- 1/* -主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 花巻市教育委員会が平成19年1月24日付けで控訴人に対してした行政文書非開示決定処分を取り消す。 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 第2事案の概要 本件は,花巻市(以下,単に「市」ともいう。)の住民である控訴人が,花巻市情報公開条例(平成18年花巻市条例第19号。以下「本件条例」という。)に基づき,岩手県教育委員会(以下「県教育委員会」という。)が実施した平成18年度学習定着度状況調査に関する花巻市内の学校別明細につき開示請求をしたところ,花巻市教育委員会(以下「市教育委員会」という。)が非開示決定をしたため,この取消しを求めて行政訴訟を提起した事案である。 原審が控訴人の請求を棄却したため,控訴人が不服を申し立てた。 前提となる事実(1)本件に関する本件条例の規定本件条例には以下の規定がある。 第1条(目的)この条例は,地方自治の本旨にのっとり市民の知る権利を尊重し,行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により,市の保有する情報の一層の公開を図り,もって市の諸活動を市民に説明する責務が全うされるようにするとともに,市民の市政への参加を促進し,開かれた市政への推進に寄与することを目的とする。 - 2/* -第5条(開示請求権)何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,当該実施機関の保有する行政文書の開示を請求することができる。 第7条(行政文書の開示義務)実施機関は,開示請求があったときは,開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「非開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き,開示請求者に対し,当該行政文書を開示し 義務)実施機関は,開示請求があったときは,開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「非開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き,開示請求者に対し,当該行政文書を開示しなければならない。 1号ないし5号省略6号市の機関,国の機関,独立行政法人等,市以外の地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,次に掲げるおそれその他当該事務又は当該事業の性質上,当該事務又は当該事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれのあるものア,イ省略ウ調査研究に係る事務に関し,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれエ,オ省略(甲4)(2)岩手県の学習定着度状況調査県教育委員会は,平成18年10月4日及び5日,県内の小学校第3学年から中学校第2学年までのすべての児童生徒を対象として,小学校第3学年及び第4学年は国語及び算数,同第5学年及び第6学年は国語,社会,算数及び理科,中学校は国語,社会,数学,理科及び英語の教科で,学習定着度状況調査(以下「本件定着度調査」という。)を実施し,同年12月18日,その結果を平成18年度学習定着度状況調査結果報告書(以下「本件報告- 3/* -書」という。)として公表した。 本件報告書の8頁には,「表-4散らばりの度合と正答率別の分布割合」と題する,岩手県(以下,単に「県」ともいう。)全体の学年別の各教科の平均正答率及び標準偏差と,児童生徒を正答率により6つのグループに分類し,各グループに属する児童生徒の割合を示した表(以下「本件分布表」という。)が掲載されている。 本件報告書には,本件分布表の基となった県内の各市町村別及び学校別の明細は掲載されていない。 (乙1,弁論の全趣旨)(3)控訴人の本件開示請求市の住民である控 表」という。)が掲載されている。 本件報告書には,本件分布表の基となった県内の各市町村別及び学校別の明細は掲載されていない。 (乙1,弁論の全趣旨)(3)控訴人の本件開示請求市の住民である控訴人は,本件条例に基づき,平成19年1月5日,本件条例2条1号所定の実施機関である市教育委員会に対し,本件分布表の市内の学校別明細が記載された文書(以下「本件文書」という。)の開示を請求した(以下「本件開示請求」という。)。 (甲2,弁論の全趣旨)(4)本件処分市教育委員会は,本件開示請求に対し,平成19年1月24日,本件文書には本件条例7条6号所定の非開示情報が記録されているとして,同文書を非開示とする旨の決定(以下「本件処分」という。)をし,その旨控訴人に通知した。 市教育委員会が本件文書の記録が非開示情報に当たるとしたのは,学校別の明細を公表すると,テストの点数という限られた結果だけによる学校間の序列化や比較が生ずるおそれがあり,そうなると,平均点を上げるための偏った指導や過度の競争を招き子どもたちの心身のバランスのとれた健全育成に支障を生じるおそれがある,市内には小規模校・小規模学級が多く存在するため,クラスの中に一人でも学習に特段の遅れのある子どもがいる場合,- 4/* -平均点が著しく低下し,これが公表されることによって,クラスの中でいじめや差別につながるおそれがある,したがって,公表することによって各学校や保護者に本件定着度調査に対する抵抗感等が生じ,本件定着度調査や国及び県の調査の円滑な実施に支障が出るおそれがあるというものであった。 (甲3,弁論の全趣旨)(5)本件訴訟の提起控訴人は,平成19年2月6日,本件処分の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 (本件記録上明らかな事実) 本件の争点と当事者の主張本件の争 った。 (甲3,弁論の全趣旨)(5)本件訴訟の提起控訴人は,平成19年2月6日,本件処分の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 (本件記録上明らかな事実) 本件の争点と当事者の主張本件の争点は,本件文書が本件条例7条6号に規定された非開示情報を記録した行政文書に該当するか否かである。 争点に関する当事者の主張は,以下のとおりである。 (1)被控訴人ア県教育委員会では,平成15年度から毎年1回,児童生徒一人ひとりの学習の定着状況を把握し,その結果を基に指導の充実を図るとともに,全県的な規模で学習の定着状況を把握し,明らかになった学習指導上の問題点を教育施策に反映させることによって児童生徒の学力向上に資する目的で本件定着度調査を実施しており,調査結果については,「学習定着度状況調査結果報告書」をもって公表してきた。しかし,この調査結果の公表に当たっては,学校,学級間の序列化及び過度の競争につながらないよう十分に配慮することが必要であるなどの観点から,県全体の教科ごとの正答率等を公表するにとどめ,市町村別,学校別の正答率等の公表は行っていない。 イ本件文書は,本件条例7条6号ウの非開示情報が記録された行政文書であり,本件文書が開示されると,以下のとおり,本件定着度調査の適正な- 5/* -遂行に支障を及ぼすおそれがある。 (ア)学校別の正答率等が公表されるようになると,学校及び教師は,その心理的プレッシャーから,調査直前に繰り返し前回の調査問題に取り組ませるなど,順位,点数を上げるためのテスト対策をこれまで以上に行うおそれがあるが,限られた授業時間数の中でそのようなテスト対策がはびこれば,出題内容に直接関係する部分のみの定着は図られても,その他の資質や能力,すなわち,学ぶ意欲や自ら課題を見付け,解決する能力等の育成は図ら ,限られた授業時間数の中でそのようなテスト対策がはびこれば,出題内容に直接関係する部分のみの定着は図られても,その他の資質や能力,すなわち,学ぶ意欲や自ら課題を見付け,解決する能力等の育成は図られないこととなる。 その結果,①テストに出るかもしれないから覚えなさい,何回もやりなさいなどといった,子どもの問題意識や追究意欲を無視した授業,表面的な授業が蔓延することになり,それによって子どもが学びから逃避し,子どもの主体性が発達しないことになる,②自分の点数が悪いから学級・学校の成績が悪いのだという自責の念や,学校の成績が悪いのはあの子が原因ではないかというレッテル張りへと発展することにより,学校不適応や子ども同士でのいじめが起こる,③自分の学校は頭が悪い,あそこの学校は頭が良いなどの先入観が形成されることにより,愛校心,郷土愛が欠如し,誤った劣等感を持つといった現象が起こり,知識・技能面に偏った,自ら学ぶ意欲を持たない子どもが増える,といったことなどが危惧される。 このように,順位や点数そのものに収束してしまう危険性が高い学校別の結果の公表は,確かな学力を子どもに付けさせる上ではマイナスに作用し,課題の把握,授業の改善,学力向上という本件定着度調査実施の本来の目的に支障を来すおそれがある。 (イ)花巻市内には,小学校26校,中学校12校が存在するが,地域により,小規模な学校も多く,平成19年4月1日現在,児童生徒数が1名以上5名以下の学年が22学年,7校に存在する。これらの学級では,- 6/* -平均点が公表されれば,保護者にとって,自分の子や一部の児童生徒の得点が分かれば,その他の子の得点も容易に特定されることとなる。 また,1学年1学級という学級も,85学級,18校に存在し,これらの学級では,学年の平均点がイコール学級の平均点 の子や一部の児童生徒の得点が分かれば,その他の子の得点も容易に特定されることとなる。 また,1学年1学級という学級も,85学級,18校に存在し,これらの学級では,学年の平均点がイコール学級の平均点となり,公表により頭の良いクラス,頭の悪いクラスと見られがちになる。 さらに,近年増加している軽度発達障害児などは,特殊学級ではなく普通学級に在籍しながら個別支援を受ける例が増えており,花巻市においても,平成18年度市就学指導委員会において「特殊学級適」と判定を受けた児童生徒42名のうち26名が普通学級を選択している。また,「要観察」と判定を受けた児童生徒は79名に上る。そして,これら個別支援を要する子どもらも,普通学級の一員として本件定着度調査を受け,集計に含まれることから,該当する児童生徒が在籍する学級,特に小規模学級においては,一人,二人の対象児の存在のために大きく平均点が下がる場合があるところ,これが公表されれば,当該児童生徒に対する差別,排除等の感情を惹起するおそれや,当該児童生徒自身の自尊心が傷付けられるおそれがある。 (ウ)学校別結果を公表することは,今後も継続される本件定着度調査のほか,平成19年度から実施される文部科学省の全国学力・学習状況調査(以下「全国学力テスト」という。)など,将来の同種の事務,事業の適正な執行に支障を及ぼすおそれがある。 すなわち,文部科学省の実施する全国学力テストについては,学校の序列化,過度の競争をあおるおそれがあることや,児童生徒の個人情報の観点から,実施そのものについて,国会質疑や各自治体において激しい議論が戦わされた経緯があり,同省において,実施方法,公表方法については,学校の序列化・過度の競争につながらない配慮をする旨説明し,調査結果の公表は,国全体,都道府県単位,政令指定都市等の単位 しい議論が戦わされた経緯があり,同省において,実施方法,公表方法については,学校の序列化・過度の競争につながらない配慮をする旨説明し,調査結果の公表は,国全体,都道府県単位,政令指定都市等の単位- 7/* -での公表のみとし,市町村別や学校別などの結果は,情報公開法に基づく請求がされても非開示とする旨を実施規定において明示するなどして,各方面の理解を得たところである。しかるところ,仮に花巻市において本件文書を公開することとなれば,文部科学省の全国学力テストについても,本件条例に基づいて開示を求められた場合,学校別等の結果を非開示とすることができるかどうかは不確実となってしまい,調査実施の前提が崩れる結果,全国学力テストに不参加を表明する自治体が増加し,教育再生に係る施策の一つとしての全国学力テストが不可能になるおそれが非常に大きい。 (2)控訴人ア被控訴人の主張は争う。 全国には,大分県,和歌山県,広島県三次市,東京都品川区等,本件定着度調査と同様の学力テストの結果を学校別に公表している自治体も存在しており,これを公表したからといって,本件定着度調査や全国学力テストなどに支障を及ぼすおそれはない。学力向上は,学校の力だけでは達成することはできず,学校,家庭,地域の協働が必須条件となるものであるところ,テストの結果を隠すような相手との協働は成立しない。学校別の調査結果を公表することこそが学力向上の第一歩となるのである。 イ被控訴人は,学校別の結果を公表することによって,序列化や過度の競争が起き,テスト対策がはびこり,いじめが起きるなどの弊害が生ずると主張するが,これらの弊害は,学校及び教師が教育の本質を忘れたから起きるものであって,学校別の結果を公表するから起きるという関係にはない。すなわち,被控訴人の主張する弊害は,学校 どの弊害が生ずると主張するが,これらの弊害は,学校及び教師が教育の本質を忘れたから起きるものであって,学校別の結果を公表するから起きるという関係にはない。すなわち,被控訴人の主張する弊害は,学校長や教師が不正行為を行い,また,なすべきことをしないから起こるにすぎず,結果の公表が不祥事を招くのではない。障害児などが平均点を下げ,そのため障害児へのいじめや差別が起こるという点も,そのことによって県教育委員会の事務の- 8/* -公正や能率が不当に阻害されることにはならない。 ウまた,文部科学省の全国学力テストについても,同省作成の実施要領では,「市町村教育委員会が,保護者や地域住民に対して説明責任を果たすため,当該市町村における公立学校全体の結果を公表することについては,それぞれの判断にゆだねること。また,学校が,自校の結果を公表するについては,それぞれの判断にゆだねること。」としており,市町村教育委員会や学校が説明責任を果たすことを求めている。なお,枚方市の市立小中学校の学力診断テストにおける学校別の平均得点等が同市の情報公開条例の規定する非開示情報に当たるか否かが争われた訴訟において,大阪高等裁判所は,当該情報は非開示情報に当たらないと判断している(甲14)。すなわち,学校別の結果を公表しても,上記学力診断テストに支障を生じないと判断しているのである。 エ被控訴人は,花巻市に小規模の学校,学級が多いことを理由に公表することの弊害が大きいと主張するが,学力だけを考えるならば,教師一人当たりの生徒数が少ない方が有利なのであるから,小規模学校,小規模学級の本件定着度調査の結果は,市平均や県平均を上回る結果が出てしかるべきである。特に少人数学級の結果を積極的に公表し,少人数学級が学力向上の必要条件であることを市民の常識にすることが学 校,小規模学級の本件定着度調査の結果は,市平均や県平均を上回る結果が出てしかるべきである。特に少人数学級の結果を積極的に公表し,少人数学級が学力向上の必要条件であることを市民の常識にすることが学力向上への道である。 仮に少人数学校の成績を公表することによって特定の児童生徒の得点が分かってしまうというのであれば,例えば児童生徒数が5人未満の学校を公表の対象から外すなどの措置を執ればよいのである。 オ文部科学省の実施した全国学力テストの結果では,秋田県が最上位になった。これは,少人数教育の結果であると思われるところ,秋田県においてこれを公表し,岩手県においても少人数教育に取り組んでいれば,岩手県が最上位にランクされたかもしれないのである。教える側の都合で情報を非開示とすることによって,学校の主役である子どもらが受けるマイナ- 9/* -スは大きいというべきである。 