【DRY-RUN】○ 主文 原判決を取消す。 被控訴人の請求を棄却する。 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。 ○ 事実 控訴人は、主文と同旨の判決を求め、被控訴人は、「本件控訴を棄却する。控訴費 用は控訴人
○ 主文 原判決を取消す。 被控訴人の請求を棄却する。 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。 ○ 事実 控訴人は、主文と同旨の判決を求め、被控訴人は、「本件控訴を棄却する。控訴費 用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。 当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり付加するほかは、原判決事実摘示の とおりであるから、これを引用する。 (控訴人の主張) 本件擁壁については、除却以外に、既設石積の前面に補強のための鉄筋コンクリー ト壁を構築し、且つ擁壁の裏込め土を入れ換えることによつて安全性を確保する方 法が存在するとしても、右鉄筋コンクリート壁は本件擁壁の直下に居住するAら所 有の土地に構築することになるが、被控訴人と同人らは被控訴人の本件擁壁の構築 に端を発して長期間紛争状態にあつて、右構築は事実上不可能であるばかりでな く、費用の点からみても、除却に比し安価に上るとは考え難い。 したがつて、控訴人が建築基準法九条一項所定の諸措置のうち、除却を選択したこ とに裁量権の逸脱はない。 (新たな証拠)(省略) ○ 理由 一 請求原因1の事実は、当事者間に争いがない。 二 本件擁壁の確認申請に至る経緯及び被控訴人の建築基準法六条一項違反に対す る本件措置命令の適法性についての当裁判所の認定判断は、原判1決理由二1ない し3(原判決九枚目表一〇行目から一一枚目裏八行目まで。ただし、同九枚目裏九 行目の「原告本人尋問」を「原審及び当審における被控訴人本人尋問」と改め る。」)に説示のとおりであるから、これを引用する。 三 原審証人Bの証言により成立を認める甲第一号証の一、二、同権堂光俊の証言 により成立を認める甲第四号証、成立に争いのない甲第一四号証、乙第一〇号証及 び乙第一三号証、弁論の全趣旨により成立を認める乙第一四号証、右各証言、当審 証人Cの証言、原審における検証( 権堂光俊の証言 により成立を認める甲第四号証、成立に争いのない甲第一四号証、乙第一〇号証及 び乙第一三号証、弁論の全趣旨により成立を認める乙第一四号証、右各証言、当審 証人Cの証言、原審における検証(及び鑑定人Dの鑑定の結果)並びに当審におけ る鑑定人Cの鑑定の結果を総合すれば、次の事実を認めることができ、この認定に 反する甲第三号証の記載は当審証人Eの証言に照らして採用し難く、他にこの認定 を左右するに足りる証拠はない。 1 本件土地は、昭和四五年六月頃旧宅地造成事業法に基づいて、北側を切土、南 側を盛土し、南側の境界は盛土の土留として地上高さ二・五メートルの石積(既積 石積)が造成されていたところ、その後昭和五〇年六月頃、宅地の有効利用を目的 として、右既設石積の上に高さ三・四メートル、長さ約三八メートルの鉄筋コンク リート製の本件擁壁が継ぎ足された構造で築造された。 2 右のような本件擁壁の構造に照らし、同法二〇条に定める構造耐力については 既設石積及び本件擁壁を一体の擁壁として判断しなければならないところ、既設石 積は、宅地造成等規制法施行令に規定する宅地造成に関する工事の技術的基準に基 づいて高さ二・五メートルの石積擁壁として施工されたものに過ぎないから、既設 石積を合計高さ五・九メートル以上の擁壁としての構造耐力を備えるように補強の 上、本件擁壁を築造する必要があつた。 3 ところが、本件擁壁築造工事に当つた施工業者であるBは、本件擁壁について 専門的な知識経験を有せず、強度計算もしないで、設計施工したものであり、既設 石積を補強することなしにその上に本件擁壁を継ぎ足して築造した。 4 既設石積を含めた本件擁壁は、地盤の支持力、転倒、滑動の点につき、常時に おいては安全であるが、気象庁震動階級V(強震に相当する)地震の場合に必要な 安全率を満していない。 5 北 足して築造した。 4 既設石積を含めた本件擁壁は、地盤の支持力、転倒、滑動の点につき、常時に おいては安全であるが、気象庁震動階級V(強震に相当する)地震の場合に必要な 安全率を満していない。 