平成25年6月26日判決言渡平成24年(行ケ)第10287号審決取消請求事件平成25年6月26日口頭弁論終結判決 原告ケンナメタルインコーポレイテッド 訴訟代理人弁理士中島 淳同加藤和詳訴訟代理人弁護士中野浩和訴訟代理人弁理士百瀬尚幸 被告特許庁長官指定代理人長屋陽二郎同豊原雄同氏原康宏同大橋信彦 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由第1 請求特許庁が不服2011-4785号事件について平成24年3月26日にした審決を取り消す。 第2 前提事実 1 特許庁における手続の経緯等(争いがない。)原告は,発明の名称を「スパイラルドリル用のドリル刃先およびスパイラルドリル用のドリル刃先領域に切削溝を形成するための方法」とする発明につき,平成13年5月19日を出願日とする特許出願(特願2001-587958号。パリ条約に基づく優先権主張・2000年6月2日,ドイツ連邦共和国。以下,「本願」という。)をした。原告は,平成22年2月25日付けで拒絶理由の通知を受けたので,同年6月2日付けの意見書を提出するとともに,同日付けの手続補正書により,特許請求の範囲及び明細書の補正をした(以下「本件補正1」といい,この補正後の明細書及び図面をまとめて「本件明細書」という。)。原告は,同 けの意見書を提出するとともに,同日付けの手続補正書により,特許請求の範囲及び明細書の補正をした(以下「本件補正1」といい,この補正後の明細書及び図面をまとめて「本件明細書」という。)。原告は,同年10月27日付けで拒絶の査定を受け,平成23年3月2日,拒絶査定に対する不服の審判(不服2011-4785号)を請求するとともに,同日付けの手続補正書により,特許請求の範囲の補正をした(以下「本件補正2」という。)。 特許庁は,平成24年3月26日,本件補正2を却下するとともに(原告は,本件訴訟においてこの判断については争っていない。),「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,平成24年4月10日,原告に送達された。 2 特許請求の範囲の記載本願の特許請求の範囲(請求項の数11)の請求項1(本件補正1後の請求項1)の記載は,以下のとおりである(以下,同請求項に記載された発明を「本願発明」という。)。 「ドリルの長手方向(L)に切削溝(10)に沿って延びる副刃(14)に接続され(下線部につき,請求項1には「通じ」と記載されているが,「接続され」の誤記と認める。)かつ互いにチゼルエッジ(6)を介して接続されている複数の主刃(4)を有し,各副刃(14)の内側面(16)に接しかつドリル長手方向(L)に対して垂直な接線(T)と半径方向(R)との間に副切削角(γ)が規定されているスパイラルドリル(2)用のドリル刃先(3)であって,副切削角(γ)がドリル刃先(3)からドリル長手方向(L)に増大しており,複数の主刃(4)がチゼルエッジ(6)の方向へ直線的に延びていることを特徴とするドリル刃先。」 3 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。審決は,本件補正2を却下した上で,要旨,本願発明は,特表平9 ルエッジ(6)の方向へ直線的に延びていることを特徴とするドリル刃先。」 3 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。審決は,本件補正2を却下した上で,要旨,本願発明は,特表平9-501109号公報(甲11。以下「刊行物1」という。)に記載された発明(以下「刊行物1発明」という。)及び周知の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項により特許を受けることができないとしたものである。審決が認定した刊行物1発明の内容,本願発明と刊行物1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。(1) 刊行物1発明の内容「ドリルの中心長手軸線5方向にチップ溝4,4’に沿って延びる副切刃28,28’に接続されている複数の主切刃13,13’を有し,各副切刃28,28’のすくい面9,9’に接しかつドリルの中心長手軸線5に対して垂直な接線と半径方向との間に副切削角が規定されているツイストドリル用のドリル先端6であって,副切削角がドリル先端6からドリル中心長手軸線5方向に増大しており,ドリル先端6からの距離の増大と共にドリル心厚直径24が減少するドリル先端6。」