平成15(ネ)370 不当利得等返還請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成16年4月14日 広島高等裁判所 山口地方裁判所 平成14(ワ)213
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判決文本文6,216 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人は,控訴人に対し,金5941万9537円及びこれに対する平成14年9月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被控訴人控訴棄却第2 事案の概要 1 本件は,株式会社A(破産会社)が被控訴人に対し手形割引を依頼して預託した原判決添付の別紙手形目録記載の約束手形2通(本件手形)について,被控訴人がこれを割り引かず,破産会社が破産宣告を受けて控訴人が破産管財人に選任された後も返還せずに,破産手続外で取り立てて,破産会社の被控訴人に対する債務の弁済に充当したとして,不当利得を理由に被控訴人が支払を受けた5941万9537円の返還と遅延損害金の支払を求めた事案である。 被控訴人は,本件手形については商事留置権が成立しており,破産会社との間に締結した銀行取引約定に基づいて,これを取り立てて破産会社の債務の弁済に充当したものであると主張して争い,控訴人は,被控訴人は破産会社から本件手形を詐取したものであり,また,破産法72条4号の趣旨に照らしても商事留置権は成立せず,そうでないとしても商事留置権の主張は権利の濫用であって許されず,仮に商事留置権の成立が認められるとすれば破産法72条4号により破産会社の担保供与行為を否認するなどと主張したが,原判決は,控訴人の主張を採用せずに,その請求を棄却した。そのため,控訴人が不服を申し立てたものである。 2 以上のほかの事案の概要は,次のとおり付加するほかは,原判決の事実及び理由の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるので,これ の請求を棄却した。そのため,控訴人が不服を申し立てたものである。 2 以上のほかの事案の概要は,次のとおり付加するほかは,原判決の事実及び理由の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるので,これを引用する。 (1) 控訴人の当審における主張ア被控訴人から新規融資を打ち切られてしまうと,破産会社は,平成14年2月20日の決済ができないだけでなく,運転資金が調達できずにその後の事業継続ができなくなることは明らかである。そのために破産会社は同月20日に破産申立てをしたのであり,手形不渡りを1回出しても倒産するわけではないとする原判決の認定は誤りである。被控訴人が新規融資を再考しない限り,破産会社が支払不能に陥ることは明らかであり,被控訴人もその認識を有していたのである。 イ上記のとおり手形不渡りが避けられず,事業継続ができなくなる状況の中で,同月20日の決済資金確保のために破産会社が手形割引を依頼するのは不合理であり,依頼の意図が従業員の退職金と給与の支払原資の確保であったことは明らかである。 ウ被控訴人が,同月20日の決済資金の手当の有無にかかわらず本件手形の割引をする予定であったとは考えられない。支払停止が予想される状況での新たな信用供与は金融機関の態度として不合理であり,被控訴人は,破産会社の支払停止を見越して,債権回収を図るために本件手形を受領したのである。また,被控訴人は破産会社が破産申立てに及ぶ可能性を十分に認識していたものである。 エ被控訴人は手形割引を実行する意思がないことを秘して,同月20日に破産会社が手形不渡り事故を起こして支払停止となることを予見しながら,直ちに割引が可能であるなどと虚偽を申し述べて,債権回収のために本件手形を騙し取ったのである。その手形取得は不法行為であり,商事 に破産会社が手形不渡り事故を起こして支払停止となることを予見しながら,直ちに割引が可能であるなどと虚偽を申し述べて,債権回収のために本件手形を騙し取ったのである。その手形取得は不法行為であり,商事留置権は成立しない。また,偏頗行為を否認して債権者間の公平を図る破産法72条4号の趣旨は,法定担保権の成立に関して偏頗行為が存する本件の場合にも援用されるべきであり,その意味から商事留置権の主張は権利濫用として排斥すべきである。 オ破産会社は,同月18日又は同月19日には手形割引が受けられると誤信して本件手形を被控訴人に預託したものであり,重要な要素の錯誤があり無効である。したがって,被控訴人の本件手形取得には商行為性がなく,商事留置権は成立しない。 (2) 被控訴人の当審における主張ア被控訴人は,平成14年2月20日には手形割引を実行すべく準備をしていたのである。破産会社が破産申立ての予定でいることは全く知らなかった。破産会社も破産を回避しようとしていたもので,手形割引により得た資金を法的整理手続の費用や労働債権の支払に充てようとした旨の主張は後日に思いついたものである。 