第3当裁判所の判断 事実関係について証拠(甲5,6,9ないし12,13の1及び2,乙1ないし5,7ないし12,13の1ないし7,14,15の1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 (1)本件定着度調査についてア県教育委員会は,昭和56年度から平成13年度まで,県内の小中学校の児童生徒の学習状況を把握することを目的として,年度によって対象学年や対象教科を変えながら,全児童生徒の10%程度を抽出して本件定着度調査を行ってきたが,平成14年度は,小学校第5学年及び中学校第2学年の悉皆調査として,小学校は国語・算数,中学校は国語・数学・英語において実施した。平成15年度からは,小学校第3学年から中学校第3学年までのすべての児童生徒を対象として,小学校第3学年・第4学年は国語・算数,同第5学年・第6学年は国語・社会・算数・理科,中学校は国 て実施した。平成15年度からは,小学校第3学年から中学校第3学年までのすべての児童生徒を対象として,小学校第3学年・第4学年は国語・算数,同第5学年・第6学年は国語・社会・算数・理科,中学校は国語・社会・数学・理科・英語において実施した。また,平成16年度からは,小学校第5学年及び中学校第2学年において,宮城県,和歌山県,福岡県と同一問題で調査を行っている。 平成18年度の本件定着度調査は,小学校第3学年から中学校第2学年までのすべての児童生徒を対象として実施し,小学校第5学年と中学校第2学年においては,宮城県,和歌山県,福岡県と同一の問題を使用した。 イ本件定着度調査は,各小中学校において児童生徒一人ひとりの学習の定着状況を把握し,その結果を基に指導の充実を図ること,また,全県的な規模で学習の定着状況を把握するとともに,一部の学年については他県と共同して調査を行い,明らかになった学習指導上の問題点を教育施策に反映させることにより,岩手県の児童生徒の学力向上に資することを目的と- 10/* -しており,具体的には,学校及び教員が,指導した成果を調査結果に基づいて検証し,結果に基づいて県教育委員会が発行した事後指導の手引等を参考に補充指導し,その取組の成果を次年度の定着度調査の結果によって検証するという一連の教育活動の一つとして位置付けられている。この調査は,教師側には,自らの指導の方法を振り返る機会となり,児童生徒側には,自らの学習成果を把握する機会になっていると考えられている。 ウ県教育委員会は,本件定着度調査を行うについて実施要領を定め,各市町村教育委員会に通知したが(乙3),この実施要領では,調査結果の取扱いについて,次のように規定されている。 (ア)各学校の取組について各学校においては,調査結果を十分に分析し,結果を基 め,各市町村教育委員会に通知したが(乙3),この実施要領では,調査結果の取扱いについて,次のように規定されている。 (ア)各学校の取組について各学校においては,調査結果を十分に分析し,結果を基に指導計画を立案し,事後指導を行う。 (イ)公表について県教育委員会においては,調査結果を研修事業の推進,今後の教育施策に生かすため,次の3点について公表する。 ①県全体の教科ごとの全体正答率,小問別正答率,観点・領域別正答率,正答率別の児童生徒の割合等②教育事務所別の教科ごとの全体正答率,小問別正答率,小問正答数による度数分布等③小学校第5学年,中学校第2学年については,宮城県,和歌山県,福岡県の教科ごとの小問正答率,観点・領域別の正答率等,小問正答数による度数分布等(ウ)留意点調査結果が学校・学級間の序列化及び過度の競争につながらないよう十分に配慮すること。 エ本件定着度調査は,平成18年10月4日,5日に行われたが,調査の- 11/* -対象となった児童生徒数は,小学校第3学年が1万2252名,同第4学年が1万2472名,同第5学年が1万2654名,同第6学年が1万3459名,中学校第1学年が1万2951名,同第2学年が1万3043名であった。 (2)他の自治体及び国における同種調査結果の取扱いア他の自治体における調査(ア)本件定着度調査と同様の目的の,「学力調査」,「学力テスト」,「学力診断テスト」などと称される調査(以下においてこれらの調査を「学力テスト」という。)は,平成18年当時,全国で38の都道府県や12の政令指定都市等で実施されており,中には大分県,和歌山県,広島県三次市,東京都品川区など,平均正答率等を学校別に公表している自治体もある。また,東京都は,区市町村別の成績及び順位を公表し,区教育 の政令指定都市等で実施されており,中には大分県,和歌山県,広島県三次市,東京都品川区など,平均正答率等を学校別に公表している自治体もある。また,東京都は,区市町村別の成績及び順位を公表し,区教育委員会の中には区内の学校の成績順位を公表しているところもある。 (イ)このうち,広島県三次市では,児童生徒数が5人以下の学年を除き,調査結果を学校別,学年別,教科別に公表しているが,同市教育委員会は,公表することにより保護者を始め市民全体に学校教育に対する関心が高まり,各学校の教育内容が向上しているとしている。また,和歌山県では,学校別の調査結果を公表しているが,同県教育委員会は,学校別の調査結果を公表するねらいとして,学校間の実践交流をよりいっそう促進することを挙げ,他の成績優秀な学校の取組を学ぶことにより,自校の指導改善につなげることを意図しているとしている。大分県では,各教科ごとに8ないし10項目ある観点等の平均到達度がすべて目標値に到達している学校名を公表しているが,同県教育委員会は,公表した理由として,各学校が他校の成果を参考にして,自校の学力向上に活用することができること,教職員,児童生徒が学力向上について意欲をも- 12/* -って取り組むことができること,学校・家庭・地域が一体となって,学力向上に取り組む機運を高めることができることを挙げている。