平成22(行ウ)308 源泉所得納税告知処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年4月26日 東京地方裁判所 租税
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判決文本文64,354 文字)

- 1 -平成25年4月26日判決言渡平成22年(行ウ)第308号源泉所得納税告知処分取消等請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 渋谷税務署長が原告に対し平成20年6月30日付けでした,①平成15年10月分から平成19年10月分までの各月分の源泉徴収に係る所得税(以下「源泉徴収所得税」という。)の各納税告知処分及び②これらに係る不納付加算税の各賦課決定処分(ただし,上記①及び②のいずれについても,平成20年11月27日付け異議決定及び平成21年12月15日付け裁決により一部取り消された後のもの。以下,この一部取消しの前後を問わず,上記①の各納税告知処分を総称して「本件各納税告知処分」といい,上記②の各賦課決定処分を総称して「本件不納付加算税各賦課決定処分」という。)をいずれも取り消す。 2 渋谷税務署長が原告に対して平成20年6月30日付けでした,①原告の平成16年9月1日から平成17年8月31日までの課税期間(以下「17年8月課税期間」という。)に係る消費税の更正処分のうち消費税額679万7200円を超える部分及び②上記課税期間に係る地方消費税の更正処分のうち納付すべき地方消費税額171万5600円を超える部分並びに③上記①及び②の各更正処分(これらを総称して,以下「17年8月課税期間更正処分」という。なお,消費税と地方消費税を総称して,以下「消費税等」という。)に係る過少申告加算税賦課決定処分(以下「17年8月課税期間賦課決定処分」という。)をいずれも取り消す。 3 渋谷税務署長が原告に対して平成20年6月30日付けでした,①原告の平 - 2 -成17年9月1日から平成18年8月31日までの課税期間(以下「 課決定処分」という。)をいずれも取り消す。 3 渋谷税務署長が原告に対して平成20年6月30日付けでした,①原告の平 - 2 -成17年9月1日から平成18年8月31日までの課税期間(以下「18年8月課税期間」という。)に係る消費税の更正処分のうち納付すべき消費税額598万1200円を超える部分及び②上記課税期間に係る地方消費税の更正処分のうち納付すべき地方消費税額149万5300円を超える部分並びに③上記①及び②の各更正処分(これらを総称して,以下「18年8月課税期間更正処分」という。)に係る過少申告加算税賦課決定処分(以下「18年8月課税期間賦課決定処分」という。)をいずれも取り消す。 4 渋谷税務署長が原告に対して平成20年6月30日付けでした,①平成18年9月1日から平成19年8月31日までの課税期間(以下「19年8月課税期間」という。)に係る消費税の更正処分のうち納付すべき消費税額632万9100円を超える部分及び②上記課税期間に係る地方消費税の更正処分のうち納付すべき地方消費税額158万2200円を超える部分並びに③上記①及び②の各更正処分に係る過少申告加算税賦課決定処分(ただし,上記①~③のいずれについても,平成21年12月15日付け裁決により一部取り消された後のもの。以下,この取消しの前後を問わず,上記①及び②の各更正処分を総称して「19年8月課税期間更正処分」といい,上記③の各過少申告加算税賦課決定処分を「19年8月課税期間賦課決定処分」という。)をいずれも取り消す。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨(1) 原告は,①民間教育機関及び公的教育機関(以下「教育機関等」という。)から講師による講義等の業務を,いわゆる一般家庭から家庭教師による個人指導の業務を,それぞれ受託する一方,②原告の上記①の各業 ) 原告は,①民間教育機関及び公的教育機関(以下「教育機関等」という。)から講師による講義等の業務を,いわゆる一般家庭から家庭教師による個人指導の業務を,それぞれ受託する一方,②原告の上記①の各業務に係る講師又は家庭教師として原告と契約を締結し,上記①の教育機関等における講義等又は一般家庭における個人指導の業務を行った者に対し,当該契約所定の金員(ただし,交通費を除く。以下「本件各金員」という。)を支払 - 3 -っていた(原告との間の契約に基づき教育機関等における講師として講義等の業務を行う者を以下「本件塾講師」といい,一般家庭における家庭教師として個人指導の業務を行う者を以下「本件家庭教師」といい,両者を併せて以下「本件講師等」という。また,原告に対して講師による講義等の業務を委託した教育機関等を以下「本件教育機関等」といい,原告に対して家庭教師による個別指導の業務を委託した一般家庭を以下「本件会員」といい,両者を併せて以下「本件各顧客」という。)。 (2) 本件は,①原告が,本件講師等に対して支払った本件各金員が所得税法28条1項に規定する給与等に該当しないことを前提として,平成15年10月分から平成19年10月分までの各月分(以下「本件各月分」という。)に係る本件各金員につき源泉所得税の源泉徴収をせず,また,本件講師等から本件各金員を対価とする役務の提供を受けたことが課税仕入れ(消費税法2条1項12号)に当たるものとして,同法30条1項(平成24年法律第68号による改正前のもの。以下同じ。)の規定に従い,これに係る消費税額を同法45条1項2号に掲げる課税標準額に対する消費税額から控除した上で,17年8月課税期間,18年8月課税期間及び19年8月課税期間(以下「本件各課税期間」という。)の消費税等の申告をしたところ, を同法45条1項2号に掲げる課税標準額に対する消費税額から控除した上で,17年8月課税期間,18年8月課税期間及び19年8月課税期間(以下「本件各課税期間」という。)の消費税等の申告をしたところ,②渋谷税務署長が,本件各金員は上記の給与等に該当し,本件各金員を対価とする役務の提供を受けたことは課税仕入れに該当しないとして,前記第1の1~4掲記の各処分(これらを総称して以下「本件各処分」という。また,17年8月課税期間更正処分,18年8月課税期間更正処分及び19年8月課税期間更正処分を総称して以下「本件各更正処分」といい,17年8月課税期間賦課決定処分,18年8月課税期間賦課決定処分及び19年8月課税期間賦課決定処分を総称して以下「本件各賦課決定処分」という。)をしたため,③原告が,本件各金員は上記の給与等に該当しない旨主張して,本件各処分(ただし,本件各更正処分については,原告の申告額又は本件各更正処 - 4 -分前にされた減額更正処分に係る納付すべき税額を超える部分)の取消しを求める事案である。 2 関係法令の定め別紙1「関係法令の定め」に記載したとおりである(同別紙において定めた略称は,以下においても用いることとする。)。 3 前提事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがないか,当事者において争うことを明らかにしない事実である。以下「前提事実」という。)(1) 原告について原告は,教育機関等の講座等の請負業務,受験生に対する訪問指導等を目的とする株式会社である。 (2) 本件塾講師についてア原告は,教育機関等から本件塾講師による講義等の業務を受託するなどの事業ないしこれを行う部署を「A」と称している(なお,原告〔A〕のホームページやパンフレットによれば,「A」とは,Bの略であり,教育機関へ 教育機関等から本件塾講師による講義等の業務を受託するなどの事業ないしこれを行う部署を「A」と称している(なお,原告〔A〕のホームページやパンフレットによれば,「A」とは,Bの略であり,教育機関への総合人材コンサルティングを行う原告のセクションをいうものとされている。以上,乙2~4の2,33)。 イ原告(A)のホームページ及びパンフレットには,本件塾講師となることを希望する者が本件塾講師として業務に当たるまでの流れについて,おおむね次のような内容の記載がされている(甲16,乙2~4の2,33)。 (ア) 本件塾講師となることを希望する者は,電話・インターネットを通して講師仮登録をした後,原則として原告の事務所に赴いて,教科テスト,講師適正テスト(「C」と呼ばれる性格判断テスト)及び面接を受けた上で,正式にA講師として登録(本登録)がされる(なお,乙2,3,4の2及び33では,講師仮登録の後に行われる本登録に至るまでの一連の手続を指して「登録会」ないし「導入登録会」と称しているが,乙 - 5 -4の1では,本件塾講師となることを希望する者は,上記の面接終了後,Aの指導マニュアルに沿って講義ができるように研修を受けるものとされており,この研修のことを「登録会」と称している。)。 (イ) 原告においては,前記(ア)のとおり本登録をした者の中から,本件教育機関等が示した条件に基づいて,本件塾講師となる者の候補者を選定し,当該候補者は,業務内容の詳細及び就業意思の最終確認の手続のために原告の事務所に赴いて「紹介研修」を受講し(「紹介研修」については,この研修を通じて,仕事先の特徴や講師としての心構え,仕事先で受ける面談や模擬授業のコツなどについて具体的なレクチャーを受けることにより,講師としての精度を上げて臨む 講し(「紹介研修」については,この研修を通じて,仕事先の特徴や講師としての心構え,仕事先で受ける面談や模擬授業のコツなどについて具体的なレクチャーを受けることにより,講師としての精度を上げて臨むことができるなどと説明されている。),その後,本件教育機関等における面接に合格すると,本件塾講師として本件教育機関等における講義等の業務に当たる。 ウ原告(A)のホームページ(乙2及び4の1は平成20年4月当時のものであり,乙4の2は平成22年9月当時のものであり,乙33は平成24年11月当時のものである。)及びパンフレットには,原告の本件塾講師に対する助言・指導の体制等について,次のような内容の記載がされている(甲16,乙2~4の2,33)。 (ア) 原告においては,講師の研修にも力を注いでおり,指導上の技術のみならず,社会人のマナー,心得まで専門の研修担当教員が講師の教育に当たり,講師の質の向上と保持を可能にしている(乙2,3)。 (イ) 原告においては,スムーズに本件塾講師の仕事に入ることができるよう,着実に教える力が身に付く研修やサポート体制を整えており,講師経験のない初心者でも安心して登録をすることができる(甲16)。 (ウ) 原告においては,本件塾講師が本件教育機関等において指導を開始した後も,模擬授業によって本件塾講師の実力を確認したり,担当のコーディネーターが,本件教育機関及び本件塾講師と随時連絡を取り,本件 - 6 -塾講師のスケジュール管理,指導上のアドバイス(きめ細かいフォロー)を行ったりしている(甲16,乙2,4の1・2)。 (エ) 原告は,教育機関等に対し,研修・面接により選抜された講師を紹介している。原告においては,登録講師に対して,教授力のスキルアップや授業内容のクオリティアップ,生徒を 乙2,4の1・2)。 (エ) 原告は,教育機関等に対し,研修・面接により選抜された講師を紹介している。原告においては,登録講師に対して,教授力のスキルアップや授業内容のクオリティアップ,生徒を指導する立場として必要なマナーチェックなどを兼ねた研修を必要に応じて行っており,本件塾講師は,主に登録時の「登録会」と実際に講師業務を始める前に行う「紹介研修」ないし「紹介打合せ」を必ず経て,指導に当たっている。(乙33)(オ) 原告においては,指導を始めるに当たり必ず研修を行っており,初めて生徒を担当する者には,特に丁寧に研修を行う(乙33)。 (カ) 本件塾講師への指示・命令系統は,基本的には「A事業部」にあり,本件塾講師がいわゆる代講の依頼をする場合には,本件教育機関等に対してではなく,原告(A事業部)に対し,1か月前までに申告をすることを要する(乙4の1)。 エ原告と本件教育機関等との間の契約に係る「基本登録規約」(甲3。以下「本件登録規約」という。)においては,次のような内容の定めがされている。 (ア) 業務委託本件教育機関等は,原告に対し,本件教育機関等の学習指導業務及び講師選定業務の委託を申し込むことができ,原告は,その申込みに応じ,これを承諾するものとする(1条)。 (イ) 個別業務委託契約及びその手続本件教育機関等の申込みは,原告により指定された業務委託申込書に従って行われることを要し,個別業務委託契約は,原告による受注確認書の発送により成立する(2条1項)。 - 7 -(ウ) 委託料金①委託料金は,別段の合意がある場合を除き,原告の定める申込時において有効な料金表(甲24参照)を基準に決せられ(3条1項),②原告は,本件教育機関等の認印を受けた指導時間確認表に基づき委託料金を計算し 料金は,別段の合意がある場合を除き,原告の定める申込時において有効な料金表(甲24参照)を基準に決せられ(3条1項),②原告は,本件教育機関等の認印を受けた指導時間確認表に基づき委託料金を計算し,その額に消費税及び一定区間以外の区間についての交通費を加えた額を本件教育機関等に請求し,本件教育機関等は当該委託料金を支払う(同条2項)。 (エ) 業務の適正な遂行義務原告は,本件登録規約の目的を達成するために,適当な業務従事者(本件塾講師を指す。以下,エの項において同じ。)を選定し,受託業務に当たらなければならない(4条)。 (オ) 環境整備義務本件教育機関等は,①業務従事者が安全に受託業務を遂行できる環境を整えなければならず(5条1項),②業務従事者が委託業務遂行及び原告に対する報告をするに当たり通常必要と認められる物(通信機器を含む。)を貸与しなければならない(同条2項)。 (カ) 禁止事項a 前記(ア)の業務委託につき,本件教育機関等は,原告との間において特段の合意のある場合を除き,個別業務委託契約期間中に本件塾講師を本件教育機関等又はその関連する事業所にて雇用してはならない(6条1項)。 b 本件教育機関等は,本件塾講師との間で,本件教育機関等の業務に関し,現金及びそれに類するものの授受をしてはならない(6条2項)。 (キ) 損害賠償等本件教育機関等が前記(カ)aに反して本件塾講師を直接雇用した場合 - 8 -は,本件教育機関等は原告に対し損害賠償金のほか違約金を支払う(11条3項)。 オ原告と本件塾講師との間の契約に係る「業務委託基本契約書」(甲2。 以下「本件塾講師基本契約書」という。)においては,次のような内容の定めがされている。 (ア) 委託業務内容 講師との間の契約に係る「業務委託基本契約書」(甲2。 以下「本件塾講師基本契約書」という。)においては,次のような内容の定めがされている。 (ア) 委託業務内容学習指導及びそれに付随する業務(1条)。 (イ) 個別業務委託契約及びその手続原告から個別業務委託の依頼があり本件塾講師がこれを受託した場合,原告は,本件塾講師に,個別業務委託内容確認書(当該「個別業務委託契約」に係る「業務受託者」〔当該「個別業務委託契約」に係る業務を担当する本件塾講師〕,「業務従事期間と条件」及び「業務従事先会社」が記載されている。甲5。以下「本件塾講師確認書」という。)を発行し,原告と本件塾講師との同確認書の受渡しの完了により個別業務委託契約が成立したものとする(2条1項)。 (ウ) 業務委託代金の支払委託代金及び業務に関わる交通費のうち最短経路分の支払は月末締切り翌々月10日払(ただし,10日が土日祝日の場合は銀行翌営業日とする。)とし,原告が指定する銀行の本件塾講師名義の口座に振り込むこととする(3条1及び2項)。 (エ) 原告の負う義務a 原告は,本件塾講師の指導及びそれに付随する行為について,本件塾講師の相談を受けなければならない(4条1項)。 b 原告は,本件塾講師の指導及びそれに付随する行為について,本件塾講師に最大限の協力をしなければならない(4条2項)。 (オ) 本件塾講師の負う義務 - 9 -a 本件塾講師は,委託された個別業務に対し最善の努力をしなければならない(5条1項)。 b 本件塾講師は,後記(カ)に定めるとおり,原告に対し委託業務 う義務 - 9 -a 本件塾講師は,委託された個別業務に対し最善の努力をしなければならない(5条1項)。 b 本件塾講師は,後記(カ)に定めるとおり,原告に対し委託業務の遂行状況を報告しなければならない(5条2項)。 (カ) 業務連絡票の正確な使用本件塾講師は,業務連絡表(乙7)について,各月の最後の指導が終了した後,月間合計時間数及び月間交通費を記入し,本件教育機関等の担当者の確認署名及び認印を得て,これを所定の期限までに原告に送付しなければならない(6条1項,2項)。 (キ) 禁止事項a 本件塾講師は,委託条件,研修内容等守秘義務に当たる事項を第三者へ漏洩してはならない(8条2項)。 b 本件塾講師は,個別契約内容確認書に明記された期間中及び当該個別契約終了後3年以内に,本件教育機関等又は業務上知るに至った生徒又はその家族と直接契約して学習指導等をしてはならない(8条3項)。 c 本件塾講師は,原告の承諾なしに一方的に契約期間満了前に辞任してはならない(8条4項)。 d 本件塾講師については,原告から委託された本件教育機関等の場所において携帯電話の使用を禁止する(8条6項)。 (ク) 契約の解除原告と業務従事先会社の契約に基づき,原告が業務従事先会社から本件塾講師の交代の申出を受けた場合,原告は当該個別契約を解除できる(9条1項)。 (ケ) 返還義務本件塾講師は,契約終了時又は解除時には,交付又は貸与された物品 - 10 -(教材等)及びその他業務委託先に帰属する物を速やかに返還しなければならない(10条1項)。 (コ) 罰則規定前記(キ)bの規定に反して本件塾講師が本 与された物品 - 10 -(教材等)及びその他業務委託先に帰属する物を速やかに返還しなければならない(10条1項)。 (コ) 罰則規定前記(キ)bの規定に反して本件塾講師が本件教育機関等と直接契約した場合,本件塾講師は原告に対し損害賠償金を支払う(11条2項)。 (サ) 有効期間契約の有効期間は,契約締結の日から1年間とするが,特段の意思表示のない限り,契約は,期間満了と同時に自動的に更新されるものとする(13条)。 (シ) 契約外事項原告と本件塾講師の間の契約に定めのないものについては,両者協議の上決定するものとするが,協議の整わない場合は原告の指示に従うものとする(14条)。 カ原告の作成に係る「授業マニュアル~よりよい講師としてよい授業をするために~」と題する冊子(乙9。以下「本件授業マニュアル」という。)には,授業の流れ,授業の組立てのバランス,板書・説明・演習の方法や注意点等が記載されている。 (3) 本件家庭教師についてア原告は,いわゆる一般家庭における本件家庭教師による個人指導の事業ないしこれを行う部署を「D」と称している(乙10~12の2,34)。 イ原告(D)のホームページ,パンフレット類及び原告の作成に係る「講師研修資料」と題する冊子(乙13。