- 1 -令和2年2月28日判決言渡平成31年(ネ)第10003号特許権侵害差止等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成28年(ワ)第5345号)口頭弁論終結日令和2年1月24日判決 控訴人兼被控訴人株式会社MTG(以下「一審原告」という。) 同訴訟代理人弁護士關健一同訴訟代理人弁理士小林徳夫 被控訴人兼控訴人株式会社ファイブスター(以下「一審被告」という。) 同訴訟代理人弁護士冨宅恵 西村啓同補佐人弁理士高山嘉成主文 1 一審原告の控訴及び訴えの変更に基づき,原判決を次のとおり変更する。 (1) 一審被告は,原判決別紙被告製品目録1ないし9記載の美容器を譲渡し,又は譲渡の申出をしてはならない。 (2) 一審被告は,原判決別紙被告製品目録1ないし9記載の美容器を廃棄せよ。 (3) 一審被告は,一審原告に対し,4億4006万円及びうち3810 - 2 -万円に対する平成28年6月15日から,うち405万円に対する平成29年8月26日から,うち2億5785万円に対する同年11月17日から,うち1億4006万円に対する令和元年5月15日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 一審原告のその余の請求を棄却する。 2 一審被告の控訴を棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを20分し,その1を一審原告の負担とし,その余を一審被告の負担とする。 4 この判決は 審原告のその余の請求を棄却する。 2 一審被告の控訴を棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを20分し,その1を一審原告の負担とし,その余を一審被告の負担とする。 4 この判決は,第1項(1),(2)及び(3)に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 一審原告(1) 原判決を次のとおり変更する。 (2) 一審被告は,原判決別紙被告製品目録1ないし9記載の美容器を譲渡し,又は譲渡の申出をしてはならない。 (3) 一審被告は,原判決別紙被告製品目録1ないし9記載の美容器を廃棄せよ。 (4) 一審被告は,一審原告に対し,5億円及びうち3810万円に対する平成28年6月15日から,うち405万円に対する平成29年8月26日から,うち2億5785万円に対する同年11月17日から,うち2億円に対する令和元年5月15日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (一審原告は,当審において,上記美容器の製造,使用,貸渡し,輸出及び貸渡しの申出の差止めの訴えを取り下げ,3億円の損害賠償請求を,上記のように拡張した。) 2 一審被告(1) 原判決のうち一審被告敗訴部分を取り消す。 - 3 -(2) 上記取消部分に係る一審原告の請求を棄却する。 第2 事案の概要 1 訴訟の概要(1) 本件は,発明の名称を「美容器」とする後記2(2)の各特許権を有する一審原告が,一審被告に対し,一審被告が原判決別紙「被告製品目録」1ないし9記載の美容器(以下,それぞれ「被告製品1」等といい,総称して「被告製品」という。)の製造,使用,譲渡,貸渡し,輸出,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をすることは,上記各特許権を侵害すると主張して,①特許法100条1項及び2項に れ「被告製品1」等といい,総称して「被告製品」という。)の製造,使用,譲渡,貸渡し,輸出,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をすることは,上記各特許権を侵害すると主張して,①特許法100条1項及び2項に基づき,上記各特許権による被告製品の製造販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに,②民法709条に基づき,一部請求として,後記2(2)イの特許権の侵害による,特許法102条1項の損害金3億円及びうち3810万円に対する平成28年6月15日(訴状送達の日の翌日)から,うち405万円に対する平成29年8月26日(平成29年8月15日付け訴えの変更申立書の送達日の翌日)から,うち2億5785万円に対する同年11月17日(平成29年11月13日付け訴えの変更申立書(2)の送達日の翌日)から,各支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 (2) 原審は,被告製品の製造販売等は,後記2(2)イの特許権を侵害すると判断した上で,被告製品の製造販売等の差止め及び廃棄,並びに,損害金1億0735万0651円及びうち3810万円に対する平成28年6月15日から,うち405万円に対する平成29年8月26日から,うち6520万0651円に対する同年11月17日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,一審原告の請求を認容し,その余の請求を棄却した。 (3) 一審原告及び一審被告は,いずれも,原判決を不服として控訴した。 また,一審原告は,当審において,被告製品の製造,使用,貸渡し,輸出及び貸渡しの申出の差止めの訴えを取り下げ,後記2(2)アの特許権の侵害による損害賠償請求もするとともに請求を拡張し,一部請求として5億円及びうち3810万円に - 4 -対する平成28年6月15日から,う めの訴えを取り下げ,後記2(2)アの特許権の侵害による損害賠償請求もするとともに請求を拡張し,一部請求として5億円及びうち3810万円に - 4 -対する平成28年6月15日から,うち405万円に対する平成29年8月26日から,うち2億5785万円に対する同年11月17日から,うち2億円に対する令和元年5月15日(令和元年5月14日付け訴えの変更申立書の送達の日の翌日)から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を求めている。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)(1) 当事者一審原告は,健康機器,美容機器,医療用具,医薬部外品の企画,開発,製造,販売等を業とする株式会社である。 一審被告は,健康機器,美容健康機器等の販売,輸出入業務等を業とする株式会社である。 (2) 一審原告の有する特許権(甲1~4)一審原告は,以下のア及びイの特許に係る特許権を有する(以下,各特許を「本件特許1」,「本件特許2」といい,本件特許1に係る発明を「本件発明1」といい,本件発明1に係る特許権を「本件特許権1」といい,本件特許2の請求項1に係る発明を「本件発明2」といい,本件発明2に係る特許権を「本件特許権2」といい,本件特許1及び本件特許2に係る明細書及び図面をそれぞれ「本件明細書1」,「本件明細書2」という。原判決別紙特許公報参照)。 ア本件特許1登録番号特許第5356625号発明の名称美容器出願日平成25年6月20日(原出願日平成23年11月16日)出願番号特願2013-129765号登録日平成25年9月6日イ本件特許2 - 5 -登録番号特許第 出願日平成23年11月16日)出願番号特願2013-129765号登録日平成25年9月6日イ本件特許2 - 5 -登録番号特許第5847904号発明の名称美容器出願日平成26年9月26日(原出願日平成23年11月16日)出願番号特願2014-197056号登録日平成27年12月4日(3) 本件特許1,2に係る無効審判の状況(甲14,37,46,53,乙153,165,弁論の全趣旨)一審被告の申し立てた本件特許1に係る無効審判(無効2016-800086)について,特許庁は,平成29年10月24日,特許請求の範囲及び明細書の訂正を認め,請求が成り立たない旨の審決をした。同審決に対する取消訴訟(平成29年(行ケ)第10201号事件。以下「別件訴訟1」という。)について,知的財産高等裁判所は,平成30年9月4日,請求棄却の判決をし,同判決は確定したことから,同審決も確定した。 一審被告の申し立てた本件特許2に係る無効審判(無効2017-800074)について,特許庁は,同年3月29日に請求が成り立たない旨の審決をし,同審決に対する取消訴訟(平成30年(行ケ)第10048号。以下「別件訴訟2」という。)について,知的財産高等裁判所は,平成31年2月6日,請求を棄却した。 (4) 特許請求の範囲ア本件特許1の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである。 ハンドルの先端部に一対のボールを,相互間隔をおいてそれぞれ一軸線を中心に回転可能に支持した美容器において,往復動作中にボールの軸線が肌面に対して一定角度を維持できるように,ボールの軸線をハンドルの中心線に対して前傾させて構成し,一対のボール支持軸の開き 一軸線を中心に回転可能に支持した美容器において,往復動作中にボールの軸線が肌面に対して一定角度を維持できるように,ボールの軸線をハンドルの中心線に対して前傾させて構成し,一対のボール支持軸の開き角度を65~80度,一対のボールの外周面間の間隔を10~13mmとし,前記ボールは,非貫通状態でボール支持軸に軸受部材を介して支持されており,ボールの外周面を肌に押し当ててハンドルの先端から - 6 -基端方向に移動させることにより肌が摘み上げられるようにしたことを特徴とする美容器。 イ本件特許2の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。 基端においてハンドルに抜け止め固定された支持軸と,前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え,その回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器において,前記回転体は基端側にのみ穴を有し,回転体は,その内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態で前記支持軸に軸受け部材を介して支持されており,軸受け部材は,前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされ,前記軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突き出るとともに,軸受け部材は係止爪の前記基端側に鍔部を有しており,同係止爪は前記先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有し,前記回転体は内周に前記係止爪に係合可能な段差部を有し,前記段差部は前記係止爪の前記基端側に係止されるとともに前記係止爪と前記鍔部との間に位置することを特徴とする美容器。 (5) 構成要件の分説ア本件発明1の構成要件の分説本件発明1の構成要件は,次のとおり分説される。 A ハンドルの先端部に一対のボールを,相互間隔をおいてそれぞれ一軸線を中心に回転可能に支持した美容器である。 本件発明1の構成要件の分説本件発明1の構成要件は,次のとおり分説される。 A ハンドルの先端部に一対のボールを,相互間隔をおいてそれぞれ一軸線を中心に回転可能に支持した美容器である。 B 往復動作中にボールの軸線が肌面に対して一定角度を維持できるように,ボールの軸線をハンドルの中心線に対して前傾させて構成している。 C 一対のボール支持軸の開き角度を65~80度とする。 D 一対のボールの外周面間の間隔を10~13mmとする。 X 前記ボールは,非貫通状態でボール支持軸に軸受部材を介して支持されている。 E ボールの外周面を肌に押し当ててハンドルの先端から基端方向に移動 - 7 -させることにより肌が摘み上げられるようにしている。 イ本件発明2の構成要件の分説本件発明2の構成要件は,次のとおり分説される。 F 基端においてハンドルに抜け止め固定された支持軸と,前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え,その回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器である。 G 前記回転体は基端側にのみ穴を有し,回転体は,その内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態で前記支持軸に軸受け部材を介して支持されている。 H 軸受け部材は,前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされている。 I 前記軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突き出ている。 J 軸受け部材は係止爪の前記基端側に鍔部を有している。 K 同係止爪は前記先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有している。 L 前記回転体は内周に前記係止爪に係合可能な段差部を有し,前記段差部は前記係止爪の前記基端側に 記先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有している。 L 前記回転体は内周に前記係止爪に係合可能な段差部を有し,前記段差部は前記係止爪の前記基端側に係止されるとともに前記係止爪と前記鍔部との間に位置している。 (6) 一審被告の行為(甲21,22,乙1~7,弁論の全趣旨)一審被告は,被告製品について,少なくとも平成27年12月4日から平成29年5月8日までの間,業として販売又は販売の申出をしていた。 (7) 被告製品の構成ア本件発明1との関係に係る被告製品1ないし7の構成a グリップとグリップの先端に挿入されて取り付けられている二股部とからなる本体部の先端部に,一対の洋なし状のローリング部を支持軸を中心に回転可能に支持した美容器。 b 2本の支持軸はグリップに対して前傾している。 - 8 -c 2本の支持軸の開き角度は74~75度である。 d ローリング部の外周面の間隔は,それぞれ,本判決別紙「写真1~7」のとおりである。 x 二つのローリング部は,非貫通状態で2本の支持軸にそれぞれ軸受け部材を介して支持されている。 e 二つのローリング部の外周面を肌に押し当ててグリップの先端から基端方向に本体を移動させることにより,肌が摘み上げられるようにしている。 イ本件発明1との関係に係る被告製品8,9の構成a グリップとグリップの先端に挿入されて取り付けられている二股部とからなる本体部の先端部に,一対の洋ナシ状のローリング部を,支持軸を中心に回転可能に支持した美容器。 b 2本の支持軸はグリップに対し前傾している。 c 2本の支持軸の開角度は75.5~76度である。 d ローリング部の外周面の間隔は,それぞれ,本判決別紙「写真8,9」のとおりであ た美容器。 b 2本の支持軸はグリップに対し前傾している。 c 2本の支持軸の開角度は75.5~76度である。 d ローリング部の外周面の間隔は,それぞれ,本判決別紙「写真8,9」のとおりである。 x 二つのローリング部は,非貫通状態で2本の支持軸にそれぞれ軸受け部材を介して支持されている。 e 二つのローリング部の外周面を肌に押し当ててグリップの先端から基端方向に本体を移動させることにより,肌が摘み上げられるようにしている。 ウ本件発明2との関係に係る被告製品1ないし9の構成(被告製品1ないし4については本判決別紙「参考図1の1ないし3」を,被告製品4ないし9については本判決別紙「参考図2の1ないし3」を参照。被告製品4には,本判決別紙「参考図1の1ないし3」と本判決別紙「参考図2の1ないし3」の2種類の構造のものがある。)f 支持軸は基端において二股部の先端に抜け止め固定されており,ローリング部が,支持軸に回転可能に支持されており,ローリング部により身体に対し - 9 -て美容的作用を付与するようにした美容器である。 g ローリング部は,基端側のみに開口を有する中空材であり,その中空内には,先端側に空隙を設けた状態で,先端側から円筒状の金具1(円筒部材)及びリング状の金具2(円筒状リング)が,ローリング部1と相対回転不能に嵌め込まれている。 また,ローリング部は,その中空内に支持軸の先端が位置する非貫通状態であり,ローリング部,円筒状の金具1(円筒部材)及びリング状の金具2(円筒状リング)は,軸受け部材を介して,支持軸に回転可能に支持されている。 h 軸受け部材は,ローリング部の開口とは反対側となる先端側で,支持軸に対し,抜け止め部材で抜け止めされている。 i 軸受け部材の周面には,係止爪が突出し して,支持軸に回転可能に支持されている。 h 軸受け部材は,ローリング部の開口とは反対側となる先端側で,支持軸に対し,抜け止め部材で抜け止めされている。 i 軸受け部材の周面には,係止爪が突出している。 j 軸受け部材の基端側に鍔部が設けられている。 k 軸受け部材の係止爪は,先端側に向かうほど軸受け部材の回転中心との距離が短くなる傾斜面を有している。 l ローリング部の中空内の円筒状の金具1(円筒部材)は,その基端側内周面において他の部分に比較して内径の大きな大径部分を有し,係止爪が当該大径部分に位置している。ローリング部の中空内のリング状の金具2(円筒状リング)は係止爪の基端側に係止されるとともに,係止爪と鍔部との間に位置している。 3 争点(1) 被告製品は,本件発明1の技術的範囲に属するか(争点(1))。 (2) 本件特許1は,特許無効審判により無効にされるべきものか(争点(2))。 (韓国意匠第30-0408623号公報(乙31の1)を主引用例とする進歩性欠如の主張は当審において撤回された。)ア明確性要件(特許法36条6項2号)違反の有無(争点(2)ア)(当審で追加された争点)イフランス共和国第2891137号公報(乙50の1。以下「乙50文 - 10 -献」という。)を主引用例とする進歩性欠如の有無(争点(2)イ)(当審で追加された争点)ウ登録実用新案第3159255号公報(乙45。以下「乙45文献」という。)を主引用例とする進歩性欠如の有無(争点(2)ウ)(当審で追加された争点)(3) 被告製品は,本件発明2の技術的範囲に属するか(争点(3))。 (4) 本件発明2に係る本件特許2は,特許無効審判により無効にされるべきものか(争点(4))。 (実開平6-366 点)(3) 被告製品は,本件発明2の技術的範囲に属するか(争点(3))。 (4) 本件発明2に係る本件特許2は,特許無効審判により無効にされるべきものか(争点(4))。 (実開平6-36635号公報(乙44。以下「乙44文献」という。)を主引用例とする進歩性欠如の主張は当審において撤回された。)ア乙45文献を主引用例とする進歩性欠如の有無(争点(4)ア)イ特開平2-104359号公報(乙135。以下「乙135文献」という。)を主引用例とする進歩性欠如の有無(争点(4)イ)(当審で追加された争点)(5) 一審原告の損害額(争点(5))第3 争点に対する当事者の主張 1 被告製品は,本件発明1の技術的範囲に属するか(争点(1))について【一審原告の主張】(1) 構成要件Aの充足性についてア被告製品の「グリップ」と「二股部」は本件発明1の「ハンドル」に相当する。 イ本件明細書1には,本件発明1の「ボール」は,バルーン形状,断面楕円形状,断面長円形状等を含む(段落【0050】,【0052】)と記載されているから,被告製品の「洋ナシ状」のローリング部も本件発明1の「ボール」に含まれる。一審被告は,本件発明1の「ボール」は,支持軸の先端側が真円状のボールと同じ半球状のものでなければならないと主張するが,そのような限定解釈をする理由はない。別件訴訟1の判決も,そのような限定解釈はしていない。 したがって,被告製品の「ローリング部」は本件発明1の「ボール」に相当する。 - 11 -ウ被告製品の「ローリング部」は支持軸を中心に回転可能に支持されている。 エよって,被告製品は本件発明1の構成要件Aを充足する。 (2) 構成要件Bの充足性についてア被告製品の「グリップ」と「二股部」は リング部」は支持軸を中心に回転可能に支持されている。 エよって,被告製品は本件発明1の構成要件Aを充足する。 (2) 構成要件Bの充足性についてア被告製品の「グリップ」と「二股部」は本件発明1の「ハンドル」に相当し,被告製品の「ローリング部」は本件発明1の「ボール」に相当し,このローリング部が支持軸を中心に回転可能に支持されているから,ローリング部の支持軸の軸線が,本件発明1の「ボールの軸線」に該当する。 イ本件明細書1の段落【0018】及び図3,5からすると,本件発明1の「中心線」とは,ハンドルの側面方向視におけるハンドルの最も厚い部分の外周接線の間の角度を二分する線と平行な線であることは明らかである。 被告製品のローリング部の支持軸の軸線は,上記意義におけるハンドルの「中心線」に対し前傾しているから,被告製品は本件発明1の「ボールの軸線をハンドルの中心線に対して前傾させて」を充足する。 ウしたがって,被告製品は,本件発明1の構成要件Bを充足する。 (3) 構成要件Cの充足性について被告製品は,本件発明1の構成要件Cを充足する。 (4) 構成要件Dの充足性についてア被告製品の「ローリング部」は本件発明1の「ボール」に相当する。 イ本件明細書1の段落【0021】には,「ボール17の外周面の間隔Dは,特に肌20の摘み上げを適切に行うために・・・このボール17の外周面間の間隔Dが8mmに満たないときは,ボール17間に位置する肌20に対し摘み上げ効果が強く作用しすぎて好ましくない」と記載されており,同記載からすると,本件発明1の「一対のボールの外周面間の間隔」は,肌が挟まれるに際し最もその間隔が狭い箇所を前提にしていることは明らかである。そして,本件明細書1の図面5のD(間隔)も,一対のボールの最小間隔 と,本件発明1の「一対のボールの外周面間の間隔」は,肌が挟まれるに際し最もその間隔が狭い箇所を前提にしていることは明らかである。そして,本件明細書1の図面5のD(間隔)も,一対のボールの最小間隔を示しており,同図と上記段落の記載を勘 - 12 -案すると,本件発明1の「一対のボールの外周面間の間隔」とは,一対のボールの間の最も近接している外周面間の距離を意味するというべきである。 被告製品のローリング部の最小間隔は,以下の表のとおりとなり,いずれも10~13mmの範囲にあるから,被告製品は「一対のボールの外周面間の間隔を10~13mmとし」を充足する。 被告製品111.58㎜被告製品211.62㎜被告製品312.11㎜被告製品410.73㎜被告製品510.54㎜被告製品612.08㎜被告製品710.44㎜被告製品810.00㎜被告製品911.52㎜ウしたがって,被告製品は,本件発明1の構成要件Dを充足する。 (5) 構成要件Xの充足性について被告製品の「ローリング部」は本件発明1の「ボール」に相当し,支持軸がローリング部を貫通することなく,かつ,ローリング部は軸受け部材を介して支持軸に支持されているのであるから,被告製品は,本件発明1の構成要件Xを充足する。 (6) 構成要件Eの充足性について被告製品の「ローリング部」は本件発明1の「ボール」に相当するから,被告製品は,本件発明1の構成要件Eを充足する。 【一審被告の主張】(1) 被告製品が本件発明1の構成要件Cを充足することは認める。 (2) 本件発明1の「ボール」(構成要件A,B,D,E及びX)を具備しないこと - 13 -ア本件発明1の「ボール 被告製品が本件発明1の構成要件Cを充足することは認める。 (2) 本件発明1の「ボール」(構成要件A,B,D,E及びX)を具備しないこと - 13 -ア本件発明1の「ボール」の意義について別件訴訟1の判決は,本件発明1の「ボール」の形状について,真円状のもの,及び,支持軸の先端側は真円状のボールと同じ半球状であり,ハンドル11側は半球よりも曲率の大きな曲面形状のものであると認定した。そして,上記判決は,この認定を前提として,上記のようなものであれば,肌を摘み上げることができ,しかも,長くその摘み上げ状態を保持できるから,本件発明1の作用効果を奏すると判断した。 したがって,本件発明1の「ボール」は,支持軸の先端側が真円状のボールと同じ半球状のものでなければならない。 イ被告製品の充足性被告製品のローリング部は,支持軸の先端側において真円状のボールと同じ半球状ではなく(乙149),被告製品は,上記判決が認定した作用効果を奏しない(乙150~152〔枝番を含む。〕)。 ウしたがって,被告製品は,本件発明1の「ボール」を具備せず,本件発明1の構成要件A,B,D,E及びXを充足しない。 (3) 本件発明1の「ボールの軸線をハンドルの中心線に対して前傾させて」(構成要件B)を充足しないことア 「ハンドルの中心線」の意義について本件発明1の「ハンドルの中心線」を,技術的整合性をもって解釈すると,構成要件Bは,以下の三つの解釈が成り立ち得る。 ① 本件明細書1の図3に記載された形状のハンドルに限定し,「前記ハンドル11の中心線(ハンドル11の最も厚い部分の外周接線zの間の角度を二分する線と平行な線)x」(段落【0018】)とする。 ② 本件明細書1の段落【0018】の記載のみに基づき「前記ハ 「前記ハンドル11の中心線(ハンドル11の最も厚い部分の外周接線zの間の角度を二分する線と平行な線)x」(段落【0018】)とする。 ② 本件明細書1の段落【0018】の記載のみに基づき「前記ハンドル11の中心線(ハンドル11の最も厚い部分の外周接線zの間の角度を二分する線と平行な線)x」とする。 - 14 -③ 本件明細書1の段落【0057】には,ハンドルの形状として円筒状,円柱状,角柱状等に変更することができる旨の記載があるところ,これらの形状は「中心」を観念できる対称な形状であることから,「ハンドル」は,中心線を観念できるような対称な形状とする。 イ被告製品の充足性(ア) 前記アの①の解釈の場合本件明細書1の図3に記載された形状のハンドルと被告製品のグリップは,異なる形状であるから,被告製品は本件発明1の「ボールの軸線をハンドルの中心線に対して前傾させて」を充足しない。 (イ) 前記アの②の解釈の場合被告製品のグリップの最も厚い部分は,正面視におけるグリップの根元部分である(乙1~7)から,グリップの中心線は,グリップの根元部分の外周接線の間の角を二分する線となるが,その中心線に対して,被告製品のローリング部の軸線は前傾していない。 したがって,被告製品は本件発明1の「ボールの軸線をハンドルの中心線に対して前傾させて」を充足しない。 (ウ) 前記アの③の解釈の場合被告製品の二本の支持軸は,グリップに対して前傾してはいるものの,グリップの形状は正面視において非対称な形状であり中心線を観念することができないから,構成要件Bの「ハンドルの中心線」との構成を有しておらず,軸線がハンドルの中心線に対して前傾しているとはいえない。 したがって,被告製品は本件発明1の「ボ であり中心線を観念することができないから,構成要件Bの「ハンドルの中心線」との構成を有しておらず,軸線がハンドルの中心線に対して前傾しているとはいえない。 したがって,被告製品は本件発明1の「ボールの軸線をハンドルの中心線に対して前傾させて」を充足しない。 ウよって,被告製品は本件発明1の構成要件Bを充足しない。 (4) 被告製品が本件発明1の「一対のボールの外周面間の間隔を10~13mmとし」(構成要件D)を充足しないこと - 15 -ア 「一対のボールの外周面間の間隔」の意義(ア) バルーン状のボールにおいて,摘み上げられた肌が保持されているのは,一対のボールの最短箇所ではなく,直径部よりも僅かに支持軸基端側に移動された地点の間である。 そして,本件明細書1の図5においては,ボール17の先端から直径Lまでの距離Mと,ボールの直径Lから間隔D地点までの距離Nとの比を用いることで,上記「僅かに支持軸基端側」の地点を特定することができるが,上記NとMの比は0. 7(N/M=0.7)である。 本件明細書1には,バルーン状のローラについて別途ボールの外周面の間隔を示した図が存在しないから,本件明細書1にバルーン状のボールの外周面の間隔が開示されているといえるためには,図5が図8及び9においても当てはまるということが必要であり,そうすると,バルーン状の一対のボール17の外周面の間隔は,バルーン状のボール17の直径の中心mから,半径Mの0.7倍分だけ平行移動した地点の間ということになる。 (イ) 一審原告は,本件発明1の「一対のボールの外周面間の間隔」とは,一対のボールの間の最も近接している外周面間の距離を意味すると主張する。 しかし,本件発明1の特許請求の範囲には,最も狭い部分が一対のボールの外周 本件発明1の「一対のボールの外周面間の間隔」とは,一対のボールの間の最も近接している外周面間の距離を意味すると主張する。 しかし,本件発明1の特許請求の範囲には,最も狭い部分が一対のボールの外周面間の間隔であると限定されておらず,本件明細書1においても,最も狭い部分が一対のボールの外周面間の間隔であると記載されていない。 また,バルーン状のローラにおいて,「一対のボールの外周面間の間隔」をボールの間の最も近接している外周面間の距離であるとした場合,ローラの基端部分を少し伸ばして,最も狭い部分の間隔を10mm未満とすると,肌に接触する部分は変わらず,作用効果に変化は生じないにもかかわらず,本件発明1の技術的範囲に入らなくなり,技術的矛盾が生じる。 したがって,一審原告の上記主張は理由がない。 イ被告製品の充足性 - 16 -被告製品の,一対のローリング部の最大直径の中心から先端側までの距離Mに対して,0.7倍分だけ該中心から基端側に平行移動したときの外周面上の地点間の間隔は,いずれも,13mmよりも大きい(乙177~189)。 したがって,被告製品は本件発明1の「一対のボールの外周面間の間隔を10~13mmとし」を充足しない。 ウよって,被告製品は本件発明1の構成要件Dを充足しない。 2 本件特許1は,特許無効審判により無効にされるべきものか(争点(2))について争点(2)のア~ウについての当事者の主張は,別紙「争点(2)についての当事者の主張」のとおりである。 3 被告製品は,本件発明2の技術的範囲に属するか(争点(3))について【一審原告の主張】(1) 被告製品は,本件発明2の「回転体」を具備することア本件発明2に係る特許請求の範囲には,特定事項としてキャップ材29 に属するか(争点(3))について【一審原告の主張】(1) 被告製品は,本件発明2の「回転体」を具備することア本件発明2に係る特許請求の範囲には,特定事項としてキャップ材29は記載されておらず,また,本件明細書2にも,キャップ材29が本件発明2の必須の構成要素である旨の記載はない。 したがって,キャップ材29は,本件発明2の構成要素と解することはできないから,被告製品がキャップ材29を備えていないことを理由に構成要件F,G,H,K,Lを充足しないということはできない。 イ一審被告は,別件訴訟2において,一審原告は,キャップ材29は,本件発明2の「回転体」の構成要素であると主張し,同訴訟の判決でもそのように認定されたと主張する。 しかし,一審原告は,別件訴訟2において,実施例レベルにおけるキャップ材29は,本件発明2の構成要件の「回転体」の一部であると主張したのであり,上記「回転体」がキャップ材29を必須の構成要素とするものであると主張したのではないし,判決もそのように認定したものではない。 - 17 -(2) 被告製品は,本件発明2の構成要件Fを充足すること本件発明2の「支持軸の先端側に回転可能に支持された」という文言を読めば,当業者は,支持軸の基端側ではなくその先端側に回転体が支持されているという意味であると理解できる。 被告製品においては,支持軸がその基端側において二股部の先端に抜け止め固定されており,その逆の先端側において,支持軸それ自体の先端側には空隙があるものの,軸受け部材を介してローリング部が支持されており,また,ローリング部により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器であるから,被告製品は,構成要件Fを充足する。 (3) 被告製品は,本件発明2の構 材を介してローリング部が支持されており,また,ローリング部により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器であるから,被告製品は,構成要件Fを充足する。 (3) 被告製品は,本件発明2の構成要件Gを充足すること被告製品は,そのローリング部,円筒状リング(金具2)及び円筒部材(金具1)を総体として「回転体」に当たるととらえるべきであるところ,その総体としての回転体の内部に支持軸の先端が位置しており,非貫通状態であり,軸受け部材を介して支持軸に支持されていることは明らかであるから,被告製品は構成要件Gを充足する。 (4) 被告製品は,本件発明2の構成要件Iを充足することア 「弾性変形可能な係止爪」の意味本件発明2の「係止爪」は,軸受け部材から突き出た部分のうちの斜面(以下「斜面部分」という。)と長方形状の部分(以下「長方形状部分」という。)とを合わせた全体を意味し,また,長方形状部分がない場合は,斜面部分を意味し,そのような部分が弾性変形可能であれば,「弾性変形可能な係止爪」に当たる。 理由は以下のとおりである。 (ア) 本件明細書2の図8によると,構成要件Iの「係止爪」に相当する部分は,斜面部分と長方形状部分とを合わせた全体を意味することになる。 (イ) 構成要件Kは,「同係止爪は・・・斜面を有している」としていることから,係止爪は斜面部分のみではなく,斜面部分を含む部位であるといえる。 - 18 -イ被告製品の充足性被告製品の軸受け部材から突起し回転体の段差部と係合する部位(以下「係止爪対応部分」という。)は,長方形状部分が湾曲し弾性変形すると,これと一体的に形成されている斜面部分も弾性変形するから,本件発明2の「弾性変形可能な係止爪」に当たり,したがって,被告 位(以下「係止爪対応部分」という。)は,長方形状部分が湾曲し弾性変形すると,これと一体的に形成されている斜面部分も弾性変形するから,本件発明2の「弾性変形可能な係止爪」に当たり,したがって,被告製品は,構成要件Iを充足する。 ウ一審被告は,別件訴訟2の判決は,斜面部分のみが本件発明2の「係止爪」に当たると認定している旨主張するが,同判決は,斜面部分と長方形状部分が一体となって「係止爪」を形成していると認定しているのであり,一審被告の上記主張は理由がない。 (5) 被告製品は,本件発明2の構成要件Lを充足すること本件発明2の構成要件Lの解釈に当たり,実施形態に示された具体的構造に限定して解釈する必要はない。 被告製品においては,ローリング部,円筒状リング及び円筒部材を含めた総体が「回転体」に相当するのであって,円筒状リング及び円筒部材によってローリング部の内周に段差が形成されている。 すなわち,被告製品は,基端側内周面において,金具1の他の部分に比較して内径の大きな大径部分(ここに係止爪が位置する)と,係止爪と鍔部との間に位置する金具2の組み合わせにより,段差部が形成されているから,被告製品は構成要件Lを充足する。 (6) 以上のほか,被告製品は,本件発明2の構成要件H,J,Kを充足するから,被告製品は,本件発明2の技術的範囲に属する。 【一審被告の主張】以下のとおり,被告製品は,本件発明2の技術的範囲に属さない。 (1) 被告製品は,本件発明2の「回転体」を具備しないことア 「回転体」の意味本件発明2の「回転体」は,本件発明2の実施例におけるキャップ材29を必須 - 19 -要素とするものであり,キャップ材29を備えない部材は,本件発明2の「回転体」には当たらない。 本件発明2の「回転体」は,本件発明2の実施例におけるキャップ材29を必須 - 19 -要素とするものであり,キャップ材29を備えない部材は,本件発明2の「回転体」には当たらない。 