平成13(行ウ)9 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年7月16日 熊本地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文27,344 文字)

主文 1 被告は,八代市に対して,金3億1209万5000円及び内金3億0397万8000円に対する平成12年8月28日から,内金52万1000円に対する同年10月11日から,内金643万7000円に対する同年11月22日から,内金60万7000円に対する平成13年4月17日から,内金55万2000円に対する同年7月27日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らのその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,八代市に対して,金3億1209万5000円及びこれに対する平成12年8月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 仮執行宣言第2 事案の概要本件は,八代市(以下「市」という。)が経営すると畜場である八代市食肉センター(以下「食肉センター」という。)を廃止するにあたって,市長であった被告が食肉センター利用業者(以下「利用業者」という。)及び食肉センターで働くと殺業務従事者及び内蔵洗い従事者(以下「と殺業務従事者ら」という。)に対して支援金(以下「本件支援金」という。)を支払ったことは,違法な公金の支出であるから,市は本件支援金と同額の損害を被ったとして,市の住民である原告らが,平成14年法律第4号による改正前の地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市に代位して被告に損害賠償を請求した住民訴訟の事案である。 1 争いのない事実等(証拠の引用のない事実は争いのない事実である。)(1) 当事者原告らは市の住民であり,被告は平成14年3月1日まで市長の職にあった者である。 (2) 食肉センターの廃止ア食肉センターは,牛,豚等の食肉用家畜をと殺し,内臓を洗い,解体するいわゆると畜場である。 イ食肉センターは,大正3年3月15日 1日まで市長の職にあった者である。 (2) 食肉センターの廃止ア食肉センターは,牛,豚等の食肉用家畜をと殺し,内臓を洗い,解体するいわゆると畜場である。 イ食肉センターは,大正3年3月15日,宮地村が個人経営の施設を買収したことに始まり,昭和30年4月1日,宮地村が市に編入されたため,市営になった。 ウしかしながら,食肉センターは,昭和57年10月1日から市の特別会計に移行したものの,食肉センター特別会計は毎年赤字であり,一般会計から当該特別会計へ繰り入れが行われてきた。市によれば,平成2年度から平成11年度までの間の使用料収入の合計額が1億3740万5230円であるのに対し,一般会計からの繰入金の合計額は4億7411万円であった。 エ平成6年6月23日,と畜場の施設及び設備に関するガイドライン(平成6年6月23日付け厚生省生活衛生局第97号)が発出された(乙1)。 平成8年,腸管出血性大腸菌O-157による食中毒が社会問題となったため,同年にと畜場法施行規則が改正され,平成9年にはと畜場法施行令が改正され,同施行令中「一般と畜場の構造設備の基準」及び「検査の方法」の改正内容については,牛又は馬につき,平成12年4月1日から適用されることとなった(乙2,3)。 オ平成10年11月27日,市は熊本県経済農業協同組合連合会に食肉センターの現状分析及び前記エの法令改正に伴う今後の食肉センターの在り方についての検討を委託した(乙4)。 平成11年2月8日,同連合会から「八代市食肉センター経営問題検討委託事業報告書」が提出された(乙5)。同報告書によれば,現有施設の改修では前記エのガイドラインに適合することは不可能であるから,新築が必要であり,その場合の概算建築費は11億4670万円で,年間維持管理費は人件費等を除いて3300万円で 告書によれば,現有施設の改修では前記エのガイドラインに適合することは不可能であるから,新築が必要であり,その場合の概算建築費は11億4670万円で,年間維持管理費は人件費等を除いて3300万円であった。その後,1日50頭処理を前提とした新築案を1日40頭処理に減らして,同連合会に概算建設費の見積もりを依頼したところ,8億3080万円であった(乙7)。さらに,市農政課(以下単に「農政課」という。)において,上記概算建設費を前提に新築するとした場合の1頭当たりの使用料の試算を行ったところ,1日40頭の処理の場合で1頭当たり1万7704円の使用料が必要という試算結果だった(乙8)。 カ農政課は,同年5月28日,上記試算に基づき,利用業者との協議を始めたが,もっと低価格で利用できないかという要望が出された(乙9)。 農政課は,同年7月21日,利用業者らに対して,新築した場合には管理運営は民間に委託するとの方針を伝えた。これに対し,利用業者からは,使用料については1頭当たり1万円が限度であるとの意見が出された(乙10)。 農政課は,同年9月27日,利用業者に対して,新築の場合約8億円の建設費が必要と考えているが,利用業者において,使用料と利用頭数(1日40頭)をクリアしなければ建設はできないと伝えた。これに対して,利用業者からは,民間では施設の維持管理を負担しきれないので維持管理は市がすべきとの意見が出された。 (乙12)。 農政課は,同年10月8日,被告と助役に対し,上記同年9月27日の利用業者との協議内容を報告した(乙13)。 被告は,同月21日,利用業者と市長応接室において面談した。その席上,利用業者が施設を新築して存続してもらいたい旨の要望したのに対し,被告は新築での存続は困難であると答えた(乙14)。 キ結局,食肉センターは新築 日,利用業者と市長応接室において面談した。その席上,利用業者が施設を新築して存続してもらいたい旨の要望したのに対し,被告は新築での存続は困難であると答えた(乙14)。 キ結局,食肉センターは新築されず,平成12年3月31日,廃止された。 (3) 本件支援金の支払被告は,同年7月31日,本件支援金の支払について決済し(乙65),別表のとおり,市は,利用業者及びと殺業務従事者らとの間で契約を締結し,それぞれに支援金を支払った。なお,本件支援金は,予算上,節は「補償,補填及び賠償金」として支出された(乙66ないし71,85)。 (4) 食肉センターの利用形態等ア食肉センターを利用できる業者に制限はない。 イ利用業者は,食肉センターに食肉用家畜を持ち込んでと殺,解体し,内臓を洗うのであるが,食肉センターを利用するに当たっては利用する度ごとに使用料を市に支払う。と殺,内臓洗いは,利用業者自らが行う場合と,と殺業務従事者らに委託する場合があり,後者の場合にはと殺業務従事者らに委託料を支払うこととなる。 以上のとおり,利用業者と市との間には委託契約等の継続的契約関係はなく,また,と殺業務従事者らと市との間にも,雇用契約等の継続的契約関係はない。 (5) と畜業務の特殊性牛馬のと殺や解体等は必ずと畜場で行わねばならず,業者は勝手に自己の作業場等でこれを行うことはできない。すなわち,と畜場法は,何人もと畜場以外の場所において食肉に供する目的で獣畜をと殺してはならない(同法9条),と畜場は都道府県知事の許可を受けなければ設置できない(同法3条)と規定しており,したがって食肉に供される獣畜は全て許可を受けたと畜場に生体を搬入しなければならないことになる。また,検査を受けなければと殺及び解体はできないし(同法10条1,2項),解体された獣畜の肉,内 おり,したがって食肉に供される獣畜は全て許可を受けたと畜場に生体を搬入しなければならないことになる。また,検査を受けなければと殺及び解体はできないし(同法10条1,2項),解体された獣畜の肉,内臓,血液,骨及び皮は,検査を受けなければと畜場外に持ち出すことはできないとされている(同条3項)。 