- 1 -平成28年12月14日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成27年(ワ)第1816号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成28年9月21日判決当事者の表示 (省略) 主文 1 被告らは,原告Aに対し,連帯して2601万7731円及びこれに対する平成26年6月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは,原告Bに対し,連帯して2601万7731円及びこれに対する平成26年6月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文1項及び2項と同旨第2 事案の概要等 1 事案の概要平成26年6月2日,原告A及び原告B(以下,原告Aと原告Bとを併せて「原告ら」という。)の子であるCが,被告Dが理事長,被告Eが副理事長を務める特定非営利活動法人子育て支援ひろばキッズスタディオン(以下「本件法人」という。)の事業として行っていた被告Dによる「身体機能回復指導」と称する施術を受けていたところ,救急搬送され,同月8日に低酸素脳症に基づく多臓器不全により死亡する事故(以下「本件事故」という。)が生じた。 本件は,原告各自が,被告らに対し,本件事故は,被告Dの上記施術に起因して発生したものであるとして,被告Dに対しては民法709条に基づき,被告Eに対 - 2 -しては民法719条2項に基づき,相続により取得したCの逸失利益,慰謝料の損害賠償請求権及び原告ら固有の慰謝料等の損害賠償請求権に係る合計各2601万7731円及び不法行為の日である平成26年6月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害 失利益,慰謝料の損害賠償請求権及び原告ら固有の慰謝料等の損害賠償請求権に係る合計各2601万7731円及び不法行為の日である平成26年6月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 被告Dは,本件事故の責任について争わず,また,被告らは,原告らの損害について争っていない。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア Cは,平成26年1月22日生まれの男性であり,本件事故当時生後4か月であった者である。 イ原告AはCの父であり,原告BはCの母である。 ウ本件法人は,平成15年2月17日,子育て実践活動と情報提供に関する事業を行い,地域市民に寄与することを目的として設立された特定非営利活動法人であり,平成27年2月17日に解散した。 エ被告Dは,本件法人の設立当初から理事長として本件法人を代表してその業務を統一して管理していた者である(甲38)。 オ被告Eは,平成17年5月に本件法人の理事に就任して以降,実質的に副理事長として理事長の業務を補佐する役割を務め,平成25年5月には正式に副理事長に就任した(甲5,38)。 (2) 本件法人の事業内容本件法人は,子育てひろば事業と称する事業として,「背すじ矯正」あるいは「身体機能回復指導」と称する施術(以下「身体機能回復指導」という。)や保育に関する講演等を行っていた。本件で,Cに対してされた施術は,身体機能回復指導として行われたものである。 (3) 本件事故に至る経緯等 - 3 -被告Dは,平成26年6月2日午前11時頃,大阪市a区bc丁目d番e号所在の家屋に開設したサロン(以下「関西サロン」という。)において,Cに対し,身体機 本件事故に至る経緯等 - 3 -被告Dは,平成26年6月2日午前11時頃,大阪市a区bc丁目d番e号所在の家屋に開設したサロン(以下「関西サロン」という。)において,Cに対し,身体機能回復指導を施術し,床に座った被告Dの大腿部にCをうつ伏せの姿勢にして乗せ,Cの頸動脈部分を手指で繰り返しもむなどしていた(以下,Cに対する同施術を「本件施術」という。)。 被告Dが本件施術を継続していたところ,同日午前11時45分頃,それまで泣いていたCの泣き声がやみ,手足が脱力状態となり,呼吸もせず,顔や体が青白くなり容態が急変したため,Cは病院に救急搬送されて救命措置を受けたものの,同月8日,低酸素脳症に基づく多臓器不全により死亡した(甲3,21)。 (4) 損害本件事故により,Cないし原告らにつき,以下の損害が生じた。 