- 1 - 主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 在広州日本国総領事館所属日本国領事官が控訴人に対し平成20年12月12日付けでした査証の発給拒否処分を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,中華人民共和国(以下「中国」という。)の国籍を有する男性である控訴人が,法務大臣から権限の委任を受けた大阪入国管理局長から在留資格を「技能」とする在留資格認定証明書の交付を受けた後,在広州日本国総領事館に査証の発給の申請をしたところ,同総領事館所属日本国領事官からその発給を拒否されたことから,当該拒否が取消訴訟の対象となる行政処分に当たり,かつ,違法なものであるとして,その取消しを求める事案である。 原審は,査証の発給の拒否は取消訴訟の対象となる行政処分に当たらず,上記拒否の取消しを求める控訴人の本訴請求に係る訴えは不適法なものであるとして,当該訴えを却下した。 そこで,控訴人がこれを不服として控訴した。 2 関係法律及び訓令等の定め次のとおり付加訂正するほか,原判決の「第2 事案の概要」の1(2頁4行目から6頁11行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 2頁20行目の「でなく,」の次に「同法」を,同行目の「活動等」の次に「のいずれか」をそれぞれ加える。 (2) 4頁13行目の「各査証は,」,15行目の「そして,」,5頁2行目の「(1号),」及び5行目の「査証官は,」の次にいずれも「同規則」を- 2 -加え,6行目の「7条3項は,」を「同規則7条3項は,同規則」に改め,14行目の「活動が」の次に「同規則」を加え,16行目の「入管法7条1項2号の基準を定める省令」を「出入国管理及び難民認定法第七条第一 ,6行目の「7条3項は,」を「同規則7条3項は,同規則」に改め,14行目の「活動が」の次に「同規則」を加え,16行目の「入管法7条1項2号の基準を定める省令」を「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」に改め,22行目の「申請人が」の次に「同規則」を,23行目の「ときは」の次に「,旅券面に」を,6頁1行目の「申請人が」の次に「同規則」をそれぞれ加える。 (3) 6頁8行目の「申請不受理機関」を「申請不受理期間」に改める。 3 前提となる事実原判決の「第2 事案の概要」の2(6頁14行目から7頁9行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,7頁6行目の「がされた。」を「された。」に改める。 4 争点及び当事者の主張次のとおり付加訂正するほか,原判決の「第2 事案の概要」の3(7頁11行目から15頁21行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決の付加訂正ア 7頁26行目の「公権力性が認められている。」を「,公権力性を認める判断を行っている。」に,8頁1行目の「法」を「入管法」にそれぞれ改め,13行目の「拒否は,」の次に「当該外国人が」を加え,14行目の「生じる」を「生じさせる」に,9頁2行目の「受けた者」を「受けた外国人」にそれぞれ改め,3行目の「できなければ,」の次に「当該外国人は」を,4行目の「拒否は,」の次に「当該外国人において」を,7行目の「であり,」の次に「当該外国人に対して」をそれぞれ加え,11行目の「依存しており」を「依存し」に改め,12行目の「査証制度とは」を削り,17行目の「また」の次に「,日本国領事官等は」を,25,26行目の「明らかにせずに」の次に「査証の」をそれぞれ加え,10頁17行目の「不許可については」を「不許可は,」に,19行目の は」を削り,17行目の「また」の次に「,日本国領事官等は」を,25,26行目の「明らかにせずに」の次に「査証の」をそれぞれ加え,10頁17行目の「不許可については」を「不許可は,」に,19行目の「ように」- 3 -を「ような」に,23行目の「立場は」を「立場は,」にそれぞれ改める。 イ 11頁14行目の「であるから」を「であって」に,13頁25行目の「を根拠としており」を「がその根拠とされており」に,14頁4行目の「外国人が」を「外国人は」に,26行目の「領事官等」を「日本国領事官等」にそれぞれ改める。 ウ 15頁15行目の「また」の次に「,日本国領事官等は」を,18行目の「であるから」の次に「,本件査証発給拒否は」をそれぞれ加える。 (2) 当審における控訴人の補充主張ア査証を受けた旅券を所持していない外国人は,査証を要しない場合を除き,本邦に上陸することができず,当該外国人に対する査証の発給の拒否は,上陸許可が与えられなくなるという法的効果を生じさせる行為であって,取消訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解すべきである。 取消訴訟によること以外に,査証の発給を拒否された外国人の救済手段は存しない。 イ在留資格認定証明書の交付は,当該外国人が我が国が受入れを表明している外国人の範囲に該当し,在留資格を付与し得る地位にあることを認める法務大臣の判断であり,当該外国人について,他の入国不許可事由がない限り,本邦に入国し得る地位が認められる旨の,その受入れの可否の中心的な判断であって,査証を得ることは,いわば形式的な手続にすぎない。 上記のような法務大臣の判断が何らの理由を告げられることもなく恣意的な査証の発給の拒否により無効とされることは,いかにも不合理であり,当該外国人の当然に有する期待権を恣意的に奪うものである ぎない。 上記のような法務大臣の判断が何らの理由を告げられることもなく恣意的な査証の発給の拒否により無効とされることは,いかにも不合理であり,当該外国人の当然に有する期待権を恣意的に奪うものである。 在留資格認定証明書の交付は,その交付を受けた外国人がそれを用いて査証の申請をし,査証を得たうえで上陸審査に及ぶことを当然に予定したものであり,このような手続は,我が国の外国人受入れ政策に組み込まれたものであって,在留資格認定証明書の交付がされていながら,それを用- 4 -いて行われる査証申請に対する応答義務がないと解することは,国法秩序としての統一性を欠くものである。 