令和6(ネ)10025等 損害賠償請求控訴事件、同附帯控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年2月19日 知的財産高等裁判所 3部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 令和5(ワ)70052
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判決文本文31,893 文字)

令和7年2月19日判決言渡令和6年(ネ)第10025号、令和6年(ネ)第10039号損害賠償請求控訴事件、同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所令和5年(ワ)第70052号)口頭弁論終結日令和6年11月26日判決 控訴人・附帯被控訴人 X(以下「控訴人」という。)同訴訟代理人弁護士齋藤理央同関口慶太同永井翔太郎同高砂美貴子 被控訴人・附帯控訴人 株式会社囲碁将棋チャンネル(以下「被控訴人」という。)同訴訟代理人弁護士稲垣勝之同高藤真人同北村直之同宮本龍太朗 主文 1 本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却する。 2 控訴人が当審で拡張、追加した請求をいずれも棄却する。 3 当審における訴訟費用はこれを250分し、その1を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。 事実 及び理由 第1 控訴の趣旨及び附帯控訴の趣旨 1 控訴の趣旨 ⑴ 原判決を次のとおり変更する。 ⑵ 被控訴人は、控訴人に対し、284万5979円及びうち72万0500円に対する令和4年2月12日から、うち38万8165円に対する令和5年1月9日から、うち36万0250円に対する同月10日から、うち1 、控訴人に対し、284万5979円及びうち72万0500円に対する令和4年2月12日から、うち38万8165円に対する令和5 年1月9日から、うち36万0250円に対する同月10日から、うち137万7064円に対する同月22日から、各支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え(控訴人は、当審において、原審における183万1500円及びうち72万0500円に対する令和4年2月12日から、うち36万0250円に対する令和5年1月9日から、うち36万0250円 に対する同月10日から、うち39万0500円に対する同月22日から、各支払済みまで年3パーセントの割合による金員の請求を、このように拡張した。)。 ⑶ 被控訴人は、控訴人が配信する動画が被控訴人の著作権を侵害している旨をGoogleLLCに告げてはならない(控訴人は、当審において、こ の差止請求を追加した。)。 2 附帯控訴の趣旨⑴ 原判決中、被控訴人の敗訴部分を取り消す。 ⑵ 前項の部分につき、控訴人の請求を棄却する。 第2 事案の概要(略称等は、特に断らない限り、原判決の表記による。また、原 判決中の「原告」、「被告」はそれぞれ「控訴人」、「被控訴人」に読み替える。) 1 本件は、控訴人が動画配信サービスであるYouTube上で原判決別紙「控訴人動画目録」記載の各動画(控訴人各動画)を公開していたところ、被控訴人が、YouTubeに対し、控訴人各動画が被控訴人の著作権を侵害し ているとの申告(本件著作権侵害申告)を行い、この申告に基づき控訴人各動 画がYouTubeから削除されたことにつき、控訴人が、本件著作権侵害申告は不正競争防止法2条1項21号の虚偽告知行為に当たるとともに、控訴人の人格的利益を侵害する不法行為にも当たると 人各動 画がYouTubeから削除されたことにつき、控訴人が、本件著作権侵害申告は不正競争防止法2条1項21号の虚偽告知行為に当たるとともに、控訴人の人格的利益を侵害する不法行為にも当たると主張し、不正競争防止法4条及び民法709条に基づき、損害賠償金183万1500円及びうち72万0500円に対する令和4年2月12日から、うち36万0250円に対する令和 5年1月9日から、うち36万0250円に対する同月10日から、うち39万0500円に対する同月22日から、各支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めた事案である(遅延損害金の起算日はいずれも、被控訴人の本件著作権侵害申告により控訴人の動画がYouTubeから削除された日、すなわち、控訴人動画1及び2につき令和4年2月1 2日、控訴人動画3につき令和5年1月9日、控訴人動画4につき同月10日、控訴人動画5につき同月22日である。)。 原判決は、控訴人の請求のうち、1万8111円及びうち8805円に対する令和4年2月12日から、うち1742円に対する令和5年1月9日から、うち5228円に対する同月10日から、うち2336円に対する同月22日 から、各支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余の請求を棄却したので、控訴人が原判決のうち控訴人敗訴部分を不服として控訴し、被控訴人が原判決のうち被控訴人敗訴部分を不服として附帯控訴した。 控訴人は、当審において、金銭請求を前記第1の1⑵のとおり拡張するとと もに、前記第1の1⑶の差止請求を追加した。 2 前提事実は、次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」(以下、「事実及び理由」との記載を省略する。)第2の2(3頁1行目から5頁8行目まで もに、前記第1の1⑶の差止請求を追加した。 2 前提事実は、次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」(以下、「事実及び理由」との記載を省略する。)第2の2(3頁1行目から5頁8行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決3頁3行目から4頁15行目まで(原判決第2の2⑴ないし⑷)を 次のとおり改める。 「⑴ 当事者等ア YouTubeは、GoogleLLC(以下「グーグル」という。)が提供する動画配信サービスである。 イ控訴人は、YouTubeに、「A」という名称のチャンネル(以下「控訴人チャンネル」という。)を開設し、控訴人チャンネルに将棋の対局に 関するAI解析、解説等の動画を投稿していた者である。 ウ被控訴人は、YouTubeやCS(衛星放送)で囲碁及び将棋を中心としたコンテンツを配信、放送する株式会社である(甲1)。 ⑵ 控訴人による控訴人各動画の投稿と本件著作権侵害申告による控訴人動画の削除 ア控訴人動画1控訴人は、控訴人動画1を、令和4年1月9日午後10時25分、控訴人チャンネルにアップロードし投稿した。 被控訴人は、令和4年2月12日午前、控訴人動画1につき本件著作権侵害申告を行い、これを受けて、控訴人動画1は、同日、YouTu beから削除された。 控訴人動画1は、投稿から削除まで概算で33日間、控訴人チャンネルにアップされていた。 イ控訴人動画2控訴人は、控訴人動画2を、令和4年2月12日午前0時56分、控 訴人チャンネルにアップロードし投稿した。 被控訴人は、令和4年2月12日午前、控訴人動画2につき本件著作権侵害申告を行い、これを受けて、控訴人動画2は、同日、YouTubeから削除された。 控訴人動画2は、投稿か プロードし投稿した。 被控訴人は、令和4年2月12日午前、控訴人動画2につき本件著作権侵害申告を行い、これを受けて、控訴人動画2は、同日、YouTubeから削除された。 控訴人動画2は、投稿から削除まで概算で12時間、控訴人チャンネ ルにアップされていた。 ウ控訴人動画3控訴人は、控訴人動画3を、令和5年1月8日午後10時30分、控訴人チャンネルにアップロードし投稿した。 被控訴人は、同月9日午前、控訴人動画3につき本件著作権侵害申告を行い、これを受けて、控訴人動画3は、同日、YouTubeから削 除された。 控訴人動画3は、投稿から削除まで概算で13時間、控訴人チャンネルにアップされていた。 エ控訴人動画4控訴人は、控訴人動画4を、令和5年1月10日午後、控訴人チャン ネルにアップロードし投稿した。 被控訴人は、同月10日午後、控訴人動画4につき本件著作権侵害申告を行い、これを受けて、控訴人動画4は、同日、YouTubeから削除された。 控訴人動画4は、投稿から削除まで概算で6時間、控訴人チャンネル にアップされていた。 オ控訴人動画5控訴人は、控訴人動画5を、令和5年1月21日午後11時30分、控訴人チャンネルにアップロードし投稿した。 被控訴人は、同月22日午前、控訴人動画5につき本件著作権侵害申 告を行い、これを受けて、控訴人動画5は、同日、YouTubeから削除された。 控訴人動画5は、投稿から削除まで概算で12時間、控訴人チャンネルにアップされていた。 ⑶ 控訴人の異議申立てによる控訴人各動画の復元 ア控訴人動画1 控訴人動画1は、被控訴人の本件著作権侵害申告により、令和4年2月12日午前、YouTubeから削除されたが、控訴人は、同月 人の異議申立てによる控訴人各動画の復元 ア控訴人動画1 控訴人動画1は、被控訴人の本件著作権侵害申告により、令和4年2月12日午前、YouTubeから削除されたが、控訴人は、同月28日、YouTubeに異議申立てを行い、控訴人動画1は、同年3月16日に復元された。 