主文 被告人を懲役11年に処する。 未決勾留日数のうち260日を刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は第1(平成14年3月29日付起訴状)平成14年3月9日午前4時35分ころ,名古屋市a区bⅱ番地所在のAほか1名が現に住居に使用している居宅兼車庫(鉄筋コンクリート造陸屋根4階建,床面積合計約251.55平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,上記建物1階ガレージ内北側付近において,同所にあったほうきにライターで点火して火を放ち,同建物を焼損しようとしたが,通報で駆けつけた消防署員により消し止められたため,上記ガレージ内に設置されていた木製棚,水道ポンプ等を焼損したにとどまり,その目的を遂げなかった。 第2(平成14年4月25日付起訴状)Bと共謀の上,金品窃取の目的で,平成13年11月9日,愛知県春日井市cⅱ丁目ⅲのⅳC方に,その1階南側掃き出し窓から侵入し,同所において,同人ほか3名所有に係る現金約43万7000円及び指輪約16個ほか約25点(時価合計約110万5000円相当)を窃取した。 第3(平成14年5月31日付起訴状)Bと共謀の上,金品窃取の目的で,平成14年3月6日,愛知県春日井市dⅱ丁目ⅲのⅳD方に,その1階掃き出し窓から侵入し,同所において,同人ほか1名所有又は管理に係る現金約42万4000円及びハンドバッグ1個ほか20点(時価合計約54万500円相当)を窃取した。 第4(平成14年6月20日付起訴状第1,第2)金品窃取の目的で,平成13年6月27日午前9時45分ころ,愛知県春日井市eⅱ丁目ⅲ番地のⅳE方に,その1階西側居間南側掃き出し窓から侵入し,同所において,同人ほか1名所有の腕時計3個(時価合計約2万5000円相当)を窃取し,同日午前10時10分ころ,同人ほか2名が現に住居に使 ⅲ番地のⅳE方に,その1階西側居間南側掃き出し窓から侵入し,同所において,同人ほか1名所有の腕時計3個(時価合計約2万5000円相当)を窃取し,同日午前10時10分ころ,同人ほか2名が現に住居に使用している同人方木造瓦葺2階建居宅1棟(床面積合計約143.01平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,同建物1階6畳和室内において,同所押入れ内の衣類にライターで点火して放火し,その火を上記衣類等を介して柱等に燃え移らせ,よって,同人ほか2名が現に住居に使用する同和室等の壁,柱等(焼損面積合計約23.20平方メートル)を焼損した。 第5(平成14年7月11日付起訴状第1)Bと共謀の上,金品窃取の目的で,平成14年2月15日,岐阜県可児市fⅱ丁目ⅲ番地F方に,その1階西側和室南側掃き出し窓から侵入し,同所において,同人ほか1名所有の現金約27万5000円及び金庫1個ほか4点(時価合計約2万5600円相当)を窃取した。 第6(平成14年7月11日付起訴状第2)Bと共謀の上,金品窃取の目的で,平成14年3月4日,愛知県小牧市gⅱ丁目ⅲ番地のⅳG方に,その1階北側掃き出し窓から侵入し,同所において,同人ほか1名所有の現金約60万円,アメリカドル2156ドル及び腕時計9個ほか72点(時価合計約37万1700円相当)を窃取した。 第7(平成14年8月30日付起訴状第1)Bと共謀の上,金品窃取の目的で,平成14年3月1日,愛知県春日井市hⅱ丁目ⅲ番地のⅳH方に,その1階和室南側掃き出し窓から侵入し,同所において,同人ほか1名所有のカメラ1台ほか約51点(時価合計約19万5000円相当)を窃取した。 第8(平成14年8月30日付起訴状第2)Bと共謀の上,金品窃取の目的で,第7記載の日に,愛知県春日井市hⅱ丁目ⅲ番地のⅳI方 1台ほか約51点(時価合計約19万5000円相当)を窃取した。 第8(平成14年8月30日付起訴状第2)Bと共謀の上,金品窃取の目的で,第7記載の日に,愛知県春日井市hⅱ丁目ⅲ番地のⅳI方に,その1階居間南側掃き出し窓から侵入し,同所において,たんすの引き出しを開けるなどして金品を物色中,家人が帰宅したことを感知して逃走したため,その目的を遂げなかった。 第9(平成14年8月30日付起訴状第3)Bと共謀の上,金品窃取の目的で,第7記載の日に,愛知県春日井市jⅱ丁目ⅲ番地のⅳJ方に,その1階和室南側掃き出し窓から侵入し,同所において,同人ほか2名所有の現金約8万5000円及び懐中時計1個ほか65点(時価合計約218万4000円相当)を窃取した。 