平成20(ワ)3606 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年7月9日 大阪地方裁判所
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判決文本文11,643 文字)

主文 原告の主位的請求をいずれも棄却する。 被告八尾市は,原告に対し,2110万9466円及びこれに対する平成19年10月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の予備的請求を棄却する。 訴訟費用は,原告に生じた費用の5分の2と被告八尾市に生じた費用の5分の4を被告八尾市の負担とし,その余はすべて原告の負担とする。 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求 主位的請求被告らは,原告に対し,連帯して,2696万4596円及びこれに対する平成19年10月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 予備的請求被告八尾市は,原告に対し,2696万4596円及びこれに対する平成19年10月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,被告大阪府が所有し被告八尾市が管理する土地に隣接する工場内でプラスチック加工業を営んでいた原告が,当該土地に放置された可燃性廃棄物に何者かが放火して原告の工場に延焼し工作機械の焼損等の被害を受けたところ,当該火災の原因は被告らが当該土地の適切な管理を怠ったことにあるとして,主位的には被告らに対し国家賠償法(以下「法」という)2条1項及び。 法3条1項に基づき連帯して,予備的には被告八尾市に対し民法717条又は法1条1項に基づき,工作機械の代替品又は修理代等の損害,慰謝料及び弁護士費用の合計2696万4596円及びこれに対する不法行為の日である平成19年10月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害 金の支払を請求した事案である。 (, 前提事実後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実のほか当事者間に争いがない)。 (1) 原告は まで民法所定の年5分の割合による遅延損害 金の支払を請求した事案である。 (, 前提事実後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実のほか当事者間に争いがない)。 (1) 原告は別紙物件目録1記載の土地上にある別紙物件目録2記載の建物以,(下「本件建物」という)の2階の一部分を間借りし,同所においてAの屋。 号でプラスチック加工業を営む者である(甲1~3,7,丙2の1・2。 )被告大阪府は,別紙物件目録3記載の土地(以下「本件土地」という)。 を所有し,都市計画道路東大阪中央線整備予定地としている(甲4。 )被告八尾市は,被告大阪府からの委託に基づき,本件土地の管理をしている(乙1。 )(2) 本件建物と本件土地は,本件建物の南西部分と本件土地の北東部分の一部(別紙地図の赤色部分付近)において隣接しており,その位置関係は別紙地図のとおりである(甲5。 )(3) 平成19年10月29日午前1時55分ころ,何者かが放火して,本件土地のうち別紙地図の赤色部分で火災が発生し(以下「本件火災」という,。)本件建物に燃え移り,原告が間借りしていた部分にも延焼した。 争点 (主位的請求)(1) 法2条1項及び法3条1項に基づく請求の可否(予備的請求)(2) 民法717条1項に基づく請求の可否(3) 法1条1項に基づく請求の可否(損害論)(4) 原告の損害額 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)について ア原告の主張本件土地は,昭和54年に被告大阪府によって買収され,都市計画道路東大阪中央線の整備予定地の一部として,今日まで被告八尾市を通じて管理されてきた。本件土地は,道路として利用を開始する前段階で住民の利用に現実に提供していたのであって,本件土地は公の目的物に供用される物に準ずる性格を有す の一部として,今日まで被告八尾市を通じて管理されてきた。本件土地は,道路として利用を開始する前段階で住民の利用に現実に提供していたのであって,本件土地は公の目的物に供用される物に準ずる性格を有するに至ったといえるから,本件土地は公の営造物に当たる。 本件土地には,本件火災の10年以上前から,廃棄物等が放置されてきた。