ア入院付添費用 9万1000円イ入院雑費 1万0500円ウ入院慰謝料 12万円エ葬儀費用 150万円オ Cの死亡逸失利益 1978万3465円カ死亡慰謝料C本人分 2400万円原告ら固有分各300万円(合計600万円)キ小計5150万4965円ク損害の填補被告Dは,平成27年7月7日,原告らに対し,本件に係る損害の一部の補填として420万円を支払ったので,これを上記小計から控除する。 ケ弁護士費用 473万0497円コ合計 5203万5462円 - 4 -上記ア~コのとおり,本件事故による損害は合計5203万5462円となるところ,原告らは,Cの被告らに対する損害賠償請求権を2分の1ずつ相続し,葬儀費,弁護士費用は,原告らがそれぞれ等分して負担したから,原告らの損害は,それぞれ2601万7731円である。 3 争点前記第2の Cの被告らに対する損害賠償請求権を2分の1ずつ相続し,葬儀費,弁護士費用は,原告らがそれぞれ等分して負担したから,原告らの損害は,それぞれ2601万7731円である。 3 争点前記第2の1のとおり,被告Dは本件事故について不法行為責任を負うことについては争わず,被告らは,原告らの損害について争っていないため,本件の争点は,被告Eが本件事故に関して被告Dを「幇助した者」(民法719条2項)に当たるか否かであり,具体的には,被告Eにおいて被告Dによる本件施術の危険性を認識し得たにもかかわらず,何らこれを回避することをせず,被告Dによる本件施術を容易ならしめたということができるか否かである。 4 争点に対する当事者の主張【原告らの主張】(1) 被告Dの身体機能回復指導と称する施術内容は,おおむね,30分~1時間程度,乳児を床に座った被告Dの大腿部の上にうつ伏せの状態に寝かせ,その首の周囲を片方の手で揉んだり,さすったり,首を左右にねじり,もう片方の手で乳児の腕,足,背中,腰等をさすったりするものであり,首をもむ強さは,なでるという程度のものではなく,もんでいた部分が赤くなったり,あざになったり,時には爪が食い込み,乳児の皮膚から血がにじむこともある程度のものである。成人の頸部とは比較にならないほど細い生後数か月の乳児の頸部であれば,女性の手でも容易に頸動脈洞に指先が届き,十分に刺激されるため,身体機能回復指導は,乳児にとって,迷走神経反射を引き起こして徐脈となり,血圧が下がって心停止になる危険性が高い行為である。そして,厚生労働省も,生後数か月の乳児をうつ伏せにすること自体,窒息等の危険が高いとして従前から注意を促しているし,まして,首が座り始める時期の生後3,4か月の乳児の頸部を継続的にもむ行為が非常に危険であることは も,生後数か月の乳児をうつ伏せにすること自体,窒息等の危険が高いとして従前から注意を促しているし,まして,首が座り始める時期の生後3,4か月の乳児の頸部を継続的にもむ行為が非常に危険であることは,一般人であれば誰でも理解できることである。また,平成17年 - 5 -9月27日に新潟市f区内の家屋に開設したサロン(以下「新潟サロン」という。)において,身体機能回復指導を施術していたところ,施術を受けていた男児が,一時的に窒息状態となり救急搬送される事件(以下「新潟第1事件」という。)及び平成25年2月17日に同サロンにおいて身体機能回復指導を受けていた児童(当時1歳10月)が死亡する事件(以下「新潟第2事件」という。)が発生し,被告Dは,被疑者として取調べを受け,その際,身体機能回復指導については,医師等の専門家にお墨付きを得るようにとその安全性を確認するよう促され,その危険性を指摘されていたのである。 (2) 他方で,被告Eは,平成13年頃から被告Dに対して被告Eの実家建物を貸して本件法人の立上げを援助し,平成17年には理事に就任し,本件法人の経理,官公庁への事業報告などの事務全般,物品販売業務,身体機能回復指導等の広報活動を行い,同広報活動により,本件法人の収益が平成25年度には1500万円程度にも上り,同収益から被告Dと共に報酬を受け取るなど,本件法人の運営に深く関与し,被告Dと共に本件法人の運営方針を決定していたのであるから,同施術の危険性は当然に認識し得たのであって,条理上,本件事故を回避するため,被告Dに対して身体機能回復指導の危険性に対する注意を喚起し,少なくとも医師等の専門家から安全性について問題がない旨の意見が出されるまでは,これを中止するよう注意・進言すべきであった。 ところが,被告らは,新潟第2事件後,医 導の危険性に対する注意を喚起し,少なくとも医師等の専門家から安全性について問題がない旨の意見が出されるまでは,これを中止するよう注意・進言すべきであった。 