平成22(ワ)2723 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年8月25日 大阪地方裁判所
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判決文本文19,710 文字)

平成23年8月25日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成22年(ワ)第2723号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成23年6月7日判決原告株式会社サンファミリー同訴訟代理人弁護士千田 適同徳村初美同奥村太朗同藤澤泰子被告株式会社ジェイビーエス同訴訟代理人弁護士臼田寛司 主文 1 被告は,原告に対し,3000万円及びこれに対する平成22年3月2日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。 ただし,被告が2400万円の担保を供するときは,その仮執行を免れることができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1) 主文1,2項と同旨(2) 仮執行宣言 2 被告 (1) 原告の請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 (3) 仮執行免脱宣言第2 事案の概要 1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者原告は,日用雑貨品の製造・販売を業とする株式会社である。 被告は,日用雑貨品の卸販売を業とする株式会社である。 (2) 原告商品原告は,別紙商品目録記載1の包丁研ぎ器(以下「原告商品」という。)を,中国において委託製造の上,輸入し,平成18年7 被告は,日用雑貨品の卸販売を業とする株式会社である。 (2) 原告商品原告は,別紙商品目録記載1の包丁研ぎ器(以下「原告商品」という。)を,中国において委託製造の上,輸入し,平成18年7月21日以降,日本国内で販売している(甲26の1,甲45,弁論の全趣旨)。 (3)被告商品被告は,平成20年4月から,別紙商品目録記載2の包丁研ぎ器(以下「被告商品」という。)を,中国から購入(輸入)し,日本国内で販売している。 (4)商品形態の同一性原告商品の形態と被告商品の形態は,実質的に同一である。 2 原告の請求原告は,被告商品の販売が,不正競争防止法(以下,単に「法」という。)2条1項3号に該当することを理由に,損害賠償内金3000万円及びこれに対する不正競争行為の後である平成22年3月2日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金の支払を求めている。 3 争点(1)被告商品の形態は,原告商品の形態を模倣したものか (争点1)(2)被告商品の形態は,商品の機能を確保するために不可欠な形態か (争点2)(3)被告は,被告商品の購入時に,被告商品の形態が原告商品の形態を模倣したものであることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がなかったか (争点3)(4)損害額 (争点4)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告商品の形態は,原告商品の形態を模倣したものか)について【原告の主張】(1)原告が先行開発者であること原告は,刃部をダイヤモンド粒子でメッキ加工した研ぎ器(以下「ダイヤモンド研 (被告商品の形態は,原告商品の形態を模倣したものか)について【原告の主張】(1)原告が先行開発者であること原告は,刃部をダイヤモンド粒子でメッキ加工した研ぎ器(以下「ダイヤモンド研ぎ器」という。)の製造・販売を企画し,平成18年4月13日,中国の商社「DARKHORSECO.,LTD」(以下「ダークホース社」という。)に商品の原案図(甲1の1・2)を送って,金型代と製造原価の見積を依頼した。なお,このときサンプルとして既存商品を渡しているが,上記メッキ加工用のサンプルであり,原告商品とは全く異なる形態のものである。 この時点では,日本国内(原告が調査)にも中国国内(ダークホース社が調査)にも,上記原案図のような形態の商品は存在しなかった。そこで,原告は,原告商品について,ダークホース社から送付された最終図面(甲2)をもとに,中国で委託製造した上,これを輸入し,同年7月21日から日本国内で販売した。 当初,原告商品の製造工場は,広東省の工場であったところ,ダークホース社から値上げ要請があったため,広東省東莞にある他の商社を通じ,浙江省杭州の「杭州博鋒金剛石工具有限公司」(以下「A社」という。)に変更したが,不良品が多発したため,ダークホース社を通じて最初の工場に戻した。その後,製造価格を下げるため,再度,A社に変更し,現在までA社が製造している。 なお,原告商品のパッケージ(甲12)において発売元と記載されている株式会社ニーズ(以下「ニーズ」という。)は,原告の100%子会社であり,原告の取り扱う商品について企画・開発を担当している。実際に原告商品の販売を行ったのはニーズではなく,原告である。 (2)被告商品が原告商品の模倣品であること原告は,原告商品を増産するため,前記(1)のとおり,広 て企画・開発を担当している。実際に原告商品の販売を行ったのはニーズではなく,原告である。 (2)被告商品が原告商品の模倣品であること原告は,原告商品を増産するため,前記(1)のとおり,広東省東莞にある商社を通じて,A社に製造を委託した。原告は,これに先立ち,平成18年11月ころ,A社に対し,原告商品の図面や,原告商品を渡し,試作品を作らせたことがあったが,その時点では,発注は行わなかった。 