2 争点本件の争点は,①本件支援金を補償金として支払うことの法的根拠があったか(争点1),②本件支援金を補償金として支払う人的範囲が適切であったか(争点2),③本件支援金を補償金として支出する際の算出方法が適切であったか(争点3),④本件支援金が補償金として支払うことの法的根拠がなかったとしても,補助金(地方自治地方232条の2)としての要件を充足するので,違法な支出ではないといえるか(争点4),⑤本件支援金の支出により,市に損害が発生したか(争点5),⑥被告に故意,過失があったか(争点6)であり,これに関する当事者の主張は,次のとおりである。 第3 争点に関する当事者の主張 1 本件支援金を補償金として支払うことの法的根拠があったかについて(争点1)(原告らの主張)(1) 利用業者及びと殺業務従事者らの権利と損失について利用業者は,利用に応じて食肉センターに使用料を払っていたにすぎず,利用業者が食肉センターを将来にわたって利用できる権利を有しているものではないから,本件は行政措置に伴い財産や権利を失う場合と異なる。また,と殺業務従事者らは,利用業者から委託料の支払を受けていたにすぎず,市はと殺業務従事者らに対し,雇用契約上の義務を負うわけではない。利用業者の食肉センターの利用形態に鑑みると,利用業者及びと殺業務従事者らは,市が食肉センターを設置していることにより,それを利用できるという反射的利益を受けているにすぎない。 そして,食肉セ い。利用業者の食肉センターの利用形態に鑑みると,利用業者及びと殺業務従事者らは,市が食肉センターを設置していることにより,それを利用できるという反射的利益を受けているにすぎない。 そして,食肉センターは,長年赤字経営を強いられてきたのであり,利用業者の営利活動を市民の血税をもって補う状態であった。本来,自己の収益と費用負担のみによって収支の均衡を図り事業活動を行うという自由競争原理のもとで営業活動するのが民間の営利事業活動の原則である。税金による物的あるいは資金的援助,補填を受けて事業を継続するのは極めて例外的場面なのであって,この場合でも民間事業者に援助を受ける権利が認められるわけではない。 結果的に,食肉センターの廃止により,利用業者の負担は増大するが,それは反射的な不利益に過ぎない。 また,食肉センターの利用許可によって付与された利用権は,使用料の支払によって得たその都度の利用の終了によって消滅し,次回以降利用できる権利というものを得ているわけではない。このように利用権消滅という状態は,施設の廃止によって生じるのではなく,その都度の利用の終了によって当然に生じるものであるから,廃止と損失の間に相当因果関係がない。 (2) 国有財産法19条,24条の類推適用について国有財産法19条,24条が予想する補償が必要とされる場面とは,許可が取り消された場合,すなわち許可された使用予定期間の終期に先立って当該国有財産を国がその本来の目的に使用するために当該利用者の使用を終了させた場合である。 これは私人間の賃貸借であれば債務不履行となるが,行政財産の場合には,これを行っても国の行為は適法行為となるとされているため,予期に反して私人が利用できなくなるという法的権利の制限について補償しようとするものであり,そもそも継続的契約関係が設定されて 産の場合には,これを行っても国の行為は適法行為となるとされているため,予期に反して私人が利用できなくなるという法的権利の制限について補償しようとするものであり,そもそも継続的契約関係が設定されている場面の議論である。 本件における食肉センターの廃止は,地方公共団体が行政財産を期間の定めなく又は期間を定めた貸付期間中に契約を解除した場合でもないから,国有財産法19条,24条の類推適用の場面ではない。 そして,利用業者が利用許可を受けるに当たり,その対価の支払をしているが,当該行政財産の使用収益により上記対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産を使用できなくなるなどの特別の事情が存する場合を除いては損失補償をすべき必要性はなく,本件でもその必要性はない。 (3) 憲法29条3項の適用について本件は,その目的に沿った使用が認められてきた食肉センターという施設の供用が廃止されたに過ぎない事案であり,地方公共団体が特定の私人に認めていた権利,利益を剥奪しあるいは義務を課すという私人の享有していた権利,自由を剥奪して特別な犠牲を与えるという場合には該当しないから,憲法29条3項が想定する私人の財産権に対する特別の損失の補償が必要となる場面ではない。そうでなければ,食肉センターの廃止により,本件支援金受領者以外の者も食肉センターを利用できなくなることに変わりはなく,補償が必要であれば,それ以外の者に対する補償も認めなければならないという非常識な結論になってしまう。これらからすれば,食肉センターの廃止は特定の私人の権利を剥奪したり,義務を課したりするものに該当しないことは明白である。 仮に,食肉センター廃止により営業コストに響いたとしても,それは業者に等しく影響するものであり,「特別の」損失であるわけでもない。 (被告及び被告参 課したりするものに該当しないことは明白である。 仮に,食肉センター廃止により営業コストに響いたとしても,それは業者に等しく影響するものであり,「特別の」損失であるわけでもない。 (被告及び被告参加人(以下,被告と被告参加人を合わせて「被告ら」という。)の主張)(1) 利用業者及びと殺業務従事者らの権利と損失について食肉センターの利用者にとっては,同じ条件であれば,次回以降も原則として当然に利用できる権利を有するということができるのであり,このことは,八代市食肉センターの設置及び管理に関する条例及び地方自治法244条2項の趣旨に照らして明らかである。 ところで,補償金とは,地方公共団体がその公権力の主体の公法上の適法行為により,特定人に財産上,精神上の損失を与えた場合によって生じた損失を償うために支払われる金銭である。そして,償われるべき損失とは原則として通常受ける損失であり,通常受ける損失とは客観的社会的にみてその者が当然に受けるであろうと考えられる経済的,財産的,精神的な損失をいうと解される。 そして,と畜業者は,必ず許可を受けたと畜場を利用しなければならないところ,熊本県内には公営の熊本市所在の熊本市食肉センター及び民営の菊池郡α所在の株式会社熊本畜産流通センターがあり,この2か所のと畜場を利用できる業者もあるが,これらの施設を新規の者が当然に利用できるかといえばそうではなく,施設の物的人的処理能力の限界その他の問題もあり,施設の利用には事実上制限がある。食肉センター廃止後も業務を継続している業者は,一部市の仲介で前記2か所のと畜場を利用できているが,中には福岡県や鹿児島県のと畜場を利用しなければならない業者もある。 本件の場合,食肉センターの廃止という行為により,それまで長い間食肉センターを利用して業務を行い,生計を立 場を利用できているが,中には福岡県や鹿児島県のと畜場を利用しなければならない業者もある。 本件の場合,食肉センターの廃止という行為により,それまで長い間食肉センターを利用して業務を行い,生計を立ててきた利用業者は,廃業に追い込まれるか,生計を立てていくため事業を継続しようとすれば,前記第2の1(5)のとおりと畜場においてしかと畜業務を行えないために,遠方まで出かけて業務を行わなければならないことになり,当然それに伴い,従前の運搬車等では用をなさず,遠距離輸送になることにより,冷蔵車(冷凍車),家畜運搬車,大型保冷車,高速料金,燃料費等が新たに必要になったのである。これは,客観的社会的にみて当然に受けるであろうと考えられる経済的,財産的損失というべきで,通常受ける損失と解するべきである。また,食肉センター内で作業してきたと殺業務従事者らも,食肉センターの廃止により失業を余儀なくされ,収入の道を絶たれる新しい職が見つかるまでの相当期間の得べかりし収入は,客観的社会的にみて当然に受けるであろうと考えられる経済的,財産的損失として通常受ける損失である。 (2) 国有財産法19条,24条の類推適用について食肉センターの利用権は,同じ条件であれば,次回以降も原則として当然に利用できる権利ということができるのであるから,食肉センターの廃止によって,行政財産を本来の目的に沿って使用する場合の許可,すなわち行政財産の目的内使用許可が取り消されたとみるべきである。ところで,行政財産の目的外使用許可については,これが取り消された場合,使用権そのものに対する損失補償については,特別な事情のない限り必要ないとされるが,使用権そのもの以外の損失,例えば,建物・工作物の移転費,営業損失,整地費等の損失があったときは,これらについてその補償を求めることができると 償については,特別な事情のない限り必要ないとされるが,使用権そのもの以外の損失,例えば,建物・工作物の移転費,営業損失,整地費等の損失があったときは,これらについてその補償を求めることができるとされている(国有財産法19条,24条類推適用)。 このように,行政財産に由来する内在的制約を伴っている目的外使用許可の取消しの場合でさえ,損失補償を要するとされているのであるから,本件のように食肉センターという行政財産をその設置目的のために使用許可(目的内使用許可)しているものを取り消す場合にも,行政財産の目的外使用許可が取り消された場合に認められる損失補償と同様の補償が認められるべきであり,むしろ当然に補償を要するというべきである。 (3) 憲法29条3項の適用について食肉センターの利用者に制限はないが,利用者は事実上と畜業者に限られ,主に市内のと畜業者が利用していたのであるから,これらのと畜業者は「特定の私人」に該当する。また,食肉センターが廃止されれば,前記(1)の損失を受けるから,これは「特別の犠牲」にあたる。 2 本件支援金を補償金として支払う人的範囲が適切であったかについて(争点2)(原告らの主張)食肉センターの利用に際しては,利用業者の所在が市内か市外かで利用条件に差異はなかった。本件支援金が損失補償であるならば,食肉センターの利用業者が市内在住であっても市外在住であっても食肉センターの廃止によって等しく損失を被る以上,等しくその損失を補償しなければならないのであって,損失補償の対象を市内在住に限ることは憲法14条の平等原則に照らし許されない。しかるに,本件支援金の支給対象は平成12年1月1日時点で市内在住の利用業者に限定されているが,合理的根拠に基づくものではなく,補償基準それ自体が違憲違法である。 (被告らの主張) らし許されない。しかるに,本件支援金の支給対象は平成12年1月1日時点で市内在住の利用業者に限定されているが,合理的根拠に基づくものではなく,補償基準それ自体が違憲違法である。 (被告らの主張)被告が本件支援金を受領した利用業者以外の利用業者に対し補償しなかったのは,それまでの利用実績等を総合的に勘案した上で政策的に判断した結果である。 3 本件支援金を補償金として支出する際の算出方法が適切であったかについて(争点3)(原告らの主張)被告らは,本件支援金支出につき,公法上の適法行為により財産上の損失を与えたことによる損失補償と主張しているが,利用業者がいかなる財産権を侵害されたのか,その損失額はいくらなのかがまず明らかにされるべきである。 本件支援金を算定するにあたっては,通常一般的に自治体が使用する合理的であると社会的に評価されている基準を使用することはなく,公営のと畜場を廃止した他の自治体の補償金算出基準が実質的に適正なものかの吟味も欠いたまま,本件支援金受領者への総額を平成9年度から平成11年度の市の一般会計から食肉センター特別会計への繰入金平均額から公債費充当額を控除した額である約3063万円の10年分に相当する約3億1000万円を本件支援金総額として割り振るなど,損失補償の算定基準としては根拠薄弱な算定を行っている。 (被告らの主張)(1) 本件支援金の算出基準は,農政課と市財政課(以下単に「財政課」という。)が協議し,別府市の事例や豊川市の民事調停の事例を参考にした上で,更により厳格かつ合理的な基準で算出し,被告の了承を得て決定された。と殺業務従事者らについては,それまで得ていた収入を基に雇用保険制度を参考にして算出した。 利用業者についての算出方法は,次のとおりである。 ア基礎資料で過去3年間の使用実績を出し, 決定された。と殺業務従事者らについては,それまで得ていた収入を基に雇用保険制度を参考にして算出した。 利用業者についての算出方法は,次のとおりである。 ア基礎資料で過去3年間の使用実績を出し,1年当たりの使用頭数を算出した。 イ年間使用頭数を基準に,利用業者の現有施設に係る下記の点を加味し加算した。 ① 冷凍庫の広さによる計算② 家畜運搬車の積載量による計算③ 枝肉冷凍庫の積算量による計算ウ使用頭数割による計算について使用頭数割は,利用業者の現有施設以外にも様々な細かい投資(高速料金,燃料費,と畜場使用料等)が必要になると考えられ,それらの経費がある程度経営規模に比例すると考えられることから,個別に積算できない部分を使用頭数割として配分した。一方,経費は規模の拡大に伴って効率が良くなるものであり,それを反映させる必要もあると考えたことから,1ないし100頭までを1頭とし,101頭ないし1000頭を0.5頭,1001頭以上を0.25頭とする傾斜配分を行って,使用頭数割の金額を決めた。 エ均等割による計算について年間使用頭数が2ないし13頭の現在設備投資をしていない利用業者については,上記イによる積算はできないが,今後と畜業務(運搬,と殺,解体業務等)を他の業者に依頼せざるを得ないことになり,経費が増大することは明かであるため,少数使用者の救済措置として一律50万円の均等割を採用した。 (2) 市は,平成12年1月18日から同月24日にかけて施設廃止後の利用業者の動向調査を行ったが,その調査の中で,経営を継続していくためにはどのような設備投資が必要かとの点について聴き取り調査を実施した。そして,この調査結果を考慮の上,各業者ごとに上記(1)イの見積積算を行ったところ,合計が2億7210万円となった。 ところで,利用業者は な設備投資が必要かとの点について聴き取り調査を実施した。そして,この調査結果を考慮の上,各業者ごとに上記(1)イの見積積算を行ったところ,合計が2億7210万円となった。 ところで,利用業者は,食肉センター廃止後も経営を続け,食肉を供給したい意向であり,そうすると遠距離(熊本市,α等)にある食肉センターを利用せざるを得ないが,このことにより経費(高速道路料金,トラック燃料費,と畜場使用料等)が増大する。そこで,この経費について試算したところ,年間4904万7000円であった。ただし,この経費の中には遠距離運送に伴う作業時間の延長分の人件費の増加等は含まれていないので,現実にはこの金額よりも更に高いものと推測された。 上記施設整備費2億7210万円と運営経費4904万7000円を合計すると3億2114万7000円となった。このように上記金額が上限の目安としていた3億1000万円を上回ったことから補償金総額は3億1000万円とした。 しかし,熊本市食肉センター及び熊本県畜産流通センターからは,と畜の受入の回答はあったものの,施設の能力,作業員の配置等の問題解決が残っており,利用業者の希望どおりの頭数受入が可能かどうかは未定であり,運営経費については流動的であったことから(試算の額は上がることはあっても,下がることはなかった。),試算した運営経費については,そのまま採用することなく,3億1000万円と施設整備費の差額については上記(1)ウ,エによる計算で調整した。 4 本件支援金が補償金として支払うことの法的根拠がなかったとしても,補助金(地方自治地方232条の2)としての要件を充足するので,違法な支出ではないといえるかについて(争点4)(被告らの主張)(1) 公益上の必要性についてア食肉センターは,八代市食肉センターの設置及び管 自治地方232条の2)としての要件を充足するので,違法な支出ではないといえるかについて(争点4)(被告らの主張)(1) 公益上の必要性についてア食肉センターは,八代市食肉センターの設置及び管理に関する条例第1条によれば,「と畜場法に基づき食用に供する獣畜の処理の適正を図り,もって公衆衛生の向上及び増進に寄与するため」に設置されたものであり,その設置目的はいうまでもなく住民の公衆衛生(福祉)の向上及び増進であり,食肉センターは本来非常に強い公益性をもつ施設であったものである。