令和3(ワ)279 地位確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年3月14日 札幌地方裁判所
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判決文本文40,752 文字)

1 判 決主 文1 原告aが、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 2 被告は、原告aに対し、以下の金員を支払え。 ⑴ 228万5360円及びうち45万7072円につき令和2年9月25日から、うち45万7072円につき同年10月25日から、うち45万7072円につき同年11月25日から、うち45万7072円につき同年12月25日から、うち45万7072円につき令和3年1月25日から各支払済みまで年3分の割合による金員⑵ 令和3年2月から本判決確定の日まで、毎月24日限り45万7072円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年3分の割合による金員⑶ 55万9049円及びこれに対する令和2年12月11日から支払済みまで年3分の割合による金員⑷ 令和3年1月から本判決確定の日まで、毎年6月30日限り71万2918円及び毎年12月10日限り55万9049円並びにこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年3分の割合による金員3 原告bが、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 4 被告は、原告bに対し、以下の金員を支払え。 ⑴ 240万2368円及びうち30万0296円につき令和2年10月25日から、うち30万0296円につき同年11月25日から、うち30万0296円につき同年12月25日から、うち30万0296円につき令和3年1月25日から、うち30万0296円につき同年2月25日から、うち30万0296円につき同年3月25日から、うち30万0296円につき同年4月25日から、うち30万0296円につき同年5月25日から、各支払済みまで年3分の割合による金員⑵ 令和3年6月から本判決確定の日まで、毎月24日限り30万0296円 0万0296円につき同年4月25日から、うち30万0296円につき同年5月25日から、各支払済みまで年3分の割合による金員⑵ 令和3年6月から本判決確定の日まで、毎月24日限り30万0296円及2 びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年3分の割合による金員⑶ 45万6002円及びこれに対する令和2年12月11日から支払済みまで年3分の割合による金員⑷ 令和3年5月から本判決確定の日まで、毎年6月30日限り59万0605円及び毎年12月10日限り45万6002円並びにこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年3分の割合による金員5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は被告の負担とする。 7 この判決は、第2項及び第4項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由第1 請求の趣旨1 第1事件⑴ 第1項につき主文同旨⑵ 被告は、原告aに対し、以下の金員を支払え。 ア 236万0005円及びうち47万2001円につき令和2年9月25日から、うち47万2001円につき同年10月25日から、うち47万2001円につき同年11月25日から、うち47万2001円につき同年12月25日から、うち47万2001円につき令和3年1月25日から各支払済みまで年3分の割合による金員イ 令和3年2月から本判決確定の日まで、毎月24日限り47万2001円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年3分の割合による金員ウ 71万2918円及びこれに対する令和2年12月11日から支払済みまで年3分の割合による金員エ 令和3年1月から本判決確定の日まで、毎年6月30日限り71万2918円及び毎年12月10日限り71万2918円並びにこれらに対する各3 1日から支払済みまで年3分の割合による金員エ 令和3年1月から本判決確定の日まで、毎年6月30日限り71万2918円及び毎年12月10日限り71万2918円並びにこれらに対する各3 支払日の翌日から支払済みまで年3分の割合による金員2 第2事件⑴ 第3項につき主文同旨⑵ 被告は、原告bに対し、以下の金員を支払え。 ア 240万2768円及びうち30万0346円につき令和2年10月25日から、うち30万0346円につき同年11月25日から、うち30万0346円につき同年12月25日から、うち30万0346円につき令和3年1月25日から、うち30万0346円につき同年2月25日から、うち30万0346円につき同年3月25日から、うち30万0346円につき同年4月25日から、うち30万0346円につき同年5月25日から、各支払済みまで年3分の割合による金員イ 令和3年6月から本判決確定の日まで、毎月24日限り30万0346円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年3分の割合による金員ウ 59万0605円及びこれに対する令和2年12月11日から支払済みまで年3分の割合による金員エ 令和3年5月から本判決確定の日まで、毎年6月30日限り59万0605円及び毎年12月10日限り59万0605円並びにこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年3分の割合による金員第2 