本件火災当時,本件土地には,木製パレットが数メートルもの高さまで積み上げられ,キュービクル(変電設備)の上にも置かれていた。このように可燃性の廃棄物が大量に投棄されたのは,被告八尾市が,本件土地に投棄者が不法侵入するのを許してきたからである。 被告八尾市は,本件建物を管理するBや本件建物を所有するC株式会社の代表取締役であるDらの陳情により,このような本件土地の状態を知っていたにもかかわらず,長年にわたり,本件土地に放置された廃棄物の撤去を怠り,遮蔽措置もとらず,本件土地に存する危険を放置してきた。 このように,本件土地につき被告八尾市の管理には瑕疵があった。 土地の管理に瑕疵がない状態とは,完全にフェンスで囲われ廃棄物も存在しない状態を指し,本件土地のうち別紙地図の黄色部分はそのような状態である。 本件火災により原告に生じた損害は,通常生ずる損害である。本件火災の直接の原因は第三者による放火であるが,本件土地に大量の可燃性廃棄物が放置されていなければ本件建物に燃え移るような火災とはならなかった。被告八尾市はBらからの陳情により本件土地の状況を知りながら放置,。 したのであるから上記瑕疵と原告の損害との間には相当因果関係がある被告大阪府は,本件土地の所有者であり,被告八尾市は,被告大阪府か らの委託を受けて本件土地を管理している者である。 よって,被告大阪府及び被告八尾市は,法2条1項及び法3条1項に基づき,連帯して原 告大阪府は,本件土地の所有者であり,被告八尾市は,被告大阪府か らの委託を受けて本件土地を管理している者である。 よって,被告大阪府及び被告八尾市は,法2条1項及び法3条1項に基づき,連帯して原告に生じた損害を賠償すべき責任を負う。 イ被告大阪府の主張原告の主張を否認ないし争う。 本件土地は,本件火災発生時において,道路としての認定を受けていなかったばかりか,未だ道路整備のための工事の着手すらされておらず,その南東部分(別紙地図の橙色部分)にはフェンスが設置されて通り抜けられず,事実上も道路として供用されていなかった。 本件土地に廃棄物等が放置されていたとしても,そのような状態の土地から自然発火により火災が発生することは客観的にあり得ないし,第三者による放火によって火災が発生することを予見することは不可能であったから,いずれにしても本件土地が通常有すべき安全性を欠く状態にあったとはいえない。 Bや原告が真に火災発生を危惧していたのであれば,隣接する工場に廃棄物の所有関係の確認をしたはずであり,原告自身にしても被告八尾市に,。 陳情するはずであるところB及び原告はそのような行動をとっていない本件土地の管理に瑕疵があったとしても,本件火災には放火という第三者の故意行為が介在しており,これを被告らが予見することは不可能であったから,因果関係が認められない。 ,,,また被告大阪府は本件土地の管理を被告八尾市に委託していたから管理の瑕疵の責任を負うことはない。 ウ被告八尾市の主張原告の主張を否認ないし争う。 本件土地は,都市計画道路東大阪中央線道路の予定地にすぎず,道路法に基づく供用開始の告示はなされておらず,事実上も一般の交通の用に供 されていないから,公の営造物に該当しない。 本件土地に廃棄物が放置されていたからといって,必ず 央線道路の予定地にすぎず,道路法に基づく供用開始の告示はなされておらず,事実上も一般の交通の用に供 されていないから,公の営造物に該当しない。 本件土地に廃棄物が放置されていたからといって,必ずしも第三者の放火につながるものではないし,放火されたからといって,必ずしも本件建物や原告の作業場に延焼するわけではないから,本件土地の管理に瑕疵はなく,原告に発生した損害との間の因果関係もない。 なお,被告八尾市は,市民の要請などを受けて不法投棄物の処理を行っており,本件土地付近での不法投棄物の処理は,平成17年から本件火災が発生するまでに3件行った。 (2) 争点(2)についてア原告の主張本件土地に設置された工事用フェンスや木製パレットなどの堆積物は,本件土地に接着して人工的に設置されたものであるから,土地の工作物に当たる。 これらの土地の工作物には,倒壊や火災の危険性があり設置の瑕疵があったといえ,被告八尾市がこれらを占有していたといえる。 よって,被告八尾市は,民法717条1項の土地工作物責任を負う。 イ被告八尾市の主張原告の主張を争う。 不法投棄堆積物は,土地に接着した人工的作業物ではなく,土地の工作物に当たらない。工事用フェンスについては,上記のとおり,放火についての予見可能性がないから,被告八尾市が本件土地への侵入防止措置をとらなかったことは瑕疵とはいえない。 (3) 争点(3)についてア原告の主張被告八尾市が被告大阪府の委託を受け本件土地を管理する行為は,純粋な私経済作用及び法2条によって救済される営造物の設置及び管理作用を 除くすべての作用に包含されるから,公権力の行使に当たる。 BやDの陳情を受けた被告八尾市の土木担当者及びE土地開発公社のFは,公務員である。 被告八尾市は,BやDからの陳情により,不法投棄の状態を 除くすべての作用に包含されるから,公権力の行使に当たる。 BやDの陳情を受けた被告八尾市の土木担当者及びE土地開発公社のFは,公務員である。 被告八尾市は,BやDからの陳情により,不法投棄の状態を認識していたにもかかわらず,火災などの事故を防ぐため,本件土地に不法投棄された廃棄物を撤去し,侵入防止装置を講じなかったことは,被告八尾市の注意義務違反があるといえ,被告八尾市の過失及び違法性が認められる。被告八尾市がこれらの義務を怠ったことと原告の損害の発生の間には,因果関係がある。 よって,被告八尾市は法1条1項の責任を負う。 イ被告八尾市の主張原告の主張を争う。 不法投棄物があれば第三者に放火されるという経験則はなく,被告八尾市には,本件土地上の廃棄物に放火されることの予見可能性はなかったから,本件土地上の廃棄物を撤去しなかったことに違法性はなく,故意又は過失もない。 (4) 争点(4)についてア原告の主張本件火災により,工場内に置かれていた原告の工作機械及び備品は焼損又は水損し,原告が本件火災以前に保管又は加工中であったプラスチック材料は焼損又は煙損した。修理可能な工作機械の修理代金等は合計270(,万9000円株式会社G製シャーリング1台につき161万7000円株式会社H製シャーリング1台につき109万2000円)である。修理不可能であり新規に購入した工作機械の代金等の合計は1905万7500円(株式会社H製シャーリング1台につき202万6500円,熱曲機3台につき1109万8500円,カレンダー曲機1台につき593万2 500円)である。備品の再調達に要する費用は少なくとも20万円であり,本件火災の直近3か月に仕入れて焼失したプラスチックの材料代は103万8096円である。 原告は,プラスチック加工業を30年間地道 00円)である。備品の再調達に要する費用は少なくとも20万円であり,本件火災の直近3か月に仕入れて焼失したプラスチックの材料代は103万8096円である。 原告は,プラスチック加工業を30年間地道に営んできたのに,本件火災により主要な工作機械はすべて損傷して事業の復旧が困難となり,多大な精神的苦痛を受け,その損害は200万円を下らない。 原告は,本件訴訟提起のために弁護士に委任をしており,その弁護士費用相当額は196万円である。 以上により,原告の損害の合計は2696万4596円である。 原告が動産についての火災保険金200万円を受領したことは認める。 イ被告大阪府の主張工作機械や材料代については,見積書が存在するのみで,実際に出損したことを示す証拠は存在しない。慰謝料についても,財産的な補償では慰謝されない特別の事情について何ら立証がなされていない。 ウ被告八尾市の主張原告が本件火災により被害を受けたという工作機械及び備品等の罹災状況,損害内容については明らかではない。シャーリングは,通常の使用によってもオーバーホールが必要であり,損害と認められない。修理不可能な工作機械の新品の購入代金相当額も,その使用期間や程度を考慮しておらず不合理である。 原告は,動産について200万円の火災保険に加入しており,保険金を受け取ったのであれば損益相殺されるべきである。 第3争点に対する判断 認定事実前記前提事実に加え,証拠(甲6の1~23,7,9,10の1~6,11の1~20,16,17,19~21,24,25の1~8,27,28,3 1,32,35の1・2,乙1,丙1,2の1・2,3,4の1・2,5の1~3,6,証人B,証人I,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) C株式会社は,その所有に係る本件建物を ,35の1・2,乙1,丙1,2の1・2,3,4の1・2,5の1~3,6,証人B,証人I,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) C株式会社は,その所有に係る本件建物を有限会社Jに賃貸している。原告は,平成17年2月ころから,同社から本件建物の2階の一部分を間借りし,プラスチック加工業を営んでいる。 Kの屋号で平成12年ころから本件建物の管理業務を行ってきたBは,月に数回,本件建物の周辺を見回って管理していた。 本件建物の北西側の隣は,Lの工場である。 (2) 被告大阪府は,昭和54年5月29日,本件土地を買収し,都市計画道路東大阪中央線整備予定地として所有している。本件土地は,供用開始がなされていない。 被告八尾市は,被告大阪府からの委託に基づき,被告大阪府が買収した当初から本件土地の管理をしている(乙1。被告八尾市においては,供用を)開始している道路予定地については土木管理課が道路管理者として管理するが,本件土地のような供用開始がなされていない道路予定地については,実際の事業を担当する課が一時的に用地の管理を担当していた。本件火災発生時の担当部署は,土木建設課街路係であり,同係の係長はIであった。 被告八尾市が大阪府から本件土地の管理を委託された目的は,主に,不法占拠など将来の道路整備に際して支障となる事態を防ぐことにあった。 (3) 本件土地は,本件火災当時,フェンスで周囲を囲われた部分(別紙地図の黄色部分)とそれ以外の部分に分けられ,後者の部分は,前者の部分と本件建物に挟まれた道路状になっていた。後者の部分の両端のうち,南東側には可動式の金網ネットが設置されていたが(別紙地図の橙色部分,北西側に)はネット等の侵入を妨げる物は設置されておらず,当該部分から容易に本件土地に人が出入りすることができた。 端のうち,南東側には可動式の金網ネットが設置されていたが(別紙地図の橙色部分,北西側に)はネット等の侵入を妨げる物は設置されておらず,当該部分から容易に本件土地に人が出入りすることができた。 本件土地の近くには工場等の建物,駐車場,墓地等があり,民家はなかった。本件土地のうち,別紙地図の黄色部分以外の部分は,成人の身長ほどまで草が生い茂り,その草より高く木製パレット等が積み重なっていたほか,ドラム缶やキュービクル等の廃材が放置されていた。 また,本件土地の外の南西(別紙地図の黄色部分の南側)には,中古自動車が数台放置されていた。 Iは,平成17年から18年ころ,本件土地の状況を一度だけ見たことがあるが,定期的な巡回等はしなかった。 (4) Bは,平成15年ころから度々,被告八尾市の土木課の職員に電話で不法廃棄物の撤去等を陳情してきたが,市役所に出向いたり,写真や文書を送付したりまではしなかった。Bは,本件土地に放置された木製パレットについては,本件建物の北西側の隣のLの所有物でないかと疑っていたが,同社に確認をしたことはなかった。 また,本件建物を所有するC株式会社の代表取締役であるDも,E土地開発公社の局長補佐であったF(甲20)に,不法廃棄物の撤去の陳情を続けてきた。これに対するFの回答は,これに対し,担当部署に連絡して善処するというものであった。 本件火災前に,本件土地の南側に放置されていた自動車が撤去されたことがあるほか,一度は,別紙地図の赤色部分から廃棄物が撤去された形跡があったが,その後は再び廃棄物が堆積した状態にあった。 なお,E土地開発公社は,被告八尾市が行う事業に必要な用地を取得する業務を行っており,道路の建設や廃棄物の処理は本来の業務ではない。 (5) 平成19年10月29日午前1時55分ころ,本件土地から本件火 お,E土地開発公社は,被告八尾市が行う事業に必要な用地を取得する業務を行っており,道路の建設や廃棄物の処理は本来の業務ではない。 (5) 平成19年10月29日午前1時55分ころ,本件土地から本件火災が発生した。本件火災は,何者かの放火によるものであり,八尾市消防署の調査では,何者かが本件土地に侵入し,ライター等を用いて本件土地上に放置さ()。 れていた木製パレットに火をつけて放火したものと推定されている丙3 本件火災は本件建物にも燃え移り,原告の作業場があった本件建物の2階部分を焼損した(甲7。 )本件火災により,原告の工作機械及びプラスチック材料等の多くが焼損等した。これらの工作機械の中には,特注品のものもあった。 (6) B及びDは,平成19年10月29日午前9時ころ,E土地開発公社の参事になっていたF(甲21)を本件建物に呼び,本件火災の状況等について話し合った。 ,,八尾市消防署は同日午前9時30分から同日午前11時30分までの間有限会社Jの代表取締役であるMら立会いのもと,本件土地及び本件建物において実況見分を行った(甲24。 )また,その約2日後,原告及びBは,本件建物において,被告八尾市の土木建設課長らと話し合った(甲35の1・2。その際,同課長は,本件土)地の廃棄物等の状況を認識していた旨述べた。 (7) 本件火災以降,本件土地上の廃棄物等は撤去され,北西側にもフェンスが施され,第三者が本件土地に侵入することはできなくなった。 原告は,保険会社から所有動産について200万円の火災保険金を受け取った。 被告八尾市は,平成19年12月4日ころ,Bに対し,被告八尾市の本件土地の管理と本件火災の因果関係はなく,本件建物への延焼についての補償をすることはできない旨伝えた(甲16。 )(8) 被告八尾市においては, ,平成19年12月4日ころ,Bに対し,被告八尾市の本件土地の管理と本件火災の因果関係はなく,本件建物への延焼についての補償をすることはできない旨伝えた(甲16。 )(8) 被告八尾市においては,本件土地と同様の都市計画道路管理用地において継続的に塵芥処理を行ってきた。このうち,本件土地が存在する大阪府八尾,,,市a町b丁目においては本件火災発生前に3回本件火災発生後には4回工事が行われた(丙4の1・2。 )本件火災発生前の工事の内訳は,平成18年2月24日に用地管理工,平成19年2月28日に土工,構造物工,舗装工,同年8月1日に土工,修理 工である。これらの工事の際,ゴミの撤去もあわせて行われることになっていたが,最終の工事の際にも,本件土地の不法廃棄物の撤去はなされなかった。 被告八尾市管内における放火犯の認知件数は,平成18年では1件,平成19年及び平成20年は各2件である(丙5。 ) 争点(1)について(1) 法2条1項の「瑕疵」とは,営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。営造物の設置又は管理に瑕疵があったとみられるかどうかは,当該営造物の構造,用法,場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的,個別的に判断すべきである(最高裁昭和53年(オ)第76号同年7月4日第三小法廷判決・民集32巻5号809頁。 )本件火災は,本件土地上に置かれていただけで土地に固定していたとは認められない廃棄物等を介して発生したものであり,本件土地自体に欠陥があったとはいえない。本件土地は,道路の供用予定地であり,特に住民が何らかの利用をすることが予定されている場所ではなかったから,その利用状況に対応した危険を予測することはできず,本件土地に廃棄物等が置かれており,フェンス等の遮蔽措置がとられていなかったとして 民が何らかの利用をすることが予定されている場所ではなかったから,その利用状況に対応した危険を予測することはできず,本件土地に廃棄物等が置かれており,フェンス等の遮蔽措置がとられていなかったとしても,それが土地の安全性に関わる事実とはいえない。本件土地自体が崩落しやすいとか陥没しているなど,一般に通常有すべき安全性を欠いていたと認めることのできる証拠もない。 (2) よって,その余の判断をするまでもなく,被告らに対する法2条1項及び法3条1項に基づく請求は理由がない。 争点(2)について,,上記判示のとおり本件土地に設置又は保存の瑕疵があったとは認められず被告八尾市に対する民法717条に基づく請求には理由がない。 争点(3)について (1) 被告八尾市は,本件土地の管理者として,無関係の者を本件土地に立ち入らせないように遮蔽措置を講じたり,不法廃棄物が放置されているのであればこれを撤去すべき義務があったものと認められる。そして,前記認定のとおり,Bは被告八尾市の土木課に廃棄物の撤去を陳情していたこと,Dから陳情を受けたFは被告八尾市の担当部署に連絡したこと,Iは本件火災発生前に少なくとも一度は本件土地の状況を確認していることが認められるから,被告八尾市は本件土地に可燃性の廃棄物が放置されていることを知っていたと認めることができる。 確かに,Bらが廃棄物の撤去を陳情した目的は,一次的にはそれらの倒壊の危険や衛生面を懸念してのものと解され,放火による火災の発生を未然に防ぐことをBらにおいて明示していたとまでは認められないし,明確に意識していたとも認められない。 しかし,本件土地の北西部から人が立ち入ることは容易であり,本件土地付近には民家がなく夜間は人目につきにくいところであり,木製の物には火がつきやすいこと,ドラム缶に 意識していたとも認められない。 しかし,本件土地の北西部から人が立ち入ることは容易であり,本件土地付近には民家がなく夜間は人目につきにくいところであり,木製の物には火がつきやすいこと,ドラム缶に引火しやすいものが入っている可能性もあったことなどからすれば,本件土地の廃棄物に放火されることが予見不可能であったとはいえず,上記注意義務違反と放火との間の相当因果関係も認められる。そして,放火されたことから本件土地上の廃棄物が燃え,本件建物はそこに隣接する位置にあったから燃え移ったのであり,延焼の経路に不自然なところはなく,被告八尾市の過失と原告の損害との間にも相当因果関係があることは明らかである。 (2) よって,原告は,被告八尾市に対し,法1条1項に基づく請求をすることができる。 