージの床に,画像源をステージの天井にそれぞれ配置し,フィルムの上端を天井の前方の個所に,フィルムの下端を床に配置された反射面と背景の間の一定の個所にそれぞれ保持するという具体的な保持・配置関係にある。 したがって,被告装置2の構成は本質的部分に ,フィルムの上端を天井の前方の個所に,フィルムの下端を床に配置された反射面と背景の間の一定の個所にそれぞれ保持するという具体的な保持・配置関係にある。 したがって,被告装置2の構成は本質的部分において本件発明と異なっている。 イ本件発明と被告装置2は,反射面(スクリーン)からの観客の視線の高さ及びフィルムと観客との相対的な位置関係が異なっていることから,作用効果が異なる。また,反射面(スクリーン)の掃除などの取扱いが難しいという作用効果の違いもある。 さらに,本件明細書には本件発明の作用効果として上下移動する床のあるステージで効果的に使用できる旨の記載があるところ,被告装置2はこの作用効果を奏しない。 ウ本件発明と被告装置2は技術的に大きく異なるものであるから,置換は容易でない。 (本件特許の無効理由の有無)について(被告の主張)原告が主張する本質的部分(原告の主張)ア)を本件発明の構成として理解するとすれば,本件発明は,その特許出願の前に頒布されていた米国特許明細書(米国特許第4805895号,乙3の1)及び周知技術又- 9 -は技術常識(乙4,5)に基づいて容易に発明をすることができたから,進歩性を欠く。 また,本件発明の構成に係る上記理解を前提にすれば,本件発明は,その特許出願の前の特許出願であって本件発明の特許出願後に公開されたものの願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明(特表平9-508221号公報,乙6)と実質的に同一であるから,特許を受けることができない。 したがって,本件特許には無効理由があるので(特許法29条2項,29条の2,123条1項2号),原告が専用実施権を行使することはできない(同法104条の3第1項)。 (原告の主張)争う。 発明の本 て,本件特許には無効理由があるので(特許法29条2項,29条の2,123条1項2号),原告が専用実施権を行使することはできない(同法104条の3第1項)。 (原告の主張)争う。 発明の本質的部分がその技術的範囲となるものではないから,被告の上記主張は失当である。 (差止めの必要性)について(原告の主張)被告装置1及び2を製造し,販売するなどすることは,原告の専用実施権の侵害に当たるから,被告装置1及び2の製造等の差止めの必要性がある。 (被告の主張)争う。 被告は,被告装置1の製造販売をしておらず,今後もその予定はないので,差止めの必要性はない。 (損害の有無及びその額)について(原告の主張)原告は,被告による専用実施権(専用実施権の登録以降)又は独占的通常実施権(同登録前)の侵害の不法行為により,以下の合計3300万円の損- 10 -害を被った。 ア被告の利益相当額 3000万円被告は,平成26年7月から同年10月までの間,被告装置1及び2の販売又は貸渡しにより,少なくとも3000万円の利益を得たので,原告は同額の損害を被った(特許法102条2項)。 イ弁護士費用相当額 300万円原告は,被告による専用実施権等の侵害により訴訟提起を余儀なくされ,弁護士費用相当額300万円の損害を被った。 (被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(被告装置1の製造等の有無)について証拠(甲2,9~12,乙1)及び弁論の全趣旨によれば,被告が,平成26年7月9日から11日までの間に開催された展示会において,被告装置2を設置し,展示するとともに,被告装置1の写真を掲載したチラシを配布し,さらに,被告装置1と同様の構成を備える床反射方式の3Dホログラム装置を設営 1日までの間に開催された展示会において,被告装置2を設置し,展示するとともに,被告装置1の写真を掲載したチラシを配布し,さらに,被告装置1と同様の構成を備える床反射方式の3Dホログラム装置を設営する状況等を撮影した動画を上映したことが認められる。そうすると,被告は,少なくとも同展示会で紹介するために被告装置1を製造し,使用したと認めるのが相当である。 これに対し,被告は,被告装置1の写真を掲載したチラシ(甲2)は誤って配布してしまったものであるなどと主張するが,同チラシの作成に大手広告代理店が関与していたこと(甲2)からしてこれは被告装置2に加えて被告装置1を宣伝するために用いられたと解される。したがって,被告の上記主張を採用することはできない。 (被告装置2に係る文言侵害の成否)について原告は,被告装置2における天井が本件発明の「床」(構成要件B)に,- 11 -床が「天井」(同D,F)に,上端が「下端」(同C)に,下端が「上端」(同D,F)にそれぞれ相当する旨主張する。 そこで判断するに,特許請求の範囲に記載された上記各語の文言上,「床」とはある空間の下部を構成する面を,「天井」とはその上部を構成する面をいうものであり,「上端」とは上部にある端を,「下端」とは下部にある端をいうものであって,その意義はいずれも明確である。また,本件明細書(甲1の2)の【発明の詳細な説明】欄を見ても,これらを上記と異なる意味で用いている記載は見当たらない。そうすると,構成要件Bの「床」,構成要件Cの「下端」,構成要件D,Fの「天井」及び「上端」は,それぞれ上記の意味として解するのが相当であって,「床」を「天井」と,あるいは「上端」を「下端」とみることはできない。 一方,被告装置2は,スクリーン(「反射面」に対応する。)をス 及び「上端」は,それぞれ上記の意味として解するのが相当であって,「床」を「天井」と,あるいは「上端」を「下端」とみることはできない。 一方,被告装置2は,スクリーン(「反射面」に対応する。)をステージの天井(上部)に,プロジェクター及びミラー(「画像源」に対応する。)をステージの床(下部)にそれぞれ配置し,フィルムの上端(上部)をスクリーンと背景の間の一定の個所(観客席から見て奥)に,フィルムの下端(下部)を床の前方(観客席から見て手前)にそれぞれ保持するものであり(別,本件発明の「画像源」,「反射面」及び「フィルム」の保持・配置位置の天地を逆にしたものであるから,本件発明と被告装置2とは,反射面と画像源の配置位置(床又は天井)及びフィルムの上下端の保持位置(前方又は後方)の点で相違することになる。 したがって,被告装置2は,構成要件B,C,D及びFを充足しないから,特許請求の範囲の文言上,本件発明の技術的範囲に属するとは認められない。 (被告装置2に係る均等侵害の成否)について 特許請求の範囲に記載された構成中に特許権侵害訴訟の対象とされた製品と異なる部分が存する場合であっても,① 上記部分が特許発明の本質的部- 12 -分ではなく(第1要件),② 上記部分を当該製品におけるものと置き換えても特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって(第2要件),③ そのように置き換えることに特許発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が当該製品の製造等の時点において容易に想到することができたものであり(第3要件),④ 当該製品が特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから出願時に容易に推考できたものではなく(第4要件),かつ,⑤ 当該製品が特許出 到することができたものであり(第3要件),④ 当該製品が特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから出願時に容易に推考できたものではなく(第4要件),かつ,⑤ 当該製品が特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もない(第5要件)ときは,当該製品は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属すると解すべきである(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)。 原告は,上記2のとおり本件発明と被告装置2に異なる部分があるとしても,上記各要件を満たすので(なお,被告は第4要件及び第5要件を争っていない。),均等による専用実施権等の侵害が成立すると主張するものである。 まず,第1要件について判断する。 ア本件明細書(甲1の2)の【発明の詳細な説明】欄には,以下の趣旨の記載がある。 本件発明は,画像源を使用してステージ等の背景の中で動く映像を表示する装置に関する(1欄13~14行)。 周知の透視講演,すなわち,映像をスクリーン上に投影して行う講演の場合,講演者は,投影器とスクリーンの間の光円錐の外側に立つことになり,仮にこの光円錐の内側に入ることになれば,投影器からスクリーンへ投影される光の一部を遮ることになって,講演者の影がスクリーン上に現れる。このような透視講演は,素人が映像を用いて講演をする- 13 -ような場合には十分であるが,観客が映像に映し出される品物に興味を生じた場合,講演を高い技術レベルで行う必要がある場合,くつろいだ状態で視覚効果に結び付けようとする場合には,十分であるといい難いものであった。