【DRY-RUN】主 文 本件各上告を棄却する。 理 由 弁護人柴田勇助の上告趣意書は「原判決ニハ法令ノ違反アリ (1) 原審ハ被 告人カ強盗犯人A等ト強盗ニ関スル通謀アリタル
主 文 本件各上告を棄却する。 理 由 弁護人柴田勇助の上告趣意書は「原判決ニハ法令ノ違反アリ (1) 原審ハ被 告人カ強盗犯人A等ト強盗ニ関スル通謀アリタルカ如ク独断シ刑法第六十条ヲ適用 セシコトハ先ツ違法ノ第一点ナリ蓋シ通謀ノ点ニ付何等積極ニ解スヘキ証拠ナク反 ツテ相被告人B、C等ノ陳述ハ消極ニ判断スヘキ有力ナルモノテアル (2) 被 告人ニ強盗ノ意思アリシモノト解スヘキ理田ナキニ不拘刑法第二百三十六条ヲ適用 セシハ違法ノ第二点ナリ此点記録全般ヲ御精読賜ルナレハ明白ナリ(3) 原審ハ 審理不尽ノ違法アリ第一審判決ト被告人等ノ陳述ニ大ナル相異アルニ不拘何カ真実 ナルカヲ究メサリシコトハ全ク審理ヲ尽ササリシモノト信ス而シテ被告人ニ対シ第 一審ノ事実ヲ認メ僅カニ刑ヲ減シタル判決ヲナシタルハ実ニ新憲法人権尊重ノ精神 ニ副ハサルモ甚シキモノナリ以上ノ事由御賢察ノ上速カニ原判決ヲ破毀シ適正妥当 ナル御判決ヲ賜リ度シ」 弁護人浪江源治の上告趣意書は「第一点原審判決は被告人Cに対する公訴事実は 一、被告人三名ニ対スル司法警察官ノ各聴取書中ニ何人等ノ供述トシテ各自関係 部分ニ付判示同趣旨ノ記載アルコト 一、原審第一回公判調書中ニ原審相被告人D 同Eノ供述トシテ、各自関係部分ニ付判示同趣旨ノ記載アルコト 一、F、G提出 ノ各強盗被害始末書中ニ判示ニ照応スル被害顛末ノ記載アルコトヲ綜合シテ之ヲ認 メルニ十分デアルとし本件強盗の共犯事実を認定したるも右挙示の証拠を以てして は未た被告人Cが公訴事実記載の如き強盗に付意思通謀の事実があつたことを認む るに足らないと思料する。畢竟原審判決は証拠不充分理由不備の違法あるものと考 へる」というにある。しかし原判決の挙示する証拠を綜合すれは原判示の事実を認 定することができるのであるから原判決には何等所論の如 足らないと思料する。畢竟原審判決は証拠不充分理由不備の違法あるものと考 へる」というにある。しかし原判決の挙示する証拠を綜合すれは原判示の事実を認 定することができるのであるから原判決には何等所論の如き違法なく論旨はいづれ - 1 - も原審の適法に為した事実認定を批難するに帰着し理由なきものである。 弁護人酒巻彌三郎の上告趣意書第一点は「有罪の言渡を為すには罪と為るへき事 実及証拠に依り之を認めたる理由を説明し法令の適用を示すへきこと刑事訴訟法第 三百六十条の明定するところなり仍て原判決を査閲するに其理由中「被告人三名は 原審被告人E、H、D及Iほか一名と共謀の上昭和二十一年十一月十三日午後七時 三十分頃大阪市a区b町c丁目d番地株式会社J商会第二工場において夜警G等に ピストルを突き付け同人等を縛るなど暴行脅迫を加へてその反抗を抑圧しG所有の 腕時計一個及び右会社所有の桐油ドラム鑵入十七本を奪ひ取つたものであると説明 し右の事実は(一) 被告人三名に対する司法警察官の各聴取書中同人等の供述と して各自関係部分に付判示同趣旨の記載あると(二) 原審第一回公判調書中原審 相被告人D、同Eの供述として各自関係部分に付判示同趣旨の記載あると(三) F、G提出の各強盗被害始末書中に判示に照応する被害顛末の記載あるとを綜合し て之を認めるに十分であると断定するが故に先づ被告人Cに対する昭和二十一年十 二月十一日、大阪府福島警察署警部補Kの作成したる聴取書を精査するに其「第五 項私はL…の八人共謀して桐油入ドラム罐十七本を強奪したことに付いて申上ます」 其「第十一項私はL、M、Nの四人て小屋の東側に置いて在つた沢山ある桐油入ド ラム罐を転かして自動車に積み上け作業に分担し運転手のDは車の上で積み直ちに 