事案の概要等1 事案の概要本件は、被告から懲戒解雇された原告らが、懲戒解雇はいずれも無効であると主張して、被告に対し、①それぞれ労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに(第1事件及び第2事件)、②原告aが、労働契約に基づき、令和2年9月から令和3年1月までの合計236万0005円(月額47万2001円 ①それぞれ労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに(第1事件及び第2事件)、②原告aが、労働契約に基づき、令和2年9月から令和3年1月までの合計236万0005円(月額47万2001円×5か月分)の各賃金及びこれらに対する各支払期日の翌日から各支払済み4 まで民法所定の年3分の割合による遅延損害金、令和3年2月から本判決確定の日まで毎月24日限り47万2001円の各賃金及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金、令和2年12月分の71万2918円の賞与及びこれに対する支払期日の翌日である令和2年12月11日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金並びに令和3年1月から本判決確定の日まで毎年6月30日及び12月10日限り71万2918円の各賞与及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求め(第1事件)、③原告bが、労働契約に基づき、令和2年10月から令和3年5月までの合計240万2768円(月額30万0346円×8か月分)の各賃金及びこれらに対する各支払期日の翌日から各支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金、令和3年6月から本判決確定の日まで毎月24日限り30万0346円の各賃金及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金、令和2年12月分の59万0605円の賞与及びこれに対する支払期日の翌日である令和2年12月11日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金並びに令和3年5月から本判決確定の日まで毎年6月30日及び12月10日限り59万0605円の各賞与及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損 る遅延損害金並びに令和3年5月から本判決確定の日まで毎年6月30日及び12月10日限り59万0605円の各賞与及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める(第2事件)事案である。 2 関係法令の定め保険業法(平成7年6月7日号外法律第105号)には、以下の定めがある。 このうち、顧客の意向の把握等について規定する294条の2は、保険業法等の一部を改正する法律(平成26年5月30日号外法律第45号)において新設された規定であり、平成28年5月29日に施行された(なお、同法施行前の時点において、原告らが顧客の意向を把握する義務を負っていたか否かについては、後記5⑴のとおり争いがある。)。 5 (情報の提供)第294条 保険会社等若しくは外国保険会社等、これらの役員(保険募集人である者を除く。)、保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人は、保険契約の締結、保険募集又は自らが締結した若しくは保険募集を行った団体保険(団体又はその代表者を保険契約者とし、当該団体に所属する者を被保険者とする保険をいう。次条、第294条の3第1項及び第300条第1項において同じ。)に係る保険契約に加入することを勧誘する行為その他の当該保険契約に加入させるための行為(当該団体保険に係る保険契約の保険募集を行った者以外の者が行う当該加入させるための行為を含み、当該団体保険に係る保険契約者又は当該保険契約者と内閣府令で定める特殊の関係のある者が当該加入させるための行為を行う場合であって、当該保険契約者から当該団体保険に係る保険契約に加入する者に対して必要な情報が適切に提供されることが期待できると認められるときとして内閣府令で定めるときにおける当該加入させるための行為を除く って、当該保険契約者から当該団体保険に係る保険契約に加入する者に対して必要な情報が適切に提供されることが期待できると認められるときとして内閣府令で定めるときにおける当該加入させるための行為を除く。次条及び第300条第1項において同じ。)に関し、保険契約者等の保護に資するため、内閣府令で定めるところにより、保険契約の内容その他保険契約者等に参考となるべき情報の提供を行わなければならない。(ただし書 略)2以下 (略)(顧客の意向の把握等)第294条の2 保険会社等若しくは外国保険会社等、これらの役員(保険募集人である者を除く。)、保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人は、保険契約の締結、保険募集又は自らが締結した若しくは保険募集を行った団体保険に係る保険契約に加入することを勧誘する行為その他の当該保険契約に加入させるための6 行為に関し、顧客の意向を把握し、これに沿った保険契約の締結等(保険契約の締結又は保険契約への加入をいう。以下この条において同じ。)の提案、当該保険契約の内容の説明及び保険契約の締結等に際しての顧客の意向と当該保険契約の内容が合致していることを顧客が確認する機会の提供を行わなければならない。