【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事 実 控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。被控訴人は控訴人 に対
主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。被控訴人は控訴人に対し、原判決添附第二物件目録記載の建物およびその他の物件を引渡し、かつ秦野電報電話局電話番号△番の電話加入権につきその加入名義の書換手続をせよ。被控訴人は控訴人に対し金四十一万六千五百三十二円および昭和二十七年一月一日以降右建物および物件引渡にいたるまで一ケ月金三万五千二百四十四円の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決ならびに右給付請求(但し電話加入権の名義書換を除く)につき仮執行の宣言を求めた。 被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。 当事者双方事実上の陳述ならびに証拠に対する関係は、控訴代理人において控訴人は被控訴人が本件建物および物件を不法に占有することにより昭和二十六年一月一日から同年十二月三十一日まで一ケ月につき次のような内訳の賃料相当の損害を受けており、結局右期間に合計金四十一万六千五百三十二円の損害を受けたこととなるのである。 内訳建物金二万八千五百七十円機械金二千二百二十五円容器金三千七百六十二円金庫金百五十四円計金三万四千七百十一円また同じく昭和二十七年一月一日からは一ケ月につき次のような内訳の賃料相当の損害合計金三万五千二百四十四円の割合の損害を受けているのである。 内訳建物金二万九千百三円機械金二千二百二十五円容器金三千七百六十二円金庫金百五十四円計金三万五千二百四十四円したがつて控訴人 建物金二万九千百三円機械金二千二百二十五円容器金三千七百六十二円金庫金百五十四円計金三万五千二百四十四円したがつて控訴人が原審においてなした本件建物および物件の不法占有による損害金の主張は右のように訂正する。 被控訴代理人において控訴人主張の右事実は否認する。 とそれぞれ述べ、立証として新たに被控訴代理人において甲第二十六ないし第二十九号証を提出し、当審証人Aの証言および当審における被控訴人代表者B尋問の結果を援用し乙第三十号証の三、同第三十一号証は知らない。その他の当審において新たに提出せられた乙号各証の成立を認める。乙第二十八号証、同第三十九ないし第四十二号証を援用する。 控訴代理人において乙第二十八号証、同第二十九、第三十号証の各一ないし三、同第三十一ないし第三十三号証、同第三十四号証の一ないし五、同第三十五ないし第三十八号証の各一、二、同第三十九ないし第四十二号証、同第四十三号証の一、ないし三、同第四十四号証の一ないし六を提出し、当審証人C、D、E、F、G、Hの各証言および当審における控訴人本人I尋問の結果を援用し、当審において新たに提出せれた甲号各証の成立を認めたほか原判決事実の部分に記載してあるとおりであるから、ここにこれを引用する。 理由 第一本訴に対する判断(一) 被控訴人会社設立にいたるまでの本件営業用財産の権利関係(殊に持分の異動について) (1) Jが大安商店という商号を以て、味噌醤油の製造、販売を業とし、その営業用財産として原判決添附第一物件目録記載の家屋および同第二物件目録記載の第二以下第四の機械、容器、金庫等のほか、秦野電報電話局電話番号△番の電話加入権(以上の物件等を以下単に本件営業用財産と その営業用財産として原判決添附第一物件目録記載の家屋および同第二物件目録記載の第二以下第四の機械、容器、金庫等のほか、秦野電報電話局電話番号△番の電話加入権(以上の物件等を以下単に本件営業用財産という)を有していたことならびに右第一物件目録記載の建物の現状が原判決添附第二物件目録に表示してあるとおりであることは当事者間に争がないところである。 (2) 成立に争のない甲第六号証の一、同第九号証、同第二十六号証および原審証人K、L(第二回)当審証人Aの各証言、原審における被告本人A(第二回)、Mの各陳述により真正に成立したことを認めうる甲第十六号証ならびに原審証人L(第一回)、N、当審証人Aの各証言および原審における被告本人A、Mの各陳述を綜合すれば、Jは大正五年二月相模銀行頭取に就任することとなつたため、前記営業の経営を病身であつた長男Oを除き、次男P、三男Mをして当らしめることとなり、本件営業用財産の四分の一宛を右両人に贈与した事実を認めうる。 