平成29(行ウ)220 障害基礎年金支給停止処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成31年4月11日 大阪地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-88691.txt

判決文本文31,723 文字)

主文 1 厚生労働大臣が平成28年12月7日付けで原告A,原告B,原告C,原告D,原告E,原告F,原告G及び原告Hに対してした障害基礎年金の支給を停止する旨の各処分をいずれも取り消す。 2 厚生労働大臣が平成28年11月28日付けで原告Iに対してした障害 基礎年金の支給停止を解除しない旨の処分を取り消す。 3 訴訟費用は,原告A,原告B,原告C,原告D,原告E,原告F,原告G及び原告Hと被告との間においては,被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 第220号,第223号ないし229号事件主文第1項と同旨 2 第230号事件(1) 主文第2項と同旨(2) 厚生労働大臣は,原告Iに対し,平成28年11月から障害基礎年金の支 給停止を解除する旨の処分をせよ。 第2 事案の概要本件は,(1)原告A,原告B,原告C,原告D,原告E,原告F,原告G及び原告H(以下「原告ら8名」と総称する。)が,いずれも,1型糖尿病にり患し,国民年金法(以下「法」という。)30条2項による委任を受けた国民 年金法施行令(以下「令」という。)別表の定める障害等級(同項に規定する障害等級をいう。以下同じ。)2級に該当する程度の障害の状態にあるとして障害基礎年金の裁定を受けてこれを受給していたが,厚生労働大臣から,法36条2項本文の規定に基づく障害基礎年金の支給停止処分(以下,「支給停止処分」といい,原告ら8名についてされた各支給停止処分を「本件各支給停止 処分」という。)を受けたため,本件各支給停止処分は,①行政手続法(以下 「行手法」という。)14条1項本文の定める理由提示の要件を欠くとともに,②法36条2項本文所定の事由(以下「支給停止事由」という。)を欠くから,違法であ 停止処分は,①行政手続法(以下 「行手法」という。)14条1項本文の定める理由提示の要件を欠くとともに,②法36条2項本文所定の事由(以下「支給停止事由」という。)を欠くから,違法であると主張して,その取消しを求める事案(第220号,第223号ないし229号事件)と,(2)原告Iが,原告ら8名と同様に,1型糖尿病にり患し,障害等級2級に該当する程度の障害の状態にあるとして障害基礎年金の 裁定を受けてこれを受給していたところ,厚生労働大臣から,支給停止処分を受け,その後,厚生労働大臣に対し,国民年金法施行規則(以下「規則」という。)35条1項本文に基づき,支給停止の解除の申請をしたが,支給停止を解除しない旨の処分(以下「本件不解除処分」という。)を受けたため,本件不解除処分は,①行手法8条1項本文の定める理由提示の要件を欠くとともに, ②支給停止事由を欠くから,違法であると主張して,その取消し及び行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条6項2号に基づき支給停止を解除する処分をすべき旨を命ずること(同号所定の義務付け)を求める事案(第230号事件)とから成る。 1 関係法令等の定め (1) 法ア法16条は,給付を受ける権利は,その権利を有する者(以下「受給権者」という。)の請求に基づいて,厚生労働大臣が裁定する旨規定する。 イ法は,(ア)30条2項において,障害等級は,障害の程度に応じて重度のものから1級及び2級とし,各級の障害の状態は,政令で定める旨規定し, (イ)同条1項,30条の2及び30条の3において,疾病にかかり,又は負傷し,かつ,その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において①被 の3において,疾病にかかり,又は負傷し,かつ,その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において①被保険者,又は②被保険者であった者のうち,日本国内に住所を有し,かつ,60歳以上65歳未満であるものが,当該 初診日から起算して1年6月を経過した日(以下「障害認定日」という。) 等の一定の時点において,傷病により障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときは,その者に障害基礎年金を支給する旨規定する。 ウ法30条の4は,疾病にかかり,又は負傷し,その初診日において20歳未満であった者が,20歳に達した日以後の一定の時点において,障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときは,その者に障害基礎年金を 支給する旨規定する。 エ法36条2項本文は,障害基礎年金は,受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったとき(支給停止事由があるとき)は,その障害の状態に該当しない間,その支給を停止する旨規定する。 オ法105条3項は,受給権者又は受給権者の属する世帯の世帯主その他 その世帯に属する者は,厚生労働省令の定めるところにより,厚生労働大臣に対し,厚生労働省令の定める事項を届け出,かつ,厚生労働省令の定める書類その他の物件を提出しなければならない旨規定する。 カ法109条の10第1項10号は,厚生労働大臣は,法36条2項等の規定による障害基礎年金の支給の停止に係る事務(当該支給の停止に係る 決定を除く。)につき,日本年金機構(以下「機構」という。)に行わせる(事務の委託をする)ものとする旨規定する。 (2) 令令4条の6は,障害等級の各級の障害の状態は,別表に定めるとおりとする旨規定し, 。)につき,日本年金機構(以下「機構」という。)に行わせる(事務の委託をする)ものとする旨規定する。 (2) 令令4条の6は,障害等級の各級の障害の状態は,別表に定めるとおりとする旨規定し,当該別表は,1級9号において,「前各号に掲げるもののほか, 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同等以上と認められる状態であって,日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」を,同11号において,「身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって,その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの」を挙げ,2級15号において,「前各号に掲げるものの ほか,身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と 同程度以上と認められる状態であって,日常生活が著しい制限を受けるか,又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」を,同17号において,「身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって,その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの」を挙げている。 (3) 規則ア規則35条1項本文は,障害基礎年金の受給権者は,法36条等の規定によって支給を停止されている障害基礎年金につき,支給停止の事由が消滅したときは,速やかに,届書を機構に提出しなければならず,規則35条2項2号は,当該受給権者(ただし,厚生労働大臣が指定する者を除く。) は,その障害の現状に関する医師又は歯科医師の診断書を当該届書に添えなければならない旨規定する。 イ規則36条の4第1項は,障害基礎年金の受給権者であって,その障害の程度の審査が必要であると認めて厚生労働大臣が指定したものは,厚生労働大臣が指定した年において,指定日までに,指定日 定する。 イ規則36条の4第1項は,障害基礎年金の受給権者であって,その障害の程度の審査が必要であると認めて厚生労働大臣が指定したものは,厚生労働大臣が指定した年において,指定日までに,指定日前1月以内に作成 されたその障害の現状に関する医師又は歯科医師の診断書を機構に提出しなければならない(ただし,当該障害基礎年金の額の全部につき支給が停止されているときは,この限りでない。)旨規定する。 (4) 厚生年金保険法(以下「厚年法」という。)・厚生年金保険法施行令(以下「厚年法施行令」という。) ア厚年法は,(ア)47条2項において,厚年法にいう障害等級は,障害の程度に応じて重度のものから1級,2級及び3級とし,各級の障害の状態は,政令で定める旨規定し,(イ)47条1項等において,疾病にかかり,又は負傷し,かつ,その傷病に係る初診日において被保険者であった者が,障害認定日等の一定の時点において,傷病により前記(ア)の障害等級に該当する 程度の障害の状態にあるときは,その者に障害厚生年金を支給する旨等を 規定する。 イ厚年法施行令3条の8は,厚年法47条2項に規定する障害等級の各級の障害の状態は,1級及び2級についてはそれぞれ令別表に定める1級及び2級の障害の状態とし,3級については別表第一に定めるとおりとする旨規定し,当該別表は,12号において,「前各号に掲げるもののほか, 身体の機能に,労働が著しい制限を受けるか,又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」を挙げている(以下,令別表に定める1級及び2級の障害の状態(法にいう障害等級及び厚年法にいう障害等級に係る1級及び2級)をそれぞれ「1級」及び「2級」ともいい,厚年法施行令別表第一に定める障害の状態(厚年法にいう障 令別表に定める1級及び2級の障害の状態(法にいう障害等級及び厚年法にいう障害等級に係る1級及び2級)をそれぞれ「1級」及び「2級」ともいい,厚年法施行令別表第一に定める障害の状態(厚年法にいう障害等級に 係る3級)を「3級」ともいう。)