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昭和43(オ)27 油絵代金返還請求

裁判所

昭和45年3月26日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 福岡高等裁判所 昭和39(ネ)974

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1,601 文字

主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。理由 上告代理人原口酉男の上告理由一および二について。所論の点に関する原審の事実認定は、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)挙示の証拠関係に照らして肯認することができ、その判断の過程に所論の違法はなく、論旨は理由がない。同三について。所論の点に関する原審の認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして肯認することができるところ、右認定の事実関係に照らせば、訴外Dに重大な過失はないとした原審の判断は正当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は理由がない。同四について。原審は、訴外Dは、上告人から本件油絵二点を買い受けるに際し、上告人に対しとくにそれが真作に間違いないものかどうかを確めたところ、上告人が真作であることを保証する言動を示したので、これを信じて買い受けたものであるが、右作品はいずれも贋作であつたとの事実を確定し、右事実関係に照らせば、右両者の間の売買契約においては本件油絵がいずれも真作であることを意思表示の要素としたものであつて、Dの意思表示の要素に錯誤があり、右売買契約は要素に錯誤があるものとして無効で、上告人はDに対して売買代金三八万円を返還すべき義務がある旨判断したうえ、さらにすすんで、被上告人においてDの右意思表示の無効を主張し、被上告人のDに対する売買代金返還請求権を保全するため、Dの上告人に対する右売買代金返還請求権を代位行使することを肯認しているのである。ところで、意思表示の要素の錯誤については、表意者自身において、その意思表- 1 -示に瑕疵を認めず、錯誤を理由として意思表示の無効を主張する意思がないときは、原則として、第三者が右意思表示の無効を主張することは許されないもので ついては、表意者自身において、その意思表- 1 -示に瑕疵を認めず、錯誤を理由として意思表示の無効を主張する意思がないときは、原則として、第三者が右意思表示の無効を主張することは許されないものであるが(最高裁判所昭和三八年(オ)第一三四九号同四〇年九月一〇日第二小法廷判決、民集一九巻六号一五一二頁参照)、当該第三者において表意者に対する債権を保全するため必要がある場合において、表意者が意思表示の瑕疵を認めているときは、表意者みずからは当該意思表示の無効を主張する意思がなくても、第三者たる債権者は表意者の意思表示の錯誤による無効を主張することが許されるものと解するのが相当である。 ないものであるが(最高裁判所昭和三八年(オ)第一三四九号同四〇年九月一〇日第二小法廷判決、民集一九巻六号一五一二頁参照)、当該第三者において表意者に対する債権を保全するため必要がある場合において、表意者が意思表示の瑕疵を認めているときは、表意者みずからは当該意思表示の無効を主張する意思がなくても、第三者たる債権者は表意者の意思表示の錯誤による無効を主張することが許されるものと解するのが相当である。これを本件についてみるに、被上告人は、Dに対する売買代金返還請求権を保全するため、Dのした意思表示の錯誤による無効を主張し、Dの上告人に対する売買代金返還請求権を代位行使するものであつて、しかも、D自身においてもその意思表示に瑕疵があつたことを認めているのであるから、Dみずからが意思表示の無効を主張する意思を有すると否とにかかわらず、被上告人がDの意思表示の無効を主張することは許されるものというべきである。したがつて、これと同旨の原審の判断は正当であり、論旨は理由がない。よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官大隅健一郎裁判官入江俊郎裁判官長部謹吾裁判官松田二郎裁判官岩田誠- 2 - 部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田誠

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