平成26(行ウ)5 行政処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年5月25日 熊本地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-91298.txt

判決文本文94,852 文字)

主文 1 別紙処分一覧表1の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁が「処分日」欄記載の各年月日付けで「処分の名宛人」欄記載の者に対してした各保護変更決定処分を取り消す。 2 別紙処分一覧表2の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁が「処分日」 欄記載の各年月日付けで「処分の名宛人」欄記載の者に対してした各保護変更決定処分を取り消す。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 主文同旨第2 事案の概要等 1 事案の概要厚生労働大臣の定める生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号。以下「保護基準」という。)は、平成25年5月16日付け厚生労 働省告示第174号により改定(以下「本件改定」という。)された。 本件は、熊本県内に居住して生活保護法に基づく生活扶助費の支給を受けている原告らが、所轄の福祉事務所長が本件改定を受けてした、各原告の生活扶助費を減額する旨の保護変更決定(以下「本件各決定」という。)は、憲法25条1項、生活保護法3条及び8条に違反する違憲、違法なものである旨主張し て、被告らを相手に、その取消しを求める事案である。 2 関係法令の定め等⑴ 生活保護法ア基本原理生活保護法の解釈及び運用は、以下の基本原理に基づいてされなければ ならない(5条) 生活保護法は、憲法25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮する全ての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。(1条)国民は、法の定める要件を満たす限り、法による保護を無差別平等に 受けることができる。(2条)生活保護法により保障され を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。(1条)国民は、法の定める要件を満たす限り、法による保護を無差別平等に 受けることができる。(2条)生活保護法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。(3条)保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件と して行われる。(以下略)(4条)イ保護の原則保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基づいて開始するものとする。(7条)保護は、厚生労働大臣の定める基準(保護基準)により測定した要保 護者の需要を基とし、そのうち、要保護者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。(8条1項)前項の基準(保護基準)は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないも のでなければならない。(8条2項)保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効かつ適切に行うものとする。(9条)保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。ただし、これにより難いときは、個人を単位として定めることができる。 (10条) ウ保護の種類保護の種類には、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助がある。(11条1項)上記のうち、生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、衣 、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助がある。(11条1項)上記のうち、生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、衣食その他日常生活の需要を満たすために必 要な範囲内において、原則として金銭が支給されるというものである。 (12条、31条)エ不利益変更の禁止被保護者は、正当な理由がなければ、既に決定された保護を不利益に変更されることがない。(56条) ⑵ 生活扶助基準(乙A1、2、20、29)ア生活保護法8条1項の厚生労働大臣の定める基準(保護基準)は、扶助の種類別に別表を定めて基準を設定している(保護基準別表第1~第8)。 このうち、生活扶助基準(保護基準別表第1。以下「生活扶助基準」という。)は、基準生活費(第1章)と加算(第2章)とに大別されている。 イ居宅で生活する者の基準生活費は、市町村別に1級地-1から3級地-2までの6つに区分されて定められている級地(保護基準別表第9)及び年齢別に定められる第1類と、級地等及び世帯人員別に定められる第2類とに分けられ、原則として、世帯ごとに、個人単位で算出される第1類の額(以下「第1類費」という。)を合算したものと、世帯単位で算出される第 2類の額(以下「第2類費」)とを合計して算出される。第1類費は、食費、被服費等の個人単位の経費に、第2類費は、光熱費、家具什器等の世帯単位の経費にそれぞれ対応するものとされている。なお、生活扶助基準は、標準3人世帯(33歳、29歳、4歳)の基準額を基軸として、一定の指数で展開することにより他の世帯人員の基準額を算出している。 (乙A20) ウ加算は、基準生活費において配慮されていない個別的な特別需要を補填 するこ 基準額を基軸として、一定の指数で展開することにより他の世帯人員の基準額を算出している。 (乙A20) ウ加算は、基準生活費において配慮されていない個別的な特別需要を補填 することを目的として設けられており、障害があるため最低生活を営むためには健常者に比してより多くの費用を必要とする障害者や、通常以上の栄養補給を必要とする在宅患者、胎児のための栄養補給を必要とする妊婦等がその対象となっている。 3 前提事実(争いのない事実並びに各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容 易に認められる事実)⑴ 原告ら原告番号1、2、4~6、8、9、11~14、2-1~2-3、2-5~2-8、2-10~2-14、2-16~2-18、2-20は、熊本市に居住し、原告番号17、18、2-21は、玉名市に居住し、原告番号2 2~24は宇城市に居住し、原告番号26~28は荒尾市に居住し、それぞれ生活扶助費を受給している者である。(争いがない。)⑵ 生活扶助基準の改定方式(水準均衡方式に至る経緯)ア生活扶助基準については、昭和21年度から昭和22年度までは標準生計方式(当時の経済安定本部が定めた世帯人員別の標準生計費を基に算出 し、生活扶助基準とする方式)、昭和23年度から昭和35年度まではマーケットバスケット方式(最低生活を営むために必要な飲食物費や衣類、家具什器、入浴料といった個々の品目を一つ一つ積み上げて最低生活費を算出する方式)、昭和36年度から昭和39年度まではエンゲル方式(栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて 計算し、別に低所得世帯の実態調査から、この飲食物費を支出している世帯のエンゲル係数の理論値を求め、これから逆算して総生活費を算出する方式)、昭和 所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて 計算し、別に低所得世帯の実態調査から、この飲食物費を支出している世帯のエンゲル係数の理論値を求め、これから逆算して総生活費を算出する方式)、昭和40年度から昭和58年度までは格差縮小方式(一般国民の消費水準の伸び率以上に生活扶助基準を引き上げ、結果的に一般国民と被保護世帯との消費水準の格差を縮小させようとする方式)がそれぞれ採用さ れていた。(甲A4の1の3頁、甲A4の2の6頁、乙A7の2の2枚目、 乙A9、10、32)イ厚生省(当時)の審議会である中央社会福祉審議会は、昭和58年12月23日、「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)」と題する書面(甲A48、乙A8)を作成した。同書面には、要旨、以下の内容が記載されている。 生活扶助基準の評価a 生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであることは、既に認められている。 b 総理府(現在の内閣府)作成の家計調査を所得階層別に詳細に分析 検討した結果、現在の生活扶助基準は、一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているとの所見を得た。しかし、国民の生活水準は、今後も向上すると見込まれるので、生活保護世帯及び低所得世帯の生活実態を常時把握しておくことはもちろんのこと、生活扶助基準の妥当性についての検証を定期的に行う必要がある。 生活扶助基準改定方式a 生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民生活における消費水準との比較における相対的なものとして設定すべきものであり、生活扶助基準の改定に当たっては、当該年度に想定される一般国民の消費動向 保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民生活における消費水準との比較における相対的なものとして設定すべきものであり、生活扶助基準の改定に当たっては、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費水 準との調整が図られるよう適切な措置をとることが必要である。 b 当該年度に予想される国民の消費動向に対応する見地から、政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びに準拠することが妥当である。 なお、賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料にとどめるべきである。 ウ上記イの昭和58年の中央社会福祉審議会からの意見具申を受け、厚生 労働大臣は、昭和59年4月から現在まで、生活扶助基準の改定方式について、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費実態との調整を図るという水準均衡方式を採用している。水準均衡方式では、政府経済見通しの民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、国民の消費動向や社会経済情勢を総合的に勘案して、生 活扶助基準の改定を決定することとされている。(甲A53の1、乙A7の2、乙A68の1頁)⑶ 水準均衡方式に基づく改定の経緯ア厚生労働大臣は、昭和59年度以降、水準均衡方式に基づいて生活扶助基準の改定を行い、同年度から平成12年度までは増額改定、平成13年 度及び平成14年度は据え置き、平成15年度は改定率99.1%、平成16年度は改定率99.8%の減額改定を行い、同年度から本件改定に至るまでは据え置いていた。(乙A10、68の2頁)イ厚生労働省社会・援護局保護課は、平成17年度から本件各改定に至るまで生活扶助基準額及び改定率を据え置いた理由につき、 、同年度から本件改定に至るまでは据え置いていた。(乙A10、68の2頁)イ厚生労働省社会・援護局保護課は、平成17年度から本件各改定に至るまで生活扶助基準額及び改定率を据え置いた理由につき、各年度の「生活 と福祉」5月号において、以下のとおり説明している。 平成17年度から平成19年度まで当該年度の政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果、据え置くこととした。(乙A70~72、92~94) 平成20年度平成19年報告書を基礎としつつ、現下の原油価格の高騰が消費に与える影響等を見極めるため、据え置くこととした。(乙A73)平成21年度平成20年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇が国民への 家計へ大きな影響を与え、同年9月以降の世界的な金融危機が実体経済 へ深刻な影響を及ぼしており、国民の将来不安が高まっている状況にあると考えられることから、このような現下の社会経済情勢に鑑みて引き続き生活扶助基準の見直しを行わないこととし、据え置くこととした。 (乙A74)平成22年度 完全失業率が高水準で推移するなど、現下の厳しい経済・雇用状況を踏まえ、国民生活の安心が確保されるべき状況にあることに鑑み、据え置くこととした。(乙A75)平成23年度及び平成24年度現在の経済、雇用情勢等を総合的に勘案した上で、据え置くこととし た。(乙A76、77)ウ当時の民間最終消費支出の前年度比の伸び率は、平成20年度はマイナス1・8%、平成21年度はマイナス2.3%、平成22年度は0%、平成23年度は0.9%、平成24年度は0.6%であった。また、それ以降の伸び率は、平成25年度は2.7%、平成26年度 年度はマイナス1・8%、平成21年度はマイナス2.3%、平成22年度は0%、平成23年度は0.9%、平成24年度は0.6%であった。また、それ以降の伸び率は、平成25年度は2.7%、平成26年度はマイナス0.8%、 平成27年度は0.5%であった。(乙A68の2頁)⑷ 平成17年の改定から本件改定に至る経緯(概要)ア平成17年の改定厚生労働省の審議会である社会保障審議会(厚生労働省設置法7条1項の定める厚生労働大臣の諮問機関。以下「社会保障審議会」という。) は、平成15年7月、その福祉部会内に、学識経験者等による生活保護制度の在り方に関する専門委員会(以下「専門委員会」という。)を設置した。そして、専門委員会が平成16年12月15日にとりまとめた報告書(甲A3。乙A4。以下「平成16年報告書」という。)を踏まえて、平成17年度以降、一般世帯の消費実態との均衡を図るため、4人以上 世帯における生活扶助基準の算定方法について、①第1類費は、4人世 帯の場合に0.95、5人以上世帯の場合に0.90の逓減率を導入し(3年間で段階的に実施)、②第2類費は、4人以上世帯の基準額を抑制する見直しが行われた。(乙A7の3の14頁)平成16年報告書には、「いわゆる水準均衡方式を前提とする手法により、勤労3人世帯の生活扶助基準について、低所得世帯の消費支出額 との比較において検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であったが、今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要がある。(中略)また、これらの検証に際しては、地域別、世帯類型別等に分けるとともに、調査方法及 び評価手法につ 定期的に見極めるため、全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要がある。(中略)また、これらの検証に際しては、地域別、世帯類型別等に分けるとともに、調査方法及 び評価手法についても専門家の知見を踏まえることが妥当である。」との記載がある。(甲A3の2頁)イ本件改定平成16年報告書を受けて平成19年に厚生労働省社会・援護局長の下に設置された学識経験者等による生活扶助基準に関する検討会(以下 「検討会」という。)は、平成19年11月30日付けの報告書(甲A4の1、乙A5。以下「平成19年報告書」という。)を取りまとめたが、平成20年度に生活扶助費の見直しは行われなかった。 平成23年2月、学識経験者による専門的かつ客観的な検証を行うため、社会保障審議会の下に新たに常設部会として生活保護基準部会(以 下「基準部会」という。)が設置された。基準部会は、平成21年全国消費実態調査の特別集計等のデータを用いて、国民の消費動向、特に一般低所得世帯の生活実態を勘案しながら、生活扶助基準と一般低所得者世帯の消費実態の均衡が適切に図られているか否か等についての検証(年齢階級別、世帯人員別、級地別に生活扶助基準額と消費実態の乖離を詳 細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数についての検証。以 下「平成25年検証」という。)を行った。(甲A6、乙A6の各1~2頁) 基準部会は、平成23年4月19日(第1回会議)から平成25年1月16日(第12回会議)までの審議を経て、平成25年1月18日(第13回会議)で平成25年検証の結果を取りまとめ、社会保障審議会生 活保護基準部会報告書(甲A6、乙A6。以下「平成25年報告書」という。)を公表した。(甲A25)内閣は、平 月18日(第13回会議)で平成25年検証の結果を取りまとめ、社会保障審議会生 活保護基準部会報告書(甲A6、乙A6。以下「平成25年報告書」という。)を公表した。(甲A25)内閣は、平成25年1月29日、平成25年度の政府予算案を閣議決定した。(甲A37)内閣は、同年2月28日、前記と同様の政府予算案を国会に提出し、 同予算案は同年5月15日に可決され成立した。(乙A39)厚生労働大臣は、平成25年5月16日付け厚生労働省告示第174号により、生活扶助基準を改定した(本件改定)。(乙A3)⑸ 本件改定の内容ア本件改定の内容は、別紙「生活扶助基準等の見直しについて」(甲A60 の6枚目)のとおりである。 本件改定においては、年齢階級別、世帯人員別及び級地別のゆがみを調整した結果を生活扶助基準に反映させる調整(以下「ゆがみ調整」という。)が行われたほか、物価のデフレ傾向を勘案して4.78%の物価下落率を生活扶助基準額に一律に乗じる調整(以下「デフレ調整」という。)が行わ れた。 イゆがみ調整(甲A6、7、59の2、60、61、乙A6、16~18)ゆがみ調整は、年齢・世帯人員・地域ごとに当時の基準額と一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態を比較した平成25年検証結果を踏まえ、上記の各要素ごとに生じていたゆがみを調整したものである。 厚生労働大臣は、ゆがみ調整を実施するに当たり、平成25年検証の 結果を反映させる比率を全ての被保護世帯について一律に2分の1とする処理(以下「2分の1処理」という。)を行った。ゆがみ調整と2分の1処理を行った後の基準額の比較は別紙「世帯類型ごとの基準額」(甲A59の2の5頁)のとおりである。なお、2分の1処理の存在は、厚生労働省( 下「2分の1処理」という。)を行った。ゆがみ調整と2分の1処理を行った後の基準額の比較は別紙「世帯類型ごとの基準額」(甲A59の2の5頁)のとおりである。なお、2分の1処理の存在は、厚生労働省(政府)内で取扱厳重注意とされた書類のみに記載され、平成2 8年8月4日に当該文書の行政文書開示決定が出るまで基準部会の委員及び一般の国民に対して明らかにされていなかった。 (甲A59の1及び2)ウデフレ調整(甲A59の2、60、61、乙A27、28、33、42、47、68の5~6頁) デフレ調整は、平成20年以降、一般国民の消費水準が下落する一方で、同年以降の物価下落によって、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したという経済状況に鑑み、同年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加による一般国民との間の不均衡を是正するためとして、生活扶助相当CPIを用いて算定された平 成20年から平成23年までの物価下落率マイナス4.78%を一律に反映する減額をしたものである。 生活扶助相当CPIとは、消費者物価指数で採用されている全ての指数品目から、①家賃、教育費、医療費など生活扶助以外の他扶助により賄われる品目及び②自動車関係費、NHK受信料など原則として被保護 世帯において支出することが想定されていない品目を除いた生活扶助相当品目を対象とする物価指数であり、上記の各品目ごとの消費者物価指数に各品目のウエイトを乗じた数値の合計値を、総務省が公表している全国平均の品目別消費者物価指数(以下「総務省CPI」という。)のウエイトの合計値で除して算出したものである。生活扶助相当CPIの算 定方法は、本件改定に当たり初めて厚生労働省の事務方が考案したもの である。 デフレ 務省CPI」という。)のウエイトの合計値で除して算出したものである。生活扶助相当CPIの算 定方法は、本件改定に当たり初めて厚生労働省の事務方が考案したもの である。 デフレ調整に当たっては、平成20年及び平成23年の生活扶助相当CPIを算出するにあたり、平成22年の総務省CPIの算出の基礎とされた同年の家計調査の全国平均の品目別支出金額に基づいて算出されたウエイトが用いられた。 上記、の方法により算出された平成20年の生活扶助相当CPIは104.5、平成23年の生活扶助相当CPIは99.5であり、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率は、次の計算式のとおりマイナス4.78%となった。 (99.5-104.5)÷104.5×100=-4.78% 厚生労働大臣は、上記マイナス4.78%の物価下落率を生活扶助基準額に一律に乗じてデフレ調整を実施した。 ウ激変緩和措置(甲A7、59の2、61)厚生労働大臣は、生活保護受給世帯に対する激変緩和措置として、本件改定による従前の生活扶助基準からの増減幅を10%以内に抑えるとと もに、本件改定を平成25年度から3年間をかけて段階的に実施した。 エ財政効果本件改定によって、3年で670億円程度、6.5%程度の財政効果(縮減効果)が生じ、そのうちゆがみ調整による財政効果は90億円、デフレ調整による財政効果は580億円程度と推定された。(甲A7、59の2、 60、61、乙A47)⑹ 本件改定に係る厚生労働省の説明(概要)ア厚生労働省社会・援護局保護課は、平成25年1月27日付けで「生活扶助基準等の見直しについて」と題する外部向け説明資料を作成した。本件改定に関連する部分の概要は、次 厚生労働省の説明(概要)ア厚生労働省社会・援護局保護課は、平成25年1月27日付けで「生活扶助基準等の見直しについて」と題する外部向け説明資料を作成した。本件改定に関連する部分の概要は、次のとおりである。(甲A60の4~9 頁) 生活扶助基準について以下の考え方に基づき見直す(3年間の効果額約670億円)、①基準部会における検証結果を踏まえ、年齢・世帯人員・地域差による影響を調整(財政効果約90億円)、②前回見直し(平成20年)以降の物価の動向を勘案(財政効果本体分510億円、加算分70億円) 生活扶助に係る物価の動向について、生活扶助は食費や水道光熱費等の基礎的な日常生活費を賄うものであるため、生活扶助に相当する消費品目の物価指数(CPI)として、総務省が公表している品目別の消費者物価指数(総務省CPI)のうち、①家賃、教育費、医療費など生活扶助以外の他扶助で賄われる品目、②自動車関係費、NHK受信料など 原則生活保護受給世帯には生じない品目を除いた消費者物価指数(生活扶助相当CPI)を算出する。上記の方法で算出された生活扶助相当CPIは平成20年が104.5、平成23年が99.5であり、平成20年から平成23年までの下落率はマイナス4.78%(99.5÷104.5-1≒-4.78%)となる。 イ厚生労働省社会・援護局保護課は、同年3月11日の同局関係主管課長会議において、本件改定に係る生活扶助基準の見直しの考え方について次のとおり説明した。(乙A16の2頁)基準部会における検証結果を踏まえ、年齢、世帯人員、地域差による影響を調整する(財政効果90億円)。 前回(平成20年)の見直し以降の物価の動向を勘案する(財政効果本体分510億円、加算分70 会における検証結果を踏まえ、年齢、世帯人員、地域差による影響を調整する(財政効果90億円)。 前回(平成20年)の見直し以降の物価の動向を勘案する(財政効果本体分510億円、加算分70億円)。その理由は、前回の見直し以降デフレ傾向が続いており、実質的な購買力を維持しつつ客観的な経済指標である物価を勘案するというものであり、物価動向を勘案する起点は、前回(平成20年)の検証の結果を踏まえた上で、当時の政府の判断と して、平成20年以降の基準を据え置くことが妥当とされたことから、 平成20年以降とする。 激変緩和措置を講ずる。見直しの影響を一定程度に抑える観点から、現行基準からの増減幅は、過去の類例等を参考に、プラスマイナス10%を限度とし、生活扶助基準の改定は平成25年度から3年間をかけて段階的に実施する ⑺ 本件各決定ア別紙処分一覧表の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁は、同表の「処分日」欄記載の各年月日に、同表の「処分の名宛人」欄記載の各原告に対し、本件改定による保護基準の改正に伴う生活扶助の支給額の減額を内容とする本件各決定をした。(争いがない。) イ原告らは、それぞれ、本件各決定について熊本県知事に対して審査請求を行ったが、原告らの各審査請求を棄却する旨の各裁決がされた。(弁論の全趣旨〔被告らの平成26年6月30日付け第1事件答弁書及び同年11月12日付け第2事件答弁書の各行政処分取消請求事件処分日等一覧参照〕。) 4 争点⑴ 生活扶助基準の改定に対する司法審査の枠組み⑵ ゆがみ調整の違法性の有無⑶ 2分の1処理の違法性の有無⑷ デフレ調整の違法性の有無 ⑸ ゆがみ調整(2分の1処理)とデフレ調整を併せて行ったことの違法性の有 の枠組み⑵ ゆがみ調整の違法性の有無⑶ 2分の1処理の違法性の有無⑷ デフレ調整の違法性の有無 ⑸ ゆがみ調整(2分の1処理)とデフレ調整を併せて行ったことの違法性の有無⑹ 適切な激変緩和措置が採られたか⑺ 本件改定後の生活扶助基準が健康で文化的な最低限度の生活水準を下回っているか ⑻ 本件改定が政治的意図に基づき行われたか 5 争点に関する当事者の主張の要旨⑴ 争点⑴(生活扶助基準の改定に対する司法審査の枠組み)について(原告らの主張の要旨)ア生活扶助基準の改定については厚生労働大臣の裁量権が羈束されていること 厚生労働大臣は、生活保護法8条1項により、生活扶助基準の設定又は改定の権限を授権されているが、その裁量権は同条2項により具体的に規律及び羈束されており、厚生労働大臣は、生活扶助基準を改定するに当たって、同項の定める各考慮事項のみを考慮し、専門的・科学的な裏付けを備えた客観的な判断を行うことが義務付けられており、国の財 政事情や国民感情といった法定外の事項を考慮し、政策的判断によって上記基準を設定する裁量権は有しないものと解される。 仮に厚生労働大臣が政策的判断によって生活扶助基準を設定することを許容し得るとしても、上記基準の設定は専門技術的な性質を強く有するものであるから、まずは統計等の客観的な数値等との合理的関連性 や専門的知見との整合性の有無について実質的な審査を行い、生活扶助基準の改定が必要と認められるかを検討すべきであり、これが認められる場合に初めて、政策的考慮を含めてどの程度の改定を行うべきかを検討し得るにとどまるものというべきである。 生活扶助基準は人間としての生存に値する最低限の水準 を検討すべきであり、これが認められる場合に初めて、政策的考慮を含めてどの程度の改定を行うべきかを検討し得るにとどまるものというべきである。 生活扶助基準は人間としての生存に値する最低限の水準を確保し得 るものでなければならないという基本的性質と存在理由を有するものであるから、厚生労働大臣が生活扶助基準の設定に当たって裁量権を逸脱又は濫用したかについてはより厳格な審査がされるべきであり、厚生労働大臣が生活保護法8条2項に定められた考慮事項以外の事項を考慮に入れたり、各考慮事項の重み付けの評価を誤って生活扶助基準の改定を 行った場合には、その判断過程に過誤があるとして裁量権の逸脱又は濫 用が認められるというべきである。 