以下「本件講師研修資料」という。)には,本件家庭教師となることを希望する者が本件家庭教師として業務に当たるまでの流れについて,おおむね次のような内容の記載がされている(乙10~13,16,34)。 (ア) 本件家庭教師となることを希望する者は,インターネット,電話等を - 11 -通して講師仮登録をした後,原告の事務所に赴いて,教科テスト(実力テスト),性格適正検査(C),個別面接,講師登録書( 本件家庭教師となることを希望する者は,インターネット,電話等を - 11 -通して講師仮登録をした後,原告の事務所に赴いて,教科テスト(実力テスト),性格適正検査(C),個別面接,講師登録書(乙5)作成及び家庭教師としての基本姿勢についての研修を経た上で,正式にDの講師として登録(本登録)がされる(なお,乙12及び13では,講師仮登録の後に行われる本登録に至るまでの一連の手続を指して「登録会」と称している。)。 (イ) 原告においては,前記(ア)のとおり本登録をした者の中から,本件会員が示した条件に適した者を本件家庭教師者の候補者として選考し,当該候補者は,業務内容の詳細及び就業意思の最終確認の手続のために原告の事務所に赴いて「紹介研修」を受け(「紹介研修」では,①本件会員及び生徒の状況や指導要点の説明,②「業務委託契約書」の作成,③講師証〔乙15〕の発行,④指導料振込みのための講座開設,⑤必要書類,テキストの引渡し及び⑥本件会員との顔合わせ日時の設定をするものとされる。),その後,本件会員方に赴いて本件会員及び生徒と顔合わせ(面談)をし,本件家庭教師として採用されると,本件会員方において,個人指導の業務に当たる。 なお,本件講師研修資料には,本件会員との顔合わせにおいて指導経験を問われた場合には,「指導経験はありませんが,センターできちんと研修を受けましたので,ご安心ください。」「センターと相談しながら進めていきます。」とはっきり答えるようにとの記載がされている。 ウ原告(D)のホームページ(乙10は平成22年9月当時のものであり,乙12の1は平成20年4月当時のものであり,乙12の2は平成22年11月当時のものであり,乙34は平成24年11月当時のものである。),パンフレット類及び本件講師研修資料には,原告の ものであり,乙12の1は平成20年4月当時のものであり,乙12の2は平成22年11月当時のものであり,乙34は平成24年11月当時のものである。),パンフレット類及び本件講師研修資料には,原告の本件家庭教師に対する助言・指導の体制等について,次のような内容の記載がされている(乙10~13,16,34)。 - 12 -(ア) 原告においては,講師選抜テストに合格した人間性・経験ともに優秀な者の中から,更に研修・管理を行い,本件家庭教師を教育のプロに育てている(乙10,34)。 (イ) 原告においては,鍛え抜かれた家庭教師を育成するために自らの努力研さんを怠らず,派遣後の状況把握に絶えず心を配っている(乙34)。 (ウ) 原告においては,指導を始めるに当たり必ず研修を行っており,初めて生徒を担当する者には,特に丁寧に研修を行う(乙12の1・2,34)。 (エ) 原告においては,毎月の学習状況・指導状況を把握するために,指導報告書の提出を本件家庭教師に義務付けており,これに基づいてその後のスケジュールやカリキュラムの調整をするとともに,随時本件会員からの学習相談も受け付けている(乙10,11,34)。 (エ) 原告においては,本件家庭教師から提出を受けた指導スケジュール表に基づいて,指導回数・日時など,指導スケジュールに従った指導が行われているかをチェックしている(乙12の2,13)(オ) 本件家庭教師において,「契約内容の変更を伴うスケジュール変更」をする場合や,やむを得ず交代等が必要となった場合には,原告(センター)に連絡をすることを要する(乙13)。 エ原告と本件会員との間の契約に係る「個人指導等に関する契約書」(甲4。以下「本件個人指導契約書」という。)においては,原告が本件会員に (センター)に連絡をすることを要する(乙13)。 エ原告と本件会員との間の契約に係る「個人指導等に関する契約書」(甲4。以下「本件個人指導契約書」という。)においては,原告が本件会員に提供する個人指導の時間ないし回数(1条1項)及び契約金額(6条)に関する定めのほか,次のような内容の定めがされている。 (ア) 契約指導期間原告が提供する役務の期間は,別途スケジュール表で定めた期間又は契約時間数分の役務の提供の終了までとする(1条2項)。 (イ) 指導時間の管理 - 13 -原告は,本件会員に対し,契約締結後,指導時間確認のため契約指導時間分の指導碓認票を発行する(2条1項)。 (ウ) 指導確認票の使用本件会員は,原告より提供を受けた個人指導に対し,原告の発行による契約指導時間分の指導確認票を,1回につき時間相当分枚数を捺印の上,指導終了時に本件家庭教師に直接手渡す(2条2項)。 (エ) 本件家庭教師の交通費に関する特約本件家庭教師の交通費は,原則として本件会員の負担とする(2条3項)。 (オ) 指導日時の変更に関する特約本件会員が,指導日時の変更を希望するときは,指導日前日までに本件家庭教師又は原告に連絡する(4条1項)。 オ原告と本件家庭教師との間の契約に係る「家庭教師業務委託契約書(学生)」及び「家庭教師業務委託契約書(社会人)」(本件各処分に係るいわゆる税務調査の際に原告側が調査担当者に示したもの。乙1の1・2,弁論の全趣旨。これらの契約書を総称して,以下「本件各家庭教師契約書」という。)においては,「業 書(社会人)」(本件各処分に係るいわゆる税務調査の際に原告側が調査担当者に示したもの。乙1の1・2,弁論の全趣旨。これらの契約書を総称して,以下「本件各家庭教師契約書」という。)においては,「業務委託内容」(本件会員名及び生徒名,指導期間,指導回数,指導スケジュールなど)についての定め(1条)のほか,次のような内容の定めがされている(なお,乙26〔平成18年6月20日付けの原告と本件家庭教師との間の契約に係る「家庭教師業務委託契約書(社会人)」〕の内容は,乙1の2と同様のものである。)。 (ア) 業務委託条件支払われる指導料金は,指導時間の単位で定めるものとし,その支払は,月末締切りとし翌月の20日に原告指定銀行の口座に振り込む(第2条)。 (イ) 原告の負う義務 - 14 -a 原告は,本件家庭教師の指導及びそれに付随する行為についての相談を受けなければならない(3条1項)。 b 原告は,本件家庭教師の指導及びそれに付随する行為について最大限の協力をしなければならない(3条2項)。 (ウ) 本件家庭教師の負う義務(善管注意義務・報告義務)a 本件家庭教師は,原告の指示に基づき家庭教師として本件会員の指導要望を満たすため,最善の努力をしなければならない(4条1項)。 b 本件家庭教師は,業務委託契約に基づき定められた期間内に家庭教師として指導を完了しなければならない(4条2項)。 c 本件家庭教師は,業務委託契約に基づき定められた指導回数を家庭教師として完全に遂行しなければならず,本件会員からの指導回数の変更依頼があった場合,原告に報告をし,許可を得なければならない(4条3項)。 d 基づき定められた指導回数を家庭教師として完全に遂行しなければならず,本件会員からの指導回数の変更依頼があった場合,原告に報告をし,許可を得なければならない(4条3項)。 d 本件家庭教師は,1条の業務委託内容に基づく契約締結後,やむを得ない事由(付則(1))以外期間内において辞任できない(4条4項)。 e 本件家庭教師は,原則として翌月3日までに,当月までの指導報告書・指導確認票・指導日報を持参(一定の者については郵送も可)し研修を受けなければならない(4条5項)。 f 本件家庭教師は,講師研修マニュアル及び紹介研修時のマニュアルに沿って指導を遂行しなければならない(4条6項。なお,本件において原告が本件家庭教師との間の契約に係る契約書の用紙として提出した甲7及び8には,この定めは置かれていない。)。 (エ) 禁止事項a 原告の業務内容に関して本件会員に対し不平不満を漏らしたり,不当な中傷をする等,原告の名誉を毀損し,信用を著しく失墜させる行 - 15 -為(5条1項)b 契約条件(講師指導料等),研修ノウハウ等守秘義務に当たる事項の本件会員及び第三者への漏洩行為(5条2項)c 契約期間中及び指導終了後3年間に発生する継続追加又は兄弟間の新規発注等に関して本件会員と直接契約する行為(5条3項)d 本件家庭教師が報告なしで本件会員の指導を中止したり,業務内容を変更する行為(5条4項)e 本件家庭教師が原告と相談なく一方的に中途で辞任する行為(5条6項)f 指導報告書提出,指導確認票提出,指導日報の記載等の義務違反(5条7項)(オ) 付則a 4条4項に関して,本件家庭教師の義務を 中途で辞任する行為(5条6項)f 指導報告書提出,指導確認票提出,指導日報の記載等の義務違反(5条7項)(オ) 付則a 4条4項に関して,本件家庭教師の義務を履行できない事態が生じた場合,以下の書類で証明しなければならない(付則(1))(a) 病気・怪我等で指導が不可能になった場合医師の診断書(b) 住居移転の場合転居先の住民票又は不動産契約書b 本件会員より契約期間内に解約要請のあった場合又は本件会員から講師の交代の申出があった場合,その時点で本件家庭教師の指導は打切りとする(付則(2))。 c 契約に当たり第1回目契約時のみ講師証を発行し,講師証代金は1000円とし,初回指導料から差し引くものとする(付則(3))。 d 本件会員から契約継続の要請があった場合,原告と本件家庭教師が契約終了以前に合意の上,当該本件家庭教師が引き続き指導を行うものとし,その場合,契約は継続分終了まで有効とする(付則(4))。 c 講師指導料の振込手数料は本件家庭教師の負担とし,また,指導報告書の提出を2か月遅滞した場合には,遅滞月の指導料を10%差し - 16 -引くものとする(付則(5))。 (4) 本件各課税期間の消費税等についての確定申告等本件各課税期間の消費税等についての確定申告,17年8月課税期間の消費税等の確定申告についての更正の請求及びこれに係る更正処分(以下「17年8月課税期間当初更正処分」という。)並びに18年8月課税期間の消費税等の確定申告についての更正の請求及びこれに係る更正処分(以下「18年8月課税期間当初更正処分」という。)の経緯は,それぞれ,別表A・第1表~第3表の各「確定申告」欄,第1表及び第2表の各「更正の請求」欄並びに第1表及び第2 請求及びこれに係る更正処分(以下「18年8月課税期間当初更正処分」という。)の経緯は,それぞれ,別表A・第1表~第3表の各「確定申告」欄,第1表及び第2表の各「更正の請求」欄並びに第1表及び第2表の各「当初行政処分」欄に記載されているとおりである。 (5) 課税処分の経緯ア本件各更正処分等,本件各更正処分等についての原告の異議申立て及びこれらに対する渋谷税務署長の決定,これらの決定を経た後の本件各更正処分等についての原告の審査請求及びこれに対する国税不服審判所長の裁決の経緯は,それぞれ,別表A・第1表~第3表の各「更正処分」欄,各「異議申立て」欄,各「異議決定」欄,各「審査請求」欄及び各「同上裁決」欄に記載されているとおりである。 イ本件各納税告知処分等,本件各納税告知処分等についての原告の異議申立て及びこれらに対する渋谷税務署長の決定,これらの決定を経た後の本件各納税告知処分等についての原告の審査請求及びこれに対する国税不服審判所長の裁決の経緯は,別表B及び別表Cに記載されているとおりである。 (6) 本件訴えの提起原告は,平成22年6月15日,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。 4 本件各処分の根拠及び適法性に関する被告の主張 - 17 -本件各処分の根拠及び適法性に関する被告の主張は,後記6に被告の主張の要点として掲げたもののほか,別紙2「本件各処分の根拠及び適法性に関する被告の主張」に記載したとおりである(なお,同別紙で定める略称等は,以下においても用いることとする。)。 5 争点(1) 本件各金員に係る所得が所得税法28条1項に規定する給与等に係る所得に該当するか否か(争点1)(2) 本件において通則法65条4項にいう「正当な理由」及び同法67条1項ただし書にいう (1) 本件各金員に係る所得が所得税法28条1項に規定する給与等に係る所得に該当するか否か(争点1)(2) 本件において通則法65条4項にいう「正当な理由」及び同法67条1項ただし書にいう「正当な理由」が認められるか否か(争点2) 6 争点に関する当事者の主張の要点別紙3「争点に関する当事者の主張の要点」に記載したとおりである(なお,同別紙で定める略称等は,以下においても用いることとする。)。 第3 当裁判所の判断 1 本件各金員に係る所得が所得税法28条1項に規定する給与等に係る所得に該当するか否か(争点1)について(1) 所得税法28条1項に規定する給与等に係る所得の意義についてア最高裁昭和56年判決は,業務の遂行ないし労務の提供(これらを併せて以下「労務の提供等」ともいう。)から生ずる所得が所得税法上の事業所得と給与所得のいずれに該当するかを判断するに当たっては,租税負担の公平を図るため,所得を事業所得,給与所得等に分類し,その種類に応じた課税を定めている所得税法の趣旨,目的に照らし,当該業務ないし労務及び所得の態様等を考察しなければならないなどとした上で,その「判断の一応の基準」として,「事業所得とは,自己の計算と危険において独立して営まれ,営利性,有償性を有し,かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいい,これに対し,給与所得とは雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命 - 18 -令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。なお,給与所得については,とりわけ,給与支給者との関係において何らかの空間的,時間的な拘束を受け,継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり,その対価として支給されるものであるかどうかが重視され お,給与所得については,とりわけ,給与支給者との関係において何らかの空間的,時間的な拘束を受け,継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり,その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない。」と判示している。すなわち,同判決は,労務の提供等から生ずる所得の給与所得該当性について,①そのような所得のうち「自己の計算と危険において独立して営まれ,営利性,有償性を有し,かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」を給与所得の範ちゅうから外した上で(これにより,労務の提供等が自己の計算と危険によらないものであること〔労務の提供等の非独立性〕が,給与所得該当性の判断要素として位置付けられることになる。),②労務の提供等から生ずる所得が「雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付」に当てはまるか否かを,当該労務の提供等の具体的態様に応じ,とりわけ「給与支給者との関係において何らかの空間的,時間的な拘束を受け,継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり,その対価として支給されるものであるかどうか」を重視して判断するという枠組みを提示したものであるが,同判決も明示しているとおり,そこに示されているのは,飽くまでも「判断の一応の基準」にとどまるものであって,業務の遂行ないし労務の提供から生ずる所得が給与所得に該当するための必要要件を示したものではない。 イところで,所得税法28条1項は,「給与所得とは,俸給,給料,賃金,歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与…に係る所得をいう。」と規定しているところ,このような同項の規定の内容や,同法に他に給与所得の概念を定義付ける規定が置かれていないことからすれば,同法の解釈にお 賞与並びにこれらの性質を有する給与…に係る所得をいう。」と規定しているところ,このような同項の規定の内容や,同法に他に給与所得の概念を定義付ける規定が置かれていないことからすれば,同法の解釈において,給与所得の概念は,元来,同項に例示されている「俸給」, - 19 -「給料」,「賃金」,「歳費」及び「賞与」といったものの性質から帰納的に把握するほかないものというべきであって,このことは,最高裁昭和56年判決も当然の前提としているものと解される。そして,同項は,上記のとおり,国会議員が国から受ける給与を意味する「歳費」(憲法49条)が給与所得に含まれることを明らかにしており,また,例えば,法人の役員が当該法人から受ける報酬及び賞与が給与所得に含まれることは特に異論がないところ,これらの者の労務の提供等は,自己の危険と計算によらない非独立的なものとはいい得ても,使用者の指揮命令に服してされたものであるとはいい難いものであって,労務の提供等が使用者の指揮命令を受けこれに服してされるものであること(労務の提供等の従属性)は,当該労務の提供等の対価が給与所得に該当するための必要要件とはいえないものというべきである。最高裁平成17年判決が,米国法人の子会社である日本法人の代表取締役が親会社である米国会社から付与されたいわゆるストックオプションを行使して得た利益を給与所得に当たると判断するに当たって,「雇用契約又はこれに類する原因に基づき提供された非独立的な労務の対価として給付されたものとして,所得税法28条1項所定の給与所得に当たる」との判示をしているのも,以上に述べたような考え方を前提としたものであると解される。 ウ所得税法28条1項に規定する給与等に係る所得の意義に関する原告の主張のうち以上と異なる部分は,上記のとおり所得税法28 ているのも,以上に述べたような考え方を前提としたものであると解される。 ウ所得税法28条1項に規定する給与等に係る所得の意義に関する原告の主張のうち以上と異なる部分は,上記のとおり所得税法28条1項が給与所得として列挙するものの中に使用者の指揮命令を受けこれに服してされるものとはいい難い労務の提供等から生ずる所得が含まれていることと整合しない上(なお,甲40には,「企業のトップや議員といえども,企業や国という組織から支払いを受け,その受給額は自己の都合に応じて労働量を増減し収入金額を左右することはできず,企業の規定や法律に基づき定められた金額を受領する,という特性を有して」おり,「その限りにお - 20 -いて『従属性』があ」るなどとする記述があるが〔甲40・1頁〕,その内容は,「労務の提供等が使用者の指揮命令を受けこれに服してされるものであること」という意味における「労務の提供等の従属性」〔原告においても,そのような意味において「従属性」の語を用いていることが明らかである。