平成14(ネ)3160

裁判年月日・裁判所
平成15年1月23日 東京高等裁判所
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判決文本文5,061 文字)

平成14年(ネ)第3160号特許権侵害差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成11年(ワ)第25030号)平成14年12月19日口頭弁論終結判決控訴人(一審原告)  株式会社マーク・テック訴訟代理人弁護士小南明也被控訴人(一審被告) 株式会社安川電機訴訟代理人弁護士松尾和子、富岡英次補佐人弁理士大塚文昭、竹内英人 主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は、控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴人の求めた裁判 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、原判決別紙物件目録記載の省エネ制御搭載形インバータを製造し、販売し、若しくは販売の申出をしてはならない。 3 被控訴人は、その占有する上記装置を廃棄せよ。 4 被控訴人は、控訴人に対し、金5000万円及びこれに対する平成11年11月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。 との判決並びに仮執行の宣言。 第2 事案の概要 1 本件は、控訴人が被控訴人に対し、原判決別紙物件目録記載の省エネ制御搭載形インバータ(被控訴人装置)を製造するなどの被控訴人の行為が控訴人の有する特許権(本件特許権)を侵害するとして、製造等の差止め等と損害賠償の支払いを求めた事案である。原判決は、控訴人の請求をいずれも棄却し、これを不服として控訴人から本件控訴がされた。 本件において前提となる事実、争点及び当事者の主張は、次の2及び3のとおり当審における当事者の主張の要点を付加するほかは、原判決の事実及び理由「第2事案の概要」のとおりであるから、これを引用する。 2 控訴人の主張(控 、争点及び当事者の主張は、次の2及び3のとおり当審における当事者の主張の要点を付加するほかは、原判決の事実及び理由「第2事案の概要」のとおりであるから、これを引用する。 2 控訴人の主張(控訴理由)の要点(1)本件発明の最大の特徴部分は、電動機の「現在の負荷状態(負荷トルク)に対応するデータ」としての電流実効値と、「最大負荷トルクに対応するデータ」としてのコイル電流値の比率を求めて、その求めた比率に応じたデータに応じて電動機への供給電圧を制御する制御手段を有する点にある。すなわち、この「比率判別手段」が本件発明の本質的部分である。 被控訴人装置においては、「電流実効値」それ自体は検出していないが、現在の負荷状態を示すデータとして「有効電力P」を検出している。この有効電力Pと電流実効値との間には、有効電力P(実効値)=√3×電流実効値×電圧実効値×力率との算式で示される関係があり、有効電力Pは電流実効値をその算式の中に含むものであるから、「有効電力P」と「電流実効値」とは、電動機の現在の負荷状態を表すデータとして機能的に同一のものである。したがって、「有効電力P」を求めている被控訴人装置は、実質的に、本件発明における「電流実効値」を求めているものに他ならない。電流実効値を検出する手段を有効電力(実効値)を検出する手段に置き換えることは、技術的に容易で、設計事項の範囲内のことにすぎない。 したがって、被控訴人装置は、「電動機に供給される電流の実効値を検出する電流検出手段」との本件発明の構成要件Aを充足する。 仮にそうでないとしても、被控訴人装置は、本件発明と同じ原理を用いているものであり、電流(実効値)を検出することも有効電力を求めることも電動機の負荷を検出する手段としては技術的に同等で、両者は置換が容易であるから、被控 も、被控訴人装置は、本件発明と同じ原理を用いているものであり、電流(実効値)を検出することも有効電力を求めることも電動機の負荷を検出する手段としては技術的に同等で、両者は置換が容易であるから、被控訴人装置は本件発明の均等の範囲内にある。 (2) 被控訴人装置においても、あらかじめモータ特性を決定し、さらに被控訴人装置に記憶されているV/Fパターン(インバータ出力周波数Fに対する出力電圧Vの比率)を選択し、それにf1*(目標周波数)を入力しなければ、V*(出力電圧指令)も導かれない。換言すれば、被控訴人装置においては、省エネ制御プログラムを作動させるまでに必ず前記の手続によりf1* を入力することで、V*がデータとして乗算器10に読み込まれるのであるから、これらは「予め記憶され」ることに相当する。そして、被控訴人装置に記憶されている式(1)(原判決別紙物件目録参照)V*opt=K×(P)1/2×(f1* )1/3(V*opt は、最適電圧指令、Kは、モーター毎に決まる定数)によれば、V*=K×(P100%)1/2×(f1*)1/3 ・・・①式(P100%は、最大負荷トルク時における有効電力値)となり、これを変形すれば、P100%=[V*/{K×(f1*)1/3}] 2  ・・・②式となり、P100%(最大負荷トルク時における有効電力値)は、これらのV*、K、f1*の値によって上記②式で計算することができるから、被控訴人装置では、実質的に100%負荷(最大負荷トルク)時における電動機の有効電力値を記憶させているということができる。 本件発明において「電動機のコイル電流値を予め記憶」しておくのは、比率判別の手段とし では、実質的に100%負荷(最大負荷トルク)時における電動機の有効電力値を記憶させているということができる。 本件発明において「電動機のコイル電流値を予め記憶」しておくのは、比率判別の手段として必要であるからにすぎない。 比率判別の前提として必要なデータの形式は、後に計算で数値を導くことができる場合も含むものであるから、被控訴人装置は、「電動機の最大負荷トルクに対応する電動機のコイル電流値が予め記憶され」るとの本件発明の構成要件Bを充足する。 (3)被控訴人装置における(1)式及び前記①、②式並びに常識から判断すれば、被控訴人装置において、有効電力Pの比率を求め、その求めた比率に応じたデータを出力する判別手段を採用していることは明らかである。