ところが,被告らは,新潟第2事件後,医師等に対して身体機能回復指導の安全性の検証を依頼することなく,同事件の男児の死亡の事実を監督官庁に報告することもしなかっただけでなく,それまでと同様,ブログ等において,身体機能回復指導は,特別な知識を有する者にしかできない施術であると吹聴し,予約が殺到しているかのような印象を与えただけでなく,被告らは,ダウン症の障害を抱える乳児に対する効果を声高にうたい,障害や発達に不安を抱える子供をもち,何かにすがりたくなる母親の心理に訴えかけて,身体機能回復指導を広めていたのである。 (3) 以上からすれば,被告Eは,少なくともその過失により,被告Dによる身 - 6 -体機能回復指導を助長・援助し,本件施術を容易ならしめたのであるから,民法719条2項に基づき,被告Dと連帯してC及び原告らに生じた損害を賠償すべき責任を負う。 【被告Eの主張】(1) 身体機能回復指導そのものに乳児が死亡する一般的危険性があるものではない。すなわち,被告Dは,身体機能回復指導の施術をする際,乳児の頸動脈部分等を手指で繰り返しもむなどすることもあったが,それが全てではなく,背筋矯正のために子供を布団の上に仰向けに寝かせ,胸,腹,鼠径部等をなでて指で押して刺激を与えたり,腕や脚を回すなどして関節をほぐし,うつ伏せにして背中や仙骨を撫でたり,子供を膝の上に座らせ,頭を押さえながら身体を左右に揺さぶるなどして身体の左右のバランスを整えようとするもので,施術の相手によって,具体的な施術方法は異なるものである。また,被告Dは,施術中に幼児の口と鼻をふさぐことのないよう,あ がら身体を左右に揺さぶるなどして身体の左右のバランスを整えようとするもので,施術の相手によって,具体的な施術方法は異なるものである。また,被告Dは,施術中に幼児の口と鼻をふさぐことのないよう,あるいは頸部を絞めて窒息しないよう注意を尽くして施術をしていたのであるから,身体機能回復指導が乳児に対して一般的に危険を及ぼす施術ということはできない。その上,現に,身体機能回復指導の施術回数は,平成24年度で延べ約1200回,平成25年度で延べ約1500回で,被告Dが本件事故までに行った身体機能回復指導は合計6000回以上を超えており,施術中に死亡事故が起きたのは,新潟第2事件の平成25年2月が初めてであるし,そもそも,新潟第2事件は,被告Dによる施術と死亡との因果関係が不明であるとして,一旦不起訴となっており,身体機能回復指導が危険であるとはいえないし,被告らにおいて,身体機能回復指導の危険性の認識があったともいえない。 (2) 加えて,被告Dは,一般人が乳児の首を触ることは危険であっても,被告Dには多くの乳児に身体機能回復指導を行ってきた経験があるため,被告Dが身体機能回復指導を行うことは危険性がないと周囲に話していたし,上記のとおり,現に,数千回にも及び身体機能回復指導を施術してきたことからすれば,被告Eにおいて,本件施術の危険性を認識できたということはできない。被告Eは,本件事故 - 7 -後,本件事故の捜査の過程で医師の意見書の説明を受けるなどして,身体機能回復指導の危険性を認識したものであるから,本件事故前に,被告Dによる身体機能回復指導を制止すべき注意義務があったとか,被告Dによる身体機能回復指導を助長,援助したということもない。 (3) したがって,被告Eは,本件事故に関し,被告Dを「幇助した者」に当たらない。 復指導を制止すべき注意義務があったとか,被告Dによる身体機能回復指導を助長,援助したということもない。 (3) したがって,被告Eは,本件事故に関し,被告Dを「幇助した者」に当たらない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実証拠(掲記したもの。なお,枝番のあるものは,特に断らない限り,それらを含む。また,被告E本人に付した括弧書の記載は同人の反訳書の頁数を示す。)及び弁論の全趣旨によれば,前記前提となる事実に加え,以下の事実が認められる。 (1) 本件法人設立の経緯,業務内容等ア被告Dは,平成4年頃から,民間の幼児教育の資格を取得して幼児教育を開くなどして子供の心身の発達を促す保育に従事する活動を始め,平成15年2月17日,子育てひろば事業,障害児保育事業等を目的とする本件法人の設立の認可を受け,同法人の理事長に就任した。被告Dは,当時,知人を通じて,新潟県上越市内にある空き家となっていた被告Eの実家建物を賃借して本件法人の活動を始めたが,同年9月,同建物が火災により焼失したため,平成16年以降は,同市内の被告Dの自宅(以下「本部」という。)