それにもかかわらず,A社は,原告商品の模倣品を製造していたものと考えられ,被告がA社から購入した被告商品は,この模倣品である。 (3)被告の主張に対する反論ア A社商品について前記(1),(2)のとおり,A社は原告商品の開発者ではなく,原告が開発者である。 したがって,A社が原告商品の形態について権利を有することはない。 イ B社商品について前記(1)のとおり,原告商品の当初製造工場は広東省の工場ではあるが,広東省陽江の「和昌五金製品工場」(以下「B社」という。)ではない。 ウ C社商品について江蘇省の「江陰市立新金剛石工具有限公司」(以下「C社」という。)が,平成17年3月10日に開発していたという,柄部が波形のダイヤモンド研ぎ器(乙16の1・2添付②の右上の写真の商品。以下「C社商品」という。)は,市場に出回っていたか明らかでない。また,C社商品は,原告商品とは異なり,刃部が平らな方状であるし,柄部が刃部と連続して一体となっている。 エ E社商品(D社製造品)について江蘇省の「常州市方元鋼銼有限公司」(以下「D社」という。)が製造したという半製品(乙25)は,メッキ加工もパッケージもされておらず,柄部の穴が不揃いであるなど,現実に商品となったものとは考えられない。そして,D社のウェブサイ 司」(以下「D社」という。)が製造したという半製品(乙25)は,メッキ加工もパッケージもされておらず,柄部の穴が不揃いであるなど,現実に商品となったものとは考えられない。そして,D社のウェブサイト(甲37)にも,このような商品は掲載されていない。 また,D社への注文主である,江蘇省の「江陰市砂輪厂」(以下「E社」という。)が送付したという図面(乙23の1)も,コピーに過ぎず信用性が低い。さらに,E社は,現在「江陰市多菱工具有限公司(JiangyinDuolingToolsCo.,Ltd)」と社名変更しているところ,E社のウェブサイト(甲58)に掲載された原告商品と同形態のダイヤモンド研ぎ器「DiamondSharpener」(以下「E社商品」という。)の写真には,変更後の社名しか記載されていないから,E社商品は,社名変更後に製造されウェブサイトに掲載された商品と考えられる。 【被告の主張】(1)販売主体原告商品を販売しているのはニーズであり,原告ではない。 (2)原告が開発者でないこと原告は,原告商品を製造しておらず,原告商品を製造しているのは,後記(3)アのとおり,A社であり,それ以前は,B社である。 原告商品の原案図は,誰が作ったか明らかでない上,原告商品とは先端の形状が異なるし,柄部に穴も記載されていない。 また,上記原案図作成当時,既に,サンプルが存在した。 (3)他の開発者の存在ア A社A社は,平成18年11月27日に,広東省東莞の仲介会社を通じて, 原告商品の図面や商品見本を提供され,これらを参考に試作品を作ったが,原告から金型代等の支払もなく注文もなかったため,自社の資金・労力により商品を製造し,被告に販売した。A社は,当該商品に係るすべての権利は自社にある 見本を提供され,これらを参考に試作品を作ったが,原告から金型代等の支払もなく注文もなかったため,自社の資金・労力により商品を製造し,被告に販売した。A社は,当該商品に係るすべての権利は自社にあると主張している。 原告は,被告に後れる平成21年6月15日以降に,A社から当該商品を購入した者に過ぎない。 仮に,原告がA社との共同開発者であった場合でも,上記のとおり,被告商品はA社製造に係る真正品であるから,被告に対する権利行使はできない。 イ B社原告商品の当初製造工場は,B社であるところ,B社は,平成18年7月から,自社の資金・労力により原告商品を製造・販売しており,原告商品に係るすべての権利は自社にあると断言している。 ウ C社C社は,平成17年3月10日に開発していたC社商品(乙16の1・2添付②の右上の写真の商品)をもとに,原告商品を開発したものであり,原告商品に係るすべての権利は自社にあると断言している。 なお,原告は,平成18年11月6日,ダークホース社を通じ,C社との間で原告商品の製造契約をしたものの,商品の一部を引き取っただけで契約を打ち切り,残りの商品の買取りを拒否している。 エ E社D社は,E社から注文を受けて,平成17年4月から,E社商品を大量に製造・販売している。 また,E社は,D社に対し,平成16年9月5日にE社商品の図面を送付して,金型と金属部品の製造を注文しており,同年から,日本の会社にも販売していた。実際,藤原産業株式会社は,平成17年に,E社 商品に係る情報及びサンプルを入手している。 オ原告商品の形態が先行商品形態でないこと浙江省義烏の福田市場にある「新盛鎖業」は,平成17年8月ころから,原告商品と同形態の商品を,店頭で一般に販売していたところ,株 ルを入手している。 オ原告商品の形態が先行商品形態でないこと浙江省義烏の福田市場にある「新盛鎖業」は,平成17年8月ころから,原告商品と同形態の商品を,店頭で一般に販売していたところ,株式会社フジキンは,同商品を同年10月に購入し,同年11月に,日本で販売した。 また,原告商品は,製造に際し,既存商品をサンプルとしているし,原告商品と類似の包丁研ぎ器は,平成17年11月から,株式会社総通(日本直販)により販売されている。 原告自身,原告商品の形態について,排他的権利がないことを承知していたため,他の取扱商品とは異なり意匠登録を受けていないし,複数の業者に製造を依頼しながら,原告商品の製造・販売権が原告のみに存する旨の契約も締結していないのであって,製造業者が原告商品を他社へ販売することを気にとめていなかった。 2 争点2(被告商品の形態は,商品の機能を確保するために不可欠な形態か)について【被告の主張】(1)刃部について被告商品の刃部は,遅くとも平成18年には陳腐なものとなっており,独自性がなく,商品の機能を確保するために不可欠な形態といえる。 (2)柄部について被告商品の柄部は,包丁,ナイフ,鋸などの,細長い形状の商品に多数採用されており,商品の機能を確保するために不可欠な形態といえる。 (3)ありふれた形態であること原告商品の形態は,一見してありふれたものであり,法2条1項3号の保護要件を欠く。 【原告の主張】被告商品の機能を確保するために不可欠な形態とは,刃部と柄部の存在のみであり,その形状,模様,色彩,光沢,質感ではない。 また,原告商品の柄部は概ね細長い波形であるが,柄部が細長いことは,必ずしも一般ではなく,商品の機能を確保するために不可欠な形態では 存在のみであり,その形状,模様,色彩,光沢,質感ではない。 また,原告商品の柄部は概ね細長い波形であるが,柄部が細長いことは,必ずしも一般ではなく,商品の機能を確保するために不可欠な形態ではない。 3 争点3(被告は,被告商品の購入時に,被告商品の形態が原告商品の形態を模倣したものであることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がなかったか)について【被告の主張】(1)善意であったこと被告は,平成20年1月ころ,浙江省義烏の福田市場でダイヤモンド研ぎ器を発見し,その製造業者であるA社を探し出し,被告商品を購入(輸入)するに至ったものであり,このとき原告商品の存在は知らなかった。 また,被告商品の売買契約時において,A社からは,同社が同商品に係るすべての権利を有していると説明されていた。 被告が原告商品の存在を知ったのは,原告からの警告書が到達した平成20年12月9日である。 (2)重過失がなかったこと原告程度の規模の業者は,日本国内に多数存在するし,膨大な種類がある生活用品の中で,原告商品はマイナーで目立たない商品である。 原告自身,原告商品と類似の商品が,平成17年11月から日本直販で販売されていることを知らなかったのであるし,被告商品についても,発見して警告書を送付するまでに8か月を要している。 また,全国展開のホームセンターである株式会社コメリも,原告商品と類似の商品を,原告商品の販売開始後3年以内である平成21年5月から販売しており,原告商品の存在を知らなかったと考えられる。 したがって,被告において,原告商品の存在を知らないことにつき,重過失はない。 【原告の主張】(1)悪意について原告商品は,年商約40億円の原告におけるヒット商品の1つであり,販売開 したがって,被告において,原告商品の存在を知らないことにつき,重過失はない。 【原告の主張】(1)悪意について原告商品は,年商約40億円の原告におけるヒット商品の1つであり,販売開始時(平成18年7月21日)から被告商品の輸入開始時までに,13万9325個以上が日本国内において販売された。また,原告商品は,消費者へ小売販売される他,株式会社セシールや株式会社ベルーナといった通販会社や生協など,全国約180社に卸売販売されており,これらの販売先が,独自に,インターネットやショップチャンネル等で小売販売している。 また,原告は,原告商品を,毎年カタログに載せ,平成19年には,テレビショッピングのショップチャンネルで放映し,新聞広告や生協のチラシなどでも宣伝していた。 しかも,被告商品のパッケージは,その形状や記載された文言が,原告商品と同様である。 したがって,平成20年4月において,原告と同業者である被告が,原告商品の存在を知らなかったはずがなく,むしろ,原告商品がよく売れているため,同一形態である被告商品の輸入・販売を行ったと考えられる。 (2)重過失について業者であれば,商品の輸入にあたり,同一形態の商品が販売されていないか,意匠登録がされていないかを調査すべきであるから,これを行っていない被告には重過失がある。 原告商品の開発に先立ち,原告は市場調査を行ったが,日本直販で販売されていたダイヤモンド研ぎ器は,原告商品とは全く異なる形態であった。 また,株式会社コメリの販売していた包丁研ぎ器の形態は明らかにされて いないし,仮に原告商品に類似していたとしても,被告の善意・無重過失を裏付けるものではない。 4 争点4(損害額)について【原告の主張】(1)法5条1項に基づく損害額 にされて いないし,仮に原告商品に類似していたとしても,被告の善意・無重過失を裏付けるものではない。 4 争点4(損害額)について【原告の主張】(1)法5条1項に基づく損害額ア被告の譲渡数量 9万8419個被告は,原告商品の販売開始から3年以内である平成21年7月20日までの間に,被告商品を下記(ア)から(カ)の合計9万8419個販売した。 (ア) 株式会社セシールによる小売分 1645個(イ) 株式会社ミスターマックスによる小売分 1万8852個(ウ) 株式会社カネヒロによる小売分 96個(エ) 株式会社ネットプライスによる小売分 1833個(オ) ハーマンズ株式会社による小売分 768個(カ) 上新電機株式会社による小売分 7万5225個イ原告商品の単位数量当たりの利益 742.5円原告商品の単位数量当たりの利益は,下記(ア)から(イ)を控除した742.5円である。 〔計算式〕1,264-521.5=742.5(ア) 販売単価(平成21年7月20日までの平均) 1264円売上額 2億5282万5465円販売個数 19万9982個〔計算式〕252,825,465÷199,982=1,264(イ) 原価(平成21年5月28日までの平均) 合計521.5円仕入単価 514円(梱包費,海上運賃,輸入手続費用込み)仕入額 1億0279万9194円 仕入個数 19万9696個〔計算式〕102,799,194÷199,696=514国内輸送費 7.5円〔計算式〕514+7.5=521.5ウ損害額 7307万6107円前記ア,イからすれば,原告の損害は7307万610 ÷199,696=514国内輸送費 7.5円〔計算式〕514+7.5=521.5ウ損害額 7307万6107円前記ア,イからすれば,原告の損害は7307万6107円であり,本訴においては,このうち3000万円を請求する。 