主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求めた裁判 請求京都社会保険事務局長は,原告らに対し,保険医療機関指定取消処分及び保険医登録取消処分をしてはならない。 本案前の答弁原告らの訴えをいずれも却下する。 本案の答弁主文1項に同じ。 第2事案の概要本件は,京都社会保険事務局長(以下「処分庁」という。)から健康保険法に基づき保険医療機関の指定を受けた歯科医院の開設者であり,かつ保険医の登録を受けた歯科医師である原告らが,処分庁が同法80条及び81条に基づき原告らに対して行おうとしている保険医療機関指定取消処分及び保険医登録取消処分(以下,併せて「本件各処分」という。)は,実体的又は手続的に違法であるなどと主張して,行政事件訴訟法37条の4第1項に基づき,処分庁は本件各処分をしてはならない旨を命ずることを求める抗告訴訟(差止めの訴え)である。 法令の定め(1)健康保険法52条は,療養の給付等を同法における保険給付であると定め,同法63条1項は,被保険者の疾病又は負傷に関しては,①診察,②薬剤又は治療材料の支給,③処置,手術その他の治療等の療養の給付を行うと定める。そして,同条3項は,被保険者が上記療養の給付を受けるためには,厚生労働大臣(同法204条1項,同法施行令63条1項11号により,その 権限は地方社会保険事務局長に委任されている。)の指定を受けた病院若しくは診療所である保険医療機関等において,診察等を受けるものと定めており,同法64条は,保険医療機関において,健康保険の診療に従事する医師若しくは歯科医師は,厚生労働大臣の登録を受けた医師若しくは歯科医師(以下「保険医」という。)でなければならないと定めている。 (2)同法7 条は,保険医療機関において,健康保険の診療に従事する医師若しくは歯科医師は,厚生労働大臣の登録を受けた医師若しくは歯科医師(以下「保険医」という。)でなければならないと定めている。 (2)同法78条は,厚生労働大臣(その権限は,同法204条1項,同法施行令63条1項13号により,地方社会保険事務局長に委任されている。)は,療養の給付に関して必要があると認めるときは,保険医療機関の開設者若しくは管理者,保険医,保険薬剤師その他の従業者であった者に対し報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ,保険医療機関の開設者若しくは管理者,保険医,保険薬剤師その他の従業者に対し出頭を求め,又は当該職員に関係者に対して質問させ,若しくは,保険医療機関について設備若しくは診療録,帳簿書類その他の物件を検査させることができる(以下「監査」という。)と定める。 (3)同法80条は,厚生労働大臣(その権限は,同法204条1項,同法施行令63条1項11号により,地方社会事務保険局長に委任されている。)は,①保険医療機関において診療に従事する保険医等が同法72条1項の規定に違反したとき,②保険医療機関が同法70条1項の規定に違反したとき,③療養の給付に関する費用の請求等に不正があったとき,④保険医療機関が,同法78条1項の規定により診療録等の提出若しくは提示を命ぜられてこれに従わず,又は虚偽の報告をしたとき,⑤保険医療機関の開設者が,同法78条1項の規定により出頭を求められてこれに応ぜず,同項の規定による質問に対して答弁せず,若しくは虚偽の答弁をし,又は同項の規定による検査を拒み,妨げ,若しくは忌避したとき等に保険医療機関の指定を取り消すことができると定める。また,同法81条は,厚生労働大臣(その権限は,同法204条1項,同法施行令63条1 又は同項の規定による検査を拒み,妨げ,若しくは忌避したとき等に保険医療機関の指定を取り消すことができると定める。また,同法81条は,厚生労働大臣(その権限は,同法204条1項,同法施行令63条11号により,地方社会事務保険局長に 委任されている。)は,①保険医が同法72条1項の規定に違反したとき,②保険医が同法78条1項の規定により出頭を求められてこれに応ぜず,同項の規定による質問に対して答弁せず,若しくは虚偽の答弁をし,又は同項の規定による検査を拒み,妨げ,若しくは忌避したとき等に保険医の登録を取り消すことができると定める。 前提事実(1)当事者ア原告Aは,平成元年に歯科医師国家試験に合格し,同年5月に歯科医師として医籍登録(番号第XXXXXX号)され,同年6月14日,処分庁により,健康保険法64条に基づく保険医の登録(京歯第xxxx号)を受けた。 【争いのない事実】原告Aは,平成3年10月1日,京都市αにおいて,「B歯科医院」を開設し,同日,処分庁により,健康保険法63条3項1号に基づく保険医療機関の指定を受けた。 【争いのない事実】イ原告Cは,平成元年に歯科医師国家試験に合格し,同年5月に歯科医師として医籍登録(番号YYYYYY号)され,平成5年1月26日,処分庁により,健康保険法64条に基づく保険医の登録(京歯第yyyy号)を受けた。 【争いのない事実】原告Cは,平成7年9月1日,京都市βにおいて,「D歯科医院」を開設し,同日,処分庁により,健康保険法63条3項1号に基づく保険医療機関の指定を受けた。 【争いのない事実】(2)監査の経緯ア原告Aについて(ア)個別指導についてa処分庁は,平成17年3月4日,原告Aに対して,「社会保険医療担当者の個別指導の実施について(通知)」と題する書面を送付 い事実】(2)監査の経緯ア原告Aについて(ア)個別指導についてa処分庁は,平成17年3月4日,原告Aに対して,「社会保険医療担当者の個別指導の実施について(通知)」と題する書面を送付した。 【争いのない事実】b処分庁は,同月25日,原告A及びB歯科医院に対する個別指導を実施し,原告Aに保険診療者のカルテ等を提出させたり,患者からの聞き取り調査を実施したところ,診療内容及び診療報酬の請求に関し,不正又は著しい不当の疑いを抱いたことから,個別指導を中止した。 【争いのない事実,甲2,乙5,23,28】(イ)第1回監査についてa処分庁は,平成18年9月25日,原告Aに対して,「社会保険医療担当者の監査について(通知)」と題する書面を送付し,同年10月3日及び4日各午前9時00分から午後5時00分まで監査を実施する旨の通知をした。 【争いのない事実】b原告Aの委任を受けた日下部昇弁護士(以下「日下部弁護士」という。)及び谷英樹弁護士(以下,両弁護士を併せて「日下部弁護士ら」という。)は,同年9月29日,処分庁に対して,「代理人就任通知兼監査期日変更申請書」を提出した。同申請書には,「出頭して答弁し,検査等を受ける所存でありますが,指定されました監査期日(平成18年10月3日及び翌4日)は,監査通知受領の1週間後で,且つ,診療日であり診療の予約が既に入っております。また,同通知書記載のとおり,過去5年間に当院に勤務したすべての保険医を同監査期日に集めることは至難のことであります。更に,当職ら代理人両名も,両監査期日とも既に裁判期日等が決まっており出頭することができません。以上の次第で,上記監査期日の変更を申請いたします。」と記載されていた。 【争いのない事実】c日下部弁護士らは,処分庁から上記申請書に対する回 に裁判期日等が決まっており出頭することができません。以上の次第で,上記監査期日の変更を申請いたします。」と記載されていた。 【争いのない事実】c日下部弁護士らは,処分庁から上記申請書に対する回答がなかったことから,同年10月2日,処分庁に対し,「監査期日の変更に関する再度のお願い」と題する書面を提出し,再度,監査期日の変更の申 請をした。 【争いのない事実】d処分庁は,同日,原告Aに対し,監査対象者一覧表をファックスで送信し,その後,原告Aに電話したところ,原告Aは,前記bの理由で監査期日に出頭することはできないと回答したことから,処分庁は,上記理由は,正当な理由とは認められない旨伝えた。 