控訴人動画1が削除されていた期間は、概算で33日間(原判決別紙 控訴人各動画再生回数の推移に係る計算方法に合わせ、削除された日を含めて計算する。以下、同じ。)であった。 イ控訴人動画2控訴人動画2は、被控訴人の本件著作権侵害申告により、令和4年2月12日午前、YouTubeから削除されたが、控訴人は、同月28 日、YouTubeに異議申立てを行い、控訴人動画2は、同年3月16日に復元された。 控訴人動画2が削除されていた期間は、概算で33日間であった。 ウ控訴人動画3控訴人動画3は、被控訴人の本件著作権侵害申告により、令和5年1 月9日午前、YouTubeから削除されたが、控訴人は、同月20日、YouTubeに異議申立てを行い、控訴人動画3は、同年2月6日に復元された。 控訴人動画3が削除されていた期間は、概算で29日間であった。 エ控訴人動画4 控訴人動画4は、被控訴人の本件著作権侵害申告により、令和5年1月10日午後、YouTubeから削除されたが、控訴人は、同月20日、YouTubeに異議申立てを行い、控訴人動画4は、同年2月7日に復元された。 控訴人動画4が削除されていた期間は、概算で29日間であった。 オ控訴人動画5 控訴人動画5は、被控訴人の本件著作権侵害申告により、令和5年1月22日午前、YouTubeから削除されたが、控訴人は、同月25日、YouTubeに異議申立てを行い、 オ控訴人動画5 控訴人動画5は、被控訴人の本件著作権侵害申告により、令和5年1月22日午前、YouTubeから削除されたが、控訴人は、同月25日、YouTubeに異議申立てを行い、控訴人動画5は、同年2月27日に復元された。 控訴人動画5が削除されていた期間は、概算で37日間であった。 ⑷ 控訴人各動画の内容等(甲7~11、16、弁論の全趣旨)控訴人各動画は、いずれも、将棋の王将戦の対局に関し、対局の棋譜を用いて解説や今後の予想等を提供する内容の動画である。 控訴人動画1は、令和4年1月9日及び10日に対局が行われた第71期王将戦第1局について、控訴人が、同月9日、1日目の対局の終了後、 2日目の対局の開始前に投稿した動画である。 控訴人動画2は、令和4年2月11日及び12日に対局が行われた第71期王将戦第4局について、控訴人が、同日、1日目の対局の終了後、2日目の対局の開始前に投稿した動画である。 控訴人動画3は、令和5年1月8日及び9日に対局が行われた第72期 王将戦第1局について、控訴人が、同月8日、1日目の対局の終了後、2日目の対局の開始前に投稿した動画である。 控訴人動画4は、上記第72期王将戦第1局について、控訴人が、令和5年1月10日、2日目の対局の終了後に投稿した動画である。 控訴人動画5は、令和5年1月21日及び22日に対局が行われた第7 2期王将戦第2局について、控訴人が、同月21日、1日目の対局の終了後、2日目の対局の開始前に投稿した動画である。 控訴人各動画の再生回数の推移は、原判決別紙『控訴人各動画再生回数の推移』記載のとおりである。」⑵ 原判決4頁16行目の「(第2回口頭弁論調書参照)」(原判決第2の2⑸表 題部)を「(甲41の7ないし11、弁論の 推移は、原判決別紙『控訴人各動画再生回数の推移』記載のとおりである。」⑵ 原判決4頁16行目の「(第2回口頭弁論調書参照)」(原判決第2の2⑸表 題部)を「(甲41の7ないし11、弁論の全趣旨(原審第2回口頭弁論調書))」 と改める。 ⑶ 原判決4頁20行目の「初回の著作権侵害申告から」から同頁24行目の「される。」まで(原判決第2の2⑸)を「動画の投稿者が著作権侵害警告を受け、解除されない警告が3回に達した場合、当該投稿者のアカウントと関連付けられているチャンネルは全て停止され、新たなチャンネルを作成する こともできなくなり、同アカウントによって投稿された全動画が削除される。」に改める。 3 争点被控訴人は、本件訴訟において、控訴人各動画が被控訴人の著作権を侵害したと主張しておらず、本件著作権侵害申告が不正競争防止法2条1項21号に 規定する不正競争行為(虚偽告知)に該当するとの控訴人の主張を争っていない。 本件の争点は次のとおりである。 ⑴ 本件著作権侵害申告が控訴人に対する不法行為となるか否か⑵ 損害額(当審において拡張された請求も含む。) ⑶ 差止めの可否(当審における控訴人の追加主張に基づく争点) 4 争点に対する当事者の主張は、次のとおり補正し、後記⑴のとおり当審における控訴人の補充主張を、後記⑵のとおり当審における被控訴人の補充主張を、後記⑶のとおり当審における控訴人の追加主張を、後記⑷のとおり当審における控訴人の追加主張に対する被控訴人の反論を、それぞれ付加するほか、原判 決第3(5頁12行目から14頁18行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決5頁13行目の「争点1(「法律上保護された利益」該当性)について」(原判決第3の1表題部)を「争点⑴( 第3(5頁12行目から14頁18行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決5頁13行目の「争点1(「法律上保護された利益」該当性)について」(原判決第3の1表題部)を「争点⑴(本件著作権侵害申告が控訴人に対する不法行為となるか否か)について」と改める。 原判決9頁21行目の「争点2(損害額)について」(原判決第3の2表題部) を「争点⑵(損害額)について」と改める。 原判決6頁9行目(原判決第3の1(原告の主張)⑴)及び9頁26行目(原判決第3の2(原告の主張)⑴ア)の「本件動画」を「控訴人各動画」と、原判決10頁3行目、5行目及び8行目(原判決第3の2(原告の主張)⑴ア)の「本件動画」を「控訴人動画」と、それぞれ改める。 ⑴ 当審における控訴人の補充主張ア争点⑴(本件著作権侵害申告が控訴人に対する不法行為となるか否か)について(ア) 控訴人の被侵害利益本件著作権侵害申告は、控訴人の表現の自由、すなわち、作成した動 画をYouTubeに投稿するなど、電気通信設備を介して市民が情報を公衆に対して発信する法的利益を侵害した。 表現の自由は、第一次的には国家が国民の情報伝達を阻害してはならないことを定める自由権であるが、その価値を市民間の法的秩序としても無視することはできず、市民間の情報伝達が不当に阻害されることを 法が無条件に許容しているとは考え難いことからすれば、相関的に行為の悪質性が高いなど、受忍限度を超える情報伝達の阻害行為は、不法行為上も違法と評価されるべきである。 最高裁昭和55年(オ)第1188号同62年4月24日第二小法廷判決・民集41巻3号490頁(サンケイ新聞事件)は、反論権が憲法の 保障する表現の自由を間接的に侵す危険につながるおそれがある旨判 高裁昭和55年(オ)第1188号同62年4月24日第二小法廷判決・民集41巻3号490頁(サンケイ新聞事件)は、反論権が憲法の 保障する表現の自由を間接的に侵す危険につながるおそれがある旨判示し、私人間における表現の自由に対する間接的な侵襲を論拠に結論を導いている。 また、平成17年判決(最高裁平成16年(受)第930号同17年7月14日第一小法廷判決・民集59巻6号1569頁)は、著作権法 上掲げられていない「著作者が著作物によってその思想、意見等を公衆 に伝達する利益」を、法的保護に値するものと判示しており、情報を伝達する利益は、作品に対する自然権的所有権の転化として、平成17年判決が認めた法益と解することができる。 電気通信事業法は、電気通信役務の円滑な提供に基づいて、電気通信の健全な発達と国民の利便の確保による公共の福祉の増進を目的として おり、同法の究極の目的の一つは、電気通信であるインターネットにおける秩序の維持発展にあるといえる。そして、秩序あるインターネット空間という「公共の福祉」により実現する最も大きな利便の一つは、国民間の情報伝達の促進である。そうすると、電気通信事業法も、究極的には国民間の情報の発信と受信を保護し、そのために秩序あるインター ネット環境を実現しようとしているということができる。 (イ) 被控訴人の行為の悪質性控訴人各動画は、いずれも将棋の王将戦の対局に関する動画である。 被控訴人は、王将戦の協賛者として王将戦を配信してきたものであるが、配信番組で得られた棋譜の情報を基に番組等を配信する配信者を牽制す る目的で削除申告を行っていた。被控訴人は、控訴人各動画に対する削除申告を行うに当たり、当初は「その他の権利」が侵害されたものとしていたが、「その他の権利」を 番組等を配信する配信者を牽制す る目的で削除申告を行っていた。被控訴人は、控訴人各動画に対する削除申告を行うに当たり、当初は「その他の権利」が侵害されたものとしていたが、「その他の権利」を選択した場合対応が迅速に進まないことを理由として、「著作権」を選択して削除申告を行うようになった。また、被控訴人は、「リアルタイム配信動画」によって特に被害を受けるとの認 識の下、削除申告を行っていたが、控訴人各動画は「リアルタイム配信動画」に該当しないにもかかわらず、被控訴人は内容を確認せずに控訴人各動画の削除申告をした。このように、本件著作権侵害申告は、杜撰かつ網羅的に実施され、被控訴人が著作権侵害は虚偽であることを認識しながら意図的に行ったものである。