平成13(ワ)224 温泉入湯権確認請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年11月27日 大分地方裁判所
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判決文本文13,478 文字)

主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告らに対し,別紙目録1記載の共同浴場(以下「堀田東温泉共同浴場」という。)に対する同目録2記載の貯湯タンクからの給湯を行い,原告らが同共同浴場において入湯できるようにする措置を講ぜよ。 2 被告は,堀田東温泉共同浴場について,その損壊,撤去その他現状を変更する行為をしてはならない。 3 原告らが,各自上記貯湯タンクから,堀田東温泉共同浴場又はこれと規模を同じくする別府市大字南立石堀田地区内の共同浴場に温泉の引湯をして入湯する権利を有することを確認する。 第2 事案の概要本件は,原告らが,堀田地区住民集団の構成員として,堀田東温泉について温泉入会権(湯口権)を有すると主張し,同温泉の管理者である被告が堀田東温泉共同浴場への給湯を停止したために温泉入会権に基づく入湯権が侵害されたとして,被告に対し,同共同浴場への給湯の再開及び入湯に必要な措置の実施,同共同浴場の損壊等の禁止,並びに,堀田泉源から産出される温泉の貯蔵タンクから同共同浴場その他の代替施設への引湯・入湯権の確認を求めた事案である。 1 前提事実当事者間に争いのない事実のほか,証拠(それぞれ認定事実の末尾に掲記する。)及び弁論の全趣旨により認定できる事実は,以下のとおりである。 (1) 当事者原告らは,別府市大字南立石区内に住所を有する者である。南立石区は,かつての南立石村に当たり,当時は,同村の下に堀田,本村,板地,観海寺等の組が置かれていた。同村は,その後他村と合併して石垣村(以下「旧石垣村」という。)となり,同村の区域は後に被告に編入された。 (甲16の1,4,甲29, 当時は,同村の下に堀田,本村,板地,観海寺等の組が置かれていた。同村は,その後他村と合併して石垣村(以下「旧石垣村」という。)となり,同村の区域は後に被告に編入された。 (甲16の1,4,甲29,乙17の1ないし3)。 被告は,後記堀田泉源の地盤及び堀田東温泉共同浴場の建物を所有し,平成15年4月8日まで,同泉源から産出される温泉を同共同浴場に給湯していた。 (2) 堀田東温泉の概要ア堀田東温泉は,昭和6年に旧石垣村が別府市大字南立石字ソコバタ899番に木造瓦葺平家建浴場(堀田東温泉共同浴場)を建築し,同所に設けられた共同温泉であり,同所は堀田地区の氏神ともいうべき社祠である秋葉社の所有となっている。堀田東温泉共同浴場は未登記建物であるが,被告の建物台帳には行政財産(公共用財産)として登録されている(甲10,乙4)。 イ別府市有温泉施設等の設置及び管理に関する条例(乙5,以下,平成15年3月19日の後記改正前の同条例を「改正前の別府市有温泉施設等設置管理条例」という。)では,被告が市費をもって維持管理する市有の温泉施設を設ける温泉が定められ(同条例別表第1),その中には,温泉施設使用料(入浴料)の定めがあるものとないものがあったが,堀田東温泉については使用料徴収の定めがなかったので(29条,同条例別表第3参照),平成15年4月8日に堀田東温泉への給湯が停止されるまで(乙59の1),同温泉の利用者は,堀田地区の住民であるか否かを問わず,別府市に対して使用料を支払うことなくこれを利用することができた。 (3) 堀田温泉の由来等ア堀田地区には,別府市大字南立石字堀田593番の土地(以下,同所の土地については地番で表示する。)に温泉が湧き出る泉源があり(後記旧堀田第2泉源と推測される。),江戸時 堀田温泉の由来等ア堀田地区には,別府市大字南立石字堀田593番の土地(以下,同所の土地については地番で表示する。)