イ裁量統制の役割を有する基準部会の検討を経ていないこと生活保護法の施行当初より、生活保護基準の設定に当たっては政治的色彩のある要素を排除し、審議会の調査研究により認められた合理的な基礎資料に基づく判断がされるべきとの立法者意思から、中央社会福祉 審議会に生活保護専門部会が設置され、厚生大臣(現・厚生労働大臣)の生活保護基準の設定についての裁量を統制する役割を果たしていた。 平成13年の中央省庁再編に伴って中央社会福祉審議会の役割を社会保障審議会が引継いだ後、平成15年7月28日、同審議会の福祉部会に専門委員会が設置され、平成23年2月10日、同審議会の常設専門部 会として、基準部会が設置された。基準部会が設置されたのは、学識経験者により、5年に1度の頻度で行われる全国消費実態調査のデータ等に基づき、生活扶助の基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているかを専門的かつ客観的に評価・検証し、厚生労働大臣による生活保護基準改定の正当性を担保するためであった。 のデータ等に基づき、生活扶助の基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているかを専門的かつ客観的に評価・検証し、厚生労働大臣による生活保護基準改定の正当性を担保するためであった。 上記基準部会の設置の経緯からすれば、生活扶助基準の改定について基準部会による検証が法律上の要件とされていないからといって、基準部会の役割を軽視すべきではなく、基準部会による検証を経ていない場合には、厚生労働大臣の裁量判断の適否はより厳格に判断されるべきである。 厚生労働大臣が、本件改定を行うに当たって、平成25年検証の結果を反映させる比率を全ての被保護世帯につき2分の1としたこと及びデフレ調整を行ったことは、いずれも基準部会の検討を経ることなく断行されたものであることが明らかである。そのため、厚生労働大臣が上記の2分の1処理とデフレ調整を行うに当たっていかなる専門技術的 考察を経たのかについて、統計による客観的な数値等との合理的関連性 や専門的知見との整合性がより一層厳しく審査されなければならない。 ウ条約及び憲法の制度後退禁止原則による制約を受けること我が国は、その締結した条約を遵守すべき国際法上の義務を負っているとともに、国内法上も、憲法98条2項に基づき、その締結した条約を誠実に遵守すべき義務を負っており、当該条約は何らの国内的措置を 採っていなくとも国内法的効力を有している。 憲法98条2項は締結した条約を誠実に遵守することを定めていること、人権条約は憲法の規定と抵触せず、むしろこれを補完する法規範であることからすれば、人権条約の規定内容は憲法や生活保護法の解釈に反映されるべきである。 日本が批准する人権条約である経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(以 を補完する法規範であることからすれば、人権条約の規定内容は憲法や生活保護法の解釈に反映されるべきである。 日本が批准する人権条約である経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下「社会権規約」という。)規約2条1項は、社会権規約の各締約国が社会権規約上の権利の実現を後退させる措置を採ることを禁止しており、締約国がそのような後退的措置を正当化することを証明しなければ、当該措置は同項に違反するものであるといえ、憲法25条 も、社会権規約2条1項の内容を反映しているものとして同様に解釈することができる。 厚生労働大臣の行った本件改定は、従前の生活扶助基準を引き下げる後退的措置であるから、被告によって本件改定が合理的な理由に基づく正当なものであることについて立証がされなければ、本件改定は厚生労 働大臣の裁量権を逸脱又は濫用した違法なものであり、社会権規約2条1項や憲法25条の定める制度後退禁止原則にも違反するというべきである。 (被告らの主張の要旨)ア生活扶助基準の設定及び改定については厚生労働大臣に広範な裁量権が 認められていること 生活保護法3条及び8条2項に定められる「最低限度の生活」は抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における経済的、社会的条件や一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものである。したがって、厚生労働大臣が生活扶助基準を設定又は改定するに当たっては、異質かつ多元的な諸利益を評価し て比較考量するという高度の専門技術的かつ政策的な判断を要求されるものであるから、広範な裁量が認められており、生活保護法8条2項に例示列挙される要素に限らず、国の財政事情を含む様々な要素を考慮することが許されているというべ 専門技術的かつ政策的な判断を要求されるものであるから、広範な裁量が認められており、生活保護法8条2項に例示列挙される要素に限らず、国の財政事情を含む様々な要素を考慮することが許されているというべきである。 また、厚生労働大臣が被保護者の消費実態全てを把握して保護基準の 改定に反映させることは技術的に不可能であるから、個々の被保護者の具体的生活状況自体を考慮する必要はなく、被保護者の需要を把握する方法も、その裁量において選択することが許されているというべきである。 イ基準部会との関係について 上記アのとおり、厚生労働大臣は保護基準改定に係る広範な裁量を認められていることに照らせば、本件改定の適否については、改定に至った厚生労働大臣の判断の過程、手続に過誤、欠落等があるか否か、すなわち、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性などの前提となる専門的技術的考察を踏まえて本件改定に係る判断に 達し得るか否かが審査されるべきである。 また、生活保護法は、厚生労働大臣(厚生労働省の職員を含む。)が保護基準の改定についての専門的知見を有していることを当然の前提としており、その改定に当たって外部の専門機関等の意見等を聴取することは法令上要求されておらず、専門機関等による検証がされた場合でも、 その結果は、広範な裁量権を有する厚生労働大臣の考慮要素の一つに位 置付けられるにすぎず、その判断を法的に拘束するものではない。 ウ憲法上及び社会権規約上、制度後退禁止の原則は要求されていないこと 憲法25条1項に規定される健康で文化的な最低限度の生活の具体的内容は、その時々における多数の不確定要素に応じて変化し得るものであり、その水準が上昇し続けるものとも限らない。 ないこと 憲法25条1項に規定される健康で文化的な最低限度の生活の具体的内容は、その時々における多数の不確定要素に応じて変化し得るものであり、その水準が上昇し続けるものとも限らない。また、憲法25条2 項は、国に対し、社会福祉、社会保障等の向上及び増進に努めなければならない旨を規定しているにとどまる。さらに、生活保護法3条及び8条2項の規定により、生活保護基準は、最低限度の生活需要を満たしつつこれを超えないものでなければならないことからすれば、一度設定した生活保護基準であっても、その後の社会経済情勢の変化等によって、 厚生労働大臣の合目的的裁量によりこれを削減することも当然に想定されているものというべきである。したがって、憲法25条が、社会福祉等の水準を常に増進させなければならず、これを後退させることが原則として禁止されているといった制度後退禁止原則を定めていると解することはできない。 社会権規約9条は、締約国において、社会保障についての権利その他社会権規約規定の各条項所定の権利が国の社会政策により保護されるに値するものであることを確認し、上記権利の実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものであって、個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない。 このことは、社会権規約2条1項が締約国において、「立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成する」ことを求めていることからも明らかであり、社会権規約2条1項及び9条が制度後退禁止原則を定めていると解することはできない。 ⑵ 争点⑵(ゆがみ調整の違法性の有無)について (原告らの主張の要旨)ア平成25年検 約2条1項及び9条が制度後退禁止原則を定めていると解することはできない。 ⑵ 争点⑵(ゆがみ調整の違法性の有無)について (原告らの主張の要旨)ア平成25年検証の手法が全く新たな検証方法であったことゆがみ調整の基礎として行われた平成25年検証では、厚生労働省の事務方によって突如として提案された全く新たな検証方法が採用された。具体的には、従来は、まず標準世帯の生活扶助基準の水準について検証を行 い、これにより適切と認められた水準をあらゆる世帯類型に応用できるように展開する手法が採られていたが、平成25年検証においては、年齢別、世帯人員別、級地別に、本件改定前の生活扶助基準と第1・十分位に属する世帯の消費実態を比較してそのゆがみを是正する手法が採られ、基準部会委員であっても上記手法について十分な理解ができたとはいえない状 況であった。 イ平成25年検証において第1・十分位に属する世帯が比較対象とされたことが不適切であること 平成25年検証においては、第1・十分位に属する世帯の消費支出が被保護世帯の比較対象とされて検証が行われているが、生活保護制度の 利用資格を有しながら生活保護を受給せず、生活扶助基準以下の所得水準で生活する者が大量に存在する現状において、最下位層である第1・十分位に属する世帯の消費水準との比較を根拠に生活扶助基準を引き下げることを許せば、生活扶助基準を際限なく引き下げていくことにつながり、合理性がないことは明らかである。 平成25年報告書は、平成25年検証で第1・十分位に属する世帯の消費支出を比較対象とした理由として、①これまでの検証に倣い、被保護世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが現実的であると判断したこと、② は、平成25年検証で第1・十分位に属する世帯の消費支出を比較対象とした理由として、①これまでの検証に倣い、被保護世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが現実的であると判断したこと、②第1・十分位の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していること、③国民の過半数が必要であると考えている必 需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状 況は中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されている状況にあること、④全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、高所得階層を除くその他の十分位の傾向をみても等しく減少しており、特に第1・十分位が減少しているわけではないこと、⑤OECDの国際的基準によれば、等価可 処分所得(世帯の可処分所得をスケールメリットを考慮して世帯人員数の平方根で除したもの)の中位値(全データの真中の値)の半分に満たない世帯は相対的貧困層にあるとされるところ、平成21年全国消費実態調査によれば、第1・十分位に属する世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあることを示していること、⑥分散分析等の統 計的手法による検証では、各十分位間のうち第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、他の十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なると考えられることを挙げている。 しかし、①については、昭和39年から昭和58年までの期間に採用された格差縮小方式における比較対象は一般勤労者世帯の消費水準であ り、昭和58年から現在に至るまで採用されている水準均衡方式における比較対象は一般国民生活における消費水準であったことが明らかである上、水準均衡方式が採用された当時その消費水準の動向に留意するも り、昭和58年から現在に至るまで採用されている水準均衡方式における比較対象は一般国民生活における消費水準であったことが明らかである上、水準均衡方式が採用された当時その消費水準の動向に留意するものとされた「低所得世帯」も、総世帯中の第1・十分位の世帯ではなく、勤労者世帯における第1・五分位及び第2・五分位(併せて下位40%) の世帯であり、一般低所得世帯として第1・十分位の世帯が比較対象とされるべき根拠はない。②については、従前採用されていた格差縮小方式や水準均衡方式においても、第3・五分位世帯の消費水準が比較対象とされたことはなく、第1・十分位世帯の生活扶助相当支出が第3・五分位の世帯の生活扶助相当支出の6割程度に達しているからといって、 第1・十分位の世帯が比較対象とされるべき根拠とはなり得ない。③に ついては、厚生労働省社会・援護局保護課が実施した平成22年家庭の生活実態及び生活意識に関する調査によれば、対象項目の普及率につき、第1・十分位の世帯への普及率が第3・五分位の世帯への普及率の9割未満である項目が全体の3分の2にも及び、とりわけ文化や教養に係る項目及び社会生活に係る項目において、第3・五分位の世帯との格差が 顕著であることが明らかになっているから、平成25年報告書は第1・十分位の世帯の耐久消費財の保有状況に関する評価を誤っているものといえるし、第1・十分位の世帯が上記対象項目とされた耐久消費財を保有しているからといって同世帯が必ずしも貧困ではないと判断する根拠とはならない。④については、高所得階層を除くその他の十分位の構成 割合(第1・十分位の構成割合を含む)が等しく減少し、全所得階層の中で第1・十分位の所得水準が相対的に低下しているといえるのであり、第1・十分位に属する世帯の消費 を除くその他の十分位の構成 割合(第1・十分位の構成割合を含む)が等しく減少し、全所得階層の中で第1・十分位の所得水準が相対的に低下しているといえるのであり、第1・十分位に属する世帯の消費水準を比較対象とすることが正当化されるものではない。⑤については、一般に、OECD加盟国においては、OECD基準による相対的貧困線以下の世帯は、「あってはならない」 状態にあるものと考えられており、OECD基準で相対的貧困線以下にある第1・十分位に属する世帯の消費支出との比較を正当化する理由とはなり得ない。⑥については、平成15年9月30日に開催された第2回専門委員会において、厚生労働省より、社会的に必要不可欠な消費支出があると仮定し、収入階級ごとの消費支出を比較すると、所得が減っ ていっても消費水準を維持しようとして消費支出は緩やかに減少するが、ある所得階層以下にあると消費水準を維持できなくなり、急激に消費水準が低下する変曲点が存在するとの説明がされているところ、各十分位間のうち、第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、他の十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なるとすれ ば、第1・十分位と第2・十分位の間に変曲点が存すると考えられる。 そうすると、変曲点以下である第1・十分位に属する世帯の所得水準では最低生活を営むことが困難であり、同世帯の消費支出を生活扶助基準の妥当性を検証するための比較対象とすることは不適切である。 ウ平成25年検証において分析の基礎とされた統計データが不適切であったこと 平成25年検証においては、年齢階級ごと、世帯人員ごと及び級地ごとに、全国消費実態調査のデータに照らし合わせてゆがみの有無が検討されているが、全国消費実態調査のデータは、消 こと 平成25年検証においては、年齢階級ごと、世帯人員ごと及び級地ごとに、全国消費実態調査のデータに照らし合わせてゆがみの有無が検討されているが、全国消費実態調査のデータは、消費の季節性が反映されていないこと、協力世帯の確保が困難である単身世帯のデータの精度に問題があること、協力世帯に官公職員層が多い、専業主婦世帯が多く世 帯有業率が低い、若年層が少ない等の偏りがあること、家計の個人別収支が把握しきれていない可能性があることなどから、その正確性及び信頼性は欠けており、平成25年検証のような精緻な分析の根拠とすべきではなかった。 平成25年検証においては、生活扶助基準額(第1類費・第2類費) と第1・十分位層の消費支出を比較するため、平成21年全国消費実態調査の個票データから選定された、データ①(年間収入が低い世帯から順に並べた第1・十分位の世帯)及びデータ②(世帯員1人当たりの年間収入が低い世帯から順に並べた第1・十分位の世帯)が使用されているが、データ①及びデータ②のサンプルサイズを10倍しても平成21 年全国消費実態調査の総世帯の集計世帯数とは一致しないことからすると、データ①及びデータ②は世帯数ではなく世帯人員数に基づいて第1・十分位の世帯を選出した(各所得階級における世帯人員数の合計が全体の下位10%になるように選出した)ものと推測される。 平成25年検証の分析に用いられたデータの区分方法も総務省統計 局の区分方法とは異なるものであると推察され、平成25年報告書で示 された数値は総務省統計局が公表する数値と整合しない可能性が高い。 エ平成25年検証において第1・十分位階級に属する世帯を比較対象としたことは統計学的にも許されないこと された数値は総務省統計局が公表する数値と整合しない可能性が高い。 エ平成25年検証において第1・十分位階級に属する世帯を比較対象としたことは統計学的にも許されないこと 2つの集団を統計学的に比較するためには、対象となる2つの集団は比較の項目以外について可能な限り等質的であることが必要であり、被 保護世帯の消費支出分布と第1・十分位に属する世帯の消費支出分布を統計的に比較する際には、被保護世帯の集団と第1・十分位に属する世帯の集団が、比較の項目である消費支出以外において可能な限り等質的であることが求められる。したがって、厚生労働大臣は、ゆがみ調整の際に両者の統計的比較を行うに当たり、少なくとも被保護世帯の平均世 帯人員数、世帯人員の平均年齢及び生活保護費受給額の平均と、第1・十分位に属する世帯の平均世帯人員数、世帯人員の平均年齢及び年間可処分所得額の平均をそれぞれ比較し、両者が消費支出以外において等質的な集団であるかを事前に検証すべきであったにもかかわらず、ゆがみ調整に当たって上記の検証結果が示されたことはなく、被告らは、上記 各集団につき消費支出以外の項目に等質性が認められることを示す根拠を何ら主張していない。 2つの集団を統計学的に比較するためには、対象となる2つの集団が比較の対象とする要因に関しては厳密に区別されなければならず、比較される基準であるべき対照群の中に、比較する実験群の対象が含まれて いることは許されないが、平成25年検証において被保護世帯との比較対象とされた第1・十分位に属する世帯には被保護世帯が含まれており、統計学上の原則から逸脱する明らかに不合理なものであった。また、平成19年検証においては、比較対象から被保護世帯が除去されていたのである(なお、平成29年 に属する世帯には被保護世帯が含まれており、統計学上の原則から逸脱する明らかに不合理なものであった。また、平成19年検証においては、比較対象から被保護世帯が除去されていたのである(なお、平成29年検証においても除去されている。)から、平成 19年検証において一旦選択された方法・手続から逸脱し、明らかに首 尾一貫性を欠いている。さらに、第9回基準部会では、大多数の委員から比較対象とされる第1・十分位に属する世帯から被保護世帯を除くべきである旨の意見が出されたのを受けて部会長がこれを基準部会の意見として取りまとめており、被保護世帯を第1・十分位に属する世帯から除去しないことは手続上も不合理であるといえる。 オ平成25年検証で採用された回帰分析の手法が不適切であったこと平成25年検証においては、生活扶助基準額(第1類費・第2類費)と第1・十分位層の消費支出の乖離を検証する際に、結果(被説明変数)とその諸要因(説明変数〕の関係を線形の関数関係として定式化する統計的方法である回帰分析の手法を用いて、第1・十分位に属する世帯の消費支 出額が算出されているが、以下の点で不適切である。 回帰分析における決定係数が極めて低いこと回帰分析においては、回帰モデルの決定係数が予測値の精度を評価する指標となり、決定係数が1に近いほど予測値の精度が高いことを意味するが、平成25年検証における回帰分析の決定係数は、世帯の年間収 入を基にしたデータ①の場合は0.28、世帯員1人当たりの年間収入を基にしたデータ②の場合は0.36となっており、回帰分析では世帯や個人の消費支出額につき、データ①の場合は28%程度、データ②の場合は36%程度しか説明できないことが示されている。したがって、平成25年検証にお ②の場合は0.36となっており、回帰分析では世帯や個人の消費支出額につき、データ①の場合は28%程度、データ②の場合は36%程度しか説明できないことが示されている。したがって、平成25年検証における回帰分析に基づく予測値は現実の消費実態をほ とんど反映できていない。 回帰係数のt検定の結果を反映させていないこと回帰係数のt 検定とは、説明変数が本当に被説明変数を説明できるに足る変数であるかどうかを事後的に判断する方法であり、複数の説明変数の中から被説明変数に対して意味のある変数(真の回帰係数が0では ない変数)を選択する手法である。回帰係数のt検定により回帰係数に 有意な差が認められなかった説明変数がある場合には、当該説明変数は被説明変数を説明する変数としては不要であるため、当該説明変数を除いて改めて回帰モデルの推定を行うことが必要であるが、平成25年検証においては、t検定の結果、回帰係数に有意な差が認められず、帰無仮説が棄却されずに不要であると判断し得る説明変数が多数存在したに もかかわらず、それらの変数を含めて消費支出額の予測値が求められており、当該説明変数を除いた回帰モデルによる再分析は行われていない。 このように、平成25年検証においては、統計学的に問題のある回帰モデルが採用されており、当該回帰モデルに基づく消費支出額の予測値は現実の消費構造を反映したものであるといえない。 その他の問題回帰分析の結果を適切に評価するためには、a誤差項の分散均一性(比較する2つのグループにおいて、サンプルの分散が等しいこと)、b正規性(比較する2つのグループにおいて、サンプルが正規に分布していること)、c説明変数間の多重共線性(説明変数間の非常に強い相関や、一 次従属的 プにおいて、サンプルの分散が等しいこと)、b正規性(比較する2つのグループにおいて、サンプルが正規に分布していること)、c説明変数間の多重共線性(説明変数間の非常に強い相関や、一 次従属的な変数関係があること)について検討する必要があり、a又はbを欠く場合や、cが存在する場合には、回帰分析による結果の信頼性が低くなるが、平成25年報告書ではこれらの点について全く触れられておらず、検討を行った形跡もない。 また、厚生労働省の職員が基準部会の委員に対して行った説明によれ ば、ゆがみ調整の検証過程において、通常の最小2乗法による回帰分析ではなく、直交回帰もしくは主成分回帰と呼ばれる特殊な回帰分析が行われた疑いがあるが、その理由は示されていない。仮に通常の最小2乗法による回帰分析が採用されていたのであれば、厚生労働省の職員が基準部会の委員に対して誤った説明をしていたことになり、平成25年検 証は、専門的議論の結果得られた透明性の高い妥当な検証方法であると は到底いえないことになる。 (被告らの主張の要旨)アゆがみ調整が採用された経緯が正当であること専門委員会の平成16年報告書においては、現行の生活扶助基準が必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映していないことが指摘され、検討会 の平成19年報告書においては、生活扶助基準の検証に当たっては、世帯構成などが異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られるべきであり、そのためには、全国消費実態調査を基本とし、国民の消費実態を収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別などの様々な角度から詳細に分析することが適当である旨が指摘されていた。これら の指摘を踏まえ、基準部会は、平成21年全国消費実態調査のデータを用いて、年齢階級別、 人員別、年齢階級別、地域別などの様々な角度から詳細に分析することが適当である旨が指摘されていた。これら の指摘を踏まえ、基準部会は、平成21年全国消費実態調査のデータを用いて、年齢階級別、世帯人員別、級地別に生活保護基準額と一般低所得世帯(年間収入階級が第1・十分位に属する世帯)の消費実態の乖離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数についての検証(平成25年検証)を行ったものである。 イ平成25年検証において第1・十分位に属する世帯の消費水準を比較対象としたことが適切であること 生活保護法において保障される最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであり、生活扶助基準の妥当性については、従前から一貫して、低所得世帯の消費実態を踏ま えた検証が行われている。 そして、基準部会は、①これまでの検証に倣い、被保護世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが現実的であると判断したこと、②第1・十分位の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していること、③国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費 財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得 階層と比べて概ね遜色なく充足されている状況にあること、④全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、特に第1・十分位のみが減少しているわけではないこと、⑤第1・十分位に属する世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあることが示されていること、⑥分散分 析等の統計的手法による検証では、各十分位間のうち、第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、ほかの十分位の世 では相対的貧困線以下にあることが示されていること、⑥分散分 析等の統計的手法による検証では、各十分位間のうち、第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、ほかの十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なると考えられることを踏まえて、第1・十分位に属する世帯の消費水準を比較対象とすることが相当である旨の判断を行っており、本件改定において被保護世帯と消費構造が近 い世帯として第1・十分位世帯を用いることには相応の根拠がある。 ウゆがみ調整において使用された統計データが適切なものであること 原告らの統計データに係る主張は、平成21年全国消費実態調査に限界があることによって平成25年検証の結果に影響が生じ得るとの抽象的な可能性を指摘するにすぎないし、一般国民の消費実態を把握するた めには統計データを用いるほかなく、統計データを用いて一般国民の消費実態を推測する以上、一定の限界が生じることは基本的に避け難い。 