そして、被控訴人は、グーグルか ら控訴人による異議申立ての転送を受け、控訴人各動画が復活したこと を認識していたはずであるが、意図的な虚偽申告を繰り返した。さらに、被控訴人は、控訴人動画3に係る申告以外の申告は、第三者の名称を冒用して行っており、非弁行為の疑いすらある。 被控訴人は、控訴人による著作権侵害という虚偽の事実をグーグルに告知し、この虚偽事実をYouTubeユーザーに流布して、控訴人の 営業上の信用を害した。 このような被控訴人の行為は許される自由競争の範囲を逸脱したものであり、被控訴人の行為によって、被控訴人は、控訴人の営業上の利益を毀損するとともに、控訴人の表現の自由を侵害したものであって、その行為は社会的許容性のない違法なものとの評価を免れない。 (ウ) 以上のとおり、保護されるべき市民間の情報伝達の利益(表現の自由)の重大性、これに対する侵襲の重篤性及び被控訴人の行為の悪質性を相関的にみたとき、被控訴人の行為は受忍限度を超えており、社会 (ウ) 以上のとおり、保護されるべき市民間の情報伝達の利益(表現の自由)の重大性、これに対する侵襲の重篤性及び被控訴人の行為の悪質性を相関的にみたとき、被控訴人の行為は受忍限度を超えており、社会的相当性を欠いたものとして、不法行為上違法となる。 イ争点⑵(損害額)について (ア) 控訴人各動画の再生数減による広告収益の減少本件著作権侵害申告がなかった場合の再生数による収益と、本件著作権侵害申告がされた場合の現実の再生数による収益との差額が、控訴人各動画に関して控訴人が被った損害である。本件著作権侵害申告がされなかった場合の再生数は、他の動画の再生状況等から推認せざるを得な いが、原判決は、投稿から最初の24時間と、それ以降の2段階にしか分けず、24時間後は1日当たり5回の再生数という、杜撰かつ不合理な認定をしている。 再生回数は徐々に逓減するものであって、実態に即し、24時間、72時間、10日間(72時間経過後の7日間)、1か月、その後という5 段階で再生数を評価すべきである。そして、原判決別紙「控訴人各動画 再生回数の推移」によれば、控訴人動画1は、最初の24時間経過後、次の72時間までの48時間において3458回再生されており、これは最初の24時間の再生回数である3万7550回の約10分の1である。そうすると、控訴人各動画については、最初の24時間経過後、72時間までは、最初の24時間の再生数の10分の1の再生数が発生す ると考えるべきである。その後は、72時間経過後から10日経過するまでの間はおよそ1日30回程度、10日経過後から30日経過するまでの間はおよそ1日15回程度、その後は1日5回程度再生すると考えるのが相当である。 以上を前提とすると、本件著作権侵害申告のために失われた再 およそ1日30回程度、10日経過後から30日経過するまでの間はおよそ1日15回程度、その後は1日5回程度再生すると考えるのが相当である。 以上を前提とすると、本件著作権侵害申告のために失われた再生数は、 別紙1「控訴人各動画に係る逸失利益」1ないし5記載のとおり、控訴人動画1は165回、控訴人動画2は1万9956回、控訴人動画3は5802回、控訴人動画4は1万1449回、控訴人動画5は5699回であると認めることが相当である。 再生回数1回当たりの利益は、現実には0.5円を超えているものも あり、平均としては1再生当たり0.5円と認定すべきである。 そうすると、再生数減少による逸失利益は、別紙1「控訴人各動画に係る逸失利益」6記載のとおり、少なくとも2万1534円を下回らないというべきである。 なお、本件各動画については、再生数では明確に反映しない経済的損 害(ブランド価値の毀損、爆発的に拡散された(いわゆる「バズった」)可能性、チャンネル登録者数増加の利益を受けられなかった不利益)もあり、再生数減少による逸失利益以外に、数字に表れない経済的損害もあるので、1動画当たり5万円(本件各動画合計で25万円)の経済的損害の賠償が認められるべきである。 (イ) 異議申立て費用 控訴人は、異議申立てを弁護士に委任したことにより、1回当たり5万5000円(消費税込み)の異議申立て費用(弁護士費用)を3回にわたり負担した。この合計16万5000円の費用は、被控訴人の不法行為(不正競争行為)がなければ発生しなかった費用である。この異議申立ては、海外のコンテンツプロバイダを相手にするのであるから、専 門家への依頼費用は控訴人にとって避けられない支出であった。また、異議申立てをした場合、動画アップロードユ 費用である。この異議申立ては、海外のコンテンツプロバイダを相手にするのであるから、専 門家への依頼費用は控訴人にとって避けられない支出であった。また、異議申立てをした場合、動画アップロードユーザーは戸籍上の氏名と住所を著作権申立てをした相手に開示しなければならないが、控訴人は、被控訴人のような相手に氏名と住所を開示することには当然懸念があり、氏名及び住所を知られずに異議申立てを行うため、費用を負担して弁護 士に手続を依頼せざるを得なかった。したがって、上記異議申立てのために控訴人が支出した16万5000円は、被控訴人の行為と相当因果関係のある損害である。 ⑵ 当審における被控訴人の補充主張ア争点⑴(本件著作権侵害申告が控訴人に対する不法行為となるか否か) について(ア) 控訴人が侵害されたと主張する利益は、いずれも、事実上の利益にすぎず、法律上保護された利益には当たらない。 YouTubeは、グーグルという私企業により運営されている民間のサービスであり、YouTubeによる情報発信は、グーグルが利用 規約等で認めたルールの範囲内でのみ行うことができるものであるから、YouTubeにおける動画投稿等による情報発信が表現の自由の範疇として当然に認められるものではない。また、本件著作権侵害申告によって被控訴人によるインターネット上の情報発信が一般的に制限されたものでもない。 著作権法は、著作権者が自ら著作物を利用する利益まで保護するもの ではないから、同法により「電気通信設備を介して市民が情報を公衆に対して発信するなどインターネットを通して情報を伝達する利益」が法律上保護された利益であると基礎付けることはできない。 電気通信事業法は行政規制を内容とする業法であり、個々の市民間の情報伝達 衆に対して発信するなどインターネットを通して情報を伝達する利益」が法律上保護された利益であると基礎付けることはできない。 電気通信事業法は行政規制を内容とする業法であり、個々の市民間の情報伝達の利益を私人間において保護することを趣旨とする法律ではな い。 (イ) 被控訴人による本件著作権侵害申告は、YouTubeにおける著作権侵害申告に係る手続を濫用したものではない。また、グーグルは、当該手続につき、濫用防止のシステムとして異議申立て通知手続を設けており、異議申立てが認められれば動画が復元されるのであって、本件で も控訴人の異議申立てにより控訴人各動画は復元された。そうすると、濫用防止のためのシステムを含む著作権侵害申告の手続に則っている限りは、その過程で動画が一時的に削除されたとしても、それは当該手続上当然に予定されている事象であるから、当該事象に関して不正競争防止法による保護があり得るのは別として、それ以上に動画投稿者の利 益が侵害されたとは認められない。YouTubeの利用者はグーグルが定める利用規約等のルールの範囲内でしか利益を享受できないのであり、そのような利用規約等が適用された結果として生じた事実上の不利益について、不正競争防止法による保護を超えた保護が与えられる実体法上の理由はない。 (ウ) 被控訴人は、控訴人各動画を確認し、動画内で、被控訴人が提供している番組の情報を用いていたことから、当該番組に係る著作権を侵害しているのではないかと考え、本件著作権侵害申告を行ったのであって、著作権侵害ではないと認識しながらこれを行ったものではなく、意図的な虚偽申告ではない。 その他、控訴人の挙げる事情をもって、被控訴人の行為が悪質である とか、被控訴人の行為の違法性が基礎付けられると いと認識しながらこれを行ったものではなく、意図的な虚偽申告ではない。 その他、控訴人の挙げる事情をもって、被控訴人の行為が悪質である とか、被控訴人の行為の違法性が基礎付けられるということはない。 イ争点2(損害額)について(ア) 控訴人各動画の投稿から24時間後の再生回数は、原判決の判断も、前記⑴イ(ア)における控訴人の主張も、いずれも過剰な数字である。 控訴人各動画は、控訴人動画4を除き、いずれも2日目の対局の展開 を予想するものであり、対局終了後の再生回数はほとんどないというべきである。控訴人動画4は、対局の翌日に投稿されたもので、全棋譜をAI評価付きで再生する内容であり、解説が付されているものでもないから、2日目以降の再生回数はほとんどない。したがって、控訴人各動画が投稿されてから24時間経過後における再生回数は零に等しいとい うべきであるが、仮に一定の再生回数が認められるとしても、せいぜい1日1回というべきである。 (イ) YouTubeにおける著作権侵害申告に対する異議申立ては、通常のYouTubeユーザーであれば日常的に行える手続であって、訴訟追行のように弁護士に委任しなければ十分に対応できない性質のもの ではない。