(ただし書 略)(保険契約の締結等に関する禁止行為)第300条 保険会社等若しくは外国保険会社等、これらの役員(保険募集人である者を除く。)、保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人は、保険契約の締結、保険募集又は自らが締結した若しくは保険募集を行った団体保険に係る保険契約に加入することを勧誘する行為その他の当該保険契約に加入させるための行為に関して、次に掲げる行為(括弧内略)をしてはならない。(ただし書 略)一ないし三 (略)四 保険契約者又は被保険者に に加入することを勧誘する行為その他の当該保険契約に加入させるための行為に関して、次に掲げる行為(括弧内略)をしてはならない。(ただし書 略)一ないし三 (略)四 保険契約者又は被保険者に対して、不利益となるべき事実を告げずに、既に成立している保険契約を消滅させて新たな保険契約の申込みをさせ、又は新たな保険契約の申込みをさせて既に成立している保険契約を消滅させる行為五以下 (略)2 (略)(登録の取消し等)第307条 内閣総理大臣は、特定保険募集人又は保険仲立人が次の各号のいずれかに該当するときは、第276条若しくは第286条の登録を取り消し、又は六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。 7 一及び二 (略)三 この法律又はこの法律に基づく内閣総理大臣の処分に違反したとき、その他保険募集に関し著しく不適当な行為をしたと認められるとき。 2以下 (略)3 前提事実以下の事実は、当事者間に争いがないか、後掲各証拠又は弁論の全趣旨により容易に認められる(証拠の掲記がない事実は当事者間に争いがなく、証拠番号には、特に断らない限り、枝番号を含む。また、複数頁にわたる書証又は調書のうち認定に用いた主な箇所の頁数を〔 〕内に摘示する。)。 ⑴ 当事者ア 被告は、郵便の業務、銀行窓口業務のほか、生命保険業等の代理業務等を目的とする株式会社である(甲共1)。 イ 訴外株式会社c(以下「c社」という。)は、自社の個人向け保険商品の募集のほぼ全てを被告に委託している。 ウ 原告らは、いずれも、被告がc社から受託していた保険募集に関する業務に従事していた渉外社員であり、c社を所属保険会社とする「生命保険募集人」(以下「募集人」ともいう。)の登録を受けていた。 ウ 原告らは、いずれも、被告がc社から受託していた保険募集に関する業務に従事していた渉外社員であり、c社を所属保険会社とする「生命保険募集人」(以下「募集人」ともいう。)の登録を受けていた。 ⑵ 原告らと被告との間の労働契約の締結原告aは、平成18年4月1日に、原告bは、平成19年4月1日に、それぞれ当時の日本郵政公社の職員に任用されたものであり、原告らは、被告との間で、遅くとも原告らが懲戒解雇を受けた時点(原告aについては、令和2年8月25日、原告bについては、同年9月30日)において、期限の定めのない労働契約を締結していた。そして、原告らは、被告の渉外社員(地域基幹職コース・渉外営業コース)として、c社の保険商品の保険募集業務に従事していた。 8 ア 原告aの給与基本給 31万1400円扶養手当 0円調整手当 9340円なお、これに加え、営業手当(甲共3・第150条の2)も支給されており、令和元年分の営業手当は、163万5985円であった(甲B2)。 イ 原告bの給与基本給 27万4700円扶養手当 0円調整手当 0円なお、これに加え、その他手当2や、営業手当も支給されており、令和元年分の営業手当は、30万7161円であった(甲D3、4)。 ウ 賃金の支払期日毎月24日(ただし、その日が祝日、日曜日又は土曜日に当たるときは、その日前においてその日の直近の祝日、日曜日又は土曜日以外の日)支払(甲共3・第146条1項、2項)エ 賞与の支給被告は、6月1日に在籍する一般職員に対して夏季手当を、12月1日に 日前においてその日の直近の祝日、日曜日又は土曜日以外の日)支払(甲共3・第146条1項、2項)エ 賞与の支給被告は、6月1日に在籍する一般職員に対して夏季手当を、12月1日に在籍する一般社員に対して年末手当をそれぞれ被告が定めた支給日に支給するとしており(甲共3・第126条1項1号、第128条1項1号、第152条)、被告は、原告らに対し、夏季手当は6月30日に、年末手当は12月10日にそれぞれ支給していた。 夏季手当の支給額は、基本給、扶養手当、調整手当及び役割等級別等加算の合計額に在職期間割合及び支給の都度定める割合を乗じた額である(甲共3・第126条2項)。また、年末手当の支給額は、基本給、扶養手当、調整手当及び役割等級別等加算の合計額に在職期間割合及び支給の都度定める9 割合を乗じた額である基本分と、基本給、調整手当及び役割等級別等加算の合計額に在職期間割合及び査定区分に応じた成績率を乗じた額である業績分との合計額である(甲共3・第128条2項1号、2号)。 被告は、原告らが加入していた労働組合との間で、年度ごとに支給割合及び査定区分に応じた成績率について合意していたところ、2018年度から2021年度までにつき、夏季手当の支給割合は2.15か月分、年末手当の基本分の支給割合は1.00か月分、業績分の査定区分に応じた成績率(地域基幹職)は以下のとおり、それぞれ合意していた(甲共11、27、28)。 成績率 支給月数A査定 1.93 1.93月B査定 1.54 1.54月C査定(標準) 1.15 1.1 1.93 1.93月B査定 1.54 1.54月C査定(標準) 1.15 1.15月D査定 0.86 0.86月E査定 戒告 0.86 0.86月減給 0.81 0.81月停職(1月未満) 0.76 0.76月停職(1月未満を除く) 0.57 0.57月その他 0.66 0.66月また、被告において、在職期間が6か月以上の者の在職期間割合は、183分の183とされている(甲共3・第131条1項1号)。