主文 1 被告社会保険庁長官が、別紙2記載の各原処分日に、原告らに対して行った障害基礎年金を支給しない旨の決定をいずれも取り消す。 2 被告国は、原告らそれぞれに対し、200万円を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用の負担は次のとおりとする。 (1) 原告Aに生じた費用の5分の4、被告国に生じた費用の5分の2を原告Aの負担とする。 (2) 原告Bに生じた費用の5分の4、被告国に生じた費用の5分の2を原告Bの負担とする。 (3) 原告Aに生じた費用の10分の1、原告Bに生じた費用の10分の1、被告国に生じたその余の費用を被告国の負担とする。 (4) 原告A及び原告Bにそれぞれ生じたその余の費用、被告社会保険庁長官に生じた費用を被告社会保険庁長官の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 主文1項と同旨。 2 被告国は、原告らに対し、それぞれ2000万円を支払え。 第2 事案の概要傷病を負った原告らが広島県知事に対して国民年金法上の障害基礎年金支給の裁定を求めたところ、広島県知事は、原告らはいずれも同法所定の支給要件を認定すべき日において任意加入をしていない満20歳以上の大学生であり、大学生を強制適用から除外した当時の国民年金法の規定により、上記支給要件たる「被保険者」に該当しない者であることを理由として、上記障害基礎年金を支給しない旨の決定をした(以下「本件各処分」という)。原告らは、上記国民年金法の規定が憲法13条、14条、25条、31条に反すること等を理由に、機関委任事務制度の廃止により本件各処分についての権限者となった被告社会保険庁長官に対して本件各処分の取消しを求めるとともに、被告国に対し立法不作為等の違法があったとして、国家賠償として各2000万円の慰謝 事務制度の廃止により本件各処分についての権限者となった被告社会保険庁長官に対して本件各処分の取消しを求めるとともに、被告国に対し立法不作為等の違法があったとして、国家賠償として各2000万円の慰謝料の支払を求める。 1 争いのない事実等(末尾に証拠等を掲記していない事実は当事者間に争いがない)(1) 原告らア原告A(甲100、101、乙9、13、15、証人C)同人(昭和41年9月5日生)は、昭和60年4月、D大学工学部第3類(化学系)に入学し以後在籍していたところ、昭和63年6月14日、バイクを運転中に事故に遭って脳挫傷及び全身打撲の傷害を負ってE病院に入院し、平成元年7月、外傷による左上肢機能障害(3級)及び左下肢機能障害(4級)を理由として、広島市から2級の身体障害者手帳の交付を受けた。 原告Aは、上記負傷当時、国民年金制度に任意加入していなかった。 イ原告B(甲90ないし92、111、112、乙2、5、6、8、証F)同人(昭和44年12月4日生)は、昭和49年2月13日、G病院小児科において、無害性の心雑音が認められるものの、日常生活には支障がない旨の診断を受けた。その後、同人の小学校入学前にも医師の診断を受けたが、結果は同様であった。中学校入学直後の健康診断時にも、心音異常の指摘を受け、心電図検査を受けたが、やはり結果は同様であり、治療の必要性を指摘されるには至らなかった。 原告Bは、昭和63年4月、H大学工学部電子・電気工学科に入学し以後在籍していたところ、平成2年9月14日午前2時ころ、急性心不全による心肺停止状態に陥って、四肢麻痺及び無酸素脳症の疾病に罹患してE病院に入院し、平成3年6月、疾病による体幹機能障害(1級)及び言語機能障害(4級)を理由として、広島県から1 2時ころ、急性心不全による心肺停止状態に陥って、四肢麻痺及び無酸素脳症の疾病に罹患してE病院に入院し、平成3年6月、疾病による体幹機能障害(1級)及び言語機能障害(4級)を理由として、広島県から1級の身体障害者手帳の交付を受けた。 原告Bは、上記発作発症当時、国民年金制度に任意加入していなかった。 ウ原告らは、それぞれ別紙2「裁定請求日(受付日)」欄記載の日に、広島県知事に対して障害基礎年金の支給を求める裁定を請求したが、同知事は、初診日において被保険者でないことを理由として、いずれも障害基礎年金を支給しないとする本件各処分を行った。 原告らは、本件各処分を不服とし、それぞれ別紙2「審査請求日(受付日)」欄記載の日に、社会保険審査官に対して審査請求をしたが、同審査官はいずれも棄却する決定をした。 原告らは、上記棄却決定を不服とし、それぞれ別紙2「再審査請求日(受付日)」欄記載の日に、社会保険審査会に再審査請求をしたが、同審査会は、別紙2「裁決日」欄記載の日に、いずれも棄却する旨の裁決をした。 原告らは、平成13年4月27日から同年6月6日までの間に、再審査請求棄却の裁決があったことを知った(乙31、33及び弁論の全趣旨)。 (2) 被告ら平成11年7月8日に成立した「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(地方分権一括法)により機関委任事務制度が廃止されたことで、本件各処分についての権限が広島県知事から被告社会保険庁長官に移転した。 被告国のうち、内閣は法案一般を国会に提出する義務を有する機関であり、国会は立法権を有する機関である。 2 障害年金、障害福祉年金、障害基礎年金に関する国民年金法の規定国民年金法は昭和34年に制定され、これによって国民年金制度が 出する義務を有する機関であり、国会は立法権を有する機関である。 2 障害年金、障害福祉年金、障害基礎年金に関する国民年金法の規定国民年金法は昭和34年に制定され、これによって国民年金制度が創設された。その後、繰り返し法改正がなされ、現行国民年金法に至っているが、本件で問題となっている学生の国民年金については、基礎年金制度を創設した昭和60年改正、学生を国民年金制度の強制適用の対象とした平成元年改正、学生本人の収入を基準とした保険料納付義務免除制度を創設した平成12年改正が関係し、制定当時の国民年金法及び現行国民年金法のほか、これら改正法における、被保険者、任意加入制度、保険料の免除、障害年金等の支給要件について各規定の概要は以下のとおりである。 (1) 現行国民年金法(以下「現行法」という)の規定ア被保険者現行法7条1項は、国民年金の被保険者として、①1号で、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であって次号及び第3号のいずれにも該当しないもの(第1号被保険者)、②2号で、被用者年金各法の被保険者、組合員又は加入者(第2号被保険者)、③3号で、第2号被保険者の配偶者であって主として第2号被保険者の収入により生計を維持するもの(第2号被保険者である者を除く)のうち20歳以上60歳未満のもの(第3号被保険者)とそれぞれ定めている。 すなわち、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者は、全員が国民年金の被保険者となることとされている。 イ保険料の免除被保険者は、保険料を納付すべき義務を負う(現行法88条1項)が、一定の事由がある場合(例えば、大学生の場合、当該学生自身の前年の所得が政令で定める額以下であるとき等)に該当すれば、社会保険庁長官に申請して保険料の免除を受けること 務を負う(現行法88条1項)が、一定の事由がある場合(例えば、大学生の場合、当該学生自身の前年の所得が政令で定める額以下であるとき等)に該当すれば、社会保険庁長官に申請して保険料の免除を受けることができる(現行法90条の3第1項)。 ウ障害基礎年金の支給要件(ア) 初診日(疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日)において、20歳以上の者の場合(現行法30条1項)a 疾病にかかり、又は負傷し、その初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内にその傷病が治った場合においては、その治った日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含む)とし、以下「障害認定日」という)において、その傷病により同条2項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときb 初診日において、被保険者であること(又は、被保険者であった者であって、日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満であること)c ただし、a及びbの要件を満たした場合であっても、当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たない場合には、支給しない(イ) 初診日において、20歳未満の者の場合(現行法30条の4)疾病にかかり、又は負傷し、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日において、障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日において、障害等級に該当する程度の障害の状態にあるとき(2) 制定時の国民年金法(昭和34年法律第141号、以下「昭和34年法」という)の規定ア被保険者 るときはその障害認定日において、障害等級に該当する程度の障害の状態にあるとき(2) 制定時の国民年金法(昭和34年法律第141号、以下「昭和34年法」という)の規定ア被保険者原則として、20歳以上60歳未満の国民は、法律上当然に国民年金の被保険者となる(以下「強制適用」という)こととされたが(7条1項)、例外として、①被用者年金各法の被保険者又は組合員やその他の年金の受給権者、②既存の公的年金制度適用者の配偶者、③学校教育法41条に規定する高等学校、同法52条に規定する大学等及び同法70条の2に規定する専科大学等の学生で、定時制課程にある者や通信教育を受け、夜間の学部に在学する学生を除くもの(以下、強制適用を除外された学生を単に「学生」という)は、強制適用の対象外とされた(同条2項)。 ただし、被保険者としないとされた上記の者に対する将来にわたる国民年金法の適用関係については、国民年金制度と被用者年金各法による年金制度及びその他の公的年金制度との関連を考慮して、すみやかに検討が加えられたうえ、別に法律をもって処理されるべきものとされた(同条3項)。 イ任意加入制度国民年金法の強制適用の対象外とされた者の中でも、被用者年金各法の適用を受けず、また、これらの法律に基づく年金給付(遺族給付を除く)の受給権者でもない者については、本人の希望により、都道府県知事の承認を受けて被保険者となることが認められていた(附則6条1項、以下「任意加入」という)。 学生は、この規定により国民年金に任意加入することができた。 ウ保険料の免除国民年金の被保険者は保険料を納付する義務を負い、また世帯主はその世帯に属する被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負うとされていた(昭和34年法88 とができた。 ウ保険料の免除国民年金の被保険者は保険料を納付する義務を負い、また世帯主はその世帯に属する被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負うとされていた(昭和34年法88条)が、国民年金の障害年金又は母子福祉年金の受給権者、生活保護法による生活扶助を受けている者等は当然に、所得等がない者等はその申請に基づいて都道府県知事が決定をすることによって、保険料の免除を受けることができるものとされていた(90条)。 ただし、申請に基づく免除の場合、世帯主又は配偶者に納付するについて著しい困難がないと認められるときは、保険料の免除はなされないとされていた。また、国民年金に任意加入した学生についても、保険料の免除規定が適用されないものとされていた。 エ障害年金及び障害福祉年金の支給要件(ア) 障害年金の支給初診日において国民年金の被保険者であった者、又はかつて被保険者であった者で初診日において65歳未満の者が一定の障害の状態にあるときは、一定の保険料を拠出していたことを条件として、障害年金が支給されるものとされていた(30条)。 (イ) 障害福祉年金の支給初診日において国民年金の被保険者であった者、又はかつて被保険者であった者で初診日において65歳未満の者が一定の障害の状態にあるときは、(ア)所定の要件を備えていない場合であっても、一定の要件の下に障害福祉年金が支給されるものとされていた(56条)。 また、疾病にかかり、又は負傷し、その初診日において20歳未満であった者が、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日において、障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日において1級相当の障害の状態にあるときにも、障害福祉年金が支給されること が、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日において、障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日において1級相当の障害の状態にあるときにも、障害福祉年金が支給されることとされていた(57条)。 (3) 昭和60年法律第34号による改正後の国民年金法(以下「昭和60年法」という)の規定ア被保険者被保険者は、次の(ア)ないし(イ)のいずれかに該当する者とされ、国民年金法の強制適用を受ける被保険者の範囲が拡大された(7条)。 (ア) 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であって次号及び第3号のいずれにも該当しない者。ただし、次のいずれかに該当する者を除く(第1号被保険者、同条1項1号)。 a 学校教育法41条に規定する高等学校の生徒、同法52条に規定する大学の学生その他の生徒又は学生であって政令で定めるもの(同号イ。以下、ここで強制適用を除外された学生等を単に「学生等」という)b 被用者年金各法に基づく老齢又は退職を支給事由とする年金たる給付であって政令で定めるものを受けることができる者(同号ロ)(イ) 被用者年金各法の被保険者又は組合員(第2号被保険者、同項2号)(ウ) 第2号被保険者の配偶者であって主として第2号被保険者の収入により生計を維持するもの(第3号被保険者、同項3号)すなわち、昭和60年法では、学生等を国民年金法の強制適用の対象とはしないこととされ、「国民年金制度における学生の取扱いについては、学生の保険料負担能力等を考慮して、今後検討が加えられ、必要な措置が講ぜられるものとする。」とされた(附則4条1項)。 イ任意加入制度学生等は、従前同様、都道府県知事に申し出て、国民年金に任意加入することができるも 今後検討が加えられ、必要な措置が講ぜられるものとする。」とされた(附則4条1項)。 イ任意加入制度学生等は、従前同様、都道府県知事に申し出て、国民年金に任意加入することができるものとされた。 ウ保険料の免除学生等が国民年金に任意加入した場合、従前同様、保険料の免除規定は適用されないものとされていた。 エ障害基礎年金の支給要件昭和34年法により定められていた障害年金は、その名称が「障害基礎年金」となり、現行法30条とほぼ同じ要件で支給されることとなった。 また、障害福祉年金は廃止され、代わりに、20歳未満の間にかかった疾病等によって障害の状態となった者に対しても、障害基礎年金を支給する旨の規定(30条の4、規定の内容は現行法の規定と同様)が設けられ、従前障害福祉年金の支給を受けていた者に対しても、障害基礎年金の支給対象となる程度の障害を負っていれば、障害基礎年金を支給することとされた(附則25条)。 オ昭和60年法の施行日は、昭和61年4月1日であった。 (4) 平成元年法律第86号による改正後の国民年金法(以下「平成元年法」という)の規定ア被保険者従前の法7条1項1号イ、ロが削除され、学生等についても国民年金法が強制適用されることとなった。 イ保険料の免除学生等に国民年金法が強制適用されることとなった結果、学生等も保険料納付義務を負うこととなった。他方、所得がない場合等一定の場合に都道府県知事に申請をして保険料の免除を受けることができる保険料免除の制度が、学生等に対しても適用されることになった(90条本文)。 ただし、この制度でも、世帯主又は配偶者に納付するについて著しい困難がないと認められるときは、保険料の免除はなされ 保険料免除の制度が、学生等に対しても適用されることになった(90条本文)。 ただし、この制度でも、世帯主又は配偶者に納付するについて著しい困難がないと認められるときは、保険料の免除はなされないとされていた(同条ただし書)。 ウ障害基礎年金の支給要件昭和60年法及び現行法の規定と同様である。 エ平成元年法の施行日は、平成3年4月1日であった。 (5) 平成12年法律第18号による改正後の国民年金法(以下「平成12年法」という)の規定保険料の免除につき、現行法90条の3が新設され、学生等は、当該学生等に所得がない場合などに該当すれば、社会保険庁長官に申請して保険料の免除を受けることができることとなった(以下「学生納付特例制度」という)。 学生納付特例制度の対象となった期間は、老齢基礎年金との関係では保険料免除期間に算入されず(26条)保険料の追納を行う必要がある(94条)が、障害基礎年金との関係では学生納付特例制度の対象となった期間が保険料免除期間に算入される(30条)。 (6) 特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律案(甲122ないし126、137)平成16年12月2日の時点において、国会で下記の内容の法案が検討されており、成立が確実視されていた。 ア対象者初診日において平成元年法による改正前の国民年金法(以下「平成元年法改正前法」という)7条1項1号イの学生等に該当し、任意加入していなかった者で、障害基礎年金1、2級相当の障害に該当するとして所定の認定を受けた者等。 イ支給額障害基礎年金1級相当の場合月額5万円、同2級相当の場合月額4万円。ただし、自動物価スライドによる支給額の変動及び所得による支給制限がある。 ウ施行日平成 イ支給額障害基礎年金1級相当の場合月額5万円、同2級相当の場合月額4万円。ただし、自動物価スライドによる支給額の変動及び所得による支給制限がある。 ウ施行日平成17年4月1日(7) 適用法条ア原告Aは、昭和63年6月14日が初診日であり、被保険者の範囲及び障害基礎年金の支給要件について昭和60年法の適用を受ける。 イ原告Bについては、後述のとおり、初診日に争いがある。仮に平成2年9月14日が初診日であるとすると、被保険者の範囲及び障害基礎年金の支給要件について昭和60年法の適用を受ける。 3 背景事情(末尾に証拠等を掲記していない事実は当事者間に争いがない)(1) 任意加入の状況国民年金に任意加入していた学生の数は、昭和62年度末の時点で約2万人、平成元年法改正によって強制加入の対象となった学生数は平成2年度平均で約160万人であった(加入率約1.25%)。 被用者年金加入者の配偶者が適用除外とされていた昭和55年度において、専業主婦の6割から7割にあたる約750万人の女性が任意加入していた。 (2) 大学等への進学率大学、短大(昼間)及び専修学校(専門課程・昼間)への進学率は、昭和35年当時は約10%であったが、昭和62年当時は約51%になった(乙19)。 第3 争点及び当事者の主張 1 本件の争点(1) 原告らに適用される平成元年法改正前法7条1項1号イが、20歳以上の学生等を国民年金の強制適用の対象から除外している(以下「強制適用除外規定」という)こと、並びに同法30条の4が、20歳以上の学生等を無拠出制の障害福祉年金又は障害基礎年金を受給できる対象から除外している(以下「受給除外規定」という)ことが、憲法14条1項、25条に違反するか否か こと、並びに同法30条の4が、20歳以上の学生等を無拠出制の障害福祉年金又は障害基礎年金を受給できる対象から除外している(以下「受給除外規定」という)ことが、憲法14条1項、25条に違反するか否か。 (2) 原告らに障害基礎年金の受給を許さない本件各処分は、国民年金制度に任意加入しなかったことに対する制裁と位置付けられ、任意加入が可能となった時点で告知及び聴聞の機会を保障することが必要であるにもかかわらず、そのような機会を保障せず、また任意加入制度の周知を怠ったことが、憲法13条、31条に違反するか否か。 (3) 強制適用除外規定及び受給除外規定が合憲であったとしても、原告Bについて、初診日をG病院を受診した昭和49年2月13日とすべきであるにもかかわらず、平成2年9月14日とし、もって障害基礎年金を支給しない旨の決定をしたことが違法といえるか否か。 (4) 昭和34年に20歳以上の学生等を国民年金の強制適用から除外する規定を立法したこと、その後昭和50年代半ば、昭和60年法改正時、いずれの機会においても同規定を改正しなかったことについて、国会及び国会議員に立法作為・不作為の違法が、内閣に法案提出行為等の違法があり、国家賠償責任を負うか否か。 これらの争点に関する当事者の主張は次のとおりである。 2 強制適用除外規定及び受給除外規定が憲法14条1項、25条に違反するか否か(争点(1))について(1) 原告らの主張ア強制適用除外規定及び受給除外規定は、憲法14条1項、25条に違反し無効である。 (ア) 憲法14条違反強制適用除外規定は20歳以上の学生等を国民年金の強制適用の対象から除外している点で他の20歳以上の国民と差別し、かつ、受給除外規定は20歳以上の学生等を無拠出制の障害基礎年金を受給 反強制適用除外規定は20歳以上の学生等を国民年金の強制適用の対象から除外している点で他の20歳以上の国民と差別し、かつ、受給除外規定は20歳以上の学生等を無拠出制の障害基礎年金を受給できる対象から除外している点で20歳未満の国民と差別し、その双方との差別の結果、類型的に稼得能力がないために保険料の納付が困難な学生等に対して、「20歳以上の学生等」でなければ受給できたはずの障害基礎年金を一切受給できないという著しく不合理な差別(年齢及び社会的身分による差別)が生じているから、憲法14条1項に違反する。 (イ) 憲法25条違反憲法14条違反の不合理な差別の結果として、20歳以上の学生等は、社会保障を平等に受ける権利ないし生存権が侵害されているのであるから、憲法25条に違反する。 イ国民年金の強制適用の対象を20歳以上と定め、かつ、その対象から学生等を除いた立法事実について(ア) 被告らは「学生等を強制適用の対象とすることは、稼得活動に従事していない者に保険料納付義務を負わせることになり、稼得活動従事者に対する保障を本質とする国民年金制度の趣旨に反する」と主張する。 学生等が一般的に稼得活動に従事していないことは、昭和34年以降現在に至るまで立法事実として認められるが、学生等を強制適用の対象から除外したことは、以下のとおり著しく不合理である。 a 国民年金制度は、必ずしも現に稼得活動に従事する者のみを対象とした制度ではないこと国民年金制度は、「国民皆年金」を目的とした社会保障制度であり、労災保険とは異なり、必ずしも現に稼得活動に従事する者のみを対象とした制度ではない。確かに、20歳到達をもって国民年金の強制加入対象としたのは、一般に就労していると考えられる年齢と 会保障制度であり、労災保険とは異なり、必ずしも現に稼得活動に従事する者のみを対象とした制度ではない。確かに、20歳到達をもって国民年金の強制加入対象としたのは、一般に就労していると考えられる年齢として一律に区分したことによるが、そのことと現実の就労の有無が適用対象を画していたとする議論は全く関係ない。 昭和34年当時から、実際に就労していない自営業者の配偶者も強制適用の対象とされているのに対し、20歳未満の自営業者は稼得活動に従事していても国民年金の対象とはされていないこと、失業者等の保険料納付が困難な者に対して保険料免除を認めていることからも、国民年金法の基本構造は現実の就労の有無を問うものではないということができる。これは、低所得者層にもあまねく年金給付を及ぼす「国民皆年金」を実現するために、強制適用によって20歳以上の者に年金給付を受ける権利と保険料納付義務を負わせた上で、拠出能力がない者は実情に応じて納付義務を免除して一定の権利を残すことにしたものであり、国民年金制度の根幹部分である。したがって、学生が現実に就労しておらず、保険料の支払いが困難であることを理由に強制適用の対象外とする必然性はない。 なお、20歳未満の者も障害福祉年金の対象という形で国民年金制度に取り込まれていたことも、国民年金制度は稼得活動従事者に対する保障を本質とするものではないことを裏付けている。 b 強制適用して保険料納付義務を課したとしても、保険料免除を認めれば何ら不都合はなかったこと20歳以上の学生が保険料の免除を受けるといってもその期間は通常2ないし3年に過ぎず、老齢年金に関しては満額の給付は受けられないし、障害基礎年金については基本的に拠出期間と金額との対応はないのであるから、拠出者との均衡を失するこ を受けるといってもその期間は通常2ないし3年に過ぎず、老齢年金に関しては満額の給付は受けられないし、障害基礎年金については基本的に拠出期間と金額との対応はないのであるから、拠出者との均衡を失することはない。むしろ、学生等が強制適用の対象ではなかったために、保険料の免除が全く認められていなかったことによって、任意加入するための保険料が支払えない学生等をおよそ障害年金の対象から除外したことの方が全く合理性のない差別である。 また、被告らは、強制適用した上保険料を免除した場合、学生と同世代で稼得活動に従事し保険料を負担している者との公平を欠く旨を主張するが、学生等は定型的に稼得能力がないのであるから、一律に免除を認めることは合理性があり何ら不当な差別ではない。平成12年法改正によって学生納付特例制度が導入された際も、不公平感によって国民の理解が得られなかったという事実はない。 学生等を強制適用から除外した最大の理由は、保険料の負担問題であったと推測されるところ、これについては学生納付特例制度のほか一律免除制度、追納制度、半額免除制度等様々な方法が考えられ、これら制度をとらないのであれば、基本的には非学生と同じように「強制適用+申請免除」制度を採用すれば事足りたものである。現に昭和60年法改正前は20歳以上の専修学校等の生徒に同制度が適用されて特段の不都合が生じていなかった。 (イ) 被告らの「実際に稼得活動を開始する際には、別の被用者年金制度に加入する者がほとんどであると考えられ、多くの場合、納付した保険料は掛け捨てとなる」とする主張について実際に稼得活動を開始する際には、別の被用者年金制度に加入する者がほとんどであるという立法事実は必ずしも認められない。仮にそのような立法事実が認められるとしても、納 る」とする主張について実際に稼得活動を開始する際には、別の被用者年金制度に加入する者がほとんどであるという立法事実は必ずしも認められない。仮にそのような立法事実が認められるとしても、納付した保険料は掛け捨てとなるという点は、昭和34年当時は立法事実として存在したが、昭和36年にほぼ解消し、昭和60年法改正によって完全に解消した。 a 被用者年金制度に加入する者の比率はそれほど高くなかったこと昭和35年当時の就業構造は、自営業者25.1%、家族従事者31.4%、被傭者43.5%であり、昭和56年当時の就業構造は、自営業者16.9%、家族従事者10.6%、被傭者72.3%であったもので、被用者年金制度に加入する被傭者の比率はそれほど高くはなかった。 b 掛け捨て問題は解決していたこと昭和36年4月に通算年金通則法が施行され、基本的に掛け捨て問題は消滅した。また、昭和60年法改正によって、完全に掛け捨て問題が解消される見込みであったのであるから、少なくとも同改正の時点においては、納付した保険料が掛け捨てとなるという立法事実は消滅していた。 c 必ずしも掛け捨てにはならないこと学生等を強制適用にした場合には、類型的に稼得能力がない学生等は、保険料の免除を受ける可能性が高いのであるから、掛け捨て問題が発生するのは、保険料支払能力がある一部の学生等のみである。私保険においても交通事故等に備える保険は掛け捨てのものが多いように、突発事故に備える障害年金部分を含む国民年金の保険料が結果的に掛け捨てになったとしても格別不合理ではない。 掛け捨て問題は、老齢年金部分と障害年金部分を分けて保険料を設定することによっても、解決が可能である。その場合、障害年金部分の月額保 果的に掛け捨てになったとしても格別不合理ではない。 掛け捨て問題は、老齢年金部分と障害年金部分を分けて保険料を設定することによっても、解決が可能である。その場合、障害年金部分の月額保険料が189円ないし283円という極めて少額になるとする試算がある。このような少額の保険料を拠出させることに大きな財政的意味はないから、学生等である期間中に一律に保険料免除を認めてもさしたる財政上の不都合はなかったはずである。 (ウ) 被告らの「学生等である間の「障害」に対する保障を求める者、あるいは、卒業後引き続き国民年金の被保険者となることが見込まれる者などに対しては任意加入という手段を用意した」とする主張について昭和34年から昭和60年ころまでこのような事実は存在したが、学生等の強制適用除外を何ら合理化する事実ではない。 a 資力のない学生等にとっては無意味であったこと任意加入制度においては保険料免除制度がないため、現実に保険料を納付できる者しか加入することができなかった。学生等は類型的に稼得能力がないのであるから、現実に保険料を納付することは難しく、任意加入制度があってもこれに加入することが困難であり、制度として実効性を伴わなかった。 b 制度の周知徹底が不十分であり、制度の実質を伴っていなかったこと平成元年改正前において、任意加入制度の周知広報は徹底しておらず、個別の広報によってわかりやすい説明が行き届いている状況ではなかった。したがって、学生等やその家族の大半の者が任意加入制度の存在を知らなかったり、存在そのものを知っていても、その多くは老齢年金の関係しか想起されないため、加入していなければ障害年金が受給できないということを理解していた者は少なく、制度としての実効性を 度の存在を知らなかったり、存在そのものを知っていても、その多くは老齢年金の関係しか想起されないため、加入していなければ障害年金が受給できないということを理解していた者は少なく、制度としての実効性を伴わなかった。 c 被用者年金各法の被保険者等の配偶者とは前提となる立法事実が異なること昭和60年法改正前の法7条2項7号では、被用者年金各法の被保険者等の配偶者(以下「専業主婦」という)も強制適用から除外し、任意加入制度を設けていたが、専業主婦は夫が公的年金に加入していること、夫に所得があるため任意加入制度に加入しやすい実態があったことなど学生とは異なる社会経済的事実が存在した。 d 社会保険の本質に反すること社会保険の基本的特徴は強制保険ということである。その趣旨は、保険事故の危険の高い者、負担の少ない者だけが保険関係に入るという不都合を回避すること、逆に民間私保険では排除される高リスク者がさらに排除される事態を防止すること、そして国家によるパターナリズムという20世紀の福祉国家の理念に基礎を置くものである。すなわち、本来全ての人が自らの高齢や障害事故に備えて貯蓄や私保険によって自らの生活を維持するのが原則ではあるが、それが可能な条件がなかったり、可能であっても必ずしも最悪の事態にまで備えることは期待し難い面があり、そこで、強制的に社会保険に加入させることによって、自助努力の及ばない部分を補うのが社会保険制度であり、各人の基本的生活の維持を自助努力や自己責任のみに全面的にゆだねないところにその本質があるのである。したがって、学生等の任意加入制度は、加入するしないの選択を本人にゆだねるものであって、社会保険の本質に反するものである。 (エ) 被告らの「当時の学生の世帯でみれば、保険料の支払いが困難で である。したがって、学生等の任意加入制度は、加入するしないの選択を本人にゆだねるものであって、社会保険の本質に反するものである。 (エ) 被告らの「当時の学生の世帯でみれば、保険料の支払いが困難ではなく、任意加入は可能であった」とする主張について昭和34年当時このような事実は存在したとも思われる。しかし、学生を抱える世帯の収入額について、国民年金法の制定に当たり政府側委員からの説明や国会の議論の中で言及されたことはない。 (オ) 学生等の多くは20歳到達後2年で卒業するため、保障期間が短く事故発生頻度も少ないようにも見える。 しかし、だからといって、いったん事故が発生し、重度の障害を抱えるに至った者に対しては、所得保障の必要性があることに何ら変わりがない。もともと保険事故のうち「障害」が発生する確率は年代を問わず極めて低く、発生頻度が少なければ保障の必要性がなくなるのであれば、障害年金自体がそもそも不要ということになる。学生等の活動は活発であって、障害事故に遭うことが他の年代に比して少ないとはいえず、また、若年において重度の障害がある場合通常その障害が回復することは困難であり、稼得能力を生涯にわたって奪われるのであるから、所得保障の必要性は極めて高い。 ウ受給除外規定によって学生等を障害基礎年金(障害福祉年金)から除外した立法事実について(ア) 保険料を負担していない20歳以上の学生に障害基礎年金(障害福祉年金)を支給することは、20歳以上で稼動活動に従事し保険料の納付を余儀なくされている者らとの均衡、衡平を害するおそれがあることについて20歳の前後をもって就労開始年齢とする立法事実は、昭和34年当時は存在していたが、昭和40年代の終わりころには4人に1人が大学に進学する時代に 衡、衡平を害するおそれがあることについて20歳の前後をもって就労開始年齢とする立法事実は、昭和34年当時は存在していたが、昭和40年代の終わりころには4人に1人が大学に進学する時代になっており、昭和60年ころにはさらに大学進学率が増加していたのだから、20歳の前後で別異の取扱いをして学生等を強制適用から除外することは著しく不合理である。 (イ) 学生等は20歳前後による区別の例外とされたこと学生等を強制適用の対象から除外した強制適用除外規定が存在するということは、国民年金法は、学生等を20歳以上か否かという形式的基準ではなく、類型的稼得能力の有無という実質的基準を重視して制度を設計しているといえる。そうすると、学生等に関しては、20歳の前か後かというのは区別の基準としての意味を失っているといえ、また、20歳以上の学生等に適用される任意加入制度も実質を伴わないものであったので、その点だけを理由に20歳前後での区別を正当化することはできない。したがって、類型的稼得能力がない点で共通する学生等と20歳未満の者とを別異に取り扱うことに合理的な理由はない。 (ウ) 稼得能力がない学生等を所得保障の対象外とする合理的な理由はないこと国民年金法は、稼得能力がない者を保険料免除制度や無拠出制年金によって、障害年金による所得保障の対象としている。ところが、20歳以上の学生等は、およそ稼得能力がないのに、これらの保護が一切受けられない状況におかれていた。すなわち、稼得能力のない20歳以上の学生等は、20歳以上という点で共通する20歳以上の非学生等との関係では、稼得能力がないという理由で強制適用及び保険料免除制度から排除される一方、稼得能力がない点では共通する20歳未満の者との関係では、稼得能力がないにもかか 点で共通する20歳以上の非学生等との関係では、稼得能力がないという理由で強制適用及び保険料免除制度から排除される一方、稼得能力がない点では共通する20歳未満の者との関係では、稼得能力がないにもかかわらず20歳以上であり国民年金制度に任意加入し得たという理由で無拠出制年金から排除されていた。このように、学生等だけが双方のグループから不利益に区別されるべき合理的な根拠は何もない。国民皆年金の理念からは「学生等であり稼得能力がない」ことは、無拠出制年金や保険料免除の対象になる理由になりこそすれ、強制適用からの除外という不利益を受けるべき理由にはならず、「20歳以上」であることは、強制適用の対象となる理由になりこそすれ、免除制度や無拠出制年金からの除外という不利益を受けたり、現実的に無意味な任意加入制度を与えられたりすることの理由にはなりえない。 エそして、20歳以上の学生等は、平成元年法改正前法により差別された結果、次のとおり不利益を受け、その不利益の程度が著しく、立法府の合理的な裁量判断の限界を超えている(憲法14条1項違反)といえ、また、当該立法によって20歳以上の学生等の健康で文化的な最低限度の生活が損なわれており、著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用に当たる(憲法25条違反)。 (ア) 国民年金未加入による不利益情報の不告知強制適用の対象であれば個別の通知や納付書類が送付されていたのに対し、任意加入制度のもとでは、学生等が20歳に達した場合であっても、個別的な通知はなされなかったのであるから、意識的に年金制度に興味を持っていない限り、任意加入をするか否かの選択をする機会すら与えられていなかった。 (イ) 障害基礎年金等の不享受平成元年法改正前法では、保険料の支払能力がない者であっても、2 を持っていない限り、任意加入をするか否かの選択をする機会すら与えられていなかった。 (イ) 障害基礎年金等の不享受平成元年法改正前法では、保険料の支払能力がない者であっても、20歳以上であれば保険料免除、20歳未満であれば無拠出制年金として、障害基礎年金(障害等級1級の場合月額8万3775円、同2級の場合6万7017円)を受給することが可能であった。これに対し、20歳以上の学生等は、保険料支払能力があり、かつ、任意加入という選択を可能とするだけの情報を得ていたごくわずかな者(任意加入率1.25%)以外の者は、障害基礎年金を一切受給することができない。なお、昭和60年法改正前は、20歳未満の者は障害年金の半額の障害福祉年金を受給することが可能であったのに対し、20歳以上の学生は任意加入していなければそれさえも受給できなかった。 とりわけ、拠出制年金の3分の1、障害福祉年金の全部が国庫負担の対象とされていたことからも、20歳以上の学生等を国庫負担から一切排除することの不平等性は顕著である。 また、生活保護による所得保障も考えられるが、生活保護法は「補足性の原則」に立っており、本人の資産・収入だけでなく、家族の扶養能力についても調査が行われ、もし資産があればこれを処分しなければ受給できず、収入がある分は支給額が減額されるなど、およそ障害者の自立を念頭においた制度ではなく、これが障害基礎年金の代替にならないことは明らかである。 (ウ) 障害基礎年金受給に伴う恩典の不享受障害基礎年金受給者は、老齢基礎年金の保険料が法定免除とされ、毎月の保険料を支払う必要がないのに対し、20歳以上の学生等は、障害基礎年金を受給できない結果、法定免除の対象とならないから、老齢基礎年金の保険料を支払わなければなら 礎年金の保険料が法定免除とされ、毎月の保険料を支払う必要がないのに対し、20歳以上の学生等は、障害基礎年金を受給できない結果、法定免除の対象とならないから、老齢基礎年金の保険料を支払わなければならない。 申請免除の途があるとしても、これを受けるには所得が一定水準以下である認定を受ける必要があり、それを問わない法定免除者とは意味合いが異なる。法定免除の対象でないことによって、障害基礎年金を受給できない不利益が増大することに疑問の余地はない。 オまとめ以上によれば、平成元年法改正前法が、20歳以上の学生等を受給除外規定によって障害基礎年金の受給対象にすることなく、強制適用除外規定によって強制適用の対象から除外したことは、昭和34年の立法当時において、又は昭和50年代半ばにおいて、そして遅くとも昭和60年の改正当時において、立法理由に合理的な根拠がなく、その区別が立法理由との関連で著しく不合理な状態であることが明白であったから、立法府に与えられた合理的な裁量権の範囲を逸脱又は著しく濫用したものといわざるを得ない。 したがって、平成元年法改正前法は、憲法14条1項、25条に違反している。 (2) 被告らの主張憲法14条1項、25条に違反しないことア国民年金法は、憲法25条2項の理念に基づく法律であり、立法府は、その立法に当たって、対象者、給付条件、給付内容等について広範な政策的裁量を有する。 (ア) 国民年金法は、昭和34年、稼得活動従事者に対する保障を本質とする拠出制の社会保険制度として成立した。すなわち、国民年金制度は、被用者年金制度と同様に、一定の要件に該当する者を被保険者とし、被保険者は保険料を拠出する義務を負い、障害・老齢・死亡等の保険事故が発生した場合、保険料の納付状況に 立した。すなわち、国民年金制度は、被用者年金制度と同様に、一定の要件に該当する者を被保険者とし、被保険者は保険料を拠出する義務を負い、障害・老齢・死亡等の保険事故が発生した場合、保険料の納付状況に基づいて年金給付を受けられるという仕組みである。他方、国民年金制度発足当時において既に障害・老齢・母子の状態になっている者等、拠出制の年金制度によって保障されない者の救済のために、費用全額の財源を租税によるとする無拠出制の福祉年金制度も併せて創設したが、あくまで経過的・補完的なものであった。 (イ) 強制適用除外規定は、国民年金制度の上記趣旨及び以下のとおり学生等に対する強制適用の必要性が乏しいことにかんがみ、より厚い保障を求める者に対しては、任意加入制度により被保険者となる途を確保した上で、類型的に稼得活動に従事しない者の集団である学生等を、強制適用の対象外としたものであって、定型的に稼得活動に従事していない学生等とそうでない者を区別することが合理的であり、およそ裁量判断の限界を超えるものでないことは明らかである。 なお、原告らは、国民年金制度が「国民皆年金」を目的とした社会保障制度である旨主張するが、国民皆年金とは「年金制度に加入していない者に対し年金を給付すること」を意味するものではない。すなわち、「国民皆年金」の理念については、憲法上はもちろん、国民年金法上も、その内容が一義的に定められているものではないところ、立法者は「年金制度に加入し拠出を行った者に年金給付を行う制度」として国民年金法を制定し、これにより国民皆年金の理念を具体化したものである。 イ昭和34年法及び昭和60年法が20歳以上の学生等を強制適用の対象から除外して任意加入の対象にとどめたことは何ら不合理ではないこと(ア) 国民年金法は、昭和34 したものである。 イ昭和34年法及び昭和60年法が20歳以上の学生等を強制適用の対象から除外して任意加入の対象にとどめたことは何ら不合理ではないこと(ア) 国民年金法は、昭和34年の創設以来、その被保険者を成人に達した20歳から60歳未満と年齢で一律に区分しているが、これは、国民年金の対象となる自営業者等は、就労や所得の態様が一律でないため、一般に就労していると考えられる年齢により一律に区分して適用者を画するほかないためであり、また、成人に達した20歳から強制適用の対象となるとされたのは、国民年金制度の対象とする大部分の国民が高等学校卒業程度で稼得活動に従事しているという実情があり、被扶養者である未成年者に保険料を負担させることはできないということが考慮されたからである。 そして、学生等が強制適用の対象から除外されたのは、国民年金は、稼得活動に従事して一定の所得をあげ得る者を対象者として予定しており、被保険者は、保険料納付義務を負うことになるため、定型的にみて稼得活動に従事していない学生等に保険料納付義務を負わせることには問題があると考えられたためであり、また、大学教育を受けた学生等は、卒業後、被用者年金制度に加入するのが通常であり、それまでの数年間国民年金に加入しなくとも被用者年金制度体系の下で標準的な年金保障を受けることが可能であると考えられたためである。 (イ) また、将来被用者年金制度に加入することが多い学生等について、仮に国民年金の強制適用の対象とした場合、保険料が掛け捨てになることが多いことも考慮された。この点については、通算年金通則法(昭和36年法第181号。昭和60年改正法附則により廃止)があったものの、同法は被用者年金と国民年金という2つの年金体系が併存する中で、老齢年金及び退職年金に限っ 。この点については、通算年金通則法(昭和36年法第181号。昭和60年改正法附則により廃止)があったものの、同法は被用者年金と国民年金という2つの年金体系が併存する中で、老齢年金及び退職年金に限って一定の条件を付して通算するものにすぎなかった。 結局、各年金制度間の通算は、昭和60年法改正による基礎年金制度の導入によって初めて完全に確立されたのであり、それまでの間は完全な通算調整が行われていたわけではないから、掛け捨ての問題は依然残っていた。 (ウ) 任意加入制度について、原告は、保険料免除制度がない以上現実に保険料を納付できる者しか任意加入できないから、類型的に稼得能力がない学生等にとって実効性のある制度ではなかったと主張する。しかし、昭和34年当時、人の生活に必要な費用の拠出方法は、個人個人が独立して自己完結的に行うのではなく、世帯全体で行うのが一般的であったし、社会の一般的な意識としても、生活に必要な費用は世帯全体で賄うことが自然であった。世帯としての収入を見たとき、学生を持つ世帯の平均収入は他の世帯に比べて高額であり、学生の任意加入保険料の納付は可能であったから、任意加入が実効性のない制度であったとはいえない。 任意加入制度が不備な制度でないことは、昭和55年度の専業主婦の任意加入率が6割から7割であったことからも明らかである。学生は在学期間が短期間であること、一般に健康であり年金に加入しようという動機を持ちにくい年代であること、卒業後被用者年金に加入することが予定されていたことなどの事情が認められるところ、学生の任意加入率が低かったのは個々の学生自身の選択の結果である。 (エ) したがって、学生等を強制適用の対象から除外して任意加入の対象にとどめた判断には、何ら不合理な点はなく、社会保障法制に 生の任意加入率が低かったのは個々の学生自身の選択の結果である。 (エ) したがって、学生等を強制適用の対象から除外して任意加入の対象にとどめた判断には、何ら不合理な点はなく、社会保障法制に関する立法府の広範な裁量の範囲内にあることは明らかである。また、学生等の取扱いについては、平成元年改正の際においてすら、所得のない者に保険料納付義務を負わせるべきではなく、強制適用とした場合は親に保険料を負担させる結果となること、強制適用とした上保険料を免除した場合、学生等と同世代で稼得活動に従事し保険料を負担している者との公平を欠くことなどを理由とする反対論もあったことからしても、昭和60年法がなお学生等を強制適用の対象とせず、今後の検討課題にとどめたことにも何ら不合理な点はないというべきである。 ウ昭和34年法及び昭和60年法が合理的理由のない差別的取扱いをしているとは到底いえないこと(ア) 昭和34年法には十分な合理性があること昭和34年法によって創設された国民年金制度において、障害福祉年金は、社会福祉の見地から、いまだ加入年齢に達せず、国民年金の被保険者とはなり得ない20歳前の障害を受けた者を対象に年金を受給させようとするものである。 そもそも、国民年金制度は、憲法25条2項の規定の趣旨を実現するため、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯によって防止することを目的とし、保険方式により被保険者の拠出した保険料をもとに年金給付を行うことを基本として創設されたものである。受給除外規定に基づく障害福祉年金は、国民年金制度の経過的又は補完的な制度として創設された無拠出制の年金であり、福祉的施策の一環をなすものであって、立法府は、その支給対象者の決定についても、特に広範な裁量 外規定に基づく障害福祉年金は、国民年金制度の経過的又は補完的な制度として創設された無拠出制の年金であり、福祉的施策の一環をなすものであって、立法府は、その支給対象者の決定についても、特に広範な裁量権を有している。 したがって、このような国民年金の被保険者となり得ない者に対する福祉的施策のあり方について、国民年金の被保険者となり得る学生等と比較し、両者の間に制度的な不均衡があるとするのは失当である。学生等といえども20歳に達すれば、任意加入制度によって国民年金の被保険者となることができたのであって、障害福祉年金の支給対象者とは明らかに立場が異なるのである。そればかりか、20歳以後に障害を負った学生等にも障害福祉年金を支給するとすれば、同年齢の学生等以外の者が保険料を未納付の場合にこれを受給できないこととの均衡を失するから、障害福祉年金の受給対象者を20歳前に障害を受けた者と定めた立法府の判断には十分な合理性がある。 (イ) 昭和60年法にも十分な合理性があることそして、基礎年金制度を創設して年金制度の再構成をした昭和60年法によって、障害福祉年金は障害基礎年金に改められ、20歳前に障害を負った者にも、障害基礎年金が受給されることとなり、その結果、受給除外規定に基づく年金給付は、全額国庫負担のいわゆる無拠出制年金ではなくなった。しかしながら、国庫は、6割という特別に高率の費用負担をしており、障害者自身は従来どおり保険料を拠出する必要がないことから、改正前の障害福祉年金と同様、所得制限等種々の制限が定められているのであって、社会福祉的色彩の強い制度であることに変わりはない。 したがって、昭和60年改正後の受給除外規定に基づく障害基礎年金が、障害福祉年金同様に社会福祉の見地から、いまだ加入年齢に達せず、国民年 社会福祉的色彩の強い制度であることに変わりはない。 したがって、昭和60年改正後の受給除外規定に基づく障害基礎年金が、障害福祉年金同様に社会福祉の見地から、いまだ加入年齢に達せず、国民年金の被保険者とはなり得ない20歳前に障害を受けた者を対象に年金を受給させようとする一方、学生等は、昭和60年法においても20歳に達すれば、任意加入制度によって国民年金の被保険者となることができるのであるから、両者の間に制度上の不均衡があるといい難いことは、昭和34年法の場合と同様である。昭和60年改正当時においても、20歳以後に障害を負った学生無年金者に障害基礎年金を支給することとすると、同年齢の学生等以外の者が保険料を未納付の場合にこれを受給できないことと均衡を失するとする考えが依然として根強かったのである。したがって、同改正後の受給除外規定に基づく障害基礎年金の受給対象者を20歳前に障害を受けた者と定めた立法府の判断にも十分な合理性がある。 (ウ) 平成元年法改正について同法によって、学生等についても国民年金法が強制適用された。これは、①昭和60年法改正によって、全国民共通の基礎年金制度が導入されたことにより、保険料掛け捨ての問題が解消されたこと、②大学等高等教育への進学率が高まったことから、親元の負担が過大にならないよう一般の被保険者とは異なる学生に係る保険料免除基準を採用した上で、強制加入の対象としたものである。平成元年法改正がなされたからといって、従前任意加入の手段によって学生の障害年金が保障されていなかったことを意味しない。 3 本件各処分が憲法13条、31条に違反するか否か(争点(2))について(1) 原告らの主張ア告知及び聴聞の機会の保障がないこと障害年金制度が憲法25条の保障する生存権 3 本件各処分が憲法13条、31条に違反するか否か(争点(2))について(1) 原告らの主張ア告知及び聴聞の機会の保障がないこと障害年金制度が憲法25条の保障する生存権を具体化するものであることにかんがみれば、「20歳以上の学生等は、国民年金に任意加入する機会があったのに自らの選択により加入しなかったのであるから、そのことに対するペナルティーとして障害年金を生涯にわたり受給することができないという不利益を受けるのは当然である」という見解が正当化されるためには、憲法13条及び31条に基づき、当該学生等に対し適正手続の保障、すなわち任意加入制度についての告知及び聴聞の機会が保障されていることが必要である。 ところが、昭和34年法及び昭和60年法は、任意加入制度についての告知及び聴聞の機会を一切保障していなかったし、そのような機会を保障する運用もなされていなかった。 したがって、昭和34年法及び昭和60年法が、20歳以上の学生等が任意加入しなかったことに対するペナルティーとして障害年金の受給を許さないものとしていることは、適正手続に反するものであり、憲法13条、31条に違反し無効である。 イ制度の周知徹底がなされていなかったこと告知及び聴聞の機会を保障をする前提として、任意加入制度の自体の広報や周知が必要である。にもかかわらず、これらを欠いていたことは、2(1)イ(ウ)b「制度の周知徹底が不十分であり、制度の実質を伴っていなかったこと」の項で既に述べたことと同様である。 (2) 被告らの主張強制適用の対象外であり、任意加入もしなかった者に対し、障害年金を支給しないことは、憲法13条、31条に違反しない。 ア憲法13条、31条から導かれる行政手続における適正手続保障の 張強制適用の対象外であり、任意加入もしなかった者に対し、障害年金を支給しないことは、憲法13条、31条に違反しない。 ア憲法13条、31条から導かれる行政手続における適正手続保障の理念に基づき、個人的教示、告知・聴聞の機会を付与等を行うべきであるとする考え方は、不利益処分、すなわち既存の地位・状態を不利益に変更する処分の名宛人に対する関係において成り立つ余地のある議論である。 本件各処分のような申請により求められたいわゆる授益処分を拒否する処分の名宛人に対する関係において、個人的教示、告知・聴聞の機会を付与等を行うべきことは憲法上何ら要請されていない。 また、社会保険の仕組みをとる年金制度において、制度に加入していなかった者が給付の対象とならないのは制度の原理上当然である。 イ任意加入制度に関する広報・周知徹底を欠くとする点については、行政主体の担当公務員の職務上の注意義務違反による国家賠償責任の問題として争われるのであればともかく、なぜそれが任意加入制度に関する国民年金法自体の違憲性を基礎付けることになるのか、明らかでない。内容や範囲が必ずしも明確ではない公報や周知徹底について、公的強制力をもって強要する法的義務を無理なく導き出すことはおよそ困難である。 したがって、この点についても原告らの主張は理由がない。 4 原告Bの初診日(争点(3))について(1) 原告Bの主張原告Bが急性心不全、心停止を発病してE病院で診断を受けたのは平成2年9月14日であり、その時点では既に20歳以上になってはいたが、急性心不全となる原因の心臓疾病には20歳前から羅患していたものであり、20歳前発症と認めるべきである。 原告Bに起きた急性心不全は、20歳直後の極めて若い時期で老齢による機能低下など考え が、急性心不全となる原因の心臓疾病には20歳前から羅患していたものであり、20歳前発症と認めるべきである。 原告Bに起きた急性心不全は、20歳直後の極めて若い時期で老齢による機能低下など考える余地もない時のことで、その前後には特別に過大な負荷やストレスのかかる出来事も何もなく、しかも就寝中の夜中の午前2時ころという最も安静時で負荷のかからない時間帯の発症であることから、原告B自身が既に抱えていた何らかの心臓疾患に起因するものと判断することは十分に可能である。そして、原告Bは、子どもの頃から、かかりつけの医師から心臓に雑音があり、精密検査を受けたほうがよいと言われて何度か複数の病院で受診しており、記録の上で明確なのは昭和49年2月13日のG病院小児科での「無害性雑音」の診断書が存在している。 一般的に、急性心不全が起きたような場合において、その前に胸の痛みなどを訴えて医師に受診していればともかく、原因となる心臓疾患を抱えていながら格別の症状がないために医師の診察を受けないままでいたような時には、急性心不全の前の発症の有無を明確にすることは極めて困難である。ただ、30条の4にいう「初診日」は、それが第三者の医師が介在することで疾病の原因がいつ存在したのかの証明が容易であることを意味するものであり、例えば急性心不全の前駆症状を誰かに話していたとか、薬局で相談していたとかのように証明可能なものであれば足りるものであり、医師の「初診」にこだわることはないと考えるべきである。 原告Bの場合には、健康体にはないはずの心臓の「雑音」があることは前記診断書の記載で明白であって、昭和49年時点では「無害」と判断されただけで、中学校入学の際にも「雑音」はなくなっておらず、今回の急性心不全の発症が他原因に起因することが明白でない限り、前述のと は前記診断書の記載で明白であって、昭和49年時点では「無害」と判断されただけで、中学校入学の際にも「雑音」はなくなっておらず、今回の急性心不全の発症が他原因に起因することが明白でない限り、前述のとおり既に抱えていた何らかの心臓疾患に起因すると判断することが十分に可能であれば、原告Bに有利に判断すべきである。すなわち、20歳前には、格別の兆候はないが何らかの心臓疾患を抱えており、その診断は「心臓雑音」と下されていたから、30条の4のア、イに該当する。 (2) 被告らの主張30条の4第1項にいう「初診日」とは「障害の原因となった疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病について、初めて医師の診察を受けた日」のことである。原告Bの障害(体幹機能障害、言語機能障害)の原因となった傷病(急性心不全、心停止)及びこれに起因する傷病(四肢麻痺、無酸素脳症)について、同原告が初めて医師の診察を受けたのは、20歳に達した後の平成2年9月14日である。 原告Bは、昭和49年2月13日、小学校入学前及び中学校入学直後に医師の診察を受けて心雑音を指摘されているものの、同人が平成2年9月14日に罹患した急性心不全との因果関係は明らかでない。 また、上記のいずれの医師の診断時においても治療の必要性は指摘されていない以上、昭和49年2月13日は国民年金法にいうところの初診日に当たらない。 5 被告国が国家賠償責任を負うか否か(争点(4))について(1) 原告らの主張ア国民年金法の明白な違憲性(ア) 憲法14条、25条違反a 昭和34年法制定時政府は、立法当時において、学生の3分の2については国民年金に任意加入せず、それらの者が重度障害者になっても障害年金又は障害福祉年金が一切受給できない危険性があることを認識して 制定時政府は、立法当時において、学生の3分の2については国民年金に任意加入せず、それらの者が重度障害者になっても障害年金又は障害福祉年金が一切受給できない危険性があることを認識していたか、又は容易に認識し得た。にもかかわらず、学生に対して障害(福祉)年金の受給の道を閉ざす、国民皆年金の原則に反する不合理な差別がなされており、国民年金法が憲法14条1項、25条に違反することは立法当初から明らかである。 b 昭和50年代半ば昭和50年代の初めから、I会が、会員の中に無年金者が存在することから、アンケートによりその実態を把握する中で、障害年金の支給を求める活動を開始した。その活動は、単に世論喚起というだけではなく、国民年金法を管轄する厚生省、厚生大臣への陳情や請願、さらには立法府である衆参両議院の議長へ請願が繰り返し行われていた。それも、当初は未加入の場合と同じ保険料を納付しない無拠出の障害福祉年金の支給を求め、老齢年金の場合には保険料を後から納付する特例納付制度が実施されていることから同様の措置をとることを求め、さらには世界的な障害者に対する所得保障の理念に基づいて障害年金の支給を求めるなど、非常に理論的な根拠にも支えられていた。これらの陳情、交渉の中では、原告らのような学生無年金障害者の実態が具体的に示され、年金制度の欠陥について明確に指摘されており、厚生省もそのような無年金障害者の実態を調査することを説明していた。 また、一方で、立法時から被保険者の範囲の拡大や、障害の範囲の拡大のための立法改正が次々と行われていたから、政府が陳情で表明したとおりに実態調査を実施していれば、学生無年金障害者が今後生まれることがなく、これまでに無年金となっていた障害者に障害(福祉)年金を支給するという改正を が次々と行われていたから、政府が陳情で表明したとおりに実態調査を実施していれば、学生無年金障害者が今後生まれることがなく、これまでに無年金となっていた障害者に障害(福祉)年金を支給するという改正を行うことは極めて容易であったものである。 にもかかわらず、学生を強制適用(免除制度付き)として年金の支給が可能となる法改正を怠り、漫然と推移して障害(福祉)年金の受給の道を閉ざす、国民皆年金の原則に反する不合理な差別を続けて、憲法14条、25条に違反する状態にあったものである。 