平成24(行ウ)133 遺族補償不支給処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年9月17日 東京地方裁判所
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判決文本文55,627 文字)

平成26年9月17日判決言渡平成24年(行ウ)第133号遺族補償不支給処分取消請求事件主文 1 八王子労働基準監督署長が平成20年11月14日付けで原告に対してした労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料を支給しない旨の各処分をいずれも取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求の趣旨主文と同旨第2 事案の概要本件は,原告が,その子である亡P1について,P2株式会社(以下「本件会社」という。)における過重な労働が原因で,精神障害を発症し,あるいは,本件会社に就職する前から発症していた精神障害が著しく悪化し,その結果自殺したものであり,当該精神障害が労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)7条1項1号及び労働基準法(以下「労基法」という。)75条所定の業務上の疾病に該当するとして,平成20年5月15日,八王子労働基準監督署長(以下「本件処分行政庁」という。)に対し,遺族補償給付(同法79条)及び葬祭料(同法80条)の各支給を請求したところ,本件処分行政庁が同年11月14日付けでいずれも支給しない旨の各処分(以下「本件各不支給処分」という。)をしたため,原告において,その取消しを求める事案である。 1 前提となる事実以下の事実は,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により認めることができる。 (1) 当事者等ア本件会社は,東京都,神奈川県,埼玉県及び千葉県の主要ターミナル駅の駅ビルや大規模商業施設内において飲食店を経営することを業とする株 式会社である。 本件会社は,P3(カジュアルレストラン),カフェ等の5部門に分けて事業を展開していた。 イ亡P1は,昭和56年▲月▲日生まれの女性であり,原告は亡P1の母であ 式会社である。 本件会社は,P3(カジュアルレストラン),カフェ等の5部門に分けて事業を展開していた。 イ亡P1は,昭和56年▲月▲日生まれの女性であり,原告は亡P1の母である。亡P1は,高校を卒業するまで長野県●市の実家で過ごし,平成13年4月のP4大学法学部入学を機に上京し,以後死亡するまで,東京都内で一人暮らしをしていた。 (甲7,16,乙13,23〔841頁から857頁まで,861頁〕)(2) 亡P1の勤務状況ア亡P1は,平成17年3月に大学を卒業し,同年5月8日,本件会社にアルバイト(本件会社では「○」と呼ばれている。以下「○」という。)として採用され,本件会社がP5(以下「本件ショッピングセンター」という。)4階に設置する喫茶店「P6」(以下「本件店舗」という。)で,主に接客業務に従事した。以後,亡P1は,平成18年6月29日頃,本件会社と特約社員雇用契約を締結し,さらに同年8月31日には期間の定めのない雇用契約を締結し,同年9月1日に,本件会社におけるアシスタントマネージャーの職位として本件店舗の店舗責任者に就任し,死亡するまでの間,本件店舗の運営全般にかかる管理業務に従事した。 イ亡P1の,労働時間に関連する労働条件は,本件店舗の営業時間が,午前10時から午後8時までであり,従業員はシフトを組んで就労していたことを前提に,次のとおりとなっていた。 (ア) 労働時間制度 1か月単位の変形労働時間制1日8時間,1週40時間(イ) 所定休憩時間 60分(ウ) 所定休日 4週8休,年間107日このうち,休憩については,30分の休憩を2回に分けてとることとさ れていたが,実際には,平成18年9月以降は,1回分の 休憩時間 60分(ウ) 所定休日 4週8休,年間107日このうち,休憩については,30分の休憩を2回に分けてとることとさ れていたが,実際には,平成18年9月以降は,1回分の休憩しかとることができなかった。 また,本件会社の正社員は,本件店舗に備付けのタイムレコーダーにIDカードを通す方法で,出勤時刻及び退勤時刻を登録することとされており,亡P1もこれによっていた(ただし,出勤時刻の打刻は制服への着替えを終えてから,退勤時刻の打刻は私服への着替えをする前に行われていた。)。 ウ本件店舗の店舗責任者となった亡P1の指導については,本件店舗を含むP3部門の統括者(スーパーバイザー)であったP7及び,亡P1の直属の上司とされ,本件ショッピングセンターの8階にある本件会社が運営するカフェレストラン「P3P8店」の店舗責任者であったP9マネージャー(以下「P9」という。)が,それぞれ行うこととされていた。 エ本件店舗の人的態勢は,平成18年12月▲日時点で原告以外の従業員が15名在籍していたが,全員が○又はパート社員であった。 なお,本件会社では,人手が不足した店舗に,他店舗の従業員を応援に行かせることがあり,「ヘルプ制度」と呼ばれていた(以下,同制度による応援要員を「ヘルプ」という。)。 (甲8,乙23〔298頁から311頁まで,383頁,683頁から686頁まで,859頁,860頁,880頁,881頁〕)(3) 亡P1の死亡亡P1は,平成18年12月▲日午前8時30分頃,自宅マンション3階のベランダから飛び降り,これにより生じた頭部打撲を原因とする脳挫傷により,同日午前11時15分頃,死亡した。 原告は,平成18年12月▲日,喪主として,亡P1の葬儀を執り行った。 (乙4,13)(4 から飛び降り,これにより生じた頭部打撲を原因とする脳挫傷により,同日午前11時15分頃,死亡した。 原告は,平成18年12月▲日,喪主として,亡P1の葬儀を執り行った。 (乙4,13)(4) 亡P1の受診歴 ア亡P1は,帰省中の平成15年8月26日,体重減少,不眠及び生理不順等を来したため,P10病院を,同月9月3日には,やせすぎ,無月経等を主訴として,P11病院の内科・心療内科を受診した。 イ亡P1は,帰省を終えた後の平成15年10月15日,不眠を訴え,P12病院を受診した。亡P1は「うつ病」と診断され(以下「本件精神障害」ということがある。),以後平成18年12月▲日までの間,定期的に同病院に通院し,P13医師の診察を受けた。 (乙15から18まで,乙23〔667頁〕)(5) 本件訴えの提起に至る経緯原告は,亡P1が本件店舗における過重な業務により,精神疾患を発症して死亡したとして,当該精神疾患が労災保険法7条1項1号及び労基法75条所定の業務上の疾病に該当し,亡P1の死亡について労災保険法12条の8第2項,労基法79条,同法80条所定の災害補償事由が生じた場合にそれぞれ当たるとして,平成20年5月15日付けで,本件処分行政庁に対し,労災保険法に基づき,遺族補償給付(遺族補償一時金)の支給及び葬祭料の支給を請求した。 これに対し,本件処分行政庁は,請求にかかる精神障害及び死亡については,平成22年厚生労働省令第69号による改正前の労働基準法施行規則別表第1の2第9号所定の疾病(現行の労働基準法施行規則(以下「労基法施行規則」という。)別表第1の2第9号所定の疾病)に該当しないとして,平成20年11月14日付けで,本件各不支給処分をした。 原告は,本件各不支給処分を不服として,平成20年12月11 下「労基法施行規則」という。)別表第1の2第9号所定の疾病)に該当しないとして,平成20年11月14日付けで,本件各不支給処分をした。 原告は,本件各不支給処分を不服として,平成20年12月11日,東京労働局労働者災害補償保険審査官に対し審査請求をしたが,同審査官は,平成22年11月4日付けで同審査請求を棄却する決定をした。 原告は,同決定を不服として,平成22年11月26日,労働保険審査会に対し再審査請求をしたが,同審査会は,平成23年9月28日付けで同再審査 請求を棄却する裁決をし,原告は,同月29日に,同裁決のなされたことを知った。 原告は,平成24年3月9日,本件訴えを提起した。 (当裁判所に顕著な事実,乙5,8から12まで)(6) 精神障害の業務起因性に関する行政通達等ア旧労働省は,精神障害の業務起因性に関する判断指針として,精神医学,心理学,法律学の専門家らで構成された「精神障害等の労災認定に係る専門検討会」が平成11年7月29日に取りまとめた報告書を踏まえ,「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(以下「判断指針」という。)を策定し,これを平成11年9月14日付けで労働省労働基準局長通達「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」(基発第544号)として都道府県労働基準局長あてに発出した。 その後,精神障害の業務上外の判断は,判断指針等に基づき行われてきたが,精神障害の労災請求件数が増加したこと等を踏まえ,労災請求に対する審査の迅速化等の要請に対応するため,厚生労働省(以下「厚労省」という。)は,法学及び医学の専門家からなる「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」を招集し,迅速かつ公正な労災補償を行うために必要な事項についての検討を求めた。厚労省は,同検討 下「厚労省」という。)は,法学及び医学の専門家からなる「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」を招集し,迅速かつ公正な労災補償を行うために必要な事項についての検討を求めた。厚労省は,同検討会が平成23年11月8日に取りまとめた「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書」(以下「検討会報告書」という。)の内容を踏まえ,「心理的負荷による精神障害の認定基準」(以下「認定基準」という。)を策定し,平成23年12月26日付けで,厚労省労働基準局長通達「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(基発1226第1号)を都道府県労働局長あてに発出し,判断指針を廃止した。 イ認定基準の内容認定基準の内容は別紙1「心理的負荷による精神障害の認定基準」のとお りであり,その主要な内容は次のとおりである。対象疾病,認定要件及び認定要件に関する基本的な考え方は,判断指針と大きく異なるものではない。 (ア) 対象疾病国際疾病分類第10回修正版(以下「ICD-10」という。)第Ⅴ章「精神および行動の障害」に分類される精神障害(その大分類は,ICD-10第V章「精神および行動の障害」分類記載のとおりである。)であって,器質性のもの及び有害物質に起因するものを除くものとされ,主として「ICD-10第Ⅴ章「精神および行動の障害」」記載のF2からF4までに分類される精神障害(「統合失調症,統合失調症型障害および行動の障害」(F2),「気分(感情)障害」(F3),「神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害」(F4))である。 (イ) 認定要件①対象疾病を発病していること,②対象疾病の発病前おおむね6か月の間に業務による強い心理的負荷が認められること,③業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病 ある。 (イ) 認定要件①対象疾病を発病していること,②対象疾病の発病前おおむね6か月の間に業務による強い心理的負荷が認められること,③業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと,という3要件を掲げ,そのいずれをも満たした場合に,当該対象疾病に該当する精神障害につき,労働基準法施行規則別表第1の2第9号に該当する業務上の疾病として取り扱う。 認定基準は,対象疾病の発病に至る原因の考え方につき,「ストレス-脆弱性理論」(環境由来の心理的負荷(ストレス)と,個体側の反応性,脆弱性との関係で精神的破綻が生じるかどうかが決まり,心理的負荷が非常に強ければ,個体側の脆弱性が小さくても精神的破綻が起こるし,逆に脆弱性が大きければ,心理的負荷が小さくても破綻が生じるとする考え方)に依拠しており,そのような考え方に基づいて,前記認定要件②が設けられている。 (ウ) 対象疾病発病の有無等の判断 前記認定要件①の対象疾病の発病の有無,発病時期及び疾患名について,「ICD-10 精神および行動の障害臨床記述と診断ガイドライン」に基づき,主治医の意見書や診療録等の関係資料,請求人や関係者からの聴取内容,その他の情報から得られた認定事実により,医学的に判断される。 (エ) 業務による心理的負荷の強度の判断a 出来事の評価前記認定要件②に関し,業務による出来事及びその後の状況を具体的に把握し,それらによる心理的負荷の強度を判断する際に用いる別紙1のうち「別表1 業務による心理的負荷評価表」(以下「認定基準別表1」という。)が定められ,これを指標として,出来事の心理的負荷を「強」(業務による強い心理的負荷が認められるもの)「中」及び「弱」の三段階に区分する。 具体的には,発病前おおむ 下「認定基準別表1」という。)が定められ,これを指標として,出来事の心理的負荷を「強」(業務による強い心理的負荷が認められるもの)「中」及び「弱」の三段階に区分する。 具体的には,発病前おおむね6か月の間に,認定基準別表1の「特別な出来事」(以下「「特別な出来事」」という。)が認められた場合は,心理的負荷の総合評価を「強」と判断する。「特別な出来事」に該当する出来事がない場合には,業務による個々の具体的な出来事について,心理的負荷の程度が「強」,「中」,「弱」のいずれであるかを評価し,いずれかの出来事が「強」の評価となる場合には,業務による心理的負荷を「強」と総合評価し,いずれの出来事も単独では「強」の評価にならない場合には,出来事が関連して生じているときは,全体を一つの出来事として評価し,原則として,最初の出来事を認定基準別表1に当てはめ,関連して生じた出来事については出来事後の状況とみなす方法により全体評価を行い,出来事に関連性がないときは,出来事の数,各出来事の内容(心理的負荷の強弱),各出来事の時間的な近接の程度を基に,全体的な心理的負荷を評価する。 b 時間外労働時間数の評価 発病日から起算した直前の1か月間におおむね160時間を超える時間外労働(週40時間を超える労働時間数をいう。)を行った場合等には,当該極度の長時間労働に従事したことのみで心理的負荷の総合評価を「強」とする。長時間労働以外に特段の出来事が存在しない場合には,長時間労働それ自体を出来事とし,認定基準別表1にいう「1か月に80時間以上の時間外労働を行った」という具体的出来事に当てはめて心理的負荷を評価する。また,発病日から起算した直前の2か月間に1月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行い,その業務内容が通常その程度の労働時間を要 を行った」という具体的出来事に当てはめて心理的負荷を評価する。また,発病日から起算した直前の2か月間に1月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行い,その業務内容が通常その程度の労働時間を要するものであった場合等には,心理的負荷の総合評価を「強」とする。 また,他の出来事がある場合,出来事に対処するために生じた長時間労働は,心身の疲労を増加させ,ストレス対応能力を低下させる要因となることや,長時間労働が続く中で発生した出来事の心理的負荷はより強くなることから,出来事自体の心理的負荷と恒常的な長時間労働(月100時間程度となる時間外労働)を関連させて総合評価を行う。 (オ) 既に発病している精神障害の悪化の業務起因性業務以外の原因や業務による「強」と評価できない心理的負荷により発病して治療が必要な状態にある精神障害が悪化した場合,原則としてその悪化について業務起因性は認められない。ただし,「特別な出来事」に該当する出来事があり,その後おおむね6か月以内に対象疾病が自然経過を超えて著しく悪化したと医学的に認められる場合については,その「特別な出来事」による心理的負荷が悪化の原因であると推認し,悪化した部分について,業務上の疾病として取り扱う。