【争いのない事実,甲23,弁論の全趣旨】e原告Aは,同月3日の第1回監査期日に出頭しなかった。 【争いのない事実】(ウ)第2回監査についてa処分庁は,同月4日,原告Aに対し,「社会保険医療担当者の監査について(通知)」と題する書面を送付し,同月12日午前9時00分から午後5時00分まで監査を実施する旨及び「正当な理由なく出頭に応じないときは,健康保険法80条5号及び81条2号により保険医療機関の指定取消,保険医の登録取消に該当し,行政処分を行うこととなる」旨の通知をした。 【争いのない事実】b日下部弁護士らは,同月11日,処分庁に対し,「監査出頭及び立ち会い通知書」を送付し,原告A,関係当事者(従業員,勤務歯科医師等)及び同弁護士らが第2回監査に出席する旨並びに補佐人として歯科医師E(以下「E歯科医師」という。)を同行する旨の通知をした。 【争いのない事実】c原告A,日下部弁護士,前記個別指導時にB歯科医院の勤務医であったF保険医及び従業員4名は,同月12日午前8時50分,京都社会保険事務局に出頭し,これにE歯科医師が同 た。 【争いのない事実】c原告A,日下部弁護士,前記個別指導時にB歯科医院の勤務医であったF保険医及び従業員4名は,同月12日午前8時50分,京都社会保険事務局に出頭し,これにE歯科医師が同行した。処分庁は,日下部弁護士の監査への同席は認めたが,E歯科医師の監査への同席について,同医師が監査対象となる診療行為と関係のない者であり,監査に同席させることはできない旨を原告Aらに説明し,同医師の監査 会場への入室を認めなかったところ,原告Aらは,監査会場へ入室することなく退場し,第2回監査も実施には至らなかった。 【争いのない事実,甲8】(エ)第3回監査についてa処分庁は,同月12日,原告Aに対し,「社会保険医療担当者の監査について(通知)」と題する書面を送付し,同月19日午前9時00分から午後5時00分まで監査を実施する旨の通知した。 【争いのない事実】b日下部弁護士らは,同月15日,処分庁に対し,「監査通知に関する回答書」と題する書面を提出し,同書面において,原告らが第2回監査を受けられなかったのは,処分庁が日下部弁護士らの代理人としての立会権を否定し,E歯科医師の監査会場への入室を拒否したためであり,その責任は処分庁にあると申し立てるとともに,第3回監査に原告Aが同行を予定しているE歯科医師の監査への同席を認めてもらえるのか否かについて照会した。 【争いのない事実,甲8,乙11】c処分庁は,同月17日,日下部弁護士らに対し,上記照会に対する回答として,監査にE歯科医師の同席は認められず,このことを理由に監査に応じない場合は,取消処分の対象となるとの回答をした。 【争いのない事実】d日下部弁護士らは,同月18日,処分庁に対し,「監査出頭に関するお伺い」と題する書面を送付した。その内容は,「A・C両氏及び当職らの は,取消処分の対象となるとの回答をした。 【争いのない事実】d日下部弁護士らは,同月18日,処分庁に対し,「監査出頭に関するお伺い」と題する書面を送付した。その内容は,「A・C両氏及び当職らの考えでは,監査手続には歯科医師等の専門家の立ち会いは認められるべきであり,これはA・C両氏の防御権の問題であります。 貴庁のA・C両氏の権利を侵害する対応に承服できません。明日の監査への出頭はできません。A・C両氏は,監査への出席・出頭を拒ん だことは一度もありません。監査への出席出頭をできなくさせたのはあくまでも貴庁の頑なな態度であり,そのすべての責任は,貴庁が負うべきであります。」というものであった。 【争いのない事実】e処分庁は,同日,B歯科医院に対して,監査対象者一覧表をファックスで送信した上,原告Aに対して,第3回監査に出頭を求めるため電話をしたが,連絡はとれなかった。 【争いのない事実】f原告Aらは,同月19日,第3回監査に出頭せず,処分庁は,原告Aに対して,電話をしたが連絡はとれなかった。 【争いのない事実】イ原告Cについて(ア)個別指導についてa処分庁は,平成17年1月19日,原告Cに対して,「社会保険医療担当者の個別指導の実施について(通知)」と題する書面を送付した。 【争いのない事実】b処分庁は,同年2月9日,原告C及びD歯科医院に対する個別指導を実施し,原告Cに保険診療者のカルテ等を提出させたり,患者からの聞き取り調査を実施したところ,診療内容及び診療報酬の請求に関し,不正又は著しい不当の疑いを抱いたことから,個別指導を中止した。 【争いのない事実,甲24,乙13,29】(イ)第1回監査についてa処分庁は,平成18年9月25日,原告Cに対して,「社会保険医療担当者の監査について(通知)」と題す ,個別指導を中止した。 【争いのない事実,甲24,乙13,29】(イ)第1回監査についてa処分庁は,平成18年9月25日,原告Cに対して,「社会保険医療担当者の監査について(通知)」と題する書面を送付し,同年10月3日及び4日各午前9時00分から午後5時00分まで監査を実施する旨の通知をした。 【争いのない事実】b原告Cの委任を受けた日下部弁護士らは,同月29日,処分庁に対して,「代理人就任通知兼監査期日変更申請書」を提出した。同申請 書には,「出頭して答弁し,検査等を受ける所存でありますが,指定されました監査期日(平成18年10月3日及び翌4日)は,監査通知受領の1週間後で,且つ,診療日であり診療の予約が既に入っております。また,同通知書記載のとおり,過去5年間に当院に勤務したすべての保険医を同監査期日に集めることは至難のことであります。 更に,当職ら代理人両名も,両監査期日とも既に裁判期日等が決まっており出頭することができません。以上の次第で,上記監査期日の変更を申請いたします。」と記載されていた。 【争いのない事実】c日下部弁護士らは,処分庁から上記申請書に対する回答がなかったことから,同年10月2日,処分庁に対し,「監査期日の変更に関する再度のお願い」と題する書面を提出し,再度,監査期日の変更の申請をした。 【争いのない事実】d処分庁は,同日,原告Cに対し,監査対象者一覧表をファックスで送信し,前記(2)ア(イ)dの原告Aに対して電話した際,原告Aは,原告Cについても前記bの理由で監査期日に出頭することはできないと回答したので,処分庁は,上記理由は正当な理由には認められないと伝えた。 【争いのない事実,甲24】e原告Cは,同月3日の第1回監査期日に出頭しなかった。 【争いのない事実】(ウ)第2回監査 回答したので,処分庁は,上記理由は正当な理由には認められないと伝えた。 【争いのない事実,甲24】e原告Cは,同月3日の第1回監査期日に出頭しなかった。 【争いのない事実】(ウ)第2回監査についてa処分庁は,同月4日,原告Cに対し,「社会保険医療担当者の監査について(通知)」と題する書面を送付し,同月12日午前9時00分から午後5時00分まで監査を実施する旨及び「正当な理由なく出頭に応じないときは,健康保険法80条5号及び81条2号により保険医療機関の指定取消,保険医の登録取消に該当し,行政処分を行うこととなる」旨の通知をした。 【争いのない事実】 b日下部弁護士らは,同月11日,処分庁に対し,「監査出頭及び立ち会い通知書」を送付し,原告C,関係当事者(従業員,勤務歯科医師等)及び同弁護士らが第2回監査に出席する旨並びに補佐人としてE歯科医師を同行する旨の通知をした。 【争いのない事実】c原告C,D歯科医院に勤務する原告A及び従業員5名,日下部弁護士は,同月12日午前8時50分,京都社会保険事務局に出頭し,これにE歯科医師が同行した。