〕とは全く異質な内容を述べるものというほかないものであって,原告の主張に対する上記のような評価を左右するものではない。),労務の提供等から生ずる所得の給与所得該当性についての判断の一応の基準を示したものにとどまる最高裁昭和56年判決について,あたかも給与所得の必要要件を判示したものであるかのような前提に立って論を進めているものといわざるを得ないものであって,採用することができない(殊に,原告は,①給与所得該当性の判断に当たっては,「雇用契約ないしこれに類する原因」があるといえるか否か,「労務の対価」といえるか否かといった要件の判断に際して「従属性」があるか否かを判定しなければならない,②給与所得と雑所得との区別という点から「従属性」要件が必要とされる 因」があるといえるか否か,「労務の対価」といえるか否かといった要件の判断に際して「従属性」があるか否かを判定しなければならない,②給与所得と雑所得との区別という点から「従属性」要件が必要とされるなどと主張するのであるが,上記①の主張は,「給与所得とは雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう」との最高裁昭和56年判決の判示が給与所得該当性の判断の「一応の基準」にとどまるものであることを見過ごすとともに,所得税法28条1項の規定の内容を軽視するものといわざるを得ず,採用し難い。また,上記②の主張についても,そもそも,雑所得は,同法が規定する他の9つの所得の類型に該当しない所得を補充的に1つの所得の類型としたものであり,このような雑所得の概念自体に照らし,これと給与所得とを区別するために給与所得該当性について当然に原告の主張するような内容の要件を観念すべきことになるという筋合いのものではない上,上記のような最高裁昭和56年判決の位置付け及び同法28条1項の規定の内容に照らせば,労務の提供等の従属性が認 - 21 -め難い場合であっても,当該給与の受給者がその支給者との関係において何らかの空間的,時間的な拘束を受けているか等の諸要素を総合的に考慮した結果として,所得の原因となった法律関係が「雇用契約…に類する原因」に当たるものと評価されることがあり得るものと考えられることからすれば,やはり採用し難いところである。)。 (2) 本件各金員に係る所得の給与所得該当性についてア本件塾講師は,本件塾講師基本契約書の約定に従い,原告が発行した本件塾講師確認書で「業務従事先会社」とされた本件教育機関等において,同確認書に記載された「業務従事期間と条件」の下で講義 ア本件塾講師は,本件塾講師基本契約書の約定に従い,原告が発行した本件塾講師確認書で「業務従事先会社」とされた本件教育機関等において,同確認書に記載された「業務従事期間と条件」の下で講義等の業務に従事することにより,また,本件家庭教師は,本件各家庭教師契約書に定められた指導期間,指導回数,指導時間及び指導スケジュール等に従い,本件会員の子弟(生徒)の個人指導の業務に従事することにより,それぞれ,原告のために労務の提供等をするものである(前提事実(2)オ及び(3)オ,甲2,5,乙1の1・2)。そして,本件講師等は,原告から,上記の各契約において定められた講義等ないし個人指導のいわゆる「単価」(本件塾講師確認書の「業務従事期間と条件」欄中の「業務委託代金」欄,本件各家庭教師契約書の2条参照。以下「講義等の単価」という。)を基礎として,上記の各業務に従事した時間数に応じた額の金員(本件各金員)の支払を受ける(前提事実(2)オ(イ)及び(カ)並びに(3)オ(ア),甲5,乙1の1・2,8)。以上からすれば,本件各金員は,本件講師等が原告のために労務の提供等をしたことの対価としての性質を有するものであることが明らかというべきである。 イ(ア) 前記アのとおり,本件各金員は,講義等ないし個人指導の業務に従事した時間数に応じて支払われるものとされているところ,原告と本件講師等との間の契約に係る契約書等を見ても,本件講師等が個別の本件各顧客の下において上記の業務に従事している期間中において,講義等な - 22 -いし個別指導の内容の優劣,具体的な成果の程度,あるいは,原告が本件各顧客との間の契約に基づいて受領する金員(委託報酬)の額やその支払の有無により,本件各金員の額やその算定の基礎となる講義等の単価の額が増減するような定めは置か 的な成果の程度,あるいは,原告が本件各顧客との間の契約に基づいて受領する金員(委託報酬)の額やその支払の有無により,本件各金員の額やその算定の基礎となる講義等の単価の額が増減するような定めは置かれていない(前提事実(2)オ及び(3)オ,甲2,5,乙1の1・2,26)。すなわち,本件講師等は,その行った講義等ないし個別指導の内容の優劣,具体的な成果の程度,本件各顧客が原告に対して支払う委託報酬の額やその履行状況のいかんにかかわらず,原告から,講義等ないし個人指導の業務に従事した時間数に応じて本件各金員の支払を受けることができるものとされている。 (イ) ①本件塾講師は,本件教育機関等から業務の遂行及び原告に対する報告をするに当たり通常必要と認められる物を貸与されるとともに(前提事実(2)エ(オ)②及びオ(ケ)),原告から交通費の支払を受けるものとされており(ただし,原告は,本件教育機関等から,前記の委託報酬に加えて,本件塾講師の交通費相当額の支払を受けている。前提事実(2)エ(ウ)②及びオ(ウ),甲19,20,27,35,乙8),②また,本件家庭教師については,本件会員がその交通費を負担することとされ(前提事実(3)エ(エ),甲35),業務遂行に必要なテキストの引渡しも受けることとされている(前提事実(3)イ(イ),乙13)。③一方,原告と本件講師等との間の契約を見ても,本件講師等において,本件各金員の振込手数料及び事務手数料ないし本件講師証の代金1000円(原告と本件講師等が初めて契約を締結する場合のみ。)を負担すべきものとされているものの,本件講師等に対して当該契約に基づく義務を履行するための費用の負担を義務付ける趣旨の定めは見当たらない(前提事実(2)オ及び(3)オ,甲2,5,乙1の1・2,26)。これらの点からすれば, ものの,本件講師等に対して当該契約に基づく義務を履行するための費用の負担を義務付ける趣旨の定めは見当たらない(前提事実(2)オ及び(3)オ,甲2,5,乙1の1・2,26)。これらの点からすれば,本件講師等は,基本的には,その労務の提供等に当たって必要な費用を負担する義務を負っていないものというべきである。 - 23 -(ウ) 以上に鑑みれば,本件講師等による労務の提供等は,自己の計算と危険によるものとはいい難いものであって,非独立的なものと評価するのが相当である。 ウ(ア)a 前提事実(2)ウ及び(3)ウのとおり,原告のホームページ,パンフレット類等には,原告が,本件講師等ないしその希望者に対し,研修や指導を行っている旨の記載がされているところ,原告は,この点について,上記ホームページ等は,顧客へのいわゆるPR用となることも意図して作成したものであって,実態と異なる部分が多く,実際に原告が行っている内容を記載したものではないなどとした上で,本件講師等に対して,実際には何も研修,指導は行っていない旨主張し,E,F及びGの陳述書(甲32~34)及びこれらの者の証言にもこれに沿うような部分がある。 b しかし,原告は,本件訴えにおいて前記aのとおりの主張を続け,また,被告から,虚偽の事実をホームページ上に掲載することが種々の法令に違反する旨の指摘を受けている(被告準備書面(2)第2の2(2)・7頁以下参照)にもかかわらず,本件訴えの提起から約2年5か月が経過した平成24年11月の時点においてさえもなお,本件講師等ないしその希望者に対して研修,指導を行っている旨を原告のホームページ上に掲載し続けており(前提事実(2)ウ(エ)及び(オ)並びに(3)ウ(ア)~(ウ),乙33,34),原告においては,本件訴えの内と いしその希望者に対して研修,指導を行っている旨を原告のホームページ上に掲載し続けており(前提事実(2)ウ(エ)及び(オ)並びに(3)ウ(ア)~(ウ),乙33,34),原告においては,本件訴えの内と外とでその立場を使い分けているものと評するほかないものであって(上記のような訴え提起からの時間の経過のみならず,原告においては,既に,本件各更正処分等についての異議申立ての際の調査の過程において本件家庭教師に対する研修は行っていない旨の主張をしており,平成20年11月27日付けでされた同異議申立てに対する渋谷税務署長の決定中においても,前記aに指摘したようなホームページ - 24 -の記載が指摘されていたこと〔甲12〕や,平成24年11月の時点において原告のホームページに上記のような内容が掲載され続けていたことについて原告側から何ら合理的な説明がされていないことにも照らすと,上記のような事態が生じている原因が事務処理の遅れなどの単なる過誤にあるとは考え難いものというほかない。),上記のような原告の主張は,それ自体にわかに信用し難いものというほかない。 また,E,F及びGの陳述書(甲32~34)及びこれらの者の証言についても,これらの者の置かれている立場や,E及びFにおいては,確定申告書を確認しないまま,その陳述書には,本件各金員に係る所得を事業所得として所得税の確定申告をしているなどと実際の申告内容とは異なる内容の原告の主張に沿う記載をし(甲32,33,乙30の1・2,31の1・2,証人E,証人F),また,Gにおいても,原告のホームページには,上記のとおり実際には本件講師等ないしその希望者に対し研修や指導を行っている旨掲載されていたにもかかわらず,そのような記載は修正済みであるなどと証言していたことなどに鑑みれば,その陳述書及び証 は,上記のとおり実際には本件講師等ないしその希望者に対し研修や指導を行っている旨掲載されていたにもかかわらず,そのような記載は修正済みであるなどと証言していたことなどに鑑みれば,その陳述書及び証言の信用性を手放しに肯定することはできないものというべきである。 c ①前提事実(2)ウ及び(3)ウに掲げたような原告のホームページ,パンフレット類等の記載や②前記bにおいて検討したところに加えて,③原告が本件各顧客の要求に応えるためには,一定水準以上の本件講師等を数多く確保することが必要不可欠であると考えられるところ,原告のホームページ,パンフレット類等の記載(甲16,乙4の1・2,9,12の1・2,13,33,34)に照らせば,本件講師等ないしその希望者には,塾講師や家庭教師の経験がなかった者や,その経験が必ずしも十分でない者も含まれていることが前提とされていることが明らかであって,原告においては,そのような者に対して, - 25 -相応の研修ないし指導を行う必要性は高いものというべきこと,④原告と本件講師等との間の契約において,本件講師等は,原告に対し,その指定する様式及び方法により業務の遂行状況を報告することを義務付けられるとともに,研修内容(研修ノウハウ)を漏洩することが禁じられており,また,原告と本件家庭教師との間の契約には,上記の報告に係る書面を持参して研修を受けることを本件家庭教師の義務とする趣旨の定めも置かれていること(前提事実(2)オ(オ)b,(カ)及び(キ)a並びに(3)オ(ウ)f及び(エ)b),⑤原告においては,本件授業マニュアル(乙9)及び本件講師研修資料(乙13)を作成しているところ,その内容を見ると,授業や個人指導の方法やその注意点などが具体的かつ詳細に記載されていること,⑥本件アンケートを見 は,本件授業マニュアル(乙9)及び本件講師研修資料(乙13)を作成しているところ,その内容を見ると,授業や個人指導の方法やその注意点などが具体的かつ詳細に記載されていること,⑥本件アンケートを見ても,本件講師等の中には,原告において研修を受けたという趣旨の回答をした者もおり,当該研修の中には,原告のスタッフによって行われたものも含まれていること(甲46の1~4,証人G)などに鑑みれば,原告においては,本件講師等ないしその希望者に対し,研修や指導を受けることを義務付け,必要に応じてこれを行っているものと認めるのが相当である(なお,原告による本件アンケートによれば,ア登録会とは別に原告の営業所内で研修を受けたことがあるかとの質問については,「ある」と回答した者が17名,「ない」と回答した者が131名,無回答が7名であり,イ本件塾講師の経験者に向けた「授業マニュアル」と題する資料を受け取ったことがあるかとの質問については,「ある」と回答した者が34名,「ない」と回答した者が92名,無回答が29名であり,ウ本件家庭教師の経験者に向けた「講師研修資料」と題する資料を受け取ったことがあるかとの質問については,「ある」と回答した者が28名,「ない」と回答した者が51名,無回答が75名,その他の回答が1名であるとされる〔甲 - 26 -46の3〕。しかし,ⅰ本件アンケートの実施方式や回答者が本件講師等として活動していた時期と本件アンケートが実施された時期との間の時間的経過などに照らすと,本件アンケートについては,回答内容の正確性が必ずしも十分に担保されているとはいい難いこと,ⅱ有効回答率が26%〔平成15年以降に原告に登録し,原告のいう「業務委託契約」により本件講師等となったことのある593名のうち155名が回答〕にとどまる上,ⅲ 分に担保されているとはいい難いこと,ⅱ有効回答率が26%〔平成15年以降に原告に登録し,原告のいう「業務委託契約」により本件講師等となったことのある593名のうち155名が回答〕にとどまる上,ⅲ質問に対して「無回答」という対応がされている部分も多く見られること〔甲46の1~4〕に照らすと,前記ア~ウのような各回答の数の分布は,原告と本件講師等の間の法律関係を確定するに当たって有用な情報とはいい難いものというべきである。)。 (イ) 原告は,本件塾講師に対し,前記(ア)c③のとおり,原告の指定する様式及び方法により業務に従事した時間等の業務の遂行状況を報告することを義務付けるとともに,本件塾講師への指示・命令系統を有し(いわゆる代講の依頼についても,原告に対して事前に申告すべきものとされる。),講義の変更・中止などの連絡を行い,緊急の場合等の本件塾講師の「窓口」となるものとされている(前提事実(2)ウ(カ)及びオ(カ),甲16,乙4の1・2)。また,原告は,本件塾講師に対し,雇用条件の漏洩,契約期間中又は契約終了後3年以内の本件教育機関等との直接契約,契約期間満了前の辞任を禁ずる一方で,本件教育機関等から申出を受けた場合は,本件塾講師との契約を解除することができるものとされている(前提事実(2)オ(キ),(ク)及び(コ),甲2,6,乙1の1・2)。 さらに,原告と本件塾講師との間の契約においては,契約に定めのない事項につき両者の協議が整わない場合,本件塾講師は,原告の指示に従うべきものとされている(前提事実(2)オ(シ))。 (ウ) 原告は,本件家庭教師に対し,業務遂行期間中において,原告の講師 - 27 -であることを示す講師登録証の携帯及び訪問先における提示を求めている(乙13,15)。また,原告は,本件家庭教師に ) 原告は,本件家庭教師に対し,業務遂行期間中において,原告の講師 - 27 -であることを示す講師登録証の携帯及び訪問先における提示を求めている(乙13,15)。また,原告は,本件家庭教師に対し,前記(ア)c④のとおり,原告の指定する方法により業務遂行の状況を報告することや,その報告に係る書面を持参して研修を受けることを義務付けるほか,本件各処分に係る税務調査の際に原告側が調査担当者に対して本件家庭教師との間の契約に係る契約書として示した本件各家庭教師契約書(乙1の1・2)においては,本件家庭教師に対し,原告のマニュアルに沿って指導を遂行することを義務付ける定めが置かれている(前提事実(3)オ(ウ)f)。さらに,原告は,本件家庭教師に対し,委託条件等の漏洩,契約期間中又は契約終了後3年以内の本件会員との直接契約,原告に無断での業務内容の変更や辞任を禁じ,本件家庭教師においてやむをえず指導の交代等が必要となった場合には,原告に対して連絡をすることを要するものとされている(前提事実(3)ウ(オ),オ(エ)b~e)。 (エ) 以上に述べたところからすれば,本件講師等は,直接的又は少なくとも間接的に原告の監督下に置かれているものというべきである(なお,本件講師等による労務の提供等の性質に鑑みれば,その指導等の内容については一定の裁量が認められるものと解されるが,一般の雇用関係においても,提供される労務の専門性等の観点から労働者に一定の裁量が認められることはあり得るものというべきであって,この点は,上記の判断を左右するものではないというべきである。)。 エ原告と本件各顧客との間の契約及び原告と本件講師等の間の契約の各内容(前提事実(2)エ及びオ並びに(3)エ及びオ)に照らせば,少なくとも,本件教育機関等における講義や うべきである。)。 エ原告と本件各顧客との間の契約及び原告と本件講師等の間の契約の各内容(前提事実(2)エ及びオ並びに(3)エ及びオ)に照らせば,少なくとも,本件教育機関等における講義や本件会員の子弟と対面して行う個人指導の際には,基本的には,原告が本件各顧客との間の契約において定めた業務場所や業務時間数に従ってその労務の提供等をすべき義務を負うものというべきであり,また,このことを踏まえ,既に述べたとおり,本件講師等 - 28 -は,上記のような立場にある原告の指定する方法により原告に対して業務遂行の状況を報告すべき義務を負っているものであって,本件講師等は,以上のような意味において,原告から空間的,時間的な拘束を受けているものということができる。 オこれまで述べた事情を総合すれば,本件各金員は,雇用契約に類する原因に基づき提供された非独立的な労務の対価として給付されたものとして,それに係る所得は,所得税法28条1項所定の給与所得に当たるものというべきである。 (3) 原告の主張についてア原告は,最高裁平成13年判決は,りんご生産組合の組合員に支払われた金員が給与所得に該当するか否かの判断に際しては,支払の原因となった法律関係についての当事者の意思ないし認識を考慮すべき旨判示しているところ,原告と本件講師等の間の契約に係る契約書には「業務委託」との語が用いられていること,原告においては雇用契約を締結している従業員と本件講師等とで就業規則の適用等の点で明確に異なった取扱いをしていること,原告に対する過去の税務調査の内容及びこれに対する原告の対応などからすれば,原告及び本件講師等において,両者の間の契約関係が「雇用契約及びこれに類する原因」であるとの意思ないし認識であったとは考えられないなどと 去の税務調査の内容及びこれに対する原告の対応などからすれば,原告及び本件講師等において,両者の間の契約関係が「雇用契約及びこれに類する原因」であるとの意思ないし認識であったとは考えられないなどと主張する。 