において本件法人の活動を行っていた(甲5,32,38)。 イ本件法人の活動拠点は,本部以外に,平成21年9月に大阪市a区内に開設した関西サロン,平成23年10月頃に東京都豊島区内の家屋に開設したサロン(以下「関東サロン」という。)及び新潟サロンにおいても行われていた(甲32,34,38)。 ウ本件法人が子育てひろば事業として行っていた業務は,身体機能回復指導を行うほか,身体の歪みを補正するなどの効果が期待できるとうたった乳児の抱き方 - 8 -に関する「対面抱っこ」の提唱・普及活動,仰向けにした乳児に振動を与えることにより乳児のリラックス効果が期待できるとうたっ 歪みを補正するなどの効果が期待できるとうたった乳児の抱き方 - 8 -に関する「対面抱っこ」の提唱・普及活動,仰向けにした乳児に振動を与えることにより乳児のリラックス効果が期待できるとうたった「ズンズン運動」の提唱・普及活動を内容とするサロン事業を主とし,それ以外には,育児に関するアドバイス等を行う講演活動,抱っこひも,DVD,被告Dの著書等の物品販売等を行っていた(甲2,5,29,33,38)。 エ本件法人は,サロン事業,講演活動,物品販売等で収益を得ていたものであり,主たる事業内容である身体機能回復指導については,施術時間30分で5000円,60分で1万円として同施術を受ける乳児の保護者等から施術料を徴収していた。同施術料による収益は,平成24年度における事業収益約2200万円のうち約1200万円,平成25年度における事業収益約2800万円のうち約1500万円と,上記各年度の総収入の約半分が身体機能回復指導の施術料収入によるものであった(甲2,6)。 (2) 本件法人における被告らの業務内容ア被告Dは,本件法人設立以降,理事長として本件法人を代表してその業務を総理し,自ら,本部,関東サロン,関西サロン及び新潟サロンにおける身体機能回復指導の施術,保育に関する講演を行うアドバイザーの養成等を行っていた(甲38)。 イ被告Eは,本件法人の設立当初の事務所として使用されていた実家建物の火災後,被告Dの活動を支援するなどして被告Dと懇意となり,被告Dと内縁関係となった後,平成17年5月に本件法人の理事に就任して以降,副理事長として,本件法人の収支等の事務経理全般,官庁への報告,本件法人のホームページやブログの更新作業等を行っていた(甲5,38)。 ウ被告らは,平成20年4月から平成26年3月31日までの間,本 長として,本件法人の収支等の事務経理全般,官庁への報告,本件法人のホームページやブログの更新作業等を行っていた(甲5,38)。 ウ被告らは,平成20年4月から平成26年3月31日までの間,本件法人から役員報酬を受けるようになり,平成24年度以降は,被告Dにおいて月額25万円,被告Eにおいて月額15万円の報酬を受けていた。なお,被告ら以外に報酬を受けたことのある役員はなかった(甲5,29,38)。 - 9 -(3) 本件法人の広報活動等本件法人は,事業活動の内容,各サロンの近況等をインターネット上のホームページないしブログに掲載して広報しており,被告Dにおいてブログに掲載する文章を草稿し,被告Eにおいて同文章を身体機能回復指導の施術の様子を撮った写真と共に上記ブログに掲載・更新していた。被告Eは,本件事故が発生した平成26年6月の前月である同年5月中には,ブログを20回更新するなど,頻繁にブログを作成・更新していた(甲8~11,37,40~42,被告E本人)。 同ブログ(平成25年8月20日付け)には,「現代の赤ちゃんは,気をつけても気をつけても,首や背すじがゆがんでしまいやすい傾向にあるのです。写真の赤ちゃんは4ヶ月くらいから,ゆりっこの背すじ矯正に毎月かよっていました。」「長く背すじ矯正に通いつつも,ようやくこの日はじめて深い深い部分の歪みを解消できた」「体内にこのようなねじれをかかえたまま過ごすので,病気がちになったり,アトピーになったり,発育が遅れたり,いろんな症状がおこってくるのだと思います」「この首のねじれを解消してから…這い這いの動きが活発になってきました。」などと身体機能回復指導の効用を説明した文章が,身体機能回復指導の施術を受けている際の乳児の写真と共に掲載されていた(甲40の8)。 (4) 解消してから…這い這いの動きが活発になってきました。」などと身体機能回復指導の効用を説明した文章が,身体機能回復指導の施術を受けている際の乳児の写真と共に掲載されていた(甲40の8)。 (4) 身体機能回復指導の内容被告Dは,乳児の身体の中にある姿勢のくせやねじれは乳児の身体が左右対称に発達するのを妨げる要因になる,また,体の中のねじれや歪みは首のところに集中しているとして,乳児の身体のねじれや歪みを解消し,交感神経や副交感神経といった自律神経を整え,リンパや血流の流れを促し,子どもの健全な発育や発達を促す効果があるものとうたって,生後数か月の乳児を対象に,背筋矯正あるいは身体機能回復指導と称して,概要,以下の内容の施術を行っていた(甲14,15,17~19,29,34,51,52)ア床の上に正座した被告Dの大腿部に,乳児の胸腹部が当たるような姿勢で乳児をうつ伏せにして寝かせる。 - 10 -イ被告Dが,乳児を上記アの状態(うつ伏せ)にしたまま,乳児の首を左右に約45度ねじる。 ウ被告Dが,うつ伏せになった乳児の頸部辺りに被告Dの親指と人差し指で挟むようにして当てて動かし,乳児の頸部辺りをもむ。その間,被告Dは,もう一方の手を乳児の額に当てて,乳児の頭部を支えることもあった。 エ被告Dが乳児を縦にして対面で抱き,乳児の腰から背筋をさすり上げる。 オ乳児を仰向けで床に寝かせ,乳児の鼠径部に親指を当てて乳児の全身を前後に揺らす。 カ被告Dの右腕に,うつ伏せの乳児を引っかけるようにして抱え,その状態のまま,被告Dの左手で乳児の手首をつかみ,その手首を捻って揺さぶったり,被告Dの左手を乳児の腰に当てて上下に擦り,乳児に振動を与えて軽く揺さぶる。 キ上記ア~カの動作を約30分~1時間の間,数回 まま,被告Dの左手で乳児の手首をつかみ,その手首を捻って揺さぶったり,被告Dの左手を乳児の腰に当てて上下に擦り,乳児に振動を与えて軽く揺さぶる。 キ上記ア~カの動作を約30分~1時間の間,数回繰り返す。 また,被告Dは,被告E,本件法人のスタッフ及び同施術を受けさせに来る保護者に対して「首いじる人いないからね。怖いから。」とか「首いじれる人いない。」などとして,身体機能回復指導は乳児の頸部を触るものであるため,素人がやってはならず,被告Dにしかできない施術であることを説明し,実際,身体機能回復指導を被告D以外の者が行うことはなかった(甲14,17,29,被告E本人(30頁))。 (5) 新潟第1事件の経緯本件法人の当時の副理事長であったFが平成17年9月27日にベビーマッサージと称する施術を乳児に行っていたところ,うつ伏せになっていた同乳児の顔色が悪くなり唇が茶色になる異変が生じるという事件が発生した。 その際,Fが施術を中止し,同乳児を抱いて揺らすなどしたところ,乳児の顔色が戻り,泣き声をあげ,大事に至ることはなかった。 被告Eは,当時話題になっていた乳幼児突然死症候群に関する記事をインターネットで検索し,そのうちの一部の記事を印刷して被告Dに対して交付するなどした - 11 -(甲27,30,乙7,被告E(20頁))。 (6) 新潟第2事件の経緯ア被告Dが平成25年2月に新潟サロンにおいて,ダウン症の症状を有するG(当時時1歳10月)に対して身体機能回復指導として施術を行っていたところ,Gの体調が急変し,当日中に亡くなるという事件が起きた(甲28,29)。 イ同事件は,業務上過失致死事件として捜査が行われ,被告Dは,警察官及び検察官の取調べを受け,警察官からは,身体機能回復指導の施術の際,Gが窒息 中に亡くなるという事件が起きた(甲28,29)。 イ同事件は,業務上過失致死事件として捜査が行われ,被告Dは,警察官及び検察官の取調べを受け,警察官からは,身体機能回復指導の施術の際,Gが窒息状態となっていた可能性があること,検察官からは,施術方法に関して医師等の専門家に相談して乳児の窒息の危険がないか確かめるよう促された(甲31,32,被告E本人(21頁))。 被告Eは,新潟第2事件の後,被告Dに対し,Gの死亡の原因が不明であることから,本件施術の方法の変更の必要性,救急講座の受講を受けるよう進言したものの,同事件の発生及び経緯等に関し,監督官庁に報告することはなく,また,ホームページやブログに掲載して公表することはしなかった。また,被告らは,新潟第2事件後,医師に対して身体機能回復指導の施術の危険性等について尋ねることもせず,乳児に対する身体機能回復指導の施術を継続して行っていた(甲31,38,乙7,被告E本人(22~23頁))。 (7) 本件事故の経緯(甲14~17,19~21,29)ア被告Dは,平成26年6月2日午前11時頃,関西サロンにおいて,Cに対する身体機能回復指導を開始した。 