。 (5) 国民年金・厚生年金障害認定基準(以下「障害認定基準」という。乙共1)ア障害認定基準は,「第2 障害認定に当たっての基本的事項」の「1 障害の程度」において,1級について,「身体の機能の障害又は長期にわた る安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする。この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは,他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。例えば,身のまわりのことはかろうじてできるが,それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの,すなわち,病院 内での生活でいえば,活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり,家庭内の生活でいえば,活動の範囲がおおむね就床室内に限られるものである。」などとし,2級について,「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が,日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。この日 常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを 必要とする程度とは,必ずしも他人の助けを借りる必要はないが,日常生活は極めて困難で,労働により収入を得ることができない程度のものである。例えば,家庭内の極めて温和な活動(軽食作り,下着程度の洗濯等)はできるが,それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの,すなわち,病院内の生活でいえば,活動の範囲がおおむね病棟内に限られ 。例えば,家庭内の極めて温和な活動(軽食作り,下着程度の洗濯等)はできるが,それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの,すなわち,病院内の生活でいえば,活動の範囲がおおむね病棟内に限られ ているものであり,家庭内の生活でいえば,活動の範囲がおおむね家屋内に限られているものである。」などとし,3級について,「労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。」などとしている。 イ障害認定基準は,「第3 障害認定に当たっての基準」の「第1章障 害等級認定基準」の「第15節代謝疾患による障害」の「1 認定基準」において,令別表の1級9号及び2級15号並びに厚年法施行令別表第一の12号(3級に係るもの)所定の各障害の状態の内容を記載した上で,「代謝疾患による障害の程度は,合併症の有無及びその程度,代謝のコントロール状態,治療及び症状の経過,具体的な日常生活状況等を十分考慮 し,総合的に認定するものとし,当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって,長期にわたる安静を必要とする病状が,日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に,日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に,また,労働が制限を受けるか又は労働 に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。」と定める。 ウ障害認定基準は,前記「第15節代謝疾患による障害」の「2 認定要領」において,次のとおり定める。 (ア) 代謝疾患は,糖代謝,脂質代謝,蛋白代謝,尿酸代謝,その他の代謝 の異常に分けられるが,認定の対象となる代謝疾患による障害は糖尿病 が圧倒的に多いため, のとおり定める。 (ア) 代謝疾患は,糖代謝,脂質代謝,蛋白代謝,尿酸代謝,その他の代謝 の異常に分けられるが,認定の対象となる代謝疾患による障害は糖尿病 が圧倒的に多いため,本節においては,糖尿病の基準を定める。 (イ) 糖尿病とは,その原因のいかんを問わず,インスリンの作用不足に基づく糖質,脂質,タンパク質の代謝異常によるものであり,その中心をなすものは高血糖である。 糖尿病患者の血糖コントロールの困難な状態が長年にわたると,糖尿 病性網膜症,糖尿病性腎症,糖尿病性神経障害,糖尿病性壊疽等の慢性合併症が発症,進展することとなる。 糖尿病の認定は,血糖のコントロール状態そのものの認定もあるが,多くは糖尿病合併症に対する認定である。 (ウ) 糖尿病による障害の程度は,合併症の有無及びその程度,代謝のコン トロール状態,治療及び症状の経過,具体的な日常生活状況等を十分考慮し,総合的に認定する。 (エ) 糖尿病による障害の状態を一般状態区分表で示すと,次のとおりである。 区分一般状態ア無症状で社会活動ができ,制限を受けることなく,発症前と同等にふるまえるものイ軽度の症状があり,肉体労働は制限を受けるが,歩行,軽労働や座業はできるもの例えば,軽い家事,事務などウ歩行や身のまわりのことはできるが,時に少し介助が必要なこともあり,軽労働はできないが,日中の50%以上は起居しているものエ身のまわりのある程度のことはできるが,しばしば介助が必要で,日中の50%以上は就床しており,自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの オ身のまわりのこともできず,常に介助を必要とし,終日就床を強いられ,活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの( しており,自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの オ身のまわりのこともできず,常に介助を必要とし,終日就床を強いられ,活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの(オ) 糖尿病については,必要なインスリン治療を行ってもなお血糖のコントロールが困難なもので,次のいずれかに該当するものを3級と認定する。 ただし,検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を行っていることについて,確認のできた者に限り,認定を行うものとす る。 なお,症状,検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては,さらに上位等級に認定する。 a 内因性のインスリン分泌が枯渇している状態で,空腹時又は随時の血清Cペプチド値が0.3ng/mL 未満を示すもので,かつ,一般状態 区分表のウ又はイに該当するものb 意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が平均して月1回以上あるもので,かつ,一般状態区分表のウ又はイに該当するものc インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシス又は高血糖高浸透圧症 候群による入院が年1回以上あるもので,かつ,一般状態区分表のウ又はイに該当するもの(カ) 糖尿病性網膜症を合併したものによる障害の程度は,第1章「第1節眼の障害」の認定要領により認定する。 (キ) 糖尿病性壊疽を合併したもので,運動障害を生じているものは,第1 章「第7節肢体の障害」の認定要領により認定する。 (ク) 糖尿病性神経障害は,激痛,著明な知覚の障害,重度の自律神経症状等があるものは,第1章「第9節神経系統の障害」の認定要領により認定する。 (ケ) 糖尿病性腎症を合併したものによる障害の程度は,第1章「第12節腎疾患による障害」の認定要領により認定する。 ( 章「第9節神経系統の障害」の認定要領により認定する。 (ケ) 糖尿病性腎症を合併したものによる障害の程度は,第1章「第12節腎疾患による障害」の認定要領により認定する。 (コ) その他の代謝疾患は,合併症の有無及びその程度,治療及び症状の経過,一般検査及び特殊検査の検査成績,認定時の具体的な日常生活状況等を十分考慮して,総合的に認定する。 (6) 行手法ア行手法8条は,1項本文において,行政庁は,申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は,申請者に対し,同時に,当該処分の理由を示さなければならない旨を,同項ただし書において,法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的 指標により明確に定められている場合であって,当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは,申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる旨をそれぞれ規定するとともに,2項において,1項本文に規定する処分を書面でするときは,同項の理由は,書面により示さなければならない旨規定する。 