しかし,上記のような当事者の意思ないし認識が給与所得該当性を判断するための諸要素の1つとして位置付けられるにとどまることは,最高裁平成13年判決の判示から明らかというべきところ,これまで述べたところに照らせば,仮に原告及び本件講師等の主観的な意思ないし認識が原告主張のようなものであったとしても,その他の事情を総合すると,本件各金員に係る所得が所得税法28条1項所定の給与所得に当たるとの判断が左右されるとは解されないから,原告の上記主張は,採用することができ - 29 -ない。 イまた,原告は,①原告から業務の委託の打診を受けた本件講師等は,自由にその諾否を決定することができ,個別業務委託締結に際し,契約条件について交渉することもできること,②本件講師等は,業務の内容について原告から指示等を受けていないこと,③その業務遂行につき裁量が大きいこと,④本件講師等においては,本件各顧客と相談の上,業務に当たる時間及び場所を変更することが可能であることなどからすれば,本件講師等は原告との関係で空間的,時間的な拘束を受けてはいないというべきこと,⑤本件講師等が原告以外の者から業務を受託すること等に制約がないことから,原告と本件講師等の間に指揮命令関係は一切ないなどと主張する。 しかし,労務の提供等について基本となる契約とは別に個別の契約の締結をするものとされている場合においては,基本となる契約に特別の定めがあるときを除き,個別の契約の締結に際して契約の諾否を決定したり,契約条件につき交渉をしたりすることができることは,雇用 契約の締結をするものとされている場合においては,基本となる契約に特別の定めがあるときを除き,個別の契約の締結に際して契約の諾否を決定したり,契約条件につき交渉をしたりすることができることは,雇用契約における労働者においても同様であるから,上記①の点は,本件各金員に係る所得の給与所得該当性を否定する事情とはいい難いものというべきである。また,上記②の主張を採用することができないこと及び上記③の点が本件各金員に係る所得の給与所得該当性を否定するものではないことは,前記(2)ウにおいて述べたところに照らし明らかであり,上記④の点についても,原告の主張する事情をもって,前記(2)エにおいて述べた意味における空間的,時間的な拘束の存在を一切否定すべき事情とは評価し難いものというべきである。さらに,上記⑤の主張についても,本件講師等が原告との間の契約に基づいて行う労務の提供等における原告の本件講師等に対する監督関係を否定すべき事情を述べたものとは評価し難いものである。 以上のとおりであって,原告の上記主張は,採用することができない。 - 30 -ウさらに,原告は,①本件講師等は,その業務を遂行するための費用全部を負担していること,②本件講師等の授業等の単価は,個人の実績や経験を前提としたランク別に,個別の契約ごとに決定され,本件各金員は,誰がどの本件各顧客の業務をするかによってその額に大きな差異が生ずること,③本件各金員の額は,原告が受託元の本件各顧客から受領する委託報酬と連動していることからすれば,本件講師等は受託業務に関し独立性を有しているなどと主張する。 しかし,前記(2)イ(イ)のとおり,本件講師等は,交通費の支払を受けるとともに,その業務の遂行に必要な物の貸与ないしテキストの引渡しを受けるものとされている一方,業務の しているなどと主張する。 しかし,前記(2)イ(イ)のとおり,本件講師等は,交通費の支払を受けるとともに,その業務の遂行に必要な物の貸与ないしテキストの引渡しを受けるものとされている一方,業務の遂行に必要な費用の負担を契約上義務付けられているわけではない上,一般に,雇用契約における労働者が,その労務の提供に必要な一定の費用を支出することも少なからず見られるのであって,上記①の原告主張のとおり仮に本件講師等が事実上何らかの費用を支出していたとしても,本件の結論を左右するものとはいい難いというべきである。また,上記②の点についても,原告が本件講師等との間において新たに契約を締結するに際して講義等の単価を提示する際に考慮する要素を述べたものにすぎず,労務の提供等の非独立性についての判断を左右するものとはいえない。さらに,原告と本件講師等との間の契約において,原告が本件各顧客との間の契約に基づいて受領する金員(委託報酬)の額により,本件各金員の額やその算定の基礎となる講義等の単価の額が増減するような定めが置かれていないことは,前記(2)イ(ア)のとおりであって,上記③の主張は,その前提を欠くものというべきである。原告の上記主張は,採用することができない。 エ原告は,ある所得が給与所得に該当するといい得るためには,当該所得が,源泉徴収制度が予定している所得に該当するものでなればならないというべきところ,本件各金員は,給与所得に該当するか否かの判断に当た - 31 -って高度の事実認定を要するものであり,しかも,その判断は,認定された事実を評価する者によって異なるものであることからすれば,源泉徴収制度が予定している所得に該当しないことは明らかであるなどと主張する。 しかし,所得税法28条1項及び183条1項の規定によれば,ある者 実を評価する者によって異なるものであることからすれば,源泉徴収制度が予定している所得に該当しないことは明らかであるなどと主張する。 しかし,所得税法28条1項及び183条1項の規定によれば,ある者が支払を受けた金銭等に係る所得が同法28条1項に規定する給与所得に該当するものとされるのであれば,その支払をする者は,その支払の際,当該所得に係る所得税につき,当然に源泉徴収義務を負うこととなることが明らかであって,ある所得が給与所得に当たるか否かを判断するに際し源泉徴収手続が予定されているか否かを問題とすべしとする原告の上記主張は,いわば本末転倒な議論というほかなく,採用することができない。 2 本件において通則法65条4項にいう「正当な理由」及び同法67条1項ただし書にいう「正当な理由」が認められるか否か(争点2)について(1) 通則法65条4項及び67条1項にいう「正当な理由」とは,不納付又は過少申告が真に納税者の責めに帰すことのできない客観的事情がある場合をいい,納税者側の主観的な事情及び法の不知や誤解は含まれないものと解するのが相当である。 (2) この点,原告は,本件各処分に係る税務調査よりも前に行われた税務調査において,渋谷税務署の職員から,本件講師等に支払った本件各金員が事業所得に該当することを前提として本件講師等に確定申告を促すような施策をとるよう指導を受けた,すなわち,「業務委託契約」を締結している本件講師等については源泉徴収をする必要はない(本件各金員は給与所得には該当しない)との指導を受けたため,原告はこれを信頼し,源泉徴収を行っていなかったのであるから,通則法65条4項及び67条1項にいう「正当な理由」があるなどと主張する。 しかし,証拠(甲34,証人G)において述べられているところを前提としても,本件 源泉徴収を行っていなかったのであるから,通則法65条4項及び67条1項にいう「正当な理由」があるなどと主張する。 しかし,証拠(甲34,証人G)において述べられているところを前提としても,本件各処分に係る税務調査よりも前に行われた税務調査において, - 32 -渋谷税務署の職員が,原告に対し,「業務委託契約」を締結している本件講師等については源泉徴収をする必要はない(本件各金員に係る所得は給与所得には該当しない)との指導をしたものとは認め難く,上記の証拠において述べられているのは,当該職員から,本件講師等に対して支払う本件各金員について源泉徴収をしないというそれまでの原告における取扱いについては特段の指導がなく,原告において本件講師等に対して確定申告をすることを促す施策をとるようにとの指導を受けたという事実経過にすぎないのであって,そのような事実経過をもって,当該職員が,原告と本件講師等との間の契約の内容等を具体的に検討した上で,本件各金員に係る所得が事業所得に該当するとの判断を積極的に示したものとは到底評価することができず,上記指導が「本件各金員が事業所得に該当することを前提として」されたものであるとか,本件各金員に係る所得が給与所得には該当しないとの指導を受けたなどというのは,単なる原告の主観的な判断にすぎないものであることが明らかである。上記のような原告の主張は,その前提を欠くものというべきであって,採用することができない。そうすると,本件において通則法65条4項にいう「正当な理由」及び同法67条1項ただし書にいう「正当な理由」があるものと認めるべき事情については,立証がないものというべきである。 3 本件各処分の適法性についてこれまで述べたところ及び弁論の全趣旨によれば,①原告の本件各月分における納付すべき源泉 」があるものと認めるべき事情については,立証がないものというべきである。 3 本件各処分の適法性についてこれまで述べたところ及び弁論の全趣旨によれば,①原告の本件各月分における納付すべき源泉所得税の額及びこれらに係る不納付加算税の額,②原告の本件各課税期間に係る納付すべき消費税額及び地方消費税の譲渡割額並びにこれらに係る過少申告加算税の額は,別紙3「本件各処分の根拠及び適法性に関する被告の主張」のとおりであって,本件各処分におけるそれと同額又はその額を上回るものと認められる。したがって,本件各処分は,いずれも適法であるというべきである。 - 33 - 4 結論以上の次第であって,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官八木一洋 裁判官田中一彦 裁判官塚原洋一は,転補のため,署名押印をすることができない。 裁判長裁判官八木一洋 - 34 -(別紙1)関係法令の定め 1 所得税法の定め(1) 源泉徴収義務者所得税法6条は,同法28条1項に規定する給与等の支払をする者その他同法第4編第1章から第6章までに規定する支払をする者は,同法により,その支払に係る金額につき源泉徴収をする義務がある旨を定めている。 (2) 事業所得所得税法27条1項は,事業所得とは,農業,漁業,製造業,卸売業,小売業,サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう旨を定めている。 (3) 給与所得 業所得とは,農業,漁業,製造業,卸売業,小売業,サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう旨を定めている。 (3) 給与所得所得税法28条1項は,給与所得とは,俸給,給料,賃金,歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下「給与等」又は「所得税法28条1項に規定する給与等」ともいう。)に係る所得をいう旨を定めている。 (4) 源泉徴収義務所得税法183条1項は,居住者に対し国内において給与等の支払をする者は,その支払の際,その給与等について所得税を徴収し,その徴収の日の属する月の翌月10日までに,これを国に納付しなければならない旨を定めている。 2 消費税法の定め(1) 定義消費税法2条1項12号は,課税仕入れとは,事業者が,事業として他の者から資産を譲り受け,若しくは借り受け,又は役務の提供(所得税法28条1項に規定する給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けること - 35 -(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し,若しくは貸し付け,又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもので,消費税法7条1項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するもの及び同法8条1項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるもの以外のものに限る。)をいう旨を定めている。 (2) 仕入れに係る消費税額の控除ア消費税法30条1項は,事業者(同法9条1本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が,国内において行う課税仕入れ又は保税地域から引き取る課税貨物については,次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の属する課税期間の同法45条1項2号に掲げる課税標準額に対する消費税額( ,国内において行う課税仕入れ又は保税地域から引き取る課税貨物については,次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の属する課税期間の同法45条1項2号に掲げる課税標準額に対する消費税額(以下「課税標準額に対する消費税額」という。)から,当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額(当該課税仕入れに係る支払対価の額に105分の4を乗じて算出した金額をいう。)及び当該課税期間における保税地域からの引取りに係る課税貨物(他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)につき課された又は課されるべき消費税額(附帯税の額に相当する額を除く。)の合計額を控除する旨を定めている。 1号国内において課税仕入れを行った場合当該課税仕入れを行った日2号及び3号 (省略)イ消費税法30条6項(平成23年法律第82号による改正前のもの。以下同じ。)は,同条1項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額とは,課税仕入れの対価の額(対価として支払い,又は支払うべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし,当該課税仕入れに係る資産を譲り渡し,若しくは貸し付け,又は当該課税仕入れに係る役務を提供する事業者に課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標 - 36 -準として課されるべき地方消費税額〔これらの税額に係る附帯税の額に相当する額を除く。〕に相当する額がある場合には,当該相当する額を含む。)をいう旨などを定めている。 (3) 課税資産の譲渡等についての確定申告消費税法45条1項本文は,事業者(同法9条1項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)は,課税期間ごとに,当該課税期間の末日の翌日から2月以内に,同項各号に掲げる事項を記載した申告書を税務 項本文は,事業者(同法9条1項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)は,課税期間ごとに,当該課税期間の末日の翌日から2月以内に,同項各号に掲げる事項を記載した申告書を税務署長に提出しなければならない旨を定めている。 3 地方税法(平成23年法律第115号による改正前のもの。以下「地方税法」という。)の定め(1) 地方消費税に関する用語の意義地方税法72条の77第2号は,地方消費税について,譲渡割とは,消費税法45条1項4号に掲げる消費税額(課税標準額に対する消費税額から同項3号に掲げる消費税額の合計額を控除した残額に相当する消費税額)を課税標準として課する地方消費税をいう旨を定めている。 (2) 譲渡割の賦課徴収の特例等ア地方税法附則9条の4第1項前段は,譲渡割の賦課徴収は,当分の間,同法附則9条の10の規定を除くほか,同法第1章第2節から第14節まで,同法72条の84,同法72条の88第2項後段及び3項,同法72条の90,同法72条の93並びに同法72条の94の規定にかかわらず,国が,消費税の賦課徴収の例により,消費税の賦課徴収と併せて行うものとする旨を定めている。 イ地方税法附則9条の4第2項は,譲渡割に係る延滞税及び加算税(その賦課徴収について消費税の例によることとされる譲渡割について納付される延滞税及び課される加算税をいう。同法附則9条の9において同じ。)は,譲渡割として,同法附則9条の4から同法附則9条の16までの規定 - 37 -を適用する旨を定めている。 (3) 譲渡割の申告の特例地方税法附則9条の5前段は,譲渡割の申告は,当分の間,同法第1章第2節から第14節まで及び同法72条の89の規定にかかわらず,消費税の申告の例により,消費税の申告と併せて,税務署長にし 告の特例地方税法附則9条の5前段は,譲渡割の申告は,当分の間,同法第1章第2節から第14節まで及び同法72条の89の規定にかかわらず,消費税の申告の例により,消費税の申告と併せて,税務署長にしなければならない旨を定めている。 (4) 譲渡割の納付の特例等地方税法附則9条の6第1項前段は,譲渡割の納税義務者は,当分の間,同法第1章第2節から第14節まで及び72条の89の規定にかかわらず,譲渡割を,消費税の納付の例により,消費税の納付と併せて国に納付しなければならない旨を定めている。 (5) 譲渡割に係る処分に関する不服審査等の特例地方税法附則9条の11第1項前段は,同法附則9条の4第1項の規定により税務署長が消費税の賦課徴収の例により消費税と併せて賦課徴収を行う譲渡割に関する処分は,不服申立て及び訴訟については,国税に関する法律に基づく処分とみなして,国税通則法(以下「通則法」という。)第8章の規定を適用する旨を定めている。 4 通則法の定め(1) 過少申告加算税ア通則法65条1項は,期限内申告書(還付請求申告書を含む。)が提出された場合(期限後申告書が提出された場合において,同法66条1項ただし書又は6項の規定の適用があるときを含む。)において,修正申告書の提出又は更正があったときは,当該納税者に対し,その修正申告又は更正に基づき同法35条2項の規定により納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する旨を定めている。 - 38 -イ通則法65条4項は,同条1項又は2項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由がある 同条1項又は2項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合には,これらの項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して,これらの項の規定を適用する旨を定めている。 (2) 不納付加算税通則法67条1項は,源泉徴収による国税がその法定納期限までに完納されなかった場合には,税務署長は,当該納税者から,同法36条1項2号(源泉徴収による国税の納税の告知)の規定による納税の告知に係る税額又はその法定納期限後に当該告知を受けることなく納付された税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する不納付加算税を徴収するが(本文),当該告知又は納付に係る国税を法定納期限までに納付しなかったことについて正当な理由があると認められる場合は,この限りでない(ただし書)旨を定めている。 