主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 申立 1 控訴の趣旨(1) 原判決中の控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 被控訴人の請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 2 控訴の趣旨に対する答弁主文と同旨第2 事案の概要宗教法人である被控訴人は,被控訴人の住職であり代表役員であった控訴人が被控訴人の包括宗教団体であるAから住職の地位を罷免するとの懲戒処分を受け,被控訴人の住職及び代表役員の地位を喪失したことにより,原判決別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)の占有権原を失ったとして,控訴人に対し,所有権に基づき,本件建物の明渡しを求めるとともに,不法行為に基づく損害賠償として賃料相当損害金の支払いを求めた。 原審は,本件建物の明渡しと賃料相当損害金に関する請求の一部を認容したので,占有権原の喪失を争う控訴人が控訴した。 1 争いのない事実等(1) 当事者等被控訴人は,宗教法人Aを包括宗教団体とする宗教法人であり,本件建物を所有している。 控訴人は,平成9年10月2日,A管長Bより,被控訴人住職に任命され,同日ころより,本件建物を占有している。 (2) 法律,規則の規定等(甲1,甲2の1,2)① 被控訴人の所属宗教法人「C」規則(以下「被控訴人規則」という。)3条「この法人の包括団体は,宗教法人「A」とする。」② Aにおける管長に関する規定(甲2の1)ア A宗規(以下「宗規」という。)13条1項「本宗に管長一人を置き,本宗の法規で定めるところによって,一宗を総理する。」イ同 Aにおける管長に関する規定(甲2の1)ア A宗規(以下「宗規」という。)13条1項「本宗に管長一人を置き,本宗の法規で定めるところによって,一宗を総理する。」イ同条2項「管長は,法主の職にある者をもって充てる。」ウ宗規14条1項「法主は,宗祖以来の唯一人の血脈を相承し,本尊を書写し,日号,上人号,院号,阿闍梨号を授与する。」エ同条2項「法主は,必要を認めたときは,能化のうちから次期の法主を選定することができる。但し,緊急やむを得ない場合は,大僧都のうちから選定することもできる。」③ 被控訴人の役員に関する規定(甲1,甲2の1,2)ア被控訴人規則6条「この法人には,4人の責任役員を置き,そのうち1人を代表役員とする。」イ同規則7条「代表役員以外の責任役員を総代という。」ウ(ア) 同規則8条1項「代表役員は,Aの規程によって,この寺院の住職の職にある者をもって充てる。」(イ) 同条2項「代表役員以外の責任役員は,檀徒又は信徒のうちから代表役員が選定する。但し,この寺院に在籍の教師のうちから1人に限り選定することもできる。」(ウ) 同条3項「代表役員以外の責任役員は,Aの代表役員の承認を受けなければならない。」エ A宗規(以下「宗規」という。)172条1項「住職,主管及びそれらの代務者は教師のうちから,(中略)管長がこれを任免する。」オ宗規235条「寺院又は教会において総代を定めたときは,住職または主管よりこの法人の代表役員の承認を受けなければならない。」カ (中略)管長がこれを任免する。」オ宗規235条「寺院又は教会において総代を定めたときは,住職または主管よりこの法人の代表役員の承認を受けなければならない。」カ A宗制(以下「宗制」という。)43条2項「寺院または教会の代表役員以外の責任役員及びそれらの代務者は,当該寺院または教会の規則で定めるところによって選定し,この法人の代表役員の承認を受けなければならない。」④ Aの懲戒処分に関する規定ア宗規244条「僧侶に対する懲戒の種目を左の六種とする。 四罷免住職又は主管の職を罷免する。」イ宗規247条「左に掲げる各号の一に該当する者は,その情状に応じて,罷免,奪階又は擯斥に処する。 九本宗の法規に違反し,訓戒を受けても改めない者。」ウ宗規251条「僧侶に対する懲戒は,総監において事実の審査を遂げ,参議会の諮問及び責任役員会の議決を経てこれを行う。」エ宗規253条「懲戒は,管長の名をもって宣告書を作り,懲戒の事由及び証憑を明示し,懲戒条規適用の理由を付して行なう。」⑤ 宗教法人の規則変更の手続に関する規定ア(ア) 宗教法人法(以下「法」という。)26条1項「宗教法人は,規則を変更しようとするときは,規則で定めるところによりその変更のための手続をし,その規則の変更について所轄庁の認証を受けなければならない。この場合において,宗教法人が当該宗教法人を包括する宗教団体との関係(以下「被包括関係」という。)を廃止しようとするときは,当該関係の廃止に係る規則の変更に関し当該宗教法人の規則中に当該宗教法人 い。この場合において,宗教法人が当該宗教法人を包括する宗教団体との関係(以下「被包括関係」という。)を廃止しようとするときは,当該関係の廃止に係る規則の変更に関し当該宗教法人の規則中に当該宗教法人を包括する宗教団体が一定の権限を有する旨の定がある場合でも,その権限に関する規則の規定によることを要しないものとする。」(イ) 同条2項「宗教法人は,被包括関係の設定又は廃止に係る規則の変更をしようとするときは,第27条(宗教法人は,第26条1項の規定による認証を受けようとするときは,認証申請書及びその変更しようとする事項を示す書類2通に左に掲げる書類を添えて,これを所轄庁に提出し,その認証を申請しなければならない。)の規定による認証申請の少くとも2月前に,信者その他の利害関係人に対し,当該規則の変更の案の要旨を示してその旨を公告しなければならない。」(ウ) 同条3項「宗教法人は,被包括関係の設定又は廃止に係る規則の変更をしようとするときは,当該関係を設定しようとする場合には第27条の規定による認証申請前に当該関係を設定しようとする宗教団体の承認を受け,当該関係を廃止しようとする場合には前項の規定による公告と同時に当該関係を廃止しようとする宗教団体に対しその旨を通知しなければならない。」イ被控訴人規則33条「この規則を変更しようとするときは,第11条(この法人の事務は,責任役員会において,責任役員の定数の過半数で決し,その議決権は,各々平等とする。但し,可否同数のときは,代表役員の決するところによる。)の規定にかかわらず,責任役員会において,責任役員の定数の全員一致の議決を経た後,布教区宗務支院長の同意を得て,Aの代表役員の承認及び広島県知事の認証を受けなければなら 役員の決するところによる。)の規定にかかわらず,責任役員会において,責任役員の定数の全員一致の議決を経た後,布教区宗務支院長の同意を得て,Aの代表役員の承認及び広島県知事の認証を受けなければならない。この法人が合併又は解散しようとするときも又同様とする。」⑥ 宗教法人の被包括関係の廃止に係る不利益処分の禁止等ア法78条1項「宗教団体は,その包括する宗教法人と当該宗教団体との被包括関係の廃止を防ぐことを目的として,又はこれを企てたことを理由として,第26条3項の規定による通知前に又はその通知後2年間においては,当該宗教法人の代表役員,責任役員その他の役員又は規則で定めるその他の機関の地位にある者を解任し,これらの者の権限に制限を加え,その他これらの者に対し不利益の取扱をしてはならない。」イ同条2項「前項の規定に違反した行為は,無効とする。」(3) 控訴人に対する懲戒処分① 被控訴人における責任役員として,D,E,Fが選定されていたが,被控訴人規則9条2項「代表役員以外の責任役員の任期は,4年とする。但し,再任を妨げない。」及び同条4項「代表役員以外の責任役員は,辞任又は任期満了その他の事由によって欠けたときは,同時にその資格を失う。」との規定(甲1)により,平成11年7月31日,任期満了となり,その資格を失った。 ② 控訴人は,上記責任役員の任期終了前に後任として,G,E,Hの3名を選定し,Aに対し同年7月19日付け「総代改選承認願」を提出したが,その承認がないうちに,これらの者を解任し,同年8月20日,新たに,責任役員として,I,J,Kの3名を選定した。 