に温泉が湧き出る泉源があり(後記旧堀田第2泉源と推測される。),江戸時代初期から同所付近に浴場が設けられていたと伝えられ,堀田温泉又は堀田の湯と呼ばれていた。 明治初年ころにはこの浴場を中心として堀田温泉場が形成され,多くの湯治客が訪れるようになり,明治中期ころに温泉場がやや南西に移されてからは急速に温泉場としての整備が進み,明治30年3月29日,同温泉の共同浴場(木造瓦葺平家建浴室)について別府市大字南立石上組(堀田組を指す。)名義の所有権保存登記が経由された(甲11,甲14の1ないし3)。 593番の土地は,土地台帳上,明治25年当時は上組共有地とされていたが,明治40年に南立石共有地に訂正され,大正11年12月14日に同番1と同番2に分筆された。また,大正10年ころ,同土地上に総工費2976円をかけて木造瓦葺平家建浴場が建築された(同共同浴場は,平成5年の台風によって多大な損傷を被り,同年9月にその使用が中止され,平成12年9月19日に解体された。)(甲4の1ないし3,甲5の2及び3,乙36)。 上記(2)のとおり,堀田東温泉共同浴場ができてからは,旧来からの堀田温泉を堀田西温泉とも呼ぶようになった(以下,この旧来からの温泉を「堀田西温泉」という。)。 イ旧石垣村は,堀田西温泉の当時の泉源である後記旧堀田第2泉源の管理について,大正4年,管理者を同村長Aとし,昭和2年1月19日に旧堀田第2泉源の管理者を同村長Bに変更し,同月27日,同村長は南立石区理事長であるCに堀田温泉の浚渫工事常任監督を命じた(甲3の1,甲15)。 また,旧石垣村は,堀田西温泉及び観海寺温泉の営繕 第2泉源の管理者を同村長Bに変更し,同月27日,同村長は南立石区理事長であるCに堀田温泉の浚渫工事常任監督を命じた(甲3の1,甲15)。 また,旧石垣村は,堀田西温泉及び観海寺温泉の営繕費用として,大正11年度に897円,大正12年度に2500円,大正13年度に1502円を支出するとともに,大正12年には,石垣村大字南立石区温泉使用料徴収規程を定め(同年4月1日施行),同村居住者以外の者が同村南立石区設備の温泉を使用する際には使用料を徴収することとし,堀田西温泉及び観海寺温泉についてそれぞれ使用料を定めた(乙15の1,乙16の1及び2)。さらに,同村は,大正14年9月24日,同村居住者以外の者が同村設備の温泉を利用する際には使用料を徴収する旨の石垣村温泉使用料徴收條例のほか,村有温泉の管理について,常設温泉委員7名を選挙によって選任し,温泉場営繕等に関する事務を行う旨の石垣村温泉委員設置規程を定めた(甲13の1ないし4)。 (4) 堀田西温泉の土地建物の譲渡593番1及び2の土地並びに同土地上の建物は,昭和3年11月26日,旧石垣村に対し,同村がその代金を10年間に分割して毎年支払う約定で観海寺温泉の土地建物とともに売り渡された(甲4の2,甲5の2,甲26)。 (5) 石垣村大字南立石部落有財産整理統一協定の締結昭和5年2月10日,部落有財産統合のため,石垣村大字南立石部落有財産の一部を無償で旧石垣村に提供することなどを内容とする協定(以下「財産整理統一協定」という。)が締結され,下記のとおり協定書(以下「財産整理統一協定書」という。)が作成されたが,同協定書に添付されている別紙甲号調書には,上記堀田泉源の地盤並びに堀田西温泉及び観海寺温泉の共同浴場所在地は挙げられていない(甲6,乙34)。 「財産整理統一協定書」という。)が作成されたが,同協定書に添付されている別紙甲号調書には,上記堀田泉源の地盤並びに堀田西温泉及び観海寺温泉の共同浴場所在地は挙げられていない(甲6,乙34)。 