(2) 一致点「ドリルの長手方向に切削溝に沿って延びる副刃に接続され複数の主刃を有し,各副刃の内側面に接しかつドリル長手方向に対して垂直な接線と半径方向との間に副切削角が規定されているスパイラルドリル用のドリル刃先であって,副切削角がドリル刃先からドリル長手方向に増大しているドリル刃先。」(3) 相違点 本願発明においては,複数の主刃が,互いにチゼルエッジを介して接続されており,また,チゼルエッジの方向へ直線的に延びているのに対し,刊行物1発明においては,そのように構成されているのか不明である点。第3 原告主張の取 数の主刃が,互いにチゼルエッジを介して接続されており,また,チゼルエッジの方向へ直線的に延びているのに対し,刊行物1発明においては,そのように構成されているのか不明である点。第3 原告主張の取消事由以下のとおり,審決には相違点についての容易想到性の判断の誤りがあり,違法として取り消されるべきものである。 1 審決は,相違点に関する判断において,「周知の事項であるから」と指摘しているだけで,刊行物1及び先行技術の内容の検討に当たって,本願発明における特徴点である「スパイラルドリルにおいて,互いにチゼルエッジを介して接続され,チゼルエッジの方向へ直線的に延びている複数の主刃」に到達するためにしたはずであるという示唆等の指摘をしていない。 すなわち,刊行物1においては,主切刃13,13′の具体的構成については開示がなく,主切刃13,13′の構成は,刊行物1発明の本質的特徴ではない。また,刊行物1発明における課題は,ねじり振動の防止とチップ詰まりの防止であるが,この課題を解決するため,刊行物1発明では,心厚直径をドリル先端に続く切刃部分範囲において連続的に減少させている。他方,「切刃を直線にする」技術的意義について,特開昭56-76314号公報(甲15。以下「刊行物3」という。)及び実願昭63-143847号(実開平2-63912号)のマイクロフィルム(甲17。以下「刊行物4」という。)には記載がなく,特開昭63-99123号公報(甲14。以下「刊行物2」という。)にのみ記載があるところ,刊行物2において主刃が直線的に延びている理由は,切刃が曲線であると,切刃に施す微小面取りの仕上がり精度が作業者の熟練度に依存し,ドリルの寿命の“ばらつき”が生じるという課題を解決するためであり,刊行物1の先行技術の課題とは相違 る理由は,切刃が曲線であると,切刃に施す微小面取りの仕上がり精度が作業者の熟練度に依存し,ドリルの寿命の“ばらつき”が生じるという課題を解決するためであり,刊行物1の先行技術の課題とは相違している。 刊行物1発明における課題であるねじり振動の防止とチップ詰まりの防止のために,主切刃をチゼルエッジの方向へ直線的に延びるようにする必要はないばかりか,技術的にも関連しない。また,刊行物1発明における課題であるねじり振動の防止とチップ詰まりの防止のために切刃を直線とすることには,想到し得ない。 以上のとおり,刊行物1には,刊行物1発明において主切刃をチゼルエッジの方向へ直線的に延びるようにすることの示唆等は存在し得ない。 2 刊行物2に記載されているように,切刃を曲線にすることは周知であること,切削抵抗を小さくして切り刃のチッピングを防止するためには,ツイストドリル(スパイラルドリル)に接した当業者は,切刃を曲線にすることのほうが自然であることから,チゼルエッジの方向へ直線的に延びている主刃が周知であっても,ツイストドリル(スパイラルドリル)における「通常の形状的特徴」と理解するのは必ずしも自然ではない。 3 本願発明は,副切削角をプラスにすると,「刃端の領域におけるくさびの先が鋭角的形状となるため比較的弱いという欠点を持」つという課題(以下「課題1」という。)と,副切削角を0°とすると,「0°の副切削角は,ドリルの刃長にわたる経過において切粉が穿孔壁から十分迅速には排出されない」という課題(以下「課題2」という。)という,一見すると同時に解決できない関係にある課題を,「複数の主刃(4)がチゼルエッジ(6)の方向へ直線的に延びている」という構成(以下「構成1」という。)をとることにより課題1を,「副切削角(γ) う,一見すると同時に解決できない関係にある課題を,「複数の主刃(4)がチゼルエッジ(6)の方向へ直線的に延びている」という構成(以下「構成1」という。)をとることにより課題1を,「副切削角(γ)がドリル刃先(3)からドリル長手方向(L)に増大」するという構成(以下「構成2」という。)をとることにより課題2を同時に解決しようとするものであり,これが本願発明の本質的特徴である。 