異議申立て手続において、氏名及び住所を開示したくないというのは、控訴人の都合によるものであり、本件著作権侵害申告と異議申立ての費用との相当因果関係を基礎付けるものではない。したがって、控訴人が主張する異議申立ての費用は、本件著作権侵害申告と相当因果関係の認められる損害ではない。 ⑶ 当審における控訴人の追加主張ア争点⑵(損害額)について(ア) 控訴人は、本件著作権侵害申告によって、予定していた動画の投稿ができなくなった。投稿できなかった動画は、被控訴 。 ⑶ 当審における控訴人の追加主張ア争点⑵(損害額)について(ア) 控訴人は、本件著作権侵害申告によって、予定していた動画の投稿ができなくなった。投稿できなかった動画は、被控訴人の違法な削除申請によってシステム上現実に投稿できなかったもの(後記(イ))、違法な削 除申請によりアカウント削除の現実的な危険があった時期のもの(後記 (ウ))及びその他作業時間の喪失や心理的影響によって投稿できなかったもの(後記(エ)、(オ))がある。これらの投稿予定動画の推定収益は、全て本件著作権侵害申告と相当因果関係を有する損害である。 (イ) 被控訴人は、令和5年1月、控訴人動画3ないし5につき、連続して計3件の削除申請を行った。これにより、グーグルにおいて、控訴人が3 回の著作権侵害を行っているとの誤認が生じ、令和5年1月22日から同年2月7日までの間、YouTubeのシステム上、物理的に投稿ができない状態になった。これにより、少なくとも、従来控訴人が規則的に投稿していた14動画の投稿が不可能となった。 (ウ) 上記(イ)のシステム上投稿できない状態は、控訴人の異議申立てが一つ 承認された令和5年2月7日に終了した。しかし、この時点では、本件著作権侵害申告に対する異議申立てとして承認されていないものがあり、この状態でさらに虚偽の著作権侵害申告を受ければ再びアカウント停止となるおそれがあった。控訴人は、新たに投稿する動画を対象とした更なる虚偽申告によるアカウント停止の事態を恐れ、動画を投稿する ことができない心理状態に置かれた。こうして、控訴人は、同日以降も、不承認の扱いとされていた異議申立てが同月28日に承認され、虚偽申告の累積が無くなるまで、少なくとも、規則的に投稿していた16動画の投稿断念を余 心理状態に置かれた。こうして、控訴人は、同日以降も、不承認の扱いとされていた異議申立てが同月28日に承認され、虚偽申告の累積が無くなるまで、少なくとも、規則的に投稿していた16動画の投稿断念を余儀なくされた。 (エ) 控訴人は、令和5年2月28日に異議申立てが承認された後も、今後 の異議申立てが不承認になる懸念は消えず、控訴人による問合せに対しても被控訴人が相変わらず回答しないことから、控訴人は、以下のとおり、規則的に投稿していた動画の投稿を保留せざるを得なくなった。 a 令和5年2月28日から同月3月20日まで 20動画b 令和5年3月20日から同年5月12日まで 20動画 c 令和5年5月12日から同年9月6日まで 61動画 d 令和5年9月7日から令和6年3月31日まで 88動画(オ) 被控訴人による令和5年1月9日の虚偽の著作権侵害申告以降、控訴人は、アカウント停止の阻止のための対応に追われた。申立て通知に記載のメールアドレスに問い合わせても全く回答がなく、著作権侵害該当箇所の確認等に無駄に時間が使われ、少なくとも、規則的に投稿してい た9動画の作成時間が確保できず、投稿できなかった。 (カ) 控訴人の動画は、①対局直前の状況を整理して解説する「対局直前状況確認動画」(甲42~79)、②封じ手予想・2日目展開予想(甲80~92)、③AI解析動画のうち解説を付したものである「一手ずつAI解析-解説あり版」(甲95~139)、④AI解析動画のうち解説を付 さないものである「一手ずつAI解析-解説なし版」(甲140~159)の四つに分類される。①は、さらに、扱っている対局によって「タイトル戦」と「非タイトル戦」に分けられる。また、③と④は、タイトル戦であってB(以下「B’」という。)棋士が し版」(甲140~159)の四つに分類される。①は、さらに、扱っている対局によって「タイトル戦」と「非タイトル戦」に分けられる。また、③と④は、タイトル戦であってB(以下「B’」という。)棋士が勝利したもの、タイトル戦であってB’棋士が敗北したもの、非タイトル戦であってB’棋士が勝利したも の、非タイトル戦であってB’棋士が敗北したものに分けられる。これらの分類に応じた平均収益額は、別紙2「動画収益一覧」の「平均収益」の箇所に記載のとおりである。 そして、前記(イ)ないし(オ)の各時期において投稿予定であった動画を上記①ないし④に分類し、それぞれに上記平均収益額を乗じて算出される 逸失利益は、別紙3「投稿予定動画一覧」記載のとおりであり、その合計額は92万2254円となる。 イ争点3(差止めの可否)について被控訴人は、本件訴訟に至ってもまだ、主催者から各対局の独占的な生中継放送権、ライブ配信権を付与されており、独占的許諾により享受し得 る営業上の利益が侵害されるおそれがあったなどと主張しており、今後同 様の著作権侵害申告をしないことを内容とする和解も不調に終わった。したがって、被控訴人は、今後も控訴人の投稿する動画について削除申請等をすることを明確に否定していないのであるから、控訴人としては虚偽申告を受けないと信頼することは到底できず、法的に差止めを得て、物理的、心理的に今後の不正競争行為を予防する必要性がある。 控訴人は、本件著作権侵害申告により、グーグルからはたびたび警告され、動画投稿を再開することができず、新たな動画投稿の道が閉ざされたままになっている。このような控訴人の不利益を解消するためには、控訴人の求める差止めを裁判所が命ずる必要性が高い。 ⑷ 当審における控訴人の追加主張に対す とができず、新たな動画投稿の道が閉ざされたままになっている。このような控訴人の不利益を解消するためには、控訴人の求める差止めを裁判所が命ずる必要性が高い。 ⑷ 当審における控訴人の追加主張に対する被控訴人の反論 ア争点2(損害額)に関する控訴人の追加主張について(ア) 令和5年1月22日から同年2月6日までの逸失利益の主張については、控訴人が主張する動画を投稿する予定であったことの立証はされておらず、実際に投稿されていたであろうことを示す事実もない。また、控訴人が提出する証拠によっても、控訴人が上記期間にYouTube からシステム上の制裁を受けたことは明らかでなく、投稿が不能となった期間も明らかでない。仮に、上記期間に控訴人が物理的に動画投稿できない状況に置かれていたとしても、控訴人が主張するとおり「システム上の誤認識」によるものであれば、被控訴人による本件著作権侵害申告との間の相当因果関係はない。 (イ) 令和5年2月8日から同月28日までの逸失利益の主張については、被控訴人は、本件著作権侵害申告を行った際に故意がなく、控訴人の心理状態を追い込む目的など有していなかった。また、同月8日の時点において、控訴人動画3及び4に係る控訴人の異議申立てが承認されたというのであれば、違反警告が累積していたことはない。仮に、控訴人が 主張するような著作権侵害申告による違反警告の累積の事実が存在し たとしても、控訴人が主張するような心理的な不安だけでは、本件著作権侵害申告と新たに動画投稿できなかったことによる逸失利益との間に相当因果関係はない。 (ウ) 令和5年2月28日以降の逸失利益の主張については、異議申立ての不承認の事実の有無や不承認の理由等は何ら立証されておらず、控訴人 が今後の異議申立 失利益との間に相当因果関係はない。 (ウ) 令和5年2月28日以降の逸失利益の主張については、異議申立ての不承認の事実の有無や不承認の理由等は何ら立証されておらず、控訴人 が今後の異議申立てが不承認になる懸念をもっていたとは認められない。過去に不承認の事実があったとしても、最終的には承認されているということであるから、動画投稿できない理由にはならない。漠然とした抽象的な心理的不安と、動画投稿できなかったことによる逸失利益との間に相当因果関係は認められないし、控訴人は令和4年から複数回の 違反警告を受けているが、控訴人動画5の投稿まで動画投稿をやめておらず、動画投稿を控えるようになった原因が本件著作権侵害申告であるとは考えられない。 (エ) 令和5年1月9日以降における、時間喪失等を理由とする逸失利益に係る損害の主張については、控訴人が投稿している動画は3分から10 分程度の比較的短い動画であり、使い回しの素材もあると考えられることから、動画の作成に長時間を要するとは考えられず、本件著作権侵害申告に対する異議申立てを直接行っていたのが控訴人訴訟代理人弁護士であったことからすると、控訴人自身の本件著作権侵害申告への対応時間が、動画作成の時間が確保できないほどのものであったとは考えら れない。 イ争点3(差止めの可否)に関する控訴人の追加主張について控訴人の差止め請求は、差止め対象が「控訴人が配信する動画」と極めて抽象的かつ広範に記載されており、全く特定されていない。また、差止め対象行為として不正競争防止法上の不正競争に当たるか否か明らかで ない行為を対象としており、明らかに不適法である。 第3 当裁判所の判断当裁判所も、控訴人の請求は、1万8111円及びうち8805円に対する令和4年 正競争に当たるか否か明らかで ない行為を対象としており、明らかに不適法である。 