東京都品川区教育委員会は,学校別の調査結果の公表の意義として,子どもの学力のレベルを明らかにするというよりも,むしろ教師や学校のレベルを明らかにすることにあるとしている。 (ウ)他方,広島県三次市の平成17年度に実施した学力テストにおいて,ある中学校の教務主任が途中退席した生徒の答案用紙の未解答部分に答を書き込んだ,ある小学校の校長が受検した児童の約半数の答案用紙につき誤答を 広島県三次市の平成17年度に実施した学力テストにおいて,ある中学校の教務主任が途中退席した生徒の答案用紙の未解答部分に答を書き込んだ,ある小学校の校長が受検した児童の約半数の答案用紙につき誤答を正答に書き換えた,ある学校ではテスト対策のため前年度に出題された問題と同一問題で模擬試験を事前に行っていたなどの事実が次々に発覚し,新聞等に多数掲載された。また,東京都足立区教育委員会では,学力テストの調査結果について学校別の結果を公表していたが,同区教育委員会が実施した平成18年度の学力テストにおいて,障害のある児童3人を採点から外した小学校や試験中に校長と教員が児童の答案を指さして誤答に気付かせたり,前年の問題を不正にコピーし,児童に繰り返し練習させたりし,そのため,前年は区内小学校72校中44位であったが,平成18年度は1位になった小学校があったことが大きく報道され,同区教育委員会は,「序列に注目するような公表方法は改め,今後は順位を出さないようにしたい。」との見解を示した。なお,同区教育委員会が学校別の調査結果を公表するようになったのは,東京都23区の中で足立区の成績が最下位となったことによるものであった。 イ国における調査(ア)文部科学省は,全国的な義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から,各地域における児童生徒の学力・学習状況を把握・分析することにより,教育及び教育施策の成果と課題を検証し,国がその改善を図るとともに,各教育委員会,学校等が全国的な状況との関係におい- 13/* -て自らの教育及び教育施策の成果と課題を把握し,その改善を図ることを目的として,平成19年度から全国学力テストを実施することにした。 この調査は,国・公・私立学校の小学校第6学年,中学校第3学年の,原則として全児童生徒を対象とするものであり し,その改善を図ることを目的として,平成19年度から全国学力テストを実施することにした。 この調査は,国・公・私立学校の小学校第6学年,中学校第3学年の,原則として全児童生徒を対象とするものであり,教科は小学校第6学年が国語と算数,中学校第3学年が国語と数学とされた。 (イ)文部科学省は,全国学力テストを実施するに当たり,実施要領を定めて都道府県教育委員会等に通知したが(乙4),この実施要領によると,調査結果の取扱いなどついては,以下のとおりとされている。 ①調査結果の公表文部科学省は,国全体の状況及び国・公・市立学校別の状況,都道府県ごとの公立学校全体の状況,地域の規模等に応じたまとまり(大都市(政令指定都市及び東京23区),中核都市,その他の市,町村,または,へき地)における公立学校全体の状況を公表する。 ②調査結果の提供文部科学省は,学校を設置管理する都道府県教育委員会,市町村教育委員会,学校法人等に調査結果を提供する。各学校に関する調査結果は,当該学校全体,各学級及び各児童生徒に関するものとし,学校は,各児童生徒に対して,当該児童生徒に係る調査結果を提供するものとする。また,文部科学省は,都道府県教育委員会に対し,当該都道府県における公立学校全体,域内の各市町村における公立学校全体及び各市町村が設置する各学校に関する調査結果を提供する。 ③調査結果の取扱いに対する配慮事項調査結果の公表に当たっては,調査の目的が学力の特定の一部分であることを明示すること。数値の公表に当たっては,それにより示される調査結果についての読みとり方を併せて示すこと。 調査の実施主体が国であることや市町村が基本的な参加主体である- 14/* -ことなどにかんがみて,都道府県教育委員会は,域内の市町村及び学校の状況について個々の市町村名・学校名 併せて示すこと。 調査の実施主体が国であることや市町村が基本的な参加主体である- 14/* -ことなどにかんがみて,都道府県教育委員会は,域内の市町村及び学校の状況について個々の市町村名・学校名を明らかにした公表は行わないこと。市町村教育委員会も,域内の学校の状況について個々の学校名を明らかにした公表は行わないこと。 市町村教育委員会が,保護者や地域住民に対して説明責任を果たすため,当該市町村における公立学校全体の結果を公表することについては,それぞれの判断にゆだねること。また,学校が,自校の結果を公表することについては,それぞれの判断にゆだねること。ただし,本調査により測定できるのは学力の特定の一部分であることや,学校評価の中で体力なども含めた教育活動の取組の状況等を示し,調査結果の分析を踏まえた今後の改善施策等を示すなど,序列化につながらない取組が必要と考えられること。 都道府県教育委員会が,例えば,教育事務所単位で調査結果を公表するなど個々の市町村名が明らかとならない方法で公表することは可能であると考えられること。