主文 1 被告Dは,原告Aに対し,金1億2652万2622円及びこれに対する平成5年11月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Dは,原告Bに対し,金280万円及びこれに対する平成5年11月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告Dは,原告Cに対し,金220万円及びこれに対する平成5年11月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告らの被告Dに対するその余の請求をいずれも棄却する。 5 原告Cの被告Wに対する請求を棄却する。 6 原告らに生じた訴訟費用は,これを24分し,その3を原告Aの,その1を原告Bの,その2を原告Cの負担とし,原告らに生じたその余の費用及び被告Dに生じた費用は,これらを18分し,その3を原告Aの,その1を原告Bの,その2を原告Cの負担とし,その余を被告Dの負担とし,被告Wに生じた費用を原告Cの負担とする。 7 この判決の第1ないし3項は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告Dは,原告Aに対し,2億1926万9119円及びこれに対する平成5年11月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Dは,原告Bに対し,446万円及びこれに対する平成5年11月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告らは,原告Cに対し,各自7079万2781円及びこれに対する平成5年11月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要原告A及び原告Bは,被告Dの代表者であり,かつ,被告D経営のE産科婦人科医院(以下「被告医院」という。)において産科医療に従事するE医師(以下,被告D代表者をいう場合も含めて「E医師」という。)が,被告医院を受診した原告Cに対し手術適応のない子宮頸管縫縮術を施す 人科医院(以下「被告医院」という。)において産科医療に従事するE医師(以下,被告D代表者をいう場合も含めて「E医師」という。)が,被告医院を受診した原告Cに対し手術適応のない子宮頸管縫縮術を施すなど不適切な医療処置を行い,その過失によって,その後出生した原告Aに対し,脳性麻痺に起因する運動障害及び精神発達遅滞等の障害を負わせたとして,不法行為又は債務不履行による損害賠償請求権に基づき,被告Dに対し,損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた。 原告Cは,上記の医療を受けた後,被告W経営のH病院(以下「H病院」という。)において帝王切開術等の医療を受けたが,上記E医師の過失やH病院の担当医師の過失により,子宮壊死を生じて子宮全摘出術及び多量の輸血を受けざるを得なくなり,そのためC型肝炎に罹患し,入通院治療を余儀なくされたばかりか一部労働能力を喪失する後遺症を残したとして,不法行為又は債務不履行による損害賠償請求権に基づき,被告ら各自に対し,損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた。 1 争いのない事実(末尾に証拠の記載がないもの)及び証拠により容易に認められる事実(1) 原告Aは,原告Bと原告Cの子である。 被告Dは,E医師を代表者とし,被告医院を開設して医療業務を営む医療法人である。 被告Wは,H病院を開設して医療業務を営む地方公共団体である。 (2) 原告Cは,平成5年7月6日,被告医院でE医師から妊娠6週5日と診断され,同月19日,同年8月21日,同年9月16日,E医師の診察を受けていたところ,同月21日(妊娠17週5日),性器から出血し,胎児下降感を覚えたため,E医師の診察を受けた。 E医師は,原告Cに対し,切迫流産の危険があると説明して被告医院への入院を指示し,同月29日(妊娠18週6日),子宮頸管縫縮術を実 ),性器から出血し,胎児下降感を覚えたため,E医師の診察を受けた。 E医師は,原告Cに対し,切迫流産の危険があると説明して被告医院への入院を指示し,同月29日(妊娠18週6日),子宮頸管縫縮術を実施した。(乙1,原告C本人,E医師)(3) 原告Cは,同年10月7日,被告医院を退院したが,その後下腹部痛を訴え,同月20日,被告医院に再度入院した。 E医師は,胎児の下降圧迫感が改善しないため,切迫流産の危険があるとして,同月27日(妊娠22週6日),2回目の子宮頸管縫縮術を実施した。(乙1,原告C本人,E医師)(4) 原告Cは,発熱,下腹部痛の増大,子宮口の開大等から,同年11月4日(妊娠24週0日)午前11時ころ,被告医院からH病院に転送され,同病院において,帝王切開術を受け,同日午後零時34分,原告Aが生まれた。(乙1,丙1,原告C本人,E医師)(5) 原告Cは,同月15日午後8時40分ころ,子宮から大量に出血し,子宮摘出手術及び輸血を受けた。(丙1)平成6年1月6日,血液検査の結果,原告CからHCV抗体が検出され,慢性C型肝炎に罹患していることが判明した。(丙2) 2 争点(1) E医師が子宮頸管縫縮術を実施したことに過失があるか。 (2) E医師は,子宮内感染を疑い,より早期に帝王切開術を行い,又は他の病院に転送すべきであったといえるか。 (3) E医師の過失と原告Aの脳障害並びに原告Cの子宮壊死及びC型肝炎罹患との間に因果関係があるか。 (4) 原告Cの子宮動脈損傷及びこれによる子宮壊死やC型肝炎罹患についてH病院の担当医師に責任があるか。 (5) 原告らの損害 3 争点(1)(E医師が子宮頸管縫縮術を実施したことに過失があるか)に関する当事者の主張(1) 原告らの主張ア 1回目の頸管縫縮術を実施した過失(ア) 原告Cに るか。 (5) 原告らの損害 3 争点(1)(E医師が子宮頸管縫縮術を実施したことに過失があるか)に関する当事者の主張(1) 原告らの主張ア 1回目の頸管縫縮術を実施した過失(ア) 原告Cに先天的な頸管無力症は存在しなかったこと頸管無力症とは,妊娠の第2トリメスター(全妊娠期間を3分した2番目の期間)若しくは第3トリメスターの早い時期に,無痛の(子宮収縮を伴わない)子宮口の開大で,胎胞が膣内に膨隆してくるものをいう。 原告Cは,原告Aの妊娠に先立つ平成4年1月12日に第1子を自然分娩したが,その第1回目の妊娠・分娩においては,①子宮収縮が自覚され又は他覚されていたこと,②切迫早産と診断されたのが妊娠34週であったこと,③その時点では子宮口は閉鎖していたこと,④分娩は妊娠37週で,正期産であったこと,⑤分娩まで著しい子宮口の開大は見られなかったことから,原告Cには先天的な頸管無力症は存在しなかったといえる。 (イ) 原告Cに後天的な頸管無力症は存在しなかったこと後天的な頸管無力症の存否は,一般的には,第2回目の妊娠以前に子宮頸管に頸管無力症を引き起こすほどの損傷を受けたか否か,さらに当該妊娠において本症の特徴を示す症状や所見が存在したか否かによって判断される。 E医師は,平成5年9月21日(妊娠17週5日)の診察時において,①前回分娩が予定日より2週間早かった,②その前に子宮収縮を伴う早産傾向があり,妊娠35週から37週の間,2週間入院した,③子宮口が1指開大している,④出血が認められることを根拠として,第1回目の頸管縫縮術の手術適応があるものと診断した。 しかし,上記①及び②を頸管無力症の診断根拠とすることはできない。同③の「子宮口1指開大」については,これが外子宮口の開大であれば,原告Cが経膣分娩を経験した経産婦であることや妊娠 のと診断した。 しかし,上記①及び②を頸管無力症の診断根拠とすることはできない。同③の「子宮口1指開大」については,これが外子宮口の開大であれば,原告Cが経膣分娩を経験した経産婦であることや妊娠時期からすれば,この程度の開大は異常とはいえない。仮にこれが内子宮口の開大であれば,それ自体異常とはいえるものの,原告Cが頻繁に子宮収縮を自覚していたことからすれば,頸管無力症というより,子宮収縮を伴う切迫早産による子宮口開大と考えられる。 したがって,原告Cには後天的な頸管無力症もなかった。 (ウ) 以上によれば,原告Cには頸管無力症はなく,頸管縫縮術の適応はなかった。 そして,頸管縫縮術には,絨毛膜羊膜炎の感染等の合併症の危険があるから,E医師は,通常の切迫流産あるいは早産として,原告Cを安静にし,子宮収縮抑制剤を使用しつつ感染予防をし,又は感染に対する治療をしながら経過観察をするべきであったし,これにより子宮収縮を抑えて妊娠を継続させることができた。 ところが,E医師は,平成5年9月29日(妊娠18週6日)に頸管縫縮術を実施し,子宮内感染を誘発し,原告Cを早産に至らしめ,これにより,原告Aに脳障害を負わせるに至った。 イ 2回目の頸管縫縮術を実施した過失同年10月20日(妊娠21週6日),2回目の頸管縫縮術のため被告医院に入院した際,原告Cには,37度を超える発熱があり,子宮収縮及び高位破水を窺わせる訴え及び所見があり,胎児頻脈が見られた。子宮内感染があれば子宮収縮抑制剤や頸管縫縮術の実施は禁忌であり,頸管縫縮術を第2トリメスター後半以降に行った場合には子宮内感染や破水の危険性が増加する。したがって,E医師は,原告Cの上記症状から子宮内感染を疑い,熱発等の原因検索を行い,感染徴候があれば頸管縫縮術の実施を中止すべきであった。ところが,E医 場合には子宮内感染や破水の危険性が増加する。したがって,E医師は,原告Cの上記症状から子宮内感染を疑い,熱発等の原因検索を行い,感染徴候があれば頸管縫縮術の実施を中止すべきであった。ところが,E医師は,子宮内感染の除外診断をせず,原告Cに手術適応がないのに,同月27日(妊娠22週6日),2回目の頸管縫縮術を実施し,子宮内感染を誘発又は増悪させたのであり,この点で過失がある。 ウ感染予防の不十分頸管縫縮術を実施した際には,膣内細菌等による上行感染を生じる可能性があり,流産や早産を引き起こしやすい。したがって,E医師は,手術を行うに際し,又は手術の前後において,感染の有無に関する検査,消毒及び抗生剤の投与を行い,細菌や真菌による子宮内感染を防止すべきであった。ところが,E医師は,2回にわたる頸管縫縮術に際して感染の有無に関する検査を怠り,消毒や抗生剤の投与等を十分に行わず,また,手術の際には擦れて感染を引き起こしやすい糸を使用したため,原告Cの子宮内感染症を誘発又は増悪させたのであり,この点においても過失がある。 (2) 被告Dの主張ア頸管無力症の有無について原告Cは,先天的あるいは後天的な頸管無力症であり,これによる早産又は流産を防止するために頸管縫縮術の実施は不可欠であった。したがって,E医師が2度にわたって頸管縫縮術を実施したことに過失はない。 E医師は,平成5年9月21日の診断において,①第1子の妊娠・分娩に関し,妊娠35週から37週まで入院治療の経験があり,37週で分娩したこと,②内診の結果,原告Cの子宮口は1指大に開大し,頸管は3cm程度と正常妊婦に比べて30ないし40%短縮し,著しく軟化していたことから,原告Cが先天的又は後天的な頸管無力症であり,切迫早産の危険があると判断し,早産予防措置として,頸管縫縮術を実施す は3cm程度と正常妊婦に比べて30ないし40%短縮し,著しく軟化していたことから,原告Cが先天的又は後天的な頸管無力症であり,切迫早産の危険があると判断し,早産予防措置として,頸管縫縮術を実施することを決定した。 同月29日の手術は,膀胱を剥離せずに押し上げ,シロッカー法と同様の高い位置で縫縮するシロッカー法の変法で実施したが,原告Cの頸管が短く後膣円蓋がめくり込んで有効な縫縮ができず,3回目にようやく縫縮に成功したのであって,かかる事実からも原告Cが頸管無力症であったことが裏付けられる。 したがって,原告Cには頸管縫縮術の適応があった。 イ 2回目の頸管縫縮術について平成5年10月20日,原告Cが再入院したときの熱は腎盂腎炎によるものである。37度前後の体温は,子宮内感染の判断基準である発熱には該当しないし,160bpm前後の胎児心拍は異常ではないから胎児頻脈があったともいえない。原告Cに見られた漿液性の帯下は,1回目の頸管縫縮術の糸が擦れたための分泌物であって羊水ではなく,高位破水の事実はない。したがって,同月20日から同月27日の2回目の頸管縫縮術を実施するまでの間に,原告Cに子宮感染を疑うような所見はなく,手術適応はあった。