このことは、平成25年検証においても前提とされており、基準部会は、それを踏まえても、平成21年全国消費実態調査の個票データを用いることが適当であると判断したのである。 平成21年全国消費実態調査のデータ①及びデータ②の各個票データの数は、平成21年全国消費実態調査の集計世帯の総数の単純な10分の1の数になるものではない。すなわち、平成21年全国消費実態調査は、平成17年国勢調査を基に推計した世帯を母集団とし、そこから抽出された調査対象世帯から得られた個票データに抽出率の逆数等で算出 される集計用乗率を乗じて、母集団全体の消費実態を推計しているが、 単身世帯は二人以上世帯と比べて調査票の配布及び回収が困難であり、集計する世帯数が二人以上世帯より少 逆数等で算出 される集計用乗率を乗じて、母集団全体の消費実態を推計しているが、 単身世帯は二人以上世帯と比べて調査票の配布及び回収が困難であり、集計する世帯数が二人以上世帯より少なくなることから、単身世帯の集計用乗率は、二人以上世帯の集計用乗率よりも相当に大きな数値になっている。一方、平成25年検証は、データ①については世帯年収が下位の世帯から、データ②については世帯員1人当たりの年収が下位の世帯 からそれぞれ個票データを順に並べ、各個票データに集計用乗率を乗じて得られた世帯数の累計が全体の実際の世帯数の下位10%となるところまでの個票データの集団を選定していることから、データ①を構成する個票データ(世帯年収が下位の世帯)には相対的に単身世帯が多く含まれ、データ②を構成する個票データ(世帯員1人当たりの年収が下位 の世帯)には相対的に二人以上世帯が多く含まれると考えられる。そうすると、単身世帯の集計用乗率が二人以上世帯の集計用乗率よりも相当大きな数値になり、データ①はデータ②に比べて個票データの個数(すなわち世帯数)は少なくなるのである。 エ平成25年検証において第1・十分位階級に属する世帯を比較対象とし たことが統計学的に許容されること 基準部会が一般低所得世帯の消費構造を把握するために使用した全国消費実態調査における第1・十分位に属する世帯のデータには、被保護世帯と推測される世帯のデータも含まれているが、平成25年検証は、一般低所得世帯の消費支出額と生活扶助基準額との高低を比較して生活 扶助基準の水準の妥当性を検証するものではなく、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態の分布を指数として把握し、世帯構成などが異なる生活保護受給者間における実質的な給 生活 扶助基準の水準の妥当性を検証するものではなく、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態の分布を指数として把握し、世帯構成などが異なる生活保護受給者間における実質的な給付水準の均衡を図るものであったから、被保護世帯が含まれるデータを用いることが同検証の趣旨、目的に反するものではない。他の定期的な検証(平成 16年検証、平成19年検証及び平成29年検証)において比較対象と された一般低所得世帯から被保護世帯が除外されたのは、平成25年検証では行われなかった生活扶助基準の水準の検証が行われたことを理由とするものである。 また、ゆがみ調整においては、第1・十分位に属する世帯の消費実態による各指数の分布と、当該世帯が実際に当時の生活扶助基準により生 活保護を受給した場合の各指数の分布が比較されており、第1・十分位に属する世帯の消費支出と実際の被保護世帯の消費支出が比較されたものではないから、ゆがみ調整において統計学上許されない手法が採られたものとはいえない。 オ回帰分析の手法に問題はないこと 原告らは、平成25年検証における回帰分析における予測値の精度を示す決定係数が低いため、当該回帰分析に基づく予測値は現実の消費実態をほとんど反映できていない旨主張するが、どの程度の決定係数の値であれば実態を近似したものとして妥当と評価されるかについて一般的な基準は存在せず、特定の決定係数の値以上でなければ採用し得ないと いった統計的知見は存在しない。また、平成25年検証のように、個々の世帯の消費支出を被説明変数とする回帰分析においては、金銭的価値観や将来見込みといった個別性の極めて大きい多様な事情が決定係数に影響することから、決定係数は0.3程度しか得られ 検証のように、個々の世帯の消費支出を被説明変数とする回帰分析においては、金銭的価値観や将来見込みといった個別性の極めて大きい多様な事情が決定係数に影響することから、決定係数は0.3程度しか得られない場合も多いとされ、0.5でも極めて良い評価とされている。したがって、平成25 年検証の回帰分析において、データ①についての決定係数の値が0.28、データ②についての決定係数の値が0.36であることは、当該回帰係数の採用が統計的に誤りといえるような極端に低いものではない。 原告らは、平成25年検証において、回帰係数のt検定により不要であると判断された説明変数が多数存在したにもかかわらず、これらの 説明変数を除外せずに検証結果を求めており、このようなt検定の結果 を全く反映させていない回帰分析に基づく消費支出額の予測値は現実の消費構造を反映したものとはいえない旨主張するが、回帰分析におけるt検定とは、説明変数に効果がないとの仮説(帰無仮説)を検証し、同仮説が否定される場合に、説明変数が有効であるとの対立仮説を認めることを目的としたものである。そして、一定の有意水準を設定してt検 定を行った場合に、説明変数に当該水準以上の有意性が認められず、帰無仮説を棄却することができないとしても、積極的に説明変数の有意性が0であることを認めることができるわけではないから、当該説明変数を除去しない限りその回帰分析が統計的に誤っているものになるわけではない。 原告らは、回帰分析の結果を適切に評価するためには、a誤差項の分散均一性、b正規性、c説明変数間の多重共線性の仮定を満たしているかについて検討する必要があるにもかかわらず、平成25年検証においてこれらの検討が行われていない旨主張するが、原告らの指摘する上記の各仮定 性、b正規性、c説明変数間の多重共線性の仮定を満たしているかについて検討する必要があるにもかかわらず、平成25年検証においてこれらの検討が行われていない旨主張するが、原告らの指摘する上記の各仮定を満たしているかの検討は、t検定と同様に、回帰分析の精度 を事後的に検証するための統計的検定の手法であり、これらの手法を用いなければ回帰分析の結果を採用し得ないといったような統計的知見は存在しない。回帰分析は、実証的分析における実態(平成25年検証の場合は消費実態)の近似にすぎず、上記の各手法による検討によるなどして、その近似の程度を検証するか否かは、正に統計的分析における当 不当の問題である。 原告らは、厚生労働省の職員が基準部会の委員に対して行った説明によれば、ゆがみ調整の検証過程において、通常の最小2乗法による回帰分析ではなく、直交回帰又は主成分回帰と呼ばれる特殊な回帰分析が行われた疑いがあると主張するが、基準部会の委員に対する説明に用いら れた資料は、回帰分析について簡略に説明するために単回帰分析のイメ ージ図を用いたものであって、実際のゆがみ調整においては重回帰分析が採用されたものである。また、ゆがみ調整においては、最小2乗法による回帰分析を行っており、単回帰分析のイメージ図には、散布図上の点(被説明変数)からの最短距離の線が回帰直線に対し直角に交わるよう示されているが、正しくは被説明変数の点から回帰直線に対し真下(又 は真上)に引かれた線と交わるように示されるべきであり、やや誤解を招くものではあるが、イメージ図中に「データの平均的傾向を最も偏りなく反映するという条件から、aとbが求まる。 (最小二乗法の考え方)」と明確に併記されていることからも、基準部会の委員に対する説明は誤りでは はあるが、イメージ図中に「データの平均的傾向を最も偏りなく反映するという条件から、aとbが求まる。 (最小二乗法の考え方)」と明確に併記されていることからも、基準部会の委員に対する説明は誤りではない。 ⑶ 争点⑶(2分の1処理の違法性の有無)について(原告らの主張の要旨)ア厚生労働大臣は、本件改定に当たって、生活保護費を増額すべきとの結果が得られた高齢単身世帯及び高齢夫婦世帯も含めて、平成25年検証の結果を生活扶助基準に一律2分の1の比率で反映させてゆがみ調 整(2分の1処理)を行ったが、基準部会は、平成25年検証の結果を2分の1の比率で反映させて生活扶助基準の改定を行うことを想定していなかった。 イ平成25年検証により生活保護費を増額すべきとの結果が得られた世帯について、検証結果を2分の1の比率で反映させると、上記世帯の 基準額は第1・十分位の世帯の消費実態から得られる水準を下回る金額になるにもかかわらず、基準部会において、上記世帯の基準額を第1・十分位の消費実態から得られる水準を下回る金額とすることの妥当性については何ら検討がされていない。 ウ平成25年検証により生活保護費を増額すべきとの結果が得られた世 帯(60歳以上の高齢単身世帯及び高齢夫婦世帯)について、平成25 年検証の結果を完全に反映させれば、デフレ調整を行ったとしても、被保護世帯全体の過半数を占める上記世帯の保護費は増額するとの結論が得られたはずである。厚生労働大臣は、上記世帯の保護費の増額を抑制するため、恣意的に、平成25年検証の結果を2分の1の比率で反映させる操作を行ったものと考えられる。現に、平成25年検証の結果を2 分の1の比率で反映させたことによって、上記世帯の保護費の上げ幅が ため、恣意的に、平成25年検証の結果を2分の1の比率で反映させる操作を行ったものと考えられる。現に、平成25年検証の結果を2 分の1の比率で反映させたことによって、上記世帯の保護費の上げ幅が大幅に圧縮され、全体として多額の生活扶助費の削減効果を生じることとなった。 エ被告らは、平成25年検証の結果を2分の1の比率で反映させることとしたのは激変緩和措置として合理的なものであると主張するが、上記 の措置は、被保護世帯の過半数について本来増額すべき増額を行わないというものであるから、適正な激変緩和措置であるとはいえない。また、被告らの上記主張は、北海道新聞のスクープ記事によって本件改定時に平成25年検証の結果を反映させる比率が2分の1とされていたことが明らかとなり、原告らからその旨の主張がされた時点以降に、突如とし てなされたものであり、明らかに後付けの主張である。また、本件改定には生活保護費の引下げ幅を最大で10%とするという激変緩和措置が組み込まれているのであるから、更にゆがみ調整による引下げ幅を緩和するために、平成25年検証の結果を敢えて2分の1の比率で反映させる合理性はない。 オしたがって、厚生労働大臣が生活保護費を増額すべきとの結果が得られた世帯についても平成25年検証の結果を2分の1の比率で反映させて行った本件改定は、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性についての検討を経たものとはいえず、その判断過程における明らかな過誤・欠落が認められる。 (被告らの主張の要旨) ア厚生労働大臣は、本件改定に当たって、ゆがみ調整の結果を反映させる比率を2分の1にとどめているが、この措置は激変緩和措置として合理的なものであり、その裁量権を逸脱又 の主張の要旨) ア厚生労働大臣は、本件改定に当たって、ゆがみ調整の結果を反映させる比率を2分の1にとどめているが、この措置は激変緩和措置として合理的なものであり、その裁量権を逸脱又は濫用するものとは認められない。 イ生活保護基準の改定に当たって激変緩和措置を講じるか否か、講じる としてどのような措置を講じるかの判断は、高度な政策判断に属する事柄であり、厚生労働大臣に極めて広範な裁量権が認められる。したがって、その判断過程に過誤、欠落等を示す明白な事情が認められるような場合でない限り、裁量権の範囲の逸脱、濫用があるとは認められないというべきである。 ウ厚生労働大臣は、ゆがみ調整による検証の結果をそのまま生活扶助基準に反映させると、生活扶助基準額の減額割合が10%を大幅に超える世帯が相当数生じ、特に子どものいる世帯での減額割合が大きくなることが想定されたことから、従前の生活扶助基準によって具体化されていた被保護者の期待的利益を一定程度保護するための激変緩和措置として 、平成25年検証の結果を反映させる比率を2分の1とする措置を採った。厚生労働大臣が保護費が増額となる世帯を含めて上記措置を採ったのは、ゆがみ調整が年齢差、世帯人員差及び地域差による相対的不公平さを是正することを目的としていたことに鑑み、平成25年検証の結果をできるだけ公平に反映するためであった。また、平成25年検証には 一定の統計上の限界が認められたこと、次の基準部会の定期的な検証において更なる評価、検証が予定されていたことも、上記措置を講じた根拠となっている。 エ前記のとおり、基準部会の検証結果は、広範な裁量権を有する厚生労働大臣の考慮要素の一つに位置付けられるにすぎず、厚生労働大臣の裁 たことも、上記措置を講じた根拠となっている。 エ前記のとおり、基準部会の検証結果は、広範な裁量権を有する厚生労働大臣の考慮要素の一つに位置付けられるにすぎず、厚生労働大臣の裁 量判断を法的に拘束するものではない。また、基準部会が作成した平成 25年報告書は、ゆがみ調整による検証結果をそのまま生活扶助基準に反映することを求めておらず、かえって、子どものいる世帯への影響に配慮する必要がある旨を指摘しており、厚生労働大臣は、このような基準部会における平成25年報告書の内容を踏まえて上記措置を採ったものである。 オしたがって、上記ゆがみ調整を2分の1とした措置は財政削減を目的としたものでないことは明らかであり、当該措置も含めた一連の激変緩和措置を講じた厚生労働大臣の判断の過程に過誤、欠落等があることを示す明白な事情があるとはいえず、その判断に裁量権の逸脱又は濫用は認められない。 ⑷ 争点⑷(デフレ調整の違法性の有無)について(原告らの主張の要旨)ア物価を考慮するデフレ調整の手法は従前採用されていた水準均衡方式から逸脱するものであり、その採用には専門的検討を要したこと昭和59年度以降、本件改定まで30年以上にわたり、生活扶助基準 の改定に際しては水準均衡方式が採用されていたものであり、一般国民の消費実態との比較により生活扶助基準を設定する水準均衡方式において、消費に大きな影響は持つが消費実態そのものではない物価を本格的に考慮することは水準均衡方式の本質と矛盾し許されず、生活扶助基準の改定に当たって物価を本格的に考慮するためには、水準均衡方式では なく新たな生活扶助基準の改定方式の構築が必要であった。デフレ調整は、生活扶助基準の設定に当たって物 し許されず、生活扶助基準の改定に当たって物価を本格的に考慮するためには、水準均衡方式では なく新たな生活扶助基準の改定方式の構築が必要であった。デフレ調整は、生活扶助基準の設定に当たって物価を考慮するというもので、昭和59年以降非常に長い間にわたって用いられてきた従前の水準均衡方式に基づく生活扶助基準改定の手法を大幅に変更するものであり、このようなデフレ調整の手法を採用するためには、当該手法の採用の可否や、 物価をどの程度基準に反映させるか等の極めて高度の専門的検討が必要 であったから、厚生労働大臣はデフレ調整の採用に当たって基準部会等の専門家に対し、消費者物価指数や賃金の動向を生活扶助基準改定の指標とすることや従前採用していた水準均衡方式を変更することについて諮問すべきであったのにそれを怠った。 イデフレ調整における平成20年の生活扶助相当CPIの算出方法は国際 基準を逸脱しており、学説上の裏付けもないこと 厚生労働大臣は、平成20年の生活扶助相当CPI及び平成23年の生活扶助相当CPIを算出するに当たって、平成22年を基準時としているが、消費者物価指数に関する国際基準において採用されているラスパイレス式やパーシェ式では、基準時は比較時よりも過去の時点に設定 しなければならないとされているから、平成20年の生活扶助相当CPIを算出するに当たって同年より未来の時点である平成22年を基準時としたことは、国際基準を逸脱している。また、生活扶助相当CPIの算出方法には、何らの学説上の裏付けもなく、その有効性は確認されていない。 平成22年を基準時としたことによって、平成20年の生活扶助相当CPIは「新しい時点を基準にして旧い時点での変化はどの程度であっ 裏付けもなく、その有効性は確認されていない。 平成22年を基準時としたことによって、平成20年の生活扶助相当CPIは「新しい時点を基準にして旧い時点での変化はどの程度であったか」を示す価格比の平均値であるのに対して、平成23年の生活扶助相当CPIは「旧い時点を基準にして新しい時点での変化はどの程度であったか」を示す価格比の平均値であり、それぞれ性質の異なる価格比 になっている。したがって、平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIは計算論理が全く異なり、これらの比較によって正確な物価下落率を算定することはできない。また、「新しい時点を基準にして旧い時点での変化はどの程度であったか」を示す価格比で算出された指数値は過大に算出される傾向があるから、平成20年の生活 扶助相当CPIは過大に算出されたものといえる。 ウデフレ調整において、平成20年の生活扶助相当CPIはパーシェ式により、平成23年の生活扶助相当CPIはラスパイレス式により算出したことが不適切であることラスパイレス式では指数の上昇率が高くなる傾向(上方バイアス)が生じ、パーシェ式では指数の上昇率が低くなる傾向(下方バイアス) が生じる。このように計算論理の異なる指数を比較して変化率を計算する方法では、物価水準の変動を正確に把握することができない。 被告らの主張する代替バイアス(時間の経過と共に相対的に安くなる財へと代替するようになる消費者の能力を考慮していないことによって生じる誤差)は、指数の作成期間が長期の場合に経験的な傾向と して認められるものであり、理論的には、価格と購入数量の間に負の相関関係を想定し得るような消費行動を仮定した場合に「ラスパイレス指数>パーシェ指数」の関係が 期間が長期の場合に経験的な傾向と して認められるものであり、理論的には、価格と購入数量の間に負の相関関係を想定し得るような消費行動を仮定した場合に「ラスパイレス指数>パーシェ指数」の関係が成立するというにとどまる。したがって、パーシェ式により算出した平成20年の生活扶助相当CPI及びラスパイレス式により算出した平成23年の生活扶助相当CPIに どの程度のバイアスが付加されているのかは予測不能であり、これらによって把握された物価下落率は不正確である。 エデフレ調整において、平成20年を起点として生活扶助相当CPIを算出したことが不合理であること平成20年は、世界的な原油価格や穀物価格の高騰を受けて、石油製 品や多くの食料品の物価が上昇した年であり、同年の全国平均の総合の総務省CPIは11年ぶりに前年比で1%を超えて1.4%上昇し、平成13年から平成25年までの13年間で最も高い値を示している。 他方、生活扶助基準は、平成17年度に多人数世帯の基準の是正が行われた後、本件改定に至るまで改定されておらず、平成19年から平成 20年にかけての特異な物価上昇を反映した基準とはなっていなかっ た。すなわち、平成16年には、勤労3人世帯の生活扶助基準の水準は基本的に妥当と評価されており、平成19年には、生活扶助基準は一般低所得世帯の消費実態と比べて高めと評価されたものの、当時の原油価格の高騰が消費に与える影響を見極めるため、平成20年度の生活扶助基準額は変更されなかったものである。 そうすると、平年と比較して特に物価の高かった平成20年を起点とすれば、平成19年から平成20年にかけての大幅な物価上昇を考慮せず、平成20年以降の物価下落だけを考慮することとなり、物価下落率 うすると、平年と比較して特に物価の高かった平成20年を起点とすれば、平成19年から平成20年にかけての大幅な物価上昇を考慮せず、平成20年以降の物価下落だけを考慮することとなり、物価下落率を過大に評価することとなることは明白である。したがって、厚生労働省は、物価下落率を意図的に大きくするために平成20年を起点として 選択したことが窺われる。 オデフレ調整において、平成23年を終点として生活扶助相当CPIを算出したことが不合理であること生活扶助基準は「健康で文化的な最低限度の生活」の水準を示す重要なものであるから、その改定にあたっては最新のデータを使用した検証を行 わなければならない。一方、各年度の生活扶助相当CPIを算出するに際して必要となる500前後の品目について当該年度の価格指数を一覧表に入力する作業は厚生労働省の職員によって数時間で完了することが可能であり、平成24年の全国平均の総務省CPIが平成25年1月25日に総務省統計局から公表された後、同月29日に平成25年度予算政府案が閣 議決定され、同年8月1日に生活扶助基準が実際に引き下げられるまでの間に、平成24年の生活扶助相当CPIを算出し、これに基づく検証を行うことは十分に可能であった。生活扶助基準が憲法で保障された国民の生存権を具体化するものであることからすれば、厚生労働大臣は、たとえ平成25年度予算政府案が閣議決定された後であったとしても、平成24年 の生活扶助相当CPIを算出して、平成25年度予算政府案の前提となっ た生活扶助基準の改定が適切であるかを検討すべきであったといえる。 カデフレ調整において、一般世帯の品目別消費支出金額により算出した生活扶助相当CPIを用いたことが不合理であること厚生労働大 た生活扶助基準の改定が適切であるかを検討すべきであったといえる。 カデフレ調整において、一般世帯の品目別消費支出金額により算出した生活扶助相当CPIを用いたことが不合理であること厚生労働大臣は、平成22年の家計調査の全国平均の品目別支出金額に基づいて算出された各品目別ウエイト(当該品目の消費支出が全体の 消費支出に占める割合)に基づいて生活扶助相当CPIを算出しているが、平成22年の家計調査の調査対象とされた世帯のほとんどは、被保護世帯よりも圧倒的に年収が高い世帯であり、年収200万円未満の世帯の割合は調査対象とされた世帯の僅か2.8%だったのであるから、家計調査の各品目別のウエイトに基づいて生活扶助相当CPIを算出す ることは不合理である。また、社会保障生計調査及び家計調査の結果を踏まえれば、被保護世帯の消費支出額は一般世帯の約6割にとどまり、その消費支出の構造も一般世帯とは大きく異なる。したがって、厚生労働大臣は、上記家計調査における年間収入十分位階級別又は年間収入五分位階級別のデータから被保護世帯により近い消費生活実態を有すると 考えられる収入階級のデータを使用するか、被保護世帯を対象として実施された社会保障生計調査によって明らかとなった被保護世帯の消費支出のデータを使用して生活扶助相当CPIを算出すべきであった。 生活扶助相当CPIは、平成20年から平成23年にかけて大幅に下落しているが、その要因は、テレビ、ビデオレコーダー、パソコン等の 教養娯楽耐久財や家事用耐久財の物価が大幅に下落したことによるものである。被保護世帯における全体の消費支出に対する教養娯楽耐久財及び家事用耐久財の消費支出の割合は一般世帯に比して極めて低いものであり、上記物品の物価下落が被保護者世帯の需要の減少に大 とによるものである。被保護世帯における全体の消費支出に対する教養娯楽耐久財及び家事用耐久財の消費支出の割合は一般世帯に比して極めて低いものであり、上記物品の物価下落が被保護者世帯の需要の減少に大きな影響を与えることはないはずであり、生活扶助相当CPIにより平成20年か ら平成23年の被保護者世帯における需要の減少が過大に評価されてい る。 被告らは、家計調査の年間収入十分位階級別データ及び社会保障生計調査のデータには、品目別ウエイトの算出に必要な品目分類別の統計は存在せず、生活扶助以外の他扶助で賄われる品目及び原則として被保護世帯において支出することが想定されていない品目を除外できないし、 社会保障生計調査の精度には一定の限界があるから、いずれも生活扶助相当CPIを算定するための基礎資料としては適切でないと主張するが、家計調査の原票からデータを整理し直すことで、年間収入十分位階級別に品目別ウエイトを算出することが可能になるはずである。また、厚生労働省が生活扶助基準の改定等に必要な基礎資料を得る目的で行われる 社会保障生計調査の結果を勘案しないことについて合理性はない。仮に、これらのデータを使用しても被保護世帯の消費生活実態を適切に把握できるウエイトが算出できないとすれば、厚生労働大臣は生活扶助相当CPIを正確に算出するための統計データを持ち合わせていなかったことになり、本件改定に当たり、生活扶助相当CPIを敢えて使用したこと 自体、極めて不合理であるということになる。 キ生活扶助相当CPIの算出に当たり対象とされた品目に問題があること 平成23年の生活扶助相当CPIは、588の基礎品目から生活扶助以外の他扶助で賄われる品目及び被保護世帯において支出することが想定 CPIの算出に当たり対象とされた品目に問題があること 平成23年の生活扶助相当CPIは、588の基礎品目から生活扶助以外の他扶助で賄われる品目及び被保護世帯において支出することが想定されていない品目である71品目を除いた517品目についての品目 別価格指数に基づいて算出されているが、平成20年の生活扶助相当CPIは、上記517品目から更に32品目を除外した485品目についての品目別価格指数に基づいて算出されており、平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIは、それぞれ異なる品目に基づいて算出されたものであるから、これらの比較によって算定され た物価下落率には、統計学的根拠がないというべきである。 生活扶助相当CPIは、総務省CPIから、生活扶助以外の他扶助で賄われる品目及び原則として被保護世帯において支出することが想定されていない品目を除外した各生活扶助相当品目の価格比と全品目のウエイト合計に対して当該品目のウエイトが占める割合を用いた加重平均により算出される。したがって、生活扶助相当CPIの算出に当たって除 外される品目が多いほど、全品目のウエイト合計は小さく、各品目のウエイトが占める割合は大きくなるため、それに基づいて算出される生活扶助相当CPIも大きくなる。そして、平成20年の生活扶助相当CPIは、上記のとおり、総務省CPIの基礎品目数588品目から生活扶助以外の他扶助で賄われる71品目に加えて32品目を除外した上で 算出されているから、平成20年の生活扶助相当CPIは過大に算出されたものであるといえる。また、生活扶助相当CPIの算出に当たって除外されなかった品目の中にも被保護世帯の消費支出が大きくない品目が多数含まれており、その中には価格の下 扶助相当CPIは過大に算出されたものであるといえる。また、生活扶助相当CPIの算出に当たって除外されなかった品目の中にも被保護世帯の消費支出が大きくない品目が多数含まれており、その中には価格の下落幅とウエイトが大きい品目も少なくない。したがって、生活扶助相当CPIを使用したことにより、 平成20年から平成23年の物価下落率が過大に評価されている。 (被告らの主張の要旨)アデフレ調整をする必要性があったこと検討会による平成19年検証により、当時の生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比べて高いという結果が得られていたことから、一 般低所得者世帯の消費実態との適合性に考慮した生活扶助基準の見直しがされるべき状況にあったものの、平成20年度予算編成当時(平成19年12月)は、原油価格が高騰していたことから、この原油価格の高騰等が消費に与える影響等を見極める必要性を考慮し、生活扶助基準の見直しは、平成21年予算編成過程で適切に対応することとし、平成2 0年度における生活扶助基準は据え置くこととされた。 そして、平成20年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が生じたことにより、我が国では賃金、物価及び家計消費がいずれも継続的に下落するデフレ状況が生じることとなった。