また,都道府県等が独自に実施する学力調査の公表の取扱いは,もとよりそれぞれ自治体の判断にゆだねられること。 (ウ)全国学力テストを実施することについては,国会で度々取り上げられ質疑が交わされたが,平成18年3月16日に開催された参議院文教科学委員会において,当時の小坂憲次文部科学大臣は,市町村の学校ごとの状況を順位付けして発表すると種々の弊害が生ずるので,公表の仕方を十分検討する必要がある旨の答弁をし,同年6月2日に開催された教育基本法に関する特別委員会においても,学校別に順位付けして公表するようなことはさせるつもりはない旨の答弁をした。 (3)花巻市の小中学校の状況花巻市には,平成18年5月1日現在,市立小 された教育基本法に関する特別委員会においても,学校別に順位付けして公表するようなことはさせるつもりはない旨の答弁をした。 (3)花巻市の小中学校の状況花巻市には,平成18年5月1日現在,市立小学校が26校,市立中学校- 15/* -が12校存在し,小学校の児童総数は5710名,中学校の生徒総数は3152名である。市の地域によっては小規模な学校も多く,全児童数が100名未満の小学校が10校もあり,そのうちの2校は児童が18名しかいない。 また,児童生徒数が1名以上5名以下の学年が22学年,7校に存在し,1学年1学級という学級も85学級,18校に存在する。 また,平成18年度の就学指導委員会において「特殊学級適」と判定された児童生徒42名のうち26名が普通学級を選択したほか,「要観察」との判定を受けた児童生徒も79名いる。 争点について(1)本件定着度調査ア上記1で認定したところによれば,本件定着度調査は,国が実施した全国学力テストや他の自治体が実施している学力テストと同様,児童生徒の学力・学習状況を把握・分析することにより,教育及び教育施策の成果と課題を検証し,その改善を図ることを目的としたものといえる。したがって,本件定着度調査は,入学試験のような個々の児童生徒の学力を判定するためのものでないことはもちろんであるが,各学校の教育成果や教育施策を判定すること自体を目的としたものでもなく,あくまで児童生徒の学力の向上を図るために教育やその施策を改善するための資料を獲得することを目的としたものというべきである。 イしたがって,本件定着度調査の目的を達成するためには,児童生徒の学力・学習状況をできるだけ正確に把握する必要があるが,把握すべき学力・学習状況は,ふだんの教育に基づくものであることが必要であり,本件定着度調査の結果 着度調査の目的を達成するためには,児童生徒の学力・学習状況をできるだけ正確に把握する必要があるが,把握すべき学力・学習状況は,ふだんの教育に基づくものであることが必要であり,本件定着度調査の結果の向上,すなわち成績の向上のみを目的とした教育を施すことが好ましくないことはいうまでもない。また,本件定着度調査を含め,一般に,学力テストで把握される児童生徒の学力・学習状況の良否は,学校教育によるところが大きいものの,それのみで決まるものではなく,- 16/* -保護者の教育に対する熱意や経済力,地域の教育環境など様々な要因によっても左右されることはよく知られているところであるし,公教育は,学力の向上のみを図ればよいというわけのものでもないから,学力テストにおける調査結果の良否が直ちに学校教育の良否に結び付くものではない。 (2)学校別の調査結果の公表ア上記(1)でみたように,学力テストにおける調査結果の良否が直ちに学校教育の良否に結び付くものではないにもかかわらず,学力テストにおける調査結果の良否は,学校における教育や教育施策の良否に結び付けられて考えられやすいことは否定し難い。前記1で認定したように,学校別の調査結果を公表している自治体はいくつかあるが,そのねらいは,学校別の調査結果を明らかにすることによって,教師や学校の教育の在り方を保護者や地域住民に明らかにし,保護者や地域住民の協力を得て,学力テストにおいて成績が不良であった学校や教師を糺し,優良であった学校や教師の教育方法を学ばせ,それにより教育や教育施策を改善させて地域全体の学力向上を図ることにあるものと思われる。このような考えは,学力テストの調査結果の良否は学校教育の良否に結び付くことを前提にしているものであり,一面の真理を表しているものと思われる。なぜならば,自校 力向上を図ることにあるものと思われる。このような考えは,学力テストの調査結果の良否は学校教育の良否に結び付くことを前提にしているものであり,一面の真理を表しているものと思われる。なぜならば,自校の児童生徒の学力・学習状況を把握し,その向上に努める教師が多ければ,当該学校の児童生徒の学力・学習状況自体は従前よりも向上し,それは学力テストの調査結果に反映すると思われるところ,学力テストの結果を学校別に公表すれば,保護者や地域住民が当該地域の学校の児童生徒の学力や教師及び学校の教育の在り方等により関心を持つようになり,そうなれば,教師や学校も児童生徒の学力の向上をより強く意識した教育をすることに務め,その結果,児童生徒の学力の向上が果たされるものと思われるからである。また,学力テストの学校別の調査結果の公表には,教師や学校の間に児童生徒の学力の向上に向けた,良い意味での競争が起こること- 17/* -も期待し得るものと思われ,それによっても地域全体の学力向上が図られるものと考えられる。 学校別の調査結果の公表にはこのようなメリットもあることは否定し難いものと考えられ,この点をいう控訴人の主張は,その限りで肯認することができる。 