〔計算式〕742.5×98,419=73,076,107(2)販売することができないとする事情に係る反論原告商品の販売数量は,被告商品の販売開始前は,月平均6580個,多い月は1万個以上であったところ,被告商品の販売開始後は,月平均4119個に減少しており,被告商品の販売がなければ,原告は,被告商品と同じ数量の原告商品を販売することができた。 実際,前記(1)ア(イ),(エ),(カ)に係る仕入元である株式会社ドウシシャは,被告商品の販売開始以降,原告商品の取扱いを大幅に減少させている。 【被告の主張】(1)単位数量当たりの利益について原告は,原告商品の販売にあたり,一般管理費,広告宣伝費,ニーズへの支払,輸入諸経費,金型代などを支出しており,これらも経費として控除すべきである。 (2)販売することができないとする事情被告商品の販売価格は,税込み998円ないし1290円であるところ,原告商品の販売価格は,税込み3990円であり,3倍以上の価格差がある。そして,包丁研ぎ器は生活必需品ではなく,価格差が需要量に決定的影響を与えるから,原告が,被告商品と同じ数量の原告商品を販売することはできなかったといえる。 なお,原告商品と類似の商品は,平成19年4月には株式会社トレードワンにおいて,同年6月にはウィキャン株式会社において,それぞれ販売されていた。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(被告商品は,原告商品の形態を模倣したものか)につ 19年4月には株式会社トレードワンにおいて,同年6月にはウィキャン株式会社において,それぞれ販売されていた。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(被告商品は,原告商品の形態を模倣したものか)について(1)原告商品の開発経緯ア証拠(甲4,甲36の1・2,甲44,45,証人P1,以下個別に掲記した証拠)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 原告は,平成18年4月初めころ,株式会社小林工具製作所のダイヤモンド研ぎ器が売れているとの情報を入手し,原告においてもダイヤモンド研ぎ器を販売することを企画した。 株式会社小林工具製作所のダイヤモンド研ぎ器は,柄部はまっすぐな棒状であり,刃部は,三角形で,表裏が直面又は曲面で形成され,柄部との接合部近くで折曲されている形態のものであったが,原告商品については,柄部は女性でも握りやすい波形で,刃部は折曲していない形態とすることになった。 (イ) 原告は,原告商品について,サイズ別(大・小)の原案図を作成した上,同年4月13日にダークホース社に送付して見積を依頼し(甲1の1・2),刃部の材質(ダイヤモンド粒子でのメッキ加工)を示すためのサンプルも交付した。 ダークホース社は,同月24日,原告商品の金型費及びサイズ毎の商品価格に係る見積書を提出した(甲25の1)。 (ウ) また,原告は,特許事務所に対し,原告商品の構造上の特徴や形態について,他社の特許・実用新案権及び意匠権と抵触しないかの調査を依頼した。 上記特許事務所は,同年5月9日付けで,原告商品について,構造 上の特徴は既に公知で,かつ,権利期間が満了しているものであり,意匠も同様であり,実施可能であるとの調査報告書を提出した(甲43)。 (エ) ダークホース社は,同年5月31日,原告に対し, 上の特徴は既に公知で,かつ,権利期間が満了しているものであり,意匠も同様であり,実施可能であるとの調査報告書を提出した(甲43)。 (エ) ダークホース社は,同年5月31日,原告に対し,原告商品の図面を送付した(甲2)。 そして,原告から金型が発注された後,同年6月12日ころまで,原告とダークホース社との間で,試作品をもとに,完成品の形状や品質についてやりとりが行われ(甲3,39~42),原告商品の形態が確定した。 (オ) 原告は,同年6月20日以降,原告商品について,サンプル品として輸入するようになり(甲48~53の各1・2),同年7月20日から大量生産を始め,同月21日から日本国内での販売を開始した。 イ以上の事実からすれば,原告商品は,原告がその形態を考案して開発し,製造販売したものと認められる。 被告は,原告が費用(金型代)を負担していないと主張するが,法2条1項3号の立法趣旨の1つが,開発者に対し,投下資本回収の機会を与えることであるとしても,金型代の出損自体は,同号の保護を受けるための必須要件ではない。しかも,本件においては,前記アのとおり,金型代の見積が取られ,その後,現実に原告商品が大量生産されているのであるから,金型代は支払われたものと認められる。 (2)他の開発者の存在についてこれに対し,被告は,原告商品の開発者は原告ではないと主張するとともに,原告商品には先行商品が存在すると主張している。原告商品の開発者が原告であったとしても,原告商品が先行商品と実質的に同一である場合は,被告商品が原告商品の形態を模倣したものとはいえなくなる場合があるので,以下,検討する。 ア A社についてA社作成の「事情経過説明」と題する書面(乙13の1・2)には,2006(平成18)年11 商品の形態を模倣したものとはいえなくなる場合があるので,以下,検討する。 ア A社についてA社作成の「事情経過説明」と題する書面(乙13の1・2)には,2006(平成18)年11月27日に,原告からの委託に基づき原告商品のサンプルを作成したものの,注文もなく費用の支払もなかったので,自社の資金と労力により製造・販売を行った旨が記載されている。 しかしながら,前記(1)認定のとおり,原告商品は原告が開発したものであり,平成18年7 月21日には日本国内で販売されていたと認められるところ,A社が製造・販売したという商品は,これに後れるものである。 