作業を遣つて居りました」と記載あるの外暴行脅迫の具体の事実の記載なく第五項 の 人て小屋の東側に置いて在つた沢山ある桐油入ド ラム罐を転かして自動車に積み上け作業に分担し運転手のDは車の上で積み直ちに 作業を遣つて居りました」と記載あるの外暴行脅迫の具体の事実の記載なく第五項 の桐油を強奪したことに付ての強奪とは如何なる事実を指称するや刑法第二百三十 六条は規定して曰く暴行又は脅迫を以て他人の財物を強取したる者は強盗の罪と為 し五年以上の有期懲役に処すと若し夫れ被告人か同条所定の行為を敢行したらむに は須らくピストルを突き付け又は夜警を縛し等の具体的事実の記載なき限り罪と為 る可き事実の記載ありと謂ふ可からず従つて被告人に対する司法警察官の聴取書は 被告人のCか強盗行為を為したりとの直接証拠と謂ふに得さるなり或は「強奪した」 - 2 - 「強盗に行く際」等の文字あるか故に強盗を為したりと断す可しと謂ふものあらむ も斯る言説は被告人か強盗犯人なりとの先入観に左右せらるゝ想像又は憶測による ものにして刑事訴訟法第三百六十条の要求する罪と為る可き事実の証拠と謂ふを得 す即ち斯る聴取書により強盗行為を認定するは不十分なりと信ず次に原審第一回公 判調書中原審相被告人Dの供述を調査するに(一件記録第二三一頁以下)被告人D ……共謀して、……強奪した事実は什ふか其通り相違ありませぬ其顛末は……車を 工場内に入れてからLBと共にドラム鑵を積み一同其処を引揚け云々と記載あるの 外何人か暴行脅迫を為したりや又如何なる事実関係ありたりやを明確にする処なく 更らに原審相被告人Eの供述を調査するに(記録第二三四頁以下)……強盗した事 実は什ふか其の通り相違ありませぬ其顛末は……私と憲兵、Cの三人か荷台に運転 台にD、Lか乗りDの運転で出発しJ商会の工場へ行つたのであります車はKの工 場近くにある紙工場の前で停め、私とC、憲兵の三人か工場内に入り私と憲兵が守 衛室に入り守衛と其家 憲兵、Cの三人か荷台に運転 台にD、Lか乗りDの運転で出発しJ商会の工場へ行つたのであります車はKの工 場近くにある紙工場の前で停め、私とC、憲兵の三人か工場内に入り私と憲兵が守 衛室に入り守衛と其家族を脅し縛つて私は拳銃を突付けて見張り憲兵は表へ出てC に車を工場内に入れる様連絡せしめ入つて来た車にドラム鑵を積ませ居りました… …Cの行動は……Cは私達の後から来て表門附近に待つて居たのでありますが守衛 室に入り憲兵と共に守衛を縛つて居りましたと記載あるを看る然れども其前段に於 てはCは守衛室に入らず他に待ち合せ居たるか故に憲兵かCに車を工場内に入れる 様連絡したることを述へ後段に於てはCは守衛室に入り憲兵と共に行動したる旨を 述へ此相反する事実は何れか信なるかを判断すること能はす是れを被告人Cに拘る 第一審第一回公判調書の記載に徴するに(記録第二三一頁)工場内に於けるE、憲 兵の様子はとの問に対し私は工場の内の処に居たので様子は知りませむか守衛室に 電灯が灯いて居た様子でしたか内部の様子は知らぬドラム鑵積込の状況も暗かつた ので判りませんでしたとありてEの前段に供述する事実と一致しCか守衛室に這入 らざりし事を推測するに足る可く同人の後段の供述は信を措く能はさるなり尤も証 - 3 - 拠の証明力は判事の自由なる判断に任す可きものなりと雖も此は常識豊かなる判事 の条理上妥当とする判断に任す可きことを定めたるものにして相矛盾する文字の何 れを採択するかの場合には宜しく其判断の資料を広く記録中に索めさる可からす然 るに斯る配慮なく相被告人Eの供述として云々と記載あるによりと謂ふが如きは未 だ充分ならす採証の法則を誤りたりと謂ふ可し更に強盗被害始末書なるものを点検 するに職工Gの被害始末書には当時の状況を記載しあれども被告人の何人が如何な る行動を為したりやを明かにせず腕時計を何 きは未 