争点(4)について(1) 証拠(各摘示の甲号証及び甲7,9,10の1~6,11の1~20,24,27,32,33,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実 が認められる。 本件火災による焼損ないし消防車による放水のために水損した工作機械の,()修理代金等は株式会社G製シャーリングS1232甲11の15・161台につき161万7000円である(甲12の1。株式会社H製シャー)リングKSR-40(甲11の17)1台については,通常であっても年1回のオーバーホールが必要であったから(原告本人,オーバーホールの代)金をもっては,本件火災のために発生した損害とはいえない。 特注品であり,製造者が廃業していることから修理不可能な工作機械の購入代金等は,株式会社H製シャーリングKSR-26(甲11の18)1台の代替物としての株式会社H製KSR-26自動切断機1台につき202万6500円(甲29,熱曲機(甲11の19)2台の代替物としてのN半)自動 会社H製シャーリングKSR-26(甲11の18)1台の代替物としての株式会社H製KSR-26自動切断機1台につき202万6500円(甲29,熱曲機(甲11の19)2台の代替物としてのN半)自動プレス加熱機等3台につき1109万8500円(甲26,カレンダ)ー曲機(甲11の20)1台の代替物としてのNシート折り曲げ機1台につき593万2500円(甲30)の合計1905万7500円であると認められる。 原告は,再調達した備品(甲34の1~3)の費用は少なくとも20万円である旨主張するものの,金額の立証はない。本件火災の直近に仕入れて焼失したプラスチックの材料代については,その代金の支払は20日締め翌月25日払いであったというのであるから(弁論の全趣旨,本件火災の発生)が平成19年10月29日であったから10月分の20日締め分47万4966円(甲15の3)については損害と認められるが,それ以前の8月締め分及び9月締め分(甲15の1・2)について本件火災当時存在したかについて特段の立証はないので,損害とは認められない。 以上により,財産的損害の合計は,2114万9466円である。 (2) 本件火災による損害につき,財産的損害とは別に精神的損害に基づく慰謝料の請求が認められるためには,財産的損害に対する賠償のみでは回復でき ない特別の事情を加害者において知り,又は知ることができるものであることを必要とする。 原告は,平成17年2月以降,本件建物でプラスチック加工業を営み,それ以前も別の場所で長年同種の営業をし取引先の信頼を得ていたこと,特注品の工作機械を失うなど本件火災後売上げが減少したことは認められるが(原告本人,売上げの減少には他の原因もあり得るし,財産的損害という)べきものであって精神的損害と評価できず,財産的損害が回復されて の工作機械を失うなど本件火災後売上げが減少したことは認められるが(原告本人,売上げの減少には他の原因もあり得るし,財産的損害という)べきものであって精神的損害と評価できず,財産的損害が回復されてもなお回復できない精神的損害を認めるまでの立証はない。 よって,慰謝料の請求は理由がない。 (3) 弁護士費用196万円は,本件の事案に照らして相当である。 (4) したがって,原告に発生した損害は,合計2310万9466円と認められる。このうち,火災保険金として原告が受領した200万円については,保険者が保険者代位の制度によりその支払った保険金の限度で損害賠償請求権を取得する結果,被保険者たる原告は保険金の限度で損害賠償請求権を失うので,減額すべきであり,請求できる損害金の合計は2110万9466円となる。 また,附帯請求に関しては,火災による損害発生の日である平成19年10月29日を遅延損害金の起算日とすることには理由がある。 結論 以上の次第で,原告の被告らに対する主位的請求は理由がないからいずれも棄却し,被告八尾市に対する予備的請求は2110万9466円及びこれに対する平成19年10月29日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第25民事部 裁判長裁判官稻葉重子裁判官齋藤聡裁判官藤根康平 別紙物件目録 所在八尾市c町d丁目地番e番f地目宅地地積g㎡ 所在八尾市h町i丁目j番地k家屋番号l番m種類倉庫構造n(現況o)床面積p㎡ 所在八尾市q町r丁目地番s番t地目宅地地積u㎡ 所在八尾市h町i丁目j番地k家屋番号l番m種類倉庫構造n(現況o)床面積p㎡ 所在八尾市q町r丁目地番s番t地目宅地地積u㎡

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