控訴人は,同日,Aの承認を得ないまま,I,J,Kの3名をもって,責任役員会を開催し,包括宗教 に,これらの者を解任し,同年8月20日,新たに,責任役員として,I,J,Kの3名を選定した。 控訴人は,同日,Aの承認を得ないまま,I,J,Kの3名をもって,責任役員会を開催し,包括宗教団体であるAとの被包括関係廃止(これは,宗教法人法上の用語で,以下では,一般的用語である「宗派離脱」を用いることもある。)を含む被控訴人規則の一部を変更する旨の決議をし,法26条3項に基づき,被包括関係廃止の通知をAに送付するとともに,同条3項及び被控訴人規則5条に従い,事務所の掲示場に被包括関係廃止の公告をした(この控訴人の一連の行為を,以下「本件宗派離脱行為」という。)。 ③ A宗務院(以下「宗務院」という。)は,同年8月30日付の召喚通知書で,控訴人に対し,同年9月13日午後3時に宗務院まで出頭するよう求めるとともに,その際,被控訴人壇信徒名簿を持参するように求めた(乙2)。 ④ Aは,同年10月16日,召喚に応じて宗務院に出頭した控訴人に対し,新たに選定した被控訴人責任役員3名を,A代表役員の承認を経ないままで責任役員として責任役員会に出席させ議決権を行使させたことが,被控訴人規則及び宗規違反になるので,白紙撤回の是正措置をとるよう求めた。 ⑤ さらにAは,同年10月18日付の「訓戒」と題する内容証明郵便で,控訴人に対し,前項同様の点を指摘し,控訴人を訓戒するとともに,同月31日までに,I,J,Kの3名は被控訴人責任役員ではないこと,同年8月20日に開催された責任役員会に同人らを出席させて,責任役員として違法に権限を行使させたこと,同会議の議決はすべて無効であること及び同会議の議決に基づいて行った規則変更の公告等の一連の行為をすべて撤回することを確認した書面並びに同月20日付でAに提出された「総代改選承認願」を取り下げる と,同会議の議決はすべて無効であること及び同会議の議決に基づいて行った規則変更の公告等の一連の行為をすべて撤回することを確認した書面並びに同月20日付でAに提出された「総代改選承認願」を取り下げる旨の書面を宗務院に提出すること,I,J,Kに対し,責任役員への選定を取り消す旨の「総代選定取消通知書」を内容証明郵便にて送付し,その謄本を宗務院に提出すること,被控訴人に所属する壇信徒に対し,謝罪文を郵送し,一通を宗務院に提出することを求めた(甲4)。 ⑥ 控訴人は,同年10月28日差し出しの「通知書」と題する内容証明郵便で,Aに対し,被包括関係廃止に伴う規則変更手続の一環として行われた責任役員の選定には,包括宗教団体たるA代表役員の承認は不要であるなどと主張して,I,J,Kの責任役員選定手続に何ら違法無効な点はないとして,これを撤回することを拒否する旨通知した(乙3)。 ⑦ Aは,同年11月9日,控訴人の本件宗派離脱行為及び前項記載の行為が,宗規247条9号(「本宗の法規に違反し,訓戒を受けても改めない者」)に該当するとして,控訴人を被控訴人の住職から罷免する旨の懲戒処分に付し(以下「本件罷免処分」という。),同日付の「宣告書」と題する内容証明郵便(発送は同月11日)にて,控訴人に通知した(甲9)。 ⑧ Bは,同年11月9日付けで,後任の被控訴人住職としてLを任命した(甲10)。 2 争点及び当事者の主張次に当審における控訴人の主張を付加するほかは,原判決7頁10行目から19頁9行目までに記載のとおりである(ただし,同引用部分の「包括宗教法人」を「包括宗教団体」と改める。)から,これを引用する。 (当審における控訴人の主張)(1) 法律上の争訟性について① 宗規247条9号(罷免事由)の解釈における法 分の「包括宗教法人」を「包括宗教団体」と改める。)から,これを引用する。 (当審における控訴人の主張)(1) 法律上の争訟性について① 宗規247条9号(罷免事由)の解釈における法律上の争訟性ア宗規247条9号は「『正当な理由なくして』本宗の宗規に違反し,訓戒を受けても改めない者」の意味に限定して解釈すべきである。そして,ここでいう「正当な理由」にはAの教義ないし信仰の内容に関する事項が含まれ,これを判断するには宗教上の教義ないし信仰の内容について一定の評価をすることを避けることができないから,本件訴えは法律上の争訟性を欠くというべきである。なぜならば,Aは,その教義ないし信仰内容に基づき,本件宗派離脱行為及び1(3)⑥記載の行為をもって,宗規247条9号に該当するとして本件罷免処分をしたのであるから,控訴人の上記各行為が「正当な理由」に基づくものであるか否かを考慮することなく同処分の効力を判断することは,結果として宗教的に対立する一方当事者の教義ないし信仰内容に基づく宗教的な判断を裁判所が支持し,他方当事者の教義や信仰判断の内容に基づく判断を封ずることになり,国家の宗教的中立性を定めた憲法20条に反するからである。 イ仮に,当該宗教団体がその教義ないし信仰に基づいて定立した規範については,当該宗教団体の教義ないし信仰に反する教義ないし信仰を理由として,その遵守を拒むことはできないとしても,控訴人が主張する「正当な理由」がAの教義ないし信仰に反する教義ないし信仰に基づくものであるか否かを判断するためには,Aの教義ないし信仰と控訴人が主張する教義ないし信仰をそれぞれ明らかにし,この両者がAの教義ないし信仰から見て異なっているか否かを判断しなければならないはずであり,かかる判断をするためにはAの教義ない の教義ないし信仰と控訴人が主張する教義ないし信仰をそれぞれ明らかにし,この両者がAの教義ないし信仰から見て異なっているか否かを判断しなければならないはずであり,かかる判断をするためにはAの教義ないし信仰の内容に立ち入ることは必要不可欠である。 ② 懲戒権限の存否判断における法律上の争訟性ア宗規14条1項によれば,Aにおける法主は「宗祖以来の唯授一人の血脈を相承」するものとされており,また,法主の選定手続は前法主からの血脈相承によるものとされている。 しかるところ,同項の「宗祖以来の血脈」とは,宗祖以来の信心を意味するものであり,時の法主がMの教義に相違して己義を構えたならばこれを用いてはならない,つまり法主として扱ってはならないとされ,Mの教義に違背する者はAの僧侶ではないとされていること,また,Aにおいて,法主の地位は,血脈相承という宗教行為によって得られる純粋に宗教上の地位であり,法主に本尊書写等の特別の宗教上の権能が与えられているのは法主に現に血脈が存在するからに他ならないことからすると,法主が宗祖Mの教義を否定した場合には,宗祖以来の「血脈」を失ったものとして法主の地位を喪失するものと解すべきである。 イ宗規上,法主の地位喪失に関する明文の規定が置かれていないとしても,その趣旨が法主の地位喪失を認めないということにあるのか否かは,Aにおける法主の位置付け,地位取得規程の内容及び趣旨等に照らして判断する必要がある。即ち,宗規上,法主の地位喪失が想定されているか否かを判断するためには,ここにいう「血脈相承」の意味と,「血脈相承」と法主の地位との関係を明らかにすること,従ってAにおける教義ないし信仰の内容に立ち入ることが必要不可欠である。 (2) 本件罷免処分の有効性について① 法26 承」の意味と,「血脈相承」と法主の地位との関係を明らかにすること,従ってAにおける教義ないし信仰の内容に立ち入ることが必要不可欠である。 (2) 本件罷免処分の有効性について① 法26条1項及び78条の類推適用について被包括宗教法人の宗派離脱の自由は,被包括宗教法人がいかなる宗派に属するかという宗教的教義,信念にかかわるものであり,被包括宗教法人の信教の自由(憲法20条)にその根拠を有するものである。そして,一般に,被包括宗教法人は包括宗教団体に対し劣弱な地位に立つものであり,被包括宗教法人が宗派離脱をしようとする際に包括宗教団体から妨害されることが多く,離脱防止を目的として住職(代表役員)等に対して懲戒処分や除名処分などの不利益処分がなされるばかりでなく,何らかの懲戒行為に該当することに藉口して不利益処分が行われることが多い。