平成13年(行ケ)第421号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成14年6月27日判決原告株式会社ウチコン訴訟代理人弁理士小島清路同谷口直也被告 B訴訟代理人弁護士平山隆幸訴訟代理人弁理士神戸真訴訟復代理人弁理士加藤佳代子 主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 1 当事者の求めた裁判(1) 原告ア特許庁が平成10年審判第40015号事件について,平成13年8月15日にした審決を取り消す。 イ訴訟費用は被告の負担とする。 (2) 被告(本案前の答弁)主文と同旨。 2 当事者間に争いのない事実(1) 特許庁における手続の経緯原告は,考案の名称を「側溝構造」とする登録第3031035号の登録実用新案(平成8年5月9日出願,平成8年8月28日設定登録,以下「本件登録実用新案」といい,その考案を「本件考案」という。)の実用新案権者である。なお,本件登録実用新案の実用新案登録請求の範囲の請求項は,登録当時請求項1と同2の2項であったのが,請求項2は,平成9年11月25日に訂正により削除された。 被告は,平成10年8月20日,本件実用新案登録 案の実用新案登録請求の範囲の請求項は,登録当時請求項1と同2の2項であったのが,請求項2は,平成9年11月25日に訂正により削除された。 被告は,平成10年8月20日,本件実用新案登録を無効にすることについて審判を請求し,特許庁は,これを平成10年審判第40015号事件として審理し,その結果,平成13年8月15日,「登録第3031035号の実用新案登録を無効とする。」との審決をし,同月28日に,その謄本を原告に送達した。 (2) 審決の理由審決の理由は,要するに,本件考案は,公知の考案(審判甲第1ないし第12号証,検甲第1号証により認められる考案)及び引用例(実願昭58-169075号)記載の考案に基づいて,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから,実用新案法3条2項に違反して登録されたものとして,無効とされるべきものである,というものである。 (3) 原告は,本訴係属中,平成14年5月9日付けで,本件実用新案登録の請求項1を削除する訂正をした(以下「本件訂正」という。)。 この結果,本件実用新案登録は,初めから,存在しなかったものとみなされることとなった。 4 当事者の本案前の主張(1) 被告の主張本件訂正により,本件実用新案登録は,初めから存在しなかったものとみなされることになった。そうである以上,原告にはもはや訴えの利益がないというべきである。本件訴えは却下されるべきである。 原告は,審判費用の負担を免れる点を挙げて,本訴には行政事件訴訟法9条にいう「法律上の利益」がある,と主張する。しかし,同条にいう「法律上の利益」とは,審決が取り消された場合に現実に回復が得られる法律上の利益をいうものである。原告は,本訴において,無効審決の取消しを求めて 「法律上の利益」がある,と主張する。しかし,同条にいう「法律上の利益」とは,審決が取り消された場合に現実に回復が得られる法律上の利益をいうものである。原告は,本訴において,無効審決の取消しを求めて訴えを提起した。これは,無効審決が確定した場合には本件実用新案権が遡及して消滅するのに対し,同審決が取り消された場合には,それが避けられるという利益を実現するためにほかならない。本件訂正により,本件実用新案登録は,初めから存在しないことになるため,もはや,原告には,審決の取消しにより実現されるべき利益は何ら残っていない。 原告が主張する審判費用の負担は,上記の「法律上の利益」に該当せず,訴訟を追行して,裁判で保護するに値する付随的利益ともいえない。 (2) 原告の主張審決が確定すると,審判費用が被請求人(原告)の負担となることも確定する。このような負担を免れることは,審決の取消しを求める法律上の利益(行政事件訴訟法9条)に該当するというべきである。原告が本件訴訟において審決の取消しを求める法律上の利益を有することは,明らかである。 5 当裁判所の判断上記当事者間に争いのない事実の下では,本件訂正によって請求項の全部が削除されたことにより,本件実用新案登録は,初めから存在しなかったものとみなされるのであるから(実用新案法14条の2第3項),原告は,本件実用新案登録を無効とした審決を取り消すことによって,再度,審判手続における判断を求める法律上の利益を失ったことは,明らかである。 原告は,審決で命ぜられた審判費用の負担を免れることについて,審決の取消しを求める法律上の利益を有する,と主張する。 しかしながら,実用新案登録についての無効審判手続は,実用新案登録が有効に存在すること,あるいは有効に存在 の負担を免れることについて,審決の取消しを求める法律上の利益を有する,と主張する。 しかしながら,実用新案登録についての無効審判手続は,実用新案登録が有効に存在すること,あるいは有効に存在したことを前提として,形式上,実体上の判断をなす手続であって,審判費用の負担の審判は,その付随的,手続的な審判にすぎない。本件訂正により本件実用新案登録が初めから存在しなかったものとみなされるに至った現在,もはや,何人にも,同登録につき,判断を求める利益はない。 このようなとき,審決が命じた審判費用の負担を免れるためだけに,本件実用新案登録を無効とした審決の取消しを求めることに,法律上の利益を認めることはできないというべきである(民事訴訟法282条参照)。 原告の主張は,採用することができない 6 結論以上のとおりであるから,本件訴えは,訴えの利益を欠く不適法なものである。よって,本件訴えを却下することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第6民事部 裁判長裁判官山下和明 裁判官設樂隆一 裁判官阿部正幸 裁判官 阿部正幸
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