c 昭和60年改正時昭和60年改正時には、さらに昭和34年当時とは立法事実に変化が生じており、国民年金法の違憲性はより一層明白になった。すなわち、①無年金障害者の問題が明確に認識され、その救済を求める運動が昭和50年代から継続して行われていたこと、②学生等の進学率が大幅に向上し、必ずしも経済的に恵まれていない層も大学に進学できるようになったこと、それに伴って学生無年金障害者の問題はより一層顕著になったこと、③基礎年金制度の確立によって、専業主婦や在外邦人について制度的な無年金者の発生を最大限抑える改正がなされたこと、④無拠出制の障害福祉年金が拠出制の者と同金額の障害基礎年金に一本化され、従来からの福祉年金受給者は障害基礎年金に裁定替えされたことなどの変化が認められ、これらの事実は国民年金法の上記違憲性をより一層明白にしたものであって、また、既に法改正のための合理的期間は経過していたものというべきである。 (イ) 憲法13条、31条違反の点は3(1)で述べたとおりである。 イ国会及び内閣の過失(ア) 昭和34年法制定時国会議員は、立法当時において必要な調査ないし検討をする義務を怠らなかったならば、国民年 は3(1)で述べたとおりである。 イ国会及び内閣の過失(ア) 昭和34年法制定時国会議員は、立法当時において必要な調査ないし検討をする義務を怠らなかったならば、国民年金法の有する重大な欠陥である学生無年金障害者の発生を容易に認識し、これを回避する国民年金制度を確立することが可能であったものであり、学生無年金障害者の発生について重大な過失がある。 国民年金法案を国会に提出し、法案作成に深く関与した内閣(厚生大臣)も同様に重大な過失がある。 (イ) 昭和50年代半ば昭和50年代にはI会が無年金障害者への障害年金支給のための取り組みを開始し、厚生省、国会、衆参社会労働委員会に対し、陳情、請願、要望書の提出を繰り返し行い、無年金障害者の実態と障害年金の必要性を訴え続けた。このような陳情、請願、要望を受けて、国民年金法の重大な欠陥(学生無年金障害者の発生)を認識していたものであり、早期にこれを回避するために国民年金制度の改正をすることが可能であったものであるから、学生無年金障害者の発生について重大な過失がある。 また、同法の改正案を国会に提出することなく、欠陥のある法律を改正しなかった内閣(厚生大臣)にも同様に重大な過失がある。 (ウ) 昭和60年改正時昭和59年11月には、I会が衆参両議院の社会労働委員会の議員に対し、国会に上程された年金改正法案の中に無年金障害者の救済が含まれていないことに抗議し、厚生省自身も昭和58年8月に「障害者生活保障問題専門家会議」の報告書を提出し、現行の障害者に対する所得保障において保障の手が及びえないものがみられるので、すべての成人障害者が自立生活を営める基盤を形成する観点から所得保障全般にわたる見直しを行うべきであるとした。 書を提出し、現行の障害者に対する所得保障において保障の手が及びえないものがみられるので、すべての成人障害者が自立生活を営める基盤を形成する観点から所得保障全般にわたる見直しを行うべきであるとした。 したがって、昭和60年改正時には、国会議員及び内閣(厚生大臣)には、既に学生無年金障害者の問題について十分な認識があり、仮適用、納付猶予、半額納付、無拠出支給などの具体案も出尽くしており、適切な学生無年金障害者の発生防止に向け応急的な法改正をなすことは十分可能であった。しかし、国会は学生に関する法改正を無為に先延ばししたものであり、過失は重大である。 国民年金法改正案を国会に提出し、法案作成に深く関与した内閣(厚生大臣)にも同様に重大な過失がある。 ウ原告らの損害額原告らが障害を負った当時、国が学生無年金障害者を救済する法改正を行っているか又は憲法に従った法運用を行っていれば、原告らは、遅くとも症状固定の翌年には、裁定請求を行い、その年から少なくとも国民年金の支給最低額の支給を受けていたはずである。 しかし、原告らは国による違法行為により、本来受けられるべき障害基礎年金を受けられず、逆に、障害基礎年金受給者であれば法定免除された老齢年金の保険料を支払い続けざるをえなかったのであり、多大の精神的苦痛を被っている。 ちなみに、原告らが症状の固定した平成2、3年ころから障害基礎年金が受給できたとすれば、受給可能額を現在支給額(月額8万3775円)で計算すれば、およそ1200ないし1300万円となり、支払いを免れた保険料額は200万円前後(現在額の月額1万3300円で計算)となる。将来の受給可能額をも斟酌するなら、さらに膨大な金額となる。 原告らの極めて厳しい生活実態及び著しい精神的苦痛 払いを免れた保険料額は200万円前後(現在額の月額1万3300円で計算)となる。将来の受給可能額をも斟酌するなら、さらに膨大な金額となる。 原告らの極めて厳しい生活実態及び著しい精神的苦痛などにかんがみると、国の違法行為により原告らに支払われるべき慰謝料は、各2000万円を下ることはない。 エ原告らに対する重大な人権侵害などの著しい不利益及び司法的救済の必要性(ア) 平成元年前の国民年金法によって、原告らに対し、次のような著しい不利益が生じている。 a 保険料免除制度の欠如及び国民年金未加入による不利益情報の不告知によって、国民年金に加入できなかった。 baの結果として、障害等級1級の場合が年間100万5300円(月額8万3775円)、2級の場合が年間80万4200円(月額6万7017円)の障害基礎年金が受給できない。 cbの結果として、障害基礎年金受給者に認められる、老齢基礎年金の保険料の法定免除が認められず、原則として保険料を負担しなければならない。 上記の状態は、原告らの社会保障を平等に受ける権利及び生存権の重大な侵害であり、昭和60年改正による障害福祉年金の障害基礎年金への一本化(従来の福祉年金受給者の裁定替え)によって、より一層顕著となったものである。 (イ) 原告らに対する司法的救済の必要性本来、国民年金制度は国民の社会保障の問題であり、その制度設計にあたっては政府ないし国会の裁量が大きく認められる分野であるから、議会という政治的過程を通してその不合理性が是正されるべき問題である。 しかし、学生無年金障害者は、国民全体の中では極めて少数者であり、それゆえ、自らの人権侵害状態を多数決原理に基づく議会制民主主義による政治過程の中で解決して が是正されるべき問題である。 しかし、学生無年金障害者は、国民全体の中では極めて少数者であり、それゆえ、自らの人権侵害状態を多数決原理に基づく議会制民主主義による政治過程の中で解決していくことがほとんど期待できないことは、実態として明らかである。これは、昭和50年からI会の連合会が、国会議員、厚生省等に度重なる働きかけを行ってきたこと、国会において無年金者救済の附帯決議が繰り返しなされてきたこと、本年3月の東京地裁判決で立法不作為の違憲性が強く指摘されたことなどにもかかわらず、現在に至るまで適切な救済(学生無年金障害者に対する障害基礎年金と同金額の年金の支給立法)がなされていないことからも実証されている。 よって、原告ら学生無年金障害者に対する司法的救済の必要性はきわめて高い。 (2) 被告国の主張ア昭和34年の法制定から昭和60年改正に至るまでの立法不作為学生は本来被用者年金制度の体系で保障を受ける可能性が高い一方、自ら拠出制年金の保険料を拠出する能力には乏しい存在である。そのような学生について制度体系の異なる国民年金制度を一律に適用し、保険料の免除、軽減等の措置を講じることは、高齢任意加入被保険者や内部障害(内科系疾患に基づく障害、精神障害等)とは政策課題としての性質を異にし、社会保険方式による拠出制年金としての国民年金制度の安定を損なうおそれがあった。 原告らが例に挙げる老齢年金の特例納付制度は、既に障害という保険事故が発生したのに、保険料の納付要件を満たしていないため不支給となったものを、事後的に納付要件を充足させ、年金を支給することを認めたものではない。国民年金は保険料拠出を基本とした制度であり、このような措置を度々行うことは制度の安定的運営を揺るがすことになりかねないことから 、事後的に納付要件を充足させ、年金を支給することを認めたものではない。国民年金は保険料拠出を基本とした制度であり、このような措置を度々行うことは制度の安定的運営を揺るがすことになりかねないことから、制度発足当初からの高齢者等、本来的には国民年金の制度体系の枠内にいると考えられる者について、例外的措置として認められたものである。20歳以上となってからは本人の意思によりいつでも任意加入することのできた学生とは、年金保障の対象者としての類型を全く異にする。 イ昭和60年改正にかかる立法不作為国民年金制度については、社会保険方式による拠出制年金の仕組みを維持することが合理的であったところ、保険料を拠出する能力の乏しい学生においては保険料納付の確実性について懸念があったことなどから、学生を強制適用の対象とすることは困難であった。 原告らは専業主婦、すなわち被扶養配偶者を強制適用の対象とした制度改正に言及するが、この場合は改正前の扶養者の厚生年金保険が定額部分と配偶者加給年金部分から構成されていた。これに対し、学生については、配偶者加給年金部分に対応する給付の制度がなかったため、被扶養配偶者のように給付設計を組み直すことはできなかった。このため、学生を強制適用の対象に組み込むには別個考慮が必要であり、被扶養配偶者への適用を含む年金制度の大改革と同時に行うことは困難であった。 原告らは、無拠出制の障害福祉年金が拠出制の者と同金額の障害基礎年金に一本化されたことにも言及するが、国民年金制度が拠出制を原則とするものである以上、未加入の期間に障害が生じた場合にも障害給付を支給することとすれば、保険料納付者との衡平を阻害するとともに、加入者の保険料納付意欲を損ない、年金制度の存立基盤を危うくするおそれがあった。 ウ以上 入の期間に障害が生じた場合にも障害給付を支給することとすれば、保険料納付者との衡平を阻害するとともに、加入者の保険料納付意欲を損ない、年金制度の存立基盤を危うくするおそれがあった。 ウ以上のとおり、国民年金法は立法当初以降憲法14条、25条に違反していない。 また、同法が憲法13条、31条に違反していないことは3(2)で述べたとおりである。 よって、国会、内閣、いずれにも過失はない。 第4 当裁判所の判断 1 前記争いのない事実等の外、証拠によれば以下の事実が認められる。 (1) 原告らの受傷ないし発病後から現在までの状況等ア原告A(乙9、13、証人C)(ア) 原告Aは、昭和63年6月14日にバイク事故で受傷し、昏睡及び呼吸困難の危篤状態となり、E病院の集中治療室で治療を受けた。その後、より高度な医療を受けるため、同月16日にJ病院脳外科に転院した。同院では、当時としては比較的先駆的な治療法である低体温療法を受けた。昏睡状態が約4か月半続いた後、原告Aは意識を回復した。その後、リハビリ治療を行ったものの、J病院から、これ以上の治療が困難である旨の説明を受けたため、平成元年1月5日、J病院を退院し、K病院老人病棟に入院したが、同月18日に退院した。その後は自宅で介護を行うとともに、平成元年4月以降はJ病院外来脳外科に通院し、リハビリ治療を行っている。 (イ) J病院を退院した時点で、原告Aは、左上下肢機能障害の外、以下の障害を負っていた。 a 右目失明b 記憶障害受傷前の記憶が十分に戻っていない。今、言ったことが会話では分かるが、すぐに忘れる。写真を見ても、写真を外すと今何を見たかが分からない。同じことを何度も何度も繰り返し尋ねる。ただし、会話を行う能力はある。 c 知的障害字や言葉 言ったことが会話では分かるが、すぐに忘れる。写真を見ても、写真を外すと今何を見たかが分からない。同じことを何度も何度も繰り返し尋ねる。ただし、会話を行う能力はある。 c 知的障害字や言葉を思い出せない。 d 感情抑制障害(易怒性等)テレビで娯楽番組を見ていて、テレビ受信機に対して怒り、殴って壊したりする。 (ウ) 原告Aは、平成元年12月から、送迎のサービスがある広島市L区のM作業所に通い、建築材料の金具にビスを埋め込む作業を行っていた。平成3年4月には、広島県佐伯郡NのO園という施設に入所する話が持ち上がったが、環境に馴染むことができず、結局入所を断られた。そして、平成5年3月から、P作業所に通うようになり、以後現在までクッキーの製造に携わり、主に型抜きを担当している。月収は7000円から1万円程度である。 (エ) 平成10年1月20日には、J病院で「精神機能低下、易怒性あり、日常生活能力・労働能力はない、予後不変(症状固定)」という診断を受けている。 イ原告B(甲90ないし92、111、乙2、証F)(ア) 原告Bは、急性心不全を発症する約1か月前の平成2年8月半ば、卒業したQ高校のOB会でバスケットボールのゲームをした際、体調不良により医務室で休むということがあった。しかし、その後原告Bの体調は回復し、急性心不全を発症するまで異状はなく、特別に過大な負荷やストレスのかかる出来事も何もなかった。 原告Bは、就寝中の平成2年9月14日午前2時ころ、急性心不全を発症した。自宅で家族に発見された際、既に心停止状態であり、看護師である親戚が蘇生行為を行った後、救急車による搬送中も心停止の状態であったが、E病院での治療の結果、一命を取り留め、約2週間後には意識を回復した。その際、会話は交わせないものの、見舞客の り、看護師である親戚が蘇生行為を行った後、救急車による搬送中も心停止の状態であったが、E病院での治療の結果、一命を取り留め、約2週間後には意識を回復した。その際、会話は交わせないものの、見舞客の識別は可能な状況であった。心不全の原因については、平成2年12月の時点においても不明であった。 その後、原告Bは、平成3年1月28日、東広島市にあるRセンターに転院してリハビリを行い、同年11月に退院した。 (イ) 原告Bは、現在自宅内での移動も車椅子で行っている。車椅子に座っている際、座った姿勢を自力で維持することが難しいため、股の部分にT字型の補助具を付している。床に座っている際もバランスを崩して倒れることがある。また、咀嚼・嚥下の能力が著しく低下しており、ミンチ状にしないと食べることができない。このため、1回の食事には2時間程度を要し、また食事にあたっては介助者が必要である。入浴にあたっては、2人の介助者が手動式の小型クレーンを用いて浴槽内に移動させなければならない。排泄はおむつを要する。 現在、原告Bは週2日身体障害者用のデイサービスを受けているものの、その他は自宅で生活している。生活に当たっては常時最低1名の介護者が必要であるため、家族で分担して介護を行っている。 (ウ) 平成10年9月14日には、Rセンターで「発語は充分にできない、労働能力なし、症状固定の見込み」という旨の診断を受けている。 (2) 国民年金法制定の経緯(乙22、23、24①②)ア我が国においては、戦後、人口の老齢化が急速に進む一方、家族制度の崩壊によって夫婦間及び親の未成熟な子に対する関係を除き、生活保障の責任を私的な扶養に負わせることが期待し得なくなり、老齢者、身体障害者及び母子家庭に対する国家的な防貧対策の必要性が指摘された。その後昭和20年代 婦間及び親の未成熟な子に対する関係を除き、生活保障の責任を私的な扶養に負わせることが期待し得なくなり、老齢者、身体障害者及び母子家庭に対する国家的な防貧対策の必要性が指摘された。その後昭和20年代から30年代にかけ、我が国の経済発展が進み、国の財力もある程度充実したことなどから、年金制度の創設を検討する基盤が整ったと考えられるようになった。 このような時代背景を踏まえ、政府では、昭和32年5月、内閣総理大臣が社会保障制度審議会に対し、「国民年金制度に関する基本方策いかん」とする諮問を発し、同審議会は、国民年金特別委員会を設けて、その具体的検討に着手し、昭和33年6月、「国民年金制度に関する基本方策について」と題する答申をした(以下「審議会答申」という)。 また、当時の政府与党である自由民主党は、国民年金実施対策特別委員会を設置し、同年8月、国民年金として老齢・障害・母子の3種類の年金を発足させること、国民年金制度は拠出制年金を基本とし、無拠出制年金は経過的・補完的に認めることなど、国民年金制度立案における基本問題についての原則を発表した。 これらを受けて、昭和33年9月、厚生省は、「国民年金制度要綱第1次案」(以下「厚生省第1次案」という)を発表した。厚生省第1次案に対し、同年10月、大蔵省は意見書を発表して、同案実施に要する財政支出は過大に過ぎ、負担に耐えられないとして、できる限り支出を圧縮することを求めた。そして、同年12月、自由民主党国民年金実施対策特別委員会は、上記第1次案に修正を加えて「国民年金制度要綱」(以下「自民党要綱」という)を発表した。審議会答申、厚生省第1次案及び自民党要綱で定められた拠出制年金の適用対象及び無拠出制年金の支給対象は、以下のとおりである。 自民党要綱では、学生については 自民党要綱」という)を発表した。審議会答申、厚生省第1次案及び自民党要綱で定められた拠出制年金の適用対象及び無拠出制年金の支給対象は、以下のとおりである。 自民党要綱では、学生については任意適用とし、任意加入をしなければ障害を負っても拠出制、無拠出制いずれの年金も支給されないとする制度が採用された。そして、自民党要綱を基礎として国民年金法案が策定され、同法案は、昭和34年2月、国会に提出され、同年4月に成立した。 イ前述のとおり、国民年金制度は老齢・障害・母子の3種類の年金から構成されてはいたものの、制度の中心は最も多くの国民が受給対象となる老齢年金であった。昭和34年法の制定後順次改正が重ねられ、適用範囲が拡充されるとともに給付内容も充実されたが、改正の対象として議論の中心となるのは老齢年金であることが多かった。 (3) 昭和34年法ア拠出制と無拠出制(甲1、乙17、18、23)国民年金制度を創設するに当たり、拠出制と無拠出制のいずれを基本にするかについては、制度の根幹に関わる大きな問題であったところ、昭和34年法では拠出制を基本とし、無拠出制の年金は経過的及び補完的なものとされることになった。拠出制を基本とした理由は、主に以下の3点であった。 (ア) 老齢のように誰でもいつかは到達するに違いない事態についてはもちろんのこと、身体障害や夫の死亡といった事態に対しても、あらかじめ所得能力のあるうちに自らの力でできるだけの備えをすることは生活態度として当然であり、社会経済生活はこのような自己責任の原則のもとに成り立っているのであるから、拠出制を基本とすることが国民年金制度の健全な発展にとって不可欠であること。 (イ) 無拠出制を基本とした場合、その財源は租税等国の一般財源に求めざるを得ない関係上、財政支出の急激な膨 であるから、拠出制を基本とすることが国民年金制度の健全な発展にとって不可欠であること。 (イ) 無拠出制を基本とした場合、その財源は租税等国の一般財源に求めざるを得ない関係上、財政支出の急激な膨張は避けられず、将来老齢人口の急激な増加が予想されるなか、将来の国民に過重な負担を負わせる結果となること。 (ウ) 無拠出制によると、その支出を賄うための収入がその時々の財政及び経済の諸事情を受けやすく、年金制度が本来有すべき安定性、確実性が害されること。 他方、経過的及び補完的な無拠出制の年金として、拠出制年金より低額の福祉年金を給付することにした。このような制度を創設した理由は、主に以下の2点であった。 (ア) そもそも国民年金制度が創設された理由は、将来の人口の老齢化に備えるのみならず、現在存する老齢者、身体障害者及び母子家庭に対する年金的保護が必要であると考えられたことにある。これらの者に年金的保護を及ぼすためには、無拠出制年金の制度が必要である。 (イ) 拠出制年金については年金額の3分の1を国庫負担する仕組みとなっている。拠出制の年金制度だけしかないとすると、拠出した期間が不十分であった者には何らの年金支給も行われず、その結果国庫による援助も受けられなくなって、不公平である。 イ被保険者及び保険料免除(甲1、乙17、18、23)被保険者は20歳から60歳未満の国民とし、年齢で一律に区分した。