以上 - 39 -(別紙2)本件各処分の根拠及び適法性に関する被告の主張 第1 本件各納税告知処分の根拠及び適法性 1 本件各納税告知処分の根拠本件において被告が主張する原告の本件各月分における納付すべき源泉所得税額は,別表1の「(2)納付すべき税額」欄のとおりである。 (1) 原告が本件講師等に対して支出した本件各月分の本件各金員の金額は,別表1の「(1)課税対象額」欄に記載されたとおりである。そして,別紙3の第1の1において述べるとおり,本件各金員は,所得税法28条1項に規定する給与等に該当することから,原告は,同法183条1項の規定により,本件講師等に対し,本件各金員を支払う際,当該 して,別紙3の第1の1において述べるとおり,本件各金員は,所得税法28条1項に規定する給与等に該当することから,原告は,同法183条1項の規定により,本件講師等に対し,本件各金員を支払う際,当該各金額に係る所得税を徴収し,その徴収の日の属する月の翌月10日までに,これを国に納付しなければならない。 (2) 本件講師等は,平成15年~平成19年において,各年の最初に原告から給与等の支払を受ける日の前日までに,所得税法194条に規定する給与所得者の扶養控除等申告書を,原告を経由して納税地の所轄税務署長に提出していない。したがって,原告が,本件各金員について源泉徴収すべき所得税額は,①本件各金員のうち平成17年12月31日までに支払うべきものについては,経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律(平成17年法律第21号による改正前のもの)11条に規定するとおり同法別表第1の各乙欄を適用して算出した金額となり,②本件各金員のうち平成18年1月1日から同年12月31日までに支払うべきものについては,同法(平成18年法律第10号による廃止前のもの)11条に規定するとおり同法別表第1の各乙欄を適用して算出した金額となり,③平成19年1月1日以降に支払うべきものについては,所得税法 - 40 -185条1項2号イの規定により,同法別表第2の各乙欄を適用して算出した金額となる(別表1「(2)納付すべき税額」欄)。 2 本件各納税告知処分の適法性前記1で述べたとおり,本件において被告が主張する原告の本件各月分の納付すべき源泉所得税額は,別表1の「(2)納付すべき税額」欄の金額であるところ,これらの金額は,いずれも本件各納税告知処分の額(別表1「(4)納付すべき税額」欄)と同額又はその額を上回るから,本 納付すべき源泉所得税額は,別表1の「(2)納付すべき税額」欄の金額であるところ,これらの金額は,いずれも本件各納税告知処分の額(別表1「(4)納付すべき税額」欄)と同額又はその額を上回るから,本件各納税告知処分は,いずれも適法である。 第2 本件不納付加算税各賦課決定処分の根拠及び適法性前記第1で述べたとおり,本件各納税告知処分は適法であるところ,原告が納付すべき源泉所得税額を法定納期限までに納付しなかったことに,通則法67条1項ただし書に規定する「正当な理由」があったとは認められない。 したがって,原告に課されるべき不納付加算税の額は,本件各納税告知処分によって原告が新たに納付すべきこととなった本件各月分における納付すべき源泉所得税額(ただし,通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に100分の10の割合を乗じて算出した金額(別表1「(3)不納付加算税の額」欄)となり,この金額は,本件不納付加算税各賦課決定処分における不納付加算税の額(別表1「(5)不納付加算税の額」欄」)と同額であるから,本件不納付加算税各賦課決定処分は,いずれも適法である。 第3 本件各更正処分の根拠及び適法性 1 本件各更正処分の根拠本件において被告が主張する原告の本件各課税期間に係る消費税等の課税標準額及び納付すべき税額等は,以下のとおりである。 なお,前提事実(5)のとおり,原告は,17年8月課税期間の消費税等及び18年8月課税期間の消費税等につき,別表A・第1表及び第2表の各「更正 - 41 -の請求」欄のとおりそれぞれ更正の請求をし,渋谷税務署長は,同別表・第1表及び第2表の各「更正の請求を受けた更正処分」欄のとおり17年8月課税期間当初更正処分及び18年8月課税期間当初更正処分をした(以下,これらに それぞれ更正の請求をし,渋谷税務署長は,同別表・第1表及び第2表の各「更正の請求を受けた更正処分」欄のとおり17年8月課税期間当初更正処分及び18年8月課税期間当初更正処分をした(以下,これらに係る更正通知書を,それぞれ「17年8月課税期間当初更正通知書」,「18年8月課税期間当初更正通知書」という。)。 (1) 17年8月課税期間ア課税標準額(別表2(1)①欄) 5億0133万3000円上記金額は,17年8月課税期間当初更正通知書の「課税標準額」欄に記載された金額と同額である。 イ課税標準額に対する消費税額(別表2(1)②欄) 2005万3320円上記金額は,消費税法29条の規定により,前記アの金額に,100分の4の税率を乗じて算出した金額であり,17年8月課税期間当初更正通知書の「消費税額」欄に記載された金額と同額である。 ウ控除税額小計(別表2(1)⑤欄) 468万9232円上記金額は,次の(ア)及び(イ)の各金額の合計額である。 (ア) 控除対象仕入税額(別表2(1)③欄) 445万5598円上記金額は,消費税法30条1項の規定に基づき算出した金額であり,次のaの金額からbの金額を控除した後の金額1億1695万9461円(別表4(1)③欄)に105分の4を乗じて算出した金額である。 a 17年8月課税期間当初更正処分の額(別表4(1)①欄)3億4183万9471円上記金額は,17年8月課税期間当初更正通知書の「控除対象仕入税額」欄に記載された金額の算定の根拠となった課税仕入れに係る支払対価の額と同額である。 b 本件各金員の額(別表4(1)②欄) 2億2488万0010円 - 42 -上記金額は,上記aの金額のうち,本件各金員の額であ 根拠となった課税仕入れに係る支払対価の額と同額である。 b 本件各金員の額(別表4(1)②欄) 2億2488万0010円 - 42 -上記金額は,上記aの金額のうち,本件各金員の額であり,課税仕入れに係る支払対価の額に該当しない金額である。 その理由は,別紙3の第1の1のとおりである。 (イ) 貸倒れに係る税額(別表2(1)④欄) 23万3634円上記金額は,17年8月課税期間当初更正通知書の「貸倒れに係る税額」欄に記載された金額と同額であり,そのうち,旧税率3%に係る税額は,6万5385円である。 エ差引税額(別表2(1)⑥欄) 1536万4000円上記金額は,前記イの金額からウの金額を控除した後の金額(ただし,通則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)であり,17年8月課税期間の納付すべき消費税額である。 オ地方消費税の課税標準となる消費税額(別表2(1)⑦欄)1542万9400円上記金額は,地方税法72条の77第2号及び同法72条の82の規定に基づき,前記イの金額から前記ウの金額(ただし,旧税率3%に係る税額6万5385円〔前記ウ(イ)参照〕を除いた後のもの。)を控除した後の金額(ただし,通則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。 カ譲渡割額(別表2(1)⑧欄) 385万7300円上記金額は,地方税法72条の83の規定に基づき,前記オの金額に100分の25の税率を乗じて算出した金額(ただし,同法20条の4の2第3項の規定に基づき100円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)である。 (2) 18年8月課税期間ア課税標準額(別表2(2)①欄) 算出した金額(ただし,同法20条の4の2第3項の規定に基づき100円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)である。 (2) 18年8月課税期間ア課税標準額(別表2(2)①欄) 5億4902万0000円 - 43 -上記金額は,18年8月課税期間当初更正通知書の「課税標準額」欄に記載された課税標準額と同額である。 イ課税標準額に対する消費税額(別表2(2)②欄) 2196万0800円上記金額は,消費税法29条の規定により,前記アの金額に,100分の4の税率を乗じて算出した金額であり,18年8月課税期間当初更正通知書の「消費税額」欄に記載された金額と同額である。 ウ控除対象仕入税額(控除税額小計)(別表2(2)③及び⑤欄)488万3257円上記金額は,消費税法30条1項の規定に基づき算出した金額であり,次の(ア)の金額から(イ)の金額を控除した後の金額1億2818万5521円(別表4(2)③欄)に105分の4を乗じて算出した金額である。 (ア) 当初更正処分の額(別表4(2)①欄) 4億1946万3589円上記金額は,18年8月課税期間当初更正通知書の「控除対象仕入税額」欄に記載された金額の算定の根拠となった課税仕入れに係る支払対価の額と同額である。 (イ)本件各金員の額(別表4(2)②欄) 2億9127万8068円上記金額は,上記(ア)の金額のうち,本件各金員の額であり,課税仕入れに係る支払対価の額に該当しない金額である。 その理由は,別紙3の第1の1のとおりである。 エ差引税額(別表2(2)⑥欄) 1707万7500円上記金額は,前記イの金額から前記ウの金額を控除した後の金額であり,18年8月課税期間の納付すべき消費税額である。 オ エ差引税額(別表2(2)⑥欄) 1707万7500円上記金額は,前記イの金額から前記ウの金額を控除した後の金額であり,18年8月課税期間の納付すべき消費税額である。 オ地方消費税の課税標準となる消費税額(別表2(2)⑦欄)1707万7500円上記金額は,前記エの金額であり,地方税法72条の77第2号及び同法72条の82の規定に基づくものである。 - 44 -カ譲渡割額(別表2(2)⑧欄) 426万9300円上記金額は,地方税法72条の83に基づき,前記オの金額に100分の25の税率を乗じて算出した金額である。 (3) 19年8月課税期間ア課税標準額(別表2(3)①欄) 5億2621万9000円上記金額は,原告が平成19年10月31日付けで渋谷税務署長に提出した19年8月課税期間の消費税等の確定申告書(以下「19年8月課税期間申告書」という。)の「課税標準額」欄に記載された金額と同額である。 イ課税標準額に対する消費税額(別表2(3)②欄) 2104万8760円上記金額は,消費税法29条の規定により,前記アの金額に,100分の4の税率を乗じて算出した金額であり,19年8月課税期間申告書の「消費税額」欄に記載された金額と同額である。 ウ控除税額小計(別表2(3)⑤欄) 458万0607円上記金額は,次の(ア)及び(イ)の各金額の合計額である。 (ア) 控除対象仕入税額(別表2(3)③欄) 455万4838円上記金額は,消費税法30条1項の規定に基づき算出した金額であり,次のaの金額からbの金額を控除した後の金額1億1956万4510円(別表4(3)③欄)に105分の4を乗じて算出した金額である。 a 金額は,消費税法30条1項の規定に基づき算出した金額であり,次のaの金額からbの金額を控除した後の金額1億1956万4510円(別表4(3)③欄)に105分の4を乗じて算出した金額である。 a 申告額(別表4(3)①欄) 3億8571万4260円上記金額は,19年8月課税期間申告書に添付された付表2の「課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)」欄に記載された金額と同額である。 b 本件各金員の額(別表4(3)②欄) 2億6614万9750円上記金額は,上記aの金額のうち,本件各金員の額であり,課税仕 - 45 -入れに係る支払対価の額に該当しない金額である。 その理由は,別紙3の第1の1のとおりである。 (イ) 貸倒れに係る税額(別表2(3)④欄) 2万5769円上記金額は,19年8月課税期間申告書の「貸倒れに係る税額」欄に記載された金額と同額である。 エ差引税額(別表2(3)⑥欄) 1646万8100円上記金額は,前記イの金額から前記ウの金額を控除した後の金額であり,19年8月課税期間の納付すべき消費税額である。 オ地方消費税の課税標準となる消費税額(別表2(3)⑦欄)1646万8100円上記金額は,前記エの金額であり,地方税法72条の77第2号及び同法72条の82の規定に基づくものである。 カ譲渡割額(別表2(3)⑧欄) 411万7000円上記金額は,地方税法72条の83の規定に基づき,前記オの金額に税率100分の25を乗じて算出した金額である。 2 本件各更正処分の適法性前記1(1)~(3)で述べたとおり,本件において被告が主張する本件各課税期間における原告が新たに納付すべき消費税額及び地方消費税の譲渡割額は,次の た金額である。 2 本件各更正処分の適法性前記1(1)~(3)で述べたとおり,本件において被告が主張する本件各課税期間における原告が新たに納付すべき消費税額及び地方消費税の譲渡割額は,次の(1)~(3)のとおりであり,これらの金額は,いずれも本件各更正処分における原告の納付すべき消費税額及び地方消費税の譲渡割額(別表3(1)ないし(3)の各①及び②欄)と同額又はこれを上回るから,本件各更正処分は,いずれも適法である。 (1) 17年8月課税期間納付すべき消費税額 1536万4000円納付すべき地方消費税の譲渡割額 385万7300円(2) 18年8月課税期間 - 46 -納付すべき消費税額 1707万7500円納付すべき地方消費税の譲渡割額 426万9300円(3) 19年8月課税期間納付すべき税額 1646万8100円納付すべき地方消費税の譲渡割額 411万7000円第4 本件各賦課決定処分の根拠及び適法性 1 本件各賦課決定処分の根拠前記第3の2で述べたとおり,本件各更正処分はいずれも適法であるところ,本件各更正処分により新たに納付すべき消費税等の額の計算の基礎となった事実について,原告がこれを計算の基礎としなかったことに,通則法65条4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。 したがって,本件各課税期間における原告に課されるべき過少申告加算税の額は,それぞれ以下のとおりである。 (1) 17年8月課税期間(別表2(1)⑨欄) 115万0000円上記金額は,通則法65条1及び2項,地方税法附則9条の4第2項,並びに同附則9条の それぞれ以下のとおりである。 (1) 17年8月課税期間(別表2(1)⑨欄) 115万0000円上記金額は,通則法65条1及び2項,地方税法附則9条の4第2項,並びに同附則9条の9第1及び3項の規定に基づき,17年8月課税期間更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった消費税等の額1065万円(当該更正処分による納付すべき消費税等の額1916万5700円〔別表Aの第1表参照〕のうち17年8月課税期間当初更正通知書における納付すべき消費税等の額851万2800円〔別表Aの第1表参照〕を超える部分。ただし,通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。)に対して100分の10の割合を乗じて算出した金額106万5000円と,1万円未満の端数金額を切り捨てる前の新たに納付すべき消費税等の額1065万2900円のうち17年8月課税期間に係る期限内申告税額に相当する金額894万4000円(別表Aの第1表参照)を超える部分の金額170万円(ただし,同法118条3項の規定に基づき - 47 -1万円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。)に100分の5の割合を乗じて算出した金額8万5000円との合計額である。 (2) 18年8月課税期間(別表2(2)⑨欄) 168万1000円上記金額は,通則法65条1及び2項,地方税法附則9条の4第2項,並びに同附則9条の9第1及び3項の規定に基づき,18年8月課税期間更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった消費税等の額1385万円(当該更正処分による納付すべき消費税等の額2133万2000円〔別表Aの第2表参照〕のうち18年8月課税期間当初更正通知書における納付すべき消費税等の額747万6500円〔別表Aの第2表参照〕を超える部分。ただ よる納付すべき消費税等の額2133万2000円〔別表Aの第2表参照〕のうち18年8月課税期間当初更正通知書における納付すべき消費税等の額747万6500円〔別表Aの第2表参照〕を超える部分。ただし,通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。)に対して100分の10の割合を乗じて算出した金額138万5000円と,1万円未満の端数金額を切り捨てる前の新たに納付すべき消費税等の額1385万5500円のうち18年8月課税期間に係る期限内申告税額に相当する金額793万4700円(別表Aの第2表参照)を超える部分の金額592万円(ただし,同法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。)に100分の5の割合を乗じて算出した金額29万6000円との合計額である。 (3) 19年8月課税期間(別表2(3)⑨欄) 150万5000円上記金額は,通則法65条1及び2項,地方税法附則9条の4第2項,並びに同附則9条の9第1及び3項の規定に基づき,19年8月課税期間更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった消費税等の額1267万円(当該更正処分による納付すべき消費税等の額2058万5100円〔裁決により一部取り消された後のもの。別表Aの第3表参照〕のうち期限内申告納税額791万1300円〔別表Aの第3表参照〕を超える部分。ただし,通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。)に対して100分の10の割合を乗じて算出した金額126万70 - 48 -00円と,1万円未満の端数金額を切り捨てる前の新たに納付すべき消費税等の額1267万3800円のうち19年8月課税期間に係る期限内申告税額に相当する金額791万1300円(別表Aの第3表参照)を超える 円と,1万円未満の端数金額を切り捨てる前の新たに納付すべき消費税等の額1267万3800円のうち19年8月課税期間に係る期限内申告税額に相当する金額791万1300円(別表Aの第3表参照)を超える部分の金額476万円(ただし,同法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。)