さらに、役割等級別等加算は、地域基幹職3級の場合、基本給及び調整手当に5%を乗じた額である(甲共3・第126条2項2号、別表第17)。なお、懲戒解雇の時点において、原告aは地域基幹職3級として役割等級別等加算の対象者であり(甲B2)、原告bは地域基幹職2級として役割等級別等加算の対象外であった(甲D3)。 ⑶ 懲戒処分に関する社員就業規則(以下「就業規則」という。)等の定め10 ア 就業規則の定め就業規則には、服務規律及び懲戒処分に関し、以下のとおり規定がある(甲共2)。 (職権濫用の禁止)第29条 社員は、職務上の権限を濫用してはならない。 2 社員は、職務上の地位を私のために利用し、又はその利用を他に提供してはならない。 (信用失墜行為の禁止)第33条 社員は、業務の 務上の権限を濫用してはならない。 2 社員は、職務上の地位を私のために利用し、又はその利用を他に提供してはならない。 (信用失墜行為の禁止)第33条 社員は、業務の内外を問わず、会社の信用を傷つけ、又は会社に勤務する者全体の不名誉となるような行為をしてはならない。 (懲戒)第81条 会社は、社員が次の各号のいずれかに該当するときは、次条第1項に定める懲戒を行うことができる。 ⑴ 法令又は会社の規程に違反したとき⑵ 職務を尽くさず、職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき⑶及び⑷ (略)⑸ 業務取扱いに関し不正があったとき⑹ないし⒁ (略)⒂ 業務の内外を問わず、会社の信用を傷つけ、又は会社に勤務する者全体の不名誉となるような行為があったとき⒃以下 (略)2以下 (略)(懲戒の種類)第82条 懲戒の種類は、次の各号に掲げるとおりとし、その取扱いは当該各号に定めるところによる。 11 ⑴ 懲戒解雇 即時に解雇する。(以下略)⑵以下 (略)2 (略)イ 懲戒規程の定め被告の懲戒規程には、以下のとおり定められている(甲共6)。 (定義)第2条 この規程において、次の各号に掲げる用語の定義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 ⑴ないし⑹ (略)⑺ 量定 非違に対する懲戒の種類及び程度をいう。 (懲戒標準)第4条 懲戒を行う場合には、権限者は、別記の「懲戒標準」により量定を決定する。 2 (略)(懲戒の加重)第5条 懲戒の決定に当たり、次の各号のいずれかに該当するときは、 (懲戒標準)第4条 懲戒を行う場合には、権限者は、別記の「懲戒標準」により量定を決定する。 2 (略)(懲戒の加重)第5条 懲戒の決定に当たり、次の各号のいずれかに該当するときは、量定を加重することができる。 ⑴及び⑵ (略)⑶ その他非違の情状が特に重いとき別記「懲戒標準」1 職務上の非違⑴ 重大な不祥事関係アないしエ (略)オ その他1 その他の重大な不祥事、上記ア~エに準ずる不都合な行為を行った者 「故意」の場合、懲戒解雇~停職12 ⑵ 職務上の不適正取扱いアないしウ (略)エ 株式会社cからの受託業務1ないし6 (略)7 保険契約者又は被保険者に対して、不利益となるべき事実を告げずに、既に成立している保険契約を解消若しくは変更させて新たな保険契約の申込みをさせ、又は新たな保険契約の申込みをさせて既に成立している保険契約を消滅させた者 「故意」かつ「重大なもの」の場合、停職8以下 (略)ウ 懲戒手続の定め被告の懲戒手続には、以下のとおり定められている(甲共6)。 (総則)第1条 この手続は、懲戒規程(以下「規程」という。)に基づき、社員の懲戒に関する具体的取扱いについて定めるものである。 (始末書の徴取)第4条 (略)2 非違のあった社員又はその社員を監督する社員は、その非違のてんまつ及び弁明する事情があればその内容を具体的に始末書に記述し、所属長に提出する。(ただし書 略)3 (略)(懲戒標準)第5条 規程第4条に定める懲戒標準については、次の各号により取り扱う。 ⑴ないし⑶ (略)⑷ 量定 出する。(ただし書 略)3 (略)(懲戒標準)第5条 規程第4条に定める懲戒標準については、次の各号により取り扱う。 ⑴ないし⑶ (略)⑷ 量定は、規程第5条又は第6条の適用により、懲戒標準に定め13 る量定の幅以外とすることがある。 ⑷ 原告らによる保険募集(以下、原告らが担当した下記の既契約の解約等と新規契約の受理までの一連の流れを「本件乗換」ともいう。)ア 原告aは、単独で又はdと共に、平成22年6月28日から平成30年8月7日までの間、当時67歳ないし75歳であった契約者某(以下「本契約者X」という。)に対して、既契約を解約等させつつ、新たな契約を募集し、別紙1通番4ないし43記載のとおり、計40件の保険契約を締結させた(乙B1の4ないし43、2、3、4の3ないし7、5の2ないし26。なお、別紙1中の「A」は本契約者Xを指す。)。 イ 原告bは、単独で又はe課長と共に、平成25年1月8日から平成30年10月11日までの間、当時75歳ないし81歳であった契約者某(以下「本契約者Y」といい、本契約者Xと併せて「本件各本契約者」という。)に対して、既契約を解約等させつつ、新たな契約を募集し、別紙2通番8ないし10、13ないし21、23、24及び26ないし37記載のとおり、計26件の保険契約を締結させた(乙D1の8ないし10・13ないし21・23・24及び26ないし37、2の1ないし3・6ないし14・16・17及び19ないし30、3、4の5ないし16・18・19及び21ないし27。 なお、別紙2中の「A」は本契約者Yを指す。)。 ⑸ 本件に関する報道等平成30年4月下旬頃、被告の渉外社員によるc社の保険商品の不適正募集が報道された。c社は、金融庁に対 21ないし27。 なお、別紙2中の「A」は本契約者Yを指す。)。 ⑸ 本件に関する報道等平成30年4月下旬頃、被告の渉外社員によるc社の保険商品の不適正募集が報道された。