よって,課題1と課題2とを別々に判断したり,課題1と課題2の一方を解決する構成と他方を解決する構成とを別々に判断したりすることは,本願発明の解決課題を正確に把握してはいないことになる。 審決の引用する刊行物には課題1と課題2を同時に解決しようとすることが開示されておらず,審決は,構成1と構成2を別々に把握している。したがって,審決は,本願発明が相互に関連する二つの課題を同時に解決しようとする本願発明の特徴の容易想到の判断について,証拠に基づいた論理的な説明をしていない。また,課題1及び課題2は,上記のように一方を解決すると他方が発生するという,一見すると同時に解決できない関係にある。したがって,これらを同時に解決するため課題1及び課題2が融合された課題を設定することは,「一般には着想しない課題を設定した場合」に該当する。よって,本願発明の課題は全くユニークなものである。このようなユニークな課題は,どの刊行物にも記載されていないとともに,周知でもない。したがって,審決が上記ユニークな課題を解決するための構成を採用する本願発明が容易想到であるとして用いた,各刊行物を組み合わせる動機付けは存在しない。 第4 被告の反論 1 刊行物1発明に関し,主切刃13,13’の配設態様について必ずしも明らかではないが,刊行物1には,「第1図のドリルは通常 いた,各刊行物を組み合わせる動機付けは存在しない。 第4 被告の反論 1 刊行物1発明に関し,主切刃13,13’の配設態様について必ずしも明らかではないが,刊行物1には,「第1図のドリルは通常の形状的特徴を有するツイストドリルの場合のように2つの主切刃13,13′と2つの主逃げ面14,14′とそれぞれ1つの案内ランド16,16′を有する2つの副逃げ面15,15′とを有している。」と記載されていることから,刊行物1発明は,少なくとも,ツイストドリル(スパイラルドリル)における「通常の形状的特徴」を有していることが明らかである。 審決は,刊行物1発明が上記のツイストドリル(スパイラルドリル)の「通常の形状的特徴」を有していることを踏まえて,ツイストドリル(スパイラルドリル)の技術分野における出願時の技術常識,すなわち,複数の主刃の配設態様について「互いにチゼルエッジを介して接続され,チゼルエッジの方向へ直線的に延びている」ことが周知の事項(ドリルの標準技術ともいうべきものですらある。)であることを考慮しつつ,相違点に係る構成の容易想到性について判断したものであり,かかる判断に誤りはない。 2 刊行物1発明の主切刃を曲線にすることが自然と解すべき合理性はない。また,引用刊行物2には,チッピングの問題を,切刃の端面直視形状を「直線」に形成することで解消することが開示されている(2頁左上欄8行~3頁左上欄3行)。 3 刊行物1には課題2が示されている。そして,刊行物1発明は,前記1の「通常の形状的特徴」を前提とし,課題2を解決するために,「副切削角がドリル先端6からドリル中心長手軸線5方向に増大しており」という構成2を備えたものである。したがって,審決は,課題2を解決するための構成2を備えた刊行物1発明に周知の技術を適用 に,「副切削角がドリル先端6からドリル中心長手軸線5方向に増大しており」という構成2を備えたものである。したがって,審決は,課題2を解決するための構成2を備えた刊行物1発明に周知の技術を適用して構成1をも兼ね備えることは想到容易であるとしたものであり,構成1と構成2を別々に把握しているというものではない。第5 当裁判所の判断当裁判所は,原告の取消事由の主張には理由がなく,その他,審決にはこれを取り消すべき違法はないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 刊行物1について刊行物1には,前記第2の3(1)の内容の発明が記載されているものと認められる(甲11)。そして,刊行物1(甲11)には,以下のとおりの記載がある。 (1) 技術分野刊行物1発明は「ツイストドリル,特に金属を加工するためのツイストドリルに関する。」(4頁3~4行)(2) 発明の課題 「本発明の課題は,記述したチップ詰まりが抑制され,ドリルが高い切断値で全穴深さに亙ってもしくは切断長さに亙って,問題となるようなねじり振動を発生することなく加工できるように,ツイストドリルを構成することである。この課題を解決するために本発明は公知技術とは完全に異なる仕方を採った。公知技術とは異って,ドリルの心厚直径はドリル先端からシャンクに向かって拡大されておらず,心厚直径は本発明によれば少なくとも,ドリル先端に続く切刃部分範囲において連続的に減少させられている。」