ここで,「治療が必要な状態」とは,実際に治療が行われているものに限らず,医学的にその状態にあると判断されるものを含む。 (カ) 自殺について 業務によりICD-10のF0からF4に分類される精神障害を発病したと認められる者が自殺を図った場合には,精神障害によって正常の認識,行為選択能力が著しく阻害され,あるいは自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されている状態に陥ったものと推定し,業務起因性を認める。 (乙1,2,22)(7) によって正常の認識,行為選択能力が著しく阻害され,あるいは自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されている状態に陥ったものと推定し,業務起因性を認める。 (乙1,2,22)(7) 本件に関する医学的知見本件に関する医学的知見は,次のとおりである。 ア東京労働局地方労災医員協議会精神障害等専門部会の意見認定基準上,自殺に係る事案は,地方労災医員協議会精神障害等専門部会に協議して合議による意見を求めることとされている。本件に関し,東京労働局地方労災医員協議会精神障害等専門部会が本件処分行政庁に提出した意見書の概要は,次のとおりである。 (ア) 亡P1は,平成15年1月頃からダイエットを契機にICD-10のF50.0の「神経性無食欲症」を発病したものと推察され,同年9月頃にF32の「うつ病エピソード」を発病したものと考える。以来,抗うつ薬等の処方を受けながら日常の社会的活動を営んでいたことが確認されており,当該精神障害は,寛解することなく,動揺を伴いながら持続していたものと考えるのが妥当である。平成18年12月▲日の自殺は,当該精神障害によって正常な認識,行為選択能力が著しく阻害された病的心理のもとでなされた自殺であった可能性が高い。 (イ) 亡P1について,平成15年9月以前6か月間において,アルバイト等労働者として就労していた事実は確認されていないので,判断指針に基づく検討は要さない。したがって,本件の職場における心理的負荷を受けた出来事は認められない。 イ P13医師の平成20年7月12日付け意見書(乙19)の概要 亡P1は,平成15年9月頃,うつ病に罹患したが,抗うつ薬を中心に加療すると改善が認められた。平成18年1月に一度増悪あり,更に同年12月にも食欲低下が見られていた。 (乙19)の概要 亡P1は,平成15年9月頃,うつ病に罹患したが,抗うつ薬を中心に加療すると改善が認められた。平成18年1月に一度増悪あり,更に同年12月にも食欲低下が見られていた。 ウ P13医師の平成21年3月14日付け意見書(乙20)の概要(ア) 平成15年10月15日から平成18年5月までの診療経過不眠を主訴として受診した。食欲の低下や倦怠感,不安感,情動不安定が診療の経過で認められたため,軽度うつ病若しくは気分変調症と判断して投薬が開始された。平成15年11月中旬から改善傾向が認められたものの,症状残存が認められたため,平成16年1月から認知行動療法が開始された。同年3月頃からさらなる改善が認められ,同年5月にはやや軽躁ともとれるほどに改善が認められていた。以後は長期に症状が安定し,寛解と見られたため,投薬と支持的精神療法が中心の加療を行い,経過を観察していた。平成18年1月にパキシルを20mgから10mgに減量した際,足の冷感や軽度の抑うつ気分が見られるなど病像の変化が認められたが,20mgに戻したところ速やかに改善した。 (イ) 平成18年6月から同年12月までの診療経過及び病像の特徴状態が引き続き安定していたため,平成18年6月からは2か月間隔で診察することとした。最終診察時の平成18年12月▲日には1日1食となるが,仕事が多忙であるための摂食機会の低下であり,病像の悪化とは判断していない。睡眠状況も生活リズムが保たれているように悪化はなく,明らかな思考制止や抑うつ気分も認めていない。会話量も,それ以前の状況と変化は見られず,希死念慮を疑わせる所見も得られていない。全体的な病像として,いわゆるうつ病の「寛解期」であったと判断される。 (ウ) 疾患と死亡 分も認めていない。会話量も,それ以前の状況と変化は見られず,希死念慮を疑わせる所見も得られていない。全体的な病像として,いわゆるうつ病の「寛解期」であったと判断される。 (ウ) 疾患と死亡との関係亡P1が学生時代から有していた疾患は,臨床的にわずかな変化は動揺性に認めたものの,長期にわたって安定しており,寛解の状態であったと 考えられる。死亡直前の1週間前においても同様であり,診察時の臨床所見からは,今回の死亡に対して直接的な影響を及ぼしたとは考えにくいエ P14病院精神神経科P15医師の平成21年12月7日付け意見書(甲20。以下「意見書①」という。)の概要(ア) 亡P1の疾患が寛解していたかについて平成16年1月から2月のP12病院の診療録には,亡P1の症状評価に関する記載が乏しく,同年3月から5月頃には,うつ病の部分寛解にあったとするのが妥当と判断される。平成17年3月26日以降,うつ病のはっきりした徴候や症状がみられない状態が,同年11月一杯は見られず,この間は完全寛解に至っていたと判断される。 (イ) 亡P1の自殺前の精神科診断について平成18年12月▲日以降,うつ病エピソード(F32)又は重度ストレス反応及び適応障害(F43)のいずれかの診断が当てはまったとするのが妥当と判断され,いずれにせよ,亡P1は自殺前,うつ状態の精神的不調にあった。 (ウ) 業務起因性について亡P1の労働状況は,①困難なシフト調整,達成困難なノルマの重圧のある要求度の高い仕事で,②シフトが組めず休憩も取れず,交代要員が見つからなければ亡P1が業務に従事しなければならない裁量度の低い仕事であった。高要求かつ低裁量の仕事の,うつ状態に対するオッズ比は4. 06にのぼる。ここでオ シフトが組めず休憩も取れず,交代要員が見つからなければ亡P1が業務に従事しなければならない裁量度の低い仕事であった。高要求かつ低裁量の仕事の,うつ状態に対するオッズ比は4. 06にのぼる。ここでオッズ比とは,ある事象の起こりやすさを2つの群で比較して示す統計学的な尺度をいい,ある事象の起こる確率をpとして,p/(1-p)の値をいうが,オッズ比が1であるとき,比較対象となっている2つの群における事象の発生しやすさは等しくなる。一方の群で1を超えると他方の群は1を下回ることになるが,前者では事象の発生が起こりやすく,後者では事象の発生が起こりにくいことになる(甲25)。 亡P1への支援は不十分であり,支援度の低い仕事であった上,ヘルプ要請という仕事上の重大な失敗,○の激減などといった,職業上のストレスフルな出来事が2個以上あり,これらストレス因子のうつ状態に対する相対リスクは10.2倍となる。さらに,亡P1の長時間労働の相対リスクは2.2である。亡P1は,自殺の前日である平成18年12月▲日に,○15名のうち8名が退職する事態に直面した。このような「職業上の問題」が発生した月にうつ病を発症するリスクは3.12である。 このように,労働ストレス因子とうつ状態やうつ病発症との因果関係を解明した研究に照らしてみても,亡P1のうつ状態は業務に起因するものであったとするのが妥当である。 オ P15医師の平成25年5月14日付け補充意見書と同年11月6日付け補足説明(甲23,33。以下,併せて「意見書②」という。)の概要(ア) 中国において,519名の自殺既遂者と,他の傷害で死亡した536名をランダムに選び「心理学的剖検」を行った結果,死亡前2週間のうつ病が重症なほど,調整済みオッズ比が大きくなり,自殺既遂時の急性ストレ 国において,519名の自殺既遂者と,他の傷害で死亡した536名をランダムに選び「心理学的剖検」を行った結果,死亡前2週間のうつ病が重症なほど,調整済みオッズ比が大きくなり,自殺既遂時の急性ストレス得点,死亡年の慢性ストレス得点もそれぞれ高いほど調整済みオッズ比が十分大きな値となった。そして,自殺時の急性ストレス得点が高い方の3分の1,かつ死亡年の慢性ストレス得点が高い方の3分の1の場合の調整済みオッズ比は,いずれも十分に大きく,これらは単独でも自殺の原因となる。 (イ) 本件についてみると,亡P1のうつ病が動揺を伴いながら持続していたとしても,次のとおり,業務関連要因の調整済みオッズ比の方が明らかに高く,個体側要因よりも,業務関連要因の方が,圧倒的に自殺に対する因果効果が大きいと推定されるから,亡P1の自殺は,業務に起因するものと結論づけられる。 a 個体側要因の調整済みオッズ比 ・自殺未遂歴 12.9・死亡前2週間の抑うつ状態 6.4・12.9×6.4≒83b 業務関連要因の調整済みオッズ比・自殺既遂時の急性ストレス得点の高い方の3分の1 9.2・死亡前の年の慢性ストレス得点の高い方の3分の1 7.6・死亡前2日間の強いライフイベント経験 7.4・9.2×7.6×7.4≒518カ P16クリニック院長P17医師の平成25年2月14日付け意見書(乙24)の概要(ア) うつ病の「寛解」とは,症状がおおむね消退した状態を指し,寛解の状態が半年以上続くと「回復」と呼ばれる状態に至る。 (イ) 亡P1の最終受診時である平成18年12月▲日において,食欲の低下もみられ,1日1食となってい がおおむね消退した状態を指し,寛解の状態が半年以上続くと「回復」と呼ばれる状態に至る。 (イ) 亡P1の最終受診時である平成18年12月▲日において,食欲の低下もみられ,1日1食となっていたこと,抗不安薬の処方も使用していたことから,同日時点において亡P1のうつ病が寛解していたと診断することはできない。P12病院の診療録の記載からすると,どの時点においても,寛解に至っていたことを読み取れるだけの情報はないが,本件症例としては,うつ病の症状である睡眠障害が,抗うつ薬の投与のみでは改善消失せずに,遷延して残っていたとみるのが,最も実態に近いものと考えられる。すなわち,本件の資料等からすれば,亡P1の精神障害は,寛解・回復することなく,動揺を伴いながら持続していたものと考えるのが妥当であり,亡P1の自殺は,当該精神障害が増悪したことによって,正常な認識,行為選択能力が著しく阻害された病的心理のもとでなされたものであった可能性が高い。 2 争点及びこれに対する当事者の主張(以下,平成18年の出来事については,年の記載を省略することがある。) 本件の争点は,亡P1が労災保険法7条1項1号及び労基法75条所定の業務上の疾病(労基法施行規則別表第1の2第9号所定の疾病)に当たる精神障害を発症し,これにより自殺したといえるか(亡P1の精神障害及び死亡の業務起因性)であり,争点に関する当事者の主張は,次のとおりである。 (1) 原告の主張亡P1の大学時代に罹患したうつ病は寛解していた。亡P1は,業務による強い心理的負荷によって精神障害を新たに来し,自殺したものである(主位的主張)。仮に,本件精神障害が寛解・回復することなく動揺を伴いながら持続していたとしても,亡P1の自殺は,当該精神障害が業務における心 的負荷によって精神障害を新たに来し,自殺したものである(主位的主張)。仮に,本件精神障害が寛解・回復することなく動揺を伴いながら持続していたとしても,亡P1の自殺は,当該精神障害が業務における心理的負荷によって自然経過を超えて著しく悪化したことによるものである(予備的主張)。 ア平成15年9月に発症した精神障害が寛解していることについて(主位的主張)うつ病の「寛解」とは,病状の改善が生じ,症候学的に診断基準を満たさないのみならず,ごく軽微な症状しか残存しないようになったことをいう。 亡P1は,平成15年の夏頃にうつ病の症状が出たことはあるが,服薬とカウンセリングの結果,数か月で症状はなくなっており,平成16年5月以降は長期間にわたって症状が安定し,その後,少なくとも同年8月中旬から10月中旬のいずれかの時期に,完全寛解といえる状態になっていた。したがって,亡P1の自殺は,平成15年発症の精神障害に起因するものではない。 イ亡P1の従事していた業務の過重性について亡P1の従事していた業務が過重であったことは次に述べるとおりであり,認定基準に照らせば,当該業務が亡P1の精神障害(ICD-10によれば,うつ病エピソード(F32)若しくは重度ストレス反応及び適応 障害(F43)に当たる。)を引き起こしたことは明らかである。亡P1は,平成18年12月▲日以降,これらのいずれかを発症し,自殺に至ったものである。 (ア) 過去に経験したことのない仕事についたことによる強度の心理的負荷a ○と店舗責任者の業務内容及び責任は全く異なっており,亡P1は,本件店舗で○としての業務を行った経験はあるが,店舗責任者としての業務を遂行するに十分な経験は有していなかった 荷a ○と店舗責任者の業務内容及び責任は全く異なっており,亡P1は,本件店舗で○としての業務を行った経験はあるが,店舗責任者としての業務を遂行するに十分な経験は有していなかった。すなわち,亡P1は,本件会社が定める店舗責任者養成システム(キャリアアップシステム)に反する異例の措置として,本来1年間の予定であった社員研修を実質1か月半で終え,亡P1自身の希望とは異なり,正規雇用された翌日に,本件店舗の店舗責任者への就任を命ぜられたのであり,店舗の営業責任及び○の管理等,マネジメントの経験を欠いた状態で店舗責任者としての業務に従事することとなった。本件店舗に勤務する正社員は亡P1のみであり,亡P1は,職場において,相談し,業務を分担する同僚社員のいない状態で,現場労働と未経験のマネジメント業務との二重の負担にさらされた。 b 亡P1の上司は,P9及びP7であったが,P9は,カフェ部門の店舗や本件店舗での業務経験がなく,店舗責任者を指導すること自体が初めてであり,P9による教育指導や支援は不十分であった上,P7による支援,教育もないに等しい状況であった。また,亡P1の前任者が店舗責任者であった頃と異なり,経験豊富な○による支えもない状態であった。 c 亡P1の店舗責任者就任に伴う業務の変化は,認定基準における「具体的出来事」③の15の「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」に該当し,心理的負荷の程度についても 「過去に経験したことがない仕事内容に変更となり,常時緊張を強いられる状態となった」と評価される事実であり,心理的負荷は「強」である。 (イ) 違法営業の強要による強度の心理的負荷亡P1は,店舗責任者として取得していなければならなかった食品衛 態となった」と評価される事実であり,心理的負荷は「強」である。 (イ) 違法営業の強要による強度の心理的負荷亡P1は,店舗責任者として取得していなければならなかった食品衛生責任者資格及び防火管理者資格をいずれも保有しない状態で店舗責任者に就任した上,資格取得のための講習を受ける時間的余裕もなかった。 その結果,本件店舗は法令(食品衛生法及び消防法)の定めに違背した状態で営業していたことになり,仮にこの事実が発覚すれば,本件会社の信用を著しく毀損するものであった。 このように,亡P1は,本件店舗の責任者に就任させられたことにより,本件店舗の違法運営を強要された。このことは,認定基準における具体的出来事②の7の「業務に関連し,違法行為を強要された」に該当し,「業務に関連し,重大な違法行為(人の生命に関わる違法行為,発覚した場合に会社の信用を著しく傷つける行為)を命じられた」と評価される事実であり,心理的負荷は「強」である。 (ウ) 急激な仕事量の増大と長時間労働による強度の心理的負荷a 仕事量の増大について本件店舗には,午前9時から夕方までのシフトと,午前11時から閉店までの2つのシフトがあったが,本件店舗には亡P1以外に正社員がいなかった上,開店や閉店に関する業務を任せることのできる経験豊富な○が少なかったことから,2つのシフトを分担したり,開店や閉店時の担当を割り振ったりすることができず,すべての負担が亡P1に集中した。本件店舗は慢性的な○不足の状態であり,学生アルバイトが主力であったものの,大学の授業が始まる9月後半以降,シフト組みが困難となり,最低ラインのシフト組みを強いられ,P3P 8店に人的応援(ヘルプ)を要請することが常態化し,亡P1が現場労働に入ることも著しく ,大学の授業が始まる9月後半以降,シフト組みが困難となり,最低ラインのシフト組みを強いられ,P3P 8店に人的応援(ヘルプ)を要請することが常態化し,亡P1が現場労働に入ることも著しく増え,休日をとることもできなくなった。 