理由は以下のとおりである。 (ア) 本件発明2の構成において,回転体を安定させるためにはキャップ材29が必要である。 (イ) 別件訴訟2において,本件発明2の発明の要旨の認定が争点となっていたところ,一審原告は,同争点において,キャップ材29は,本件発明2の「回転体」の構成要素であると主張し,また,同訴訟の判決も,そのように判断した。 このように,本件発明2の発明の要旨の認定においては,キャップ材29は,「回転体」の構成要素であると認定されたのに,侵害訴訟での本件発明2の技術的範囲の認定において,キャップ材29は「回転体」の構成要素ではないと認定されると,発明の技術的範囲が発明の要旨よりも広くなり,不合理である。 また,一審原告は,別件訴訟2において,キャップ材29は,本件発明2の「回転体」の構成要素であると主張したのであるから,本件訴訟において,同主張と相反する主張をすることは,訴訟手続上の信義誠実義務に反するものであり,民訴法2条の類推適用により許されない。 (ウ) 先端側において回転体を回転可能に支持するという回転体と支持軸との位置関係を特定するのであれば,「支持軸に回転可能に支持された回転体」と特定すれば足りるところ,本件発明2に係る特許請求の範囲は,「支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体」と特定されており,このことからも,本件発明2において,キャップ材29が必須の構成要素であることが認められる。 イ被告製品の充足性被告製品は,キャップ材29を具備していないから,本件発明2の「回転体 り,このことからも,本件発明2において,キャップ材29が必須の構成要素であることが認められる。 イ被告製品の充足性被告製品は,キャップ材29を具備していないから,本件発明2の「回転体」を具備していない。したがって,本件発明2の構成要件F,G,H,K,Lを充足しない。 (2) 被告製品は,本件発明2の「前記支持軸の先端側に・・・支持された回転 - 20 -体」(構成要件F)を充足しないこと前記(1)のとおり,本件発明2においては,回転体を安定させるためにはキャップ材29が必須の構成であるから,構成要件Fは,本件明細書2の図4に示されるような形態で回転体が「支持軸の先端側に」支持されたものに限定される。 被告製品における二つの回転体は,支持軸の先端側以外の部分(乙1~7の3b)で回転可能に支持されているから,被告製品は構成要件Fを充足しない。 (3) 被告製品は,本件発明2の「回転体は基端側のみに穴を有し」(構成要件G)を充足しないこと本件発明2の回転体は,軸受け部材を介して支持軸に支持されている各部材を指す。 被告製品においては,ローリング部,円筒状リング及び円筒部材が軸受け部材で回転可能に支持されているため,これら全てがそれぞれ「回転体」に含まれる。そして,ローリング部材は基端側にのみ穴が設けられているが,円筒状リングと円筒部材については基端側と先端側の両方に穴が設けられているから,回転体の先端側に穴が設けられていることになり,構成要件Gを充足しない。 (4) 被告製品は,本件発明2の「弾性変形可能な係止爪」(構成要件I)を具備しないことア 「弾性変形可能な係止爪」の意味本件発明2の「弾性変形可能な係止爪」というためには,斜面部分が弾性変形可能であることを要し,斜面部分が弾 可能な係止爪」(構成要件I)を具備しないことア 「弾性変形可能な係止爪」の意味本件発明2の「弾性変形可能な係止爪」というためには,斜面部分が弾性変形可能であることを要し,斜面部分が弾性変形しないのであれば,長方形状部分が弾性変形することにより,斜面部分が径方向内側に沈み込む場合であっても,「弾性変形可能な係止爪」とはいえない。 理由は以下のとおりである。 (ア) 構成要件Iの「前記軸受け部材からは,弾性変形可能な係止爪が突き出ている。」との表現からすると,同構成要件の「係止爪」は,軸受け部材から突き出た部分であるところ,本件明細書2の図面4及び8によると,軸受け部材から突 - 21 -き出た部分は斜面部分のみであり,長方形状部分は突き出ていない。 (イ) 別件訴訟2の判決は,係止爪と長方形状部分が異なる構成であること,長方形状部分と別に構成された斜面部分が弾性変形することを認定している。 (ウ) 斜面部分が弾性変形しなくても,長方形状部分が弾性変形することにより,斜面部分が径方向内側に沈み込む構成を含むのであれば,特許請求の範囲は,「前記斜面が押圧されることによって,前記長方形状の部位が弾性変形して,前記斜面が径方向内側に沈み込んだ後,復元することで,前記段差部は前記係止爪の前記基端側に係止される」と特定されることになり,「弾性変形可能な係止爪」と特定されることはない。 (エ) 係止爪が弾性変形することなく,「前記斜面が押圧されることによって,前記長方形状の部位が弾性変形して,前記斜面が径方向内側に沈み込んだ後,復元することで,前記段差部は前記係止爪の前記基端側に係止される」構成は,公知の技術である。本件発明2は,このような公知の構成を採用せず,「前記軸受け部材からは,弾 斜面が径方向内側に沈み込んだ後,復元することで,前記段差部は前記係止爪の前記基端側に係止される」構成は,公知の技術である。本件発明2は,このような公知の構成を採用せず,「前記軸受け部材からは,弾性変形可能な係止爪が突き出ている。」と特定したものであり,このことにより,本件発明2は特許されたものである。 (オ) 「係止爪」を斜面部分と長方形状部分を合わせた全体であると解すると,「係止爪の基端側」は,長方形状部分と筒状の部位の周面に連結した部位も含み,当該部位側で段差部と係合される技術も含むことになるが,このような技術は不合理である。 イ被告製品の充足性被告製品の係止爪対応部分は,長方形状部分が弾性変形するのであり,斜面部分は弾性変形しないから,「弾性変形可能な係止爪」に当たらず,したがって,被告製品は,構成要件Iを充足しない。 仮に,本件発明2の「係止爪」が斜面部分と長方形状部分とを合わせたものと解したとしても,被告製品1ないし3の全てと被告製品4の一部は,係止爪対応部分が,斜面部分のみから構成されているから,これらの被告製品には,本件発明2の - 22 -「係止爪」は存在せず,したがって,構成要件Iを充足しない。 (5) 被告製品は,本件発明2の「段差部」(構成要件L)を具備しないこと「段差」の字義的意味は,「段状になっているところの高低差」であるところ,本件発明2の回転体の内周において高低差を有するところが「段差部」ということになる。本件明細書2,手続補正書(乙22)及び上申書(乙23)によると,本件発明2においては,段差部の構成は,本件明細書2の図4に示される,芯材28の内周に形成されている段差部28aに限定され,段差部を芯材と別部材とすることは想定されていない。 被告製品において ,本件発明2においては,段差部の構成は,本件明細書2の図4に示される,芯材28の内周に形成されている段差部28aに限定され,段差部を芯材と別部材とすることは想定されていない。 被告製品においては,回転体が,ローリング部とローリング部の内周に嵌め込まれる円筒状リング及び円筒部材を有しており,円筒状リングが,軸受の係止爪の基端側に係止されるとともに係止爪と鍔部との間に位置する構成を有している。そして,被告製品のローリング部と円筒状リングとは異なる部材であり,これらを一つの回転体とみなしたとしても,円筒状リングは回転体の内周に形成されているような高低差を有する段差部ではない。 したがって,被告製品は,回転体の内周部に段差部が存在せず,構成要件Lを充足しない。 4 本件特許2は,特許無効審判により無効にされるべきものか(乙45文献を主引用例とする進歩性欠如の有無)(争点(4)ア)について【一審被告の主張】(1) 主引用例ア乙45文献には以下の発明(以下「一審被告主張乙45発明」という。)が記載されている。 「把持部3の上部に設けられたローラ支持部4において,ローラ部5を回転させるための支持軸となる小径部4bと,小径部4bに回転可能に支持されたローラ部5とを備え,そのローラ部5により身体に対して美容的作用を付与するようにしたマグネット美容ローラにおいて,ローラ部5は基端側にのみ穴を有し,ローラ部5 - 23 -は,その内部に小径部4bの先端が位置する非貫通状態で小径部4bにベアリング8を介して支持されており,ベアリング8は,小径部4bに抜け止めされ,ローラ部5は内周で,ベアリング8を抜け止めしている,マグネット美容ローラ」イ一審被告主張乙45発明の「把持部3」は,本件発明2の「ハンドル」に相当し,以 グ8は,小径部4bに抜け止めされ,ローラ部5は内周で,ベアリング8を抜け止めしている,マグネット美容ローラ」イ一審被告主張乙45発明の「把持部3」は,本件発明2の「ハンドル」に相当し,以下,同様に,「ローラ部5」は「回転体」に,「小径部4b」は「支持軸」に,「ベアリング8」は「軸受け部材」にそれぞれ相当する。 (2) 一致点及び相違点本件発明2と一審被告主張乙45発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 ア一致点「ハンドルに設けられた支持軸と,前記支持軸に回転可能に支持された回転体とを備え,その回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器において,前記回転体は基端側にのみ穴を有し,回転体は,その内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態で前記支持軸に軸受け部材を介して支持されており,軸受け部材は,支持軸に抜け止めされ,前記回転体は内周で,軸受け部材を抜け止めしている美容器」イ相違点(ア) 相違点1本件発明2では,支持軸をハンドルの基端において抜け止め固定しているのに対して,一審被告主張乙45発明では,小径部4bは把持部3と一体に形成されており,把持部3から抜け止め固定されていない点(イ) 相違点2本件発明2では,回転体を支持軸の先端側に回転可能に支持しているのに対して,一審被告主張乙45発明では,ローラ部5を小径部4bの先端側以外の部分で回転可能に支持している点(ウ) 相違点3 - 24 -本件発明2では,軸受け部材は前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされているのに対して,一審被告主張乙45発明では,ベアリング8の抜け止めは小径部4bの先端で行なわれているのではない点(エ) 相違点4本件発明2の軸 反対側となる先端で支持軸に抜け止めされているのに対して,一審被告主張乙45発明では,ベアリング8の抜け止めは小径部4bの先端で行なわれているのではない点(エ) 相違点4本件発明2の軸受け部材の構造と一審被告主張乙45発明のベアリング8の構造とが異なる点(オ) 相違点5本件発明2の回転体には,軸受け部材の係止爪と鍔部との間に位置する段差部が設けられているのに対して,一審被告主張乙45発明のローラ部5の内周にはそのような構造がない点(3) 相違点の容易想到性ア相違点1について回転体を用いる美容用のマッサージ器において,支持軸をハンドルに抜け止め固定するか,それとも,ハンドルと一体形成とするかは,単なる設計事項にすぎない。 乙24では回転体の支持軸である心棒はハンドルに抜け止め固定され,乙25ではスピンドルもハンドルに抜け止め固定されている一方,乙28及び29ではハンドルに支持軸が一体形成されている。 したがって,一審被告主張乙45発明においても,ローラ部5の支持軸である小径部4bを把持部3に対して抜け止め固定とすることを,当業者は容易に想到することができる。 イ相違点2について一審被告主張乙45発明において,小径部4bの先端側にベアリング8を配置することは設計事項にすぎないところ,小径部4bの先端側にベアリング8を配置すれば,ローラ部5を小径部4bの先端側に回転可能に支持することになるから,ローラ部5を小径部4bの先端側に配置して回転可能に支持することを,当業者は容易に想到することができる。 - 25 -ウ相違点3について(ア) 一審被告主張乙45発明では,ベアリング8として転がり軸受けを用いた場合が想定されているところ,乙45文献の段落【0014】にはベアリ - 25 -ウ相違点3について(ア) 一審被告主張乙45発明では,ベアリング8として転がり軸受けを用いた場合が想定されているところ,乙45文献の段落【0014】にはベアリング8の置き換え例としてプラスチック軸受け等の滑り軸受けが望ましいと記載されている。そして,プラスチック製の滑り軸受けを用いた場合,当業者は,小径部4bの先端に止め輪等の構造で軸受けが抜けないようにする抜け止めを設けることを容易に想到することができる。 (イ) 原判決は,乙45文献に記載された発明において,ベアリング8をプラスチック製の滑り軸受けに置き換えることは想定されているが,このとき抜け止めが必要であるかについては乙45文献に記載されておらず,また,抜け止めが必要であるとしても,当業者にとって抜け止めを行う位置を一義的に定めることができないとして,相違点3に係る構成を当業者が容易に想到することはできないと判示する。 しかし,一審被告主張乙45発明において,支持軸がプラスチック製の軸受けを滑り,予定した方向に回転可能であるということは,回転方向と垂直方向(支持軸が軸受けから抜ける方向)に支持軸が可動することを意味しているから,滑り軸受けにおいて抜け止め部材が必要であることは技術的に必然である。 そして,抜け止め部材が必要である場合に,乙59に示された下図のように,保持部品(本件では軸受け)の先端部分を,止め輪などで抜け止めすることは一般的に知られている技術である。また,乙44文献(段落【0006】)や乙163(6頁3行~14行)に記載されているとおり,支持軸の先端で軸受け部材が抜け止めされるという技術は周知技術であり,特許庁においても同様の判断がされている(乙158,160)。 したがって,一審被告主張乙45発明において,プラスチッ るとおり,支持軸の先端で軸受け部材が抜け止めされるという技術は周知技術であり,特許庁においても同様の判断がされている(乙158,160)。 したがって,一審被告主張乙45発明において,プラスチック製の滑り軸受けが使用され,抜け止め部材を取り付けるということになると,軸受け8のローラ部5の穴とは反対側となる先端部分に止め輪などを取り付けることになる。 - 26 - (ウ) 一審原告は,本件発明2は,「支持軸の先端で軸受け部材が抜け止めされる」という技術ではなく,本件発明2の軸受け部材は,前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされていると主張する。 しかし,乙163においては,「カラー12は,回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸4に抜け止めされ」ている技術であることが確認できる。 そして,「軸受け部材は,前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされる」技術が周知技術であることは,特許庁の判断(乙158,160)からも明らかである。 エ相違点4について(ア) 特開2002-340001号公報(乙46。以下「乙46文献」という。)には,以下の技術(以下「乙46技術」という。)が記載されている。 「フランジ付き滑り軸受けであって,弾性変形可能な弾性係止片が突き出るとともに,弾性係止片の基端側にフランジを有しており,弾性係止片は先端側に向かうほど回転中心との距離が短くなる斜面を有している。」(イ) 実公平8-9455号公報(乙47。以下「乙47文献」という。)には,以下の各技術(以下,それぞれ「乙47-1技術」等といい,併せて「乙47技術」という。)が記載されている。 a 乙47-1技術「軸受けからは弾性変形可能な傾斜面部が突き出るとともに,軸受けは傾斜面部の 下,それぞれ「乙47-1技術」等といい,併せて「乙47技術」という。)が記載されている。 a 乙47-1技術「軸受けからは弾性変形可能な傾斜面部が突き出るとともに,軸受けは傾斜面部の基端側に鍔部を有しており,傾斜面部は先端側に向かうほど回転中心との距離が - 27 -短くなる斜面を有している。」b 乙47-2技術「軸受けからは弾性変形可能な舌片部が突き出るとともに,軸受けは舌片部の基端側に鍔部を有しており,舌片部は先端側に向かうほど軸受けにおける回転中心との距離が短くなる斜面を有している。」c 乙47-3技術「軸受けからは弾性変形可能な二つの舌片部が突き出るとともに,軸受けは舌片部の基端側に鍔部を有しており,舌片部は先端側に向かうほど軸受けにおける回転中心との距離が短くなる斜面を有している。」(ウ) 前記ウのとおり,転がり軸受けをプラスチック製の滑り軸受けに置き換えることは,当業者にとって容易である。そして,乙46技術及び乙47技術は,本件発明2における軸受け部材と同一の構造を有している。 したがって,一審被告主張乙45発明のベアリング8を乙46技術又は乙47技術の軸受けに置き換えることを容易に想到することができる。 (エ) 原判決は,乙46文献に開示された軸受けは,板材を間に挟んで支持するための弾性係止片とフランジを有しており,外周面は円周状ではなく,軸方向への長さも相対的に短く,乙47文献に開示された軸受けも,板状の取付部材と嵌合するための環状溝を有する鍔部や,取付部材を間に挟んで支持するための舌片部及び鍔部を有しており,外周面は円周状ではなく,軸方向への長さも相対的に短いため,いずれも乙45文献に記載された発明の大径部4aに装着してローラ部5を支持することが を間に挟んで支持するための舌片部及び鍔部を有しており,外周面は円周状ではなく,軸方向への長さも相対的に短いため,いずれも乙45文献に記載された発明の大径部4aに装着してローラ部5を支持することができる形状ではなく,したがって,乙45文献に記載された発明と乙46技術,乙47技術とは,課題,目的,用途,機能が相違するため,上記各技術を乙45文献に記載された発明の軸受けとして用いる動機付けがないと判示する。 しかし,軸受け部材は公知の技術であり,様々なハウジングに取り付けられているところ,軸受けをハウジングに取り付けるに当たり,軸受けの形状に応じてハウジングの形状を整えるということは,当業者にとって単なる設計変更の範囲を出な - 28 -い。 そして,乙46技術の軸受けは,弾性係止片とフランジとの間にハウジングを位置させるものであり,ローラ部5の内周に,係止片とフランジとの間に位置する段差部を設ければよいとの発想に,当業者は容易に至ることができる。また,乙47技術の軸受けは,傾斜面部と鍔部との間に,あるいは,舌片部と鍔部との間にハウジングを位置させるものであり,ローラ部5の内周に,これらの間に位置する段差部を設ければよいとの発想に,当業者は容易に至ることができる。 また,軸受けは,美容器に限らず,汎用性のある機構として広く知られているのである(乙56~59)から,一審被告主張乙45発明と乙46技術及び乙47技術とは機能が同一である以上,両者の課題,目的,用途の相違が動機付けを否定する理由にならない。 さらに,乙164に記載されているとおり,先端が撓む突起を有する軸受けが,板状物への取付けに限定されていたものではないから,乙46技術及び乙47技術に記載された軸受けが板状物への取付けに限定されることはない。 したがって,相違 るとおり,先端が撓む突起を有する軸受けが,板状物への取付けに限定されていたものではないから,乙46技術及び乙47技術に記載された軸受けが板状物への取付けに限定されることはない。 したがって,相違点4についての原判決の判断は誤りである。 オ相違点5について(ア) 乙44文献には,以下の技術(以下「乙44技術」という。)が記載されている。 「基端においてハンドルに抜け止め固定された支持軸と,支持軸の先端側に回転可能に支持されたマッサージ部材とを備え,そのマッサージ部材により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容マッサージ器において,マッサージ部材は,基端側にのみ穴を有し,マッサージ部材は,その内部に支持軸の先端が位置する非貫通状態で支持軸に筒体を介して支持されており,筒体は,マッサージ部材の穴とは反対側となる先端で支持軸にナットで抜け止めされ,筒体からは段部が突き出ており,マッサージ部材は内周の段部に係合可能な突出部を有し,突出部は,段部の基端側に係止される,美容マッサージ器」 - 29 -(イ) 前記エのとおり,一審被告主張乙45発明のベアリング8を乙46技術又は乙47技術の軸受けに置き換えることは容易に想到できるが,その場合,一審被告主張乙45発明のローラ部5の内周に,乙46技術の弾性係止片とフランジとの間,乙47-1技術の傾斜面部と鍔部との間並びに乙47-2技術及び乙47-3技術の舌片部と鍔部との間に位置する段差部を設けることは,容易に想到できる。 また,乙44技術の突出部を一審被告主張乙45発明に採用すると,乙46技術や乙47技術の軸受けを一審被告主張乙45発明のローラ部5に取り付けることを容易に想到することができる。 したがって,一審被告主張乙45発明に①乙44技術及び②乙46 5発明に採用すると,乙46技術や乙47技術の軸受けを一審被告主張乙45発明のローラ部5に取り付けることを容易に想到することができる。 したがって,一審被告主張乙45発明に①乙44技術及び②乙46技術と乙47技術のいずれかの技術を適用して,相違点5の構成を想到することは容易である。 【一審原告の主張】(1) 乙45文献には,以下の発明(以下「一審原告主張乙45発明」という。)が記載されている。 「把持部3の上部に設けられたローラ支持部4において,ローラ部5を回転させるための支持軸となる小径部4bと,小径部4bに回転可能に支持されたローラ部5とを備え,そのローラ部5により身体に対して美容的作用を付与するようにしたマグネット美容ローラにおいて,ローラ部5は基端側にのみ穴を有し,ローラ部5は,その内部に小径部4bの先端が位置する非貫通状態で小径部4bにベアリング8を介して支持されており,ベアリング8は,小径部4bに抜け止めされ,ベアリング8は外周面が円筒状であり,ローラ部5の大径孔の内周は円筒状である,ことを特徴とするマグネット美容ローラ」(2) 相違点本件発明2と一審原告主張乙45発明との相違点は,相違点1及び相違点2のほか,次のとおりである。 ア相違点3´ - 30 -本件発明2では,軸受け部材は前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされているのに対して,一審原告主張乙45発明では,ベアリング8の具体的な抜け止めの有無は不明である点イ相違点4´本件発明2は,前記軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突き出るとともに,軸受け部材は係止爪の前記基端側に鍔部を有しており,同係止爪は前記先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有しているのに 弾性変形可能な係止爪が突き出るとともに,軸受け部材は係止爪の前記基端側に鍔部を有しており,同係止爪は前記先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有しているのに対して,一審原告主張乙45発明のベアリング8は,外周面が円筒状である点ウ相違点5´本件発明2は,前記回転体は内周に前記係止爪に係合可能な段差部を有し,前記段差部は前記係止爪の前記基端側に係止されるとともに前記係止爪と前記鍔部との間に位置するのに対して,一審原告主張乙45発明は,ローラ部5の大径孔の内周は円筒状である点(3) 相違点に係る構成が容易に想到できないことア相違点1について一審被告の挙げる乙24,25は,周方向に4本の軸を有するものであったり,スピンドルが軸方向に移動可能な構造を有するものであって,一審原告主張乙45発明とは構造を異にするため,これらの構成を採用する動機付けがない。 また,一審原告主張乙45発明と乙24,25を組み合わせても,「回転体が先端非貫通で支持軸に支持されている」点が相違点となるから,本件発明2に至らない。 イ相違点2について一審被告は,一審被告主張乙45発明の小径部4bの先端側にベアリング8を配置すれば,ローラ部5を小径部4bの先端側で回転可能に支持することになるところ,この点は設計事項であるとするが,上記の点が設計事項である根拠や,上記変更を行う動機付けについて説明はなく,上記変更は容易に想到できるとはいえない。 - 31 -ウ相違点3´について(ア) 一審原告主張乙45発明のベアリング8をプラスチック製の滑り軸受けに置き換えるとしても,抜け止めが必要か否かは不明である。仮に,抜け止めが必要であるとしても,抜け止め措置をどの部分で行うかは一 ア) 一審原告主張乙45発明のベアリング8をプラスチック製の滑り軸受けに置き換えるとしても,抜け止めが必要か否かは不明である。仮に,抜け止めが必要であるとしても,抜け止め措置をどの部分で行うかは一義的に決まるものではないから,小径部4bの先端で抜け止め措置を行うことが容易に想到できるとはいえない。 (イ) 一審被告は,本件発明2と乙45文献に記載された発明との間に相違点3が存在することを前提に,乙59を指摘し,プラスチック製滑り軸受けを使用した場合に抜け止めが必要となるという公知技術があるとしたうえで,軸受けの先端部分に止め輪が必要となるとして,原判決は誤りであると主張する。 しかし,乙59をもって,抜け止め部材として,「止め輪」が用いられるという点まで認定し得るとしても,抜け止めをどの部位でどのような形態で行うかは当業者にとって一義的に定まるものではないから,一審原告主張乙45発明にプラスチック製滑り軸受けを使用した場合において抜け止め部材が必要であり,その抜け止め部材として乙59に記載の「止め輪」を取り付けて,かつ,それが,回転体の穴とは反対側となる先端側に「止め輪」が配置されるという点まで容易に想到できると評価し得るものではない。 また,一審被告は,乙44文献,乙163の記載事項から,「支持軸の先端で軸受け部材が抜け止めされるという技術」は周知技術にすぎないと主張する。 しかし,本件発明2では「軸受け部材は,前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされ」るのであり,ここでいう「先端」は「軸受け部材」の先端をいうのであって支持軸の先端ではない。そして,乙44文献の図1では,軸受け部材に対応する「筒体15」が抜け止めされているのは,先端(図中左端)よりも内方(図中右方)であり,先端とはいえない。 エ相違 あって支持軸の先端ではない。そして,乙44文献の図1では,軸受け部材に対応する「筒体15」が抜け止めされているのは,先端(図中左端)よりも内方(図中右方)であり,先端とはいえない。 エ相違点4´について(ア) 一審原告主張乙45発明のベアリング8は,その外周面が円筒状に形 - 32 -成され,同じく円筒状に形成されたローラ部の大径部に挿入されており,この外周面全体によりローラ部5を支持していると理解できる。このような形状を有するベアリング8をプラスチック製の滑り軸受けに置き換えるとしても,ローラ部5の外径部の上記形状から,適用されるプラスチック製の滑り軸受けの外周面もこれに合わせた円筒状となり,その外周面でローラ部5を支持する構成となるはずである。 一方,乙46技術の軸受けは,支持板をその間に挟んで支持固定するために弾性係止片とフランジを有しており,上記ローラ部5の大径部4aに装着することができる形状ではない。 乙47技術の軸受けも,薄板をその間に挟んで支持固定するために,舌片部と鍔部を有しており,一審原告主張乙45発明のローラ部5の大径部4aに装着することができる形状ではない。 したがって,課題,目的,用途,機能が異なるので,乙46技術又は乙47技術の軸受けを一審原告主張乙45発明のローラ部5の大径部aの軸受けに用いる動機付けは存在しない。 (イ) 一審被告は,乙46技術の軸受けは,弾性係止片とフランジの間にハウジングを位置させるものであり,また,乙47技術の軸受けは,傾斜面部と鍔部の間に,あるいは,舌片部と鍔部との間にハウジングを位置させるものであり,ローラ部5の内周にこれらの間に位置する段差部を設ければよいとの発想に,当業者は容易に至ると主張する。 しかし,「軸受け」それ自体が,美容 ,舌片部と鍔部との間にハウジングを位置させるものであり,ローラ部5の内周にこれらの間に位置する段差部を設ければよいとの発想に,当業者は容易に至ると主張する。 しかし,「軸受け」それ自体が,美容器に限らず,汎用性のある機構として広く知られているとしても,相違点4´は,単なる「軸受け」ではなく,その軸受けの具体的構成について存在するものである。一審被告の上記主張は,この点を無視したものとなっており失当である。 一審原告主張乙45発明の軸受けの支持対象はローラ部5であり,より具体的には円筒状の内周面を有する大径部54を支持するものである。したがって,一審原告主張乙45発明に使用する軸受けは,円筒状の内周面を支持可能なものであるこ - 33 -とが必要となる。 一方,乙46技術の軸受けは弾性係止片とフランジを有しており,一審原告主張乙45発明のローラ部5の大径部54に装着することが可能な形状ではないし,対象が板材であることを課題とし,板材を係止する機能を有し,板材の係止という用途に用いられる。また,乙47技術の軸受けも,傾斜面部・舌片部と鍔部を有しており,一審原告主張乙45発明のローラ部5の大径部54に装着することが可能な形状ではないし,対象が薄板であることを課題とし,薄板を係止する機能を有し,薄板の係止という用途に用いられる。 したがって,一審原告主張乙45発明と乙46技術,乙47技術の軸受けとは,課題,目的,機能,用途が相違し,乙46技術,乙47技術の軸受けを一審原告主張乙45発明の軸受けとして用いる動機付けは存在せず,相違点4´は当業者にとって容易に想到できるとはいえない。 (ウ) 一審被告は,乙164では,ブッシュの取り付け対象を板状物に限定しておらず,この点を考慮すると,乙46文献及び乙47文献に記載さ 点4´は当業者にとって容易に想到できるとはいえない。 (ウ) 一審被告は,乙164では,ブッシュの取り付け対象を板状物に限定しておらず,この点を考慮すると,乙46文献及び乙47文献に記載された軸受けが板状物に限定されることはないと主張する。 しかし,乙164のブッシュの対象が板状物に限定されているか否かと,乙46文献及び乙47文献の軸受けの対象物が板状物に限定されているかどうかは関係のないことであり,乙46文献及び乙47文献の軸受けが何を固定対象としているかは,同文献の記載に基づいて判断するべきことである。 オ相違点5´について(ア) 前記エのとおり,乙46技術又は乙47技術の軸受けを一審原告主張乙45発明のローラ部の大径部の軸受けに用いる動機付け自体が存在しないため,相違点5´も容易に想到できない。 また,一審被告は,乙44技術のマッサージ部材の突出部を乙45文献に記載された発明に採用すると,乙46技術又は乙47技術の軸受けを一審被告主張乙45発明のローラ部5に取り付けることを容易に想到することができると主張するが, - 34 -一審原告主張乙45発明のベアリング8は外周面が円筒形状であって突出部がないので,プラスチック製の滑り軸受けを使用する場合に乙44技術の突出部を採用するという動機付けは得られない。 (イ) 一審被告は,乙46技術の軸受けは,弾性係止片とフランジとの間にハウジングを位置させるものであり,当業者はローラ部5の内周にこれらの間に位置する段差部を設ければよいと容易に想到し,乙47技術の軸受けは,傾斜面部と鍔部との間,あるいは舌片部と鍔部との間にハウジングを位置させるものであり,当業者はローラ部5の内周にこれらの間に位置する段差部を設ければよいと容易に想到すると主張する。 し 軸受けは,傾斜面部と鍔部との間,あるいは舌片部と鍔部との間にハウジングを位置させるものであり,当業者はローラ部5の内周にこれらの間に位置する段差部を設ければよいと容易に想到すると主張する。 しかし,前記エのとおり,乙46技術,乙47技術の軸受けを一審原告主張乙45発明に適用する動機付けはないのであるから,一審原告主張乙45発明のローラ部5の内周に係止爪(乙46の弾性係止片,乙47の傾斜面部,舌片部)に係合可能な段差部を設ける構成を採用する動機付けはない。 5 本件特許2は,特許無効審判により無効にされるべきものか(乙135文献を主引用例とする進歩性欠如の有無)(争点(4)イ)について【一審被告の主張】(1) 主引用例ア乙135文献には,以下の発明(以下「一審被告主張乙135発明」という。)が記載されている。 「把持具13に固定された支持金具15,150と,支持金具15,150に取り付けられた支持軸16,160,161と,支持軸16,160,161の先端側に回転可能に支持されたローラー本体2,103,104とを備え,そのローラー本体2,103,104により身体に対して美容的作用を付与するようにした素肌用ローラーであって,ローラー本体2,103,104は基端側にのみ穴を有し,ローラー本体2,103,104は,その内部に支持軸16,160,161の先端が位置する非貫通状態で支持軸16,160,161に回転ロッド17を介して - 35 -支持されており,回転ロッド17は,ローラー本体2,103,104の穴とは反対側となる先端で支持軸16,160,161に抜け止めされ,回転ロッド17からはツバ12が突き出ており,ローラー本体2,103,104は内周にツバ12に係合可能な係合孔6を有する素肌ローラー。」イ一 なる先端で支持軸16,160,161に抜け止めされ,回転ロッド17からはツバ12が突き出ており,ローラー本体2,103,104は内周にツバ12に係合可能な係合孔6を有する素肌ローラー。」イ一審被告主張乙135発明の「把持具13」は,本件発明2の「ハンドル」に,「支持軸16,160,161」は「支持軸」に,「ローラー本体2,103,104」は「回転体」に,「素肌用ローラー」は「美容器」に,「回転ロッド17」は「軸受け部材」に各対応する。 (2) 一致点及び相違点本件発明2と一審被告主張乙135発明の一致点と相違点は,以下のとおりである。 ア一致点「ハンドルに取り付けられた支持軸と,前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え,前記回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器において,前記回転体は,その内部に前記支持軸の先端が位置する状態で前記支持軸に軸受け部材を介して支持されており,前記軸受け部材は,先端で前記支持軸に抜け止めされ,前記軸受け部材からは,突出部が突き出ており,前記回転体は内周に前記突出部に係合可能な段差部を有し,前記段差部は前記突出部の前記基端側に係止されることを特徴とする美容器」である点イ相違点(ア) 相違点1本件発明2における軸受け部材は,弾性変形可能な係止爪と,係止爪の基端側に設けられた鍔部とを有しており,係止爪は先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有しているのに対して,一審被告主張乙135発明における回転ロッド17は,ロッド本体21から突き出たツバ12を有するのみであり,斜面を有する弾性変形可能な係止爪及び鍔部を有していない点 - 36 -(イ) 相違点2本件発明2における回転体は,内周に ,ロッド本体21から突き出たツバ12を有するのみであり,斜面を有する弾性変形可能な係止爪及び鍔部を有していない点 - 36 -(イ) 相違点2本件発明2における回転体は,内周に係止爪に係合可能な段差部を有し,段差部は係止爪の基端側に係止されるとともに係止爪と鍔部との間に位置するのに対して,一審被告主張乙135発明におけるローラ本体2,103,104は,ツバ12に係合可能な係合孔6の基端側の段差部を有しているに留まる点(ウ) 相違点3本件発明2においては,支持軸は,ハンドルに抜け止め固定されているのに対して,一審被告主張乙135発明においては,支持軸16,160,161は,支持金具15,150を介して,把持具13に固定されている点(3) 相違点の容易想到性ア相違点1について(ア) 平成22年7月29日に公開された米国特許出願公開第2010/191161号(乙194の1。