したがって,少なくとも,在留資格認定証明書の交付を受けた外国人は,査証の発給を申請しこれに対する応答を得る権利を有し,査証の発給につき法的保護に値する利益を有しているとみるべきである。 ウ外国人は一般的には本邦に入国する自由を与えられているものではないが,いかなる範囲の外国人を受け入れるかについては,入管法がその詳細を定めており,これによって外国人の受入れ政策が実行され,査証や在留資格認定証明書はその受入れのための手続として存在しているものである。このうち,在留資格認定証明書に係る審査については,入管当局がこれを厳正に行っており,また,その処分は司法審査の対象となっている。 それにもかかわらず,査証の発給が恣意的でこれに誤りがあっても,その是正をする方法がないということでは,入管法が定めた外国人受入れ政策が正しく実行される担保がないことになる。在留資格認定証明書の交付や入国許可に係る手続に関する処分がすべて行政処分として司法審査に服しているのに,同じく外国人の入国手続の一環である査証の発給のみが司法審査から除外されることについては,合理的な理由を見出し難い。 入国許可に係る手続に関する処分がすべて行政処分として司法審査に服しているのに,同じく外国人の入国手続の一環である査証の発給のみが司法審査から除外されることについては,合理的な理由を見出し難い。 したがって,本件査証発給拒否のような,査証の発給の拒否についても,司法審査に服するものと解するのが合理的である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,査証の発給の拒否は取消訴訟の対象となる行政処分に当たらず,本件査証発給拒否の取消しを求める控訴人の本件訴えについては,これを不適法なものとして却下すべきであると判断する。その理由は,次のとおり付加訂正するほか,原判決の「第3 当裁判所の判断」(15頁23行目から21頁21行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決の付加訂正- 5 -ア 19頁11行目の「拒否は,」の次に「当該外国人において」を,12行目の「仮に,」の次に「当該外国人が」をそれぞれ加え,16行目の「拒否については,」を「拒否は」に改め,17,18行目の「在留資格認定証明書」の次に「に係る制度」を,20頁4行目の「とどまり」の次に「,在留資格認定証明書の交付が」をそれぞれ加え,24行目の「拒否することについて,」を「拒否することが」に,21頁1行目の「各行為について,」を「各行為が」に,15,16行目の「とはいえない。」を「ということはできない。」にそれぞれ改める。 イ 21頁20,21行目の「本件査証発給の拒否」を「本件査証発給拒否」に改める。 (2) 当審における控訴人の補充主張についてア控訴人は,本案前の争点について,当審においても,①本邦に入国しようとする外国人に対する査証の発給の拒否は,当該外国人が上陸許可を受けることができなくなるという法的効果を生じさせる行為であるから,取 控訴人は,本案前の争点について,当審においても,①本邦に入国しようとする外国人に対する査証の発給の拒否は,当該外国人が上陸許可を受けることができなくなるという法的効果を生じさせる行為であるから,取消訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解すべきである旨,②特に,在留資格認定証明書の交付を受けた外国人については,査証の発給を申請しこれに対する応答を得る権利を有し,査証の発給につき法的保護に値する利益を有しているとみるべきである旨,③在留資格認定証明書の交付や入国許可に係る手続に関する処分がすべて行政処分として司法審査に服しているのに,同じく外国人の入国手続の一環である査証の発給のみが司法審査から除外されることについては,合理的理由を見出し難く,査証の発給の拒否についても,司法審査に服するものと解するのが合理的である旨等を重ねて主張する。 イしかしながら,①査証に係る我が国の法令の規定に照らせば,本邦に入国しようとする外国人について,一定の手続の下に我が国の在外公館に所属する日本国領事官等に対して査証の発給を求める権利が付与されてい- 6 -るものとはいえず,査証の発給を受けることができないために事実上適法に本邦に上陸することができないという結果が生じたとしても,それは,我が国が,入管法の下において,そのような立法政策を選択したことによるものであって,査証の発給の拒否により,その発給を求めた外国人の本邦への入国又は上陸等に係る権利義務が直接形成され又はその範囲が確定されるものではないこと,②本邦に上陸しようとする外国人が本邦において上陸の申請をする前に在留資格認定証明書の交付を受けたとしても,そのことにより,本邦に入国し又は上陸し得る法律上の地位が設定されるものとは解し難いこと,③本邦に上陸することを希望してあらかじめ在留資 陸の申請をする前に在留資格認定証明書の交付を受けたとしても,そのことにより,本邦に入国し又は上陸し得る法律上の地位が設定されるものとは解し難いこと,③本邦に上陸することを希望してあらかじめ在留資格認定証明書の交付を受けた外国人が,査証の発給の拒否を受けた結果,在留資格認定証明書を利用することができない事態が生じたとしても,そのような事態は,我が国の法制度上は想定されている範囲内のものであり,在留資格認定証明書の交付の拒否等が取消訴訟の対象となる行政処分に当たることは,査証の発給の拒否が取消訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解すべき根拠にはならないことは,前記引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」の1の(2)及び(3)(当審における付加訂正部分を含む。16頁8行目から21頁4行目まで)において説示したとおりであって,控訴人の上記主張は,いずれも採用することができない。 2 よって,原判決は相当であって,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第7民事部 裁判長裁判官市村陽典 裁判官相澤哲- 7 - 裁判官吉村真幸
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