このようにデフレ状況が生じた場合、被保護世帯の可処分所得は実質的に増加することから、本来は、デフレ状況に基づいて生活扶助基準の水準(高さ)の見直 しを行うべきであるものの、当時、世界金融危機の影響が実体経済へ深刻な影響を及ぼしており、国民の将来不安が高まっている状況にあると考えられたこともあり、平成21年度においても生活扶助基準は据え置くこととされ、本件改定に至るまで、平成19年検証の結果を踏まえた生活扶助 響を及ぼしており、国民の将来不安が高まっている状況にあると考えられたこともあり、平成21年度においても生活扶助基準は据え置くこととされ、本件改定に至るまで、平成19年検証の結果を踏まえた生活扶助基準の見直しは行われなかった。 このように、デフレ傾向が続いているにもかかわらず生活扶助基準額が据え置かれていたことにより被保護世帯の可処分所得は実質的に増加している状況にあったほか、生活保護受給者数が急激に増加し、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法附則2条1項において早急な生活扶助の給付水準の適正化の実施が政策課題とされていたことから、 生活扶助給付水準の適正化を図る必要があった。 イデフレ調整において基準部会に諮問せず物価を考慮したことに問題がないこと 厚生労働大臣は生活扶助基準改定に係る広範な裁量権を認められており、改定に当たって外部の専門機関等の意見等を聴取することが法令 上の要件とされているものではない。基準部会の役割は、飽くまで当時の生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか等の定期的な検証を行うものにすぎないし、平成25年報告書においても、厚生労働大臣の合目的的裁量として、同報告書における検証結果を考慮した上で、更に同報告書における検証結果以外の合理的な経 済指標などを総合的に勘案することは否定されていない。厚生労働大臣 は、客観的な経済指標である消費者物価指数の動向を勘案してデフレ調整を行ったものであり、このような意味で同報告書を踏まえたものといえる。 厚生労働大臣は、昭和58年の意見具申以降、事実上水準均衡方式を生活扶助基準の改定指針として採用してきたにすぎないから、水準均衡 方式を変更することが妨げられるもの たものといえる。 厚生労働大臣は、昭和58年の意見具申以降、事実上水準均衡方式を生活扶助基準の改定指針として採用してきたにすぎないから、水準均衡 方式を変更することが妨げられるものではなく、厚生労働大臣は、本件改定に当たって水準均衡方式を採用していないから、本件改定において物価を考慮してデフレ調整を行ったことは不合理ではない。 専門委員会は、平成15年における中間取りまとめにおいて、消費者物価指数を改定の指標の一つとして用いることができることを前提とす る意見を述べており、実際に、水準均衡方式による毎年度の改定においても、消費以外の要素も含めたその時々の社会経済情勢等を総合的に勘案した改定が行われてきており、生活扶助の母子加算、障害者加算等の各種加算においては物価の伸び率を基礎とした改定が行われてきている。 ウデフレ調整における平成20年及び平成23年の生活扶助相当CPIの 算出方法に問題がないこと 平成20年生活扶助相当CPI及び平成23年生活扶助相当CPIを算出するに際し、平成22年家計調査の全国平均の品目別支出金額に基づいて算出された品目別ウエイトを使用したのは、平成20年から平成23年の3年間という短期間における消費構造の変化による影響は比較 的小さいと考えられたことから、消費構造の変化による影響を最小限に抑え、最新の国民の消費構造を反映する観点から、平成20年及び平成23年と直近の平成22年家計調査における品目別ウエイトを使用することが最も合理的であったからである。 分析的に検討すれば、平成20年の生活扶助相当CPIは物価変動後 の比較時点のウエイトを使用して指数を算出するパーシェ式により、平 成23年の生活扶助相当CPIは物価変動前の基準時点の 析的に検討すれば、平成20年の生活扶助相当CPIは物価変動後 の比較時点のウエイトを使用して指数を算出するパーシェ式により、平 成23年の生活扶助相当CPIは物価変動前の基準時点のウエイトを使用して指数を算出するラスパイレス式により、それぞれ算出したものと評価できるところ、この算出方法は、国際規準として原告らが引用する消費者物価指数マニュアルにも掲載されているロウ指数の算出方法と同様の考え方に依拠したものであり、ロウ指数の算出に当たっては比較す る2つの時点の間の任意の時点をウエイト参照時点とすることができるとされている。また、ラスパイレス式は基準時後の消費構造の変化による影響が加味されないために指数の上昇率が高くなる傾向(上方バイアス)が生じ、パーシェ式は、逆に指数の上昇率が低くなる傾向(下方バイアス)が生じることから、平成20年の生活扶助相当CPI及び平成 23年の生活扶助相当CPIは真実の物価指数の値が存在する範囲の上限と下限の間に位置するといえる。 総務省は総務省CPIの算定に当たって速報性やコスト面に優れたラスパイレス式を採用しているが、これは、直近時点のウエイトを知ることが困難であるとの実務上の理由によるものにすぎず、消費者物価指数 を算出するための指数としてラスパイレス指数が正しく、他の指数が誤っていることを意味するものではない。 原告らは、平成20年の生活扶助相当CPIを算出するに当たって基準時を平成22年としたことにより、基準時を比較時よりも過去の時点に設定しなければならないとの国際基準を逸脱した、平成20年の生活 扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIの計算論理が全く異なり、これらの比較によって正確な物価下落率を算定することはできないと主 ればならないとの国際基準を逸脱した、平成20年の生活 扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIの計算論理が全く異なり、これらの比較によって正確な物価下落率を算定することはできないと主張するが、原告らは、基準時を「一定の期間内の期首に相当する年」、比較時を「期首と期末間の各年」を指す概念として使用しているから、基準時が比較時以前の時点とならない物価指数は論理的に存在し得 ないし、原告らの上記主張を、ウエイト参照時点を比較時点より過去の 時点に設定すべきとの主張と解したとしても、ウエイト参照時点は上記のとおり任意の時点に設定できる。 また、平成20年の生活扶助相当CPIはパーシェ式、平成23年の生活扶助相当CPIはラスパイレス式により算出したものであるが、これらはいずれもロウ指数という統一の定義式で表すことのできる指数で あり、どの時点のウエイトを採るかが異なるに過ぎず、両者の比較によって物価変動を算定することができないとはいえない。 原告らは、平成20年の生活扶助相当CPIは「新しい時点を基準にして旧い時点での変化はどの程度であったか」を示す価格比の平均値であるのに対して、平成23年の生活扶助相当CPIは「旧い時点を基準 にして新しい時点での変化はどの程度であったか」を示す価格比の平均値であり、これらの比較によって正確な物価下落率を算定することはできないと主張するが、平成20年の生活扶助相当CPI及び平成23年の生活扶助相当CPIは、平成22年をウエイト参照時点として各年の物価指数を算出したものであり、平成22年から平成20年の物価変動 率や平成22年から平成23年の物価変動率を算出したものではない。 したがって、原告らの上記主張は理由がない。 エデフレ調 指数を算出したものであり、平成22年から平成20年の物価変動 率や平成22年から平成23年の物価変動率を算出したものではない。 したがって、原告らの上記主張は理由がない。 エデフレ調整の起点を平成20年としたことに合理性があること厚生労働大臣は、前記アの事情に加え、平成21年度以降は消費・物価・賃金等がいずれも下落するデフレ傾向が続いており、一般低所得世 帯の消費水準が下落していたにもかかわらず、被保護世帯では生活保護基準が据え置かれたことによって可処分所得が実質的に増加したことを考慮し、平成20年を起点とした物価変動率を算出する旨の判断をしたものである。 厚生労働大臣は、本件保護基準改定のデフレ調整において生活扶助相 当CPIを算出するに当たり、いずれの年を選択して比較するかをその 合理的な裁量の範囲内において決定することができ、必ずしも専門家による検討結果を踏まえる必要はなく、専門家による検討結果に拘束されるものでもない。 原告らは、生活扶助基準が一般低所得者世帯の消費実態との均衡上妥当であったと確認されていた平成16年をデフレ調整の起点とすべきと 主張するが、デフレ調整の目的は、デフレ傾向が続くことによって被保護世帯の可処分所得が実質的に増加していることを踏まえて生活保護基準の適正化を図る点にあるところ、平成16年から平成19年までの消費者物価指数はほぼ横ばいであり、デフレ傾向は生じていなかったものであるから、平成16年から平成19年までの期間の消費者物価指数を 考慮する必要はない。 オデフレ調整の終点を平成23年としたことに合理性があること本件改定を検討した時点において、現実的に利用可能であった全国年平均の総務省CPIのうち、最新のものが平成 要はない。 オデフレ調整の終点を平成23年としたことに合理性があること本件改定を検討した時点において、現実的に利用可能であった全国年平均の総務省CPIのうち、最新のものが平成23年のもの(平成24年1月27日公表)であったことから、デフレ調整の終点を平成23年 としたものであり、その判断は合理的である。 前記エと同じ。 平成24年の全国平均の総務省CPIが公表されたのは、平成25年度予算政府案が閣議決定された日(平成25年1月29日)の僅か4日前(同月25日)であり、予算政府案は、各省庁の概算要求等を考慮し た上で多方面にわたる複雑な調整が必要となるなど、その作成から閣議決定に至るまでに長期間を要するものであることからすれば、平成25年度予算政府案の検討において、平成24年度の全国平均の総務省CPIを利用することは現実的に困難であった。 オデフレ調整において家計調査の全国平均の品目別支出金額に基づいて 算出された品目別ウエイトに基づいて生活扶助相当CPIを算出したこ とに問題がないこと 厚生労働大臣は、①デフレ傾向によって被保護世帯の可処分所得が実質的に増加した程度を的確に把握するために、全ての消費品目から生活扶助以外の他扶助で賄われる品目及び生活扶助で支出することが想定されていない品目を詳細に除外して生活扶助相当CPIを算出する必要が あったこと、②総務省統計局が実施している統計法上の基幹統計である家計調査は、調査対象世帯の選定方法も含め、統計資料としての精度が高いだけではなく、詳細な品目別の支出額が調査の対象となっており、品目別のウエイトを把握するのに最も適したデータであり、実際に多くの社会保障制度の給付額の改定で利用されていること、③生活扶 の精度が高いだけではなく、詳細な品目別の支出額が調査の対象となっており、品目別のウエイトを把握するのに最も適したデータであり、実際に多くの社会保障制度の給付額の改定で利用されていること、③生活扶助基準 は、本件改定まで、水準均衡方式等によって、一般国民の消費実態との均衡を図る観点から改定が行われてきており、一般国民の消費を表す家計調査の品目別ウエイトのデータを用いることは、従来の改定手法とも整合することから、生活扶助相当CPIの算出に当たって、総務省統計局の家計調査における全国平均の品目別支出金額に基づいて算出された 品目別ウエイトのデータを使用することが合理的かつ適当であると判断したものである。 原告らは、厚生労働大臣は、総務省の家計調査における年間収入十分位階級別又は年間収入五分位階級別のデータから、全国平均の品目別ウエイトではなく、被保護世帯とより近い消費生活実態を有すると考えら れる収入階級のウエイトを算定することや、社会保障生計調査における被保護世帯の消費支出のデータを使用して被保護世帯におけるウエイトを算出することが可能であったと主張するが、総務省の家計調査における年間収入十分位階級別及び年間収入五分位階級別のデータには、品目別ウエイトの算出に必要な品目分類別の統計データは存在しないため、 これらのデータを使用して生活扶助以外の他扶助で賄われる品目及び生 活扶助で支出することが想定されていない品目を除外したウエイトを算出することはできなかった。また、社会保障生計調査は、生活保護基準の改定等に必要な基礎資料を得る目的で行われる一般統計調査ではあるが、調査世帯の選定において地域等による偏りが生じる可能性があることや、サンプル数が必ずしも多くないことなどを踏まえると、被保護世 準の改定等に必要な基礎資料を得る目的で行われる一般統計調査ではあるが、調査世帯の選定において地域等による偏りが生じる可能性があることや、サンプル数が必ずしも多くないことなどを踏まえると、被保護世 帯全体の家計支出の状況を推測する精度に一定の限界があることは否定できない。さらに、社会保障生計調査は、被保護者世帯の生活実態を把握する調査であって、被保護世帯の詳細な支出先や支出額を把握するものではないから、個別品目の消費支出の割合等を正確かつ詳細に記載させるための措置が講じられておらず、その調査結果を分析しても、おお まかなウエイト(例えば、食料・外食のウエイト)を把握できるにとどまり、家計調査の全国平均の品目別支出金額のデータのように詳細な品目ごとのウエイトは把握できるものではなかった。したがって、上記各データは、生活扶助相当CPIの算出の際の基礎資料として適したものとはいえず、厚生労働大臣が上記各データを用いなかったことには合理 的な理由がある。 原告らは、デフレ調整において被保護者世帯における消費支出の割合が一般世帯に比して極めて低い教養娯楽耐久財及び家事用耐久財の物価下落により被保護者世帯における需要の減少が過大に評価されていると主張するが、厚生労働省が平成22年に実施した家庭の生活実態及び生 活意識に関する調査によれば、被保護者世帯においても電化製品が相当程度普及していることが明らかであり、被保護者世帯であっても電化製品を生活扶助で購入することが十分予想される。 カ平成20年及び平成23年の生活扶助相当CPIにおいて基礎となる品目が異なることに問題はないこと 平成22年総務省CPIの基礎品目に追加された32品目は、平成2 0年の時点では調査の対象とさ の生活扶助相当CPIにおいて基礎となる品目が異なることに問題はないこと 平成22年総務省CPIの基礎品目に追加された32品目は、平成2 0年の時点では調査の対象とされていなかったため、平成20年の生活扶助相当CPIの算定において考慮することはできないが、上記32品目は平成22年の家計消費支出の実態の中から重要なものとして新たに選ばれた品目であって、これらを除外して平成23年の生活扶助相当CPIを算定することは、かえって最新の消費構造を指数算定に反映しな いこととなり、妥当でない。 また、生活扶助相当CPIの算出に使用した各品目別価格指数は、総務省の専門的知見を踏まえて客観的に集計及び算定された指数(結果)であるから、特定の品目の価格の下落幅が大きくかつそのウエイトが大きいからといってそれを除外又は修正することは、上記数値を不当に操 作するものであって許されないというべきである。 仮に、平成23年の生活扶助相当CPIを算出するに際し、平成22年に新たに加わった32品目を除外し、基礎となる品目を同一とした上で各生活扶助相当CPIを算出した場合、その下落率は上記32品目を除外しないで算出した場合よりむしろ大きくなる。 また、生活扶助相当CPIの算出においては、被保護者世帯が現に支出する品目についてどの程度の物価の下落があったのかを調べるため、①生活扶助以外の他扶助で賄われる品目及び②被保護者世帯において支出することが想定されていない品目を除外して指数を算出することが合理的であるところ、上記①及び②の品目の除外により、除外後の品目の ウエイトが除外前のものより相対的に大きくなるのは当然であり、このことは、物価が下落した品目に限らず、算定に使われた生活扶助相当 的であるところ、上記①及び②の品目の除外により、除外後の品目の ウエイトが除外前のものより相対的に大きくなるのは当然であり、このことは、物価が下落した品目に限らず、算定に使われた生活扶助相当品目の全てについて当てはまることからすると、平成20年の生活扶助相当CPIを算出するに当たって生活扶助以外の他扶助で賄われる品目等を除外したことにより物価下落のみが過大に評価されたものとはいえな い。 ⑸ 争点⑸(ゆがみ調整〔2分の1処理〕とデフレ調整を併せて行ったことの違法性の有無)について(原告らの主張の要旨)本件改定前の生活扶助基準は、従前採用されていた水準均衡方式により、物価変動による影響を受けた一般国民の消費実態を反映したものである。 また、本件改定の際のゆがみ調整においても、第1・十分位に属する世帯の消費支出と生活扶助基準を比較した検討がされており、物価変動の影響は反映されている。したがって、ゆがみ調整に加えてさらにデフレ調整を行うことは、明らかに物価の二重評価をしたこととなり、不合理である。 (被告らの主張の要旨) アデフレ調整が物価の動向を踏まえて生活扶助基準の水準を適正にするものであるのに対し、ゆがみ調整は、既に生活扶助基準の水準(高さ)が定まっていることを前提に、その基準を年齢別、世帯人員別、級地別に展開するものであり、両者は目的を異にしている。 イゆがみ調整は、ゆがみ調整を行う時点における年齢別、世帯人員別及 び級地別の消費実態の「分布」を評価するものであって、特定の期間における消費実態や物価の「変動」を考慮するものではないから、物価変動による影響を受けない。また、ゆがみ調整は、生活扶助基準額の給付水準の絶対的な適正化を図るものではなく、比較対象とされた 定の期間における消費実態や物価の「変動」を考慮するものではないから、物価変動による影響を受けない。また、ゆがみ調整は、生活扶助基準額の給付水準の絶対的な適正化を図るものではなく、比較対象とされた第1・十分位に属する世帯との比較によって相対的な適正化を図るもの(生活扶 助基準と一般低所得世帯の消費実態とを指数を用いて相対比較することにより判明した乖離を調整するもの)にとどまる。 ウしたがって、ゆがみ調整とデフレ調整は重複しない。 ⑹ 争点⑹(適切な激変緩和措置が採られたか)について(原告らの主張の要旨) ア本件改定前の生活扶助基準すら既に最低限度の生活水準に達するもので はなかったのであり、本件改定により保護費が更に減額されれば、3年間をかけて段階的に本件改定を実施する激変緩和措置が採られたとしても、被保護世帯が最低限度の生活を維持することはできなくなる。 イまた、厚生労働省が生活扶助基準の引下げを公表した平成25年1月27日からわずか2日後の同月29日には平成25年度予算政府案が閣議決 定され、同年5月16日には厚生労働大臣が本件改定を決定し、その約2か月半後の同年8月1日には本件改定による減額が開始されており、この間に、本件改定が被保護世帯に与える影響について十分に検討がなされた様子はない。 ウしたがって、上記の措置を本件改定による被保護者への影響を十分に考 慮した適切な激変緩和措置であると評価することはできない。 (被告らの主張の要旨)ア厚生労働大臣は、「生活扶助基準の見直しを検討する際には、(中略)現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重に配慮されたい」との基準部会の指摘を踏まえ、本件 改定に当たり、生活扶助基 直しを検討する際には、(中略)現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重に配慮されたい」との基準部会の指摘を踏まえ、本件 改定に当たり、生活扶助基準の引下げを平成25年度から3年間かけて段階的に実施(期末一時扶助を除く)するとともに、生活扶助基準の見直しの影響を一定程度に抑える観点から、本件改定前の生活扶助基準からの増減幅に上限と下限を設けて、プラスマイナス10%を超えないように調整する激変緩和措置を講じている。 イこのように、厚生労働大臣は、本件改定に当たり被保護者の期待的利益に配慮し、その生活水準の急激な低下を防止するために適切な激変緩和措置を採用している。 ⑺ 争点⑺(本件改定後の生活扶助基準が健康で文化的な最低限度の生活水準を下回っているか)について (原告らの主張の要旨) 厚生労働大臣が定める生活扶助基準は、最低限度の生活水準に合致した適正なものでなければならないが、専門家による各種の調査及び各原告の生活実態を踏まえると、本件改定前の生活扶助基準ですら既に最低生活費を下回る(最低限度の生活水準を維持するに足りない)ものであり、その生活扶助基準を更に引き下げる本件改定が、実体面からみても最低限度の生活水準に 合致せず、厚生労働大臣の裁量権を逸脱・濫用したものであることは明らかである。 (被告らの主張の要旨)原告らの主張については否認ないし争う。 ⑻ 争点⑻(本件改定が政治的意図に基づき行われたか)について (原告らの主張の要旨)ア自民党は、平成24年3月1日、生活保護給付の削減を目指して「生活保護に関するプロジェクトチーム」を設置し、同年12月の衆議院議員選挙における政権公約では、同チームの結論に基づき 要旨)ア自民党は、平成24年3月1日、生活保護給付の削減を目指して「生活保護に関するプロジェクトチーム」を設置し、同年12月の衆議院議員選挙における政権公約では、同チームの結論に基づき、生活扶助基準を原則として10%引き下げることを明示していた。当該政権公約は、生 活扶助基準引下げの理由として、勤労者の所得(賃金)水準、年金との比較、財政悪化を挙げているが、これらの事項は昭和59年から生活扶助基準の改定方式とされてきた水準均衡方式においては指標として用いることが想定されていない事項であった。 また、当時の田村憲久厚生労働大臣は、平成24年12月から平成25 年1月にかけて、基準部会による最終報告を待たずして、自民党から選出された大臣としては生活扶助基準の10%の引き下げという政権公約の制約を受けていると述べ、平成25年報告書が作成される前に、生活扶助基準を引き下げないということはないことを明言していた。 イ上記アに挙げた事情からすると、本件改定は、生活保護法8条2項に定 める考慮事項ではない、平成24年12月衆議院議員選挙における自民 党の政権公約の実現という政治的意図を考慮したもので、そのことによって専門技術的考察が歪められたことが明らかである。したがって、本件改定は統計による客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠き、厚生労働大臣がその裁量権の行使を誤った違法なものというべきである。 (被告らの主張の要旨)ア本件改定は、①基準部会の検証結果に基づき、年間収入階級の第1・十分位の世帯の消費実態と生活扶助基準の年齢、世帯人員、居住地域別の較差を是正する(ゆがみ調整)とともに、②近年デフレ傾向が続いてきた中で生活扶助基準額が据え置かれてきたことを踏まえ、客観 の第1・十分位の世帯の消費実態と生活扶助基準の年齢、世帯人員、居住地域別の較差を是正する(ゆがみ調整)とともに、②近年デフレ傾向が続いてきた中で生活扶助基準額が据え置かれてきたことを踏まえ、客観的な経済指標で ある消費者物価指数の近年の動向を勘案して必要な適性化を図る(デフレ調整)ことを意図して行われたものである。生活扶助基準の見直しの必要性は、平成19年報告書の検証結果により既に明らかとなっており、原油価格の高騰や世界金融危機の影響等を考慮して、その見直しが見送られてきたにすぎない。 イ本件改定当時の厚生労働大臣は、生活扶助基準の見直しについて、検討会や基準部会による報告等を踏まえて検討する必要性があることを強調して、生活保護費の10%引下げという自民党の政権公約に盲従するものではないことを明らかにしており、その結果行われた本件改定は、3年間で生活保護費全体の2.3%を削減するというものにとどまっている。 ウしたがって、本件改定が政治的な意図で行われたものでないことは明らかである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実並びに各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実 が認められる。 ⑴ 専門委員会による平成15年検証(平成16年報告書)ア社会保障審議会は、平成15年6月16日、「今後の社会保障改革の方向性に関する意見」において、「生活保護については、(中略)今後その在り方についてより専門的に検討していく必要がある」旨指摘した。(乙A12の1) イ内閣は、平成15年6月27日、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」を閣議決定した。そこでは、「生活保護(中略)においても、物価、賃金動向、社会経済情勢の変化、年金制度改 イ内閣は、平成15年6月27日、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」を閣議決定した。そこでは、「生活保護(中略)においても、物価、賃金動向、社会経済情勢の変化、年金制度改革などとの関係を踏まえ、老齢加算等の扶助基準など制度、運営の両面にわたる見直しが必要である。」とされた。(乙A12の2) ウ上記ア及びイ等を踏まえ、平成15年7月28日の社会保障審議会福祉部会において、保護基準の在り方等の生活保護制度全般について議論するため、同部会の下に専門委員会が設置された。専門委員会は、平成15年8月から同年12月に至るまで合計6回にわたり開催され、保護基準の在り方等を始めとする生活保護制度全般についての議論が行われた(平成1 5年検証)。(甲A49、乙A12の1及び2、乙A13、81)エ専門委員会は、平成15年12月16日、生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ(甲A49、乙A13。以下「平成15年中間取りまとめ」という。)を公表した。同中間取りまとめには、生活扶助基準の改定方式の在り方について、要旨、以下の内容が記載されている。 生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであり、具体的には、年間収入階級第1・十分位の世帯の消費水準に着目することが適当である。 昭和59年度以降採用されてきた水準均衡方式については概ね妥当であると認められてきたが、最近の経済情勢はこの方式を採用した当時 と異なることから、例えば5年間に一度の頻度で、生活扶助基準の水準 について定期的に検証を行うことが必要である。 定期的な検証を行うまでの毎年の改定については、近年、民間最終消費支出の伸びの見通しがプラス、実績 年間に一度の頻度で、生活扶助基準の水準 について定期的に検証を行うことが必要である。 定期的な検証を行うまでの毎年の改定については、近年、民間最終消費支出の伸びの見通しがプラス、実績がマイナスとなるなど安定しておらず、また、実績の確定も遅いため、これによる被保護世帯への影響が懸念されることから、改定の指標の在り方についても検討が必要である。 この場合、国民にとって分かりやすいものとすることが必要なので、例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる。 なお、急激な経済変動があった場合には、機械的に改定率を設定するのではなく、最低生活水準確保の見地から別途対応することが必要であ る。 オ専門委員会は、平成15年の中間取りまとめの公表に引き続いて、生活扶助基準の検証を行い、平成16年12月15日、平成16年報告書を公表した。平成16年報告書には、要旨、以下の内容が記載されている。(甲A3、乙A4) 生活保護制度の見直しの方向性について平成16年報告書は、平成15年の中間取りまとめの公表以降引き続き行った保護基準の妥当性の検証・評価及び自立支援等生活保護の制度・運用の在り方に関する検討を踏まえ、その改善の方向を示したものである。 