だ充分ならす採証の法則を誤りたりと謂ふ可し更に強盗被害始末書なるものを点検 するに職工Gの被害始末書には当時の状況を記載しあれども被告人の何人が如何な る行動を為したりやを明かにせず腕時計を何人に強奪せられたるかを記載せす却つ て後に調へたる処腕時計が紛失せるが故に其折の被害なりと述へたる部分ありて本 書を以てCが強奪したりとの証拠とならす又Fの強盗被害始末書は其資格を明かに せす桐油十七本が株式会杜の損害なる旨を記載したるは可なりと雖も他の文言は凡 て前記Gの情況記載と同一にして自ら体験せさる被害状況を自ら体験したるかの如 く伝聞事実を記録したるものにして斯くの如きは証憑とするに足らす実に架空の文 字と見る可きものなり以上説明したるが如く被告人Cに対する関係に於て原審は単 に証拠の票目を列挙して是を唯一の証明をするものなれども其価値に至りては各項 目に付検討したるが如く証拠としては薄弱にして殊に強盗罪の如く暴行脅迫の手段 を用ひたることが犯罪構成の要件たる以上単に強奪したりと謂ふのみては未た罪と なる可き事実の記載ありと謂ふを得さる可く斯る証拠説明は刑事訴訟法第三百六十 条に反するものにして原判決は破棄さる可きものと信ず」 同第二点は「原判決は証拠に依らす罪を断したるの違法あり 原判決を閲するに被告人三名は……J商会第二工場において夜警G等にピストル を突き付け同人等を縛るなど暴行脅迫を加えてその反抗を抑圧しG所有の腕時計一 個及び右会社所有の桐油ドラム鑵入十七本を奪ひ取つたものあると認定被告人Cを 懲役五年被告人Oを懲役四年に処する旨の判決を為したり仍つて被告人等の犯行を 記録により調査するに原判決の援用したる証拠は (一) 司法警察官の聴取書 - 4 - (二) 原審第一回公判調書中原審相被告人D、同Eの供述 (三) F、Gの被 害始末書なるを以て順次之 等の犯行を 記録により調査するに原判決の援用したる証拠は (一) 司法警察官の聴取書 - 4 - (二) 原審第一回公判調書中原審相被告人D、同Eの供述 (三) F、Gの被 害始末書なるを以て順次之を点検したるに昭和二十一年十二月十一日Cに対する聴 取書(記録第九一頁以下)によれば其第五項中昭和二十一年十一月一三日午後七時 半頃J商会に於て桐油入ドラム鑵十七本を強奪したことに就て申上ますと記載ある 外腕時計一個を奪取したりとの記載を見ず次に原審相被告人D、Eの原審第一回公 判調書(記録第二一五頁及同二三四頁)を披見するもCか腕時計を奪取したるの記 載あるなし尤も被告人Cに対する原審第一回公判調書(二三一頁)中には……Gと 其家族を脅し腕時計一個同工場所有桐油ドラム鑵入十七本を強奪した事実は什うか、 其通り相違ありませぬ、其顛末は……私は工場の内の処に居たので様子は判りませ んが守衛室に電灯が灯いて居た様でしたか内部の様子は知らす云々(原審判決の証 拠に援用する処にあらす)との記載あるを以て之を仔細に分析読了すれば被告人は 桐油を奪ひ取つたかと謂ふ問に対する答として其通り相違なしと述へたることを感 知するを得へしと雖も腕時計を奪取した点に思ひを致し居らさることは前後の問答 より当然に推測し得る結論なり況んや他の被告人の供述及被害者の始末書を見れは 時計は守衛室にありしものゝ如く被告人は工場の門の処に居り室内の様子を知らす と述べ居るに於ておや若し夫れ原審裁判官かCに対し腕時計奪取の嫌疑を有せしな らむには此点を曖昧に附するの理由なく証拠により追及すへきなり然るに此事なく 其顛末は如何との問の外何等腕時計に触るゝなきは畢竟Cに其犯行なかりしことを 物語るものと謂ふへし最後に被害者の始末書なれども同始末書に於ては腕時計を何 者にか持ち去られたりとの事実を述へたりと雖も之を被告人 は如何との問の外何等腕時計に触るゝなきは畢竟Cに其犯行なかりしことを 物語るものと謂ふへし最後に被害者の始末書なれども同始末書に於ては腕時計を何 者にか持ち去られたりとの事実を述へたりと雖も之を被告人Cか盗取したりとの記 載あるなし以上原審の断罪資料たる三個の証拠を以つてしてはCが腕時計を奪取し たるの事実を認定するには不充分なり、即ち原判決は証拠不充分なるに有罪の判決 を為し若くは審理を尽さざるの違法ありと信す」というにある。 