イしかしながら,反面,学校別の調査結果の公表にはデメリットも存することは明らかである。 まず,学力テストの調査結果は,点数で表されるものであるから,調査結果が公表されれば,その結果がどのような状況の下で,どのようにして得られたものかなどは捨象され,結果のみが独り歩きをしやすいことは明らかと思われる。例えば,ある学校の平均得点が当該地域の平均得点より低かったとすると,当該学校がどのような教育環境の下にあり,保護者の教育に対する熱意や経済力がいかなるものであるか,模擬試験などの学力テストへの対策はとられたか否かな 均得点が当該地域の平均得点より低かったとすると,当該学校がどのような教育環境の下にあり,保護者の教育に対する熱意や経済力がいかなるものであるか,模擬試験などの学力テストへの対策はとられたか否かなどは考慮されずに,教師や学校の教育の在り方のみが批判の対象とされたり,逆に保護者を含めた児童生徒の能力,地域の教育環境等の問題に帰せられたりし,結果として,あの学校は教師が悪いとか,あの学校の児童生徒は能力的に劣るとかといった評価がされやすく,いわゆる学校間の序列化につながりかねないのである。そして,国民に対して等しく教育を施すことを目的とした公教育の在り方からすれば,公立学校,特に小中学校の序列化は,決して好ましいものではない。地域社会で生活する児童生徒には小中学校を選択する余地はほとんどないところ,序列が下位の学校で学ばなければならない児童生徒は,不公平感や劣等感を抱いたり,当該学校や地域社会への反感を抱いたりして学習そのものへの意欲が減退することが予想されるし,他の地域からのいわれなき差別を受けるおそれもないではないからである。 また,学力テストの調査結果は,必ずしも児童生徒の学力・学習状況を- 18/* -正しく反映するとはいえない。模擬試験を繰り返すなどすれば学力テストの調査結果は向上すると思われるのであるが,こうしたことによる調査結果の向上は,ふだんの教育や教育施策の結果とはいえない。しかし,調査結果の公表によって児童生徒や教師・学校が一律に評価されることになれば,良く評価されたいと思うのは人の常であるから,良い意味での競争を超え,ふだんの教育や教育施策とは離れて,とりあえず調査結果を良くしたいと思う学校や教師が出てくるものと思われる。調査結果の良否に教師の処遇などの問題が伴ったり,保護者等の学校教育に対する過度の干渉があっ だんの教育や教育施策とは離れて,とりあえず調査結果を良くしたいと思う学校や教師が出てくるものと思われる。調査結果の良否に教師の処遇などの問題が伴ったり,保護者等の学校教育に対する過度の干渉があったりすればなおのことである。その結果,点数を上げるための模擬試験を繰り返したり,答を書き直させるなどの不正な行為をしたりするのみならず,どうしてもテストで良い成績を残せない児童生徒に学力テストの受検を控えさせたいとする教師や学校が出てくることにもなりかねない。 また,そのような極端なことまではいかなくても,ふだんの教育や教育施策自体が学力テスト対策中心となり,子どもの問題意識や追究意欲を軽視したものになりがちになることもあるものと思われる。他方,児童生徒においても,テストの結果に偏重した価値観を抱き,真理の探究や個人の価値の尊重を軽視し,「あの子」がいるから自分の学校の成績が悪いといったレッテルを貼ったり,自分がいるから学校の成績が悪くなると自責の念を持ったりする子どもらが出てくる可能性もあり,いじめや不登校の原因にもなりかねない。そうなっては,心身ともに健康な国民の育成を目的とした公教育本来の責務(教育基本法1条)を果たすことができなくなるおそれもある。 その上,前記1で認定した花巻市の小中学校の状況,すなわち,花巻市には小規模な学校が多く,平成18年5月1日現在の市立小学校26校,市立中学校12校のうち児童生徒数が1名以上5名以下の学年が22学年,7校に存在し,1学年1学級という学級も85学級,18校に存在するこ- 19/* -とや,就学指導委員会において「特殊学級適」と判定された児童生徒のうちかなりのものが普通学級を選択したほか,「要観察」との判定を受けた児童生徒も数多くいることにかんがみるならば,花巻市の学校別の調査結果を公表する 員会において「特殊学級適」と判定された児童生徒のうちかなりのものが普通学級を選択したほか,「要観察」との判定を受けた児童生徒も数多くいることにかんがみるならば,花巻市の学校別の調査結果を公表することによって,とりわけ小規模学校においては,特定の児童生徒の学力や特定の地域の児童生徒の学力が明らかにされるおそれが強く,例えば,あの地域の子は問題があるといった評価を招きかねないし,「特殊学級適」と判定された児童生徒には普通学級を選択させないといった児童生徒の能力を理由にした差別的取扱いを助長させることにもなりかねないものと思われる。調査結果の公表は,小規模学校の多い地域にあってはより多くの弊害をもたらすものと思われる。 ウ控訴人は,上記のような弊害は教師や学校が不正行為をし,あるいはなすべきことをしないから起こることであって,学校別の調査結果を公表するから起こるのではないと主張するが,それは半面の真理にすぎない。現実の社会においては教師が理想どおりに行動するとは限らないのであるから,いくら教師や学校の行動を批判しても上記のような弊害を防ぐことはできない。