に100分の5の割合を乗じて算出した金額23万8000円との合計額である。 2 本件各賦課決定処分の適法性本件において被告が主張する本件各課税期間の消費税等に係る過少申告加算税の額は,前記1で述べたとおり,それぞれ,17年8月課税期間につき115万0000円,18年8月課税期間につき168万1000円,19年8月課税期間につき150万5000円であるところ,これらの金額は,いずれも本件各賦課決定処分における過少申告加算税の額(別表3(1)ないし(3)各③欄)と同額であるから,本件各賦課決定処分は,いずれも適法である。 以上 - 49 -(別紙3)争点に関する当事者の主張の要点 第1 本件各金員に係る所得が所得税法28条1項に規定する給与等に係る所得に該当するか否か(争点1)について 1 被告の主張の要点(1) 給与所得の意義と給与所得該当性の判断基準ア給与所得の意義所得税法28条1項の規定内容からすると,そこに給与等として例示されたものの性質から帰納的に給与所得の概念が把握されることになるというべきところ,給与所得については,一応「個人の非独立的ないし従属的な勤労(人的役務提供)の対価としての性質をもった所得」と定義できると解されており,雇用関係に基づいて被用者が労務提供の対価として雇用主から受ける報酬に限らず,それより広く一定の勤務関係に基づいて受ける報酬(会社との間で委任関係にある役員が った所得」と定義できると解されており,雇用関係に基づいて被用者が労務提供の対価として雇用主から受ける報酬に限らず,それより広く一定の勤務関係に基づいて受ける報酬(会社との間で委任関係にある役員が会社から受ける報酬,国会議員が受ける歳費等)もその範囲に含まれている。 イ給与所得と事業所得との区別人的役務の提供から生ずる所得には,給与所得のほかにも事業所得(場合によっては雑所得)があるところ,給与所得は,非独立的ないし従属的な勤労の対価という性質を有しているのに対し,事業所得は,自己の計算と危険において行われる業務の対価という性質を有しており,両者は,対照概念をなしている。これらの間には,判別の難しい領域があることからすると,人的役務の提供から生ずる所得が給与所得に該当するか否かを判断するに当たっては,その対照概念としての事業所得(場合によっては雑所得)の意義をも踏まえて,当該役務の内容を考察すべきである。 そして,最高裁昭和52年(行ツ)第12号同56年4月24日第二小 - 50 -法廷判決・民集35巻3号672頁(以下「最高裁昭和56年判決」という。)は,給与所得と事業所得の区別について,「判断の一応の基準」であると断った上で,事業所得が,「自己の計算と危険において独立して営まれ,営利性,有償性を有し,かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」であるのに対し,給与所得は,「雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付」であるとし,さらに,給与所得については,「給与支払者との関係において何らかの空間的,時間的な拘束を受け,継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり,その対価として支給されるものであるかどう 付」であるとし,さらに,給与所得については,「給与支払者との関係において何らかの空間的,時間的な拘束を受け,継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり,その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない。」と判示している。各種の人的役務の提供の対価が給与所得か事業所得かいずれに該当するかについては,上記判示を参照しつつ,具体的な役務提供契約の種々の側面を考慮して判断しなければならない。 ウ給与所得該当性の判断基準(ア) 最高裁昭和56年判決と平成17年の最高裁判決前記イのとおり,最高裁昭和56年判決は,給与所得該当性の判断基準を,いわゆる従属的な労働提供の対価か否かに加えて,非独立的な労務提供の対価か否かも判断基準となる旨を示し,従属性ないし非独立性をその判断要素としているところ,これらの各判断要素がいずれも給与所得該当性の判断に当たって不可欠な要素であるのか,また,両者が判断要素として等しい重要性を有するのかといった点についてまでは,同判決は明らかにしていないと解される。 ところで,外国親会社から日本子会社の代表取締役に付与されたいわゆるストックオプションを行使して得られた権利行使益の所得区分が争点となった最高裁平成16年(行ヒ)第141号同17年1月25日第三小法廷判決・民集59巻1号64頁(以下「最高裁平成17年判決」 - 51 -という。)は,「本件権利行使益は,雇用契約又はこれに類する原因に基づき提供された非独立的な労務の対価として給付されたものとして,所得税法28条1項所定の給与所得に当たる」と判断している。会社の代表取締役は,その提供する労務の従属性が希薄であるといわざるを得ないが,その報酬が給与所得に該当することに争いはないところ,同判決の判示内容に照らせば,従属性 所得に当たる」と判断している。会社の代表取締役は,その提供する労務の従属性が希薄であるといわざるを得ないが,その報酬が給与所得に該当することに争いはないところ,同判決の判示内容に照らせば,従属性よりも非独立性が給与所得該当性の基本的な判断要素であるものと考えられる(最高裁判所判例解説民事篇平成17年度(上)・56頁参照)。 (イ) 従属性と非独立性の関係a 最高裁昭和56年判決でいう従属性とは,「時間的,空間的拘束を受け」「他人の指揮監督に服する」ことを典型例とする,労務提供の態様に関する基準であると理解することができる。このような従属性の基準に該当する事実は,これが認められる場合には給与所得該当性を外形的に判断することが可能であるため,事案によっては,所得が給与所得と判断される重要な要素となり得る。すなわち,従属性は,それが明瞭であればそこでの支払等が給与所得に該当するという結論を導きやすくなり,また,従属性を示す事実である,時間的,空間的な拘束や指揮命令に服するなどの労務提供の具体的態様は,そこで行われている労務提供とその対価の支払という経済活動が労務提供者から見て独立的に行われていないことを明らかに表す指標としての性格を有していると考えられることから,従属性の要素が強く認められる場合,その労務の非独立性が推認される(最高裁平成12年(行ツ)第13号同13年7月13日第二小法廷判決・裁判集民事202号673頁〔以下「最高裁平成13年判決」という。〕参照)。その意味で,従属性それ自体は,給与所得該当性の判断要素としては,重要な要素ではあるが,後述のとおり,従属性が希薄であることをもって, - 52 -給与所得該当性を否定すべきではない。 b 最高裁昭和56年判決でいう非独立性とは,「自己の計算と危険 要な要素ではあるが,後述のとおり,従属性が希薄であることをもって, - 52 -給与所得該当性を否定すべきではない。 b 最高裁昭和56年判決でいう非独立性とは,「自己の計算と危険において営まれていないこと」という意味で用いられていると考えられる。「自己の計算と危険」による経済活動であれば,収入の有無やその金額の増減についての危険を当該納税者が負担することになるから,これは収入の稼得態様に係わる判断基準であるといえる。 例えば,①京都地方裁判所昭和56年3月6日判決・行政事件裁判例集32巻3号342頁(甲22)は,私立大学教授が他大学から得た非常勤講師料につき,あらかじめ定められた内容の労務を提供している限り,その具体的な内容によって収入が増減する危険を受領者が負担していないという事実関係を前提に,給与所得該当性を認め(この判断は,控訴審である大阪高裁昭和57年11月18日判決・行政事件裁判例集33巻11号2316頁〔甲21〕においても維持され,控訴審において判決が確定している。これらの判決を総称して「私立大学非常勤講師事件判決」という。),②また,神戸地方裁判所平成元年5月22日判決・税務訴訟資料170号315頁(乙20。以下「医大教授指導料事件判決」という。)は,病院が医大の教授に指導料名目で支払った金員につき,同教授が1か月に数回程度,医療法人の経営する病院を訪問して指示,指導等を与えていたが,これらの指示,指導等は電話でもされていたという上記①の事案と比較しても従属性が相当希薄と考えられる事案において,提供した労務に係る成果や不利益の帰属という非独立性に係る事情を主要な判断要素として,給与所得該当性を認めている。 c 以上のとおり,従属性と非独立性とは異なる内容を持つ基準であり,従属性は,外 務に係る成果や不利益の帰属という非独立性に係る事情を主要な判断要素として,給与所得該当性を認めている。 c 以上のとおり,従属性と非独立性とは異なる内容を持つ基準であり,従属性は,外形的に判断することが可能な給与所得該当性の判断要素ではあるものの,従属性が希薄であることから直ちに給与所得に該当 - 53 -しないことになるのではなく,従属性が希薄な場合であっても,非独立性が明らかであれば給与所得と判断するのが相当である。 (2) 本件各金員の給与所得該当性についてア本件講師等の役務提供には非独立性が認められること(ア) 本件講師等は自己の計算と危険により役務を提供しているとはいえないことa 本件塾講師は,本件塾講師基本契約書の約定に基づき,原告が発行した本件塾講師確認書で指示を受けた本件教育機関等において,特定の時限に講義を行い,また,本件家庭教師は,本件各家庭教師契約書で決められた指導期間,指導回数,指導時間及び指導スケジュール等に基づき,特定の場所で特定の時限に個人指導の業務に従事する。そして,本件講師等に支払われる金員の額は,指導の成果の程度や講義内容の優劣によって増減せず,従事した時間に応じて支払われるものであって,本件各顧客が原告に支払う金員の額とも直接的な関係はない。したがって,本件講師等は,収入の有無や金額の増減についての危険を負担することはなく,本件各金員は,本件講師等の計算と危険によらない非独立的に提供される労務の対価であるというべきである。 b 他方,本件教育機関等が原告に対して本件塾講師の労務の提供につき支払う金員は,原告と本件教育機関等との間で締結される本件登録規約によって決定され,また,本件登録規約には,派遣される講師名の記載がなく,契約に基づく危険 が原告に対して本件塾講師の労務の提供につき支払う金員は,原告と本件教育機関等との間で締結される本件登録規約によって決定され,また,本件登録規約には,派遣される講師名の記載がなく,契約に基づく危険は原告と本件教育機関等が条件に応じて負担することとされており,本件各顧客の債務不履行による危険は原告が負う。さらに,本件塾講師は,原告との契約に基づき本件教育機関等において労務を提供するが,原告との契約に基づいて労務の対価を得るだけであって,本件塾講師の労務の提供のレベルに応じて本件教育機関等の満足度が変動することにより,本件教育機関等が支 - 54 -払う委託報酬が改訂されたとしても,報酬額の増減による利益ないし負担は原告に帰属することになるのであって,本件塾講師がその労務の提供により本件教育機関等から直接に利益を得たり損失を被ったりすることはない。 c 前記a及びbで述べたことは,本件家庭教師の労務の提供に対する金員の支払においても同様であり,本件家庭教師は,原告との契約に基づき本件会員の指定する場所で労務を提供するが,その労務の提供により本件会員から得られる収入ないし所得は全て原告に帰属し,本件家庭教師は原告との契約に基づく労務の対価を得るだけであり,その対価が指導の成果の程度により増減するものではない。 d 以上のとおり,本件講師等は,自己の計算と危険により労務提供を行うものではなく,その役務提供に非独立性が認められることは明らかである。 (イ) 本件講師等は業務の遂行上必要な費用を基本的に負担していないこと本件塾講師は,本件教育機関等ないし原告との契約において,その業務の遂行等に当たり,通常必要と認められる物を本件教育機関等から貸与され,交通費も原告から支給されることとなっ こと本件塾講師は,本件教育機関等ないし原告との契約において,その業務の遂行等に当たり,通常必要と認められる物を本件教育機関等から貸与され,交通費も原告から支給されることとなっており,また,本件家庭教師も同様に,本件会員ないし原告との契約において,その業務の遂行に必要なテキストの引渡しと交通費の支給を受けることとなっている。 そして,原告において行った本件講師等に対するアンケート(甲46の1~4参照)の集計結果(このアンケートないしその集計結果を以下「本件アンケート」という。)においても費用負担に関する質問に回答した本件講師等の37名が何らの必要経費も要していないとしており(甲46の3・Q24・8頁),本件講師等は,業務の遂行上必要な費用を基本的に負担していないものというべきである。 イ本件講師等の役務提供には従属性をも肯定できること - 55 -(ア) 本件講師等は原告の指揮監督に服していることa 業務遂行に当たり,本件講師等は直接又は間接に原告の指揮監督を受けていること(a) 原告は,本件塾講師を登録管理し,本件教育機関等に本件塾講師を送る際には,本件塾講師に対し,模擬授業などの研修を行い,本件教育機関等の面接を受けさせ,原告との契約において業務を行う場所や時間を指定する。また,原告は,本件塾講師が本件教育機関等において業務を遂行している間も,原告の指定する様式,指定する方法により業務に従事した時間を報告することを義務付け,講義の変更・中止などがあった場合はその内容の指示連絡を行うこととしている。さらに,原告は,本件塾講師に対し,雇用条件,研修内容等の漏洩や本件教育機関等との契約終了後3年間の直接契約,業務内容の変更及び契約期間満了前の辞任を 場合はその内容の指示連絡を行うこととしている。さらに,原告は,本件塾講師に対し,雇用条件,研修内容等の漏洩や本件教育機関等との契約終了後3年間の直接契約,業務内容の変更及び契約期間満了前の辞任を禁止する一方,原告は,本件教育機関等から申出を受けた場合,本件塾講師との契約を解除できることとしている。 (b) また,原告は,本件家庭教師についても,登録管理し,本件会員に本件家庭教師を送る際には研修を行い,本件会員の面接を受けさせ,業務を行う場所や時間を指定する。また,原告は,本件家庭教師に対し,業務遂行期間中において,原告の講師であることを示す講師登録証の携帯及び訪問先での提示を指示し,原告の指定する方法により業務遂行の状況を報告することを義務付け,その報告書を持参させて研修を行うこととしているとともに,委託条件,研修ノウハウの漏洩,契約期間中の辞任を禁止するなど,その契約内容は本件塾講師とおおむね同様のものとなっており,前記(a)で述べた事情は,本件家庭教師にも当てはまる。 (c) なお,本件各顧客から原告に対して学習指導,個人指導等の業務 - 56 -の依頼があった場合に,原告と本件各顧客との契約に対応して原告と本件講師等との契約が締結されることから,本件講師等には,その業務時間や業務場所について裁量の余地はなく,包括的に諾否を選択するしかないのであって,上記契約の締結に当たって,本件講師等に諾否の自由があるか否かは,当該契約に基づく本件各金員の給与所得該当性の判断には関係がない。その点をおくとしても,原告が本件講師等に支給する報酬の単価は,原告から提示され,本件講師等は原告の提示する条件を包括的に受託するか否かを選択するしかないものである(このことは,証人Fの証言からもうかがえるところ も,原告が本件講師等に支給する報酬の単価は,原告から提示され,本件講師等は原告の提示する条件を包括的に受託するか否かを選択するしかないものである(このことは,証人Fの証言からもうかがえるところである。)。 (d) 以上のとおり,本件講師等は,直接又は間接に原告の指揮監督を受け,原告から派遣された講師又は家庭教師として,原告の業務に従事し原告に対して役務の提供をしているのであって,本件講師等は,原告に従属して,その役務提供の対価として本件各金員を受けているものというべきである。 b 原告が本件講師等に対して研修,指導を行っていること(a) 原告は,本件講師等の業務遂行に当たり,種々の機会を捉え研修を行い,また,本件各顧客の要望に応じて本件講師等を指導している。すなわち,原告は,本件塾講師の登録時又は講師候補者となったときに研修を行い,講師としての必要な心構えやノウハウを指導することとしている。また,本件各家庭教師契約書4条5項では,契約上も研修を受けることが本件講師等の義務とされている。 原告は,「民間教育機関及び公的教育機関への授業及び講座の請負業務」,「受験生を対象とする訪問指導」,「学習塾の経営」などの業を行うことを目的としているところ,本件各顧客の要求に応えるためには,一定の水準の講師等を育成しなければならないのは, - 57 -当然の理であり,常に技能向上のために研修が必要であるし,講師のレベルに応じた指導も必要不可欠である。 (b) この点,原告は,原告のホームページ等は,本件各処分に係る事業年度以前に顧客へのPR用となることも意図して作成したものであり,処分年次の実態と異なる部分が多く,実際に原告が行っている内容を記載したものではないと述べた上で,本件講師等に対して 各処分に係る事業年度以前に顧客へのPR用となることも意図して作成したものであり,処分年次の実態と異なる部分が多く,実際に原告が行っている内容を記載したものではないと述べた上で,本件講師等に対して,実際には何も研修,指導は行っていない旨主張し,証人E,証人F及び証人Gの各証言にも,これに沿う部分がある。 しかし,原告の上記主張は,原告と本件講師等との間の契約書で研修を行うことが定められていること,本件講師等に対して原告が研修を施している旨のホームページの掲載が現在も変更されていないこと,本件アンケートにおいて本件講師等が研修を受けたと回答していること等と矛盾する上,上記3名の証言もこれらの者の立場等に照らし直ちに信用し難いものというべきことに照らし,採用し難いものというべきである。 (イ) 本件講師等は原告との関係において空間的,時間的に拘束を受けていることa 本件塾講師が業務を行う時間や場所は,本件教育機関等の事情により決定されるところ,本件塾講師は,本件教育機関等から当該業務を受託した原告との契約に基づいて,原告から指定された業務時間や業務場所において業務に従事することになるのであるから,その業務時間や業務場所の決定について裁量がない。また,本件塾講師は,月末までの業務遂行の状況について,翌月1日までに,原告に報告することが義務付けられている。 