また,透視講演とは異なる従来技術として,ステージの前部領域にガラス板を斜めに配置したゴースト 要がある場合,くつろいだ状態で視覚効果に結び付けようとする場合には,十分であるといい難いものであった。また,透視講演とは異なる従来技術として,ステージの前部領域にガラス板を斜めに配置したゴーストトリックがあるが,これは,ガラス板の下のステージの沈んだ部分に役者がいて,この役者がステージの下にある投光装置で照らされてその映像がガラス板に投影されることで,観客席からは仮想的な映像として見えるというものであった。 (1欄15行~3欄18行)本件発明の課題は,上記の透視講演やゴーストトリックを前提として,映像を用いた講演をくつろいだ状態で行え,講演者が映像の中に入ることができ,これによってスクリーン等の画面上で映像の再生が乱れることのない装置を提供することにある(3欄21~25行)。 この課題を解決するため,本件発明は,ステージの中央領域の床に反射面を配置し,透明で滑らかなフィルムの下端を反射面と背景の間の一定の個所に,また上端を天井のもっと前方の個所に保持するように,このフィルムがステージの床と天井の間にその幅全体にわたり延びていて,画像源を天井のところでそこに保持されているフィルムの上端の前に配置し,反射面の方に向けたものである。本件発明の装置は,自動車の運転者がフロントガラスで体験する物理原理,すなわち,フロントガラスの前の保管個所の上にある物が運転者には走行方向に見てフロントガラスの前にあるかのように見えるようにフロントガラスに映るという原理を利用したものである。本件発明による装置では,講演する品物が画像源から保管個所に相当する反射面上に投影される。そして,観客には講演する品物がステージの背景に見えるように透明で滑らかなフィルムに映える。ステージの幅全体にわたり延びていて,床と天井に保持さ- 14 -れているフィルム 射面上に投影される。そして,観客には講演する品物がステージの背景に見えるように透明で滑らかなフィルムに映える。ステージの幅全体にわたり延びていて,床と天井に保持さ- 14 -れているフィルムは自動車のフロントガラスのような作用をする。(3欄25~44行)本件発明を用いた講演では,観客は反射面からフィルムに反射するどんな品物もフィルムの後ろに見ることができる。講演者はフィルムに映る画像を乱すことも講演者の影がフィルムに映し出されることもなく,画像の中に入って身振り手振りを交えて講演することができる。(3欄44行~4欄3行)。 反射面はステージの床に置く白いスクリーンであっても,単純なカラー塗装であってもよい。本件発明の装置は上下移動する床のあるステージで効果的に使用される。(4欄45行~5欄3行)図面に示す実施形状の例について,本件発明を更に説明する。本件発明の装置を単純化した模式側面図である第1図及び実施例を示す第2図~第5図では,いずれも,画像源は天井に,反射面は床に配置され,フィルムの上端は観客席から見て手前側に,下端は奥側に保持されるように図示されている。(5欄17~30行,第1図~第6図)イ以上の本件明細書の記載によれば,本件発明は,講演者の立ち位置によってはスクリーンに投影される画像に干渉するという従来技術の問題点を解決するために,自動車のフロントガラスの前に置かれた物(これがフロントガラスの下にあることは明らかである。)がフロントガラス(観測者である運転者から見て上端が手前に,下端が奥にあることは明らかである。)に映り,フロントガラスの背景に存在するように見えるという物理原理をステージ等の背景に映像を表示することに利用したものであって,ステージの床に反射面(上記フロントガラスの例において背景 である。)に映り,フロントガラスの背景に存在するように見えるという物理原理をステージ等の背景に映像を表示することに利用したものであって,ステージの床に反射面(上記フロントガラスの例において背景に存在するように見える物が置かれる場所に相当する。)を配置し,フィルム(フロントガラスに相当する。)の上端を観客席側から見て手前に,その下端を奥に保持するとともに,表示される物を反射面に直- 15 -接置くのではなく,これに対面する天井に画像源を配置するとの構成を採用した点に,本件発明の本質的部分があるものと解される。 ウこれに対し,原告は,フィルムを反射面に向かい合うように傾斜させて配置したこと及び反射面の反対側に画像源を配置したことが本件発明の本質的部分であり,画像源と反射面の上下その他具体的な保持・配置関係は本質的部分でないと主張する。 