令和4(ワ)110 国家賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年10月22日 甲府地方裁判所
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判決文本文32,321 文字)

主文 1 被告は、原告Aに対し、2892万8768円及びこれに対する令和2年1月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告Bに対し、2892万8768円及びこれに対する令和2年1月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、これを10分し、その3を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。 5 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告は、原告Aに対し、4003万5000円及びこれに対する令和2年1月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告Bに対し、4003万5000円及びこれに対する令和2年1月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等本件は、被告に勤務していたCの相続人である原告らが、被告に対し、Cは、被告の注意義務違反により、長時間勤務を強いられた結果、精神障害を発症して自殺に至ったなどと主張して、主位的には国家賠償法1条に基づき、予備的には債務不履行(民法415条)に基づいて、それぞれ損害賠償金4003万 5000円及びこれに対する死亡日である令和2年1月17日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1)当事者等 ア Cは、●年●月●日に出生し、平成●年3月に大学を卒業した後、平 当事者間に争いがない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1)当事者等 ア Cは、●年●月●日に出生し、平成●年3月に大学を卒業した後、平成●年4月に被告の職員として任用され、以後、被告において勤務していたが、令和2年1月17日午前5時頃、被告の市役所庁舎6階から投身自殺した(以下、この自殺を「本件自殺」という。甲2、8〔263頁〕)。 イ原告Aは、Cの父であり、原告Bは、Cの母であって、原告らは、Cの 権利義務をそれぞれ2分の1の割合で相続した(争いがない、甲8〔452ないし457頁〕)。 (2)Cの勤務状況ア Cは、平成31年4月1日、被告の総務部行政管理室事務効率課(以下「事務効率課」という。)に配属された。事務効率課は、事務改善による事 務の効率化やコストの削減を図るとともに、適正な組織整備、事務事業の執行体制及び職員配置の在り方等を踏まえた定員の適正管理を行うことを目的として、行政改革課と人事課の一部の業務分掌に内部統制を加え、平成31年度に新設された部署であった。 (甲8〔258、434、435頁〕、乙33〔2頁〕) イ事務効率課には、組織係と事務効率係が置かれ、Cの役職は、組織係の係長であったところ、平成31年度当時、事務効率課には、D課長、組織係のE係長及びC並びに事務効率係のF係長の合計4名が在籍していた(甲1〔6頁〕、8〔256、258、434、435頁〕、乙13、52、53)。 ウ Cの所定勤務時間は、平日午前8時30分から午後5時15分まで(うち休憩時間は、正午から午後1時まで)の1日当たり7時間45分であった(甲1〔6頁〕、8〔434頁〕、乙20)。 被告においては、平成31 は、平日午前8時30分から午後5時15分まで(うち休憩時間は、正午から午後1時まで)の1日当たり7時間45分であった(甲1〔6頁〕、8〔434頁〕、乙20)。 被告においては、平成31年度当時、管理職の勤務時間は各人に貸与された被告の業務用パソコン(以下、単に「パソコン」という。)の稼働時間 により把握されていたが、管理職以外の職員の勤務時間は、パソコンの稼 働時間によっては把握されておらず、これらの職員が、所定勤務時間を超えて勤務するときは、超過勤務命令簿に所要事項を記入し、任命権者又はその委任を受けた者(事務効率課においては、平成31年度当時はD課長)に提出し、命令を受けなければならないとされていた(甲3、19、乙4、25、証人G16、17頁)。 エ平成31年4月から本件自殺の前日である令和2年1月16日までの各月の所定勤務時間外にCのパソコンが稼働していた時間は、別表1の「パソコン稼働時間」欄記載のとおりであった(甲8〔445、446頁〕)。 また、Cは、職員採用試験の業務のため、令和元年9月22日(日)午前8時から午後3時45分まで、及び同年11月2日(土)午前8時30分 から午後0時30分までの間、市役所庁舎外で勤務した(甲8〔478、481頁〕)。他方、Cが超過勤務命令簿に記入していた所定時間外勤務時間は、別表1の「申告時間数」欄記載のとおりであった(甲3、8〔470ないし482頁〕)。 2 関係法令等 (1)労働安全衛生法(以下「安衛法」という。)ア 66条の8第1項事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第1項に規定する者及び第66条の8の4第1項に規定する者を除く。以下こ 項事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第1項に規定する者及び第66条の8の4第1項に規定する者を除く。以下この条におい て同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。 イ 66条の8の3事業者は、第66条の8第1項又は前条第1項の規定による面接指導を 実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第1項に 規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。 (2)労働安全衛生規則ア 52条の7の3第1項法第66条の8の3の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客 観的な方法その他の適切な方法とする。 イ 52条の2第1項本文法第66条の8第1項の厚生労働省令で定める要件は、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者であること とする。 ウ 52条の2第3項事業者は、第1項の超えた時間の算定を行つたときは、速やかに、同項の超えた時間が1月当たり80時間を超えた労働者に対し、当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報を通知しなければならない。 (3)労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日付け基発0120第3号)(甲4)(以下「本件ガイドライン」という。) らない。 (3)労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日付け基発0120第3号)(甲4)(以下「本件ガイドライン」という。)厚生労働省労働基準局長は、本件ガイドラインにおいて、使用者に労働時間を適正に把握すべき責務があることを確認したうえ、始業・終業時間の確 認及び記録は、使用者が自ら現認するか、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認、記録することを原則とするとし、自己申告により行わざるを得ない例外的な場合には、労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと、実際に労働時間を管理する者に対して、 自己申告制の適正な運用を含め、本件ガイドラインに従い講ずべき措置につ いて十分な説明を行うこと、自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて必要に応じて実態調査を実施すること、特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間のわかるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生 じているときは、実態調査を実施すること、自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じないことを求めている。 (4)労働時間の適正把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン について(通知)(平成29年2月8日付け総行公第19号)(甲5)総務省自治行政局公務員部公務員課長は、上 る。 (4)労働時間の適正把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン について(通知)(平成29年2月8日付け総行公第19号)(甲5)総務省自治行政局公務員部公務員課長は、上記通達において、地方公共団体においても、本件ガイドラインに基づき適切に対応すること、都道府県において市区町村等に通知することを求めている。 