記石垣村大字南立石部落有財産整理統一委員会協定書石垣村大字南立石地内部落有財産中、別紙甲号調書ノ土地ハ左記条件ヲ附シ無償本村有ニ提供統一同乙号調書ノ土地ハ従来其土地ニ縁故ヲ有スル部落民ニ特売又ハ社寺ニ寄付ス(以下省略)条件第一、村有帰属ノ土地ハ之ヲ第一、第二、第三、種地並ニ特別経営地ニ区分管理スルモノトス第一種地 (以下省略)第四種地特別経営地統一シタル池沼、鉱泉地ハ村ニ提供シタル代償トシテ村ハ左記ニヨリ道路開鑿及共同浴場ノ設置ヲ為スモノトス(イ) (省略)(ロ) (省略)(ハ) 村営共同浴場設置ニ関シテハ左記順序ニヨリ実施スルモノトス但シ共同温泉使用残湯ヲ他ニ使用セントスル場合ハ区ノ同意ヲ得ベキモノトス第一、字本村壱箇所第二、字板地壱箇所第三、字中津留壱箇所第二、温水、木オトシ、鬼ヶ嶽及奥ヶ迫ノ水源地ハ部落民全部ノ同意ヲ得ルニアラザレバ第三者ニ譲渡,貸付並ニ使用セシムルコトヲ得ズ第三、(省略)第四、統一地ニ対スル管理使用ニ関シテハ村条例又ハ規則ヲ制定シ部落民ノ権利義務ヲ明カナラシムルモノトス(6) 旧石垣村から被告への財産等の承継と被告による堀田温泉の管理旧石垣村の区域は,昭和10年9月4日に廃止されて被告に編入され,その財産及び権利義務の一切は被告に承継 ムルモノトス(6) 旧石垣村から被告への財産等の承継と被告による堀田温泉の管理旧石垣村の区域は,昭和10年9月4日に廃止されて被告に編入され,その財産及び権利義務の一切は被告に承継された(乙17の1ないし3)。 これに伴い,堀田西温泉及び堀田東温泉の共同浴場は,いずれも被告の行政財産として登録され,別府市長が管理者となった。両温泉は,昭和11年4月1日,別府市市設温泉規程による市費をもって管理維持すべき市内温泉に加えられ(乙4,18の1ないし3,36),昭和34年4月1日に施行された改正前の別府市有温泉施設等設置管理条例において,(2)のとおり,被告が市費をもって維持管理する市有の温泉施設を設置するが,温泉施設の使用料は徴収しない温泉とされた。 (7) 泉源の掘削及び温泉の造成ア被告は,以下のとおり,堀田西温泉の泉源として古くから利用されてきた泉源(後記旧堀田第2泉源)及びその周囲で泉源の掘削を行った。 これらの泉源は,噴気沸騰泉であり,その温泉採取権者は,温泉台帳上,別府市長とされている(甲3の2)。 ① 堀田第1泉源被告は,昭和17年12月22日にDから592番の土地を譲り受け,昭和24年8月15日に同所において泉源を新規掘削した(同泉源は平成8年3月27日に埋孔確認)。その後,被告は,平成6年3月15日及び平成8年3月1日に代替掘削を行った(前者については平成8年3月27日に埋孔確認)(乙13,22)。 ② 堀田第2泉源593番の1の土地に古くからあった泉源(旧堀田第2泉源)が枯渇したため(昭和55年10月29日に廃孔確認),被告は,昭和54年5月30日に同所を再掘削したが,温泉の湧出がなかったため,更に同年11月20日に増掘を行った(甲3の2 泉源(旧堀田第2泉源)が枯渇したため(昭和55年10月29日に廃孔確認),被告は,昭和54年5月30日に同所を再掘削したが,温泉の湧出がなかったため,更に同年11月20日に増掘を行った(甲3の2,乙14)。 なお,同土地については,昭和50年6月20日に別府市大字鶴見字鶴見原の土地を要役地とし,温泉用水使用を目的とする地役権が設定され,同年9月22日にその旨の登記がされている(甲4の1)。 ③ 堀田第3泉源被告は,昭和30年12月27日,Eから616番の土地の所有権を譲り受け,昭和31年6月19日,同所で泉源を掘削した。その後,昭和37年12月18日に交換掘削が行われて以前の泉源は廃孔された(乙13,24)。 イ別府市長は,昭和18年3月11日,山本井路管理組合員との間で山本井路から堀田温泉等に有償で鉱泉用水の供給を受ける旨の山本井路分水契約を締結した。また,被告は,平成7年4月1日,蔵人井路水利組合との間で蔵人井路から有償で分水を受けて温泉造成用水として使用する旨の蔵人井路用水分水契約を締結した(乙40ないし43)。 ウ被告は,ボーリングにより第1ないし第3堀田泉源から噴出した噴気の飛散を防止するための櫓を設置し,泉源付近に建造した造成塔で山本井路及び蔵人井路から有償で供給を受けた水に噴気を当てて温泉を造成し,造成した温泉を貯湯タンクに送り,ここから,堀田西温泉,堀田東温泉のほか,他の市有区営温泉,区有区営温泉及び病院等の公共施設に温泉を供給してきた。