第3 当裁判所の判断当裁判所も、控訴人の請求は、1万8111円及びうち8805円に対する令和4年2月12日から、うち1742円に対する令和5年1月9日から、うち5228円に対する同月10日から、うち2336円に対する同月22日から、各支払済みまで年3パーセントの割合による金員の支払を求める限度で理 由があり、その余の請求は、控訴人が当審で拡張、追加した請求を含めて理由がないものと判断する。その理由は、以下のとおりである。 1 争点⑴(本件著作権侵害申告が控訴人に対する不法行為となるか否か)について⑴ 補正の上で引用した原判決第2の2の前提事実(以下、単に「前提事実」 という。)⑴ア及び⑸、後掲の各証拠並びに弁論の全趣旨によれば、YouTubeについて、以下の事実が認められる。 ア YouTubeは、私企業であるグーグルが提供する動画配信サービスである。 YouTubeに動画を投稿するために、動画投稿者がグーグルに対し てYouTubeを利用する対価としての金銭を支払う必要はない。また、動画投稿者は、投稿した動画の再生回数等に応じ、YouTubeで流される広告からの収入の分配を受けることができる。(甲94、168)グーグルは、YouTubeに関し、規定、ポリシーや利用者が守るべきガイドライン等を定め、これを公表している。(甲168) イ YouTubeに投稿されて公開されている動画が、自らの著作権を侵害するものであると認識した者は、グーグルに対して著作権侵害による削除通知を提出して、動画の削除を求めることができる。この削除通知は、パソコンでウェブサイト上のフォームに記入する方法等で提出することが可能であ あると認識した者は、グーグルに対して著作権侵害による削除通知を提出して、動画の削除を求めることができる。この削除通知は、パソコンでウェブサイト上のフォームに記入する方法等で提出することが可能である。著作権侵害による削除通知が提出されると、グーグルは、 通知(リクエスト)が有効であるか否か、法的に必要とされる全ての要素 (情報)が全て含まれているか否か、不正行為の形跡がないことを審査する。この審査は、YouTubeの自動システムによって行われるが、自動システムでは削除通知が有効であるか否か(法的に必要とされる要素が全て含まれ、不正行為に該当しないか否か)を判定できない場合は、人間の審査担当者が審査を行う。削除通知が審査を通過すると、削除通知がさ れた動画はグーグルによって削除され、動画をアップロードした投稿者のアカウントは著作権侵害の警告を受ける。(甲17、41の8、94)著作権侵害による削除通知により動画が削除された動画投稿者は、それが誤認や取り違えであると考える場合には、異議申立て通知を提出することができる。異議申立て通知は、動画投稿者がインターネット上の操作及 び入力により送信することが可能であり、連絡先情報として正式な住所と戸籍上の氏名を入力するほか、異議申立ての理由を入力すること、表示される情報を確認して同意すること等が求められる。入力した情報は著作権侵害による削除通知の申立人に開示されるので、個人情報が開示されることについて懸念がある場合は、正式な代理人が動画投稿者に代わってメー ル、ファックス又は郵便で異議申立て通知を提出することができる。動画投稿者又はその代理人による異議申立て通知の提出があると、著作権侵害申告を行った者が、動画投稿者に対して権利侵害に該当する行為の差止めを求める訴訟を 郵便で異議申立て通知を提出することができる。動画投稿者又はその代理人による異議申立て通知の提出があると、著作権侵害申告を行った者が、動画投稿者に対して権利侵害に該当する行為の差止めを求める訴訟を提起したことを10日以内に証明しない限り、削除されていた動画は復元され、アカウントに科された関連のペナルティも取り消さ れる(甲22~27、41の8~10、94)。 動画の投稿者が著作権侵害警告を受け、解除されない警告が3回に達した場合、当該投稿者のアカウントと関連付けられているチャンネルは全て停止され、新たなチャンネルを作成することもできなくなり、同アカウントによって投稿された全動画が削除され、当該投稿者は新たな動画の投稿 ができなくなる(甲41の11、94)。 なお、YouTubeにおいて、著作権侵害通知がされた場合に、動画が「削除」され得るものとされているが、上記のとおり、動画投稿者又はその代理人による異議申立て通知が行われれば、動画投稿者が動画を再投稿しなくても、動画が復元されることがあるのであって、この制度における動画の「削除」は、当該動画のデータが完全に抹消されることではなく、 YouTubeのウェブサイトにおいて当該動画の配信が停止されることを意味するものである。 ⑵ 前提事実及び上記⑴の認定事実を基に、著作権侵害がないにも関わらず著作権侵害申告がされて一定期間YouTubeにおける動画の公開が停止された場合、不正競争防止法2条1項21号(虚偽告知)、4条に基づく損害賠 償以外に不法行為が成立するかについて検討する。 ア著作権侵害申告がされると、一定期間YouTubeにおける控訴人各動画の公開が停止されるが、インターネット上で動画配信サービスを提供するウェブサイトはYouTube以外にも存在 いて検討する。 ア著作権侵害申告がされると、一定期間YouTubeにおける控訴人各動画の公開が停止されるが、インターネット上で動画配信サービスを提供するウェブサイトはYouTube以外にも存在しており(乙6)、それらのウェブサイトを通じて動画を公衆の閲覧に供して表現活動を行うこと は可能であり、YouTubeでの動画の公開が停止されたことによって、インターネット上で動画を公衆の閲覧に供する手段がなくなるわけではない。 YouTubeはグーグルという私企業が提供する動画配信サービスであり、動画の投稿者は、投稿のためにグーグルに代金を支払う必要はなく、 むしろ、動画の閲覧数に応じて、YouTubeで流される広告からの収入の分配を得ることができる。グーグルはYouTubeの動画配信に関する規定、ポリシー及びガイドラインを定めてこれらを公表しており、動画の投稿者は、これらの規定やポリシー等の範囲内で、動画の投稿を行うものとされている。そして、グーグルは、YouTubeにおける動画に よる著作権侵害への対応として、投稿された動画に対して第三者が著作権 侵害による削除通知(著作権侵害申告)を行った場合、当該通知が無効でなければ、動画の投稿者の意見を求めることなく、当該動画を削除(配信停止)し、動画の投稿者は、当該動画の配信の再開を求めるのであれば異議申立てを行うものとしており、このようなYouTubeの著作権侵害に係る制度は、グーグルによるYouTubeの動画配信に関する規定・ ポリシーの一つであるといえる。そうすると、YouTubeに動画を投稿する者は、著作権侵害への対応について上記のような制度設計をしているYouTubeを自ら選択して、代金の支払をすることなく動画投稿を行い、閲覧数に応じて広告収入の配分を 、YouTubeに動画を投稿する者は、著作権侵害への対応について上記のような制度設計をしているYouTubeを自ら選択して、代金の支払をすることなく動画投稿を行い、閲覧数に応じて広告収入の配分を得ているのであって、著作権侵害申告に対して上記のような対応がとられることを前提として、著作権侵害 に関する上記制度を含むものとしてのYouTubeのシステムを利用していると認められる。 そうであるとすれば、YouTubeの著作権侵害に係る制度に則っていることを前提として、著作権侵害がないにも関わらず著作権侵害申告がされて一定期間YouTubeにおける動画の公開が停止され、著作権侵 害があると考えて著作権侵害申告したことについて過失がある場合、一定期間動画が削除(配信停止)されたことにより、動画の配信がされていれば得られるはずであった収入を得られなかったという経済的損害について不正競争防止法2条1項21号(虚偽表示)、4条に基づく損害賠償が認められるとしても、それ以外に動画投稿者の表現の自由その他の権利又は 法律上保護される利益が違法に侵害されたとは認められず、不法行為の成立は認められないというべきである。 イもっとも、著作権侵害がないことを認識しながら、特定の動画投稿者について多数回にわたって著作権侵害申告を行い、動画の公開を妨げるような場合や、著作権侵害がないことを明確に認識してなくとも、著作権侵害 申告を行う目的やそれに伴う行為の態様等の諸事情に鑑み、著作権侵害を 防ぐとの目的を明らかに超えて動画投稿者に著しい精神的苦痛等を与えるような場合は、動画投稿者の法律上保護される利益が違法に侵害されたものとして、例外的に不法行為の成立が認められる場合があるというべきである。 ⑶ そこで、本件について検討する 精神的苦痛等を与えるような場合は、動画投稿者の法律上保護される利益が違法に侵害されたものとして、例外的に不法行為の成立が認められる場合があるというべきである。 ⑶ そこで、本件について検討する。 本件において、被控訴人は、過失の存在を積極的に争わないことから、著作権侵害があると考えて著作権侵害申告したことについて被控訴人に過失があったことは認められる。控訴人は、さらに、被控訴人が著作権侵害のないことを認識しながら意図的に本件著作権侵害申告を行った旨主張する。しかし、被控訴人が著作権侵害のないことを認識しながら意図的に本件著作権侵 害申告を行ったことを認めるに足りる証拠はない。 