イ本件手形は同月20日に割り引くものとして授受されたものであって,何らの錯誤もない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり付加訂正するほか,原判決の事実及び理由の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決10頁25行目の「甲1,甲3」を「甲1ないし3」に改め,「甲5ないし10,」の次に「甲17,」を加え,25行目から26行目にかけての「乙6ないし8」を「乙6ないし9」に改める。 (2) 同12頁2行目の「いたことや,」の次に「支払条件の 3」に改め,「甲5ないし10,」の次に「甲17,」を加え,25行目から26行目にかけての「乙6ないし8」を「乙6ないし9」に改める。 (2) 同12頁2行目の「いたことや,」の次に「支払条件の悪化に関してはメーカーとの間で調整すべきであること,」を加え,8行目の「新規融資はできないことを伝えた。」を「新規融資はできないが,貸出金についてすぐに返済を求めるわけではなく,資金決済のための手形割引についても引き続き実行することを伝え,これに対し,破産会社の代表者やBは,再度取引先のC株式会社に支援を依頼するほか,メーカーに支払を待って貰うなど,今後のことは話し合ってみる旨申し述べた。」に,11行目の「相談した。」を「相談をした。」に改める。 (3) 同13頁7行目の「決済予定は,」の次に「被控訴人の認識していたところによれば,」を加える。 (4) 同15頁4行目から5行目にかけての「状態であったことが認められるところ,」を「状態であったことが,また,証拠(乙14ないし16,原審における証人D)によれば,平成13年10月以降は毎月20日の決済日の前に破産会社から手形割引の依頼を受けても,割引は決済日に実行していたことがそれぞれ認められるのであって,」に改める。 (5) 同16頁8行目の「(ア)」を削除し,13行目の「採用できない。」を「採用できず,また,これに沿う内容のGの陳述書(甲17,22)の記載や原審における証言も同様であって,控訴人の前記主張は認められない。」に改める。 (6) 同17頁14行目から18頁14行目までを次のとおりに改める。 「  しかし,前記のとおり,被控訴人は破産会社から同月20日の決済のために本件手形の割引依頼を受けたものと認められるところ,前記1(1)の認定事実と証拠(乙9,13,原審におけ おりに改める。 「  しかし,前記のとおり,被控訴人は破産会社から同月20日の決済のために本件手形の割引依頼を受けたものと認められるところ,前記1(1)の認定事実と証拠(乙9,13,原審における証人D)及び弁論の全趣旨によれば,同月15日に被控訴人が新規融資には応じられないことなどを破産会社側に伝えた際に,破産会社の代表者やBらは,再度C株式会社に支援を依頼するなど資金調達になお努力するほか,メーカーに支払を待って貰うことなどを申し述べていたこと,それでもE銀行での決済分を含めると資金繰りは困難と思われたが,同月20日の被控訴人における決済資金の不足額がさほど多額ではないことからみて,被控訴人は,あるいは対応は可能ではないかと判断していたこと,被控訴人はこれまでも資金計画にない融資も行うなど破産会社を支援してきており,破産会社が決済資金を工面すれば当然のこと,仮に破産会社の努力にもかかわらず工面できずに決済資金が不足するという事態になっても,メインバンクとして破綻回避のために可能な協力をし,資金決済のために依頼された本件手形の割引には応じなければならないとの認識でいたこと,現に,その後の同月19日には,C株式会社からの支援が受けられる旨の連絡が破産会社からあり,被控訴人としては同月20日の決済は可能と考え,必要な伝票の作成等,その準備もして,割引枠が空けば本件手形の割引を実行して支払手形の決済を行う予定でいたこと,被控訴人は破産会社が破産の申立てを検討していることは全く知らず,同月20日の午後になってはじめて破産申立ての事実を知ったことがそれぞれ認められるのであり,これらの事実に加えて,割引対象の手形の振出人が信用できるものであれば,少なくとも手形割引によって新たな損失を被るおそれはないことをも併せ考えると,被控訴人が同月18 がそれぞれ認められるのであり,これらの事実に加えて,割引対象の手形の振出人が信用できるものであれば,少なくとも手形割引によって新たな損失を被るおそれはないことをも併せ考えると,被控訴人が同月18日の時点で破産会社の決済資金のために手形割引に応じることも不合理ということはできず,同月20日の決済日に手形の割引枠が空けば本件手形の割引を実行する予定であったものと認めるのが相当である。これに反して,控訴人は,被控訴人には,本件手形の割引依頼を受けた時点で手形割引を実行する意思はなかった旨主張するのであるが,これを認めるに足りる的確な証拠はなく,上記の各事実からしても控訴人の主張は認められない。」