仮に,原告Cがこの時点で子宮内感染(絨毛膜羊膜炎)に罹患していたとしても,絨毛膜羊膜炎は,無症状の不顕性感染であるのが通常であり,平成5年当時にその診断を行うことは困難であった。 同月20日の診察時には,胎児先進部の下降が著しく,子宮収縮を来し,前回手術の糸により辛うじて娩出を免れている状態にあったのであり,2回目の頸管縫縮術を実施する必要性は高かった。 ウ感染予防について原告Cは,9月16日の膣内分泌物検査において,カンジタ膣外陰炎に罹患していることが判明した。頸管無力症に伴う頸管短縮は,細菌と羊膜等 頸管縫縮術を実施する必要性は高かった。 ウ感染予防について原告Cは,9月16日の膣内分泌物検査において,カンジタ膣外陰炎に罹患していることが判明した。頸管無力症に伴う頸管短縮は,細菌と羊膜等との接触面積の増大化や細菌防御機能の減弱化をもたらし,感染による炎症反応を原因とする早産の引き金ともなる。そこで,E医師は,母体安静のため,原告Cを9月21日に入院させ,入院中は毎日,入念にヂアミトール水0.02%溶液による外陰部及び膣洗浄,イソジン液の膣内注入による消毒滅菌を行った。また,カンジタ菌に対する抗真菌剤であるアデスタンG100をはじめとする抗生剤を必要に応じて投与し,膣外陰炎に対する抗カンジタ薬を処方し,カンジタ膣炎が軽快し外陰部のかゆみ及び帯下が消失した段階で頸管縫縮術を実施した。同手術には,最も一般的に利用されている子宮頸管縫縮用針及びテフロンテープを使用しており,これらが擦れて感染を引き起こしたという症例報告は聞いたことがない。 2回目の頸管縫縮術に関しては,前回入院時と同様,入院期間中は毎日,外陰部及び膣洗浄,イソジン液の膣内注入による消毒滅菌を行い,抗真菌剤を投与し,膣外陰炎に対する抗生剤を処方した。 このように,E医師は,頸管縫縮術の実施にあたり十分な感染防止策を行っており,過失はない。 4 争点(2)(E医師は,子宮内感染を疑い,より早期に帝王切開術を行い,又は他の病院に転送すべきであったといえるか)に関する当事者の主張(1) 原告らの主張ア前記3(1)イのとおり,原告Cには,10月20日の再入院時から,37度を超える発熱,胎児頻脈の持続,下腹部緊満感や痛みがあり,漿液性の帯下といった症状があった。 妊婦が漿液性の帯下を訴えるときには,産科医としては一般に,まず破水を疑い,慎重に除外診断を行うべきである。 また, 熱,胎児頻脈の持続,下腹部緊満感や痛みがあり,漿液性の帯下といった症状があった。 妊婦が漿液性の帯下を訴えるときには,産科医としては一般に,まず破水を疑い,慎重に除外診断を行うべきである。 また,下腹部痛,原因が特定できない発熱,胎児頻脈があり,破水が否定できなければ,臨床的に子宮内感染を疑うべきである。E医師は,発熱の原因を腎盂腎炎と診断しているが,原告Cには頻尿,排尿痛,残尿感などの尿路感染の訴えはなく,腎盂腎炎と診断する根拠はない。また漿液性の帯下が高位破水でないという根拠もない。 しかも,原告Cは既に1回頸管縫縮術を受けていた。 以上のように,1回頸管縫縮術を受けた妊婦が,発熱し,胎児頻脈を示し,子宮収縮を疑わせる下腹部緊満感や痛みを訴え,漿液性の帯下を訴えているのであるから,E医師は,この時点で子宮内感染を疑い,除外診断に努め,子宮内感染の診断に確信を持てないときには羊水穿刺による羊水の検査を実施すべきであった。そして,子宮内感染と診断した上で,帝王切開による分娩を実施すべきであり,この時点で帝王切開をしておけば,原告Aの脳障害は防げたはずである。 しかし,E医師は,子宮内感染の除外診断をしなかったのであり,この点で過失がある。 イさらに,10月27日に2回目の頸管縫縮術を実施した以降,160ないし180bpmの胎児頻脈が持続し,同年11月2日,原告Cに38.4度の発熱があった。同月3日には,お産用パッドを何度も取り替えるほど大量の漿液性の帯下があり,それまでの高位破水から典型的な破水の状態を示した。 以上の点からすれば,原告Cは,11月2日には子宮内感染を起こしていたことは確実であり,E医師は,子宮内感染と診断し,直ちに帝王切開により分娩するか,あるいはH病院に転送すべきであった。しかし,E医師は,これらの措置を怠り,11月 月2日には子宮内感染を起こしていたことは確実であり,E医師は,子宮内感染と診断し,直ちに帝王切開により分娩するか,あるいはH病院に転送すべきであった。しかし,E医師は,これらの措置を怠り,11月4日まで原告CをH病院に転送しなかったのであり,この点で過失がある。 (2) 被告Dの主張前記3(2)イのとおり,原告Cが入院中に子宮内感染していた事実はない。 原告らは,看護記録中のナプキンの交換回数等を根拠として,同年11月3日には高位破水をしており,帯下とあるのは実は羊水であった旨主張するが,帯下は大量ではなく,漿液性・血性の帯下は,縫縮糸が頸管に食い込んで潰瘍を形成し,そこからリンパ液が漏れ出たものである。また,帯下には感染性の悪臭はなかった。 同年11月4日,原告Cの子宮口が2.5指大まで開大し,頸管は消退し,胎児はシロッカー糸でかろうじて保たれている状態であった。胎胞は親指大に膨隆し緊張して子宮口から突出していたが,胎胞内の羊水は淡白色透明で澄んでおり,羊水の流出,膣内の羊水臭や悪臭は認められず,膣及び膣壁に感染症による炎症所見はなかった。E医師は,妊娠24週目での出産となる可能性が高く出生児が未熟児であることから,新生児集中治療施設のあるH病院に転送することを決定し,同日午前9時30分ころ,原告Cに対し,上記症状を説明した上,同日午前10時20分ころ,救急車でH病院へ搬送したのであって,これに遅れはなかった。 5 争点(3)(E医師の過失と原告A及び原告Cの損害との因果関係)に関する当事者の主張(1) 原告らの主張ア E医師が適応のない頸管縫縮術を実施した過失により,原告Cが子宮内感染して早産となり,そのため原告Aが妊娠24週0日で超低体重児として出生し,脳障害を負った。 また,子宮内感染は胎児の脳神経に悪影響を及ぼすところ, い頸管縫縮術を実施した過失により,原告Cが子宮内感染して早産となり,そのため原告Aが妊娠24週0日で超低体重児として出生し,脳障害を負った。 また,子宮内感染は胎児の脳神経に悪影響を及ぼすところ,E医師が原告Cを子宮内感染と診断せずに放置し,早期分娩又は転送をしなかった過失により,原告Aは汚染された子宮内に長時間留めおかれ,脳神経に悪影響が及んだ。 イ E医師の前記各過失により,原告Cは,H病院への搬送後に緊急帝王切開術を受けざるを得なくなり,その結果,子宮壊死による子宮摘出及び輸血によるC型肝炎に罹患した。 (2) 被告Dの主張ア原告Aは24週0日,出生時の体重が650gという超低体重児であり,脳障害の原因は早産によるものである。 原告らは,早産の原因は,E医師が,適応のない頸管縫縮術を実施したため,原告Cに子宮内感染を生じさせて早産に至った旨主張する。しかし,原告Cが子宮内感染であったとはいえない。 むしろ,本件では,原告Cが重篤な頸管無力症であったために,胎児下降が著しく,頸管に物理的刺激が加わり,そのため,分娩を促す(子宮収縮及び頸管熟化をもたらす)物質であるサイトカインが大量発生し,生体の炎症性反応を引き起こしたために早産に至ったとみるべきである。 したがって,E医師の行為と原告Aの脳障害との間に因果関係はない。 イ原告Cの子宮摘出等について前記のとおり,E医師の行為には過失はなく,原告Cの子宮摘出及びC型肝炎罹患とは無関係である。 6 争点(4)(原告Cの子宮動脈損傷及びこれによる子宮壊死やC型肝炎罹患についてH病院の担当医師に責任があるか)に関する当事者の主張(1) 原告らの主張H病院の担当医であったU及びVの両医師(以下「U医師ら」という。)は,原告Cの帝王切開術を実施するに際し,子宮動脈 当医師に責任があるか)に関する当事者の主張(1) 原告らの主張H病院の担当医であったU及びVの両医師(以下「U医師ら」という。)は,原告Cの帝王切開術を実施するに際し,子宮動脈損傷の頻度が少ないとされるU字切開法を選択せず,T字切開法により手術を行ったために,子宮動脈を損傷させた。そのため,子宮に十分な血液が行き渡らなくなり,子宮壊死が生じ,原告Cは子宮摘出を余儀なくされた。 さらに,原告Cは,帝王切開手術時の子宮動脈損傷による輸血及び子宮摘出時の輸血によってC型肝炎に罹患した。 したがって,被告Wは,原告Cの後記損害について,不法行為責任又は診療契約上の債務不履行責任を負う。 (2) 被告Wの主張ア本件帝王切開術は,腹式帝王切開術を行っている。原告Cは,同手術時,妊娠24週0日であったが,妊娠週数の若い子宮は子宮筋が厚く,横切開を加えることができる幅が狭くなる。本件では,当初,子宮下部横切開により子宮を切開し胎児を娩出させようと試みたが,児頭がなかなか出なかったため,T字切開に切り替えて娩出した。 また,右子宮動脈損傷の原因は,娩出に際し,胎児が右子宮側壁層を拡大したためと考えられるが,帝王切開術において児頭娩出の際に血管の損傷や裂傷による出血を完全に防ぐことは不可能であるし,また,U医師らは,直ちに結紮措置を施した。したがって,U医師らに過失はない。 原告らは,右子宮動脈損傷により子宮に十分な血液が行き渡らなくなり,その結果子宮の壊死が生じた旨主張する。しかし,左子宮動脈に損傷はなく,右子宮動脈のみが損傷したにすぎないから,同損傷によって子宮壊死に至ることはあり得ない。 イ H病院では,本件帝王切開術後,原告Cに対して抗生物質を全身投与し,原告Cの発熱,白血球数及びCRP値は徐々に改善して炎症は抑えており,術後 いから,同損傷によって子宮壊死に至ることはあり得ない。 イ H病院では,本件帝王切開術後,原告Cに対して抗生物質を全身投与し,原告Cの発熱,白血球数及びCRP値は徐々に改善して炎症は抑えており,術後管理も十分に尽くしていた。子宮摘出後の病理組織検査の結果からみても,細菌や真菌感染を示唆する所見はない。 したがって,子宮体下部壊死性変化の原因は不明であるが,H病院医師に子宮体下部壊死性変化についての過失はない。 ウ帝王切開術の際の出血はやむを得ないもので,これに対する輸血は必要不可欠である。また平成5年11月15日の子宮からの出血は突然のものであり予測できない。子宮摘出手術も,これに伴う輸血もやむを得ないものであった。原告Cに輸血された血液はX病院から送付された検査済みの血液である。 したがって,仮に原告CのC型肝炎ウィルスの感染及び慢性肝炎の罹患がH病院での輸血によるものであったとしても,H病院担当医師の過失によるものではない。 7 争点(5)(原告らの損害)に関する当事者の主張(1) 原告らの主張ア原告A(ア) 治療費 148万円原告Aの入通院日数は以下のとおりであり,この期間の治療費は148万円を下らない。 a 入院 429日(a) 平成5年11月4日~平成6年5月31日 H病院(入院210日)(b) 平成11年1月20日~8月27日 I病院(四肢大幹機能障害,両下肢変形に対する手術及び機能訓練のため,入院219日。その後も随時通院)b 通院平成14年12月現在まで約9年(a) 平成7年7月~11月 J(土日祝日を除く毎日,通園5か月)(b) 平成8年4月~平成9年2月 J通園部(土日祝日を除く毎日,通園11か月)(c) 平成9年4月~平成10年3月 L(土日祝日を除く毎日,通園1年)(d) 平 日祝日を除く毎日,通園5か月)(b) 平成8年4月~平成9年2月 J通園部(土日祝日を除く毎日,通園11か月)(c) 平成9年4月~平成10年3月 L(土日祝日を除く毎日,通園1年)(d) 平成11年9月~平成13年5月 N(通院月2回,20か月)(e) 平成11年10月 O眼科(通院1日)(f) 平成13年9月~平成14年3月 K(通院月2回,7か月)(g) 平成14年9月~11月 P病院(通院2日)(イ) 入通院関係費用a 入院諸雑費 64万3500円(1日1500円×429日)b 通院交通費 130万円前記(ア)の期間中に要した交通費は130万円を下らない。 c 福祉機器 70万円原告Aの障害のために必要な福祉機器であり,その額は70万円を下らない。 d 母乳冷凍パック 30万円原告AがH病院に入院中,病院の指示により購入したものであり,その額は30万円を下らない。 e 車両購入費 300万5421円平成9年4月より原告Aが呉市のLに通園することになり,長男Qの保育園への送迎用として同年3月に小型乗用車(56万8140円)を購入した。 