そもそも,上記書面の内容をみても,A社は,商社を通じて,原告から図面とサンプルの提供を受け,試作品を製造したというだけであって,原告商品の形態の開発について何らかの貢献をしたわけでもないことが認められ,A社に,原告商品の形態について,何らかの権利が発生することを理由づける記載はない。 イ B社について(ア) 原告商品被告は,原告商品の当初製造工場がB社であると主張する。 確かに,B社作成の状況説明書(乙15の1の1・2)には,2006(平成18)年7月から,ダイヤモンド研ぎ器を製造・販売していることが記載されており,B社の商品が撮影されたと思われる写真には,原告商品と実質的に同一性があると思われる商品も存在しているが(乙15の2の1の中段左から2番目の商品),上記商品が,いつころ製造されたものかは明らかでない(写真の撮影時期は,乙15の1の1の作成時ころであると推測される。)。 また,B社は,上記状況説明書において,原告から依頼を受けたというA社(乙13の1・2)や,ダークホース社から依頼を受けたと いうC社(乙16の1・2)とは異なり,原告な 測される。)。 また,B社は,上記状況説明書において,原告から依頼を受けたというA社(乙13の1・2)や,ダークホース社から依頼を受けたと いうC社(乙16の1・2)とは異なり,原告ないしその関係者から製造依頼を受けたとは述べておらず,他に,製造,販売に至った具体的な経緯についても述べていない。 なお,被告は,原告商品の当初製造工場はB社であると主張しているところ,原告は,別会社であると否定しており,上記状況説明書の記載からも,B社が,原告商品の当初製造工場であることを窺わせるような事情は見あたらない。 そうすると,上記状況説明書が,B社が原告商品を2006(平成18)年7月ころに製造を始めたことの裏付けとはならず,原告商品を最初に製造した工場がB社であるとは認められない。 (イ) B社の商品なお,B社作成の状況説明書(乙15の1の1・2)には,2006(平成18)年7月から,ダイヤモンド研ぎ器を製造・販売していることが記載されているが,仮に,これが,原告商品と実質的に同一性があると思われる商品(乙15の2の1の中段左から2番目の商品)のことであり,かつ,原告商品と関係なく,B社が独自に製造したという趣旨のものであるとしても,いつころ上記商品を製造したのかを裏付ける資料はない。 また,B社が作成した商品(上記商品)は,一見すると,原告商品と酷似しているが,これが偶然の一致と考えることは困難であり,どちらかが,どちらかを模倣したものというべきであるが,少なくとも,上記状況説明書に記載された時期にB社が中国国内で製造,販売を開始したものを,原告が,模倣し,B社と同じ時期である平成18年7月から日本国内で販売することは不可能というべきである。 したがって,B社が,平成18年7月時点において,原告商品と実 造,販売を開始したものを,原告が,模倣し,B社と同じ時期である平成18年7月から日本国内で販売することは不可能というべきである。 したがって,B社が,平成18年7月時点において,原告商品と実質的同一性のある商品を製造していたことを認めることもできない。 ウ C社商品C社作成の「事情経過説明」と題する書面(乙16の1・2)には,2005(平成17)年3月にはC社商品(LX-0809)が開発されていたと記載されているが,C社商品は,刃部が三角形ではなく(乙16の1・2添付②の右上の写真の商品),その形態において原告商品と大きく異なっている。 また,上記書面によれば,刃部が三角形で柄部が波形の商品は,C社が原告商品の製造依頼を受けた平成18年11月6日においても,未だ開発計画中だったというのであるから,仮に,その後,C社の上記商品が開発されたとしても,原告商品に後れるものである。 エ E社商品(D社製造品)(ア) 原告商品とE社商品の形態の比較原告商品の最終図面(甲2)によれば,原告商品は,全長271㎜(刃部158㎜,柄部113㎜),最大幅(柄部の中央部分)30㎜,金属部分の厚さ4㎜,柄部後端部の穴の径10㎜である。 また,E社商品の設計図面(乙23の1)によれば,E社商品の半製品(金属部分)は,全長271㎜(刃部154㎜,柄部117㎜),最大幅(柄部の中央部分)29.7㎜,厚さ3.6㎜,柄部後端部の穴の径9.5㎜ないし10㎜であり,原告商品の寸法と酷似している。 また,原告商品(完成品)とE社商品の金属部分(半製品)とを比較しても,金属部分の形状は酷似している(甲55の1~5,乙26の1~5。なお,証人P1〔10丁〕によると,原告商品では金属部分の製造工程において,研磨することにより形状を整えるこ (半製品)とを比較しても,金属部分の形状は酷似している(甲55の1~5,乙26の1~5。なお,証人P1〔10丁〕によると,原告商品では金属部分の製造工程において,研磨することにより形状を整えることが予定されており,その際,個体によって微妙な違いが生じることが予想される。)。 このように,両図面に記載された商品は,偶然の一致とは考えられ ない程度まで,酷似しており,原告商品とE社商品は,どちらかがどちらかを模倣したものと考えられる。 (イ) 原告商品の開発経緯そこで,原告商品の開発経緯についてみると,前記(1)アのとおり,原告商品の最終図面(甲2)には,その元となった,原告作成の原案図(甲1の1・2)が存在する。そして,同原案図によれば,原告商品(大)は,全長255㎜(刃部155㎜,柄部100㎜),最大幅(刃部と柄部の境目部分)25㎜,金属部分の厚さ4.5㎜,柄部後端部の穴の径10㎜であり,E社商品の設計図面と比較すると,刃部の長さがほぼ同じであるのに全長は短く(つまり,柄部だけが短い。),刃部と柄部の境目部分が最も幅広になっているなど,全体的な印象を異にする。 