c社は、金融庁に対し、かかる報道の前後を通じて、対策について報告を行うなどしていた。その後、被告、f株式会社及びc社は、令和元年7月24日、c社契約問題特別調査委員会を設置し、同委員会は、同年12月18日付けで調査報告書を公表した(甲共8)。 ⑹ c社による不祥事故処分の通知c社は、原告らに対し、令和2年4月13日、生命保険募集人業務廃止の処14 分を通知した(甲B5、D9)。 ⑺ 被告による懲戒解雇の意思表示(以下、原告らに対する懲戒解雇処分を併せて「本件各懲戒解雇」という。)ア 被告は、原告aに対し、令和2年8月25日、就業規則81条1項1号、2号、5号及び15号により、懲戒解雇とする旨の意思表示をした(甲B1)。 そして、懲戒処分書に、処分理由として、次のとおり記載した。 「g郵便局お客さまサービス部主任及びh郵便局お客さまサービス部課長代理として在任中の2010年6月28日から2018年8月7日までの間、契約者某及び同某の親族8名を被保険者とする保険契約を募集する際、既契約を解約させ、同某の意向を把握することなく自己の都合のみで各契約を提案し、合計40件の新規保険契約を受理したものである。」イ 被告は、原告bに対し、令和2年9月30日、就業規則81条1項1号、2号、5号及び15号により、懲戒解雇とする旨の意思表示をした(甲D1)。 そして、懲戒処分書に、処分理由として、次のとおり記載した。 「i郵便局お客さまサービス部主任、j郵便局お客さまサービス部主任及びk郵便局金融渉外部主任として在任中の2 した(甲D1)。 そして、懲戒処分書に、処分理由として、次のとおり記載した。 「i郵便局お客さまサービス部主任、j郵便局お客さまサービス部主任及びk郵便局金融渉外部主任として在任中の2013年1月8日から2018年10月11日までの間、契約者某及び同某の親族5名を被保険者とする保険契約を募集する際、既契約を解約させ、同某の意向を把握することなく自己の都合のみで既契約と同種又は類似の各契約を提案し、合計26件の新規保険契約を受理したものである。」4 争点本件の争点は、以下のとおりである。 ⑴ 本件各懲戒解雇の有効性⑵ 未払賃金等請求権の有無及び額5 当事者の主張⑴ 争点1(本件各懲戒解雇の有効性)15 【被告の主張】本件各懲戒解雇は、以下のとおり、客観的合理的な理由及び社会通念上の相当性が認められ、有効である。 ア 客観的合理的な理由(懲戒事由)の存否原告らの本件各本契約者に対する募集行為は、就業規則81条1項1号、2号、5号及び15号の各懲戒事由に該当し、本件各懲戒解雇には「客観的合理的な理由」がある。 保険募集に関し著しく不適当な行為又は意向把握義務違反a 原告らが、本件各本契約者に締結させた乗換契約は、満期到来前に既存の保険契約を解約した上で新たに保険契約を締結するものであり、これに伴い満期時の返戻率よりも低い返戻率による解約返戻金しか受け取ることができないという損失(以下「解約損」という。)その他の不利益を契約者に与えるものであることから、原則として乗換契約を受理することは避けるべきと考えられており、現に被告及びc社においても、原告らを含めた募集人に対してその旨を告知し(乙共4〔6〕)、また、被告において募集人が乗 であることから、原則として乗換契約を受理することは避けるべきと考えられており、現に被告及びc社においても、原告らを含めた募集人に対してその旨を告知し(乙共4〔6〕)、また、被告において募集人が乗換契約を受理した場合、販売実績と営業手当が2分の1に減じられていたのであって、乗換契約を基本的に避けるべきであることは募集人において常識とされていた。そうである以上、本件乗換が全体として不合理であり、本件各本契約者の意向に反していることは事実上推定される。 また、高齢の本件各本契約者において多数の契約の締結と解約等が繰り返される状況それ自体が異常であるが、その結果として原告aは本契約者Xに対して530万円以上の、原告bは本契約者Yに対して580万円以上の解約損を生じさせているのだから、契約状況が不合理極まりないことは明らかである(ただし、簡易な計算方法による。)。そのため、原告らが、本件各本契約者に対する募集の全過程において、本件各本契16 約者の意向を把握していなかったことが強く裏付けられている。このことは、別紙3及び4の各被告の主張欄のとおり、本件乗換の経緯に関する原告らの主張が不合理であることからも認められる。 原告らは、本件乗換が不合理であること及び本件各本契約者の意向に反していたことを始末書において自認しており、しかも、多額の解約損を被った本件各本契約者自身も「勧められるままに複数の契約をした。」「社員を信頼しているので言われるがままに契約していた。」などと述べているのであるから、かかる事実上の推定がさらに補強される。 以上を踏まえると、本件各本契約者に解約損を被ってでも保険内容を変更することへの明確なニーズがない限り、本件各本契約者の意向に反するものと認められるべきであるところ らに補強される。 以上を踏まえると、本件各本契約者に解約損を被ってでも保険内容を変更することへの明確なニーズがない限り、本件各本契約者の意向に反するものと認められるべきであるところ、原告らの弁解はいずれも不合理であるから、推定は覆されておらず、原告らが本件各本契約者の意向に反して募集行為を行ったことは明らかである。 b 「ご意向確認書」は、顧客の具体的な意向を口頭で確認することを前提に、最終的な意向の確認を一定程度画一的に処理し、記録化するために準備されたもので、意向把握に係る業務の適切な遂行を確認できる措置として各保険会社において行う業務上の工夫の一つにすぎない。