そこで判断するに,本件明細書においては,自動車のフロントガラスの手前にある「保管場所」と本件発明の「反射面」をそのままの位置関係で対応させて面が床(下)にあるものとして記載されているのであって(第1図についても,支持部材22の形の下部保持部と巻取パイプ24の形の上部保持部とを伴うフィルム20(5欄35~37行),第1図の左にいる観客(同41行)との記載によれば,観客から見た上下及び前後を踏まえた上で作図されたものであると解される。),画像源と反射面の位置関係が任意に変更可能であることを示唆する記載はない。かえって,反射面を床に設け書の記載上,特許請求の範囲に規定された画像源と反射面の上下関係等が本件発明の本質的部分に当たらないとみることはできないと考えられる。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 そうすると,本件発明と被告装置2の相違点は,本件発明の本質的部分についてのも 発明の本質的部分に当たらないとみることはできないと考えられる。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 そうすると,本件発明と被告装置2の相違点は,本件発明の本質的部分についてのものというべきであるから,被告装置2は均等侵害の第1要件を充足しないものと解するのが相当である。 したがって,他の均等侵害の要件を検討するまでもなく,被告装置2が本件発明の技術的範囲に属するということはできない。 (本件特許の無効理由の有無)について被告は,原告が主張する本質的部分を本件発明の構成として理解するとすれ- 16 -ば,本件特許には無効理由がある旨主張するが,本質的部分に関する原告の主張を採用できないことは上記3のとおりであるから,被告の上記主張はその前提を欠き失当である。 (差止めの必要性)について被告装置1についてアイのとおり,被告装置1は本件発明の技術的範囲に属するから,被告による被告装置1の製造等は原告の専用実施権の侵害に当たる。 そして,前記1で判示したところによれば,被告は,被告装置1を製造し,使用したことがあり,また,被告が被告装置1及び2を輸入した輸入元である会社は日本国外において被告装置1と同様の床反射方式の3Dホログラムシアターの製造等をしていると認められること(甲2,13)を併せて考慮すれば,被告が現時点において被告装置1を製造等していないとしても,差止めの必要性を否定することはできないと解される。 したがって,原告は,被告に対し,特許法100条1項に基づく被告装置1の製造等の差止めを求めることができる。 イ原告は同条2項に基づき被告装置1の廃棄を求めているが,本件の証拠上,被告が被告装置1を所持していると認めるに足りないから,被告装置1に係る廃棄請求は理由がないという めを求めることができる。 イ原告は同条2項に基づき被告装置1の廃棄を求めているが,本件の証拠上,被告が被告装置1を所持していると認めるに足りないから,被告装置1に係る廃棄請求は理由がないというべきである。 被告装置2について前記2及び3で判示したとおり,被告装置2は本件発明の技術的範囲に属するものでないから,被告装置2に係る差止め及び廃棄の請求はいずれも理由がない。 (損害の有無及びその額)について被告装置1についてア前記1のとおり,被告による被告装置1の製造等は展示会での宣伝のために行われたものであって,他に被告が被告装置1の販売,貸渡し等によ- 17 -り利益を得たと認めるに足りる証拠はない。したがって,特許法102条2項に基づく原告の請求は認められない。 イ一方,原告は,被告による専用実施権等の侵害行為により本件訴えの提起を余儀なくされたということができるから,弁護士費用相当額の損害は被告の行為と相当因果関係があるというべきである。そして,事案の内容等本件に表れた一切の事情を考慮すれば,その額は50万円とするのが相当である。 したがって,原告は,被告に対し,民法709条に基づく損害賠償金50万円及びこれに対する不法行為の日の後(訴状送達の日)である平成26年10月9日から支払済みまで同法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 被告装置2について,被告装置2に係る損害賠償請求は理由がない。 7 結論以上によれば,原告の請求は前記5の限度で理由があるからその限度で認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官長谷川浩二 主文 からその限度で認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 理由 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官長谷川浩二 裁判官清野正彦 裁判官中嶋邦人 (別紙)被告装置目録 1 装置名 3Dホログラムシアター方式床反射方式 2 装置名 3Dホログラムシアター方式天井反射方式
▼ クリックして全文を表示