また,控訴人は,小規模学校ほど少人数教育が施され,成績が良いはずであるから,公表することに問題がないようにいうが,それは,花巻市の小規模学校があえて少人数教育を行っているのではなく,地域の住民が少ないがゆえ学年や学級の人数が必然的に少なくなってしまうことや,小規模であるがゆえのメリットがあったとしても学校全体の教師数が少ないなどといった小規模であるがゆえのデメリットもあるという現実を無視した議論というべきであり,公表によって起こるであろう小規模学校の問題に目を向けたものとはいえない。 エ前記1で認定したように,本件定着度調査の実施要項が,その留意点として,調査結果が学校・学級間の序列 論というべきであり,公表によって起こるであろう小規模学校の問題に目を向けたものとはいえない。 エ前記1で認定したように,本件定着度調査の実施要項が,その留意点として,調査結果が学校・学級間の序列化及び過度の競争につながらないよう十分に配慮することとし,学校別の調査結果の公表を予定しておらず,- 20/* -また,文部科学省も,全国学力テストについて,その実施要領で都道府県教育委員会や市町村教育委員会に対し個々の学校名が明らかになるような公表をしないことを求めているのであるが,これらの県教育委員会や国の措置は,学校名を明らかにした調査結果の公表が学校の序列化や過度の競争につながりやすいと考えた結果であることは明らかと思われる。 (3)本件文書の非開示情報該当性前記前提となる事実のとおり,本件条例7条6号ウは,市の機関,国の機関,独立行政法人等,市以外の地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,調査研究に関する事務にあってはその公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれがあるなど,当該事務又は当該事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれのあるものを非開示情報と規定している。 そして,控訴人が開示を求めている本件文書には,本件定着度調査の花巻市における学校別,学年別の各教科の平均正答率及び標準偏差等が記載されているのであるから,県教育委員会の調査研究に関する事務に関する情報が記載されているものといえる。 しかるところ,上記(2)でみたように,本件定着度調査の学校別の調査結果の公表には,一面においてメリットもあるものの,他面において学校の序列化や過度の競争,更にはこれに伴う児童生徒に対する様々な悪影響などのデメリットもあるといわざるを得ないところ,過度の競争が起これば,調査結果の成績を上げ メリットもあるものの,他面において学校の序列化や過度の競争,更にはこれに伴う児童生徒に対する様々な悪影響などのデメリットもあるといわざるを得ないところ,過度の競争が起これば,調査結果の成績を上げるための種々の対策が取られたり,成績の悪い児童生徒に受検を控えさせたりすることが危惧されることは,前記1で認定した広島県三次市や東京都足立区の例などをみても明らかであり,そうなっては,児童生徒のふだんの学力・学習状況をできるだけ正確に把握するという本件定着度調査の目的に沿わない結果になる。したがって,本件定着度調査の学校別の調査結果を公にすることによって,本件定着度調査の事務の適正な遂行に- 21/* -支障を及ぼすおそれがあるものというべきである。 県教育委員会において本件定着度調査の学校別の調査結果の公表を予定していないことや,本件定着度調査と同様の目的で実施された国の全国学力テストにおいても文部科学省が都道府県教育委員会や市町村教育委員会に学校名が明らかになるような公表をしないことを求めていることも,公表することによって学校の序列化や過度の競争が起きるのみならず,それによって本来の調査事務の適正な遂行自体に支障が生ずるおそれがあるからであると思われる。 したがって,本件定着度調査の学校別,学年別の各教科の平均正答率及び標準偏差等の記録は,本件条例7条6号ウが規定する非開示情報に該当するものというべきであり,本件文書の非開示情報該当性を認めた本件処分に違法はないものというべきである。 なお,控訴人は,全国学力テストの実施要領を基に,国は市町村教育委員会に説明責任を果たすよう求めていると主張するが,控訴人指摘の実施要領は,前記1で認定したように,市町村教育委員会に当該市町村の公立学校全体の調査結果を公表することについての判断をゆだねたにす 委員会に説明責任を果たすよう求めていると主張するが,控訴人指摘の実施要領は,前記1で認定したように,市町村教育委員会に当該市町村の公立学校全体の調査結果を公表することについての判断をゆだねたにすぎず,本件で問題になっている学校別の調査結果を公表することについての判断をゆだねたものではなく,かえって,学校名が明らかになるような公表をしないよう求めていることは明らかである。控訴人の上記主張は,採用することができない。 結論 以上によれば,本件処分の取消しを求める控訴人の本件請求は理由がないからこれを棄却すべきものであり,この判断と同旨の原判決は相当である。 よって,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。 仙台高等裁判所第2民事部- 22/* -裁判長裁判官大橋弘裁判官鈴木桂子裁判官岡田伸太
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