このため,法は,26条1項及び78条の各規定を置いて宗派離脱の自由を特に保障したものである。 このような法の趣旨からすると,上記各規定は,単に被包括宗教法人の団体としての意思決定の手続に留まらず,被包括宗教法人の団体としての意思形成過程を含めた宗派離脱に向けた行動のすべてにおいて,包括宗教団体の不当な干渉から宗派離脱の自由を保護しているものと解すべきであって,被包括関係を廃止しようとしてなされた被控訴人の責任役員の選定には,被控訴人規則8条3項,宗制43条2項,宗規235条は適用されないと解すべきである。 ② 本件罷免処分の法78条1項該当性について①で述べたとおり,法78条は,被包括宗教法人の団体としての意思形成過程を含めた宗派離脱に向けた行動のすべてにおいて,包括宗教団体の不当な干渉から宗派離脱の自由を保護しているものと解すべきであり,加えて,本件罷免処分は, 条は,被包括宗教法人の団体としての意思形成過程を含めた宗派離脱に向けた行動のすべてにおいて,包括宗教団体の不当な干渉から宗派離脱の自由を保護しているものと解すべきであり,加えて,本件罷免処分は,大多数の信徒の意向に沿った本件宗派離脱行為を妨害する目的でなされたものであるから,法78条1項に該当し無効である。 第3 証拠原審記録中の書証目録に記載のとおりであるから,これを引用する。 第4 争点に対する判断 1 争点1(法律上の争訟性)について(1) 宗教法人が住職に対してする建物明渡請求という具体的な権利義務関係に関する訴訟であつても,宗教団体内部においてされた住職罷免等の懲戒処分の効力が請求の当否を決する前提問題となっており,その効力の有無が当事者間の紛争の本質的争点をなすとともに,それが宗教上の教義,信仰の内容に深くかかわつているため,同教義,信仰の内容に立ち入ることなくしてその効力の有無を判断することができず,しかも,その判断が訴訟の帰趨を左右する必要不可欠のものである場合には,同訴訟は,その実質において法令の適用による終局的解決に適しないものとして,裁判所法3条にいう「法律上の争訟」に当たらないというべきである。 これを本件についてみるに,前記第2の1(3)の事実と甲4,9,乙1,3及び弁論の全趣旨によれば,本件罷免処分をした経緯は,(あ)控訴人は,Aの被包括法人である被控訴人の住職であったが,Aと対立関係にあるN会員であったことから,自らの宗教的信念に基づき被控訴人をAから離脱させることを決意し,一旦選定された責任役員を解任し新たに宗教的信念を同じくする責任役員3名を選定し,責任役員会において被包括関係廃止を含む一連の本件宗派離脱行為を行ったこと,(い)Aは,控訴人の上記行為に対し,これが宗制43条2項,宗規 員を解任し新たに宗教的信念を同じくする責任役員3名を選定し,責任役員会において被包括関係廃止を含む一連の本件宗派離脱行為を行ったこと,(い)Aは,控訴人の上記行為に対し,これが宗制43条2項,宗規235条及び被控訴人規則8条3項等に抵触することを理由に控訴人を召還するなどして,上記行為の白紙撤回の是正措置をとるよう求め,これに従わない控訴人を訓戒したこと,(う)この訓戒にもかかわらず,控訴人が本件宗派離脱行為を撤回することを拒否したため,Aは,さらに,本件宗派離脱行為及びこれに対する訓戒に従わなかったことが,宗規247条9項(「本宗の法規に違反し,訓戒を受けても改めない者」。以下「本件懲戒規定」という。)に該当するとして控訴人を本件罷免処分に付したというものである。この経緯からみると,本件においては,本件宗派離脱行為とこれによる訓戒に従わず同離脱行為の撤回を拒否した控訴人の行動が,本件懲戒規定に該当するか否かがその本質的な争点であると解すべきであり,控訴人の行動が上記規定に該当し本件罷免処分が有効であるとすると,控訴人は被控訴人の住職及び代表役員たる地位を喪失し,本件建物の占有権原を失うから,被控訴人の請求は認容されるべきこととなる。 以下において,この観点から,控訴人の上記一連の行動の本件懲戒規定該当性を判断するにつき,Aの教義ないし信仰の内容に立ち入ることが必要不可欠であるといえるか否かにつきに検討する。 (2) まず,控訴人は,本件罷免処分の根拠となった罷免事由を定める本件懲戒規定は「『正当な理由なくして』本宗の法規に違反し,訓戒を受けても改めない者」と解すべきことを前提として,控訴人が,本件宗派離脱行為に及んだのは,A管長Bに,Aの教義を否定するような言動があったからであり,それをもって「正当な理由」に当たるか否か 訓戒を受けても改めない者」と解すべきことを前提として,控訴人が,本件宗派離脱行為に及んだのは,A管長Bに,Aの教義を否定するような言動があったからであり,それをもって「正当な理由」に当たるか否かを判断するためには,Aの教義,信仰の内容に立ち入らざるを得ないから,本訴は法律上の争訟性を欠くと主張する。 ① しかし,本件懲戒規定は,その文言上,Aの管理運営にかかわる事項を定めた宗規に違反し,これを理由とする訓戒を受けても改めない者を懲戒する規定であり,文言それ自体からこれに該当する者の可罰性を根拠づけることができる規定であるから,これに該当する行為を懲戒することの相当性を判断するにつき,同規定を「正当な理由なくして」との限定を付加して解釈すべき根拠は見出し難い。 ② 仮に,同規定を「正当な理由なくして」との限定を付加して解釈すべき余地があるとしても,それは,本件罷免処分が手続上の準則を遵守してなされたか否かの事項に関する理由に限定される。したがって,本件において,控訴人の行為が本件懲戒規定に該当するか否かを判断するにつき,A及び控訴人の教義,信仰の内容に立ち入る必要があるとはいえない。 なぜならば,上記のように,本件罷免処分は,控訴人の本件宗派離脱行為が被控訴人の責任役員の選定にAの承認を必要とする旨を定めた宗制43条2項,宗規235条等に違反したことを根拠になされたものであり,Aの教義,信仰の内容に深くかかわる事柄を理由になされたものとはいえず,したがって,控訴人の本件宗派離脱行為とその後の行動が本件懲戒規定に該当するか否かは,控訴人の行動が客観的に上記各規定に違反するか否かを検討することによって決することが可能であり,Aや控訴人の教義,信仰内容を判断要素として加える必要はないからである。 控訴人は,本件罷 ,控訴人の行動が客観的に上記各規定に違反するか否かを検討することによって決することが可能であり,Aや控訴人の教義,信仰内容を判断要素として加える必要はないからである。 控訴人は,本件罷免処分は,Aが,その教義,信仰内容に基づき,控訴人の本件宗派離脱行為及びその後の一連の行動が本件懲戒規定に該当すると判断して行われたものであるとして,同処分の効力を判断するについては,控訴人の教義,信仰内容を判断することが不可欠である旨主張する。確かに,処分が,宗教団体内部の教義の解釈を巡る紛争に関し,教義ないし信仰の内容に基づき発せられた命令に違反したことを理由になされたような場合には,その効力の有無を判断するにつき宗教上の教義ないし信仰の内容について一定の評価をすることを避けることはできないというべきである。しかし,本件罷免処分は,あくまで控訴人が宗派離脱を目的としてした一連の行動が上記宗規等に違反したことに基づきなされたものであり,教義ないし信仰の内容に関しなされたものではないから,控訴人の上記主張は理由がない。 ③ そして,本件罷免処分が,控訴人が被控訴人規則及び宗規に違反して,A代表役員の承認を得ないままIら3名を,被控訴人の責任役員に選定し,これらの者をもって責任役員会を開催し,議決権を行使させたこと及びこれらの行為の撤回を拒否し,訓戒に従わなかったことを理由とするものであることは当事者間に争いがなく,所定の手続上の準則に従って本件罷免処分がなされていることは明らかである。 ①ないし③のとおり,本件において,本件懲戒規定に該当するか否かの判断は,控訴人の本件宗派離脱行為が被控訴人規則及び宗規に反するか否かという,宗教上の教義や信仰の内容についての判断を伴わない客観的判断によって決することが可能であるといえるから,こ 当するか否かの判断は,控訴人の本件宗派離脱行為が被控訴人規則及び宗規に反するか否かという,宗教上の教義や信仰の内容についての判断を伴わない客観的判断によって決することが可能であるといえるから,この点において,本訴は,法律上の争訟性を欠くものとはいえず,控訴人の主張は採用することはできない。 (3) 次に,控訴人は,本件罷免処分者であるBは,前記のとおり,教義の根本を否定するような言動等を行ったため,Aの教義に照らして,法主としての資格を喪失し,本件罷免処分当時,同人は懲戒処分権限を失っていたものであるが,Bが法主としての資格を喪失したか否かの判断に当たっては,Aの教義,信仰の内容に立ち入らざるを得ないから,本訴は,法律上の争訟性を欠くと主張する。 ① 前記のとおり,「懲戒は,管長の名をもって…行なう。」(宗規253条)とされていることから,懲戒権限は管長にあると解されるところ,宗規13条2項によれば,「管長は,法主の職にある者をもって充てる。」とある。 しかしながら,前記のとおり,Bが,当初,法主たる地位を有していたことについては当事者間に争いがないところ,Aの宗制,宗規上,事後的に法主たる地位を喪失する旨の規定はない。 控訴人は,「法主は,宗祖以来の唯授一人の血脈を相承し,本尊を書写し,日号,上人号,院号,阿闍梨号を授与する。」とする宗規14条を法主の地位の事後的喪失の根拠と主張するが,住職や主管等他の役職の場合については,事後的な地位の喪失を明文をもって定めている(宗規247条等)のに対し,法主の場合については,同様の趣旨の規定が明文で定められていないのは,法主は,Aにおいて最高の宗教的地位にある者であるからに他ならず,宗制,宗規の趣旨をそのように解すれば,宗規14条を,法主就任の際の資格規定と解する余地 同様の趣旨の規定が明文で定められていないのは,法主は,Aにおいて最高の宗教的地位にある者であるからに他ならず,宗制,宗規の趣旨をそのように解すれば,宗規14条を,法主就任の際の資格規定と解する余地はあるものの,控訴人主張のような資格喪失の根拠規定と解することはできないというべきである。 ② また,本件のように,控訴人が,宗教的な信念からAからの離脱を企図し,その目的のためにした一連の行動を理由として罷免処分を受け,同行動の本件懲戒規定該当性が本質的争点となっている訴訟においては,宗派離脱を計った控訴人はもはやAの教義に従うものではないから,Aの管長に関し宗教上の正当性を争うことについての利害関係を有する立場にないというべきであり,血脈相承を含め宗教上の教義,信仰内容は紛争の本質的争点とはならないのであるから,裁判所としては,Aの管長たる地位については,宗教法人たるAが自律的に選定した結果を前提に,控訴人の行為の本件懲戒規定該当性につき審理判断すべきであり,これをもって足りるというべきである。 ①,②のとおり,Bが管長たる地位にあることにつき,Aの教義,信仰の内容を検討判断する必要はないので,この点につき法律上の争訟性を欠くとの控訴人の主張も採用できない。 2 争点2(本件罷免処分の有効性)について(1) 被控訴人責任役員の選定につきA代表役員の承認が必要か。 ① 承認手続は届出制に転化していたといえるか。 当裁判所も,Aの被控訴人の責任役員に関する承認手続が届出制として運用されていたから,Aの承認がなくても控訴人が選定した責任役員は適法に選定された旨の控訴人の主張は,理由がないと判断する。その理由は,原判決23頁8行目から25頁10行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 ② 法26条1項 が選定した責任役員は適法に選定された旨の控訴人の主張は,理由がないと判断する。その理由は,原判決23頁8行目から25頁10行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 ② 法26条1項及び78条の類推適用により承認手続きは不要となるか。 控訴人は,宗派離脱の自由は,被包括宗教法人の信教の自由に根拠を有するものであるから,これを保障するために設けられた法26条1項及び78条は,包括宗教団体が,被包括宗教法人の宗派離脱に向けた行動のすべての面において,不当な干渉をすることができない趣旨に解釈すべきであるとして,被控訴人の責任役員選定は,宗派離脱のために必要不可欠な手続の一環としてなされたものであるから,この場合におけるA代表役員の承認は不要であると主張する。 しかし,被包括関係の廃止(宗派離脱)は,被包括宗教法人と包括宗教団体相互が有する信教の自由が衝突し信教上の利害が鋭く対立することがある場面であり,本来,国家による干渉になじまず,宗教団体相互間の自治に委ねられる事象というべきである。にもかかわらず,法が上記各規定を設けたのは,上記場面において,上記各規定の限度で,優越的な地位にある包括宗教団体が被包括関係の廃止を妨害することを防ぐことにより包括宗教団体と被包括宗教法人との間を調整することを目的としたものというべきである。したがって,上記各規定をみだりに拡張ないし類推解釈をすることは許されないというべきである。 この観点からすると,法26条1項は,被包括関係の廃止に関する規則の変更に関して規定しているものであって,規則変更の議決がなされるまでの被包括宗教法人の責任役員会の構成(責任役員の選定)に関する包括宗教団体の権限を排除しているとはいえず,また,法78条も,被包括関係の廃止を妨害する目的として, って,規則変更の議決がなされるまでの被包括宗教法人の責任役員会の構成(責任役員の選定)に関する包括宗教団体の権限を排除しているとはいえず,また,法78条も,被包括関係の廃止を妨害する目的として,あるいはこれを企てたことを理由として,責任役員等に対し不利益な取扱いをすることを禁止しているだけであって,責任役員の選定に関し予め包括宗教団体の承認を必要とする趣旨の規定を禁止したものといえない。そうすると,被控訴人の責任役員の選定が,宗派離脱のため必要不可欠な手続の一環としてなされたものであったとしても,このことから,上記各規定を類推適用して,被控訴人の責任役員選定につきA代表役員の承認を要するとの規定が効力を失うとの控訴人の主張は採用できない。 ①,②のとおり,控訴人が,I,J,Kを被控訴人責任役員に選定するにつき,A代表役員の承認は不要であるとの主張は,いずれも理由がない。したがって,承認を受けていない前記3名の者を責任役員として処遇した控訴人の行為は,宗制43条2項,宗規235条及び被控訴人規則8条3項の各規定に違反するものというべきである。 (2) 本件罷免処分は法78条1項に該当し無効となるか。 控訴人は,本件罷免処分が,もっぱら被控訴人の被包括関係の廃止を防ぐことを目的として,また,控訴人がこれを企てたことを理由としてなされたものであることは明らかであるから,同処分は,法78条1項に該当し,2項により無効である旨主張する。 しかし,包括宗教団体及び被包括宗教法人の各規則により,被包括関係の内容の一つとして,被包括宗教法人の責任役員の選定につき包括宗教団体の代表者の承認を受けるべきものとすることは,妨げられるべきではなく,また,このような場合に,包括宗教団体の代表者がその権限を行使するに当たり,いかなる信仰上 教法人の責任役員の選定につき包括宗教団体の代表者の承認を受けるべきものとすることは,妨げられるべきではなく,また,このような場合に,包括宗教団体の代表者がその権限を行使するに当たり,いかなる信仰上の考え等を有する者をもって被包括宗教法人の責任役員にふさわしいものとするかは,当該規則等に特別な定めのあるときなどを除き,包括宗教団体の自治的な決定に委ねられると解するのが相当である。そうすると,包括宗教団体の代表者が被包括関係を維持することを相当と考え,その権限を行使したため,結果として,被包括宗教法人において所定の手続に従い被包括関係を廃止することが困難となったとしても,このことから,被包括関係の廃止を望んだ被包括宗教法人の代表役員たる控訴人が,責任役員の選定に必要な承認を受けずにこれを選定し,選定した責任役員をもって責任役員会を開いて被包括関係を廃止すべく規則変更の決議を行わせること等が許されると解すべき根拠は見出し難い。