平成7年以降は,水量,造成量,造成温度,給湯量などをコンピュータ管理し,別府市温泉総合整備事業によって設置された給湯設備において温泉の造成を行っている(乙19,39の1,2)。 (8) 共同浴場の維持管理ア被告は,市営市有 湯量などをコンピュータ管理し,別府市温泉総合整備事業によって設置された給湯設備において温泉の造成を行っている(乙19,39の1,2)。 (8) 共同浴場の維持管理ア被告は,市営市有温泉のうち入浴料を徴収しない無料温泉(市有無料開放温泉)について,地元自治会にその管理を委託しており,管理を依頼している温泉について,昭和42年までは管理謝礼金,昭和43年からは温泉維持管理補助金又は市営無料開放温泉維持管理謝礼金を支給してきた。 堀田西温泉及び堀田東温泉についても,被告は,昭和26年ころまでは専属的な清掃人を被告の費用で雇用していたが,その後,堀田自治会に管理を委託したため,地元住民が共同浴場の清掃を交代で行うようになり,代わりに被告から管理謝礼金又は温泉維持管理補助金の交付を受けるようになった。その額は,昭和45年ころは年額1万円であったが,その後,市有有料温泉の清掃委託料や諸物価にかんがみて増額され,平成10年度には年額15万8000円になった。同補助金は堀田自治会の一般会計とは別に温泉会計として管理され,後記堀田温泉組合ができた後はその会計に組み入れられ,清掃用具の購入費用等に充てられていた(以上,甲15,25,乙27の3,28の1及び7,29の1及び2,44の1ないし14,原告本人)。 そのほか,被告は,堀田東温泉の維持・管理に要する電気料,水道料金及び火災保険料等を支出しており,平成10年度ないし平成13年度の支出額は,年間約80万円ないし110万円であった(乙28の1)。 また,被告は,昭和51年10月,80万円を出捐して,堀田東温泉共同浴場の屋根及び内外装補修を行った(乙4)。 イ堀田地区では,昭和50年ころには,堀田地区への転入者で堀田西温泉及び堀田東温泉の利用を申し出 和51年10月,80万円を出捐して,堀田東温泉共同浴場の屋根及び内外装補修を行った(乙4)。 イ堀田地区では,昭和50年ころには,堀田地区への転入者で堀田西温泉及び堀田東温泉の利用を申し出た者から,入浴料や恩恵料の名目で概ね2000円ないし3000円を徴収し,両温泉にかかる会計に組み入れるようになった。さらに,後記堀田温泉組合が組織された後は,堀田自治会員で共同浴場の清掃を行わない者からは入浴料として年額5000円,堀田自治会の非加入者で清掃を行う者からは組合費として年額3600円,堀田自治会の非加入者でかつ清掃も行わない者からは年額8600円を徴収するようになった。堀田自治会員で共同浴場の清掃を行う者については入浴料等の徴収は行っていない(甲24,証人)。 ウ昭和63年ころ,堀田地区住民以外の入浴客が深夜に騒ぐなどしたことから,堀田自治会員で堀田温泉を利用する者が構成員となり,堀田温泉組合を組織し,堀田温泉組合規則を制定して,堀田地区住民以外の入浴を原則として禁止するとともに,入浴時間を朝6時から夜11時までとし,夜10時以降は温泉施設に施錠することにして,温泉組合に加入している各家庭にその鍵と統一した洗面器を配布したことがあった(同年6月1日より実施)。また,その趣旨を徹底するため,堀田自治会及び堀田温泉組合が堀田東温泉の入口に堀田自治会員以外の利用を禁止する旨の注意書を記載した看板を掲げていた。さらに,被告の観光経済部温泉課が作成・配布している「別府温泉公衆浴場マップ」にも堀田東温泉は組合員のみ利用が可能である旨の記載がある(甲21,22)。 (9) 被告は,堀田東温泉の温泉施設が県道の道路拡幅工事の拡幅地内にあり,収容の対象となり,その移転が必要になったため,平成12年11月9日に新堀田温泉の温泉用地造成 がある(甲21,22)。 (9) 被告は,堀田東温泉の温泉施設が県道の道路拡幅工事の拡幅地内にあり,収容の対象となり,その移転が必要になったため,平成12年11月9日に新堀田温泉の温泉用地造成工事に,平成14年9月5日には温泉施設の新築工事に着工し,平成15年3月14日に本体工事が竣工した(乙55)。 同月19日には,堀田西温泉及び堀田東温泉を廃止し,新堀田温泉を設置する旨の別府市有温泉施設等の設置及び管理に関する条例の一部を改正する条例(以下「改正条例」という。)が別府市議会で可決された。同条例は,同年4月8日に施行され,被告は,同日,堀田東温泉への給湯を廃止し,大分県知事に対し温泉利用廃止及び公衆浴場営業廃止の届出を行った(乙35,58の1,2,乙59の1,2)。 2 本案前の抗弁(原告らの申立適格)(1) 請求1及び2について(被告の主張)請求1記載の原状回復請求権及び同2記載の堀田東温泉の施設の撤去等の禁止請求は,入会集団の入会権自体に基づくもので,その管理処分に関する事項であるから,入会集団の一部構成員にすぎない原告らには原告適格がない。 また,堀田東温泉共同浴場は,改正条例によって廃止されたものであるところ,請求1記載の請求は,既に廃止された公の施設である公衆浴場に原告らが入湯できるような条例の制定等の措置を求めるものであり,被告にはその義務はない。 (原告らの主張)堀田東温泉共同浴場に無償入湯する権利は入会集団の構成員である各原告に属しているから,原告らは,その権利が妨害された場合には,各自その妨害排除を求める権利があり,また,妨害排除請求権に基づき,既に行われた妨害行為の原状回復として,同共同浴場への入湯に必要な措置を請求できる。 (2) 請求3について(被告の主張) 自その妨害排除を求める権利があり,また,妨害排除請求権に基づき,既に行われた妨害行為の原状回復として,同共同浴場への入湯に必要な措置を請求できる。 (2) 請求3について(被告の主張)入会集団の構成員に総有的に帰属する入会権自体の確認は,入会権者全員が共同してのみ提起し得る固有必要的共同訴訟であるところ,請求3記載の引湯・入湯権の確認は,温泉入会権の確認に他ならないから,入会集団の一部構成員にすぎない原告らが各自引湯・入湯権の確認を求めることはできない。 (原告らの主張)原告ら南立石区住民が有する温泉入会権は,本来は泉源に対する権利(湯口権)を含むもので,入会集団の構成員は,各自湯口権による受益のために必要な措置を講じる権利を有するところ,入会集団が湯口権を有する堀田泉源から産出される温泉が貯湯タンクに貯湯され,そこから堀田東温泉共同浴場その他に給湯されている現状においては,少なくとも,同タンクから堀田東温泉共同浴場に引湯して入湯する権利の範囲で存在し,仮に,同共同浴場が道路拡張のため物理的に廃止されたとしても,法的にはその代替施設に引湯し入湯する権利として継承される。 本件の紛争には,そのような原告ら南立石区住民の温泉入会権の存否が問題の根源にあるから,かかる権利の確認を求める利益がある。 3 本案に関する争点(1) 温泉入会権(湯口権,温泉専用使用権)の存否(原告らの主張)堀田温泉は,古くから堀田地区住民が共同で支配管理し,共同浴場を設置して共同利用に供してきた温泉であり,堀田地区住民は慣行に基づいて同温泉を排他的独占的に支配管理する総有的な権利としての温泉専用使用権(湯口権)を有し,これに基づき,堀田東温泉共同浴場に無償で入湯する権利を有する。 もともと,堀田地区内の泉源(鉱泉地) いて同温泉を排他的独占的に支配管理する総有的な権利としての温泉専用使用権(湯口権)を有し,これに基づき,堀田東温泉共同浴場に無償で入湯する権利を有する。 もともと,堀田地区内の泉源(鉱泉地)及び堀田西温泉の地盤は,旧石垣村南立石住民の共有であり,同住民は,古来から無償で随時同温泉に入湯し,旧石垣村に温泉が移管されるまでは同温泉の共同浴場の維持,修繕及び改築,原水,熱泉,引湯管等の管理を行い,当時は共有の性質を有する温泉入会慣行が成立していた。