また,従前所有していた乗用車では原告Aの乗降等に支障があるため,ワゴン型乗用車(234万7281円)を購入した。 (ウ) 入通院慰謝料 600万円前記のとおり,原告Aの入院期間は429日,通院通園期間は9年以上に及んでおり,原告Aの精神的肉体的苦痛を慰謝するためには,600万円が相当である。 (エ) 逸失利益 4785万8008円475万3900円(平成11年産業計全労働者平均賃金)×100(労働能力喪失率)×9.635(症状固定時である平成11年7月5日当時満5歳のライプニッツ係数)=4785万8008円(オ) 将来の介護費用a 付添看護費 9316万3330円1万3000円×365 喪失率)×9.635(症状固定時である平成11年7月5日当時満5歳のライプニッツ係数)=4785万8008円(オ) 将来の介護費用a 付添看護費 9316万3330円1万3000円×365×19.634(平成5年の女子平均寿命82年に対応するライプニッツ係数)原告Aは日常生活全般にわたり付添い介護を要するところ,母である原告Cは慢性C型肝炎に罹患しており,将来にわたり家人による介護を受けられる保障はない。 したがって,職業介護人付添い費用1万2000円,交通費1日1000円として計算するのが相当である。 b 介護用装具・器具等購入費 945万8325円(a) 原告Aには,将来にわたり以下の装具及び器具等の購入が必要である。 ①バギー等(20歳まで使用,耐久年数2年)11万3000円・リラックスバギー 8万2000円・雨コート 8000円・日よけ 1万円・サイドカバー 1万円・レッグレスト 3000円②補助椅子等(耐久年数4年) 15万1500円・補助椅子(ハイグレード中)13万4000円・腰部パッド 3000円・しきりパッド 4500円・体幹パッド 7000円・骨盤パッド 3000円③カーシート(耐久年数4年) 8万2000円④立位保持具(耐久年数4年) 11万円⑤電動車椅子(耐久年数4年) 40万円⑥手動車椅子(耐久年数4年) 15万円⑦リクライニング車椅子(耐久年数4年) 21万円⑧入浴用車椅子(耐久年数4年) 40万円⑨車椅子用クッション(耐久年数4年) 1万9000円⑩歩行補助器(耐久年数4年) 5万3000円⑪呼吸器(耐久年数4年) 車椅子(耐久年数4年) 40万円⑨車椅子用クッション(耐久年数4年) 1万9000円⑩歩行補助器(耐久年数4年) 5万3000円⑪呼吸器(耐久年数4年) 4万9700円⑫吸引器(耐久年数4年) 9万8000円⑬介護ベッド(耐久年数8年) 43万5500円⑭介護用寝具(耐久年数8年) 10万0400円⑮テーブル(耐久年数8年) 19万円⑯滑り止めパッド・シート(耐久年数8年) 1万2900円⑰自立食器(耐久年数8年) 1万0100円(b) ①については,9歳から20歳までの11年間に,計5回の交換が必要であり,その費用をライプニッツ係数を用いて計算すると,42万5558円となる。 ②ないし⑫については,9歳の平均余命である74年間に,計18回の交換が必要であり,その費用をライプニッツ係数を用いて計算すると,756万6571円となる。 ⑬ないし⑰については,9歳の平均余命である74年間に,計9回の交換が必要であり,その費用をライプニッツ係数を用いて計算すると,146万6169円となる。 (c) よって,介護用装具・器具等の購入費用は,945万8325円となる。 c 車両改造費 110万7435円障害者用の助手席スライドアップシート等の改造費1回分39万8000円自動車の耐用年数を6年とし,72歳までの年間で12回の交換が必要であるから,ライプニッツ係数を用いて計算すると,110万8325円となる。 d 家屋改造費 832万3100円原告Aの身体障害のため,将来は住宅の廊下等の手すり設置やスロープ等,原告Aの生活に必要最低限の改造として,以下のものが必要である。 (a 8325円となる。 d 家屋改造費 832万3100円原告Aの身体障害のため,将来は住宅の廊下等の手すり設置やスロープ等,原告Aの生活に必要最低限の改造として,以下のものが必要である。 (a) 住宅のバリアフリー改造費 632万3100円(b) スロープ等の改造費用 200万円(カ) 後遺慰謝料 2600万円本件事故による原告Aの重篤な症状にかんがみれば,これを慰謝するためには2600万円が相当である。 (キ) 弁護士費用 1993万円上記(ア)ないし(カ)の合計額1億9933万9119円の約1割が相当である。 イ原告C(ア) 治療費 9万6810円原告Cの入通院期間は以下のとおりであり,その間の治療費は9万6810円である。 a 入院平成5年11月4日から同月29日までH病院(26日)b 通院平成6年2月 H病院(3日)平成6年 R病院内科(2日)平成8年から現在に至るまで S(2,3か月に1度)(イ) 入通院慰謝料 250万円入院は1か月,通院9年以上に及び,かかる苦痛を慰謝するためには,250万円が相当である。 (ウ) 後遺慰謝料 2000万円原告Cは,平成6年に慢性C型肝炎に罹患したが,ウィルスの数値が徐々に高くなっており,将来は肝硬変に移行する可能性が高い。このような状況は,後遺障害等級5級(胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの)に相当するものである。また,子宮摘出により今後出産できないことなどを考慮すると,後遺慰謝料は2000万円が相当である。 (エ) 逸失利益 4124万6491円315万5300円(平成5年女子労働者学歴計平均賃金)×16.547(平成5年11月当時31歳に適用されるライプニッツ係数)×0.79(後遺 が相当である。 (エ) 逸失利益 4124万6491円315万5300円(平成5年女子労働者学歴計平均賃金)×16.547(平成5年11月当時31歳に適用されるライプニッツ係数)×0.79(後遺障害等級5級に該当する労働能力喪失率)=4124万6491円(オ) 将来の治療費 54万9480円将来のインターフェロン治療費用の自己負担分(カ) 弁護士費用 640万円前記(ア)ないし(オ)の合計額6439万2781円の約1割が相当である。 ウ原告B(ア) 慰謝料 300万円原告Bは,本件事故により,原告Aの養育及び医療等並びに原告Cの病状に対する将来の不安を抱くに至り,かかる苦痛を慰謝するためには,300万円が相当である。 (イ) 長男Qの保育料 106万円原告Aの入通院のため,長男Q(平成5年11月当時,1歳10か月)は,原告Aが出生した平成5年11月からQが4歳2か月になる平成8年3月まで保育園に預けざるを得なかった。その費用は106万円を下らない。 (ウ) 弁護士費用 40万円上記(ア)及び(イ)の合計額406万円の約1割が相当である。 (2) 被告らの主張争う。 第3 当裁判所の判断 1 前記争いのない事実,証拠(甲5,乙1ないし89,丙1ないし5,証人U,原告C本人,E医師,鑑定の結果)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 (1) 第1子出産の経緯原告Cは,出産のため,平成3年6月22日から被告医院を受診していたところ,同年12月20日(妊娠34週1日),E医師は,児頭が著しく降下している(子宮頸管は閉鎖)として,切迫流産と診断した。 同月26日,E医師は,原告Cに子宮収縮があることを確認し,子宮収縮抑制剤であるウテメリンを投与した。 同年12月28日(妊娠35週),原告Cは切迫流産のため, 管は閉鎖)として,切迫流産と診断した。 同月26日,E医師は,原告Cに子宮収縮があることを確認し,子宮収縮抑制剤であるウテメリンを投与した。 同年12月28日(妊娠35週),原告Cは切迫流産のため,被告医院に入院した。同日の内診においては,子宮緊満,下腹部緊満感との症状がありながらも子宮口は閉鎖していた原告Cは,平成4年1月11日,自然破水し,同日午後11時40分の内診によって子宮口3指開大と診断され,翌12日午前2時に子宮口全開大,2時30分排臨,同日午前2時46分,吸引によって2900gの児を正常分娩した。分娩までに著しい子宮口の開大は見られなかった。 (2) 第1回頸管縫縮手術までの経緯ア原告Cは,平成5年7月6日(以下,特に断らない限り平成5年のことである。),E医師から妊娠6週5日,出産予定日は平成6年2月24日との診断を受けた。同診察では,原告Cの子宮頚部に著変は認められなかった。9月16日(妊娠17週0日),原告Cの膣分泌物検査からカンジタ菌2+,カンジタ菌培養1+の結果が出たため,E医師は,原告Cに対し,塩化ベンザルコニウム(ヂアミトール水)0.02%水溶液による外陰部及び膣洗浄,ポピンヨード(イソジン液)膣内注入による消毒滅菌,抗真菌剤である硝酸イソコナゾール(アデスタンG100)の膣内挿入をそれぞれ行い,抗真菌剤であるエルシドクリームを塗布し,同ハリゾン及びFADを処方し,同月17日,18日,20日にも同様の治療を行った。 イ原告Cは,同月21日(妊娠17週5日),性器からの出血,腰痛及び胎児下降感を訴えて被告医院を受診した。 E医師は,今回の妊娠が胎盤低位着床であると診断し,第1子出産の際には切迫早産と診断され37週で出産したことに加えて,内診の結果,子宮口が1指大(約2cm)に開大し,頸管が3cm程度に短 受診した。 E医師は,今回の妊娠が胎盤低位着床であると診断し,第1子出産の際には切迫早産と診断され37週で出産したことに加えて,内診の結果,子宮口が1指大(約2cm)に開大し,頸管が3cm程度に短縮していると診断したことも併せ考え,原告Cが頸管無力症であると判断し,原告Cに対し,「切迫流産の危険がある。流産防止のために子宮口を糸で縛るシロッカー術を行う。」旨説明し,入院を指示した。 原告Cは,上記指示に従い,同日から10月7日まで,被告医院に入院した。 ウ E医師は,9月29日(妊娠18週6日)午後1時54分,原告Cに硬膜外麻酔を施行した後,膀胱を剥離せずに頸管を縫縮するマクドナルド法により子宮頸管縫縮術を実施した。同手術においては,医療機関で一般的に使用されている「SANRITU子宮頸管縫縮用針・テフロンテープ付」を用いた。1回目の縫縮では,後膣円蓋がめくり込んでいたこと等から有効な縫縮ができず,2回目は,1回目の縫縮部より上の位置で糸をかけたが,やはり後膣円蓋がめくり込み有効な縫縮ができなかった。3回目では,前2回の2本の糸を抜糸し,改めて縫縮を試み,ようやく子宮頸管を前出しして縫縮を行い,同日午後2時2分,手術を終了した。 エ上記入院期間中の原告Cの体温は次のとおりであった。 月・日・時刻体温(℃)9・21・11. 45ころ 36.79・21・15.00 37.49・22・10.00 37.09・22・15.00 37.09・23・10.00 36.89・23・15.00 37.09・24・10.00 36.89・24・15.00 37.29・24・19.00 37.39・25・10.00 3・15.00 37.09・24・10.00 36.89・24・15.00 37.29・24・19.00 37.39・25・10.00 36.99・25・15.00 36.89・26・10.00 36.39・26・15.00 36.39・27・10.00 36.79・27・15.00 36.59・28・10.00 36.99・28・15.00 37.19・29・7.00 36.49・29・10.00 36.99・29・18.00 36.79・30・7.00 36.69・30・10.00 37.19・30・15.00 37.010・1・10.00 37.010・1・15.00 37.110・2・7.00 36.510・2・10.00 36.710・3・10.00 36.810・3・15.00 36.710・4・10.00 36.610・4・15.00 36.710・6・10.00 36.710・6・15.00 36.810・7・10.00 36.9オ上記入院期間中,E医師は,カンジタ膣炎治療のため,原告Cの外陰部及び膣の洗浄,消毒及び抗真菌剤の投与を実施した(原告Cの供述中上記認定に反する部分は,乙1のカルテ上の記載にかんがみ,たやすく信用できない。)。原告Cは,10月9日(妊娠20週2日),外陰部のかゆみなどカンジタ膣炎の症状を覚え,被告医院を受診した。カンジ 中上記認定に反する部分は,乙1のカルテ上の記載にかんがみ,たやすく信用できない。)。原告Cは,10月9日(妊娠20週2日),外陰部のかゆみなどカンジタ膣炎の症状を覚え,被告医院を受診した。