したがって,本件において,控訴人の本件宗派離脱行為とその後の一連の行動が本件懲戒規定に該当するとしてなされた本件罷免処分に違法はなかったというべきである。そして,本件罷免処分の際に,Aが,被包括関係は維持されることが望ましいと考え,同処分に伴って被包括関係の廃止の実現に支障が生ずることを予見していたとしても,そのことをもって,同処分が法78条1項にいう「被包括関係の廃止を防ぐことを目的として」された不利益な取扱いに当たると言うことはできず,また,これが被包括関係の廃止を「企てたことを理由として」される不利益取扱いを禁止する同項の規定を潜脱するものに当たるということもできない。 したがって,仮に控訴人が主張する事実関係があったとしても,法78条1項違反の問題は生じないというべきである。 以上のとおり,本件 の規定を潜脱するものに当たるということもできない。 したがって,仮に控訴人が主張する事実関係があったとしても,法78条1項違反の問題は生じないというべきである。 以上のとおり,本件罷免処分は法78条1項に反するものでなく,同処分が無効であるとの控訴人の主張は理由がない。 (3) Bは,本件罷免処分当時,懲戒処分権限を有していたか。 BがAの管長及び法主に就任したことは当事者間に争いがなく,前記1(3)で説示したとおり,宗規14条を根拠として法主の資格を事後的に喪失することはなく,裁判所としては,Aの管長たる地位については,宗教法人たるAが自律的に選定した結果を前提に懲戒処分権限の有無を判断すべきであるから,本件罷免処分当時,BはAの管長たる地位にあり,懲戒処分権限を有していたといえる。 よって,本件罷免処分当時,Bが懲戒処分権限を有していなかったとする控訴人の主張は採用できない。 (4) 以上(1)ないし(3)において検討したところにより,本件罷免処分は有効であると認められる。 3 争点3(損害額)について当裁判所も,本件建物の平成11年11月19日以降の相当賃料額は,22万7675円と認めるのが相当であると判断する。その理由は,原判決30頁14行目から末行までに記載のとおりであるから,これを引用する。 第5 結論以上によれば,被控訴人の請求は,所有権に基づく本件建物の明渡し及び不法行為に基づく損害賠償として,占有権原を喪失した日の後の日である平成11年11月19日から本件建物明渡し済みまで1か月22万7675円の割合による損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきであり,原判決は相当であって本件控訴は理由がない。 よって,本件控訴を棄却し,控 月22万7675円の割合による損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきであり,原判決は相当であって本件控訴は理由がない。 よって,本件控訴を棄却し,控訴費用の負担につき民訴法67条1項,61条を適用して,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第3部裁判長裁判官下司正明裁判官野々上友之裁判官檜皮高弘原判決引用部分(原判決7頁10行目から19頁9行目まで)(1) 本訴は「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)に該当するか否か。 (被告の主張)本件において,原告の請求の当否を決するためには,本件罷免処分の効力が問題となるところ,その有無を判断するに当たっては,以下の理由により,Aの教義,信仰の内容に立ち入らざるを得ず,よって,裁判所法3条1項の「法律上の争訟」に当たらないから,本訴は却下されるべきである。 ア本件罷免処分の理由は,I,J,Kの3名を原告の責任役員として処遇し議決権を行使させたことが宗規,原告規則に違反する行為であり,Aからこれらを白紙撤回するよう求められた被告がこれに従わなかったことは宗規247条9号(「本宗の法規に違反し,訓戒を受けても改めない者」)に該当するというものである。 したがって,被告が宗規247条9号に規定する「本宗の法規に違反し,訓戒を受けても改めない者」に該当するか否かは,本件の本質的争点を形成し,かつその判断が訴訟の帰趨を左右する必要不可欠なものとなっているところ,宗規247条9号は,処分対象を「正当な理由」がない場合に限定している宗規246条3号及び247条7号との均衡や被包括関係廃止に係る不利益処分等を定めた法78条の趣旨に照らし,「『 っているところ,宗規247条9号は,処分対象を「正当な理由」がない場合に限定している宗規246条3号及び247条7号との均衡や被包括関係廃止に係る不利益処分等を定めた法78条の趣旨に照らし,「『正当な理由なくして』本宗の法規に違反し,訓戒を受けても改めない者」の意味に限定して解釈をし,被処分者側の事情も考慮すべきである。 この点につき,被告が,本件宗派離脱行為に及んだのは,次のような経緯によるものである。 すなわち,平成2年12月末以降AとNは対立状態となったが,両者の紛争の過程においてAの法主であるBの腐敗堕落した行状の数々が明らかになっていたところ,平成11年7月7日,Bが,A総本山Oに安置されている戒壇の大御本尊を,かつて「偽物である」と断じていたことが報じられ,最も重要かつ根本的な教義において,邪義を構えていることが発覚した。 ここに至り,被告は,現在のAにこのまま止まることは宗祖の教えに反することであって,原告が離脱することがMの教えを正しく実践し,また信徒の意思に応えることであると考え,かかる宗教的信念に基づいて,Aとの被包括関係廃止を決意した。しかし,原告においては,すでにAの意に沿うGら3名の責任役員を選任していたが,事前にこれらの責任役員に,被告の宗派離脱の決意を披歴すれば,それが直ちに宗務院に通報されて,宗派離脱を妨害するために,被告に対して何らかの処分がなされることは明らかであった。そこで,被告は,宗派離脱の決議をするについては,かかる責任役員を解任して,新たな責任役員をもって責任役員会を開催して宗派離脱をする以外にないものと考え,まず旧責任役員を解任するとともに新たにN信徒である3名の責任役員を選定し,新責任役員による責任役員会を開催して,被告が宗派離脱を決意するに至った動機と趣旨を して宗派離脱をする以外にないものと考え,まず旧責任役員を解任するとともに新たにN信徒である3名の責任役員を選定し,新責任役員による責任役員会を開催して,被告が宗派離脱を決意するに至った動機と趣旨を説明して,新責任役員の了解を得たうえで本件宗派離脱行為に及んだものである。 Aにおいては,現在の法主に誤りがあれば,これに従ってはならないとされており,それこそがAの正しい教義である。被告が本件宗派離脱行為に及んだのは,まさにこの教えを忠実に守り行動に移したものに外ならない。 したがって,被告が,本件宗派離脱行為を白紙撤回するよう求められたにもかかわらずこれに従わなかったことが,宗規247条9号の定める「『正当な理由なくして』本宗の法規に違反し,訓戒を受けても改めない者」に当たるか否かの判断に当たっては,被告が原告の住職としてMの精神を忠実に実践するとともに信徒の意思に応えるためには原告のAからの宗派離脱が必要であるか否かを検討判断しなければならない。そしてこの判断のためには,宗教上の教義の存否やその解釈,またBが偽物呼ばわりした大御本尊の真贋,あるいはBの腐敗堕落した数々の行状などが,Aの教義に反するものであるか否かについて検討判断することが不可避である。 