そのため、少なくとも、本件のように多数の契約が一度に乗り換えられている場面や、既契約が存在しているにもかかわらず重ねて同種・類似の契約を締結する場面のような合理性が認められない場面において、「ご意向確認書」の各欄にチェックを付けさせたことのみをもって、契約者の意向を確認した(意向把握義務を履行した)と解することはできない。 また、部長等の管理者が同行した際、管理職は、乗換契約の全体像を把握できていないのであるから、意向把握の正確性や契約締結に至る経緯、意向の詳細な内容の確認を行うものではない。 さらに、郵便局の責任者による「ご意向確認書」を含む契約関係書類17 の査閲や、c社における引受審査は、いずれも形式チェックを基本とする審査であったことを踏まえると、これらを通過したことをもって、本件各本契約者の意向に沿っていたことが裏付けられるわけではない。 c 意向把握義務が明文化される以前から、顧客の意向を把握・確認しなければならないことは当然であり、募集人が顧客の意向を把握・確認せず顧客のニーズに合致しない商品を勧誘 るわけではない。 c 意向把握義務が明文化される以前から、顧客の意向を把握・確認しなければならないことは当然であり、募集人が顧客の意向を把握・確認せず顧客のニーズに合致しない商品を勧誘するといった行為は、「保険募集に関し著しく不適当な行為」(保険業法307条1項3号)に該当する。 不利益事実の不告知a 告知の程度保険募集の際には、保険契約者が正しい理解に基づく適切な判断ができるよう、適正な説明等がなされることが必要であるところ、解約時に保険契約者が金銭的損失を受けるという抽象的な告知に留まることで、保険契約者の不知に付け込むことは、募集人の行為として明らかに不適切なものである。そのため、少なくとも本件のように、高齢者を契約者として同種又は類似の乗換契約の勧誘を行う場合には、募集人は解約損について契約者に対して具体的な説明を行う必要がある。すなわち、個々の乗換において具体的に生じる個別の解約損について説明するのみではなく、乗換が繰り返されている場合には解約損の累計額や乗換が繰り返されていることを含む契約状況を契約者に告知し、それによって契約者に契約を締結する前提として契約状況や自らが被る損失・不利益を理解させて、それでもそのような不利益な契約を締結する特別な意向があるのかを契約者に確認する必要がある。 なお、具体的な解約損の説明を行っていたという原告らの供述が虚偽であることは明らかであるが、本件において、そのような説明を行うことが求められていたということの自認に他ならない。 18 しかしながら、原告らは、本件各本契約者に対して、解約損の累計額はおろか、個別の解約損について具体的な説明を行っていないのであるから、不利益事実の不告知が認められる。 b 事後的な懲戒事由の追加に ら、原告らは、本件各本契約者に対して、解約損の累計額はおろか、個別の解約損について具体的な説明を行っていないのであるから、不利益事実の不告知が認められる。 b 事後的な懲戒事由の追加に当たるか懲戒事由としての意向把握義務と不利益事実の不告知はともに、全く同じ契約の募集行為を問題とするものであり、募集に際して原告らが適切な説明を本件各本契約者に対して行わないことなどにより十分に意向を把握せず、意向に沿わない商品を募集していたという一連の事実関係を対象にしているのであって、同一の事実関係を対象としているといえる。 また、原告らが指摘する最高裁判所平成8年(オ)第752号同年9月26日第一小法廷判決・裁判集民事180号473頁(以下「山口観光事件最高裁判決」という。)の射程は、使用者が懲戒当時において認識していた非違行為に対する懲戒処分に関する事案には及ばない。 その他前記a記載のとおり、原告らが募集した契約がいずれも不合理であることを踏まえると、原告らは、専ら自己の成績向上と報酬獲得のために、募集人としての権限・地位を濫用したというほかなく、原告らが行った募集行為は、職権濫用(就業規則29条1項、2項)に該当し、また、原告らの行為により被告の信用が毀損されており、信用失墜行為(就業規則33条)にも該当する。 イ 社会通念上の相当性の有無 処分量定に反するか被告の懲戒標準では、職務上の非違における重大な不祥事関係について、「故意」かつ「基本」の類型において懲戒解雇が適用量定として定められている。 19 また、懲戒規程には、一定の場合には、量定を加重できる旨が定められており、懲戒規程別記「懲戒標準」における適用量定の上限が停職と定められて 適用量定として定められている。 19 また、懲戒規程には、一定の場合には、量定を加重できる旨が定められており、懲戒規程別記「懲戒標準」における適用量定の上限が停職と定められている非違の種類についても、個別具体的な事情に照らして量定を加重し、懲戒解雇処分を行うことは可能である。 他の懲戒処分事例との均衡等原告が指摘する懲戒処分例の事案は、募集人が契約者から契約申込みを受理した後の手続的な事項に関する不正であったり、契約者が了承した上で行われた行為であったりと、本件とは性質を異にするものである。また、過去の不適正募集の事案においては、原告らと同様の多数かつ多額の損害を発生させる乗換を罪のない高齢者に対して行ったような悪質なものが存在しなかったために、懲戒解雇とされた者がいないにすぎない。 そして、被告は、原告らと同様に、乗換契約を行った者らについて、乗換件数や表彰の有無のみならず、契約者に生じた損害等の諸般の事情を考慮し、懲戒解雇にすべき事案のみ懲戒解雇としている。原告らと、原告aの共同募集人であるdでは、不適正募集期間、不適正募集件数、本契約者に生じた損害額、単独募集の有無、不適正募集に関わった経緯等がいずれも異なるのであって、被告は、これらの差異を考慮した上で、公平の原則に照らして懲戒処分を科している。 本件は、不適正募集問題が各種メディアによって報道されるなど社会的な問題に発展しており、現に外部から本件に関する苦情も少なからず寄せられたのであり、被告の企業秩序に与える影響が大きかったことは明らかである。