また,業務連絡は携帯電話によってされていたため,出勤していない日や時間帯にも,業務に関する連絡(上司との連絡,○からの突発的な欠勤の申出等)が亡P1の携帯電話に届けられ,亡P1はこれらに応対せねばならず,業務のストレスから解放されないことが常態化した。 b 亡P1の労働時間について亡P1が本件会社に提出した「勤務実績」に,次の①から⑥までの考え方に基づき労働時間を加算すると,亡P1の各月の総労働時間は,少なくとも,別紙2のとおり平成18年9月は271時間26分,10月は304時間04分,11月は261時間30分,12月1日から▲日までは84時間12分となる。なお,個々の日に関する主張は,別紙3「亡P1の各日の労働時間の特定についての補充主張(原告)」のとおりである。 ① 休憩時間は,全て労働時間とする。 ② 着替えに要する時間として1日当たり30分を加算する。 ③ 亡P1の携帯電話のメール送受信記録,本件店舗内に設置されたパソコンからのメールの送信記録から推認される労働時間を加算する。 ④ 部門店長会議や各種の講習会・研修会に出席した労働時間を加算する。 ⑤ 亡P1が業務として行ったコーヒーマイスター試験に要した時間を労働時間として加算する。 ⑥ 上司であるP9とのミーティングを行った時間は労働時間とする。 c 前記a及びbの,亡P1の業務量及び拘束時間の実態は,認定基準 における具体的出来事③の15の「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事 た時間は労働時間とする。 c 前記a及びbの,亡P1の業務量及び拘束時間の実態は,認定基準 における具体的出来事③の15の「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」に該当し,心理的負荷については「仕事量が著しく増加して時間外労働も大幅に増える(倍以上に増加し,1月当たりおおむね100時間以上となる)などの状況になり,その後の業務に多大な労力を費した(休憩・休日を確保するのが困難なほどの状態となった等を含む))」と評価される事実であり,心理的負荷は「強」である。 (エ) ○の激減と店舗経営の破綻による強度の心理的負荷a 本件店舗は,慢性的な人手不足の状況にあり,平成18年10月以降,他店舗へのヘルプ要請を恒常的に行わなければならなくなった。 また,特定の○への負担も過重となった(このような中,亡P1が主戦力として頼りにしていたベテラン○のP18について,本件会社が正規社員として採用することを決め,平成18年11月一杯で本件店舗から引き抜くこととした。これにより,亡P1は多大な精神的打撃を受けた。)。 12月の段階で,15名在籍している○のうち6名が,年内又は年明けに退職することを申し出ており,亡P1は,繁忙期である年末年始のシフトを維持するため,退職を伸ばすよう説得していた。しかし,12月▲日には,更に2名の○から退職の申出があった。これにより,本件店舗の年末年始のシフト組みが成り立たず,営業停止に追い込まれることは必至の状況となった。 b このことは,認定基準における具体的な出来事②の4の「会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをした」に該当し,「会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをし,事後対応にも当たった」と評価される事実で 認定基準における具体的な出来事②の4の「会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをした」に該当し,「会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをし,事後対応にも当たった」と評価される事実であり,心理的負荷は「強」である。 (オ) その他,亡P1は,①達成困難なノルマを課され,実際に達成する ことができなかったほか,②店舗責任者として,客からのクレームについて最終的な責任者として対応しなければならず,また,③レジの誤差が1000円を超えるような金銭トラブルが続き,○と円滑な人間関係を形成しづらい状況であった。 (カ) 亡P1の精神障害が業務に起因するものであることは,一般的医学知見に沿って本件の事実関係を分析したP15医師の各意見書(甲20,甲23,33)にあるとおり,明らかである。 ウ精神障害発症後の増悪について(予備的主張)(ア) P15医師の意見書について現行の認定基準を踏まえつつ,同種の出来事が反復された場合の正当な評価方法を示したものが,意見書②(甲23,33)であるところ,同意見書によれば,亡P1の個体側要因の調整済みオッズ比は83,業務関連の要因の調整済みオッズ比は518である。したがって,亡P1の死亡については,業務関連の要因の方が,個体側要因に比べ,圧倒的に自殺に対する因果関係が大きいと推定できる。 (イ) 前記(ア)を踏まえると,仮に,平成15年に発症した本件精神障害が寛解していないとしても,本件は,その後に「極度の心理的負荷があった」といえる。 (ウ) そもそも,精神障害発症後の増悪について認定基準が要求する「特別な出来事」は狭きに失するのであって,平均的労働者であっても精神障害を発病させる危険性を有するほどに強い心理的負荷となるような出来事があり,おおむね6 害発症後の増悪について認定基準が要求する「特別な出来事」は狭きに失するのであって,平均的労働者であっても精神障害を発病させる危険性を有するほどに強い心理的負荷となるような出来事があり,おおむね6か月以内に精神障害が自然経過を超えて著しく悪化したと医学的に認められる場合については,精神障害の著しい悪化について業務起因性を認めるべきであるが,その場合にも,前記(ア)を踏まえると,業務起因性を肯定することができる。 エ業務以外の心理的負荷要因について 亡P1に,業務以外の心理的負荷要因が存在したとの点は,否認ないし争う。 (2) 被告の主張亡P1の自殺の原因となった精神障害は,亡P1が本件会社での業務を開始する前である平成15年9月に発症したものであり,その後も後記アのとおり,寛解又は回復することなく,動揺を伴いながら持続していたのであるから,そもそも当該精神障害の業務起因性は問題とならない。したがって,仮に当該精神障害の業務起因性が問題になるとしても,認定基準における「業務以外の原因により発病して治療の必要な状態にある精神障害が悪化した場合」として検討すべきこととなるが,本件では,後記イのとおり,認定基準に照らし,精神障害を発症させるほどの強い業務上の心理的負荷は存在しない。 ア平成15年9月に発症した精神障害が寛解していないことについて亡P1は,平成15年9月の発症以降継続的にP12病院に通院し,うつ病の治療を受け続けており,死亡に至るまでに診療や投薬が中断された事実はない。また,平成18年1月には,症状の増悪が見られ,同年12月には食欲の低下がみられる。亡P1が平成15年9月に発症した精神障害は,寛解又は回復することなく,動揺を伴いながら持続していたというべき い。また,平成18年1月には,症状の増悪が見られ,同年12月には食欲の低下がみられる。亡P1が平成15年9月に発症した精神障害は,寛解又は回復することなく,動揺を伴いながら持続していたというべきである。 イ亡P1の従事していた業務の過重性について(ア) 過去に経験したことのない仕事についたことによる強度の心理的負荷の存否についてa 原告が挙げる個々の事実は,次のとおり,いずれも客観的証拠に合致しないものであり,本件で「過去に経験したことがない仕事内容に変更となり,常時緊張を強いられる状態となった」と評価できる事実は存在しない。 ① 本件会社における「キャリアステップ」は飽くまで目安であり,実際は,個人の資質等に応じた柔軟な人事体制がとられていたのであって,亡P1が店舗責任者となったことは異例とはいえない。 ② 本件会社は,亡P1に対し,十分な支援・指導を行っていたものであり,上司らは,周囲の従業員にも亡P1のフォローを依頼し,亡P1が仕事をしやすい環境を整え,業務上の過重な負荷を負うことのないよう常に配慮していたことが窺われる。 ③ 本件店舗は,深夜早朝に営業を行うことはなく,食事メニューは手間のかからない軽食であり,調理用の器具も,操作の簡単なものばかりで,運営の負担は軽い店舗であった上,亡P1は,○として本件店舗に勤務していた際,店舗責任者の代行をした経験もあり,業務遂行に当たり十分な経験と能力を有していた。 ④ 本件会社が,亡P1に対し,別店舗に異動するか,本件店舗の店舗責任者になるかの選択を求めたところ,亡P1は,自ら希望して店舗責任者に就任することを選んだ。 b 以上のとおりであって,原告が挙げる個々の事実について,認定基準における「出来事の類型」に当てはまる事象は見い 求めたところ,亡P1は,自ら希望して店舗責任者に就任することを選んだ。 b 以上のとおりであって,原告が挙げる個々の事実について,認定基準における「出来事の類型」に当てはまる事象は見いだせない。 判断指針に則して検討すると,亡P1が店舗責任者に就任したという事実は認められるから,判断指針別表1の「出来事の類型」⑤「役割・地位等の変化」の「自分の昇格・昇進があった」には該当するが,その平均的な心理的負荷の強度は「Ⅰ」(日常的に経験する心理的負荷で一般的に問題とならない程度の心理的負荷)である。 (イ) 違法営業の強要による強度の心理的負荷の存否についてa 本件会社が,亡P1に違法営業を強要したとの事実は存在しない。 すなわち,①食品衛生法上,店舗責任者が同法上の食品衛生責任者である必要はなく,営業者か,当該施設の従事者から1名を定めれば足 り,衛生上支障がないかどうかという観点から柔軟な運用がなされている。②消防法上,店舗責任者が同法上の防火管理者でなければならないとの規定はない。③いずれの資格においても,本件会社では,ほとんどの場合,店舗責任者に就任してから資格を取得させる運用としており,亡P1についても同様であった(亡P1が資格を取得するまでは,前任者のP19が代行となっていたのであり,亡P1が資格を有しているかのように装って本件店舗を営業していた事実もない。)。 b 以上のとおりであって,原告の主張はそもそも誤りであり,認定基準や判断指針の項目に該当する事実は存在しない。 (ウ) 急激な仕事量の増大と長時間労働による強度の心理的負荷の存否についてa 仕事の内容及び量について仕事の内容・量に関して原告が主張する事実経過は,次のとおり,客観的な証拠等に合致せ 急激な仕事量の増大と長時間労働による強度の心理的負荷の存否についてa 仕事の内容及び量について仕事の内容・量に関して原告が主張する事実経過は,次のとおり,客観的な証拠等に合致せず失当である。 ① 本件店舗は,本件会社の営業に係る店舗の中では最も小さな店舗であり,運営上の負担は大きくなく,正社員を2名置く必要はなかったし,亡P1にはP9,P7のフォローもあったため,亡P1に全ての負担が集中していたと評価することはできない。 ② 本件店舗において,一時的に人員が不足した場合は,ヘルプ制度により,他店舗の従業員から応援を得ることが可能であった。 ③ 正社員となった後は,○の頃よりも労働時間が長時間となっているが,平成18年9月には5日,10月には3日,11月には7日の公休日があり,1日の労働時間が8時間を下回る日も複数見られる。同年9月以降,亡P1は休養がとれない状態であったとする原告の主張は誤りである。 ④ メールによる業務連絡等については,亡P1が上司からのメール を受信した後,返信をした記録のないものが大半である。業務報告については,携帯電話を用いて行う必要はなく,義務付けられてもいなかった。シフト調整についての○とのやりとりを行っていたことについても,常に業務に拘束される状況下に置かれていたとまではいえない。 b 労働時間について本件会社が提出した勤務時間実績表は,タイムレコーダーの記録を基本とし,記録漏れや記録ミス,実情との明らかな乖離がある場合に限り,亡P1自身が修正を加えたデータを元に作成されたもので,十分に信用できる。処分行政庁は,勤務実績表を基に,平成18年9月から12月までは,着替えに要する時間として前後15分ずつ加算し,休憩時間も一律30分に短縮して計 えたデータを元に作成されたもので,十分に信用できる。処分行政庁は,勤務実績表を基に,平成18年9月から12月までは,着替えに要する時間として前後15分ずつ加算し,休憩時間も一律30分に短縮して計算しているほか,必要な修正を施して労働時間集計表(乙23〔259頁から267頁まで〕)を作成しており,おおむね妥当な内容である。 これを基に,被告が再度確認したところ,更に修正すべき点が別紙4のとおり認められたので,これを反映させたものが別紙5「P1労働時間集計表」である。修正の結果,亡P1が本件店舗の店舗責任者に就任する前の平成18年6月から8月までの時間外労働時間数が,それぞれ5時間39分,17時間46分,18時間46分であるところ,9月以降の時間外労働時間数は,同年9月が48時間16分,同年10月が39時間19分,同年11月が36時間59分,同年12月(12月▲日まで)が12時間55分である。 c 以上のとおりであって,本件の事実関係は,認定基準別表1の項目15「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」の例のうち,「担当業務内容の変更,取引量の急増等により,仕事内容,仕事量の大きな変化(時間外労働時間数としてはおおむね2 0時間以上増加し1月当たりおおむね45時間以上となるなど)が生じた」には該当するが,その心理的負荷は「中」にとどまる。 判断指針に則して検討した場合,⑤「役割・地位等の変化」の「自分の昇格・昇進があった」,③「仕事の量・質の変化」の「勤務・拘束時間が長時間化した」に該当するが,その平均的な心理的負荷の強度は「Ⅱ」にとどまる。 (エ) ○の激減と店舗経営の破綻による強度の心理的負荷の存否についてa 原告の主張に対する反論は次のとおりである。 当するが,その平均的な心理的負荷の強度は「Ⅱ」にとどまる。 (エ) ○の激減と店舗経営の破綻による強度の心理的負荷の存否についてa 原告の主張に対する反論は次のとおりである。 ① 本件店舗の人員が慢性的に不足し,シフト組みに困難を来していたとの点については,学生アルバイトの定着率が良くないという事象は一般的にみられるものであり,本件店舗の人員が飛び抜けて不足しているとはいえない。また,亡P1は,○の採用活動も行っており,実際に6名の○を採用するに至っているし,一時的に人員不足の状態が発生しても,ヘルプ制度により他店舗から応援を得ることが可能であった。 ② 亡P1が「主戦力」としていたP18が行うことのできたレジ締め,キッチン締めのできる○は他にもおり,その他の○が習得してこれを代行することも十分に可能であった。したがって,P18が本件店舗を離れたとしても,本件店舗の運営に重大な支障が発生することはない。 ③ 本件店舗における○の業務は,接客業務及び厨房業務であるところ,厨房業務は,1か月ないし2か月でマスターすることができる程度のものである。したがって,年末年始には,10月中旬に採用した○2名,11月中旬に採用した○1名も厨房業務に就くことが可能であった。本件店舗の開店及び閉店の作業は,上記3名でも行うことのできるものであったうえ,亡P1においてヘルプ制度を利 用することも可能であった。これらの事情からすると,客観的にみて,亡P1が死亡する前日である12月▲日の状況は,決して深刻なものではなかった。また,P7は,亡P1からの電話に対して,同人を励ますとともに,同人の様子を心配し,翌日に会う約束をし,不在であったP9に代わって,P3P8店のP20に対して,亡P1のフォローを指示し,P20は,亡 た,P7は,亡P1からの電話に対して,同人を励ますとともに,同人の様子を心配し,翌日に会う約束をし,不在であったP9に代わって,P3P8店のP20に対して,亡P1のフォローを指示し,P20は,亡P1に対し,何でも相談に乗る旨のメールを送っている。 