財産整理統一協定書によれば,鉱泉地及び堀田西温泉の土地建物の所有権が旧石垣村に移された後も,同温泉に対する入会慣行が旧石垣村に引き継がれたことは明らかであり,堀田東温泉は,旧石垣村が同協定に基づく債務を履行し,堀田西温泉の代替又は補完施設とするために設置した地元住民専用の共同浴場であるから,堀田西温泉に関する堀田地区住民の温泉専用使用権は,堀田東温泉にもそのまま継承されている。 また,堀田第1ないし第3泉源は,その沿革,場所に照らし,堀田西温泉の泉源の代替泉源ないしこれを補完するものであって,3つの泉源は実質的には一体のものとして管理運用されており,堀田西温泉と堀田東温泉には堀田温泉としての同一性,連続性がある。 (被告の主張)堀田西温泉の土地建物は,旧石垣村に有償譲渡されたのであり,同温泉の鉱泉地は財産整理統一協定の対象とはなっていないから,仮に,従前,南立石地区の住民が同温泉に関して温泉専用使用権を有していたとしても,同温泉の土地建物と同時に温泉専用使用権も旧石垣村に譲渡されたものというべきである。 また,堀田東温泉は堀田西温泉の代替施設として設置されたものではなく,両者には同一性,連続性はない。堀田東温泉や堀田泉源から得られる温泉についても,原告らが主張するところの入会 いうべきである。 また,堀田東温泉は堀田西温泉の代替施設として設置されたものではなく,両者には同一性,連続性はない。堀田東温泉や堀田泉源から得られる温泉についても,原告らが主張するところの入会集団がその設置,維持,管理,処分又はそのための費用負担をしてきたことはないから,これらについて旧慣習による総有的入会権が発生する余地はない。 (2) 合意(契約)に基づく温泉利用権の存否(原告らの主張)仮に温泉入会権が認められないとしても,旧石垣村は,南立石部落との間で,南立石区有財産である堀田西温泉の土地,建物及び泉源地を譲り受けるに当たり,南立石地元民が将来にわたり堀田の共同温泉に無償で入湯できる権利を認める合意をした。旧石垣村による堀田東温泉の設置は上記義務履行の一環としてなされたものであるから,被告は,堀田東温泉についても上記の義務を承継している。なお,上記義務は,第2泉源が利用できなくなった場合には,他の泉源を利用して堀田西温泉及び堀田東温泉の入湯を地元民に保障することも含むから,同泉源が埋抗されたことや被告が泉源の維持管理を行ってきたことは原告らの権利を否定する根拠とはならず,新たに掘削した泉源であることを理由に原告らの温泉入会権を否認するのは財産統合にあたっての合意ないし信義則に反する。 (被告の主張)原告らが主張するような合意を締結した事実はなく,黙示の合意もない。 原告らが堀田東温泉を無料で使用することができるのは,同温泉が改正前の別府市有温泉施設等設置管理条例により,使用料(入浴料)を徴収する施設とされていないからにすぎず,また,南立石地区住民のみが無料とされているわけでもない。 (3) 温泉入会権の解体,消滅(被告の主張)仮に,江戸時代から明治初年に旧慣による温泉利用権があったとして ないからにすぎず,また,南立石地区住民のみが無料とされているわけでもない。 (3) 温泉入会権の解体,消滅(被告の主張)仮に,江戸時代から明治初年に旧慣による温泉利用権があったとしても,その後の堀田泉源の設備,維持,管理の実態等からすれば,入会集団による総有的入会権たる温泉権はすでに解体,消滅している。 (原告らの主張)現在でも入会集団たる南立石区住民は堀田地区住民を中心に,温泉入会権という権利意識と慣行に基づく温泉管理の実態(共同温泉利用者からの加入権的費用の徴収,共同管理,掃除費用の徴収,市からの補助金の共同的利用等)が明確な形で存続している以上,温泉入会権が解体,消滅したとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 本案前の抗弁について入会集団の構成員が入会権の内容である使用収益を行う権能は,入会集団の構成員たる資格に基づいて個別的に認められる権能であって,入会権そのものについての管理処分の権能とは異なり,各自が単独で行使することができるものであるから,その使用収益権の行使を妨害する者がある場合には,各自が単独で,その妨害をする者を相手方として自己の使用収益権の確認又は妨害の排除を請求することができるものと解するのが相当である(最高裁昭和57年7月1日第一小法廷判決参照)。 