したがって,上記原案図を出発点に開発された原告商品が,E社商品を模倣したものと考えることは困難である。 (ウ) E社商品の設計・製造・販売の時期についてE社からD社に渡されたというE社商品の設計図面(乙23の1)には,原告商品の最終図面(甲2)とほぼ同じ形態の,柄部に板が取り付けられる前のダイヤモンド研ぎ器(金属部品のみの半製品)の図が記載されている。 そして,E社によれば,E社商品は,2004(平成16)年に,中国国内の販売企業から依頼を受けて設計したものであり,D社に図面をFAX送信して,金型と金属部品を注文し,同年に販売を開始したと そして,E社によれば,E社商品は,2004(平成16)年に,中国国内の販売企業から依頼を受けて設計したものであり,D社に図面をFAX送信して,金型と金属部品を注文し,同年に販売を開始したとされている(乙29)。 しかし,設計図面については,原告商品は,開発経過に加え,平面図,側面図,断面図が存在するが,E社商品は,平面図しかなく,いかにしてその平面図となったかについての開発経過を示す資料はない。 この点について,同図面を保管していたD社においては,5年ごとに各書類を処分しているというが,他の図面は処分済みであるというのに,平面図だけが残っている(乙27)というのも不自然である。 また,E社は,E社商品の設計時期及び販売開始時期について,被告に送付したメールでは,いずれも1999(平成11)年と記載していたところ,上記FAX送信の日が2004(平成16)年9月5日となっていることとの整合性を被告から指摘されて,いずれについても2004年と修正している。これに対して,D社によれば,E社商品の設計図面をもらったのは,日付は覚えていないが2004年の年末であり,その後,金銭のやりとりがあって,2005(平成17)年4月から,金型の製作をスタートし,金属部品のみの半製品を生産して,E社と,他の組立工場数社に販売したとされている(乙23の1~3,乙27,被告代表者)。特に,生産開始時期については,D社は,間違いなく2005年であるとしている(乙27)。 なお,上記設計図面(乙23の1)には,送信日付として「Sep. 06 2004 06:18(これに続く記載は不鮮明であるが,被告代表者は,午前と供述する〔被告代表者本人2頁〕。)」と印字されているが,簡単に希望する日時を設定することができることや,送信元や送信先が不明で 04 06:18(これに続く記載は不鮮明であるが,被告代表者は,午前と供述する〔被告代表者本人2頁〕。)」と印字されているが,簡単に希望する日時を設定することができることや,送信元や送信先が不明であるため,その入手経路が文書自体(後に加えられた書き込みは除く)からは分からないことに照らすと,上記設計図面の存在を重視することはできない。 このように,E社商品の設計・製造・販売の時期について,これを裏付ける証拠に不自然さを有するだけでなく,D社とE社の述べるところは食い違っている。 (エ) E社商品の製造・販売の状況についてD社は,2005年だけでE社商品を16万個販売したといい(乙 27),E社は,2004年以降,E社商品を,日本とドイツにおいて100万個販売したというが(乙32),E社商品は,E社の主力商品とはされておらず(甲58,乙29の別紙3枚目),上記販売個数を裏付ける証拠の提出はない。 また,E社の社名は,現在は「江陰市多菱工具有限公司(JiangyingDuolingToolsCo.,Ltd)」であるが(乙29),D社に図面を送付したとされる2004年当時は「江陰市砂輪厂」である(乙27)。そして,E社のウェブサイト(甲58)では,商品の写真に旧社名が表示されているものや,新旧両方の社名が表示されているものが存在しており,このような商品は,社名変更前に製造・販売されていたものと考えられる。ところが,E社商品については,商品の写真に現社名(英語表記)しか表示されておらず,2004年当時に販売されていたとは考えにくい。 (オ) 検討前記(イ)認定のとおり,原告商品は,その開発の経緯及び製造・販売の開始時期がはっきりしている一方,前記(ウ)のとおり,E社商品は,設計・製造・販売の時期がはっき 考えにくい。 (オ) 検討前記(イ)認定のとおり,原告商品は,その開発の経緯及び製造・販売の開始時期がはっきりしている一方,前記(ウ)のとおり,E社商品は,設計・製造・販売の時期がはっきりしない。 さらに,原告商品は,前記(イ)のとおり,原告の発案により開発されたものであり,E社商品の模倣品ではないと認められる一方,E社商品は,2004年ないし2005年から,国内外で数多く製造・販売されていたはずであるのに,前記(エ)のとおり,その流通過程,販売実績などは明らかでない。 これらのことからすれば,E社商品が原告商品に先行して製造・販売されていたとは考えがたい。 オ新盛鎖業の商品新盛鎖業作成の「事情経過説明」と題する書面(乙30の1)には, 添付画像(原告商品)のような商品を,2005(平成17)年8月に江蘇省の商人から20個購入し,浙江省義烏の福田市場の店舗で展示販売し,すべてを株式会社フジキンに販売したことが記載されている(乙30の2)。また,株式会社フジキン作成の事情説明書(原告商品の画像添付)にも,これに沿う記載がある(乙31)。 しかしながら,新盛鎖業が取り扱った商品が,実際にどんな形態であったかは明らかでなく(例えば,日本直販が,原告商品の写真を添付して行われた弁護士法23条の2第2項に基づく照会に対し,これと類似の包丁研ぎ器であると回答した商品は,原告商品と実質的同一性があるとは言い難い形態のものである〔乙18の1・2,乙20の1・2]。),上記各書面の記載をもって,原告商品と実質的同一性がある先行商品が存在していたとは言い難い。 (3)被告商品の製造経緯証拠(甲45,乙13の1・2)及び弁論の全趣旨によると,原告は,ダークホース社以外の商社を通じ,A社に対し,原告商品のサン 先行商品が存在していたとは言い難い。 (3)被告商品の製造経緯証拠(甲45,乙13の1・2)及び弁論の全趣旨によると,原告は,ダークホース社以外の商社を通じ,A社に対し,原告商品のサンプルの製造を依頼したが,その時点では,発注するに至らなかった。その後,ダークホース社から値上要請を受けたことから,別の商社を通じて,A社に対し,原告商品の製造を委託したが,不良品が多く,一旦,A社に対する委託を中止した。 上記委託製造の開始時期は,原告作成の商品別仕入履歴表(甲45)によると,平成19年1月ころであったことが窺える。 被告は,その後の平成20年4月ころ,A社から,原告商品と実質的同一である被告商品を購入(輸入)し,日本国内で販売するようになった(前提事実(3))。 通常,生産を委託された場合に,同じ金型から製造した商品を委託した者以外の者に譲渡することが許されるとは考えにくいところである。仮に, A社が原告商品を他に供給してはならない旨の義務を課せられていなかったとしても,A社としては,原告商品を単に製造しているだけで,同商品の形態について,法2条1項3号の権利を有しない以上,A社が,日本国内で原告商品を販売することは,法2条1項3号に該当する行為というべきである。A社から原告商品と同じ商品を購入し,日本国内において販売する行為は,他人の商品の形態を模倣した商品であることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がない場合を除き,同じく,法2条1項3号に該当するというべきである。 なお,被告従業員が被告代理人に送信したメール(乙10)によると,A社が原告との取引を始めたのは,平成21年6月15日とある。仮に,これが真実であるとすると,むしろ,平成21年6月15日までの間,A社としては,原告に無断で, に送信したメール(乙10)によると,A社が原告との取引を始めたのは,平成21年6月15日とある。仮に,これが真実であるとすると,むしろ,平成21年6月15日までの間,A社としては,原告に無断で,原告商品に依拠して,その形態を模倣し,これを被告に販売していたことにほかならない。 (4) 結論 以上のとおり,原告商品は,原告が開発したものと認められる一方,これと実質的に同一性のある先行商品が存在していた事実は認められない。 そして,原告商品と被告商品とは,同一形態のものであり(争いがない。),原告商品の試作品を製造しただけの製造元であるA社が,被告商品を製造しているのであるから,被告商品は,原告商品に依拠して作成された模倣品であると認められる。 2 争点2(被告商品の形態は,商品の機能を確保するために不可欠な形態か)について研ぎ器には,多種多様な形態の刃部及び柄部並びにその組合せが考えられ,実際にも,多種多様な形態の商品が市場に流通している(甲43,44,46,甲47の2・3,乙6の1・2,乙16の1・2の別紙,乙21)。 そして,各研ぎ器は,いずれも,研ぎ器としての機能が確保されているか らこそ市場に流通していると考えられるのであって,被告商品の形態のみが,商品の機能を確保するために不可欠な形態であるということはできない。 なお,被告は,原告商品の形態は,ありふれたものであると主張するが,証拠上,原告商品の販売開始時において,原告商品の形態がありふれたものであった事実は窺われない。 3 争点3(被告は,被告商品の輸入時に,被告商品の形態が原告商品の形態を模倣したものであることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がなかったか)について被告は,被告商品の取扱いを開始した経緯について,浙江省義烏の 輸入時に,被告商品の形態が原告商品の形態を模倣したものであることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がなかったか)について被告は,被告商品の取扱いを開始した経緯について,浙江省義烏の福田市場で商品を発見し,製造元であるA社を探し出して売買契約を締結したと説明しているが(乙17),この事実は,被告が,原告商品を知らなかったことを裏付けるものではなく,知らなかったことについて重過失がなかったことを裏付けるものでもない。 また,被告は,被告商品の売買契約を締結するにあたり,A社に対し,同社が同商品に関するすべての権利を有していることを直接確認したと主張し,被告代表者はこれに添う供述をするが,売主の言を信じたというだけでは,商品の輸入販売を行う業者として,重過失がなかったということはできない。 そもそも,現時点でも,A社の説明する内容(乙13の1・2)は,A社が原告商品の形態について何らかの権利を取得する説明となっていない(前記1(2)ア)にもかかわらず,被告としては,A社に対し,その説明する内容の根拠について,何ら確かめることをしなかったものである。 そして,被告商品の輸入にあたり,被告が,商品の権利関係について自ら何らかの調査を行った事実は認められないから,むしろ,被告は,輸入業者としての,基本的な注意義務さえ怠っていたと評価できる。 以上のことからすれば,被告が,被告商品の輸入時に,被告商品の形態が原告商品の形態を模倣したものであることを知らず,かつ,知らないことに つき重大な過失がなかったとは認められない。 4 争点4(損害額)について前記3のとおり,被告は,被告商品に係る権利関係について,自ら調査を行わないまま被告商品を販売していたのであるから,不正競争を行って原告の営業上の利益を侵害したこ 4 争点4(損害額)について前記3のとおり,被告は,被告商品に係る権利関係について,自ら調査を行わないまま被告商品を販売していたのであるから,不正競争を行って原告の営業上の利益を侵害したことについて過失があるといえ,法4条に基づく損害賠償義務を負う。 