被告Dは,床に正座し,バスタオルを敷いた床にCを仰向けに寝かせた後,四つん這いになったCを抱き上げ,Cの胸腹部が被告Dの大腿部に当たるような状態でうつ伏せに寝かせ,片方の親指と人差し指でCの頸部を繰り返し揉みほぐすようにして触っていた。その間,被告Dは,もう片方の手をCの額に当ててその頭部を支えることもあった。また,被告Dは,バスタオルを敷いた床の上にCをうつ伏せにし,Cの頸部に指を当てて揉んだりさすったりすることを繰り返していた。 - 12 -イ被告Dが上記アの施術を行っていたところ,それまで激しく泣いていたCが ルを敷いた床の上にCをうつ伏せにし,Cの頸部に指を当てて揉んだりさすったりすることを繰り返していた。 - 12 -イ被告Dが上記アの施術を行っていたところ,それまで激しく泣いていたCが,「うっ,うっ」「ぐっ,ぐっ」というような声を出し,おならをして脱力状態となり,顔や体の色が血の気が引いて白くなった。 被告Dは,Cの異変を感じ,Cを縦向きに抱いた姿勢のまま,Cの背中を擦り上げたり,被告Dの膝を揺らしてCの全身をずんずんと揺らしたりした後,一旦,Cを床に仰向けに寝かせ,指でCの胸部付近を押すなどした後,再びCを縦向きに抱き,背中を手で擦り上げたり,Cを抱いたままの状態でCの口に被告Dの口を当てて息を吹き込むなどして人工呼吸のようなことをし,体を揺するなどしたものの,Cの容態は回復せず,Cは,救急要請を受けた救急隊員により,病院に搬送された。 ウ Cは,同日午後0時15分頃,大阪市都島区都島本通2丁目13番22号所在の大阪市立総合医療センターに救急搬送され,同病院において救命措置を受けたが,同月8日,低酸素脳症による多臓器不全により死亡した。 2 被告Eが本件事故に関して被告Dを「幇助した者」に当たるか否かについて(1) 被告Eの本件施術の危険性の認識可能性についてア Cの死因は,低酸素脳症による多臓器不全と認められる(前記認定事実(7)ウ)ところ,証拠(甲21~23)によれば,Cが低酸素脳症に至った原因は,Cの頸動脈洞に刺激が与えられたことにより,迷走神経反射による徐脈(心臓の拍動が1分間のうち60回以下に抑えられる状態)が生じ,脳への血流が低下したことに加え,うつ伏せの状態により胸腹部が圧迫されて窒息状態となったことという複合的な要因によって心停止となったことによることが認められる。そして,迷走神経反射は, 態)が生じ,脳への血流が低下したことに加え,うつ伏せの状態により胸腹部が圧迫されて窒息状態となったことという複合的な要因によって心停止となったことによることが認められる。そして,迷走神経反射は,頸動脈洞に重点的に刺激を与えることにより引き起こされ,また,5秒程の刺激でも十分に起こり得るものであり,また,生後4か月の乳児は,横隔膜を身体の下方に下げて行う腹式呼吸をするが,胸腹部が圧迫されることにより,横隔膜が動かし難くなるため,相当な負担がかかること,乳児は,肺を外力から守るための胸郭が柔らかく,肺が外力から圧迫されやすいものであると認められ(甲22),被告Dは,本件施術中,Cを自身の大腿部にうつ伏せにして乗せ,Cの頸動 - 13 -脈付近を繰り返し手指でもんでいたのであるから,Cは,その施術中に胸腹部が圧迫され,また,頸動脈洞に刺激が与えられたことにより心停止に至り,その死因となった低酸素脳症による多臓器不全が生じたものと認められる。 イ被告Dによる身体機能回復指導は,前記認定事実(4)のとおり,生後数か月の乳児を被告Dの大腿部にうつ伏せの状態にして乗せ,その状態のままで,乳児の首をねじったり,頸部に手指を押し当てて揉んだりすることを30分から1時間かけて行うものである。頸部付近には,生命維持にとって重要な神経が走っており,同部分に刺激を与えることによって,いわゆる失神状態と呼ばれる徐脈の状態となると,また,うつ伏せの体勢により胸腹部が圧迫され,肺に酸素が送り込まれず,脳に十分な酸素が送られない状態となって窒息状態となり,生命に危険を及ぼすおそれがあることは,一般に知られていることである。さらに,生後数か月の乳児は,成人に比較して頸部が細く,筋力も弱く,刺激に対する耐力が乏しいことも明らかである。これらの事情からすれば,乳 を及ぼすおそれがあることは,一般に知られていることである。さらに,生後数か月の乳児は,成人に比較して頸部が細く,筋力も弱く,刺激に対する耐力が乏しいことも明らかである。これらの事情からすれば,乳児を大腿部の上にうつ伏せに乗せた状態でその頸部を手指で繰り返しもむことにより,乳児に徐脈や窒息の危険が生じ,生命に危険を及ぼすことは認識し得たというべきである。