なお,請求3において原告らが主張する引湯権は,各原告が堀田東温泉共同浴場又はその代替施設に入湯するための前提になるとはいえ,仮にこれに基づいて堀田東温泉の代替施設に引湯を行えば,入会集団の他の構成員の使用収益にも影響を及ぼすことになるのであり,かかる引湯権(及び代替施設へ引湯権を行使した場合の同代替施設への入湯権)を,入会集団の構成員が個別に行使し得る使用収益権というべきか否かについては疑問がないわけではない。しかし,原 なるのであり,かかる引湯権(及び代替施設へ引湯権を行使した場合の同代替施設への入湯権)を,入会集団の構成員が個別に行使し得る使用収益権というべきか否かについては疑問がないわけではない。しかし,原告らは,本件においては,あくまで,原告らが有する温泉入会権には,その内容たる使用収益権として請求3記載の引湯・入湯権が含まれ,これを入会集団の構成員各自が有する旨主張するので,以下,請求3記載の請求については,原告らの主張のとおり,個別の使用収益権の存否の確認を求めるものとして判断する。 そうすると,請求1ないし3記載の各請求については,これらの請求に係る実体法上の権利の存否及びこれらの権利を原告らが個別に有するか否か(これは本案の問題である。)はともかく,入会集団の構成員たる原告らに個別に認められるとする,原告ら主張に係る使用収益権の確認又は妨害の排除を求めているものと解することができるから,原告らに当事者たる適格が認められる。 2 本案に関する争点(1)について(1) 上記前提事実で認定した各事実によれば,以下のとおり認められる。 ア堀田西温泉については,明治年間は南立石地区(又は堀田地区)の住民が管理支配を及ぼしていたと推認し得る形跡が認められるが,大正年間に入ってからは,専ら旧石垣村が同温泉の管理,維持について決定し,営繕費用として少なからぬ金員を投じていた。 イ旧石垣村は,昭和3年に,堀田西温泉の土地(同所には旧堀田第2泉源があった)及び建物を観海寺温泉の土地建物とともに買い受けており,その際の代金は,その支払が10年の分割払であることからすると,ある程度まとまった額であったと推認される。また,その1年数か月後に財産整理統一協定により無償で旧石垣村に譲渡された財産については,前提事実(5)のとおり,財産権の移転後 割払であることからすると,ある程度まとまった額であったと推認される。また,その1年数か月後に財産整理統一協定により無償で旧石垣村に譲渡された財産については,前提事実(5)のとおり,財産権の移転後も地元住民に留保される当該財産の使用収益権及び無償譲渡の条件として旧石垣村に課された義務について具体的かつ明確な規定が置かれているのに対し,当時南立石村が有する財産の中でも特に高い財産価値を有していたと推測され,旧石垣村としてもその維持管理のため多額の費用を負担していた堀田西温泉及び観海寺温泉に関しては,譲渡人である南立石村住民の使用収益権についての取決めが記載された文書等の存在を証拠上認めることができない。そうすると,旧石垣村が旧堀田第2泉源の地盤を含む堀田西温泉及び観海寺温泉の敷地建物を買い受けた際,譲渡人である南立石地区(又は堀田地区)の住民に地盤所有権とは別に温泉専用使用権などの使用収益権が留保されたものとは考え難く,むしろ従来南立石地区(又は堀田地区)の住民が堀田西温泉に対して支配管理を及ぼしていたことにかんがみ,相当な対価を支払って温泉専用使用権も含めた権利を譲り受けたと認めるのが相当である。 