生活保護基準の在り方についてa 生活扶助基準の評価・検証等について評価・検証水準均衡方式を前提とする手法により、勤労3人世帯の生活扶助基準について、低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評 価した結果、その水準は基本的に妥当であったが、今後、生活扶助 基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態 おいて検証・評 価した結果、その水準は基本的に妥当であったが、今後、生活扶助 基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要がある。なお、生活扶助基準の検証に当たっては、平均的にみれば、勤労基礎控除も含めた生活扶助基準額が一般低所得世帯の消費における生活扶助相当額よりも高くなって いること、また、各種控除が実質的な生活水準に影響することも考慮する必要がある。 また、これらの検証に際しては、地域別、世帯類型別等に分けるとともに、調査方法及び評価手法についても専門家の知見を踏まえることが妥当である。同時に、捕捉率(生活保護の受給要件を満た す世帯がどれだけ実際に生活保護を受けているか)についても検証を行う必要があるとの指摘があった。 ⒝ 設定及び算定方法現行の生活扶助基準の設定は3人世帯を基軸としており、また、算定については、世帯人員数分を単純に足し上げて算定される第1 類費(個人消費部分)と、世帯規模の経済性、いわゆるスケールメリットを考慮し、世帯人員数に応じて設定されている第2類費(世帯共同消費部分)とを合算する仕組みとされているため、世帯人員別にみると、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていない。このため、特に次の点について改善が図られるよう、 設定及び算定方法について見直しを検討する必要がある。 ① 多人数世帯基準の是正かねてより、生活扶助基準は多人数になるほど割高になるとの指摘がなされているが、これは人数が増すにつれ第1類費の比重が高くなり、スケールメリット効果が薄れるためである。このた め、平成15年中間取りまとめにおいて指摘した第2類費の構成 との指摘がなされているが、これは人数が増すにつれ第1類費の比重が高くなり、スケールメリット効果が薄れるためである。このた め、平成15年中間取りまとめにおいて指摘した第2類費の構成 割合及び多人数世帯の換算率に関する見直しのほか、世帯規模の経済性を高めるような設定等について検討する必要がある。 ② 単身世帯基準の設定平成15年中間取りまとめで指摘したとおり、単身世帯の生活扶助基準についても、多人数世帯の基準と同様、必ずしも一般低 所得世帯の消費実態を反映したものとなっていない。また、被保護世帯の7割は単身世帯が占めていること、近年、高齢化の進展や扶養意識の変化に伴って高齢単身世帯の増加が顕著となっており、今後もさらにその傾向が進むと見込まれる。これらの事情に鑑み、単身世帯については、一般低所得世帯との均衡を踏まえて 別途の生活扶助基準を設定することについて検討することが必要である。 ③ 第1類費の年齢別設定の見直し平成15年中間取りまとめにおいても指摘したとおり、人工栄養費の在り方も含めた0歳児の第1類費や、第1類費の年齢区分 の幅の拡大などについて見直しが必要である。 b 級地現行級地制度については、昭和62年度から最大格差22.5%、6区分制とされているが、現在の一般世帯の生活扶助相当消費支出額をみると、地域差が縮小する傾向が認められたところである。このた め、市町村合併の動向にも配慮しつつ、さらに今後詳細なデータによる検証を行った上、級地制度全般について見直しを検討することが必要である。 c その他なお、前記aの定期的な評価を行う際には、今回行われた基準の 見直しに係る事項についても評価の対象とし、専門家による委員会等 において詳細な分析や検証を 要である。 c その他なお、前記aの定期的な評価を行う際には、今回行われた基準の 見直しに係る事項についても評価の対象とし、専門家による委員会等 において詳細な分析や検証を行い、被保護世帯の生活への影響等も十分調査の上、必要な見直しを検討することが求められる。 d 制度の実施体制(財源の確保)について生活保護制度は国が国民の最低生活を保障する制度である。このため、いかなる突発的な事情や経済的・社会的環境の変化に際しても、 財政事情等によって給付水準や保護の認定・運用のばらつきを生じさせることなく、憲法上保障された生存権を保障する機能を果たし、社会的不安定が生じることを防ぐ必要がある。 カ平成16年報告書を踏まえ、平成17年度に、生活扶助基準について、20歳未満の若年層について8区分がされていたものを4区分に簡素化し、 平成19年にかけて4人以上の世帯の基準額の算定に当たって第1類費を合算する際に逓減率を導入することにより規模の経済(スケールメリット)の影響を反映させる旨の見直しが行われた。(乙A22の3頁)⑵ 検討会による平成19年検証(平成19年報告書)ア内閣は、平成18年7月、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針 2006」を閣議決定した。上記閣議決定では、生活保護(扶助)の見直しに関して以下のとおりの指摘があった。(乙A14の1、14の2) 以下の内容について、早急に見直しに着手し、可能な限り平成19年度に実施し、間に合わないものについても平成20年度には確実に実施する。 a 生活扶助基準について、低所得世帯の消費実態等を踏まえた見直しを行う。 b 級地の見直しを行う。 現行の生活保護制度は抜本的改革が迫られており、早急に 実に実施する。 a 生活扶助基準について、低所得世帯の消費実態等を踏まえた見直しを行う。 b 級地の見直しを行う。 現行の生活保護制度は抜本的改革が迫られており、早急に総合的な検討に着手し、改革を実施する。 イ平成16年報告書及び上記アの閣議決定を受けて、平成19年に、厚 生労働省社会・援護局長の下部組織として、学識経験者5名を委員とする検討会が設置された。検討会は、同年10月19日から同年11月30日までの間、合計5回にわたり開催され、直近の全国消費実態調査等に基づき、①生活扶助基準の水準の妥当性(生活扶助基準の水準が保護を受給していない低所得世帯における消費実態との均衡が適切に図られ ているかどうかに関する評価・検証)、②生活扶助基準の体系の妥当性(第1類費及び第2類費の合算によって算出される基準額が消費実態を反映しているかどうかに関する評価・検証)、③地域差の妥当性(現行の級地制度においては、最も高い級地と最も低い級地の基準額の較差が22. 5%となっているが、これが地域間における生活水準の差を反映してい るかどうかに関する評価・検証)及び④その他について、評価及び検証を行った(平成19年検証)。(乙A5、14の1)ウ検討会は、平成19年11月30日、平成19年検証の結果に基づき、平成19年報告書を作成し、公表した。平成19年報告書には、要旨、以下の内容が記載されている。(甲A4の1、乙A5) 検討の趣旨・目的等検討会では、前記イの検討項目について、直近の全国消費実態調査の結果等を用いて、主に統計的な分析をもとに、専門的かつ客観的に評価・検証を実施した。 厚生労働省において生活扶助基準の見直しを行う場合には、平 討項目について、直近の全国消費実態調査の結果等を用いて、主に統計的な分析をもとに、専門的かつ客観的に評価・検証を実施した。 厚生労働省において生活扶助基準の見直しを行う場合には、平成1 9年報告書の評価・検証の結果を参考とされるよう期待するものである。 生活扶助基準の評価・検証a 評価・検証の方法生活扶助基準の評価・検証を適切に行うためには、国民の消費実 態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全国消費実態調査 を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別及び地域別等の様々な角度から詳細に分析することが適当である。 b 生活扶助基準の水準基本的な考え方生活扶助基準の水準は、健康で文化的な最低限度の生活を維持 することができるものでなければならないが、その具体的内容は、その時代の経済的・文化的な発達の程度のほか、国民の公平感や社会通念等に照らして総合的に決まるものである。実際の生活扶助基準の設定に当たっては、水準均衡方式が採用されていることから、その水準は、国民の消費実態との関係、あるいは本人の過 去の消費水準との関係で相対的に決まるものと認識されている。 したがって、生活扶助基準の水準に関する評価・検証に当たっては、これらの点を総合的にみて妥当な水準となっているかという観点から行うことが必要である。 検討会では、被保護世帯のうち標準世帯である3人世帯のほか、 単身世帯にも着目して、同様に評価・検証を実施した。 ⒝ 消費実態との比較による評価・検証夫婦子1人(有業者あり)世帯の年間収入階級第1・十分位における生活扶助相当支出額(消費支出額から生活扶助に相当しないものを除いたもの。以下同じ。)は、世帯当たり14万8781 円であったのに対し、そ (有業者あり)世帯の年間収入階級第1・十分位における生活扶助相当支出額(消費支出額から生活扶助に相当しないものを除いたもの。以下同じ。)は、世帯当たり14万8781 円であったのに対し、それらの世帯の平均の生活扶助基準額は、世帯当たり15万0408円であり、生活扶助基準額がやや高めとなっている。なお、第1・五分位で比較すると、前者が15万3607円、後者が15万0840円であり、やや低めとなっている。 単身世帯(60歳以上)の年間収入階級第1・十分位における 生活扶助相当支出額は、世帯当たり6万2831円であったのに対して、それらの世帯の平均の生活扶助基準額は、世帯当たり7万1209円であり、生活扶助基準額が高めとなっている。なお、第1・五分位で比較すると、前者が7万1007円、後者が7万1193円であり、均衡した水準となっている。 生活扶助基準額は、これまで第1・十分位の消費水準と比較することが適当とされてきたが、①第1・十分位の消費水準は、平均的な世帯の消費水準に照らして相当程度に達していること、②第1・十分位に属する世帯における必需的な耐久消費財の普及状況は、平均的な世帯と比べて大きな差はなく、また、必需的な消 費品目の購入頻度は、平均的な世帯と比較しても概ね遜色ない状況にあることから、今回、これを変更する理由は特段ないと考える(ただし、これまで比較の対象としてきた夫婦子1人世帯の第1・十分位の消費水準は、第3・五分位の7割に達しているが、単身世帯〔60歳以上〕については、その割合が5割〔第1・五 分位でみると約6割〕にとどまっている点に留意する必要がある。)。なお、これまでの給付水準との比較も考慮する必要がある。 c 生活扶助基準の体系 基本的な考え方生活 1・五 分位でみると約6割〕にとどまっている点に留意する必要がある。)。なお、これまでの給付水準との比較も考慮する必要がある。 c 生活扶助基準の体系 基本的な考え方生活扶助基準の体系に関する評価・検証に当たっては、世帯構 成等が異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要である。 ⒝ 消費実態との比較による評価・検証① 世帯人員別の基準額の水準 世帯人員別に設定された生活扶助基準額の評価・検証を行う ため、第1・五分位における世帯人員別の生活扶助相当支出額と比較すると、仮に世帯人員が1人の世帯の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額を、それぞれ1とした場合、4人世帯は生活扶助基準額が2.27であり、生活扶助相当支出額の1. 99に比べて相対的にやや高め、5人世帯でも生活扶助基準額 は2.54であり、生活扶助相当支出額の2.14に比べて相対的にやや高めとなっており、世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であり、世帯人員が少ない世帯に不利になっている実態がみられる。 ② 年齢階級別の基準額の水準 年齢階級別に設定された生活扶助基準額の評価・検証を行うため、単身世帯の第1ないし第3・五分位における年齢階級別の生活扶助相当支出額と比較すると、仮に60歳台の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額を、それぞれ1とした場合、20歳ないし39歳では生活扶助基準額は1.05であり、生活 扶助相当支出額の1.09に比べて相対的にやや低め、40歳ないし59歳では生活扶助基準額は1.03であり、生活扶助相当支出額の1.08に比べて相対的にやや低めになっている。 一方、70歳以上では生活扶 助相当支出額の1.09に比べて相対的にやや低め、40歳ないし59歳では生活扶助基準額は1.03であり、生活扶助相当支出額の1.08に比べて相対的にやや低めになっている。 一方、70歳以上では生活扶助基準額は0.95であり、生活扶助相当支出額の0.88より相対的にやや高めであるなど消 費実態からやや乖離している。 d 生活扶助基準の地域差現行の級地制度における地域差を設定した当時(昭和59年)の消費実態と直近(平成16年)の消費実態を比較すると、地域間の消費水準の差が縮小している傾向がみられる。 エ検討会の委員5名は、平成19年12月11日、平成19年報告書の 内容を国民に正確に理解してもらうことを目的として、「『生活扶助基準に関する検討会報告書』が正しく読まれるために」と題する書面(甲A5)を連名で作成し、公表した。当該書面には、平成19年報告書における「これまでの給付水準との比較も考慮する必要がある」旨の記載について、「生活扶助基準額の引き下げについては、慎重であるべき」との 考えを意図したものであるが、こうした政策判断は検討会の目的の範囲を超えており、今後、行政当局あるいは政治の場において、総合的に判断されるべきものと考えられる旨の記載がある。 ⑶ 基準部会による平成25年検証(平成25年報告書)ア平成23年2月10日に開催された社会保障審議会において、その常 設部会として基準部会が設置された。基準部会は、平成16年報告書を踏まえ、5年に一度実施される全国消費実態調査の特別集計データ等を用いて、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が図られているかにつき専門的かつ客観的に評価・検証を行うことを目的としており、駒村康平慶應義塾大学教授を部会長、岩田正美日本女子大学名誉教 いて、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が図られているかにつき専門的かつ客観的に評価・検証を行うことを目的としており、駒村康平慶應義塾大学教授を部会長、岩田正美日本女子大学名誉教 授を部会長代理、その他に6名の社会保障等の専門家を委員とする審議会である。基準部会は、本件改定に至るまでに、平成23年4月19日、同年5月24日、同年6月28日、同年7月12日、同年9月27日、同年10月4日、同年10月25日、同年12月13日、平成24年5月8日、同年10月5日、同年11月9日、平成25年1月16日及び 同月18日の13回にわたり実施され、生活扶助基準についての評価及び検証が行われた(平成25年検証)。(甲A6、22、25、乙A6、7の1~3、21~24、95、96)イ平成24年10月5日に第10回基準部会が開催された。同部会においては、平成19年検証において20歳から39歳の生活扶助基準が消 費実態と比較してやや低めであり、70歳以上の生活扶助基準が消費実 態と比較してやや高めであることが認められたこと、年齢別指数、世帯人員別指数等、の体系について生活扶助基準の水準の検証と一体的に行うことが必要であるとの意見があったことが確認されたほか、基準部会の役割は検証することにあり、その結果を級地制度等にどう反映させるかは議論の対象ではない旨の指摘がされた。(乙A22の4~5頁、13 頁)ウ平成24年11月9日に第11回基準部会が開催された。同部会において、第1・十分位に属する世帯の消費実態と同世帯が現行の生活扶助基準により生活扶助を受給した場合の基準額を一部回帰分析の手法を用いて比較するという検討方針が示された。 (甲A65、141、乙A51、 95)エ平成25年1月16日に が現行の生活扶助基準により生活扶助を受給した場合の基準額を一部回帰分析の手法を用いて比較するという検討方針が示された。 (甲A65、141、乙A51、 95)エ平成25年1月16日に第12回基準部会が開催された。同部会においては、平成25年報告書の原案(甲A55)が示された上、平成25年検証の結果をまとめた報告書の記載内容について最終的な議論がされた。 報告書の原案に対し、阿部委員からは、平成25年検証の結果によれば、多人数世帯については生活扶助基準を減額することになるものの、貧困の連鎖による子どもの貧困を防止する観点から、子供のある世帯には特別な配慮が必要である旨を報告書に書き加えていただきたいとの意見が出された。 また、岩田部会長代理が、平成25年報告書の原案に、「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮した上で、他に合理的説明が可能な経済指標などがあれば、それらについても根拠を明確にして改定されたい。」、「全ての要素については分析・説明に至らなかったが、合理的説明がつく要素については、 それを勘案することは一つの考え方である。」との記載があることについ て質問したところ、厚生労働省社会・援護局保護課の古川課長は、何をもって合理的かということには様々な考え方がある中で、例えば政府が発表する経済指標とか誰が見ても数字として固まっているものを加味することはオーソライズできるのではないかという回答をした。また、山田委員が、「合理的説明がつく要素」とは統計的な差を意味し、「合理的 説明が可能な経済指標」とは別物と考えていいのか、例としてはどのようなものがあるのかについて質問し、古川課長が従来から基準のあり方を議論する際の報告書など 素」とは統計的な差を意味し、「合理的 説明が可能な経済指標」とは別物と考えていいのか、例としてはどのようなものがあるのかについて質問し、古川課長が従来から基準のあり方を議論する際の報告書などで例えば消費者物価指数や賃金の動向等が出てくるのでそうしたものは考え得る対象となると回答をしたところ、山田委員は、基準部会では、年齢、世帯人員、級地という3要素しか議論 しておらず、消費者物価指数や賃金の動向については何も議論していないことを報告書において明確にして欲しい、物価指数は地域、年齢等の世帯類型や所得階級によって全く異なる可能性があることに留意すべきで、全国一律の物価指数を当てはめることになれば健康的で文化的な最低限度の生活を具現化している生活扶助基準が色々なものに参照されて いるという性質を考えた場合、非常に慎重に考えなくてはいけないという意見を述べた。また、阿部委員も、山田委員と同意見であり、基準部会で議論し、合理的説明がついたのは級地と年齢と人員数のみであり、それ以外については合理的説明がつかなかったことになることは明らかであり、物価の状況等も見ていないし、「改定されたい」との文言はかな り強い文言であり、議論していないことを「改定されたい」ということはできないと考える旨の意見を述べた。(甲A26、55、乙A24、69)オ平成25年1月18日に第13回基準部会が開催され、上記エの平成25年報告書の原案を事務方が修正した上で基準部会における検証結 果を取りまとめた平成25年報告書(甲A6、乙A6)として公表する ことが了承された。平成25年報告書には、要旨、以下のとおりの記載がある。 基準部会の役割と検証の結果a 基準部会の役割基準部会の役割は、平成16年 として公表する ことが了承された。平成25年報告書には、要旨、以下のとおりの記載がある。 基準部会の役割と検証の結果a 基準部会の役割基準部会の役割は、平成16年報告書を踏まえ、5年に一度実施 される全国消費実態調査の特別集計データ等を用いて、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が図られているかにつき専門的かつ客観的に評価・検証を行うという目的の下に、年齢階級別、世帯人員別、級地別に生活扶助基準額と消費実態の乖離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行うこ とにあった。 b 検証方針と検証の結果平成25年検証においては、生活保護において保障すべき健康で文化的な最低限度の生活水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものとされてきたことから、生 活扶助基準と対比する一般低所得世帯として、第1・十分位層を設定した。 その上で、様々な世帯構成の基準額を算出する際に基本となる年齢、世帯人員及び地域別の基準額が第1・十分位の消費実態を十分反映しているかについて、より詳細な検証を行うことにした。 その際、仮に第1・十分位の全ての世帯が生活保護を受給した場合の1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして、体系(年齢、世帯人員)及び級地の基準額の水準への影響を評価する方法を採用した。 ⒝ 平成25年検証では、一部統計的分析手法である回帰分析を採 用した。その理由は、第一は、平成19年検証では、各年齢階級 の単身世帯のデータを用いて各年齢階級別の平均消費水準を分析したが、全国消費実態調査の調査客体にはそもそも10代以下の単身世帯がほとんどいないため、10代以下の消費を正確に計測できないという限界があった点 帯のデータを用いて各年齢階級別の平均消費水準を分析したが、全国消費実態調査の調査客体にはそもそも10代以下の単身世帯がほとんどいないため、10代以下の消費を正確に計測できないという限界があった点を考慮したこと、第二は、今回の検証結果の妥当性を補強するため、回帰分析を用いた結果と概ね 遜色がないかどうかを確認することとしたことである。 検証に使用した統計データ今回の検証では国民の消費実態を世帯構成別に細かく分析する必要があるため、平成21年全国消費実態調査の個票データを用いた。 今回の検証は、様々な世帯構成に対する基準の展開の妥当性を指数 によって把握しようとするものである。この指数は、第1・十分位の世帯の生活扶助相当支出を用いて算出した。第1・十分位の世帯を用いた理由は以下のとおりである。 a 生活扶助基準を国民の健康で文化的な最低限度の生活水準として考えた場合、指数を全分位の所得階層(全世帯)あるいは中位所得 階層(第3・五分位)等から算出することも可能だが、これまでの検証に倣い、生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが今回の検証では現実的であると判断したことb 第1・十分位の平均消費水準は、中位の所得階層の約6割に達していること c 国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されている状況にあることd 全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向であるものの、高所得階層を除く その他の十分位の傾向をみても等しく減少しており、特に第1・十 分位が減少しているわけではないことeOECDの国際基準によれば 割合はやや減少傾向であるものの、高所得階層を除く その他の十分位の傾向をみても等しく減少しており、特に第1・十 分位が減少しているわけではないことeOECDの国際基準によれば、等価可処分所得(世帯の可処分所得について、スケールメリットを考慮して世帯人員数の平方根で除したもの)の中位値(全データの真中の値)の半分に満たない世帯は相対的貧困層であるとされる。今回の検証に用いた平成21年全 国消費実態調査での等価可処分所得の中位値は約270万円であるが、第1・十分位の等価可処分所得の平均は92万円、最大では135万円となっている。これは、第1・十分位に属する世帯の大分部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあることを示していること f 分散分析等の統計的手法により検証したところ、各十分位間のうち、第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、他の十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なると考えられること 検証手法 a 生活扶助基準の体系(年齢・世帯人員)年齢階級別の基準額の水準年齢階級別に設定されている生活扶助基準の第1類費について、異なる年齢階級間の比率(指数)が、消費実態と比べてどれほどの乖離があるかを検証した。その際、今回の検証では、10代以 下の者がいる複数人世帯のデータも用いて、10代以下の者も含めた各年齢階級の消費水準を計測できるよう統計的分析手法である回帰分析を採用した。 分析に際しては、スケールメリットが最大に働く場合(単純に世帯年収に着目)と最少に働く場合(1人当たりの世帯年収に着 目)のそれぞれの想定に応じた2種類の第1・十分位を設定し、 それぞれを用いて算出された指数の平均値を採用した。 ⒝ 世帯人 年収に着目)と最少に働く場合(1人当たりの世帯年収に着 目)のそれぞれの想定に応じた2種類の第1・十分位を設定し、 それぞれを用いて算出された指数の平均値を採用した。 ⒝ 世帯人員別の基準額の水準平成25年検証では、第1類費相当支出及び第2類費相当支出ごとに、各世帯人員別の平均消費水準を指数化し(単身世帯を1とする。)、現行の基準額を同様に指数化したものと比較した。な お、第1類費相当支出のスケールメリットについては、⒜で求められた年齢階級に応じた消費の指数を用いて世帯人員全員が実際の年齢にかかわらず、平均並みの消費をする状態に補正することにより年齢の影響を除去し、世帯人員による影響のみを評価できるようにした。 b 生活扶助基準の地域差平成25年検証では、世帯人員別の検証と同様に、平成19年報告書の考え方を用いて集計データより平均値を求め、各級地別に1人当たり生活扶助相当の平均消費水準を指数化したもの(1級地-1を1とする。)と、現行の基準額を同様に指数化したものとを比較 した。なお、指数化に当たっては、第1類費相当支出部分については世帯人員体系の検証と同様に年齢の影響を除去するとともに、a⒝の過程で求められる世帯人員に応じた消費の指数で第1類費相当支出及び第2類費相当支出の合計の消費を調整することにより世帯人員数による消費水準の相違の影響を除去し、地域差による影響の みを評価できるようにした。 c 上記の検証に当たっては、第1・十分位の全世帯が生活保護を受給した場合の基準額の平均受給額とこれらの世帯の消費の実態を反映した額の平均額が均等となるようにしている。 検証結果と留意事項 a 検証結果 年齢階級別(第1類費)の基準額の水準0ないし2歳の生 額とこれらの世帯の消費の実態を反映した額の平均額が均等となるようにしている。 検証結果と留意事項 a 検証結果 年齢階級別(第1類費)の基準額の水準0ないし2歳の生活扶助相当支出額を1としたときの各年齢階級別の指数は、生活扶助基準額では0ないし2歳が0.69、3ないし5歳が0.86、6ないし11歳が1.12、12ないし19歳が1.37、20ないし40歳が1.31、41ないし5 9歳が1.26、60ないし69歳が1.19、70歳以上が1. 06となっている。他方、生活扶助相当支出額は、上記同様の順番に、1.00、1.03、1.06、1.10、1.12、1. 23、1.28、1.08となっている。このように、年齢階級別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による 指数を比べると、各年齢階級間の指数に乖離が認められる。 ⒝ 世帯人員別(第1類費及び第2類費)の基準額の水準第1類費の場合、単身世帯の生活扶助相当支出額を1としたときの各世帯人員別の指数は、生活扶助基準額では単身世帯が0. 88、2人世帯が1.76、3人世帯が2.63、4人世帯が3. 34、5人世帯が3.95となっている。他方、生活扶助相当支出額では上記同様の順番に、1.00、1.54、2.01、2. 34、2.64となっている。