加えて,被告Dは,新潟第2事件の取調べを受ける中で,警察官や検察官から,身体機能回復指導の危険性を指摘され,専門家の意見を聴いて施術の危険性について確認するよう促されていたこと,被告Dは,身体機能回復指導について,本件法人のスタッフや乳児の母親等に対し,身体機能回復指導の施術は,被告Dにしか行えないものであると吹聴し,現に,被告Dのみが身体機能回復指導を行い,身体機能回復指導を行うスタッフの養成も行っていなかったこと等からすれば,被告D自身,本件施術当時,単に危険性を認識し得たというにとどまらず,身体機能回復指導が乳児に危険をもたらすものであることを認識していたものと認められる。 そして,前記認定事実(2)イ及び(3)のとおり,被告Eは,実家建物の提供及び同建物の焼失をきっかけに被告Dと懇意となり,平成17年5月には本件法人の役員に就任し,副理事長として本件法人の経理,広報活動等,被告Dと共に本件法人の - 14 -事業活動を担ってきた者であり,上記広報活動として,被告Dが草稿した身体機能回復指導の内容・効用をつづった文章と身体機能回復指導の施術中の様子を撮影した写真をブログ上に掲載して紹介し,頻繁にブログを更新していただけでなく,被告E本人(16頁)によれば,被告E自身,被告Dが関東サロンにおいて身体機能回復指導を施術する様子を間近で見ていたというのである。そうすると,被告Eは 紹介し,頻繁にブログを更新していただけでなく,被告E本人(16頁)によれば,被告E自身,被告Dが関東サロンにおいて身体機能回復指導を施術する様子を間近で見ていたというのである。そうすると,被告Eは,被告Dが身体機能回復指導の施術内容の概要にとどまらず,その詳細を認識していたものと認められ,被告Dと同様,身体機能回復指導の危険性を予見することができたものと認めることができる。 (2) 被告Eによる本件施術の幇助について被告Eは,本件事故当時,本件法人の副理事長として被告Dと共に本件法人の事業運営の方針等に関わっていたものであるから,本件法人の事業活動が適正に行われるよう被告Dの活動を監督すべき立場にあったと認められ,被告Dに対して乳児の生命に危険を及ぼすおそれのある身体機能回復指導の中止を真摯に検討すべく,自らあるいは被告Dと共に同施術の危険性について医師等の専門家の意見を聴取して施術内容を変更するなどして,上記危険が現実化することのないようすべきであり,また,そうすることは容易であったというべきである。それにもかかわらず,被告Dと共に,身体機能回復指導や対面抱っこの普及を優先させる余り,上記のような措置をとらず,新潟第2事件後も,それ以前と変わらずにブログ等に身体機能回復指導の効用をうたって広報し,被告Dと共に身体機能回復指導の施術を依頼した親権者から施術料を徴収して収入を得るなどしていたものであって,被告Dが身体機能回復指導を行うことを心理的かつ物理的に容易にしたものといえ,被告Eは少なくともその過失により,本件施術を幇助したものと認められる。 (3) 被告Eの主張について被告Eは,身体機能回復指導には,乳児を床に仰向けにして施術することもあり,同施術の対象乳児ごとに施術内容は異なる上,本件施術中,被告Dは自身の大腿部に られる。 (3) 被告Eの主張について被告Eは,身体機能回復指導には,乳児を床に仰向けにして施術することもあり,同施術の対象乳児ごとに施術内容は異なる上,本件施術中,被告Dは自身の大腿部にうつ伏せとなったCの額に手を当てて頭部を支えて窒息しないようにしていたし, - 15 -Cの頸部をもむ手指に強い力が入らないようにしていたなどと主張して,身体機能回復指導及び本件施術の危険性を争う。しかしながら,前記認定事実(4)及び証拠(甲17)によれば,被告Dは,首のすわらない時期の添い寝等により,乳児の身体に歪みが生じ,その大元となるのが頸部や腰部のねじれであり,これを解消して乳児の健全な発育を促すためには,首筋の緊張を緩める必要があるなどとして,身体機能回復指導中,乳児の頸部に手指をしっかりと当ててもみほぐすことを重点的に行っていたことが認められ,頸部には神経や血管が多数走っており,徐脈を引き起こす迷走神経反射は頸動脈洞を5秒程刺激することによっても生じ得るものであること,乳児の首は細く,また,筋力も未発達で外からの刺激に容易にさらされることをも併せると,身体機能回復指導が,施術対象乳児によって多少の内容の変更があったり,常時,乳児をうつ伏せにしてその頸部をもむものではなかったとしても,そのことは身体機能回復指導として行われた本件施術の危険性を否定する事情にはならない。