処分庁は,日下部弁護士の監査への同席は認めたが,E歯科医師の監査への同席について,同医師が監査対象となる診療行為と関係のない者であり,監査に同席させることはできない旨を原告Cらに説明し,同医師の監査会場への入室を認めなかったところ,原告Cらは,監査会場へ入室することなく退場し,第2回監査も実施には至らなかった。 【争いのない事実,甲8】(エ)第3回監査についてa処分庁は,同月12日,原告Cに対し,「社会保険医療担当者の監査について(通知)」と題する書面を送付し,同月19日午前9時00分から午後5時00分まで監査を実施する旨の通知をした。 【争いのない事実】b日下部弁護士らは 告Cに対し,「社会保険医療担当者の監査について(通知)」と題する書面を送付し,同月19日午前9時00分から午後5時00分まで監査を実施する旨の通知をした。 【争いのない事実】b日下部弁護士らは,同月15日,処分庁に対し,「監査通知に関する回答書」と題する書面を提出し,同書面において,原告らが第2回監査を受けられなかったのは,処分庁が日下部弁護士らの代理人としての立会権を否定し,E歯科医師の監査会場への入室を拒否したためであり,その責任は処分庁にあると申し立てるとともに,第3回監査に原告Cが同行を予定しているE歯科医師の監査への同席を認めてもらえるのか否かについて照会した。 【争いのない事実,甲8,乙11】c処分庁は,同月17日,日下部弁護士らに対し,上記照会に対する 回答として,監査にE歯科医師の同席は認められず,このことを理由に監査に応じない場合は,取消処分の対象となるとの回答をした。 【争いのない事実】d日下部弁護士らは,同月18日,処分庁に対し,「監査出頭に関するお伺い」と題する書面を送付した。その内容は,「A・C両氏及び当職らの考えでは,監査手続には歯科医師等の専門家の立ち会いは認められるべきであり,これはA・C両氏の防御権の問題であります。 貴庁のA・C両氏の権利を侵害する対応に承服できません。明日の監査への出頭はできません。A・C両氏は,監査への出席・出頭を拒んだことは一度もありません。監査への出席出頭をできなくさせたのはあくまでも貴庁の頑なな態度であり,そのすべての責任は,貴庁が負うべきであります。」というものであった。 【争いのない事実】e処分庁は,同日,D歯科医院に対して,監査対象者一覧表をファックスで送信した。 【争いのない事実】f原告Cらは,同月19日,第3回監査(以下,上記原告らの第1回~ った。 【争いのない事実】e処分庁は,同日,D歯科医院に対して,監査対象者一覧表をファックスで送信した。 【争いのない事実】f原告Cらは,同月19日,第3回監査(以下,上記原告らの第1回~第3回の監査を併せて「本件監査」という。)に出頭せず,処分庁は,原告Cに対して電話したが,連絡はとれなかった。 【争いのない事実】(3)聴聞手続についてア処分庁は,原告らが監査への出頭に応じず,忌避した経緯を検討した結果,B歯科医院及びD歯科医院の保険医療機関の指定の取消し及び原告らの保険医の登録を取り消すことが相当であると判断した。 【甲23,24】イ処分庁は,平成19年6月19日,原告らに対し,「聴聞通知書」と題する書面をそれぞれ送付した。同書面には,「あなたに対する下記の事実を原因とする不利益処分に係る行政手続法(平成5年法律第88号)の規 定による聴聞を下記のとおり行いますので通知します。」と記載された上で,「予定される不利益処分の内容」として「保険医療機関の指定の取消及び保険医の登録の取消」,「根拠となる法令の条項」として「健康保険法第80条及び81条」,「不利益処分の原因となる事実」として「平成18年10月3日,4日及び同月19日に出頭を命じた監査に正当な理由もなく出頭せず,また平成18年10月12日に出頭を命じた監査において出頭はしたものの監査会場の入室を拒否し,監査を三度にわたって拒否したため」,「聴聞の期日」として「平成19年7月11日(水)」と記載されていた。 【争いのない事実,乙16,17】ウ日下部弁護士らは,同年6月26日,上記聴聞期日の変更の申請をし,上記聴聞期日は,同年10月11日に変更された。 【争いのない事実,乙20】エ日下部弁護士らは,同年6月28日,「文書閲覧申請書」と題する書面を提出し 年6月26日,上記聴聞期日の変更の申請をし,上記聴聞期日は,同年10月11日に変更された。 【争いのない事実,乙20】エ日下部弁護士らは,同年6月28日,「文書閲覧申請書」と題する書面を提出し,文書の閲覧に代えてコピーを同弁護士に送付して欲しい旨の申立てをし,処分庁は,同年7月6日,同弁護士に対して,内議資料及び社会保険医療担当者監査調書のコピーを送付した。 【争いのない事実】オ処分庁は,同年10月11日,原告らに対する聴聞を実施したが,聴聞予定時間内に手続が完了しなかったので,聴聞を続行した(以下,上記聴聞に関する一連の手続を「本件聴聞手続」という。)。【乙30,31】(4)原告らは,同年9月13日,本件訴訟を提起した。 【顕著な事実】 争点 [本案前の争点](1)本件各処分によって,原告らに「重大な損害を生じるおそれ」(行政事件訴訟法37条の4第1項)があると認められるか否か。 [本案の争点](2)本件各処分が違法か否か。 争点に対する当事者の主張の要旨(1)争点(1)(重大な損害を生じるおそれ)について[被告の主張]ア行政事件訴訟法37条の4第1項の「重大な損害」とは,それを避けるために事前救済である差止めを命ずる方法による救済が必要な損害を意味し,一定の処分がされることにより生じるおそれのある損害が,その処分の取消訴訟を提起して執行停止を受けることにより容易に救済を受けられるような性質の損害である場合には,そのような損害は,差止めの訴えによる救済の必要性を判断するに当たって考慮される損害には当たらないと解すべきである。そして,「重大な損害」が生じるか否かを判断するに当たっては,処分がされることにより維持される行政目的達成の必要性を踏まえた処分の内容及び性質と当該処分によって原告が被るおそれのあ 解すべきである。そして,「重大な損害」が生じるか否かを判断するに当たっては,処分がされることにより維持される行政目的達成の必要性を踏まえた処分の内容及び性質と当該処分によって原告が被るおそれのある損害の性質及び程度,損害の回復の困難の程度を考慮した上で比較衡量し,行政目的の達成を犠牲にしても原告らを救済しなければならない必要性があるか否かの観点から検討すべきである。 イそこで,検討するに,本件各処分は,「国民の生活の安定と福祉の向上に寄与すること」(健康保険法2条)を目的とし,その給付の財源が保険料の拠出と国庫の負担によって賄われる健康保険制度を適正に維持・運営する目的でなされるものであることからすれば,本件各処分の差止めが許されるのは,適格性を欠く保険医療機関及び歯科医師が保険医療を継続するおそれがあることを踏まえても,なお社会通念上受認させることのできないような重大な損害がその者に発生する場合に限られるというべきである。また,本件各処分がなされたとしても,医療機関としての活動や歯科医師としての稼働は十分可能であること,原告らは保険診療だけでなく,自由診療による収入も得ていることに照らせば,本件各処分がなされたとしても「重大な損害」が生じるとはいえない。 この点,原告らは,本件各処分によって名誉,信用が害されると主張するが,本件各処分は原告らの歯科治療の技術に関するものではないことからすれば,原告らの上記主張は失当である。また,仮に,本件各処分によって,原告らの名誉,信用の低下が生じるとしても,それは本件各処分の取消訴訟が認容されることにより回復され得る性質のものであり,原告らの上記主張は失当である。 以上からすれば,本件各処分がなされた場合に原告らに生じうる損害は,結局,登録取消期間中,保険診療ができないことによる経済 れることにより回復され得る性質のものであり,原告らの上記主張は失当である。 