b 以上のとおりであって,本件店舗は,亡P1の上司による支援体制により,運営に必要な人員は確保することができており,年末年始に店舗運営が困難であったとの事実は存在しない。 (オ) その他,原告が主張する事実については,仮に原告主張に係る事実が存在するならば,それらは,認定基準上の「ノルマではない業績目標が示された(当該目標が,達成を強く求められるものではなかった)」(認定基準における具体的出来事②の8),「顧客等からクレームを受けたが,特に対応を求められるものではなく,取引関係や,業務内容・業務量に大きな変化もなかった」(同②の12),判断指針上の「顧客とのトラブルがあった」にそれぞれ該当するが,いずれの場合も,その心理的負荷の強度は「弱」にとどまる。 ウ精神障害発症後の増悪について(原告の予備的主張について)亡P1が平成15年に発症した精神障害が寛解していない場合,その悪化について業務起因性があるとの点は,争う。 認定基準上は,精神障害の悪化の業務起因性が認められるのは,「特別な出来事」があった場合であるが,原告は,「特別な出来事」に該当する事実を,何ら具体的に主張しない。 また,P15医師の意見書に基づく,相対リスクとオッズ比の概念を用いた主張についても,同意見書が基にしている研究(「中国における自殺 のリスク要因に関する研究」)自体,本件の業務起因性の基準とすることが相当と言い難いこと,同意見書による出来事の抽出や評価は妥当とは言い難 同意見書が基にしている研究(「中国における自殺 のリスク要因に関する研究」)自体,本件の業務起因性の基準とすることが相当と言い難いこと,同意見書による出来事の抽出や評価は妥当とは言い難いことから,理由がない。 エ業務以外の心理的負荷要因について亡P1には,本件における心理的負荷となるような出来事として,原告の入院という事実がある。このほか,証拠(携帯電話のメールの記録等)によれば,亡P1には,異性関係のトラブルが存在していたことも窺われる。 第3 当裁判所の判断 1 判断の枠組み(業務起因性の判断基準)について(1) 労基法及び労災保険法に基づく保険給付は,労働者の業務上の負傷,疾病,障害又は死亡に関して行われる(労災保険法7条1項1号)ところ,「労働者が業務上負傷し,又は疾病にかかった場合」(労基法75条)とは,労働者が業務に基づく負傷又は疾病(傷病)にかかった場合をいうところ,そのような場合に当たるというためには,当該傷病と業務との間に相当因果関係が認められなければならないと解すべきである(最高裁判所昭和50年(行ツ)第111号昭和51年11月12日第二小法廷判決・裁判集民事119号189頁参照)。ここで,当該傷病と業務との間の相当因果関係については,労働者災害補償保険制度(以下「労災保険制度」という。)が,労基法上の災害補償責任を担保する制度であり,災害補償責任が使用者の過失の有無を問わずに被災者の損失を填補する制度であって,いわゆる危険責任の法理に由来するものであることにかんがみれば,上記業務上の傷病とは,当該傷病が被災労働者の従事していた業務に内在する危険性が発現したものと認められる必要があると解される(最高裁判所平成6年(行ツ)第24号平成8年1月23日第三小法廷判決・裁判集 業務上の傷病とは,当該傷病が被災労働者の従事していた業務に内在する危険性が発現したものと認められる必要があると解される(最高裁判所平成6年(行ツ)第24号平成8年1月23日第三小法廷判決・裁判集民事178号83頁,最高裁判所平成4年(行ツ)第70号平成8年3月5日第三小法廷判決・裁判集民事 178号621頁参照)。 さらに,精神障害を発病したと認められる者が自殺を図った場合には,精神障害によって正常の認識,行為選択能力が著しく阻害され,あるいは自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されている状態で自殺が行われたものと推定されるから,労働者災害保険給付の制限事由である労働者の故意による死亡(労災保険法12条の2の2第1項)には該当しないというべきであり,当該精神障害が「業務上の疾病」(労災保険法12条の8第2項,労基法75条2項,労基法施行規則35条,同別表第1の2第9号)に該当し,当該精神障害の発病が業務に起因するものであると認められれば,その後の自殺についても,原則として業務起因性が認められるものというべきである。 (2) ところで,今日の精神医学的・心理学的知見としては,環境由来のストレス(心理的負荷)と個体側の反応性・脆弱性との関係で精神的破綻が生じるか否かが決まり,ストレスが非常に強ければ,個体側の脆弱性が小さくても精神障害が起こるし,逆に,個体側の脆弱性が大きければ,ストレスが小さくても破綻が生じるという「ストレス-脆弱性」理論が広く受け入れられている。また,何らかの脆弱性を有しつつも,直ちに破綻することなく就労している者が一定程度存在する社会的実態があり,そのような脆弱性を有する者の社会的活動が十分に確保される必要があることも論を待たない。 上記の「ストレス-脆弱性」理論の趣旨及び社会的実態・要請 就労している者が一定程度存在する社会的実態があり,そのような脆弱性を有する者の社会的活動が十分に確保される必要があることも論を待たない。 上記の「ストレス-脆弱性」理論の趣旨及び社会的実態・要請等に照らすと,業務の危険性の判断は,当該労働者と同種の平均的労働者,すなわち,何らかの個体側の脆弱性を有しながらも,当該労働者と職種,職場における立場,経験等の社会通念上合理的な属性と認められる諸要素の点で同種の者であって,特段の勤務軽減まで必要とせずに通常業務を遂行することができる者を基準として行われるものとするのが相当である。そして,このような意味の平均的労働者にとって,当該労働者の置かれた具体的状況における心 理的負荷が一般に精神障害を発病させる危険性を有し,当該業務による負荷が他の業務以外の要因に比して相対的に有力な要因となって当該精神障害を発病させたと認められれば,業務と精神障害発病との間に相当因果関係が認められると解するのが相当である。 (3) ところで,平成23年11月8日に取りまとめられた検討会報告書(乙1)は,法学及び医学の専門家によって構成された専門検討会が,近時の医学的知見のほか,これまでの労災認定事例,裁判例の状況等を踏まえ,従前の判断指針等が依拠する「ストレス-脆弱性」理論に引き続き依拠し,従来の考え方を踏襲しつつ,業務による心理的負荷の評価基準と審査方法等の改善を提言したものであり,前記(1)の精神障害の業務起因性に関する法的判断枠組みとも整合するものであるうえ,その内容においても十分な合理性を有するものと認められる。認定基準は,このような検討会報告書の内容を踏まえ,その合理性を基本的に引き継いでいると考えられるものであるから,これが本件各不支給処分時には存在しておらず,また,判断指針と同様に,行政 められる。認定基準は,このような検討会報告書の内容を踏まえ,その合理性を基本的に引き継いでいると考えられるものであるから,これが本件各不支給処分時には存在しておらず,また,判断指針と同様に,行政処分の違法性に関する裁判所の判断を直接拘束する性質のものではないが,基本的には,検討会報告書の持つ内容的な合理性を引き継ぎ,あるいは検討会報告書の見解をより合理的な知見により修正されているものである限り,精神障害の業務起因性については,認定基準に従って判断するのが相当であるというべきである。 (4) したがって,当裁判所としては,業務起因性の判断をするに当たって,基本的には認定基準に従いつつこれを参考としながら,当該労働者に関する精神障害の発病に至るまでの具体的事情を総合的に斟酌し,必要に応じてこれを修正する手法を採用することとする。 (5) 以下,前記(1)から(4)までの判断枠組みを前提として,亡P1の死亡が本件会社での業務に起因するものか否かについて判断する。 2 認定事実 前記前提となる事実に加え,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 (1) 亡P1の通院歴ア亡P1は,前記前提となる事実(4)アのとおり,帰省中に通院した後,東京に戻った後の平成15年10月15日,同年9月ころからの不眠を主訴として,P12病院でP13医師の診察を受け,以降,次のとおり受診を続けた。 ・平成15年 10月20日,同月24日,同月31日,11月7日,同月19日,同月21日,同月28日,12月5日,同月13日,同月15日,同月19日・平成16年 1月10日,同月24日,2月14日,3月6日,同月27日,4月24日,5月29日,6月12日,7月10日,8月7日,9月11日,10月9 月13日,同月15日,同月19日・平成16年 1月10日,同月24日,2月14日,3月6日,同月27日,4月24日,5月29日,6月12日,7月10日,8月7日,9月11日,10月9日,11月6日,12月18日・平成17年 1月15日,2月26日,3月26日,4月30日,6月4日,7月16日,8月27日,10月8日,11月19日,12月17日・平成18年 1月14日,2月18日,4月1日,5月6日,6月17日,8月12日,10月13日,12月▲日P13医師は,上記診察の過程において,亡P1に倦怠感,不安感及び情緒の不安定を認めたことから,軽度うつ病若しくは気分変調症と診断した。また,亡P1は,当初,涙ぐんだかと思うと笑うようなこともあるなど不安定な状態であったため,いったん実家に戻り,母親の付添を受けて通院していたが,抗うつ薬,睡眠導入薬の投与等に加え,平成16年1月からは認知行動療法も行われ,同年5月には再び東京での一人暮らしができるようになった。その後も,亡P1は上記のとおり,おおむね1,2か 月に1度の頻度で通院し,その都度,生活状況や睡眠状況はどうであるかなどの問診が行われ,抗うつ薬(パキシル),睡眠導入薬(マイスリー,サイレース)及び頓服用として抗不安薬(ワイパックス)が処方されていた。 亡P1が最後にP12病院を受診したのは,平成18年12月▲日であり,診療録には,「元気に work:つらいが働いている会議もあるから、、、。休みは2日/月くらい。Sleep:OK ザジテン→non-effective 今日はOK 1日1食くらい,PM10-11°に食べている。生活リズムはOK」との記載がある。このときも,それまでと変わらずにサイレース1mg,パキシル20 ザジテン→non-effective 今日はOK 1日1食くらい,PM10-11°に食べている。生活リズムはOK」との記載がある。このときも,それまでと変わらずにサイレース1mg,パキシル20mg,マイスリー5mg及びワイパックス0.5mgの処方を受けている。 イ亡P1は,前記アのとおり通院をしながらも,留年をしたり,大学生活に特段の支障を来したりすることはなく,平成17年3月,大学(P4大学法学部)を卒業した。 (乙18から20まで,原告本人)(2) 亡P1の店舗責任者就任の経緯ア亡P1は,平成17年5月8日に本件会社に○として採用され,本件店舗で就労を始めた。さらに,同年11月1日付けでパート社員となったが,業務の内容は,○の頃と変わりはなかった。 その後,本件会社は,亡P1を正社員として雇用することとして,平成18年6月29日頃,亡P1との間で,1年間の有期雇用契約(特約社員雇用契約)を締結し,亡P1は,同年7月1日から「P21P22」で,正社員としての研修を受けた。当初,本件会社は,当時の本件店舗の店長であるP19が同年9月1日付けで川崎市内の新店舗に異動することから,亡P1もP19と共に同店舗に異動させることを予定していた。しかし,本件会社はその後方針を変え,亡P1を本件店舗の店舗責任者とすること を考え,P19とともに川崎の新店舗に異動するか,本件店舗の店舗責任者となるか,亡P1の意向を確認したところ,亡P1は,本件店舗の店舗責任者となる旨の意思を表明した。 イ亡P1は,同年8月下旬には本件店舗に戻り,P19とともに引継ぎを兼ねて業務にあたっていた。P19は,亡P1に対し,本件会社のマニュアルにある引継書(甲3)を基に業務の引継ぎを行った。店舗責任者として行うべき業務とし 旬には本件店舗に戻り,P19とともに引継ぎを兼ねて業務にあたっていた。P19は,亡P1に対し,本件会社のマニュアルにある引継書(甲3)を基に業務の引継ぎを行った。店舗責任者として行うべき業務として亡P1が引継ぎを受けた主なものは,①毎日,仕入台帳と売上台帳を入力する,②タイムレコーダーを確認し,打刻漏れ,打刻ミスがあれば訂正する,③毎週日曜日までに週間報告を行う,④毎月16日と26日に,中間損益を予測し,スーパーバイザーにメールで提出する,⑤毎月1日までに,月末損益を予測し,スーパーバイザーにメールで提出する,⑥毎月,什器と食材の棚卸しを行う,⑦○のランクアップの申請を毎月20日までに行う,等であった。 ウ亡P1は,平成18年8月31日,本件会社と期間の定めのない雇用契約を締結し,9月1日には,亡P1は,本件会社の店舗幹部候補者のキャリアプランである「キャリアステップ」において,全9段階中の下から3番目の職位であって,店長やマネージャーをサポートし,店舗の運営に積極的に関わる「アシスタントマネージャー」として,本件店舗の店舗責任者に就任した。 なお,本件会社のキャリアステップの9段階の職位は,トレーニーから始まって,トレーニーマネージャー,アシスタントマネージャー,マネージャー,シニアマネージャー,店長,エリア担当,エリア店長と進み,スーパーバイザーに至るものであり,本件店舗の前任店舗責任者であったP19は,マネージャーの職位を有していた。本件店舗には「店長」や「マネージャー」は配置されていなかった。 エ亡P1は,平成18年9月1日時点で,食品衛生法上の衛生管理責任者 及び消防法上の防火管理責任者,いずれの資格も保有していなかった。そのため,対外的には,前任者のP19が引き続き本件店舗の両責任者とされてい 9月1日時点で,食品衛生法上の衛生管理責任者 及び消防法上の防火管理責任者,いずれの資格も保有していなかった。そのため,対外的には,前任者のP19が引き続き本件店舗の両責任者とされていた。 (甲3,6,8,14,15,17,19,乙23〔298頁から319頁まで,683頁から686頁まで,859頁から860頁まで,880頁から884頁まで〕)(3) 亡P1に対する指導・監督の状況ア新人として本件店舗の店舗責任者に就任した亡P1の執務環境について,本件会社としては,○時代に一緒に仕事をしていた仲間を店舗管理者として指揮,指導,監督するのであるから,人間関係の面ではやりやすいはずであると判断していた。そのような前提に立って,次のイないしエの指導・監督が行われた。 イ P7は,本件店舗を含む26店舗を統括する地位にあり,普段は,各店舗を巡回し監督することのほか,合同店長会議や部門会議等で亡P1と顔を合わせたときに,10分から30分程度話をしていたが,頻繁に本件店舗を監督できる状況ではなかった。そこで,P7は,P9を平成18年9月1日付けで,P3P23店からP3P8店に異動させ,本件店舗を監督するよう指示し,他店舗の責任者であったP24等に,亡P1をフォローするよう指示した。 ウ P9は,亡P1の出勤日には,亡P1と,その日の業務の話や営業状況,シフトの状況,休みを取れているか等について話をしていた。また,本件店舗の営業終了後,亡P1と打合せを行い,シフト作成や○の育成,業務推進等について指導をすることもあった。 エ P24は,亡P1と時々携帯電話のメールをやり取りし,休みを取れているかなどを尋ねていた。 オ本件店舗には,勤続歴約5年の○(P25)がいた。P25は,亡P た。 エ P24は,亡P1と時々携帯電話のメールをやり取りし,休みを取れているかなどを尋ねていた。 オ本件店舗には,勤続歴約5年の○(P25)がいた。P25は,亡P 1に対し,店舗運営で気付いた点を伝えていたほか,両者は月に1回程度,食事をして本件店舗の運営について話をするなどしており,亡P1はP25を頼りにしていた。 (甲12,13,17,18,乙23〔298頁から311頁まで〕)(4) 本件店舗の人員態勢の状況ア本件店舗は,客席数54席であり,厨房担当として1名,接客担当として3名程度の従業員がいれば営業することが可能であったが,厨房業務(飲物,カレー,パニーニ等の軽食の調理)を行うには,接客業務と異なり,一定程度の習熟を要したため,採用直後の○がこれを行うことはできなかった。また,シフトの交代等を考慮すると,1日につき6名程度の従業員は必要であった。