3 争点に関する当事者の主張 (1)被告の責任の有無(争点1)について(原告らの主張)ア使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相 当であり、使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の右注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきであるところ(最高裁平成10年(オ)第217号、同218号同12年3月24日第二小法廷判決・民集54巻3号1155頁)、被告が、Cら職員の心身の健康に対する安全配慮義務を履行するに当たっては、長時間勤 務の有無を適正に把握することがその前提の義務となり、安衛法及び本件 ガイドラインによれば、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な出退勤の記録により勤務時間を適正に把握することが求められているというべきである。 イ(ア)本件自殺前のCの週40時間を超える時間外勤務時間(以下、単に「時間外勤務時間」という。)は、少なくとも別表2の「時間数」欄記 載のとおりであり、特に、繁忙期である令和元年5月から同年7月上旬まで及び同年11月中旬から同年12月末までのうち、同年5月22日から同年6月20日までは207時間23分、同月 「時間数」欄記 載のとおりであり、特に、繁忙期である令和元年5月から同年7月上旬まで及び同年11月中旬から同年12月末までのうち、同年5月22日から同年6月20日までは207時間23分、同月21日から同年7月20日までは107時間27分、同年11月18日から同年12月17日までは209時間30分及び同月18日から令和2年1月 16日までは148時間22分と、極度の長時間勤務が生じている。 また、①令和元年5月19日(日)から同年7月5日(金)までの48日間及び②同年11月18日(月)から同年12月27日(金)までの40日間については休日のない連続勤務が続き、そのほとんどの日において深夜時間帯に及ぶ長時間勤務となっており、本件自殺に近 い②の期間については16日間が翌日の時間帯に至るまでの勤務となっている。さらに、勤務間インターバルについても、本件自殺前のほとんどの勤務日において11時間を下回っており、繁忙期や本件自殺前においては、多くの日で5ないし9時間という生理的限界を超えた時間数となっている。これらの事実によれば、Cの担当する業務は量 的に極めて過重なものであったというべきである。 (イ)また、事務効率課組織係は、係長という立場でありながら、被告の幹部職員に対して交渉等を行うことを業務とする特別な部署であって、特に、令和2年度は、5年に一度の国勢調査が予定されていた年であり、国勢調査を担当する総務部総務課からは職員の増員についての強 い要求がされることが予測されていたところ、Cは、令和2年度に向 けて、自ら主体として各部局と交渉することの重圧による不安感を生じており、Cの担当する業務は質的にも過重なものであったというべきである。 ウそうしたところ、被告は、Cら職員の勤務時間 けて、自ら主体として各部局と交渉することの重圧による不安感を生じており、Cの担当する業務は質的にも過重なものであったというべきである。 ウそうしたところ、被告は、Cら職員の勤務時間について、タイムカード、ICカード及びパソコンのログ等によることなく、自己申告による超過勤 務命令簿による管理しか行っていなかった上、超過勤務命令簿による申告時間数と実際の在庁時間との間に齟齬があることを認識していた。 エ D課長は、Cの所属する事務効率課組織係の所属長として、Cに対し業務上の指揮監督を行う権限を有していたところ、前記の各事実によれば、D課長は、Cの勤務時間を適正に把握すべき義務を怠ったというべきであ る。 また、被告代表者市長は、被告の職員全体についての勤務時間管理の責任者であり、Cの自殺当時、被告の総務部部長であったH部長は、被告代表者市長から上記の勤務時間管理の業務の分掌を受けていたところ、前記の各事実によれば、被告代表者市長及びH部長は、被告の職員の勤務時間 を適正に把握することのできる体制を構築すべき義務を怠ったというべきである。 よって、被告は、主位的には国家賠償法1条に基づき、予備的には債務不履行(民法415条)に基づいて、損害賠償責任を負う。 (被告の主張) ア(ア)Cは、平成30年度や令和2年度以降、職員1名が担っていた業務を、E係長と2名で分担して担当していたのであり、その客観的な業務量は他の年度と比較して明らかに少なかった上、平成31年度以前から同様の業務を担当していたE係長から、一つ一つの業務について丁寧な引継ぎを受けており、不明点があればすぐにE係長へ確認する ことができるといった手厚い支援体制の下で業務を行っていたことな どか を担当していたE係長から、一つ一つの業務について丁寧な引継ぎを受けており、不明点があればすぐにE係長へ確認する ことができるといった手厚い支援体制の下で業務を行っていたことな どからすれば、Cが担当していた業務は毎日遅くまで超過勤務を要するほど量的に過重なものではなかったというべきである。 原告らは、Cの時間外勤務時間は、少なくとも別表2の「時間数」欄記載のとおりであると主張するが、①上記のとおり、Cが担当していた業務は量的に過重なものではなかったこと、②Cの後任であるI 課長補佐及びその後任であるJ係長は、異動当初から1名体制であり、いずれも、Cが担当していた業務のほか、E係長が担当していた業務も併せて全て一人で対応していた上、新型コロナウイルス感染症の対応も求められ、両名の業務量は、Cの担当した業務量と比較して明らかに多かったが、両名の在庁時間は、Cの在庁時間よりも明らかに短 い状況であったこと、③Cは、所定勤務時間外に、パソコンを使用して、電気シェーバーや芸能人の名前、自動車、スポーツ関連のウェブページを検索したり、政治的オピニオンを述べているウェブページやニュースのページをネットサーフィンしたりするなど、業務に関連のないウェブページを検索していたほか、④所定勤務時間外に在庁して いる間、私用で同僚と雑談するために頻繁に離席し、また、退庁するまでの間に度々たばこ休憩や夕食等のために庁舎から外出するなどしていたことなどからすれば、Cの所定勤務時間外の在庁時間には、業務に関係のない時間が多く含まれていたというべきである。 (イ)また、Cの担当していた業務は、毎年行われる定型的な内容であっ たこと、その業務の内容は、配置する職員の定員を設定する業務であって、設定された定 含まれていたというべきである。 (イ)また、Cの担当していた業務は、毎年行われる定型的な内容であっ たこと、その業務の内容は、配置する職員の定員を設定する業務であって、設定された定員に対して具体的にどの職員を配置するかを検討するといった業務は含まれていなかったのであるから、個別の職員を思い浮かべながらその立場を懸念するようなことは想定されず、人員の削減等に伴う精神的な負担等が生ずるものではなかったこと、Cの 人事評価は、標準的なB評価であり、担当業務の内容がCの能力を超 えるものではなかったこと、Cは上記のとおり手厚い支援体制の下で業務を行っていた上、事務効率課組織係内の人間関係、特に、CとE係長の人間関係は良好であったことなどからすれば、Cの業務は質的に過剰なものでもなかった。 (ウ)以上によれば、本件は、長時間労働等の過重な業務があった事案で はなく、被告において、Cの精神障害の発症及び自死を具体的に予見することは不可能であったことからすれば、被告のCに対する安全配慮義務違反はない。 イその点を措くとしても、D課長は、目の届く範囲でCの勤務状況を把握していたこと、E係長は、Cがその時々に行っている業務の具体的な内容、 業務量及び進捗状況等を把握した上で、常に自分の退勤後に1、2時間程度作業すれば業務が終わるという状態になってから退勤するようにしており、Cが所定勤務時間外に在庁しようとするときは、Cに「帰ろう」など言って帰宅を促すこともあったこと、D課長は、超過勤務命令簿を適切に記載しない傾向のあるCに対し、超過勤務命令簿に適切な時間を記載する ように複数回指導を行っていたこと、Cが令和元年12月にCが深夜に在庁している事実を認識した後は、Cに対し、在庁理由を尋ねた上、残業が多 のあるCに対し、超過勤務命令簿に適切な時間を記載する ように複数回指導を行っていたこと、Cが令和元年12月にCが深夜に在庁している事実を認識した後は、Cに対し、在庁理由を尋ねた上、残業が多いのであれば手分けをしようなどと申し向けたほか、以後、毎日、Cに退庁時間を確認するとともに、遅くまで残るのであれば事前に申告してほしいと繰り返し指示していたことなどからすれば、被告はCに対する安全 配慮義務を履行していたというべきである。 (2)因果関係の有無(争点2)について(原告らの主張)Cは、前記(1)のとおりの常軌を逸した過重な長時間にわたる連続勤務により、令和2年の年明け頃には何らかの精神疾患を発症し、正常な認識や 行為選択能力が著しく阻害された状態の下で、本件自殺に至ったというべき であり、被告による前記(1)の義務違反と本件自殺との間には因果関係がある。 (被告の主張)Cが精神疾患を発症していたとする客観的な証拠はない。