(5頁19~26行)(3) 実施例「第1図のドリルは通常の形状的特徴を有するツイストドリルの場合のように2つの主切刃13,13′と2つの主逃げ面14,14′とそれぞれ1つの案内ランド16,16′を有する2つの副逃げ面15,15′とを有している。」(10頁7行~10行) イストドリルの場合のように2つの主切刃13,13′と2つの主逃げ面14,14′とそれぞれ1つの案内ランド16,16′を有する2つの副逃げ面15,15′とを有している。」(10頁7行~10行) 2 相違点についての容易想到性の判断の誤りについて(1) 前記1認定のとおり,刊行物1には,主刃の形状は不明ではあるものの,「副切削角がドリル先端6からドリル中心長手軸線5方向に増大」するという本願発明の構成2に相当する構成を備えた,二つの主切刃13,13′と2つの主逃げ面14,14′とそれぞれ一つの案内ランド16,16′を有する2つの副逃げ面15,15′とを有するという「通常の形状的特徴を有する」ツイストドリル(スパイラルドリル)が開示されている。 そして,刊行物2~4には,スパイラルドリルにおいて,互いにチゼルエッジを介して接続され,チゼルエッジの方向へ直線的に延びている二つ(すなわち複数)の主刃の構成が開示されているほか,乙1及び2の記載事項に照らすと,スパイラルドリルにおいて,互いにチゼルエッジを介して接続され,チゼルエッジの方向へ直線的に延びている複数の主刃は周知の技術事項であることが認められる。しかも,刊行物2には,切刃が湾曲していること が,仕上がり精度の“ばらつき”を生じさせ,その結果,寿命の“ばらつき”を生じさせる原因となっていること(2頁左上欄8行~右上欄5行),この問題点を解決するために切刃(主刃)を直線的に形成する構成等を採用すること(2頁右上欄16行~左下欄14行),上記の形状の切刃を採用することにより,極端に寿命の短いものがなくなる効果があること(3頁右下欄9~12行)がそれぞれ記載されていることに照らすと,ドリルの耐久性の確保は,スパイラルドリルに一般的に内在する課題であり,その解決のために切刃(主刃) 短いものがなくなる効果があること(3頁右下欄9~12行)がそれぞれ記載されていることに照らすと,ドリルの耐久性の確保は,スパイラルドリルに一般的に内在する課題であり,その解決のために切刃(主刃)を直線的に形成する構成が採用されるものと認められる。 そして,刊行物1発明にも同様の課題が内在しているということができる。 さらに,刊行物2には,「ドリルに関しては,特公昭61-30845号公報や特公昭58-18163号公報に,切削抵抗を小さくして切刃のチッピングを防止するために,切刃の端面直視形状をそれぞれ特定の曲線により形成する技術が開示されている」との記載(2頁左上欄8~12行)があるほか,刊行物4には,「上記実施例では切刃14aを直線状に形成しているが,回転方向へ向けて凹または凸となる曲線状としても良い。」との記載(10頁15~17行)もあることに照らすと,スパイラルドリルにおいて主刃の形状を曲線状にすることも周知の技術事項であること,主刃の形状を曲線状とするのは,切削抵抗を小さくして切刃のチッピングを防止するためであることが認められる。 以上によれば,スパイラルドリルにおいて主刃の形状を直線状にするか曲線状にするかは当業者においてその目的に応じて適宜選択すべき事項にすぎないものと認められる。 他方,刊行物1においては,開示されたツイストドリル(スパイラルドリル)の主刃の具体的な形状について記載がなくその形状が不明であるというにとどまり,刊行物1において,互いにチゼルエッジを介して接続され,チゼルエッジの方向へ延びている複数の主刃を直線状にする形態を除外しているとは認められない。 以上によれば,刊行物1発明に,周知である,互いにチゼルエッジを介して接続され,チゼルエッジの方向へ直線的に延びている複数の主刃の構成を適用し する形態を除外しているとは認められない。 以上によれば,刊行物1発明に,周知である,互いにチゼルエッジを介して接続され,チゼルエッジの方向へ直線的に延びている複数の主刃の構成を適用して,本願発明の構成に想到することは容易であるといえる。したがって,審決の判断に誤りはない。 (2) 原告の主張についてア原告は,審決は,相違点に関する判断において,刊行物1及び先行技術の内容の検討に当たって,本願発明における特徴点である「スパイラルドリルにおいて,互いにチゼルエッジを介して接続され,チゼルエッジの方向へ直線的に延びている複数の主刃」に到達するためにしたはずであるという示唆等の指摘をしていない,刊行物1発明における課題は,ねじり振動の防止と,チップ詰まりの防止であるが,刊行物1発明においては,ねじり振動の防止と,チップ詰まりの防止のために,主切刃をチゼルエッジの方向へ直線的に延びるようにする必要はないばかりか,技術的にも関連せず,刊行物1発明における課題である,ねじり振動の防止と,チップ詰まりの防止のために切刃を直線とすることには想到し得ない,などと主張する。 