そして,原告は,法5条1項の推定による損害額を主張しているので,以下検討する。 (1) 被告商品の譲渡数量 9万7808個前記1(1)認定のとおり,原告商品の販売開始日は平成18年7月21日であるところ,被告は,同日から3年以内である平成21年7月20日までの間に,被告商品を下記アないしカのとおり,合計9万7808個販売したと認められる。 ア株式会社セシールによる小売分 1645個(乙8)イ株式会社ミスターマックスによる小売分 1万8241個(甲31)平成20年9月から平成21年7月まで(11か月間)の販売個数(1万8852個)から,返品数(3個)と,平成21年7月21日から同月31日まで(11日間)に販売されたと推定できる個数(608個)を控除したもの。 〔計算式〕(18,852-3)-(18,852-3)÷11×11÷31=18,241ウ株式会社カネヒロによる小売分 96個(甲32)エ株式会社ネットプライスによる小売分 1833個(甲33)オハーマンズ株式会社による小売分 768個(甲34)カ上新電機株式会社による小売分 7万5225個(甲35)(2) 原告商品の単位数量当たりの利益原告商品の単位数量当たりの利益は,下記アからイを控除した742. 5円と認められる。 〔計算式〕1,264-521.5=742.5ア販売単価(平成21年7月20日までの平均) 126 原告商品の単位数量当たりの利益は,下記アからイを控除した742. 5円と認められる。 〔計算式〕1,264-521.5=742.5ア販売単価(平成21年7月20日までの平均) 1264円売上額 2億5282万5463円(甲26の1~36)販売個数 19万9982個(甲26の1~36)〔計算式〕252,825,463÷199,982=1,264イ変動経費(平成21年5月28日までの平均) 521.5円原告商品は,輸入時において,既に包装済みであり(甲25の1),原告が行っていたのは販売のみと考えられるから,法5条1項の計算にあたって控除すべき変動経費となるのは,仕入代金(包装込み),輸入費用,販売先への輸送費である。 なお,被告は,これらの費用に加え,一般管理費,広告宣伝費,ニーズへの支払,金型代なども控除すべきと主張するが,これらは,前記アのとおり既に原告商品を大量に販売していた原告が,被告商品の譲渡数量分を追加販売するために必要な費用であるとは認められない。 したがって,原告商品1個当たりの変動経費は,下記仕入単価及び国内輸送費の合計521.5円と認められる。 仕入単価 514円(海上運賃及び輸入手続費用込み[弁論の全趣旨])仕入額 1億0279万9194円(甲45)仕入個数 19万9696個(甲45)〔計算式〕102,799,194÷199,696=514国内輸送費 7.5円(甲57)〔計算式〕514+7.5=521.5ウ販売することができないとする事情被告は,原告商品と被告商品とは大きな価格差があるところ,包丁研ぎ器は生活必需品ではなく,価格差が需要量に決定的影響を与えるから, 原告は被告商品の譲渡数量分の原告商品を販売することができなかった ,原告商品と被告商品とは大きな価格差があるところ,包丁研ぎ器は生活必需品ではなく,価格差が需要量に決定的影響を与えるから, 原告は被告商品の譲渡数量分の原告商品を販売することができなかったと主張するので,この点について検討する。 被告商品の小売価格は,税込み940円から2079円であるところ(甲24の1~11,甲28の1~3,甲29,30),原告商品の小売価格は,税込み2394円から3990円である(甲23の1~4)。したがって,被告商品の販売価格帯は,原告商品の販売価格帯の4割ないし5割程度といえる。 また,原告商品の競合品(被告商品以外で,原告商品の形態を模倣したと思われる商品は除く。)も相当数販売されていたことが窺われる(前記2)。 一方,原告商品は,研ぎ器において,多種多様な形態の商品が存在し(前記2),原告商品とは異なる形態の売れ筋商品も存在した中で(前記1(1)ア(ア)),前記アのとおり3年間で約20万個を販売している。 特に,被告商品の販売先の1つである株式会社セシールについては,原告商品の販売先でもあったところ,安価な被告商品に乗り換えられたことが認められる(甲44)。 このような市場の状態を前提とすれば,上記程度の価格差や競合品の存在をもって,「販売することができないとする事情」を認めることができるが,これを過大に評価することはできず,多くともその3割程度を越えることはないというべきである。 (3) 損害額以上のとおりであるから,原告の損害は,被告商品の譲渡数量9万7808個(前記(1))に,販売することができないとする事情を考慮して,7割を乗じた数量に,原告商品の単位数量当たりの利益742.5円(前記(2))を乗じた5083万5708円と認められる。 〔計算式〕742.5×97, 販売することができないとする事情を考慮して,7割を乗じた数量に,原告商品の単位数量当たりの利益742.5円(前記(2))を乗じた50,835,708円と認められる。 〔計算式〕742.5×97,808×0.7=50,835,708 第5 結論よって,原告の請求は理由があるからこれを認容し,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 山田陽三 裁判官 達野ゆき 裁判官 西田昌吾 別紙 商品目録 1 包丁研ぎ器「ダイヤモンドシャイン」商品形態は,別紙写真1ないし5のとおり 2 包丁研ぎ器「キレール」商品形態は,別紙写真6ないし10のとおり (別紙写真5及び10は掲載省略) 別紙写真1 正面 別紙写真2 背面 別紙写真3 側面 別紙写真4 別紙写真6 正面 別紙写真7 背面 別紙写真8 側面 別紙写真9

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