このように第1類費における世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、世帯人員が増えるにつれて乖離が拡大する 傾向が認められた。 同様に、第2類費の場合、単身世帯の生活扶助相当支出額を1としたときの各世帯人員別の指数は、生活扶助基準額では単身世帯が1.06、2人世帯が1.18、3人世帯が1.31、4人世帯が1.35、5人世帯が1.36となっている。 身世帯の生活扶助相当支出額を1としたときの各世帯人員別の指数は、生活扶助基準額では単身世帯が1.06、2人世帯が1.18、3人世帯が1.31、4人世帯が1.35、5人世帯が1.36となっている。他方、生活 扶助相当支出額では上記同様の順番に1.00、1.34、1. 67、1.75、1.93となっている。このように第2類費における世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、世帯人員が増えるにつれて乖離が拡大する傾向が認められた。 ⒞ 級地別の基準額の水準 1級地-1の生活扶助相当支出額を1としたときの各級地別の指数は、生活扶助基準額では1級地-1が1.02、1級地-2が0.97、2級地-1が0.93、2級地-2が0.88、3級地-1が0.84、3級地-2が0.79となっている。他方、生活扶助相当支出額では、上記同様の順番に1.00、0.96、 0.90、0.90、0.87、0.84となっている。このように、級地別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、消費実態の地域差の方が小さくなっている。 ⒟ 年齢・世帯人員・地域の影響を考慮した場合の水準 ① 上記ないし⒞の検証結果を踏まえ、年齢階級別、世帯人員別、級地別の指数を反映した場合の影響は、以下のとおりである。 例えば、現行の生活扶助基準額(加算部分を含む。)と検証結果を完全に反映した場合の平均値を個々の世帯構成ごとにみる と、夫婦と18歳未満の子1人世帯では、年齢による影響が現行の基準額に比べてマイナス2.9%、世帯人員による影響がマイナス5.8%、地域による影響が0.1%、これらを合計した影響がマイナス8.5%となった。上記同様に夫婦と18歳未満の子2人 る影響が現行の基準額に比べてマイナス2.9%、世帯人員による影響がマイナス5.8%、地域による影響が0.1%、これらを合計した影響がマイナス8.5%となった。上記同様に夫婦と18歳未満の子2人世帯では順番にマイナス3.6%、マイナス1 1.2%、0.2%、合計マイナス14.2%となった。60 歳以上の単身世帯では上記同様の順番に、2.0%、2.7%、マイナス0.2%、合計4.5%となり、60歳以上の高齢夫婦世帯では上記同様の順番に2.7%、マイナス1.9%、0. 7%、合計1.6%となり、20歳ないし50歳代の若年単身世帯では上記同様の順番にマイナス3.9%、2.8%、マイ ナス0.4%、合計マイナス1.7%となり、母親と18歳未満の子1人の母子世帯では上記同様の順番にマイナス4.3%、マイナス1.2%、0.3%、合計マイナス5.2%となった。 このように世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組合せにより、各世帯への影響は様々である。 ② 厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、平成25年報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標等を総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。なお、その際には現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯への見直し が及ぼす影響についても慎重に配慮されたい。 b 検証結果に関する留意事項今回試みた検証手法は、平成19年報告書において指摘があった年齢階級別、世帯人員別、級地別に、生活扶助基準の展開と一般低所得世帯の消費実態の間にどの程度乖離が生じているかを詳 細に分析したものである。これにより、個々の生活保護受給世帯を構成する世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の様々な組合せによる 一般低所得世帯の消費実態の間にどの程度乖離が生じているかを詳 細に分析したものである。これにより、個々の生活保護受給世帯を構成する世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の様々な組合せによる生活扶助基準の妥当性について、よりきめ細やかな検証が行われたことになる。 しかし、年齢、世帯人員の体系、居住する地域の組合せによる 基準の展開の相違を消費実態に基づく指数に合わせたとしても、 なお、その値と一般低所得世帯の消費実態との間には、世帯構成によって様々に異なる差が生じ得る。こうした差は金銭的価値観や将来見込みなど、個々人や個々の世帯により異なりかつ消費に影響を及ぼす極めて多様な要因により生ずると考えられるが、この検証では、全ての要素について分析及び説明には至らなかった。 ⒝ 平成25年検証で採用した年齢、世帯人員及び地域の影響を検証する手法についても委員による専門的議論の結果得られた透明性の高い一つの妥当な手法である一方、これまでの検証手法との継続性、整合性にも配慮したものであることから、これが唯一の手法ということでもない。さらに、基準部会の議論においては、 国際的な動向も踏まえた新たな最低基準についての探索的な研究成果の報告もあり、将来の基準の検証手法を開発していくことが求められる。今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつ、同時に検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある。 ⒞ 全所得階層における年間収入総額に占める各所得五分位及び十分位の年間収入総額の構成割合の推移をみると、中位所得階層である第3・五分位の占める割合及び第1・十分位の占める割合が共に減少傾向にあり、その動向に留意しつつ、これまで生活扶助基準の検証の際に参照さ 位の年間収入総額の構成割合の推移をみると、中位所得階層である第3・五分位の占める割合及び第1・十分位の占める割合が共に減少傾向にあり、その動向に留意しつつ、これまで生活扶助基準の検証の際に参照されてきた一般低所得世帯の消費実態につ いては、なお今後の検証が必要である。特に、第1・十分位の者にとっては、全所得階層における年間収入総額に占める当該分位の年間収入総額の構成割合にわずかな減少があっても、その影響は相対的に大きいと考えられることに留意すべきである。また、現実には、第1・十分位の階層には保護基準以下の所得水準で生 活している者も含まれることが想定される点についても留意が必 要である。 ⒟ 今後、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯、特に貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある。 ⑷ 本件改定に係る厚生労働省の説明ア厚生労働省社会・援護局保護課は、平成25年1月18日に基準部会の平成25年報告書が取りまとめられるより前の同月上旬頃に、「生活保護制度の見直しについて」と題する書面(甲A59の2)を取扱厳重注意の内部資料として作成し、同書面を用いて内閣官房副長官に説明した。 同書面には、現行の基準に平成25年検証の結果を完全に反映した場合、その保護費が平均して夫婦子1人世帯につき8%、夫婦子2人世帯につき14%、単身世帯につき2%、母子世帯につき5%の減額となるが、高齢単身世帯につき5%、高齢夫婦世帯につき2%の増額となること、生活扶助基準見直し後は、平成25年検証の結果を2分の1の比率で反 映させた上で平成20年から平成23年の物価動向を勘案することにより、その保護費が平均して夫 世帯につき2%の増額となること、生活扶助基準見直し後は、平成25年検証の結果を2分の1の比率で反 映させた上で平成20年から平成23年の物価動向を勘案することにより、その保護費が平均して夫婦子1人世帯につき8%、夫婦子2人世帯につき9%、高齢単身世帯及び高齢夫婦世帯につき3%、単身世帯につき6%、母子世帯につき7%の減額となること、生活扶助基準の見直しによる財政効果は3年間で847億円となることが記載されていた。 (甲 A59の1及び2)イ厚生労働省社会・援護局保護課は、平成25年1月27日、「生活扶助基準等の見直しについて」と題する書面(甲A60)を公表した。上記書面には、要旨、以下の内容が記載されている。 生活扶助基準の見直しの考え方と影響額 ①基準部会における検証結果を踏まえた年齢・世帯人員・地域差に よる影響の調整、②前回見直し(平成20年)以降の物価の動向(マイナス4.78%)を考慮し、3年程度かけて生活扶助基準を見直す。 これにより、①について、約90億円、②について、本体分約510億円、加算分約70億円(①及び②の合計約670億円)、合計で6. 5%程度の財政効果が生じる。 個々の世帯に着目した見直しの概要デフレ調整については、受給者全員に影響するが、デフレ調整及びゆがみ調整による生活扶助基準額の変化をみると、該当世帯の25%が5%ないし10%の減額となり、該当世帯の71%が0%ないし5%の減額となり、該当世帯の3%が0%ないし2%の増額となる。 生活扶助に係る物価の動向について生活扶助は、食費や水道光熱費といった基礎的な日常生活費を賄うものであり、生活扶助に係る物価の動向については、生活扶助に相当する消費品目のCPI(物価指 生活扶助に係る物価の動向について生活扶助は、食費や水道光熱費といった基礎的な日常生活費を賄うものであり、生活扶助に係る物価の動向については、生活扶助に相当する消費品目のCPI(物価指数)をみる必要がある。具体的には、品目別の消費者物価指数のうち、①家賃、教育費及び医療費等の生活 扶助以外の他扶助で賄われる品目、②自動車関係費及びNHK受信料等の原則として被保護世帯において支出することが想定されていない品目を除いた品目を用いて、生活扶助相当CPIを算出し、平成20年(104.5)から平成23年(99.5)の生活扶助相当CPIの変化率を算定すると、マイナス4.78%であった。 平成20年からの物価を勘案することについて平成25年検証は、平成21年全国消費実態調査を用いて、年齢・世帯人員・級地ごとに現行の基準額と一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態を比較し、そのゆがみを検証したものである。具体的には、調査対象となった一般低所得世帯が現行の生活扶助基準額で生活扶助 を受給した場合の受給額の平均と、仮に一般低所得世帯の消費実態に 即した生活扶助基準額を設定したとして、それに基づいて受給した場合の受給額の平均が等しくなるという前提を置くことにより、基準額と消費実態の乖離を、指数を用いて相対的に比較した。このため、今回の検証結果を反映させたとしても、基準と一般低所得世帯との消費の年齢、世帯人員、級地による乖離が調整されるのみであり、デフレ 等による金額の絶対水準の調整がなされるものではない。 また、今回物価を勘案した考え方は、平成19年検証の結果を踏まえた上で、平成20年度の基準額が定められ、以後もその基準額が据え置かれてきた経緯に鑑み、平成20年から勘案する はない。 また、今回物価を勘案した考え方は、平成19年検証の結果を踏まえた上で、平成20年度の基準額が定められ、以後もその基準額が据え置かれてきた経緯に鑑み、平成20年から勘案することとしたものである。 ウ厚生労働省は、平成25年2月19日、全国厚生労働関係部局長会議を実施した。その際、前記イと同趣旨の内容を含む、以下の内容の資料(甲A7、乙A47)が配布された。 生活扶助基準の検証結果平成25年検証では、平成21年全国消費実態調査等のデータを用 いて、生活扶助基準額と第1・十分位の世帯の消費実態について、年齢階級間、世帯人員間、級地間の相対関係について指数によって比較を行い、その乖離について検証を行った。 これによると、年齢階級別でみると現行基準の想定している相対的な指数と消費実態による指数の間に乖離が認められ、同様に世帯人員 別に指数の状態をみても、現行基準と消費実態の間に世帯人員が増えるにつれて乖離が拡大する傾向が認められた。また、級地別についても比較対照したところ、現行基準が想定している地域差より消費実態の地域差の方が小さくなっていることが認められた。 なお、平成25年報告書では、厚生労働省において生活扶助基準の 見直しを検討する際には、平成25年報告書の評価・検証の結果を考 慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標等を総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示すよう指摘された。 生活扶助基準等の見直し今回の生活扶助基準等の見直しでは、平成25年検証結果に基づき、ゆがみ調整(年齢・世帯人員・地域差による影響を調整する)を行う とともに、近年デフレ傾向が続いているにもかかわらず、生活扶助基準額が据え置かれてき 等の見直しでは、平成25年検証結果に基づき、ゆがみ調整(年齢・世帯人員・地域差による影響を調整する)を行う とともに、近年デフレ傾向が続いているにもかかわらず、生活扶助基準額が据え置かれてきたことを踏まえ、平成19年検証の結果を考慮して、平成20年の基準が定められたことから、平成20年の生活扶助基準の見直し以降の物価動向を勘案することとした。今回の見直しはこうした合理的な考え方に基づく適正化を図るものである。また、 各種加算についても同様に物価動向を勘案することとしている。 なお、激変緩和の観点から見直しの影響を一定程度に抑えるため、現行基準から増減幅がプラスマイナス10%を超えないように調整することとし、さらに3年間の経過措置を設け、見直しを段階的に行うこととする。 生活扶助基準の見直しに伴う他制度への影響今回の生活扶助基準の見直しに伴う他制度への影響については、それぞれの制度の趣旨や目的・実態を十分考慮しながら、できる限りその影響が及ばないよう、政府全体として対応する。 エ厚生労働省は、平成25年3月11日、社会・援護局関係主管課長会 議を実施し、上記イ及びウと同様の資料(乙A16)を配布した。 オ厚生労働事務次官は、平成25年5月16日、各都道府県知事、各指定都市市長及び各中核市市長に対し、上記イと同様の資料を添付した上で、「生活扶助基準の見直しに伴い他制度に生じる影響について」と題する通知(乙A18)を発出した。また、厚生労働省は、同月20日、生 活保護関係全国係長会議を実施し、上記イ及びウと同様の資料(乙A1 7)を配布した。 カ厚生労働事務次官は、平成25年9月3日、各都道府県知事、各指定都市市長及び各中核市市長に対し、上記オと同様の通知(乙A1 実施し、上記イ及びウと同様の資料(乙A1 7)を配布した。 カ厚生労働事務次官は、平成25年9月3日、各都道府県知事、各指定都市市長及び各中核市市長に対し、上記オと同様の通知(乙A19)を発出した。 ⑸ 消費者物価指数の算出方法、その推移等 ア消費者物価指数の算出方法(甲A168の1~9頁、13~15頁、40~51頁、乙A25の1~9頁、13~15頁、40~51頁、乙A27、乙A33の1~3頁、7~8頁、12頁、22頁、25頁、96~105頁、111~116頁、乙A34、乙A64)総務省の作成する消費者物価指数は、全国の世帯が購入する財及びサ ービスの価格変動を総合的に測定し、物価の変動を時系列的に測定するものであり、具体的には、基準時点における家計の消費構造(品目及び各品目の消費支出の割合=ウエイト)を一定の指数(100)に固定し、これに要する費用が物価の変動によってどう変化するかを指数値で示すものである。総務省CPIは、全国について、総合及び品目別の指数が 作成されるほか、勤労者世帯について年間収入五分位階級別に算出されたウエイトに基づき、各中分類の指数が作成される。 消費者物価指数の算出に採用される品目(指数品目)は、家計の消費支出の中における重要性、価格変動の代表性の有無、継続調査の可能性等の観点から選定されており、平成22年の総務省CPIの品目は、合 計588品目である。これらの品目は、10大費目(食料、住居、光熱・水道、家具・家事用品、被服及び履物、保健医療、交通・通信、教育、教養娯楽、諸雑費)に分類され、それぞれの費目内においてさらに中分類に分類され(例えば、費目が「食料」の場合、「穀類」、「魚介類」、「肉類」等に分類することができる。)、中分類からさらに小分類に分類 教養娯楽、諸雑費)に分類され、それぞれの費目内においてさらに中分類に分類され(例えば、費目が「食料」の場合、「穀類」、「魚介類」、「肉類」等に分類することができる。)、中分類からさらに小分類に分類され る(例えば、中分類が「穀類」の場合、「米類」、「パン」等に分類するこ とができる。)。なお、10大費目のうち「家具・家事用品」の費目の中には、中分類として、「家庭用耐久財」があり、その中の小分類として「電子レンジ」、「電気冷蔵庫」等の品目があり、「教養娯楽」の費目の中には、中分類として、「教養娯楽用耐久財」があり、その中の小分類として、「テレビ」、「パソコン(デスクトップ型)」、「パソコン(ノート型)」、「カメ ラ」等の品目がある。 消費者物価指数の算出に当たっては、これらの品目について、原則として家計調査の平均1か月間の1世帯当たりの品目別消費支出金額を基に算出されたウエイトが使用されている。ウエイトは、1万分比で表されており、平成22年の総務省CPIの10大分類のウエイトをみると、 食料が2525、住居が2122、光熱・水道が704、家具・家事用品が345(うち家庭用耐久財が121、さらにうち家事用耐久財が61)、被服及び履物が405、保健医療が428、交通・通信1421、教育が334、教養娯楽が1145(うち教養娯楽用耐久財が171)、諸雑費が569である(なお、端数処理の関係で、これらのウエイトを 単純に合計しても1万にはならない。)。 イ消費者物価指数の公表(乙A37、38の4)総務省は、毎月、総務省CPIを作成・公表しているが、全国年平均の消費者物価指数については、当該年の翌年の1月26日を含む週の金曜日に公表している。平成23年の全国年平均の総務省CPIについては、平 総務省は、毎月、総務省CPIを作成・公表しているが、全国年平均の消費者物価指数については、当該年の翌年の1月26日を含む週の金曜日に公表している。平成23年の全国年平均の総務省CPIについては、平 成24年1月27日に公表され、平成24年の全国年平均の総務省CPIについては、平成25年1月25日に公表された。 ウ消費者物価指数の推移 平成16年から平成23年までの年平均の消費者物価指数の費目ごとの前年比上昇率(%)は、次のとおりである。(乙A11) 総合食料光熱・水道家具・家事用品被服及び履物教養娯楽平成16年0.00.90.1-3.3-0.2-1.4平成17年-0.3-0.90.8-2.30.7-0.9平成18年0.30.53.6-2.10.8-1.5平成19年0.00.30.8-1.60.6-1.3平成20年1.42.66.0-0.30.5-0.5平成21年-1.40.2-4.2-2.2-0.9-2.5平成22年-0.7-0.3-0.2-4.6-1.2-1.7平成23年-0.3-0.43.3-5.6-0.3-4.0 また、平成20年の消費者物価指数は102.1、平成23年の消費者物価指数は99.7であり、平成20年から平成23年にかけての変化率は、マイナス2.35%(=(99.7÷102.1-1)×100)である(乙A27、28、甲A188の7頁)。 平成16年から平成22年までの年平均の消費者物価指数の動きは、おおよそ次のとおりである。( .35%(=(99.7÷102.1-1)×100)である(乙A27、28、甲A188の7頁)。 平成16年から平成22年までの年平均の消費者物価指数の動きは、おおよそ次のとおりである。(甲A188の2頁)平成16年は、耐久消費財などが下落したものの、石油製品の上昇、天候不順による生鮮野菜の上昇や平成15年の冷夏による米類の上昇の影響などにより平成15年と同水準となった。平成17年は、石油製品 の上昇が続いたものの、耐久消費財が下落したことに加え、平成16年 の反動による米類、生鮮野菜の下落や、固定電話通信料の下落などにより0.3%の下落となった。平成18年は、耐久消費財や移動電話通信料などが下落したものの、石油製品、生鮮野菜、外国パック旅行の上昇、たばこ税引き上げの影響などにより0.3%の上昇となった。平成19年は、石油製品が上昇したものの、テレビ(薄型)などの耐久消費財や 移動電話通信料などが下落し、平成18年と同水準となった。平成20年は、世界的な原油価格や穀物価格の高騰を受けて、石油製品を始め、多くの食料品目が上昇したことにより、11年ぶりに1%を超える上昇となった。平成21年は、平成20年に高騰した原油価格が下落したため、ガソリン及び灯油が大きく下落、耐久消費財が引き続き下落したこ となどにより、1.4%の下落と、比較可能な昭和46年以降最大の下落幅となった。平成22年は、ガソリン、灯油、たばこ、傷害保険料などが上昇したものの、4月から公立高等学校の授業料無償化、高等学校等就学支援金制度が導入されたため、公立高校授業料及び私立高校授業料が大幅に下落したこと、耐久消費財が引き続き下落したことなどによ り、総合指数は0.7%の下落となった。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く 導入されたため、公立高校授業料及び私立高校授業料が大幅に下落したこと、耐久消費財が引き続き下落したことなどによ り、総合指数は0.7%の下落となった。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合は1.2%の下落と比較可能な昭和46年以降最大の下落幅となった。 平成23年の消費者物価指数の動きについては、おおよそ次のとおりである。(甲A188の3頁) 平成23年は、原油価格の値上がりなどにより、ガソリン、電気代などが上昇したものの、耐久消費財が引き続き下落していることなどにより、前年と比較して総合指数は0.3%の下落となった。主な内訳をみると、耐久消費財については、地上デジタル放送への移行で需要が減ったことなどにより、テレビは30.9%の下落、技術革新や性能向上な どにより、パソコン(デスクトップ型)は39.9%、パソコン(ノー ト型)は24.0%、カメラは28.0%の下落となった。高速自動車国道料金については、6月下旬に高速道路無料化社会実験が終了したものの、12月上旬に東北地方の高速道路無料化が開始されたことにより、0.4%の下落となった。宿泊料については、東日本大震災の影響で需要が減ったことなどにより、2.3%の下落となった。エネルギーにつ いては、5.8%の上昇となっており、原油価格の値上がりなどにより、電気代は2.8%の上昇、都市ガス代は2.8%の上昇、プロパンガスは2.9%の上昇、灯油は18.4%の上昇、ガソリンは9.6%の上昇と全てのエネルギー品目で上昇となった。 また、平成23年の消費者物価指数(総合)の前年比の増減に対する 寄与度(ある品目又は類の指数の変動が総合指数の変化率にどの程度寄与したかを示したものであり、全品目の寄与度の合計は総合指数の変化率となる〔乙A33の 物価指数(総合)の前年比の増減に対する 寄与度(ある品目又は類の指数の変動が総合指数の変化率にどの程度寄与したかを示したものであり、全品目の寄与度の合計は総合指数の変化率となる〔乙A33の28頁〕。)をみると、エネルギーが0.45、生鮮食品を除く食料が-0.05、家庭用耐久財が-0.17、教養娯楽用耐久財が-0.47であった。 ⑹ 家計調査及び社会保障生計調査ア家計調査(甲A182、乙A33の120~129頁、乙A40、89、90)家計調査は、総務省統計局が実施する基幹統計調査(国勢調査など重要な統計調査である基幹統計の作成を目的とする調査のこと。統計法2 条4項、6項)であり、国民生活における家計収支の実態を把握し、国の経済政策・社会政策の立案のための基礎資料を提供することを目的としている。 家計調査の調査対象は、一部の世帯を除く全国の一般世帯であり、全国の市町村をその特性に応じて168のグループに分け、その各グルー プから1市町村ずつ抽出された市町村から無作為に選定された約900 0世帯(調査対象世帯)に対し調査票を配布、回収する方法によって行われ、各世帯の支出(各支出品目並びにその数量及び金額)のほか、各世帯の収入や世帯構成が調査される。 調査対象となる世帯は、年間収入五分位の各階級及び年間収入十分位の各階級に属する世帯数が概ね均等になるように選定されるため、調査 対象世帯全体のうち第1・五分位に属する世帯は概ね20%、第1・十分位に属する世帯は概ね10%を占めることになる。もっとも、平成27年の10月から12月にかけての家計調査においては、調査対象とされた8467世帯のうち第1・五分位に属する963世帯は約11%、第1・十分位に属する397世帯は約4%であった。( もっとも、平成27年の10月から12月にかけての家計調査においては、調査対象とされた8467世帯のうち第1・五分位に属する963世帯は約11%、第1・十分位に属する397世帯は約4%であった。(いずれも小数点以 下切り捨て)。(乙A40)家計調査の調査結果として、年間収入五分位階級別及び年間収入十分位階級別に、10大費目、中分類及び小分類ごとの1世帯当たりの支出のデータが公表されるが、品目別のデータは公表されていない。平成22年家計調査における全国平均の10大費目別のウエイトは、食料につ き25.25%、住居につき21.22%、光熱・水道につき7.04%、家具・家事用品につき3.45%、被服及び履物につき4.05%、保健医療につき4.28%、交通・通信につき14.21%、教育につき3.34%、教養娯楽につき11.45%、諸雑費につき5.69%であった。(乙A33、40) イ社会保障生計調査(甲A158の40頁、甲A181、乙A43、91)社会保障生計調査は、厚生労働省が実施する一般統計調査(行政機関が行う統計調査のうち基幹統計調査以外のもの。統計法2条7項)であり、被保護世帯の生活実態を明らかにすることによって、保護基準の改定等、生活保護制度の企画運営のために必要な基礎資料を得るとともに、 厚生労働行政の企画運営に必要な基礎資料を得ることを目的とするもの である。社会保障生計調査は、全国の被保護世帯を対象として全国を地域別に10ブロックに分け、各ブロックごとに都道府県・指定都市・中核市のうち1ないし3か所を調査対象自治体として選定し、そこから1110世帯を抽出している。社会保障生計調査では、生活保護受給世帯から収支の状況を記載した家計簿の提出を求めるなどの方法により、生 活保 ち1ないし3か所を調査対象自治体として選定し、そこから1110世帯を抽出している。社会保障生計調査では、生活保護受給世帯から収支の状況を記載した家計簿の提出を求めるなどの方法により、生 活保護受給世帯の家計収支の状況を調査しているが、個別の品目ごとの消費支出を詳細に記載させるための措置が講じられていないため、10大費目ごと及び中分類ごとの支出金額は明らかになるものの、品目ごとの支出金額は明らかとならない。 平成22年度(平成22年4月1日から平成23年3月31日まで) の社会保障生計調査に基づく2人以上の生活保護受給世帯(総数)の10大費目別の消費支出(実数)及び構成割合は、以下のとおりである。 (乙A91。なお、平成23年度の社会保障生計調査の調査要綱の表3-1~3-3には、平成22年度の社会保障生計調査のデータが記載されている。) 消費支出(実数)構成割合食料5万1912円29.9%住居3万0766円17.7%光熱・水道1万7718円10.2%家具・家事用品8511円4.9%被服及び履物8333円4.8%保健医療3602円2.1%交通・通信1万6700円9.6%教育5838円3.4%教養娯楽1万1030円6.4% その他1万9210円11.1%合計17万3620円100%平成22年度(平成22年4月1日から平成23年3月31日まで)の社会保障生計調査に基づく単身の生活保護受給世帯(総数)の10大費目別の消費支出(実数)及び構成割合は、以下のとおりである。 