本件店舗は学生の○が多く,亡P1が本件店舗の店舗責任者となった当時,従業員数は亡P1を除いて総勢13名であり,この中に本件会社の正社員はおらず,うち11名が学生の○であった。 イ本件会社においては,シフトが決定した後に出勤できない日が出た場合は,当該従業員が自ら交代要員を確保することとされており,亡P1も本件店舗の○にその旨指導していたが,必ずしもこの指示を守らない○もおり,そうした○から,勤務日の前日,当日等に,亡P1の携帯電話に,勤務ができない旨の連絡が入ることもあった。亡P1は,このような連絡に対し,○の交代要員を確保するため他の○に連絡をするなどしていた。 ウ亡P1は,9月25日,P7に対し,同日時点で本件店舗に在籍する従業員の人数及び担当業務(接客又は厨房)の内訳を記載した在籍表を,通常業務の一環としてメールで送信したが るなどしていた。 ウ亡P1は,9月25日,P7に対し,同日時点で本件店舗に在籍する従業員の人数及び担当業務(接客又は厨房)の内訳を記載した在籍表を,通常業務の一環としてメールで送信したが,その際,①フリーターがP25のみであるため,昼の時間帯の接客担当の人数が切迫している,②閉店時のレジ締め,火の元確認ともに任せられる学生○が育たない現状にある,③主戦力である○もいるが,大学4年生であったり,冬に退職する旨を申し出ている者がいたりするため,中期的に見て,かなり切迫した状況だと 思われる,と訴えた。 エ亡P1は,本件店舗の従業員のみでは人員が不足し,シフト組みが困難で営業できないおそれがある場合には,自らシフトに入り,あるいはP9に勧められるなどして,P3P8店や,カフェ部門の店などにヘルプ要請をしていた。ヘルプ要請について,本件会社において,回数,人数等に特段の制限はなく,ヘルプ要請を断られて本件店舗の営業に著しく支障を来すということもなかった。本件店舗へのヘルプは,P3P8店の従業員が来ることが多かった。 もっとも,このようにヘルプ要請に応じた応援が出されるなどし,本件店舗の営業は著しく支障を来すことなく行われていたが,亡P1によるヘルプ要請やシフト組みの困難さを訴えるメールに対しては,次のような返信がされていた。 (ア) 10月2日午後10時14分に亡P1からP9に対し,「最低ラインでのシフト組を余儀なくされました」と送信したのに対し,P9は,午後10時37分には,「シフトが少ないとか多いとかの報告は恥ずかしいからしなくていいよ。」,「人がいないのはP19さんの時からの影響があるかもだし,色々な原因があるはずだけど,責任者だったら何とかするのが仕事だよ。採用するのも一つだけど一人少ない人数でも出来 しいからしなくていいよ。」,「人がいないのはP19さんの時からの影響があるかもだし,色々な原因があるはずだけど,責任者だったら何とかするのが仕事だよ。採用するのも一つだけど一人少ない人数でも出来る仕組みにするとかね。」と返信した。 (イ) 10月4日午後9時22分,P9は亡P1に対し,「会議前に休んだら? 来週なら人だせそうだよ」とヘルプ要請に対応することを知らせるメールを送信したが,午後10時19分に亡P1は,「休みについては○達にも無理を言ってシフトに入ってもらっていますので,私がのうのうと休む訳にはいかないです。」と返信した。これに対し,P9は,午後10時22分,亡P1に対し,単に「無理して倒れたら意味ないよ? 他の子が週2休めるなら休んだら? 休むのも仕事だよん。」と, 亡P1が健康を害しないよう思いやるメールを出した。しかし,亡P1が多忙となっている最大の原因であるシフト組みの困難さに対し,具体的に対処する方策等には,触れられていない。 (ウ) P9は,10月8日午後9時57分,再来週分のシフト組みについて,「昼間二人~三人しかいないです。一時の時点で五本が理想,四本だと結構頑張る感じです。ラストはいるんですけど,一時~五時で人がいません。」などと,本件店舗の要員不足を訴える亡P1に対し,「毎日はちょっと無理だよ? 明日か明後日には作るから本気でほしい日おしえて~。」などと,メールを返信している。 オ亡P1は,不足する○を確保すべく,求人雑誌,求人サイトへの掲載及び本件ショッピングセンター内の掲示板への掲載という方法で,本件店舗の○となる従業員の募集及び採用も行っていた。 しかし,本件会社は,シフト組みを安定的なものとすることに効果のある正社員の配置という選択肢を考えることはなかった。そのため,本件 う方法で,本件店舗の○となる従業員の募集及び採用も行っていた。 しかし,本件会社は,シフト組みを安定的なものとすることに効果のある正社員の配置という選択肢を考えることはなかった。そのため,本件店舗の従業員のP25においても,単発的なヘルプ要請による人繰りでは,きちんとした解決になっていないと考える状況であった。 カかえって,本件会社は,本件店舗に9月段階で在籍する13名のうち,レジ締めとキッチン締めの担当を任せることのできる2名の○のうちの一人であるP18を社員として採用することを決定し,11月には本件店舗を退職させる予定を組んでいたが,そのことを亡P1に対し,何ら教示することをしなかった。本件会社の11月15日開催の部門店長会議に出席し,同席したP9から,P18が本件会社に就職することを聞いた亡P1は,激しく動揺し,自分に事前に話をしてくれなかったことについて,P18にメールや電話で詰問するなどした。 (甲2,11の22,34,44,51,甲12から15まで,17から19まで,34,乙23〔306頁から319頁まで,719頁から755 頁まで〕)(5) 亡P1の就労状況上記(4)のような本件店舗の人員態勢の状況の下で,亡P1は次にように稼働していた。 ア亡P1は,店舗責任者として,接客業務を行う傍ら,空き時間や営業時間終了後に,○の管理(シフト管理,募集,採用,教育),売上げ管理(売上金の管理,保管を含む),クレーム処理,その他雑用等の業務全般を行っていた。なお,売上げ,客数,時間帯ごとのデータ等については,本件店舗のレジから自動的に本件会社に送信される仕組みとなっていたが,売上金の内訳や,従業員の労働時間については,自らパソコンに入力の上,送信する必要があった。 イまた,亡P1 タ等については,本件店舗のレジから自動的に本件会社に送信される仕組みとなっていたが,売上金の内訳や,従業員の労働時間については,自らパソコンに入力の上,送信する必要があった。 イまた,亡P1は,自主的な取組として,本件店舗の営業終了後,ほぼ毎日,P9及びP7に,携帯電話のメールで,売上目標,実際の売上げ,目標就労時間,来客数,客単価等を報告するとともに,その日の営業を振り返って反省すべき点等を送信していた。これに対し,P7からは返信のないことが多かったが,P9は,報告があるたびに,本件店舗の営業に関するアドバイス等の返信をすることが多かった。 ウ亡P1は,本件店舗の営業に関する通常業務の他,9月11日と10月13日の午後2時から午後3時30分までの間及び11月15日の午後4時から午後6時までの間,本件会社の部門店長会議に出席した。 エ亡P1は,11月29日及び同月30日の午前9時から午後5時頃までの間,P26の主催する防火管理資格講習を受講した。 また,10月11日には,P27の主催する食品衛生責任者要請講習会を受講する予定であったが,当日は急に休暇を取った○の代わりに本件店舗に出勤することとなり,受講はしていない。 オ本件会社が平成18年10月31日までに実施した亡P1の人事考課 (考課者はP7,考課期間は平成18年4月1日から同年10月31日までである。)によると,本件店舗は,売上げは目標とする達成率にほぼ達しており,反面,利益達成率は34.4%と低い数字であったが,その他の評価については特段低い評点は付されておらず,最終ランクはB評価であった。P7は,考課者の意見欄に「高い業務意識を持って取り組んでいます。」などと記載している。P9も,亡P1に対しては,真面目で,やる気もあり,一所懸命で努 は付されておらず,最終ランクはB評価であった。P7は,考課者の意見欄に「高い業務意識を持って取り組んでいます。」などと記載している。P9も,亡P1に対しては,真面目で,やる気もあり,一所懸命で努力家であるとの評価をしていた。 他方,本件店舗の○の中には,亡P1について,実際は休憩室に籠もってシフト作成をしていたのを自分だけ休憩を取っていると誤解する者や,○が休憩に入れないときに謝罪やフォローの言葉がなく,思いやりがないと感じたり,ふだんは○気分なのに,○に対する言葉が突然厳しくなるなどと感じたりして,不満を持つ者もいた。 カ亡P1は,9月12日の半日を費やして,P28の主催するコーヒーマイスター養成講座の実技研修を受講し,11月8に認定試験を受け,これに合格した。 (甲4,11の29,甲12,15,17,18,乙23〔69頁,70頁,298頁から311頁まで,322頁,324頁,400頁から402頁まで,533頁,535頁から540頁まで,719頁から755頁まで,775頁〕)(6) 平成18年12月頃の亡P1及び店舗の人繰りの状況ア本件店舗では,亡P1が店長に就任した時点で13名の従業員がいたが,10月から11月にかけて3名が退職し,それとは別に,年末年始にかけての退職を申し出ている○が,9月に2名,10月に5名おり,その補充ないしヘルプ要請による穴埋めが,本件店舗及び亡P1の喫緊かつ重要な業務上の課題となっていた。しかし,他方において,9月から11月25日にかけて,新規の採用面接を幾度も行い,ようやく5名の○を採用して いたが,新規募集の面接を行っても,思うようには必要な資質を持った人材は集まらない状況であった。その結果,本件店舗の12月冒頭時点の従業員数は15名とはなっていたが,年末 の○を採用して いたが,新規募集の面接を行っても,思うようには必要な資質を持った人材は集まらない状況であった。その結果,本件店舗の12月冒頭時点の従業員数は15名とはなっていたが,年末年始にはここから7名の減員となる情勢であった。 イ 11月25日,亡P1は交際相手のP29とデートをして自宅に戻ったが,身体の震えが止まらない状態となり,P29にさすってもらった。P29にとっても,初めて見る亡P1の状態であった。 ウ 11月30日午後9時05分,亡P1は,本件店舗で亡P1を支え,亡P1も頼りにしていた○のP25から,「お疲れ様です! お願いが有ります! 今日は大丈夫だったかな。素人の新人さんには一本に数えないで下さい! 見ていると本人たちもかわいそう。使えるようになるまでP3からヘルプ頼めないのでしょうか。」,「P1さんがいない日のシフトにいつも問題ありだからチェックお願いします! 休憩取れないシフトは前もって一言フォローすべきだと思います。」というメールを受信した。 エ亡P1は,12月▲日に休日を取得し,上京した原告と会った。このとき,本件店舗の○から亡P1の携帯電話に,当日のシフトを交代してもらいたい旨の連絡が入ったが,これに対し亡P1は,「今日だけは替わってあげられない」,「ごめんね」などと述べて対応した。また,亡P1は原告に対し,店舗責任者としての仕事について「本当は2番手から仕事をしたかった」,「これは,私の責任じゃありませんって,1度でいいから言ってみたい」,「食事なんかとれないし,水なんかも飲む時間がないよ」,「(トイレに行かないことを気にした原告に対し)お母さん,飲むものを飲まなければ出るものも出ないよ」などと話した。 なお,同日,亡P1は原告との待ち合わせの前にP12病院を受診し ないよ」,「(トイレに行かないことを気にした原告に対し)お母さん,飲むものを飲まなければ出るものも出ないよ」などと話した。 なお,同日,亡P1は原告との待ち合わせの前にP12病院を受診した。 オ 12月▲日の出来事(ア) 12月▲日朝,亡P1は,P29と会ったが,このとき,年末の要 員不足をひどく気にし,P29に対し「このままやっていたら2月か3月に入院するかもしれない。」と苦境を訴えた。 (イ) 本件店舗に出勤した亡P1は,P21P22の店長であるP30(以下「P30店長」という。)及びカフェ部門のスーパーバイザーであるP31に対し,社内メールで,同月▲日午後0時から午後4時までの接客担当の人員について,ヘルプを要請するとともに,厨房業務のできる○3名のうち2名が年内に退職,1名が年始連休を申し出ており,このままでは亡P1自ら厨房に入らざるを得ないなどと訴え,年末年始はどの店も繁忙期を迎えることは承知しているが,年末年始にかけて,継続的なヘルプを頼みたい旨述べた。 (ウ) 亡P1の上記(イ)のメールに対する返信はなかった。 カ 12月▲日の出来事(ア) 亡P1は,12月▲日の午前11時43分にもP30店長,P21P32店の店長P33,及びP34(上記2店は,いずれもカフェ部門の店舗である。)のサービスマネージャーP35に対し,社内メールで,①12月▲ 日の午後1時から午後4時まで,②同月▲ 日の午後1時から午後7時まで,接客担当で実力のある者,③同月▲日の午後0時から午後5時まで,厨房でドリンクを作ることができて洗浄機を回せる者,④同日午後1時から午後7時まで,接客担当の者,のヘルプを要請するとともに,「新年もキッチン○3人全員が休みを申し出ており,全く見通しの立たない状況です。」などと 作ることができて洗浄機を回せる者,④同日午後1時から午後7時まで,接客担当の者,のヘルプを要請するとともに,「新年もキッチン○3人全員が休みを申し出ており,全く見通しの立たない状況です。」などと述べた。 (イ) 亡P1は,本件店舗の営業時間中に,新たに2名の○から,平成19年1月一杯で退職したいとの申出を受けた。亡P1は本件店舗で泣き出し,その様子を見ていた他の従業員は,亡P1の退勤後,亡P1に対し,心配する内容のメールを送った。 (ウ) 亡P1は,午後8時40分から同月▲日午前2時29分にかけて, 前記認定事実(3)アのとおり亡P1のフォロー役を務めていたP24との間において,携帯電話により次のメールを送受信している。 (12月▲日午後8時40分の送信メール)「もう無理です! P24店長なんか毎回タイミングよ過ぎて,ビックリしちゃいます。今在籍15人です。内超新人が3人です。年内に辞めるって宣言しているのは3人,1月で辞めるって言っているのは3人だったんですけど,今日2人増えました。今まで一緒に働いていた人が辞めちゃうのが不安だとか,いろいろ理由はあるそうです。みんなを不幸にしちゃって,もう悲しいです。誰も店に残りません。新年キッチン○も誰もいないです。私です。」(午後9時39分の受信メール)「大丈夫じゃなさそうね。ぶつけていいよ。はかないとストレスああたまっちゃうからね。でさ,店行ったら,○一人一人と話しはしてるかなぁ??」(午後9時53分の送信メール)「今日いきなり言って来た2人とはまだですけど,それ以外の○とは話しています。って言っても誰も信じてくれないですよね。でも,もっと話し合え,おまえのコミュニケーション不足だ,で ール)「今日いきなり言って来た2人とはまだですけど,それ以外の○とは話しています。って言っても誰も信じてくれないですよね。でも,もっと話し合え,おまえのコミュニケーション不足だ,ですよね。事務所に呼んで,って事は出来ないから,ケーキ場と,キッチンの隅の事務所で話してみます。やっぱりみんな私だと不安みたいです。当たり前ですよね。私も一度誰かの下になって,「それは私の役割じゃないんで。」とか言いたいです。そんなこと絶対言えないですけど。沈む船からはみんな逃げていきます。」(12月▲日午前2時29分の受信メール)「「自分を責めないで」信じてないなんて思わないよ,話はしているんだもんね。辞めると言っている○達は何歳なの? その娘達とは仕事 離れてご飯食べに行ったことはある? 沈む船なんかじゃないわよ,P1さんは一生懸命やっているわよ。○達と仕事以外のメールとかする??」(エ) 亡P1は,12月▲日午後9時から午後10時ころには,P7に電 話をし,○が3名辞めてしまうと報告し,どうしたらよいかと訴えた。 P7は,○には自分から辞めないように話をするとしたうえで,応援態勢もあるし,自分やP9もいるので,本件店舗の営業もそれほど問題はないなどと答えたが,亡P1が,自分が悪いなどと述べて泣き出したこと,亡P1が取り乱した様子で電話をかけてきたことがこれまでなかったことから,早急に亡P1と話をしなければならないと考えた。そこで,翌日12月▲日の午前10時に面談を行う旨約束をし,さらに,この日はP9が不在であったこともあって,P3P8店の従業員で本件会社の正社員であるP20に連絡をし,亡P1のフォローをするよう指示した。 