そうすると,本件では,被告に対する本件罷免処分の効力が,原告の請求の当否を決する前提問題となっており,その効力の有無が当事者問の紛争の本質的争点を形成するとともに,それが宗教上の教義,信仰の内容に深くかかわっているため,教義,信仰の内容に立ち入ることなくしてその効力の有無を判断することができず,しかも,その判断が訴訟の帰趨を左右する必要不可欠なものであることが明らかであるから,本件訴えは,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらないものとして,不適法却下 無を判断することができず,しかも,その判断が訴訟の帰趨を左右する必要不可欠なものであることが明らかであるから,本件訴えは,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらないものとして,不適法却下されるべきである。 イ本件罷免処分は,A管長Bにより行われている。Aにおいては,管長は法主の職にある者をもって充てるものとされ(宗規13条2項),法主は「宗祖以来の唯授一人の血脈を相承し」たものとされている(宗規14条1項)。したがって,管長としての職責を果たすためにはその者が「宗祖以来の唯授一人の血脈を相承し」ていることが必要となる。 しかし,Bは,A総本山Oに安置されている戒壇の大御本尊を,「偽物である」と発言し,教義の根本を否定した。ことここに至っては,Aの教義に照らして,Bの法主としての資格は喪失し,本件罷免処分当時,同人は懲戒処分権限を失っていたものである。 ところで,Bが懲戒処分権限を有するか否かの判断にあたっては「血脈相承」の意義やその前提として宗教上の教義の存否やその解釈,またBが偽物呼ばわりした大御本尊の真贋などについて検討判断することが不可避である。 そうすると,この点においても,本件罷免処分の効力を判断するに当たり,教義,信仰の内容に立ち入ることは避けられないから,本件訴えは,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらないものとして,不適法却下されるべきである。 (原告の主張)本件罷免処分の効力の有無の判断は,以下のように,Aの教義,信仰の内容に立ち入らなくとも可能であり,本訴は,裁判所法3条1項の「法律上の争訟」に当たる。 ア宗規247条9号を被告が主張するように限定して解釈すべき根拠はない。 すなわち,宗規245条には9つの懲戒事由が,また同246条に ,裁判所法3条1項の「法律上の争訟」に当たる。 ア宗規247条9号を被告が主張するように限定して解釈すべき根拠はない。 すなわち,宗規245条には9つの懲戒事由が,また同246条には8つの懲戒事由が,さらに247条には13の懲戒事由が,それぞれ規定されている。そのうち,「正当な理由なくして」という限定がなされているのは,宗規246条3号及び247条7号の2つだけである。合計30ある懲戒事由のうち,わずか2つの懲戒事由に「正当な理由なくして」という限定がなされていることからしても,この2つの懲戒事由において「正当な理由なくして」という限定が付されているのは,例外的な規定方法と考えるべきである。 そして,被告が均衡をとるべきと主張する宗規246条3号や247条7号において,「正当な理由」を要求されているのは,宗規246条3号にあっては,「宗務院の召喚に応じない者」を懲戒する規定であるところ,被召喚者の事情によっては,被召喚者が,召喚日として指定された日時に出頭できないことも止むを得ない場合があり得ると考えられるので,特に被召喚者の事情も考慮して懲戒事由とすることを明らかにしたものであるし,宗規247条7号にあっては,「宗務院の命令に従わない者」を懲戒する規定であるところ,宗務院の命令は,宗務行政として発せられるものであるが,その内容も多種に及び,また,命令が発せられるに至る経過も事案ごとに当然異なっているので,命令を受けた者の側の事情によっては,命令に従わないとの形式的な理由だけで懲戒するのは酷な場合もあり得ることから,被処分者側の事情をも考慮した上で,懲戒事由とすることを明らかにしたのである。 このように,「宗務院の召喚に応じない」,「宗務院の命令に従わない」というのは,被処分者あるいは命令を受けた者が 処分者側の事情をも考慮した上で,懲戒事由とすることを明らかにしたのである。 このように,「宗務院の召喚に応じない」,「宗務院の命令に従わない」というのは,被処分者あるいは命令を受けた者が,召喚に応じなかったり,命令に従わなかったりすることが止むを得ないと考えられる場合があると思われるので,「正当な理由」に基づかない場合に限って懲戒事由とすることを明らかにしたのである。 これに対し,宗規247条9号の「本宗の法規に違反し、訓戒を受けても改めない」という場合には,それが正当な理由に基づくということは通常あり得るところではない。すなわち,「本宗の法規」は,Aの僧侶にとってあらかじめその内容が示されているのであり,これに違反し,しかも訓戒を受けてもなお改めないという事態は,それだけで十分懲戒に値することは明らかであり,さらにこれに限定を加える必要はない。 よって,宗規247条9号に該当するか否かは,同号所定の事由の存否のみを判断するだけで足り,教義,信仰を理由とする「正当な理由」の有無を判断する必要はない。 イ法主の資格喪失に関する規定は,宗制,宗規にはないし,法主の資格・資質も,教義ないし信仰の内容と同様に,宗教団体が自律的に決めることである。 したがって,被告の教義,信仰の内容に立ち入って検討判断することが不可避であるとの主張は失当である。 (2) 本件罷免処分の有効性ア原告責任役員の選定につきA代表役員の承認が必要か否か。 (被告の主張)以下のとおり,末寺の代表役員が総代(責任役員。以下,本項及び次項においては「総代」という。)を選定するにつき,A代表役員の承認は不要と解されるから,被告が平成11年8月20日に行った総代の選任は,何ら原告の主張する法規に違反するもの 任役員。以下,本項及び次項においては「総代」という。)を選定するにつき,A代表役員の承認は不要と解されるから,被告が平成11年8月20日に行った総代の選任は,何ら原告の主張する法規に違反するものではない。 (ア) 承認の届出としての実態Aにおいては,Nとの紛争が勃発する平成2年末までは,末寺の代表役員が総代を選定すれば,以後,選定された総代が職務を行うことについて何ら問題とされていなかった。このように,末寺の総代の選定に関するA代表役員の承認制度は形骸化しており,承認のない総代が総代としての職務を行ってもAはこれを何ら問題視することなく,実際,平成2年末までは,A代表役員の承認を受けることを怠ったことを理由として,訓戒を受けたり,住職罷免の処分を受けた例はなかった。 ところが,Aは平成2年末以降,形骸化していた総代の選定についてのA代表役員の承認を宗派離脱を決議した末寺に限って厳格に要求し,末寺から提出された総代の選定や解任届についてはこれを一律に承認せず,末寺住職が旧総代を解任し,N信徒を選定し,宗派離脱の決議を行った場合,これを口実にその住職を「訓戒」し,訓戒に従わないことを理由として住職罷免処分等の不利益処分を課するようになった。 また,従前から何十年にもわたり,末寺においては,総代が選定された後に,住職からA所定の書式に従って総代の選定をA管長宛に届け出ていた。原告においても,昭和63年までは,原告住職と総代が連署・押印して「A管長」宛に「信徒総代改選届」を提出し,添付書類として,総代の「身分証明書」,総代の「印鑑証明書」,「承認状御下附願」を提出していた。 これら届出書類を含めた具体的手続の実態から,以下のようなことがいえる。 すなわち,届出書類は,「信徒総 分証明書」,総代の「印鑑証明書」,「承認状御下附願」を提出していた。 これら届出書類を含めた具体的手続の実態から,以下のようなことがいえる。 すなわち,届出書類は,「信徒総代承認願」ではなく,あくまでも,「信徒総代改選届」という届出書にすぎず,「承認状御下附願」も,付属的な書類にすぎないものであった。このため,「信徒総代改選届」は,「信徒総代任期満了により右のとおり改選いたしましたので、…関係書類を添え総代連署してお届けいたします。」などと記載されていたものであり,改選(選定)された総代も既に「総代」との肩書を冠して連署していた。