この点につき控訴人は反証として乙第一号証、同第四、五号証、同第十八号証等を提出するけれども、原審証人Q、G(後記信用しない部分を除く、)R(同上)の各証言および原審における被告M本人の陳述を綜合すれば、昭和二十五年十一、十二月当時Mは控訴人から文書偽造その他の犯罪があるとして告訴せられ、刑事上の取調を受けていて心の平静を失ひ告訴の取下を熱望するあまり当事者間において後記のような訴訟前の和解をなすこととなり、その結果乙第一号証の和解調書が作成せられ、その他の右乙号各証もこれに関して作成せられた事実明かであり(和解の効力については後記参照)右認定に反する原審証人R、G、当審証人Gの各証言および原審における控訴本人(第一回)の陳述はいずれも信用し難くその他右認定を覆えすに足る証拠なく、以上認定の成立 り(和解の効力については後記参照)右認定に反する原審証人R、G、当審証人Gの各証言および原審における控訴本人(第一回)の陳述はいずれも信用し難くその他右認定を覆えすに足る証拠なく、以上認定の成立事情に徴すれば右乙号各証を以て十分なる反証となし難いこというまでもない。その他前記認定に反する乙第九号証、同第十二、十三号証、同第二十一号証の一、二同第二十四、二十五号証、同第三十二、三十三号証、第三十七、三十八号証の各二の記載ならびに原審証人R、S、T、当審証人Dの各証言円および原審における被告本人F、控訴本人I(第一回)当審における控訴本人Iの各陳述は信用し難く、その他右認定を覆えすに足る証拠はない。 (J二分の一、P、M各四分の一の持分)(3) 昭和九年十一月十七日Jが死亡し、前記Oが家督相続をなした事実は当事者間に争がないところであるから、同人が本件営業用財産の二分の一の持分を取得した事実明かである。(O二分の一、P、M各四分の一の持分)(4) 前記甲第九号証、同第十六号証、成立に争のない同第十号証の二、同第十一、十二号証、同第二十八号証および原審証人L(第一回)、Kの各証言により真正に成立したことを認めうる甲第二号証ならびに原審証人L(第一回)、Nの各証書、原審における被告本人A(第一回)、Mの各陳述を綜合すれば、前記Oは病身で相続人がないため異母妹のAを養子としこれに家督相続をなさしめようとしたが、親族中異論をとなえる者があつたので、次弟Pの子である控訴人を養子として家督相続人と定めたが、これと均衡を得るため、次々弟Mの子Uを養子として入籍せしめ昭和十六年十一月五日本件営業用財産の自己持分の三分の一すなわち全体の六分の一の持分その他の財産を贈与した事実を、また前記甲第九号証、同第十一号証、同第十六号証、成立に争のない甲第一号証 入籍せしめ昭和十六年十一月五日本件営業用財産の自己持分の三分の一すなわち全体の六分の一の持分その他の財産を贈与した事実を、また前記甲第九号証、同第十一号証、同第十六号証、成立に争のない甲第一号証、同第六号証の二、同第二十九号証、原審証人L(第二回)K、当審証人Aの各証言により真正に成立したことを認めうる同第二十三号証、ならびに原審証人L(第一回)、の証言および原審における被告本人A(第一回)、Mの各陳述を綜合すれば、Oは昭和十七年八月十三日前記Aに本件営業用財産の自己の持分の三分の一すなわち全体の六分の一の持分を贈与した事実をそれぞれ認めうる。控訴人から反証の用に供する乙第一号証、同第四、五号証、同第十八号証の証拠力の薄弱であること前記のとおりであり、右認定に反する乙第十二号証、同第二十一号証の一、二同第三十二、三十三号証、同第三十七、三十八号証の各二の記載ならびに原審証人R当審証人Gの各証言および原審における控訴本人(第一回)被告本人F、当審における控訴本人の各陳述は信用し難く、原審鑑定人Vの鑑定の結果、乙第四十四号証の一ないし三は採用しない。その他控訴人の提出援用にかかる全証拠によるも右認定を覆えし難い。成立に争のない乙第十三号証、同第三十五、三十六号証の各二、原審証人Wの証言により真正に成立したことを認めうる同第十六号証等には当時Oが右に述べたような法律行為をなす意思能力を有してみなかつた旨の記載があり、原審証人W、C当審証人C、および当審における控訴本人等はいずれも右と同じような供述をするけれども、右各記載および各供述は、原審証人L(第一回)当審証人Aの各証言および原審における被告本人Mの陳述にくらべたやすく採用し難い。Oのなした前記各贈与は有効である。(O、U、A各六分の一、 P、M各四分の一の持分)(5) 昭和十 (第一回)当審証人Aの各証言および原審における被告本人Mの陳述にくらべたやすく採用し難い。Oのなした前記各贈与は有効である。(O、U、A各六分の一、 P、M各四分の一の持分)(5) 昭和十九年八月四日Oが死亡し、控訴人がその家督相続をなした事実は当事者間に争のないところであるから、同人は本件営業用財産の六分の一の持分を取得したことが明かである。