カンジタ菌培養検査の結果,カンジタ菌量が3+になっていたため,E医師は,原告Cに対し,外陰部及び膣洗浄,アデスタンG100の膣内挿入,エルシドクリームの塗布等カンジタ膣炎に対する治療を行った。 (3) 第2回頸管縫縮手術までの経緯等ア原告Cは,退院後1週間が経過した10月15日ころから赤褐色の帯下があり,徐々に下腹部が張る感じや下腹部痛があるのを自覚し,同月19日の昼ころからは,下腹部痛が増強し,褐色漿液性の帯下が見られるようになったため,同月20日(妊娠21週6日),被告医院を受診した。 E医師は,超音波検査の結果,胎児先進部が下降し子宮収縮を認めたため,切迫流産と診断し,再度入院を指示した。原告Cは,上記指示に従い,同日からH病院に転院した11月4日まで被告医院に入院した。 上記入院時,E医師は,原告Cの赤褐色の帯下及び下腹部痛について,「1回目のシロッカー術で子宮口を縛った糸の結び目が膣壁とこすれて出てくる分泌液であるから心配ない。」旨説明した。 イ原告Cの上記入院時(午前9時30分ころ)の体温は37.2度であったが,その後の体温の推移は次のとおりであった。 月・日・時刻体温(℃)10・20・15.00 37.210・21・10.00 37.110・21・15.00 37.410・22・9.35 37.410・22・15.00 37.410・24・10.00 37.210・24・15.00 37.210・25・10.00 9.35 37.410・22・15.00 37.410・24・10.00 37.210・24・15.00 37.210・25・10.00 37.310・25・15.00 37.410・26・10.00 36.810・26・15.00 37.110・27・10.00 36.9(この体温計測後に第2回目の頸管縫縮術がなされた。)10・27・15.00 36.310・28・10.00 36.810・28・15.00 37.210・29・10.00 36.710・29・15.00 36.610・30・10.00 36.710・30・15.00 37.210・31・10.00 36.710・31・15.00 37.211・1・10.00 36.811・1・15.00 37.111・2・10.00 36.711・2・15.00 38.411・2・16.30 38.011・3・7.00 36.611・3・10.00 36.711・3・15.00 37.111・3・16.40 37.511・3・18.15 37.811・3・19.00 37.711・3・20.35 36.811・4・2.15 36.511・4・7.00 37.211・4・10.00 37.5ウ E医師は,上記入院日から退院日である 36.811・4・2.15 36.511・4・7.00 37.211・4・10.00 37.5ウ E医師は,上記入院日から退院日である11月4日まで毎日(ただし,10月31日は除く。),解熱薬であり子宮収縮抑制作用もあるフェニタレンを投与した。 エ上記入院日に実施したNST検査では,胎児心拍数基線は160bpm前後を推移していた。 オ上記入院日以降の原告Cの所見及びE医師の診療は,次のとおりであった(ただし,体温及びフェニタレン投与については前記のとおりであるから,これらの点は除く。)。 (ア) 10月21日午後7時,茶色帯下あり。 (イ) 同月22日午前2時15分,腹部緊張感を訴え,「胎動があると子宮口の方が圧迫する感じ」と訴えた。 同日午前9時30分ころ漿液性の帯下あり。E医師は,看護師から,羊水ではないかと聞かれたが,「シロッカー糸がこすれたための分泌液である。」旨説明した。 (ウ) 同月23日午前7時,クリーム様の帯下あり。 同日午後3時,れんが色の帯下あり。 (エ) 同月24日午前7時,ドップラー胎児心拍測定結果は12-12-12であった。 同日午後3時,薄茶色帯下少々あり。チクチクするような下腹部の痛みや緊張があった。 同日午後8時,胎児下降感,圧迫されて苦しい旨の訴えあり。ドップラー胎児心拍測定は13-13-13であった。 同日午後8時50分,れんが色の出血あり。 (オ) 同月25日午前7時,ドップラー胎児心拍測定は11-11-11であった。 同日午前10時,下腹部にグーとした痛みを感じ,薄赤色出血が少々あった。 同日午後10時10分,下腹部の緊張及び痛みを訴え,出血が見られた。ドップラー胎児心拍測定は12-12-12であった。 (カ) 同月26日午後3時,少量 ーとした痛みを感じ,薄赤色出血が少々あった。 同日午後10時10分,下腹部の緊張及び痛みを訴え,出血が見られた。ドップラー胎児心拍測定は12-12-12であった。 (カ) 同月26日午後3時,少量の出血あり。 E医師は,原告Cの発熱が急性腎盂腎炎によるものと診断し,イパセシンを注射投与した。また,胎児が下降し,縫縮糸により娩出を免れている状態であるとして2回目の頸管縫縮術を実施することを決定し,原告Cに説明した。 同日午後11時,原告Cは下腹部痛及び緊張を訴えた。 カ同月27日(妊娠22週6日)午前7時,ドップラー胎児心拍測定は12-12-12,尿沈査細菌検査の結果,尿中細菌が2+であった。 E医師は,同日午後1時22分,2回目の子宮頸管縫縮術を実施し,前回と同種の頸管縫縮針及びテフロンテープを使用し,マクドナルド法により,前回の縫縮部位の1cm上方を縫縮した。同日午後1時26分,手術が終了し,子宮収縮抑制剤であるズファジランを点滴した。 (4) 第2回頸管縫縮手術後の所見等(ただし,体温及びフェニタレン投与については前記のとおりであるから,これらの点は除く。)ア同月28日午前7時,ドップラー胎児心拍測定は12-12-12であった。 午前10時,少量の出血があった。同日の内診では原告Cの頸管は閉鎖していた。 イ同月29日午前5時40分,下腹部痛及び緊張の訴えあり。同日午前7時,ドップラー胎児心拍測定は12-12-12であった。同日の内診では子宮口は閉鎖していた。午後3時,少量の出血があった。 ウ同月30日午前7時,ドップラー胎児心拍測定は13-13-13であった。 午前10時,下腹部の緊張,茶色帯下少量あり。NST検査で,胎児心拍数基線は160bpm付近を推移した。 エ 11月1日午前10時,少量の出血あり。同日午後3時にも,少量の出血あ 3-13であった。 午前10時,下腹部の緊張,茶色帯下少量あり。NST検査で,胎児心拍数基線は160bpm付近を推移した。 エ 11月1日午前10時,少量の出血あり。同日午後3時にも,少量の出血あり。NSTでは,胎児心拍数基線はほぼ160bpmで持続した。 オ同月2日(妊娠23週5日)午前4時,腹部の痛み及び緊張を訴える。E医師は,尿沈査細菌検査の結果,尿細菌が2+であったことから,38.4度の発熱の原因は腎盂腎炎であると判断し,抗生剤であるサマセフを経口投与し,同イセパシンを注射投与した。 カ同月3日(妊娠23週6日)午前2時ころ,薄茶水様の帯下あり。同日午前3時には帯下の量が増加し,同日午前7時には,だらだらと流れ出るような状態になり,縦約30cm,横約20cmで厚みのあるお産用パッドがぐっしょり濡れるほどであった。 同日午前8時30分,看護師がお産用パッドを交換したところ,オレンジがかった赤色の帯下が見られた。同日午前9時,E医師が内診し,ガーゼを2枚挿入した。 同日午後3時にガーゼを抜去したときには,血液が混入し帯下は中等量であった。 同日午後3時55分,看護師による2回目のお産用パッド交換時には,赤黒い帯下が中等量見られた。 同日午後4時40分,時々腹部に緊張を感じ,絞るような痛みが起こった。看護師による3回目のお産用パッド交換時には,血性帯下が見られ,帯下には若干異臭があった。(この点について,被告Dは,看護記録中「臭い±」との記載について,悪臭を意味するものではなく,「帯下特有のにおいがあるのかないのかはっきりしない状態」を意味する旨主張し,これに沿う証拠(乙84)もある。しかし,看護師が,患者のそれまでの症状と比較して特に異常ではない症状をあえて記録するとは考え難く,帯下の状態に何らかの著変を認めたため上記のような記載を る旨主張し,これに沿う証拠(乙84)もある。しかし,看護師が,患者のそれまでの症状と比較して特に異常ではない症状をあえて記録するとは考え難く,帯下の状態に何らかの著変を認めたため上記のような記載をしたとみるのが自然であるから,被告Dの上記主張はにわかに採用できない。)。 E医師は,看護師から帯下の状態について報告を受けていたが,感染性の帯下や羊水ではないと判断し,特にこれに対する医療措置を講じなかった。 同日午後7時,原告Cの出血は中等量であり,帯下は粘液状,赤様,クリーム様で若干の異臭がし,看護師が4回目のお産用パッド交換をした。下腹部の緊張感はなくなったが腹痛があった。 キ同月4日(妊娠24週0日)午前2時15分,中等量の血性帯下が見られ,看護師がお産用パッドを交換した。 同日午前7時,赤様,クリーム様で若干異臭がする血性帯下が多めに見られ,看護師がお産用パッドを交換した。 同日午前9時30分,原告Cの下腹部痛が増大し,E医師が内診したところ,子宮口が2.5指(5cm)程度開大し,頸管は消退して羊水を内蔵した胎胞が親指頭大に膨張して突出しており,縫縮糸により保たれている状態であった。膨張した胎胞中の羊水は,淡白色・透明であり,羊水臭や感染性の悪臭はなかった。胎児の先進部は視認できず,触知されなかった。 E医師は,原告CをH病院に転送することを決定し,その旨を原告Cに説明した。 同日午前10時,血性のどろどろした帯下が中量見られ,腹部緊張感,下腹部痛が著しくなった。 同日午前10時20分,原告Cは,救急車でH病院へと搬送された。救急車内では,破水は見られなかった。 同日の胎児心拍数基線は160bpm以上で推移し,180bpmになることも頻繁にあった。 (5) H病院での診療経過ア原告Cは,11月4日午前11時ころ,H病院に搬入された は見られなかった。 同日の胎児心拍数基線は160bpm以上で推移し,180bpmになることも頻繁にあった。 (5) H病院での診療経過ア原告Cは,11月4日午前11時ころ,H病院に搬入された。原告Cは,2,3分おきに陣痛があり,担当医師であるV医師が診察したところ,子宮口は2.5指に開大し,出血量が多く脱落したような血魂を排出した。また,内診では,胎児の足及び臀部を触知し,既に破水して胎児が骨盤位にあると推定された。 同日午前11時37分ころ,V医師が経腹超音波検査を行ったところ羊水はほとんど認められなかった。白血球数は1万5000であり,膣内分泌物の細菌培養検査の結果では常在菌である大腸菌(2+),黄色ブドウ球菌(1+)が検出されたが,カンジタ菌等は検出されなかった。 同日午前11時40分,V医師は,原告Cの出血が続き胎児が骨盤位にあることから,経膣分娩によった場合には胎児の状態が悪化すると考え,帝王切開により分娩させることを決定した。 同日午後零時29分,U医師らは,帝王切開手術を開始した。当初は,子宮頚部横切開を行ったが,児頭の娩出が困難であったため,さらに子宮体部に縦切開を加えてT字切開とし,同日午後零時34分,胎児(原告A)を娩出した。術中,子宮内には濃血性の羊水を認め,子宮内分泌物は汚濁していた。 原告Aは,体重650gの超未熟児であり,出生1分後のアプガースコアは1であったが,5分後アプガースコアは5となった。 U医師らは,娩出の際に胎児の体によって子宮側壁層が広げられたため右子宮動脈が切断されているのを発見し,右子宮動脈を含めた周辺の組織を縫合して止血し,同日午後2時及び午後9時の各1回,抗生物質であるセフォタックス1gの静注点滴を行い,同日午後3時45分から午後9時にかけて,輸血液を1000ml輸血した。同輸血液は た周辺の組織を縫合して止血し,同日午後2時及び午後9時の各1回,抗生物質であるセフォタックス1gの静注点滴を行い,同日午後3時45分から午後9時にかけて,輸血液を1000ml輸血した。同輸血液は,Tの血液センターの検査済みのものであった。 イ同月5日,白血球数は1万7200,体温は38.7度であった。 U医師らは,午前午後と1回ずつセフォタックス1gを静注した。 同月6日,原告Cの白血球数は1万2300,CRP19.1mg/dlとなった。U医師らは,抗生物質をセフメタゾン2g及びホスタミン2gに切り替え,以後,午前午後の各1回ずつ静注した。 その結果,同月12日から14日には,原告Cの体温は37度以下となり,CRPは1.26mg/dlに低下した。 