そして,利用業者は,と畜場法をはじめ条例,規制等各種の公的規制のもと,食肉の安定供給等の業務を行うことを通じて,間接的に市が食肉センターを設置した公益目的に沿う活動を行っていたのであり,この観点からすれば,利用業者にも公益性が認められるということができるし,利用業者はその業務を通じて,公益目的の実現に寄与する関係にあるといえる。 また,食肉センターで解体された食肉(牛肉)のうち約36パーセントは八代市民に長い間供給されていたものと推測されるところ,食肉センターが廃止されれば,利用業者は負担増が生じ,事業を継続するためには行政として支援策を行う必要があったものであり,もしこれを行わなければ,廃業に追い込まれる可能性が極めて高く,ひいては八代市民への食肉安定供給に支障をきたす可能性が高かった。 約36パーセントという供給率の計算式は次のとおりである。すなわち,食肉センターで解体される食肉(牛肉)の1日量は3.5トン(9217頭/年÷365日=25頭/日,140キログラム/頭×25頭=3.5トン)で,市内における1日の牛肉消費量は1.27トン(農水省統計1年間の1人あたりの牛肉消費量4347グラム×市の人口10万7000人=465トン,465トン÷365日=1. /頭×25頭=3.5トン)で,市内における1日の牛肉消費量は1.27トン(農水省統計1年間の1人あたりの牛肉消費量4347グラム×市の人口10万7000人=465トン,465トン÷365日=1.27トン/日)であり,供給率は1.27トン÷3.5トン×100=36. 2パーセントとなる。 イ原告らの主張するように,食肉センターに持ち込まれる牛の大半が老廃牛や病畜牛であったとしても,と殺,解体されるのは保健所の検査に合格したもののみであり,それらは全て食肉として流通していたものである。36パーセントという数字は,検査を受けて解体され,食肉として供給された頭数(9217頭/年)の実績をもとに計算したものであり,何ら不合理な点はない。 ウたしかに,食肉センターで解体された食肉のうち,36パーセントの食肉全てが八代市民へ供給されたと断言できない。しかしながら,他方,地元の利用業者が食肉センターにおいて食肉となったものを余分な運搬費等をかけてわざわざ他の地域へ流通させる特段の理由はない。 エ本件支援金は,補償金として支出したものであるので,支出後に正式な調査,確認までは行っていないが,農政課職員が利用業者を訪問した際,冷蔵庫,生体運搬車,冷凍車等を購入した例をいくつか確認している。 (2) 手続的要件についてア八代市費補助等取扱要綱に基づく手続について本件支援金は,実際には補助金として支出したわけではないので,市費補助金取扱要綱に基づく事務手続きである精算書の提出は必要ではないし,利用業者に対する監査もなされてはいない。 イ市議会の議決について普通地方公共団体の歳出予算は,その目的に従って款項の予算科目に分類され(地方自治法216条),長は毎会計年度予算を調整して,年度開始前に議会の議決を経なければならない(同法211条1項)。そして 普通地方公共団体の歳出予算は,その目的に従って款項の予算科目に分類され(地方自治法216条),長は毎会計年度予算を調整して,年度開始前に議会の議決を経なければならない(同法211条1項)。そして,長は予算を議会に提出するときは,各項の内容を明らかにするために,予算に関する説明書を合わせて提出するものとされているが,この説明書においては,各項はさらに目節の予算科目に分類される(同法211条2項,同法施行令144条1項1号,150条1項3号)。また,歳出予算の経費の金額については各款間において相互に流用してはならず,各項間の流用も原則として禁止されるが,目節については流用を禁ずる定めはない(同法220条2項)。すなわち,予算科目のうち議会の議決対象となるのは款項のみであって,長は予算を執行するに当たり,目節間では予算を相互に流用することが許されている。 本件については,本件支援金を補助金として支出すべきであったとしても,それは同一の目内における節間の流用であり,被告は流用しようと思えば長の予算執行権の範囲でこれを行えたのであるから,流用して補助金として支出するか,あるいは最初から補助金として議会に説明するのが事務処理上適当であったとしても,これを行わなかったことにつき財務会計上の違法はない。 そして,本件支援金は補償金としての性質も併せ有していたことを考慮すると,適法である。 (原告らの主張)(1) 公益上の必要性についてア被告らは,市民への食肉の安定供給も目的とするというが,高速度かつ高品位な輸送機関網が張り巡らされている現代における自由競争下で,この目的が達成されないことはない。このことは,と畜場を有しない自治体でこの目的が達成されず問題となっている例を聞くことがないことからも明らかである。また,本件支援金を支出しなければ, 由競争下で,この目的が達成されないことはない。このことは,と畜場を有しない自治体でこの目的が達成されず問題となっている例を聞くことがないことからも明らかである。また,本件支援金を支出しなければ,利用業者は廃業に追い込まれたとの主張も憶測の域を出ない。 また,八代市食肉センターの設置及び管理に関する条例1条によれば,食肉センターは,食用に供する獣畜の処理の適正を図り,もって公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的としているのであり,食肉の安定供給を目的としているのではない。 と殺業務従事者らは,食肉センター廃止によりその職を継続することはできなくなるのであるから,本件支援金を支払っても市民への食肉の安定供給に何ら意味を持たない。 イしかも,食肉センターでと殺,解体される牛は,老廃牛や病畜牛が大半であり,特売用の安い肉や加工用肉等の原料として使用されていた。したがって,被告らが主張している食肉センターで解体された食肉のうち36パーセント前後が市民に供給されているとの推測は,合理性を欠く。 ウそして,利用業者は,食肉を市民へ供給することが義務づけられているわけではなく,どのように流通させるかは利用業者の全くの自由な営業活動に委ねられており,どのように流通させたかの報告義務さえ負っていないのであるから,利用業者が市民への食肉の安定供給に寄与していたわけではない。これまでに市と利用業者との間で,市民への食肉の安定的供給の確保や低廉に食肉を供給するという取決めはなされていない。 また,食肉センターの利用業者のうちその処理頭数で圧倒的多数を占める者により解体された食肉の出荷先は,壽屋や福岡の日食であり,これらの食肉は九州一円に供給されていたのであるから,市内の利用業者に本件支援金の支給したとしても,市民への食肉の安定供給という目的に効果が により解体された食肉の出荷先は,壽屋や福岡の日食であり,これらの食肉は九州一円に供給されていたのであるから,市内の利用業者に本件支援金の支給したとしても,市民への食肉の安定供給という目的に効果があるとはいえない。 実際に,食肉センターで解体された肉のうち,どのような用途に使用されているか,またそのどのくらいが市民に供給されているかの調査は行われておらず,また食肉センターの廃止で市民へどの程度の影響がでるかの検討も市によって行われてはいない。 エもし,市民への食肉の安定的供給を目的として掲げるのであれば,食肉センターの利用業者が市内在住か否かで本件支援金支給の対象とするか否かを決するのではなく,当該業者の供給先が市民であるか否かを基準としなければならない。特に食肉センター廃止後は,市外のと畜場を利用した食肉が市民に供給されることになるのであるから,安全,良質かつ低廉な食肉を市民に供給するという目的実現を図るためには,従来食肉センターを利用していたかではなく,食肉センター廃止後に市民に食肉を供給する業者を本件支援金支給の対象としなければ被告ら主張の目的を達成できない。