主文 被告人株式会社Aを罰金150万円に,被告人Bを懲役1年に処する。 被告人Bに対し,この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。 訴訟費用は,被告人株式会社A及び被告人Bの連帯負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人株式会社Aは,神戸市a区b町c丁目d番e号に本店を置き,靴及び靴資材等の輸出入業を事業目的とするもの,被告人Bは,同社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが,被告人Bは,中華人民共和国から防水機能を有しない革製短靴及び同機能を有するヨット用の革製短靴等を輸入するに当たり,所轄税関長に対し,防水機能を有しない革製短靴につき,より関税率の低い防水機能を有するヨット用の革製短靴等の体操用,競技用その他これらに類する用途に供する履物であるなどとする虚偽の内容に基づく輸入申告を行うなどの不正の行為により,関税,消費税及び地方消費税を免れようと企て,被告人会社の業務に関し,平成17年11月17日,神戸市f区g町hi丁目所在の神戸税関C出張所において,同出張所長に対し,情を知らない通関業者であるD株式会社E支店従業員を介し,被告人会社名義で防水機能を有しない革製短靴3001足及び同機能を有するヨット用の革製短靴等2999足を輸入するに際し,実際の関税額が合計1427万8900円,消費税額(保税地域から引き取られる課税貨物に対するもの。以下同じ)が合計89万2700円,地方消費税額(貨物割。以下同じ)が合計22。 。 万3100円であるにもかかわらず,真実は,前記革製短靴3001足が防水機能を有しないその他の履物であることを秘し,これを含む前記合計6000足の当該輸入貨物がすべて防水機能を有するヨット用の革製短靴等の体操用,競技用その他これらに類する用途に供する履物であって,その関税額が合計24 の他の履物であることを秘し,これを含む前記合計6000足の当該輸入貨物がすべて防水機能を有するヨット用の革製短靴等の体操用,競技用その他これらに類する用途に供する履物であって,その関税額が合計241万1700円,消費税額が合計41万8000円,地方消費税額が合計10万4500円である旨の内容虚偽の輸入申告を行うなどし,もって,偽りその他不正の行為により,関税合計1186万7200円,消費税合計47万4700円及び地方消費税合計11万8600円を免れようとしたが,同月18日,同出張所職員らに輸入しようとした革製短靴の中に防水機能を有しないものが含まれていることを看破されたため,その目的を遂げなかったものである。 (証拠の標目)記載省略(事実認定の補足説明) 被告人ら及び弁護人は,①被告人らには起訴状記載の関税法違反,消費税法違反,地方税法違反の構成要件に該当する客観的行為がない,②仮にその客観的行為があったとしても,故意がない旨主張するので,判示事実を認定した理由を補足して説明する。 弁護人は,公訴事実にいう「防水機能」の定義が明らかでなく,その判断基準が不明確であり,その検査方法も一定でなく,防水機能の有無について恣意的な判断がされているなどとして,本件で防水機能を有しないとされている革製短靴3001足(以下「本件革製短靴」という)について「防水機能」がないことが,。 検察官において具体的に主張立証されていないというのである。 この点に関する争点は,本件革製短靴が,国内分類例規で規定するヨット用靴に該当するか否かであり,ヨット用靴の要件の一つである「甲に防水機能又は排水機能を有しているもの」に当たるか否かという点であり,本件では防水機能を有しているかどうかという点である。 (1)弁護人がいうように,国内分類例規やその他の法 要件の一つである「甲に防水機能又は排水機能を有しているもの」に当たるか否かという点であり,本件では防水機能を有しているかどうかという点である。 (1)弁護人がいうように,国内分類例規やその他の法令等には防水機能の定義を定めた規定は存在しないが「防水」とは「水がしみこむのを防ぐこと」を意味す,るものであるのは明らかであるから,ヨット用靴に該当する一要件である「甲に防水機能を有しているもの」というのは,靴の甲(足の上の方の面に当たる部分)に,そこから靴の中に水がしみこむのを防ぐ作用があることを規定しているものと解するのが相当である。 (2)次に,防水機能の有無の判断基準及び検査方法の点についても,明文で定められたものは存在しないが,判断基準としては,靴の甲に水がかかる場所で使用した際に,靴の中に水がしみ入り,それを履いて歩行するについて足を保護するという靴本来の働きが,靴の中に水が入っていないときに比べて相当程度減少する状態になる場合には,甲に防水機能を有するものとはいえないと解するのが相当である。また,その検査方法については,証人F及び同Gの各公判供述によれば,防水機能の有無を判断するについては,各税関でいわゆる水かけ検査が実施されているところ,神戸税関におけるその検査の内容は,普通に洗い物をする程度の勢いでシャワー状態にした水道水を対象となる靴の甲の部分に約10秒程度かけて靴の中に水がしみてくるかどうかをみるというものであり,その検査方法が適切でないとはいえない。そして,前記各公判供述によれば,その検査をしてみて,防水機能の有無を判断するについて疑義がある場合には,東京税関の分類センターに靴の現物を送り,同センターにおいて改めて検査をして,防水機能の有無の判断について全国的な統一を図っていることが認められるのであって,防水機 するについて疑義がある場合には,東京税関の分類センターに靴の現物を送り,同センターにおいて改めて検査をして,防水機能の有無の判断について全国的な統一を図っていることが認められるのであって,防水機能の有無の判断が恣意的にされているなどといえないことも明らかである。 なお,弁護人は,被告人らが本件革製短靴と同種の革製短靴を平成16年に輸入したときには,神戸税関は,事前教示において,当該革製短靴について防水機能ありと判断していた点を捉えて,判断基準が区々である旨主張しているが,証人Gの公判供述によれば,平成16年の際も本件に際して行ったのと同様の水かけ検査をして防水機能ありとされたのに対し,本件では同様の検査によって防水機能なしとされたことが認められるが,関係証拠によれば,それらの靴を製造するについての革の縫合は手作業でされることから出来,不出来の差異がある上,縫合部分から水漏れがしないように靴クリーム等が詰められて隙間が塞がれている場合には同部分からの水漏れはなくなるのであって,平成16年の事前教示のサンプル(弁11号証〔平成18年押第21号の7)の場合は,縫合部分に何かが詰まっ〕ていて隙間がなかったから水が漏れなかったものと認められ,判断が一定でなかったからそのような結論になったものとは考えられない。したがって,本件革製短靴は,平成16年に輸入された革製短靴と同種のものであったとしても,同様の防水機能を有していなかったものと認められる。弁護人の主張は採用の限りでない。 (3)そして,関係証拠によれば,本件革製短靴に神戸税関で前記水かけ検査を実施したところ,甲の縫合部分から水が靴の中に漏れて入り,それを履いて歩行するについて足を保護するという靴本来の働きがほとんどなくなったものと認められるのであって,本件革製短靴の甲に防水機能がなか 実施したところ,甲の縫合部分から水が靴の中に漏れて入り,それを履いて歩行するについて足を保護するという靴本来の働きがほとんどなくなったものと認められるのであって,本件革製短靴の甲に防水機能がなかったことは明らかである。 弁護人は,被告人Bは,防水機能とは甲革が防水性を有することと認識していたところ,本件では,縫合部分から水漏れがしたのであって,甲革の部分から水漏れはしていないから,被告人Bには本件各犯罪についての故意がないと主張する。 (1)弁護人の主張は,甲の革部分から水がしみて靴の中に入らなければ,その縫合部分から水漏れがしても,甲に防水機能があるということを前提にした主張であると解するほかないが,ヨット用靴の一要件の記載としては,前記のとおり,「甲に防水機能を有しているもの」と規定されており,甲には,その縫合部分も含まれることは文言上明らかである上,防水機能が求められるのは,靴に水がかかるような場合に,靴の中に水が入ってきて歩行等に支障が生じないようにするためであるから,縫合部分からであろうと,革部分からであろうと,靴の中に水がしみて入ってこないことが要求されていることは明らかであり,弁護人の主張は,その前提においてすでに失当である。 (2)関係証拠によれば,被告人は,本件革製短靴の輸入に際し,サンプルを神戸税関に示して事前教示を受けたところ,2回の事前教示(平成17年8月29日以前〔1回目〕と同年8月29日及び同年9月9日〔2回目)において,甲の縫〕合部分から水漏れがして防水機能を有しないとされたため,同部分から水漏れがしないように細工をした輸入サンプルを提出した上で3回目(同年10月13日)の事前教示を受け,神戸税関においては,サンプルと同じ物を輸入することを当然の前提として防水機能ありとの回答をしたが,被告人は ないように細工をした輸入サンプルを提出した上で3回目(同年10月13日)の事前教示を受け,神戸税関においては,サンプルと同じ物を輸入することを当然の前提として防水機能ありとの回答をしたが,被告人は,神戸税関において防水機能を有しないと判断されたのと同様の本件革製短靴を輸入したことが認められ,被告人Bは,本件革製短靴の甲の縫合部分から靴の中に水が入ることを認識していたものであり,このことはすなわち,甲に防水機能がないことを認識していたこととなり,その上で,あえてそれらを輸入したものであるから,被告人Bに本件各犯罪の確定的故意が認められるのは明らかである。 (法令の適用)罰条各関税逋脱未遂の点は,いずれも関税法110条3項,1項1号,117条1項各消費税(保税地域から引き取られる課税貨物に対するもの)を免れようとした点は,いずれも消費税法64条1項1号後段,70条1項各地方消費税(貨物割)を免れようとした点は,いずれも地方税法72条の109第1項,同条3項科刑上一罪の処理いずれも刑法54条1項前段,10条(いずれも犯情の最も重い各関税逋脱未遂罪の刑で各処断)刑種の選択(被告人Bの関係)懲役刑刑の執行猶予(被告人Bの関係)刑法25条1項訴訟費用の負担いずれも刑事訴訟法181条1項本文,182条(量刑の理由)被告人Bは,判示の各税金を免れようとして,神戸税関での事前教示において防水機能があるとされた革製短靴とは異なるものであって,その前の事前教示において防水機能なしと判断された革製短靴と同種の本件革製短靴をそれと認識しながら輸入するに至ったものであって,本来課せられる税金を免れて自己らの利益を図った動機に酌むべき点はなく,態様は,税関職員を計画的に騙しており悪質であると言わざるをえず,幸い税関職員が看破したため未遂に終わっ るに至ったものであって,本来課せられる税金を免れて自己らの利益を図った動機に酌むべき点はなく,態様は,税関職員を計画的に騙しており悪質であると言わざるをえず,幸い税関職員が看破したため未遂に終わっているが,適正な税金の徴収を妨害するものであって強く非難されるべきである。捜査段階では本件犯行を認めてそれなりに反省の態度を示していたものの,公判段階に至って不合理な弁解に終始しており,真に反省しているものとは認め難い。それらの諸点に照らすと,被告人らの刑事責任は相当重い。 他方,輸入するつもりのないサンプルを神戸税関に事前教示のために提出し,税関職員を意図的に騙したことは認めていること,本税及び重加算税を支払っていること,今後は同様のことはしない旨を述べていることなどの事情が認められる。 以上の諸事情を総合考慮し,主文のとおりの各刑に処することとする。 (求刑被告人会社に対し罰金200万円,被告人Bに対し懲役1年)(私選弁護人被告人両名につき,永井幸寿[主任,北野陽子)]平成19年5月16日神戸地方裁判所第2刑事部裁判官佐野哲生
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