ウその後,原告Cにとりたてて異常な症状の発現はなかったところ,同月15日午後5時5分,突然,性器からの出血があり,分娩室に搬送されたときには200ml出血し,さらに同日午後5時30分には,出血量が450mlに達した。U医師らは,内診等により,膣内に疑血塊があり,子宮口から拍動性の出血があることを認め,ガーゼで圧迫するとガーゼに血がにじむ状態であった。 同日午後7時13分,U医師らは,原告Cに対し,輸血を開始した。 同日午後8時40分,U医師らは,原告Bから,原告Cに大量の外出血があるとの報告を受け,ガーゼを抜去したところ,動脈性の出血があるのを認め,ガーゼで圧迫したものの止血できなかった。そこで,U医師らは,緊急手術を実施することを決定し,原告C及び原告Bに対し,やむを得ない場合には子宮を摘出することもある旨説明し,原告らの承諾を得た。 同日午後9時,U医師らは,原告Cの手術を開始し,子宮右部分からの出血を認め,Z字縫合を試みたが止血できず,右子宮動脈と尿管等との区別が不明で止血する部分を大きく る旨説明し,原告らの承諾を得た。 同日午後9時,U医師らは,原告Cの手術を開始し,子宮右部分からの出血を認め,Z字縫合を試みたが止血できず,右子宮動脈と尿管等との区別が不明で止血する部分を大きくとると尿管を損傷する危険があり,出血死に至る可能性も高かったことから,原告Bにその旨を説明し,その承諾を得て子宮を全摘出した。原告Cの術中の出血量は約1890mlあり,約1820mlの輸血がされた。同輸血液は,Tの血液センターの検査済みのものであった。 エ摘出された子宮の病理組織検査の結果によれば,子宮体下部を中心として,貫壁性の出血,壊死性変化,急性及び慢性の炎症細胞浸潤が認められたが,細菌病巣など細菌やカンジタ真菌の感染を示す所見は認められなかった。 オ原告Cは,同月29日,H病院を退院したが,平成6年1月6日に行った血液検査でHCV抗体が陽性となり,その後,慢性C型肝炎に罹患していることが判明した。 2 頸管無力症等に関する医学的知見(甲7ないし9,19,21ないし23,31,71,73,74,乙8,13ないし15,17,18,23,25,50,55,鑑定)(1) 頸管無力症とは,妊娠の第2トリメスター(妊娠14週ないし26週ころ)又は第3トリメスター(妊娠週27週から妊娠末期)の早い時期に,無痛の(子宮収縮を伴わない)子宮口の開大で,胎胞が膣内に膨隆してくるものをいう。妊娠中期以降に子宮収縮や外出血などの前駆症状がなく,頸管が無力状に開大し,卵膜の膨隆,破水から早産に至る症状を特徴とする。本症が進行すると子宮口が開大して胎胞が頸管内を占拠し,ついには膣内へ脱出した状態になり,早産に至る。 頸管無力症の所見としては,子宮収縮がないこと,頸管の上部にV字型やU字型の漏斗形状が観察されること,頸管長が20mm未満であること,頸管の軟化や短 し,ついには膣内へ脱出した状態になり,早産に至る。 頸管無力症の所見としては,子宮収縮がないこと,頸管の上部にV字型やU字型の漏斗形状が観察されること,頸管長が20mm未満であること,頸管の軟化や短化が著しく,内子宮口が2cm以上(1指通過程度)開大していることが挙げられ,これらの症状があれば頸管無力症と診断する。もっとも妊娠中(特に経産婦)には,しばしば外子宮口が開大していることがあるが,内子宮口の開大がない限り本症とはいえない(甲21)。 本症を診断する臨床的資料としては,産科既往歴,内診や超音波検査による頸管長の変化,子宮収縮と内子宮口の変化の時間的経過が重要である。 妊娠中期での子宮収縮を伴わない頸管開大と卵膜の下降は典型的な症状であるが,他の早産の原因(羊水感染,胎盤異常,胎児感染症,子宮奇形,粘膜下筋腫などの合併)による場合もあり,これらとの鑑別が必要である。 (2) 頸管無力症に対する治療は,前膣円蓋部に切開を加え膀胱粘膜を頭側へ剥離して縫縮糸を埋没するシロッカー法又は膀胱粘膜を剥離せずに縫縮するマクドナルド法が一般的である。 頸管縫縮術の最大の合併症は子宮内感染であり,既に膣や子宮頸管内に感染症を有しているような場合には,感染症に対する十分な治療を施してから手術を行う必要がある。子宮内感染の徴候が悪化した場合には,頸管縫縮術は禁忌であり,破水や母体の発熱,白血球増多,CRPの上昇,子宮圧痛,膿性帯下,胎児の高度頻脈などの子宮内感染の臨床症状が出現すれば,直ちに抜糸する必要がある。 (3) 子宮内感染について子宮内感染とは,卵膜(絨毛膜・羊膜)に炎症がある状態をいい,典型的な原因及び経路は,下部性器の細菌叢の上行感染により破水が先行して膣内や頸管内の細菌が子宮頸管を通過することによる感染であるが,破水がなくても絨毛膜や 膜(絨毛膜・羊膜)に炎症がある状態をいい,典型的な原因及び経路は,下部性器の細菌叢の上行感染により破水が先行して膣内や頸管内の細菌が子宮頸管を通過することによる感染であるが,破水がなくても絨毛膜や羊膜を通して子宮内感染が起こったり(絨毛膜羊膜炎),母体の感染が血行性に胎盤を通じて胎児に波及することも知られている。 絨毛膜羊膜炎においては,炎症により羊膜の脆弱化と子宮収縮が生じて前期破水を招くと考えられ,前期破水では,胎胞の上部で卵膜が破れる高位破水が起こることもある。 臨床における子宮内感染の確定診断は困難であるが,母体の発熱が最も重要な所見であり,妊婦が発熱しているときには,他の発熱の原因を精査するとともに,羊水感染を鑑別診断から除外してはならない。また,妊婦の発熱以外の所見としては,子宮収縮の存在,胎児頻脈,子宮の圧痛が診断の一助となる。 子宮内感染を放置しておくと胎児に感染が及ぶため,妊娠週数にかわらず積極的な分娩が必須であり,子宮内感染がある場合には子宮収縮抑制剤の使用は禁忌である。 3 責任及び因果関係に関する争点について(1) 頸管無力症の存否及び1回目の頸管縫縮術の適否についてア前記のとおり,原告Cの第1子の分娩の経過として,子宮収縮が自覚又は他覚されていたこと,平成3年12月20日妊娠34週1日の時点で子宮頸管は閉鎖していたこと,同月28日の内診でも子宮緊満,下腹部緊満感との症状がありながらも子宮口は閉鎖していたこと,妊娠37週の平成4年1月11日,自然破水し,午後11時40分の内診によって子宮口3指開大と診断され,翌12日午前2時に子宮口全開大,2時30分排臨,2時46分吸引によって2900gの児を正常分娩したこと,分娩まで著しい子宮口の開大が見られなかったことが認められる。 上記の臨床経過では,先天性頸管無力症に特 前2時に子宮口全開大,2時30分排臨,2時46分吸引によって2900gの児を正常分娩したこと,分娩まで著しい子宮口の開大が見られなかったことが認められる。 上記の臨床経過では,先天性頸管無力症に特徴的に見られる症状や所見,すなわち妊娠中期(妊娠13~28週未満)に明確な子宮収縮の自覚がなく内子宮口が2cm以上(1指程度)開大し,卵膜が膨隆して破水から早産に至るという臨床所見が全く窺われず,この点にかんがみれば,原告Cが先天的な頸管無力症であったとの診断は失当であり(鑑定:鑑定書4頁),これを前提として頸管縫縮術が必要であったとする被告Dの主張は到底採用できない。 イ後天的な頸管無力症の診断については,2回目の妊娠以前に子宮頸管に本症を引き起こすほどの損傷を受けていたか,2回目の妊娠において頸管無力症の特徴を示す所見や症状があるかが重要である(鑑定:鑑定書4頁)ところ,前者の点については,原告Cが第1子出産の際,頸管無力症を引き起こすほどの頸管裂傷を負った事実は証拠上窺われず,被告Dもこの点を特に争っていない。 次に,後者の点については,前記認定のとおり,E医師は,第1子の出産において,・分娩が予定日より2週間早い38週であったこと,②早産傾向があり,妊娠35ないし37週の間,切迫早産のため2週間入院したこと,本件の出産において,③子宮口が1指開大していたこと,④出血があったこと,⑤頸管が3cm程度に短縮し,著しく軟化していたことの各所見を根拠として,平成5年9月21日(妊娠17週5日),原告Cに頸管縫縮術の適応があると診断した。 しかし,第1子出産に関する上記①及び②の所見は,むしろ頸管無力症診断とは矛盾するものである(鑑定:鑑定書5頁)。 上記③の所見についてみると,E医師の内診をした当時の認識が内子宮口の開大であったのか,それとも外 出産に関する上記①及び②の所見は,むしろ頸管無力症診断とは矛盾するものである(鑑定:鑑定書5頁)。 上記③の所見についてみると,E医師の内診をした当時の認識が内子宮口の開大であったのか,それとも外子宮口のそれであったのか,必ずしも明らかでないが,E医師が9月21日に胎盤低位着床であると診断したことからすれば,E医師が内子宮口まで届くほどの内診を行ったとは考え難い(鑑定書5頁)から,上記所見は外子宮口の開大であったものと推認される。そして,経膣分娩を経験した経産婦について妊娠17週という時期に上記の程度の開大があっても,これを異常ということはできず(鑑定書5頁),むろん頸管無力症の診断根拠とすることもできない。 もっとも,仮に内子宮口が1指開大していたとしても,原告Cはこの時期に子宮収縮を自覚していた上,第1回の頸管縫縮術後も下腹部痛を訴え,子宮収縮を自覚していたことが窺えること,出血があったことからすると,上記開大は,子宮収縮を伴う切迫早産による子宮口開大であるとみることが可能である。また,内診や超音波検査による頸管長の変化等の客観的所見,子宮収縮と内子宮口の変化に関する詳細な記録がなく,E医師が9月21日から第1回手術日である同月29日までの間に,頸管長の変化等を詳細に観察していたことは窺えない。したがって,上記内子宮口の開大があったことを根拠として,頸管無力症との確定診断をしたのは誤りであるというほかない。 上記⑤の所見については,E医師は,9月21日時点での原告Cの頸管は約3cmであり,これは正常妊婦の30ないし40%の長さに短縮しており,頸管の軟化も著しかった旨供述する。しかし,頸管長が約3cmであったことを裏付ける証拠はない(上記供述によっても,内診による診断か,あるいは,超音波検査による診断かさえ明らかではなく,診療録上,内 頸管の軟化も著しかった旨供述する。しかし,頸管長が約3cmであったことを裏付ける証拠はない(上記供述によっても,内診による診断か,あるいは,超音波検査による診断かさえ明らかではなく,診療録上,内診や超音波検査による頸管長の変化の記録もない。)から,この点に関する同供述はたやすく信用できない。また,仮に頸管長が約3cmであったとしても,それが異常であるとまではいえない(乙6)。頸管の軟化については,カルテの9月21日の欄には同旨の記載はなく,E医師のこの点に関する供述もにわかに信用することができない。 もっとも,前記のとおり,第1回目の頸管縫縮術において,E医師は,2度にわたり縫縮に失敗し,3度目に有効な縫縮をしたことが認められ,被告Dは,このように縫縮に手間取った事実は頸管が著しく短縮し,かつ,著しく軟化していたことを裏付けるものである旨主張する。しかし,前記のとおり,これに沿うE医師の供述をにわかに信用することはできないばかりか,頸管が3cm程度であったとしても,それは異常に短縮していたとはいえないこと,後膣円蓋がめくり込んでいたことが縫縮に手間取った一因であると認められること等からすれば,上記の縫縮に手間取ったとの事実から頸管無力症と診断すべき程度の頸管の短縮や軟化があったと認定するのは困難である。したがって,被告Dの上記主張は採用できない。 以上によれば,原告Cが後天的な頸管無力症であったとの診断は不適切なものであったというべきである。 ウ上記ア及びイで判示したところからすれば,原告Cが先天的にも後天的にも頸管無力症であったと診断することは不適切であるから,原告Cには第1回目の頸管縫縮術施術当時に同手術の手術適応はなかったといえる。したがって,E医師は,出血や子宮収縮等の早産傾向のあった原告Cを安静にした上,子宮収縮抑制剤の投 とは不適切であるから,原告Cには第1回目の頸管縫縮術施術当時に同手術の手術適応はなかったといえる。したがって,E医師は,出血や子宮収縮等の早産傾向のあった原告Cを安静にした上,子宮収縮抑制剤の投与等の早産防止治療を施しつつ経過観察すべきであった。ところが,E医師は,原告Cが頸管無力症であると誤診し,手術適応がないにもかかわらず頸管縫縮術を実施し,後述のとおり,原告Cをして頸管縫縮術の合併症である子宮内感染に罹患させたのであって,この点で過失があるといえる。 (2) 2回目の頸管縫縮術の適否についてア前記認定の事実及び鑑定の結果によれば,下記のとおり判断することができる。 (ア) 原告Cの体温は,10月20日(妊娠21週6日)の入院時には,37.2度,その後第2回目の頸管縫縮術がなされた同月27日まで概ね37度を超える体温であり,これを超えない場合も37度に近い体温であったこと,一般に発熱とは腋窩で37度以上をいい,しかも,原告Cは毎日解熱剤であるフェニタレンの投与を受けていたことからすれば,原告Cはこの間発熱が継続した状態であったといえる。また,一般に,胎児心拍数基線の正常範囲は120bpmから160bpmとされるが,本件の場合,10月23日には,胎児心拍数基線が持続的にほぼ上限である160bpmを示し,その後も基線がほぼ160bpmを推移し大きく下がることはなかったことからすれば,胎児頻脈の傾向があったといえる。このことは,胎児又は母体に何らかの異常があったことを疑わせる。 (イ) 原告Cは,10月20日の入院時に,「前日の昼から下腹部痛が増強し,褐色漿液性の分泌物がある。」旨訴え,同月22日にも同様の訴えをし,同日の看護記録には「尿?羊水?Dr見せる」との記載があり,同月24日には「少量の漿液性のおりもの」があったとの記載もある 増強し,褐色漿液性の分泌物がある。」旨訴え,同月22日にも同様の訴えをし,同日の看護記録には「尿?羊水?Dr見せる」との記載があり,同月24日には「少量の漿液性のおりもの」があったとの記載もあることからすれば,当時,高位破水があった可能性がある(この点について,被告Dは,漿液性の帯下は羊水ではなく1回目の頸管縫縮術の糸がこすれた分泌液である旨主張する。しかし,羊水であることを除外する診察所見や検査結果は記録上認められず,羊水でないとする根拠は明らかでない。)。 (ウ) 11月2日,3日には,原告Cは連日フェニタレンの投与を受けていたにもかかわらず,38度を超える発熱があり,同月4日にも37.5度の発熱があった。胎児心拍数については,11月3日には心拍数基線が160bpm以上であって頻脈は明らかであり,断続的に170bpm,ときには180bpmまで上昇した。同月4日も心拍数基線は明らかに160bpmを超えていた。これらは継続的な胎児頻脈であると認められる。 (エ) 11月3日,原告Cに大量の漿液性帯下があり,看護記録にも「臭い±」との記載があり,帯下の性状に変化があったことが認められ,原告Cに何らかの感染が存在したことが強く疑われる。そして,11月4日午前11時,原告CがH病院に搬入された時点では,既に破水し,子宮内に羊水をほとんど認めない状態であったこと,救急車内で破水した事実も窺われないことからすれば,被告医院において破水していたものと推認され,その所見としては,同月3日の大量の漿液性の帯下がこれにあたると考えられる。 (オ) H病院における帝王切開術においては,子宮内分泌物は汚濁し子宮内感染が疑われ,濃血性の羊水が認められた。原告Cは,帝王切開術後,抗生物質の投与を受け,同月11日には,同手術時に見られた炎症がかなり改善した。 ( る帝王切開術においては,子宮内分泌物は汚濁し子宮内感染が疑われ,濃血性の羊水が認められた。原告Cは,帝王切開術後,抗生物質の投与を受け,同月11日には,同手術時に見られた炎症がかなり改善した。 (カ) 一般に,子宮内感染の存在する症例では,特に帝王切開術後に産褥熱を引き起こしやすいとされているところ,原告Cは,術後に高熱,CRP値の上昇,子宮内膜炎の症状を呈したことから,感染が先行していたことが窺われる。 (キ) 以上の所見や判断を総合すると,原告Cは,遅くとも10月20日の入院時には,子宮内感染を発症していたと推認される。したがって,E医師は,そのころ,原告Cの子宮内感染を疑い,羊水穿刺や羊水グラム染色等の臨床的な検索を行うべきであり,この検索をすれば子宮内感染との診断に至るはずであったといえる。ところが,E医師は,原告Cの発熱を腎盂腎炎によるものと誤診し,胎児の頻脈傾向にも注意を払わず,子宮内感染の妊婦には禁忌である頸管縫縮術を実施したのであり,この点で過失があったといえる。 イ上記の点に関する被告Dの主張について被告Dは,10月20日以降の発熱の原因は腎盂腎炎である旨主張し,E医師は,同月26日に腎盂炎薬であるイパセシンを投与したことが認められる。しかし,カルテ及び看護記録上,原告Cが腎盂腎炎の特徴的症状である頻尿や背部痛を訴えた形跡は窺えず,被告Dの上記主張を採用するに足りる事実は証拠上認められない。 また,被告Dは,11月2日の原告Cの発熱について,これは弛張熱であり,同日の尿沈査細菌検査の結果では尿中細菌3+であったから,原告Cの発熱は腎盂腎炎によるものである旨主張する。しかし,上記のような尿検査結果は,種々の尿路感染に見られる非特異的な尿所見であるから,これらの所見によって腎盂腎炎と診断することはできない(鑑定:鑑定書9頁 は腎盂腎炎によるものである旨主張する。しかし,上記のような尿検査結果は,種々の尿路感染に見られる非特異的な尿所見であるから,これらの所見によって腎盂腎炎と診断することはできない(鑑定:鑑定書9頁)。したがって,上記のいずれの主張も採用できない。 また,被告Dは,11月4日の内診時には,原告Cの子宮には胎胞膨隆があり,羊水は白色透明であったから,破水や子宮内感染の発症はなかったとみるべきである旨主張する。しかし,胎胞膨隆は,子宮頸管の開大に伴って,羊水を包んだ絨毛膜・羊膜の一部が頸管を通して袋状に膣内に下降する状態をいうところ,絨毛膜・羊膜が高い位置で破綻している高位破水の場合には,羊水の流出もわずかずつであり,頸管部位に胎胞を形成することがあるから,胎胞が膨隆し,緊張して子宮口から突出しているとしても,破水が起こっていないと断言することはできない。また,羊水混濁がないからといって破水していないということはできない(鑑定:鑑定書9,11頁)。上記の点に加えて,漿液性の帯下があったことにかんがみれば,胎胞膨隆があったことや羊水が白色透明で混濁していなかったことを考慮しても,破水がなかったとの被告Dの上記主張は採用できない。 (3) E医師の過失と原告らの障害等との因果関係についてア原告Aの脳性麻痺について頸管縫縮術がその合併症として子宮内感染を誘発することは古くから知られている医学的知見である(鑑定:補充鑑定書6頁,乙55)ところ,原告Cの本件出産の場合,第1回目の頸管縫縮術の施術前には子宮内感染の徴候,すなわち発熱や胎児心拍の頻脈傾向はなかったが,前記(2)アに判示したとおり10月20日の2回目の入院時には子宮内感染があったことが認められること,頸管縫縮術のほかに子宮内感染の発生原因となる事実は証拠上窺えないことの点にかんがみれ なかったが,前記(2)アに判示したとおり10月20日の2回目の入院時には子宮内感染があったことが認められること,頸管縫縮術のほかに子宮内感染の発生原因となる事実は証拠上窺えないことの点にかんがみれば,第1回目の子宮縫縮術によって子宮内感染が発症したものと推認される。この点につき,鑑定は,「2度の頸管縫縮術を実施していなければ,理論的に,子宮内感染の機会は減少したであろうことは想像できる。」というにとどめている(鑑定:補充鑑定書7頁)が,これは鑑定人の医学者としての謙抑的な姿勢からの表現であって,民訴法上の立証としては,上記の点が推認され得るといえる。 そして,子宮内感染によりサイトカイン等の反応物質が発生して炎症反応が起こり早産に至ること,早産による未熟性は脳性麻痺の主要な原因となること,子宮内感染に対して胎児が自ら放出するサイトカイン等の反応物質が胎児や新生児の脳神経に悪影響を及ぼすこと(鑑定:鑑定書13頁)からすると,原告Cが子宮内感染に罹患したことが原因で原告Aが脳性麻痺による障害が発生したものと推認される。 この点について,被告Dは,頸管無力症による胎児下降による物理的刺激によりサイトカインが発生し,炎症反応から早産に至ったと主張するが,原告Cが頸管無力症であったとは認められないこと,原告Cが子宮内感染に罹患していたと認められることは前記のとおりであるから,被告Dの上記主張は採用することができない。 イ原告CのC型肝炎罹患について(ア) まず,前示したところからすれば,E医師の過失行為すなわち手術適応のない第1回目の頸管縫縮術の施行がなければ,原告Cは子宮内感染から帝王切開術を余儀なくされることはなかったといえる。 そして,前記認定のとおり,原告Cは,帝王切開施術の日である11月4日に1000mlの輸血を受け,さらに,性器か がなければ,原告Cは子宮内感染から帝王切開術を余儀なくされることはなかったといえる。 そして,前記認定のとおり,原告Cは,帝王切開施術の日である11月4日に1000mlの輸血を受け,さらに,性器からの大量出血のあった日である同月15日に1820mlの輸血を受けたのであり,その後の平成6年1月6日にC型肝炎ウィルスに感染していることが判明したこと,上記輸血のほかに上記感染の原因となり得る事情は窺えないことからすれば,原告Cは上記各輸血のいずれか又は両輸血によってC型肝炎ウィルスに感染したものと推認される。また,帝王切開術の際輸血を必要としたのは右子宮動脈が切断されたためであるが,本件のような妊娠週数の若い子宮筋は切開創の幅が胎児の分娩に不十分で切開創延長のためT字切開を余儀なくされる場合がしばしばあり,その場合には子宮動脈の損傷が避けられないことが多く,本件も同様の症例であった(鑑定:鑑定書21,23頁)。さらに,同月15日の性器からの大量出血は,後にH病院の担当医師の責任について判示するとおり上記の子宮動脈損傷によるものではなく,帝王切開から上記出血までの間の子宮組織の壊死変化に起因するものと推認され(鑑定:鑑定書24頁),子宮内感染がその一因であったと推認される(鑑定:鑑定書25頁)。鑑定は,「子宮組織の壊死性変化の原因として,・止血又は縫合のための局所における虚血,・貫壁性出血,・感染が考えられるが,いずれかに特定することはできない。」としているが,子宮内感染から帝王切開に至ったことにかんがみれば,上記のとおり認定するのが相当である。また,H病院の病理組織検査では,摘出した子宮からは細菌叢などが発見されていないが,子宮が摘出されたのは帝王切開術から11日を経過した後であり,その間,原告Cには毎日抗生物質が投与され,臨床的には解熱 ,H病院の病理組織検査では,摘出した子宮からは細菌叢などが発見されていないが,子宮が摘出されたのは帝王切開術から11日を経過した後であり,その間,原告Cには毎日抗生物質が投与され,臨床的には解熱し術後の子宮内膜炎も治癒したと考えられる時期であったことからすれば,上記事実は前記認定を左右しないというべきである。 以上によれば,E医師の上記過失行為と上記各輸血によるC型肝炎ウィルスの感染との間には自然的な因果関係があるといえる。 (イ) もっとも,E医師の過失行為とC型肝炎ウィルス感染との間には,右子宮動脈の切断,子宮組織の壊死性変化,輸血液の瑕疵(C型肝炎ウィルスの存在)が介在していたのであって,この点からすれば,E医師が過失行為時において,原告Cが上記各輸血を余儀なくされ,かつ,これによってC型肝炎に感染することを予見することが可能であったといえる場合にはじめて,損害賠償責任を問うための相当因果関係の存在を肯定できるというべきである。 そこで,上記の点について判断するに,第1に,前記のとおり,本件のような妊娠週数の若い子宮についてはT字切開を余儀なくされる場合がしばしばあり,その場合には子宮動脈の損傷が避けられないことが多く,この点にかんがみれば,E医師は,子宮動脈の切断のために輸血が必要となることを予見することは可能であったといえる。第2に,前示の点,すなわち,頸管縫縮術が合併症として子宮内感染を誘発することが多いこと,子宮内感染が子宮組織の壊死変化の原因となることからすれば,E医師は,子宮内感染から子宮組織の壊死変化を辿り大量出血のため輸血が必要となることを予見することは可能であったといえる。 しかし,原告Cが受けた各輸血液はTセンターの検査済みのものであったこと,臨床医は,これらの安全性を信頼して輸血を施すのが一般的であったことにか が必要となることを予見することは可能であったといえる。 しかし,原告Cが受けた各輸血液はTセンターの検査済みのものであったこと,臨床医は,これらの安全性を信頼して輸血を施すのが一般的であったことにかんがみれば,本症例において原告Cが上記各輸血によってC型肝炎にウィルスに感染した事実等を考慮しても,E医師が上記各輸血液の瑕疵(C型肝炎ウィルスの存在)を予見することができたというのは困難である。結局,この点からすれば,上記相当因果関係の存在を肯定することはできないから,被告Dは,原告CのC型肝炎ウィルス感染による損害の賠償責任を負わない。 