第10(平成14年10月8日付起訴状)金品窃取の目的で,平成13年1月16日午前11時ころ,愛知県西春日井郡ijⅱ番地K方に,その1階居間東側掃き出し窓から侵入し,同所において,たんすの引き出しを開けるなどして金品を物色したが,金品を発見することができなかったため,その目的を遂げなかったことから,同日午前11時10分ころ,同人ほか3名が現に住居に使用している同人方軽量鉄骨造スレート葺2階建居宅1棟(床面積合計約174.58平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,同建物1階8畳和室内において,同所押入れ内の衣類にライターで点火して放火し,その火を上記衣類等を介して柱等に燃え移らせ,よって,同人ほか3名が現に住居に使用する同和室等の壁,柱等(焼損面積合計約53.24平方メートル)を焼損した。 第11(平成14年10月24日付起訴状第1)L及びMと共謀の上,平成11年9月17日ころから同月19日ころまでの間,愛知県犬山市kⅱ番地有限会社N資材置場において,同社代表取締 焼損した。 第11(平成14年10月24日付起訴状第1)L及びMと共謀の上,平成11年9月17日ころから同月19日ころまでの間,愛知県犬山市kⅱ番地有限会社N資材置場において,同社代表取締役O管理に係る足場板1組(時価約1万円相当)を窃取した。 第12(平成14年10月24日付起訴状第2)前記L及びMと共謀の上,第11記載の日ころ,愛知県犬山市lⅱ丁目ⅲ番地P方北側建築現場において,有限会社Q代表取締役R管理に係るパワーショベル1台(時価約100万円相当)を窃取した。 第13(平成14年10月24日付起訴状第3)前記Lと共謀の上,金品窃取の目的で,平成12年10月14日ころ,有限会社S代表取締役Tが看守する名古屋市m区nⅱ丁目ⅲ番地「U」店舗内に,その西側出入口から侵入し,同所において,同人管理に係る現金約30万円及びゲーム機7台ほか約1329点(時価合計約479万5920円相当)を窃取した。 第14(平成14年11月21日付起訴状)金品窃取の目的で,平成12年5月11日午前4時35分ころ,V株式会社が所有し,同社代表取締役Wが看守する岐阜県多治見市oⅱ丁目ⅲ番地所在の株式会社X兼株式会社Y事務所内に,その西側腰高窓から侵入し,同所において,事務机の引出しを開けるなどして金品を物色したが,金品を発見することができなかったため,その目的を遂げなかったことから,同日午前4時50分ころ,上記事務所に放火してこれを焼損しようと企て,同所において,同所東側に設置された木製本棚内の紙類にライターで点火して放火し,その火を上記紙類等を介して天井等に燃え移らせ,よって,現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない軽量鉄骨造鋼板葺平屋建同事務所(床面積約26.44平方メートル)を全焼させた。 第15(平成14年12月26日付起訴状) て天井等に燃え移らせ,よって,現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない軽量鉄骨造鋼板葺平屋建同事務所(床面積約26.44平方メートル)を全焼させた。 第15(平成14年12月26日付起訴状)金品窃取の目的で,平成13年6月10日午前零時20分ころ,株式会社Z会が所有し,甲春日井店店長乙が看守する愛知県春日井市pⅱ丁目ⅲ番地のⅳ所在の上記店舗内に,その北側出入口から侵入し,同所において,上記乙所有又は管理に係る手芸用ワッペン類約4801個ほか約1047点(時価合計約34万3910円相当)を窃取した上,上記犯行の発覚を免れる目的で,同日午前零時50分ころ,前記店舗(床面積約371.05平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,同所において,同所南東側の棚に陳列されたクッション素材にライターで点火して放火し,その火を上記クッション素材を介して上部排煙窓額縁に燃え移らせ,よって,現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない鉄骨造折板葺平屋建店舗(焼損面積約4.24平方メートル)を焼損させた。 (証拠)(省略)(法令の適用)罰条第1 刑法112条,108条第2,第3,第5ないし第7,第9住居侵入の点は刑法60条,130条前段,窃盗の点は同法60条,235条第4 住居侵入の点は刑法130条前段,窃盗の点は同法235条,現住建造物等放火の点は同法108条第8 住居侵入の点は刑法60条,130条前段,窃盗未遂の点は同法60条,243条,235条第10 住居侵入の点は刑法130条前段,窃盗未遂の点は同法243条,235条,現住建造物等放火の点は同法108条第11,第12 刑法60条,235条第13 第10 住居侵入の点は刑法130条前段,窃盗未遂の点は同法243条,235条,現住建造物等放火の点は同法108条第11,第12 刑法60条,235条第13 建造物侵入の点は刑法60条,130条前段,窃盗の点は同法60条,235条第14 建造物侵入の点は,刑法130条前段,窃盗未遂の点は同法243条,235条,非現住建造物等放火の点は同法109条1項第15 建造物侵入の点は,刑法130条前段,窃盗の点は同法235条,非現住建造物等放火の点は同法109条1項科刑上の一罪の処理第2,第3,第5ないし第7,第9いずれも刑法54条1項後段,10条(重い窃盗罪の刑で処断する。)第4 刑法54条1項後段,10条(住居侵入と窃盗及び現住建造物等放火との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,結局以上を一罪として最も重い現住建造物等放火罪の刑で処断する。)第8 刑法54条1項後段,10条(重い窃盗未遂罪の刑で処断する。)第10 刑法54条1項後段,10条(住居侵入と窃盗未遂及び現住建造物等放火との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,結局以上を一罪として最も重い現住建造物等放火罪の刑で処断する。)第13 刑法54条1項後段,10条(重い窃盗罪の刑で処断する。)第14 刑法54条1項後段,10条(建造物侵入と窃盗未遂及び非現住建造物等放火との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,結局以上を一罪として最も重い非現住建造物等放火罪の刑で処断する。)第15 刑法54条1項後段,10条(建造物侵 び非現住建造物等放火との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,結局以上を一罪として最も重い非現住建造物等放火罪の刑で処断する。)第15 刑法54条1項後段,10条(建造物侵入と窃盗及び非現住建造物等放火との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,結局以上を一罪として最も重い非現住建造物等放火罪の刑で処断する。)刑種の選択第1,第4,第10 いずれも有期懲役刑併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条,14条(刑及び犯情の最も重い第10の罪の刑に法定の加重をする。)未決勾留日数の算入刑法21条(量刑の理由) 1 本件は,被告人が単独で行った,住居侵入・窃盗(未遂)・現住建造物等放火2件,建造物侵入・窃盗(未遂)・非現住建造物等放火2件,現住建造物等放火未遂1件,共犯者Bとともに行った住居侵入・窃盗(未遂)7件及び他の共犯者とともに行った窃盗2件,建造物侵入・窃盗1件という事案である。 2 まず,放火あるいはこれを含む犯行についてみるに,第10の犯行は,放火により被害建物の床,天井を約53平方メートル焼損しており,1階部分がほぼ全焼したため,建物が取り壊されるに至り,火災保険金額が合計5800万円余りに上る損害を生じている。また,第4の犯行も,放火により壁,柱等約23平方メートルを焼損し,火災保険金額も4700万円余りに上っているのであって,いずれも結果が重大である。各犯行の被害者らは借家住まいや公団での生活を余儀なくされており,思い出の品々を焼失させるなど,物心両面で被害者らが被った損害も大きい。被害者らの被害感情が極めて強いのも当然である。 次に,第1の犯行は,家人が寝静まった時刻に敢行されたものであり,しかも建物内には,介護が必要で自力で避難できない者が就寝していた た損害も大きい。被害者らの被害感情が極めて強いのも当然である。 次に,第1の犯行は,家人が寝静まった時刻に敢行されたものであり,しかも建物内には,介護が必要で自力で避難できない者が就寝していたのであるから,一歩間違えば同人らを死に至らしめる危険もあった。また,建物の構造により放火は未遂に終わったとはいえ,犯行現場が住宅密集地であったことを考えると,他の住居への延焼の可能性も十分にあったのであり,極めて危険な犯行である。