その理由は、国民年金の基本が拠出制年金であることから被保険者は稼得活動に従事し一定の所得を挙げ得る者であると考えられたところ、その範囲を画するに当たり、国民年金の対象となる自営業者等は就労や所得の態様が一律でないため、一般に就労していると考えられる年齢により一律に区分して適用者を画するほかないためである。また、20歳から強制適用の するに当たり、国民年金の対象となる自営業者等は就労や所得の態様が一律でないため、一般に就労していると考えられる年齢により一律に区分して適用者を画するほかないためである。また、20歳から強制適用の対象となるとされたのは、国民年金制度の対象とする大部分の国民が高等学校卒業程度で稼得活動に従事しているという実情があったからである。 このように、年齢で一律に被保険者を区分する一方で、保険料の免除規定を設けた。その理由は、保険料の負担能力がない者ほどまず年金制度による保障が必要とされるから適用対象から除外すべきでないこと、年金制度は長期にわたる保険であるので、ある時期において負担能力がなくとも後に負担能力が生ずることがあることである。 20歳以上60歳未満の国民であっても、既存の被用者年金各法の被保険者とその配偶者、既に年金受給権が発生している者の外、学生も強制適用の対象外とされた。学生が対象外とされた主な理由は、国民年金制度が拠出制年金を基本とすることから、定型的に稼得活動に従事していないと考えられる学生について、強制適用の対象とし保険料納付義務を負わせることには問題があると考えられたこと、学校を卒業し社会に出た後は被用者年金制度に加入する者が非常に多いと考えられたこと、在学期間中に国民年金保険料を納付させてその後被用者年金に加入すると、国民年金保険料が掛け捨てになることである。 ただし、学生を含めた強制適用の対象外の者に対する将来の強制適用については、前認定のとおり7条3項が設けられ、他の公的年金制度との通算調整の問題等を速やかに検討した上で、立法によって処理する旨が明らかにされた。 ウ任意加入(甲1、乙18、23)ただし、学生も希望すれば国民年金に任意加入できるものとされた。これは将来自営業に就く者もある等の事情を た上で、立法によって処理する旨が明らかにされた。 ウ任意加入(甲1、乙18、23)ただし、学生も希望すれば国民年金に任意加入できるものとされた。これは将来自営業に就く者もある等の事情を考慮したものとされ、主に被用者年金制度に加入すべき者以外の学生を対象とするものである。任意加入は、都道府県知事の承認を受けて国民年金の被保険者となることのできる制度であるが、この承認はいつでも希望したときに行うことができ、加入しても保険料納付が行われがたい場合など特別の場合を除いては通常は必ず認められるものとされていた。ただし、過去に遡って加入を申請することは認められなかった。また、任意加入後、任意脱退もできるものとされていたため、強制加入対象者のうち保険料拠出能力のないものについて認められていた保険料の免除規定は、任意加入者に適用されないこととされた。 任意加入した者は所定の受給要件を満たしていれば拠出制の老齢年金、障害年金及び母子年金等の給付を受けることができるが、任意加入の主たる目的として想定されていたのは将来の老齢年金の充実であった。 エ障害福祉年金(甲1、乙18、23)国民年金制度においては、前認定のとおり、拠出制年金とともに、経過的及び補完的な制度として無拠出制年金(福祉年金)が採用された。福祉年金は、その支給対象者が国民年金の被保険者たる資格を有していたか否かにより、①補完的福祉年金(貧困のために保険料の免除を受け、そのため拠出制年金の支給を受けられなかった者に対して支給される年金)と、②経過的福祉年金(制度発足時において既に老齢・障害・母子状態が生じている等の事情により保険料の拠出ができない者に対する経過的な年金)とに区分され、さらにその支給事由たる事故の種頬によつて、老齢福祉年金、障害福祉年金及び母子福祉年金の3 に老齢・障害・母子状態が生じている等の事情により保険料の拠出ができない者に対する経過的な年金)とに区分され、さらにその支給事由たる事故の種頬によつて、老齢福祉年金、障害福祉年金及び母子福祉年金の3つにそれぞれ区分された。 このうち、障害福祉年金については、前認定のとおり、疾病にかかり又は負傷し、その初診日において20歳未満であった者が、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日において、障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日において1級相当の障害の状態にあるときにも、障害福祉年金が支給されることとされていた(同法57条)。その理由は、若年においてこのような障害状態にあるということは、通常その障害が回復することが極めて困難であり、稼働能力はほとんど永久的に奪われており、かつ年齢的にみて親の扶養を受ける程度をできる限り少なくしなければならないという意味において最も所得保障をする必要性が高いものであることにあった。 (4) 昭和34年法制定後から昭和60年法までの改正(乙1、23、29、40)ア昭和34年法制定時に、将来速やかに検討が加えられるべきものとされていた国民年金制度と被用者年金各法による年金制度等との通算調整の問題(同法7条3項)については、昭和36年に通算年金通則法が制定され、一応の解決が図られた。ただし、通算の対象となる期間が一定期間以上(原則として1年)と限定されていたり、老齢年金及び退職年金に限って通算の方法を定め、障害年金給付等については通算がなされないなど、完全な通算調整ができたわけではなかった。 イ国民年金法は、制定後ほぼ毎年改正され、年金支給額の増額や制度の拡充が行われた。 障害年金(拠出制)についての主な改正点は次のとおりである。 (ア) 昭和34年法では、外部 なかった。 イ国民年金法は、制定後ほぼ毎年改正され、年金支給額の増額や制度の拡充が行われた。 障害年金(拠出制)についての主な改正点は次のとおりである。 (ア) 昭和34年法では、外部障害についてしか支給されなかった。その後、昭和41年までの法改正によって、内科的疾患を原因とする障害や精神障害(精神病質及び神経症は除く)を含むすべての障害について支給されることとなった。 (イ) 支給要件である被保険者期間や保険料納付済期間についても徐々に短縮・緩和された。たとえば、昭和34年法では最低でも継続して3年間被保険者であることを要するとされていたものが、昭和41年までの法改正によって合算して1年間以上の被保険者期間があれば足りることとなった。 (ウ) 障害の認定を行うべき日については、昭和34年法では傷病が治癒するか症状固定に至らない限り認定を受けることができなかったものが、昭和51年までの法改正によって、初診日から1年6月を経過した日に所定の障害状態が認められれば認定を受けられるようになった。 以上の障害年金(拠出制)の改正の外、障害福祉年金(無拠出制)についても年金支給額の増額や制度の拡充(所得による受給制限の緩和等)が行われた。 (5) 昭和60年改正前の学生無年金問題等(甲2、12、13、15ないし18、51、94ないし96、113)ア 20歳以上の学生は、昭和34年法によって国民年金法の強制適用の対象から除外され、任意加入が認められたものの実際に任意加入をした学生は昭和62年度末の時点で約2万人であり、全体の1.25%にすぎなかったことは、前認定のとおりである。このように学生の任意加入者が極めて少数にとどまった結果、学生である間に傷病によって障害を負いながら、任意加入をしていなかったため障害年金の支給 1.25%にすぎなかったことは、前認定のとおりである。このように学生の任意加入者が極めて少数にとどまった結果、学生である間に傷病によって障害を負いながら、任意加入をしていなかったため障害年金の支給を受けられない者(以下「学生無年金障害者」という)が発生し、その改善を求める運動が起こった。 イ I会は、昭和50年代に、学生無年金障害者を含む無年金障害者に対する障害年金給付を求める運動として、次のような活動を行った。 昭和50年6月、無年金のI会会員に対するアンケートを行い、この結果に基づいて、昭和51年1月、厚生省年金局長に対して「重度身障者で年金無給者には、障害福祉年金と同額の年金を支給していただきたい」とする要望書を提出した。同年6月、11月、昭和52年7月及び昭和53年5月にも厚生省に対して上記趣旨の陳情を行った。昭和53年4月には国会に対し上記趣旨の請願を行った。 昭和53年には、S議員が政府に対し、無年金障害者に対する救済措置を講じるべきではないかという趣旨の質問書を送付した。 昭和55年には、衆参社会労働委員会の委員に対し、「身障福祉改善に関する脊髄損傷者の要望書」や「国民年金法被保険者で公的無年金者となった重度障害者の特例納付制度適用に関する要望書」を提出した。この要望の趣旨は、①国民皆年金の趣旨を貫くために、無年金障害者を作り出す制度上の問題を撤廃して欲しい、②過去の無年金障害者についても遡及して問題を解決して欲しい、③老齢年金について特例納付の制度を設けたように、無年金障害者についても特例納付の制度を設けて欲しいということであった。そして、同年6月、厚生省に対して上記趣旨の陳情を行った。 その後、同趣旨の要望書を昭和56年、58年及び59年にも提出した。また、厚生省に対して、昭和5 を設けて欲しいということであった。そして、同年6月、厚生省に対して上記趣旨の陳情を行った。 その後、同趣旨の要望書を昭和56年、58年及び59年にも提出した。また、厚生省に対して、昭和56年6月、57年5月、58年3月及び58年12月にも同趣旨の陳情を行った。 このように昭和51年以降継続的に行われた要望、陳情に対して、厚生省は、拠出制の年金制度の下で拠出を行っていなかった無年金障害者を年金制度によって救済することは難しく、特例納付も極めて例外的な救済措置であるから障害者に対してまで適用することはできない旨の回答を繰り返した。 ウ厚生省は、国連が1981年(昭和56年)を国際障害者年のスローガンとして障害者の「完全参加と平等」を目指したのを契機として、「障害者生活保障問題専門家会議」を設けて、今後の障害者の生活保障のあり方について検討を行った。同会議は、昭和58年7月、厚生省に対して、障害者の自助努力には限界があり、社会が連帯して障害者の生活を保障していく必要があること、そのために障害者の所得保障制度全般にわたる見直しを行うべきである旨の提言を盛り込んだ報告書を提出した。 (6) 昭和60年法改正の経緯(甲3①ないし④、乙25①、40(258頁以下)、51、58ないし60)ア昭和50年代に入り、我が国の社会経済は、高齢化の進行、産業構造・就業構造の変化により、大きな変動を生じつつあった。年金受給者の急激な増加、受給者の加入年数の伸長による給付費の増大が見込まれ、将来の高負担を憂慮する意見もあった。このような状況を踏まえ、長期的に安定した年金制度の運営を確保する観点から、公的年金制度の整合性を図ることを主眼とした年金制度の大改革が検討されるようになった。具体的には、職域等によって3種(厚生年金、共済年金、国民年 、長期的に安定した年金制度の運営を確保する観点から、公的年金制度の整合性を図ることを主眼とした年金制度の大改革が検討されるようになった。具体的には、職域等によって3種(厚生年金、共済年金、国民年金)8制度に区分され運営されていた公的年金制度に共通する給付、すなわち基礎年金制度の導入を目指すものであった。この外、年金の給付を夫婦単位ではなく個人単位で考える観点から婦人独自の年金権を確立することや、年金(主に老齢年金)の給付水準の見直しも、改革に当たっての課題とされた。 イ以上の状況を踏まえた年金制度改正の動きは、昭和56年から具体化していた。そして、昭和58年7月、社会保険審議会厚生年金保険部会が厚生年金保険制度に関する意見書を発表し、これを機に厚生省が具体的な改正案の作成作業に入り、昭和58年11月、国民年金審議会及び社会保険審議会に対し、制度改正についての諮問を行い、昭和59年1月には、各審議会会長から厚生大臣宛にそれぞれ答申がなされた。 このうち、国民年金審議会においては、昭和58年11月28日、12月8日、12月13日及び昭和59年1月10日に行われた審議の中で、国民年金未加入者全般についての議論も行われた。さらに複数の委員から、無年金障害者、中でも学生の問題について指摘がたびたびなされ、非常に酷な状態になっているとする認識が示された。審議の中では、学生を強制適用の対象とすることは技術的には可能ではないかとする意見が示され、また、そのための方策として、保険料納付の猶予、仮適用にして障害年金の支給対象とすること及び学生を失業者と同視して国民年金の強制適用の対象とし、他方で老齢年金の支給額は学生の期間に相当する分を減額することなどの具体的解決案が提案された。他方、学生に対する強制適用について否定的な意見が出されたのは、前掲 視して国民年金の強制適用の対象とし、他方で老齢年金の支給額は学生の期間に相当する分を減額することなどの具体的解決案が提案された。他方、学生に対する強制適用について否定的な意見が出されたのは、前掲4回にわたる審議の中で、1名の委員によって1回なされただけであった。そして最終的に、同審議会会長の答申においても、改正案については了承するものの、今後の検討課題として、「学生の適用のあり方については、引き続き検討をすべきである」とする指摘がなされた。 また、社会保障制度審議会会長からの答申においても、改正案の内容を大筋では理解するものの、重要な問題点が残されているとする指摘がなされ、その一つとして、「20歳未満で障害の状態になったときには障害基礎年金が受給できるのに対し、任意加入しなかった学生がその期間中に障害の状態になったときには障害基礎年金が受給できない。」とする指摘がなされた。 ウ政府は、昭和59年、国民年金法改正案を国会に提出した。国会審議において、学生無年金障害者問題については、次のような議論がなされた。 (ア) 衆議院社会労働委員会では、昭和59年7月26日、T1委員が学生無年金障害者の問題を取り上げ、強制適用の対象とすべきではないかという趣旨の質問を行った。同年12月6日、T2委員が同趣旨の質問を行い、具体的な解決方法として学生の保険料低額負担の提案をした。同月13日、T3委員及びT4委員がこの問題を取り上げ、両委員とも同趣旨の質問を行い、うちT4委員は学生は2分の1程度の保険料で強制加入の対象とすべきではないかという趣旨の提案をした。同月18日、T5委員が、学生のうち5、6千人の障害者がおり、20歳未満の者の延長線上にある学生についても20歳未満の者に対する条項を適用すべきであるという提案をした。 参 の提案をした。同月18日、T5委員が、学生のうち5、6千人の障害者がおり、20歳未満の者の延長線上にある学生についても20歳未満の者に対する条項を適用すべきであるという提案をした。 参議院社会労働委員会では、昭和60年4月19日にT6委員が、同月23日にT7委員が、各々学生無年金障害者の問題を取り上げ、強制適用の対象とすべきではないかという趣旨の質問を行った。 なお、衆参両委員会の審議の中で、学生に対する強制適用を否定すべきである旨の質問を行った議員はいなかった。 (イ) これら国会議員からの質問に対し、政府は、おおむね次のように答弁するにとどまった。 ①学生の保険料負担能力に疑問があるにもかかわらず強制適用の対象に含めると、最初から保険料免除を前提としていることになりかねないから、学生を直ちに強制適用の対象にすることについてはいまだ議論があること、②30歳、40歳の学生もおり、十分だとは思わないが任意加入の道も開かれている20歳以上の学生を20歳前に障害を負った者と同列に扱えるかについても議論があることなどを理由として、学生無年金障害者の問題は今後の宿題として早急に検討したいと答弁した。政府委員の1人は、年金制度について大きな改正を5年ごとに行う建前になっており、次の大改正までには結論を出したい旨の答弁をした。 (7) 昭和60年法の規定(乙18)ア国民年金改正法案は国会で一部修正の上、昭和60年4月に成立した。 昭和60年改正の柱は、①基礎年金制度の導入と制度の再編成、②将来に向けての給付水準の適正化、③女性の年金権の確立(専業主婦が任意加入とされていたのを強制加入の対象とした)、④障害年金の大幅改善であった。 イ基礎年金制度の導入基礎年金制度の導入によって、基礎年金 の適正化、③女性の年金権の確立(専業主婦が任意加入とされていたのを強制加入の対象とした)、④障害年金の大幅改善であった。 イ基礎年金制度の導入基礎年金制度の導入によって、基礎年金については全国民に共通する給付となった。そして、基礎年金を通じて一人一年金の原則が確立され、重複給付の解消が可能となり、また、各年金制度間の通算が完全に確立された。 ウ強制適用対象者の範囲の拡大従来、被用者年金適用者に対する年金給付により保障が及んでいるとして、学生と同様に任意加入の対象とされるにとどまっていた被用者年金適用者の配偶者(いわゆる専業主婦)について、夫に依存することなく女性独自の年金権の確立を図るべきであるという考え方が取られ、第3号被保険者として国民年金の強制適用の対象とされた。 エ障害年金の改善従来の国民年金の障害年金は、全制度に共通する障害基礎年金として再構成され、給付額の増額や子がある場合の加給などの改善がなされた。また、無拠出制の障害福祉年金は廃止され、全国民を対象とする障害基礎年金に一本化された。 従来の障害福祉年金は、拠出制の障害年金に比べてより低額の給付であり、所得制限などの支給制限があったが、障害基礎年金への一本化が行われた結果、従来障害福祉年金を受給していた者もより高額の給付を受けることができるようになった。 オ学生の取扱い昭和60年法改正によっても、学生は国民年金法の強制適用の対象とはされず、任意加入ができるにとどまった。 学生無年金障害者の問題は、今後の課題とされ、衆議院においては「無年金者の問題については、今後ともさらに制度・運用の両面において検討を加え、無年金者が生ずることのないよう努力すること」、参議院においては「無年金者の問題につ 、今後の課題とされ、衆議院においては「無年金者の問題については、今後ともさらに制度・運用の両面において検討を加え、無年金者が生ずることのないよう努力すること」、参議院においては「無年金者の問題については、適用業務の強化、免除の趣旨徹底等制度・運用の両面において検討を加え、無年金者が生ずることのないよう努力すること」とする附帯決議がそれぞれなされ、これらを踏まえて学生の取扱いについて保険料負担能力等を考慮して必要な措置を講ずるとする改正法附則4条1項が設けられた。 (8) 昭和60年改正後の学生無年金障害者問題(甲2、甲12、19ないし21)I会等の障害者団体は、引き続き無年金障害者の救済(障害基礎年金の支給等)を求め、昭和60年以後も、厚生省や衆参両院の議員らに対し、請願・交渉・陳情等の活動を繰り返し行った。 昭和60年9月及び昭和63年7月、厚生政務次官に対して陳情を行い、昭和61年12月には厚生省と交渉を行った。昭和63年2月及び平成元年4月には衆参社会労働委員会に要望書を提出した。 昭和61年、昭和62年及び昭和63年2月には、国会への請願も行った。従前の請願書等では、無年金障害者全般についての内容が主であったが、昭和61年以降は、学生の無年金障害者の問題について明言されるようになった。 (9) 平成元年法改正の経緯(甲51、乙26)ア昭和60年法の附則4条1項の趣旨等を踏まえ、その後検討が重ねられた結果、平成元年成立の新法により学生を国民年金の強制適用の対象とする方向での改正方針が固まった。なお、年金審議会の答申においては「学生に対する国民年金の適用に当たっては、親の保険料負担が過大とならないよう適切な配慮がなされるべきである」とする意見が付された。 イ政府は、平成元年、国民年金法の改正案を国会に提出した。国 は「学生に対する国民年金の適用に当たっては、親の保険料負担が過大とならないよう適切な配慮がなされるべきである」とする意見が付された。 イ政府は、平成元年、国民年金法の改正案を国会に提出した。国会審議において、学生無年金障害者問題については次のような議論がなされた。 