また、Cは、E係長などと具体的に自身の恋愛に関する話をするほど、職場の人間関係や環 境が良好であった一方、交際を意識していた女性がおり、令和2年1月12日に交際の申入れをしたものの、その時に返事はもらえなかったといったこともあったことからすれば、被告によるCの勤務時間の適正把握義務違反と本件自殺との間に因果関係は認められない。 (3)損害の額(争点3)について (原告らの主張)ア Cに生じた損害(ア)死亡による逸失利益 6727万7000円a 就労可能年数Cは死亡時42歳であり、大卒の被告職員として長時間勤務に恒 常的に従事してきたことを考慮すると、就労可能な67歳までの25年間(ライプニッツ係数14.094) 000円a 就労可能年数Cは死亡時42歳であり、大卒の被告職員として長時間勤務に恒 常的に従事してきたことを考慮すると、就労可能な67歳までの25年間(ライプニッツ係数14.094)は就労可能であったというべきである。 b 基礎年収Cの給料、住居手当、通勤手当及び地域手当は、平成31年1月 分から同年3月分までが1か月当たり合計38万1390円、同年4月分から令和元年12月分までが1か月当たり合計38万9552円、時間外手当の1時間単価は、平成31年1月分から同年4月分までが2787円、同年5月分から令和元年12月分までが2900円、令和元年6月及び同年12月に支給された期末・勤勉手 当が各88万0002円であるところ、Cの本件自殺前の長時間勤 務の実態を踏まえれば、少なくとも月45時間の時間外手当を加算した額を基礎年収額とするのが相当である。したがって、基礎年収は、795万5802円とすべきである。 (計算式){38万1390円+(2787円×45時間)}×3か月+{3 8万9552円+(2787円×45時間)}×1か月+{38万9552円+(2900円×45時間)}×8か月+88万0002円×2回=795万5802円c 生活費控除生活費控除は4割が相当である。 d 計算式795万5802円×14.094×(1-0.4)=6727万7000円(イ)死亡による慰謝料 3000万円Cは被告の重大な注意義務違反によりその生命を失ったものであ り、少なくも上記金額が相当である。 (ウ)損益相殺 2840万7000円(控除)原告らは、遺族補償一時金として、合 00万円Cは被告の重大な注意義務違反によりその生命を失ったものであ り、少なくも上記金額が相当である。 (ウ)損益相殺 2840万7000円(控除)原告らは、遺族補償一時金として、合計2840万7000円(各1420万3500円)の支給を受けている。 (エ)小計 6887万円 (オ)原告らによる相続分各3443万5000円イ原告らに生じた損害(ア)固有の慰謝料各200万円(イ)なお、原告Aは、葬祭料150万円を負担したが、葬祭補償として、同額を上回る170万4420円の支給を受けており、上記の葬祭料 については、全額填補されている。 ウ弁護士費用各360万円エ合計各4003万5000円(被告の主張)否認する。 (4)過失相殺の可否(争点4)について (被告の主張)Cは、時間外勤務の前提となる時間外勤務命令がない中で時間外勤務を行っていた。また、Cは、監督職である係長として、勤務時間を管理すべき立場にあった。さらに、Cは、E係長やその他の同僚から「一緒に帰ろう。」と声を掛けられても自発的に在庁していた上、その深夜にわたる時間外勤務が 発覚した令和元年12月6日、D課長から、遅くまで残るのであれば事前に申告して欲しいと言われるとともに、同日以降、D課長から、毎日、前日の帰宅時間を尋ねられていたにもかかわらず、一度も事前に申告をせず、また、D課長に対し、「大体、午後8時から午後9時である」との実際の退庁時間と異なる時間を帰宅時間として回答していた。これらの事実は、Cの過失に当 たるというべきであり、仮に、被告に安全配慮義務違反が認められるとしても、過失相殺がされるべきである。 (原告らの主張)業 として回答していた。これらの事実は、Cの過失に当 たるというべきであり、仮に、被告に安全配慮義務違反が認められるとしても、過失相殺がされるべきである。 (原告らの主張)業務の負担が過重であることを原因として労働者の心身に生じた損害の発生又は拡大に当該労働者の性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が寄与し た場合において、当該性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでないときは、当該損害につき使用者が賠償すべき額を決定するに当たり、当該性格等を、民法722条2項の類推適用により右労働者の心因的要因として斟酌することはできない(最高裁平成12年3月24日第二小法廷判決・民集54巻3号1155頁)。 被告が主張する事情は、いずれも、Cの性格に基づく業務遂行の態様に過 ぎず、これを過失相殺に当たり斟酌することはできないというべきである。 (5)損益相殺の可否(争点5)について(被告の主張)原告らは、遺族補償一時金として、各1420万3500円を受給しているほか、遺族特別支給金として各150万円を、遺族特別援護金として各9 30万円を、遺族特別給付金として各205万4795円を、それぞれ受給しており、また、原告Aは、葬祭補償として170万4420円を受給しているところ、これらの金額は、原告らの請求額から控除されるべきである。 (原告らの主張)原告らが受給した遺族補償一時金である各1420万3500円及び原告 Aが受給した葬祭補償170万4420円が損益相殺の対象となることは認め、その余は否認する。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実 Aが受給した葬祭補償170万4420円が損益相殺の対象となることは認め、その余は否認する。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認め られる。 (1)Cの担当していた業務の内容等ア事務効率課組織係の業務の内容等(ア)平成31年度当時の事務効率課組織係の主な業務は、以下のとおりであった(甲8〔167頁〕、乙48の2、証人E4頁、弁論の全趣旨)。 a 正規職員の定員管理各部局に対して、次年度における正規職員の増減員の要否及びその人数について、書面(要求書)による照会を行い、これに対する回答に基づいて、部局ごとの正規職員の配置人数の査定案を作成するとともに、5月から7月上旬にかけて、各部局へのヒアリングの実施、こ れに基づく査定案の修正並びに査定結果についての総務部長、副市長 及び市長への説明等を行い、各部局の次年度における正規職員の配置人数を決定する(甲8〔436頁〕、乙14の1ないし3)。 b 非常勤職員の定員管理次年度の会計年度任用職員(一会計年度内の非常勤職員。なお、地方公務員法の改正によって、令和2年度より、被告の非常勤職員の任 用制度は、「嘱託職員」及び「臨時職員」から、「会計年度任用職員」等に変更されることが予定されていた。)の配置人数の査定案を作成した上、各部局に対し、配置の要否及び人数について、書面(要求書)による照会を行い、11月中旬から12月末にかけて、各部局へのヒアリングの実施、これに基づく査定案の修正及び査定結果についての 総務部長への説明等を行い、各部局の次年度における会計年度任用職員の配置人数を決定するとともに、財政課にこれを報告する(甲8〔4 アリングの実施、これに基づく査定案の修正及び査定結果についての 総務部長への説明等を行い、各部局の次年度における会計年度任用職員の配置人数を決定するとともに、財政課にこれを報告する(甲8〔436、437頁〕、乙15の1ないし4)。 c 組織整備事務の効率化等のために市の組織体制を検討するものであり、他都 市の規則等を参照するなどの調査、検討を経て、2月までに次年度の市の組織機構図を完成させる(甲8〔436頁〕、乙16の1・2、17の1・2)。 d その他(a)定数管理調査及び各種照会への回答 国(総務省)が山梨県を通じて県内の各市町村に対して行う地方公共団体定員管理調査について、4月に集計を行うとともに、6月に行われる山梨県からのヒアリングに対応する(甲8〔437頁〕、乙18の1・2)。 (b)流動措置 イベント等を理由とする所管課からの職員の流動措置(他部局か ら人員を動員すること。以下同じ。)の要請を受けて、部局間の人員配置について調整を行う(甲8〔437頁〕)。 (イ)事務効率課組織係は、例年、正規職員の定員管理業務により、5月から7月上旬までの期間が、非常勤職員の定員管理業務により、11月中旬から12月末までの期間が、それぞれ繁忙期であった(甲8〔439 頁〕)。 (ウ)前記(ア)の業務のうち、特に、職員の定員管理業務については、採用人数や退職者数、再任用者数、昇任者数等の人員を管理するに当たり、誤りなく各部署間の人員の調整を行わなければならず、データ上で人員数の不整合がある場合には、その原因を突き止めることを余儀なくされ るなど、個人差があるとはいえ、慣れるまでは、その遂行に り、誤りなく各部署間の人員の調整を行わなければならず、データ上で人員数の不整合がある場合には、その原因を突き止めることを余儀なくされ るなど、個人差があるとはいえ、慣れるまでは、その遂行に一定の時間を要する業務であった(乙48の1、証人E24ないし27・45頁)。 