以下「乙194文献」という。)には,以下の技術(以下「乙194技術」という。)が記載されている。 「身体をマッサージするためのモジュール130,140をロックピン240の回りを回転可能に取り付けるためのプラグ200,220であって,弾性変形可能な突起205が突き出ると共に,突起205の基端側にフランジ201を有しており,突起205は先端側に向かうほど回転中心との距離が短くなる斜面を有している。」「モジュール130,140は,内周に,突起205に係合可能な段差部を有している。段差部は,突起205の基端側に係止されるとともに突起205とフランジ201との間に位置する。」(イ) 乙194技術の適用a 乙194技術のプラグ200,220は,身体をマッサージするためのモジュール130,140をロックピン240の回りに 5とフランジ201との間に位置する。」(イ) 乙194技術の適用a 乙194技術のプラグ200,220は,身体をマッサージするためのモジュール130,140をロックピン240の回りに回転可能に取り付けるための手段であるところ,同取り付け手段は,マッサージに用いる回転体を支持軸 - 37 -を中心に回転させるための部材である点,非貫通の回転体に使用するという点において,一審被告主張乙135発明の回転ロッド17と共通している。 また,乙135文献には,ローラー1を回転軸11に対して回転可能に取り付けるための構成として,回転ロッド17以外の他の取り付け手段を用いてもよいことが示唆されている(4頁右上欄2行~4行)。 さらに,乙135文献には,ツバ12を突設していなくても,ローラー1を回転自在に取り付けることができる旨記載されている(4頁左上欄8行~右上欄1行)。 したがって,一審被告主張乙135発明の回転ロッド17について,乙194技術の取り付け手段の構造を採用して,乙194技術の弾性変形可能な突起205及びフランジ201とすることは,当業者にとって容易である。 b 一審原告は,乙194技術のプラグ200,220は,軸受け部材として機能するものではなく,また,ロックピン240は,回転軸として機能するものではないと主張する。 しかし,乙194文献の段落【0155】には,「ラッチアーム204及びラッチ凹部は,プラグ200が開口から意図せず引き出されることを阻止することが可能であるが,プラグ200は,それにもかかわらず,ラッチアーム204及びラッチ凹部が互いに噛み合う場合であっても開口に対して依然として回転することが可能である。」,段落【0166】には,「ロックピン240のシャフト241の第1の部分242の ず,ラッチアーム204及びラッチ凹部が互いに噛み合う場合であっても開口に対して依然として回転することが可能である。」,段落【0166】には,「ロックピン240のシャフト241の第1の部分242の直径は,モジュール100,120,130,140及びプラグ154,200,210,220及び230を通って延びる開口の直径よりも僅かに小さいため,シャフト241は,それらの開口を通して挿入されることが可能である。」とそれぞれ記載されていることから,プラグ200,220が軸受け部材として機能し,ロックピン240が回転軸として機能していることは,当業者にとって,明らかである。 したがって,一審原告の上記主張は理由がない。 c 一審原告は,乙135文献記載の支持軸16に支持される回転ロッ - 38 -ド17をプラグ200,220に置き換えた場合,プラグ200,220の内部に支持軸16が挿入された状態となることで,ロックピン240を挿入した場合と同様に,プラグ200,220のラッチアーム204がラッチ凹部と離脱するのを防止するよう,ラッチアーム204の内方への移動が固定されてしまい,ローラー本体2,103,104を装着する際に,ラッチアーム204が意味をなさないこととなると主張する。 しかし,乙135文献には,「前記支持軸16は回転ロッド17の内径より小径の外径から成る軸本体18の先端部19に環状の係合溝20を穿設することにより一体に形成されるとともに前記回転ロッド17は,支持軸16の外径より大径の内径を有する中空状のロッド本体21とこのロッド本体21の先端部側に,外周方向間を三等分する位置に3本の長溝23(第3図においては1 本の長溝のみを示す)をツバ12を突設した後端部側に向かって穿設することにより3枚の弾性片22を設け このロッド本体21の先端部側に,外周方向間を三等分する位置に3本の長溝23(第3図においては1 本の長溝のみを示す)をツバ12を突設した後端部側に向かって穿設することにより3枚の弾性片22を設け,さらに,各弾性片22の先端内部に支持軸16の係合溝20に係合する係合突起24を突設することにより形成されている。」(3頁左上欄17行~右上欄9行)と記載されているとおり,支持軸16の径が回転ロッド17の内径よりも小さいことから,支持軸16と回転ロッド17との間にクリアランスが認められるところ,プラグ200,220を適用した場合であってもこのクリアランスの存在によってラッチアーム204は,内方に移動することができる。 したがって,一審原告の上記主張に理由はない。 d 一審原告は,ラッチアーム204をローラー1,101,102よりも硬く構成すれば,ラッチアーム204を弾性変形可能にする必要はない,乙135文献の回転ロッド17に,乙194文献の「突起205を有するラッチアーム204を弾性変形可能とした構成」を採用すると,ラッチアーム204の弾性はローラー1,101,102よりも柔らかく(変形しやすく)構成する必要があり,そうすると,ローラー1,101,102に抜け方向の荷重が作用した場合に,ラッチアーム204が簡単に変形し,あるいはローラー1,101,102自身の段 - 39 -差部(突起205に係止する部分)も弾性変形して,ローラー1,101,102は容易に突起205を乗り越えて回転ロッド17から抜けてしまうと主張する。 しかし,ローラー1が変形した上でラッチアーム204が弾性変形した場合,ローラー1の取付けがより容易になるのであるから,ローラー1が変形すればラッチアーム204を弾性変形可能とする必要がないことはない。また ローラー1が変形した上でラッチアーム204が弾性変形した場合,ローラー1の取付けがより容易になるのであるから,ローラー1が変形すればラッチアーム204を弾性変形可能とする必要がないことはない。また,ローラー1,101,102が変形するのであれば,ラッチアーム204の硬さに関係なくローラー1,101,102がラッチアーム204に係合するのであるから,ラッチアーム204をローラー1,101,102よりも柔らかく(変形しやすく)構成する必要はない。さらに,ローラー1,101,102が回転ロッド17から抜けるか否かは,専ら,ローラー1,101,102の形状変化の程度,ローラ1,101,102と回転ロッド17との摩擦や嵌め合いに依存することから,形状の変化によってローラー1,101,102が回転ロッド17から抜けるということにはならない。 したがって,一審原告の上記主張は理由がない。 e 一審原告は,突起205を有するラッチアーム204を弾性変形可能とした構成を形成することで費用が増大し,このことが阻害要因となると主張する。 しかし,費用増大が阻害要因となる場合というのは,著しく費用が増大するため特定の構成を採用することが当業者ではありえない場合であるが,プラグ200,220は樹脂成型品であることから,回転ロッド17と比較して,製品単価が極端に高くなるものではない。 イ相違点2について前記アのとおり,一審被告主張乙135発明の回転ロッド17に対して,乙194技術の取り付け手段の構造を採用して,乙194技術の弾性変形可能な突起205及びフランジ201を適用することは,当業者にとって容易であるところ,乙194文献には,モジュール130,140の内周に,突起205に係合可能な段差 - 40 -部が開示されているか 5及びフランジ201を適用することは,当業者にとって容易であるところ,乙194文献には,モジュール130,140の内周に,突起205に係合可能な段差 - 40 -部が開示されているから,一審被告主張乙135発明に乙194技術を適用する際,乙194技術の段差部を一審被告主張乙135発明のローラー本体2,103,104の内周に設けるようにする動機付けがある。 また,一審被告主張乙135発明に設けられている段差部を,乙194技術の段差部に置き換えることは,一審被告主張乙135発明の係合孔6を乙194技術の突起205のサイズに適したものに置き換えるにすぎず,このことに,特段,阻害要因は存在しない。 したがって,一審被告主張乙135発明に乙194技術を適用し,相違点2に係る構成とすることは,当業者にとって容易である。 ウ相違点3について(ア) 平成9年5月6日に公開された登録実用新案第3036898号公報(乙136。以下「乙136文献」という。)には,以下の技術(以下「乙136技術」という。)が記載されている(乙136文献の実施例の図を以下に示す。)。 「頭部3を,タッピングねじ36で,胴部2に螺合して,タッピングねじ36を抜け止め固定することで,頭部3をタッピングねじ36に回転可能に支持させたつぼ健康具」 - 41 -(イ) 平成23年2月24日に公開された登録実用新案第3166202号公報 (乙193。以下「乙193文献」という。)には,以下の技術(以下「乙193技術」という。)が記載されている(乙193文献の実施例の図を以下に示す。)。 「ハンドル2の一端の球状ヘッド22に,接続部品31を抜け止め固定して,ローラー3を接続部品31に回転可能に支持させたマッサージローラー」 ている(乙193文献の実施例の図を以下に示す。)。 「ハンドル2の一端の球状ヘッド22に,接続部品31を抜け止め固定して,ローラー3を接続部品31に回転可能に支持させたマッサージローラー」 (ウ) 国際公開第2011/004627号(乙137。以下「乙137文献」という。)には,以下の技術(以下「乙137技術」という。)が記載されている(乙137文献の実施例の図を以下に示す。)。 「ハンドル12の二叉部12aに形成された空間に,ローラ支持軸17を嵌入して抜け止め固定し,ローラ18をローラ支持軸17に回転可能に支持させた美容器。」 - 42 -(エ) 乙136技術,乙193技術及び乙137技術の適用乙135文献には,把持部について,ローラー1を回転自在に支持し得るに足る他の公知の構成を採用できることが記載されている(3頁右下欄)こと,一審被告主張乙135発明と乙136技術,乙193技術及び乙137技術とは技術的事項が共通していることから,一審被告主張乙135発明に,乙136技術,乙193技術及び乙137技術のいずれかを適用する動機付けはあり,また,そのことに阻害事由もない。 したがって,一審被告主張乙135発明に,乙136技術,乙193技術及び乙137技術のいずれかを適用して,一審被告主張乙135発明における支持軸16,160,161を把持具13に抜け止め固定することは容易である。 エ以上のとおり,相違点1ないし3は,前記各技術を適用することにより容易に想到することができるから,本件発明2に進歩性は認められない。 【一審原告の主張】(1) 乙135文献には,以下の発明(以下「一審原告主張乙135発明」という。)が記載されている。 「基端において支持金具15,150に支持された支持軸 認められない。 【一審原告の主張】(1) 乙135文献には,以下の発明(以下「一審原告主張乙135発明」という。)が記載されている。 「基端において支持金具15,150に支持された支持軸16,160,161と,支持軸16,160,161に回転可能に支持されたローラー1,101,102とを備え,そのローラー1,101,102により身体に対して洗浄,マッサージ効果を付与するようにした素肌用ローラーにおいて,ローラー1,101,102は基端側にのみ挿入口4を有し,ローラー1,101,102は,その内部に支持軸16,160,161の先端が位置する非貫通状態で支持軸16,160,161に回転ロッド17を介して支持されており,回転ロッド17は,ローラー1,101,102の挿入口4とは反対側となる先端で支持軸16,160,161に抜け止めされ,回転ロッド17からはツバ12が突き出るとともに,ローラー1,101,102は弾性変形可能であり,その内周にツバ12に係合可能な段差部を有し,段差部はツバ12の基端側に係止される素肌用ローラー」 - 43 -(2) 本件発明2と一審原告主張乙135発明の相違点本件発明2と一審原告主張乙135発明の相違点は,以下のとおりである。 ア相違点1´(相違点1,2に対応)本件発明2は,軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突き出るとともに,軸受け部材は係止爪の前記基端側に鍔部を有しており,同係止爪は前記先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有し,かつ回転体の段差部が係止爪の基端側に係止されるとともに係止爪と鍔部との間に位置するのに対して,一審原告主張乙135発明は,回転ロッド17からはツバ12が突き出るのみであり,ツバ12は弾性変形可能かどうか 転体の段差部が係止爪の基端側に係止されるとともに係止爪と鍔部との間に位置するのに対して,一審原告主張乙135発明は,回転ロッド17からはツバ12が突き出るのみであり,ツバ12は弾性変形可能かどうか不明であり,弾性変形可能なローラー1,101,102の段差部がツバ12の基端側に係止されるに留まる点イ相違点3´本件発明2は,支持軸がハンドルに抜け止め固定されたものであるのに対して,一審原告主張乙135発明は,支持軸16,160,161が支持金具15,150に支持されたものであり,把持具13(ハンドル)に抜け止め固定されたものではない点(3) 相違点の容易想到性ア相違点1´について(ア) 動機付けがないことa 乙194文献記載の「ロックピン240」,「プラグ200,220」は,本件発明2の「支持軸」,「軸受け」には相当しない。 そして,乙194文献記載のプラグ200,220は,それ自体が二つのモジュールを固定するものであって,軸と回転体との間に介在することで,回転体を軸に対して回転自在に支持する軸受け部材として機能するものではないから,そもそも一審原告主張乙135発明の支持軸16とローラー本体2,102,104との間に配置され,軸受け部材として機能する回転ロッド17を,プラグ200,220 - 44 -に置き換える動機付けは存在しない。 また,仮に,一審原告主張乙135発明の支持軸16に支持される回転ロッド17をプラグ200,220に置き換えた場合,プラグ200,220の内部に支持軸16が挿入された状態となることで,ロックピン240を挿入した場合と同様に,プラグ200,220のラッチアーム204がラッチ凹部と離脱するのを防止するよう,ラッチアーム204の内方への移動が固定され 16が挿入された状態となることで,ロックピン240を挿入した場合と同様に,プラグ200,220のラッチアーム204がラッチ凹部と離脱するのを防止するよう,ラッチアーム204の内方への移動が固定されてしまい,ローラー本体2,103,104を装着する際に,ラッチアーム204が意味をなさないこととなる。 したがって,一審原告主張乙135発明の回転ロッド17を,回転ロッド17のツバ12に対して複雑な構成である,乙194文献記載のラッチアーム204を有するプラグ200,220に置き換える動機付けはない。 b 一審原告主張乙135発明は,ローラー1,101,102自身が弾性変形可能なことが不可欠であるから,回転ロッド17のツバ12が変形することなく,ローラー1,101,102の弾性を利用して,ローラー1,101,102を回転ロッド17のツバ12に係止させることができるものである。 これに対し,乙194技術は,モジュール130,140とプラグ200,220との係止に当たって,モジュール130,140が変形しないため,これに係止する突起205を有するラッチアーム204を弾性変形可能としたものである。 したがって,一審原告主張乙135発明の弾性変形可能なローラー1,101,102に係止するための構成として,乙194文献に開示された弾性変形可能な突起205を有するラッチアーム204の構成を適用する動機付けは存在しない。 (イ) 阻害事由が存在することa 仮に,一審原告主張乙135発明の回転ロッド17に,乙194文献記載の「突起205を有するラッチアーム204を弾性変形可能とした構成」を採用すると,ラッチアーム204の弾性はローラー1,101,102よりも柔らかく(変形しやすく)構成する必要がある。なぜなら,ラッチアーム 205を有するラッチアーム204を弾性変形可能とした構成」を採用すると,ラッチアーム204の弾性はローラー1,101,102よりも柔らかく(変形しやすく)構成する必要がある。なぜなら,ラッチアーム204の弾性をローラー1,101,102より硬く(変形しにくく)構成すれば,ラッチアー - 45 -ム204とローラー1,101,102とが接触した場合には,ローラー1,101,102が変形するため,ラッチアーム204を弾性変形可能に構成する意味がないからである。 しかし,一審原告主張乙135発明のローラー1,101,102は,それ自体弾性変形可能なことが不可欠であり,しかもその弾性は,ローラーの表面に形成された吸盤用凹部3が素肌に吸着する(乙135文献の4頁右上欄4行~末行)程度であるから,素肌に対して変形する程度に柔らかい。このローラー1,101,102よりもさらに柔らかい(変形しやすい)ラッチアーム204を一審原告主張乙135発明に設けても,ローラー1,101,102に抜け方向の荷重が作用した場合には,ラッチアーム204は簡単に弾性変形し,あるいはローラー1,101,102自身の段差部(突起205に係止する部分)も弾性変形して,ローラー1,101,102は容易に突起205を乗り越えて回転ロッド17から抜けてしまうこととなる。 b ローラー1,101,102は弾性材料からなり,これを回転ロッド17に装着する際にはツバ12に干渉しない程度に押し開けて変形するため,装着された状態のローラー1,101,102を引っ張った際には,ローラー1,101,102の段差部が係合部の形状に合わせて変形し得るものと考えられる。 これに,乙194文献記載のラッチアーム204を用いると,上記のような変形によって,ローラー1,101, ,ローラー1,101,102の段差部が係合部の形状に合わせて変形し得るものと考えられる。 これに,乙194文献記載のラッチアーム204を用いると,上記のような変形によって,ローラー1,101,102の段差部がラッチアーム204の突起205を径方向内方に押圧するよう作用し,係合を解除するおそれがある。 しかも,一審原告主張乙135発明のツバ12は円周方向の全周にわたり連続したものとなっているのに対し,乙194文献記載のラッチアーム204は,円周方向に複数設けられ得るにすぎず,全周にわたって連続するものとはならないから,ローラー1,101,102にかかる引っ張り力がラッチアーム204の箇所のみに集中することで,全周にわたるツバ12を有する場合に比べて,段差部が当該箇所において変形しやすくなるとも考えられる。 - 46 -さらに,一審原告主張乙135発明の回転ロッド17に「突起205を有するラッチアーム204を弾性変形可能とした構成」を設けるには,ラッチアーム204が弾性変形可能となるように回転ロッド17から切り離して成形する必要や,所定の弾性力とするために樹脂に応じたラッチアーム204の材料,厚み,形状等を考慮する必要がある。そうすると,突起205を有するラッチアーム204を弾性変形可能とした構成を形成するコストが高くなるのは明らかである。 c このように,一審原告主張乙135発明の回転ロッド17に,乙194文献記載の「突起205を有するラッチアーム204を弾性変形可能とした構成」を設けても,係止機能を発揮せず,コストも高くなることから,一審原告主張乙135発明に乙194文献記載の技術を適用することには,阻害要因が存在する。 イ相違点3´について一審原告主張乙135発明は,「基端において支持金具 ストも高くなることから,一審原告主張乙135発明に乙194文献記載の技術を適用することには,阻害要因が存在する。 イ相違点3´について一審原告主張乙135発明は,「基端において支持金具15,150に支持された支持軸16,160,161と,支持軸16,160,161に回転可能に支持されたローラー1,101,102とを備え」た構成を有する。 ここで,一審原告主張乙135発明が「支持金具15,150」と「支持軸16」を設けた技術的意義は,乙135文献の第1図にあるように把持部13から延びる回転軸11はクランク状に形成されていて,弾性と強度を確保できる材料として金属が適しており,一方,支持軸16は抜け止め用の先端部が一体形成されるなど材料として樹脂が適していることにある。 これに対し,乙193技術,乙136技術及び乙137技術には,そのような技術的意義はないから,これらの技術に基づいて一審原告主張乙135発明の「支持軸16,160,161」を把持部に抜け止め固定する構成とし,相違点3´に係る本件発明2の構成とする動機付けは存在しない。 したがって,当業者は,一審原告主張乙135発明を,乙193技術,乙136技術,乙137技術のいずれかの技術に基づき,相違点3´に係る本件発明2の構 - 47 -成とすることを容易に想到できない。 6 一審原告の損害額(争点(5))について次の(1)のとおり補正し,次の(2)のとおり,当審における主張を追加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第3の5に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 補正ア原判決39頁21行目の「本件特許2の登録日(平成27年12月4日)以降」を「平成27年12月4日ないし平成29年5月8日の間の」に改める。 イ を引用する。 (1) 補正ア原判決39頁21行目の「本件特許2の登録日(平成27年12月4日)以降」を「平成27年12月4日ないし平成29年5月8日の間の」に改める。 イ原判決40頁7行目の「本件特許2」を「本件特許1及び本件特許2」に改める。 ウ原判決41頁11行目の冒頭に「平成27年12月4日ないし平成29年5月8日の間の」を,25行目の「被告に対し,」の次に「平成27年12月4日ないし平成29年5月8日の間の特許権侵害の不法行為について,」をそれぞれ加える。 (2) 当審における主張【一審原告の主張】ア一審原告は,平成21年2月以降,原告製品を販売している(甲23)ところ,原告製品は,以下のとおりの構成であり,本件発明1及び本件発明2の実施品である。 (ア) 本件発明1との関係での原告製品の構成a ハンドルの先端部に一対のボールを,相互間隔を置いてそれぞれ一軸線を中心に回転可能に支持した美容器である(甲23)。 b 往復動作中にボールの軸線が肌面に対して一定角度を維持できるように,ボールの軸線をハンドルの中心線に対して前傾させて構成されている(甲47)。 c 一対のボール支持軸の開き角度が70度,一対のボールの外周面間 - 48 -の間隔が11.2㎜である(甲47)。 d ボールは,非貫通状態でボール支持軸に軸受部材を介して支持されている(甲24)。 e ボールの外周面を肌に押し当ててハンドルの先端から基端方向に移動させることにより肌が摘み上げられるようになっている(甲23)。 (イ) 本件発明2との関係での原告製品の構成(甲24)a 基端においてハンドルに抜け止め固定された支持軸と,支持軸の先端側に回転可能に支持された ようになっている(甲23)。 (イ) 本件発明2との関係での原告製品の構成(甲24)a 基端においてハンドルに抜け止め固定された支持軸と,支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え,その回転体により身体に対して美容作用を付与するようにした美容器である。 b 回転体は,基端側にのみ穴を有し,回転体は,その内部に支持軸の先端が位置する非貫通状態で支持軸に軸受け部材を介して支持されている。 c この軸受け部材は,回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされ,軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突き出るとともに,軸受け部材は係止爪の基端側に鍔部を有している。 d 係止爪は,基端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有している。 e 回転体は,内周に係止爪に係合可能な段差部を有し,この段差部は係止爪の基端側に係止されるとともに前記係止爪と前記鍔部との間に位置している。 イ一審被告は,被告製品を,平成27年12月4日から平成29年5月8日までの間に合計35万1724個販売したところ,同期間の原告製品の単位数量当たりの利益は5547円であり,この点は,原判決の認定のとおりである。 本件特許権1及び本件特許権2の売上げに対する寄与率は100%であり,また,本件において,特許法102条1項ただし書の「販売することができないとする事情」は存在しない。 したがって,特許法102条1項に基づく一審原告の損害額は,19億5101万3028円となる(35万1724個×5547円=19億5101万3028 - 49 -円)。原告は,このうち5億円を請求する(原審においては3億円を請求していたが,当審において5億円に拡張する。)。 ウ原判決は,本件特 =19億5101万3028 - 49 -円)。原告は,このうち5億円を請求する(原審においては3億円を請求していたが,当審において5億円に拡張する。)。 ウ原判決は,本件特許権2の侵害に係る損害について,寄与率により90%の減額をした上で損害額を認定したが,本件特許権1については,その侵害の有無及び損害額を判断しなかった。 しかし,本件特許権2の侵害に係る損害額の認定において寄与率による減額をするのであれば,本件特許権1の寄与率も認定し,同寄与率を本件特許権2の寄与率に100%を限度に加算して,損害額の認定をすべきである。 そして,本件発明1の特許技術は,美容器におけるハンドル部分の傾斜,一対のボールの開き角度,及び一対のボールの外周面の間隔に関する技術であり,同技術により,ユーザがハンドルを把持して一対のボールを肌に押し当てる際に手首を曲げる必要もなく往復させることができ,一対のボールの開き角度及びその間隔により,ボールの外周面を肌に押し当ててハンドルの先端から基端側に移動させることにより肌が摘み上げられるようになっているのであって,ハンドル,ボールと美容器全体に大きく寄与するものであるから,本件特許権1の商品の売上げに対する寄与率は100%であると認められる。 仮に,本件特許権1及び本件特許権2について,寄与率による減額をするとしても,両特許権の寄与率は80%を超えるというべきである。 エ一審被告の主張について(ア) 寄与率について一審被告は,本件発明2の実施部分は需要者の目に入らないこと,本件発明2の効果であるローラの回転の円滑さなどの効果は需要者に訴えられていないこと,代替技術が存在することを理由として,本件発明2の寄与率は0%と主張する。 しかし,本件発明2の寄与度は こと,本件発明2の効果であるローラの回転の円滑さなどの効果は需要者に訴えられていないこと,代替技術が存在することを理由として,本件発明2の寄与率は0%と主張する。 しかし,本件発明2の寄与度は,本件発明2の技術的意義によって決められるのであり,需要者の目に入るか否かは問題とならないところ,本件発明2は,軸受けに関する技術であり,ローラの回転を円滑化しているのであるから,製品全体の中 - 50 -で技術的意義を有している。 (イ) 販売することができないとする事情についてa 一審被告は,販売することができないとする事情として,原告製品と被告製品との販売ルートが異なること,効果に相違があることを主張する。 しかし,原告製品と被告製品とが現に競合し,需要者において比較検討の対象とされ,選択されているのであるから(甲35,36),一審被告の主張する上記事情を販売することができないとする事情とみることはできない。 また,マイクロカレントの効果は,本件発明2とは何ら関係のない事実である。 b 一審被告は,原告製品との競合品が30種類も存在するから,需要者は,少なくとも30種類の製品から原告製品と同様の効果を有する製品を選択できると主張する。 しかし,一審被告が指摘する競合品が本件発明2の作用効果を発揮するものであるかは明らかではない。 また,市場において被告製品以外の原告製品の代替品が存在していたとしても,そのような代替品の存在にもかかわらず,被告製品を販売し得たのであるから,一審原告においても,これと同一の数量の原告製品の販売が可能であったというべきである。 【一審被告の主張】ア寄与率について以下の事情を考慮すると,本件発明2の被告製品の販売への寄与率は0というべきである。 数量の原告製品の販売が可能であったというべきである。 【一審被告の主張】ア寄与率について以下の事情を考慮すると,本件発明2の被告製品の販売への寄与率は0というべきである。 (ア) 被告製品においては,本件発明2の実施部分である軸受けは需要者の目に入らない。 また,原告製品においては,ローラの抜落の防止機能が不十分であるし,一審原告は,原告製品の販売において,本件発明2の効果であるローラ回転の円滑さやローラが支持軸から抜け落ちることがないこと等の効果を需要者に訴えておらず,一 - 51 -審被告も,被告製品の販売において,上記の効果を訴えていない。 (イ) 軸受けとは,軸を支えて円滑に回転運動をさせる部材であり,基本的な機械工学の教科書にも掲載された基本的かつ汎用的な部材である(乙56~58)ところ,美容器において回転体を使用する場合に,回転体を支持軸の周りで回転させるに当たり,軸受けを用いるということ自体は,当業者にとって極めて当然のことである。 そして,本件発明2の技術要素は,①回転体が非貫通であること,②回転体が硬質なものであること,③支持軸の先端が回転体の内部に存在することであるところ,このような技術は多数存在する(乙45,64,65,136)。 イ販売することができないとする事情について本件においては,次のとおり,特許法102条1項ただし書の「販売することができないとする事情」が存在する。 (ア) 販売ルートの差異原告製品は,主に,大手通販会社,百貨店,大手家電量販店,原告によるオンラインモールにおいて販売されている(乙94~110)のに対し,被告製品は,大型ディスカウントストア,雑貨店への卸販売が中心である(乙85~93)ところ,大手通販会社, 手家電量販店,原告によるオンラインモールにおいて販売されている(乙94~110)のに対し,被告製品は,大型ディスカウントストア,雑貨店への卸販売が中心である(乙85~93)ところ,大手通販会社,百貨店,大手家電量販店等において取り扱われている高額な商品を購入する者は,大型ディスカウントストアや雑貨店において廉価で販売されている競合品を購入することがなく,また,大型ディスカウントストアや雑貨店において安価な商品を購入する者は,大手通販会社,百貨店,大手家電量販店等において高額で販売されている競合品を購入することはない。 特に,原告製品は,主に女性を対象とした全身の引き締め効果があることをうたった高額の美容器であり(甲16),このような効果を期待して原告製品の購入を検討する女性が,低廉な被告製品を購入することで代替することはあり得ない。 (イ) 効果の差異原告製品には,被告製品にはない,ソーラーパネルによって発生された微弱電流 - 52 -(マイクロカレント)がローラを介して身体に通電するという効果がある(乙111~115)。 原告製品を購入する者は,このマイクロカレントの美容効果を期待して,原告製品を選択するところ,マイクロカレントによる美容効果を期待して商品選択をする者が,マイクロカレントの効果が存在しない被告製品を選択することは通常あり得ない。 (ウ) 競合品の存在原告製品と同様の効果を有する美容ローラとして,少なくとも,一審被告を含む24社の競合会社が,29種類もの製品を販売しており(乙176),需要者は,原告製品を含めて,少なくとも30種類もの製品から原告製品と同様の効果を有する製品を選択することが可能である。 この点について,一審原告は,上記の原告製品の類似品の軸受けが本件発明2と ,需要者は,原告製品を含めて,少なくとも30種類もの製品から原告製品と同様の効果を有する製品を選択することが可能である。 この点について,一審原告は,上記の原告製品の類似品の軸受けが本件発明2と同様の効果を有するかは不明であると主張する。 しかし,上記の類似品の軸受けが,ローラを回転可能に支持していれば,本件発明2と同様の作用効果を有することになるところ,上記類似品の中で,ローラが回転することがない製品は存在しないから,いずれも本件発明2と同様の作用効果を有しているといえる。 第4 当裁判所の判断 1 本件明細書1及び本件明細書2の記載(1) 本件明細書1には,以下のとおりの記載がある(甲2,53)。 【技術分野】【0001】この発明は,ハンドルに設けられたマッサージ用のボールにて,顔,腕等の肌をマッサージすることにより,血流を促したりして美しい肌を実現することができる美容器に関する。 【背景技術】【0002】従来,この種の美容器が種々提案されており,例えば特許文献1には美肌ローラが開示されている。すなわち,この美肌ローラは,柄と,該柄の一端に設けられた一対のローラとを備え,ローラの回転軸が柄の長軸方向の - 53 -中心線とそれぞれ鋭角をなすように設定されている。さらに,一対のローラの回転軸のなす角度が鈍角をなすように設定されている。そして,この美肌ローラの柄を手で把持してローラを肌に対して一方向に押し付けると肌は引っ張られて毛穴が開き,押し付けたまま逆方向に引っ張ると肌はローラ間に挟み込まれて毛穴が収縮する。従って,この美肌ローラによれば,効率よく毛穴の汚れを除去することができるとしている。 【発明が解決しようとする課題】【0004】しかしながら,特許文献1に記載されている従来構成の美肌ローラでは 。従って,この美肌ローラによれば,効率よく毛穴の汚れを除去することができるとしている。 【発明が解決しようとする課題】【0004】しかしながら,特許文献1に記載されている従来構成の美肌ローラでは,柄の中心線と両ローラの回転軸が一平面上にあることから(特許文献1の図2参照),美肌ローラの柄を手で把持して両ローラを肌に押し当てたとき,肘を上げ,手先が肌側に向くように手首を曲げて柄を肌に対して直立させなければならない。このため,美肌ローラの操作性が悪い上に,手首角度により肌へのローラの作用状態が大きく変化するという問題があった。 【0005】また,この美肌ローラの各ローラは楕円筒状に形成されていることから,ローラを一方向に押したとき,肌の広い部分が一様に押圧されることから,毛穴の開きが十分に得られない。さらに,ローラを逆方向に引いたときには,両ローラ間に位置する肌がローラの長さに相当する領域で引っ張られることから,両ローラによって強く挟み込まれ難い。