また、控訴人は、被控訴人が削除申告を行うに当たり、侵害された権利として当初「その他の権利」を選択していたのを後に「著作権」と変更したこと、著作権侵害申告が複数回にわたったこと、控訴人動画3以外の控訴人の動画についての著作権侵害申告が第三者の名称を使用して行われたこと等か ら、被控訴人の行為は悪質であり、控訴人の表現の自由を侵害し、社会的許容性のない違法なものである旨主張する。しかし、控訴人の主張に係るこれらの事情を考慮しても、上記のとおり、被控訴人は著作権侵害のないことを認識しながら意図的に著作権侵害申告を行ったものではなく、基本的にYouTubeの著作権侵害に係る制度の範囲内での行動にとどまっていたとい えるから、著作権侵害を防ぐとの目的を明らかに超えて動画投稿者に著しい精神的苦痛等を与えるような場合に該当せず、動画投稿者の法律上保護される利益が違法に侵害されたとは認められず、不法行為の成立が認められる場合には該当しないと認められる。 したがって、本件においては、不正競争防止法2条1項21号(虚偽表示)、 4条に基づく損 る利益が違法に侵害されたとは認められず、不法行為の成立が認められる場合には該当しないと認められる。 したがって、本件においては、不正競争防止法2条1項21号(虚偽表示)、 4条に基づく損害賠償の他に、不法行為の成立は認められないというべきで ある。 ⑷ 控訴人の主張に対する判断控訴人は、原判決第3の1(控訴人の主張)⑴及び⑵並びに前記第2の4⑴アのとおり、本件著作権侵害申告により、控訴人の表現の自由等が侵害され、不法行為が成立すると主張するが、控訴人の主張は上記の判断を左右す るものではない。 2 争点⑵(損害額)について争点⑵につき、当裁判所は、原判決と同じく、被控訴人の行為によって控訴人に生じた損害の金額は、1万8111円であると認める。その理由は以下のとおりである。 ⑴ 控訴人各動画の再生回数に係る逸失利益本件著作権侵害申告により控訴人各動画が削除(配信停止)されたために、控訴人が得られなかった収入に係る損害(逸失利益)は、1万6511円であると認めるのが相当である。その理由は、次のとおり補正し、後記アのとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を、後記イのとおり当審に おける被控訴人の補充主張に対する判断を、それぞれ付加するほか、原判決16頁13行目から19頁25行目まで(原判決第4の2⑴)に記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決16頁14行目から17行目まで(原判決第4の2⑴ア)を次のとおり改める。 「YouTubeでは、グーグルが各チャンネルに様々な指標に基づいて再生回数1回当たりの広告収入額(この計算方法は公表されていない。)を割り当て、これに再生回数を乗じた金額が、広告収入として動画投稿者に支払われることとなっており、YouTube上の各チャン づいて再生回数1回当たりの広告収入額(この計算方法は公表されていない。)を割り当て、これに再生回数を乗じた金額が、広告収入として動画投稿者に支払われることとなっており、YouTube上の各チャンネルの「動画の分析情報」において、当該動画の視聴回数と推定収益が示されているので、この推 定収益を視聴回数で除することにより、当該動画の再生回数1回当たりの広 告収入額を推認することができる(甲14、32~35、94,168、弁論の全趣旨)。そして、甲14、32、33、34、35は、それぞれ控訴人動画1、2、3、4、5の「動画の分析情報」であり、控訴人各動画それぞれが再生された回数は、上記各証拠の「視聴回数」の箇所に記載された回数であり、この再生に応じて控訴人に支払われた広告収入の分配は、上記各証 拠の「推定収益」の箇所に記載された金額であるから、控訴人各動画の再生回数1回当たりの控訴人の広告収入額は、上記推定収益の金額を、上記再生回数(視聴回数)で除した額と認定することが相当であり、これを算出すると、以下の(ア)ないし(オ)のとおりとなる(小数第3位以下四捨五入)。」原判決17頁8行目ないし12行目(原判決第4の2⑴イ(イ))を次のとお り改める。 「控訴人各動画が削除されていた期間は、補正の上引用した前提事実⑶に示したように、次のとおりである。」原判決18頁15行目の「投稿から削除までの時間数」の次に「(補正の上引用した前提事実⑵)」を加える。 原判決20頁26行目末尾の後に行を改めて次のとおり加える。 「⑸ 損害の集計以上によれば、控訴人各動画についての損害額及び損害の合計額は、次のとおりである。 ア控訴人動画1 逸失利益77円と弁護士費用8円の合計85円イ控訴人動画2 「⑸ 損害の集計以上によれば、控訴人各動画についての損害額及び損害の合計額は、次のとおりである。 ア控訴人動画1 逸失利益77円と弁護士費用8円の合計85円イ控訴人動画2逸失利益7950円と弁護士費用770円の合計8720円ウ控訴人動画3逸失利益1588円と弁護士費用154円の合計1742円 エ控訴人動画4 逸失利益4766円と弁護士費用462円の合計5228円オ控訴人動画5逸失利益2130円と弁護士費用206円の合計2336円カ損害の合計額アないしオの合計1万8111円」 ア当審における控訴人の補充主張に対する判断(ア) 控訴人は、控訴人動画1の再生回数の推移からすれば、本件著作権侵害申告により失われた控訴人各動画の再生回数について、投稿から24時間経過後の控訴人各動画の再生回数を1日当たり5回と原判決が認定したのは不当であり、最初の24時間経過後、72時間までは、最初 の24時間の再生数の10分の1の再生数が発生し、その後は、72時間経過後から10日経過するまでの間はおよそ1日30回程度、10日経過後から30日経過するまでの間はおよそ1日15回程度、その後は1日5回程度再生すると考えるのが相当であると主張し、これによれば、本件著作権侵害申告のために失われた再生回数は、別紙1「控訴人各動 画に係る逸失利益」1ないし5記載のとおりであると主張する。 しかし、補正の上引用した前提事実⑵及び⑷のとおり、控訴人動画1と、控訴人動画2ないし5とは、取り扱っている将棋の対局や動画公開の時期が異なっており、控訴人動画2ないし5が削除されなかった場合に、その再生回数が控訴人動画1の再生回数と同様に推移したはずであ ると直ちに認めることはできない。控 いる将棋の対局や動画公開の時期が異なっており、控訴人動画2ないし5が削除されなかった場合に、その再生回数が控訴人動画1の再生回数と同様に推移したはずであ ると直ちに認めることはできない。控訴人動画2ないし5の投稿から削除までの時間帯における再生回数(原判決別紙「控訴人各動画再生回数の推移」)を、控訴人動画1の投稿からの同様の時間帯における再生回数と比較すると、控訴人動画2の再生回数は控訴人動画1の再生回数と同程度であるが、控訴人動画3ないし5の再生回数は控訴人動画1の再生 回数よりも大幅に少なくなっている。この事実は、控訴人の投稿した動 画が全て同様の再生回数をたどるものではなく、再生回数は動画によって異なることを示しており、このことからしても、控訴人動画2ないし5が削除されなかった場合の再生回数が、控訴人動画1と同様に推移したものと認定することはできない。 そして、控訴人各動画は、将棋の王将戦の対局に関するものであり、 2日間の対局の1日目終了後に2日目の対局の予想をしたり、対局終了後に対局の解説をしたりする内容である(補正の上引用した前提事実⑷)から、投稿から時間が経過するにつれて視聴者の関心が薄れていくと推認される。 これらの事情によれば、本件著作権侵害申告により控訴人各動画が削 除(配信停止)されたことによる控訴人の逸失利益を算出するに当たり、控訴人各動画全体について、投稿から24時間を経過した後の再生回数を1日当たり5回とすることは相当であると解される。 したがって、本件著作権侵害申告により失われた控訴人各動画の再生回数に関する原判決の認定は相当であり、控訴人の主張は採用すること ができない。 (イ) 控訴人は、前記第2の4⑴イ(ア)のとおり、動画1回当たりの収益が現実には0.5 た控訴人各動画の再生回数に関する原判決の認定は相当であり、控訴人の主張は採用すること ができない。 (イ) 控訴人は、前記第2の4⑴イ(ア)のとおり、動画1回当たりの収益が現実には0.5円を超えているものもあるから、控訴人各動画の再生1回当たりの利益は、平均として1再生当たり0.5円と認定すべきと主張する。 しかし、控訴人各動画以外の動画において、再生回数1回当たりの利益が0.5円を超えるものがあったとしても、控訴人が提出した証拠(甲14、32~35)を基に、控訴人各動画の再生1回当たりの利益(広告収入の分配)の金額を算出すると、原判決第4の2⑴ア(ア)ないし(オ)に記載の金額となり、いずれも0.5円を下回るから、本件著作権侵害 申告により控訴人各動画が削除されたことによる控訴人の逸失利益を算 出するに当たり、再生回数1回当たりの利益の金額としては、原判決第4の2⑴ア(ア)ないし(オ)に記載の金額を用いるのが相当であり、平均として1再生当たり0.5円と認定すべき理由はない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 (ウ) 控訴人は、前記第2の4⑴イ(ア)のとおり、本件各動画については、再 生数では明確に反映しない経済的損害もあり、再生数減少による逸失利益以外に、数字に表れない経済的損害もあるから、1動画当たり5万円の経済的損害の賠償が認められるべきと主張する。 