これを受けたP20は,亡P1の携帯電話に,悩んでいるこ ,この日はP9が不在であったこともあって,P3P8店の従業員で本件会社の正社員であるP20に連絡をし,亡P1のフォローをするよう指示した。 これを受けたP20は,亡P1の携帯電話に,悩んでいることがあれば言ってほしい旨のメールを送信した。もっとも,亡P1がP20のメールに返信することはなかった。 (甲6,7,11の34,55,56,甲12から19まで,34,乙13,23〔306頁から319頁まで,752頁,754頁,755頁,860頁〕,原告本人)(7) 亡P1の自殺亡P1は,12月▲日午前8時30分ころ,自宅マンション3階のベランダから飛び降り,その際に生じた頭部打撲を原因とする脳挫傷により,同日午前11時15分ころ,死亡した。 亡P1は,自宅に,次の内容の遺書を残していた。 (遺書の内容)「みんなのこと大好きでした。絶対にHAPPYな職場にしたいと思って ました。不幸にしてごめんなさい。きっと,私がいなくなったら,もっとHAPPYに働けると思う。本当にごめん。シフトも協力してね。みんな大好きでした! もう一度chanceあったら,○として,もう一度働きたいです。店も好きです。みんなすごく協力してくれました。お母さん好きです。 お母さんみたいになりたい。お母さん。お母さん。私みんなを不幸にしました」(乙4,乙23〔367頁〕) 3 争点に対する判断(1) 本件精神障害の寛解の有無ア本件の争点は,亡P1の精神障害及び死亡の業務起因性であるところ,亡P1が業務に起因して精神障害を発症した場合には,その後の自殺について,原則として業務起因性があるものと認められる(前記1(1))。そこで,以下では,亡P1の精神障害の業務起因性の有無を検討するが,その前提として,亡P1が平成15年 た場合には,その後の自殺について,原則として業務起因性があるものと認められる(前記1(1))。そこで,以下では,亡P1の精神障害の業務起因性の有無を検討するが,その前提として,亡P1が平成15年に被告における業務とは無関係な原因によって発病していた本件精神障害の症状が,本件会社において稼働していた平成17年から平成18年にかけて,どのような態様・程度のものとなっていたかが,認定基準における「業務以外の原因により発病して治療の必要な状態にある精神障害が悪化した場合」との関係で問題となる。この検討において,原告及び被告は,本件精神障害について寛解の有無を問題としているところ,寛解の意義については,症候学的に臨床基準を満たさないのみならず,ごく軽微な症状しか残存しないようになった段階を指すものと解すべきである。 しかしながら,認定基準の「業務以外の原因により発病して治療の必要な状態にある精神障害が悪化した場合」(前提となる事実(6)イ(オ))の解釈については,「治療が必要な場合」を限定的に解釈すべきものと考える。すなわち,そもそも認定基準の合理性が認められるのは,その前提と して,認定基準が検討会報告書の持つ内容的な合理性を引き継ぎ,あるいは検討会報告書の見解をより合理的な知見により修正されているといえることに負っているというべきものであるところ,検討会報告書は,「精神障害で長期間にわたり通院を継続しているものの,症状がなく(寛解状態にあり),または安定していた状態で,通常の勤務を行っていた者の事案については,ここでいう「発病後の悪化」の問題としてではなく,治ゆ(症状固定)後の新たな発病として判断すべきものが少なくないこと・・・に留意する必要がある」(乙1)としているのであって,この指摘は,精神障害を抱えながらも,症状 の悪化」の問題としてではなく,治ゆ(症状固定)後の新たな発病として判断すべきものが少なくないこと・・・に留意する必要がある」(乙1)としているのであって,この指摘は,精神障害を抱えながらも,症状が安定している者を可能な限り社会内で健常者と同等に活動できるようにするうえで,必要かつ不可欠なものといわなければならない。 そして,認定基準は,既に発病している精神障害が悪化した場合の業務起因性について,「特別な出来事」に該当する出来事があることを業務上の疾病として取り扱う前提としており,その「特別な出来事」として挙げるものは,「生死にかかわる,極度の苦痛を伴う,又は永久労働不能となる後遺障害を残す業務上の病気やケガをした(業務上の傷病により6か月を超えて療養中に症状が急変し極度の苦痛を伴った場合を含む)」,「業務に関連し,他人を死亡させ,又は生死にかかわる重大なケガを負わせた(故意によるものを除く)」,「強姦や,本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシュアルハラスメントを受けた」,「その他,上記に準ずる程度の心理的負荷が極大と認められるもの」という極めて稀な出来事である(乙22)ところ,「特別な出来事」が存在しなければ,健常者であれば,業務上の疾病であることが認められることになる個々の具体的な出来事であって心的的負荷の程度が「強」となるものが幾つあったとしても,業務上の疾病とは認められないという判断枠組みを採用している。 ここで,検討会報告書の指摘する「精神障害で長期間にわたり通院を継続しているものの,症状が安定していた状態で,通常の勤務を行っていた者」を「治療が必要な場合」に当たるとすれば,たとえ健常者であっても精神障害を発症し,自殺に至るような「ひどい嫌がらせ,いじめ,又は暴行を受けた」,「胸や腰等への身 た状態で,通常の勤務を行っていた者」を「治療が必要な場合」に当たるとすれば,たとえ健常者であっても精神障害を発症し,自殺に至るような「ひどい嫌がらせ,いじめ,又は暴行を受けた」,「胸や腰等への身体接触を含むセクシュアルハラスメントであって,継続して行われた場合」などの出来事(認定基準参照)があったとしても,通院を継続していたとの一事をもって,精神障害の増悪についての業務上の疾病であることを否定することになってしまうという著しく正義・公平に反する結果を招来することになりかねない。確かに,認定基準が「業務以外の原因により発病して治療の必要な状態にある精神障害が悪化した場合」に「極度の心理的負荷」を要求するのは,もともと精神障害がある者については,その病態として,健常者以上に出来事に対して大きな反応を示す傾向があることから,健常者であれば精神障害の発症等の問題を惹起しないような出来事による精神障害の増悪についてまで,業務上の疾病として取り扱うことが不合理であるという考慮によるものであると考えられ,それには一定程度の合理性があるとはいえるものの,健常者であっても精神障害を発症するような心理的負荷の程度が「強」となる出来事にさらされた場合にまで,業務上の疾病であることを一律否定するのは行き過ぎた限定であるというべきである。 したがって,認定基準が検討会報告書の持つ内容的な合理性を引き継ぎ,かつ,精神障害の症状が安定していて通常の勤務を行うことのできる者の社会的活動を適切に確保し保護するという観点から,認定基準の「治療が必要な場合」には,「精神障害で長期間にわたり通院を継続しているものの,症状がなく(寛解状態にあり),または安定していた状態で,通常の勤務を行っていた者」を含まないものとする限定解釈を加えたうえで,「安定していた状態」である で長期間にわたり通院を継続しているものの,症状がなく(寛解状態にあり),または安定していた状態で,通常の勤務を行っていた者」を含まないものとする限定解釈を加えたうえで,「安定していた状態」であるか否かを具体的事案に即して判断することが 相当である。 イそこで,まず亡P1の本件精神障害の程度が,「精神障害で長期間にわたり通院を継続しているものの,症状がなく(寛解状態にあり),または安定していた状態で,通常の勤務を行っていた者」の場合であるのか,これを除いた「治療が必要な場合」であるのかを検討することとする。 (ア) 平成15年に本件精神障害を発病してから後の亡P1の診療経過は 前記2(1)のとおりであり,当初は実家に戻り,頻回に通院していたが,平成16年1月頃からは通院の頻度がおおむね月一回程度となり,症状も落ち着き,同年4月からは東京での一人暮らしを再開するに至っている。しかし,その後も,P13医師が亡P1に対して処方する薬の種類及び量に大きな変化はなく,亡P1に対する診察の在り方も,最近の調子,特に睡眠を取れているか等を尋ねるといったものであって,これにも変化は見られない。もっとも,平成18年1月14日の診察時には,亡P1において,気分が優れない状態に久しぶりに陥った旨の訴えが,8月12日の診察時には,睡眠がこれまでのように取れていない旨の訴えがあり,睡眠導入薬(マイスリー)の処方量が戻されるといった経過が認められるところであるが,いずれの場合も速やかに安定した状態に復している(乙17,18)。 しかも,亡P1は,本件会社に就職し,後記のとおり,常時強い緊張にさらされながらも,平成18年11月下旬に至るまで,本件精神障害の症状と覚しきものが現れるのを認識されることもなく,勤務を続けていた上,前記認定事実(5 件会社に就職し,後記のとおり,常時強い緊張にさらされながらも,平成18年11月下旬に至るまで,本件精神障害の症状と覚しきものが現れるのを認識されることもなく,勤務を続けていた上,前記認定事実(5)カのとおり,コーヒーマイスターの検定試験に合格している。 この点,原告本人の尋問の結果によれば,亡P1は,休日であった12月▲日に,○からシフト交代の相談の電話を受けた後,薬を服用していることが認められるが,これをもって亡P1の状態が安定を欠くもの であったとまで認めることはできない。 (イ) なお,亡P1は,P9との打合せ時に怒られた際,そのことを部下のP25に話した際,11月の合同店長会議においてP19の顔を見た際,P19が一対一で真面目な注意をした際に泣いたこと(乙14,23〔306頁から311頁まで,735頁,745頁〕)や,11月15日頃には,信頼していた○のP18が本件会社に正社員として採用され,本件店舗を離れることが判明し,P18からその事実を知らされていなかったことから非常に動揺し,号泣してP18をメールで問い詰めた(前記2(4)カ)うえ,帰宅後に泣いたことがあった(甲6,15)ところ,このような状況は,P13医師が本件精神障害の診察過程で聴き取った「突然に情緒不安定になり,泣き出したこともあった」という症状(乙18)に合致する状態であるように見えないではない。 しかしながら,亡P1が上記幾つかの場面で泣いた状況を些細に見ると,それは,P9との打合せ時の際に怒られたとき,そのことを思い出しながらP25に話すとき,既に前記2(4)オ,(5)オのような状況にあった中で,精神的負荷がさして掛からず,楽しい想い出のある○時代(証拠(甲16,乙13,原告本人)によれば,亡P1は,本件店舗で○として就労していた頃は, に前記2(4)オ,(5)オのような状況にあった中で,精神的負荷がさして掛からず,楽しい想い出のある○時代(証拠(甲16,乙13,原告本人)によれば,亡P1は,本件店舗で○として就労していた頃は,体を動かすことや,今まで接点のなかった人達と○として仕事ができることが楽しいなどと原告に話していたことが認められる。)の上司であるP19の顔を合同店長会議で見たときや,本件店舗の運営に深刻な懸念を抱いていた中で,信頼していたP18が亡P1に黙って本件店舗を離れようとしたことを知ったとき,P19が一対一で真面目な注意をした際に泣いたものであって,亡P1が泣かざるを得ない状況にあったことは,いずれの場合においても十分に了解可能なものであって,若年で新人の店舗責任者が亡P1と同じ状況に立たされたときには,十分にあり得る言動であるというべきである。そうす ると,前記のとおり亡P1が勤務中あるいは勤務に関連した出来事によって泣いたとしても,それは必ずしも本件精神障害の病態・病勢の顕現したものとはいえず,むしろ勤務上の厳しい環境及び亡P1の真面目な性格の故の感情表現であったと見ることが可能である。 (ウ) そして,前記2(5),(6)によれば,亡P1の本件精神障害は,本件店舗のシフト組みの困難さに係る常時の緊張状態を主たる原因として,11月下旬から次第に増悪していたところ,12月▲日には更に2名の○から退職予定を告げられ,年末年始の○のシフト組みが破綻するおそれが高まり,しかも,その原因を亡P1のコミュニケーション不足と責めていると取られても仕方ないような上司ら周囲の対応を受けて,深い絶望感を抱くに至り,同日,爆発的に悪化したものと認められる。 こうした診療経過や亡P1の置かれた状況等に照らすと,亡P1の人に対する態度には ないような上司ら周囲の対応を受けて,深い絶望感を抱くに至り,同日,爆発的に悪化したものと認められる。 こうした診療経過や亡P1の置かれた状況等に照らすと,亡P1の人に対する態度には不安定なところも見受けられるが,亡P1の本件精神障害は,本件会社における勤務を含めて,社会生活を特段の支障なく送ることができる程度には安定していたものであって,少なくとも本件会社に就職した平成17年には,本件精神障害の症状が精神障害の発病と寛解を繰り返していた状況にあったとは評価すべきものではなく,おおむねその症状が消失していたとみるべきものである。 したがって,本件精神障害の症状は,平成18年12月の時点では,「精神障害で長期間にわたり通院を継続しているものの,安定していた状態で,通常の勤務を行っていた者」に当たる状況にあったとみることが相当である。 ウ以上を踏まえて,以下では,「業務以外の原因により発病して治療の必要な状態にある精神障害が悪化した場合」ではなく,通常の場合の認定基準に則して,亡P1の従事した業務の過重性について,検討することとする。 (2) 認定基準上の業務の過重性についてア過去に経験したことのない仕事についたことによる心理的負荷の有無及び程度について(認定基準の出来事類型③の15)(ア) 原告は,亡P1が,上司であるP9,P7の指導・支援が不十分であり,かつ経験豊富な○による支えもない状態で,本件店舗の店舗責任者として,現場労働と管理業務との二重の負担にさらされたため,認定基準上「過去に経験したことがない仕事内容に変更となり,常時緊張を強いられる状態」となったと主張し,これによる認定基準上の心理的負荷の程度は「強」であると主張する。 (イ) 亡P1が本件店 基準上「過去に経験したことがない仕事内容に変更となり,常時緊張を強いられる状態」となったと主張し,これによる認定基準上の心理的負荷の程度は「強」であると主張する。 (イ) 亡P1が本件店舗の店舗責任者に就任した経緯,本件会社が執った亡P1の教育支援の方法及び亡P1の就労状況等は,前記2(2)(3)(5)(6)のとおりであるところ,これによれば次の事実を指摘することができる。 すなわち,亡P1が本件店舗の店舗責任者に就任したことは,亡P1にとって,これまで1年間あまり共に働いた上司であるP19の下で二番手の職位で働くという,当初の想定とは全く異なるものであり,かつ,「P21P22」における研修は,店舗責任者業務を前提としたものではなかったため,同業務については,8月下旬に本件店舗に戻り,9月1日までの間にP19から引継ぎを受けたにとどまっていた。亡P1は,正社員登用前は,基本的には○ないしパート社員として現場業務に従事していたものであり,店舗責任者の行う管理業務の経験は浅かった。そのような中で,従業員の労働時間の管理や,毎月2回,本件店舗の損益を予測し,スーパーバイザーに提出するといった業務のほか,○のシフト調整に困難を来し,他店舗にヘルプを依頼したり,○から,亡P1の勤務時間外に業務連絡のメールを頻繁に受けたり(乙23〔719頁から755頁まで〕により認められる。),本件店舗の運営に関して,P 9との間で打合せの機会を持つなどしていたりするが,これらは,いずれも亡P1が○であったころには経験をしていないものである。また,後述するように,亡P1の時間外労働時間数は,店舗責任者就任後に増加している。 しかも,本件店舗は学生アルバイトの○の退職により慢性的な人手不足の状況にあり,その状況は抜本的に解決されることな ,後述するように,亡P1の時間外労働時間数は,店舗責任者就任後に増加している。 