消費支出(実数)構成割合食料3万1535円29.3%住居3万3732円31.3% 帯(総数)の10大費目別の消費支出(実数)及び構成割合は、以下のとおりである。 消費支出(実数)構成割合食料3万1535円29.3%住居3万3732円31.3%光熱・水道9190円8.5%家具・家事用品4221円3.9%被服及び履物2790円2.6%保健医療2156円2.0%交通・通信7319円6.8%教育0円0%教養娯楽6057円5.6%その他1万0619円9.9%合計10万7618円100% ⑺ 被保護世帯の構成及び生活状況 ア平成24年当時、被保護世帯のうち、全体の約51%は60歳以上の者である。(甲A61、62)イ平成22年度の家庭の生活実態及び生活意識に関する調査によれば、被保護世帯におけるカラーテレビの普及率は98%、カメラの普及率は45%、パソコンの普及率は36.1%であり、第3・五分位に属する世帯 におけるカラーテレビの普及率は98.7%、カメラの普及率は92.5%、 パソコンの普及率は86.7%である。(乙A36) 2 争点⑴(生活扶助基準の改定に対する司法審査の枠組み)について⑴ 生活扶助基準の改定は厚生労働大臣の裁量の逸脱又は濫用がある場合に違法となることア生活保護法3条によれば、同法により保障される最低限度の生活は、健 康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないところ、同法8条によれば、保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならない。これらの規定にいう最 年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならない。これらの規定にいう最低限度の生活は、抽象的 かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。したがって、生活扶助基準を改定するに際し、改定後の生活扶 助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては、厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである。 イまた、生活扶助基準が改定され、基準額が減額された場合には、改定前の基準額が支給されることを前提として生活設計をしていた被保護者の 生活に多大な影響が生ずることも想定されるから、厚生労働大臣は、生活扶助基準を改定するに当たっては、被保護者間の公平や国の財政事情等の見地に基づく生活扶助基準の改定の必要性を踏まえつつ、生活扶助基準の改定によって不利益を被る被保護者の生活への影響についても可及的に配慮するため、その改定の具体的な方法等について、激変緩和措置の要否 も含め、上記アと同様の専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有し ているものというべきである(上記ア、イにつき、最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁〔堀木訴訟最判〕、最高裁平成22年(行ツ)第392号、同年(行ヒ)第416号同24年2月28日第三小法廷判決・ 最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁〔堀木訴訟最判〕、最高裁平成22年(行ツ)第392号、同年(行ヒ)第416号同24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁〔老齢加算廃止東京訴訟最判〕、最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24年 4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁〔老齢加算廃止福岡訴訟最判〕参照)。 ウそして、生活扶助基準の改定については、これまで各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいて従前の生活扶助基準と一般国民の消費実態との比較検討が行われてきたことに照らすと、生活扶助基準の改定が生活 保護法3条、8条2項の規定に違反して違法と判断されるのは、生活扶助基準の改定に係る厚生労働大臣の判断(最低限度の生活の具体化や激変緩和措置の実施の有無等を含む。)の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点ないし被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて、厚生労働大臣の裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると認められる場合で あるものと解される(最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁〔老齢加算廃止福岡訴訟最判〕参照)。 ⑵ 裁判所の審査方法その上で、生活扶助基準の改定については、最低限度の生活の水準や一般 国民の消費実態、生活扶助基準の改定によって被保護者の生活に生ずる影響等を統計等の客観的数値により把握し、それらを的確に評価することが前提となることから、上記⑴ウのとおり各種の統計や専門家の知見を踏まえた検討がされてきた経緯(特に、昭和59年から平成24年まで約30年という長期間にわたり採用されてきた水準均衡方式〔なお、前記第2の3⑵ウのと おり、現在も厚生労働大臣は水準均 の知見を踏まえた検討がされてきた経緯(特に、昭和59年から平成24年まで約30年という長期間にわたり採用されてきた水準均衡方式〔なお、前記第2の3⑵ウのと おり、現在も厚生労働大臣は水準均衡方式を採用している。〕の下で、社会保 障審議会の下に設けられた平成15年検証の際の専門委員会、平成19年検証の際の検討会のように複数の外部の専門家によって構成される委員会の意見を踏まえ、被保護者及び一般国民の消費実態等に係る基礎資料の収集・調査、考慮すべき要素についての調査・認定等の定型的・複合的・段階的な判断過程を経た上で、政策判断を含む最終決定に至ることが予定されてきたこ と)に加え、生活保護基準が国民の生存権を保障した憲法25条1項の趣旨を具体化した重要なものであることを併せ考慮すると、上記⑴の厚生労働大臣の裁量判断の適否に係る裁判所の審理においては、生活扶助基準の改定に至る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否かの観点ないし被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点から、統計等の客観的数値等との合理的 関連性や専門的知見(基準部会における審議経過及びその成果たる報告書の内容を含む。)との整合性の有無等について審査されるべきであると解される(最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁〔老齢加算廃止福岡訴訟最判〕参照)。 2 争点⑶(2分の1処理の違法性の有無)について ⑴ ゆがみ調整は、全国消費実態調査の統計データを使用し、一部回帰分析の手法を用いて、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に、生活扶助基準の展開と第1・十分位に属する世帯の消費実態との間にどの程度乖離が生じているかを分析し、その較差を是正するために行われるものであり(前記第2の3⑸イ)、 級別、世帯人員別及び級地別に、生活扶助基準の展開と第1・十分位に属する世帯の消費実態との間にどの程度乖離が生じているかを分析し、その較差を是正するために行われるものであり(前記第2の3⑸イ)、その性質上、専門家による高度の専門的知見に基づく分析及び検証 を必要とするものであった。そして、実際に、ゆがみ調整の基礎となる平成25年検証は、平成16年検証の結果等を踏まえつつ、平成23年4月19日から平成25年1月18日までの2年弱の間、13回にわたって開催された基準部会において、8名の専門家の関与の下に行われた綿密な議論に基づくものであった(前記1⑶ア)。 ⑵ もっとも、厚生労働大臣は、ゆがみ調整を行うに当たって、平成25年検 証の結果を反映させる比率を全ての被保護世帯につき2分の1とする処理(2分の1処理)を行っている(前記第2の3⑸イ)ところ、ゆがみ調整の基礎となる平成25年検証が上記⑴のとおり専門家による長期にわたる綿密な議論を経たものであること、厚生労働大臣が行った2分の1処理が、平成25年検証の結果を反映させる比率を全ての被保護世帯について半減させ るものであり、ゆがみ調整による生活扶助基準の改定の内容に重大な影響を及ぼし、その本質的部分を改変する措置であった(数年かけて段階的に行われる通常の激変緩和措置とは異なるものであった)ことに照らすと、厚生労働大臣は、2分の1処理がその目的に照らして必要性・合理性を有し、どの程度効果を有するか、2分の1処理を行うことによって各類型の被保護世帯 (特に平成25年検証の結果増額すべきとされた60歳以上の高齢夫婦世帯及び高齢単身世帯)にいかなる影響が生じるか、2分の1処理を行って設定される生活扶助基準が適切であるか等について、専門的知見に基づく適切な 成25年検証の結果増額すべきとされた60歳以上の高齢夫婦世帯及び高齢単身世帯)にいかなる影響が生じるか、2分の1処理を行って設定される生活扶助基準が適切であるか等について、専門的知見に基づく適切な分析及び検証を行い、2分の1処理を行うか否かを検討することが必要であったというべきである。 ⑶ しかるに、本件改定がなされるまで、基準部会の委員らに対しても、厚生労働大臣が平成25年検証の結果を踏まえて本件改定を行うに当たって2分の1処理を行うことを検討していたことは明らかにされていなかった(前記第2の3⑸イ)のであり、厚生労働大臣が上記⑵の専門的知見に基づく適切な分析及び検証を行った形跡は認められない。また、厚生労働省は、平成 25年1月上旬ころに取扱厳重注意の資料として作成した「生活保護制度の見直しについて」と題する書面(甲A59の2)を用いて、内閣官房副長官との間で2分の1処理を行うことについて協議を行っており(前記1⑷ア)、上記書面には基準部会が同月18日に報告書を取りまとめ、同月末に平成25年度政府予算案を閣議決定するスケジュール案が記載されていること(甲 A59の2の8頁)からすると、厚生労働省は基準部会に諮ることなく平成 25年に本件改定(2分の1処理)を行うことを内部的に決定し、内閣官房に2分の1処理を行うことを説明していたことが窺われる(なお、上記書面には、平成25年検証を完全に反映させて生活扶助基準を改定した場合と2分の1処理及びデフレ調整を行って生活扶助基準を改定した場合の各類型の世帯の保護費の平均減額割合や生活扶助基準の見直しによる財政効果の記載 はあるが、基準部会に諮らずに2分の1処理を行うことの必要性又は合理性について説明した記載はない。)。一方、上記のとおり、厚生労働省 護費の平均減額割合や生活扶助基準の見直しによる財政効果の記載 はあるが、基準部会に諮らずに2分の1処理を行うことの必要性又は合理性について説明した記載はない。)。一方、上記のとおり、厚生労働省と内閣官房副長官との協議が行われたのは、平成25年1月18日に開催された基準部会において平成25年報告書が取りまとめられるより前の同月上旬ころであることからすれば、基準部会において2分の1処理を行う必要性やこれに よる影響等について基準部会の委員らに説明し、意見聴取するなどして、専門的知見に基づく適切な分析及び検証を行うことは容易であったものといえる。 したがって、厚生労働大臣は2分の1処理を行う旨判断するに当たって専門的知見に基づく適切な分析及び検討を怠っており(判断過程、手続の透明 性も欠いており)、その判断の過程及び手続には過誤、欠落が認められるといわざるを得ないから、本件改定はその裁量権を逸脱又は濫用したものと認められるというべきである。 ⑷ 被告らの主張についてア被告らは、平成25年検証の結果をそのまま生活扶助基準に反映させる と、生活扶助基準額の減額割合が10%を大幅に超える世帯が相当数生じ、特に子どものいる世帯での減額割合が大きくなることが想定されたことから、従前の生活扶助基準によって具体化されていた被保護者の期待的利益を一定程度保護するための合理的な激変緩和措置として2分の1処理を行ったものであり、また、ゆがみ調整が年齢差、世帯人員差及び地域差 による相対的不公平を是正することを目的としていたことに鑑みてその 検証結果をできるだけ公平に反映するために保護費が増額となる世帯を含めて2分の1処理を行う必要があった旨主張する。 しかし、2分の1処理は、基準部会が行った平 としていたことに鑑みてその 検証結果をできるだけ公平に反映するために保護費が増額となる世帯を含めて2分の1処理を行う必要があった旨主張する。 しかし、2分の1処理は、基準部会が行った平成25年検証の成果を踏まえたゆがみ調整の内容を大きく変更するものであって、生活扶助基準の改定を段階的に行うといった通常の激変緩和措置とは異なり、生活扶助基 準の改定の内容の本質的部分を改変する措置であるというべきであることに照らすと、2分の1処理により生活扶助基準額の減額割合が縮小された世帯にとっては有利な効果が生じたことを踏まえても、厚生労働大臣が専門的知見に基づく適切な分析及び検証を何ら行うことなく2分の1処理を行う政策的裁量を有していたものとは認められない(なお、最高裁平 成22年(行ツ)第392号、同年(行ヒ)第416号第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁〔老齢加算廃止東京訴訟最判〕、最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁〔老齢加算廃止福岡訴訟最判〕は、激変緩和措置の要否について厚生労働大臣が有する裁量権について判示しているが、本件で厚生労働 大臣が行った2分の1処理は上記のとおり通常の激変緩和措置と異なるものであり、上記最高裁判決のうち激変緩和措置に係る部分の射程が妥当する場面ではないものと考えられる。)。また、平成25年検証の結果を完全に反映させた場合は、被保護世帯の過半数を占める60歳以上の高齢夫婦世帯及び高齢単身世帯の保護費を増額することとなったのに対し、2分 の1処理を行ったことにより、これらの世帯について、ゆがみ調整による保護費の増額幅を半減させるという不利益を与えることとなっている(2分の1処理によって本件改定による打撃が軽減されるのはそれ の1処理を行ったことにより、これらの世帯について、ゆがみ調整による保護費の増額幅を半減させるという不利益を与えることとなっている(2分の1処理によって本件改定による打撃が軽減されるのはそれ以外の被保護世帯に限られる。)(前記第2の3⑸イ)ところ、厚生労働大臣が、上記アで被告らの主張する2分の1処理の目的に照らして2分の1処理 の内容が合理性・必要性を有するものであったかについて、専門的知見に 基づく分析及び検証を行った形跡も認められない(一方、ゆがみ調整が目的とする年齢差、世帯人員差及び地域差による較差ないし相対的不公平の是正は、本来、平成25年検証の結果を全て反映させることによって完全に達成されるものであるから、できる限り平成25年検証の結果の反映比率を高めることが被保護世帯間の公平の実現に近づくものといえ、全ての 被保護世帯に一律に平成25年検証の結果を反映させる比率を半減させる2分の1処理を行うことは、ゆがみ調整の目的を歪めるものになっている可能性すらあるといえる。)。よって、被告らの上記主張を採用することはできない。 イ被告らは、基準部会の検証結果は、広範な裁量権を有する厚生労働大臣 の考慮要素の一つに位置付けられるにすぎず、厚生労働大臣の裁量判断を法的に拘束するものではないし、基準部会の作成した平成25年報告書においても、平成25年検証の結果をそのまま基準に反映することを求めておらず、かえって、子供のいる世帯への影響に配慮する必要がある旨を指摘しており、厚生労働大臣は上記報告書の内容を踏まえて2分の1処理を 行ったと主張する。 確かに、厚生労働大臣が生活扶助基準の改定を行うに当たって基準部会等の専門委員会の検証結果に従うことが法令上要求されているわけではない。また、平成 まえて2分の1処理を 行ったと主張する。 確かに、厚生労働大臣が生活扶助基準の改定を行うに当たって基準部会等の専門委員会の検証結果に従うことが法令上要求されているわけではない。また、平成24年10月5日に開催された第10回基準部会においては、基準部会の役割は生活扶助基準の妥当性について検証することであ り、検証結果を生活扶助基準にどう反映させるかは議論の対象ではない旨の意見が出されており、基準部会において平成25年検証の結果を完全に反映させて生活扶助基準の改定を行うべきである旨の意見が出されたことはない(前記1⑶)。また、平成25年報告書には、今後、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、生活保護を受給している世帯及び一 般低所得世帯、特に貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる 世帯への影響にも配慮する必要がある旨の記載がある(前記1⑶オb⒟)。 しかし、厚生労働大臣が平成25年検証の結果に従う義務がなく、平成25年検証の結果を完全に反映させて生活扶助基準の改定を行うことを義務付けられていないことを前提としても、そのことは、厚生労働大臣が 他の追加的・専門的な分析や検証も経ることなく平成25年検証の結果の反映比率を自由に設定し、ゆがみ調整による改定の本質的部分を改変することのできる広範な裁量権を有することを意味するものではないというべきである(仮に厚生労働大臣がそのような広範な裁量権を有しているとすれば、厚生労働大臣は平成25年検証の結果の反映比率を際限なく低く 設定して平成25年検証の結果を実質的に無意味にすることさえ可能となってしまうのであり、明らかに不合理である。)。また平成25年報告書は、被保護世帯、一般低所得世帯及び子どものいる世帯への影響への配慮が必要である 年検証の結果を実質的に無意味にすることさえ可能となってしまうのであり、明らかに不合理である。)。また平成25年報告書は、被保護世帯、一般低所得世帯及び子どものいる世帯への影響への配慮が必要であるという至極当然のことを一般的・抽象的に記載しているにすぎず、そのためにいかなる具体的な配慮を行うことが適切であるかを示し ているものではないし、上記各世帯への影響に配慮して直ちに高齢単身世帯や高齢夫婦世帯への不利益を生じさせることや、ゆがみ調整の本質的部分の改変を許容する趣旨のものではないと考えられる。よって、被告らの上記主張を採用することはできない。 3 争点⑷(デフレ調整の違法性の有無)について ⑴ デフレ調整を行うに当たっては専門的知見に基づく複合的・多角的な分析及び検証を行うべきであったことアデフレ調整は、平成22年の総務省CPIにおいて採用されているウエイトを参照して、平成20年及び平成23年について生活扶助相当品目を対象とする物価指数である生活扶助相当CPIを算出して把握した物価 下落率に基づいて生活扶助基準を改定するものであり(前記第2の3⑸ ウ)、その性質上、専門家等による高度の専門的知見に基づく分析及び検証を必要とするものであったと考えられる。 イまた、平成15年中間取りまとめにおいて消費者物価指数を生活扶助基準の改定の指標として用いることの可能性について示唆されることはあったものの(前記1⑴エ)、昭和59年から現在まで厚生労働大臣の採用 する(被告第12準備書面10~12頁、被告第15準備書面13頁注1)水準均衡方式の下では、当該年度に予想される国民の消費動向に対応する見地から、政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びに準拠することが妥当であるとされ、賃金や物 12頁、被告第15準備書面13頁注1)水準均衡方式の下では、当該年度に予想される国民の消費動向に対応する見地から、政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びに準拠することが妥当であるとされ、賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料にとどめるべきであるとされてきたし(前 記第2の3⑵イ)、本件改定に至るまで、基準部会等において、物価指数等により算定された物価変動率を基礎とした生活扶助基準の改定の手法について実質的な検討が行われたことはなく、生活扶助相当品目を対象とした生活扶助相当CPIという物価指数の算定方法は、本件改定に当たって厚生労働省により初めて考案されたものであった(前記第2の3⑸ウ )。したがって、本件改定が行われた当時、物価変動率を基礎として生活扶助基準の改定を行うことの適切性や、その際の物価指数の算定方法等の改定の具体的手法について専門家による検討や議論が蓄積されている状況にはなかった一方、デフレ調整による財政効果は3年で580億円程度と非常に大きく、本件改定による全体の財政効果(3年で670億円程度) のうち大半を占めており(前記第2の3⑸エ)、デフレ調整は、本件改定における生活保護費の大幅な減額の要因となったものであったことに照らすと、厚生労働大臣がデフレ調整を行うことについて裁量権を有していることを前提としても、厚生労働大臣は、物価の動向を勘案した生活扶助基準の改定を行うことの適切性や、生活扶助相当CPIを使用した物価下落 率算定の適切性、物価の動向を把握するためのその他の具体的手法の可能 性等について、専門的知見を踏まえた複合的・多角的な分析及び検証を行うことが必要であったというべきである。 ⑵ 基準部会においてデフレ調整について全く検 めのその他の具体的手法の可能 性等について、専門的知見を踏まえた複合的・多角的な分析及び検証を行うことが必要であったというべきである。 ⑵ 基準部会においてデフレ調整について全く検討されていないことア厚生労働大臣がデフレ調整を行うことについては、2年弱の間、13回にわたって開催された基準部会において、全く議論されておらず考慮の外 に置かれていたこと、平成25年報告書とりまとめ直前の平成25年1月16日の第12回基準部会委員において社会・援護局保護課長からされた「合理的な説明が可能な経済的指標」の説明(なお、その説明によりデフレ調整を行うことが示されたといえないことは明らかである。)に対し、委員から消費者物価指数や賃金の動向については基準部会で議論がされて おらず合理的説明ができていないことを明らかにしてもらいたい旨の指摘がされていること(前記1⑶エ)に照らすと、デフレ調整に関して、基準部会等の専門家が関与して統計等の客観的な数値等に基づく分析、検討がされていたということはできない。 イもちろん、基準部会に諮り了承を得ることが生活扶助基準の改定に当た り不可欠であるというわけではないし、政策的にデフレを考慮して基準額を減額すること自体が許容されないわけでもない(統計等の客観数値に基づく検証を必要とする事項でなかったり、特に緊急性が高いような場合には厚生労働省が生活扶助基準の改定を外部に諮らずに決定することは許容されると考えられる。)。しかし、専門部局である厚生労働省社会・援護 局が考案した生活扶助相当CPIを用いたという点において専門性が認められるとしても、それが内部的な検討にとどまり、外部からの視点に全くさらされていない以上、その客観性や合理性が担保されているとはいい難い。 した生活扶助相当CPIを用いたという点において専門性が認められるとしても、それが内部的な検討にとどまり、外部からの視点に全くさらされていない以上、その客観性や合理性が担保されているとはいい難い。また、基準部会は期限付きでない常設部会として設置されており、平成25年予算案にゆがみ調整を反映させた後に、平成26年予算案以降 デフレ調整を反映することを政策的に検討するのであれば、基準部会その 他の外部の専門家による統計等の検証を経て専門的な事項を議論することも十分可能であった一方、その検証等を経ずに厚生労働大臣がその判断のみでデフレ調整を行う緊急性があったとまでは認められない(現に、デフレ傾向が続いていた中でもデフレ調整は何年にもわたり行われていなかったのである。)こと、前記のとおり生活扶助基準の改定を水準均衡方式 により行うことが政策判断の過程においても定着し、物価の上昇や下落が直截的に改定の理由とされたことがなかったことに鑑みると、本件改定に当たってもデフレ調整により被保護世帯にいかなる影響が生じるか、デフレ調整を行って設定される生活扶助基準が適切であるか等について、専門的知見に基づく適切な分析及び検証を行うことが必要であったというべ きであり、その必要性の程度は、平成25年報告書に基づくゆがみ調整を踏まえた2分の1処理と同等あるいはそれよりも高度であったというべきである。 ⑶ 生活扶助相当CPIを算出する際に使用した統計データについてア厚生労働大臣は、生活扶助相当CPIを算出するにあたり、平成22年 の全国平均の総務省CPIの算出の基礎とされた平成22年の家計調査の全国平均の品目別支出金額に基づいて算出されたウエイトを使用している(前記第2の3⑸ウ)。 イしかし、家計調査において調査 の全国平均の総務省CPIの算出の基礎とされた平成22年の家計調査の全国平均の品目別支出金額に基づいて算出されたウエイトを使用している(前記第2の3⑸ウ)。 イしかし、家計調査において調査対象とされる世帯は、年間収入五分位の各階級及び年間収入十分位の各階級に属する世帯が概ね均等になるように 選定され、調査対象世帯全体のうち第1・五分位に属する世帯は概ね20%、第1・十分位に属する世帯は概ね10%にとどまっている(前記1⑹ア)から、家計調査に基づく全国平均の品目別支出金額のデータには、被保護世帯と類似の消費実態を有する低所得世帯の消費実態が適切に反映されていない可能性がある。 ウまた、平成25年1月16日に開催された第12回基準部会において、 生活扶助基準の改定に際して物価指数を考慮するとしても、物価指数は世帯類型や所得階級ごとにその消費構造に応じて全く異なる可能性があることに留意すべきであり、全国一律の物価指数を考慮することは非常に慎重に考えなくてはいけないとの意見が出されている(前記1⑶エ)ところ、実際に、平成22年家計調査における全国平均の10大費目別のウエイト は、食料につき25.25%、住居につき21.22%、光熱・水道につき7.04%、家具・家事用品につき3.45%、被服及び履物につき4. 05%、保健医療につき4.28%、交通・通信につき14.21%、教育につき3.34%、教養娯楽につき11.45%、諸雑費につき5.69%であった(前記1⑹ア)が、社会保障生計調査に基づく被保護世帯の 10大費目別の消費支出は、2人以上世帯については、食料につき29. 9%、住居につき17.7%、光熱・水道につき10.2%、家具・家事用品につき4.9%、被服及び履物につき4.8%、保健医療につき2 10大費目別の消費支出は、2人以上世帯については、食料につき29. 9%、住居につき17.7%、光熱・水道につき10.2%、家具・家事用品につき4.9%、被服及び履物につき4.8%、保健医療につき2. 1%、交通・通信につき9.6%、教育につき3.4%、教養娯楽につき6.4%、諸雑費につき11.1%であり、単身世帯については、食料に つき29.3%、住居につき31.3%、光熱・水道につき8.5%、家具・家事用品につき3.9%、被服及び履物につき2.6%、保健医療につき2.0%、交通・通信につき6.8%、教育につき0%、教養娯楽につき5.6%、諸雑費につき9.9%であり(前記1⑹イ)、その10大費目ごとの消費支出の割合は異なっており、特に教養娯楽の費目については、 家計調査に基づく全国平均のウエイトの方が被保護世帯のウエイトより相当程度大きいことが窺われる。