以上からすれば,本件各処分がなされた場合に原告らに生じうる損害は,結局,登録取消期間中,保険診療ができないことによる経済的損失であり,原告らが主張するそれ以外の損害はおよそ想定し難いか,想定し得るとしても大きなものとはいえず,しかもそれは終局的には財産的損失に収斂されるものであって,本件各処分がなされた後に,その処分の取消しの訴えが認容された場合であっても,その損害は,社会通念上その後の金銭賠償による回復をもって満足することもやむを得ない性質のものというべきである。したがって,本件各処分により原告らに生じ得る損害は「重大な損害」には当たらないというべきである。 [原告らの主張]ア行政事件訴訟法37条の5第1項の「重大な損害」に当たるか否かは,行政目的達成の必要性を考慮することなく,原告らの被る損害が重大か否かという観点から判断すべきである。 イ本件において,原告らは保険診療がその大半を占めていること,自由診療は,保険診療によって診療を開始した患者について,補綴や義歯の装着など治療の一部に補完的に行われるものであり,保険外だけの自由診療は通常あり得ないことからすれば,本件各処分によって,原告らが保険診療を行うことができなくなれば,医療機関としての経営を継続することが不可能となり,保険医としても生計を維持できなくなることは明らかである。 そして,本件各処分によって,現在治療を行ってきた患者に対しても診療 を継続することができなくなり,患者との信頼関係が破壊され,仮に,事後的に本件各処分が取り消されたとしても,いったん別の歯科医院に移らざるを得なくなった患者が再び原告らの歯科医院に戻ってくるとは考え難く事後的な回復は困難である。さらに,本件各処分がなされ, に,事後的に本件各処分が取り消されたとしても,いったん別の歯科医院に移らざるを得なくなった患者が再び原告らの歯科医院に戻ってくるとは考え難く事後的な回復は困難である。さらに,本件各処分がなされ,その事実が報道又は公表されることになれば,原告の信用,名誉は著しく損なわれ,これを事後的に回復することも困難である。 以上からすれば,本件各処分によって,原告らは「重大な損害」を被るというべきである。 (2)本件各処分の違法性[原告らの主張]ア立会いを求める権利について処分庁が行った本件監査は,行政調査の一種であり,調査を受ける者に一定の作為義務を課する行政行為であり,不利益処分であることからすれば,監査については,内容的,手続的に適正でなければならず,行政手続法の趣旨が妥当し,被監査者は手続上の権利を有すると解すべきである。 そして,監査において,被監査者は,個別の患者に対する個々の診療行為ないし診療報酬請求について,診療報酬請求書やカルテ等の書類や患者の実地調査の結果などをもとに行政庁の多数の職員から専門的で詳細な質問を受け,監査の結果は監査調書に記録されることからすれば,被監査者は,診療及び保険制度に関する専門的知識を踏まえた対応をしなければ誤った回答を行うなどして,不当に不利益を受け,ひいては監査自体の適正が損なわれるおそれもある。そうだとすれば,被監査者は,監査に専門的知識を有する歯科医師の立会いを求める手続上の権利を有すると解すべきである。また,仮に,被監査者に上記権利が認められないとしても,上記のような監査の実態に照らせば,被監査者が他の歯科医師の立会いを求めた場合に,処分庁が正当な理由なくこれを拒むことは許されないというべ きである。 また,監査の実態が上記のとおりであること,指導要綱及び監査要綱に弁護士が被監査 査者が他の歯科医師の立会いを求めた場合に,処分庁が正当な理由なくこれを拒むことは許されないというべ きである。 また,監査の実態が上記のとおりであること,指導要綱及び監査要綱に弁護士が被監査者の代理人となることを認めない規定はなく,監査の現場でも弁護士代理人の立会い,発言が認められていることからすれば,被監査者は,監査に代理人となった弁護士の立会いを求める権利を有するというべきである。 イ出頭拒否には正当な理由があること(ア)第1回監査について原告らが第1回監査に出頭しなかったのは,処分庁が指定した監査期日が原告らの診療日であり,既に予約が入っており,また,原告ら代理人の日下部弁護士らの裁判期日のため監査に出頭することが困難であったためであり,出頭拒否には正当な理由がある。 この点,被告は,診療の予約が入っていることは,正当な理由にならないと主張する。しかし,歯科治療は,治療計画に従った計画的な治療が必要なほか,適切な時期に適切な治療を行う必要があり,診療の予約は,このような治療計画ないし治療の適時性を考慮してなされるのであり,直前に診療の予約を変更することは治療自体に著しい悪影響を及ぼすというべきである。そうだとすれば,原告らが診療の予約が入っていることを理由として出頭しなかったことは,適法というべきである。 (イ)第2回監査について原告らが第2回監査に出頭しなかったのは,処分庁が,原告が同行したE歯科医師の監査会場への入室を拒否したためであるところ,前記のとおり,被監査者には,専門的知識を有する歯科医師の立会いを求める権利を有することからすれば,上記出頭拒否には正当な理由がある。 この点,被告は,E歯科医師の立会いを拒否したのは,歯科医師には守秘義務ががないからであると主張するが,歯科医師が監査に立ち会っ て知 を有することからすれば,上記出頭拒否には正当な理由がある。 この点,被告は,E歯科医師の立会いを拒否したのは,歯科医師には守秘義務ががないからであると主張するが,歯科医師が監査に立ち会っ て知り得た個人情報も職務上取得した個人情報に該当することからすれば,歯科医師は,第三者の監査に立ち会った場合に得られた情報について法律上の守秘義務を有するというべきであり,被告の上記主張は失当である。 (ウ)第3回監査について原告らが第3回監査期日に出頭しなかったのは,処分庁があらかじめE歯科医師の立会いを拒むことを通告していたことから,原告らは,第2回監査期日と同様の理由で監査に出頭しなかったからであり,第2回監査と同様に出頭拒否には正当な理由があるというべきである。 ウ聴聞手続における違法事由(ア)行政手続法18条1項は,聴聞の当事者は調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができ,これに対して,行政庁は,第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときでなければ,その閲覧を拒むことができないと規定する。本件において,処分庁は,本件聴聞手続において,原告らが求めた不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧の求めに対して,一部について黒塗りにして閲覧を拒否し,その理由について説明することができなかった。そうだとすれば,処分庁による上記閲覧の一部拒否は本件聴聞手続を違法ならしめ,本件各処分も違法になるというべきである。 (イ)また,原告らは,聴聞主宰者の許可を得て,処分庁に対して,上記閲覧拒否の理由を質問したが,処分庁は,その理由を説明できず,又,その説明を拒んだことからすれば,処分庁によるかかる説明拒否は,行政手続法20条2項で保障された当事者の質問権を実質的に無に帰す 上記閲覧拒否の理由を質問したが,処分庁は,その理由を説明できず,又,その説明を拒んだことからすれば,処分庁によるかかる説明拒否は,行政手続法20条2項で保障された当事者の質問権を実質的に無に帰するものであり,違法であり,本件各処分も違法になるというべきである。 (ウ)さらに,本件聴聞手続は,続行中であるところ,聴聞主宰者である 京都社会保険事務局年金課長は,平成19年12月11日付けで,原告らに対して,平成20年1月8日午前10時に原告Aの,同日午後2時に原告Cの聴聞期日を一方的に指定した。