イ行手法14条は,1項本文において,行政庁は,不利益処分をする場合には,その名宛人に対し,同時に,当該不利益処分の理由を示さなければならない旨を,同項ただし書において,当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は,この限りでない旨をそれぞれ規定するとともに,3項において,不利益処分を書面でするときは,1項本文の理由 は,書面により示さなければならない旨規定する。 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 原告らは,いずれも1型糖尿病にり患し,障害等級2級に該 なければならない旨規定する。 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 原告らは,いずれも1型糖尿病にり患し,障害等級2級に該当する程度の障害の状態にあるとして,障害基礎年金の支給を受けていた(原告らは,い ずれもその1型糖尿病に係る初診日において20歳未満であった。)。原告 らの受給権発生日は,次のとおりである。(甲A2,甲B2,甲C2,甲D2,甲E2,甲F2,甲G2,甲H2,甲I2)原告A 平成22年▲月▲日原告B 平成23年▲月▲日原告C 平成12年▲月▲日 原告D 平成17年▲月▲日原告E 平成18年▲月▲日原告F 平成14年▲月▲日原告G 平成26年▲月▲日原告H 平成16年▲月▲日 原告I 平成12年▲月▲日(2)ア厚生労働大臣(同大臣から事務の委託を受けた機構)は,令別表,厚年法施行令別表第一及び別表第二に定める障害の状態に関する審査基準(申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準。行手法2条8号ロ)・処分基準(不利 益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準。同号ハ)として,障害認定基準を定め,公表している。 イ厚生労働大臣から法36条2項等の規定による障害基礎年金の支給の停止に係る事務の委託を受けた機構は,障害基礎年金の受給権者につき支給 停止事由の有無を判断するために,医師である障害認定診査医員(以下「認定医」という。)に対し,①障害基礎年金の受給権者(ただし,当該障害基礎年金の額の全部につき支給が停止されている者を除く。)から法105条3項,規 断するために,医師である障害認定診査医員(以下「認定医」という。)に対し,①障害基礎年金の受給権者(ただし,当該障害基礎年金の額の全部につき支給が停止されている者を除く。)から法105条3項,規則36条の4第1項に基づき提出された診断書(「障害状態確認届」とも呼ばれる。後記②の診断書についても同じ。)及び②障害基 礎年金の支給停止をされている受給権者から法105条3項,規則35条 1項本文,2項2号に基づき提出された診断書を示した上で,当該受給権者に係る支給停止事由等に関して医学的知見に基づく意見を求める(当該意見等については,当該認定医又は機構の担当者によって,障害状態認定調書に記載される。)。厚生労働大臣は,当該意見を踏まえ,支給停止事由が存するときは,障害基礎年金の受給権者に対し,支給停止処分又は支 給停止を解除しない旨の処分を行う。(甲A5,甲B5,甲C5,甲D5,甲E5,甲F5,甲G5,甲H5,甲I5,乙共12,14,16,弁論の全趣旨)ア原告ら8名は,それぞれ,平成28年7月又は同年8月,法105条3項,規則36条の4第1項に基づき,同年7月時点における障害の現状に 関する医師の診断書を機構に提出した。(乙A1,乙B1,乙C1,乙D1,乙E1,乙F1,乙G1,乙H1)イ機構は,平成28年8月頃から同年10月頃までの間に,原告ら8名につき,認定医による「厚生年金障害等級表3級該当」との所見等が記載された障害状態認定調書を作成した。(乙A5,乙B5,乙C5,乙D5, 乙E5,乙F5,乙G5,乙H5)ウ厚生労働大臣は,平成28年12月7日付けで,原告ら8名に対し,それぞれ,支給停止処分をした(本件各支給停止処分)。 エ 「国民年金・厚生年金保険支給額変更通知書」と題する本件各 5,乙H5)ウ厚生労働大臣は,平成28年12月7日付けで,原告ら8名に対し,それぞれ,支給停止処分をした(本件各支給停止処分)。 エ 「国民年金・厚生年金保険支給額変更通知書」と題する本件各支給停止処分の通知書には,いずれも,処分の理由として,「07 障害の程度が 厚生年金保険法(旧三公社(JR,JT,NTT)の共済年金の受給権者にあっては国家公務員共済組合法)施行令に定める障害等級の3級の状態に該当したため,障害基礎年金の支給を停止しました。」との記載のみがされていた。(甲A1,甲B1,甲C1,甲D1,甲E1,甲F1,甲G1,甲H1) オ原告ら8名は,それぞれ,平成29年1月又は同年2月,本件各支給停 止処分に不服があるとして,近畿厚生局社会保険審査官に対し,審査請求をしたが,同年6月30日付けで,各審査請求を棄却する旨の決定をされた。(甲A3,甲B3,甲C3,甲D3,甲E3,甲F3,甲G3,甲H3)(4)ア厚生労働大臣は,平成14年▲月,原告Iに対し,支給停止処分をし, 平成16年▲月にこれを解除したが,平成21年▲月,原告Iに対し,再び支給停止処分をした。 イ原告Iは,平成28年10月,法105条3項,規則35条1項本文,2項2号に基づき,同年8月30日時点における障害の現状に関する医師の診断書と共に,受給権者支給停止事由消滅届を機構に提出した。(乙I 1)ウ機構は,平成28年10月頃,原告Iにつき,認定医による「3級該当」との所見等が記載された障害状態認定調書(障害状態確認届等用)を作成した。(甲I5)エ厚生労働大臣は,平成28年11月28日付けで,原告Iに対し,支給 停止処分に係る支給停止を解除しない旨の処分をした(本件不解除処分)。 オ 「国民年金 届等用)を作成した。(甲I5)エ厚生労働大臣は,平成28年11月28日付けで,原告Iに対し,支給 停止処分に係る支給停止を解除しない旨の処分をした(本件不解除処分)。 オ 「国民年金の支給停止を解除しない理由のお知らせ(支給停止事由消滅不該当通知書)」と題する本件不解除処分の通知書には,処分の理由として,「請求のあった傷病については,国民年金法施行令別表(障害年金1級,2級の障害の程度を定めた表)に定める程度に該当していないため。」 との記載のみがされていた。(甲I1)カ原告Iは,平成28年12月,本件不解除処分に不服があるとして,近畿厚生局社会保険審査官に対し,審査請求をしたが,同年6月29日付けで,この審査請求を棄却する旨の決定をされた。(甲I3)(5) 本件訴訟の提起 原告らは,平成29年11月20日,本件訴訟を提起した(顕著な事実)。 3 争点(1) 原告ら8名についてア本件各支給停止処分に係る行手法14条1項本文の定める理由提示義務の違反の有無(争点1)イ原告ら8名に係る支給停止事由の有無(争点2) (2) 原告Iについてア本件不解除処分に係る行手法8条1項本文の定める理由提示義務の違反の有無(争点3)イ原告Iに係る支給停止事由の有無等(争点4) 4 争点に関する当事者の主張の要旨 (1) 争点1(本件各支給停止処分に係る行手法14条1項本文の定める理由提示義務の違反の有無)(原告ら8名の主張の要旨)ア行手法14条1項本文及び8条1項本文は,処分の理由として,少なくとも,①処分の根拠規定(根拠法条),②処分の原因となる事実(単に根 拠規定を示すだけで当該規定の適用の基礎となった事実関係をも当然に知り得るような場合を除く 本文は,処分の理由として,少なくとも,①処分の根拠規定(根拠法条),②処分の原因となる事実(単に根 拠規定を示すだけで当該規定の適用の基礎となった事実関係をも当然に知り得るような場合を除く。),③処分基準(審査基準)の適用関係を示すことを求めている。また,この場合,処分の名宛人において,処分の理由をその記載自体から了知し得るものでなければならず,第三者においてもその記載自体からその処分の理由が明らかとなるものでなければならない。 しかるに,本件各支給停止処分の理由においては,①根拠規定である法36条2項,30条2項及び令,②処分の原因となる事実が示されていない。 イ本件各支給停止処分の根拠法令は法36条2項本文であるところ,その要件は「受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくな った」ことであり,原告ら8名についていえば,2級に該当しなくなった ことである。そして,令別表2級15号は,「前各号に掲げるもののほか,身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって,日常生活が著しい制限を受けるか,又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」と定めるのみで,基準としては抽象的なものとなっている。 本件各支給停止処分に係る処分基準としては,障害認定基準が公表されている。しかし,障害認定基準上,糖尿病については,3級に該当するか否かの認定の要領は具体的に記載されているものの,2級の障害の程度に該当するか否かについては,「症状,検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては,さらに上位等級に認定する。」としか定められておらず, 何ら具体的・客観的な基準及び認定の要領が明示されていない。そうすると,本件において,不 ,検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては,さらに上位等級に認定する。」としか定められておらず, 何ら具体的・客観的な基準及び認定の要領が明示されていない。