そして、平成21年から平成23年にかけて、テレビやパソコン等の耐久消費財の物価が下落しており、平成23年の消費者物価指数の前年比の増減に対する教養娯楽用耐久財の寄与度が-0.47と大きいこと(前記1⑸ウ)や、テレビやパソコン等が含まれ る教養娯楽の費目の物価指数が、平成21年から平成22年には1.7%、 平成22年から平成23年には4.0%下落し、他の費目と比較してもその下落幅が大きいこと(同)からすれば、平成20年から平成23年にかけての生活扶助相当CPIの下落にはテレビやパソコン等の教養娯楽用耐久消費財による物価下落が相当程度寄与したものと考えられる。一方、被保護世帯におけるテレビの保有率は他の世帯とあまり変わらない(前記 1⑺イ)ものの、高齢者が多く含まれる被保護世帯(同ア)はテレビ、冷蔵庫等の生活必需品は古いものをそのまま使い続けていること 被保護世帯におけるテレビの保有率は他の世帯とあまり変わらない(前記 1⑺イ)ものの、高齢者が多く含まれる被保護世帯(同ア)はテレビ、冷蔵庫等の生活必需品は古いものをそのまま使い続けていることが多く、高価なビデオレコーダーやパソコン等の教養娯楽用耐久財を購入する機会は多くないと考えられる。そうすると、平成20年及び平成23年の生活扶助相当CPIを算出するに当たって全国平均の総務省CPIの算出の基礎 とされた品目別のウエイトを使用した場合、本来、被保護世帯における消費支出の割合が他の世帯に比して大きくない教養娯楽用耐久財の物価下落による影響を過大に評価してしまう危険があったものというべきである。 エ他方、家計調査においては、年間収入五分位階級別及び年間収入十分位階級別に10大費目、中分類及び小分類ごとの1世帯当たりの支出のデー タが公表されていた(前記1⑹ア)のであるから、厚生労働大臣は、同データに基づき、年間収入第1・十分位又は第1・五分位に属する世帯について、10大費目、中分類及び小分類ごとのウエイトを算出し、より被保護世帯の消費実態に近いウエイトに基づく消費者物価指数の算出を試みることも可能であったと考えられる。また、厚生労働省は、全国の被保護世 帯を調査対象として、被保護世帯の生活実態を明らかにすることによって、保護基準の改定等、生活保護制度の企画運営のために必要な基礎資料を得ること等を目的として社会保障生計調査を実施していたのであり、同調査によって被保護世帯の10大費目及び中分類ごとの消費支出のデータが明らかとなっていた(前記1⑹イ)のであるから、厚生労働大臣は、同デー タに基づいて被保護世帯における10大費目及び中分類ごとのウエイトを 算出することも可能であったと考えられる。 らかとなっていた(前記1⑹イ)のであるから、厚生労働大臣は、同デー タに基づいて被保護世帯における10大費目及び中分類ごとのウエイトを 算出することも可能であったと考えられる。 オ小括以上の検討によれば、厚生労働大臣が本件改定において採用した、家計調査に基づいて算出された全国平均の品目別のウエイトを使用して生活扶助相当CPIを算出する手法が、物価下落により被保護世帯の受ける影響 を測定する唯一の手法であったということはできない。かえって、厚生労働大臣が採用した手法を用いることで生活扶助相当CPIが被保護世帯の消費実態を適切に反映しない指数となり、被保護世帯における消費支出の割合の低い教養娯楽用耐久財の物価下落を過大に評価する危険性も存在したことからすれば、上記厚生労働大臣が採用した生活扶助相当CPIを算 出する手法が、他の統計データ(家計調査における収入階級別のデータや社会保障生計調査におけるデータ等)を使用して物価指数を算定する手法と比較するなどして生活扶助相当CPIが被保護世帯の消費実態を示す指標として適切であるかについて分析及び検証を行う必要がなかったといえるほどの合理性を有していたとまでは認められない(かえって、統計等の 客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を有しているかについて疑問を差し挟む余地があるというべきである。)。 そして、厚生労働大臣は、物価下落による影響を勘案して生活扶助基準を改定するに当たっては、物価下落率の指標となる物価指数の算定のために利用可能な統計データ(家計調査における収入階級別のデータや社会保 障生計調査におけるデータ等も含む。)のいずれを使用するかや、算定された指数が適切であるかについて専門的知見に基づき適切な分析及び検討を行 データ(家計調査における収入階級別のデータや社会保 障生計調査におけるデータ等も含む。)のいずれを使用するかや、算定された指数が適切であるかについて専門的知見に基づき適切な分析及び検討を行うべきであったというべきであるし、基準部会において全国一律の物価指数を考慮することは慎重に考えなくてはいけない旨の意見が出されていたこと(前記1⑶)や、過去に物価指数の変動を直接的に考慮して生活扶 助基準の改定がされたことがなかったことに照らし、厚生労働大臣が上記 専門的な知見を踏まえた分析及び検討を行う必要があることを認識することは容易であったと考えられる。 ⑷ 物価下落率の算定の基準時として平成20年を選択したことについてア厚生労働大臣は、生活扶助相当CPIにより物価下落率を算定する起点として平成20年を選択している(前記1⑷イ)が、全国年平均の総務 省CPIの推移をみると、平成16年から平成19年まではほぼ横ばいであったのに対し、平成20年には世界的な原油価格や穀物価格の高騰により11年ぶりに1%を超える1.4%の上昇となったが、その後、平成21年には高騰していた原油価格の下落により、昭和46年以降最大の下落幅である1.4%の下落となり、その後も下落を続けている(平成22年 に0.7%、平成23年に0.3%下落している)こと(前記1⑸ウ)からすれば、平成20年を起点として物価下落率を算定した場合には、平成19年から平成20年にかけての特異な物価上昇を考慮せず、平成20年以降の物価下落のみを評価することになることは明らかである一方、平成16年の改定後、本件改定までの9年間にわたり生活扶助基準の見直し はされていなかったことに照らすと、厚生労働大臣が平成20年を物価下落率の算定の起点とす とになることは明らかである一方、平成16年の改定後、本件改定までの9年間にわたり生活扶助基準の見直し はされていなかったことに照らすと、厚生労働大臣が平成20年を物価下落率の算定の起点とする旨の判断をしたことに合理性があると認めることは困難である。 イまた、平成20年を物価下落率の算定の起点とすることによって上記のような弊害が生じることは容易に想定することが可能であるから、厚生労 働大臣は、少なくとも物価下落率の算定の起点を平成20年とすることの適切性や前回の改定がされた平成16年など他の時点を起点とする可能性について、基準部会に諮るなど専門的知見に基づく複合的・多角的な分析及び検討を要したものというべきである。 ⑸ まとめ(厚生労働大臣によるデフレ調整を行う旨の判断の過程における過 誤・欠落) ア前記のとおり、厚生労働大臣がデフレ調整を行う政策判断において裁量権を有していることを前提としても、物価の動向を勘案した生活扶助基準の改定を行うことの適切性や、生活扶助相当CPIを使用した物価下落率算定の適切性、物価の動向を把握するためのその他の具体的手法の可能性等について、専門的知見を踏まえた複合的・多角的な分析及び検証を行う ことが必要であったにもかかわらず、厚生労働大臣は、デフレ調整を行うに当たって、厚生労働省において生活扶助相当CPIの算出方法等(前記⑶)及び物価指数の起算点(前記⑷)について複合的・多角的な分析及び検討を行っていたとは認められない。 イまた、厚生労働大臣がゆがみ調整を行うに当たっては、その基礎として、 2年弱の間、13回にわたって開催された基準部会において、8名の専門家の関与の下に綿密な議論がされ(平成25年検証)、それにより専門的な報告書(平成25年報告 たっては、その基礎として、 2年弱の間、13回にわたって開催された基準部会において、8名の専門家の関与の下に綿密な議論がされ(平成25年検証)、それにより専門的な報告書(平成25年報告書)が作成されているのであり(前記1⑶)、デフレ調整を行うに当たっても基準部会等の専門家の関与の下に同等の分析及び検討を行うことは可能であったというべきである。 ウそして、それらを経ずに、平成20年から平成23年の消費者物価指数の減少率がマイナス2.35%にとどまっている(前記1⑸ウ)にもかかわらず、その2倍を超えるマイナス4.78%もの生活扶助費の減額を全ての被保護世帯に一律に適用したことは、やはり政策判断に伴う裁量の範囲を超えており、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や整合性を欠 いているといわざるを得ない。 エしたがって、厚生労働大臣は、デフレ調整を行う旨判断するに当たって専門的知見に基づく適切な分析及び検討を怠ったものであり、その判断の過程には過誤、欠落が認められるといわざるを得ないから、本件改定はその裁量権を逸脱又は濫用した違法なものと認められる。 ⑹ 被告らの主張について ア被告らは、厚生労働大臣が生活扶助基準の改定にあたって外部の専門機関等の意見等を聴取することが法令上の要件とされているものではなく、基準部会の平成25年報告書においても、平成25年検証の結果以外の合理的な経済指標等を総合的に勘案することは否定されていないことから、厚生労働大臣の行ったデフレ調整は平成25年報告書を踏まえたもので あると主張する。 確かに、厚生労働大臣が生活扶助基準の改定に当たって外部の専門機関等の意見等を聴取することが法令上の要件とされているものではないし、厚生労働大 書を踏まえたもので あると主張する。 確かに、厚生労働大臣が生活扶助基準の改定に当たって外部の専門機関等の意見等を聴取することが法令上の要件とされているものではないし、厚生労働大臣が生活扶助基準を改定するに当たって履践すべき具体的な手続として、特定の専門機関の意見聴取等が定められているわけではない。 しかし、厚生労働大臣による生活扶助基準の改定が高度の専門的知見に基づく分析及び検証を必要とする性質を有する場合においては、厚生労働大臣に専門的知見を踏まえた分析及び検討を行うことが必要であるというべきであり、厚生労働大臣が専門的知見を踏まえずに生活扶助基準の具体的な改定内容を決定する裁量権までが認められることにはならないも のと考えられる。 また、平成25年報告書においては、厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、平成25年報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標等を総合的に勘案する場合はそれらの根拠についても明確に示されたい旨の記載がある(前記1⑶オ a⒟②)ところ、平成25年報告書の記載内容について検討された平成25年1月16日の第12回基準部会においては、平成25年報告書の原案の「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮した上で、他に合理的説明が可能な経済指標などがあれば、それらについても根拠を明確にして改定されたい」との 記載について、委員から基準部会では消費者物価指数や賃金の動向につい ては何も議論していないことを同報告書において明確にしてほしい、基準部会で議論していない考慮要素に基づいて改定することを求めることはできないため「改定されたい」との文言は訂正 向につい ては何も議論していないことを同報告書において明確にしてほしい、基準部会で議論していない考慮要素に基づいて改定することを求めることはできないため「改定されたい」との文言は訂正してほしいといった意見が提出され(前記1⑶エ)、「改定されたい」との文言が削除された経緯があることに照らすと、基準部会においては、物価指数に基づく生活扶助基準 の改定について何ら議論されていないことは明らかであるというべきである。そして、上記のとおり、平成25年報告書における記載が「根拠を明確にして改定されたい」から「それらの根拠を明確に示されたい」との文言に変更された経緯を踏まえれば、同報告書の記載は、生活扶助基準の改定に当たって物価指数等の経済指標を勘案する場合には基準部会にお いてその根拠を示すように求める趣旨のもので、その場合には同指標に基づく改定の具体的手法やその是非について基準部会における分析や検討を行うことを前提とするものというべきであり、基準部会における何らの分析や検証を尽くすことなく経済指標を勘案して生活扶助基準を改定することを容認する趣旨のものとはいえない。したがって、厚生労働大臣が 行ったデフレ調整が平成25年報告書の内容を踏まえたものであるということはできず、被告らの上記主張を採用することはできない。 イ被告らは、厚生労働大臣がデフレ傾向によって被保護世帯の可処分所得が実質的に増加した程度を的確に把握するために、生活扶助以外の扶助で賄われる品目及び生活扶助で支出することが想定されていない品目を詳細 に除外して生活扶助相当CPIを算出する必要があったところ、生活扶助相当CPIの算出に当たっては、統計資料として精度が高く、多くの社会保障制度の給付額の改定において利用されており、詳細な品目別のウエ に除外して生活扶助相当CPIを算出する必要があったところ、生活扶助相当CPIの算出に当たっては、統計資料として精度が高く、多くの社会保障制度の給付額の改定において利用されており、詳細な品目別のウエイトを把握できる家計調査における全国平均のデータが最も適したものであること、家計調査における年間収入十分位階級別及び年間収入五分位階級 別のデータ並びに社会保障生計調査のデータには、詳細な品目ごとのウエ イトの算出に必要な統計データが存せず、社会保障生計調査はその調査手法からみて統計データの精度に一定の限界があること、被保護世帯においても電化製品が相当程度普及しており、生活扶助により電化製品を購入することが予想されることから、生活扶助相当CPIの算定に当たって電化製品を除外することは適当でない旨主張する。 確かに、総務省統計局により公表される家計調査における年間収入五分位階級別及び年間収入十分位階級別のデータには、10大費目ごと、中分類ごと及び小分類ごとの1世帯当たりの支出のデータは存在するが、品目別のデータは存在せず(前記1⑹ア)、社会保障生計調査では、被保護世帯から収支の状況を記載した家計簿を提出させる等の調査を行う際に個別の 品目ごとの消費支出を詳細に記載させるための措置が講じられていないため、10大費目ごと及び中分類ごとの1世帯当たりの支出金額は明らかとなるものの、品目ごとの支出金額は明らかとならない(同イ)ため、これらのデータを使用しても品目別のウエイトを算出することはできない。 しかし、被告らの上記主張を踏まえても、物価下落により被保護世帯が 実質的に受けた可処分所得の増加がどの程度であるかを分析する際に、中分類や小分類ごとのウエイトに基づいて算定された物価指数を使用するのではなく、詳 張を踏まえても、物価下落により被保護世帯が 実質的に受けた可処分所得の増加がどの程度であるかを分析する際に、中分類や小分類ごとのウエイトに基づいて算定された物価指数を使用するのではなく、詳細な品目別のウエイトに基づいて物価指数を算定する必要性がどの程度認められるのかは明らかではない。そして、前記⑶ウのとおり、生活扶助相当CPIの算定に当たって家計調査における全国平均の品 目別ウエイトを使用することには、生活扶助相当CPIが被保護世帯の消費実態を適切に反映しないものとなり、物価下落率を過大に評価するものとなる危険が伴うのであり、そのような危険性があることを前提とした上で、詳細な品目ごとのウエイトに基づく物価指数を算定することを優先させるべき合理的理由が認められるのかも不明というほかない。また、平成 22年度の家庭の生活実態及び生活意識に関する調査によれば、被保護世 帯におけるカメラの普及率は45%、パソコンの普及率は36.1%であり、被保護世帯にもこれらの物品がある程度普及しているものといえるが、第3・五分位に属する世帯におけるカメラの普及率は92.5%、パソコンの普及率は86.7%であること(前記1⑺)と比較すれば、被保護世帯における上記物品の普及率は全世帯の平均よりは相当程度低いことが 窺える。そして、上記の物品が被保護世帯においてある程度普及しているとしても、前記⑶ウのとおり、被保護世帯における教養娯楽の費目の支出の割合が全世帯の平均に比して低いことからすれば、被保護世帯において上記物品を買い替える頻度は全世帯の平均と比較すれば少ないことが窺われ、被保護世帯における上記物品の消費支出の割合は全世帯の平均と比 較して低くなる可能性がある。そうすると、被保護世帯において上記物品がある程度普 度は全世帯の平均と比較すれば少ないことが窺われ、被保護世帯における上記物品の消費支出の割合は全世帯の平均と比 較して低くなる可能性がある。そうすると、被保護世帯において上記物品がある程度普及しているとしても、被保護世帯が他の一般世帯と同様に上記物品の物価下落による恩恵を受けることが明らかであるものとはいえず、厚生労働大臣が生活扶助相当CPIの算定の際に家計調査における全国平均の品目別ウエイトを使用したことについて、上記分析及び検討を何 ら行うことが必要でないといえるほどに合理性が認められることが明らかであるとは考え難い。よって、被告らの上記主張を採用することはできない。 ウ被告らは、厚生労働大臣が平成20年を物価下落率の算定の起点として選択したのは、平成19年報告書において生活扶助基準は一般低所得者世 帯の消費実態と比べて高いと評価されており、本来であれば平成20年度に生活扶助基準を一般低所得者の消費実態に適合したものに改定する必要があったこと、厚生労働大臣は、平成17年度から平成19年度までは政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果、生活扶助基準を据え置く 旨の判断を行っているが、平成20年度から平成24年度までは、原油価 格の高騰や世界金融危機等の経済、雇用情勢等を考慮して生活扶助基準を据え置く旨の判断をしており、平成20年度以降の消費や経済の物価動向は本件改定に至るまで生活扶助基準に反映されていなかったこと、平成21年度以降は消費、物価、賃金等がいずれも下落するデフレ傾向が続いていたにもかかわらず生活扶助基準が据え置かれたことによって被保護世 帯の可処分所得が実質的に増加したことを理由とするものであり、上記の 以降は消費、物価、賃金等がいずれも下落するデフレ傾向が続いていたにもかかわらず生活扶助基準が据え置かれたことによって被保護世 帯の可処分所得が実質的に増加したことを理由とするものであり、上記の厚生労働大臣の判断の過程に過誤、欠落は認められないと主張する。 確かに、厚生労働省社会・援護局保護課は、平成17年度から平成19年度までは、当該年度の政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果、 生活扶助基準を据え置くこととしたが、平成20年度から平成22年度は、原油価格の高騰や物価上昇といった社会経済情勢等を勘案するなどして生活扶助基準を据え置くこととした旨説明しており(前記1⑷)、平成19年度までは一般国民の消費水準を踏まえた生活扶助基準の水準の適切性の検討がされていたが、平成20年度から本件改定に至るまでは、一般国 民の消費水準を踏まえた生活扶助基準の水準の適切性の検討がされていなかったと評価しえないわけではない。 しかし、仮に被告らの主張するとおり、厚生労働大臣による平成19年までの生活扶助基準の水準の適切性の検討により本件改定前の生活扶助基準が平成19年までの物価の動向による影響を反映するものであった といえるとしても、本件改定前の生活扶助基準が平成19年から平成20年までの物価の動向(それもプラス1.4%という明らかな上昇)による影響を反映するものでないことは明らかである。また、厚生労働大臣が行った平成19年度までの生活扶助基準の水準の適切性の検討において、従前長らく採用されてきた水準均衡方式において検討されていたような一 般国民の消費水準(当該年度の政府経済見通しにおける民間最終消費支出 の伸び率)とは別に物価 性の検討において、従前長らく採用されてきた水準均衡方式において検討されていたような一 般国民の消費水準(当該年度の政府経済見通しにおける民間最終消費支出 の伸び率)とは別に物価の動向がどの程度勘案されていたかは不明であるというほかないし、上記の厚生労働省社会・援護局保護課による説明内容をもって直ちに、本件改定以前の生活扶助基準に、平成19年度までの物価の動向による影響が反映され、平成20年度以降の物価の動向による影響が反映されていないことが認められるわけでもない。よって、被告らの 上記主張を採用することはできない。 4 争点⑸(ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行ったことの違法性の有無)について⑴ 既に説示したとおり、厚生労働大臣が平成25年検証について2分の1処理を行ってゆがみ調整を行ったこと及びデフレ調整を行ったことはいずれも 違法であるから、これらを併せて行った本件改定には違法性が認められる。 そして、厚生労働大臣がゆがみ調整及びデフレ調整を併せて行った判断には、前記の点に加えて更に以下のとおりの過誤・欠落があり、違法性が認められるものというべきである。 ⑵ 本件改定においては、ゆがみ調整による減額分が3年間で90億円、デフ レ調整による減額分が580億円(本体分・加算分計)であり、その財政効果は大きなものである一方、ゆがみ調整とデフレ調整が併せて行われたことにより基準額の減額幅が大きなものとなっているところ、平成19年検証においては生活扶助基準の体系の適切性と水準の適切性が併せて検証されていた(前記1⑵)もので、ゆがみ調整の基礎となった平成25年検証において も、少なくとも平成24年10月5日に開催された第10回基準部会までは、平成19年検証を踏まえて生活扶助基準の水準の検証と た(前記1⑵)もので、ゆがみ調整の基礎となった平成25年検証において も、少なくとも平成24年10月5日に開催された第10回基準部会までは、平成19年検証を踏まえて生活扶助基準の水準の検証と一体的に、年齢階級別、世帯人員別、級地別の指数について検証を行うことが議論されており、その後の基準部会における議論及び平成25年報告書の内容を見ても、基準部会において水準の妥当性の検証を行わないことや平成25年検証の結果に 基づくゆがみ調整とは別に水準の調整を行う可能性があることや、その当否 についての実質的な旨の議論がされた形跡は窺えない(前記1⑶)。また、平成25年報告書には、生活扶助基準が生活保護において保障すべき健康で文化的な最低限度の生活水準であることから、被保護世帯と隣接した一般低所得世帯として第1・十分位に属する世帯を比較対象として設定した旨が記載されており、平成25年報告書は、平成25年検証の結果に基づくゆがみ調 整を行うことにより生活扶助基準の水準の妥当性も調整されることを前提として作成されたものと考えられる。 そうすると、厚生労働大臣は、ゆがみ調整及びデフレ調整の手法についてそれぞれ分析・検証するにとどまらず、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによる影響等について、統一的に分析・検証をすべきであったと考え られるところ、前記と同様、厚生労働大臣は本件改定に至るまでにゆがみ調整とデフレ調整の併用について統一的な分析・検証を基準部会等の専門家に諮った形跡は皆無である。かえって、厚生労働大臣は、本件改定に際してゆがみ調整に加えてデフレ調整を行うことによって物価の影響等を重複して考慮するなどの問題が生じる可能性を想定し得たものと考えられるのであって、 それが困難であった特段の事情も見い出せ に際してゆがみ調整に加えてデフレ調整を行うことによって物価の影響等を重複して考慮するなどの問題が生じる可能性を想定し得たものと考えられるのであって、 それが困難であった特段の事情も見い出せない(一方、基準部会の委員らが、平成25年検証の結果に基づくゆがみ調整に加え、平成25年検証において全く議論されていない物価指数を勘案したデフレ調整が行われることを予測できたものとは考え難い。)。したがって、厚生労働大臣は、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことを決定するに当たって適切な分析・検証を怠った ものであり、その判断の過程には過誤、欠落が認められるから、本件改定はその裁量権を逸脱又は濫用した違法なものといわざるを得ない。 ⑶ 被告らの主張についてア被告らは、ゆがみ調整は同時点における年齢別、世帯人員別及び級地別の消費実態の「分布」を評価するもので、特定の期間における消費実態や 物価の変動を考慮するものではないから、物価の動向を踏まえて生活扶助 基準の水準(高さ)を適正にするデフレ調整とは目的を異にしており、ゆがみ調整に加えてデフレ調整を併せて行うことに問題はないと主張する。 しかし、前記2及び3において説示したとおり、本件においてはゆがみ調整(2分の1処理)及びデフレ調整にそれぞれ違法性が認められるから、両者が併用されたことは本件改定の違法性を高めるものであるというべき であるし、両者の併用により基準額が大きく減額される世帯が生ずることについての専門的知見に基づく分析、検証も行われていない以上、ゆがみ調整とデフレ調整が目的を異にすることやそれぞれに厚生労働大臣の裁量が認められることを踏まえても、両者が違法であるという結論は左右されない。よって、被告らの上記主張を採用することはできない。 調整とデフレ調整が目的を異にすることやそれぞれに厚生労働大臣の裁量が認められることを踏まえても、両者が違法であるという結論は左右されない。よって、被告らの上記主張を採用することはできない。 イ被告らは、平成25年検証では「絶対水準の検討」と「展開のための指数の検討」を併せて行うことがもともと検討されていたが、第11回基準部会において、後者を優先的に検討することが決定されたと主張する。 しかし、第11回基準部会の議事録(乙A95)には部会長の「従来の一本に比較して丈比べみたいな形から、そうではなくて、基準額と現実の 第1・十分位の消費実態のパターンがどれだけ違うのかを抽出する作業に重点を置かせていただければと思います。」という発言があるだけで、被告らの主張するような決定がされたとまでは認め難い。また、岩田部会長代理は、基準部会ではむしろ水準及び体系を一体的に検討することでずっとやってきていた旨供述しており(甲A158の21頁)、仮に被告らが主張 するように第11回基準部会において厚生労働省の事務方から絶対水準の検討・調整はしないとの説明がされたとしても、専門家である基準部会の委員ですらそれを理解し、認識を共有するに至っていなかったものと考えられる。そうすると、基準部会において絶対水準の調整を基準部会における議論とは別にデフレ調整で行うことが決定されたとは認められない。 よって、被告らの上記主張を採用することはできない。 5 以上によれば、その余の争点について判断するまでもなく、厚生労働大臣が、平成25年検証の結果を2分の1の比率で反映させる処理を行うとともに、デフレ調整を行った本件改定に至る判断の過程、手続には統計等の客観的数値との合理的関連性や専門的知見等との整合性を欠いている点で過誤 成25年検証の結果を2分の1の比率で反映させる処理を行うとともに、デフレ調整を行った本件改定に至る判断の過程、手続には統計等の客観的数値との合理的関連性や専門的知見等との整合性を欠いている点で過誤、欠落があると認められ、厚生労働大臣はその裁量権を逸脱又は濫用したものといわざるを 得ない。したがって、本件改定は、生活保護法3条及び8条2項の規定に違反する違法なものである。 第4 結論よって、原告らの請求はいずれも理由があるからこれらを認容することとし、主文のとおり判決する。 熊本地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官中辻󠄀 雄一朗 裁判官坂本清士郎 裁判官牧野芙美

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る