その結果,毛穴の開きや収縮が十分に行われず,毛穴の汚れを綺麗に除去することができないという問題があった。加えて,ローラが楕円筒状に形成されているため,肌に線接触して肌に対する抵抗が大きく,動きがスムーズではなく,しかも移動方向が制限されやすい。従って,美肌ローラの操作性が悪いという問題があった。 【0006】この発明は,このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり,その目的とするところは,肌に対して優れたマッサージ効果を奏することができるとともに,肌に対する押圧効果と摘み上げ効果とを顕著に連続して発揮することができ,かつ操作性が良好な美容器を提供することにある。 【課題を解決するための手段】【0007】上記の目的を達成するために,請求項 - 54 - 果とを顕著に連続して発揮することができ,かつ操作性が良好な美容器を提供することにある。 【課題を解決するための手段】【0007】上記の目的を達成するために,請求項 - 54 -1に記載の美容器の発明は,ハンドルの先端部に一対のボールを,相互間隔をおいてそれぞれ一軸線を中心に回転可能に支持した美容器において,往復動作中にボールの軸線が肌面に対して一定角度を維持できるように,ボールの軸線をハンドルの中心線に対して前傾させて構成し,一対のボール支持軸の開き角度を65~80度,一対のボールの外周面間の間隔を10~13mmとし,前記ボールは,非貫通状態でボール支持軸に軸受部材を介して支持されており,ボールの外周面を肌に押し当ててハンドルの先端から基端方向に移動させることにより肌が摘み上げられるようにしたことを特徴とする。 【発明の効果】【0008】本発明の美容器によれば,次のような効果を発揮することができる。 請求項1に記載の美容器においては,ハンドルの先端部に一対のボールが相互間隔をおいてそれぞれ一軸線を中心に回転可能に支持され,ボールの軸線がハンドルの中心線に対して前傾して構成されている。すなわち,美容器の往復動作中にボールの軸線が肌面に対して一定角度を維持できるようになっている。このため,ハンドルを把持して一対のボールを肌に当てるときに手首を曲げる必要がなく,手首を真直ぐにした状態で,美容器を往動させたときには肌を押圧することができるとともに,美容器を復動させたときには肌を摘み上げることができる。 【0009】また,肌に接触する部分が筒状のローラではなく,真円状のボールで構成されていることから,ボールが肌に対して局部接触する。従って,ボールは肌の局部に集中して押圧力や摘み上げ力を作用することができるとともに,肌に 接触する部分が筒状のローラではなく,真円状のボールで構成されていることから,ボールが肌に対して局部接触する。従って,ボールは肌の局部に集中して押圧力や摘み上げ力を作用することができるとともに,肌に対するボールの動きをスムーズにでき,移動方向の自由度も高い。 【0010】よって,本発明の美容器によれば,肌に対して優れたマッサージ効果を奏することができるとともに,肌に対する押圧効果と摘み上げ効果とを顕著に連続して発揮することができ,かつ操作性が良好であるという効果を発揮することができる。 【0012】以下に,この発明を具体化した美容器の実施形態を図1~図7に従 - 55 -って説明する。 図1に示すように,本実施形態の美容器10を構成するハンドル11の先端には平面Y字型に延びる二股部11aが設けられている。・・・【0013】図7に示すように,前記ハンドル11の二股部11aにおいて基材12には一対の支持筒16が一体形成されており,この支持筒16には金属製のボール支持軸15が支持されている。・・・【0014】前記ボール支持軸15の突出端部には,合成樹脂よりなり,内外周に金属メッキを施した円筒状の軸受部材19が嵌合され,ストップリング25により抜け止め固定されている。この軸受部材19の外周には,一対の弾性変形可能な係止爪19aが突設されている。前記ボール支持軸15上の軸受部材19には,球状をなすボール17が回転可能に嵌挿支持されている。・・・【0018】本実施形態の美容器10は,前述のように顔に適用できるほか,それ以外の首,腕,脚等の体(ボディ)にも適用することができる。 図3に示すように,美容器10の往復動作中にボール支持軸15の軸線が肌20面に対して一定角度を維持できるように,ボール支持軸15の軸線がハ 外の首,腕,脚等の体(ボディ)にも適用することができる。 図3に示すように,美容器10の往復動作中にボール支持軸15の軸線が肌20面に対して一定角度を維持できるように,ボール支持軸15の軸線がハンドル11の中心線xに対して前傾するように構成されている。具体的には,前記ハンドル11の中心線(ハンドル11の最も厚い部分の外周接線zの間の角度を二分する線と平行な線)xに対するボール17の軸線yすなわちボール支持軸15の軸線yの側方投影角度αは,ボール17がハンドル11の中心線xに対し前傾して操作性を良好にするために,90~110度であることが好ましい。この側方投影角度αは93~100度であることがさらに好ましく,95~99度であることが最も好ましい。この側方投影角度αが90度より小さい場合及び110度より大きい場合には,ボール支持軸15の前傾角度が過小又は過大になり,ボール17を肌20に当てる際に肘を立てたり,下げたり,或いは手首を大きく曲げたりする必要があって,美容器10の操作性が悪くなるとともに,肌20面に対するボール支持軸15の角度の調節が難しくなる。 - 56 -【0019】図5に示すように,一対のボール17の開き角度すなわち一対のボール支持軸15の開き角度βは,ボール17の往復動作により肌20に対する押圧効果と摘み上げ効果を良好に発現させるために,好ましくは50~110度,さらに好ましくは50~90度,特に好ましくは65~80度に設定される。この開き角度βが50度を下回る場合には,肌20に対する摘み上げ効果が強く作用し過ぎる傾向があって好ましくない。その一方,開き角度βが110度を上回る場合には,ボール17間に位置する肌20を摘み上げることが難しくなって好ましくない。 【0020】また,各ボール17の直径L 過ぎる傾向があって好ましくない。その一方,開き角度βが110度を上回る場合には,ボール17間に位置する肌20を摘み上げることが難しくなって好ましくない。 【0020】また,各ボール17の直径Lは,美容器10を主として顔や腕に適用するために,好ましくは15~60mm,より好ましくは32~55mm,特に好ましくは38~45mmに設定される。ボール17の直径Lが15mmより小さい場合,押圧効果及び摘み上げ効果を発現できる肌20の範囲が狭くなり好ましくない。一方,ボール17の直径Lが60mmより大きい場合,顔や腕の大きさに対してボール17の大きさが相対的に大きいことから,狭い部分を押圧したり,摘み上げたりすることが難しく,使い勝手が悪くなる。 【0021】さらに,ボール17の外周面間の間隔Dは,特に肌20の摘み上げを適切に行うために,好ましくは8~25mm,さらに好ましくは9~15mm,特に好ましくは10~13mmである。このボール17の外周面間の間隔Dが8mmに満たないときには,ボール17間に位置する肌20に対して摘み上げ効果が強く作用し過ぎて好ましくない。一方,ボール17の外周面間の間隔Dが25mmを超えるときには,ボール17間に位置する肌20を摘み上げることが難しくなって好ましくない。 【0022】次に,前記のように構成された実施形態の美容器10について作用を説明する。 さて,この美容器10の使用時には,図3に示すように,使用者がハンドル11を把持した状態で,ボール17の外周面を図3の二点鎖線に示す顔,腕等の肌20に押し当てて接触させながらハンドル11の基端から先端方向へ往動(図3の左方 - 57 -向)させると,ボール17がボール支持軸15を中心にして回転される。このとき,図3の二点鎖線に示すように,肌20 させながらハンドル11の基端から先端方向へ往動(図3の左方 - 57 -向)させると,ボール17がボール支持軸15を中心にして回転される。このとき,図3の二点鎖線に示すように,肌20にはボール17から押圧力が加えられる。ボール17を往動させた後,ボール17を元に戻すように復動させると,図4の二点鎖線に示すようにボール17間に位置する肌20がボール17の回転に伴って摘み上げられる。 【0023】すなわち,図5に示すように,両ボール17が矢印P1方向に往動される場合,各ボール17は矢印P2方向に回転される。このため,肌20が押し広げられるようにして押圧される。一方,両ボール17が矢印Q1方向に復動される場合,各ボール17は矢印Q2方向に回転される。このため,両ボール17間に位置する肌20が巻き上げられるようにして摘み上げられる。なお,往動時において両ボール17が肌20を押圧することにより,その押圧力の反作用として両ボール17間の肌20が摘み上げられる。 【0024】この場合,ボール支持軸15がハンドル11の中心線xに対して前傾しており,具体的にはハンドル11の中心線xに対するボール支持軸15の側方投影角度αが90~110度に設定されていることから,肘を上げたり,手首をあまり曲げたりすることなく美容器10の往復動作を行うことができる。しかも,ボール支持軸15の軸線yを肌20面に対して直角に近くなるように維持しながら操作を継続することができる。そのため,肌20に対してボール17を有効に押圧してマッサージ作用を効率良く発現することができる。 【0025】また,肌20に接触する部分が従来の筒状のローラではなく,真円状のボール17で構成されていることから,ボール17が肌20に対してローラより狭い面積で接触する。そのため,ボー できる。 【0025】また,肌20に接触する部分が従来の筒状のローラではなく,真円状のボール17で構成されていることから,ボール17が肌20に対してローラより狭い面積で接触する。そのため,ボール17は肌20の局部に集中して押圧力や摘み上げ力を作用させることができると同時に,肌20に対してボール17の動きがスムーズで,移動方向も簡単に変えることができる。 【0026】従って,このボール17の回転に伴う押圧力により,顔,腕等の肌20がマッサージされてその部分における血流が促されるとともに,リンパ液の循 - 58 -環が促される。また,一対のボール17の開き角度βが50~110度に設定されるとともに,ボール17の外周面間の間隔Dが8~25mmに設定されていることから,所望とする肌20部位に適切な押圧力を作用させることができると同時に,肌20の摘み上げを強過ぎず,弱過ぎることなく心地よく行うことができる。さらに,ボール17の直径Lが15~60mmに設定されていることから,顔や腕に対して適切に対応することができ,美容器10の操作を速やかに進めることができる。 このため,例えば肌20の弛んだ部分に対してリフトアップマッサージを思い通りに行うことができる。 【0027】加えて,ボール17の押圧力により肌20が引っ張られたときには毛穴が開き,肌20がボール17間に摘み上げられたときには毛穴が収縮し,毛穴内の汚れが取り除かれる。その上,使用者の肌20がボール17の外周面に接触しているとともに,使用者の手がハンドル11表面の導電部に接触していることから,太陽電池パネル24で発電された電力により,図3に示すようにボール17から肌20及び使用者の手を介して微弱電流が流れて肌20を刺激し,血流の促進やリンパ液の循環促進が図られる。よって, ることから,太陽電池パネル24で発電された電力により,図3に示すようにボール17から肌20及び使用者の手を介して微弱電流が流れて肌20を刺激し,血流の促進やリンパ液の循環促進が図られる。よって,これらのマッサージ作用,押圧・摘み上げ作用,リフトアップ作用,毛穴の汚れ取り作用,電気刺激作用等の作用が肌20に対して相乗的,複合的に働き,望ましい美肌作用が発揮される。 【実施例】【0031】以下,実施例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。 (実施例1~6,側方投影角度αの評価)前記実施形態に示した顔と体の双方用に適する美容器10において,ボール17の開き角度βを70度,ボール17の直径Lを40mm及びボール17の外周面間の間隔Dを11mmに設定し,側方投影角度αを90~110度まで変化させて側方投影角度αの評価を実施した。すなわち,美容器10を顔又は腕,首等の体に対して適用し,その使用感について官能評価を行った。 【0032】官能評価の方法は,美容器10を使用する評価者を10人とし,そ - 59 -れらのうち8人以上が良いと感じた場合には◎,5~7人が良いと感じた場合には○,3人又は4人が良いと感じた場合には△,2人以下が良いと感じた場合には×とすることにより行った。 【0033】それらの結果を表1に示した。 【0034】【表1】 表1に示したように,側方投影角度αが97度の実施例3及び99度の実施例4の結果が最も良好であった。次いで,側方投影角度αが93度の実施例2及び100度の実施例5の結果が良好であった。さらに,側方投影角度αが90度の実施例1及び110度の実施例6の結果も可能と判断された。 【0035】従って,美容器10の側方投影角度αは90~110度の範囲が好ましく,93~100度 あった。さらに,側方投影角度αが90度の実施例1及び110度の実施例6の結果も可能と判断された。 【0035】従って,美容器10の側方投影角度αは90~110度の範囲が好ましく,93~100度の範囲がさらに好ましい範囲であると認められた。 (実施例7~15,開き角度βの評価)顔と体の双方用に適する美容器10について,開き角度βを評価した。すなわち,美容器10の側方投影角度αを97度,ボール17の直径Lを40mm及びボール17の外周面間の間隔Dを11mmとして,開き角度βを40~120度まで変化させて開き角度βの評価を実施した。評価方法は前記実施例1と同様に行った。得られた結果を表2に示した。 - 60 -【0036】【表2】 表1に示したように,開き角度βが70度の実施例11の結果が最も良好であった。続いて,開き角度βが50~60度の実施例8~10及び90~110度の実施例12~14の結果が良好であった。さらに,開き角度βが40度の実施例7及び120度の実施例15の結果が可能と判断された。 【0037】従って,美容器10の開き角度βは50~110度の範囲が好ましく,65~80度の範囲が最も好ましいと認められた。 (実施例16~23,ボール17の直径Lの評価)顔と体の双方用に適する美容器10について,ボール17の直径Lを評価した。 すなわち,美容器10の側方投影角度αを97度,ボール17の開き角度βを70度及びボール17の外周面間の間隔Dを11mmとして,ボール17の直径Lを20~40mmまで変化させてボール17の直径Lの評価を実施した。評価方法は前記実施例1と同様に行った。得られた結果を表3に示した。 【0038】【表3】 - 61 - 表3に示したように,ボール17の直径Lが 17の直径Lの評価を実施した。評価方法は前記実施例1と同様に行った。得られた結果を表3に示した。 【0038】【表3】 - 61 - 表3に示したように,ボール17の直径Lが38.3mmの実施例22及び40mm実施例23の結果が最も良好であった。次いで,ボール17の直径Lが35mmの実施例21の結果が良好であった。さらに,ボール17の直径Lが20~31. 5mmの実施例16~20の結果も可能と判断された。 【0039】従って,美容器10のボール17の直径Lは20~40mmの範囲が好ましく,35~40mmの範囲がさらに好ましく,38.3~40mmの範囲が最も好ましいと認められた。 (実施例24~28,ボール17の外周面間の間隔Dの評価)顔と体の双方用に適する美容器10について,ボール17の外周面間の間隔Dを評価した。すなわち,美容器10の側方投影角度αを97度,ボール17の開き角度βを70度及びボール17の直径Lを40mmとして,ボール17の外周面間の間隔Dを8~15mmまで変化させてボール17の外周面間の間隔Dの評価を実施した。評価方法は前記実施例1と同様に行った。得られた結果を表4に示した。 【0040】【表4】 - 62 - 表4に示したように,ボール17の外周面間の間隔Dが11mmの実施例26の結果が最も良好であった。次いで,ボール17の外周面間の間隔Dが10mmの実施例25及び12mmの実施例27の結果が良好であった。さらに,ボール17の外周面間の間隔Dが8mmの実施例24及び15mmの実施例28の結果も可能と判断された。 【0041】従って,美容器10のボール17の外周面間の間隔Dは8~15mmの範囲が好ましく,10~12mmの範囲がさらに好ましいと認められた。 (実施例 実施例28の結果も可能と判断された。 【0041】従って,美容器10のボール17の外周面間の間隔Dは8~15mmの範囲が好ましく,10~12mmの範囲がさらに好ましいと認められた。 (実施例29~38,ボール17の直径Lの評価)主として顔用に適する美容器10について,ボール17の直径Lを評価した。すなわち,美容器10の側方投影角度αを97度,ボール17の開き角度βを70度及びボール17の外周面間の間隔Dを11mmとして,ボール17の直径Lを15~40mmまで変化させてボール17の直径Lの評価を実施した。評価方法は前記実施例1と同様に行った。得られた結果を表5に示した。 【0042】【表5】 - 63 - 表5に示したように,美容器10が顔用のものである場合には,ボール17の直径Lが25mmの実施例32及び27.5mm実施例33の結果が最も良好であった。次いで,ボール17の直径Lが15~20mmの実施例29~31及びボール17の直径Lが30mmの実施例34の結果が良好であった。さらに,ボール17の直径Lが32.5~40mmの実施例35~38の結果も可能と判断された。 【0043】従って,美容器10が顔用に適する場合,ボール17の直径Lは15~40mmの範囲が好ましく,15~30mmの範囲がさらに好ましいと認められた。 (実施例39~44,ボール17の外周面間の間隔Dの評価)主として顔用に適する美容器10について,ボール17の外周面間の間隔Dを評価した。すなわち,美容器10の側方投影角度αを97度,ボール17の開き角度βを70度及びボール17の直径Lを40mmとして,ボール17の外周面間の間隔Dを6~15mmまで変化させてボール17の外周面間の間隔Dの評価を実施した。評価方法は前記実施例1と同様に行 の開き角度βを70度及びボール17の直径Lを40mmとして,ボール17の外周面間の間隔Dを6~15mmまで変化させてボール17の外周面間の間隔Dの評価を実施した。評価方法は前記実施例1と同様に行った。得られた結果を表6に示した。 【0044】【表6】 - 64 - 表6に示したように,美容器10が顔用の場合,ボール17の外周面間の間隔Dが11mmの実施例42の結果が最も良好であった。次いで,ボール17の外周面間の間隔Dが8mmの実施例40,10mmの実施例41及び12mmの実施例43の結果が良好であった。さらに,ボール17の外周面間の間隔Dが6mmの実施例39及び15mmの実施例44の結果も可能と判断された。 【0045】従って,美容器10が顔用である場合,ボール17の外周面間の間隔Dは6~15mmの範囲が好ましく,8~12mmの範囲がさらに好ましいと認められた。 (実施例45~51,ボール17の直径Lの評価)主として体用に適する美容器10について,ボール17の直径Lを評価した。すなわち,美容器10の側方投影角度αを97度,ボール17の開き角度βを70度及びボール17の外周面間の間隔Dを11mmとして,ボール17の直径Lを30~60mmまで変化させてボール17の直径Lの評価を実施した。評価方法は前記実施例1と同様に行った。得られた結果を表7に示した。 【0046】【表7】 - 65 - 表7に示したように,ボール17の直径Lが50mmの実施例50及び60mm実施例51の結果が最も良好であった。次いで,ボール17の直径Lが38.3mmの実施例48及びボール17の直径Lが40mmの実施例49の結果が良好であった。さらに,ボール17の直径Lが30~35mmの実施例45~47の結果も可能と 。次いで,ボール17の直径Lが38.3mmの実施例48及びボール17の直径Lが40mmの実施例49の結果が良好であった。さらに,ボール17の直径Lが30~35mmの実施例45~47の結果も可能と判断された。 【0047】従って,美容器10が体用の場合,ボール17の直径Lは30~60mmの範囲が好ましく,38.3~60mmの範囲がさらに好ましいと認められた。 (実施例52~58,ボール17の外周面間の間隔Dの評価)主として体用に適する美容器10について,ボール17の外周面間の間隔Dを評価した。すなわち,美容器10の側方投影角度αを97度,ボール17の開き角度βを70度及びボール17の直径Lを40mmとして,ボール17の外周面間の間隔Dを8~25mmまで変化させてボール17の外周面間の間隔Dの評価を実施した。評価方法は前記実施例1と同様に行った。得られた結果を表8に示した。 【0048】【表8】 - 66 - 表8に示したように,ボール17の外周面間の間隔Dが12mmの実施例55及び15mmの実施例56の結果が最も良好であった。次いで,ボール17の外周面間の間隔Dが10~11mmの実施例53,実施例54及び20~25mmの実施例57及び実施例58の結果が良好であった。さらに,ボール17の外周面間の間隔Dが8mmの実施例52の結果も可能と判断された。 【0049】従って,美容器10が体用である場合,ボール17の外周面間の間隔Dは8~25mmの範囲が好ましく,10~25mmの範囲がさらに好ましいと認められた。 以上に示した実施例1~58の結果を総合すると,美容器10の側方投影角度αは90~110度であることが必要であり,93~100度が好ましく,95~99度が特に好ましいと判断された。ボール17の開き角度 上に示した実施例1~58の結果を総合すると,美容器10の側方投影角度αは90~110度であることが必要であり,93~100度が好ましく,95~99度が特に好ましいと判断された。ボール17の開き角度βは50~110度が好ましく,50~90度がさらに好ましく,65~80度が特に好ましいと判断された。ボール17の直径Lは15~60mmが好ましく,32~55mmがさらに好ましく,38~45mmが特に好ましいと判断された。ボール17の外周面間の間隔Dは8~25mmが好ましく,9~15mmがさらに好ましく,10~13mmが特に好ましいと判断された。 【0050】なお,前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。 - 67 -・図8及び図9に示すように,前記ボール17の形状を,ボール17の外周面のハンドル11側の曲率がボール支持軸15の先端側の曲率よりも大きくなるようにバルーン状に形成することもできる。このように構成した場合には,曲率の小さな部分で肌を摘み上げ,曲率の大きな部分で摘み上げ状態を保持できるため,ボール17を復動させたときの肌20の摘み上げ効果を向上させることができる。 【0051】・前記ハンドル11の中心線xに対するボール17の軸線yの側方投影角度αを可変にするために,ハンドル11とその二股部11aとの間を回動可能に構成することも可能である。この場合,肌20に対するボール17の軸線yの角度を容易に変更することができ,使い勝手を良くすることができる。 【0052】・前記ボール17の形状を,断面楕円形状,断面長円形状等に適宜変更することも可能である。・・・【図5】 - 68 -【図8】 【図9】 (2) 本件明細書2には,以下のと を,断面楕円形状,断面長円形状等に適宜変更することも可能である。・・・【図5】 - 68 -【図8】 【図9】 (2) 本件明細書2には,以下のとおりの記載がある(甲4)。 【0001】この発明は,回転体を身体上で転動させることにより,使用者に対して美肌効果等の美容的作用を付与するようにした美容器に関するものである。 【0002】従来,この種の美容器としては,例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成の美容器においては,ハンドルの先端に二叉部が設けられている。二叉部の先端には回転体が支持されている。そして,各回転体を身体の皮膚に押し付けて回転させることにより,身体に対して美肌効果等の美容的作用が付与されるとしている。 【発明が解決しようとする課題】【0004】前記特許文献1においては,回転体を支持するための軸等の支持構造は開示されていない。 - 69 -この発明の目的は,回転体を支持軸に対して回転可能に支持することができる美容器を提供することにある。 【課題を解決するための手段】【0005】上記の目的を達成するために,この発明は,基端において抜け止め固定された支持軸と,前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え,その回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器である。 【0006】また,前記回転体は基端側にのみ穴を有し,回転体は,その内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態で前記支持軸に軸受け部材を介して支持されており,軸受け部材は,前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされ,前記軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突き出るとともに,軸受け部材は係止爪の前記基端側に鍔部を有しており,同係止爪は り,軸受け部材は,前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされ,前記軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突き出るとともに,軸受け部材は係止爪の前記基端側に鍔部を有しており,同係止爪は前記先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有し,前記回転体は内周に前記係止爪に係合可能な段差部を有し,前記段差部は前記係止爪の前記基端側に係止されるとともに前記係止爪と前記鍔部との間に位置する。 【発明の効果】【0008】以上のように,この発明によれば,回転体を支持軸に対して回転可能に支持することができることができるという効果を発揮する。 【0015】図4に示すように,前記各支持軸20の突出端部には,合成樹脂よりなる円筒状の軸受け部材25が嵌合されて,ストップリング26により抜け止め固定されている。この軸受け部材25の表裏両面を含む外側前面には金属メッキが施され,軸受け部材25と支持軸20との間の導電が確保されている。また,金属メッキに代えて,軸受け部材25を導電性樹脂によって構成することにより前記導電を確保してもよい。図4及び図8に示すように,各軸受け部材25の外周には,一対の弾性変形可能な係止爪25aが突設されている。各支持軸20上の軸受け部材25には,ほぼ球体状をなす一対の回転体27が回転可能に嵌挿支持されている。 そして,前記各回転体27は,合成樹脂よりなる芯材28と,その芯材28の先端内周に嵌着された合成樹脂よりなるキャップ材29と,芯材28及びキャップ材2 - 70 -9の外周に被覆成形された合成樹脂よりなる外被材30とより構成されている。外被材30の外表面には,導電部としての導電金属メッキが施され,軸受け部材25との間の導電が確保されている。芯材28の内周には,前記軸受け部材25 れた合成樹脂よりなる外被材30とより構成されている。外被材30の外表面には,導電部としての導電金属メッキが施され,軸受け部材25との間の導電が確保されている。芯材28の内周には,前記軸受け部材25の係止爪25aに係合可能な段差部28aが形成されている。そして,回転体27が軸受け部材25に嵌挿された状態で,係止爪25aが段差部28aに係合され,回転体27が軸受け部材25に対して抜け止め保持されている。 【0019】従って,この実施形態によれば,以下のような効果を得ることができる。 (1)この美容器においては,ハンドル12の先端部に交差軸線L1,L2上に位置する一対の支持軸20が設けられている。各支持軸20の先端側には回転体27が回転可能に支持され,それらの回転体27により身体に対して美容的作用が付与されるようになっている。・・・【図1】 - 71 -【図4】 【図8】 2 被告製品は,本件発明1の技術的範囲に属するか(争点(1))について(1) 本件発明1について前記1(1)で判示した本件明細書1の記載からすると,本件発明1は,以下のとおりの特徴を有するものと認められる。 すなわち,本件発明1は,ハンドルに設けられたマッサージ用のボールにて,顔,腕等の肌をマッサージすることにより,血流を促したりして美しい肌を実現することができる美容器に関する発明(段落【0001】)であるところ,従来のこの種の美容器においては,①柄の中心線と一対のローラの回転軸が一平面上にあることから,美肌ローラの柄を手で把持して両ローラを肌に押し当てたとき,肘を上げ,手先が肌側に向くように手首を曲げて柄を肌に対して直立させなければならず,操作 - 72 -性が悪い上に,手首角度により肌へのロー を手で把持して両ローラを肌に押し当てたとき,肘を上げ,手先が肌側に向くように手首を曲げて柄を肌に対して直立させなければならず,操作 - 72 -性が悪い上に,手首角度により肌へのローラの作用状態が大きく変化するという問題や,②美肌ローラの各ローラは楕円筒状に形成されていることから,肌の広い部分が一様に押圧され,毛穴の開きが十分に得られず,また,肌がローラによって強く挟み込まれ難く,そのために,毛穴の開きや収縮が十分に行われず,毛穴の汚れを綺麗に除去することができないとともに,肌に線接触して肌に対する抵抗が大きく,動きがスムーズでなく,移動方向が制限されやすいとの問題があった(段落【0002】,【0004】,【0005】)。そこで,本件発明1は,ハンドルの先端部に一対のボールを,相互間隔をおいてそれぞれ一軸線を中心に回転可能に支持した美容器において,往復動作中にボールの軸線が肌面に対して一定角度を維持できるように,ボールの軸線をハンドルの中心線に対して前傾させて構成し,一対のボール支持軸の開き角度を65~80度,一対のボールの外周面間の間隔を10~13mmとすることにより(【請求項1】),美容器の往復動作中にボールの軸線が肌面に対して一定角度を維持できるようにし,また,肌に接触する部分が筒状のローラではなく,真円状のボールで構成することにより,ボールが肌に対して局部接触して集中して押圧力や摘み上げ力を作用させるとともに,肌に対するボールの動きをスムーズにでき,移動方向の自由度も高め(段落【0008】,【0009】),これらにより,肌に対して優れたマッサージ効果を奏することができるとともに,肌に対する押圧効果と摘み上げ効果とを顕著に連続して発揮することができ,かつ操作性が良好であるという効果を奏するようにしたものである(段落 肌に対して優れたマッサージ効果を奏することができるとともに,肌に対する押圧効果と摘み上げ効果とを顕著に連続して発揮することができ,かつ操作性が良好であるという効果を奏するようにしたものである(段落【0010】)。 そして,本件明細書1の段落【0025】には,「肌20に接触する部分が従来の筒状のローラではなく,真円状のボール17で構成されていることから,ボール17が肌20に対してローラより狭い面積で接触する。そのため,ボール17は肌20の局部に集中して押圧力や摘み上げ力を作用させることができる・・・」と記載されており,また,段落【0050】には,「図8及び図9に示すように,前記ボール17の形状を,ボール17の外周面のハンドル11側の曲率がボール支持軸15の先端側の曲率よりも大きくなるようにバルーン状に形成することもできる。この - 73 -ように構成した場合には,曲率の小さな部分で肌を摘み上げ,曲率の大きな部分で摘み上げ状態を保持できるため,ボール17を復動させたときの肌20の摘み上げ効果を向上させることができる。」と記載されているところ,本件発明1の前記特徴にこれらの記載を考え併せると,本件発明1は,筒状のローラの場合は,ローラの長さに相当する領域で挟み込まれることになるから,作用する摘み上げ力は弱いが,真円状のボールの場合は,ボールは,筒状のローラに比較して,肌に狭い面積で接触し,肌の局部に集中して摘み上げ力を発揮することを効果の一つとしていると認められ,また,ボールの形状をバルーン状とした場合は,曲率半径が小さい真円状の部分は肌を摘み上げる機能を有し,曲率半径が大きい円筒状の部分は摘み上げられた肌を保持する機能を有するものと認められる。 (2) 構成要件Dの充足性についてア構成要件Dの「一対のボールの外周 分は肌を摘み上げる機能を有し,曲率半径が大きい円筒状の部分は摘み上げられた肌を保持する機能を有するものと認められる。 (2) 構成要件Dの充足性についてア構成要件Dの「一対のボールの外周面間の間隔」を計測する2地点の位置について(ア) 「一対のボールの外周面間の間隔」とは,一対のボールの外周面間の距離を意味すると解されるところ,同距離を計測する2地点の位置について,以下,本件明細書1の記載を参酌して検討する。 本件明細書1には,「一対のボールの外周面間の間隔」を定義した記載はないが,段落【0021】には,「ボール17の外周面間の間隔Dは,特に肌20の摘み上げを適切に行うために,好ましくは8~25mm,さらに好ましくは9~15mm,特に好ましくは10~13mmである。このボール17の外周面間の間隔Dが8mmに満たないときには,ボール17間に位置する肌20に対して摘み上げ効果が強く作用し過ぎて好ましくない。一方,ボール17の外周面間の間隔Dが25mmを超えるときには,ボール17間に位置する肌20を摘み上げることが難しくなって好ましくない。」と記載されており,同記載からすると,ボールの外周面間の間隔Dの数値は,肌の摘み上げを適切に行うのに適した数値が選ばれているのであるから,ボールの外周面間の間隔Dは,肌を摘み上げる部分の間隔を意味すると解するのが - 74 -相当である。 そして,前記(1)のとおり,本件発明1においては,ボールの形状がバルーン状の場合は,曲率半径が小さい真円状の部分は肌を摘み上げる機能を有し,一方,曲率半径が大きい円筒状の部分は摘み上げられた肌を保持する機能を有し,肌を摘み上げる機能を有さないのであるから,バルーン状のボールの場合の「一対のボールの外周面間の間隔」を計測する2地点の位置は ,曲率半径が大きい円筒状の部分は摘み上げられた肌を保持する機能を有し,肌を摘み上げる機能を有さないのであるから,バルーン状のボールの場合の「一対のボールの外周面間の間隔」を計測する2地点の位置は,曲率半径が小さい真円状又は略真円状の部分の外周面間の間隔が最も狭くなった位置と解するのが相当である。また,本件明細書1には,ボールの形状が真円状の場合の官能評価のみが記載されているが(甲2,53),このことは,構成要件Dは,ボールの形状がバルーン状の場合も,曲率半径の小さい真円状又は略真円状の部分についての外周面の間隔を規定しているものと理解することと整合的であり,「一対のボールの外周面間の間隔」についての上記解釈を裏付けているというべきである。 この点,本件発明1の実施例を示す図5では,真円状の一対のボールの外周面間の間隔を示すDが表示され,同図からすると,Dは,両ボールの外周面の間隔が最も狭い部分の距離であると理解できるが,同図は,ボールの形状が真円状の場合を前提としており,ボールの形状がバルーン状の場合は,Dは,同ボールの真円状又は略真円状の部分について当てはまるものとして理解すべきである。 (イ) 一審原告は,本件明細書1の段落【0021】の記載からすると,本件発明1の「一対のボールの外周面間の間隔」は,肌が挟まれるに際し最もその間隔が狭い箇所を前提にしていることは明らかであり,また,本件明細書1の図5のD(間隔)も,一対のボールの最小間隔を示していることから,本件発明1の「一対のボールの外周面間の間隔」とは,一対のボールの間の最も近接している外周面間の距離を意味すると主張する。 しかし,前記(ア)のとおり,段落【0021】の同記載からすると,ボールの外周面間の間隔Dの数値は,肌の摘み上げを適切に行うのに適した数値が選 も近接している外周面間の距離を意味すると主張する。 しかし,前記(ア)のとおり,段落【0021】の同記載からすると,ボールの外周面間の間隔Dの数値は,肌の摘み上げを適切に行うのに適した数値が選ばれているのであるから,ボールの外周面間の間隔Dは,肌を摘み上げる部分の間隔を意味す - 75 -ると解するのが相当であるところ,ボールの形状がバルーン状の場合は,曲率半径が小さい真円状又は略真円状の部分は肌を摘み上げる機能を有し,曲率半径が大きい円筒状の部分は肌を摘み上げる機能を有さないのであるから,ボールの形状がバルーン状の場合の「一対のボールの外周面間の間隔」とは,曲率半径が小さい真円状又は略真円状の部分の外周面の間隔が最も近接している位置の外周面間の距離を意味し,必ずしも,ボールの外周面の間隔が最も近接している位置の外周面間の距離とはならないというべきである。 そして,前記(ア)のとおり,本件明細書1の図5は,ボールの形状が真円状の場合を前提としており,ボールの形状がバルーン状の場合は,Dは,同ボールの真円状の部分について当てはまるものとして理解すべきである。 さらに,本件明細書1の図からすると,ボールの形状がバルーン状の場合は,ハンドルに近い方が,外周面間の距離が狭くなると認められるから,仮に,一審原告の主張のとおり,「一対のボールの外周面間の間隔」を外周面間の距離が最も狭い部分の距離を意味するものと解すると,ボールの形状がバルーン状の場合は,曲率半径が大きい円筒状の部分の長さが異なる以外は,同じ形状のボールでも,円筒状の部分の長さによって,構成要件Dを充足したり,充足しなかったりすることになる。 しかし,円筒状の部分の長さが美容的作用を付与するという本件発明1の作用効果に影響を与えるとは考え難いことから,一審原告 部分の長さによって,構成要件Dを充足したり,充足しなかったりすることになる。 しかし,円筒状の部分の長さが美容的作用を付与するという本件発明1の作用効果に影響を与えるとは考え難いことから,一審原告の上記解釈によると,本件発明1の作用効果に影響を与えない部分の相違により,構成要件Dの充足性が異なることになり,したがって,一審原告の上記の解釈は不合理である。 よって,一審原告の上記主張は理由がない。 イあてはめ被告製品1ないし9のローリング部の形状及びローリングの外周面間の間隔は本判決別紙「写真1ないし9」のとおりであるところ,本判決別紙「写真1ないし9」,証拠(乙140~149,177~188〔枝番を含む。〕)によると,被告製品のローリング部は,上部が曲率半径の小さい略真円状のボールで,下部が曲率半径の - 76 -大きい円筒状のボールのバルーン状の形状であると認められ,また,曲率半径の小さい略真円状の部分の外周面間の間隔が最も狭くなった位置におけるローリング部間の距離は,いずれも13mmを超えることが認められる。 したがって,被告製品は,いずれも,本件発明1の構成要件Dを充足しない。 (3) 小括以上によると,一審原告の本件特許権1の侵害を理由とする請求は全て理由がない。 3 被告製品は,本件発明2の技術的範囲に属するか(争点(3))について(1) 被告製品は,本件発明2の「回転体」(構成要件F,G,H,K,L)を具備するかについてア前記第2の2で認定した本件発明2の特許請求の範囲の記載及び前記1(2)で認定した本件明細書2の記載からすると,本件発明2の「回転体」は,基端側のみに穴を有し,支持軸の先端側に,その内部に支持軸の先端が位置する非貫通状態で,軸受け部材を介して回転可 載及び前記1(2)で認定した本件明細書2の記載からすると,本件発明2の「回転体」は,基端側のみに穴を有し,支持軸の先端側に,その内部に支持軸の先端が位置する非貫通状態で,軸受け部材を介して回転可能に支持された部材を意味するものと認められる。 本判決別紙参考図1の1ないし3,2の1ないし3,証拠(乙1~7,167,168)及び弁論の全趣旨によると,被告製品のローリング部は,基端側のみに穴を有し,支持軸の先端側に,その内部に支持軸の先端が位置する非貫通状態で,軸受け部材を介して回転可能に支持されているものと認められるから,本件発明2の「回転体」に該当するものと認められる。 したがって,被告製品は,本件発明2の「回転体」を具備する。 イ一審被告は,①本件発明2の構成において,回転体を安定させるためにはキャップ材29が必要であること,②別件訴訟2において,一審原告は,キャップ材29は,本件発明2の「回転体」の構成要素であると主張し,また,同訴訟の判決も,そのように判断したこと,③本件発明2の特許請求の範囲は,「支持軸の先端側に回転可能に支持された」というものであることを理由として,本件発明2の「回転体」は,本件発明2の実施例におけるキャップ材29を必須要素とするもの - 77 -であり,キャップ材29を備えない部材は,本件発明2の「回転体」には当たらないと主張する。 しかし,本件発明2の特許請求の範囲は,前記第2の2で認定したとおりであり,同特許請求の範囲には,キャップ材29が回転体の構成要素であることの記載はない。 本件発明2は,「回転体」を「支持軸の先端側」(後記エのとおり,支持軸のうち回転体の穴のない側)で回転可能に支持するというものであり,「回転体」を「支持軸の先端部」で支持するというものではないから, 本件発明2は,「回転体」を「支持軸の先端側」(後記エのとおり,支持軸のうち回転体の穴のない側)で回転可能に支持するというものであり,「回転体」を「支持軸の先端部」で支持するというものではないから,回転体の支持軸の先端部にキャップ材29のような部材を備えることを必須の構成とするものではない。 本件明細書2の図4には,キャップ材29が示されているが,同図面は,あくまでも,本件発明2の実施例の一つであり,また,本件明細書2には,本件発明2を同図面の構成に限定することを示す記載はない(甲4)。 そして,本件発明2において,回転体を安定的に支持軸に支持するための構成としては,種々の構成が考えられるのであって,必ずしもキャップ材29が必要であるとは認められない。 また,証拠(乙165)によると,別件訴訟2において,裁判所は,本件発明2では,「鍔部」及び「係止爪」だけで「回転体」を回転可能に支持しているとの一審被告(同訴訟の原告)の主張を判断する中で,本件発明2では,実施例において,キャップ材29が回転体の一部を構成することを判示しているものであって,「本件明細書には,キャップ材29が,がたつきを防止するために必須の構成である旨の記載はない。」とも判示されているから,キャップ材29が本件発明2の構成要件としての「回転体」に含まれる旨を判示しているものではなく,同訴訟における一審原告(同訴訟の被告)の主張もその旨のものと理解することができる。 以上によると,一審被告の上記主張を採用することはできず,キャップ材29は,本件発明2の「回転体」の必須の構成ということはできない。 ウ一審被告は,被告製品においては,ローリング部,円筒状リング及び円 - 78 -筒部材が一体となって,本件発明2の「回転体」を構成するところ,円筒 構成ということはできない。 ウ一審被告は,被告製品においては,ローリング部,円筒状リング及び円 - 78 -筒部材が一体となって,本件発明2の「回転体」を構成するところ,円筒状リングと円筒部材は,基端側と先端側の両方に穴が設けられているから,被告製品は,本件発明2の「回転体は基端側のみに穴を有し」(構成要件G)を充足しないと主張する。 しかし,前記アのとおり,被告製品において,本件発明2の「回転体」に相当する部材は,ローリング部であるところ,本判決別紙参考図1の1ないし3,2の1ないし3,証拠(乙1~7,167,168)及び弁論の全趣旨によると,ローリング部は,先端側と基端側の両方に穴が設けられているとは認められないから,一審被告の上記主張は理由がない。 エ一審被告は,被告製品のローリング部は,「支持軸の先端側」(構成要件F)に回転可能に支持されていないと主張する。 (ア) 「先端側」との文言は,先端部とは異なり,通常,先端の側という意味で理解されるというべきである。そして,前記第2の2のとおり,本件発明2の特許請求の範囲においては,「先端側」及び「基端側」との文言が,「前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体」,「前記回転体は基端側にのみ穴を有し」,「同係止爪は前記先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有し」,「前記段差部は前記係止爪の前記基端側に係止される」として用いられていることからすると,本件発明2においては,「先端側」及び「基端側」は,位置関係を示す対をなす言葉として用いられており,「先端側」は,回転体の穴の開いていない部分の方向を意味し,「基端側」は,回転体の穴の開いている方向を示すものと認められる。 したがって,本件発明2の 関係を示す対をなす言葉として用いられており,「先端側」は,回転体の穴の開いていない部分の方向を意味し,「基端側」は,回転体の穴の開いている方向を示すものと認められる。 したがって,本件発明2の「支持軸の先端側」とは,回転体に支持軸が挿入された場合に,支持軸のうち回転体の穴のない側を意味し,支持軸の同方向の先端部分を意味するものではないと解するのが相当である。 (イ) 本判決別紙参考図1の1ないし3,2の1ないし3,証拠(乙1~7,167,168)及び弁論の全趣旨によると,被告製品のローリング部は,支持軸 - 79 -のうち回転体の穴のない側で支持軸に回転可能に支持されているものと認められるから,本件発明2の「支持軸の先端側」に回転可能に支持されているといえる。 (2) 被告製品は,本件発明2の「弾性変形可能な係止爪」を具備するかについてア前記第2の2で認定した本件発明2の特許請求の範囲の記載及び前記1(2)で認定した本件明細書2の記載からすると,本件発明2は,回転体を支持軸に対して回転可能に支持することができる美容器を提供するという目的を達成するために,上記特許請求の範囲の構成としたものと認められるところ,上記記載からすると,軸受け部材に弾性変形可能な係止爪を突き出すように設けたのは,段差部を同係止爪に係合させることによって,回転体が軸受け部材を介して支持軸に回転可能に支持されるようにしたものであり,また,係止爪の形状を,先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有するものとし,弾性変形可能なものとしたのは,軸受け部材を回転体内に回転体の基端側から挿入した際に,係止爪が回転体の回転中心の方向(内側方向)へ弾性変形することによって,段差部を乗り越え,段差部を乗り ものとし,弾性変形可能なものとしたのは,軸受け部材を回転体内に回転体の基端側から挿入した際に,係止爪が回転体の回転中心の方向(内側方向)へ弾性変形することによって,段差部を乗り越え,段差部を乗り越えた後は元の状態に戻って段差部と係合し,これにより,軸受け部材が回転体から抜け落ちないようにするためであると認められる。 そして,本件発明2の上記構成においては,係止爪が段差部を乗り越えるためには,係止爪の形状自体が変形する必要はなく,係止爪が周方向へ沈み込むことによっても段差部を乗り越えることができるところ,「弾性変形可能な係止爪」との文言から,段差部を乗り越える手段が係止爪の形状自体が変形する構成に限定されていると解することはできないから,係止爪が段差部を乗り越える際に周方向へ沈み込み,段差部を乗り越えた後は元の状態に戻るのであれば,係止爪の形状自体が変形しなくても,同係止爪は,「弾性変形可能な係止爪」に当たるというべきである。 イ本判決別紙参考図1の1ないし3,2の1ないし3,証拠(乙1~7,167,168)及び弁論の全趣旨によると,被告製品の係止爪は,本判決別紙参 - 80 -考図1の1ないし3のものであるか,同図2の1ないし3のものであるかにかかわらず,段差部を乗り越える際に周方向に沈み込み,段差部を乗り越えた後は元の状態に戻ることが認められるから,本件発明2の「弾性変形可能な係止爪」に当たると認められる。 ウ一審被告の主張について(ア) 一審被告は,構成要件Iの「前記軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突き出ている」との表現を理由として,「弾性変形可能な係止爪」というためには,斜面部分が弾性変形することが必要であると主張する。 しかし,構成要件Iが,軸受け部材から係止爪が突き出てい な係止爪が突き出ている」との表現を理由として,「弾性変形可能な係止爪」というためには,斜面部分が弾性変形することが必要であると主張する。 しかし,構成要件Iが,軸受け部材から係止爪が突き出ていることを特定しているからといって,係止爪の「弾性変形可能」の意義について,一審被告が主張するように解さなければならない理由はない。 (イ) 一審被告は,斜面部分自体が弾性変形しなくても,長方形状部分が弾性変形することにより,斜面部分が周方向に沈み込む構成を含むのであれば,特許請求の範囲は,「前記斜面が押圧されることによって,前記長方形状の部位が弾性変形して,前記斜面が径方向内側に沈み込んだ後,復元することで,前記段差部は前記係止爪の前記基端側に係止される」と特定されることになり,「弾性変形可能な係止爪」と特定されることはないと主張する。 しかし,「弾性変形可能な係止爪」との表現から,係止爪が段差部を乗り越える際に回転体の回転中心方向へ沈み込み,段差部を乗り越えた後は元の状態に戻るという構成を含むことは十分に認識できるというべきであるから,特許請求の範囲を一審被告の指摘する上記表現としなければならないということはできない。 (ウ) 一審被告は,係止爪が弾性変形することなく,「前記斜面が押圧されることによって,前記長方形状の部位が弾性変形して,前記斜面が径方向内側に沈み込んだ後,復元することで,前記段差部は前記係止爪の前記基端側に係止される」構成は,公知の技術であり,本件発明2は,同構成を採用せず,「前記軸受け部材からは,弾性変形可能な係止爪が突き出ている。」と特定したと主張する。 - 81 -しかし,係止爪が段差部に係合する構成として,一審被告が指摘する上記構成が公知であるとしても,本件発明2の一部分の構成にすぎな が突き出ている。」と特定したと主張する。 - 81 -しかし,係止爪が段差部に係合する構成として,一審被告が指摘する上記構成が公知であるとしても,本件発明2の一部分の構成にすぎないから,本件発明2において,係止爪が段差部に係合する構成として,一審被告が指摘する上記構成を採用しない理由にはならない。 (エ) 一審被告は,別件訴訟2の判決は,係止爪と長方形状部分が異なる構成であること,長方形状部分と別に構成された斜面部分が弾性変形することを認定していると主張する。 しかし,証拠(乙165)によると,別件訴訟2の判決において,裁判所は,本件発明2について,係止爪と長方形状部分が別の構成であるとか,係止爪の斜面部分自体が弾性変形することを要するとは判示していないと認められる。 (オ) 一審被告は,「係止爪」を斜面部分と長方形状部分を合わせた全体であると解すると,「係止爪の基端側」は,長方形状部分と筒状の部位の周面に連結した部位も含み,当該部位側で段差部と係合される技術も含むことになるが,このような技術は不合理であると主張する。 しかし,前記アのとおり,係止爪が段差部を乗り越える際に周方向に沈み込み,段差部を乗り越えた後は元の状態に戻ることを「弾性変形可能」と解しているのであって,「係止爪」を斜面部分と長方形状部分を合わせた全体であると解しているのではないから,一審被告の上記主張は前提を欠くものである。 (カ) 以上のとおり,一審被告の主張を採用することはできない。 (3) 被告製品は,本件発明2の「段差部」(構成要件L)を具備するかについてア前記第2の2で認定した本件発明2の特許請求の範囲の記載及び前記1(2)で認定した本件明細書2の記載からすると,本件発明2の「段差部」とは,回転体の内周 」(構成要件L)を具備するかについてア前記第2の2で認定した本件発明2の特許請求の範囲の記載及び前記1(2)で認定した本件明細書2の記載からすると,本件発明2の「段差部」とは,回転体の内周にあって,係止爪の基端側に係止され,係止爪と鍔部との間に位置する部材であると認められる。 本判決別紙参考図1の1,2の1,証拠(乙1~7,167,168)及び弁論 - 82 -の全趣旨によると,被告製品においては,金具2(円筒状リング)は回転体の内周に位置し,係止爪の基端側に係止され,係止爪と鍔部との間に位置する部材であると認められるから,本件発明2の「段差部」に該当し,被告製品は,本件発明2の「段差部」を具備する。 イ一審被告は,本件発明2の「段差部」は,回転体の芯材と一体として形成された段差部に限定され,回転体の芯材とは別部材により形成された段差部は含まれないと主張する。 しかし,特許請求の範囲においては,「前記回転体は・・・段差部を有し」と記載されているところ,段差部が回転体と別部材であっても,段差部としての機能を有する部材であれば,文言上,上記の「段差部」に該当するというべきである。そして,本件明細書2の記載を検討しても,段差部が回転体と同一の部材であると限定する旨の記載はない。 したがって,本件発明2の「段差部」は,回転体の内周に位置し,係止爪に係合する機能を有するものであれば足り,回転体と一体として形成されている必要はないというべきである。 (4) 小括以上のとおり,被告製品は,本件発明2の「回転体」,「弾性変形可能な係止爪」,「段差部」を有し,「前記支持軸の先端側に・・・支持された回転体」(構成要件F),「回転体は基端側のみに穴を有し」(構成要件G)を充足するところ,その他に,充足性についての争 性変形可能な係止爪」,「段差部」を有し,「前記支持軸の先端側に・・・支持された回転体」(構成要件F),「回転体は基端側のみに穴を有し」(構成要件G)を充足するところ,その他に,充足性についての争いはない。そして,被告製品の構成は,前記第2の2で認定したとおりであるから,被告製品は,本件発明2の技術的範囲に属するものと認められる。 4 本件発明2に係る本件特許2は,特許無効審判により無効にされるべきものか(乙45文献を主引用例とする進歩性欠如の有無)(争点(4)ア)について(1) 引用発明の認定ア乙45文献には,以下のとおりの記載がある(乙45)。 - 83 -【0008】しかしながら,上述したような従来の美容ローラにおいては,ローラの回転状態が良好でなく皮膚への刺激が十分でない,構造が複雑である,皮膚への接触状態が良好でないなどの不具合があった。 【0009】このため,本考案は,ローラの回転が円滑であると共に,皮膚への接触状態が良好であると共に磁気による効果も付加したマグネット美容ローラを提供するものである。 【課題を解決するための手段】【0010】以上のことから,本考案に係るマグネット美容ローラは,柄本体部と,柄本体部に回転自在に保持されるローラ部とによって構成され,前記柄本体部が,使用者によって保持される所定の長さの把持部と,該把持部から該把持部の長さ方向に対して第1の角度で傾斜し且つお互いが第2の角度で開くように前記把持部の一端から延出する一対のローラ保持部とによって構成され,且つ前記ローラ部が,磁石によって形成されると共に前記ローラ保持部のそれぞれに回転自在に保持されることを特徴とするものである。 【0014】さらに,前記ローラ部には,前記ローラ保持部が挿着される挿着孔が形成され,前記ローラ よって形成されると共に前記ローラ保持部のそれぞれに回転自在に保持されることを特徴とするものである。 【0014】さらに,前記ローラ部には,前記ローラ保持部が挿着される挿着孔が形成され,前記ローラ保持部との間にベアリングが設けられて,前記ローラ部が回転自在となるものである。このベアリングとしては,玉軸受,コロ軸受等の転がり軸受,又は,プラスチック軸受,球面滑り軸受,焼結含油軸受等の滑り軸受が望ましい。 【0020】 前記柄本体部2は,本実施例では亜鉛合金によって成形され,図2及び図3に示されるように,使用者によって保持される把持部3と,この把持部3から一方の側に角度αで,例えば手前側に傾斜すると共に,角度βで両側に広がるように延出するローラ保持部4とによって構成され,さらにローラ保持部4は,前記把持部3から分かれて延出する大径部4aと,その先端に一体に形成された小径部4bとによって構成される。この小径部4bには,下記するベアリング8が固着される。また,前記把持部3は,一端側の前記ローラ保持部4の分岐部分から他端側に向けて漸次大きくなるように形成され,持ちやすさを向上させるものである。 - 84 -さらに,把持部3の断面は,この実施例では長円形状に形成されるものであるが,円形であっても良いものである。 【0023】また,前記ローラ部5のローラ本体部50には,軸方向に形成された小径孔53と大径孔54とが連設され,小径孔53には前記ローラ保持部4の小径部4bが挿通され,大径孔54には前記小径部4bに固着されたベアリング8が挿入され,前記大径孔54の内周面に固定される。これによって,前記ローラ部5は,前記ローラ保持部4に対して回転自在に保持されるものである。 【図1】 【図4】 - 85 -イ 前記大径孔54の内周面に固定される。これによって,前記ローラ部5は,前記ローラ保持部4に対して回転自在に保持されるものである。 【図1】 【図4】 - 85 -イ前記アで認定した乙45文献の記載からすると,乙45文献には,以下の発明(以下「乙45発明」という。)が記載されていることが認められる。 「把持部3の上部に設けられたローラ支持部4において,ローラ部5を回転させるための支持軸となる小径部4bと,小径部4bに回転可能に支持されたローラ部5とを備え,そのローラ部5により身体に対して美容的作用を付与するようにしたマグネット美容ローラにおいて,ローラ部5は基端側にのみ穴を有し,ローラ部5は,その内部に小径部4bの先端が位置する非貫通状態で小径部4bにベアリング8を介して支持されており,ベアリング8は,小径部4bに抜け止めされ,ローラ部5は内周でベアリング8を抜け止めしており,ベアリング8は外周面が円筒状であり,ローラ部5の大径孔の内周は円筒状であることを特徴とするマグネット美容ローラ」これに対し,一審被告が乙45文献に記載された発明として主張する構成においては,ベアリング8の外周面及びローラ部5の大径孔の内周の形状に係る構成については特定されていないが,同構成は,本件発明2の構成要件I,J,K,Lに相当するものであるから,同構成も特定して,乙45文献に記載された発明を認定すべきである。 (2) 対比ア本件発明2と乙45発明を比較すると,以下のとおりの一致点及び相違点があると認められる。 (ア) 一致点「ハンドルに設けられた支持軸と,前記支持軸に回転可能に支持された回転体とを備え,その回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器において,前記回転体は基端側にのみ (ア) 一致点「ハンドルに設けられた支持軸と,前記支持軸に回転可能に支持された回転体とを備え,その回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器において,前記回転体は基端側にのみ穴を有し,回転体は,その内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態で前記支持軸に軸受け部材を介して支持されており,軸受け部材は,支持軸に抜け止めされ,前記回転体は内周で,軸受け部材を抜け止めしている美容器」 - 86 -(イ) 相違点a 相違点1(争いがない。)本件発明2では,支持軸をハンドルの基端において抜け止め固定しているのに対して,乙45発明では,小径部4bは把持部3と一体に形成されており,把持部3から抜け止め固定されていない点b 相違点2(争いがない。)本件発明2では,回転体を支持軸の先端側に回転可能に支持しているのに対して,乙45発明では,ローラ部5を小径部4bの先端側以外の部分で回転可能に支持している点c 相違点3´本件発明2では,軸受け部材は前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされているのに対して,乙45発明では,ベアリング8の具体的な抜け止めの有無は不明である点d 相違点④本件発明2は,前記軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突き出るとともに,軸受け部材は係止爪の前記基端側に鍔部を有しており,同係止爪は前記先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有しており,回転体は,内周に段差部を有し,同段差部は,前記係止爪と前記鍔部との間で,前記係止爪と係合するのに対して,乙45発明は,ベアリング8の外周面及びローラ部5の大径孔の内周がいずれも円筒状である点イ一審被告は,相違点④について,軸受け部材の構成に係 鍔部との間で,前記係止爪と係合するのに対して,乙45発明は,ベアリング8の外周面及びローラ部5の大径孔の内周がいずれも円筒状である点イ一審被告は,相違点④について,軸受け部材の構成に係る相違点である相違点4と回転体の構成に係る相違点である相違点5の二つの相違点に分けるべきであり,相違点4については,乙46技術又は乙47技術を適用することにより,相違点5については,乙44技術及び乙46技術又は乙47技術を適用することにより,容易に想到できると主張する。 しかし,相違点④は一体的な技術の構成に係るものであり,それを軸受け部材の - 87 -構成に係る相違点と回転体の構成に係る相違点に分けて認定することは相当ではないというべきである。そこで,以下,相違点④について,乙46文献記載の技術,乙47文献記載の技術,乙44文献記載の技術を適用して容易に想到できるかどうかについて検討する。 (3) 相違点④の容易想到性についてア文献の記載(ア) 乙46文献乙46文献には,以下のとおりの記載があり,同記載からすると,乙46文献には乙46技術(フランジ付き滑り軸受けであって,弾性変形可能な弾性係止片が突き出るとともに,弾性係止片の基端側にフランジを有しており,弾性係止片は先端側に向かうほど回転中心との距離が短くなる斜面を有している。)が記載されていることが認められる(乙46)。 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,ファクシミリ等の紙送り機構で使用される軸の支承に最適な樹脂製のフランジ付き滑り軸受に関するものである。 【0002】【従来の技術】ファクシミリの紙送り機構で使用される送りローラの軸は,回転速度がそれほど大きくなく,また,荷重もそれほど大きくないこと,更には,軸受の取り付け部が一般に るものである。 【0002】【従来の技術】ファクシミリの紙送り機構で使用される送りローラの軸は,回転速度がそれほど大きくなく,また,荷重もそれほど大きくないこと,更には,軸受の取り付け部が一般に市販の鋼鈑製の支持板に円形の軸受挿通孔を設けただけの単純構造を採用することが多きことなどから,軸を支承する軸受として,樹脂製のフランジ付き滑り軸受を採用することが多い。図5乃至図7は,ファクシミリの紙送り機構で使用される従来の樹脂製のフランジ付き滑り軸受を示したものである。 【0007】【発明が解決しようとする課題】ところが,図5に示したフランジ付き滑り軸受1の場合は,支持板2への固定に別体の抜け止め用のリング4が必要で,紙送り機構における構成部品点数の増大を招くと共に,組立工程数の増大を招くという問題があった。 【0008】また,図6や図7に示したフランジ付き滑り軸受5,7の場合は,抜 - 88 -け止め用のリング4が不要で,構成部品点数や組立工程数の削減を図ることができる。しかし,図6に示した構造の場合は,筒部5aを軸受挿通孔2aに圧入するために,組み立て作業に,大きな操作力が必要もなるという問題が生じた。また,図7に示した構造の場合も,筒部7aを縮径状態にして軸受挿通孔2aに嵌合させなければならないために,組み立て作業に大きな操作力が必要になるという問題があり,更に,切り離し7dのために筒部7aの内径が変動し易く,軸との嵌め合い精度を高精度化することが難しいという問題も生じた。 【0009】更に,図7に示した構造の場合は,支持板2の板厚が変更された場合には,フランジ7bと係止用フランジ7cとの間の寸法を変えて,新たに設計しなければならず,取り付け可能な支持板2の板厚が限定されてしまうという問題もあった。 【0010】 2の板厚が変更された場合には,フランジ7bと係止用フランジ7cとの間の寸法を変えて,新たに設計しなければならず,取り付け可能な支持板2の板厚が限定されてしまうという問題もあった。 【0010】本発明は上記事情に鑑みて成されたもので,支持板への固定に別体の抜け止め用のリングが不要で,構成部品点数や組立工程数の削減を図ることができ,しかも,取り付け時に大きな操作力が不要で,紙送り機構等のコストの低減と組立性の向上を図ることができるフランジ付き滑り軸受を提供すること,更に,取り付け可能な支持板の板厚が限定されず,支持板の板厚が異なる複数種の紙送り機構等に汎用使用することのできるフランジ付き滑り軸受を提供することを目的とする。 【0011】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明に係る樹脂製のフランジ付き滑り軸受は,装置の支持板に貫通形成された軸受挿通孔に嵌合する筒部と,該筒部の基端部外周から半径方向外方に向かって張り出して設けられて前記支持板への当接によって前記筒部の軸方向の位置決めを果たすフランジとを備え,前記筒部に挿通された軸を回転自在に支承する樹脂製のフランジ付き滑り軸受において,前記筒部の外周面には,軸受挿通孔を挿通する際には筒部の内方に弾性変位すると共に,前記軸受挿通孔を通過すると筒部の外方に弾性変位して支持板の前記軸受挿通孔の周縁に当接して,前記筒部の軸受挿通孔からの抜けを防止す - 89 -る弾性係止片を一体形成したことを特徴とする。 【0016】【発明の実施の形態】以下,本発明に係る樹脂製のフランジ付き滑り軸受の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は,本発明に係る樹脂製のフランジ付き滑り軸受の一実施の形態を示したもので,図1は本発明の一実施の形態の樹脂製のフランジ付き滑 ンジ付き滑り軸受の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は,本発明に係る樹脂製のフランジ付き滑り軸受の一実施の形態を示したもので,図1は本発明の一実施の形態の樹脂製のフランジ付き滑り軸受の斜視図,図2は図1に示した樹脂製のフランジ付き滑り軸受の縦断面図である。 【0017】この一実施の形態の樹脂製のフランジ付き滑り軸受11は,ファクシミリ装置の紙送り機構の支持板12に貫通形成された円形の軸受挿通孔12aに嵌合する円筒状の筒部11aと,該筒部11aの基端部外周から半径方向外方に向かって張り出して設けられて前記支持板12への当接によって前記筒部11aの軸方向の位置決めを果たすフランジ11bと,筒部11aの外周に突出する弾性係止片11cとを,合成樹脂により一体成形したもので,筒部11aに挿通された軸を回転自在に支承する。支持板12は,JIS規格に準じた市販の鋼鈑材料のプレス成形によって形成されたものである。 【0018】弾性係止片11cは,軸受挿通孔12aを挿通する際には筒部11aの内方に弾性変位すると共に,前記軸受挿通孔12aを通過すると筒部11aの外方に弾性復元力によって変位して支持板12の前記軸受挿通孔12aの周縁に先端を当接して,前記筒部11aの軸受挿通孔12aからの抜けを防止する。 【0019】以上に説明したフランジ付き滑り軸受11では,軸受の筒部11aを支持板12の軸受挿通孔12aに挿入した際,軸受の筒部11aに一体形成した弾性係止片が軸受挿通孔12aを通過すると,弾性復元力によって弾性係止片が筒部11aの外方に突出して,支持板12の軸受挿通孔12aの周縁を係止し,抜け止めを果たす。従って,軸受の支持板12への固定に別体の抜け止め用のリングが不要で,構成部品点数や組立工程数の削減を図ることができる。また,弾性 して,支持板12の軸受挿通孔12aの周縁を係止し,抜け止めを果たす。従って,軸受の支持板12への固定に別体の抜け止め用のリングが不要で,構成部品点数や組立工程数の削減を図ることができる。また,弾性係止片は,筒部11aの周壁の一部に形成した小さなもので,弾性変形にそれほど大きな力が必要とならない。そのため,取り付け時に大きな操作力が不要で,紙送り機構等の - 90 -コストの低減と組立性の向上を図ることができる。 【図1】 【図2】 【図5】 【図6】 【図7】 - 91 -(イ) 乙47文献について乙47文献には,以下のとおりの記載があり,同記載からすると,乙47文献には乙47-1技術(軸受けからは弾性変形可能な傾斜面部が突き出るとともに,軸受けは傾斜面部の基端側に鍔部を有しており,傾斜面部は先端側に向かうほど回転中心との距離が短くなる斜面を有している。),乙47-2技術(軸受けからは弾性変形可能な舌片部が突き出るとともに,軸受けは舌片部の基端側に鍔部を有しており,舌片部は先端側に向かうほど軸受けにおける回転中心との距離が短くなる斜面を有している。)及び乙47-3技術(軸受けからは弾性変形可能な二つの舌片部が突き出るとともに,軸受けは舌片部の基端側に鍔部を有しており,舌片部は先端側に向かうほど軸受けにおける回転中心との距離が短くなる斜面を有している。)が記載されていることが認められる(乙47)。 a 〔産業上の利用分野〕本考案は金属あるいは合成樹脂などの薄板から成る取付部材に合成樹脂からなる軸受を固定する軸受の固定構造に関するものである。(2欄14行~3欄2 とが認められる(乙47)。 a 〔産業上の利用分野〕本考案は金属あるいは合成樹脂などの薄板から成る取付部材に合成樹脂からなる軸受を固定する軸受の固定構造に関するものである。(2欄14行~3欄2行)b 〔従来技術〕従来,薄板から成る取付部材に合成樹脂製軸受を固定する場合は,該軸受の外周面に鍔部を形成し,該鍔部においてビスなどの手段により固定する方法あるいは該軸受を取付部材に圧入固定する方法が採用されている。 しかしながら,前者の固定方法においては,取付部材ならびに軸受の鍔部にビス用の孔を加工する必要があると共にその固定作業は極めて効率が悪いという欠点があり,加えて振動等により該ビスが緩み当該軸受が取付部材から抜け出すという問題もある。 また,後者の固定方法においては,取付部材に形成された孔の径と軸受の外径との差,所謂シメシロが該軸受の内周面に影響を及ぼし,該内周面の内径にバラツキを生ずるという問題がある。 このような問題を解決するために,第9図に示す軸受の固定構造が提案されてい - 92 -る。 