しかし,前記(1)認定のとおり,主刃の形状を直線状にするか曲線状にするかは当業者において適宜選択すべき事項にすぎないし,また,ドリルの耐久性の確保は,スパイラルドリルに一般的に内在する課題であるということができ,刊行物1発明にも同様の課題が内在されているものということができるので,刊行物1発明に,チゼルエッジを介して接続され,チゼルエッジの方向へ直線的に延びている複数の主刃の構成を適用して,本願発明の構成に想到することは容易であり,原告の上記主張を採用することはできない。 イ原告は,切刃を曲線にすることは周知であり,切削抵抗を小さくして切り 複数の主刃の構成を適用して,本願発明の構成に想到することは容易であり,原告の上記主張を採用することはできない。 イ原告は,切刃を曲線にすることは周知であり,切削抵抗を小さくして切り刃のチッピングを防止するためには,ツイストドリル(スパイラルドリル)に接した当業者は,切刃を曲線にすることのほうが自然である旨主張する。しかし,前記(1)認定のとおり,主刃の形状を直線状にするか曲線状にするかは当業者において適宜選択すべき事項にすぎない以上,ツイストドリル(スパイラルドリル)の主刃につき曲線状の構成を採用することが自然であるということはできず,原告の上記主張を採用することはできない。 ウ原告は,本願発明は,課題1と課題2という一見すると同時に解決できない関係にある課題につき,構成1により課題1を,構成2により課題2を同時に解決しようとするものであり,これが本願発明の本質的特徴となるので,課題1と課題2とを別々に判断したり,課題1と課題2の一方を解決する構成と他方を解決する構成とを別々に判断したりすることは,本願発明の解決課題を正確に把握してはいないことになる,課題1及び課題2は,上記のように一方を解決すると他方が発生するという,一見すると同時に解決できない関係にあるので,これらを同時に解決するため課題1及び課題2が融合された課題を設定することは,「一般には着想しない課題を設定した場合」に該当するため,審決が用いた各刊行物を組み合わせる動機付けは存在しないなどと主張する。しかし,刊行物1の4頁12~23行及び5頁20~23行には,刊行物1発明においては,ドリル深さが増大する場合のチップの排出速度の減少,ひいてはチップ詰まりの惹起が課題(課題2)であること,これを解決するためのものとして,副切削角がドリル先 0~23行には,刊行物1発明においては,ドリル深さが増大する場合のチップの排出速度の減少,ひいてはチップ詰まりの惹起が課題(課題2)であること,これを解決するためのものとして,副切削角がドリル先端6からドリル中心長手軸線5方向に増大するという構成(構成2)が開示されている。 そして,審決は,このことを前提として,刊行物1発明に周知技術の構成(構成1)を適用して,本願発明が容易に想到し得るものであると判断したものであるから,審決が課題1と課題2とを別々に判断したとか,課題1と課題2の一方を解決する構成と他方を解決する構成とを別々に判断したなどということはできない。また,前記(1)認定のとおり,主刃の形状を直線状にするか曲線状にするかは当業者において適宜選択すべき事項にすぎない以上,構成2を備える刊行物1発明につき,主刃を直線状に形成する構成を適用することが容易ではないとはいえないし,前記(1)認定の刊行物2の記載に照らしても,本願発明につき一般には着想しない課題を設定した場合に該当するなどともいえない。さらに,本願発明において構成1と構成2を同時に採用したときの作用効果につき,それぞれの構成によって奏する作用効果から予測できないような顕著なものが存在することをうかがわせる事実も認められない。よって,原告の上記主張を採用することはできない。 3 まとめ以上のとおり,原告主張の取消事由は理由がない。また,他に審決に取り消すべき違法もない。 第6 結論よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官設樂 一 主文 し,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官設樂一 裁判官西理香 裁判官神谷厚毅
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