ウ原告Cの子宮壊死及び子宮全摘出について前示のとおり,E医師の過失行為すなわち手術適応のない第1回目の頸管縫縮術の施行がなければ,原告Cは子宮内感染から帝王切開術を余儀なくされることはなかった。 そして,前記認定の事実,すなわち,原告Cは,11月4日,帝王切開の施術を受けたが,同月15日,性器からの大量出血があったこと,U医師らは,手術を開始し,子宮右部分からの出血を認めZ字縫合を試みたものの止血できず,出血死の危険があると判断し,原告Bの承諾を得て子宮を全摘出したこと,上記大量出血は帝王切開から上記出血までの間の子宮組織の壊死変化に起因するものであり,子宮内感染がその一因であったこと,感染によって子宮組織の壊死変化が生じる可能性のあることは一般的な医学上の知見であることにかんがみれば,E医師の上記過失行為と上記子宮全摘出との間には相当因果関係があるというべきである。 (4) 被告Wの責任についてア子宮全摘出について前記のとおり,原告らは,U医師らがT字切開をしたことが不適切であったと主張する。 しかし,既に判示した点,すなわち,U医師らは,11月4日の帝王切開の際,子宮下部横切開により胎児を娩出 出について前記のとおり,原告らは,U医師らがT字切開をしたことが不適切であったと主張する。 しかし,既に判示した点,すなわち,U医師らは,11月4日の帝王切開の際,子宮下部横切開により胎児を娩出させようと試みたものの,児頭が出なかったため,縦切開を加えT字切開として娩出したが,その際,胎児が右子宮側壁層を拡大し,右子宮動脈が損傷を受けたこと,本件のように妊娠週数が若い子宮では,子宮筋が全体的に厚く横切開を加えることができる幅が狭く,横切開のみでは胎児の分娩に不十分な場合があり,縦切開を加えてT字切開とせざるを得ないことにかんがみれば,U医師らがT字切開をしたことが不適切であったとはいえず,右子宮動脈が損傷を受けたことについてU医師らに過失はないといえる。のみならず,原告Cの場合,右子宮動脈は損傷を受けたものの,左子宮動脈は損傷を受けなかったのであるから,子宮への血流が途絶えたわけではないので,右子宮動脈損傷によって子宮組織の壊死変化が生じたとは認められない(鑑定:鑑定書25頁,補充鑑定書11頁)。したがって,原告らの上記主張は採用できない。 イ C型肝炎の感染について原告らは,輸血液の瑕疵(C型肝炎ウィルスの存在)についてもU医師らに過失責任がある旨主張し,前記のとおり,帝王切開術及び子宮摘出手術の術中輸血によって原告CがC型肝炎ウィルスに感染したことが認められる。もっとも,原告らが主張する過失が具体的にどのような注意義務違反を内容とするものであるかは主張上明らかでないが,同主張が,C型肝炎ウィルスが混入していない血液を輸血するべきであったとの趣旨であるとすれば,E医師の過失について判示したとおり,上記輸血液はT血液センターから送付された検査済みのものであり,一般に臨床医はその安全性を信頼して輸血しているのであるから,U医師らに上記 との趣旨であるとすれば,E医師の過失について判示したとおり,上記輸血液はT血液センターから送付された検査済みのものであり,一般に臨床医はその安全性を信頼して輸血しているのであるから,U医師らに上記のような過失責任を問うことはできない。したがって,この点に関する原告らの主張は採用できない。 4 原告Aの損害について(1) 原告Aの心身の障害及びこれに対する治療等についてみると,証拠(甲33ないし38,52ないし53,76,いずれも枝番の書証を含む。)によれば,次の事実が認められる。 ア出生時(平成5年11月4日)低体重児で呼吸器系の障害があったため,出生後もH病院に入院して治療を受け,平成6年5月31日,退院した(退院時の体重は3230g,その間の入院日数は210日)。同入院中,原告B及び原告Cは,親子の触れ合いや母乳保育の必要から,共に,あるいは,単独で,少なくとも週に3回以上の割合で,同病院訪れ,原告Aと面会した。 退院後は,燕下障害があり,ミルクを飲むのにも時間がかかり,ときにはチノアーゼの症状が出ることもあった。経過月数の割には体重が増えず,下肢が緊張して伸びているために座ることや這うこともできなかった。 イ原告B及び原告Cは,平成7年7月ころ,原告Aに脳性麻痺による発育遅滞があることを知り,その療育のため,同月から同年11月までと平成8年4月から平成9年2月までの各間,土,日曜日及び祝日を除いて毎日,原告AをJに通園させた(計16か月間)。 しかし,原告B及び原告Cは,若草園の療育が自主訓練を主とし園児の障害の特性に応じた個別的な療育を実践しないとしてこれに不満を感じ,原告Aを,平成9年4月から平成10年3月までの1年間,土,日曜日及び祝日を除く毎日,呉市所在のLに通園させ,それ以降現在に至るまで1か月に1回の割合で,同Lで 育を実践しないとしてこれに不満を感じ,原告Aを,平成9年4月から平成10年3月までの1年間,土,日曜日及び祝日を除く毎日,呉市所在のLに通園させ,それ以降現在に至るまで1か月に1回の割合で,同Lでポーテージ(発達遅滞乳幼児のための早期教育プログラム)を受けさせている。 ウ平成10年4月,自宅近くの公立小学校に入学し,障害児学級において,車椅子を利用し,介助員による介助を受けながら学習している。 エ Jを退園後も引き続きJの園長に整形外科の診察を受けていたが,原告Aがその診察で足の痛みを訴えたものの,これについて同園長は医療的処置を施そうとはしなかった。原告Cは,原告Aの足の痛みが気にかかり,平成11年1月20日,かねてより良い診療をすると聞いていたI病院(大阪市所在)を受診させたところ,担当医から股関節亜脱臼と診断され,直ちに手術をして機能訓練をする必要があると言われたため,同日,同病院に入院させた。そして,同日から同年8月27日までの約7か月間,同病院に入院し(その間の入院日数は219日),下肢変形の矯正手術及び機能訓練を受けた。同入院中の7月5日(満5歳),四肢体幹機能障害について症状固定の診断を受けた。 上記治療により,歩行器等の補助器具を利用すれば多少は歩けるようになり,同病院を退院後,平成14年3月まで3,4か月に1回の割合で,整形受診及び理学・作業療法のため同病院に通院した。 オ機能改善の訓練を受けるため,平成11年9月から平成13年5月までの間1か月に2回の割合でNに,同年9月から平成14年3月までの間1か月に2回の割合でKに,それぞれ通院した。 また,平成14年9月から同年11月の間に2回,P病院の整形科に通院した。 カ現在の障害としては,脳性麻痺による体幹機能障害があり,身体障害者(脳性麻痺による体幹機能障害2級)の それぞれ通院した。 また,平成14年9月から同年11月の間に2回,P病院の整形科に通院した。 カ現在の障害としては,脳性麻痺による体幹機能障害があり,身体障害者(脳性麻痺による体幹機能障害2級)の認定を受けている。具体的な身体障害は,次のとおりである。すなわち,左半身に強い緊張があり,寝ている姿勢から自力で起き上がったり座ったりすることはできない。移動も腹這いになった状態で右腕のみを使いわずかに這うことができる程度である。下肢が緊張により伸び切っているため自力歩行ができず,四輪歩行器等の補助器具を使用して多少の歩行が可能である。腕にも麻痺があり,特に左腕は伸び難く体に引きつけている状態のため,体を支えたり車椅子のホイールを回したりすることが困難である。左手の緊張が強く,作業をすることが困難である。排便及び入浴は全面介助を要する。 また,知的能力については,一応の言語能力があり自分の要求を相手に伝えたり,指示を聞いて理解することはある程度可能であるが,自己の関心事のみを中心に会話をしようとする傾向が強く,同じことを繰り返し発言するなどするため,同年齢の健常児と対等に会話をして交流をすることが困難である。 (2) 治療費 148万円前記(1)認定の事実及び証拠(甲54及び66)によれば,出生時である平成5年11月4日から症状固定日である平成11年7月5日までの治療及びその後のリハビリ等のために支出を余儀なくされた治療費の総額は,上記金額を下らないと認められる。 (3)ア入院諸雑費 64万3500円前記(1)認定の事実によれば,原告Aの入院期間の合計は429日であり,入院雑費は,入院1日につき1500円が相当と認める。 1500円×429日=64万3500円イ通院交通費 31万4580円(ア) 原告B及び原告Cの 告Aの入院期間の合計は429日であり,入院雑費は,入院1日につき1500円が相当と認める。 1500円×429日=64万3500円イ通院交通費 31万4580円(ア) 原告B及び原告CのH病院への面会のための交通費前記認定の事実,すなわち,H病院での入院は約7か月間に及んだこと,その間の上記面会の割合は週3回以上であったこと及び証拠(甲54)を総合すると,上記交通費の合計は11万8080円を下るものではなかったと推認され,親子の触れ合いや母乳保育の必要性にかんがみれば,上記交通費は,これを損害と認めるのが相当である。 (イ) Lへの通園費(平成9年4月から平成10年3月までの1年間の分)前記認定事実からすると,上記通園費は,原告Aの心身の発育を促すためのものであったと推認されるから,これを損害と認めるのが相当である。そして,弁論の全趣旨(原告らの平成16年11月14日付け上申書)によれば,自宅からLまでの往復距離が約50キロメートルであること,通園回数は300回を下るものではないこと,車両の燃費は1リットルあたり約10キロメートルで,ガソリン代は1リットルあたり約100円であったことが認められ,この事実からすれば,上記通園費は15万円を下るものではなかったと認められる。 (ウ) 原告B及び原告CのI病院への面会のための交通費原告らは,上記面会のために支出した交通費も損害であると主張するが,股関節亜脱臼についての手術やその後の機能訓練は,広島市に所在の病院でこれを受けることは可能であり,上記I病院でこれを受けなければならなかった事情は窺われない。したがって,上記交通費が損害であると認めることはできない。 (エ) Lへの通園費(平成10年4月以降の分)原告Aが同月以降ポーテージを受けるため,1か月1回の割合で,Lに通園したこ 窺われない。したがって,上記交通費が損害であると認めることはできない。 (エ) Lへの通園費(平成10年4月以降の分)原告Aが同月以降ポーテージを受けるため,1か月1回の割合で,Lに通園したこと,その1回あたりの交通費は前記(イ)認定のとおりであることからすれば,その合計は4万6500円を下らないことが認められ,これは損害と認めるのが相当である。 (オ) I病院,Pへの検診・訓練のための交通費同交通費も,前記(ウ)に説示したと同様の理由から,損害と認めることはできない。 ウ装具代など福祉機器 68万2242円原告Aの障害のため,以下の福祉機器の購入及び出費を要したことが認められる。 なお,原告Aが3歳になるまでに使用したバギー及び教育機器は,健常児も使用する商品であると認められるから,これらに対する出費は脳性麻痺に起因する損害とはいえない。 (ア) 補助椅子 2万6000円(イ) チャイルドシート 1万円(ウ) バギー 15万4394円(エ) 箱椅子作成材料代 2万円(オ) 歩行器 3万8316円(カ) 立位保持具 4万4150円(キ) 下肢装具 19万9792円(ク) 車椅子 2万6150円(ケ) 机作成材料代 5000円(コ) 滑り止めマット・シート 1万2940円(サ) 自立食器 1万1500円(シ) 呼吸器 4万円(ス) 吸入器 8万2000円(セ) ヘッドギア 1万2000円 1万1500円(シ) 呼吸器 4万円(ス) 吸入器 8万2000円(セ) ヘッドギア 1万2000円エ母乳冷凍バッグ 30万円証拠(甲52,54,56)及び弁論の全趣旨(特に平成16年11月30日付け上申書)によれば,原告Cは,原告AがH病院に入院していた期間のうち約6か月間,病院側からの指導により母乳を冷凍バッグにして届けていたこと,NICUに収容される未熟児の場合には母乳を冷凍して保存,授乳するのが一般であること,その価格は,100mlで50枚入りが2000円(消費税を含むと2100円)であること,1日あたり少なくとも40枚を使用していたことが認められ,この事実によれば,これに要する費用は30万円を下らないし,これは損害と認めるのが相当である。 