また、被告及びc社は、本件各本契約者に対して、不適切に解約された契約を復元する措置を取るか、締結した契約を合意解除するかについて、意向を調査し、当該意向に沿って措置を実 かったことは明らかである。また、被告及びc社は、本件各本契約者に対して、不適切に解約された契約を復元する措置を取るか、締結した契約を合意解除するかについて、意向を調査し、当該意向に沿って措置を実施したが、その調査等には多額の費用及び労力が掛かっており、企業秩序への影響が軽微であるということはできない。 20 手続の適切性原告らは、c社による調査段階において、弁明を行う機会が与えられており、かつ、始末書の提出段階においても、弁明する事情があればその内容を具体的に記載可能であったのであり、十分に弁明の機会が付与されている。 そもそも、被告は、懲戒規程において、懲戒解雇に際して、弁明の機会の付与を手続上の義務としていない。 二重処罰に当たるか(原告b関係)原告bの指摘する懲戒処分(注意)の対象となった契約(別紙2通番15)は、本件乗換が繰り返されてきた中の1つの契約にすぎず、当該契約に関しての二重処罰該当性が原告bに対する懲戒解雇処分の有効性を左右し得るものではない。 また、原告bの指摘する懲戒処分(注意)は、別紙2通番15の契約における新旧比較表の不交付を処分の対象としているのに対し、原告bに対する懲戒解雇処分は、保険募集に関し著しく不適当な行為、意向把握義務違反及び不利益事実の不告知を処分の対象としているなど、両者は対象とする事実が異なっており、同じ事由について繰り返し懲戒処分を行う二重処罰には該当しない。 【原告らの主張】本件各懲戒解雇には、以下のとおり、客観的合理的な理由及び社会通念上の相当性のいずれも認められないから、労働契約法15条により、無効である。 ア 客観的合理的な理由(懲戒事由)の存否原告らは、下記のとおり、被告の 客観的合理的な理由及び社会通念上の相当性のいずれも認められないから、労働契約法15条により、無効である。 ア 客観的合理的な理由(懲戒事由)の存否原告らは、下記のとおり、被告の指摘する就業規則の各懲戒事由に該当していないのであるから、本件各懲戒解雇には客観的合理的な理由が存在しない。 保険募集に関し著しく不適当な行為又は意向把握義務違反21 原告らが行った保険募集行為は、全て、本件各本契約者の意向に従って行ったものであり、その際、被告又はc社が定めた手続に従って募集行為を行っており、原告らは、何ら不適切な募集行為を行っていない。 a c社には、乗換制度が存在しておらず、被保険者一人当たり原則として保険金額1000万円という上限がある以上、保険契約者がその時々の自身のニーズに合わせて保険契約の内容を見直そうとする場合、当該保険契約者の保険金額が既に限度額に達していると、乗換契約を行うほかない。 保険契約を解約すれば解約損が生じるのは、ある種、織り込み済みの事象であるから、解約損を殊更に重視すべきではない。解約損が生じることを承知しつつも、保険契約の解約を選択するニーズは存在するのであるから、本件各本契約者がなぜ解約という選択肢を選んだのかという事情を無視して、解約損だけで本件各本契約者に損失が生じたと評価することは誤りである。むしろ、満期時の払込保険料額と満期保険金の差額も経済的不利益と評価でき、将来生じるその不利益よりも、より小さな解約時の払込保険料額と解約返戻金の差額の不利益を選択して解約し、これまでよりも保障等が充実した新たな保険に入ることは、契約者の選択として当然あり得るところであり、かかる本件各本契約者の意向を反映した乗換を行うことは、何ら経済的に不合理では 益を選択して解約し、これまでよりも保障等が充実した新たな保険に入ることは、契約者の選択として当然あり得るところであり、かかる本件各本契約者の意向を反映した乗換を行うことは、何ら経済的に不合理ではない。 本件乗換が本件各本契約者の意向に従ってされたものであることは、別紙3及び4の各原告の主張欄に記載した本件乗換の経緯に照らしても明らかである。 原告らは、反省した内容の始末書を提出すれば処分が軽くなると考えていたものであり、始末書を重視すべきではない。また、c社による本件各本契約者に対する調査結果は、本件各本契約者の真意を反映しているかどうか定かではない。 22 b 被告又はc社のルールに従って、「ご意向確認書」に基づいて契約者の意向を確認していれば、募集人として行わなければならない意向把握義務は尽くしていたというべきであるところ、原告らは、本件各本契約者に対して、口頭での意向確認を経た後、「ご意向確認書」に基づいて意向の確認を行っており、本件各本契約者も、c社の調査に対して契約内容が意向と一致するものであったと回答しているのであるから、原告らの募集行為に何ら問題はない。 c 意向把握義務が明文化される以前の募集行為は、意向把握義務違反を構成しない。顧客のニーズに合致しない契約が締結された場合に、著しく不適当な行為(保険業法307条1項3号)にあたるという被告の主張は争う。 不利益事実の不告知a 告知の程度既契約を解約すれば、解約返戻金が払込保険料より少なくなるというある程度抽象的な可能性の告知で足りるというべきである。被告は、原告らを含めた募集人が、保険契約を募集する際、保険契約者の解約時既払込保険料額を適時適切に把握できるシステムを構築していなかったのであるから、少な な可能性の告知で足りるというべきである。被告は、原告らを含めた募集人が、保険契約を募集する際、保険契約者の解約時既払込保険料額を適時適切に把握できるシステムを構築していなかったのであるから、少なくとも、被告が原告らに対して具体的な解約損総額を保険契約者に明示することを求めていなかったことは、明らかである。 そして、原告らは、被告又はc社の定めた手続に従って保険募集行為を行っており、本件各本契約者に対して、既契約を解約すれば解約返戻金が払込保険料より少なくなることを説明していたのであって、不利益事項を十分告知していた。 