しかしながら,被告人は,これらの事情を何ら考慮することなく,犯行に及んでいるのであって,犯情が悪質である。また,家屋の修理見積額も約360万円に上っている。 第14の犯行は,放火の結果事務所(床面積26.44平方メートル)が全焼したため,事務所を新築しなければならなくなり,その費用に約800万円を要している。第15の犯行もまた,窃盗の被害額も34万余りと多額である上,建物の火災保険金額は2900万円余りに上っており,いずれも結果が重大である。 なお,以上の一連の犯行により周辺住民に与えた不安感も軽視できない。 被告人がこれらの放火を犯した動機をみても,盗みに入ったが,現金がなかったり,盗むべき金品がなかった腹いせとか(第4,第10,第14),窃盗を行った証拠を隠滅するため(第15),または,遊興先のホステスに愚痴を言われたことからむしゃくしゃした気分を晴らすため(第1)というものであり,いずれも身勝手極まりないものであり,当然のことながら,被害者らに落ち度は全くない。それにもかかわらず,被告人は,他人の生命や財産を奪う可能性があることを顧慮することなく,被害者が困って騒ぎが大きくなればよいなどと考えて犯行に及んだのであって,各犯行の動機,経緯において酌量の余地はない。 3 次に窃盗の事案についてみるに,Bととも 可能性があることを顧慮することなく,被害者が困って騒ぎが大きくなればよいなどと考えて犯行に及んだのであって,各犯行の動機,経緯において酌量の余地はない。 3 次に窃盗の事案についてみるに,Bとともに行った窃盗(第2,第3,第5ないし第9)は,被害者宅のガラス窓を割って居宅に侵入し犯行に及んでいるのであって,犯行態様が悪い。また,電話番号案内で電話番号を調べるなどして,不在を確認してから盗みに入っており,犯行は計画的である。窃盗の方法などは被告人が自ら考案したものであることや,被告人が被害品を売却した金品の7割を取得したという分配状況からしても,被告人が窃盗の主謀者である。被告人は,遊ぶ金欲しさに犯行を重ねたものであって,動機に酌むべき事情はない。窃取した金品は,現金合計182万円余り,アメリカドル2156ドル,被害品の合計額は約442万円余りと相当多額であって,結果も重大である。被告人らが犯したこれら窃盗は,まさに常習的・職業的犯行である。 また,他の共犯者とともに行った窃盗についても,第11,第12は,ゴミを捨てる穴を掘るためのパワーショベルがほしいという理由で犯行に及んだものであって,動機に酌むべき事情はない。この犯行も被告人が提案したものであり,共犯者に報酬を与えていない点からしても,被告人が主謀者である。また,自己が使用した後に,他人に貸すなどして利益を得ている点もよくない。第13も,深夜,店舗に侵入して,商品の多くを持ち去ったものであるが,2度も下見に行くなどしていて,計画的犯行である。被害品の数量が莫大であって,被害額も480万円余りに上っており,結果もまた重大である。 4 被告人は,以上のとおり常習的に窃盗や放火の犯行を繰り返していたものと認められ,規範意識が欠如していたといわざるを得ない。窃盗については,犯行に及 万円余りに上っており,結果もまた重大である。 4 被告人は,以上のとおり常習的に窃盗や放火の犯行を繰り返していたものと認められ,規範意識が欠如していたといわざるを得ない。窃盗については,犯行に及ぶ中で,共犯者を次々と犯罪に引き入れている点の責任も重い。そして,これら一連の犯行の被害額及び損害額は合計約1億5000万円と極めて高額であって,被害感情も強い。 5 以上からすると,被告人の刑事責任は非常に重い。 6 一方,被告人は,すべての罪を認め,放火及び窃盗の各被害者に対して謝罪の手紙を書くなど反省していること,第10,第14及び第15の罪については自首が成立すること,窃盗の被害品が一部発見領置され,その一部は被害者に返還されていること,放火については,第1の犯行以外は人が現在していない建物に放火したものであること,第3及び第5の被害者に各2万円の慰謝料を,第14の被害者に10万円の見舞金を支払ったこと,これまで前科前歴がないこと,被告人が心筋梗塞等を患っていること,被告人の妻が公判廷において被告人の更生に助力する旨述べていることなどの事情もある。 7 そこで,以上一切の諸事情を総合考慮して,主文のとおり判決することとする。 (求刑-懲役13年)平成15年4月17日名古屋地方裁判所刑事第3部裁判長裁判官片山俊雄裁判官岩井隆義裁判官石井寛
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