オ車両購入費 121万8640円証拠(甲52,55の(2))によれば,原告らは,原告AをL等に送迎するため,原告Aの乗り降りやバギーの積み込みに便利なワゴン型自動車(243万7281円)を購入したことが認められるところ,当該自動車は他の家族の用にも供されることを考慮すると,損害としては購入金額の5割である121万8640円と認めるのが相当である。 なお,原告らは,原告Aの通園等のため,長男Qを保育園に送迎するための交通手段として新たに小型車(56万8140円)を購入せざるを得ず,この購入費用も本件事故による損害である旨主張するが,同小型車は,原告Aの用に供するために購入した物とはいえないから,損害として認めることはできない。 (4) 傷害に対する慰謝料 400万円原告Aの症状固定時である平成11年7月5日までの入院期間は376日,通院通園は28か月であること(この通院通園は脳性麻 ら,損害として認めることはできない。 (4) 傷害に対する慰謝料 400万円原告Aの症状固定時である平成11年7月5日までの入院期間は376日,通院通園は28か月であること(この通院通園は脳性麻痺による障害を改善するために必要であったといえる。)等の事情を考慮すると,上記慰謝料は,400万円と認めるのが相当である。 (5) 逸失利益 3749万9121円前記(1)カに認定の事実,特に,原告Aは,下肢の強い麻痺により,補助器具なしでの自力歩行,寝ている状態から自力で起き上がったり座ったりすることができないこと,精神遅滞もあることに加えて,平成11年7月5日症状固定の診断がなされたこと等の点にかんがみれば,原告Aは,通常であれば就労可能な満18歳から満67歳までの49年間,労働能力を100%喪失した状態にあるものと推認される。そして,上記障害がなければ,上記期間年収496万7100円(賃金センサス平成11年産業計全労働者平均賃金)を取得することができたものと推認されるから,ライプニッツ方式により(ライプニッツ係数は67年間の係数から18年間の係数を控除すると7.5495となる。)中間利息を控除して逸失利益のE医師の前記過失行為時の現価を求めると,その額は次のとおりとなる。 496万7100円×7.5495=3749万9121円(6)ア介護費用 4750万5407円前記(1)に認定の事実によれば,原告Aは,将来にわたり,身体の移動,摂食,入浴,排便等の生活の全般にわたって介護を必要とすることが推認され,平成5年の簡易生命表によれば0歳児の平均余命は82年と推認されるから,原告Aの介護期間は82年間とするのが相当である。 そして,上記のような障害があるものの,他方,歩行器による移動はできること,右手及び右腕の動作は可能であること 児の平均余命は82年と推認されるから,原告Aの介護期間は82年間とするのが相当である。 そして,上記のような障害があるものの,他方,歩行器による移動はできること,右手及び右腕の動作は可能であること,知的能力や言語能力は一応あること,したがって,常時の監視までは要しないこと等の点を併せ考慮すると,介護費用は,原告Aの出生から原告Cが67歳になるまでの36年間は原告Cが介護にあたるものとして1日6000円の,それ以降,上記余命年齢までの46年間は,職業介護人による介護を受ける必要があるものとして,1日1万円の費用の支出を余儀なくされるものと推認され,これを要介護のための損害と認めるのが相当である。 この点につき,原告らは,原告Cが慢性C型肝炎に罹患していること等から原告Aが将来にわたり近親者による介護を受けられる保障はないとして,職業介護人による介護が必要であり,この費用をもって損害が認定されるべきである旨主張する。 しかし,原告Cが慢性C型肝炎のため日常生活に支障を来す程度の症状を呈していることを窺わせる証拠はないこと,前示のとおり原告Aに対する介護の負担は寝たきり状態にある者の介護に比して格段に軽いものであること等の点からすれば,原告らの上記主張は採用できない。 したがって,介護費用は,以下のとおり,4750万5407円となる。 (ア) 6000円×365日×16.5468(36年に対応するライプニッツ係数)=3623万7492円(イ) 1万円×365日×3.0871(82年間に対応するライプニッツ係数19.6339-16.5468)=1126万7915円(ア)+(イ)=4750万5407円イ将来の介護用装具及び器具等の購入費(甲59ないし61,いずれも枝番を含む。) 515万6543円(ア) 原告Aは,将来にわたり,以下の装具等の購 915円(ア)+(イ)=4750万5407円イ将来の介護用装具及び器具等の購入費(甲59ないし61,いずれも枝番を含む。) 515万6543円(ア) 原告Aは,将来にわたり,以下の装具等の購入を要し,支出を要することが認められる。 なお,原告らは,手動車椅子,入浴用車椅子,介護用寝具についても,将来の介護のために必要であると主張するが,他の介護用器具で代替が可能であると考えられるから,本件不法行為と相当因果関係が認めることができない。 ①バギー等(11歳から20歳まで使用,耐久年数2年)11万3000円・リラックスバギー 8万2000円・雨コート 8000円・日よけ 1万円・サイドカバー 1万円・レッグレスト 3000円②補助椅子等(耐久年数4年) 15万1500円・補助椅子(ハイグレード中)13万4000円・腰部パッド 3000円・しきりパッド 4500円・体幹パッド 7000円・骨盤パッド 3000円③カーシート(耐久年数4年) 8万2000円④立位保持具(耐久年数4年) 11万円⑤電動車椅子(耐久年数4年) 40万円⑥リクライニング車椅子(耐久年数4年) 21万円⑦車椅子用クッション(耐久年数4年) 1万9000円⑧歩行補助器(耐久年数4年) 5万3000円⑨呼吸器(耐久年数4年) 4万9700円⑩吸引器(耐久年数4年) 9万8000円⑪介護ベッド(耐久年数8年) ) 5万3000円⑨呼吸器(耐久年数4年) 4万9700円⑩吸引器(耐久年数4年) 9万8000円⑪介護ベッド(耐久年数8年) 43万5500円⑫テーブル(耐久年数8年) 19万円⑬滑り止めパッド・シート(耐久年数8年) 1万2900円⑭自立食器(耐久年数8年) 1万0100円(イ) ①については,本件口頭弁論終結時(原告Aは11歳)を基準とし,11歳から20歳までの9年間に,計5回の交換が必要であり,その費用をライプニッツ係数を用いて計算すると,以下のとおり,27万4341円となる。 11万3000円×(0.5846+0.5303+0.4810+0.4362+0.3957)=27万4341円②ないし⑩については,11歳から平均余命82歳までの71年間に,計18回の交換が必要であり,その費用をライプニッツ方式により中間利息を控除して計算すると,以下のとおり,374万4150円となる。 117万3200円×(0.5846+0.4810+0.3957+0.3255+0.2678+0.2203+0.1812+0.1419+0.1227+0.1009+0.0830+0.0683+0.0562+0.0462+0. 0380+0.0313+0.0257+0.0211)=374万4150円⑪ないし⑭については,11歳から平均余命82歳までの71年間に,計9回の交換が必要であり,その費用をライプニッツ方式により中間利息を控除して計算すると,以下のとおり,113万8052円となる。 64万8500円×(0.5846+0.3957+0.2678+0.1812+0.1227+0.0830+0.0562+0.0380+0.0257)=113万8052円(ウ 3万8052円となる。 64万8500円×(0.5846+0.3957+0.2678+0.1812+0.1227+0.0830+0.0562+0.0380+0.0257)=113万8052円(ウ) よって,将来の装具・器具等の購入費用は,515万6543円となる。 ウ車両改造費 58万2751円証拠(甲54,60)によれば,将来,原告Aを乗せる自動車について障害者用の助手席スライドアップシート等の改造をする必要があること,その1回分の費用は39万8000円であることが認められる。そして,自動車の通常の耐用年数は10年と推認され,11歳から平均余命年齢82歳までの71年間で7回の交換が必要であるから,ライプニッツ方式により中間利息を控除して計算すると,上記改造による損害は,58万2751円となる。 39万8000円×(0.5846+0.3589+0.2203+0.1352+0.0830+0.0509+0.0313)=58万2751円エ家屋改造費 213万9838円証拠(甲61)によれば,原告Aの障害のため,今後原告らの居住する住宅において,トイレ(背もたれ,アームレスト付きのもの設置,引き戸クローザー付きのもの設置),風呂場(バリアフリー設計で段差解消三枚引き戸設置,リフト設置),キッチン(車椅子対応),洗面台(車椅子対応)の改造をする必要があること,そのための費用として384万3100円の支出を余儀なくされることが認められ,これは損害と認めるのが相当である。 原告らは,エレベーターの設置やスロープ,廊下幅等の改造も必要である旨主張するが,原告Aは1階に居住して生活することが可能であるから,エレベーターの設置が必要であるとはいえず,また,スロープ等の改造に要する費用を明らかにする証拠がないから,原告らの上記主張は採 る旨主張するが,原告Aは1階に居住して生活することが可能であるから,エレベーターの設置が必要であるとはいえず,また,スロープ等の改造に要する費用を明らかにする証拠がないから,原告らの上記主張は採用することができない。 上記の家屋改造は本件口頭弁論終結時から1年以内には着工完成するものと見込まれるから,ライプニッツ方式により中間利息を控除して不法行為時の現価を求めると,213万9838円となる。 384万3100円×0.5568(12年に対応するライプニッツ係数)=213万9838円(7) 後遺慰謝料 2100万円前記(1)に認定のとおり,原告Aは,心身の障害を負い,その改善の見込みはなく,このような後遺障害の内容及び程度に照らすと,後遺障害に対する慰謝料は上記額とするのが相当である。 (8) 弁護士費用 400万円以上の損害合計は1億2252万2622円であり,この認容額,本件訴訟の事案の内容等を総合考慮すると,損害としての弁護士費用は上記額とするのが相当である。 (9) よって,原告Aの損害合計は,1億2652万2622円となる。 5 原告Bの損害について(1) 慰謝料 100万円原告Bは,原告Aの父であり,原告Aが重度の後遺障害を負わされたことにより子の死亡にも比肩するような精神的苦痛を被ったものといえるから,これによる慰謝料を損害として賠償請求できるところ,その額は上記額とするのが相当である。 (2) 長男Qの保育料 160万円証拠(甲52,54,65)によれば,原告Cは,原告Aの兄のQ(平成4年1月12日生)を養育監護していたが,原告Aの入通院の付添いや介護等をしなければならなくなったため,原告Bは,Qを平成5年11月(1歳10か月)から平成8年3月(4歳2か月)までの29か月間,保育園に通園させなければ 育監護していたが,原告Aの入通院の付添いや介護等をしなければならなくなったため,原告Bは,Qを平成5年11月(1歳10か月)から平成8年3月(4歳2か月)までの29か月間,保育園に通園させなければならなくなり,上記額の金員の支出を余儀なくされたことが認められ,この支出は本件不法行為による損害というべきである。 (3) 弁護士費用 20万円上記認容額等にかんがみると,損害としての弁護士費用は上記額とするのが相当である。 (4) よって,原告Bの損害は280万円となる。 6 原告Cの損害について(1) 慰謝料 200万円原告Cは前記E医師の不法行為により子宮を摘出せざるを得なくなり,出産することが不能となった上,約1か月間にわたり入院加療を余儀なくされこと等の点に照らせば,その精神的苦痛に対する慰謝料は,上記額とするのが相当である。 (2) 弁護士費用 20万円上記認容額等にかんがみると,損害としての弁護士費用は上記額とするのが相当である。 (3) よって,原告Cの損害合計は,220万円となる。 7 結論以上によれば,原告らの被告Dに対する請求は,主文第1ないし3項の限度で理由があり,その余は理由がなく,原告Cの被告Wに対する請求は理由がないから,主文のとおり判決する。 平成16年12月21日広島地方裁判所民事第3部裁判長裁判官能勢顯男裁判官田中一隆裁判官財津陽子
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