【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。 本件を福岡地方裁判所に差し戻す。 理 由 上告代理人清水正雄の上告理由について。 第三者が金銭債権
主文 原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。 本件を福岡地方裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人清水正雄の上告理由について。 第三者が金銭債権に基づき質権付電話加入権に対し強制執行をしてその換価手続を完了した場合には、右電話加入権を目的とする質権は、民訴法六四九条二項の規定の類推適用により当然消滅する(いわゆる消除主義)とともに、右の質権者は、その売得金から、法律の定めるところにより、当然優先弁済を受けることができるものと解するのが相当である。以下、これについて説明する。 第三者が質権の設定された電話加入権に対し金銭債権に基づき強制執行をした場合において、その質権がどうなるかについては、民訴法、電話加入権質に関する臨時特例法(昭和三三年法律第一三八号、以下単に特例法という。)その他法令上なんらの明文の規定がない。 一般に、質権は、その目的物を債務者から取り上げて債務者の利用を禁ずるものとされ(民法三四二条参照)、このことは動産質・不動産質にかぎらずして、権利質についても、原則として、あてはまるとされる(民法三六三条以下参照)。とくに、不動産質においては、質権者は、目的不動産を使用収益し、これにより、被担保債務の弁済に当てることができるのである(民法三五六条、三五八条参照)。これに反し、抵当権は、目的物を債務者のもとにそのままにしておき、引き続きこれを利用させ、ただ単に、売得金より他の債権者に先だつて、抵当権の被担保債権の弁済を受けることができるにすぎない(民法三六九条参照)。 ところで、電話加入権を目的とする質権は、質権設定についての当事者間の合意で成立し、電話取扱局に備える原簿にその旨の登録をしただけで、D公社(以下、- 1 -単に公社という)その他の第三者に対し、これを対抗 電話加入権を目的とする質権は、質権設定についての当事者間の合意で成立し、電話取扱局に備える原簿にその旨の登録をしただけで、D公社(以下、- 1 -単に公社という)その他の第三者に対し、これを対抗することができるものとされていて(特例法五条参照)、右電話加入権の内容たる公社に対する電話の利用関係については、変更はなく、質権設定者たる電話加入権者は、電話の利用に必要な電話設備については、従前と同じ状態でそのまま利用することができ、質権者は、右電話加入権の利用関係について関与する権利をなんら有しないのであつて、その意味では、通常いわれる質権の留置的効力は、電話加入権を目的とする質権についてはないといつてよい。質権者が電話加入権を自的とする質権を実行する場合においては、裁判所は、質権者の申立により、その電話加入権に対する差押命令において、公社に対し、一月以内の期間をかぎつて、右加入電話による通話の停止を命ずることができるにすぎないのである(特例法一〇条参照)。 以上のように、電話加入権を目的とする質権は、それ自体としては電話加入権の内容たる電話の利用関係についてなんら変更を与えないものであり、目的物件たる電話加入権を債務者たる質権設定者にそのまま利用させているものというべきでつて、前述したところからみれば、その本質は、むしろ、抵当権に類するものと解するのが相当といわなければならない。 電話加入権を目的とする質権の本質を右のように解すべき以上、第三者が金銭債権に基づき右電話加入権に対し強制執行をしたときには、その電話加入権を目的とする質権については、民訴法六四九条二項の規定が類推適用され、電話加入権の換価手続の終了によつて前記質権は消滅するとともに、質権者の配当要求の有無に拘ることなく、法律の定めるところにより、当然、その売得金より被担保債 、民訴法六四九条二項の規定が類推適用され、電話加入権の換価手続の終了によつて前記質権は消滅するとともに、質権者の配当要求の有無に拘ることなく、法律の定めるところにより、当然、その売得金より被担保債権の優先弁済を受けるものと解するのが相当である。 以上、説述したところに従つて、本件を検討するに、原判決(第一審判決引用)の確定した事実関係のもとでは、上告人主張の所論質権の被担保債権は、所論の国税債権より優先弁済を受くべきことは明らかである。されば、これと異なる見地に- 2 -立つて判断した原判決および第一審判決は失当といわねばならない。 そして、本件記録に徴しても、基本となるべき配当表の関係は明確でなく、配当裁判所に対し配当表の変更を命ずべきかまたは新たな配当表の調製および他の配当手続を命ずべきかは、ただちに判断しがたいものがあるから、これらの点について、さらに、第一審裁判所をして審理せしめるのを相当と認め、原判決を破棄し、第一審判決を取り消して、本件を第一審裁判所に差し戻すこととする。 よつて、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八六条、三八九条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所大法廷裁判長裁判官横田喜三郎裁判官入江俊郎裁判官奥野健一裁判官石坂修一裁判官山田作之助裁判官五鬼上堅磐裁判官横田正俊裁判官草鹿浅之介 裁判官五鬼上堅磐裁判官横田正俊裁判官草鹿浅之介裁判官長部謹吾裁判官城戸芳彦裁判官石田和外裁判官柏原語六裁判官田中二郎裁判官松田二郎裁判官岩田誠- 3 -
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