また,被告Dが本件施術中にCの額に手を当ててその頭部を支えていたとしても,それにより,Cの胸腹部が圧迫される状態が完全に解消されるものではない上,成人とは異なり胸郭や胸筋が未発達な乳児は,肺に外力が加わりやすいことをも考慮すると,上記事情もまた,身体機能回復指導として行われた本件施術の危険性を否定する事情にはならないことは明らかであって,被告Eの上記主張は採用でき 未発達な乳児は,肺に外力が加わりやすいことをも考慮すると,上記事情もまた,身体機能回復指導として行われた本件施術の危険性を否定する事情にはならないことは明らかであって,被告Eの上記主張は採用できない。 また,被告Eは,本件事故が起こるまで,身体機能回復指導が乳児の発達に有用であることが広く乳児の保護者に認識され,被告Dは,延べ数千回もの施術を行ってきたこと,新潟第2事件は死因が明らかではないとして被告Dの刑事責任は問われていないことを理由に,被告らにおいて,身体機能回復指導の危険性を予見することはできなかったと主張する。 しかしながら,上記説示したとおり本件施術を含むうつ伏せにさせた状態で頸部をもんで刺激を与えるといった身体機能回復指導自体が有する乳児の窒息の危険性に鑑みれば,身体機能回復指導が本件事故までに数千回行われている実績があると - 16 -しても,その危険が現実化しなかったに過ぎず,数千回に及んで身体機能回復指導が行われたことをもって,被告らにおいて同施術の危険性の予見ができなかったとはいえない。また,新潟第2事件後については,捜査の結果,Gの死亡の原因が身体機能回復指導以外にあるものと判断されたわけではないのであるから,被告らにおいて,身体機能回復指導の施術に危険がないか点検・確認する機会があったというべきであり,むしろ,そうするよう検察官等から指導を受けていたにもかかわらず,何ら具体的な措置を講じなかったというのであり,Gの死因が明らかとならなかったことが,身体機能回復指導の危険性の予見可能性を否定する事情になるものではないし,証拠(甲30)によれば,被告Eは,新潟第2事件後,被告Dに対し,心臓マッサージや人工呼吸などの救急救命措置のやり方を学ぶよう示唆していたのであり,遅くとも,その頃までには,身体機能回復 ではないし,証拠(甲30)によれば,被告Eは,新潟第2事件後,被告Dに対し,心臓マッサージや人工呼吸などの救急救命措置のやり方を学ぶよう示唆していたのであり,遅くとも,その頃までには,身体機能回復指導が乳児を心停止に至らせる危険性を有するものであることを認識し得たものと認められる。 さらに,被告Eは,被告Dが,一般的に乳児の頸部を揉んだりすることが危険だとしても,被告Dであれば,多くの乳児に身体機能回復指導を行ってきた経験があるためその危険はない旨話し,本件法人の他のスタッフが行うことを禁じていたため,被告Eにおいて,本件施術の危険性を認識することはできなかったと主張する。 しかしながら,被告Dが身体機能回復指導は経験の豊富な被告Dにしかできない施術であるとして他の本件法人のスタッフが同施術を禁じていたというのは,むしろ,身体機能回復指導の危険性を認識していたことの表れというべきであるし,被告Dは,これまで,医師等の専門家に本件法人の顧問を依頼したり,身体機能回復指導について医師等の監修を受けてその指導・助言を得たりしたこともなく(甲29,31,被告E本人(23頁,26頁,31頁)),被告D自身,マッサージの資格を取得したとか,医学的知識を有していたとも認められないのであるから,被告Dによる身体機能回復指導の施術であれば,乳児の窒息等の危険がないという被告Eの主張は,何ら具体的根拠のない独自の見解にすぎない。 以上より,被告Eの上記主張はいずれも採用できない。 - 17 -(4) 小括したがって,被告Eは,被告Dによる本件施術を「幇助した者」として,本件事故につき,被告Dと共同して責任を負う(民法719条2項)というべきである。 第4 結論よって, 原告らの請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとお 施術を「幇助した者」として,本件事故につき,被告Dと共同して責任を負う(民法719条2項)というべきである。 第4 結論よって,原告らの請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官山口浩司 裁判官吉田祈代 裁判官鈴木美智子
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