b 本件家庭教師も同様に,業務を行う時間や場所は,本件会員の事情により決定されるところ,本件家庭教師は,本件会員から当該業務を - 58 -受託した原告との契約に基づいて,原告から指定された業務時間や業務場所において業務に従事することとなるのであるから,その業務時間や業務場所の決定について裁量がない。また,本件家庭教師は,月末までの業務遂 た原告との契約に基づいて,原告から指定された業務時間や業務場所において業務に従事することとなるのであるから,その業務時間や業務場所の決定について裁量がない。また,本件家庭教師は,月末までの業務遂行の状況について,翌月3日までに,原告に報告することが義務付けられ,報告遅滞の場合には指導料が減額されるおそれもある。 c 原告は,このような契約に基づき,本件講師等の業務従事状況及び時間を管理しているのであり,本件講師等は原告との関係において空間的,時間的に拘束を受けていることは明らかである。 (ウ) 本件講師等において自らの判断で代行者を立てることは許されないことa 労働に従事するのが誰であるかを特定することは,「労働に従事する」ことを目的とする雇用契約においては重要な要素であるのに対し,「仕事の完成」を目的とする請負契約では重要な要素ではない。民法625条2項は,このような雇用関係の人的関係としての特質を受けて,「労働者は,使用者の承諾を得なければ,自己に代わって第三者を労働に従事させることができない」と規定しているものであって,役務提供者の代替性がないことは,役務提供に対する対価の給与所得該当性を肯定する一つの重要な要素であるb 原告は,本件塾講師について,登録制度を設け,面接,研修等を行い,講師候補者を選定し,本件教育機関等の面接を経た上で,業務に従事する本件塾講師を特定する。そして,本件塾講師は,業務に従事する期間,原則,辞任することはできないとされており,本件塾講師による代講の依頼は,原告に対してしなければならないとされている。 また,原告は,本件家庭教師についても同様に,登録制度を設け,家庭教師候補者を選定し,研修等を行い,本件会員の面接を経 の依頼は,原告に対してしなければならないとされている。 また,原告は,本件家庭教師についても同様に,登録制度を設け,家庭教師候補者を選定し,研修等を行い,本件会員の面接を経た上で, - 59 -業務に従事する本件家庭教師を特定する。そして,本件家庭教師は,契約締結後,原則,辞任することはできないとされており,本件家庭教師がやむを得ない事情により臨時の変更をしたいときには,原告に連絡した上で,行わなければならないとされている。 以上のとおり,原告と本件講師等との契約関係では,本件講師等が自分だけの判断により代行者に役務提供を行わせることは許容されておらず,本件講師等には代替性がないのであり,この点からも,本件講師等の役務提供の従属性が根拠付けられる。 ウまとめ以上のとおり,①本件講師等は自己の計算と危険により役務提供しているとはいえないこと,②本件講師等は業務の遂行上必要な費用を基本的に負担していないこと,③本件講師等は原告の指揮監督に服していると認められること,④本件講師等は原告との関係において空間的,時間的な拘束を受けていること,⑤本件講師等は自らの判断で代行者を立てることは許されないことを併せ考えると,原告と本件講師等との間の契約は,「雇用契約及びこれに類する原因」に該当するものというべきであり,原告から本件講師等に支払われる本件各金員は,本件講師等が原告に対して提供した非独立的ないし従属的な労働の対価として支払われたものというべきである。したがって,本件各金員に係る所得は,所得税法28条1項に規定する給与等に係る所得(給与所得)該当する。 2 原告の主張の要点(1) 所得税法28条1項が定める給与所得の意義及び判断基準ア最高裁昭和56年判決の意義所得税法28条1項は, 規定する給与等に係る所得(給与所得)該当する。 2 原告の主張の要点(1) 所得税法28条1項が定める給与所得の意義及び判断基準ア最高裁昭和56年判決の意義所得税法28条1項は,「給与所得」について「棒給,給料,賃金,歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与」と給与の例示を列挙するのみで,その実質的な定義を与えていないところ,最高裁昭和56年判決 - 60 -は,「給与所得」の意義について,「給与所得とは雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。なお,給与所得については,とりわけ,給与支給者との関係において何らかの空間的,時間的な拘束を受け,継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり,その対価として支給されるものであるかどうかか重視されなければならない。」と判示している。 これを本件についてみると,後に述べるとおり,①本件各金員は,雇用契約又はこれに類する原因に基づくものではないこと,②本件講師等は原告の指揮監督に服していないこと,③本件講師等は原告との関係において空間的,時間的な拘束を受けていないことからすれば,本件講師等が原告から支払を受けた本件各金員が給与所得に該当しないことが明らかである。 イ最高裁平成17年判決について最高裁平成17年判決は,米国法人の子会社である日本法人の代表取締役が,親会社である米国法人から付与されたいわゆるストックオプションを行使して得た利益について,雇用契約又はこれに類する原因に基づき提供された非独立的な労務の対価として給付されたものであるから所得税法28条1項所定の給与所得に該当すると判示したものであるが,所得税法28条1項の給与所得該当性について一般的な法理を判示したものではなく,飽く 立的な労務の対価として給付されたものであるから所得税法28条1項所定の給与所得に該当すると判示したものであるが,所得税法28条1項の給与所得該当性について一般的な法理を判示したものではなく,飽くまで,法令上明文がなく,解釈論として争いがあった,外国親会社が日本子会社の役員に付与したストックオプションの権利行使益の所得区分を判断するに当たって必要な所得税法28条1項の解釈及び適用を行い,その結論を示したものにすぎない。 そして,①本件は,原告が本件塾講師等との間の業務委託契約に基づき,本件講師等が本件各顧客のもとで教育指導をしたことの報酬として本件塾講師等に対して支払った本件各金員につき,原告に源泉徴収義務があるか否かが争われている事案であって,最高裁平成17年判決とは事案が全く - 61 -異なる上,②最高裁平成17年判決においては,外国親会社が日本子会社の役員に付与したストックオプションで得られた権利行使益の所得区分(給与所得か一時所得か)が問題となっていたのに対し,本件は,原告に源泉徴収義務があるか否かを判断する前提として,本件各金員が給与所得に当たるのか(事業所得ないし雑所得に当たるのか)否かが問題になっており,争点も全く異なる。したがって,本件は,最高裁平成17年判決の射程外であることが明らかである。 ウ被告の主張の誤り(ア) 被告は,所得税法28条1項が定める給与所得の要件について,給与所得該当性の判断に当たり,非独立性と従属性のうち,より重要なのは非独立性であり,非独立性が認められる場合,従属性が希薄であっても,給与所得該当性が認められるなどと主張する。 しかしながら,所得税法28条1項の給与所得該当性の判断においては,「雇用契約ないしこれに類する原因」があるといえるか否か,「労務の対価」といえるか ,給与所得該当性が認められるなどと主張する。 しかしながら,所得税法28条1項の給与所得該当性の判断においては,「雇用契約ないしこれに類する原因」があるといえるか否か,「労務の対価」といえるか否かといった要件の判断をしなければならない以上,こうした雇用類似要件や労務の対価要件などを判断するに際して,少なくとも「従属性」があるか否かを判定しなければならないといえる。 この点については,給与所得に求められる「労務の対価としての性質」を考えれば明らかであり,「従属性」は,給与所得か否かを判断するに当たって,必要不可欠の要件であるというべきである。租税法の一般的な教科書等を見ても,所得税法28条1項の給与所得の要件については,非独立性とともに「従属性」も挙げられるのが通常であり,被告が主張するように,従属性が希薄であってもよいなどといった議論はなされていないのであって,被告の上記主張は,独自の見解にすぎないものというべきである。 (イ)a 給与所得の要件のうち,非独立性要件は,「非独立」という言葉が - 62 -「独立していない」という意味を表すとおり,「独立」した役務提供の対価である「事業所得」(所得税法27条)との区別をするための要件である。なぜなら,事業所得の要件である「事業」とは,「自己の危険と計算において独立的に営まれる業務で,営利性,有償性を有し,かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められるもの」をいうと解されているからである。 b このように,事業所得との区別という意味で「非独立性」要件が導かれるものであるが,事業所得に該当しない所得が全て給与所得になるのではなく,例えば,雑所得に該当する場合でも給与所得には該当しないことになる。この点,雑所得は,10種類の所得区分のうち他の9種類の所得に のであるが,事業所得に該当しない所得が全て給与所得になるのではなく,例えば,雑所得に該当する場合でも給与所得には該当しないことになる。この点,雑所得は,10種類の所得区分のうち他の9種類の所得に該当しないという消極的な要件のみをもつ所得(バスケット条項)であるため,雑所得との区別をするためには,給与所得の積極的な要件を打ち立てる必要がある。そこで,事業所得との区別という消極的な意味での給与所得の要件として「非独立性」が求められるだけでなく,雑所得との区別なども含めた,より積極的な意味での給与所得の要件として,その性質から,上記のとおり「従属性」要件が求められることになる。 また,そもそも,給与所得は,雇用契約又はこれに類する原因に基づき,指揮命令を受けて提供した労務の対価をいうものと解されているのであって,この点において,給与所得の本質的な性質として,「従属性」要件が必要になるのである。この意味で,最高裁昭和56年判決は,「給与所得については,とりわけ,給与支給者との関係において何らかの空間的,時間的な拘束を受け,継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり,その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない。」と判示しているものと考えられる。なお,最高裁平成17年判決によっても,「雇用契約又はこれ - 63 -に類する原因に基づき提供された非独立的な労務の対価として給付されたもの」と判示しており,「雇用契約又はこれに類する原因」という点において,やはり「従属性」が求められているというべきである。 c したがって,所得税法28条1項は,給与所得の性質から,当然に「従属性」を一つの要件として予定しているというべきであり,被告が主張するように,従属性が「希薄」であっても「非独立性」があればよいと解することは ,所得税法28条1項は,給与所得の性質から,当然に「従属性」を一つの要件として予定しているというべきであり,被告が主張するように,従属性が「希薄」であっても「非独立性」があればよいと解することはできない(甲40参照)。 (2) 本件各金員が雇用契約及びこれに類する原因に基づくものでないことア原告と本件講師等との間の契約は,(再)業務委託契約であって,雇用契約に該当しないことは明らかである。 原告と本件講師等との間の契約に係る契約書を検討すれば,原告と本件講師等の契約を,雇用契約であると考える根拠は一切なく,これらとは明確に区別された業務委託契約と考えるのが自然で,かつ,合理的である。 上記の契約書には,標題を含めて「業務委託」との語が用いられているほか,本件講師等の契約期間内の辞任が禁止されていること(甲6・7条5項,甲7及び8・4条4項)等個別の条項も業務委託契約の性質を示しており,かつ,始業及び終業の時刻や所定労働時間や休憩時間,休日又は休暇に関する事項といった雇用契約においては必須の条項が全く見られないからである(甲5~8,乙1の1・2)。 イ次に,最高裁昭和56年判決にいう「これに類する原因」とは,民法が定める雇用契約に類似するような契約関係がある場合をいうのであり,委任契約とはいいながらも,実際には会社に勤務する取締役その他の役員などのように,雇用契約に類似した契約関係がある場合に限られるのであって,委任(民法643条),準委任(同法656条)及び請負(同法632条)といった雇用契約と明確に区別される契約類型を,その内容のいかんを問わず全て包含することを意図したものではない。 - 64 -ウ原告と本件講師等との間の契約(甲2,5~8)においては,既に述べたとおり契約書の標題が「業務委託契約 型を,その内容のいかんを問わず全て包含することを意図したものではない。 - 64 -ウ原告と本件講師等との間の契約(甲2,5~8)においては,既に述べたとおり契約書の標題が「業務委託契約」であることが明記されているほか,個別の契約内容についても,本件塾講師確認書(甲5)では,柱書きに「この度は(株)Hからの業務委託依頼を受託いただき,誠にありがとうございます。以下の業務依頼の内容を確認させていただきますので,ご確認後,ご署名,ご捺印の上,FAX・郵送にてご返信いただきます様お願い申し上げます。」と記載されており,「家庭教師業務委託契約書(学生)」(甲7)では,柱書きに「株式会社H(以下甲とする)と (以下乙とする)は会員(以下丙とする)の生徒に対して,以下の業務委託について契約する。」と記載されており,「家庭教師業務委託契約書(社会人)」(甲8)についても同様である。一方,これらの契約書においては,雇用契約に必須の条項,例えば,勤務地に関する定め,始業及び終業の時刻や所定労働時間,所定労働時間を超える労働の有無や時間外勤務手当の金額,休憩時間・休日・休暇に関する事項,賃金に関する事項(賃金の昇給及び賞与を含む),表彰及び制裁に関する事項(労働基準法15条及び労働基準法施行令5条1項各号)の条項は,一切定められていない。 エ最高裁平成13年判決は,りんご生産組合の組合員に支払われた金員が給与所得に該当するか否かの判断に際しては,支払の原因となった法律関係についての当事者の意思ないし認識を考慮すべき旨判示しているところ,本件における契約当事者の意思ないし認識面について検討すると,原告及び本件講師等は,上記のような内容の契約書に記名捺印しているほか,原告は,雇用契約を締結している従業員については就業規則を適用する一方で, ける契約当事者の意思ないし認識面について検討すると,原告及び本件講師等は,上記のような内容の契約書に記名捺印しているほか,原告は,雇用契約を締結している従業員については就業規則を適用する一方で,本件講師等については就業規則を定めていないなど,明確に異なった取扱いをしている。なお,原告のホームページ等においては,本件講師等につきマニュアルに基づく研修を行うかのような記載が見られるが,本件各処分年月当時の実態としては,そのような研修は行われていない。 - 65 -加えて,原告に対する過去の数度の税務調査においても,当該調査を担当した渋谷税務署職員らは,本件各金員の性質について調査し,結論としては給与所得としない取扱いを是認した上で,原告が本件講師等に対して所得税の申告を勧奨すること及び当該申告を補助するため支払金額を記載した書面を発行することを指示及び指導し,原告はこれを受けて,本件講師等に対し,所得税の申告を勧奨するとともに,業務委託代金であることを明らかにする明細表まで送付していた。以上からは,原告及び本件講師等において,両者の間の契約関係が「雇用契約及びこれに類する原因」であるなどという意思ないし認識であったとは考えられない。 オ以上のとおり,形式的に見ても,実質的に見ても,原告と本件講師等の間には,雇用契約とは明確に区別された業務委託契約があるのみで,原告及び本件講師等は契約書記載の義務を単に履行しているにすぎず,これとは別に雇用契約及びこれに類する原因に特有な事情は認められないのであるから,「雇用契約及びこれに類する原因」と評価することはできない。 (3) 原告と本件講師等との間に指揮命令関係(従属性)がないことア原告が本件講師等を業務の開始に当たり指揮監督していないこと「指揮命令」があるとい 因」と評価することはできない。 (3) 原告と本件講師等との間に指揮命令関係(従属性)がないことア原告が本件講師等を業務の開始に当たり指揮監督していないこと「指揮命令」があるというためには一定の上下関係が認められなければならない。そして,通常,企業等における雇用契約において,雇用者又はその組織において上位の地位に立つ者から業務の指示を受けた場合,それについて,一般に諾否の自由があることは考えられない。しかし,本件講師等については,当初,原告が受託している様々な業務のうち特定の業務と結び付くことなく,原告が顧客から受託した業務について広く受託する可能性がある者として一括して登録がされ,原告は,本件各顧客から一定の業務を受託すると,上記登録をした者のうちからそれを委託する者を探して,自ら受託した業務を委託することになるのであるが,原告から委託の打診を受けた本件講師等は,必ずしも当該業務を受託する必要はなく, - 66 -自由にその諾否を決定することができる(本件講師等が原告の紹介を断ったとしても,何らかの処分等を受けることは一切ない。)。また,原告が本件各顧客から依頼された学習指導等の業務が本件講師等に再委託されるか否かは,原告ではなく本件各顧客に選択決定権があるものであって,原告が本件講師等に一方的に指示又は命令をするものではない。 なお,被告は,本件講師等は,原告が一方的に決定した業務期間,業務場所及び業務遂行の対価の額について,これらを包括的に承諾するか否かを選択するしかないなどと主張するが,本件講師等は,原告との個別業務委託締結に際し,業務期間,業務場所及び業務遂行の対価といった契約条件についても交渉をし,条件が変更されることもある。 イ原告が本件講師等に対して業務遂行上の指揮監督をしていないこと 別業務委託締結に際し,業務期間,業務場所及び業務遂行の対価といった契約条件についても交渉をし,条件が変更されることもある。 イ原告が本件講師等に対して業務遂行上の指揮監督をしていないこと本件講師等は,原告から受託して行う塾講師又は家庭教師等の業務の内容について,原告から指示や命令を受けていない。すなわち,原告は,本件講師等に対し,各教科の教育内容はもちろん授業の進め方等のノウハウについても研修を行っておらず,原告作成の指導マニュアルについても,実際には,ほとんど本件講師等に渡されることがないのであって,本件講師等は,原告の作成したカリキュラムに従って統一的に同内容の授業を行ったり,原告の開発したノウハウに基づいて同様のスタイルで授業を行ったりすることはない。