また、職員の減員を行い、又は増員の要求を認めない場合、事務効率課組織係の係長が、必要に応じて各部局の部長や室長級の幹部職員に対して、交渉を行うこととされており、同係は、係長という立場でありな がら、市の幹部職員に対し交渉を行うことが求められる特殊な部署であった。同係の係長は、上記の交渉に際し、減員又は増員の要求を認めない理由について理解を求めるための説明を行うこととなるが、部局によっては、容易に理解が得られないことがあった。(甲8〔438、439頁〕、証人E27、28頁) E係長は、平成28年度から平成30年度までは、事務効率課組織係の前身である人事課組織係の係長を、平成31年度は、事務効率課組織係の係長をそれぞれ務めており、同係の業務につき豊富な経験を有していたが、そのような立場にあったE係長も、同係の業務に関し、「査定に漏れや間違いはなかったか。」、「査定により、次年度に傷病休暇を取得す る職員や病気休職となる職員が生じる部署はないか。」と、精神的な重圧 を感じることがあった(甲8〔438、439頁〕、乙7、12の8〔6頁〕、乙48の1、証人E26、45頁)。 イ事務効率課組織係の業務を遂行するに当たり必要となる知識等事務効率課組織係において業務を遂行するに当たり、高度な知識や判断が求められることはないが、市役所の組織体制や各部署及び職種ごとの業 務内容等、市役所全体の事務及び事業を理解している必要があった(甲 効率課組織係において業務を遂行するに当たり、高度な知識や判断が求められることはないが、市役所の組織体制や各部署及び職種ごとの業 務内容等、市役所全体の事務及び事業を理解している必要があった(甲8〔438、443頁〕、証人E29、30頁)。 ウ Cの職歴並びにC及びE係長の業務の分担等(ア)Cは、平成14年4月、被告の上下水道局に採用された後、業務部営業課、税務部資産税課、福祉部高齢者支援室介護保険課、市長室広報課、 税務部税務総室総務課へ異動し、平成28年4月には係長に昇任して、福祉保健部福祉保健総室生活福祉課へ異動するとともに、平成31年3月15日まで自治大学校に派遣された後、同年4月1日より、事務効率課組織係に係長として配属された。 事務効率課組織係(その前身である人事課組織係を含む。以下同じ。) には、平成30年度当時、E係長1名のみが在籍していたが、平成31年度には、組織体制の強化のため1名の増員がされ、同係は、CとE係長の2名体制となった。なお、E係長は、令和2年度には、同係から異動することが予定されており、令和2年度の同係は、Cのみの1名体制となることが予定されていた。 (甲8〔168、260、261、435、436頁〕、乙7、証人E2、3頁)(イ)Cは、前年度以前から事務効率課組織係の業務を担当していたE係長からの引継ぎや支援を受けながら、職員の定員管理及び組織整備といった同係の中心的業務を、メインの担当者として担うとともに、地方公共 団体定員管理調査等をはじめとする各種照会への回答や流動措置への 対応といった同係のその他の業務を担当するほか、平成31年度中に自治大学校の職員研修の講師を3度務めた。ただし、職員の定員管理の業務のうち、各部局の幹 する各種照会への回答や流動措置への 対応といった同係のその他の業務を担当するほか、平成31年度中に自治大学校の職員研修の講師を3度務めた。ただし、職員の定員管理の業務のうち、各部局の幹部職員との交渉(前記ア(ウ))については、基本的にはE係長が担当しており、また、非常勤職員の定員管理の業務(前記ア(ア)b)については、会計年度任用職員制度が令和2年度から新 たに導入され、従前の業務との相違も生じることが想定されたことなどから、その配置人数の査定案の作成は、専らE係長が担当し、Cは、E係長が作成した査定案を前提に、各部局からの要求を踏まえて、当該査定案を更新する作業等を担っていた。(甲8〔168、437、440頁〕、乙37、証人E2ないし9頁、証人D6・7頁) (ウ)E係長は、Cへの引継ぎや支援を担うとともに、職員の定員管理の業務に伴う各部局の幹部職員との交渉や、会計年度任用職員の配置人数の査定案の作成を担うほか、個別に指示のあった業務に対応するなどしていた(甲8〔168、437、440頁〕、乙37、証人E2ないし9頁、証人D6・7頁)。 (エ)Cは、E係長が、各部局の幹部職員との交渉を行う場合には、同席してE係長が交渉を行う様子を見て、交渉方法を習得していたところ、年度の後半に差し掛かった令和元年12月に、初めて、自らが主体となって、親交のある管理職との間で、非常勤職員の減員に係る交渉を行ったが、理解を示してもらうことはできず、交渉は不調に終わった(甲8〔4 39頁〕)。 (オ)事務効率課組織係は、前記(ア)のとおり、平成31年度に組織体制の強化のため1名の増員がされており、前年度と比較して、職員一人当たりの客観的な業務量は減少していたが、Cは、E係長が分担していた業務を含めて、次年 係は、前記(ア)のとおり、平成31年度に組織体制の強化のため1名の増員がされており、前年度と比較して、職員一人当たりの客観的な業務量は減少していたが、Cは、E係長が分担していた業務を含めて、次年度は自らが主体となって同係の業務を遂行していく ことに対して相当の不安を抱えており、特に、令和元年12月に初めて 行った交渉が不調に終わったことにより(前記(エ))、上記の不安はさらに強まっていた(甲8〔168、174、199、438、443、444頁〕、乙37、48の1・2、証人E19、20頁、証人D4頁)。 (2)Cの所定勤務時間外の在庁時間及びそこでの活動内容等ア Cは、事務効率課に配属された平成31年4月1日から本件自殺の前日 である令和2年1月16日までの間、概ね別表2の「時間数」欄記載の時間数のとおり、所定勤務時間外において、前提事実(2)エのとおり市役所庁舎外で職員採用試験のための業務に従事していたか、又は、市役所庁舎に在庁していた(甲1〔12頁〕、3、8〔203ないし214、470ないし482、484ないし617、618ないし634頁〕、11、弁論 の全趣旨)。 イ Cは、前記アの所定勤務時間外の在庁時間において、各部局から提出された要求書の内容を確認し、職員の定員管理に関する資料を作成ないし更新するとか、講師を担当する自治大学校での職員研修向けの資料を作成するなどいった自らの担当する事務効率課組織係の業務を行うほか、次年度 は自らが主体となって同係の業務を遂行していくことに対する不安や経験不足を解消するために、市役所の組織体制を理解し、部署及び職種ごとの業務内容を把握すべく、これに関する資料やデータを閲覧するなどの活動をしていた(甲8〔441ないし443頁〕、乙48の1、証人E24頁) を解消するために、市役所の組織体制を理解し、部署及び職種ごとの業務内容を把握すべく、これに関する資料やデータを閲覧するなどの活動をしていた(甲8〔441ないし443頁〕、乙48の1、証人E24頁)。 ウ Cは、①令和元年5月19日(日)から同年7月5日(金)までの48 日間、②同年11月18日(月)から同年12月27日(金)までの40日間については連続して登庁しており、本件自殺に近い②の期間のうち、同年11月19日、同月22日、同月25日、同月27日、同月29日、同年12月3日、同月4日、同月5日、同月8日、同月9日、同月10日、同月13日、同月16日、同月17日、同月18日及び同月19日の16 日間は翌日の時間帯に至るまで在庁していた(甲8〔203ないし214、 484ないし617、618ないし634頁〕)。 (3)事務効率課における勤務時間の把握方法等ア被告においては、平成31年度当時、管理職以外の職員が所定勤務時間を超えて勤務するときは、超過勤務命令簿に所要事項を記入し、任命権者又はその委任を受けた者に提出し、命令を受けなければならないとされて いたが、事務効率課では、年度当初より、月末にまとめて超過勤務時間を申告する運用が定着しており、D課長は、Cの超過勤務命令簿に記録された時間数と同人が実際に市役所に在庁している時間には隔たりがあることを認識していた。 そのため、D課長は、Cに対し、所定勤務時間外に在庁する理由につい て確認するとともに、超過勤務命令簿には勤務実績に応じた適切な時間外勤務時間を記載するよう複数回にわたり指導をしていたが、Cは、所定勤務時間外に在庁する理由について、「勉強として調べものをしているので。」、「手が遅いから時間がかかっているだけなので。」などと説明し、超 間を記載するよう複数回にわたり指導をしていたが、Cは、所定勤務時間外に在庁する理由について、「勉強として調べものをしているので。」、「手が遅いから時間がかかっているだけなので。」などと説明し、超過勤務命令簿には、別表1の「申告時間数」欄記載の時間を記載していた。 (前提事実(2)ウ、甲8〔169、440、441頁〕、乙1、12の8、証人E22ないし24頁、証人D9ないし11、24ないし27頁)イ被告は、従前、市役所庁舎の警備を担う警備会社に対し、1日4回(午前10時、午後4時、午後10時及び午前6時)、庁舎内を巡回するよう依頼するとともに、午前0時には、庁舎内の照明の点検確認を行うよう依頼 していたところ、深夜の時間帯における職員の在庁状況を把握するため、令和元年11月下旬より、同警備会社に対し、午後10時の巡回時及び午前0時の照明の点検確認時に、各フロアに在庁している職員数等を記載した警備業務報告書を作成、提出するよう求め、被告の職員課において、各フロアの職員の在庁の有無等を把握する取組みを新たに始めた(乙45、 54、証人G23、27、28頁)。 