5 北九州市地区では過去五〇年間右の程度の地震の記録はないが、しかし今後も 発生しないとの保障はない。 以上のとおりであつて、本件擁壁は建築基準法二〇条一項所定のもののうち地震の 震動及び衝撃の点につき安全性に欠けるものであるといわなければならない。 而して本件擁壁の直下には住宅が存在し、擁壁が倒壊するような事態になれば、人 命にも被害が及ぶおそれがあるのであるから、その除却を命ずる旨の本件措置命令 に違法の点は存在しない。 四 1 建築基準法の立法目的からみて、同法による私権の制限は必要且つ合理的 な範囲のものでなければならないところ、同法九条一項は違反建築物に対する是正 措置として、除却の外、改築、修繕、模様替え等の措置を定めているのであるか ら、行政庁は、違反建築物に対しては、当該違反の態様に応じ、これを是正するた めに必要な範囲内のものであつて、命令の相手方にとつて損害の最も少ない措置を 選択すべきであることは論を俟たないところである。 しかしながら、安全性に欠ける建築物に対して、その安全性確保のためどのような 措置を構すべきかは行政庁の高度の専門的知識に基く判断にかかるものであるか ら、原則として行政庁の判断が尊重されるべきものであつて、命令の相手方に与え る損害のより少ない措置が比較的容易に判明するのに、安易に大きな損害を与える ような措置を選択したような場合は格別、そうでない限り、裁量権の逸脱と断ずる ことはできないものというべきである。 2 これを本件についてみるに、原審鑑定人Dの鑑定意見からも明らかなように、 本件擁壁は何ら構造計算もなされないまますでに完成してしま い限り、裁量権の逸脱と断ずる ことはできないものというべきである。 2 これを本件についてみるに、原審鑑定人Dの鑑定意見からも明らかなように、 本件擁壁は何ら構造計算もなされないまますでに完成してしまつている高さ五・九 メートルに及ぶもので、事後の調査では、応力の分布、力の伝達が明快ではなく、 これを解折して安全性を解明するのは専門家にとつても容易ではないというもので あつて、成立に争いのない乙第七ないし一〇号証によれば、控訴人の係員が二回現 地に赴く等調査の結果、前認定のように本件擁壁工事が既設石積を補強することな しに構築された事情等から、その安全性に強い疑問を抱き、その後被控訴人から提 出された擁壁の安全性に関する検討書(甲第三号証)や地質調査報告書(甲第四号 証)を検討しても右疑問が解消しなかつたので、本件擁壁の直下に人家があつて、 万一の場合には被害が人命にも及ぶおそれのあることを考慮して除却措置に踏み切 つたこと、前記地質調査報告書には本件擁壁の補強方法としてアースアンカー方式 が提案されているが、それは厳密な力学的計算に基くものではなく、単なる試案で あつて、右方式によつて果して安全性が確保されるか否かについての手懸りを与え るものとは到底認めることはできない。 3 また当番鑑定人Cの鑑定の結果によれば、既設擁壁の前面に鉄筋コンクリート の壁を構築し、且つ裏込め土を入れ換える補強方策の存在することが認められる が、これも比較的容易に判明する方策とは考えられない上、弁論の全趣旨から成立 の認められる乙第一四号証や前記認定事実に徴し、被控訴人と紛争状態にあるFら がその所有地に鉄筋コンクリート壁を構築することを認容するかどうか、また費用 の点からも被控訴人にとつて除却の方法より著しく有利かどうか疑問が残る方策と いわねばならない。 4 叙上のとおりであつて、本件除 の所有地に鉄筋コンクリート壁を構築することを認容するかどうか、また費用 の点からも被控訴人にとつて除却の方法より著しく有利かどうか疑問が残る方策と いわねばならない。 4 叙上のとおりであつて、本件除却命令当時の状況からみて、控訴人にとつて除 却以外の措置が比較的容易に選択できたものとは到底認め難く、したがつて控訴人 が除却を命じたことをもつてその裁量権の範囲を逸脱したものとみることはできな い。 五 以上のとおりであつて、本件除却命令は建築基準法六条一項違反を理由とする 点はともかく、二〇条一項違反を理由とする点については違法の廉は存在しないも のというべきであるから、被控訴人の本訴請求は排斥を免れないので、これと結論 を異にする原判決は取消すべく、行訴法七条、民訴法九六条、八九条を適用して主 文のとおり判決する。 (裁判官 諸江田鶴雄 日高千之 三宮康信)
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