このような原告ら,その補佐人及びその代理人らの都合を考慮せずにした聴聞主宰者の続行期日の指定は,原告らの適正な聴聞を受ける権利を侵害するものであり,違法というべきである。 [被告の主張]ア本件各処分が違法となるのは,処分庁が当該処分をすることがその裁量権を逸脱,濫用するものと明らかに認められる場合に限られるというべきである。 健康保険法78条1項は,厚生労働大臣は,療養の給付に関して必要があると認めるときは,保険医療機関の開設者や保険医等に対し,「報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ」たり,「出頭を求め,又は当該職員に関係者に対して質問させ」ることができるとし(同法78条1項),同法80条5号,同法81条2号は,国費を拠出して運用されている健康保険制度の適正を保持するために厚生労働大臣の監査に応じない保険医療機関の開設者あるいは保険医については,保険医療機関の指定あるいは保険医の登録を取り消すことができると定めている。 そして,本件において,原告Aは,B歯科医院の開設者,かつ,保険医であり,原告Cは,D歯科医院の開設者,かつ保険医であり,原告らは,監査に応じる義務があるにもかかわらず,原告らは,3回にわたって監査を して,本件において,原告Aは,B歯科医院の開設者,かつ,保険医であり,原告Cは,D歯科医院の開設者,かつ保険医であり,原告らは,監査に応じる義務があるにもかかわらず,原告らは,3回にわたって監査を受けることを拒否していることからすれば,原告らが同法80条5号及び同法81条2号の取消事由に該当することは明らかである。 イ原告らの主張に対する反論(ア)被監査者の第三者の立会いを求める権利原告らは,監査についても行政手続法の趣旨が妥当すること及び監査 の実態に照らし,被監査者は,第三者の立会いを求める権利を有すると主張する。 しかし,監査は,保険医療機関等の診療内容又は診療報酬の請求について,不正又は著しい不当が疑われる場合等において,的確に事実関係を把握し,公正かつ適切な措置を採ることを主眼として行われるもので,その目的は,事実関係の確認のための情報収集にあり,監査の法的性質は,行政調査であり,行政手続法の適用は除外されており(行政手続法3条14号),原告らの上記主張は失当である。また,監査は,被監査者の面前で診療録及び患者調査において確認された診療報酬の請求に疑義がある事例等について,その対象となる各患者の診療録,エックス線写真,納品伝票等の関係書類と診療報酬明細書を基に実際に行った診療内容等を確認する方法で行われる。そうだとすれば,監査においては,被監査者がいかなる知識や認識を持って保険診療や診療報酬請求等を行っているのかが確認されるのであり,かかる事実を離れて,専門的知識に基づいた議論が行われるものではない上に,その要求される知識も歯科医師,保険医療機関開設者,保険医として当然に有しているべき歯科治療及び保険診療に関する知識で足り,第三者(専門的知識を有する者)が立ち会う必要性はなく,監査の実態を理由とする原告らの上記 識も歯科医師,保険医療機関開設者,保険医として当然に有しているべき歯科治療及び保険診療に関する知識で足り,第三者(専門的知識を有する者)が立ち会う必要性はなく,監査の実態を理由とする原告らの上記主張も失当である。 以上より,被監査者は,監査に第三者の立会いを求める権利はないというべきである。 (イ)原告らの出頭拒否に正当な理由はないことa原告らは,被監査者が第三者の立会いを求める権利を有し,処分庁がそれを拒否することは裁量の逸脱,濫用であり,違法であると主張するが,原告らに第三者の立会いを求める権利はないのは前記のとおりであり,原告らの上記主張は失当である。 b原告らは,第1回監査を拒否した理由として,同監査実施予定日は診療日であり,既に予約が入っていたために監査に出頭しなかったと主張する。しかし,健康保険法は,厚生労働大臣に保険医療機関等及び保険医に対する監査の権限を認めているものの,その範囲,程度,監査の日時,事前通知の要否等の手続的事項を定めた規定はないことからすれば,これらの事項については,厚生労働大臣の裁量に委ねられていると解すべきである。そうすると,本件において,処分庁は,監査実施予定日の1週間前に監査通知を送付しており,通常,1週間あれば,予約済みの患者への連絡等を行うことは十分可能であり,予約済みの患者がいることが処分庁に認められた裁量の逸脱を基礎付ける事情にはならないこと。 c原告らは,E歯科医師にも監査で知り得た個人情報についての守秘義務があると主張する。しかし,歯科医師が負う守秘義務の範囲は,「職務上取得した個人情報」についてであるところ,歯科医師の職務は,歯科医療及び保険指導を掌ることによって,公衆衛生の向上及び増進に寄与し,もって国民の健康な生活を確保することであり(歯科医師法1条),自 取得した個人情報」についてであるところ,歯科医師の職務は,歯科医療及び保険指導を掌ることによって,公衆衛生の向上及び増進に寄与し,もって国民の健康な生活を確保することであり(歯科医師法1条),自らが診療を担当していない保険医療機関の監査に立ち会うことは歯科医師としての職務でない以上,原告らの上記主張は失当である。 (ウ)聴聞手続における違法事由についてa原告らは,処分庁による内議資料及び社会保険医療担当者監査調書の一部閲覧拒否(以下「本件一部閲覧拒否」という。)及び本件一部閲覧拒否の理由を説明しないことが違法であると主張する。しかし,処分庁が一部閲覧拒否した理由は,当該拒否部分が第三者の個人情報に関するものであるからであり,また,処分庁は,原告らに対して,行政手続法18条の「第三者の利益を害するおそれがあるとき」に該 当すると説明しており,聴聞手続に違法はなく,原告らの上記主張は失当である。 b原告らは,聴聞主宰者が平成20年1月8日の聴聞期日を指定したことが違法であると主張する。しかし,聴聞主宰者は,日下部弁護士から同日の都合がつかないとの申出がなされたため,再度,複数の候補日を提示して,日程調整を行っている状況である(現時点で日下部弁護士からの回答はない。)ことからすれば,上記原告らの主張は失当である。 第3当裁判所の判断 争点(1)(重大な損害を生ずるおそれの有無)について(1)行政事件訴訟法37条の4第1項は,差止めの訴えは,一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り,提起することができると定めている。差止めの訴えが抗告訴訟の新たな類型として法定された趣旨は,処分又は裁決がなされた後に当該処分等の取消訴訟を提起し,執行停止(同法25条)を受けたとしても,それだけでは十分 ことができると定めている。差止めの訴えが抗告訴訟の新たな類型として法定された趣旨は,処分又は裁決がなされた後に当該処分等の取消訴訟を提起し,執行停止(同法25条)を受けたとしても,それだけでは十分な救済を得られない場合があることから,事前の救済方法として,差止めの訴えを法定することによって,国民の権利利益のより実効的な救済を図ろうとした点にある。そして,同法37条の4第1項が,差止めの訴えについて,「処分又は裁決がされることにより重大な損害が生ずるおそれがある」ことを要件とした趣旨は,差止めの訴えが,処分又は裁決がされる前に,裁判所に対して事前救済を求める訴訟類型であることに鑑み,事前救済を認めるにふさわしい救済の必要性を要件とすることにより,司法と行政の適切な役割分担を踏まえつつ行政に対する司法審査の機能を強化し国民の権利利益の実効的な救済を図ろうとした点にあると解される。 