しかし、控訴人が主張する上記損害が生じたと認めるに足りる証拠はなく、控訴人の上記主張は採用することができない。 イ当審における被控訴人の補充主張に対する判断他方、被控訴人は、前記第2の4⑵イ(ア)のとおり、控訴人各動画が投稿されてから24時間経過後における再生回数は零に等しいというべきであり、仮に一定の再生回 における被控訴人の補充主張に対する判断他方、被控訴人は、前記第2の4⑵イ(ア)のとおり、控訴人各動画が投稿されてから24時間経過後における再生回数は零に等しいというべきであり、仮に一定の再生回数が認められるとしても、せいぜい1日1回というべきであると主張する。 しかし、原判決別紙「控訴人各動画再生回数の推移」に記載された、控訴人動画1の再生回数の推移や、控訴人動画2ないし5の復元後の再生回数からすれば、控訴人各動画が投稿されてから24時間を経過した後には再生がされないとか、1日当たり1回の再生と認定すべきとは解されない。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑵ 精神的損害前記1のとおり、本件においては、不正競争防止法2条1項21号(虚偽表示)、4条に基づく損害賠償の他に、不法行為の成立は認められないというべきであるから、本件著作権侵害申告と相当因果関係のある精神的損害の発生は認められない。 ⑶ 異議申立費用 控訴人は、原判決第3の2(控訴人の主張)⑵及び前記第2の4⑴イ(イ)のとおり、異議申立てを弁護士に委任したことにより負担した16万5000円は、被控訴人の行為と相当因果関係のある控訴人の損害であると主張する。 しかし、YouTubeに投稿した動画に対して著作権侵害申告をされた動画の投稿者が行う異議申立ての手続は、前記1⑴イに認定のとおりであり、 弁護士の代理人に委任しなければ手続の遂行が困難であるとは認められない。 控訴人は、被控訴人に氏名及び住所を知られたくないと考えており、これらの情報を被控訴人に知られないようにするため代理人に手続を委任せざるを得なかった旨主張するが、本件著作権侵害申告の態様に照らし、控訴人が氏名及び住所を被控訴人に知られることによって、控 おり、これらの情報を被控訴人に知られないようにするため代理人に手続を委任せざるを得なかった旨主張するが、本件著作権侵害申告の態様に照らし、控訴人が氏名及び住所を被控訴人に知られることによって、控訴人に具体的な危険又は 不利益が生じるおそれがあったとは認められないから、控訴人が、異議申立ての手続を弁護士の代理人に委任した動機が控訴人の主張のとおりであったとしても、そのことをもって、異議申立ての手続の委任のために生じた費用が、被控訴人の本件著作権侵害申告と相当因果関係を有する損害と認められることにはならない。 したがって、控訴人の主張する異議申立ての費用が、被控訴人の行為と相当因果関係のある控訴人の損害であると認めることはできない。 ⑷ 予定していた動画の投稿ができなくなったことによる逸失利益(当審における控訴人の追加主張に基づく請求)ア控訴人は、前記第2の4⑶アのとおり、本件著作権侵害申告によって、 予定していた動画の投稿ができなくなり、これらの投稿予定動画の推定収益は本件著作権侵害申告と相当因果関係のある損害であると主張するので、以下検討する。 イ控訴人は、前記第2の4⑶ア(イ)、(カ)及び別紙3「投稿予定動画一覧」のとおり、被控訴人の本件著作権侵害申告により、YouTubeのシステ ム上現実に動画の投稿ができなくなった期間があり、この期間において投 稿を予定していた動画の推定収益が、本件著作権侵害申告と相当因果関係を有する損害であると主張する。 補正の上引用した原判決第2の2⑵、⑶及び⑸、前記1⑴アの認定事実及び弁論の全趣旨によれば、①YouTubeでは、動画の投稿者が著作権侵害の警告を受け、解除されていない警告が3回に達した場合、当該投 稿者のアカウントと関連付けられているチャン ⑴アの認定事実及び弁論の全趣旨によれば、①YouTubeでは、動画の投稿者が著作権侵害の警告を受け、解除されていない警告が3回に達した場合、当該投 稿者のアカウントと関連付けられているチャンネルは全て停止され、新たなチャンネルを作成することもできなくなり、当該投稿者は新たな動画の投稿ができなくなること、②控訴人は、令和5年1月22日、控訴人動画5について本件著作権侵害申告を受け、YouTube(グーグル)から著作権侵害警告を受けたが、同日の時点で、控訴人動画3及び4に対する 本件著作権侵害申告に基づいてされた著作権侵害警告が解除されておらず、解除されていない警告が3回に達したため、控訴人チャンネルは停止され、控訴人は新たな動画の投稿ができなくなったこと、③控訴人は、同月20日に控訴人動画3及び4に関する本件著作権侵害申告に対して異議申立てをしており、同年2月6日、この異議申立てに基づき控訴人動画 3が復元されるとともに、控訴人動画3に対する本件著作権侵害申告に基づいてされていた著作権侵害警告が解除され、これによって控訴人チャンネルの停止状態が終了し、控訴人が動画を投稿できるようになったことが認められる。このように、被控訴人の本件著作権侵害申告により、控訴人が、令和5年1月22日から同年2月6日までの間、YouTubeのシ ステム上動画を投稿できなくなったことが認められる。 控訴人は、投稿を予定した動画として、別紙3「投稿予定動画一覧」記載の動画のうち対象期間の14動画を主張するところ、控訴人は、別紙3「投稿予定動画一覧」により、B’棋士が対局者となった将棋の対局の全てを羅列し、それらについて、直前確認、封じ手予想、解説あり版、解説な し版等の投稿を予定していた旨主張するものである。確かに、控訴人各動 一覧」により、B’棋士が対局者となった将棋の対局の全てを羅列し、それらについて、直前確認、封じ手予想、解説あり版、解説な し版等の投稿を予定していた旨主張するものである。確かに、控訴人各動 画を含め、控訴人がYouTubeに投稿していた動画は、B’が対局者となった将棋の対局に関するものであると認められ(甲16、弁論の全趣旨)、控訴人がYouTubeのシステム上動画を投稿できなくなっていた期間において、B’が対局者となった将棋の対局が行われたことは認められる。 しかし、B’が対局者となった将棋の対局の全てについて控訴人が動画を投 稿していたと認めるに足りる証拠はなく、B’の対局について、どの程度の頻度でどのような内容の動画を投稿したのかも明らかでない。また、上記の投稿ができなくなった期間について、投稿を予定していた動画の具体的内容や数などは、控訴人提出の証拠によっては、これを認めるに足りず、上記期間において動画の投稿を準備していたことを具体的に裏付ける証 拠もない。 そうすると、控訴人がYouTubeのシステム上動画を投稿できなくなっていた期間において、B’が対局者となった将棋の対局が行われたとしても、控訴人が、動画を投稿できなくなっていなければ動画を投稿していたと認定することはできない。 以上によれば、控訴人がYouTubeのシステム上動画を投稿できなくなっていた期間において、投稿可能であったならば控訴人が動画を投稿していたと認めることはできず、上記期間において投稿を予定していた動画の推定収益が、本件著作権侵害申告と相当因果関係を有する損害であると認めることもできない。 ウ控訴人は、前記第2の4⑶ア(ウ)、(エ)、(カ)及び別紙3「投稿予定動画一覧」のとおり、①令和5年2月7日にYouTu 害申告と相当因果関係を有する損害であると認めることもできない。 ウ控訴人は、前記第2の4⑶ア(ウ)、(エ)、(カ)及び別紙3「投稿予定動画一覧」のとおり、①令和5年2月7日にYouTubeのシステム上動画を投稿できない状態が終了した後も、同月28日までは控訴人の異議申立てとして承認されていないものがあり、この状態でさらに著作権侵害申告を受ければアカウント停止となるおそれがあったから、控訴人はアカウント停止 の事態を恐れて動画を投稿することができない心理状態におかれ、②同日 に異議申立てが承認された後も、今後の異議申立てが不承認になる懸念が消えないことなどから、控訴人は、規則的に投稿していた動画の投稿を保留せざるを得なくなったとして、上記①の期間(令和5年2月7日から同月28日まで)及び②の期間(令和5年2月28日から令和6年3月31日まで)において投稿を予定していた動画を投稿することができず、これ らの投稿予定動画の推定収益が、本件著作権侵害申告と相当因果関係を有する損害であると主張する。 上記の控訴人の主張は、要するに、控訴人が新たな異議申立てやアカウント停止を恐れる心理的要因によって動画を投稿できなかったというものである。しかし、上記①及び②のいずれの期間についても、YouTu beのシステム上は、控訴人が動画を投稿することはできた。