しかるに被告は,何ら合理的根拠なく利用業者が市内在住であるか否かという基準で支払対象を画している点で目的に即した支出となっていない。 オさらに,本件支援金が補助金であれば,八代市費補助等取扱要綱により,目的外使用が禁止され,精算書を提出しなければならないのに,使途を問わず,事後の報告等も求めていない。これでは,公益上必要と自治体が判断した事項に補助金が使われないことを容認することになるし,必要とされる用途以外へ使用された場合でも補助金の返還を求めることができなくなる。実際に,利用業者が大型保冷車等を購入しているか否かについては全く監査がされておらず,実際に購入したのかは になるし,必要とされる用途以外へ使用された場合でも補助金の返還を求めることができなくなる。実際に,利用業者が大型保冷車等を購入しているか否かについては全く監査がされておらず,実際に購入したのかは極めて疑わしい。 (2) 手続的要件についてア八代市費補助等取扱要綱に基づく手続について違法,不当な補助金等の交付,使用を防止し,万が一そのような補助金の支出がなされた場合には返還を求めるため,市は市費補助等取扱要綱を規定しており,これに従った補助申請書及び付属書類(2条),市作成の指令書(3条),補助金受領者による精算書(4条)の作成が必要であるところ,これらがされていない。 イ市議会の議決について被告らは,議決科目としては補償金と補助金とは共通であり,本件支援金は補償金として議会の議決を経ているから適法であると主張する。 しかし,議決科目が共通であれば,執行科目が異なっても議会の議決は有効であるというのは何ら論理性を有しない。そもそも,補償金であれば補償の必要性・義務性(特定人に対する特別の損失を自治体が被らせることになるのか,すなわち補償する法的義務があるか否か),また補償金の算定方法が適正であるかが議会の審理の対象となる。これに対して,補助金であれば当該自治体には補償と異なり対象者に対する金銭の支出義務はないから,地方自治法232条の2の規定に照らして公益上の必要性があるか否かが問題となる。このように議会に予算案として提出される場合にも,その提案根拠は異なるし,審理の対象も異なる。 本件の平成12年度八代市一般会計補正予算では本件支援金の支出は補償金として提案されているから,補助金としての支出,公益上の必要性については全く説明も審議もされていない。つまり,被告が主張するように本件支援金が補助金であるというのであれば,被告は本 金の支出は補償金として提案されているから,補助金としての支出,公益上の必要性については全く説明も審議もされていない。つまり,被告が主張するように本件支援金が補助金であるというのであれば,被告は本件支援金を補助金として支出することの可否について議会の審理・議決を経ることなく支出していることになる。 以上のとおり,議決科目が同じであれば問題ないという被告の主張は,議会の機能を無視したものであり失当である。本件では,上記判断要素について,予算の提案時の説明においても言及されていないし,補償金として予算計上されていることもあり,上記判断要素について審議された形跡もない。 本件支援金は,補償金としての要件を満たしておらず,補償金としての性質も併せ有していたという主張自体失当である。 5 本件支援金の支出により,市に損害が発生したかについて(争点5)(原告らの主張)利用業者及びと殺業務従事者らに損失補償をする必要がなかったのであるから,本件支援金として支出した3億1209万5000円について,市に損害を与えた。 (被告らの主張)本件支援金の支出が違法であっても市に損害が生じていない。 6 被告の故意,過失について(争点6)(原告らの主張)被告は,十分な検討もしないまま,平成11年11月4日には利用業者に本件支援金を支払うことを決定していた。被告は,このような決定を行う前に,補償金として本件支援金を支出することが適法か否かを自治省に問い合わせるなど調査,検討するとともに,他の自治体の例はどうかを十分検討すべきであった。 被告は,わざわざ利用業者に補償を行った別府市に農政課の職員を派遣し調査させ,別府市の事例を参考に本件支援金の支出を行っている。別府市の調査は,補償することを前提とした正当化のための調査というほかないし,豊川市の監査請求事 に補償を行った別府市に農政課の職員を派遣し調査させ,別府市の事例を参考に本件支援金の支出を行っている。別府市の調査は,補償することを前提とした正当化のための調査というほかないし,豊川市の監査請求事例についても同様と考えるほかない。 一方,九州内で食肉センターとほぼ同時期に廃止になったと畜場は多々あるのに,それらを調査し検討した形跡は一切ない。例えば,熊本県の豊野村食肉センター,佐賀県の唐津と畜場,長崎県の郷ノ浦と畜場は同時期に廃止されているが,廃止の理由や利用業者への補償の有無につき調査した形跡はない。また,翌年の平成13年には,九州内においても,甘木市営食肉センター,佐賀県畜産試験場豚産肉能力検定と畜場,宇佐市営と畜場,枕崎市と畜場,阿久根市食肉センター,高山町食肉センター,上屋久島と畜場,株式会社真玉橋食肉センター,株式会社沖縄県食肉センター名護分工場が廃止になっており,平成12年度中も各自治体において廃止に向けた取り組みがなされていたはずであり,その取り組みを容易に調査できたはずであるが,調査がなされた形跡はない。 そして,市議会経済企業委員会での審議経過からも本件支援金の支出に問題があることは明らかであるが,被告はその不当性,不合理性を十分認識しながら支出を強行している。 以上の事実によると,被告は違法な支出負担行為及びこれに基づく本件支払命令を行うことについて故意又は過失があった。 (被告らの主張)被告は,平成11年11月4日に本件支援金を支払うことを決めていない。確かに,被告は以前より市と利用業者との協議内容については報告を受けており,A産業振興部長を含む市の執行部には,市が施設を新築し,民間に運営を委託するとの市の提案を利用業者が受け入れなければ,食肉センター閉鎖もやむを得ないとの考えがあった。そして,その場合, 受けており,A産業振興部長を含む市の執行部には,市が施設を新築し,民間に運営を委託するとの市の提案を利用業者が受け入れなければ,食肉センター閉鎖もやむを得ないとの考えがあった。そして,その場合,利用業者の経営の継続,ひいては市民への食肉の安定的な供給のためには,他の受入施設との交渉や補償等何らかの利用業者に対する支援策が必要との認識があった。 市のB農政課長は,平成12年1月ころ熊本県生活衛生課を訪れ,同課より資料(乙81)の交付を受けるとともに,同資料記載のと畜場について説明を受け,欄外に「休業中」,「平成12年4月1日廃止」などとメモした。その後,同年4月17日,農政課のC主幹は同資料をもとに同月1日付けで廃止等した公営と畜場について,廃止に対する反応,補償金,受入先についての調査を行い,メモ(乙82)を作成した。なお,調査を行ったのは宇佐市,杵築市,唐津市,本渡市,阿久根市,鹿児島県上屋久町に対してであるが,このうち前4市から回答があったが,阿久根市及び上屋久町からは回答できないとの返事があり,調査できなかった。 本件支援金の支出は担当課である農政課が中心となり検討し,同様の支出をした別府市まで出張をして調査をし,更に財政課とも協議検討し,その中で民事調停を経て同様の支出をした豊川市の事例なども十分検討した上で,本件支出は適法と判断し,これを被告に具申した結果,被告も適法と判断し,支出を決定するに至ったものであり,被告の判断過程に何ら過失はない。 