原告は,基本的には,いわばプロの教員である本件講師等に対して,それぞれが自らの方法によって講義や指導を行うことを期待して業務を委託しているのであり,本件講師等も自助努力によって得た専門知識やノウハウに基づき業務を遂行しているのであって,原告は,本件講師等に対し,業務遂行上の指揮監督をしていないし,その能力もない。 なお,私立大学非常勤講師事件判決は,専門性を有する業務であっても(それゆえに指揮監督が希薄であっても),その報酬の受給態様について, - 67 -「夏季,冬季等の休暇中でも支給され,休講等があっても減額されることなく,講義の優劣等はその増減の対象となっていない」場合には,給与所得と評価することができる旨明らかにしたものにすぎないところ,本件各金員については,休講があればその分減額となるし,講義の優劣等によってその額は増減するから,本件は,専門性以外の点で同判決とは事案が大きく異なり,同判決は,本件における被告の主張を基礎付けるものとはいえない。 休講があればその分減額となるし,講義の優劣等によってその額は増減するから,本件は,専門性以外の点で同判決とは事案が大きく異なり,同判決は,本件における被告の主張を基礎付けるものとはいえない。 ウ委託業務の内容について本件講師等の裁量が大きいこと前記イのとおり原告が本件講師等に対して業務遂行上の指揮監督をしていない結果,委託業務の遂行に当たっては,本件講師等の裁量が大きくなっており,学習指導に当たり,当該科目をどのように教えるか,時間配分をどうするかといったカリキュラムの設定等具体的な業務遂行は,本件講師等の裁量に委ねられている。 エ本件講師等は,原告との関係において空間的,時間的な拘束を受けないこと本件家庭教師においては,本件会員と相談の上,時間及び場所を当初予定されていたものから変更して業務を行うことも可能であるし,本件塾講師においても,本件教育機関等との協議によって同様のことは可能となっている(現に,本件各顧客の必要に応じて,時間及び場所が決定され,原告には事後的に報告されるのみである。)。また,本件講師等には採点業務を受託した者も含まれるが,採点業務では答案1枚ごとに報酬単価が設定されていることに加え,業務時間及び業務遂行場所自体を担当する本件講師等が任意に決定することができ,原告の指図を受けない。以上のように,委託業務の遂行について,本件講師等の裁量が大きいことも,原告が本件講師等を指揮監督していないことを間接的に裏付けている。 オ本件講師等が原告以外の者から業務を受託すること等に制約がないこと - 68 -雇用契約においては兼業が禁止されることが一般であり,また仮に許されるとしても,使用者の許可にかかっているか,最低限届出を要するものとされているのが通常であるが,本件講師等について - 68 -雇用契約においては兼業が禁止されることが一般であり,また仮に許されるとしても,使用者の許可にかかっているか,最低限届出を要するものとされているのが通常であるが,本件講師等については,原告に専属していないばかりか,給与所得者として一般の会社に勤務することも,原告と類似した事業を行う他の事業者に勤務したり,そのような事業者から業務を受託することも,自ら学習塾や一般家庭等と直接契約して業務を行うことも,原告の行う教育関連事業とは全く異なる事業を行うことも可能であって,原告は,本件講師等の行う活動について,何ら制約を課していない。 このことも,原告と本件講師等との関係を考察する上では重要な要素である。 カ小括以上のとおりであるから,原告と本件講師等の間には,指揮命令関係(従属性)は一切ないというほかない。 (4) 本件講師等は受託業務に関し「独立性」を有していること既に述べたとおり,人的役務の提供による所得のうち,その役務が「独立性」を有しているか否かは,給与所得の消極要件であるというべきところ,この「独立性」は,業務が自己の危険と計算において独立的に営まれ,営利性,有償性を有し,かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められるものか否かにより判断される。本件講師等の役務提供(業務)については,前記(3)で挙げた要素,具体的には,業務受託に際し諾否の自由があること,業務内容に本件講師等の裁量が大きいこと,他の業務受託に制限がないことも,本件講師等が「独立性」を有していることの証左であるが,以下のことからも,本件講師等が業務を自己の計算と危険において独立的に営んでおり,「独立性」を有していることは明らかである。 ア本件講師等には費用負担があること本件講師等は,その業務を遂行するた とからも,本件講師等が業務を自己の計算と危険において独立的に営んでおり,「独立性」を有していることは明らかである。 ア本件講師等には費用負担があること本件講師等は,その業務を遂行するためのテキスト代,ノート代,問題 - 69 -集及び参考書代,プリント代,文房具などの消耗品やパソコン関連費用,コピー機器等の各種費用全部を負担しており,原告が負担することはない。 これらの費用は,本件講師等が受ける報酬とは連動せず,本件講師等は自らの判断においてその支出をしている(これらの費用を本件各顧客が負担することがあっても,原告が負担することはない。)。また,本件講師等は,原告に対し,講師証発行費用(登録手数料に相当する)1000円及び本件各金員の振込手数料を負担している。さらに,原告に対する指導報告書の提出が遅延した者については指導料が10%差し引かれ,本件会員から本件家庭教師の交代の申出等があった場合は,その時点でその者による指導が打ち切られるなど,本件講師等は,給与所得者であるとすれば決して負担することのない危険負担をしている。本件講師等が原告との間の契約に基づき得る本件各金員とこれを得るために要する費用との比率は,個々の本件講師等によって異なり,中には費用が本件各金員の額を上回る者もいると考えられるが,このことは本件各金員が給与所得に該当しないことの根拠となる。 イ本件各金員の額は,個人の実績や経験を前提にランク別契約別の金額に指導時間を乗じて計算され,役務提供の質による利益の較差が大きいこと本件講師等の報酬(本件各金員)は,本件講師等の受託した講義等の「単価」に授業等の時間を乗じて計算されるが,上記の単価は,それぞれの本件講師等の経験及び実績を基にしたランク別に,原告とそれぞれの本件講師等との間で締結する個別 )は,本件講師等の受託した講義等の「単価」に授業等の時間を乗じて計算されるが,上記の単価は,それぞれの本件講師等の経験及び実績を基にしたランク別に,原告とそれぞれの本件講師等との間で締結する個別の契約ごとに個別的に決定されるものであって,その額は,個別の本件講師等の経験及び能力を反映しており,一般企業の従業員の場合における年次の違いや給料の等級の高低による差異,あるいは,能力給の場合における大小の開きでは説明できない相当程度の大きな差異がある。また,上記報酬の額は,同一の本件講師等においても,個々の契約の都度,原告との交渉によって決定され,契約ごとに単価が異 - 70 -なり,同一人が同一の業務を行った場合でも額に差異が生ずるのであって,そのような差異は,そもそも従業員に適用されるところの給与規程や業務の内容の違いだけで説明できるものでもない。このように,本件各金員は,誰がどの本件各顧客の業務をするかによってその額に大きな差異が生まれることからしても,給料では通常あり得ず,このような特質は,請負人の請負代金や受任者の委託料においてこそよく見られるものである(なお,報酬の額を時間を単位として算定することをもって,当該契約が雇用契約に類する契約であるか否かを判断することはできないというべきである。)。 ウ本件各金員の額は原告が本件各顧客から受け取る委託報酬と連動していること本件各金員の額は,原告が受託元の本件各顧客から受領する委託報酬と連動している。すなわち,本件講師等が行った業務の内容が仮に同一であったとしても,原告が受け取る報酬が高額であれば,その分だけ本件各金員も高額になり,逆に原告の受け取る報酬が低額であればその分だけ本件各金員も低額となり,本件講師等には,いわゆる固定給のごときものは存在しない。 本件講 取る報酬が高額であれば,その分だけ本件各金員も高額になり,逆に原告の受け取る報酬が低額であればその分だけ本件各金員も低額となり,本件講師等には,いわゆる固定給のごときものは存在しない。 本件講師等は,原告が委託を受けた本件各顧客に対して教育ないし教科指導の役務を提供するが,これに対する報酬は原告に対して支払われるものであり,当該役務を遂行した本件講師等に対する対価の支払義務者は原告であって,給与所得と判断された判例及び裁判例(最高裁昭和56年判決等)の事案と比較すると,業務の提供先とその対価の支払義務者が1対1の関係にあるのではない点で,本件は大きく異なる。 さらに,本件講師等の業務の遂行に本件各顧客が満足しなければ,本件各顧客と原告との契約は解除され,その結果,原告と本件講師等の契約も解除される。 - 71 -このように,本件講師等の受け取る報酬は,原告の顧客から受け取る報酬に連動しているのであって,これらと無関係に給与として一定額が支払われるわけではない。 (5) 本件各金員は源泉徴収制度が予定している所得に該当しないことア給与所得とは,源泉徴収の対象となる所得であるから,ある所得が給与所得に該当すると言い得るためには,当該所得が,源泉徴収制度が予定している所得に該当するものでなればならず,ある所得が給与所得に該当するか否かの判断(給与所得該当性の判断)においては,当該所得が,源泉徴収制度が予定している所得に該当するか否かの観点からも検討する必要があるものというべきである(京都地方裁判所平成14年9月20日判決・税務訴訟資料第252号順号9198〔甲56〕参照)。 イ源泉徴収制度が予定している所得とは,源泉徴収の対象となる所得かどうかの認定判断が,一義的に明確,かつ,容易になされ得るもの(争い 決・税務訴訟資料第252号順号9198〔甲56〕参照)。 イ源泉徴収制度が予定している所得とは,源泉徴収の対象となる所得かどうかの認定判断が,一義的に明確,かつ,容易になされ得るもの(争いが生じ得ないもの)をいうものと解される。 本件各金員は,被告の主張から明らかなように,給与所得に該当するか否かの判断に当たって高度の事実認定を要するものであり,しかもその判断は,認定された事実を評価する者によって異なるもの(争いが生じ得るもの)であることから,一義的に明確,かつ,容易に判断がなされ得るもの(争いが生じ得ないもの)であるとは到底いえるものではない。そうすると,本件各金員は,源泉徴収制度が予定している所得に該当しないことは明らかであるというべきである。 (6) まとめ以上に述べたところからすれば,本件各金員に係る所得は,所得税法28条1項に規定する給与等に係る所得(給与所得)には該当しないものというべきである。 第2 本件において通則法65条4項にいう「正当な理由」及び同法67条1項た - 72 -だし書にいう「正当な理由」が認められるか否か(争点2)について 1 原告の主張の要点①原告は,本件各処分に係る税務調査よりも前に行われた税務調査(前々回の税務調査)においては,所轄税務署である渋谷税務署の職員から,原告からの支払額の多い本件講師等のリストの提出を求められ,本件講師等に支払った本件各金員が事業所得に該当することを前提として,本件講師等に確定申告を促すような施策をとるよう指導を受けていたものであり,②また,原告においては,そのような指導に基づき,希望した本件講師等のみに対して報酬,料金,契約金及び賞金の支払調書を出すこととしていた従前の取扱いを変更し,原告が支払をした全ての本件講師等にこれを郵送するよう おいては,そのような指導に基づき,希望した本件講師等のみに対して報酬,料金,契約金及び賞金の支払調書を出すこととしていた従前の取扱いを変更し,原告が支払をした全ての本件講師等にこれを郵送するようにしたものである(以上のような事実があったことは,被告も否定していない。被告準備書面(4)25頁及び26頁参照)。こうした税務調査における渋谷税務署からの具体的な指導があったため,原告はこれを信頼し,原告における税務処理は適正に処理されているものと理解していた。 被告は,従前において処分がなかったことは原告の「法の不知」であり「正当な理由」を構成しないと主張するようであるが,原告は,単に従前において処分がなかったことを理由に「正当な理由」があると主張するものではない。 実際に,本件各処分が行われる前の税務調査において,調査を担当した渋谷税務署職員が事実関係について調査をした上で,業務委託契約を締結している本件講師等については源泉徴収をする必要はない(本件各金員は給与所得には該当しない)との指導が渋谷税務署から原告に対してされたため,原告はその指導に従い,源泉徴収を行っていなかったのである。 したがって,仮に本件各金員が所得税法上「給与所得」に該当するという判断がされる場合であっても,既に述べたような源泉徴収制度の観点に鑑みた原告の本件各金員の支払時における徴収義務の存否の判断の困難性(前記第1の2(5)参照。なお,渋谷税務署においても給与所得である旨の指導をしたので - 73 -あるから,給与所得か否かという源泉徴収義務の存否の判断を,課税庁自身も,過去の税務調査では誤っていたということになる。)に加えて,上記のような原告に対する過去の税務調査における所轄税務署からの指導の内容,原告は当該税務署職員からの指導を信頼して源泉徴収を行ってい も,過去の税務調査では誤っていたということになる。)に加えて,上記のような原告に対する過去の税務調査における所轄税務署からの指導の内容,原告は当該税務署職員からの指導を信頼して源泉徴収を行っていなかったことなどに鑑みれば,原告には,源泉所得税納付につき,行政制裁としての不納付加算税を賦課すべきではない「やむを得ない事由」,すなわち「正当な理由」(通則法67条1項ただし書)が認められるというべきである。同様に,消費税申告につき,過去における税務調査での指導に基づいた処理を行っていたにすぎない以上,原告には過少申告加算税を賦課すべきでない「正当な理由」(通則法65条4項)も認められる。そうすると,本件各賦課決定処分は違法である。 2 被告の主張の要点(1) 「正当な理由」の意義源泉徴収による国税がその法定納期限までに納付されなかった場合に不納付加算税が徴収され(通則法67条1項),また,消費税等については,修正申告がされた場合に過少申告加算税を課する(通則法65条1項,2項)とされているところ,法令は,「正当な理由」があると認められる場合には,不納付加算税の徴収又は過少申告加算税の賦課をしないこととされている(不納付加算税につき通則法67条1項ただし書,過少申告加算税につき同法65条4項)。ここにいう「正当な理由」とは,不納付又は過少申告が真に納税者の責めに帰すことのできない客観的事情がある場合をいうのであり,納税者側の主観的な事情及び法の不知や誤解は含まれない。 (2) 本件においては加算税を賦課すべきでない「正当な理由」が存しないことア原告は,「正当な理由」として,「本件各金員の支払時における源泉徴収義務の存否の判断の困難性」と「過去の調査における所轄税務署からの指導」を挙げる。 イしかし 理由」が存しないことア原告は,「正当な理由」として,「本件各金員の支払時における源泉徴収義務の存否の判断の困難性」と「過去の調査における所轄税務署からの指導」を挙げる。 イしかし,平成16年の税務調査における調査担当者は,本件各金員が給 - 74 -与所得に該当しないとの原告の取扱いを前提として,原告に対して本件講師等が適正な申告を行うようにするために協力を求めたにすぎない。また,原告は,平成16年の税務調査以前から本件各金員が給与所得に該当しないとする自らの法令解釈に基づき源泉徴収を行っていなかったものであり,本件各処分に係る調査において,調査担当者から本件各金員に源泉徴収義務があるとの指導があった後も納付すべき税額を納付せず,その指導にも従っておらず,本件各金員が給与所得であることに納得せずに,自らの法令解釈の正当性を主張しているのであるから,原告において「指導等を信頼し源泉徴収しなかった」などとは到底評価できず,原告の源泉所得税の不納付及び消費税等の過少申告が真に納税者の責めに帰すことができない客観的事情がある場合には該当しない。 ウこの点,原告は,平成16年の税務調査において調査担当者の誤指導があったため,本件各金員の支払についても,その法的性質が給与に該当しないものと信じ,源泉徴収を行わず,消費税の課税仕入れに該当するものとして処理したものであり,原告が,税務調査において,適法な指導を受けていれば,本件各処分を受けることもなかった旨主張する。 しかしながら,原告は,平成16年の税務調査がある以前から,誤った法令解釈により,本件各金員が所得税法28条1項所定の給与等に該当しないとして源泉徴収を行わず,また,消費税法上の課税仕入れとしていたにすぎず,課税当局の指導に従いそのように がある以前から,誤った法令解釈により,本件各金員が所得税法28条1項所定の給与等に該当しないとして源泉徴収を行わず,また,消費税法上の課税仕入れとしていたにすぎず,課税当局の指導に従いそのように取り扱っていたわけではない。 また,原告主張の誤指導があったことを立証する証拠は,原告の取締役であるGが,「講師の方の確定申告を促進するよう何かやってくれないかという指導」を受けたとする証言だけであるところ,それは,既に述べたように,原告の従前の取扱いを前提として,本件講師等の適正申告に関して協力を求めたにすぎず,誤指導と評価されるような事実は存しない。 確かに,平成16年の税務調査において,本件各処分が行われた当時と - 75 -同様の状況であれば,本件各処分と同様の処分がなされてしかるべきである。しかし,税務調査は,調査時点の状況及び情報に基づき調査官が問題とした点を中心に内容の検討を行うものであり,前回の調査において何らの指摘がなかったからといっても,それは当該調査を受けた納税者の税務申告等について,今後何らかの処分を行わないことの確約を与えるものではなく,ある事項について是正すべきとの指摘を行わないことが,直ちにその事項についての承認を示したことを意味することにはならない。 本件各処分は,それらに係る税務調査において,当該調査時点での状況や情報を収集,聴取し,それに対し法令にのっとった判断を加えた結果,本件各金員について源泉徴収がなされていないことが判明したのであるから,法令の定める期間,法令の定める方法により本件各処分を行うことは法令の求めるところである。このような観点からしても,平成16年の税務調査において誤指導があったと評価することはできない。 以上 件各処分を行うことは法令の求めるところである。このような観点からしても,平成16年の税務調査において誤指導があったと評価することはできない。 以上

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