ウ職員課のG課長は、令和元年12月6日、前日の警備業務報告書によって、総務部行政管理室の事務効率課又はこれとデスクの隣接する情報政策課のいずれかの職員が午前0時の巡回時に在庁していたことを把握したため、D課長及び情報政策課の課長に対し、確認を求めた。 D課長は、同日、C、E係長及びF係長に対し、この点について確認し たところ、Cが、前日の深夜の時間帯において在庁していたと述べたため、Cに対し、深夜まで在庁していた理由について質問するとともに、今後、遅くまで残るのであれば、事前にその旨を申告するよう求め、Cは、これについて了 前日の深夜の時間帯において在庁していたと述べたため、Cに対し、深夜まで在庁していた理由について質問するとともに、今後、遅くまで残るのであれば、事前にその旨を申告するよう求め、Cは、これについて了承した。 D課長は、同日以降、しばらくの間は、毎日、Cに対して、前日の退庁 時刻を確認していたところ、Cは、D課長に対し、実際には深夜の時間帯まで在庁している場合であっても、概ね午後8時から午後9時には退庁している旨回答していた。 (乙45〔17、18頁〕、証人E11、12頁、証人D11ないし15頁、証人G6頁) (4)I課長補佐及びJ係長の勤務状況等ア I課長補佐は、令和2年4月1日、E係長の後任として、事務効率課組織係に配属され、令和2年度から令和4年度まで、1名体制で、事務効率課組織係の業務に従事した。 I課長補佐は、事務効率課組織係に在籍中、前記(1)アの業務に加え、 新型コロナウイルス感染症の流行に伴う流動措置を行うほか、甲府市職員適正化計画(国(総務省)が、全国の市町村に対して、5年に一度、作成することを求めている職員の定員数に関する計画)を作成するとともに、甲府市事務分掌条例等の複数の条例の改正、規則及び規定の改正に関与した。 (乙36ないし42、50、証人D16ないし20頁) イ J係長は、令和5年4月1日、I課長補佐の後任として、事務効率課組織係に配属され、令和5年度から現在に至るまで、1名体制で、事務効率課組織係の業務に従事している(乙43、51)。 ウ E係長、C、I課長補佐及びJ係長の、以下の各期間におけるパソコンの合計稼働時間は以下のとおりであった(乙40、41、46、証人D1 8頁)。 (ア)当年4月から当年6月まで ウ E係長、C、I課長補佐及びJ係長の、以下の各期間におけるパソコンの合計稼働時間は以下のとおりであった(乙40、41、46、証人D1 8頁)。 (ア)当年4月から当年6月までC(平成31年度)平成31年4月から令和元年6月まで 419時間38分I課長補佐(令和2年度) 令和2年4月から同年6月まで 361時間01分J係長(令和5年度)令和5年4月から同年6月まで 210時間05分(イ)当年11月から翌年1月までE係長(平成30年度) 平成30年11月から平成31年1月まで 139時間04分C(平成31年度)令和元年11月から令和2年1月まで 423時間03分I課長補佐(令和2年度)令和2年11月から令和3年1月まで 280時間19分 (5)Cの公務災害認定原告Aは、令和2年12月9日、地方公務員災害補償基金山梨県支部長(以下「地公災支部長」という。)に対し、Cを被災職員とする公務災害認定請求を行った(甲1。以下、上記認定請求に対する審査の手続を「本件認定手続」という。)。 被告代表者市長は、本件認定手続の過程において、令和3年5月31日、 地公災支部長に対し、上記認定請求に対する意見書(以下「本件意見書」という。)を提出した(甲8〔433ないし444頁〕)。 地方公務員災害補償基金本部専門医は、本件認定手続の過程において、Cは、生前、医療機関を受診しておらず、病名は確定できないが、本件自殺の直前には何らかの精神疾患を発症していたものと考えられる旨の意見を述べ た(甲8〔443、444頁〕、乙21〔3頁〕)。 地 は、生前、医療機関を受診しておらず、病名は確定できないが、本件自殺の直前には何らかの精神疾患を発症していたものと考えられる旨の意見を述べ た(甲8〔443、444頁〕、乙21〔3頁〕)。 地公災支部長は、令和4年3月10日、Cの自殺について公務上の災害との認定をした(甲1)。 2 争点1(被告の責任の有無)について(1)被告が負うべき義務の内容 使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当であり、使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の当該注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきである(最 高裁平成12年3月24日第二小法廷判決・民集54巻3号1155頁)。 (2)ア Cの業務の過重性(ア)認定事実及び証拠(甲8〔442、531ないし617頁〕)によれば、Cは、事務効率課に配属された平成31年4月1日から本件自殺の前日である令和2年1月16日までの間、所定勤務時間外には、概 ね別表2の「時間数」欄記載の時間に、市役所庁舎に在庁していたか又は市役所庁舎外で職員採用試験のための業務に従事し、上記在庁時間の大半の時間において、各部局から提出された要求書の内容を確認し、職員の定員管理に関する資料を作成ないし更新するなどといった自らの担当する事務効率課組織係の業務を行うほか、次年度は自らが 主体となって同係の業務を遂行していくことに対する不安や経験不 足を解消するために、市役所の組織体制を理解し、部署及び職種ごとの業務内容を把握すべく、これに関する資料やデータを閲覧するなどの活動をしていた。 遂行していくことに対する不安や経験不 足を解消するために、市役所の組織体制を理解し、部署及び職種ごとの業務内容を把握すべく、これに関する資料やデータを閲覧するなどの活動をしていた。 したがって、Cは、別表2の「時間数」欄記載の時間の大半を、自らの担当業務又はこれと関わりのある活動に充てていたということが でき、Cの事務効率課在籍中の時間外勤務時間数は、概ね別表2の「時間数」欄記載の時間数のとおりであったということができる。 (イ)また、前記(ア)及び認定事実によれば、Cは、①令和元年5月19日(日)から同年7月5日(金)までの48日間、②同年11月18日(月)から同年12月27日(金)までの40日間にわたり、休 日なく連続して勤務し、このうち、本件自殺に近い②の期間については16日間にわたり、翌日の時間帯に至るまでの勤務となっていた。 (ウ)さらに、認定事実によれば、事務効率課組織係は、係長という立場でありながら、各部局の部長等の幹部職員に対し、職員の減員等について理解を求めるべく交渉を行うことが要求される特別な部署であり、 同係の業務は、職務経験が豊富なE係長であっても、年度末には査定漏れや誤りがないか懸念するなどの精神的な重圧を感じるものであった。 (エ)以上によれば、Cは、事務効率課に配属されてから本件自殺までの間、精神的な重圧を伴う業務に、連日、長時間にわたって従事し、特 に、繁忙期である令和元年5月から7月上旬まで及び同年11月中旬から12月末までの時間外勤務時間は、概ね、別表2の「時間数」欄記載の時間数のとおり、令和元年5月22日から同年6月20日までは207時間23分、同月21日から同年7月20日までは107時間27分、同年11月18日から同年12 間は、概ね、別表2の「時間数」欄記載の時間数のとおり、令和元年5月22日から同年6月20日までは207時間23分、同月21日から同年7月20日までは107時間27分、同年11月18日から同年12月17日までは209時間 30分、同月18日から令和2年1月16日までは148時間22分 と極めて長時間に及んでいた。Cのこのような業務の負担は、一般の労働者を基準とした場合、過重(特に量的に過重)というべきであり、Cは、このような業務の負担によって心身の健康を損なう蓋然性の高い状態にあったというべきである。 イ被告のCの業務に対する認識及び対応 前提事実及び認定事実によれば、D課長は、Cの超過勤務命令簿に記録された時間数と同人が実際に市役所に在庁している時間には隔たりがあることを認識しており、令和元年12月6日には、G課長からの連絡等を契機として、Cが、前日の同月5日の深夜、日をまたぐ時間帯に至るまで在庁していたことを認識していた。 そうすると、D課長は、遅くとも令和元年12月上旬には、Cの勤務時間が、一般の労働者を基準としても過重なものとなっており、Cの心身の健康状態を悪化させ得るものであったことを認識することが可能であったというべきであるから、その頃までには、Cのパソコンの稼働時間等の客観的な記録を確認するなどして、Cの正確な時間外勤務時間を 把握した上で、これを踏まえてCの業務内容を変更するなどの措置を講ずべき義務を負っていたというべきである。 そうであるにもかかわらず、認定事実記載のとおり、D課長は、令和元年12月上旬以降も、Cに対し、前日の退庁時刻を口頭で確認するなどの対応をするにとどまり、Cの正確な時間外勤務時間を把握した上で、 これを踏まえてCの業務内容を変更するなど 、D課長は、令和元年12月上旬以降も、Cに対し、前日の退庁時刻を口頭で確認するなどの対応をするにとどまり、Cの正確な時間外勤務時間を把握した上で、 これを踏まえてCの業務内容を変更するなどの措置を講じなかったのであるから、その余の点について判断するまでもなく、被告は、Cに対する前記義務の履行を怠ったというべきである。 (3)被告の主張についてア(ア)これに対し、被告は、Cが担当していた業務は、毎日遅くまで超過 勤務を要するほど量的に過重なものではなかったと主張し、認定事実 によれば、Cは、平成30年度や令和2年度以降、1名(平成30年度はE係長、令和2年度から令和4年度まではI課長補佐、令和5年度以降はJ係長)が担当していた範囲の業務について、E係長からの引継ぎや支援を受けながら、E係長との2名体制で対応しており、Cが担当していた客観的な業務量は、E係長、I課長補佐及びJ係長が それぞれ担当していた業務量と比較すると少なかった事実が認められる。 (イ)しかし、認定事実によれば、事務効率課組織係の業務のうち、特に、職員の定員管理については、採用人数や退職者数、再任用者数、昇任者数等の人員を管理するに当たり、誤りなく各部署間の人員の調整を 行わなければならず、データ上で人員数の不整合がある場合には、その原因を突き止めることを余儀なくされるなど、個人差があるとはいえ、慣れるまでは、その遂行に一定の時間を要する業務であったところ、Cは、平成31年4月に、事務効率課に配属されるまで、市の組織を担う事務を司る職務に従事した経験はなく、次年度以降自らが主 体となって同係の業務を遂行していくことに不安や経験不足を感じており、これを解消するため、所定勤務時間外の在庁時間において、担当業務に加 務を司る職務に従事した経験はなく、次年度以降自らが主 体となって同係の業務を遂行していくことに不安や経験不足を感じており、これを解消するため、所定勤務時間外の在庁時間において、担当業務に加えて、市役所の組織体制や部署及び職種ごとの業務内容に関する資料やデータを閲覧するなどしており、これらの活動等の結果、Cの市役所庁舎の在庁時間は、概ね別表2の「時間数」欄記載の時間 数に及んだのであって、これらの事実によれば、Cは、自らの担当業務を遂行し、又はこれを遂行するのに伴う不安や経験不足を解消すべく、これと関わりのある活動を行うために、概ね別表2の「時間数」欄記載の長時間にわたる勤務を余儀なくされたというべきである。 (ウ)よって、前記(ア)認定の事実をもってしても、Cが担当していた 業務の負担が量的に過重であったとの前記認定を覆すに足りず、他に この認定を左右するに足りる証拠はない。 イ(ア)また、被告は、所定勤務時間外のCの在庁時間は、E係長やI課長補佐及びJ係長の在庁時間と比較して明らかに長時間に及ぶところ、これは、Cが、所定勤務時間外において、パソコンを通じて、私的にインターネットにアクセスしたり、退庁するまでの間にたばこ休憩や 夕食等のために、度々庁舎から外出するなどしていたためであって、Cの所定勤務時間外の在庁時間の多くは、業務に関係のない時間であった旨主張し、E係長及びD課長の証人尋問の結果中にはこれに沿う部分があり(証人E13、40頁、証人D19、20頁)、証拠(甲8〔171、175、618ないし634頁〕)によれば、Cが、所定勤 務時間外において、パソコンを通じて、私的にインターネット情報にアクセスしていた事実や、退庁前に庁舎から外出していた事実が認められるほか、認定 618ないし634頁〕)によれば、Cが、所定勤 務時間外において、パソコンを通じて、私的にインターネット情報にアクセスしていた事実や、退庁前に庁舎から外出していた事実が認められるほか、認定事実によれば、Cのパソコンの稼働時間は、同時期におけるE係長やI課長補佐及びJ係長のパソコンの稼働時間と比較して長時間にわたっていた事実が認められる。 (イ)しかし、認定事実によれば、事務効率課組織係は、職員の定員管理業務により、例年、5月から7月上旬まで及び11月中旬から12月末までの各期間が繁忙期であったところ、Cの所定勤務時間外の在庁時間は、概ね、別表2の「時間数」欄記載の時間数のとおり、上記の繁忙期に当たる令和元年5月22日から同年6月20日まで、同月2 1日から同年7月20日まで、同年11月18日から同年12月17日まで及び同月18日から令和2年1月16日までの各期間については、他の期間とは異なり、いずれも100ないし200時間を超えており、Cは、上記繁忙期に当たる令和元年5月19日から同年7月5日までの48日間及び同年11月18日から同年12月27日まで4 0日間については、連続して登庁していた。 また、証拠(甲8〔442、531ないし617頁〕)によれば、Cは、所定勤務時間外の在庁中に、概ね数分ないし十数分程度の間隔で、Cが職員の定員管理業務のために使用していたデータが含まれるファイルのオープンや、当該データの上書き保存、印刷又は削除等の操作を行っていた事実が認められるところ、証拠(甲8〔618ないし6 34頁〕、乙24の1ないし24、35の1ないし24)によれば、Cが、所定勤務時間外に、退庁に先立って、庁舎から外出していたのは、概ね1日に1、2回程度であり、その時間は数十分程度にとどま 34頁〕、乙24の1ないし24、35の1ないし24)によれば、Cが、所定勤務時間外に、退庁に先立って、庁舎から外出していたのは、概ね1日に1、2回程度であり、その時間は数十分程度にとどまっていたことに加え、Cが所定勤務時間外の在庁中に、パソコン上で私的にインターネット情報へアクセスし、当該サイトを閲覧していた時間 は、概ね1日に数分から十数分程度にとどまっていた事実が認められる。 さらに、前記アのとおり、Cは、平成31年4月に、事務効率課に配属されるまでに、市の組織を担う事務を司る職務に従事した経験がなかったことから、所定勤務時間外の在庁時間において、自らの担当 業務に加え、その経験不足等を解消するための活動をも行っていたのに対し、認定事実及び証拠(乙42、43)によれば、E係長は、平成28年度から平成31年度まで事務効率課組織係の係長を務め、同係の業務につき豊富な経験を有していた事実や、I課長補佐は、同係の係長に配属された当時、Cよりも職位が上の課長補佐の地位にあっ た事実が認められるほか、J係長には、幼少期の子が二人おり、育児のために定時に近い時間帯に退庁すべき必要があった事実が認められる。 これらに加え、証拠(甲8〔80ないし82、203ないし214、442、443頁〕)によれば、被告代表者市長は、本件認定手続内の 調査の過程において、Cは別表2の時間においていずれも事務効率課 組織係に関する業務又はこれに関する活動を行っていたとの立場を前提として、別表2の時間の全てを時間外勤務時間として算定していた事実が認められる。 これらの事実によれば、Cは、繁忙期に対応して、所定勤務時間外の在庁時間のうちの大半の時間を、自らの担当業務又はこれと関わり のある活動に充てていた 時間として算定していた事実が認められる。 これらの事実によれば、Cは、繁忙期に対応して、所定勤務時間外の在庁時間のうちの大半の時間を、自らの担当業務又はこれと関わり のある活動に充てていたということができ、Cが所定勤務時間外にパソコンを通じて、私的にインターネットにアクセスしていた時間や退庁に先立って庁舎から外出していた時間は、上記活動の合間における僅かな休憩時間に過ぎず、客観的にみて、これらの時間においてCが業務等から解放されていたということはできないというべきである。 (ウ)よって、前記(ア)認定の事実をもってしても、Cの時間外勤務時間数が、概ね別表2の「時間数」欄記載の時間数のとおりであったとの前記認定を覆すに足りず、他にこの認定を左右するに足りる証拠はない。 ウ(ア)さらに、被告は、Cの担当していた業務の内容は、毎年行われる定 型的なものであった上、人員の削減に伴う精神的な負担等が生ずるものではなく、その担当業務の内容がCの能力を超えるものでもなかったことなどからすれば、Cの業務は質的に過剰なものではなかったと主張し、証拠(甲8〔434頁〕、乙34)によれば、Cは、平成28年度から平成30年度までの人事評価において継続的に標準的なB評 価を受けていたことのほか、認定事実及び証拠(甲8〔176、436、438頁〕、乙12の8、証人E18、19頁、証人D5、6頁)によれば、Cには、E係長をはじめとする同僚職員から支援等を得られる体制が確保されていた上、事務効率課内の人間関係、取り分け、CとE係長の人間関係は良好であった事実が認められる。 (イ)しかし、認定事実によれば、事務効率課組織係は、係長という立場 でありながら、市の幹部職員等に対し職員の定員管理に関す 係長の人間関係は良好であった事実が認められる。 (イ)しかし、認定事実によれば、事務効率課組織係は、係長という立場 でありながら、市の幹部職員等に対し職員の定員管理に関する交渉を行うことが求められる特殊な部署であった上、誤りなく各部署間の人員数の調整を行うことが求められ、これらの業務の性質から、職務経験が豊富なE係長であっても、業務に関して精神的な重圧を感じることがあったところ、Cは、平成31年4月に事務効率課に配属される までに、市の組織を担う事務を司る職務に従事した経験はなく、次年度は自らが主体となって同係の業務を遂行していくことに対して相当の不安を抱えており、特に、令和元年12月に初めて行った交渉が不調に終わったことにより、上記の不安はさらに強まっていた。 (ウ)これらの事実によれば、前記(ア)認定の事実をもってしても、事 務効率課組織係の業務が、精神的な重圧を伴う業務であったとの前記認定を覆すに足りず、他にこの認定を左右するに足りる証拠はない。 