この固定構造は,円筒部30と該円筒部30の一方の端部外周面に径方向外方に延設された鍔部31と該円筒部30の外周面に該鍔部31と反対側から該鍔部31裏面側に向かって漸次拡径し該鍔部31裏面の近傍まで延設された傾斜面部32と該鍔部31裏面と該傾斜面部32の端面との間に形成された環状溝33とを備えた軸受3と,円孔40を備えた薄板から成る取付部材4からなるもので,該軸受3は該鍔部31と反対側の端部から該取付部材4の円孔40内に挿入され,該軸受3の外周面傾斜面部32を弾性変形させながら該鍔部31裏面が取付部材4に当接するまで押圧され,該軸受3の環状溝33が該取付部材4に嵌合することにより該取付部材4に固定されるものである。( れ,該軸受3の外周面傾斜面部32を弾性変形させながら該鍔部31裏面が取付部材4に当接するまで押圧され,該軸受3の環状溝33が該取付部材4に嵌合することにより該取付部材4に固定されるものである。(以上,3欄3行~30行)c 〔考案が解決しようとする問題点〕しかしながら,上述した固定構造では,該軸受3の取付部材4に対する回り止め手段は該軸受3の環状溝33と該環状溝33に嵌合する取付部材4との間の嵌合力によって行われるため,当該嵌合力の変化により取付部材4の円孔40と該軸受3の環状溝33間で回転する恐れがあり,結果として該環状溝33の摩耗を惹起し,早期に該軸受3と取付部材4との間にガタを発生するなどの問題がある。 また,この固定構造では,軸受の外周面に形成した環状溝の幅と同じ肉厚(板厚)を有する取付部材に限定され,異なる肉厚(板厚)の取付部材には対応することができず,取付部材の板厚ごとに軸受を製作しなければならないという経済性の問題もある。 本考案は上述した問題点に鑑み,軸受の取付部材への固定作業の効率が良く,軸受の回り止めも兼ね備え,かつ板厚の異なる取付部材に対しても一つの軸受で対応できる軸受の固定構造を得ることを目的とするものである。(以上,3欄36行~4欄4行)d 〔問題点を解決するための手段〕上述した目的を達成するべく,本考案はつぎの構成を採る。 - 93 -すなわち,薄板から成る取付部材に形成された孔に合成樹脂から成る軸受を固定する構造であって,円孔と該円孔に連なる少なくとも一つの切欠き溝が形成された取付部材には,円筒部と該円筒部の外周面に径方向外方に延設された鍔部と該円筒部の外周面に該外周面から該鍔部側に斜方向に延設された少なくとも一つの舌片部と該舌片部の端部に該鍔部側に向けて延設された係合片部と 材には,円筒部と該円筒部の外周面に径方向外方に延設された鍔部と該円筒部の外周面に該外周面から該鍔部側に斜方向に延設された少なくとも一つの舌片部と該舌片部の端部に該鍔部側に向けて延設された係合片部と該係合片部に該鍔部裏面との隙間を漸次縮小するように形成された複数個の段部とを備えた軸受が該係合片部を該切欠き溝に係合させ,該鍔部裏面と係合片部の段部との隙間に該取付部材を挟持して固定されてなる軸受の固定構造である。 ・・・1は合成樹脂製の軸受であり,該軸受1は円筒部10と該円筒部10の一方の端部外周面に径方向外方に延設された鍔部11と該円筒部10の外周面に該外周面から鍔部11側に斜方向に延設された1つの舌片部12と該舌片部12の端部に該鍔部11側に向けて延設された係合片部13と該係合片部13に該鍔部11裏面との隙間t1 ,t2 ,t3 を漸次縮小するように形成された複数個の段部14(本実施例においては3個)とを備えている。 2は金属あるいは合成樹脂などの薄板から成る取付部材であり,該取付部材2には円孔20と該円孔20に連なり底部21を有する切欠き溝22とが形成されている。 該円孔20は前記軸受1の外径とほぼ同一の径で穿孔されており,また該切欠き溝22の幅Wは該軸受1の外周面に形成された係合片部13の幅wとほぼ同一に形成されている。 また,該切欠き溝22の深さDは該取付部材2の厚さTにより適宜調整される。 ・・・第6図及び第7図は,本考案の第2の実施例を示すものである。 この実施例は,取付部材2に円孔20と該円孔20に連なる切欠き溝22が相対向して2つ形成されており,軸受1の円筒部10の外周面には端部に係止片部13 - 94 -を備えた舌片部12が相対向して2つ形成されているものである。(以上,4欄5行~5欄38行 相対向して2つ形成されており,軸受1の円筒部10の外周面には端部に係止片部13 - 94 -を備えた舌片部12が相対向して2つ形成されているものである。(以上,4欄5行~5欄38行)【第1図】 【第2図】 【第6図】 - 95 -【第9図】 (ウ) 乙44文献について乙44文献には以下のとおりの記載がある。 【0001】【産業上の利用分野】この考案はゴム状弾性材料より成り円柱状の表面に多数の凹所を形成し皮膚の表面に添って転動させるマッサージ部材を有する美容マッサージ器に関するものである。 【0006】【実施例】以下図面を参照しながらこの考案の実施例について説明する。 図に示すこの考案の一実施例において,10はハンドルで,先端部に両側に延びるようにした1個の軸12が固着してある。この軸の両端部にはねじ13が刻んである。15はこの軸の両端部からそれぞれ回転可能に嵌込んだ筒体で,ナット16をねじ部13に螺合させて抜け止めしてある。 18はほぼ円柱状の表面を有するゴム状弾性を有する材料より成る2個のマッサージ部材で,両側の筒体15の外側にそれぞれ嵌込み筒体の段部17に係合させてある。20はこのマッサージ部材の表面に形成した多数の凹所であり,この各凹所の周囲には例えば0.5mm程度等の僅かに外方に突出させた環状突出部22が形成してある。 - 96 -【図1】 イ検討(ア)a 前記(1)で認定した乙45文献の記載によると,乙45発明は,ローラ保持部4において,ローラ部5を回転自在に保持することを内容とする技術であり,ローラ部5の回転状態を良好なものとすることを課題の一つとするものであり,ロー 5文献の記載によると,乙45発明は,ローラ保持部4において,ローラ部5を回転自在に保持することを内容とする技術であり,ローラ部5の回転状態を良好なものとすることを課題の一つとするものであり,ローラ部5は,ベアリング8を介して小径部4bに支持されるという構成により,ローラ部5を回転自在なものとしていると認められるところ,前記アで認定した乙46文献及び乙47文献の記載によると,乙46技術及び乙47技術は,支持板又は取付部材にフランジ付き滑り軸受け又は軸受けを係合するという技術であるが,支持板又は取付部材がローラ部5に対応し,フランジ付き滑り軸受け又は軸受けがベアリング8に対応するとしても,支持板又は取付部材はいずれも固定されており,フランジ付き滑り軸受け又は軸受側の軸が回転することが認められるから,乙45発明と乙46技術及び乙47技術とは,その技術思想が大きく異なっているというべきである。 また,乙45文献の記載からすると,乙45発明は,美容マッサージ器に関する発明であり,従来の美容ローラにおいては,ローラの回転状態が良好でなく皮膚へ - 97 -の刺激が十分でないこと,構造が複雑であること,皮膚への接触状態が良好でないことなどの問題があったことから,この問題を解決するために発明されたものであることが認められるところ,乙46文献の記載によると,乙46技術は,ファクシミリ等の紙送り機構で使用される軸の支承のための軸受けに関する技術であり,従来の技術では,別体の抜け止め用のリング4を必要としたため,構成部品点数と組立工程数の増大を招くこと,上記抜け止め用のリングを不要とすると,組立ての作業に大きな操作力が必要となったり,軸との嵌め合い精度を高精度化することが難しいことなどの問題があるため,これらの問題を解決しようとした技術で くこと,上記抜け止め用のリングを不要とすると,組立ての作業に大きな操作力が必要となったり,軸との嵌め合い精度を高精度化することが難しいことなどの問題があるため,これらの問題を解決しようとした技術であることが認められ,また,乙47文献の記載によると,乙47技術は,薄板から成る取付部材に軸受けを固定する軸受けの固定構造に関する技術であり,従来の技術では,軸受けの外周面に鍔部を形成し,該鍔部においてビスなどの手段により固定する方法又は軸受けを取付部材に圧入固定する方法が採用されていたが,これらの技術には,固定作業の効率が悪い,軸受けの内周面の内径にばらつきが生じるなどの問題があり,また,これらの問題を解決しようとした技術にも,軸受けが回転し,軸受けの取付部材との当接部分に摩耗が生じるなどの問題があるため,これらの問題を解決しようとした技術であることが認められ,このように,乙45発明と乙46技術及び乙47技術との間では,技術分野や課題が異なる。 したがって,乙45発明に乙46技術や乙47技術を適用する動機付けは認められない。 b これに対し,一審被告は,軸受けは,美容器に限らず,汎用性のある機構として広く知られているのである(乙56~59)から,乙45発明と乙46技術及び乙47技術とは機能が同一である以上,両者の課題,目的,用途の相違が動機付けを否定する理由にならないと主張するが,前記aのとおり,両者では,技術思想が大きく異なる上に,技術分野や課題も異なることを考慮すると,軸受けとしての機能は同一であったとしても,乙45発明に乙46技術や乙47技術を適用する動機付けは認められないというべきである。 - 98 -(イ) なお,仮に,乙45発明に乙46技術や乙47技術を適用して,乙45発明のベアリング8を,乙46 47技術を適用する動機付けは認められないというべきである。 - 98 -(イ) なお,仮に,乙45発明に乙46技術や乙47技術を適用して,乙45発明のベアリング8を,乙46技術のフランジ付き滑り軸受けや乙47技術の軸受けに置き換えても,乙45発明のローラ部5には段差部がないのであるから,本件発明2には至らない。 この点,一審被告は,乙44文献には,本件発明2の段差部に相当する技術が記載されており,さらに,同技術を適用すれば,本件発明2に至る旨主張するが,乙45発明に乙46技術又は乙47技術を適用した上で,さらに乙44文献記載の技術を適用することは当業者にとって容易とは認められない。 (4) 小括以上より,本件発明2は,乙45文献を主引用例として,進歩性が欠如するとは認められない。 5 本件発明2に係る本件特許2は,特許無効審判により無効にされるべきものか(乙135文献を主引用例とする進歩性欠如の有無)(争点(4)イ)について(1) 引用発明の認定ア乙135文献には,以下のとおりの記載がある(乙135)。 【特許請求の範囲】(1) 複数の吸盤用凹部を配設した弾性材料から成るローラーを把持部に対して回転自在に取り付けることにより構成したことを特徴とする素肌用ローラー。 (5) 複数の吸盤用凹部を配設した弾性材料から成るローラーを把持部に対して回転かつ着脱自在に取り付けることにより構成したことを特徴とする素肌用ローラー。 【発明の詳細な説明】〔産業上の利用分野〕本発明は素肌の洗浄,マッサージ等に使用する素肌用ローラーに関するものである。 〔発明が解決しようとする課題〕従って,現在化粧料の作用効果に頼られている素肌美容の要望に答えるべく,本願発明に於いては,マツサージ効果に加えて,化粧料 用する素肌用ローラーに関するものである。 〔発明が解決しようとする課題〕従って,現在化粧料の作用効果に頼られている素肌美容の要望に答えるべく,本願発明に於いては,マツサージ効果に加えて,化粧料と併用使用により素肌に対する積極的な洗浄並びに活性作用を促すとともに小ジ - 99 -ワのばし等の効果が得られ,さらに使用感の好適なる器具としての素肌用ローラーの提供を目的とするものである。 〔課題を解決するための手段〕本発明素肌用ローラーは,複数の吸盤用凹部を配設した弾性材料から成るローラーを把持部に対して回転自在に取り付けることにより構成したことを特徴とする,また,かかる構成に於けるローラーの取り付け構造を回転かつ着脱自在に構成したことを特徴とするのが,その第2発明であり,さらに,ジメチルポリシロキサン,その他のシリコーンから成るローラー本体の外周面に複数の吸盤用凹部を配設した左右一対のローラーとこの左右一対のローラーを回転自在に支持する左右一対の回転軸を備える把持部とから構成したことを特徴とする第3発明に加えて,かかる第3発明の構成に於ける一対のローラーを把持部の左右一対の回転軸に対して回転かつ着脱自在に支持することにより構成したことを特徴とする第4発明とから成るものである。 〔作用〕本願発明の素肌用ローラーの構成に備える複数の吸盤用凹部が,かかる吸盤用凹部を備えるローラーの回転に伴って素肌に吸着しつつ取れにくかった古い角質や,汚れを浮き上がらせ,素肌の洗浄作用を発揮し,同時に,素肌に適度な刺激を与えて血液循環を促し,素肌に血液中の栄養分やエネルギーを行き渡らせて,新陳代謝作用を発揮する。 〔実施例〕・・・(第1実施例)・・・第1図において1は楕円球状のローラー本体2の外周面に複数の半球状の吸盤用凹部3 の栄養分やエネルギーを行き渡らせて,新陳代謝作用を発揮する。 〔実施例〕・・・(第1実施例)・・・第1図において1は楕円球状のローラー本体2の外周面に複数の半球状の吸盤用凹部3を配設することにより形成したローラーで,このローラー1は把持部10の回転軸11に回転かつ着脱自在に装着されている。 また,第2図に示すようにローラー1のローラー本体2は側部中央部に回転軸11の挿入口4を開口するとともにローラー本体2の中心部に,前記挿入口4に連通 - 100 -する回転軸11の装入孔5を設けることによりシリコーンであるジメチルポリシロキサンにて一体に形成されている。 そして,前記回転軸11の装入孔5には回転軸11のツバ12を係合する環状の係合孔6を連通して設けてある。 さらに,前記把持部10は平板状の把持具13の先端部14に支持金具15を突設し,当該支持金具15に回転軸11を設けることにより構成されている。 そして,前記回転軸11は第3図に示すように支持金具15に支持軸16を取付けるとともにこの支持軸16に中空状の回転ロッド17を回転自在に装着することにより形成されている。 また,前記支持軸16は回転ロッド17の内径より小径の外径から成る軸本体18の先端部19に環状の係合溝20を穿設することにより一体に形成されるとともに前記回転ロッド17は,支持軸16の外径より大径の内径を有する中空状のロッド本体21とこのロッド本体21の先端部側に,外周方向間を三等分する位置に3本の長溝23(第3図においては1本の長溝のみを示す)をツバ12を突設した後端部側に向かって穿設することにより3枚の弾性片22を設け,さらに,各弾性片22の先端内周に支持軸16の係合溝20に係合する係合突起24を突設することにより形成されてい 示す)をツバ12を突設した後端部側に向かって穿設することにより3枚の弾性片22を設け,さらに,各弾性片22の先端内周に支持軸16の係合溝20に係合する係合突起24を突設することにより形成されている。 尚,前記係合突起24の突設部分間の内径は支持軸16の外径より小径でかつ係合溝20の外径より若干大径である。 従って,前記回転ロッド17は,ロッド本体21のツバ12側の開口より支持軸16の先端部19を介して支持軸16に装入するとともに各弾性片22の係合突起24を支持軸16の先端部19を,弾性片22の弾性を利用して乗り越えさせた後,これを支持軸16の環状の係合溝20に係合することにより支持軸16に対して回転自在に装着することができ,かつその抜脱は,各弾性片22の係合突起24の係合溝20への係合により防止され,当該構成により回転軸11が構成されている。 そして,前記構成から成る把持部10の回転軸11をローラー1の挿入口4より - 101 -装入孔5中に装入し,かつツバ12を装入孔5の係合孔6内に係合することによりローラー1を把持部10に対して回転かつ着脱自在に装着し,素肌用ローラー30を構成することができる。 尚,ローラー1の装入孔5の内径は回転軸11の回転ロッド17の外径より若干小径に形成されているがツバ12の外径は装入孔5の内径より大径であって,前記回転ロッド17の装入時にはツバ12の係合孔6への係合は,ローラーlの弾性を利用して挿入口4を強制的に拡開しつつ装入することができる。 また,上述してきた素肌用ローラー30の構成中,ローラーlはジメチルシロキサンにて一体に形成したが,ジメチルシロキサン以外のシリコーン,例えば一部にジフェニルシロキサンを共重合したりビニルメチルシロキサンを共重合したもの等のシリコーン 構成中,ローラーlはジメチルシロキサンにて一体に形成したが,ジメチルシロキサン以外のシリコーン,例えば一部にジフェニルシロキサンを共重合したりビニルメチルシロキサンを共重合したもの等のシリコーンにより一体に形成するか,その他の弾性を有する合成樹脂,合成ゴム等の弾性材料にて一体に形成することも可能である。 又,前記支持軸16,回転ロッド17の成形材料についてはテフロン樹脂,硬質ポリエチレン等の合成樹脂によりそれぞれ一体に成形することができる。 ローラー1の形状については,図示の楕円球状以外に円柱状,円錐状あるいはこれらに近似する形状等により形成することが可能であるとともに外周面に配設した吸盤用凹部3の形状については,図示の半球状以外に,半楕円球状,これらに近似する形状の凹部あるいは断面が多角形状等の任意の形状の凹部により形成して実施することが可能である。 さらに,把持部10の構成についても,回転軸11の前記構成に限定されず,ローラー1を回転自在に支持し得るに足る他の公知の構成を採用しつつ実施できるとともに把持具13には第1図に示す如く,先端部14の中央部に手指の係合用凹部26を設けることに加えて,把持具13の形状を,第5図a,bに示す如く,断面において楕円状の柱状体とするか,あるいは第6図a,bに示す如く,先端部14に至る程,細径にした丸棒状体とする等の構成を以て実施することが可能である。 また,把持部10に対してローラー1を回転かつ着脱自在に支持する構成につい - 102 -ては,図示の構成に限定されず,しかもローラー1は所期作用効果を得るにはこれを回転自在に支持することによっても実施可能である。 すなわち,ローラー1の装入孔5に係合孔6を設けるとともに回転軸11にツバ12を突設する構成に換えて,回転軸11 1は所期作用効果を得るにはこれを回転自在に支持することによっても実施可能である。 すなわち,ローラー1の装入孔5に係合孔6を設けるとともに回転軸11にツバ12を突設する構成に換えて,回転軸11のツバ12を突設せず,かつローラー1の装入孔5の内径を回転軸11の外径と略同一とし,装入孔5に対して回転軸11をローラー1の弾性作用を利用して強制的に装入することによりローラー1を回転軸11に装着するか,あるいはローラー1を回転軸11に対して接着剤等の固着手段によって固着したり,さらには,その他の取り付け手段を介してローラー1を回転軸11に取り付ける等の構成を挙げることができる。 以上の構成から成る素肌用ローラー30を使用する場合には,把持具13を手にて把持した後,身体の素肌部分,例えば顔面にローラー1を回転せしめつつ押圧して使用するものである。 しかして,ローラー1を回転せしめつつ吸盤用凹部3を配設された外周面が素肌に押圧されると各吸盤用凹部3が素肌に吸着しつつ回転することとなり,各吸盤用凹部3が素肌に吸着すると素肌の毛穴につまった皮脂や汚れを引き出したり,あるいは,古い角質や角質間の汚れを浮かせたり,肌表面に付着する汚れを浮かせて除去し易くし,前記ローラー1の使用に先き立って素肌にローションをつけてから使用することにより,洗浄をより効果的に行うことができるとともにローションの素肌への密着性が高まり保湿性がよく,マッサージ効果の向上を計ることができる。 また,前記使用を入浴中等に行うことにより,血管を刺激して,新陳代謝の働きをよくし,血行を促し,皮フ細胞に栄養を与えるとともに皮脂腺の働きをスムーズにし,皮脂腺の状態をコントロールする等の効果が得られ,さらには素肌に対するマッサージにより,単なるマッサージ効果に加えて小ジワのばし効果等 促し,皮フ細胞に栄養を与えるとともに皮脂腺の働きをスムーズにし,皮脂腺の状態をコントロールする等の効果が得られ,さらには素肌に対するマッサージにより,単なるマッサージ効果に加えて小ジワのばし効果等を得ることができるものである。 特に,ローラー1をジメチルポリシロキサン,その他のシリコーンにより形成した場合には,耐薬品性,耐水性,耐久性に冨むとともに素肌に対して極めて感触が - 103 -良く,前記作用効果を,他の弾性材料に比較して効果的に得られるものである。 ・・・(第2実施例)・・・第2実施例の素肌用ローラー40は,第7,8図に示される通り,把持部100に対して左右一対のローラー101,102をそれぞれ回転かつ着脱自在に支持した構成と把持部100の支持金具150に対して連結部151を介して左右一対の回転軸110,111を設けるとともに前記左右一対のローラー101,102のローラー本体103,104の形状をそれぞれ円錐状に形成した構成を前記第1実施例と異にするものである。 しかして,把持部100の支持金具150は1本のピンを把持具13の先端部14に突設して成り,連結部151は円盤状の板体152から成りかつこの板体152の左右両側部に左右一対の回転軸110,111を構成する支持軸160,161を突設して一体に形成し,さらに前記連結部151の板体152を支持金具150の先端部に一体的に固着することにより構成されている。 また,左右一対のローラー101,102のローラー本体103,104の外周面には複数の半球状の吸盤用凹部3を配設するとともにローラー本体103,104の大径部側には,中央部に回転軸110,111の挿入口4を開口するとともにローラー本体103,104の中心部に,前記挿入口4に連通する回転軸110, 凹部3を配設するとともにローラー本体103,104の大径部側には,中央部に回転軸110,111の挿入口4を開口するとともにローラー本体103,104の中心部に,前記挿入口4に連通する回転軸110,111の装入孔5を設けることによりジメチルポリシロキサンにて一体に形成され,かつ前記回転軸110,111の装入孔5には回転軸11のツバ12を係合する環状の係合孔6を連通して設けてある構成,並びに前記回転軸110,111を構成する支持軸160,161およびこれに回転自在に装着する回転ロッド17の構成については第1実施例と同様の構成から成るもので,同一構成部分については同一番号を付して,その構成の説明を省略する。 そこで,第7図示の各部分によって素肌用ローラー40を組み立てる場合には, - 104 -回転ロッド17を第1実施例と同様の方法により,把持部100の支持軸160,161に回転自在に装着して,回転軸110,111を構成した後,かかる回転軸110,111に対して左右ローラ101,102を第1実施例と同様の方法により挿入口4より装入孔5に装入するとともにツバ12を係合孔6に係合して回転かつ着脱自在に装着することにより第8図示の素肌用ローラー40を構成することができる。 - 105 - - 106 -イ前記アで認定した乙135文献の記載からすると,乙135文献には,以下のとおりの発明(以下「乙135発明」という。)が記載されていることが認められる。 「把持具13,100の先端部14に突設した支持金具15,150と,支持金具15,150の先端部に取り付けた支持軸16,160,161と,支持軸16,160,161の基端か ことが認められる。 「把持具13,100の先端部14に突設した支持金具15,150と,支持金具15,150の先端部に取り付けた支持軸16,160,161と,支持軸16,160,161の基端から先端に回転可能に支持されたローラー1,101,102とを備え,そのローラー1,101,102により身体の素肌に対する洗浄,マッサージ,小ジワのばし,新陳代謝作用等に使用する素肌用ローラー30において,ローラー1,101,102は基端側のみ挿入口4を有し,ローラー1,101,102は,その内部に支持軸16,160,161の先端が位置する非貫通状態で支持軸16,160,161に回転ロッド17を介して支持されており,回転ロッド17は,ローラー1,101,102の挿入口4とは反対側となる各弾性片22の係合突起24が,支持軸16,160,161の先端に設けられた回転ロッド17の内径より大きな径の先端部19の基端側に穿設された環状の係合溝20に係合することにより回転ロッド17の支持軸16,160,161に対する抜脱は防止され,回転ロッド17からは,ツバ12が突き出ており,複数の吸盤用凹部を配設した弾性材料からなるローラー1,101,102は内周にツバ12に係合可能な係合孔6の基端側の部分を有し,係合孔6の基端側の部分はツバ12の基端側に係止される,素肌用ローラー30,40」(2) 対比ア本件発明2と前記(1)イで認定した乙135発明を比較すると,以下のとおりの一致点及び相違点があると認められる。 (ア) 一致点「基端においてハンドルに取り付けられた支持軸と,前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え,前記回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器において,前記回転体は,基端側のみ穴を有し,その内部 付けられた支持軸と,前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え,前記回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器において,前記回転体は,基端側のみ穴を有し,その内部 - 107 -に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態で前記支持軸に軸受け部材を介して支持されており,前記軸受け部材は,前記回転体の穴とは反対側となる先端で前記支持軸に抜け止めされ,前記軸受け部材からは,突出部が突き出ており,前記回転体は内周に前記突出部に係合可能な段差部を有し,前記段差部は前記突出部の基端側に係止されることを特徴とする美容器」である点(イ) 相違点a 相違点①本件発明2は,軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突き出るとともに,軸受け部材は係止爪の前記基端側に鍔部を有しており,同係止爪は前記先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有し,かつ前記回転体は,内周に前記係止爪に係合可能な段差部を有し,前記段差部は前記係止爪の基端側に係止されるとともに前記係止爪と前記鍔部との間に位置するのに対して,乙135発明は,回転ロッド17からはツバ12を備えるものの,ツバ12が弾性変形可能かどうか不明であり,かつ,ツバ12は「先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有」する「係止爪」ではなく,回転ロッド17(軸受け部材)は「係止爪の基端側」の「鍔部」を有さず,「回転体は内周に前記係止爪に係合可能」ではなく,「係止爪の前記基端側に係止されるとともに前記係止爪と前記鍔部との間に位置する」「段差部」も備えない点b 相違点③本件発明2は,支持軸がハンドルに抜け止め固定されたものであるのに対して,乙135発明は,支持軸16,16 もに前記係止爪と前記鍔部との間に位置する」「段差部」も備えない点b 相違点③本件発明2は,支持軸がハンドルに抜け止め固定されたものであるのに対して,乙135発明は,支持軸16,160,161が把持具13,100(ハンドル)に固定されているが,抜け止めされているかは特定されていない点イ一審被告は,相違点①について,軸受け部材の構成についての相違点と回転体の構成についての相違点とに分けて主張するが,相違点①は一体的な技術の構成に係るものであり,それを一審被告が主張するように分けて相違点として認定することは相当ではないというべきである。 - 108 -(3) 相違点①の容易想到性ア乙194文献には,以下のとおりの記載がある(乙194の1・2)。 【0018】本発明によるエクササイズ器具は,任意の好適なタイプのエクササイズ器具として構成することができる。例えば,器具は,例えばマッサージ器具等の筋骨格処置器具として構成することができ,・・・【0020】エクササイズ器具が構成される器具の特定のタイプに関係なく,器具は,それらの特定の必要性及び要件に合うようにユーザによって構成することができる。例えば,エクササイズ器具がマッサージ器具として構成される場合,マッサージ器具は,様々な人々に合うように,又は,人の身体の特定の部分をマッサージするために使用することができるように,複数の様々な方法で構成することができる。 【0068】【図12】自身の上部胸椎並びに自身の上部僧帽筋及び肩甲挙筋を同時にマッサージするように,本発明の第1の好ましい実施形態によるエクササイズ器具を使用する人を示す図である。 【0116】図17を参照すると,本発明の第2の好ましい実施形態によるエクササイズ器具のロッドモジ ージするように,本発明の第1の好ましい実施形態によるエクササイズ器具を使用する人を示す図である。 【0116】図17を参照すると,本発明の第2の好ましい実施形態によるエクササイズ器具のロッドモジュール100が実質的に円筒形の形状である。 【0119】複数の等間隔に離間した平行な円形開口106が,ロッドモジュール100を通って横方向に延びる。開口106は,モジュール100を通って延びる開口105に対して垂直である。また,開口106は開口105に交差する。 【0151】図29は,モジュール100,120,130,140のうちの2つを任意の組み合わせで一緒に固定するために使用することができるプラグ200を示している。プラグ200は,プラスチックから製造され,2つの円筒部分202間に位置付けられる円形のフランジ201を含む。それぞれのより幅狭の円筒部分203が,円筒部分202のそれぞれから延びる。より幅狭の部分203のそれぞれは,1対の直径方向に対向する弾性的なラッチアーム204を含む。各ラッチアーム204は,アーム204の端に位置付けられ,プラグ200から外方に延びる - 109 -突起205を含む。円形開口206が,プラグ200の一端からプラグ200の他端まで延びる。 【0152】2つのモジュール100,120,130,140を,プラグ200の各端を各モジュールのそれぞれの開口に挿入することによって,プラグ200と一緒に着脱可能に固定することができる。プラグ200が開口に挿入されると,プラグ200のより幅狭の部分203は,開口のより幅狭の部分によって受け入れられ,プラグ200のより幅広の部分202は,開口のより幅広の部分によって受け入れられる。 【0153】プラグ200が開口に挿入されると,開口のより幅狭の部分が各ラッ り幅狭の部分によって受け入れられ,プラグ200のより幅広の部分202は,開口のより幅広の部分によって受け入れられる。 【0153】プラグ200が開口に挿入されると,開口のより幅狭の部分が各ラッチアーム204の突起205に対して押圧されることで,弾性的なラッチアーム204が互いに向かって移動する。プラグ200が開口に完全に挿入されると,突起205は,ラッチアーム204がそれらの元の位置に跳ねてラッチ凹部と噛み合うように開口のラッチ凹部によって受け入れられる。ラッチアーム204及びラッチ凹部はしたがって,プラグ200がモジュールの開口から意図せず引き出されることを阻止することが可能である。 【0155】ラッチアーム204及びラッチ凹部は,プラグ200が開口から意図せず引き出されることを阻止することが可能であるが,プラグ200は,それにもかかわらず,ラッチアーム204及びラッチ凹部が互いに噛み合う場合であっても開口に対して依然として回転することが可能である。 【0160】図31は,プラグ200と同様のプラグ220を示している。便宜上,プラグ200,220の同様の特徴は,同様の参照符号を用いて言及されている。 【0161】プラグ220は,そのより幅狭の円筒部分203がプラグ200のより幅狭の円筒部分よりも長いという点でプラグ200とは異なる。また,プラグ220の円筒部分203は複数の溝204をそれぞれ含む。 【0162】プラグ200の円筒部分203とは異なり,プラグ220の円筒部分203は,モジュール100,120,130,140のうちの1つの開口に挿入 - 110 -されるときに,その開口に交差するモジュールの他の開口を塞ぐことが可能であるように十分に長い。さらに,プラグ220の付加的な長さは,プラグ200と比較して,一 口に挿入 - 110 -されるときに,その開口に交差するモジュールの他の開口を塞ぐことが可能であるように十分に長い。さらに,プラグ220の付加的な長さは,プラグ200と比較して,一部を形成する器具を補強することがより良く可能であることを意味する。 【0165】図33を参照すると,本発明の第2の好ましい実施形態による多機能エクササイズ器具のロックピン240が,細長い円筒シャフト241を含む。シャフト241は,第1の部分242,第2の部分243及び第3の部分244を含む。 実質的に平坦なプラスチックヘッド245が,シャフト241の第3の部分244とオーバーモールドされる。 【0166】ロックピン240のシャフト241の第1の部分242の直径は,モジュール100,120,130,140及びプラグ154,200,210,220及び230を通って延びる開口の直径よりも僅かに小さいため,シャフト241は,それらの開口を通して挿入されることが可能である。 【0168】ロックピン240のシャフト241が,モジュール100,120,130,140のうちの1つの開口にそれ自体が挿入されたプラグ154,200,210,220又は230に挿入されると,シャフト241は,プラグのラッチアームがモジュールの開口のラッチ凹部と離脱することを防止することが可能である。 ロックピン240は,ラッチアームがラッチ凹部と離脱することを防止することによって,プラグが開口から意図せず取り外されることを防止するか又は少なくとも更に阻止することが可能である。ロックピンはしたがって,プラグがモジュールの開口から意図せず引き出されることにつながり得るラッチ凹部からのラッチアームの意図しない離脱のリスクを高める可能性がある比較的高い捩り荷重に器具が晒される使用に特に好適で って,プラグがモジュールの開口から意図せず引き出されることにつながり得るラッチ凹部からのラッチアームの意図しない離脱のリスクを高める可能性がある比較的高い捩り荷重に器具が晒される使用に特に好適である。 【0169】図34は,ロックピン240のシャフト241が,開口141の一端を通して中間のボールモジュール140に,及び,モジュール140に対して固定されるようにそれ自体が開口141の他端に挿入されているプラグ200の開口206に挿入されているときのロックピン240を示している。 - 111 -【0170】開口141によって受け入れられるプラグ200のラッチアーム204の突起205は,開口141内に位置付けられるラッチ凹部250によってそれぞれ受け入れられるため,プラグ200はそれによって,開口141から引き出されることが阻止される。ロックピン240のシャフト241は,ラッチアーム204が互いに向かって押されて突起205をラッチ凹部250から取り外すことを防止する。ラッチアーム204は,ロックピン240がプラグ200から取り外されると,上述したように専ら移動することができる。 【図29】 【図31】 【図34】 - 112 -イ(ア) 前記アで認定した乙194文献の記載からすると,乙194文献には以下の技術が記載されているものと認められる。 