そうすると,本件において,不利益処分の理由として障害認定基準の適用関係を説示することは,無意味であり不可能である。 本件各支給停止処分の性質は,従前,「障害等級に該当する程度の障害の状態」にあったことを前提に,その後の症状等の改善・緩和によって, 事後的に2級該当性を喪失したことを根拠に障害基礎年金の支給を停止するものである。そうすると,事実関係として,どのような点で症状等が改善・緩和したと認定したのかが具体的に摘示されなければ,行政庁の恣意的判断を抑止する効果や,処分の名宛人の不服申立ての便宜に資する効果は生じ得ない。 したがって,本件においては,本件各支給停止処分の原因となる事実関係の内容が理由として示されることが極めて重要である。処分の名宛人において,症状,検査成績,日常生活状況等について,どのような点で改善・緩和したと認定され,2級の障害の程度に該当しなくなったとの評価を受けたのかを知ることができる程度に事実関係が具体的に記載されなけれ ば,行手法14条1項本文の定める理由の提示があったとはいえない。 ウ本件各支給停止処分の通知書には,「障害の程度が厚生年金保険法(中略)施行令に定める障害等級の3級の状態に該当したため,障害基礎年金の支給を停止しました」としか記載されておらず,2級該当性が否定された事実すら記載されていない。3級に該当することが2級に該当しないことを直ちに意味するものでないことは論理的に明らかであり,障害認定基 準の認定の要領では,3級に該当するものについて,「症状,検査成績及び具体的な日常生 。3級に該当することが2級に該当しないことを直ちに意味するものでないことは論理的に明らかであり,障害認定基 準の認定の要領では,3級に該当するものについて,「症状,検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては,さらに上位等級に認定する。」とされていることに照らせば,「3級に該当する」ことを認定した上で,更に症状,検査成績及び具体的な日常生活状況等を認定して,上位等級に該当するか否かを判断する仕組みが想定されていると解される。すなわち, 3級に該当するとの判断が支給停止処分の直接の理由となるかのように記載したことは,論理的に破綻している。 そして,2級該当性を否定した理由について,認定の根拠となった事実関係(症状,検査成績及び具体的な日常生活状況等)や適用した基準等は全く記載されていない。 したがって,本件各支給停止処分について,行手法14条1項本文の定める理由の提示があったとはいえない。 エ処分の件数が多いことは,理由の提示についての除外事由である行手法14条1項ただし書に該当しない。また,そもそも,従前障害基礎年金を受給してきた者に対する法36条2項に基づく支給停止処分がそれほど多 数あるとは思われない。このことは,平成29年度の障害状態確認届提出者1000名が支給停止の検討対象となったという報道等からもうかがわれる。したがって,同項に基づく支給停止処分については,大量処理という実態自体が存在しない。 (被告の主張の要旨) ア本件各支給停止処分の通知書の記載を読めば,原告ら8名の障害の程度 が,2級の障害の状態に該当せず,3級の障害の程度にとどまったため,障害基礎年金の支給が停止されたということは,容易に理解することができる。実際,原告ら8名は,本件各支給停止処分に対 が,2級の障害の状態に該当せず,3級の障害の程度にとどまったため,障害基礎年金の支給が停止されたということは,容易に理解することができる。実際,原告ら8名は,本件各支給停止処分に対する審査請求において,原告ら8名の障害の程度は2級に該当し,不該当とした原処分は不当である旨を主張しているのであり,本件各支給停止処分の通知書により, 原告ら8名の障害の状態が2級の障害の状態に該当すると認められなかったために障害基礎年金の支給が停止されたという本件各支給停止処分の理由を正しく理解していたものである。 イ本件各支給停止処分の根拠法令である法及び令は,令別表に定める障害等級に該当する程度の障害の状態にあることを障害基礎年金の支給要件と し,受給権者が前記障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったときは,その障害の状態に該当しない間,障害基礎年金の支給を停止することとしている。また,令別表に定める障害の程度状態に関する審査基準・処分基準(行手法2条8号)として,障害認定基準が定められ,公表されている。 本件各支給停止処分は,原告ら8名の障害の状態が2級に該当しないことを理由に障害基礎年金の支給を停止するというものであるから,適用されるべき認定基準が「代謝疾患による障害」のうち「糖尿病による障害」に係るものであることは容易に判断することができる。そして,障害認定基準が「糖尿病については,必要なインスリン治療を行ってもなお血糖の コントロールが困難なもので,次のいずれかに該当するものを3級と認定する」,「なお,症状,検査結果及び具体的な日常生活状況等によっては,さらに上位等級に認定する」と定めていることからすると,本件各支給停止処分は,原告ら8名の「症状,検査結果及び具体的な日常生活状況等 る」,「なお,症状,検査結果及び具体的な日常生活状況等によっては,さらに上位等級に認定する」と定めていることからすると,本件各支給停止処分は,原告ら8名の「症状,検査結果及び具体的な日常生活状況等」によれば,原告ら8名の1型糖尿病による障害の状態は,3級に該当する 程度の障害の状態にとどまるという判断を示したものであることが明らか である。 よって,本件各支給停止処分における理由の提示が,行政庁の恣意抑制や不服申立ての便宜の観点から不十分であるとは解されない。 ウ厚生労働大臣は,年金給付に関し,極めて膨大な数の処分を行った上,当該処分に係る通知を限られた時間内に受給権者に通知する必要があるか ら,通知の内容を定型化せざるを得ない。そこで,厚生労働大臣が,障害年金の支給額の変更処分をした際,障害認定基準の適用関係等を個別具体的に示すことは極めて困難というほかない。特に,障害年金は,受給権者の障害の状態がそれぞれ異なるので,111頁に及ぶ障害認定基準の適用関係等を個別具体的に示すことは現実的に不可能である。 もっとも,実務上,年金事務所等では,受給権者から処分理由の問合せがあれば,判断の根拠となった診断書の記載内容と認定基準の該当箇所の内容に基づいて当該処分に至った理由を説明することとしており,理由の提示を補う対応を講じている。 エ以上によれば,本件各支給停止処分について,行手法14条1項本文の 定める理由の提示があったということができる。 (2) 争点2(原告ら8名に係る支給停止事由の有無)(原告ら8名の主張の要旨)法36条2項本文は,「障害基礎年金は,受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったときは,その障害の状態に該当しない 間,支給を停止する。 (原告ら8名の主張の要旨)法36条2項本文は,「障害基礎年金は,受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったときは,その障害の状態に該当しない 間,支給を停止する。」と規定する。その趣旨が,過去の障害基礎年金の支給決定時に存在した障害が,その後,改善・緩和した結果,現時点で当該障害等級に該当しなくなった場合に,障害基礎年金の支給を停止するところにあることは文理上明らかである。また,平成28年9月に策定された国民年金・厚生年金保険精神の障害に係る等級判定ガイドラインにおいて,同ガイ ドライン施行後に精神の障害に関する障害基礎年金の再認定をするに当たっ ては,提出された障害状態確認届(診断書)の記載内容から,下位等級への変更や2級(又は3級)非該当への変更を検討する場合は,前回認定時の障害状態確認届(診断書)や照会書類等から認定内容を確認するなど,認定に必要な情報収集を適宜行い,慎重に審査を行うよう留意することとされていること,障害基礎年金の支給が継続される場合に,受給権者に対し,「提出 された診断書(障害状態確認届)により障害の程度を審査した結果,あなたの障害の状態は従前の障害の状態と同程度と認められます」と記載された文書が送付されることなどからして,同項本文は,障害の状態の変化を実体的要件としているものと解される。 しかるに,原告ら8名について,本件各支給停止処分時に障害が改善・緩 和されたという事情はなく,前回(平成25年又は平成26年。原告Gについては,障害基礎年金の裁定を受けた平成26年)提出した障害の現状に関する医師の診断書と今回(平成28年)提出した同診断書との間に有意な差はない。 したがって,原告ら8名の障害の状態は,本件各支給停止処分当時,従前 どお た平成26年)提出した障害の現状に関する医師の診断書と今回(平成28年)提出した同診断書との間に有意な差はない。 したがって,原告ら8名の障害の状態は,本件各支給停止処分当時,従前 どおり2級に該当する状態であったのであり,法36条2項本文にいう「受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったとき」には当たらない。 (被告の主張の要旨)法36条2項本文は,過去の障害の状態と基準時における障害の状態を比 較検討することを処分条件としておらず,端的に基準時における症状,日常生活能力等の事情を基礎にしてその障害等級を判断し,その結果,従前認定した障害等級に該当しなくなった場合には,障害基礎年金の支給を停止するものとしている。 