また,「承認状御下附願」にも,「信徒総代を選定いたしましたので承認状を御下附願います。」などと記載されていた,したがって,従前の「信徒総代改選届」の形式自体,総代の選定は代表役員(住職)が選定した時点で完了することを前提としており,Aに対してはあくまでも選定された総代を届け出ることが要求されていたにすぎず,また,「承認状御下附願」もA管長に対して「承認状」という書面の下附を求める行為にすぎなかった。 こうした「改選届」,添付書類の提出が要求されているだけで,Aからそれ以上に選定した総代の適格性について,その判断に資する資料の添付は求められていなかった。 したがって,Aの代表役員はもとより管長においても,総代の適格性について何らかの判断をすることは全く予定されていなかったものであり,実際にも,AとNとの紛争が表面化した平成2年12月末以前において,末寺の住職が選定した総代について承認状が下附されなかったことは一度もなかった。 つまり,総代の選定における管長による承認手続は,単なる届出以上の何ものでもなく,その実態も,儀礼的・形式的な意味しかなかったのである ついて承認状が下附されなかったことは一度もなかった。 つまり,総代の選定における管長による承認手続は,単なる届出以上の何ものでもなく,その実態も,儀礼的・形式的な意味しかなかったのである。 以上のような,総代選定に関するAの「承認」手続の実態から明らかなように,原告における総代の選定は,原告規則8条2項に規定された原告代表役員による選定によって完了するのであり,「管長」による「承認状」の下附(交付)行為こそ存在するものの,それは管長に対する総代選定の事後報告的な届出行為とその確認という宗教的意味合いのものでしかなかったのであり,結局,A代表役員による承認の有無は,原告代表役員のなす総代選定の効力に影響を与えるものではなく,法的意味を有しないものである。 (イ) 法26条1項及び78条の類推適用本件の総代選任は,宗派離脱のために必要不可欠な手続の一環としてなされたものである。すなわち,原告の圧倒的多数のN信徒は,原告の宗派離脱を望んでいた。しかし,AはすでにNとの紛争当初から,末寺の総代を信徒の総意に反し,ごく少数のN以外の信徒の中から選定するよう住職に対する人事権を背景に強制していた。そのため,原告においても,選定したばかりの旧総代では、原告が宗派離脱の手続を行おうとしても,これに反対することは勿論,そのことをAに通報するなどして,宗派離脱手続を妨害することも明らかであった。そのような状況の下において,被告はやむなく旧総代の解任を行い,新たな総代を選定した。 このように,総代の構成について包括宗教団体たるAの不当な支配・介入が行われ,その結果総代会がその信徒の総意を全く代表していない場合にまで,総代の解任選任にA代表役員の承認が必要であると解するとすれば,原告が宗派離脱できるか否かは 宗教団体たるAの不当な支配・介入が行われ,その結果総代会がその信徒の総意を全く代表していない場合にまで,総代の解任選任にA代表役員の承認が必要であると解するとすれば,原告が宗派離脱できるか否かは,Aの意向次第であって,当然不可能ということになる。これはまさに,被包括法人による宗派離脱の自由を保障した法26条1項後段及び78条が排除しようとした事態を容認する解釈であり,これらの制度趣旨,更には両規定の基底にある憲法20条及び法1条2項に抵触する著しく不合理な解釈である。よって,このような観点から,総代の選任には,Aの代表役員の承認は不要と解さなければならない。 (原告の主張)(ア) 承認の届出としての実態についてA宗制,宗規及び原告規則において,責任役員の選任にA代表役員の承認が必要とされているのは,包括宗教団体であるAが被包括宗教法人である原告との関係において,宗教上の組織としての一体性,結合性を維持するために,A代表役員に原告代表役員の選任権及び原告責任役員の選任に対する承認権を与えることにより,原告代表役員の恣意を排しその行為を牽制,監督しようとしたことによるものである。そうだとすれば,効力に影響のない単なる事後届出であるとの被告の主張は,法規の文言に反するだけでなく制度の趣旨からして到底ありえないものである。 末寺住職が選定した総代について承認状が下附されなかったことはないとの主張も,それにより直ちに「承認」が「届出」でしかないことを証することになりえないことは明らかである。 (イ) 法26条1項及び78条の類推適用について法26条1項,78条1項は,包括宗教団体及び被包括宗教法人双方の信教の自由が衝突し信教上の利害が鋭く対立する場面を調整する規定として設けられたもの 6条1項及び78条の類推適用について法26条1項,78条1項は,包括宗教団体及び被包括宗教法人双方の信教の自由が衝突し信教上の利害が鋭く対立する場面を調整する規定として設けられたものであるから,これを厳格に解すべきであって,みだりに拡張解釈ないし類推解釈することは許されない。 しかるところ,法26条1項は,被包括関係廃止に係る「規則の変更」に関して規定しているものであって,本件のように「責任役員の選任」に関して包括宗教団体の代表役員の承認が必要か否かが問題となっている事案に直接適用されるべきものではない。 また,同法78条1項も,不利益処分を禁止しているだけであって,包括宗教団体の有するそれ以外の被包括宗教法人に対する権限行使を制限する趣旨の規定ではない。 イ本件罷免処分は法78条1項に該当するか否か。 (被告の主張)Aが被告に対してなした住職罷免処分は、法78条1項に該当し,同条2項により無効である。 (ア) 法78条の趣旨と判断基準法78条1項は,被包括宗教法人の代表役員等に対する干渉を排除し,もって被包括関係廃止という被包括宗教法人の宗教活動の自由を保障するため「被包括関係の廃止を防ぐことを目的として、又はこれを企てたことを理由として」被包括宗教法人の代表役員等に対して,「不利益の取扱」をすることを禁じている。 しかしながら,被包括関係の廃止を防ぐことを目的として,またはこれを企てたことを理由とする処分であっても,包括宗教団体がそのような目的・理由を明示して処分をすることは実際上あり得ない。実際には被包括関係の廃止を防ぐことを目的として,またはこれを企てたことを理由とする処分であっても,法78条を潜脱するために他の理由に籍口して処分をすると を明示して処分をすることは実際上あり得ない。実際には被包括関係の廃止を防ぐことを目的として,またはこれを企てたことを理由とする処分であっても,法78条を潜脱するために他の理由に籍口して処分をするということが往々にして行われている。法78条は、そのような経験則上当然予想される実態を前提として規定されているのであり,同条が禁止する処分に該当するか否かの判断は,処分の名目として掲げられる理由の形式的判断によるのではなく,あくまでも包括団体による離脱防止に向けた動きから当該処分に至るまでの一連の行為を観察してその実質的目的・理由が,被包括関係の廃止を防ぐことを目的として,またはこれを企てたことを理由としたものであるか否かを判断しなければならない。その判断にあたっては,被包括法人における被包括関係廃止に向けての動き及びこれに対する包括団体の対応,被包括関係廃止の動きと処分との時間的関係,当該処分事由の性質及び処分の合理性等,複数の間接事実を検討すべきである。 (イ) 本件罷免処分の目的・理由Aが末寺の宗派離脱阻止のために総代の選定に不当な支配介入をし,宗派離脱を企てた者に不利益な取扱を行ってきたことはア(被告の主張)(ア)において主張したとおりであり,また,被包括関係廃止の動きと処分との時間的近接性については,Aと被告及び大多数の原告信徒らとの間において宗教的信念の相違を生じるに至り,被告らはその宗教的信念に基づいて,平成11年8月20日,新たに選定された総代らによる総代会において宗派離脱に伴う規則変更の決議を行い,同日,Aに宗派離脱の通知をしたうえ,原告事務所の掲示場にその旨の公告をしたが,その直後,被告に対して宗務院からの召喚通知がなされ,その後の住職罷免処分に至る一連のAの処分手続がなされている。 