また、本件著作権侵害申告は、YouTubeの著作権侵害に係る制度に則って行われていたものであり、補正の上で引用した前提事実⑶並びに甲6、12、13及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、控訴人動画1及び2について令和4年2月28日に弁護士を代理人としてYouTubeに異議申立 てを行い、これらの動画は同年3月26日に復元され、控訴人動画3及び4については令和5 、控訴人は、控訴人動画1及び2について令和4年2月28日に弁護士を代理人としてYouTubeに異議申立 てを行い、これらの動画は同年3月26日に復元され、控訴人動画3及び4については令和5年1月20日、控訴人動画5については同月25日に弁護士を代理人としてYouTubeに異議申立てを行い、これらの動画はいずれも同年2月中に復元されていたものであり、弁護士の援助を受けられる状況において、異議申立てにより動画の復元も実現していた。この ような事情を考慮するならば、上記①及び②の期間において、客観的には、本件著作権侵害申告がされたことにより、控訴人が動画の投稿を差し控えなければならない状況に置かれていたとは認められず、控訴人が上記のような心理的要因によって動画を投稿しなかったとしても、本件著作権侵害申告と控訴人が動画を投稿しなかったこととの間に相当因果関係を認め ることはできない。 また、上記各期間において、投稿を予定していた動画の具体的内容や数などが、控訴人提出の証拠によってはこれを認めるに足りず、上記期間において動画の投稿を準備していたことを具体的に裏付ける証拠もないことは、前記イと同様である。 以上によれば、上記各期間において投稿を予定していた動画の推定収益 が、本件著作権侵害申告と相当因果関係を有する損害であると認めることもできない。 エ控訴人は、前記第2の4⑶ア(オ)、(カ)及び別紙3「投稿予定動画一覧」のとおり、令和5年1月9日の本件著作権侵害申告以降、アカウント停止の阻止のための対応に追われ、著作権侵害該当箇所の確認等に無駄に時間が 使われるなどして、規則的に投稿していた動画の作成時間を確保できず、動画の投稿ができなかったものであり、これらの投稿予定動画の推定収益が、本件著作権侵 作権侵害該当箇所の確認等に無駄に時間が 使われるなどして、規則的に投稿していた動画の作成時間を確保できず、動画の投稿ができなかったものであり、これらの投稿予定動画の推定収益が、本件著作権侵害申告と相当因果関係を有する損害であると主張する。 上記主張は、令和5年1月9日から、解除されていない著作権侵害警告が3回に達した同月22日までの期間に係る主張であると解される。 しかし、上記期間において、YouTubeのシステム上動画を投稿できなかったことはなく、控訴人は、同月10日に控訴人動画4の投稿をしているのであって、控訴人が動画を投稿することができない、又は動画の投稿を予定どおり行えない状況にあったと認めるに足りる証拠はない。 また、上記各期間において、投稿を予定していた動画の具体的内容や数 などが、控訴人提出の証拠によってはこれを認めるに足りず、上記期間において動画の投稿を準備していたことを具体的に裏付ける証拠もないことは、前記イ及びウと同様である。 以上によれば、上記期間において投稿を予定していた動画の推定収益が、本件著作権侵害申告と相当因果関係を有する損害であると認めることも できない。 オ上記イないしエの説示によれば、本件著作権侵害申告と相当因果関係のある損害として、予定していた動画の投稿ができなくなったことによる逸失利益を認めることはできない。 ⑸ 弁護士費用当裁判所も、被控訴人の行為と相当因果関係のある弁護士費用は1600 円と認めるのが相当であり、この金額を、控訴人各動画に係る逸失利益の金額の割合で按分して、本件著作権侵害申告のうち控訴人動画1に係るものによる弁護士費用の損害は8円、控訴人動画2に係るものによる弁護士費用の損害は770円、控訴人動画3に係るものによる弁護士費用 の金額の割合で按分して、本件著作権侵害申告のうち控訴人動画1に係るものによる弁護士費用の損害は8円、控訴人動画2に係るものによる弁護士費用の損害は770円、控訴人動画3に係るものによる弁護士費用の損害は154円、控訴人動画4に係るものによる弁護士費用の損害は462円、控訴人動 画5に係るものによる弁護士費用の損害は206円と認めるのが相当と判断する。その理由は、原判決第4の2⑷記載のとおりであるから、これを引用する。 3 争点⑶(差止めの可否)(当審における控訴人の追加主張に基づく争点)について 控訴人は、前記第2の4⑶イのとおり、被控訴人の不正競争行為に関して差止めを命ずる必要があると主張する。 そこで検討すると、控訴人は、前記第1の1(控訴の趣旨)⑶のとおりの差止請求を当審において追加し、差止めの対象とする被控訴人の行為を、控訴人が配信する動画が被控訴人の著作権を侵害している旨をグーグルに告げること としているが、将来仮に控訴人が被控訴人の著作権を侵害する動画を配信した場合も、当該動画が著作権侵害であることをグーグルに告げることが差止めの対象となるなど、差止めの対象とする行為が極めて広範であって、特定が不十分であり、このような差止請求を認める必要性は認められない。 また、被控訴人が、本件訴訟において、控訴人各動画が被控訴人の著作権を 侵害したとの主張をしておらず、本件著作権侵害申告が不正競争防止法2条1 行為21号に該当するとの控訴人の主張を争っていないことからすれば、被控訴人が再び控訴人の配信する動画について著作権侵害申告を行う可能性はそれほど高いとはいえず、この点も考慮に入れるならば、上記のような広範な差止めを認める必要性はなおさら認められない。 以上によれば、争点3に関する控訴人の主 動画について著作権侵害申告を行う可能性はそれほど高いとはいえず、この点も考慮に入れるならば、上記のような広範な差止めを認める必要性はなおさら認められない。 以上によれば、争点3に関する控訴人の主張は採用することができず、控訴 人の差止請求は認められない。 4 その他、控訴人が縷々主張する内容や被控訴人の主張を検討しても、当審における上記認定判断(原判決引用部分を含む。)は左右されない。 そうすると、原判決の結論のとおり、控訴人の請求(控訴人が当審で拡張、追加した請求も含む。)は、被控訴人に対し、不正競争防止法2条1項21号、 4条に基づき、1万8111円及びうち8805円(控訴人動画1及び2の損害額の合計)に対する令和4年2月12日(控訴人動画1及び2が削除された日)から、うち1742円(控訴人動画3の損害額)対する令和5年1月9日(控訴人動画3が削除された日)から、うち5228円(控訴人動画4の損害額)対する同月10日(控訴人動画4が削除された日)から、うち2336円 (控訴人動画5の損害額)対する同月22日(控訴人動画5が削除された日)から、各支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。 5 結論以上によれば、原判決は相当であり、本件控訴及び本件附帯控訴はいずれも 理由がなく、控訴人が当審で拡張、追加した請求は、いずれも理由がない。 よって、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官中平健 裁判官今井 裁判長裁判官中平健 裁判官今井弘晃 裁判官水野正則 (別紙2動画収益一覧、別紙3投稿予定動画一覧省略) 別紙1控訴人各動画に係る逸失利益 1 控訴人動画1投稿からの時間逸失利益算定の基礎となる再生回数最初の24時間(削除前)24時間から72時間経過までの48時間(削除前)4日から10日経過までの7日間(削除前)10日から30日経過までの20日間(削除前)30日経過後165回(5回×33日)総計165回 2 控訴人動画2投稿からの時間逸失利益算定の基礎となる再生回数最初の24時間32,394回24時間から72時間経過までの48時間3,239回4日から10日経過までの7日間210回10日から30日経過までの20日間300回30日経過後10回(5回×2日)総計19,956回(=36,153回‐16,197回) 3 控訴人動画3 投稿からの時間逸失利益算定の基礎となる再生回数最初の24時間9,507回24時間から72時間経過までの48時間950回4日から10日経過までの7日間210回10日から30日経過までの20日間285回(15回×19日)30日経過後(復元後)総計5,802回(=10,952回-5,150回) 4 控訴人動画4投稿からの時間 10日から30日経過までの20日間285回(15回×19日)30日経過後(復元後)総計5,802回(=10,952回-5,150回) 4 控訴人動画4投稿からの時間逸失利益算定の基礎となる再生回数最初の24時間12,888回24時間から72時間経過までの48時間1,288回4日から10日経過までの7日間210回10日から30日経過までの20日間285回(15回×19日)30日経過後(復元後)総計11,449回(=14,671回-3,222回) 5 控訴人動画5投稿からの時間逸失利益算定の基礎となる再生回数最初の24時間8,590回24時間から72時間経過までの48859回 時間4日から10日経過までの7日間210回10日から30日経過までの20日間300回30日経過後35回(5回×7日)総計5,699回(9,994回-4,295回) 6 逸失利益動画逸失利益(前記1~5の基礎となる再生回数に0.5円を乗じた金額)控訴人動画182円控訴人動画29,978円控訴人動画32,901円控訴人動画45,724円控訴人動画52,849円合計21,534円 以上

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