(7) 同18頁22行目の「被告は」の前に「上記のとおり,」を加え,25行目から19頁7行目までを,「また,上記のとおり,被控訴人は,2月20日の決済日に,手形の割引枠が空けば本件手形の割引を実行する予定でいたものと認められることからして,仮に,被控訴人において,同月18日の時点で,破産会社が資金の工面ができずに同月20日に手形の不渡りを出すことが予測できたものとしても,直ちに,被控訴人が本件手形の手形金を破産会社に対する債権の回収に充てる意図をもっていたということにはならない。」に改める。 (8) 同19頁15行目から16行目にかけての「認められるが,」の次に「他行への振替えのためという理由であった上(原審における証人D),」を加える。 (9) 同20頁21行目から24行目までを,次のとおりに改める。 「(3) しかし,仮に本件手形を預託したことが担保の供与に等しいものと評価できるとしても,本件においては上記のとおり破産会社の2月20日の決済日における資金決済のために手形割引を被控訴人に依頼してこれを預託したものと認められ,その したことが担保の供与に等しいものと評価できるとしても,本件においては上記のとおり破産会社の2月20日の決済日における資金決済のために手形割引を被控訴人に依頼してこれを預託したものと認められ,その後,破産会社が本件手形の返還を求めた事実も認められないのであるから,破産会社にとって義務に属しない担保の供与をしたものということはできず,また,本件手形が預託された時点では,被控訴人は破産会社が破産申立てを検討していることは全く知らず,同月20日の決済日も対応は可能であり,仮に困難としても必要な協力はする考えでおり,本件手形の割引も実行するつもりでいたことが認められるのであって,破産債権者を害するとの認識はなかったものと認められる。 なお,証拠(乙9,10,14,原審における証人D及び同F)によれば,本件手形の割引が実行されなかったのは,破産会社が破産申立てをしたことが判明したためであることが認められ,その前から被控訴人が手形割引を実行しない予定でいたことは認められない。」(10) 控訴人の当審における主張についてア控訴人は,被控訴人から新規融資を断られた段階で破産会社が事業を継続できないことは明らかであり,それなのに決済資金確保のために本件手形の割引を依頼することはありえない旨主張する。 しかし,新規融資を断られた後も,破産会社は法的整理手続の検討を始める一方で,C株式会社に対して支援の依頼を続け,応諾の回答を得るや,これを被控訴人に伝えて新規融資について再考を求めたり,法的整理手続に関しても,先ず事業継続が可能な民事再生手続によることを検討しているのであって(甲3),必ずしも事業継続を早期に諦めていたわけではない。また,本件手形について被控訴人に割引を依頼して,これを預託した時点では,まだ破産申立てをする 事再生手続によることを検討しているのであって(甲3),必ずしも事業継続を早期に諦めていたわけではない。また,本件手形について被控訴人に割引を依頼して,これを預託した時点では,まだ破産申立てをすることが決定していたわけでもないのであるから,本件手形の割引依頼の趣旨が従業員の給与等や法的整理手続のための費用の原資とするためであることが明らかとはいえず,同月20日の決済日のための割引依頼であったとする上記判断を妨げるものではない。 イまた,控訴人の,被控訴人は破産会社の支払停止や破産申立てを予測して,手形割引を実行する意思がないのに,債権回収を図るために本件手形を受領したとする主張や,本件手形は騙取されたもので商事留置権は成立せず,仮にそうでないとしても商事留置権の主張は権利濫用である旨の主張が認められないことは既に述べたとおりである。 ウ控訴人は,さらに,破産会社は同月18日か19日には手形割引が実行されると誤信して本件手形を被控訴人に預託したのであるから,錯誤があるとも主張するが,本件手形が同月20日の決済日の決済資金に充てるために割引依頼されたものと認められることは既に述べたとおりであり,本件手形を預託する時点で,その点に錯誤が存したものとは認められない。また,仮に破産会社のBにおいて2月20日以前に割引が実行されると誤信していたものとしても,本件全証拠によっても本件手形を預託する際にその旨の意思ないし認識が表示された事実を認めることはできず,したがって,本件手形の預託行為が錯誤により無効となるものとも認められない。 2 以上によれば,控訴人の請求は理由がなく,これを棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がない。よって,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第3部裁判長 上によれば,控訴人の請求は理由がなく,これを棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がない。よって,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第3部裁判長裁判官西島幸夫 裁判官工藤涼二裁判官齋藤憲次

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