しかし原判決はその挙示する証拠を綜合して上告人は第一審相被告人E外数名と - 5 - 共謀して原判示の強盗行為をした事実を確定したものであるから上告人において自 身で直接に原判示の暴行脅迫を為し又は腕時計を奪取したる事実なしとするも他の 共犯者においてこれをしたる事実がある以上強盗の正犯として責任を負わなければ ならない。そして原判示の挙示する証拠に依れば他の共犯者により右の行為が行わ れたことを認定するに充分であるから原判決には毫も所論の如き違法の点なく論旨 はいづれも理由がない。 同第三点は「被告人Cの身上調査書を閲するに昭和十四年十月(十七才)朝鮮よ り大阪に来り自動車運転手となり本年二十六才又被告人Oも昭和十四年二月渡日昭 和十八年十月以来貨物自動車の助手として大阪に於て勤労し最近の収入は月額干五 百円乃至二千円なる処之を以て家族を扶養し来りたるもインフレの激化に伴ひ生活 の不如意を来したると敗戦後の人心悪化の激流に抗する能はざる意思の薄弱に基く 犯行たることは一見明瞭なり飜つて被告人等の犯行前の素行は之を詳にする能はす と雖も前科を有せす正業に従事したるの事実よりすれは性格的の悪人にあらさるこ とを推知することを得へく斯る邪道に陥りたることは一半は社会風教の頽廃に其因 を有すると謂ふも過言にあらさる可し。他面現下の社会情勢は真に憂ふ可 正業に従事したるの事実よりすれは性格的の悪人にあらさるこ とを推知することを得へく斯る邪道に陥りたることは一半は社会風教の頽廃に其因 を有すると謂ふも過言にあらさる可し。他面現下の社会情勢は真に憂ふ可き頂点に 達しつゝあり集団の威力を示しトラツクを乗付けて財物を強奪するか如きは許す可 からさる罪悪なること疑ふの余地なく原審が断乎処分したるは相当なりと信す然れ ども既に其罪は過去一ケ年前後の拘禁によりて被告人等は十二分に苦杯を嘗め懲戒 せられ今や善良なる人間として決意を新たに或は故郷に帰りて活路を開拓せむとす るものなるのみならずCは病気静養中にして其心情憐れむ可きものあり今ぞ法の威 力を示す可きは示し他面温情を以つて救出すへきは救出するに於てこそ刑法の威力 尊厳を発揮するに足る可しと思料す斯くの如きは刑事訴訟法の規定する上告適法の 理由にありされども所詮法律は吾等人類の生活規範を策定したるものに過きされは 形式論理の外に真理の発見に努力すへきことは人類に課せられたる永遠の使命なる - 6 - を想ひ敢て被告人心境の一端を想像し上告の趣意と為さむと欲するものなり」とい ふにある しかし所論は結局原審の量刑不当を攻撃するものであるが日本国憲法の施行に伴 う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律第十三条第二項の規定により量刑不当をも つて上告の理由とすることは許されないのであるから論旨は理由なきものである。 以上の理由により本件上告は理由がないから刑事訴訟法第四百四十六条により主 文の如く判決する。 この判決は裁判官全員一致の意見である。 検察官福尾彌太郎関与 昭和二十三年三月十三日 最高裁判所第二小法廷 裁判長裁判官 塚 崎 直 義 裁判官 霜 山 精 一 裁 月十三日 最高裁判所第二小法廷 裁判長裁判官 塚 崎 直 義 裁判官 霜 山 精 一 裁判官 小 谷 勝 重 裁判官 藤 田 八 郎 - 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