エ(ア)加えて、被告は、D課長やE係長が、Cの勤務状況等を把握していたことや、D課長によるCへの指導内容等からすれば、被告はCに対する安全配慮義務を履行していたと主張し、認定事実によれば、D課 長は、超過勤務命令簿には勤務実績に応じた適切な時間外勤務時間を記載するよう複数回にわたり指導をしていたことのほか、Cが深夜の時間帯まで在庁していることを把握した令和元年12月6日以降、しばらくの間は、毎日、Cに対して、前日の退庁時刻を確認していた事実が認められる。 (イ)しかし、認定事実、証拠(甲8〔169頁〕、証人E11頁、証人D10、11頁)及び弁論の全趣旨によれば、Cは、超過勤務命令簿において、実際の時間外勤務 た事実が認められる。 (イ)しかし、認定事実、証拠(甲8〔169頁〕、証人E11頁、証人D10、11頁)及び弁論の全趣旨によれば、Cは、超過勤務命令簿において、実際の時間外勤務時間よりも僅少な時間を申告する傾向があり、D課長もCに上記のような傾向があることを認識していた事実が認められることからすれば、前記(ア)認定の事実をもって、D課長 が、Cの正確な時間外勤務時間を把握すべき措置を講じたとはいえな い。 (ウ)よって、前記(ア)認定の事実をもってしても、被告が、Cに対する前記義務の履行を怠ったとの前記認定を覆すに足りず、他にこの認定を左右するに足りる証拠はない。 3 争点2(因果関係の有無)について (1)認定事実によれば、地方公務員災害補償基金本部専門医は、本件認定手続において、Cは、生前、医療機関を受診しておらず、病名は確定できないが、本件自殺の直前には何らかの精神疾患を発症していたものと考えられるとの意見を述べていたのであり、係る事実によれば、Cは、遅くとも本件自殺の直前には、何らかの精神疾患を発症していたということができる。 また、前記2のとおり、Cは、事務効率課に配属されてから本件自殺までの間、精神的な重圧を伴う業務に、連日、長時間にわたって従事しており、特に、繁忙期である令和元年5月から7月上旬まで及び同年11月中旬から12月末までの時間外勤務時間については、概ね、令和元年5月22日から同年6月20日までは207時間23分、同月21日から同年7月20日ま では107時間27分、同年11月18日から同年12月17日までは209時間30分、同月18日から令和2年1月16日までは148時間22分と極めて長時間に及んでいたのであって、係る事実によれ では107時間27分、同年11月18日から同年12月17日までは209時間30分、同月18日から令和2年1月16日までは148時間22分と極めて長時間に及んでいたのであって、係る事実によれば、Cは、業務の過重性を原因として、上記の精神疾患を発症したものというべきであり、上記認定を覆すに足りる証拠はない。 (2)よって、Cは、業務の過重性により、何らかの精神疾患を発症し、これにより自殺に至ったということができ、被告の前記義務違反とCの死亡との間には相当因果関係が認められる。 (3)被告は、Cが精神疾患を発症していたとする客観的な証拠はなく、Cは令和2年1月12日に交際の申入れをした女性から返事がもらえなかったこと からすれば、被告によるCの勤務時間の適正把握義務違反と本件自殺との間 に因果関係は認められない旨主張するが、上記説示に照らし、被告の主張は採用することができない。 4 損害の額(争点3)、過失相殺の可否(争点4)及び損益相殺の可否(争点5)について(1)Cの損害額 ア逸失利益 5606万4536円(ア)基礎収入a 証拠(乙5)及び弁論の全趣旨によれば、Cは、生前、被告から、給料、住居手当、通勤手当及び地域手当として、平成31年1月分から同年3月分までは、合計月額38万1390円を、同年4月分から 令和元年12月分までは、合計月額38万9552円を、それぞれ得ていたことが認められる。 b また、前記1のとおり、Cは、生前、概ね、別表2の「時間数」欄記載の時間数のとおり、時期によっては、1か月当たり100時間を超える時間外勤務に従事していたものであるが、認定事実及び証拠 (甲20、乙5)によれば、被告からCに支払われた時間外手当の金額は、C 時間数のとおり、時期によっては、1か月当たり100時間を超える時間外勤務に従事していたものであるが、認定事実及び証拠 (甲20、乙5)によれば、被告からCに支払われた時間外手当の金額は、Cが超過勤務命令簿によって自ら申告した別表1の「申告時間数」欄記載の時間数によって算定されたものであり、当該時間数は、Cの実際の時間外勤務時間数を大幅に下回るものであったことが認められる。そうすると、Cの逸失利益の基礎収入の算定に当たっては、 Cが被告において勤務を継続することのできる限度で、Cに支払われるべきであった時間外手当相当額を加算するのが相当というべきである。 そして、証拠(甲6、7、22、23)及び弁論の全趣旨によれば、Cの被告における時間外勤務の時間が45時間以内にとどまってい たのであれば、Cは、被告における業務の過重に起因して精神疾患を 発症し死亡することはなかったと認められるから、Cが被告において勤務を継続することのできる時間外勤務時間数は、1か月当たり45時間の限度であるということができる。 加えて、証拠(甲20)及び弁論の全趣旨によれば、Cに対する時間外手当の賃金単価(所定の割増率を加味した金額。以下同じ)は、 平成31年1月分から同年4月分までは1時間当たり2787円、令和元年5月分から同年12月分までは1時間当たり2900円であったと認められる。 これらによれば、Cの45時間分の時間外手当の額は、平成31年1月分から同年4月分までは、各月12万5415円(賃金単価27 87円×45時間)、令和元年5月分から同年12月分までは、各月13万0500円(賃金単価2900円×45時間)と認められる。 c よって、前記aのCの給料、住居手当、通勤手当及び地域手当に、各月45時間分の時間 )、令和元年5月分から同年12月分までは、各月13万0500円(賃金単価2900円×45時間)と認められる。 c よって、前記aのCの給料、住居手当、通勤手当及び地域手当に、各月45時間分の時間外手当を加算した各月の給与額は、平成31年1月分から同年3月分までが、各50万6805円(38万1390 円+12万5415円)、平成31年4月分が、51万4967円(38万9552円+12万5415円)、令和元年5月分から同年12月分までが、各52万0052円(38万9552円+13万0500円)であり、その年間の合計額は、619万5798円となる。 d これに加え、証拠(乙5)によれば、Cは、被告から、期末手当及 び勤勉手当として、令和元年6月及び同年12月に各88万0002円を得ていた事実が認められる。 e 以上によれば、Cの逸失利益の算定における基礎収入は、年額795万5802円(619万5798円+88万0002円×2)である。 (イ)就労可能年数 前提事実によれば、Cの死亡当時の年齢は42歳であり、67歳までの就労可能年数は25年(これに対応するライプニッツ係数は、14. 094)である。 (ウ)生活費控除証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば、Cは、死亡当時、独身で、 一人暮らしをしていた事実が認められるから、Cが死亡したことにより支出を免れた生活費としては、50パーセント相当額を控除すべきである。 (エ)以上によれば、Cの逸失利益は、5606万4536円(795万5802円×14.094×0.5)である。 イ慰謝料 2200万円前記2、3のとおり、Cは、事務効率課に配属されてから本件自殺までの間、精神的な重圧を伴う業務 36円(795万5802円×14.094×0.5)である。 イ慰謝料 2200万円前記2、3のとおり、Cは、事務効率課に配属されてから本件自殺までの間、精神的な重圧を伴う業務に、連日、長時間にわたって従事することを余儀なくされ、これによって、精神疾患を発症し、死亡に至ったというべきであり、これによってCが被った精神的苦痛を填補するための慰謝料 は、2200万円が相当である。 ウ過失相殺(ア)被告は、Cが、係長という監督職にあり勤務時間を管理すべき立場にあったにもかかわらず、時間外勤務の前提となる時間外勤務命令がない中で時間外勤務を行っており、また、E係長から声を掛けられても、自 発的に在庁していた上、その深夜にわたる時間外勤務が発覚した際、D課長から、遅くまで残るのであれば事前に申告して欲しいなどと言われていたにもかかわらず、一度も事前に申告をしないばかりか、実際の退庁時間と異なる時間を退庁時間として回答していたとして、これらの事実は、Cの過失に当たり、過失相殺がされるべきである旨主張し、認定 事実、証拠(甲8〔440、441頁〕、証人D14、15頁)及び弁論 の全趣旨によれば、Cは、本件当時、係長の立場にあったところ、Cに対し、別表2の「時間数」欄記載の時間外勤務に対応する時間外勤務命令は発せられておらず、Cは、E係長から「一緒に帰ろう。」などと声を掛けられても自発的に在庁していたことのほか、Cは、その深夜にわたる時間外勤務が発覚した令和元年12月6日、D課長から、今後、遅く まで残るのであれば、事前にその旨を申告するよう求められ、これについて了承していたにもかかわらず、その旨の申告をせず、同日以降、D課長から、しばらくの間は、毎日、前日の帰宅時間を尋ねられて く まで残るのであれば、事前にその旨を申告するよう求められ、これについて了承していたにもかかわらず、その旨の申告をせず、同日以降、D課長から、しばらくの間は、毎日、前日の帰宅時間を尋ねられていたが、これに対して、実際には深夜の時間帯まで在庁している場合であっても、概ね午後8時から午後9時には退庁している旨の回答をしていた事実が 認められる。 (イ)しかし、Cが係長の立場にあったことや、Cに対して、時間外勤務命令が発せられていなかったことは、Cの過失ないし落ち度に当たるものとはいえず、これらの事実を斟酌して過失相殺すべきということはできない。 また、証拠(甲8〔434頁〕、乙12の3)によれば、Cは、時間を掛けて丁寧に仕事をする性格で、自らに厳しく妥協しない一面を有していた事実が認められ、CがE係長から前記のような声掛けを受けても自発的に在庁していたのは、上記の性格に基づく業務遂行の態様の一環であったということができるところ、上記のCの性格及びこれに基づく業 務遂行の態様が、本件と同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものとはいえず(最高裁平成12年3月24日第二小法廷判決・民集54巻3号1155頁参照)、Cが上記のように自発的に在庁していた事実を斟酌して過失相殺すべきとはいえない。 さらに、認定事実及び前記2(2)の説示によれば、被告においては、 平成31年度当時、管理職以外の職員が所定勤務時間を超えて勤務するときは、超過勤務命令簿に所用時間を記入し、任命権者等から命令を受けなければならないとされていたにもかかわらず、事務効率課では、これに反して、年度当初より、月末にまとめて超過勤務時間を申告する運用が定着していた上、Cのパソコンの稼働時間等の客観 者等から命令を受けなければならないとされていたにもかかわらず、事務効率課では、これに反して、年度当初より、月末にまとめて超過勤務時間を申告する運用が定着していた上、Cのパソコンの稼働時間等の客観的な記録を確認 するなどといった正確な時間外勤務時間を把握するための措置は一切講じられておらず、Cの業務の負担は、事務効率課における上記のような勤怠管理の下で、令和元年12月上旬には、一般の労働者を基準として過重なものとなり、その心身の健康状態が悪化し得る程度にまで至っていたのであり、Cの業務の負担が令和元年12月上旬頃までに過重なも のとなった要因は、専ら被告にあるというべきであるから、Cが、同月6日以降、D課長に対し、時間外勤務の事実や、実際の退庁時間を申告していなかった事実を斟酌して過失相殺すべきとはいえない。 (ウ)よって、前記(ア)認定の事実をもってしても、被告の主張を認めるに足りず、他に、被告の主張を認めるに足りる証拠はない。 エ Cの損害額合計以上によれば、Cは、被告に対し、7806万4536円(慰謝料2200万円及び逸失利益5606万4536円の合計額)の損害賠償請求権を有すると認められる。 (2)相続 前記(1)及び前提事実によれば、原告らは、Cの死亡により、Cの被告に対する合計7806万4536円の損害賠償請求権を、2分の1ずつ相続し、各3903万2268円(慰謝料1100万円、逸失利益2803万2268円)の損害賠償請求権を取得した事実が認められる。 (3)原告ら固有の損害 ア葬儀費用 150万円 弁論の全趣旨によれば、原告Aは、Cの葬儀費用として、少なくとも150万円を負担し、同額の損害を被ったことが認められる。 イ原告ら固有の ア葬儀費用 150万円 弁論の全趣旨によれば、原告Aは、Cの葬儀費用として、少なくとも150万円を負担し、同額の損害を被ったことが認められる。 イ原告ら固有の慰謝料各150万円前記2、3のとおり、Cは、事務効率課に配属されてから本件自殺までの間、精神的な重圧を伴う業務に、連日、長時間にわたって従事すること を余儀なくされ、これによって、精神疾患を発症し、死亡に至ったというべきであり、これによって原告らが被った精神的苦痛を填補するための慰謝料は、各150万円とするのが相当である。 (4)損益相殺ア証拠(甲18の1・2)によれば、原告らは、令和5年9月6日、Cの 死亡に係る遺族補償一時支給金として、各1420万3500円を受領し、原告Aは、同日、葬祭補償として、170万4420円を受領した事実が認められるところ、上記遺族補償一時給付金の給付額は、原告らがCから相続した逸失利益相当額から、上記葬祭補償の給付額は、原告Aが負担した葬儀費用から、それぞれ控除するのが相当である(最高裁昭和47年(オ) 第645号同50年10月24日第二小法廷判決・民集29巻9号1379頁、最高裁平成16年(受)第525号同年12月20日第二小法廷判決・裁判集民事215号987頁、最高裁平成24年(受)第1478号同27年3月4日大法廷判決・民集69巻2号178頁参照)。 したがって、原告Aの損害賠償請求額の算定に当たっては、Cの逸失利 益に相当する2803万2268円から1420万3500円を控除するとともに、葬儀費用150万円についてはその全額を控除し、原告Bの損害賠償額の算定に当たっては、Cの逸失利益に相当する2803万2268円から1420万3500円を控除すべきであ 500円を控除するとともに、葬儀費用150万円についてはその全額を控除し、原告Bの損害賠償額の算定に当たっては、Cの逸失利益に相当する2803万2268円から1420万3500円を控除すべきである。 これらの損益相殺後の金額は、原告らにつき、各2632万8768円 (Cの慰謝料1100万円、Cの逸失利益の損益相殺後の残額1382万 8768円及び原告ら固有の慰謝料額150万円の合計額)となる。 イなお、証拠(甲18の1)及び弁論の全趣旨によれば、原告らは、遺族特別支給金として各150万円を、遺族特別援護金として各930万円を、遺族特別給付金として各205万4795円を、それぞれ受領した事実が認められるが、これらの給付は、福祉事業の一環として、地方公務員災害 補償法47条1項、同法施行規則38条1項に基づき支給されるもので、損害填補の性質を有するものではないから、損益相殺の対象になるものとはいえない(最高裁平成6年(オ)第992号同8年2月23日第二小法廷判決・民集50巻2号249頁参照)。 (5)弁護士費用 前記で認定した損害額に加え、証拠及び弁論の全趣旨により認められる本件に現れた一切の事情によれば、弁護士費用相当損害金は、原告らについて、各260万円と認められる。 (6)合計よって、原告らの損害額は、各2892万8768円と認められる。 5 まとめ以上によれば、原告の主位的請求(国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求)は、各2892万8768円及びこれらに対する不法行為後の日である令和2年1月17日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 他方、原告らの予備的請求(債務 の日である令和2年1月17日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 他方、原告らの予備的請求(債務不履行に基づく損害賠償請求)については、上記の主位的請求が認容される限度では審判の申立てが解除されているから判断を要しない。また、上記の予備的請求が認容された場合に、被告が賠償すべき損害の額は、前記3(6)の額を上回るものではないから、予備的請求のうち上記限度を超える部分は理由がない。 第4 結論 よって、原告らの主位的請求は、主文第1、2項の限度で理由があるから認容し、その余の主位的請求及び予備的請求はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 甲府地方裁判所民事部 裁判長裁判官新田和憲 裁判官井上有紀 裁判官早川友裕 別表1年月パソコン稼働時間申告時間数平成31年4月78時間13分18時間令和元年5月154時間58分39時間令和元年6月186時間27分36時間令和元年7月88時間26分21時間令和元年8月54時間02分30時間令和元年9月95時間13分22時間令和元年10月91時間17分21時間令和元年11月137時間11分23時間令和元年12月196時間36分24時間令和2年1月(16日まで)89時間16分 以上 別表2期間時間数本件自殺前1か月間(令和元年12月18日~ 12月196時間36分24時間令和2年1月(16日まで)89時間16分 以上 別表2期間時間数本件自殺前1か月間(令和元年12月18日~令和2年1月16日)148時間22分本件自殺2か月前の1か月間(令和元年11月18日~同年12月17日)209時間30分本件自殺3か月前の1か月間(令和元年10月19日~同年11月17日)55時間31分本件自殺4か月前の1か月間(令和元年9月19日~同年10月18日)96時間03分本件自殺5か月前の1か月間(令和元年8月20日~同年9月18日)61時間27分本件自殺6か月前の1か月間(令和元年7月21日~同年8月19日)46時間25分本件自殺7か月前の1か月間(令和元年6月21日~同年7月20日)107時間27分本件自殺8か月前の1か月間(令和元年5月22日~同年6月20日)207時間23分本件自殺9か月前の1か月間(令和元年4月22日~同年5月21日)78時間05分本件自殺10か月前の21日間(令和元年4月1日~同月21日)52時間32分以上

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