第4 当裁判所の判断 1 証拠(乙15ないし18,20ないし37,40,53ないし62,81,82,85,証人A,同B,同D)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 (1) 農政課は,平成11年11月4日,利用業者と協議したところ,利用業者からは,もし食肉センター 1,82,85,証人A,同B,同D)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 (1) 農政課は,平成11年11月4日,利用業者と協議したところ,利用業者からは,もし食肉センターを廃止した場合には経営存続のための補償が絶対必要であるという意見が出された(乙15)。 (2) 上記のとおり,利用業者との協議の中で補償問題が出てきたので,同月11日,農政課は,その対応について,公営のと畜場を廃止した別府市の事例について調査を実施し,結果は次のとおりであった(乙16,証人B)。 ア別府市における年間処理頭数は牛約62頭,利用業者数32業者であり,と畜場廃止にあたって,利用業者と1年間に約15回協議を重ねた。 イ施設の老朽化に伴い,処理頭数はピーク時の2パーセント足らずに減った。大分県の指導により,老朽化がひどく非衛生的で需要に対応できなくなった県内のと畜場については統合する計画が持ち上がったことから,大分県畜産公社が設立され,昭和53年から操業していた。別府市としては,閉鎖後は大分県畜産公社に受入を依頼し,受入の条件として,同市は1億3000万円を同社に出資した。 ウと畜場廃止に伴う補償金(協力金)を支払うこととなり,算定方法は,一般会計から繰り入れしている過去5年間とこの先負担するであろう5年間の計10年間分1億4000万円を上限としたところ,交渉の結果1億3000万円で利用組合の了承を得た。また,場内作業員(と殺業務従事者)1名は別枠で600万円を支払うことで了承を得た。 (3) 農政課は,同年12月16日,産業振興部長も同席の上,利用業者と協議し,被告及び助役とも協議の上,今後施設は存続できないという結論となった旨通告し,同月20日,被告にこの協議結果を報告した(乙17,18)。 (4) 農政課は,平成12年1月18日か ,利用業者と協議し,被告及び助役とも協議の上,今後施設は存続できないという結論となった旨通告し,同月20日,被告にこの協議結果を報告した(乙17,18)。 (4) 農政課は,平成12年1月18日から同月24日まで,利用業者に対して,現在の経営状況,食肉センターが廃止された場合の経営の方向性,経営を継続するとした場合の設備投資の内容等について調査した(乙20ないし25)。 (5) 農政課は,同月25日以降,利用業者の食肉センター利用状況をまとめるとともに,前記(2)の別府市の事例を参考に,食肉センター廃止に伴い支援金を支出することとした場合の対象範囲,算定方法及び支援金総額等について,次のとおりの案をまとめた(乙26,乙85の22項)。 ア対象範囲については,平成11年4月1日から同年12月末日までの間に食肉センターを利用したことがあり,同年1月1日現在で市内在住の者で現在も畜産業又は食肉流通業を営むもの及びと殺業務従事者らとする。次に,算定方法は,利用業者については,今後の事業の継続に不可欠な冷蔵庫,冷凍庫及び家畜運搬車の整備に要する費用等について,これまでの利用実績を基に算出する。場内作業者であると殺業務従事者らについては,これまで得ていた収入を基に雇用保険制度を参考にして算出する。 イ支援金の総額については,他の施設を利用する場合の移行に伴う利用業者の負担を可能な限り軽減できるよう配慮する必要があるとの認識に立ち,考え方として,平成9年度以降の3年間において,一般会計からの繰入金年平均4987万円から,今後も市が償還を行う必要がある公債費充当分1922万9000円を差し引いた3063万8000円について,その10年分を利用業者の支援金の総額とすることを目安とする。また,と殺業務従事者らについては別枠で計算する。 (6) 農政課は, 充当分1922万9000円を差し引いた3063万8000円について,その10年分を利用業者の支援金の総額とすることを目安とする。また,と殺業務従事者らについては別枠で計算する。 (6) 農政課は,被告及び助役に,平成12年1月31日から同年2月16日までの間計3回,同課において支援金支払の要否,可否,範囲及び基準等について検討した結果を報告するとともに(乙27ないし29),同月10日,財政課との間で,支援金の支払方針,支援金の額及び支払方法について,別府市の事例などを参考に協議した(乙30,31)。 (7) 農政課は,同月16日,財政課と協議したが,財政課による他都市の調査により,愛知県豊川市(宝鈑衛生組合)の民事調停の事例及び民事調停に基づく支出について監査請求事例があることが判明した。豊川市の例は,利用業者数20団体・人,年間利用頭数(豚)3万3014頭(平成7年度),牛換算1万1005頭,補償額18億6100万円(再建築費の20億円を超えない範囲)というものであった(乙32ないし34,85,証人B)。 そこで,この豊川市の事例もあわせて慎重に検討した結果,市としても支援金を前記(5)の基準で支払うべきであるとの案が固まった(乙35,85)。 農政課は,同月17日,前記(5)の支払案について,被告及び助役に具申した結果,被告らからも了承し決定された。同時に,支援金額について被告及び助役は今後一切変更しないことを確認した(乙36,37)。 (8) 同年4月17日,熊本県健康福祉部生活衛生課から同年1月ころ入手した九州内のと畜場の資料(乙81)の中で,同年4月1日に公営と畜場が廃止されることが判明していた宇佐市,杵築市,唐津市,本渡市,阿久根市,鹿児島県上屋久町に対して調査した。このうち前4市から回答があったが,阿久根市及び上屋久町か の中で,同年4月1日に公営と畜場が廃止されることが判明していた宇佐市,杵築市,唐津市,本渡市,阿久根市,鹿児島県上屋久町に対して調査した。このうち前4市から回答があったが,阿久根市及び上屋久町からは回答できないとの返事があり,調査できなかった。なお,公営と畜場を廃止するにあたって,補償をしなかった自治体については調査の対象としていなかったし,どのような根拠で支払わなかったのか検討していなかった(乙81,82,85,証人B)。 (9) 農政課は財政課との間で,支援金を予算計上する場合の費目である「節」について協議,検討した結果,考えられる「節」としては「負担金補助及び交付金」と「補償,補填及び賠償金」であるが,以下の理由により補償金とした(乙53ないし55,85の34項)。 ア今回の支出は,相手方の責めに帰することができない事由(市側の事由)により,相手方に対し通常であれば必要なかった負担(例えば,冷蔵庫,保冷庫,運搬車等の購入)を生ぜしめることについて,その負担に対して市として支出するものであり,その本質は補償に相当するものであること。 イ補助金としての支出も論議したが,利用実績が少ない業者については,他の業者に依頼し,業を行うものと予想されるところ,食肉センターの廃止により,業を止めざるを得ないケースも考えられるため,補助事業と捉えることは困難であり,補助金としての支出はできないこと。 ウ業を継続する業者(利用実績の多い業者)は「補助金」,業を止めざるを得ない業者(利用実績の少ない業者)は「補償金」とすると,現時点で将来のことを判断し,判別することになり,その判別は困難を極めるということ。 (10) 農政課は,同年5月30日,助役との間で,支援金支出に係る予算案を補正予算として6月議会に提出するにあたり,支援金の額や予算の費目であ 判別することになり,その判別は困難を極めるということ。 (10) 農政課は,同年5月30日,助役との間で,支援金支出に係る予算案を補正予算として6月議会に提出するにあたり,支援金の額や予算の費目である「節」を「補償,補填及び賠償金」とすることで最終確認した(乙56,57)。 (11) 同年6月5日,市議会6月定例会が開会した。被告は,支援金支出に係る予算案(以下「本件予算案」という。)を補正予算として議会に上程し,あわせて提出された一般会計予算に関する説明書では,本件支援金は,「食肉センター業務休止に伴う支援」と説明されていた(乙58,59)。本件予算案は,その後市議会経済企業委員会に付託された。 (12) 同月19日,市議会経済企業委員会が開かれ,本件予算案が審査された。次のような質疑,答弁がされた(乙40)。 ア E委員が,「私は支給の方法にですね,ちょっとこだわるんですが,一括してぽんとおあげになるのか,それとも支援金という名目ですから,その支援金がきちっとした形でその何が何に対してどういう対価が払われるのかということが明確な追跡があっての支援金なのか,そこがですね,執行部の御答弁でちょっとまだ明確に聞こえてこないんですね。」「ただ一括して,ぽんとおあげになった場合,その人についての追跡が行われないというのであるとするならば,かなり今回の支援金の出し方については市民の間で論議を醸し出すかもしれませんね。」と発言し,F委員も,「税金ですから私も申し上げますけど,冷凍車を買ったか,買わなかったか,運搬車の費用,冷凍庫をつくった,つくらなかったか,そういうのはどうしますか。」と述べ,本件支援金の使途を明確にせず,その後の調査もしないで一括で支払うことは問題があるという趣旨の質問をしたが,G産業振興部次長は,一括で支払った方が適当である旨の そういうのはどうしますか。」と述べ,本件支援金の使途を明確にせず,その後の調査もしないで一括で支払うことは問題があるという趣旨の質問をしたが,G産業振興部次長は,一括で支払った方が適当である旨の答弁をした。 イその後,市長である被告の答弁を求めたいということになり,E委員が,「一つどうかなと思うのは,支払いの方法なんですね。執行部の御説明は一括ということでございましたけれども,一括に対してやっぱりいろんな異論が出てるわけでございます。」「私が聞いているのは,支援の方法をですよね,だからその対価の支払いという方法もあるわけでして,どの部分がどういうふうに要るから,ほかの遠隔地でですね,ほかの部分で業務を遂行して行くには,これが幾らかかるから,これに対して幾らということの支援策が打ち出されていいんじゃないかと思うんですけれども。」と質問したが,被告からこの質問の趣旨に対する答弁はなかった。 結局,本件予算案は3対4の賛成少数で否決された(乙40,60,61)。 (13) 同月23日,市議会本会議が開かれ,本件予算案の採決にあたり,H経済企業委員会委員長が,本件支援金の支給方法及び使途の確認方法についての質疑を含めて,同月19日に行われた上記(12)の審査の経過及び結果等について報告したところ,6議員が「利用業者への支援金は削除,場内作業者への支援金は原案のとおり支給」との予算修正に関する動議を提出したが,10対20の賛成少数で否決した。そして,本件予算案を賛成多数で可決した(乙61,62)。 (14) 市は,本件支援金を受領した利用業者が何を購入したのか正式に調査しておらず,一応運搬車等を購入したという話を聞いているにとどまる(証人A)。 (15) 本件支援金を利用業者に支出するにあたり,利用業者が解体した食肉が市民にどの程度供給されたか調査 のか正式に調査しておらず,一応運搬車等を購入したという話を聞いているにとどまる(証人A)。 (15) 本件支援金を利用業者に支出するにあたり,利用業者が解体した食肉が市民にどの程度供給されたか調査したことはない(証人A)。最も食肉センターを利用していた利用業者は,壽屋や日食などに出荷していた(証人D)。 2 争点1について食肉センターの利用形態は,前記第2の1(4)のとおり,食肉センターを利用できる業者に制限はなく,利用業者は,食肉センターを利用するについては利用する度ごとに使用料を市に支払い,と殺等をと殺業務従事者らに委託するときは,同人らに委託料を支払うというものであり,利用業者と市との間には委託契約等の継続的契約関係はなく,また,と殺業務従事者らと市との間にも,雇用契約等の継続的契約関係はない。 したがって,利用業者は,食肉センターが存続する限り,食肉センターを利用できるという期待を有しているということはいえるかもしれないが,食肉センターの利用に関して何らかの権利を有していたということはできないし,ましてや,と殺業務従事者らにこれを認めることはできない。 そして,利用業者やと殺業務従事者らに権利が認められないのであれば,それを失ったことによる損失を観念することも困難であるが,その点はしばらくおくとしても,損失補償において補償されるべき損失は,移転費用,工作物の収去費,明渡しに伴う営業上の損失等不可避的に生じる損失,すなわち通常生ずべき損失であるところ,本件においては,食肉センターの廃止により,業を継続しようとする業者は,前記第2の1(5)のと畜業務の特殊性から,他のと畜場を利用せざるを得なくなり,それに伴って負担が増加することは避けられないが,それは食肉センターの廃止によるいわば反射的な不利益というべきであって,それを上記の (5)のと畜業務の特殊性から,他のと畜場を利用せざるを得なくなり,それに伴って負担が増加することは避けられないが,それは食肉センターの廃止によるいわば反射的な不利益というべきであって,それを上記の意味での損失ということはできない。 被告らは,国有財産法19条,24条の類推適用又は憲法29条3項により損失補償すべきであると主張するが,国有財産法19条,24条を類推適用するのであれば,使用権者が貸付期間中に解除されたことが,憲法29条3項によるのであれば,財産権に対する制限がそれぞれ要件とされるところ,前記のとおり,利用業者やと殺業務従事者らに何ら権利はないのであるから,これらの要件には当たらないというというべきであるし,また,国有財産法19条,24条を類推適用するのであれば,当該財産を「公共用等に用いる必要がある」ことが,憲法29条3項によるのであれば,「公用のために用いる」ことがそれぞれ要件とされるところ,食肉センターが廃止された経緯は,前記第2の1(2)のとおりであり,「公共用等に用いる必要がある」とか「公用のために用いる」という場合に当たらないことは明らかである。 よって,本件支援金は,損失補償として支払うべき法的根拠がないから,争点2,3について判断するまでもなく,損失補償としての要件を充足しているということはできない。 3 争点4について被告らは,本件支援金が補償金として支払う法的根拠がないとしても,補助金としての要件を充足しているから,違法な支出ではないと主張する。そこで,以下,実体的要件である「公益上の必要性」(地方自治法232条の2)と手続的要件に分けて検討する。 (1) 「公益上の必要性」についてア本件支援金を支出した対象者は営利の目的で事業を営んでいる利用業者とと殺業務従事者らであるところ,被告らは,利用業 32条の2)と手続的要件に分けて検討する。 (1) 「公益上の必要性」についてア本件支援金を支出した対象者は営利の目的で事業を営んでいる利用業者とと殺業務従事者らであるところ,被告らは,利用業者がと畜場法による規制を受けていることを根拠に利用業者の業務に公益性があると主張するが,前記第2の1(5)の規定に照らせば,と畜場法は,公衆衛生の観点からの規制であって,これを根拠に利用業者の業務に公益性があるということはできない。また,と殺業務従事者らについてはその業務に公益性を認めるべき事情はない。 イ次に,被告らは,本件支援金を支出するについて,食肉センターで解体される食肉の量と市民の食肉の消費量を比較して,食肉センターで解体された食肉の約36パーセントが市民に供給されていたことも一つの要因として,市民への食肉の安定供給を目的としていたかのような主張をする。