これに対し,原告らは,財産整理統一協定書に統一の対象として堀田西温泉が挙げられていないのは,共同浴場の改修費捻出のために他の土地に先駆けて村有への移管を行う必要があったためであり,南立石部落の最も主要な財産というべき観海寺温泉及び堀田西温泉についても同協定の趣旨は当然に適用されると考えるべきであって,堀田東温泉は旧石垣村が同協定に基づいて設置した堀田西温泉の代替又は補完施設であると主張する。しかし,同協定書の頭書によれば,同協定書記載の条件が無償譲渡にかかる財産について定めたものであることは明らかであり,原告らが主張するように, 設置した堀田西温泉の代替又は補完施設であると主張する。しかし,同協定書の頭書によれば,同協定書記載の条件が無償譲渡にかかる財産について定めたものであることは明らかであり,原告らが主張するように,有償譲渡である堀田西温泉及び観海寺温泉についてまでその趣旨が及ぶと解する余地はなく,また,堀田東温泉が堀田西温泉の代替施設であることや,同温泉に対する権利義務関係が堀田東温泉に継承されると認めるべき証拠はない。 ウさらに,旧石垣村が被告に編入された後は,被告が多額の費用を負担して堀田西温泉及び堀田東温泉の泉源の掘削,温泉の造成,温泉施設の維持管理を行ってきたことは前提事実(7),(8)のとおりであり,それに対して堀田地区住民や堀田温泉組合が何らかの支配を及ぼした事実は認められない。両温泉の共同浴場の清掃についても,昭和26年ころまでは被告が雇用していた清掃人が行っており,地元住民が自ら清掃を行うようになったのは,地元自治会が被告から同共同温泉の管理の委託を受けてからにすぎない。入浴料や恩恵料等の名目での金銭の徴収についても,その開始時期や徴収の趣旨は証拠上明らかではない。 (2) 以上を総合すれば,かつては堀田西温泉について南立石区(又は堀田地区)の住民の温泉入会慣行が存在したことがあったと認める余地はあるものの,仮にかかる温泉入会慣行が存在したとしても,昭和3年に同温泉の土地建物が旧石垣村に売却された際には,同温泉についての温泉専用使用権もこれに含めて旧石垣村に譲渡されたと認められる。他に,堀田西温泉から堀田東温泉への温泉入会慣行の継承や堀田東温泉について新たな温泉入会慣行の成立を認めるに足りる証拠はない。 なお,原告らは,旧石垣村及び被告が一貫して堀田地区住民に堀田西温泉及び堀田東温泉での無償入湯を認めてきたのは,堀田地区 田東温泉について新たな温泉入会慣行の成立を認めるに足りる証拠はない。 なお,原告らは,旧石垣村及び被告が一貫して堀田地区住民に堀田西温泉及び堀田東温泉での無償入湯を認めてきたのは,堀田地区住民が両温泉について無償入湯の権利を含む温泉専用使用権を有していることの証左であるとも主張する。しかし,旧石垣村が堀田西温泉について入湯料徴収の対象から除外したのは,同村に居住する全住民であり,その中には周辺に堀田西温泉以外の共同温泉を有する地域や日頃堀田西温泉を頻繁に利用するとは考え難い地域の住民も多く含まれていたはずであり,同様に,被告についても,堀田西温泉及び堀田東温泉への無償入湯の対象を南立石地区(又は堀田地区)の住民に限定したことはないから,堀田地区住民の無償入湯の事実をもって,原告らの権利の存在を推認することはできない。 (3) よって,その余の点について判断するまでもなく,本案に関する争点(1)についての原告らの主張には理由がない。 3 本案に関する争点(2)について堀田西温泉が財産整理統一協定の対象となっていないのは上記2で認定したとおりであり,他に原告らが主張するような合意の存在を伺わせる事情はない。 よって,この点に関する原告らの主張には理由がない。 4 上記2及び3によれば,その余の争点について判断するまでもなく,請求1ないし3の請求は理由がない。 5 よって,本訴請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 大分地方裁判所民事第1部裁判長裁判官須田啓之裁判官影浦直人裁 官須田啓之 影浦直人 餘多分亜紀 (別紙省略)

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