衆議院社会労働委員会公聴会では、平成元年11月27日、U大学助教授のV公述人が学生の強制適用に踏み切る主たる理由が障害年金対策であること及び学生について老齢年金と障害年金を切り離し、障害年金のみ強制適用とすることが現実的な解決策である旨を述べ、年金評論家のW公述人が社会保険の原則は強制加入、保険料の強制徴収であり、学生の強制適用にはどこにも無理がなく、任意加入の方が有利であることはないことを述べた。 参議院社会労働委員会の審議の中で、T8委員が、国民年金の保険料の消滅時効が5年であることからすると、無年金障害者の救済のために法適用を遡って行うことが考えられること及び学生無年金障害者が生じたのは制度の不備によるものだと思うことを述べた。また、T9委員が、社会保障研究所による試算として、老齢年金部分と障害年金部分を分けて保険料を設定した場合、国庫負担があることを前提にすると障害年金部分の月額保険料は189円になる旨を述べた。 各委員会の審議の中で、学生の保険料負担のあり方が大きな議題となった。この点に関して、審議の中で改正法案に対して批判的な意見もあったものの、そのうちの多くは学生世帯に新たな保険料負担を求めることについての批判を内容とするものであって、学生を国民年金の強制適用対象として年金的保護を及ぼすこと自体についての批判ではなかった。 ウ平成元年12月、平成元年法が成立し、20歳以上の学生等も国民年金法の強制適用の対象とする旨が定められた。なお、施行 制適用対象として年金的保護を及ぼすこと自体についての批判ではなかった。 ウ平成元年12月、平成元年法が成立し、20歳以上の学生等も国民年金法の強制適用の対象とする旨が定められた。なお、施行日が平成3年4月1日となった趣旨は、保険料の免除適用に混乱が生じないよう準備を尽くすことにあった。 学生等の保険料の免除に関しては、一般に親元の世帯が学費・生活費の全部または一部を負担しているのが通常であることから、学生等の保険料負担能力の判定を学生等と親元の世帯を含めた経済単位により行うという基準に従い、申請により免除を行うこととなった。 (10) 昭和61年以降平成2年ころまでの任意加入制度の広報活動(甲51、114、乙49①ないし③、50、52①②、53ないし55、56①ないし③、57①②)当時、広島市は広報誌「広島市民と市政」によって、同市南区は広報誌「南区だより」によって、東広島市は広報誌「広報東広島」によって、広島県は広報誌「ねんきん広島」によって、おのおの国民年金制度の周知を図っていた。それらには、いずれも希望すれば学生は国民年金に任意加入できること及び国民年金加入者が障害を負った場合には障害基礎年金を受給できることが記載されていた。記事の中に「若くて健康なみなさんに、四十年先も話をしてもと思われることでしょうが、ながい間のひとつひとつの積み重ねが、明るい将来へのそなえです」(乙50)という老齢年金しか念頭に置いていないと理解されるものがある外、説明の大半は老齢年金についてのものであって、障害年金についての説明はごくわずかである。「学生は任意加入をしない限り、障害を負っても障害基礎年金を受給することができない」旨の記載はない。 「広島市民と市政」は、当時広島市全体での発行部数が41万部であり、日刊新聞の折り込み ある。「学生は任意加入をしない限り、障害を負っても障害基礎年金を受給することができない」旨の記載はない。 「広島市民と市政」は、当時広島市全体での発行部数が41万部であり、日刊新聞の折り込みで各戸に配布していた。「南区だより」も、「広島市民と市政」と同様の方法で配布していた。「広報東広島」は、当時東広島市全体での発行部数が2万5000部であり、行政区長や班長を通じて各戸に配布するようにしていた。「ねんきん広島」は、当時広島市で6000部、東広島市で2500部を、市町村や関係機関に配布していた。 当時、年金を研究する学識経験者の中でも、学生の国民年金任意加入制度の存在を認識していない者が珍しくなかった。 (11) 平成元年改正後の学生無年金障害者問題(甲2、12、22ないし29、77)平成元年法改正によって、20歳以上の学生等は、新たに国民年金の第1号被保険者として強制適用の対象となったが、従来の任意加入時代に障害を負った学生無年金障害者の救済はなされなかった。 I会等の障害者団体は、無年金障害者の救済(障害基礎年金の支給等)を求め、平成元年以後も、厚生省や衆参両院の議員らに対し、請願・交渉・陳情等の活動を繰り返し行った。 これらの活動の結果、平成4年には初めて参議院で「無年金障害者の救済に関する請願」が採択された。また、同年5月、尼崎市議会で、無年金障害者に対する救済を求める意見書が全会一致で可決された。 平成6年の国民年金法改正案が可決された際に、衆参両院において、無年金である障害者の所得保障については、福祉的措置による対応を含め検討する旨の附帯決議がなされた(特に、参議院では「速やかに検討する」とされた)ものの、その時点で具体的な検討には至らなかった。 平成10年3月にはX議員が内閣に は、福祉的措置による対応を含め検討する旨の附帯決議がなされた(特に、参議院では「速やかに検討する」とされた)ものの、その時点で具体的な検討には至らなかった。 平成10年3月にはX議員が内閣に対して「無年金障害者の所得保障の確立等に関する質問主意書」を送付した。 (12) 平成12年法改正の経緯(甲50、99)平成元年改正後、20歳以上の学生等も国民年金制度の強制適用の対象となったものの、学生等は一般的に所得がないために、その親が保険料を負担することが多くなり、学費に加えた親の負担加重が問題視されるようになった。 社会保険庁による「平成7年公的年金加入状況等調査」によると、学生の未加入率は11.5%であった。また、同庁による「平成8年国民年金被保険者実態調査」によると、学生の被保険者のうち、保険料滞納者が12.2%、保険料被免除者が30.3%であり、保険料納付者における親の保険料負担割合は92.7%に及んでいた。 そこで、親の負担を軽減しつつ、稼得能力のない学生等に保険料納付という負担を負わせることなく、学生等無年金障害者の発生をも防止することを目的として、平成12年改正によって、親の所得ではなく学生等本人の所得を基準に学生等の保険料納付を猶予するという学生納付特例制度が創設された。 (13) 平成12年法改正後の学生無年金障害者問題(甲51、116、121ないし124、137、138及び弁論の全趣旨)平成14年7月、Y厚生労働大臣が試案を発表し、学生を含む無年金障害者に対する福祉的措置による救済の必要性を指摘した。 平成16年6月、与党年金制度改革協議会は、学生や専業主婦のうち、任意加入であった期間内に任意加入せず障害を負った者に対し、全額国庫負担で特別障害給付金を支給することを内容とす を指摘した。 平成16年6月、与党年金制度改革協議会は、学生や専業主婦のうち、任意加入であった期間内に任意加入せず障害を負った者に対し、全額国庫負担で特別障害給付金を支給することを内容とする「特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律案要綱」による同法律案を速やかに成立させ、平成17年4月1日の施行を目指す旨の合意を発表した。 同法律案は、平成16年11月22日に衆議院で可決され、「障害者の基礎的な生活の支えとなる特別障害給付金の額については、今後の障害基礎年金等の水準の推移を踏まえて検討する」という附帯決議が付された。 同法案は、同年12月3日に参議院で可決される見込みである。 2 原告Bについて(争点(3))原告Bは、初診日が20歳に達する前である旨を主張するので、まずこの点について判断する。 (1) 現行法30条の4の1項の「初診日」とは、傷病(障害の原因となった疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日のことをいう(同法30条1項)。この「初診」の解釈について、原告Bは、第三者の医師が介在することで疾病の原因がいつ存在したのかの証明が容易であることを意味するものであり、だとすれば、医師の診療でなくても疾病の原因がいつ存在したのか証明可能なものであれば「初診」に当たる旨の主張をする。乙23によれば、当初の立法段階で原告主張の内容に近い意見があったことを認めることができるけれども、原告主張の解釈は法文に反するものといわざるを得ないから採用できない。 (2)ア原告Bが昭和49年2月13日をはじめ20歳に達する前に医師の診察を受けた際に何度か心雑音の指摘を受けたことは前認定のとおりである。しかし、このような心雑音と平成2年9月14日に罹患した急性心不全やそ 告Bが昭和49年2月13日をはじめ20歳に達する前に医師の診察を受けた際に何度か心雑音の指摘を受けたことは前認定のとおりである。しかし、このような心雑音と平成2年9月14日に罹患した急性心不全やその後原告Bが負った障害との因果関係を認めるに足りる証拠はない。 イこの点について、原告Bは、自身の年齢、急性心不全を罹患した直前及び当時の状況などから、既に抱えていた何らかの心臓疾患に起因するものと判断することは十分に可能であり、ここでいう「何らかの心臓疾患」について20歳に達する前に心雑音という診断が下されていた旨の主張をする。 原告Bが急性心不全を発症した年齢が20歳直後の極めて若い時期であること、発症の前後の時期には特別に過大な負荷やストレスのかかる出来事も何もなかったこと、発症時刻が就寝中の夜中の午前2時ころという最も安静時で負荷のかからない時間帯の発症であることは前認定のとおりである。しかし、これらの事実のみでは、原告Bが20歳に達する前に指摘を受けていた心雑音が何らかの心疾患であり、平成2年9月14日の急性心不全がその心疾患に起因することを推認するに足りない。 (3) 以上のとおり、原告Bについて、昭和49年2月13日を含め、20歳に達する前に医師の診察を受けた際に心雑音の指摘を受けた日を初診日とすることはできない。 3 強制適用除外規定及び受給除外規定が、憲法14条1項、25条に違反するか(争点(1))。 (1) 憲法14条1項違反の有無憲法14条1項は法の下の平等を定めているところ、同規定は合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって、各人に存する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは、その区別が合理性を有する限り、何ら同規定に違反するものではない(最高裁 する趣旨のものであって、各人に存する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは、その区別が合理性を有する限り、何ら同規定に違反するものではない(最高裁判所大法廷昭和39年5月27日判決・民集18巻4号676頁参照)。 法的取扱いに区別を設けた法律であっても、立法理由に合理的な根拠があり、かつ、その区別が立法理由との関連で著しく不合理でなくいまだ立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えていないと認められる限り、合理的理由のない差別とはいえず、これを憲法14条1項に反するものとはいえない(最高裁判所大法廷平成7年7月5日決定・民集49巻7号1789頁参照)。 以下、強制適用除外規定及び受給除外規定の立法理由及びその合理性について検討する。 ア昭和34年における強制適用除外規定の立法理由(ア) 強制適用除外規定は、20歳以上の学生等を20歳以上の学生等を除く国民と区別するものであるところ(なお、昭和34年法では、その外にも強制適用除外者がいたことは前認定のとおりである)、前認定によればその立法理由は以下のとおりということができる。 国民年金制度は、基本的に稼得活動従事者に対する保障を本質とする拠出制の社会保険制度として成立し、無拠出制年金は経過的又は補完的制度として取り入れられた。すなわち、稼得活動に従事して一定の所得をあげ得る者を被保険者として予定していたため、定型的にみて稼得活動に従事していない学生等は保険料拠出能力がなく、これに当たらない。 学生等は卒業後被用者年金制度に加入するのが通常であるから、国民年金制度よりも被用者年金制度の対象者と見て差し支えない。むしろ、被用者年金と国民年金との通算が不十分であることを前提とすれば、学生を国民年金に強制加入させて保険料を徴収しても 通常であるから、国民年金制度よりも被用者年金制度の対象者と見て差し支えない。むしろ、被用者年金と国民年金との通算が不十分であることを前提とすれば、学生を国民年金に強制加入させて保険料を徴収しても、保険料が掛け捨てになる不公平の方がより問題である。 (イ) なお、学生等の任意加入は、学生等の中にも将来自営業に就く者もある等の事情を考慮して制度化されたものである。すなわち、前述のとおり学生等は卒業後被用者年金制度に加入するのが通常であるところ、任意加入はこれに該当しない一部の学生等を念頭に置いた制度であって、それ以外の一般の学生を念頭に置いた制度ではなかった。 このように学生等の任意加入は、元々学生等を強制適用から除外したことの補完的な措置として設けられたものにすぎない。「学生等に任意加入制度を適用すべき積極的な理由があるから、強制適用除外規定を設けた」という事情は窺えない。 したがって、任意加入制度の存在及び実効性については、補完的な立法理由に止まるというべきであって、強制適用除外規定の合憲性を基礎付ける積極的な立法理由として重視することはできない。 イ昭和34年における強制適用除外規定の立法理由の合理性(ア) 拠出制を基本とし、無拠出制年金は経過的又は補完的制度として取り入れたこと拠出制を基本とした理由は、前認定のとおり3点であるところ、資本主義経済体制下において、老齢、身体障害等の事態には自己の責任において備えることを原則とするのは十分に合理性がある。また、将来の老齢人口の急増が予想される中、財政支出の急激な膨張を抑え、将来の国民の過重な負担を避けつつ、年金制度の安定的かつ確実な運用を図るためにも、拠出制を基本とすべき必要性が認められる。以上のことから、拠出制を基本としたことについては合理性が認められる。 将来の国民の過重な負担を避けつつ、年金制度の安定的かつ確実な運用を図るためにも、拠出制を基本とすべき必要性が認められる。以上のことから、拠出制を基本としたことについては合理性が認められる。 そして、拠出制年金の制度のみであれば制度未加入者に対して何らの年金的保護を図ることができないことになる点については、無拠出制年金も経過的又は補完的に取り入れられており、これによって制度未加入者に対する一定の年金的保護が図られている。 (イ) (ア)を踏まえ、学生等を定型的にみて稼得活動に従事していない者とすることをもって、適用除外の根拠とすることa 国民年金制度が拠出制を基本とするものである以上、稼得活動に従事して一定の所得をあげ得る者を被保険者として予定したことには合理性が認められる。 問題は、上記理由に基づいて学生等を強制適用対象から除外したことの合理性である。 学生等は現時点では稼得活動に従事していない者であるものの、将来稼得活動従事者となる可能性が極めて高い者であるということができる。 また、大学等での修学活動自体が稼得活動と無関係とはいえないのであって、むしろ将来の稼得活動能力の向上に積極的に寄与するものとして、一般に認知されている。このような点に照らすと、学生であった期間に障害を負うことにより将来にわたって稼得能力の減損が生じる場合に、障害年金の保障を及ぼすことが国民年金制度の立法趣旨に反するとは考えられない。しかし、国民年金制度が基本とする拠出制を強調すれば、現時点では稼得活動に従事していないことに着目して学生を強制適用対象から除外するという判断にも全く合理性がないとまでいうことはできない。いずれの考え方を採用するかは立法者の裁量の範囲に属するというべきである。 この点に関して、原告らは、学生等を強制適用にして から除外するという判断にも全く合理性がないとまでいうことはできない。いずれの考え方を採用するかは立法者の裁量の範囲に属するというべきである。 この点に関して、原告らは、学生等を強制適用にして保険料納付義務を課したとしても、保険料免除を認めれば何ら不都合はなかった旨を主張する。しかし、このような考え方に対しては、拠出制年金の本質に反する、又は学生等と同世代で稼得活動に従事し保険料を負担している者との公平を欠くなどの反対論が十分考えられる。 したがって、立法者が原告ら主張の考え方を採らなかったとしても、裁量の範囲を超えるということまではできない。 このように、学生等を定型的にみて稼得活動に従事していない者とすることが強制適用対象から除外する立法理由として合理的根拠を欠くとまでいうことはできない。 b ただし、保険料のうち障害年金の保険料が占める割合を考えた場合、僅少なものになることは、昭和34年当時においても容易に推測できたはずである。なぜなら、国民年金を構成する老齢・障害・母子の3種類の年金において保険事故の生じる可能性を考えた場合、ほぼ誰にでも生じる老齢の可能性が飛び抜けて高いことは明白だからである。このように障害年金の保険料が僅少であることを前提とすれば、定型的にみて稼得活動に従事していないことのみを立法理由とするのは、学生を障害年金について強制適用の対象から除外する根拠として十分なものであったということはできない。 c また、先にaで述べた結論は拠出制年金としての国民年金について当てはまるにすぎず、無拠出制年金としての国民年金についてそのまま当てはまるものではない。 学生等が定型的にみて稼得活動に従事していない者であることを拠出制年金の適用対象を画する際の立法理由とした以上は、無拠出制年金の適用対象を画 国民年金についてそのまま当てはまるものではない。 学生等が定型的にみて稼得活動に従事していない者であることを拠出制年金の適用対象を画する際の立法理由とした以上は、無拠出制年金の適用対象を画する際の立法理由としてもこれを考慮する必要がある。この点は後に詳述する。 (ウ) 学生等は卒業後被用者年金制度に加入するのが通常であるから、国民年金制度よりも被用者年金制度の対象者とみて差し支えないこと、その場合、被用者年金と国民年金との通算が不十分であるため、保険料の掛け捨ての問題が生じることa 学生等は卒業後被用者年金制度に加入するのが通常であるという立法理由には一般社会常識に照らして合理性がある。ただ、そのことから、学生を被用者年金制度の対象者と見て差し支えないといえるという点については、障害年金制度との関係で考える限り、以下のとおり、十分な合理的根拠があるとはいい難い。 障害年金制度との関係でいうと、学生である期間中に一旦障害を負った場合、もはや被用者となって被用者年金に加入することなどできないのが通常である。すなわち、学生等は被用者年金制度の潜在的な対象者ではあっても、いまだ対象者そのものではない。また、障害年金は老齢年金と異なって、障害という保険事故が発生しない限り受給の余地がない。 このため、国民年金の保険料を障害年金の保険料と老齢年金等それ以外の保険料とに区分した場合、前者の保険料は障害を負わない多数の者にとってはもともと掛け捨てというべきものであるから、障害年金の場面では保険料の掛け捨てはさほど考慮すべきものでない。 b ただ、前認定した老齢者・障害者・母子家庭に対する年金的保護の要請という昭和34年法の立法経緯及び立法趣旨からすると、当初の制度設計段階において立法理由を検討する際に老齢年金と障害年金が一体として扱 だ、前認定した老齢者・障害者・母子家庭に対する年金的保護の要請という昭和34年法の立法経緯及び立法趣旨からすると、当初の制度設計段階において立法理由を検討する際に老齢年金と障害年金が一体として扱われたことはやむを得ないと考えられる。そして、立法当初以降国民年金制度の中心が老齢年金にあったことは前認定のとおりである。 老齢年金制度との関係でいえば、学生が卒業後被用者年金に加入する場合、被用者年金の被保険者である期間と比べると、学生である期間はごく短い。学生の数年間国民年金に加入しなくとも、被用者年金制度体系の下で老齢時に標準的な年金保障を受けることは可能であるから、その関係に限れば、学生を被用者年金制度の対象者といえなくはない。さらに、老齢年金においては、年金間の通算制度が不十分であれば、学生の期間中に納付する国民年金保険料について掛け捨ての問題も生じる。