糖尿病患者は,1型糖尿病であると2型糖尿病であるとを問わず,インス リンを補充するなどの方法で適切に血糖コントロールをすることで,健康な 者と変わらない生活を送ることが可能であるとされており,平成26年度に実施された1型糖尿病にり患している患者を対象としてされた調査研究の結果,「1型糖尿病をもつことは,就学・就業,結婚において一般人口の同世代の人と大きな違いはなかった。」との結論が得られている。このように,そもそも糖尿病患者は,適切に血糖コントロールをすることで,糖尿病にり 患していない者と同様の生活を送ることができるのであるから,糖尿病による障害の程度を判断するに当たっては,このことを踏まえる必要がある。 原告ら8名が提出した障害の現状に関する医師の診断書の作成時点における原告ら8名の障害の状態は,いずれも,日常生活に著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とはいえないから, 2級に該当する程度とは認められない。 ( における原告ら8名の障害の状態は,いずれも,日常生活に著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とはいえないから, 2級に該当する程度とは認められない。 (3) 争点3(本件不解除処分に係る行手法8条1項本文の定める理由提示義務の違反の有無)(原告Iの主張の要旨)本件不解除処分についても,本件各支給停止処分と同様に,処分の名宛人 において,症状,検査成績,日常生活状況等について,どのように認定され,2級に該当しないとの評価を受けたのかを知ることができる程度に事実関係が具体的に記載されなければ,行手法8条1項本文の定める理由の提示があったとはいえない。 しかるに,本件不解除処分の通知書には,「請求のあった傷病については, 国民年金法施行令別表(障害年金1級,2級の障害の程度を定めた表)に定める程度に該当していないため。」としか記載されておらず,認定の根拠となった事実関係(症状,検査成績及び具体的な日常生活状況等)や適用した基準等は全く記載されていない。 処分の件数が多いことは,理由の提示についての除外事由である行手法8 条1項ただし書に該当しない。 したがって,本件不解除処分について,行手法8条1項本文の定める理由の提示があったとはいえない。 (被告の主張の要旨)ア本件不解除処分の通知書の記載を読めば,原告Iの障害の程度が,2級の障害の状態に該当せず,3級の障害の程度にとどまったため,障害基礎 年金の支給が停止されたということは,容易に理解することができる。実際,原告Iは,本件不解除処分に対する審査請求において,原告Iの障害の程度は2級に該当し,不該当とした原処分は不当である旨を主張しているのであり,本件不解除処分の通知書により,原告Iの障害の る。実際,原告Iは,本件不解除処分に対する審査請求において,原告Iの障害の程度は2級に該当し,不該当とした原処分は不当である旨を主張しているのであり,本件不解除処分の通知書により,原告Iの障害の状態が2級の障害の状態に該当すると認められなかったために支給停止が解除されな かったという本件不解除処分の理由を正しく理解していたものである。 イ本件不解除処分の根拠法令である法及び令は,令別表に定める障害等級に該当する程度の障害の状態にあることを障害基礎年金の支給要件とし,受給権者が前記障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったときは,その障害の状態に該当しない間,障害基礎年金の支給を停止する こととしている。また,令別表に定める障害の程度状態に関する審査基準・処分基準(行手法2条8号)として,障害認定基準が定められ,公表されている。 本件不解除処分は,原告Iの障害の状態が2級に該当しないことを理由に支給停止を解除しないというものであるから,適用されるべき認定基準 が「代謝疾患による障害」のうち「糖尿病による障害」に係るものであることは容易に判断することができる。そして,障害認定基準が「糖尿病については,必要なインスリン治療を行ってもなお血糖のコントロールが困難なもので,次のいずれかに該当するものを3級と認定する」,「なお,症状,検査結果及び具体的な日常生活状況等によっては,さらに上位等級 に認定する」と定めていることからすると,本件不解除処分は,原告Iの 「症状,検査結果及び具体的な日常生活状況等」によれば,原告Iの1型糖尿病による障害の状態は,3級に該当する程度の障害の状態にとどまるという判断を示したものであることが明らかである。 よって,本件不解除における理由の提示が,行政 状況等」によれば,原告Iの1型糖尿病による障害の状態は,3級に該当する程度の障害の状態にとどまるという判断を示したものであることが明らかである。 よって,本件不解除における理由の提示が,行政庁の恣意抑制や不服申立ての便宜の観点から不十分であるとは解されない。 ウ支給停止を解除しない旨の処分についても,前記(1)(被告の主張の要旨)ウと同様の事情がある。 エ以上によれば,本件不解除処分について,行手法8条1項本文の定める理由の提示があったということができる。 (4) 争点4(原告Iに係る支給停止事由の有無等) (原告Iの主張の要旨)原告Iは,平成12年(20歳時)に2級の認定を受けて障害基礎年金を受給するようになった。原告Iは,平成14年から平成16年まで一時的に障害基礎年金の支給を停止されたものの,同年に支給停止が解除された。 原告Iは,平成21年に再び障害基礎年金の支給を停止されたが,間もな く妊娠・出産等があったため,審査請求や支給停止事由消滅届の提出等を行わなかった。ただし,この時点で症状等が改善・緩和していたわけではなく,症状等の実態としては,原告Iの障害の程度は,当時においてもその後においても,2級と認定されるべきものであり,支給停止事由はなかった。 原告Iの症状等は,成人後,変動なく現在に至っており,本件不解除処分 時点においても2級に該当するものであったから,厚生労働大臣が支給停止を解除する旨の処分をしないことが,裁量権の範囲の逸脱・濫用となり違法であることが明らかである。 (被告の主張の要旨)糖尿病患者は,1型糖尿病であると2型糖尿病であるとを問わず,インス リンを補充するなどの方法で適切に血糖コントロールをすることで,健康な 者と変わらない生活を送る 主張の要旨)糖尿病患者は,1型糖尿病であると2型糖尿病であるとを問わず,インス リンを補充するなどの方法で適切に血糖コントロールをすることで,健康な 者と変わらない生活を送ることが可能であるとされており,平成26年度に実施された1型糖尿病にり患している患者を対象としてされた調査研究の結果,「1型糖尿病をもつことは,就学・就業,結婚において一般人口の同世代の人と大きな違いはなかった。」との結論が得られている。このように,そもそも糖尿病患者は,適切に血糖コントロールをすることで,糖尿病にり 患していない者と同様の生活を送ることができるのであるから,糖尿病による障害の程度を判断するに当たっては,このことを踏まえる必要がある。 原告Iが提出した診断書の作成時点における原告Iの障害の状態は,日常生活に著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とはいえないから,2級に該当する程度とは認められず,支給停 止事由が存する。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件各支給停止処分に係る行手法14条1項本文の定める理由提示義務の違反の有無)について(1) 行手法14条1項本文が,不利益処分をする場合に同時にその理由を名 宛人に示さなければならないとしているのは,名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして,同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは,同項本文の趣旨に照ら し,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の 本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは,同項本文の趣旨に照ら し,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである(最高裁平成21年(行ヒ)第91号同23年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁参照)。 (2) この見地に立って,以下,糖尿病による障害を理由とする障害基礎年金 の支給停止処分である本件各支給停止処分について,行手法14条1項本文の定める理由提示義務の違反があるか否かを検討する。 ア(ア) 障害基礎年金は,①国民年金の被保険者又は被保険者であった者で所定の要件を満たす者を対象とし,これらの者が障害の状態にあることとなって日常生活に著しい制限が加えられ稼得能力が喪失又は著しく減少 するなどした場合に,その生活の安定が損なわれることを防止することを目的として支給される給付(拠出制の年金給付。法30条ないし30条の3)及び②国民年金の被保険者資格を取得する年齢である20歳に達する前に疾病にかかり又は負傷し,これによって重い障害の状態にあることとなった者については,前記拠出制の年金給付たる障害基礎年金 の給付がされない一方で,その後の稼得能力の回復がほとんど期待できず,所得保障の必要性が高いことから,前記の者のうち法30条の4所定の要件を満たすものを対象とし,一定の範囲で国民年金制度の保障する利益を享受させるべく支給される給付(無拠出制の年金給付。同条)とから構成される(最高裁平成17年(行ツ)第246号同19年9月 28日第二小法廷判決・民集61巻6号2345頁参照)。 