【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 (一) 原判決が認定した事実は次のとおりである。 (1) 被上告人が訴外A(
主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 (一) 原判決が認定した事実は次のとおりである。 (1) 被上告人が訴外A(かつて上告人に雇われていたもの)に対し、公正証書による金一〇九万九、二二二円の債権を有したので、右公正証書に基き、Aを債務者、上告人を第三債務者として名古屋地方裁判所に対し、右債権額にみつるまで、Aの上告人に対する給料債権の差押命令を申請し、該命令を得て執行した。 (2) ところが、右執行について、Aから請求異議の訴訟が提起せられ、右訴訟において、昭和三三年一一月一〇日裁判上の和解が成立し、被上告人のAに対する債権額を金三〇万円に減縮し、Aは右金額を月賦により支払うこととなつた。 (3) 一方、Aは昭和三四年二月二一日被上告人に対し、金一六万六、二〇〇円を支払つたのみで、その余の支払をなさなかつた。そこで被上告人は同年五月、前記債権差押中の債権金八万円(Aの上告人に対する昭和三三年九月分から昭和三四年四月分までの一ヶ月金一万円の給料債権)につき転付命令(名古屋地方裁判所昭和三四年(ヲ)第一三〇号)を得、該命令は同年同月二四日債務者Aおよび第三債務者上告人に送達せられた。 (4) そこで、被上告人は、右転付金の支払を求めるため上告人に対し、昭和三四年六月二四日、台東簡易裁判所に転付金請求訴訟を提供した。そして右事件の審理中に上告人がAに対して差押に係る前記金八万円を支払つたことが判明したため、被上告人は昭和三六年五月九日右訴訟を取下げた。 (5) その後被上告人は同年八月三日に至り改めて上告人に対し、本件訴訟を提起したが、その請求原因は、本位的には、右転付金の支払を求め、予備的に民法第四八一条により、上告人がAに支払つた前記転付金八万円に相当 の後被上告人は同年八月三日に至り改めて上告人に対し、本件訴訟を提起したが、その請求原因は、本位的には、右転付金の支払を求め、予備的に民法第四八一条により、上告人がAに支払つた前記転付金八万円に相当する損害の賠償を求めるというのである。 (二) そこで、各上告理由について順次判断する。 上告理由第一点について、原判決文中理由二の記載は、やや不充分な点が見受けられるけれども、その趣旨は、文章の前後から判断して、前記(一)の(2)で述べた裁判上の和解は、同項で述べた公正証書による被上告人の債権額を金三〇万円に減縮したものに過ぎないことが判かるから、右和解を目して、一旦右公正証書による債権を全部消滅させた上、改めてAが被上告人に対し金三〇万円の債務を負担することとし、これを月賦弁済することを約定したものとは解せられない。それ故に、右和解によつて右公正証書による債権が消滅したことを前提とする右論旨は理由がない。 同第二点について、しかしながら、すでに述べたとおり、被上告人は右和解によつて債権額を金三〇万円に減縮したものの、まだ金八万円以上の債権が残存していたことは明らかであるから、被上告人が前記(一)の(1)で述べた債権の差押を解放することは必要でない。したがつて被上告人が上告人に対して、前記金八万円の債権について転付命令を得た上、その請求訴訟を提起したことはむしろ当然であつて、信義則に違反するものでないことは多言を要しない。それ故に権利の濫用の問題を生ずる余地はない。よつて右論旨も亦理由がない。 同第三点について、<要旨>「民法第一四九条は消滅時効の中断事由の一たる裁判上の請求について訴の取下の場合においでは時効中断</要旨>の効力を生じない旨規定していること所論のとおりであるが、この規定は裁判上の請求自体についてその時効中断事由 は消滅時効の中断事由の一たる裁判上の請求について訴の取下の場合においでは時効中断</要旨>の効力を生じない旨規定していること所論のとおりであるが、この規定は裁判上の請求自体についてその時効中断事由としての効力を規定したにとどまるものと解される。元来裁判上の請求のなかには催告が包含されているから訴状が相手方に送達されたのち、訴の取下がなされても、訴の提起から取下にいたるまでの間は催告が継続しているものとみることができる。けだし裁判上の請求による催告は、その訴訟の追行のらちに不断に行われているものと解しらるからである。したがつてこれによる時効中断の効果を生ずるためには訴の取下後六ケ月内に同法第一五三条の裁判上の請求がなされることを要し、かつこれをもつて足るものといわねばならない。もし右のごとく解するのでなければ、訴による裁判上の請求がなされでも、ひとたび訴が取下げられると訴の提起なかりしものとみなされ、催告はなおその効力を持統しても、訴の提起による催告後六ヶ月の期間の経過と共に(当時たとえ訴訟が係属していても)時効の完成をみるような結果となり、かくては訴訟追行者の意思にも反し社会通念とも相容れないこととなるからである。 原判決の認定によると、被上告人が上告人に対して、台東簡易裁判所に転付金八万円の請求訴訟を提起した日時は、昭和三四年六月二四日であり、これを取下げたのは、昭和三六年五月九日であつて、本訴を提起したのが、同年八月三日であるが、他方、被上告人は、台東簡易裁判所に対して転付金請求訴訟を提起した日時頃訴状副本の送達において、上告人に対してその支払の催告をなしたものと解せられる。してみると、この催告は叙上のごとく訴訟が訴の取下によつて終了するまで継続するから右訴の取下の日である昭和三六年五月九日以降六ケ月の期間内である同年八月三日 その支払の催告をなしたものと解せられる。してみると、この催告は叙上のごとく訴訟が訴の取下によつて終了するまで継続するから右訴の取下の日である昭和三六年五月九日以降六ケ月の期間内である同年八月三日本訴が提起されたことによつて本件訴訟の目的物である被上告人の上告人に対する転付債権はその消滅時効が中断し依然として有効に存在するものといわなければならない。それ故に右論旨も亦理由がない。 よつて、民事訴訟法第四〇一条、第三九六条、第三七八条、第九五条、第八九条を適用し主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官成田薫裁判官神谷敏夫裁判官辻下文雄)
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