しかも,本件店舗は学生アルバイトの○の退職により慢性的な人手不足の状況にあり,その状況は抜本的に解決されることなく,亡P1が自らシフトに入るとともに,ヘルプ要請によりヘルプを派遣してもらうことで,いわば対症療法的に凌いでいたものであったところ,亡P1はそのような状況下で○の確保について懸念を抱き,強い緊張にさらされていた。 そのような中で,12月▲日には,15名の○中,合計8名が年内又は年明けでの退職を申し出る事態となり,亡P1において,本件店舗が営業停止の状況に追い込まれることが必至であると考えるに至った。加えて,P7において,同日午後9時から10時ころ,心配する亡P1に対し,電話で,自分が○に辞めないように話をすると言ったうえ,応援態勢もあるので,本件店舗の営業はそれ程問題ないと答えていること,その頃である午後9時53分に亡P1がP24に対して送ったメール(その内容,特に「誰も」の文言から見てP7との電話後に送信した可能性がある。)に「○とは話し合っています。って言っても誰も信じてくれないですよね。でも,もっと話し合え,お前のコミュニケーション不足だ,ですよね。」とあること,その後のP24の返信メールの内容及び前記2(4)エのP9の対応を総合すると,亡P1をして,もはや本件会社において,本件店舗の従業員の不足について,抜本的対策を取ってもらえる見込みはなく,かつ,周囲は○の退職を亡P1のコミュニケーション不足ないし無策と考えているとの認識を持たせるとともに,現在の強い緊張を強いられる苦しい状況が本質的に改善されることなく今 後も続くことになると考えさせたことも優に推認されるところである。 (ウ) 前記(イ)の事実に徴すると,亡P1 ともに,現在の強い緊張を強いられる苦しい状況が本質的に改善されることなく今 後も続くことになると考えさせたことも優に推認されるところである。 (ウ) 前記(イ)の事実に徴すると,亡P1にとって,本件店舗の店舗責任者としての業務の内容は,○が行うべき業務と比べて質的・量的な変更があり,そこに本件店舗の○の確保とシフト態勢の維持に腐心するという難度の高い業務上の課題があったのであり,その負担は極めて重くなっていたこと,しかも,亡P1の年齢,職歴という属性に加え,本件会社の研修体制や,P7及びP9の対応が必ずしも十分なものであると評価し難いことを併せ考慮すれば,本件店舗の店舗責任者として業務を遂行することは,亡P1に極めて厳しい緊張を常時強いるものとなっていたことは明らかである。そして,そのことは,亡P1と職種,職場における立場,経験等,そして何よりも社会通念上合理的な属性として考慮されるべき年齢層・社会人経験という点で同種の,大学を卒業して1年程度の平均的な若年の新人の店舗責任者にとっても,何ら変わるところはないというべきである。 (エ) なお,この点,亡P1の店舗責任者としての業務内容を更に具体的にみると,本件店舗の営業時間中は基本的に接客業務を行いつつ,空き時間又は営業時間終了後に,管理業務等のデスクワークを行っているというものであり(前記2(5)ア),デスクワークの内容は,それ自体を一般的に分解してみる限り,亡P1に常時緊張を強いるものであったとは必ずしもいえないこと,また,亡P1の上司のうち,P9については,亡P1を直接に指導監督すべき立場の者として,亡P1からの営業報告のメールに対してアドバイスを返信し,亡P1と打合せの機会を持ち,亡P1の作るシフト表に無理がないか確認しようとするなどしていた(乙23 1を直接に指導監督すべき立場の者として,亡P1からの営業報告のメールに対してアドバイスを返信し,亡P1と打合せの機会を持ち,亡P1の作るシフト表に無理がないか確認しようとするなどしていた(乙23〔752頁〕)ところ,このようなP9によるフォローは,対症療法的に本件店舗の営業を継続するという限りではあるが,それなりに実効性のあるものであると認められることといった指摘のあり得ると ころである。 しかし,いずれの事情についてみても,常時ともいえるほどに○のシフト調整に困難を来し,○の確保について懸念を有する状況に置かれていた亡P1の状況を本質的に改善するようなものではなく,ひいてはその緊張を緩和し解消するものとはなっていなかったのである。そうすると,デスクワークの内容やP9のフォローをもって,亡P1の常時緊張を強いられる状態を否定することはできない。 (オ) 以上認定したところに照らすと,亡P1が○から本件店舗の店舗責任者に就任し,店舗責任者としての業務に従事したことについては,「過去に経験したことがない仕事内容に変更となり,常時緊張を強いられる状態」に当たると認めることができ,心理的負荷の評価は「強」となるものである。 もっとも,本件会社が各店舗に売上げ等のノルマを課し,そのノルマが達成されない場合に本件会社から何らかのペナルティを科したり,売上目標を達成したかどうかを追及するような事実や,売上目標,利益達成率が亡P1の人事考課に影響したという事実は証拠上認められないのであり,真面目な店舗責任者であれば自責の念を抱くことは当然のこととしても,これをもって認定基準にいうような,本件店舗の責任者として,ノルマを達成するために常時緊張を強いられる状態にあったということはできない。 なお,時間外労働時間数を踏まえた とは当然のこととしても,これをもって認定基準にいうような,本件店舗の責任者として,ノルマを達成するために常時緊張を強いられる状態にあったということはできない。 なお,時間外労働時間数を踏まえた心理的負荷については後述する。 イ違法営業の強要による強度の心理的負荷の有無及び程度について(認定基準の出来事の類型②の7)(ア) 原告は,亡P1は,食品衛生責任者資格及び防火管理者資格をいずれも保有しない状態で本件店舗の店舗責任者に就任させられるなど違法営業を余儀なくされ,これにより,認定基準上「業務に関連し,重大な 違法行為(人の生命に関わる違法行為,発覚した場合に会社の信用を著しく傷つける行為)を命じられ」た場合に相当すると主張し,これによる認定基準上の心理的負荷の程度は「強」であると主張する。 (イ) 東京都は,食品衛生法51条を受け,食品衛生法施行条例(平成12年3月31日条例第40号)を制定し,同条例2条及び別表(第2条関係)は,「営業者(中略)は,許可施設ごとに自ら食品衛生に関する責任者となるか,又は当該施設における従事者のうちから食品衛生責任者1名定めておかなければならない」と定めている。 また,消防法8条は,「(前略)政令で定めるものの管理について権原を有する者は,政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め,(中略)防火管理上必要な業務を行わせなければならない。」と定めている。 (ウ) このように,法令上は,店舗責任者が必ず当該店舗の食品衛生責任者及び防火管理者でなければならないとはいえないものの,亡P1が店舗責任者に就任した後,本件店舗から異動したP19が本件店舗の食品衛生責任者及び防火管理者であり続けていること(前記2(2)エ)は,前記の各資格を有する者が本件店舗に常勤していないとい ,亡P1が店舗責任者に就任した後,本件店舗から異動したP19が本件店舗の食品衛生責任者及び防火管理者であり続けていること(前記2(2)エ)は,前記の各資格を有する者が本件店舗に常勤していないということであるから,少なくとも,食品衛生法及び消防法の趣旨に適合していない事態が出現していたといわなければならない。 しかし,亡P1は,10月23日,P31に対し,同日時点で,防火管理者及び食品衛生責任者の資格を取得するための講習に参加できていないことを報告するとともに,P19等に迷惑をかけていることについて詫びる旨の社内メールを送信しているが(甲11の29),その内容は,P19による本件店舗の上記各責任者資格の代行が続いているため,P19は当時自ら勤務していた店舗の責任者になれないでいる状態(甲19)を心苦しく感じている旨にとどまると受け取れるものであって, 本件店舗において違法な営業を強要されているとの認識を現に持っていたとまでは認めることはできない。したがって,この点に関する原告の主張は理由がない。 ウ急激な仕事量の増大と長時間労働による強度の心理的負荷の有無及び程度について(認定基準の③の15)(ア) 原告は,亡P1の仕事量が,本件店舗の店舗責任者に就任したことによって著しく増加し,認定基準上「仕事量が著しく増加して時間外労働も大幅に増える(倍以上に増加し,1月当たりおおむね100時間以上となる)などの状況になり,その後の業務に多大な労力を費した(休憩・休日を確保するのが困難なほどの状態となった等を含む))」状態に陥ったと主張し,これによる認定基準上の心理的負荷の程度は「強」であると主張する。 (イ) 亡P1の仕事量が,店舗責任者に就任する前と比べ増加していることは,前記アのとおりである。 状態に陥ったと主張し,これによる認定基準上の心理的負荷の程度は「強」であると主張する。 (イ) 亡P1の仕事量が,店舗責任者に就任する前と比べ増加していることは,前記アのとおりである。ここで,亡P1の12月▲日から6か月前までの労働時間数は,①基本的に本件店舗のタイムレコーダーの記録(乙23〔394頁から396頁まで〕)に基づきつつ,②9月から12月については,着替えに要する時間として,記録されている時刻の前後15分ずつ加算し,③9月以降は休憩時間を1日30分とするとの考え方に基づき,被告の主張する労働時間数の限度では当事者双方に争いがない。亡P1の労働時間数は,これに加え,個別的な点につき,次のaからdまでの考え方を基に認定を行うことが相当である。 a 休憩時間については,1日中とることのできない状況にあったとは認めるに足りる証拠はないので,前記のとおり,店舗責任者就任後は,1日当たり30分をとることができたものとする。 b 亡P1が終業時刻後に携帯電話で上司,○等に送っているメールについては,そもそも終業時刻後の労働者の活動時間をもって労働時間 とするには,使用者の指揮命令の下に置かれていたことが必要であるところ,自主的な営業報告や,○との雑談,相談というべきものが大半であること,業務に関連するものであっても,必ずしも就業時間ではないその時間帯に作成して送信することを要したといえないものが大半であって,本件会社の指揮命令下における作業であったと認定することは困難であることから,原則として,メール作成に要する時間,メールの受信と返信との間の時間のいずれも労働時間とは認められない。ただし,翌日の営業に支障を来す問題について,メールを用いて対応している場合については,店舗の営業を遺漏なく行 ル作成に要する時間,メールの受信と返信との間の時間のいずれも労働時間とは認められない。ただし,翌日の営業に支障を来す問題について,メールを用いて対応している場合については,店舗の営業を遺漏なく行うべきとの本件会社の指揮命令が黙示的に及んでいると解されるから,労働時間と認める。 c 亡P1が終業時刻後に社内メールを用いて業務連絡等を送信している場合については,終業後,当該メールを送信するまでの間,当該メールに関連して業務を行っていたものとして,その間の時間を労働時間と認める(この点について,被告は,本件店舗では営業終了後に,従業員が売れ残ったケーキを食べながら歓談する習慣(「お茶」の時間)があったと主張し,これに沿った証拠(甲13,14,18,19)を提出するが,当該メールを送信した日に「お茶」の時間が設けられていたことを認めるに足りる証拠はなく,被告の主張は採用することができない。)。 d 亡P1は9月12日に「コーヒーマイスター養成講座第▲期」の実技研修を受講し,11月8日には認定試験を受けている(前記2(5)カ)ところ,本件会社は,自らの展開するカフェについて,「コーヒーマイスターが淹れる本格派のサイフォン珈琲を,高級感あるアンティークな雰囲気の中でゆったりと楽しんでいただく喫茶店」であると位置付けて宣伝しており(甲21),また,新人社員は全員これを受 験していたとするP29の供述もある(乙23〔312頁から319頁まで〕)が,これに反する証拠(乙14,23〔298頁から305頁まで〕)もあるところであり,同講座の受講が本件会社から要請されたものであるとまではいえず,労働時間とは認められない。 e 本件店舗の営業時間外に亡P1がP9と打合せを行っている時間帯については,当該打合せ であり,同講座の受講が本件会社から要請されたものであるとまではいえず,労働時間とは認められない。 e 本件店舗の営業時間外に亡P1がP9と打合せを行っている時間帯については,当該打合せが亡P1の都合のよい日時に,亡P1とP9とが自主的に行っていたものであること(甲13,18)に照らし,労働時間とは認めない。 (ウ) 以上によれば,原告の時間外労働時間数は,別紙6「裁判所認定の時間外労働時間数」記載のとおりであると認めることができる(算定に当たっては,原告の所定労働日1日当たり8時間を超える労働時間を,時間外労働時間とした。)ところ,各月の合計は,亡P1が本件店舗の店舗責任者に就任するまでの平成18年6月から同年8月まで(期間①)が,5時間39分,17時間46分,18時間46分であり,一方,店舗責任者就任後同年9月から同年11月まで(期間②)が,51時間29分,45時間,37時間09分,同年12月1日から同月▲日までが14時間45分であり,その平均は,期間①については1か月当たり14時間03分(計算式:5:39+17:46+18:46=42:11 42:11÷3≒14:03)となり,期間②については1か月当たり44時間33分(計算式:51:29+45:00+37:09=133:38 133:38÷3≒44:33)である。 このように,亡P1が店舗責任者に就任して以後,4週8休という所定休日(前提となる事実(2)イ)をとることができない状態となっており(したがって,9月以降の各月については,特定されていない休日労働が存在することになるが,取得されるべきであった休日の日を特定することは証拠上困難であることから,前記の認定にとどめるものである。),時間外労働時間数は20時間以上増加し,一月当たりの時間外 在することになるが,取得されるべきであった休日の日を特定することは証拠上困難であることから,前記の認定にとどめるものである。),時間外労働時間数は20時間以上増加し,一月当たりの時間外 労働時間数についても,これを平均するとほぼ45時間に近い水準となっている。この点を踏まえると,亡P1が店舗責任者に就任したことに伴う業務内容の変更,業務量の増加により受けた心理的負荷は,認定基準上は「出来事の類型 ③仕事の量・質」のうち「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」に該当するというべきで,その心理的負荷の程度は「中」と評価すべきである。 エ ○の激減による心理的負荷の有無及び程度について(認定基準の出来事の類型②の4)(ア) 原告は,本件店舗は慢性的な人手不足の状況にあったところ,12月▲日には,15名の○中,合計8名が年内又は年明けでの退職を申し出る事態となり,本件店舗が営業停止の状況に追い込まれることが必至であったと主張し,認定基準上「会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをした」に該当し,これによる認定基準上の心理的負荷の程度は「強」であると主張する。 (イ) そこで検討するに,前記認定事実によれば,亡P1は,店舗責任者就任後間もない9月25日の時点で,P7に対し,中期的にみて○が切迫した状況(人手不足になる状況)だと思われる旨訴える(前記2(4)ウ)など,○の確保について懸念を有していた。実際に,ヘルプを要請することも複数回にわたっていた(前記2(4)エ)。また,求人情報誌,求人サイト,本件ショッピングセンター内の無料掲示板等の媒体を用いて○の採用活動を行い,採用に至った○もいたものの,12月頃の段階では,亡P1及びP25からみて,十分に業務を行えるほど成長したとはい 人サイト,本件ショッピングセンター内の無料掲示板等の媒体を用いて○の採用活動を行い,採用に至った○もいたものの,12月頃の段階では,亡P1及びP25からみて,十分に業務を行えるほど成長したとはいえない状態であったこと(前記2(6)ウ,カ(ウ)),このような状況の中で,12月▲日の時点で,15名の○のうち8名が本件店舗の繁忙期とされる年末年始の時期に退職する意思を表明したうえ,厨房業務のできる○3名が年始に休みたいと申し出る事態となったことが認めら れるところ,同日時点の状況は,それまでのヘルプを要請するなどして乗り切ってきた事態(10月から11月にかけて3名の○が退職し,9月から11月にかけて5名の○を採用した。)