「プラグ200,220を介して,モジュール130,140を回転可能に支持するマッサージ器具であって,プラグ200,220は,外方に延びる突起205を含む弾性的なラッチアーム204を有しているとともに,ラッチアーム204の基端側にフランジ201を有しており,突起205は,先端側に向かうほどプラグ200,220にお 0は,外方に延びる突起205を含む弾性的なラッチアーム204を有しているとともに,ラッチアーム204の基端側にフランジ201を有しており,突起205は,先端側に向かうほどプラグ200,220におけるモジュール130,140の回転中心との距離が短くなる斜面を有し,モジュール130,140は,内周に,ラッチアーム204の突起205の基端側に係止される段差部を有し,段差部は,突起205の基端側に係止されるとともに,突起205とフランジ201との間に配置されるマッサージ器具」(イ) 一審被告は,乙194文献に記載されたプラグ200,220は,モジュール130,140をロックピン240の回りを回転可能に取り付けるためのものであると主張する。 しかし,前記アのとおり,乙194文献の段落【0151】,【0152】には,プラグは,モジュールのうちの二つを任意の組合せで固定するために使用できること,プラグの各端を各モジュールのそれぞれの開口に挿入することによって,これらをプラグと一緒に固定することができることが記載されており,同記載からすると,プラグは,二つのモジュールを繋げて固定するための部材であることが認められる。 また,乙194文献の段落【0168】,【0170】には,ロックピンのシャフトがモジュールに挿入されたプラグに挿入されると,シャフトは,プラグのラッチアームがモジュールの開口のラッチ凹部と離脱することを防止するから,ロックピンは,ラッチアームがラッチ凹部と離脱する危険の高い場合の使用に特に好適であること,シャフトは,突起をラッチ凹部から取り外すことを防止し,ラッチアームは,ロックピンがプラグから取り外されると,移動することができることが記載されており,同記載からすると,ロックピンは,プラグがモジュールから離脱するこ 凹部から取り外すことを防止し,ラッチアームは,ロックピンがプラグから取り外されると,移動することができることが記載されており,同記載からすると,ロックピンは,プラグがモジュールから離脱するこ - 113 -とを防止することを目的として使用されるものであることが認められる。 したがって,プラグ200,220は,モジュール130,140を繋げて固定するための部材として使用されるものであり,ロックピン240とモジュール130,140との間に介在し,モジュール130,140がロックピン240に回転可能に支持されるための軸受として用いられているということはできず,一審被告の上記主張は理由がない。 ウ乙135発明に乙194文献に記載された技術を適用することの容易想到性(ア) 前記イのとおり,乙194文献記載のプラグ200,220は,二つのモジュールを繋げて固定する部材であって,軸と回転体の間に介在することによって,回転体を軸に対して回転可能に支持する軸受け部材として機能するものではないから,乙135発明における軸受け部材として機能する回転ロッド17と置き換える動機付けはないというべきである。 (イ) 一審被告の主張についてa 一審被告は,乙135文献には,ローラー1,101,102を回転軸11,110,111に対して回転可能に取り付けるための構成として,回転ロッド17以外の他の取り付け手段を用いてもよいことが示唆され,また,ツバ12が突起していなくても,ローラー1,101,102を回転自在に取り付けることができる旨記載されているから,乙135発明の回転ロッド17について,乙194技術の取り付け手段の構造を採用して,乙194技術の弾性変形可能な突起205及びフランジ201とすることは,当業 けることができる旨記載されているから,乙135発明の回転ロッド17について,乙194技術の取り付け手段の構造を採用して,乙194技術の弾性変形可能な突起205及びフランジ201とすることは,当業者にとって容易であると主張する。 しかし,回転ロッド17について,他の軸受け部材に置換することが可能であるとしても,前記イのとおり,乙194文献に記載されたプラグは軸受け部材ではないから,回転ロッドを乙194文献記載のプラグに置換し,同プラグの突起及びフランジの構造を採用する動機付けはないというべきである。 したがって,一審被告の上記主張は理由がない。 - 114 -b 一審被告は,乙194文献の段落【0155】の「ラッチアーム204及びラッチ凹部は,プラグ200が開口から意図せず引き出されることを阻止することが可能であるが,プラグ200は,それにもかかわらず,ラッチアーム204及びラッチ凹部が互いに噛み合う場合であっても開口に対して依然として回転することが可能である。」との記載,段落【0166】の「ロックピン240のシャフト241の第1の部分242の直径は,モジュール100,120,130,140及びプラグ154,200,210,220及び230を通って延びる開口の直径よりも僅かに小さいため,シャフト241は,それらの開口を通して挿入されることが可能である。」との記載からすると,プラグ200,220が軸受け部材として機能し,ロックピン240が回転軸として機能していることは明らかであると主張する。 しかし,乙194文献の段落【0155】は,プラグ200がモジュールに対して回転可能であることを説明しているのであり,モジュールがロックピン240に対して回転可能に支持されるための軸受け部材としてプラグ200が機能す 献の段落【0155】は,プラグ200がモジュールに対して回転可能であることを説明しているのであり,モジュールがロックピン240に対して回転可能に支持されるための軸受け部材としてプラグ200が機能することを記載しているのではない。また,段落【0166】も,シャフトの直径は,モジュールとプラグを通って延びる開口の直径よりも僅かに小さいため,それらの開口を通して挿入されることが可能であると記載しているにすぎず,プラグが軸受け部材として機能することを記載しているのではない。 したがって,一審被告の上記主張は理由がない。 (4) 小括以上より,本件発明2は,乙135文献を主引用例として,進歩性が欠如するとは認められない。 6 差止請求及び廃棄請求について前記3ないし5によれば,一審被告が被告製品を販売等する行為は,本件特許権2を侵害する。よって,一審原告が,一審被告に対し,特許法100条に基づき,被告製品の譲渡及び譲渡の申出の差止め並びに廃棄を求める請求は,理由がある。 - 115 -一審被告は,被告製品の軸受けの構造を設計変更した旨主張するが,本件訴訟において,構成要件充足性を争い,特許無効の抗弁も主張しているから,被告製品を譲渡等するおそれが消滅したとはいえない。 7 一審原告の損害額(争点(5))について(1) 特許法102条1項について特許法102条1項は,民法709条に基づき販売数量減少による逸失利益の損害賠償を求める際の損害額の算定方法について定めた規定であり,特許法102条1項本文において,侵害者の譲渡した物の数量に特許権者又は専用実施権者(以下「特許権者等」という。)がその侵害行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益額を乗じた額を,特許権者等の実施の能力の限度 て,侵害者の譲渡した物の数量に特許権者又は専用実施権者(以下「特許権者等」という。)がその侵害行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益額を乗じた額を,特許権者等の実施の能力の限度で損害額とし,同項ただし書において,譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者等が販売することができないとする事情を侵害者が立証したときは,当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものと規定して,侵害行為と相当因果関係のある販売減少数量の立証責任の転換を図ることにより,より柔軟な販売減少数量の認定を目的とする規定である。 特許法102条1項の文言及び上記趣旨に照らせば,特許権者等が「侵害行為がなければ販売することができた物」とは,侵害行為によってその販売数量に影響を受ける特許権者等の製品,すなわち,侵害品と市場において競合関係に立つ特許権者等の製品であれば足りると解すべきである。 また,「単位数量当たりの利益の額」は,特許権者等の製品の売上高から特許権者等において上記製品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した額(限界利益の額)であり,その主張立証責任は,特許権者等の実施の能力を含め特許権者側にあるものと解すべきである。 さらに,特許法102条1項ただし書の規定する譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者等が「販売することができないとする事情」については,侵害者が主張立証責任を負い,このような事情の存在が主張立証されたときに,当該事 - 116 -情に相当する数量に応じた額を控除するものである。 (2) 侵害の行為を組成した物の譲渡数量ア前記3ないし5のとおり,被告製品の譲渡行為は,本件特許権2を侵害するものであり,被告製品は「侵害の行為を組成した物 を控除するものである。 (2) 侵害の行為を組成した物の譲渡数量ア前記3ないし5のとおり,被告製品の譲渡行為は,本件特許権2を侵害するものであり,被告製品は「侵害の行為を組成した物」に該当する。 イ一審原告が本件訴訟において損害賠償請求をしている不法行為の期間である平成27年12月4日から平成29年5月8日までの期間(以下「本件侵害期間」という。)の被告製品の譲渡数量は下記のとおりであり,被告は総計35万1724個,月平均2万0690個程度の被告製品を譲渡したことになる(争いがない。)。 被告製品1(DR-250A) 7万1077個被告製品2(DR-250C) 14万1135個被告製品3(FS-800) 1万5114個被告製品4(DR-250P) 8万2584個被告製品5(DR-250G) 1万8526個被告製品6(DR―250SW) 8263個被告製品7(JDR-300) 416個被告製品8(DR-260BK) 6088個被告製品9(DR-260C) 8521個ウ被告製品は,ディスカウントストアや雑貨店に卸売販売されることが中心であり,一審被告作成の文書では1万5000円(税抜)の価格表示がされているものが多いが(甲7~13),実際には,3000円ないし5000円程度の価格で販売されている(乙85~93)。 被告製品は,ゲルマニウムの粒を使用したゲルマミラーボールと説明されているが,後記の原告製品のように微弱電流(マイクロカレント)を発生する機構は有していない(甲7~13)。 (3) 侵害行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額ア侵害行為がなければ販売することができた物 マイクロカレント)を発生する機構は有していない(甲7~13)。 (3) 侵害行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額ア侵害行為がなければ販売することができた物 - 117 -前記(1)のとおり,「侵害行為がなければ販売することができた物」とは,侵害行為によってその販売数量に影響を受ける特許権者等の製品,すなわち,侵害品と市場において競合関係に立つ特許権者等の製品であれば足りる。一審原告は,本件発明2の実施品として,「ReFaCARAT(リファカラット)」という名称の美容器(以下「原告製品」という。)を,平成21年2月以降販売しており(甲23,24,弁論の全趣旨),原告製品は,「侵害行為がなければ販売することができた物」に当たることは明らかである。 原告製品は,ローラの表面にプラチナムコートが施され,支持軸に回転可能に支持された一対のローリング部を肌に押し付けて回転させることにより,肌を摘み上げ,肌に対して美容的作用を付与しようとする美容器(弁論の全趣旨)であり,搭載されたソーラーパネルにより,微弱電流(マイクロカレント)を発生する機構を有している(甲23)。 原告製品は,原告の店舗,大手通販業者,百貨店,家電量販店で販売され,希望小売価格である2万3800円(税抜)又はこれに近い価格で販売されている(甲23,乙94~108)。 一審原告は,平成27年10月から平成29年8月までの間に,125万6410個の原告製品を販売しており(月平均5万4626個〔1個未満切り捨て〕),最も少ない月(平成28年1月)でも1万8770個,最も多い月(平成28年12月)には8万5492個を販売した(甲38)。 イ単位数量当たりの利益の額の意義前記(1)のとおり,特許法10 も少ない月(平成28年1月)でも1万8770個,最も多い月(平成28年12月)には8万5492個を販売した(甲38)。 イ単位数量当たりの利益の額の意義前記(1)のとおり,特許法102条1項所定の「単位数量当たりの利益の額」は,特許権者等の製品の売上高から,特許権者等において上記製品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額であり,その主張立証責任は特許権者側にあるものと解すべきである。 ウ原告製品の限界利益の額(ア) 売上高及び製造原価 - 118 -平成27年10月から平成29年8月までの間の原告製品の販売数量は125万6410個,売上高は合計132億4606万1089円であり,製造原価は●●●●●●●●●●●●●である(甲38,39)。 (イ) 製造原価以外の控除すべき費用a 前記(ア)の期間における一審原告の全製品の売上高は合計671億0968万1552円であり(甲40),一審原告の全製品に対する原告製品の売上比率は19.74%となる(132億4606万1089円÷671億0968万1552円≒0.1974)。 b また,前記(ア)の期間における原告製品が含まれる「ReFa」ブランドの製品全体の売上高が342億0958万6196円であり(甲28),同売上に占める原告製品の売上比率は38.72%となる(132億4606万1089円÷342億0958万6196円≒0.3872)。 c 前記(ア)の期間における原告製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった費用は,前記(ア)の製造原価のほか,後記①~⑨のとおりであり,その額は,①,③,④,⑥~⑨については,一審原告の全製品について生じた各費用(甲40) 品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった費用は,前記(ア)の製造原価のほか,後記①~⑨のとおりであり,その額は,①,③,④,⑥~⑨については,一審原告の全製品について生じた各費用(甲40)に前記aの比率を乗じた額であり,②及び⑤については,「ReFa」ブランドの製品について生じた各費用(甲32,33)に前記bの比率を乗じた額である(1円未満切り捨て)。 ① 販売手数料 ●●●●●●●●●●●●② 販売促進費 2億5798万4777円③ ポイント引当金 741万7870円④ 見本品費 5343万9379円⑤ 宣伝広告費 5億2075万3024円⑥ 荷造運賃 4億5578万0084円⑦ クレーム処理費 6548万5934円⑧ 製品保証引当金繰入 590万2260円 - 119 -⑨ 市場調査費 1038万5182円①から⑨までの合計額 ●●●●●●●●●●●●●d 一審被告は,原告製品の売上高から,一審原告の全ての費用を,原告製品の売上比率に従って控除すべきであると主張する。 しかし,前記(1)のとおり,特許法102条1項は,民法709条に基づき販売数量減少による逸失利益の損害賠償を求める際の損害額の算定方法について定めた規定であり,侵害者の譲渡した物の数量に特許権者等がその侵害行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益額を乗じた額を上記の損害額としたものである。このように,同項の損害額は,侵害行為がなければ特許権者等が販売できた特許権者等の製品についての逸失利益であるから,同項の「単位数量当たりの利益の額」を算定するに当たっては,特許権者等の製品の製 る。このように,同項の損害額は,侵害行為がなければ特許権者等が販売できた特許権者等の製品についての逸失利益であるから,同項の「単位数量当たりの利益の額」を算定するに当たっては,特許権者等の製品の製造販売のために直接関連しない費用を売上高から控除するのは相当ではなく,管理部門の人件費や交通・通信費などが,通常,これに当たる。また,一審原告は,既に,原告製品を製造販売しており,そのために必要な既に支出した費用(例えば,当該製品を製造するために必要な機器や設備に要する費用で既に支出したもの)も,売上高から控除するのは相当ではないというべきである。 一審被告が,売上高から控除すべきであると主張する上記費用のうち,前記cの①~⑨の費用以外の費用は,全て上記の売上高から控除するのが相当ではない費用に当たるというべきであるから,一審被告の上記主張は理由がない。 (ウ) 原告製品の限界利益の額は,原告製品の前記(ア)の売上高から前記(ア)の製造原価と前記(イ)cの各費用の合計額を控除した69億6809万2706円であり,これを,前記(ア)の期間における原告製品の販売数量125万6410個で除すると5546円(69億6809万2706円÷125万6410個≒5546. 03円。1円未満切り捨て)となる。 (エ) 前記第2の2で認定した本件発明2の特許請求の範囲の記載及び前記1で認定した本件明細書2の記載からすると,本件発明2は,回転体,支持軸,軸 - 120 -受け部材,ハンドル等の部材から構成される美容器の発明であるが,軸受け部材と回転体の内周面の形状に特徴のある発明であると認められる(以下,この部分を「本件特徴部分」という。)。 原告製品は,前記アのとおり,支持軸に回転可能に支持された一対のローリング部を肌に押し付 材と回転体の内周面の形状に特徴のある発明であると認められる(以下,この部分を「本件特徴部分」という。)。 原告製品は,前記アのとおり,支持軸に回転可能に支持された一対のローリング部を肌に押し付けて回転させることにより,肌を摘み上げ,肌に対して美容的作用を付与しようとする美容器であるから,本件特徴部分は,原告製品の一部分であるにすぎない。 ところで,本件のように,特許発明を実施した特許権者の製品において,特許発明の特徴部分がその一部分にすぎない場合であっても,特許権者の製品の販売によって得られる限界利益の全額が特許権者の逸失利益となることが事実上推定されるというべきである。 そして,原告製品にとっては,ローリング部の良好な回転を実現することも重要であり,そのために必要な部材である本件特徴部分すなわち軸受け部材と回転体の内周面の形状も,原告製品の販売による利益に相応に貢献しているものといえる。 しかし,上記のとおり,原告製品は,一対のローリング部を皮膚に押し付けて回転させることにより,皮膚を摘み上げて美容的作用を付与するという美容器であるから,原告製品のうち大きな顧客誘引力を有する部分は,ローリング部の構成であるものと認められ,また,前記アのとおり,原告製品は,ソーラーパネルを備え,微弱電流を発生させており,これにより,顧客誘引力を高めているものと認められる。これらの事情からすると,本件特徴部分が原告製品の販売による利益の全てに貢献しているとはいえないから,原告製品の販売によって得られる限界利益の全額を原告の逸失利益と認めるのは相当でなく,したがって,原告製品においては,上記の事実上の推定が一部覆滅されるというべきである。 そして,上記で判示した本件特徴部分の原告製品における位置付け,原告製品が本件特徴部分以外に備えている特徴やそ したがって,原告製品においては,上記の事実上の推定が一部覆滅されるというべきである。 そして,上記で判示した本件特徴部分の原告製品における位置付け,原告製品が本件特徴部分以外に備えている特徴やその顧客誘引力など本件に現れた事情を総合考慮すると,同覆滅がされる程度は,全体の約6割であると認めるのが相当である。 - 121 -この点に関し,一審被告は,原告製品全体の製造費用に占める軸受けの製造費用の割合を貢献の程度とすべき旨主張するが,上記の推定覆滅は,原告製品の販売による利益に対する本件特徴部分の貢献の程度に着目してされるものであり,当該部分の製造費用の割合のみによってされるべきものではない。また,一審被告は,原告製品においては,ローラの抜落の防止機能が不十分であるから,軸受けの貢献度は低い旨主張するが,一審被告が根拠とする乙138(原告製品に関するブログの記載)から,原告製品においてローラの抜落の防止機能が不十分であると認めることはできず,他に同事実を認めるに足りる証拠はない。よって,上記主張はいずれも採用できない。 以上より,原告製品の「単位数量当たりの利益の額」の算定に当たっては,原告製品全体の限界利益の額である5546円から,その約6割を控除するのが相当であり,原告製品の単位数量当たりの利益の額は,2218円(5546円×0.4≒2218円)となる。 (4) 実施の能力に応じた額特許法102条1項は,前記(1)のとおり,侵害者の譲渡数量に特許権者等の製品の単位数量当たりの利益の額を乗じた額の全額を特許権者等の受けた損害の額とするのではなく,特許権者等の実施の能力に応じた額を超えない限度という制約を設けているところ,この「実施の能力」は,潜在的な能力で足り,生産委託等の方法により,侵害品の販売数量に対応 けた損害の額とするのではなく,特許権者等の実施の能力に応じた額を超えない限度という制約を設けているところ,この「実施の能力」は,潜在的な能力で足り,生産委託等の方法により,侵害品の販売数量に対応する数量の製品を供給することが可能な場合も実施の能力があるものと解すべきであり,その主張立証責任は特許権者側にある。 そして,前記(3)アのとおり,一審原告は,毎月の平均販売個数に対し,約3万個の余剰製品供給能力を有していたと推認できるのであるから,この余剰能力の範囲内で月に平均2万個程度の数量の原告製品を追加して販売する能力を有していたと認めるのが相当である。 したがって,一審原告は,一審被告が本件侵害期間中に販売した被告製品の数量の原告製品を販売する能力を有していたと認められる。 - 122 -(5) 一審原告が販売することができないとする事情ア前記(1)のとおり,特許法102条1項ただし書は,侵害品の譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者が販売することができないとする事情(以下「販売できない事情」という。)があるときは,販売できない事情に相当する数量に応じた額を控除するものとすると規定しており,侵害者が,販売できない事情として認められる各種の事情及び同事情に相当する数量に応じた額を主張立証した場合には,同項本文により認定された損害額から上記数量に応じた額が控除される。 そして,「販売することができないとする事情」は,侵害行為と特許権者等の製品の販売減少との相当因果関係を阻害する事情をいい,例えば,①特許権者と侵害者の業務態様や価格等に相違が存在すること(市場の非同一性),②市場における競合品の存在,③侵害者の営業努力(ブランド力,宣伝広告),④侵害品及び特許権者の製品の性能(機能,デザイン等特許 者と侵害者の業務態様や価格等に相違が存在すること(市場の非同一性),②市場における競合品の存在,③侵害者の営業努力(ブランド力,宣伝広告),④侵害品及び特許権者の製品の性能(機能,デザイン等特許発明以外の特徴)に相違が存在することなどの事情がこれに該当するというべきである。 イ以下,一審被告が販売できない事情として主張する事情について検討する。 (ア) 一審被告は,原告製品と被告製品の価格の差異や販売店舗の差異を,販売できない事情として主張する。 a 本件においては,前記(2)ウ,(3)アのとおり,原告製品は,大手通販業者や百貨店において,2万3800円又はこれに近い価格で販売されているのに対し,被告製品はディスカウントストアや雑貨店において,3000円ないし5000円程度の価格で販売されているが,このように,原告製品は,比較的高額な美容器であるのに対し,被告製品は,原告製品の価格の8分の1ないし5分の1程度の廉価で販売されていることからすると,被告製品を購入した者は,被告製品が存在しなかった場合には,原告製品を購入するとは必ずしもいえないというべきである。したがって,上記の販売価格の差異は,販売できない事情と認めることができる。 - 123 -そして,原告製品及び被告製品の上記の価格差は小さいとはいえないことからすると,同事情の存在による販売できない事情に相当する数量は小さくはないものと認められる。 一方で,上記両製品は美容器であるところ,美容器という商品の性質からすると,その需要者の中には,価格を重視せず,安価な商品がある場合は同商品を購入するが,安価な商品がない場合は,高価な商品を購入するという者も少なからず存在するものと推認できるというべきである。また,前記(3)アのとおり,原告製品は,ロー ,安価な商品がある場合は同商品を購入するが,安価な商品がない場合は,高価な商品を購入するという者も少なからず存在するものと推認できるというべきである。また,前記(3)アのとおり,原告製品は,ローラの表面にプラチナムコートが施され,ソーラーパネルが搭載されて,微弱電流を発生させるものであるから,これらの装備のない被告製品に比べてその品質は高いということができ,したがって,原告製品は,その販売価格が約2万4000円であるとしても,3000円ないし5000円程度の販売価格の被告製品の需要者の一定数を取り込むことは可能であるというべきである。以上からすると,原告製品及び被告製品の上記価格差の存在による販売できない事情に相当する数量がかなりの数量になるとは認められない。 b このように,原告製品と被告製品との価格の差異は,需要者の購入動機に影響を与えているといえるが,大手通販業者や百貨店において商品を購入する者がディスカウントストアや雑貨店において商品を購入しないというような経験則があるとは認め難いから,価格の差を離れて,原告製品と被告製品の上記販売態様の差異が,需要者の購入動機に影響を与えているとは認められず,販売態様の差異は,販売できない事情として認めることはできないというべきである。 (イ) 一審被告は,競合品が多数存在することを,販売できない事情として主張する。 平成31年4月の時点で,原告製品と被告製品の同種の製品として,少なくとも29種類の製品が販売されていることが認められる(乙176,弁論の全趣旨)が,本件証拠上,本件侵害期間(平成27年12月4日ないし平成29年5月8日)に,市場において,原告製品と競合関係に立つ製品が販売されていたと認めるに足りな - 124 -いから,この点を,販売できない事情と認め (平成27年12月4日ないし平成29年5月8日)に,市場において,原告製品と競合関係に立つ製品が販売されていたと認めるに足りな - 124 -いから,この点を,販売できない事情と認めることはできない。 (ウ) 一審被告は,本件発明2は軸受けについての発明であるところ,被告製品における軸受けの製造費用は全体の製造費用の僅かな部分を占めるにすぎず,軸受けは付属品に類するものであることを販売できない事情として主張する。 しかし,本件発明2が美容器の一部に特徴のある発明であるという事情は,既に原告製品の単位数量当たりの利益の額の算定に当たって考慮しているのであるから,重ねて,これを販売できない事情として考慮する必要はないというべきである。 (エ) 一審被告は,軸受けの部分は外見上認識することができず,代替技術が存することなどを販売できない事情として主張する。 しかし,一審被告の主張する上記の事情は,被告製品及び原告製品のいずれにも当てはまるものであるから,同事情の存在によって,被告製品がなかった場合に,被告製品に対する需要が原告製品に向かわなくなるということはできず,したがって,これらの事情を販売できない事情と認めることはできない。 (オ) 一審被告は,原告製品は,微弱電流を発生する機構を有しているが,被告製品はそのような機構を有していないことを販売できない事情として主張する。 確かに,前記(3)アのとおり,原告製品は,微弱電流を発生する機構を有しており,一方で,被告製品はそのような機構を有していないが,このことは,被告製品は,原告製品に比べ顧客誘引力が劣ることを意味するから,被告製品が存在しなかった場合に,その需要が原告製品に向かうことを妨げる事情とはいい難い。したがって,上記の点は,販売できない事情と ,被告製品は,原告製品に比べ顧客誘引力が劣ることを意味するから,被告製品が存在しなかった場合に,その需要が原告製品に向かうことを妨げる事情とはいい難い。したがって,上記の点は,販売できない事情と認めることはできない。 (カ) 一審被告は,一審被告の営業努力を,販売できない事情として主張するが,本件証拠上,一審被告に,販売できない事情と認めるに足りる程度の営業努力があったとは認められない。 ウ以上によれば,本件においては,前記イ(ア)aで判示した事情を考慮すると,この販売できない事情に相当する数量は,全体の約5割であると認めるのが相当である。 - 125 -(6) 本件発明2の寄与度を考慮した損害額の減額の可否について前記(3)及び(5)のとおり,原告製品の単位数量当たりの利益の額の算定に当たっては,本件発明2が原告製品の販売による利益に貢献している程度を考慮して,原告製品の限界利益の全額から6割を控除し,また,被告製品の販売数量に上記の原告製品の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た一審原告の受けた損害額から,特許法102条1項ただし書により5割を控除するのが相当である。仮に,一審被告の主張が,これらの控除とは別に,本件発明2が被告製品の販売に寄与した割合を考慮して損害額を減額すべきであるとの趣旨であるとしても,これを認める規定はなく,また,これを認める根拠はないから,そのような寄与度の考慮による減額を認めることはできない。 (7) 損害額の算定以上からすると,特許法102条1項による一審原告の損害額は,被告製品の譲渡数量35万1724個のうち,約5割については販売することができないとする事情があるからその分を控除し,控除後の販売数量を原告製品の単位数量当たりの利益額2218円に乗じることで は,被告製品の譲渡数量35万1724個のうち,約5割については販売することができないとする事情があるからその分を控除し,控除後の販売数量を原告製品の単位数量当たりの利益額2218円に乗じることで,3億9006万円(2218円×35万1724個×0.5≒3億9006万円)となる。 また,一審被告による本件特許権2の侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用は,認容額,本件訴訟の難易度及び一審原告の差止請求が認容されていることを考慮して,5000万円と認めるのが相当である。 したがって,一審原告の損害額は,合計で4億4006万円となる。 第5 結論以上のとおりであって,一審原告の請求は,一審被告に対して,被告製品の譲渡等の差止め,被告製品の廃棄,並びに損害金4億4006万円及びうち3810万円に対する平成28年6月15日から,うち405万円に対する平成29年8月26日から,うち2億5785万円に対する同年11月17日から,うち1億4006万円に対する令和元年5月15日から,各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払 - 126 -を求める限度で理由があり,その余は理由がない。これと一部異なる原判決を一審原告の控訴及び訴えの変更に基づき変更し,一審被告の控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所特別部 裁判長裁判官高部眞規子 裁判官森義之 裁判官 森義之 裁判官鶴岡稔彦 裁判官大鷹一郎 - 127 - 裁判官佐野信 - 137 -別紙 - 138 -別紙 - 139 -別紙 - 140 -別紙 - 141 -別紙 - 142 -別紙 - 143 -別紙「争点(2)についての当事者の主張」 1 本件特許1は,特許無効審判により無効にされるべきものか(明確性要件違反の有無)(争点(2)ア)について【一審被告の主張】(1) 本件明細書1では,ボールの形状が真円状の場合は,一対のボールの外周面の間隔Dは,図5で示されたとおり,ボールの直径部とボールの基端側端部との間に存在するが,この間隔の限定は,肌を摘み上げるという効果を発揮する上で技術的に有意な限定である。 他方,ボールの形状がバルーン状の場合は,肌の摘み上げ効果だけでなく,摘み上げた肌を保持する効果を有するから,ボールの間隔の限定も,肌を摘み上げる効果に加えて,摘み上げた肌を保持する効果を発揮する上で,技術的に有意なものでなければならないが,本件明 効果だけでなく,摘み上げた肌を保持する効果を有するから,ボールの間隔の限定も,肌を摘み上げる効果に加えて,摘み上げた肌を保持する効果を発揮する上で,技術的に有意なものでなければならないが,本件明細書1には,ボールの形状がバルーン状の場合の一対のボールの外周面の間隔について固有の数値限定がされていない。 したがって,本件発明1は,明確性要件(特許法36条6項2号)に違反する。 (2) 一審原告は,一対のボールの外周面の間隔は,一対のボールの最短距離であると主張する。 しかし,本件明細書1には,そのような特定をした記載はない。また,一対のボールの外周面の間隔は,一対のボールの最短距離であると解したとしても,ボールの形状がバルーン状の場合,一対のボールの外周面の間隔を10~13mmとすることで,摘み上げられた肌を保持する効果を発揮するかは技術的に明らかではない。 【一審原告の主張】(1) 本件発明1の「一対のボールの外周面間の間隔」の文言解釈として,一対のボールの間隔が最も狭い部分の間隔であることは自明であり,また,本件明細書1の図5でも,そのように記載されている。 (2) 本件明細書1において,摘み上げた肌を保持するとは,同部分で肌を摘み - 144 -上げることができる(摘み上げを開放しない)ことを意味する。 本件明細書1の図8の形状のボールにおいても,ボールの先端部から最もボール間隔の狭い部分である基端側まで肌が摘み上げられるが,図5の形状のボールに比して,肌の摘み上げに寄与するボール部分が長くなることから,肌の摘み上げ状態を保持することができるのであり,本件明細書1は,このことを記載したのである。 このように,本件明細書1の図5のボール形状,図8のボール形状のいずれであっても,肌の摘み上げはボールの先端側か げ状態を保持することができるのであり,本件明細書1は,このことを記載したのである。 このように,本件明細書1の図5のボール形状,図8のボール形状のいずれであっても,肌の摘み上げはボールの先端側から最小間隔部分まで継続して行われることに変わりはなく,図8の形状故に固有の数値限定が必要とされることはない。 (3) したがって,本件発明1に明確性要件違反はない。 2 本件特許1は,特許無効審判により無効にされるべきものか(乙50文献を主引用例とする進歩性欠如の有無)(争点(2)イ)について【一審被告の主張】(1) 平成19年3月30日に公開されたフランス共和国第2891137号公報(乙50文献)には,以下の発明(以下「一審被告主張乙50発明」という。)が記載されている(乙50文献の実施例の図を以下に示す。)。 