学生が国民年金制度の強制適用の対象になった場合には保険料納付の法的義務を負担することを考えれば、当時の法体制を前提とする限り、保険料の掛け捨ての問題は重大である。 以上のことから、昭和34年法立法の時点で、老齢年金制度に着目して、学生を被用者年金制度の対象者と考え、保険料掛け捨ての問題を回避しようとした立法理由には一応の合理的根拠がある。 (エ) 以上のとおり、アで挙げた昭和34年における強制適用除外規定には合理性があり、同規定が憲法14条1項に違反しているということはできない。 ウ昭和34年における受給除外規定の立法理由受給除外規定とは、国民年金の被保険者は学生等を除く20歳から60歳未満の国民であるとする規定を前提として、被保険者でない者のうち、20歳未満の者に対し障害福祉年金の支給対象とした規定を指す。この立法の結果、障害福祉年金の支給対象に含まれるか否か く20歳から60歳未満の国民であるとする規定を前提として、被保険者でない者のうち、20歳未満の者に対し障害福祉年金の支給対象とした規定を指す。この立法の結果、障害福祉年金の支給対象に含まれるか否かで、20歳未満の者と20歳以上の学生の区別が生じた。 被保険者を20歳から60歳未満の国民とし、年齢で一律に区分した立法理由は、前認定のとおり、被保険者の範囲を画するに当たり、国民年金の対象となる自営業者等は就労や所得の態様が一律でないため、一般に就労していると考えられる年齢により一律に区分して適用者を画するほかないという点にある。20歳で区分したのは、昭和34年法の立法当時、国民年金制度の対象とする大部分の国民が高等学校卒業程度で稼得活動に従事しているという実情があったからである。 被保険者の範囲に含まれなかった者のうち、20歳未満の者に対し障害福祉年金を支給することにした立法理由は、若年においてこのような障害状態にあるということは、通常その障害が回復することが極めて困難であり、稼働能力はほとんど永久的に奪われており、かつ年齢的にみて親の扶養を受ける程度をできる限り少なくしなければならないという意味において最も所得保障をする必要性が高いものであるという点にあった。 以上は前認定のとおりであるところ、他方昭和34年当時において、20歳以上の学生等を障害福祉年金の受給対象から除外すべきという積極的な立法理由があったとはいい難い。 エ昭和34年における受給除外規定の立法理由の合理性(ア) 国民年金の対象が主に自営業者と考えられる以上、一般に就労していると考えられる年齢により一律で区分して適用者を画することには合理性がある。大学、短大(昼間)及び専修学校(専門課程・昼間)への進学率が昭和35年当時において約10%にす られる以上、一般に就労していると考えられる年齢により一律で区分して適用者を画することには合理性がある。大学、短大(昼間)及び専修学校(専門課程・昼間)への進学率が昭和35年当時において約10%にすぎなかったことは前認定のとおりであることなどから、20歳で区分したことにも合理性がある。20歳未満の者が障害状態に陥った場合に所得保障をする必要性が高いことを理由に障害福祉年金の受給対象としたことにも合理性がある。 (イ) 問題は、合理性がある立法理由に基づく2つの規定を適用しながら、20歳以上の学生等が障害福祉年金の受給対象から除外されることになる点について特段の措置を執らなかったことに、合理性があるかどうかである。 a 受給除外規定を含む障害福祉年金制度は、国民年金制度の経過的又は補完的な制度として創設された無拠出制の年金であり、福祉的施策の一環をなすものであるから、その支給対象者の決定についても、立法府は、拠出制年金の場合に比して、特に広範な裁量権を有する。 b 仮に、学生等について所得保障をする必要性が低いという立法事実が存在し、これに基づいて国民年金制度全体を構築するのであれば、学生を障害福祉年金の支給対象に含めるための措置を執らない判断は合理性を有するものとして許容される。 しかし、昭和34年法立法の際、学生等を拠出制年金の適用対象に含めなかった理由が定型的に見て稼得活動に従事していない者であることであったことは、前述のとおりである。そして、学生等について所得保障をする必要性が低いという理由も窺えない。そうすると、学生等は20歳未満の者と同列に論ぜられるべき存在であったというべきである。すなわち、先に述べた20歳未満の者を障害福祉年金の支給対象とした立法理由(「若年においてこのような障害状態にあると すると、学生等は20歳未満の者と同列に論ぜられるべき存在であったというべきである。すなわち、先に述べた20歳未満の者を障害福祉年金の支給対象とした立法理由(「若年においてこのような障害状態にあるということは、通常その障害が回復することが極めて困難であり、稼働能力はほとんど永久的に奪われており、かつ年齢的にみて親の扶養を受ける程度をできる限り少なくしなければならないという意味において最も所得保障をする必要性が高い」)は、学生等にもそのまま当てはまる。また、無拠出制の年金制度を創設した理由の一部も同様に当てはまる。要するに、昭和34年法立法の立法事実から判断する限り、障害福祉年金の支給対象として学生と20歳未満の者とを区別することは合理性を有しない。 c この点について被告らは、学生等といえども20歳に達すれば任意加入が可能であったから、20歳未満の者とは立場が異なる旨を主張する。 しかし、任意加入の対象が限定的に考えられていたことは前述のとおりである。任意加入の制度はもともと学生等を定型的に稼得活動に従事していない者とみることと相容れない。すなわち、学生等が定型的に見て稼得活動に従事していない者であり、保険料の拠出能力がないとして強制適用の対象から除外した以上、保険料免除の余地もない任意加入を学生に求めることは背理である。また、任意加入の制度が機能していなかったことは後に詳述するとおりである。 次に、被告らは、学生個人ではなく世帯全体としてみれば任意加入保険料の納付は可能であったと主張する。そうだとすれば、学生等は定型的に見て稼得活動に従事していない者であるとしても保険料の拠出能力はあることになり、拠出制年金の強制適用の対象から学生等を除外する理由がなくなる。 このように、学生等を強制適用の対象 型的に見て稼得活動に従事していない者であるとしても保険料の拠出能力はあることになり、拠出制年金の強制適用の対象から学生等を除外する理由がなくなる。 このように、学生等を強制適用の対象から除外する立法理由と、被告ら主張にかかる障害福祉年金の受給対象に含めるための措置を執らない立法理由とは相容れない学生等を個人として稼得活動に従事していない者であって保険料の拠出能力がないとするのか、学生等を世帯単位でみて保険料の拠出能力があるとするのか、立法事実としていずれの考え方を採用するかは、立法府の裁量の範囲に属する事項である。しかし、拠出制年金の適用範囲を画する際の立法事実と異なる立法事実に依拠して無拠出制年金の適用範囲を画する判断を行うことには合理性を認めることができない。 e 被告らは、20歳以後に障害を負った学生等にも障害福祉年金を支給すると、同年齢の学生等以外の者が保険料を未納付の場合にこれを受給できないこととの均衡を失する旨も主張する。 学生等以外の者が保険料未納付となる場合としては、稼得活動による一定の所得があって保険料拠出能力があるにもかかわらず保険料の納付を怠る場合と、稼得活動による所得があっても十分な保険料拠出能力がないにもかかわらず保険料免除の手続を執らない場合が考えられる。、学生等を強制適用の対象外としかつ任意加入も容易でない状況におき、いわば年金制度から排除しながら、学生等以外のこれらの者の懈怠の場合とを対比するのは当を得たものではなく、被告らの主張は採用できない。 以上のとおり、立法府が障害福祉年金の支給対象者の決定について特に広範な裁量権を有しているとしても、強制適用除外規定の立法理由を維持するのであれば、学生等を障害福祉年金の受給対象に含めるための措置を執るべきであったのに、そのような措置を執らな 者の決定について特に広範な裁量権を有しているとしても、強制適用除外規定の立法理由を維持するのであれば、学生等を障害福祉年金の受給対象に含めるための措置を執るべきであったのに、そのような措置を執らなかったことは立法理由との関連において不合理である。 (ウ) 次に、合理性を欠く程度が著しく立法府の裁量の限界を超えたということができるかについて検討する。 前認定した国民年金法制定の経緯によれば、人口の老齢化の急速な進行や家族制度の崩壊によって、老齢者、身障者らに対する防貧対策が必要とされていたにもかかわらず、年金制度が存在しなかった戦後のわが国の状況を踏まえて制定されたのが昭和34年法である。このような経緯に照らすと、内容の評価はともかくまずは年金制度を実現化することこそが国民の利益に資することであったといえる。このような制度の草創期において、不備な点を立法府が改善できなかったとしても、ある程度まではやむを得ないことというほかない。また、当時は学生等だけではなく、被用者年金加入者の配偶者なども学生等と同じ立場にあったのであり、学生等が障害福祉年金を受給できない不合理の程度は後述の昭和60年法改正時と比べると相対的に小さかったということができる。 このように、学生等を障害福祉年金の受給対象に含めるための措置を執らなかったことについて、昭和34年法成立の時点では、合理性を欠く程度が著しく、立法府の裁量の限界を超えているとまでいうことはできず、憲法14条1項には違反しているということはできない。 オ昭和60年法改正時における強制適用除外規定及び受給除外規定を巡る立法 事実 昭和60年法改正によっても、学生は昭和34年法と同様に国民年金法の強制適用の対象とはされず、20歳以上の者のうち学生を除く者と学生の間の区別は引き続き存続した 受給除外規定を巡る立法 事実 昭和60年法改正によっても、学生は昭和34年法と同様に国民年金法の強制適用の対象とはされず、20歳以上の者のうち学生を除く者と学生の間の区別は引き続き存続した。また、全国民に共通する基礎年金制度が導入されたにもかかわらず、学生は昭和34年法によって障害福祉年金の給付対象とされなかったのと同様に、障害基礎年金の給付対象にされず、20歳以上の学生と20歳未満の者の区別は引き続き存続した。他方で、昭和34年当時と比べ、立法事実に違いが生じているといえるか、以下検討する。 (ア)a 学生が定型的にみて稼得活動に従事していない者である点については、昭和60年法改正時においても特に変わりはないと考えられる。 ただし、高等教育への進学率が著しく上昇した。すなわち、大学、短大(昼間)及び専修学校(専門課程・昼間)への進学率は、昭和35年当時は約10%であったものが、昭和62年当時は約51%まで上昇したことは、前認定のとおりである。これに伴って、「20歳以上の学生」の数も大きく増加した。 b 昭和60年法までの国民年金法改正によって、昭和34年法で学生と同じく適用除外となっていた被用者年金適用者の配偶者(いわゆる専業主婦)も強制適用の対象となった。これによって、20歳以上の成人のカテゴリーのうち学生だけが強制適用から除外され、任意加入しない限り障害基礎年金の受給者となり得ないことになった。 また、基礎年金制度の導入によって、国民年金法の強制適用の対象ではない20歳未満の者も、強制適用の対象者と同じく、障害基礎年金の受給者となった。この結果、国内居住者全員のカテゴリーのうち20歳以上の学生だけが任意加入しない限り障害基礎年金の受給者となり得ないことになった。 c 昭和50年代からI会を中心とした無年金障害者の 受給者となった。この結果、国内居住者全員のカテゴリーのうち20歳以上の学生だけが任意加入しない限り障害基礎年金の受給者となり得ないことになった。 c 昭和50年代からI会を中心とした無年金障害者の救済を求める運動が起こり、昭和51年以降は、政府や国会に対して繰り返し陳情、要望等が行われていたことは、前認定した「昭和60年改正前の学生無年金問題等」の項のとおりである。 また、前認定した昭和60年法改正の経緯によれば、昭和60年法改正に先立って政府から改正内容についての諮問を受けた審議会においても、学生を強制適用の対象とすべきではないかとする意見が審議会委員から出ていたこと、審議会の中でこれを否定する意見はほとんどなかったこと、国会の委員会審議においても、学生を強制適用の対象とすべきである、または20歳未満の者と同様に扱うべきであるとする考えに基づく質問が行われたこと、政府も委員会答弁等の場において、学生無年金障害者の問題を認識した上で、国民年金制度における学生の現在の扱いを積極的に肯定することはなかったということができる。 d 昭和58年7月、障害者生活保障問題専門家会議が厚生省に対し、障害者の自助努力に限界があることを指摘して、障害者の所得保障制度全般にわたる見直しを提言したことは、前認定のとおりである。 以上のことから、障害年金に関し、学生に対して任意加入以外の年金的保護を及ぼす必要性は、昭和34年ころと比べて著しく高まっていたこと、遅くとも昭和50年代半ばからはそのような必要性を立法府や政府が認識し得る状況があったこと、そして昭和60年法改正の作業において、立法府及び政府がそのような必要性を現実に認識していたということができる。 (イ) 拠出制年金の強制適用対象としない理由として挙げられていた「学生は定型的にみて稼得活動に従事 年法改正の作業において、立法府及び政府がそのような必要性を現実に認識していたということができる。 (イ) 拠出制年金の強制適用対象としない理由として挙げられていた「学生は定型的にみて稼得活動に従事していない」及び「学生等は卒業後被用者年金制度に加入するのが通常であり、被用者年金制度の対象者とみて差し支えない」とする考え方が、いずれも障害年金との関係でみると立法理由として薄弱または問題があったことは前述のとおりである。学生等を障害福祉年金の受給対象に含めるための措置を執らなかったことが立法理由との関連において不合理であることも前述のとおりである。 昭和60年法改正の時点では制度創設後既に四半世紀を経過していたのであるから、その間の制度改正の際に、障害年金に関する立法事実を老齢年金のそれと区別して検討することは十分可能であったはずである。学生を障害福祉年金の受給対象に含めるための措置を検討することについても同様である。 さらに年金間の通算制度の不備についても、昭和36年に通算年金通則法が制定されて相当程度改善されたこと、そして昭和60年法改正で基礎年金制度が導入されたことにより、年金間の通算制度の問題が完全に解決したことは、前認定のとおりである。 (ウ)a これに対し、被告らは、任意加入制度の存在をもって強制適用除外規定及び受給除外規定の合理性を主張するところ、この点が補完的な立法理由に止まること、任意加入が一般の学生を念頭に置いた制度でなかったことは、前述のとおりである。また、後述する任意加入制度の機能不全は学生無年金障害者が増加した原因の1つということができる。そして、この機能不全の原因は制度自体の不十分さにも由来することが推認されるのであって、強制適用除外規定または受給除外規定の合理性をむしろ否定する方向に働く。 した原因の1つということができる。そして、この機能不全の原因は制度自体の不十分さにも由来することが推認されるのであって、強制適用除外規定または受給除外規定の合理性をむしろ否定する方向に働く。 b ただ、補完的な立法理由にすぎないとしても、任意加入制度を利用して国民年金に加入した学生が相当数存在するなどの事実関係があって、新たに強制適用の対象としたとしてもそのことによって加入率が大きく変わることはないと推測される場合であれば、任意加入制度の存在のみで強制適用除外規定及び受給除外規定の合理性が裏付けられると考えることも可能である。 国民年金法が成立してから25年以上も経過した昭和62年度末の時点で、任意加入していた学生は全学生の約1.25%であったことは前認定のとおりである。他方、学生を強制適用の対象とした平成元年法施行の4年後である平成7年において学生の未加入率は11.5%であったことは前認定のとおりであり、このことから、学生を強制適用の対象としたことによって加入率が9割近くになったということができる。そうすると、任意加入制度の存在のみで強制適用除外規定及び受給除外規定の合理性を裏付けることはできない。 c また、前認定した昭和61年以降平成2年ころまでの任意加入制度の広報活動内容を見ても、学生ないし学生を抱える世帯に対する国民年金の広報活動として到底十分なものということはできない。 さらに、前認定した広報活動の内容によれば、年金制度の執行機関の側でも「学生は任意加入をしない限り、障害を負っても障害基礎年金を受給することができない」という問題について十分に理解せずに広報活動を行っていたことが推認される。昭和62年度末の学生の任意加入率約1. 25%という数字は、このような不十分な広報活動の現れであると を受給することができない」という問題について十分に理解せずに広報活動を行っていたことが推認される。昭和62年度末の学生の任意加入率約1. 25%という数字は、このような不十分な広報活動の現れであるとたやすく推認される。 d 被告らは、昭和55年度の専業主婦の任意加入率が6割から7割であったことを理由に任意加入制度は不備な制度でない旨を主張する。 学生のいる世帯と専業主婦のいる世帯はかなりの割合で重複すると考えられる。そして、専業主婦は世帯の中で被扶養者であり、専業主婦が任意加入している場合その保険料は通常世帯主が負担していると推測される。そのような世帯に学生がいて、世帯全体で学生の任意加入制度について正確な認識がされていれば、同居別居を問わず、自らの子である学生について世帯主が保険料を負担して任意加入させることが多いと思われる。子を思う親の気持ちを考えれば、任意加入制度についての正確な知識を持っている場合に、妻と子を比べてあえて妻の方だけ任意加入させるということは想定し難い。にもかかわらず、現実に専業主婦と学生の任意加入率にこれほどの差が生じていることからすれば、広報活動のあり方を含め任意加入制度が機能していなかったことを推認せざるをえない。すなわち、その原因を学生(ないし学生を抱える世帯)の自覚のみに求めるのは酷であって、学生に対する広報活動も含めて任意加入制度のあり方に問題があったと考える方が自然である。 (エ) 被告らは、後の平成元年改正の際においてすら、所得のない学生に保険料納付義務を負わせるべきではなく、強制適用とした場合は親に保険料を負担させる結果となることを理由にする反対論があった旨を主張する。 この点は既に述べたとおり、結局のところ、学生を個人として稼得活動に従事していない者であっ 適用とした場合は親に保険料を負担させる結果となることを理由にする反対論があった旨を主張する。 この点は既に述べたとおり、結局のところ、学生を個人として稼得活動に従事していない者であって保険料の拠出能力がないとするのか、学生を世帯単位でみて保険料の拠出能力があるとするのか、立法事実としていずれの考え方を採用するかという問題に帰着する。上記の反対論は、前者を立法事実として採用しようという考え方であるが、それならば、20歳以上の学生を20歳未満の者と区別して、無拠出制の障害基礎年金の支給対象としない扱いの合理性がなくなるから、20歳以上の学生を無拠出制の障害基礎年金の支給対象とすべきであったことになる。 また、前認定した平成元年法改正の経緯のとおり、被告らがいうとおり反対論があったことは事実であるものの、これらの多くは学生世帯に新たな保険料負担を求めることを批判するものであって、学生に対し国民年金による年金的保護を及ぼすこと自体についての批判ではなかった。また、国会の委員会審議の中では、老齢年金部分と障害年金部分を分けて保険料を設定した場合、国庫負担があることを前提にすると障害年金部分の月額保険料は189円と極めて少額になるという試算が示されていた。これらのことから、20歳以上の学生を無拠出制の障害基礎年金の支給対象とすることについての障害は極めて小さかったと考えられる。 (オ) また、被告らは、20歳以上の学生を無拠出制の障害基礎年金の支給対象とすることに対する反対論として、同年齢の学生以外の者が保険料を未納付の場合にこれを受給できないことと均衡を失するとする考えが依然として根強かった旨を主張する。 