これらの 脱の通知をしたうえ,原告事務所の掲示場にその旨の公告をしたが,その直後,被告に対して宗務院からの召喚通知がなされ,その後の住職罷免処分に至る一連のAの処分手続がなされている。 これらの事情に,本来,総代選定につき,A代表役員の承認を受ける必要はないにもかかわらず,これがなかったことを理由として,本件罷免処分がなされたことを総合すれば,本件住職罷免処分が,専ら原告における被包括関係の廃止を防ぐことを目的として,また,被告がこれを企てたことを理由としてなされたものであることは明らかである。 したがって,本件罷免処分は法78条1項に違反するものであり,同条2項により無効である。 (原告の主張)本件処分の理由は,被告が,A代表役員の承認のないままに責任役員を選任した行為及び法人事務を権限のない者に行使させたこと等を理由にするものであり,法78条が問題となる場面ではない。 原告の責任役員の選任について,原告代表役員の意思表示のみならず,A代表役員の承認をも要するとした宗制43条2項及び原告規則8条3項の規定は,責任役員の地位の重要性に鑑みれば極めて合理的であり,また僧侶のうち「本宗の法規に違反し、訓戒を受けても改めない者」を罷免処分にすることができる旨定めた宗規247条9号もまた当然の規定であって,その効力が疑われる余地はない。 ウ Bは,本件罷免処分当時,懲戒処分権限を有していたか否か。 (被告の主張)Bは,教義の根本であるOに安置されている戒壇の大御本尊を偽物呼ばわりしたり,また先師が「本門寺の戒壇たるべき大殿堂」と宗教的意義づけをした正本堂を取り壊すなどの行為をしたので,管長,法主としての資格を喪失した。 よって,Bによる本件罷免処分は,処分権限のない者によるもの 師が「本門寺の戒壇たるべき大殿堂」と宗教的意義づけをした正本堂を取り壊すなどの行為をしたので,管長,法主としての資格を喪失した。 よって,Bによる本件罷免処分は,処分権限のない者によるものであり,無効である。 (原告の主張)否認する。 原告が主張する法主の事後的な地位喪失規定は,宗制,宗規上存在しない。 (3) 損害額ア原告の主張被告が,本件建物を占有し続けることに伴う損害は,1か月につき47万3600円を下らない。 イ被告の主張争う。 原告の主張する損害額は,本件建物の敷地の外に,原告寺院の境内地全ての占有によるものを加えるようであるが,境内地は広く,ことに駐車場のスペースは,本件建物の敷地とは到底言えない。 また,本件建物は寺院として使用する目的で建築されたものであり,その賃料相当額は,通常の賃貸建物に比して格安である。 (原判決23頁8行目から25頁10行目まで)宗教法人における責任役員の選定は,本来,当該宗教法人が自律的に決すべきものであるが,当該宗教法人を包括する宗教団体がある場合に,宗教上の組織としての一体性,結合性を維持するために,包括関係の一内容として,被包括宗教法人の責任役員の選定等につき,包括宗教団体の代表者の承認を受けるべきものとすることを,包括宗教団体及び被包括宗教法人の各規則において定めることは,何ら妨げられるものではない(法12条1項5号,12号)。 本件においても,原告規則及び宗規において,原告責任役員の選定につき,包括宗教団体たるAの代表役員の承認を受けるべきと規定されていることは,前記のとおりであり,その趣旨も前記のとおり,宗教上の組織としての一体性,結合性を維持するため,包括宗教団体で 員の選定につき,包括宗教団体たるAの代表役員の承認を受けるべきと規定されていることは,前記のとおりであり,その趣旨も前記のとおり,宗教上の組織としての一体性,結合性を維持するため,包括宗教団体であるA代表役員に,原告責任役員の選定につき承認権を与えることで,原告代表役員の行為を牽制,監督させる趣旨であると解される。 被告は,このようなA代表役員による承認制度は,Aにおいては,従前の運用上,承認制度としての実態を失い,届出制度と位置づけられていたにもかかわらず,宗派離脱を企てる被包括宗教法人に,突如として,A代表役員による承認を要求してくるようになったと主張する。 前記のとおり,原告責任役員についての承認権は,Aの宗教上の組織として一体性,結合性を維持し,原告代表役員の行為を牽制,監督するために,A代表役員に対し与えられた,極めて重要な権利であることからすれば,承認権が実態を失い,届出制度に過ぎなくなったというためには,原告に対し,以後,原告代表役員選定の責任役員については全て承認する旨を明示する承認権の放棄の意思表示があった場合とか原告代表役員に選定された責任役員が公然とAを批判したり,宗派離脱を唱えたりする者であったにもかかわらず,その選定につき,特段の異議を述べなかった場合など,特段の事情が認められることが必要というべきである。 これを本件についてみるに,被告は,従前から,原告において,責任役員(総代)改選の際,A所定の書式に則って,A管長宛に提出していた書類の名称,形式やその内容,そしてその提出の際にAから選定した責任役員(総代)の適格性について,その判断に資する資料の添付は求められていなかったこと,従前,Aにおいて,末寺の住職が選定した責任役員(総代)について承認状が下附されなかったことは一度もな 定した責任役員(総代)の適格性について,その判断に資する資料の添付は求められていなかったこと,従前,Aにおいて,末寺の住職が選定した責任役員(総代)について承認状が下附されなかったことは一度もなかったことなどを理由に,責任役員(総代)の選定における管長による承認手続は,単なる届出以上の何ものでもなく,その実態も,儀礼的・形式的な意味しかなかったと主張する。 従前における原告責任役員(総代)の選定に際し,A所定の書式に従い,A管長に提出されていた「信徒総代改選届」,添付書類として「承認状御下附願」が存在していたこと,「信徒総代改選届」には,「信徒総代任期満了により右のとおり改選いたしましたので、…関係書類を添え総代連署してお届けいたします。」などと記載されていたこと,「承認状御下附願」には,「信徒総代を選定いたしましたので承認状を御下附願います。」などと記載されていたことは当事者間に争いがないが,むしろこれらの書類の提出が義務づけられていたことは,その書式の名称を問わず,承認制度として運用されていたことを推認させるものであるし,これらの書類提出の際に,Aから選定した責任役員(総代)の適格性について,その判断に資する資料の添付は求められていなかったことや従前,Aにおいて,末寺の住職が選定した責任役員(総代)について承認状が下附されなかったことは一度もなかったからといって,承認制度が届出制度として運用されていたとは必ずしも言えず,これらの事情は前記特段の事情には当たらない。 他に,承認制度が届出制度として運用されていたことを認めるに足りる証拠はない。 よって,被告の主張は採用できない。 (原判決30頁14行目から末行まで)乙第6号証によれば,本件建物の平成11年11月19日以降の相当賃料額は,22万767 に足りる証拠はない。 よって,被告の主張は採用できない。 (原判決30頁14行目から末行まで)乙第6号証によれば,本件建物の平成11年11月19日以降の相当賃料額は,22万7675円と認めるのが相当である。 原告は,本件建物の相当賃料額として1か月47万3600円を主張し,それに副う証拠として甲第20号証を提出する。 同号証では,1か月あたりの,本件建物の相当賃料額(29万円)と本件建物の敷地とみられる広島県三次市P町QR番Sの土地の相当賃料額(18万3600円)の記載がある。 しかし,同号証にある本件建物の相当賃料額は,本件建物の寺院としての特殊性を考慮したものとはいえず採用できない。また,広島県三次市P町QR番Sの土地の相当賃料額については,本件建物の占有による損害とは相当因果関係は認められず,採用できない。 他に,本件建物の相当賃料額が1か月47万3600円であることを認めるに足りる証拠はなく,原告の主張は採用できない。
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