「任意の形状の中央ハンドル(1)に一対の球(2)を,相互間隔をおいてそれぞれ軸を中心に回転可能に支持したマッサージ用器具において,往復動作中に球(2)の軸線が肌面に対して一定角度を維持できるように,球(2)の軸線を中央ハンドル(1)の中心線に対して一定の角度を付けて構成し,一対の球(2)の軸の開き角度を65~80度,一対の球(2)の直径を2~8cmとし,球(2)は,貫通状態で軸に支持されており,ハンドル(1)を握り,これを傾けて2個の球(2)を皮膚(4)に当て,引張り力を及ぼすと,これらの球(2)は,球(2)の間に拘束されて挟まれた皮膚を集めるマッサージ用器具」 - 145 - (2) 一致点及び相違点本件発明1と一審被告主張乙50発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 ア一致点「ハンドルの先端部に一対のボールを,相互間隔をおいてそれぞれ一軸線を中心に回転可能に支持した 点本件発明1と一審被告主張乙50発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 ア一致点「ハンドルの先端部に一対のボールを,相互間隔をおいてそれぞれ一軸線を中心に回転可能に支持した美容器において,往復動作中にボールの軸線が肌面に対して一定角度を維持できるように,ボールの軸線をハンドルの中心線に対して前傾させて構成し,一対のボール支持軸の開き角度を65~80度,前記ボールは,ボール支持軸に支持されており,ボールの外周面を肌に押し当ててハンドルの先端から基端方向に移動させることにより肌が摘み上げられるようにしたことを特徴とする美 - 146 -容器」イ相違点(ア) 相違点1一審被告主張乙50発明は,一対の球(2)の直径が2~8cmと特定されているものの,球(2)の外周面間の間隔につき特定されていないのに対し,本件発明1は,一対のボールの外周面間の間隔が10~13mmと限定されている点なお,一審被告主張乙50発明における一対の球(2)の外周面間の間隔は,下図の間隔dである。 d (イ) 相違点2一審被告主張乙50発明における球(2)は,貫通状態で軸に支持されているのに対して,本件発明1におけるボールは,非貫通状態でボール支持軸に軸受け部材を介して支持されている点(3) 相違点の容易想到性ア相違点1について(ア) 昭和26年6月9日に公開された米国特許第2641256号公報(乙154の1。以下「乙154文献」という。)には,以下の技術(以下「乙154技術」という。)が記載されている。 ① 皮膚を巻き上げるために,適切に回転する一対のローラを用いれば, - 147 -一対のローラの間隔を1/2インチ(=12.7mm)とす 乙154技術」という。)が記載されている。 ① 皮膚を巻き上げるために,適切に回転する一対のローラを用いれば, - 147 -一対のローラの間隔を1/2インチ(=12.7mm)とすることが適切であること② 一対のローラの片方を動力で回転させること③ 2.25インチ(=57.15mm)の直径を有する一対のローラ13,15において,1秒間に1回転するローラ13と,自由に回転するローラ15との間の間隔を,1/4インチまたは1/2インチ(=12.7mm)とすること(イ) 一審被告主張乙50発明と,乙154技術とは,軸の回りを回転する一対の球体状のローラを用いて,肌を摘み上げるという構造上及び作用効果上での共通点を有するだけでなく,用いている球体状のローラの直径も共通している。 そして,乙154技術は,モータを必須とはしていない。 したがって,一審被告主張乙50発明に,乙154技術の①を適用する動機付けは,十分に存在するところ,一審被告主張乙50発明に,乙154技術の①を適用すると,一審被告主張乙50発明における一対の球(2)の外周面間の間隔dを,12. 7mmとすることができる。 以上より,一審被告主張乙50発明に乙154技術を適用することで,相違点1は容易に想到できる。 イ相違点2について(ア) 「クロワッサン」35巻17号26~27頁(以下「乙30文献」という。)には,以下の技術(以下「乙30技術」という。)が記載されている。 「ハンドルの先端に取り付けられた一対の軸の回りを,非貫通状態で,回転可能に支持されている一対の球体状のボールを有する美容器であって,一対のボールで,肌を摘み上げることができる美容器」(イ) 周知技術乙45文献,乙193文献,特開2010-1 態で,回転可能に支持されている一対の球体状のボールを有する美容器であって,一対のボールで,肌を摘み上げることができる美容器」(イ) 周知技術乙45文献,乙193文献,特開2010-131090号公報(乙192,以下「乙192文献」という。)には,「美容器の回転体を,非貫通状態で,軸に軸受 - 148 -け部材を介して回転可能に支持する」ことが記載されており,同技術は,本件特許1の出願時において,周知の技術である。 (ウ) 一審被告主張乙50発明と乙30技術とは,構造上及び作用効果上での共通点を有しており,一審被告主張乙50発明に乙30技術を適用する動機付けは存在する。 そして,前記(イ)のとおり,「回転体を用いてマッサージする美容器において,その回転体を,非貫通状態で,軸に軸受け部材を介して回転可能に支持する構造とすること」は,本件発明1の出願時において周知の技術である。 したがって,相違点2は,一審被告主張乙50発明に,乙30技術及び上記周知技術を適用して,一審被告主張乙50発明の一対の球(2)を非貫通状態の球として,軸受け部材を介して軸の回りに回転可能に支持させる構造とすることは,当業者にとって,容易に想到できる。 ウ以上より,本件発明1は,一審被告主張乙50発明,乙154技術,乙30技術及び周知技術に基づき,容易に発明することができる。 (4) 一審原告の主張についてア相違点Aについて一審原告は,乙50文献に記載された発明においては,一対の球(2)を支持しているのはハンドル(1)ではあるものの,その「先端」で支持しているか否かは不明であると主張する。 しかし,美容器又はマッサージ器において,ハンドルの先端部に一対の回転体を支持する構成とすることは周知技術である(乙24~ ではあるものの,その「先端」で支持しているか否かは不明であると主張する。 しかし,美容器又はマッサージ器において,ハンドルの先端部に一対の回転体を支持する構成とすることは周知技術である(乙24~31〔枝番を含む。〕,乙44,45)。 そして,乙50文献において,「ハンドルは,球,あるいは他のあらゆる任意の形状とすることが可能である。」と記載されており(乙50の2・2頁19行~20行),相違点Aに関し,一審被告主張乙50発明に周知技術を適用する動機付けは存在する。 - 149 -したがって,一審被告主張乙50発明のハンドルとして,周知技術のハンドルを適用し,そのハンドルの先端部に,一対の球(2)を支持させる構造とすることは容易である。 イ相違点Bについて一審原告は,乙50文献に記載された発明においては,ハンドル(1)の中心線を特定できないから,球(2)の軸線をハンドル(1)の中心線に対して前傾させているという構成に至る動機付けはないし,また,往復動作中に球(2)の軸線が肌面に対して一定角度を維持できるようにするという構成も想起し得ないと主張する。 しかし,美容器又はマッサージ器において,中心線を概念できる棒状のハンドルを用いることは周知技術である(乙24~31〔枝番を含む。〕,乙44,45)。 そして,乙50文献には,「ハンドルは,球,あるいは他のあらゆる任意の形状とすることが可能である。」と記載されており(乙50の2・2頁19行~20行),相違点Bに関し,一審被告主張乙50発明のハンドルとして,周知技術のハンドルを適用する動機付けは存在する。 また,周知技術のハンドルを一審被告主張乙50発明に適用した場合,ハンドルの先端部に一対の球(2)が支持されることとなり,その場合,一審被告主張乙50発明において を適用する動機付けは存在する。 また,周知技術のハンドルを一審被告主張乙50発明に適用した場合,ハンドルの先端部に一対の球(2)が支持されることとなり,その場合,一審被告主張乙50発明においては,球(2)の軸がハンドルから突き出ているのであるから,例えば,球(2)の軸線がハンドルの中心線に対して前傾した構造となり,その場合,自ずと,乙24の1や乙25の1 のように,軸線が肌面に対して一定角度を維持できるように構成されることとなる。 したがって,相違点Bに関し,一審被告主張乙50発明に周知技術を適用して,球(2)の軸線をハンドル(1)の中心線に対して前傾させて,往復動作中に球(2)の軸線が肌面に対して一定角度を維持できるように構成することは,当業者にとって,容易である。 ウ相違点1及び相違点2´について一審原告は,別件訴訟1の判決を理由に,相違点1及び相違点2´につき,相互 - 150 -に関連性を有するとして,個別に相違点として把握することは失当であると主張する。 しかし,別件訴訟1の判決における主引用例は乙50文献に記載された発明ではないから,上記判決を理由に,本件発明1と乙50文献に記載された発明との相違点を論ずることはできない。 エ相違点1について(ア) 一審原告は,乙154技術は,ローラが皮膚を挟み上げる作用を奏するものではなく,ローラが皮膚を挟むものである乙50文献に記載された発明とは作用が相違するため,組合せの動機付けがないと主張する。 しかし,乙154技術は,下層組織を挟む方法により患者の肉を持ち上げて,揉んで引っ張るものである(乙154の2・2頁15行~16行)。 そして,本件発明1における肌とは,皮膚とその下の皮下脂肪を指しているところ,乙154技術でいうところの下層組織も の肉を持ち上げて,揉んで引っ張るものである(乙154の2・2頁15行~16行)。 そして,本件発明1における肌とは,皮膚とその下の皮下脂肪を指しているところ,乙154技術でいうところの下層組織も皮下脂肪を含む組織のことである。 また,皮下脂肪の下には筋肉が存在することから,皮下脂肪が摘み上げられれば,それに伴って筋肉も摘み上げられることは当然のことであり,乙154技術の作用効果と本件発明1の作用効果は実質的に同一である。 したがって,一審原告の上記主張は理由がない。 (イ) 一審原告は,乙154技術がモータを使用することを前提としているから,手でローラを回転させる乙50文献に記載された発明に,乙154技術を適用する動機付けは存在しないと主張する。 しかし,一審被告主張乙50発明と乙154技術の回転速度は近似しているから,乙154技術が駆動ローラによって能動的に回転していたとしても,人体の肌に対して与える作用効果は一審被告主張乙50発明と同様であり,乙154技術を,手動でローラを回転させる一審被告主張乙50発明に適用することの動機付けはあるといえる。 (ウ) 一審原告は,乙154技術のローラの回転方向が明らかでないことを - 151 -理由に乙50文献に記載された発明と組み合わせる動機付けは存在しないと主張する。 しかし,乙154文献には,患者の肉を持ち上げて揉んで引っ張ることが明記されており,乙24~31〔枝番を含む。〕,乙44,45に示された周知技術においては,二つのローラを互いに逆方向に回転させることで肌を摘み上げる技術が開示されていることから,乙154技術においても,周知技術と同様に,一対のローラを逆方向に回転させるように,片方のローラを駆動ローラとして回転させることになることは自明である。 を摘み上げる技術が開示されていることから,乙154技術においても,周知技術と同様に,一対のローラを逆方向に回転させるように,片方のローラを駆動ローラとして回転させることになることは自明である。 (エ) 一審原告は,乙50文献に記載された発明の球(2)に乙154技術のローラの構成を適用すると,球(2)の一つはモータ駆動となり自由回転ではなくなり,乙50文献に記載された発明において,球(2)の自由回転を円滑にするための「軸受け部材」は全く不要となり,阻害要因が存在すると主張する。 しかし,一審被告は,乙154文献において開示されている一対のローラの外周面間の間隔である1/2インチを一審被告主張乙50発明に適用することが容易であると主張しているのであり,乙154技術のモータ駆動によるローラを適用すると主張しているのではないから,一審原告の上記主張は理由がない。 オ相違点2´について一審原告は,乙30文献では,ボール支持軸にボールが支持されているかは不明であると主張する。 しかし,乙30文献では,支持軸を使用してボールを回転可能に支持していることを確認することができる。 本件特許1の出願時の技術常識からすると,支持軸を使用してボールを回転可能に支持する構造であることは自明の事項であり,支持軸を介さずにボールを回転可能に支持する手段を創造するのは極めて困難である。 したがって,一審原告の上記主張は理由がない。 【一審原告の主張】 - 152 -(1) 乙50文献には,以下の発明(以下「一審原告主張乙50発明」という。)が記載されている。 「ハンドル(1)に一対の球(2)を,相互間隔をおいてそれぞれ軸を中心に回転可能に支持した手動マッサージ器具において,一対の球(2)の軸の開き角度を70~100度,と いう。)が記載されている。 「ハンドル(1)に一対の球(2)を,相互間隔をおいてそれぞれ軸を中心に回転可能に支持した手動マッサージ器具において,一対の球(2)の軸の開き角度を70~100度,とし,一対の球(2)の直径を2~8cmとし,前記球(2)は,貫通状態で球(2)の軸に軸受部材を介さずに支持されており,ハンドル(1)を握り,これを傾けて2個の球(2)を皮膚(4)に当て,引張力を及ぼすと,これらの球(2)は,球(2)の間に拘束されて挟まれた皮膚を集めるようにしたことを特徴とする手動マッサージ器具。」(2) 本件発明1と一審原告主張乙50発明との間には,以下の相違点が存在する。 ア相違点A本件発明1は,一対のボールを支持しているのは「ハンドルの先端」であるのに対して,一審原告主張乙50発明は,一対の球(2)を支持しているのは「ハンドル(1)」ではあるが,その「先端」で支持しているかどうか不明な点イ相違点B本件発明1は「往復動作中にボールの軸線が肌面に対して一定角度を維持できるように,ボールの軸線をハンドルの中心線に対して前傾させて構成し」ているのに対して,一審原告主張乙50発明は,ハンドル(1)の中心線を特定できないため,球(2)の軸線をハンドル(1)の中心線に対して前傾させているかどうか不明であり,また,往復動作中に球(2)の軸線が肌面に対して一定角度を維持できるかどうか不明である点ウ相違点1本件発明1は「一対のボールの外周面間の間隔を10~13mmとし」ているのに対して,一審原告主張乙50発明は,「一対の球(2)の直径を2~8cmとし」ているものの,一対の球(2)の外周面間の間隔は不明である点エ相違点2´ - 153 -本件発明1のボールは「非貫通状態でボール支 一対の球(2)の直径を2~8cmとし」ているものの,一対の球(2)の外周面間の間隔は不明である点エ相違点2´ - 153 -本件発明1のボールは「非貫通状態でボール支持軸に軸受け部材を介して支持」されているのに対して,一審原告主張乙50発明の球(2)は「貫通状態で球(2)の軸に軸受け部材を介さずに支持」されている点(3) 相違点の容易想到性についてア相違点1及び相違点2´は,相互に関連性を有するから,個別に容易想到性を判断すべきではない。別件訴訟1の判決でも,そのように判示されている。 イ相違点Aについて乙50文献には,ハンドル(1)の形状を「球,あるいは他のあらゆる任意の形状とすることが可能である」との記載があるが,ハンドル(1)と球(2)の位置関係については何らの記載もない。 そして,ハンドル(1)の形状として具体的に明示されているのは「球」状であるところ,球状のハンドル(1)に,一対の球(2)を支持させるとすると,球状のハンドル(1)の中央(中心を通る位置)に支持させることになると考えるのが一般的である。 したがって,一審原告主張乙50発明では,ハンドル(1)に対する球(2)の支持位置を類推したとしても,ハンドル(1)の中央となり,ハンドル(1)の先端で一対の球(2)を支持する構成は想到しない。 したがって,相違点Aは容易に想到できない。 ウ相違点Bについて一審原告主張乙50発明において唯一具体的に想定することのできるハンドル(1)の形状は球状であるが,この形状ではハンドル(1)の中心線を特定することはできないから,同中心線に対して,球(2)の軸線を前傾させるという構成に至る動機付けはなく,また,ハンドル(1)の中心線と球(2)の軸線との関係を工夫して, ではハンドル(1)の中心線を特定することはできないから,同中心線に対して,球(2)の軸線を前傾させるという構成に至る動機付けはなく,また,ハンドル(1)の中心線と球(2)の軸線との関係を工夫して,往復動作中に球(2)の軸線が肌面に対して一定角度を維持できるようにするという構成も想到し得ない。 したがって,相違点Bは容易に想到できない。 エ相違点1について - 154 -(ア) 乙154技術は,ローラが,皮膚を挟むことなく,皮膚及び下層組織をまくり上げて,揉んで引っ張るという作用を有するものであるところ,乙154文献の「ローラは,使用時に皮膚を挟むことは決してないが,・・・下層組織を揉む仕方で,・・・患者の肉を持ち上げて,揉んで引っ張る」との記載からすると,「皮膚を挟むこと(=肌を摘み上げること)」と「下層組織をまくり上げて,揉んで引っ張ること」とは,異なる作用であると考えられる。 したがって,乙154技術は,ローラが皮膚を挟み摘み上げる作用を奏するものではなく,ローラが皮膚を挟むものである一審原告主張乙50発明とは作用が相違するため,乙154技術を一審原告主張乙50発明に組み合わせる動機付けは存在しない。 (イ) 乙154技術は,モータを必須とし,一つのローラをモータで回転させるマッサージ装置を前提として,二つのローラの間隔を1/2インチとする技術である。 これに対し,一審原告主張乙50発明は手で押されるローラであり,乙154技術の従来技術に相当する上,駆動ローラによる能動的な回転を行う乙154技術とは構造上も相違する。 そして,乙154技術のローラの間隔は,駆動ローラによる能動的な回転を行うローラを採用したことを前提とする間隔であり,このローラ間隔のみを乙154技術の従来技術 54技術とは構造上も相違する。 そして,乙154技術のローラの間隔は,駆動ローラによる能動的な回転を行うローラを採用したことを前提とする間隔であり,このローラ間隔のみを乙154技術の従来技術に相当する一審原告主張乙50発明に適用する動機付けはない。 (ウ) 乙154技術では,ローラがどのような方向に回転するか明らかでなく,二つの球(2)がそれぞれ逆方向に回転する一審原告主張乙50発明と組み合わせる動機付けは存在しない。 (エ) 一審原告主張乙50発明の球(2)に乙154技術のローラの構成を適用すると,球(2)の一つはモータ駆動となり自由回転ではなくなる。 そうすると,一審原告主張乙50発明において,軸に対して球(2)の自由回転を円滑にするための「軸受け部材」は全く不要となり,一審原告主張乙50発明への乙 - 155 -154技術の適用は,阻害要因がある。 (オ) 以上より,相違点1は容易に想到できない。 オ相違点2´について(ア) 一審被告が指摘する乙30文献の記載からは,ボールの軸の有無は特定されておらず,また,ボールが非貫通状態でボール支持軸に支持されているかどうかも明確ではない。 したがって,乙30文献は,相違点Dに係る本件発明1の構成を開示するものではない。 (イ) 「回転体を用いてマッサージする美容器において,その回転体を非貫通状態で,軸に軸受け部材を介して回転可能に支持する構造とする」ことは周知であるとはいえない。また,乙45文献,乙193文献及び乙192文献に記載された技術は,ローラのスムーズな回転のための技術ではなく,一審原告主張乙50発明にボールのスムーズな回転という課題はないから,上記の各技術を一審原告主張乙50発明に適用して,ボールのスムーズ 記載された技術は,ローラのスムーズな回転のための技術ではなく,一審原告主張乙50発明にボールのスムーズな回転という課題はないから,上記の各技術を一審原告主張乙50発明に適用して,ボールのスムーズな回転のためにボールを非貫通状態でボール支持軸に軸受部材を介して支持している本件発明1に至る動機付けはない。 (ウ) したがって,相違点2´は容易に想到できない。 3 本件特許1は,特許無効審判により無効にされるべきものか(乙45文献を主引用例とする進歩性欠如の有無)(争点(2)ウ)について【一審被告の主張】(1) 乙45文献には,以下の発明(以下「一審被告主張乙45発明1」という。)が記載されている。 「柄本体部2の先端部に一対の円筒状のローラ部5を,相互間隔をおいて小径部4bの軸線を中心に回転可能に支持したマグネット美容ローラにおいて,往復動作中にローラ部5の軸線が肌面に対して一定角度を維持できるように,ローラ部5の軸線を柄本体部2の中心線に対して第1の角度で傾斜させて構成し,一対の小径部4bの軸線の開き角度を第2の角度とし,ローラ部5は,非貫通状態で小径部4b - 156 -にベアリング8を介して支持されており,ローラ部5が第1の角度で手前側に傾斜し且つ第2の角度が開いていることから,顔面の皮膚に効率的に接触することができ,美容効果を向上させることができる美容ローラ」(2) 一致点及び相違点本件発明1と一審被告主張乙45発明1との一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア一致点「ハンドルの先端部に一対の回転体を,相互間隔をおいてそれぞれ一軸線を中心に回転可能に支持した美容器において,往復動作中に回転体の軸線が肌面に対して一定角度を維持できるように,回転体の軸線をハンドルの中心線に対して 部に一対の回転体を,相互間隔をおいてそれぞれ一軸線を中心に回転可能に支持した美容器において,往復動作中に回転体の軸線が肌面に対して一定角度を維持できるように,回転体の軸線をハンドルの中心線に対して前傾させて構成し,一対の支持軸の開き角度は,所定の角度であり,回転体は,支持軸に軸受け部材を介して支持されており,回転体の外周面を肌に押し当ててマッサージするようにした美容器」イ相違点(ア) 相違点1一審被告主張乙45発明1のローラ部5は円筒状であり,真円状,バルーン状,断面楕円形状,断面長円形のいずれでもない点(イ) 相違点2一審被告主張乙45発明1では,一対の小径部4bの軸線の開き角度を第2の角度として所定の角度としているのに対し,本件発明1の一対のボール支持軸の開き角度は65~80度とされている点(ウ) 相違点3一審被告主張乙45発明1では,一対のローラ部5の外周面間の間隔について何ら規定してないのに対して,本件発明1では,一対のボールの外周面間の間隔を10~13mmと規定している点(エ) 相違点4 - 157 -一審被告主張乙45発明1では,柄本体部2の先端から基端方向に移動させることにより肌が摘み上げられるように構成されているか否かは不明である点(3) 相違点の容易想到性ア相違点1について(ア) 乙30技術の適用一審被告主張乙45発明1と乙30技術とは,構造上及び使用目的上での共通点を有しているから,一審被告主張乙45発明1に,乙30技術を適用する動機付けは存在する。 したがって,一審被告主張乙45発明1に,乙30技術を適用して,一審被告主張乙45発明1の一対のローラ部5を,非貫通状態のボールとして,一審被告主張乙45発明1のベアリ する動機付けは存在する。 したがって,一審被告主張乙45発明1に,乙30技術を適用して,一審被告主張乙45発明1の一対のローラ部5を,非貫通状態のボールとして,一審被告主張乙45発明1のベアリング8(軸受け部材)を介してローラ支持部の回りに回転可能に支持させる構造とすることは,当業者にとって容易であり,相違点1は容易に想到することができる。 (イ) 特開2000-24065公報(乙155。以下「乙155文献」という。)に記載された技術の適用a 乙155文献には,以下の技術(以下「乙155技術」という。)が記載されている。 「先端部分Bが基端側直線部Aよりも略20~40度傾斜した把持部4と,把持部4の一端に設けられた回転軸体8に回転可能に支持された一対の非貫通状態の弾性体とを備えるマッサージ具1において,弾性体として,円柱体3の代わりに,球体を用いてもよい。」b 一審被告主張乙45発明1と乙155技術とは,構造上及び使用目的上での共通点を有しているから,一審被告主張乙45発明1に,乙155技術を適用する動機付けは存在する。 したがって,一審被告主張乙45発明1に,乙155技術を適用して,一審被告主張乙45発明1の一対のローラ部5を非貫通状態の球体として,一審被告主張乙 - 158 -45発明1のベアリング8(軸受け部材)を介してローラ支持部の回りに回転可能に支持させる構造とすることは当業者にとって容易であり,相違点1は容易に想到することができる。 イ相違点2について一対の回転体を用いて肌をマッサージする器具において,軸の開き角度を65~80度の範囲とすることは,設計事項としての本件特許1の出願時の技術常識にすぎない(乙50の1,乙161,162)。 ウ相違点3につい いて肌をマッサージする器具において,軸の開き角度を65~80度の範囲とすることは,設計事項としての本件特許1の出願時の技術常識にすぎない(乙50の1,乙161,162)。 ウ相違点3について一審被告主張乙45発明1は,肌を摘み上げる作用を生じさせるものであり,当業者は,この作用が効率的な球体の配置を選択することになるところ,一審被告主張乙45発明1に乙154技術の球体のボールを適用するに当たり,乙154技術の間隔(外周面間の間隔が1/2インチ〔12.7mm〕)を採用することになる。 したがって,球体のボールを採用した一審被告主張乙45発明1のボールの間隔を10~13mmとする相違点3に係る構成は,容易に想到することができる。 エ相違点4について一対の回転体を用いる美容器において回転体を回転するように移動させれば,肌を摘み上げるという作用が生じることは,本件特許1の出願時の技術常識であるから,一審被告主張乙45発明1が,本件発明1と同様に肌の摘み上げ作用を生じさせるように構成されているのは,当業者にとって自明であり,相違点4は実質的な相違点とはならない。 オしたがって,本件発明1は,一審被告主張乙45発明1,乙154技術,乙30技術,乙155技術に基づき容易に発明することができたというべきである。 (4) 一審原告の主張についてア一審原告は,乙45文献に記載された発明における軸線の開き角度を100~140度と認定すべきであると主張する。 しかし,乙45文献の請求項1には,「第2角度で開くように前記把持部の一端か - 159 -ら延出する一対のローラ保持部」との記載があり,軸線の開き角度を限定していないから,一審原告の上記主張は理由がない。 仮に,一審被告主張乙45発明1の軸線の 部の一端か - 159 -ら延出する一対のローラ保持部」との記載があり,軸線の開き角度を限定していないから,一審原告の上記主張は理由がない。 仮に,一審被告主張乙45発明1の軸線の開き角度が100~140度であると認定されたとしても,乙45文献においては,開き角度を第2角度として概念化しており,軸線の開き角度が100~140度であることが技術的な必須条件ではないところ,前記のとおり,開き角度を80度とすることは,周知技術であるから,一審被告主張乙45発明1の軸線の開き角度100~140度を80度として,65~80度の範囲とすることは,設計事項にすぎない。 イ一審原告は,相違点3の容易想到性についての一審被告の主張は,いわゆる「容易の容易」に該当すると主張する。 しかし,相違点1´に関して,一審被告主張乙45発明1に,乙30文献に記載の事項を適用する際,設計事項として,ボールの間の間隔をどのように設定するか考慮しなければならないが,その際,乙154文献に基づいて,ボールの間隔を1/2インチ(12.7mm)とすることを容易に想到することができるのであり,このような思考は,一審被告主張乙45発明1に,乙30技術及び乙154技術を並列的に同時に適用しているにすぎず,ある副引用例に基づいて到達したものに,さらに他の副引用例を適用する「容易の容易」とは異なる。 ウ一審原告は,相違点2´と相違点3は,本件発明1における支持軸の開き角度とボールの外周面間隔に関する相違点であり,相互に密接に関連するものであるから,異なる文献に基づき容易に想到できるとはいえないと主張する。 しかし,一審原告の上記主張は,別件訴訟1の判決に基づくものであるところ,同判決は,本件訴訟における無効主張とは異なる主張について判断したものである 基づき容易に想到できるとはいえないと主張する。 しかし,一審原告の上記主張は,別件訴訟1の判決に基づくものであるところ,同判決は,本件訴訟における無効主張とは異なる主張について判断したものであるから,上記判決を根拠とする一審原告の上記主張は理由がない。 【一審原告の主張】(1) 乙45文献には,以下の発明(以下「一審原告主張乙45発明1」という。)が記載されている。 - 160 -「柄本体部(2)の先端部に一対の円筒状のローラ部(5)を,相互間隔をおいて小径部(4b)の軸線を中心に回転可能に支持したマグネット美容ローラにおいて,往復動作中にローラ部(5)の軸線が肌面に対して一定角度を維持できるように,ローラ部(5)の軸線を柄本体部(2)の中心線に対して第1の角度で傾斜させて構成し,一対の小径部(4b)の軸線の開き角度を100~140度とし,ローラ部(5)は,非貫通状態で小径部(4b)にベアリング(8)を介して支持されており,ローラ部(5)を,顔面の皮膚に効率的に接触することができ,美容効果を向上させることができるマグネット美容ローラ。」(2) 本件発明1と一審原告主張乙45発明1との間には,以下の相違点が存在する。 ア相違点1´本件発明1は「ボール」であるのに対して,一審原告主張乙45発明1のローラ部5は円筒状であり,ボールではない点イ相違点2´本件発明1では一対のボール支持軸の開き角度は「65~80度」とされているのに対して,一審原告主張乙45発明1では一対の小径部4bの軸線の開き角度が「100~140度」である点ウ相違点3本件発明1では,一対のボールの外周面間の間隔を10~13mmとしているのに対して,一審原告主張乙45発明1では,一対のローラ部5の外周面間の間隔 100~140度」である点ウ相違点3本件発明1では,一対のボールの外周面間の間隔を10~13mmとしているのに対して,一審原告主張乙45発明1では,一対のローラ部5の外周面間の間隔について何ら規定していない点エ相違点4´本件発明1ではボールの外周面を肌に押し当ててハンドルの先端から基端方向に移動させることにより肌が摘み上げられるようにしたのに対して,一審原告主張乙45発明1では,柄本体部2の先端から基端方向に移動させることにより肌が摘み上げられるように構成されているか否かは不明である点 - 161 -(3) 相違点の容易想到性ア相違点2´と相違点3は,本件発明1における支持軸の開き角度とボールの外周面間隔に関する相違点であり,相互に密接に関連するものであるから,異なる文献に基づき容易に想到できるとはいえない(別件訴訟1の判決参照)。 イ相違点1´について一審原告主張乙45発明1の円筒状のローラ部5は,皮膚への接触状態が良好であることを目的としたものであるところ,皮膚への接触状態は,ローラ部の形状と大きく関連するから,一審原告主張乙45発明1のローラ部5を円筒状から球状に変更すると,肌への接触面積が低下することは自明であって,接触状態が良好にはならない。 したがって,一審原告主張乙45発明1において,ローラ部5の形状変更を加える動機付けは存在せず,相違点1´は容易に想到できない。 ウ相違点2´について(ア) 乙45文献には,開き角度に関して100~140度が望ましいと記載されている(段落【0011】,【0021】)が,これは,一審原告主張乙45発明1では円筒状のローラを使用して皮膚への接触状態を良好にすることを目的にしている(段落【0009】)ことに起因 いと記載されている(段落【0011】,【0021】)が,これは,一審原告主張乙45発明1では円筒状のローラを使用して皮膚への接触状態を良好にすることを目的にしている(段落【0009】)ことに起因する。 一審原告主張乙45発明1では,皮膚への接触状態を良好にするために,円筒状のローラを用いていることと相まって,一対の小径部の角度についても円筒状のローラの円筒表面の皮膚への接触状態が良好になるという観点から開き角度を設定する必要があるから,一審原告主張乙45発明1において一対の小径部4bの開き角度を65~80度の範囲に設定するということは,その目的からも考えられず,むしろ円筒状のローラを用いる一審原告主張乙45発明1においては,目的に反する可能性があり,阻害要因となる。 したがって,乙45文献に接した当業者は,一審原告主張乙45発明1の開き角度として明示の記載に基づく100~140度の範囲内で設定することはあっても, - 162 -開き角度を65~80度に変更することを容易に想到できない。 (イ) また,本件発明1の開き角度である65~80度と,非貫通状態でボール支持軸に軸受け部材を介して支持されていることは,ボールのスムーズな回転に寄与するという顕著な効果を有する。 (ウ) したがって,相違点2´は容易に想到できない。 エ相違点3について(ア) 乙154文献には,ローラの間隔について1/2インチ(12.7mm)とする記載と1/4インチ(6.35mm)とする記載が混在しており,いずれが正しいのか不明であるから,同文献には,技術事項として,「一対のボールの外周面間の間隔を10~13mmとし」た構成を開示するものとはいえない。 (イ) 一審被告の主張は,相違点3の構成に至るには いのか不明であるから,同文献には,技術事項として,「一対のボールの外周面間の間隔を10~13mmとし」た構成を開示するものとはいえない。 (イ) 一審被告の主張は,相違点3の構成に至るには,乙45文献に記載された発明を出発点として,乙30技術等に基づいて相違点1´に係る変更(ローラを球体に変更)を加えたうえで,さらに同変更箇所の球体に対して乙154技術に基づき変更を加えるというものである。すなわち,一審被告の主張では,相違点3は,乙45文献に記載された発明における一対のローラ部5を球体に変更するだけでは想到することができず,球体間の間隔を変更するという更なる変更を加える必要があるから,いわゆる「容易の容易」に当たり,相違点3は容易に想到できない。 (ウ) 前記2(3)エ(ア)のとおり,乙154技術は,ローラが皮膚を挟み摘み上げる作用を奏するものではなく,一審原告主張乙45発明1とは作用が相違するため,乙154技術を一審原告主張乙45発明1に組み合わせる動機付けは存在しない。 (エ) 前記2(3)エ(イ)のとおり,一審原告主張乙50発明は手で押されるローラであり,乙154技術の従来技術に相当する上,駆動ローラによる能動的な回転を行う乙154技術とは構造上も相違する。 そして,乙154技術のローラ間隔は,駆動ローラによる能動的な回転を行うローラを採用したことを前提とする間隔であり,このローラ間隔のみを乙154技術 - 163 -の従来技術に相当する一審原告主張乙45発明1に適用する動機付けはない。 (オ) 乙154技術では,ローラがどのような動作で回転するか明らかでなく,一対のローラが互いに逆方向に回転する一審原告主張乙45発明1と組み合わせる動機付けは存在しない。 (カ) 一審原告主張乙45発 乙154技術では,ローラがどのような動作で回転するか明らかでなく,一対のローラが互いに逆方向に回転する一審原告主張乙45発明1と組み合わせる動機付けは存在しない。 (カ) 一審原告主張乙45発明1のローラ部5に乙154技術を適用すると,ローラ部の一つはモータ駆動となり自由回転ではなくなる。 そうすると,一審原告主張乙45発明1において,小径部4bに対してローラ部5の自由回転を円滑にするためのベアリングは全く不要となり,一審原告主張乙45発明1への乙154技術の適用は,新たな相違点(軸受け部材の有無)を生じさせることとなり,両者を組み合わせることには阻害要因がある。 (キ) 以上より,相違点3は容易に想到できない。
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