このような趣旨に照らせば,上記「重大な損害」とは,それを避けるために事前救済を認める必要がある損害をいうと解すべきであり,当該損害がそ の処分後に執行停止を受けることにより避けることができるような性質のものであるときは,「重大な損害」には該当しないと解すべきである。 そして,この重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たっては,損害の回復の困難の程度を考慮し,損害の性質及び程度並びに処分又は裁決の内容及び性質をも勘案すると解すべきである(同法37条の4第2項参照)。 そこで,以上を前提に,本件各処分によって,原告らに「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるか否かについて検討する。 (2)証拠(後掲)によれば,以下の事実を認めることができる。 アB歯科医院の診療科目は,歯科,矯正歯科,小児歯科であり,B歯科医院においては,原告Aを含めて歯科医師2名(常勤) ついて検討する。 (2)証拠(後掲)によれば,以下の事実を認めることができる。 アB歯科医院の診療科目は,歯科,矯正歯科,小児歯科であり,B歯科医院においては,原告Aを含めて歯科医師2名(常勤),歯科衛生士3名(内2名常勤),助手3名(内1名常勤)の合計8名が働いており,一日の平均的な患者数は50~60名程度である。 【甲15】イD歯科医院の診療科目は,歯科,矯正歯科であり,D歯科医院においては,原告A及び同Cも含めて歯科医師3名(常勤),歯科衛生士3名(非常勤),助手1名(非常勤)の合計7名が働いている。 【甲15】ウ原告Aは,平成18年分の所得税の確定申告書に,B歯科医院の平成18年分の保険診療収入は5291万0473円であり,自由診療報酬は1725万9280円であったと記載しており,これによれば,全医業収入に占める保険診療収入の割合は,約75%となる。 【甲21】エ原告Cは,平成18年分の所得税の確定申告書に,D歯科医院の平成18年分の保険診療収入は3064万4770円であり,自由診療報酬は1559万1838円であったと記載しており,これによれば,全医業収入に占める保険診療収入の割合は,約66%となる。 【甲22】オ原告Aは,処分庁から個別指導を受けた後に作成した「反省文」に,インプラント治療等について,保険でできるところは保険請求できるものだと思いこんでいたと記載して,処分庁に提出した。 【乙23】 (3)以上を前提に検討する。 ア前記(第2の1「法令の定め」)のとおり,保険医療機関の指定を受けた歯科医院は,保険医療機関指定取消処分を受けることにより,被保険者に対して,保険診療を行うことができなくなり,また,保険医の登録を受けた歯科医師は,保険医登録取消処分を受けることにより,保険医療機関における保険診 医療機関指定取消処分を受けることにより,被保険者に対して,保険診療を行うことができなくなり,また,保険医の登録を受けた歯科医師は,保険医登録取消処分を受けることにより,保険医療機関における保険診療に従事することができなくなる。もっとも,保険医療機関指定取消処分ないし保険医登録取消処分は,それとは別に医療機関の開設許可取消事由(医療法29条参照)ないし歯科医師免許取消事由(歯科医師法7条参照)に該当しない限り,当該医療機関ないし当該歯科医師の資格,効力に直ちに法的影響を与えるものではない。したがって,保険医療機関指定取消処分を受けた医療機関や保険医登録取消処分を受けた歯科医師が保険診療以外の診療を行うこと自体は,何ら法令上禁止されていないと解され,原告らは,本件各処分を受けたとしても,保険診療以外の診療に従事することはできる。 しかし,国民皆保険制度が採用されている我が国において,患者は,保険診療できるものに対しては保険診療を期待して診療を受けることは公知の事実である上,前記認定事実(ウ,エ,オ)及び弁論の全趣旨によれば,原告らが開設する各歯科医院は,自由診療を基本とする歯科医院ではなく,保険診療の割合は60~70%であったこと,原告らが自由診療を行っていた患者も,その多くは保険診療を期待して来院し,その治療内容についての歯科医の説明やアドバイスを聞いた上で,診療の一部又は全部を自由診療とした者であり,初めから自由診療を前提として来院した患者は比較的少数にとどまることが推認できるから,本件各処分により,B歯科医院及びD歯科医院において保険診療を行うことができなくなれば,来院する患者数は大幅に減り,保険診療はもとより,自由診療による収入も大幅に減ることが予想される。これに加えて,B歯科医院では,原告A以外に7 名が,D歯科医院で 療を行うことができなくなれば,来院する患者数は大幅に減り,保険診療はもとより,自由診療による収入も大幅に減ることが予想される。これに加えて,B歯科医院では,原告A以外に7 名が,D歯科医院では原告ら以外に5名がそれぞれ働いており(前記認定事実ア,イ),その経費も多額に上ることが推認でき,本件各処分に伴い患者数が大幅に減少した場合,原告らが,その開設する歯科医院を,現状の形態のまま維持することは不可能であり,経営が破綻するおそれもあるというべきである。 もっとも,原告らは,本件各処分後に,その取消訴訟を提起し,併せて執行停止の申立をすることはできる。しかし,仮に執行停止がされたとしても,執行停止決定までに一定の日数が必要であるから,その間における保険診療はできず,患者に対し,保険診療ができないことを説明し,他の歯科医院を紹介したりする必要が生じる。そして,これにより,原告らの患者らは,原告らが保険診療に関し,何らかの不正を行い,処分を受けたことを知ることになり,その情報は,口伝てにその知人や付近住民に広まる可能性が高く,これにより原告らの歯科医師としての評価や信用が損なわれることになる。しかも,本件各処分がされた場合,そのことは,地方社会保険事務局の掲示場に掲示する方法で公示される(保険医療機関及び保険薬局の指定並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する政令2条,9条,同省令1条の2,13条)ほか,報道機関にも発表され,厚生労働省のホームページにも,当該保険医療機関の名称,当該保険医の名前等が公表される(弁論の全趣旨)のであり,上記評価及び信用毀損の程度は大きい。そして,本件各処分後に執行停止がされたとしても,本件各処分によって低下,失墜した原告らの歯科医師としての社会的評価や信用が直ちに回復することは考えにくく,他の歯科医院に び信用毀損の程度は大きい。そして,本件各処分後に執行停止がされたとしても,本件各処分によって低下,失墜した原告らの歯科医師としての社会的評価や信用が直ちに回復することは考えにくく,他の歯科医院に転院した患者が,再び原告らの歯科医院に戻る可能性は低いことはもとより,新規の患者が増える可能性も低いと解される。 したがって,本件各処分によって生じる前記の損害を,取消訴訟の提起や執行停止などの事後的救済手段によって十分に回復することは困難であ るというべきである。 イこれに対して,被告は,本件各処分は,原告らの歯科治療の技術に関するものではないから,原告らの社会的評価等には影響しないものか,本件各処分の取消訴訟により回復され得るものであると主張する。しかし,歯科医師の診療行為が,その業務の性質上,患者の身体に対する侵襲を伴い,その生命,身体に対する危険を伴うものであることからすれば,患者は,歯科医師に対して,歯科治療の技術だけでなく,その品位等の社会的評価ないし信用性があることも重要な要素と考えているのが通常であり(なお,歯科医師法は,歯科医師の免許取消事由として,歯科医師としての品位を損なうような行為があった場合も含めて規定している(同法7条)。),本件各処分を知った者は,原告らを,信用できない歯科医師として通院を避ける可能性が高く,取消訴訟の提起や執行停止がされたとしても,上記評価や信用を原状に戻すことはできないというべきである。