そうすると,障害基礎年金の給付を受ける権利について裁定を受けた )とから構成される(最高裁平成17年(行ツ)第246号同19年9月 28日第二小法廷判決・民集61巻6号2345頁参照)。 そうすると,障害基礎年金の給付を受ける権利について裁定を受けた受給権者は,当該障害基礎年金が拠出制又は無拠出制のいずれのものであるかにかかわらず,当該障害基礎年金が支給されることを前提として生活設計を立てることになるのであって,支給停止処分は,このような 受給権者の生活設計を崩し,生活の安定を損なわせる重大な不利益処分であるというべきである。 (イ) そして,法36条2項本文は,障害基礎年金は,受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったとき(支給停止事由があるとき)は,その障害の状態に該当しない間,その支給を停止する旨 規定するところ,障害等級の各級の障害の状態について定めた令別表は, 前記関係法令等の定め(2)のとおり,1級9号において,「前各号に掲げるもののほか,身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同等以上と認められる状態であって,日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」を,2級15号において,「前各号に掲げるもののほか,身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要 とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって,日常生活が著しい制限を受けるか,又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」を挙げるなどするにとどまっているのであって,その内容は抽象的であるといわざるを得ない。 また,障害認定基準は,障害基礎年金の裁定についての基準(審査基 準)であるのみならず,支給停止処分についての基準(処分基準)でもあるところ,障害認定基準のうちの糖尿病を含む代謝疾患による障害の程度に関する内容を 障害基礎年金の裁定についての基準(審査基 準)であるのみならず,支給停止処分についての基準(処分基準)でもあるところ,障害認定基準のうちの糖尿病を含む代謝疾患による障害の程度に関する内容をみると,①認定基準は,前記関係法令等の定め(5)イのとおり,「合併症の有無及びその程度,代謝のコントロール状態,治療及び症状の経過,具体的な日常生活状況等を十分考慮し,総合的に 認定するものとし,当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって,長期にわたる安静を必要とする病状が,日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に,日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に,また,労働が制限を受けるか又は労働 に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。」というごく抽象的なものであり,②認定要領も,同ウのとおり,「糖尿病による障害の程度は,合併症の有無及びその程度,代謝のコントロール状態,治療及び症状の経過,具体的な日常生活状況等を十分考慮し,総合的に認定する。」とした上で,3級と認定する場合につ いて具体的に定める一方で,どのような場合を1級又は2級に該当する 障害の状態(障害基礎年金が支給される程度の障害の状態)であると認定するかについては,「なお,症状,検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては,さらに上位等級に認定する。」として,総合評価の対象となる事情を列挙したものであって,これらの事情相互の関係や重み付け等を定めたものではなく,抽象的であるといわざるを得ない。 (ウ) 前記(ア)のとおり,支給停止処分は,障害基礎年金の給付を受ける権利について裁定を受けた受給権者の生活設計を崩し 係や重み付け等を定めたものではなく,抽象的であるといわざるを得ない。 (ウ) 前記(ア)のとおり,支給停止処分は,障害基礎年金の給付を受ける権利について裁定を受けた受給権者の生活設計を崩し,生活の安定を損なわせる重大な不利益処分であることに加えて,前記(イ)のとおり,糖尿病による障害を理由とする障害基礎年金の支給停止処分の根拠法令の1つである令別表(障害等級の各級の障害の状態について定めたもの)の規 定内容が抽象的であること,当該処分に係る処分基準として公表されている障害認定基準(糖尿病を含む代謝疾患による障害の程度に関する認定基準・認定要領)の内容も抽象的であることに照らせば,糖尿病による障害を理由とする障害基礎年金の支給停止処分については,いかなる事実関係に基づきどのように障害認定基準を適用して当該処分がされた のかを,当該処分の相手方においてその理由の提示の内容自体から了知し得るものとする必要性が高いものというべきである。 イそこで,本件各支給処分に係る理由の提示の内容について検討すると,本件各支給停止処分の通知書には,いずれも,処分の理由として,「07障害の程度が厚生年金保険法(旧三公社(JR,JT,NTT)の共済 年金の受給権者にあっては国家公務員共済組合法)施行令に定める障害等級の3級の状態に該当したため,障害基礎年金の支給を停止しました。」と記載されているのみであって(前記前提事実(3)エ),単に原告ら8名の各障害の程度が1級及び2級には該当しないとの結論のみを示したものと評されてもやむを得ないほど簡素なものである。 このことに加えて,厚生労働大臣は,原告ら8名に対し,1型糖尿病にり患し,2級に該当する程度の障害の状態に該当すると認定して,約2ないし約16年の間, ほど簡素なものである。 このことに加えて,厚生労働大臣は,原告ら8名に対し,1型糖尿病にり患し,2級に該当する程度の障害の状態に該当すると認定して,約2ないし約16年の間,障害基礎年金を継続的に支給しており,特に原告ら8名のうち原告Gを除く者に対しては,その間のおおむね2ないし3年に1度の割合で,障害の現状に関する医師の診断書の提出を受けた後,障害基 礎年金に係る事務の委託を受けている機構において(機構発足前は社会保険庁において),「提出された診断書(障害状態確認届)により障害の程度を審査した結果,あなたの障害の状態は従前の障害の状態と同程度と認めますので,引き続き障害年金を支給します。」という記載のある書面を交付していた(甲共24,乙共13,弁論の全趣旨)にもかかわらず,一 転して,原告ら8名に対して本件各支給停止処分を行ったという経緯等も併せ考慮すると,前記のような処分の理由の提示では,厚生労働大臣が,原告ら8名について,障害認定基準中の認定要領(前記ア(イ)②)において総合評価の対象とされた事情である症状,検査成績及び具体的な日常生活状況等によって2級に該当する程度の障害の状態に該当すると認定しなか った理由は何ら明らかにされておらず,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するという趣旨を全うしていないといわざるを得ない。 また,本件各支給停止処分の通知書に記載された理由は,前記のとおり,各障害の程度が1級及び2級には該当しないとの結論のみを示したものと 評されてもやむを得ないほど簡素なものであるところ,これでは,原告ら8名において,本件各支給停止処分について,原告ら8名が前記前提事実機構に提出した障害の現状に関する医師の診断書(障害状態確認届)に記載された事実関係 いほど簡素なものであるところ,これでは,原告ら8名において,本件各支給停止処分について,原告ら8名が前記前提事実機構に提出した障害の現状に関する医師の診断書(障害状態確認届)に記載された事実関係を前提としてされたものであるか否かすら認識することができないのであって,本件各支給停止処分に対して不服を 申し立てた場合,前記診断書に記載された事実関係のうちのどの部分や範 囲が争点となるのか,また,当該事実関係は争点とはならずこれを前提とした上で,症状,検査成績及び具体的な日常生活状況等に関する総合評価の手法や判断内容等が争点となるのか等の見通しを立てることは困難であるから,不服申立ての便宜を図るという趣旨に照らしても,不十分な理由の提示というべきである。 そうすると,糖尿病による障害を理由とする障害基礎年金の支給停止処分である本件各支給停止処分における理由の提示については,いかなる事実関係に基づきどのように障害認定基準を適用して支給停止処分がされたのかを,当該処分の相手方たる原告ら8名においてその理由の提示の内容自体から了知し得るものであるということはできず,行手法14条1項本 文の定める理由提示義務に違反するものといわざるを得ない。 ウ以上検討したところによれば,本件各支給停止処分は,行手法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠いた違法な処分であるというべきである。 (3) これに対して,被告は,(a)厚生労働大臣は,年金給付に関し,極めて膨 大な数の処分を行った上,当該処分に係る通知を限られた時間内に受給権者に通知する必要があるから,通知の内容を定型化せざるを得ない,(b)厚生労働大臣が,障害年金の支給額の変更処分をした際,障害認定基準の適用関係等を個別具体的に示すことは極めて困難というほ に受給権者に通知する必要があるから,通知の内容を定型化せざるを得ない,(b)厚生労働大臣が,障害年金の支給額の変更処分をした際,障害認定基準の適用関係等を個別具体的に示すことは極めて困難というほかない,(c)特に,障害年金は,受給権者の障害の状態がそれぞれ異なるので,111頁に及ぶ障害 認定基準の適用関係等を個別具体的に示すことは現実的に不可能である旨主張する。 