そして、有効電力Pの比率を求めることは電流実効値の比率を求めることと技術的には同じことであるから、被控訴人装置は「前記記憶手段に記憶されているコイル電流値に対する、前記電流検出手段が検出した電流の実効値の比率を求め、該求めた比率に応じたデータを出力する比率判別手段」との本件発明の構成要件Cを充足する。 3 被控訴人の主張の要点(1)本件発明の本質的特徴についての控訴人の主張は失当である。控訴人は、本件発明の出願過程で、引用された公知例と本件発明とを区別して、本件発明は、電流実効値を検出することが特徴であり、これにより構成を極めて簡略化できると主張している。すなわち、電流の実効値を検出し、これに基づいて電動機への供給電圧を制御するようにした構成こそが本件発明の特徴である。 これに対し、被控訴人装置は、瞬時電流値と瞬時電圧指令値とを乗じて有効電力値を求め、当該有効電力値から演算により出力すべき電圧値を決定しており、電力値の演算中に「電流実効値」を使用することは全くない。 控訴人は 控訴人装置は、瞬時電流値と瞬時電圧指令値とを乗じて有効電力値を求め、当該有効電力値から演算により出力すべき電圧値を決定しており、電力値の演算中に「電流実効値」を使用することは全くない。 控訴人は、本件発明の構成要件Aに関して、「電流実効値」を検出することも「有効電力P」を検出することも技術的には同義であると主張するが、そのどちらを使用するかで発電機の負荷状態を推定する精度、性能、検出手段としての構成・方法、検出結果の用い方や最適電圧の算出方法が異なり、作用効果も異なるから、両者は技術思想として全く異なる。「電流実効値」を検出するか「有効電力P」を検出するかの差は「単なる設計事項」といえる範囲内のことではないし、均等ともいえない。 (2)本件発明の構成要件B及び構成要件Cの充足性についての控訴人の主張も失当である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、控訴人の請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は、以下のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは、原判決の事実及び理由「第3 争点に対する判断」に説示されているとおりであるから、これを引用する。 (1)控訴人は、本件発明の構成要件A「電動機に供給される電流の実効値を検出する電流検出手段」に関して、「有効電力P(実効値)」と「電流の実効値」との間には、次の式有効電力P(実効値)=√3×電流実効値×電圧実効値×力率で表される関係が成り立つことを理由に、電動機の現在の負荷状態を表すデータとしては「有効電圧P」も「電流実効値」も機能的に同一のものであり、そのどちらを検出して電動機への供給電圧を制御することも技術的には同義である旨主張する。 しかし、上記式において、「有効電力P」は、「電流実効値」の他に、「電圧実効値」と「力率」の要素が複合して初めて定 らを検出して電動機への供給電圧を制御することも技術的には同義である旨主張する。 しかし、上記式において、「有効電力P」は、「電流実効値」の他に、「電圧実効値」と「力率」の要素が複合して初めて定まるものであって、これらが決まらなければ有効電力Pも定まらないから、有効電力Pと電流実効値との間に上記の式で表される関係があっても、「有効電力P」と「電流実効値」とが機能的ないし実質的に同一であるということはできない。電流の実効値を検出し、これに基づいて得られた電動機の負荷状態に関する情報から電動機に供給する電圧を決定する構成(本件発明)と、瞬時電圧と瞬時電流との積として求めた有効電力Pに基づいて電動機に供給する電圧を指令する構成(被控訴人装置)とは、明らかに異なるものというべきである。 (2)のみならず、電動機の負荷状態に応じて電動機への供給電圧を変化させることにより電力節減を図るという技術思想は、本件特許出願当時、既に公知であったことが認められるところ(争いがない。)、本件明細書の発明の詳細な説明欄には、「この発明によれば、負荷力率等の複雑な計算を必要とせず、単に電流値から負荷トルクを推定し、この推定結果に基づいて電動機へ印加する電圧を制御するようにしたもので、従来の装置に比較し、回路構成が簡単であり、」(本件明細書3頁左欄4ないし8行目)と記載され、また、本件特許出願の審査過程で出願人(控訴人)が拒絶理由通知に対して提出した意見書(平成4年12月18日付け、乙1)においても「本願は、電流検出手段が電動機へ供給される電流の実効値を検出することを特徴としている。電流の実効値の検出はきわめて簡単な構成で為し得るため、本願発明は、引例と比較して構成を極めて簡略化できるという格別の効果を呈する。」との主張がなされていたことが認められる。 本件 特徴としている。電流の実効値の検出はきわめて簡単な構成で為し得るため、本願発明は、引例と比較して構成を極めて簡略化できるという格別の効果を呈する。」との主張がなされていたことが認められる。 本件明細書の上記記載及び上記出願経過に照らすと、本件発明は、電動機の現在の負荷状態を、検出した電流値に基づいて推定し、これに基づいて電動機への供給電圧を制御する点に特徴を有するものと認められる。してみれば、電流値を検出しておらず、電動機への供給電圧の制御に検出した電流値を用いていない被控訴人装置は、本件発明とは異なる技術思想に基づくものと認めざるを得ず、被控訴人装置を本件発明と均等のものということはできない。 (3)したがって、控訴人の当審におけるその余の主張について判断するまでもなく、被控訴人装置を製造するなどの被控訴人の行為が本件特許権を侵害するということはできない。 2 以上のとおり、控訴人の本訴請求はいずれも理由がないから、これを全部棄却した原判決は正当であり、本件控訴は理由がない。よって、本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第18民事部 裁判官古城春実裁判官田中昌利裁判長裁判官永井紀昭は、転補につき、署名押印することができない。 裁判官古城春実

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