とは規模ないし困難さが格段に異なっていたということができる。このことは,社会人経験のなかった若年で新任の店舗責任者であった亡P1にとり,本件店舗の年末年始にかけての具体的なシフト組みに困難を来し,ついに営業すらできなくなってしまうと認識させるに十分な出来事であったといえ,そのような亡P1の認識が深刻なものであったことは,12月▲日にP30店長及びP31にヘルプ要請をし,そのわずか2日後には,P30店長の他に,本件店舗とは部門の異なるカフェ部門の2店舗にヘルプを要請していること(前記2(6)オ(イ),カ(ア))や,12月▲日に,P7に電話をして泣き出すなどしたこと(前記2(6)カ(エ))からも優に推認することができるところである。 そして,このような○の大量退職の申し出という事態が起こったことの原因については,亡P1の○が退職を申し出たのは自分のせいであるとの心情を記載した遺書から窺われるように,上司ないし先輩としてP7やP24が励ましたり助言したりした言動によって,かえって亡P1をして,自己のコミュニケーシ ○が退職を申し出たのは自分のせいであるとの心情を記載した遺書から窺われるように,上司ないし先輩としてP7やP24が励ましたり助言したりした言動によって,かえって亡P1をして,自己のコミュニケーション不足が原因であると認識させたものと考えられるのであり,このことは真面目で責任感の強い亡P1の性格(甲6,7,13,乙23〔312頁から319頁まで〕,前記2(5)オ)と相俟って,強い自責の念を形成させるに至ったものと認めるのが相当であり,そのような認識や自責の念が形成されたことも無理からぬものがあるというべきである。そして,亡P1と同様の立場に置かれた大学を卒業して1年程度の平均的な若年の新人の店舗責任者にとっても,同様の状態に陥るであろう状況であると考えるべきである。 (ウ) もっとも,当時の状況を客観的にみると,まず,P3部門の統括責 任者(スーパーバイザー)であるP7が,翌日12月▲日午前10時から亡P1と面談する旨約束しており,本件店舗の当面の営業などについて,P7と相談し,善後策を検討することが可能な状況であり,少なくともP7は,本件店舗が営業不能な事態に陥るとまでは考えていなかったし,また,実際にも,P19が本件店舗の店舗責任者であった頃,○の数がより少ない状況にあったが,他店舗から継続的なヘルプを得て本件店舗の営業を継続していた実績もあったこと(甲14,19によって認められる。)からすれば,仮に本件店舗において継続的な人員不足が発生したとしても,最終的には他店舗からのヘルプを継続的に受けることによって,営業停止という,最も避けるべき事態を回避することは可能であったと考えられる。 また,○の中には,亡P1をよく思わない者もいた(前記2(5))が,亡P1は,○への対応に問題があったと感じたとき という,最も避けるべき事態を回避することは可能であったと考えられる。 また,○の中には,亡P1をよく思わない者もいた(前記2(5))が,亡P1は,○への対応に問題があったと感じたときには,後に謝罪のメールを送るなどしており(乙23〔743頁,749頁〕),亡P1の○への対応ぶりについて,特段の落ち度があったとは認められず,本件○が退職の意向を示したことが,亡P1の仕事上のミスに基づくものであるというべき事情は認められない。 (エ) 以上の点を併せ考えると,12月▲日までに○の多くが退職を申し出た出来事は,「会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをし,事後対応にも当たった」という認定基準上の出来事そのものに該当するとはいえないが,亡P1をして,また亡P1と同様の立場に置かれた平均的労働者においても,「会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをし」たという認識をしても仕方のないような客観的状況があったことは否めないところである。したがって,「会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをし,事後対応にも当たった」ことに準ずる心理的負荷があったというべきであり(認定基準はあくまでも具体例を挙 げるものである。),その心理的負荷の程度は,「強」に当たるものというべきである。 オその他,原告は,亡P1が①本件会社から達成困難なノルマを課せられ,達成することができなかった,②客からのクレームについて最終的な責任者として対応しなければならなかった,③レジの誤差が出るというトラブルが続き,○と円滑な人間関係を形成しづらい状況であったこと,それによる心理的負荷があったことを主張する。 上記①から③までの主張は,①については「達成困難なノルマが課された」(②の8)ないし「ノルマが達成できなかった」(②の 形成しづらい状況であったこと,それによる心理的負荷があったことを主張する。 上記①から③までの主張は,①については「達成困難なノルマが課された」(②の8)ないし「ノルマが達成できなかった」(②の9),②については「顧客や取引先からクレームを受けた」(②の12),③については「部下とのトラブルがあった」(⑤の32)という認定基準上の具体的出来事に該当する旨の主張と解することが可能なので,その旨の主張と解したうえ検討を加える。 ①の点については,本件会社から各店舗に対し,売上げの目標値は示されていたものの,その目標値は義務づけられたものではなく,内容的にもおおむね前年度の売上げと同程度であり(乙22〔400頁から402頁まで〕),必ずしも達成困難な目標値であったと評価することはできない。 また,亡P1については,利益目標を達成していなくても,人事考課上,特段厳しい評価は加えられていなかった(前記2(5)オ)。②については,○が,客に対し,異物が混入した商品や,付け合わせのクレソンが萎れた状態で商品を提供したためにクレームが発生し,亡P1がこれらへの対応を行ったことが認められる(乙23〔734頁,735頁,737頁,773頁,774頁〕)が,いずれも,店舗責任者として通常行うべき範疇の業務であり,これにより,特段,心理的に負荷のかかった事情も窺われない。③については,レジの現金に過不足が生じることがあり,特定の○の父親から,当該○を疑っているのではないか,とのクレームが本件会社 に寄せられたものの,P7において対応し,事態は収束していること,この出来事によってその後の業務に大きな支障を来したことはないことが認められる(甲13,17)。 以上のとおり認定されるところを認定基準の心理的負荷の強度に当て嵌めてみ 束していること,この出来事によってその後の業務に大きな支障を来したことはないことが認められる(甲13,17)。 以上のとおり認定されるところを認定基準の心理的負荷の強度に当て嵌めてみると,前記①の点については,「ノルマではない業績目標が示された(当該目標が,達成を強く求められるものではなかった)」(②の8)又は「ノルマが達成できなかったが,何ら事後対応は必要なく,会社から責任を問われること等もなかった」(②の9)との出来事に,前記②の点については,認定基準上「顧客等からクレームを受けたが,特に対応を求められるものではなく,取引関係や,業務内容・業務量に大きな変化もなかった」(②の12)との出来事に該当するといえるが,その心理的負荷の程度は,それぞれ「弱」にとどまる。また,③については,「業務をめぐる方針等において,周囲からも客観的に認識されるような対立が部下との間に生じた」(⑤の32)との出来事に該当するといえ,その心理的負荷の程度は,「中」に該当する。 カ以上によれば,亡P1については,認定基準別表1における心理的負荷の強度が「強」に該当する業務上の出来事が二つ,「中」に該当する出来事が二つ,「弱」に該当する出来事が二つ存在するのであるから,これらを全体評価すると,業務による強い心理的負荷の存在を認めることができる。 したがって,亡P1は,業務による強い心理的負荷によって,安定した状態にあった本件精神障害を増悪させたことが認められるのであり,そのことは,認定基準上,業務による強い心理的負荷によって精神障害を発症し,自殺するに至ったものと評価されるべきこととなる。 キなお,被告は,業務以外の心理的負荷要因として,亡P1には,本件における心理的負荷となるような出来事として,原告の入院という事実があ を発症し,自殺するに至ったものと評価されるべきこととなる。 キなお,被告は,業務以外の心理的負荷要因として,亡P1には,本件における心理的負荷となるような出来事として,原告の入院という事実があ るほか,証拠(携帯電話のメールの記録等)によれば,亡P1には,異性関係のトラブルが存在していたことも窺われると主張するが,これらの事実が本件精神障害の増悪の原因であると認めるに足りる証拠はなく,被告の主張は採用することができない。 (3) ところで,認定基準は,業務以外の原因により発病して治療が必要な状態にある精神障害が悪化した場合であっても,「特別な出来事」に該当する出来事があれば,当該出来事による心理的負荷が当該精神障害の悪化の原因であると推認されるとしており(前提となる事実(6)),原告は予備的に,亡P1の就労状況が,「特別な出来事」の類型「心理的負荷が極度のもの」のうち,「心理的負荷が極度と認められるもの」に該当し,当該心理的負荷によって本件精神障害が著しく悪化したと評価されるべきである旨の主張をするので,その点についても念のため付言する。ただし,以下の検討は,検討会報告書が指摘する「精神障害で長期間にわたり通院を継続しているものの,症状がなく(寛解状態にあり),または安定していた状態で,通常の勤務を行っていた者の事案」であっても,認定基準にいう「業務以外の原因により発病して治療が必要な状態にある精神障害が悪化した場合」に含まれるという解釈を前提とすることになる。 ア認定基準の「特別な出来事」には,前記3(1)アに掲記したものが挙げられているところ,これら出来事は,自己又は他人の生死に関わる事柄に起因する心理的負荷,自己の永久労働不能となる後遺障害に起因する心理的負荷,意思を抑圧された状況下に受けた行為に起因する心 のが挙げられているところ,これら出来事は,自己又は他人の生死に関わる事柄に起因する心理的負荷,自己の永久労働不能となる後遺障害に起因する心理的負荷,意思を抑圧された状況下に受けた行為に起因する心理的負荷を中核に構成されている。そして,「その他,上記に準ずる程度の心理的負荷が極度と認められるもの」の解釈については,このような極度とされる心理的負荷のある出来事を内容とするように行われるべきものであるが,ここで考慮すべきは,そもそもにおいて,心理的負荷の強弱とは相対的な度合いで把握される概念であり,「特別な出来事」のもたらす心理的負荷と 強度の心理的負荷をもたらす具体的出来事がもたらす心理的負荷との間には,その程度において絶対的に峻別されるべき境界があるものとは考えられず,飽くまでも相対的な区分にすぎないと考えられるところ,「特別な出来事」に当たらないが,強い心理的負荷をもたらす出来事が複数あるような場合,その心理的負荷の度合いが「特別な出来事」のもたらす心理的負荷の程度に近接して行くものと考えられる。そして,本件においては,認定基準別表1における心理的負荷の強度が「強」に該当する業務上の出来事が二つ,「中」に該当する出来事が二つという具合に複数の出来事が競合していることが認められるのであり,その出来事の内容にかんがみると,少なくとも本件においては,その心理的負荷の度合いは,「特別な出来事」に準ずる程度のものと解して然るべきものであり,「その他,上記に準ずる程度の心理的負荷が極度と認められるもの」に該当すると解すべきである。 イ原告のP15医師意見書に依拠する主張について原告は,意見書①及び②に依拠し,亡P1の死亡については,業務関連の要因の方が,個体側要因よりも,圧倒的に自殺に対する因果関係が大きいと推定でき イ原告のP15医師意見書に依拠する主張について原告は,意見書①及び②に依拠し,亡P1の死亡については,業務関連の要因の方が,個体側要因よりも,圧倒的に自殺に対する因果関係が大きいと推定できるので,亡P1の本件精神障害が悪化したことが業務に起因するものであるとも主張するところ,「業務以外の原因により発病して治療の必要な状態にある精神障害が悪化した場合」を前提とするものと解して検討する。 (ア) 意見書①についてP15医師は,意見書①において,前提事実(7)エのとおり,亡P1の労働状況についてのうつ病を発症する発症リスクのオッズ比が高いことを指摘している。 しかしながら,意見書①のオッズ比によるリスクの相対的計算という検討方法の内容として,本件におけるオッズ比計算の前提となっている 労働ストレス因子における「高要求度」,「低裁量度」,「低支援度」の概念がなお曖昧であるうえ,職業上のストレスフルな因子があればその内容・心理的負荷の程度を斟酌することなく,単純に個数と相対リスクの数値を与えて計算を行う点において,その判断枠組みの持つ精度という観点において,認定基準に優越する合理性を持つとまで考えることはできず,採用することを躊躇せざるを得ない。また,その点を措くとしても,本件事案について,「高要求でかつ低裁量の仕事」と指摘する点については,これまで述べたとおり,亡P1の業務上のノルマは単なる目標数値であって義務づけられたものでも過大なものでもないうえ,証拠によっても,○のシフトを組めないために休憩を「常に」取れなかったり,○のシフトを組めない場合に亡P1が交代に入るのが「常態化」していたりしたという事実ないし評価を認めるには足りないことなどの問題点が存在することから,採用することが困難であるといわざるを得 ったり,○のシフトを組めない場合に亡P1が交代に入るのが「常態化」していたりしたという事実ないし評価を認めるには足りないことなどの問題点が存在することから,採用することが困難であるといわざるを得ない。原告の意見書①に基づいた主張は,認定基準の「特別の出来事」の範囲に関する基本的な問題意識において,当裁判所と共通であると考えるが,現段階において採用することはできない。 (イ) 意見書②についてP15医師は,意見書②において,中国における自殺のリスク要因について調査した医学文献(甲24)を基に,亡P1の自殺について,個体側要因(自殺未遂歴(平成15年12月5日頃に行われたリストカット(乙18)及び死亡前2週間の抑うつ状態)と業務上の要因のオッズ比を算出し,後者が前者を大幅に上回っていることをもって,亡P1の自殺について,業務上の要因の方がはるかに多くの影響を与えていると述べる。 しかし,意見書②が依拠する調査結果は,我が国とは生活状況等の異なる中国における自殺のリスク要因について調査したものであり,本件 において直ちに使用に堪えるものであるか否かについては,疑問が残るといわざるを得ず,採用することができない。 したがって,原告の意見書②に基づいた主張は,理由がない。 (4) 以上検討したところによれば,亡P1が本件精神障害を悪化させたこと及びその後自殺したことについては,本件精神障害の状態をもって,「精神障害で長期間にわたり通院を継続しているものの,症状がなく(寛解状態にあり),または安定していた状態で,通常の勤務を行っていた者の事案」として「業務以外の原因により発病して治療が必要な状態にある精神障害が悪化した場合」には該当しないと解しても,「業務以外の原因により発病して治療が必要な状態にある精神障害が悪化した ていた者の事案」として「業務以外の原因により発病して治療が必要な状態にある精神障害が悪化した場合」には該当しないと解しても,「業務以外の原因により発病して治療が必要な状態にある精神障害が悪化した場合」に該当すると解しても,いずれにしても業務に起因するものであると認めるのが相当である。 4 結論以上によれば,原告の請求に係る遺族補償給付及び葬祭料をいずれも支給しないとした本件各不支給処分は違法であるというべきであり,取消しを免れない。よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第11部 裁判長裁判官佐々木宗啓 裁判官五十嵐浩介 裁判官吉岡あゆみ

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