ア(ア) そこで,前記(a)の主張について検討すると,被告は,年金給付に関する処分が大量であることを裏付ける証拠として,機構が発送した国民年金及び厚生年金保険の支給額変更通知書の数が,平成28年度で約7 26万件,平成29年度で約678万件である旨記載された報告書(乙 共10)を提出する。 しかしながら,本件においては,糖尿病による障害を理由とする障害基礎年金の支給停止処分である本件各支給停止処分における理由の提示が,行手法14条1項本文の定める理由提示義務に違反するか否かが争点となっているところ,前記報告書に記載された件数は,老齢年金,障 害年金及び遺族年金の全て,増額と減額の双方,減額事由の全て(減額事由には,支給停止処分のほかにも様々なものがある。乙共11の2),障害年金についていえば全種類の障害を含むものであって,糖尿病による障害を理由とする障害基礎年金の支給停止処分の数が,前記支給額変更通知書の数の大部分を占めるものとは考え難いから,前記報告書の記 載内容をもって,当該処分が大量で通知内容を定型化せざるを得ないことを裏付ける客観的な根拠とすることはできない。 また,この点を措くとしても,障害基礎年金の支給という重要な事務の著しい停滞を防止するために,支給停止処分をする際に提示する理由の内容を一定程度定型化せざるを得ないとの 根拠とすることはできない。 また,この点を措くとしても,障害基礎年金の支給という重要な事務の著しい停滞を防止するために,支給停止処分をする際に提示する理由の内容を一定程度定型化せざるを得ないとの要請が一定程度存するもの と考えられるものの,支給停止処分について,行手法又は法において行手法14条1項本文の適用を除外する旨の立法上の措置が講じられていない(行手法3条,法7条3項参照)以上,その理由が定型化されて提示された場合についても,同項本文の定める理由提示の要件を満たさなければならないことはいうまでもない。そして,前記(2)アで説示したと おり,糖尿病による障害を理由とする障害基礎年金の支給停止処分については,いかなる事実関係に基づきどのように障害認定基準を適用して当該処分がされたのかを,当該処分の相手方においてその理由の提示の内容自体から了知し得るものとする必要性が高いものというべきであることに照らすと,当該処分の相手方に対して提示する理由を定型化する ことには,おのずから一定の限界があるというべきであって,本件各支 給停止処分の通知書に記載された処分の理由のように簡素なものでは,同項本文の定める理由提示の要件を満たすということができないことは,同イで説示したとおりである。 したがって,被告の前記(a)の主張は採用することができない。 (イ) なお,証拠(乙A1,乙B1,乙C1,乙D1,乙E1,乙F1,乙 G1,乙H1,乙I1)によれば,障害基礎年金の受給権者が法105条3項,規則36条の4第1項に基づき機構に提出する診断書(障害状態確認届)の内容については様式が定められており,この様式には,①当該受給権者が,障害認定基準において,糖尿病による障害の状態を示すものとされる一般状態区分表(前記 づき機構に提出する診断書(障害状態確認届)の内容については様式が定められており,この様式には,①当該受給権者が,障害認定基準において,糖尿病による障害の状態を示すものとされる一般状態区分表(前記関係法令等の定め(5)ウ(エ))のい ずれに該当するかを記載する項目があるほか,糖尿病について,②病型,③検査成績,④治療状況,⑤血糖コントロールの困難な状況,⑥合併症を記載する項目があり,これに加えて,⑦現症時の日常生活活動能力及び労働能力等を記載する項目がある事実が認められる。また,厚生労働大臣から法36条2項等の規定による障害基礎年金の支給の停止に係る 事務の委託を受けた機構は,障害基礎年金の受給権者につき支給停止事由の有無を判断するために,認定医に対し,前記診断書を示した上で,当該受給権者に係る支給停止事由等に関して医学的知見に基づく意見を求め,当該意見等については,当該認定医又は機構の担当者によって,障害状態認定調書に記載される(前記前提事実(2)イ)。そして,厚生労 働大臣は,当該意見を踏まえ,支給停止事由が存するときは,障害基礎年金の受給権者に対し,支給停止処分を行うが(同イ),証拠(乙共12,14)及び弁論の全趣旨によれば,機構(年金事務所等)は,受給権者から障害基礎年金の医学的な処分理由について問合せがあった場合,当該受給権者に対し,障害認定基準の該当箇所,障害状態認定調書 から読み取れる処分理由,診断書等の提出書類から読み取れる処分理由 等を説明している事実が認められる。 これらの事情を踏まえると,厚生労働大臣が,糖尿病による障害を理由とする障害基礎年金の受給権者につき,例えば,2級の状態とは認められなくなったことを理由として支給停止処分を書面で行う場合には,その理由として,(ⅰ) えると,厚生労働大臣が,糖尿病による障害を理由とする障害基礎年金の受給権者につき,例えば,2級の状態とは認められなくなったことを理由として支給停止処分を書面で行う場合には,その理由として,(ⅰ)前記診断書記載の事実関係を前提として当該処分 を行ったか否か(当該事実関係を前提としない部分・範囲が存する場合にはその特定を含む。)に関する記載や,(ⅱ)障害認定基準中の認定要領(前記(2)ア(イ)②)において3級よりも「さらに上位等級に認定する」際の考慮要素とされる症状,検査成績及び具体的な日常生活状況等に関する判断等について,前記診断書の記載の要点部分や前記障害状態認定 調書中の認定医の意見等を引用しつつ,一定程度具体的な記載をした書面を当該受給権者に交付することが,行手法14条1項本文の趣旨にかなうものと考えられる(その際,当該受給権者に交付する予定の書面に頻出する文言を印字しておく,必要に応じてチェックボックスを活用するなどして当該書面を効率的に作成するための工夫を行うことが許容さ れることはいうまでもない。)。 イそして,前記(b)及び(c)の各主張について検討すると,本件においては,糖尿病による障害を理由とする障害基礎年金の支給停止処分である本件各支給停止処分における理由の提示が,行手法14条1項本文の定める理由提示義務に違反するか否かが争点となっているところ,(b)前記ア(イ)で説 示したところによれば,同(ⅰ)及び(ⅱ)に示した程度の理由を提示することが「極めて困難」ということはできないし,(c)厚生労働大臣又は同大臣から事務の委託を受けた機構は,本件各支給停止処分を行うに先立ち,障害認定基準中のいずれの認定基準,認定要領等や,具体的な記載部分や考慮要素等に基づき2級に該当しないものと判断するかにつ 又は同大臣から事務の委託を受けた機構は,本件各支給停止処分を行うに先立ち,障害認定基準中のいずれの認定基準,認定要領等や,具体的な記載部分や考慮要素等に基づき2級に該当しないものと判断するかについて,既に検討 しているはずであるから,「障害認定基準の適用関係等を個別具体的に示 すことは現実的に不可能である」ということもできない。 したがって,被告の前記(b)及び(c)の各主張はいずれも採用することができない。 (4) したがって,本件各支給停止処分は,その余の点について判断するまでもなく,違法であって,取消しを免れないものというべきである。 2 争点3(本件不解除処分に係る行手法8条1項本文の定める理由提示義務の違反の有無)について(1) 行手法8条1項本文が,申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合に同時にその理由を申請者に示さなければならないとしているのは,申請者に対し何らかの利益を付与する処分(許認可等)を拒否する処分 という申請拒否処分の性質に鑑み,行手法14条1項本文と同様に,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を申請者に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして,行手法8条1項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは,同項本文の趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に 係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである。 (2) この見地に立って,以下,糖尿病による障害を理由とする障害基礎年金の支給停止処分に係る支給停止を解除しない旨の処分である本件不解除処分 について,行手法8条1項本文の べきである。 (2) この見地に立って,以下,糖尿病による障害を理由とする障害基礎年金の支給停止処分に係る支給停止を解除しない旨の処分である本件不解除処分 について,行手法8条1項本文の定める理由提示義務の違反があるか否かを検討する。 障害基礎年金の制度趣旨は前記1(2)ア(ア)で説示したとおりであるところ,支給停止処分を受けた者は,従前,障害基礎年金が支給されることを前提として生活設計を立てていたものであり,支給停止処分を受けたとしても,受 給権が消滅しているわけではない以上,支給停止の解除を受けて,生活設計 を再構築し,生活の安定を取り戻すことについて相当程度大きな期待的利益を有するといえるのであって,支給停止の解除の申請に対してこれを解除しない旨の処分をすることは,この期待的利益に関する重大な処分であるというべきである。 