しかし,前記第2の1(2)のとおり,食肉センターを新築することができなかったために,利用業者及びと殺業務従事者らに本件支援金を支払うこととなったところ,最終的には補償金として支払うこととなったのであって,前記第4の1の本件支援金の支出に至るまでの経緯をみても,市民への食肉の安定供給を目的としていた形跡は見当たらないこと,前記第4の1(15)のとおり,食肉センターで解体された肉のうちどのくらいが市民に供給されているか調べていないし,食肉センターの廃止によって市民が食肉供給の点でどの程度影響を受けるかも検討した形跡はないこと,本件支援金の支出を受けているのは市内の利用業者に限られているが,市内の利用業者であるからといって,直ちに市民の食肉安定に寄与するというわけではないこと,前記第4の1(15)のとおり,食肉センターを最も利用していた利用業者は,むしろ市民とは直接関わりのないところへ出 利用業者であるからといって,直ちに市民の食肉安定に寄与するというわけではないこと,前記第4の1(15)のとおり,食肉センターを最も利用していた利用業者は,むしろ市民とは直接関わりのないところへ出荷していたと認められること,と畜場を廃止した自治体がいくつかあるが,食肉の安定供給に支障をきたしているとは窺えない(弁論の全趣旨)こと,以上からして,本件支援金の支出につき,市民への食肉の安定供給という目的があったとは認めることができない。 ウしたがって,本件支援金を支出するについて,「公益上の必要性」があったということはできない。 そうすると,手続的要件について検討するまでもなく,本件支援金は補助金としての要件を充足しておらず,違法であるといわざるを得ないが,一応手続的要件についても検討を加えることとする。 (2) 手続的要件について本件支援金は,予算上,補償金として議会の議決を得ているのであって,補助金として議決を得ているわけではない。 この点,被告らは,補償金と補助金は予算科目上同一目内であって,節を異にするだけであり,流用を禁止する定めはないから(地方自治法220条2項),何ら問題はないと主張する。 たしかに,目節は,予算執行のために定められる科目であり(同法施行令150条),予算議決の対象となるわけではない。しかし,予算を議会に提出する際に,あわせて提出される歳入歳出予算事項別明細書において目節の内容も記載されることが予定されているため(同法211条1項,同法施行令144条1項1号,同法施行規則15条の2及び別記「予算に関する説明書様式」),結局,予算議決においては,目節の内容も考慮されうることとなるから,無制限に流用を認めることはできないというべきである。 本件においては,前記第4の1(11)のとおり,本件予算案とあわせて 式」),結局,予算議決においては,目節の内容も考慮されうることとなるから,無制限に流用を認めることはできないというべきである。 本件においては,前記第4の1(11)のとおり,本件予算案とあわせて提出された一般会計予算に関する説明書では,本件支援金は,「食肉センター業務休止に伴う支援」と説明されていた上,本件予算案が付託された市議会経済企業委員会において,前記第4の1(12)のとおり,委員らが本件支援金の使途を定めず,使途の調査もしないのは問題であるという趣旨の発言をしたが,執行部からは,本件支援金の使途を定めず,使途の調査もしないで一括で支払うのが適当であるとの答弁がされており,さらに,市議会本会議において本件予算案を採決するに当たり,同委員会での上記のような審査の経過及び結果について報告している。一方,市費補助等取扱要綱(甲8)が定められ,補助金の交付を受けたものは,市長から指令書が交付されることとなっているが,同指令書には,補助金を目的以外に使用してはならないこと,事業の計画変更等がある場合は事前に承認を受けなければならないこと,補助金の使途が不適当と認めたときは,補助金の全部又は一部の返還を命ずることがあること,補助金の精算書を速やかに提出しなければならないことが定められている。そうすると,当初から本件支援金を予算科目上補助金としていた場合,執行部の答弁は明らかに市費補助等取扱要綱に反しているのであるから,本件予算案について議会の議決が得られたとは到底考えられない。しかも,前記第4の1(9)のとおり,本件支援金を補助金として予算計上することができなかったため,補償金としたのであるから,後になって流用が可能であるという主張を採用することはできない。 したがって,本件においては,流用を認めることができない場合であるといえ,手続 ることができなかったため,補償金としたのであるから,後になって流用が可能であるという主張を採用することはできない。 したがって,本件においては,流用を認めることができない場合であるといえ,手続的要件も充足していないというべきである。 4 争点5について本件支援金として利用業者及びと殺業務従事者らに合計3億1209万5000円支払ったことは,違法な公金の支出であるから,同額の損害を市に与えたというべきである。 5 争点6について本件支援金の支出は,違法な公金の支出であるが,その支出に至る経緯に照らして,故意によるものとはいえない。 ところで,ある事項に関する法律解釈につき異なる見解が対立し,実務上の取扱も分かれていて,そのいずれについても相当の根拠が認められる場合に,公務員がその一方の見解を正当と解しこれに立脚して公務を執行したときは,後にその執行が違法と判断されたからといって,直ちに上記公務員に過失があったものとすることは相当ではない(最高裁判所第一小法廷昭和46年6月24日判決・民集25巻4号574頁等)。 前記第4の1(2)(7)の別府市や豊川市の事例のように,公営と畜場の廃止にあたって,利用業者及びと殺業務従事者に補償金を支払った自治体が存在する。 他方,食肉センターとほぼ同じ時期に廃止された公営と畜場は多くあるが,中には,補償金等を一切支払っていない自治体も存在するなど(甲3ないし7),公営と畜場の廃止にあたっての自治体の対応は分かれている。 本件についてみると,被告は,別府市や豊川市の事例などを検討した上で,本件支援金の支出を適法と判断している。しかしながら,公営と畜場の廃止に当たって,利用業者及びと殺業務従事者らに補償金を支出した自治体がいかなる法的な根拠に基づいて当該補償金を支出したのか不明である。被告らは,本 出を適法と判断している。しかしながら,公営と畜場の廃止に当たって,利用業者及びと殺業務従事者らに補償金を支出した自治体がいかなる法的な根拠に基づいて当該補償金を支出したのか不明である。被告らは,本件訴訟において,本件支援金を補償金として支出する法的根拠として国有財産法19条,24条類推適用,憲法29条3項を挙げているが,別府市や豊川市など補償金を支出した自治体がその要件を十分検討した上で,補償金を支出したとは認められないし,被告を含む市の執行部もその要件を満たすかについて十分に検討していない(証人A168ないし175項,被告本人70,71項)。そうすると,公営と畜場の廃止に当たって,利用業者及びと殺業務従事者らに補償金を支払うことについて相当の根拠が認められるとはいえないし,しかも,本件において,被告は,補償金を支出していない自治体は存在しない旨,誤った認識を有し(被告本人58,59項),食肉センターの存続による将来の赤字の発生防止のために本件支援金を支出した旨述べるにとどまるのであって(被告本人90,91,107項),被告には過失があったというべきである。 6 遅延損害金の起算日について本件支援金は,別表のとおり,利用業者及びと殺業務従事者らにそれぞれ支払われたところ,これにより市に損害が生じたのは,それぞれの支払日からといえるから,遅延損害金の起算日は本件支援金のそれぞれの支払日というべきである。 第5 結論以上の次第で,原告らの請求は,主文第1項掲記の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担については,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条を適用し,仮執行宣言については,相当でないからこれを付さないこととし,主文のとおり判決する。 熊本地方裁判所民事第2部裁判長裁判官野尻純夫 いては,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条を適用し,仮執行宣言については,相当でないからこれを付さないこととし,主文のとおり判決する。 熊本地方裁判所民事第2部裁判長裁判官野尻純夫裁判官中島栄裁判官小野瀬昭

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