被告の上記主張は採用できない。 ウ以上からすれば,原告らは,本件各処分によって生じる大幅な収入の減少や歯科医師及び医療機関としての社会的評価,信用性の失墜によって,B歯科医院及びD歯科医院の経営破綻という「重大な損害」(行政事件訴訟法37条の4第1項)を受けるおそれがあるというべきである。 なお,本件 医師及び医療機関としての社会的評価,信用性の失墜によって,B歯科医院及びD歯科医院の経営破綻という「重大な損害」(行政事件訴訟法37条の4第1項)を受けるおそれがあるというべきである。 なお,本件各処分は,保険医療機関指定取消処分及び保険医登録取消処分であり,これらの処分の目的は,保険医療機関及び保険医療養担当規則(乙1。以下「療養担当規則」という。)が定める診療方針等に反する健康保険の診療等を行った保険医療機関及び保険医を排除することにより,健康保険事業の健全な運営及び適正な費用の請求等を確保し,もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することにあり,その行政目的達成が重要であることはいうまでもない。しかし,上記のように,本件各処分により原告らに「重大な損害」が生じるおそれがあると解したとしても,それ は,差止め訴訟の訴訟要件を満たすだけのことであり,差止めを認める判決をするためには,処分庁において,本件各処分をすべきでないことがその根拠法令の規定から明らかであると認められるなど厳格な要件を満たす必要があるのであって,「重大な損害」について,上記のように解することが,本件各処分によって達成しようとする上記行政目的を軽視することにはならない。 エ以上より,原告らは,本件各処分がされることにより「重大な損害を生ずるおそれがある」といえ,争点(1)に係る原告らの主張は理由がある。 争点(2)(本件各処分の違法事由の有無)について(1)前記法令の定めのとおり,健康保険法78条1項は,監査について定め,同法80条,81条は,保険医療機関の開設者や保険医等が監査に出頭しなかったことを保険医療機関の指定ないし保険医の登録の取消事由として定めている。もっとも,これらの各規定の趣旨に照らせば,保険医療機関の開設者や保険医が監査に出頭しな 開設者や保険医等が監査に出頭しなかったことを保険医療機関の指定ないし保険医の登録の取消事由として定めている。もっとも,これらの各規定の趣旨に照らせば,保険医療機関の開設者や保険医が監査に出頭しないことに正当な理由があると認められる場合には,上記各取消事由には該当しないと解すべきである。 (2)前提事実のとおり,B歯科医院の開設者かつ保険医である原告A及びD歯科医院の開設者かつ保険医である原告Cは,第1回~第3回監査に出頭していないから,以下,原告らが本件監査に出頭しなかったことに正当な理由があるか否かを検討する。 ア原告らは,被監査者には監査において第三者の立会いを求める権利ないし法的利益があることを前提として,第2回,第3回監査に出頭しなかったことには正当な理由があると主張するので,検討する。 (ア)健康保険法78条が,厚生労働大臣に監査権限を認めた趣旨は,健康保険制度が保険料の拠出と国庫の負担によって運用されていることに鑑み,保険医療機関等の診療内容又は診療報酬の請求ついて,不正又は著しい不当が疑われる場合等において,的確に事実関係を調査,把握し, 公正かつ適切な措置を採ることができるようにすることにより,保険診療の質的向上及び適正化を図ろうとした点にあると解される。このように,監査の目的は,行政庁が適切な措置を採るための情報収集(いわゆる行政調査)にあること,同法は監査の範囲,程度,時期,場所等についての細目的事項を定めていないことからすれば,同法は,監査方法の細目を厚生労働大臣の裁量に委ねたものと解される。 そして,同法は,厚生労働大臣が監査において,必要があると認めるときは,診療等に関する学識関係者をその関係団体の指定により監査に立ち会わせることができると定める(同法73条1項,2項)ものの,被監査者が監査におい 厚生労働大臣が監査において,必要があると認めるときは,診療等に関する学識関係者をその関係団体の指定により監査に立ち会わせることができると定める(同法73条1項,2項)ものの,被監査者が監査において第三者の立会いを求めることができる趣旨の定めはないこと,前記のとおり,監査の目的は,行政庁が適切な措置を行うための情報収集にあり,迅速性が要請されることからすれば,被監査者が監査において第三者の立会いを求める権利ないし法的利益を有すると解することはできず,監査に第三者の立会いが認められるか否かは,厚生労働大臣の裁量に属するものと解すべきである。このように解したとしても,当該監査に基づいて不利益処分が行われる場合には,告知・聴聞の手続が前置され(行政手続法13条1項参照),被監査者の防御の利益はかかる場面で図られることからすれば,被監査者に特段の不利益を与えるものではない。 以上からすれば,被監査者には,監査において第三者の立会いを求める権利は認められないと解すべきであり,当該監査において第三者の立会いを認めるか否かは厚生労働大臣(又はその委任を受けた地方社会保険事務局長)の裁量に委ねられていると解すべきである。 (イ)原告らは,①監査においても行政手続法の趣旨が妥当すること,②被監査者としては,監査において,診療及び保険制度に関する専門的知識を踏まえた対応をしなければ,誤った回答を行うなどして,不当に不 利益を受けることから,被監査者には第三者の立会いを求める権利が認められると主張する。 しかし,行政手続法は,「職務の遂行上必要な情報の収集を直接の目的としてされる処分」については,同法第2章~第4章までの規定を適用しないと規定しており(行政手続法3条14号),この規定の趣旨に照らせば,監査に同法の規定やその趣旨を準用ないし類推適用す 直接の目的としてされる処分」については,同法第2章~第4章までの規定を適用しないと規定しており(行政手続法3条14号),この規定の趣旨に照らせば,監査に同法の規定やその趣旨を準用ないし類推適用することは相当でなく,原告らの上記①の主張は採用できない。 また,証拠(甲2,5,7,乙13~15,弁論の全趣旨)によれば,監査は,診療録及び患者調査において確認された診療報酬の請求に疑義がある事例等について,その対象となる各患者の診療録,エックス線写真,納品伝票等の関係書類と診療報酬明細書を基に実際に行った診療内容等の事実を確認する方法で行われることが認められる。そして,歯科医師は,診療をしたときは診療に関する事項を診療録に記載しなければならず(歯科医師法23条1項),保険医療機関は,診療録に療養の給付の担当に関し必要な事項を記載しなければならない(療養担当規則8条)から,上記監査における調査事項は,保険医療機関ないし保険医の業務に直接関係するものである。このように,監査は,保険医療機関の開設者であり,かつ保険医である原告らの業務と直接関係する診療内容等について事実を確認する方法で行われるものである以上,監査に他の歯科医師の立会いを認める必要性があるとはいえない。加えて,仮に,原告らが主張するように診療及び保険制度に関する専門的知識を踏まえた対応をしなければ,誤った回答をし得る場合があるとしても,それは,当該保険医療機関の開設者ないし保険医として当然有しておくべき専門的知識を有していないことに起因するものであるから,このような事例があり得ることをもって,第三者の立会いを求める権利があると解することはできず,原告らの上記②の主張も採用できない。 (ウ)そこで,本件において,処分庁がE歯科医師の立会いを拒否したことに裁量権の逸脱濫用が もって,第三者の立会いを求める権利があると解することはできず,原告らの上記②の主張も採用できない。 (ウ)そこで,本件において,処分庁がE歯科医師の立会いを拒否したことに裁量権の逸脱濫用があるか否かを検討する。 前記のとおり,本件監査における調査事項は,保険医療機関ないし保険医の業務と直接関係するものであるから,保険医療機関の開設者であり,かつ保険医である原告らを補助するために他の歯科医師の立会いを認める必要性があるとはいえない(本件において,歯科医師の立会いが特に必要であったという事情も窺えない。)。 また,前記のとおり,監査においては,保険医療機関の患者の診療録,エックス線写真,関係書類,診療報酬明細書等の多大な個人情報を扱うことになるが,歯科医師の守秘義務は,「その職務上取り扱ったことについて知り得た」ものに限られるため(刑法134条1項参照),E歯科医師が本件監査で知り得た個人情報について守秘義務を負うとは解し難いことからすれば,処分庁が,E歯科医師の本件監査への立会いを拒むことには合理的な理由がある。 以上のとおり,本件において,E歯科医師の立会いを認める必要性があるとは言い難い上に,処分庁がその立会いを拒否したことに合理的な理由があることからすれば,処分庁がE歯科医師の立会いを拒否したことにその裁量権の逸脱濫用があったとは認められない。 イこのように,原告らが第2回,第3回監査に出頭しなかったことについて,正当な理由があるとは認められないから,第1回監査の不出頭についての正当な理由の有無を検討するまでもなく,原告らには,保険医療機関の指定取消及び保険医の登録取消事由が存在するというべきである。 (3)原告らは,①処分庁が本件聴聞手続においてした本件一部閲覧拒否は行政手続法18条1項に違反し,その拒否理由の説明をし 険医療機関の指定取消及び保険医の登録取消事由が存在するというべきである。 (3)原告らは,①処分庁が本件聴聞手続においてした本件一部閲覧拒否は行政手続法18条1項に違反し,その拒否理由の説明をしていないことが同法20条2項に違反すること,②聴聞主宰者が原告ら及びその代理人の都合を考慮せず一方的に続行期日を指定したことが原告らの聴聞を受ける権利を侵害 することから,本件各処分は,違法であると主張するので検討する。 ア上記①の主張について(ア)原告らは,閲覧拒否に正当な理由がない場合やそれを説明できない場合には,当該処分の取消事由に該当すると主張する。しかし,行政手続法18条が,聴聞手続の当事者等が行政庁に対して当該事案についての調査結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を認めた趣旨は,聴聞の当事者等に調書等の関係資料の閲覧を認めることにより,聴聞手続における意見陳述や立証活動を効果的にさせ,当事者の防御権の行使を十全ならしめようとした点にあると解される。したがって,処分庁が書類等の閲覧を拒否したことが当該処分の取消事由となるのは,閲覧請求の対象となった書類等についての閲覧を認めないことに瑕疵があり,かつ,聴聞当事者の防御権の行使が実質的に妨げられたと認められる場合に限られると解すべきである。 (イ)そこで,本件が上記のような場合に当たるか否かを検討するに,前提事実,証拠(甲23,24)及び弁論の全趣旨によれば,(a)処分庁が原告らに対して送付した聴聞通知書には,「予定される不利益処分の内容」として「保険医療機関の指定の取消及び保険医の登録の取消」,「根拠となる法令の条項」として「健康保険法第80条及び81条」,「不利益処分の原因となる事実」として「平成18年10月3日,4日及び同月19日に 保険医療機関の指定の取消及び保険医の登録の取消」,「根拠となる法令の条項」として「健康保険法第80条及び81条」,「不利益処分の原因となる事実」として「平成18年10月3日,4日及び同月19日に出頭を命じた監査に正当な理由もなく出頭せず,また平成18年10月12日に出頭を命じた監査において出頭はしたものの監査会場の入室を拒否し,監査を三度にわたって拒否したため」と記載されていたこと,(b)原告らは,本件監査において,原告らには第三者の立会いを求める権利があり,監査に出頭しなかったのは,監査におけるE歯科医師の監査への立会いを認めない処分庁に責任があると主張していたこと,(c)処分庁が閲覧を一部許可した資料(甲23,2 4)には,原告らが本件監査に出頭しなかった事実経緯が記載されているほか,処分庁の処分意見として,原告らが正当な理由なく監査に出頭せず,また,監査を拒否したことが健康保険法78条1項に違反し,これは保険医療機関及び保険医の取消を定めた同法80条5号,81条2号に該当するため,保険医療機関の指定取消,保険医の登録取消が妥当であるとの記載がされていること,(d)同資料中,閲覧拒否部分に記載されているのは,原告ら歯科医院に勤務する保険医に対する行政処分の要否等を検討するために作成された記載及び原告ら歯科医院についての情報提供を行った者に関する記載であることが認められる。 上記各認定事実によれば,本件聴聞手続における具体的な争点は,被監査者が監査において第三者の立会いを求める権利を有するか否かという法律解釈であったこと,しかるに,本件一部閲覧拒否部分に記載されている事項は,上記争点とは直接関係しないものであったことが認められるから,本件一部閲覧拒否によって原告らの防御権の行使が実質的に妨げられたとはいえない。 したがって 本件一部閲覧拒否部分に記載されている事項は,上記争点とは直接関係しないものであったことが認められるから,本件一部閲覧拒否によって原告らの防御権の行使が実質的に妨げられたとはいえない。 したがって,その余の点を判断するまでもなく,原告らの前記①の主張は採用できない。 イ前記②の主張について原告らは,本件聴聞手続において,聴聞主宰者が原告らに事前確認をせずに続行期日を指定したことが原告らの適正な聴聞を受ける権利を侵害すると主張する。しかし,行政手続法22条1項は,「主宰者は,聴聞の期日における審理の結果,なお聴聞を続行する必要があると認めるときは,さらに新たな期日を定めることができる」と定め,同条2項は,上記場合においては,「当事者及び参加人に対し,あらかじめ,次回の聴聞の期日及び場所を書面により通知しなければならない。」と定めており,同法は,聴聞主宰者の職権による続行期日の指定のみを定め,当事者等の申立権を 定めていない。 これらの規定によれば,聴聞手続における続行期日の指定は,聴聞主宰者の専権に属し,続行期日の指定に当たり,当事者に事前確認するか否かは聴聞主宰者の裁量の範囲内の問題というべきである。そして,本件において,聴聞主宰者がその裁量権を逸脱濫用したことを窺わせるような事情はない(処分庁は,平成20年1月8日を続行期日として指定した後,日下部弁護士から都合がつかないとの申出があったことから続行期日の日程調整を行っている(弁論の全趣旨)が,これは裁量権の逸脱濫用の評価障害事由に当たる。)ことからすれば,聴聞主宰者が原告らに事前確認をせずに続行期日の指定をしたことが違法であるとはいえず,原告らの前記②の主張も採用できない。 ウ以上より,原告らの前記①,②の主張は採用できず,争点(2)に係る原告らの主張は理由がない。 認をせずに続行期日の指定をしたことが違法であるとはいえず,原告らの前記②の主張も採用できない。 ウ以上より,原告らの前記①,②の主張は採用できず,争点(2)に係る原告らの主張は理由がない。 結論 よって,原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官廣谷章雄裁判官森鍵一 裁判官棚井啓
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