そして,前記1(2)で説示したのと同様に,糖尿病による障害を理由とする 障害基礎年金の支給停止処分に係る支給停止を解除しない旨の処分の根拠法令の1つである令別表(障害等級の各級の障害の状態について定めたもの)の規定内容が抽象的であること,当該処分に係る審査基準として公表されている障害認定基準(糖尿病を含む代謝疾患による障害の程度に関する認定基準・認定要領)の内容も抽象的であることに照らせば,糖尿病による障害を 理由とする障害基礎年金の支給停止処分に係る支給停止を解除しない旨の処分については,いかなる事実関係に基づきどのように障害認定基準を適用して当該処分がされたのかを,当該処分の相手方においてその理由の提示の内容自体から了知し得るものとする必要性が高いものというべきである。 しかるに,本件不解除処分の通知書には,処分の理由として,「請求のあ った傷病については, の相手方においてその理由の提示の内容自体から了知し得るものとする必要性が高いものというべきである。 しかるに,本件不解除処分の通知書には,処分の理由として,「請求のあ った傷病については,国民年金法施行令別表(障害年金1級,2級の障害の程度を定めた表)に定める程度に該当していないため。」と記載されているのみであって(前記前提事実(4)オ),単に原告Iの障害の程度が1級及び2級には該当しないとの結論のみを示したものと評されてもやむを得ないほど簡素なものである。 このことに加えて,原告Iは,本件不解除処分の時点ではその支給を停止されていたとはいえ,従前,1型糖尿病にり患し,2級に該当する程度の障害の状態に該当すると認定されていたところ,厚生労働大臣は,原告Iに対し,合計約7年以上(平成12年▲月頃から平成14年▲月頃まで及び平成16年▲月頃から平成21年▲月頃までの合計期間。前記前提事実(1),(4) ア,イ)にわたり障害基礎年金を支給していたにもかかわらず,一転して, 平成21年▲月に支給停止処分を行った(なお,証拠(乙共11の1)及び弁論の全趣旨によれば,当該処分においても,「07 障害の程度が厚生年金保険法(中略)施行令に定める障害等級の3級に該当したため,障害基礎年金の支給を停止しました。」という,単に原告Iの障害の程度が1級及び2級には該当しないとの結論のみを示したものと評されてもやむを得ないほ ど簡素な理由しか提示していない。)という経緯等も併せ考慮すると,前記のような本件不解除処分の理由の提示では,厚生労働大臣が,原告Iについて,障害認定基準中の認定要領(前記1(2)ア(イ)②)において総合評価の対象とされた事情である症状,検査成績及び具体的な日常生活状況等によって2級に該当する程度 では,厚生労働大臣が,原告Iについて,障害認定基準中の認定要領(前記1(2)ア(イ)②)において総合評価の対象とされた事情である症状,検査成績及び具体的な日常生活状況等によって2級に該当する程度の障害の状態に該当すると認定しなかった理由は何ら明 らかにされておらず,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するという趣旨を全うしていないといわざるを得ない。 また,本件不解除処分の通知書に記載された理由は,前記のとおり,障害の程度が1級及び2級には該当しないとの結論のみを示したものと評されてもやむを得ないほど簡素なものであるところ,これでは,原告Iにおいて, 本件不解除処分について,原告Iが前記前提事実(4)イのとおり機構に提出した障害の現状に関する医師の診断書(障害状態確認届)に記載された事実関係を前提としてされたものであるか否かすら認識することができないのであって,本件不解除処分に対して不服を申し立てた場合,前記診断書に記載された事実関係のうちのどの部分や範囲が争点となるのかや,当該事実関係は 争点とはならずこれを前提とした上で,症状,検査成績及び具体的な日常生活状況等に関する総合評価の手法や判断内容等が争点となるのか等の見通しを立てることは困難であるから,不服申立ての便宜を図るという趣旨に照らしても,不十分な理由の提示というべきである。 そうすると,糖尿病による障害を理由とする障害基礎年金の支給停止処分 に係る支給停止を解除しない旨の処分である本件不解除処分における理由の 提示については,いかなる事実関係に基づきどのように障害認定基準を適用して支給停止処分がされたのかを,当該処分の相手方たる原告Iにおいてその理由の提示の内容自体から了知し得るものであるということはできず,行手法8条 かなる事実関係に基づきどのように障害認定基準を適用して支給停止処分がされたのかを,当該処分の相手方たる原告Iにおいてその理由の提示の内容自体から了知し得るものであるということはできず,行手法8条1項本文の定める理由提示義務に違反するものといわざるを得ない。 以上検討したところによれば,本件不解除処分は,行手法8条1項本文の 定める理由提示の要件を欠いた違法な処分であるというべきである。 (3) これに対して,被告は,前記1(3)と同様の主張をするが,前説示のとおり,被告の主張は採用することができない。 (4) したがって,本件不解除処分は,その余の点について判断するまでもなく,違法であって,取消しを免れないものというべきである。 3 原告Iの義務付けの訴えについて前記2で説示したところによれば,原告Iの義務付けの訴えと併合提起された取消しの訴えに係る本件不解除処分は,行手法8条1項本文の定める理由提示の要件を欠いた違法な処分であり取り消されるべきものであるから,当該義務付けの訴えは,適法である(行訴法37条の3第1項2号)とともに,本案 要件の一部(同条5項所定の「同条1項各号に定める訴えに係る請求に理由があると認められ」るとの要件)を満たすものと考えられる。しかし,更に進んで当該義務付けの訴えに係る請求を認容すべきか否かを判断するためには,原告Iに対する支給停止を解除する処分につき,厚生労働大臣がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認めら れ又は厚生労働大臣がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるか否かを判断することを要する(同条5項)。 この点については,原告Iの障害の状態が2級に該当するか否かを審理判断する必要があるとこ ないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるか否かを判断することを要する(同条5項)。 この点については,原告Iの障害の状態が2級に該当するか否かを審理判断する必要があるところ,前記2(2)で説示したとおり,糖尿病による障害を理由とする障害基礎年金の支給停止処分に係る支給停止を解除しない旨の処分の根 拠法令の1つである令別表(障害等級の各級の障害の状態について定めたも の)の規定内容が抽象的であるとともに,当該処分に係る審査基準として公表されている障害認定基準(糖尿病を含む代謝疾患による障害の程度に関する認定基準・認定要領)の内容も抽象的であること,このことを踏まえると,原告Iの障害の状態が2級に該当するか否かについて,当事者双方からの相応の医学的知見を踏まえた主張・立証が必要となると見込まれるものの,現時点では, 十分な主張・証拠も提出されていないことからすると,その審理には相当の期間を要するものと考えられる。また,本件不解除処分の取消判決が確定すれば,厚生労働大臣において,行手法8条1項本文の定める理由の提示内容の検討等をする過程で,原告Iに対する支給停止の解除の適否自体についても再度検討することも考えられるところであって,現時点で本件不解除処分の取消しの訴 えについて一部判決をすることにより,原告Iに関する最終的な紛争解決がもたらされる可能性も否定できないというべきである。 そうすると,原告Iの訴えについては,行訴法37条の3第6項前段の規定により,本件不解除処分の取消しの訴えについてのみ請求認容の終局判決をすることが,より迅速な争訟の解決に資するものと認められるので,本件の口頭 弁論から,原告Iの義務付けの訴えに係る請求についての口頭弁論を分離した上,本件訴えのうち当該 み請求認容の終局判決をすることが,より迅速な争訟の解決に資するものと認められるので,本件の口頭 弁論から,原告Iの義務付けの訴えに係る請求についての口頭弁論を分離した上,本件訴えのうち当該請求に係る部分についての判決言渡し期日を取り消すこととした。 第4 結論以上によれば,原告ら8名の請求は,いずれも理由があるからこれらを認容 すべきであり,また,本件不解除処分の取消しを求める原告Iの請求は,理由があるからこれを認容すべきである。そして,原告Iについては,行訴法37条の3第6項前段に基づき,本件不解除処分の取消しを求める訴えについてのみ終局判決をするのが相当である。 なお,本判決は事件の一部に関する判決であるところ,原告Iと被告との間 における訴訟費用については,本件不解除処分の取消しを求める請求に関する ものと義務付けの訴えに係る請求に関するものとを画然と区別することはできない一方,原告ら8名と被告との間における訴訟費用については,原告Iと被告との間における訴訟費用と画然と区別することができることから,行訴法7条,民訴法67条1項ただし書に基づき,原告ら8名と被告との間における訴訟費用に関してのみ,その負担の裁判をすることとする。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官 三輪方大 裁判官 齋藤毅 裁判官 内藤陽子 齋藤毅 裁判官 内藤陽子

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る