昭和34年法の立法当初において、20歳以上の学生等を障害福祉年金の受給対象から除外すべきものとする積極的な立法理由があったと いことと均衡を失するとする考えが依然として根強かった旨を主張する。 昭和34年法の立法当初において、20歳以上の学生等を障害福祉年金の受給対象から除外すべきものとする積極的な立法理由があったとはいい難いことは前述のとおりである。また、昭和60年法改正の経緯及び平成元年法改正の経緯は前認定のとおりであって、この点について被告ら主張の内容の反対論が根強かった状況は窺えない。そして、このような考え方自体が必ずしも妥当といい難いことは、前述エ(イ)eのとおりである。 (カ) 学生を強制適用の対象とするのか、無拠出制の障害年金の対象とするのか、いずれの方法を採るかは立法者の裁量に属する事項である。しかし、立法者がいずれの方法も採らないことは合理性を欠く判断というべきであって、本件ではこのような状況が昭和34年法成立以後極めて長きにわたり続いていたのである。よって、任意加入をしていなかった20歳以上の学生の障害基礎年金受給資格を否定する根拠となる強制適用除外規定及び受給除外規定が昭和60年法改正の時点においてもそのまま存続していたことは立法理由の合理的根拠を欠き、立法理由との関連において著しく不合理で立法府の裁量の限界を超えたものであり、合理的理由のない差別として憲法14条1項に違反する。 (2) 憲法25条違反の有無同条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは抽象的・相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、同条の規定の趣旨を現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするから、同条の規定の趣旨 ともに、同条の規定の趣旨を現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするから、同条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合に初めて憲法違反の問題が生ずる余地があるというべきである。 原告らに対する障害基礎年金の不支給が上記規範に当てはまるかどうかを検討するためには、被告国の原告らに対して行っているその余の福祉的施策の内容(障害基礎年金以外の福祉的手当受給の有無、内容等。物的支援の有無、内容等。生活保護の受給可能性、受給可能な場合の内容等)についても検討を要するところ、これらの点について十分な主張立証はない。 (3) 本件各処分の違法性強制適用除外規定及び受給除外規定が昭和60年法改正後も存続したことが憲法14条1項に違反することは(1)で述べたとおりである。そして、本件各処分は、前認定のとおり、原告らが初診日において被保険者でないことを理由とするものであり、強制適用除外規定に基づいてなされた行政処分である。すなわち、本件各処分は違憲無効な規定に基づいてなされたもので違法であるから、取り消すべきものである。 なお、上記の結論を導くに当たっては、原告らの障害基礎年金の受給資格に係るその余の点について判断することを要しない。 4 原告らに障害基礎年金の受給を許さない本件各処分は、国民年金制度に任意加入しなかったことに対する制裁と位置付けられるから、任意加入が可能となった時点で告知及び聴聞の機会を保障することが必要であるにもかかわらず、そのような機会を保障せず、また任意加入制度の周知 度に任意加入しなかったことに対する制裁と位置付けられるから、任意加入が可能となった時点で告知及び聴聞の機会を保障することが必要であるにもかかわらず、そのような機会を保障せず、また任意加入制度の周知を怠ったことが、憲法13条、31条に違反するか(争点(2))。 (1) 本件各処分は行政手続である。行政手続について、刑事手続ではないという理由のみで当然に憲法31条の適用外となるわけではないものの、憲法31条が聴聞及び弁明の機会を付与すべきものとするのは不利益処分に限ると解されるから、当該行政処分が不利益処分に当たらない場合は、憲法31条との関係でも適用対象となることはないというべきである。 国民年金制度は加入した者に対して一定の要件の下に年金を支給するものであり、本件各処分は障害基礎年金の受給を許さないことを超えて原告らの権利や利益に制限を科すものであるとはいえないから不利益処分に当たる余地はなく、憲法31条の適用対象とはならない。 (2) 憲法31条の適用対象とはならない行政手続である本件各処分に対して、包括的抽象的な規定である憲法13条を根拠に、適正手続の保障を及ぼすこともできない。 (3) 原告らは、告知及び聴聞の機会を保障する前提として任意加入制度の自体の広報や周知が必要である旨を主張するが、法律について公布以外の広報及び周知行為を憲法31条及び13条が適正手続の一環として保障していると解する余地はない。 5 国会及び国会議員に立法作為・不作為の違法が、内閣に法案提出行為等の違法があり、国家賠償責任を負うか否か(争点(4))。 (1) 違法性等ア本件各処分が憲法13条、31条に違反しないこと、及び昭和34年法で立法された強制適用除外規定及び受給除外規定が憲法14条1項、同25条いずれにも違反しないことは前述の (1) 違法性等ア本件各処分が憲法13条、31条に違反しないこと、及び昭和34年法で立法された強制適用除外規定及び受給除外規定が憲法14条1項、同25条いずれにも違反しないことは前述のとおりである。これらの点について、国会及び国会議員における立法作為・不作為の違法、内閣における法案提出行為等の違法のいずれも存しない。 イ次に、昭和34年法以降強制適用除外規定及び受給除外規定が存続したことについて検討する。便宜上、昭和50年代半ばに係る検討に先立って昭和60年法改正時について検討する。 (ア) 国会議員は立法に関しては原則として国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではないから、国会議員の立法行為(立法不作為を含む)は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、本条の適用上違法の評価を受けない(最高裁判所第1小法廷昭和60年11月21日判決・民集39巻7号1512頁)。 任意加入をしていなかった20歳以上の学生の障害基礎年金受給資格を否定する根拠となる強制適用除外規定及び受給除外規定が昭和60年法改正の時点においても存続したことが憲法14条1項に違反することは前述のとおりである。そこで、その違憲性の程度が「憲法の一義的な文言に違反している」といえる程度にまで達しているかどうか、検討する。 (イ) 国会議員が国民に対しては原則として政治的責任を負うにとどまることを前提とすると、その立法行為が違法の評価を受ける場合は、行政庁の裁量的権限の行使ないし不行使が違法の評価を受ける場合と比べてもなお限定されると解される。 本件について検討すると、 とを前提とすると、その立法行為が違法の評価を受ける場合は、行政庁の裁量的権限の行使ないし不行使が違法の評価を受ける場合と比べてもなお限定されると解される。 本件について検討すると、a まず、強制適用除外規定及び受給除外規定が昭和60年法改正の時点においても存続したことが憲法14条に違反することは前述のとおりであり、その立法による是正が必要であったし、立法以外の方法によってこれを是正することができなかったことは事の性質上当然である。 b 次に、上記是正の必要性の程度を判断する前提として、その違憲性の程度とこれに対する評価について検討すると、法の適用範囲を画するに当たり、国内居住者全員のカテゴリーのうち20歳以上の学生だけが区別されるということ、それだけを素朴に見れば極めて稀有で異常なことである。このような法的取扱いの区別は憲法14条1項がいうところの社会的身分によるものである。このような区別が合理性を有するものであれば憲法14条1項違反の問題は生じない。しかし、昭和60年法改正の結果、国内居住者全員のカテゴリーのうち20歳以上の学生だけが任意加入しない限り障害基礎年金の受給者となり得ないことになったこと、学生の任意加入制度が機能していなかったことは前述のとおりである。そして、強制適用除外規定及び受給除外規定の立法事実には立法当初から疑問のある点があったにもかかわらず、その合理性に係る問題点をさらに深刻にしながらも四半世紀を経過した昭和60年改正法によってもそのままの形で存続したことも前認定のとおりである。さらに、障害年金に関し、学生に対して任意加入以外の年金的保護を及ぼす必要性が昭和34年ころと比べて著しく高まっていたこと、遅くとも昭和50年代半ばからはそのような必要性を立法府や政府が認識し得る状況があったこと、そして 、学生に対して任意加入以外の年金的保護を及ぼす必要性が昭和34年ころと比べて著しく高まっていたこと、遅くとも昭和50年代半ばからはそのような必要性を立法府や政府が認識し得る状況があったこと、そして昭和60年法改正の作業においては立法府及び政府がそのような必要性を現実に十分に認識していたということができることも前述のとおりである。特に、立法時から四半世紀以上の長期間を経過していることからすれば、遅くとも昭和60年改正の時点においては、憲法14条1項に違反することが一見して明らかな状態にまで至っていたと考えられる。 さらに、前述の違憲状態を是正せずに放置することによって今後新たな学生無年金障害者が発生することは明らかであったから、この点からの是正の必要性もまた優に認められる。 c そして、前認定のとおり、昭和60年法改正の作業は昭和56年から既に具体化していたし、この是正に関する論議もされていて立法当事者においても改正作業の中で前述の点の是正を図ることは十分可能であったと推認される。 (ウ) 次に、項を改めて、昭和60年法改正において、学生を強制適用の対象とする又は無拠出制の障害年金の支給対象とする旨の法改正を併せて行う措置を講じるに当たり障害が存したか、そのような措置を講じることが容易だったか、について検討する。 a 学生を強制適用の対象に含めた平成元年法改正の際に保険料負担のあり方が問題になったこと、平成元年法が成立した後、保険料免除の適用に混乱が生じないよう準備を尽くすために施行日を平成3年4月1日としたことは、前認定のとおりである。昭和60年法改正の際に学生を強制適用の対象に含めることを検討する場合も生じる問題は同じである。 保険料負担のあり方についていえば、老齢年金部分と障害年金部分を分離し 認定のとおりである。昭和60年法改正の際に学生を強制適用の対象に含めることを検討する場合も生じる問題は同じである。 保険料負担のあり方についていえば、老齢年金部分と障害年金部分を分離して保険料を設定した場合、障害年金部分の月額保険料は189円と極めて少額になるという試算が示されていたことは前認定のとおりである。それゆえ老齢年金部分を分離し障害年金に限定すれば、学生を強制適用の対象に含めることによって負担させることになる保険料は僅少といえ、稼得の有無にかかわらず支払うことができると考えられるし、保険料免除対象の検討も要しないと考えられる。 当初の国民年金制度の設計段階において障害年金と老齢年金が一体として扱われたことがやむを得ないことは前述のとおりであるとしても、障害と老齢は保険事故として全く別個の事象であって共通点はなく、障害年金と老齢年金を分離して制度運用することは可能と考えられる。このことは、老齢年金部分と障害年金部分を分けて保険料を設定するという試算が行われていることからも裏付けられる。平成元年法改正の国会委員会審議の中でも、前認定のとおり、学生について老齢年金と障害年金を切り離し、障害年金のみ強制適用の対象とする意見が出されている。老齢年金と障害年金を分離して制度運用することが困難であることを示す事情は窺えない。 以上のとおり、昭和60年法改正にあたって、老齢年金と障害年金を分離して学生を強制適用の対象とする法改正を行うについて、障害となった事情を見出すことができない。 b 学生を無拠出制の障害年金の支給対象とする改正については、そもそも新たな保険料の徴収を伴うものではないから、保険料負担や保険料免除の問題が生じる余地がない。前認定の障害年金部分の月額保険料の試算によれば、学生を無拠出制 年金の支給対象とする改正については、そもそも新たな保険料の徴収を伴うものではないから、保険料負担や保険料免除の問題が生じる余地がない。前認定の障害年金部分の月額保険料の試算によれば、学生を無拠出制の障害年金の支給対象に含めることによって生じる財政負担の問題も大きくないと推認される。この外に、学生を無拠出制障害年金の支給対象に含める法改正を行うについて障害となる事情は窺えない。 以上のとおり、学生を強制適用の対象とする又は無拠出制の障害年金の支給対象とする旨の法改正を併せて行う措置を講じるにあたり障害が存したということはできないし、むしろ容易であったというべきである。 (エ) 原告らの受傷ないし発病後現在までの状況は、前認定のとおりである。すなわち、現在原告らは、両親らの献身的な介護により辛うじて日常生活を営んでいる状態である。将来の生活についての原告らの不安を払拭することは適わないまでも、この状況を放置することはできない。原告らに救済を及ぼす必要性は大きい。 (オ) 以上のとおり、違憲性の程度、立法時から経過した期間の長さ、救済の必要性及び法改正を講ずることの容易性等を総合的に考慮すれば、立法行為が違法の評価を受ける場合が行政庁の裁量的権限の場合と比べてもなお限定されるとしても、昭和60年法改正の際、国会及び国会議員が20歳以上の学生を障害基礎年金の受給対象とするために必要な改正を強制適用除外規定及び受給除外規定について行わなかったことの違憲性の程度は「憲法の一義的な文言に違反している」といえる程度にまで達しており、国家賠償法上もまた違法というべきである。 また、昭和60年法改正に際して国会及び国会議員に過失があったということができることは以上の認定から明らかである。 (カ) なお、内閣における法案提出行為等 もまた違法というべきである。 また、昭和60年法改正に際して国会及び国会議員に過失があったということができることは以上の認定から明らかである。 (カ) なお、内閣における法案提出行為等の違法については、立法について国会ないし国会議員に固有の権限があるのであるから、内閣においては法案を国会に提出する権限はあるものの、立法の権限はないといわざるを得ず、立法作為又は不作為が憲法に違反するとしても、内閣がその憲法違反を解消するための法案を提出しないことを国家賠償法上違法ということはできない。 ウ最後に、昭和50年代半ばについて検討する。 昭和50年代半ばの時点においても、立法時から既に20年を経過しており、強制適用除外規定及び受給除外規定の立法事実についての検討し直す余地はあったはずである。しかし、無年金障害者の問題が国会や政府に対する運動となったのは昭和51年以降のことである。そうすると、昭和50年代半ばの時点では、障害年金に関し、学生に対して任意加入以外の年金的保護を及ぼす必要性について立法府や政府が認識し得る状況があったとしても、その認識を踏まえた改正内容を具体的に検討するだけの合理的期間はあったとはいいがたい。また、昭和50年代半ばの時点では、学生と違い任意加入の割合が高かったとはいえ、被用者年金の配偶者も20歳以上の学生と同様の扱いであったことも無視できない。 結局、昭和50年代半ばの時点においては、違憲性の程度が「憲法の一義的な文言に違反している」といえる程度にまで達しているということはできない。 (2) 損害ア昭和60年法改正の際に国家賠償法上の違法があったとしても、その後速やかに違法状態が解消されたのであれば、賠償の対象となる損害が生じないという余地がある。 被告国は、昭和60年改 ア昭和60年法改正の際に国家賠償法上の違法があったとしても、その後速やかに違法状態が解消されたのであれば、賠償の対象となる損害が生じないという余地がある。 被告国は、昭和60年改正にかかる立法不作為について、同改正が年金制度の大改革を内容とするものであり、学生を強制適用の対象に組み込むことを同時に行うことは困難であった旨を主張する。その後、平成元年法によって、学生は強制適用の対象に含まれることになった。 昭和60年法改正で学生を強制適用の対象に含めなかった理由が上記のとおりなのであれば、立法府としては、平成元年改正の際に、例えば「平成元年法施行時(平成3年4月)の時点で障害を負っていた者について、初診日が昭和60年以降であれば、平成元年法施行時(平成3年4月)から障害基礎年金を支給する」などの措置が講じることも可能であったはずである。そして、このような措置が講じられていれば、原告らに国家賠償法上賠償の対象となる損害が生じていないと考える余地はあった。 しかし、平成元年法で昭和60年法改正以後障害を負った学生無年金者についての特段の措置は講じられなかった。前述のとおり、昭和60年法改正の作業において立法府及び政府が学生無年金の問題を認識して附則4条1項を設けており、そして次回改正時までに同様の学生無年金障害者が新たに発生することは確実であったにもかかわらず、昭和60年法改正と平成元年法改正の間に学生無年金障害者となった者に対する特段の措置が、平成元年法で講じられなかったことは、不可解であるとさえいえなくもない。 平成元年法施行以前の無年金障害者に対する年金給付が実施されるには、平成16年12月2日現在において将来の成立及び施行が確実視されている特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律まで 平成元年法施行以前の無年金障害者に対する年金給付が実施されるには、平成16年12月2日現在において将来の成立及び施行が確実視されている特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律まで待たなければならなかった。同法の施行が予定される平成17年4月は、昭和60年改正法の施行から数えて、実に14年を経過している。 このことに加え、前認定したこの間の原告らの状況を考慮すれば、原告らには国家賠償法上賠償の対象となる損害が生じているというべきである。 イ損害額については、原告らは精神的苦痛に対する慰謝料としての損害を主張するので、以下検討する。 昭和60年当時、原告らが強制適用の対象となる法又は20歳未満の者と同様に無拠出制の障害年金の支給対象となる法が施行されていれば、原告らは障害基礎年金の支給対象者となっていた可能性が高い。にもかかわらず、原告らは障害基礎年金を受給することができておらず、そのため、経済的に家族に依拠せざるを得ず、将来に深刻な不安を抱き、社会的自立にいっそうの困難を強いられたものであり、現在に至るまで十数年間の長期にわたり、多大な精神的苦痛を被ったことが認められる(甲90ないし92、111、乙2、証人F、乙9、13、証人C及び弁論の全趣旨)。 他方、平成17年4月以降は、特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律が施行されることは前述のとおりである。 以上のことを踏まえて、原告らの損害について額を立証することは性質上困難であるから、民事訴訟法248条により、各原告の損害額は200万円とするのが相当である。 第4 結論以上によれば、原告らの請求のうち、国家賠償請求については、原告らが被告国に対し各200万円を支払うよう求める限度で理由があるからその限度で認容し、その余は理由が るのが相当である。 第4 結論以上によれば、原告らの請求のうち、国家賠償請求については、原告らが被告国に対し各200万円を支払うよう求める限度で理由があるからその限度で認容し、その余は理由がないからいずれも棄却し、原告らの処分取消請求は理由があるからいずれも認容することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、64条本文及び65条1項ただし書を適用し、仮執行宣言の申立てについては相当でないから却下することとし、主文のとおり判決をする。 広島地方裁判所民事第2部裁判長裁判官橋本良成裁判官木村哲彦裁判官仁藤佳海
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