(控訴人、U、A各六分の一、P、M各四分の一持分)(6) 原審における被告本人Fの陳述および弁論の全趣旨を綜合すれば昭和二十二年一月頃Pの妻であるFはPの本件営業用財産に対する持分全部の贈与を受けた事実を認めうる。控訴人が反証の用に供する乙第一号証、同第四、五号証、同第十八号証の採用し難いこと前に述べたとおりであり、右認定に反する当審証人Fの証言は信用し難く、その他右認定を覆えすに足る証拠はない。 (二) 被控訴人会社の設立と本件営業用財産の帰属昭和二十三年二月二十日前記大安商店の営業と同一の事業を目的とする被控訴人会社が設立せられた事実は当事者間に争のないところであり、右会社設立にあたり本件営業用財産につき持分を有する前記控訴人その他の人々が右財産を会社に出資しその株主となつた事案は成立に争のない甲第七号証および同第八号証の二ないし三により明かである。控訴人は右出資行為は要素に錯誤があり、詐欺にもとずいてなされたものであり、かつ公序良俗に反し無効であると主張するけれども、これ等の事実を認めるに足る証拠がないから、右抗弁はいずれも採用の限でない。本件営業用財産は会社設社とともに被控訴人に帰属したものである。 (三) 訴訟前の和解の成立とその効力昭和二十五年十二月八日小田原簡易裁判所において控訴人と被控訴人の代表者である代表取締役MおよびM個人との間に本件営業用財産が控訴人の権利 属したものである。 (三) 訴訟前の和解の成立とその効力昭和二十五年十二月八日小田原簡易裁判所において控訴人と被控訴人の代表者である代表取締役MおよびM個人との間に本件営業用財産が控訴人の権利に属することを被控訴人において認むる旨の訴訟前の和解が成立した事実は当事者間に争がないところである。被控訴人は右のような和解をなすことは営業の目的の範囲外であるから代表取締役であるMにはこれをなす権限がなく右和解は無効であると主張するけれども、会社がその営業用財産を処分し、これにつき和解をなすような行為は必ずしも会社の営業目的に反するものとはいい難いから代表取締役にこういう権限がないとはいい難い。しかしながら前記甲第七号証によれば被控訴人会社設立当時その資本金額百万円に対し、現物出資の対象である本件営業用財産の評価額は金七十三万円余<要旨>であること明かであるから、本件営業用財産は被控訴人の重要な財産であり、その後右和解当時までに著しく</要旨>財産関係の変化した事実の認められない以上右営業用財産が一拳にして無償で譲渡その他の原因により被控訴人より離脱するにおいては、特別の事情がない限り、被控訴人は全くその営業をすることができなくなるか、少くともその規模を大幅に縮少しなければならなくなること明かであつて、会社の運命に重大な影響を及ぼすこと明かである。したがつて右和解の衝に当つた控訴人、M等がかかる結果を生ずることを予見していたことは前記のような同人等と被控訴人との関係に徴し明瞭であるから、右和解は営業的活動の地位の承継を伴わないにもせよ商法第二百四十五条第一号にいわゆる営業の全部又は重要な一部の譲渡を目的とする法律行為と実質上差違なく、商法第三百四十三条に規定する株主総会の特別決議がなされたことについてはこれを認むべき証拠がないから、右和解 五条第一号にいわゆる営業の全部又は重要な一部の譲渡を目的とする法律行為と実質上差違なく、商法第三百四十三条に規定する株主総会の特別決議がなされたことについてはこれを認むべき証拠がないから、右和解は効力なく、本件営業用財産は依然として被控訴人の権利に属する。 (四) 控訴人の本件建物の所有権移転登記手続をなす義務以上に認定したように本件建物は本件営業用財産の一部として被控訴人の所有であるところ、右建物が控訴人名義に登記せられてあることは当事者間に争がないところであるから、控訴人は被控訴人に対し、本件建物の所有権移転登記手続をなす義務があるものといわねばならぬ。 第二反訴に対する判断控訴人の反訴請求は本件営業用財産が控訴人の権利に属することを前提とするところ、右財産が被控訴人の権利に属し控訴人のものでないこと前に認定したとおりであるから、反訴請求は既にこの点において失当である。 第三結論以上のように、被控訴人の本訴請求はこれを認容すべく、控訴人の反訴請求はこれを棄却すべきものである。 したがつてこれと同趣旨の原判決は正当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用につき民事訴訟法第八十九条を適用し、主文のように判決した。 (裁判長判事渡辺葆判事牧野威夫判事野本泰)
▼ クリックして全文を表示