b 事後的な懲戒事由の追加に当たるか意向把握義務違反は、契約の申込みを行おうとする保険商品が顧客のニーズに合致した内容であることを確認する機会を確保し、顧客が保険23 商品を適切に選択・購入することができるようにしたかを問題にするものであるのに対し、不利益事実の不告知は、解約損が生じることを伝えたかを内容とするものであるから、両者の義務内容は明らかに異なっているところ、不利益事実の不告知は、後から追加された懲戒事由であるから、山口観光事件最高裁判決に照らし、被告が懲戒事由を事後的に追加することは許されない。 その他原告が営業手当を受給したのは、労働契約に基づく自らの義務を履行した当然の結果である。原告らには、本件各本契約者を害してまで営業手当の受給を意図したことはなく、営業手当の受給は、職権濫用や、信用失墜行為には当たらない。 イ 社会通念上の相当性の有無原告らに対する本件各懲戒解雇は、下記のとおり、社会通念上相当とは認められない。 処分量定に反するか被告の主張は争う。 被告の懲戒規程において、c社からの受託業務に関する処分量定は、保 原告らに対する本件各懲戒解雇は、下記のとおり、社会通念上相当とは認められない。 処分量定に反するか被告の主張は争う。 被告の懲戒規程において、c社からの受託業務に関する処分量定は、保険契約者らに対して不利益となるべき事実を告げずに乗換契約を締結するなどした者については、「故意」かつ「重大なもの」であったとしても、停職処分しか定められていない。 したがって、本件各懲戒解雇は、懲戒規程に基づくものとはいえない。 他の懲戒処分事例との均衡等本件は、保険契約自体の存在ないし有効性が否定される懲戒事例に比し、企業秩序に与える影響は遥かに小さいから、被告の過去の懲戒処分例と比較すると、原告らに対する本件各懲戒解雇は、平等原則に違反する。 また、原告aの共同募集人であるdに対する懲戒処分は2か月間の停職24 処分にとどまっているから、本件各懲戒解雇は、懲戒処分の均衡を欠いていることが明らかである。 手続の適切性原告らには、本件各懲戒解雇にあたり、処分者である被告から弁明の機会が付与されておらず、本件各懲戒解雇には手続違反が存在する。 二重処罰に当たるか(原告b関係)本件不適正募集報道が出る以前に、契約の受理状況の調査が実施され、その結果、原告bが、乗換契約を締結する際、本契約者Yに対して、新旧比較表等を用いた説明を行わなかったほか、同比較表等を交付しないまま当該契約を受理する不適正募集を行ったとして、被告は、原告bに対し、注意するとの懲戒処分をした。 被告は、当時、原告bに対する懲戒解雇事由で挙げた本契約者Yの調査を実施しており、本契約者Yの契約に関する事実について把握していたにもかかわらず、事実を取捨選択し注意の懲 処分をした。 被告は、当時、原告bに対する懲戒解雇事由で挙げた本契約者Yの調査を実施しており、本契約者Yの契約に関する事実について把握していたにもかかわらず、事実を取捨選択し注意の懲戒処分にとどめたのであるから、原告bに対する懲戒解雇処分は同じ事実に対する処分であって、二重処罰に該当し、一事不再理の原則に違反する。 ⑵ 争点2(未払賃金等請求権の有無及び額)【原告らの主張】原告らは、無効な本件各懲戒解雇によって被告から就労を拒否されたのであるから、被告に対し、民法536条2項により、下記のとおり労働契約に基づく賃金請求権及び賞与請求権を有する。 ア 原告a 賃金 47万2001円(毎月末締め、毎月24日払)請求期間 令和2年8月分以降【計算式】31万1400円(基本給)+9340円(調整手当)+15万125 261円(平成31年の営業手当A及びB(外交員報酬)の合計181万5136円の1か月平均(小数点以下切捨て))=47万2001円賞与 71万2918円(夏季手当:毎年 6月30日払、年末手当:毎年12月10日払)請求期間 令和2年度年末手当以降【計算式】(30万6600円(基本給)+0円(扶養手当)+9200円(調整手当)+1万5790円(役割等級別等加算額))×1(在職期間割合)×2.15(支給月数)=71万2918円(小数点以下切捨て)イ 原告b 賃金 30万0346円(毎月末締め、毎月24日払)請求期間 令和2年9月分以降【計算式】27万4700円(基本給)+0円(調整手当)+50円(その他手当) 万0346円(毎月末締め、毎月24日払)請求期間 令和2年9月分以降【計算式】27万4700円(基本給)+0円(調整手当)+50円(その他手当)+2万5596円(平成31年の営業手当A及びB(外交員報酬)の合計30万7161円の1か月平均(小数点以下切捨て))=30万0346円賞与 59万0605円(夏季手当:毎年 6月30日払、年末手当:毎年12月10日払)請求期間 令和2年度年末手当以降【計算式】(27万4700円(基本給)+0円(扶養手当)+0円(調整手当)+0円(役割等級別等加算額))×1(在職期間割合)×2.15(支給月数)=59万0605円ウ 夏季手当及び年末手当について26 夏季手当については、前年度評価が反映されないものとされ、従業員が一律2.15か月分と取り扱われていたから、原告らも夏季手当2.15か月分を受給し得ることが労働協約又は労働契約上定められていた。 また、年末手当の基本分の支給割合は1か月分とされ、業績分に関して「今年度4月1日に採用された社員については、前年度評価がないため、業績分については、C評定(標準)を基本とします。」とされていたから(甲共11、28)、前年度評価が存在しない原告らもC査定(標準)と取り扱われるべきであり、1.15か月分とすべきである。 【被告の主張】基本給及び調整手当については認めるが、その余は否認する。 営業手当は、営業成績等に基づいて支給されるものであるから、前年の1か月平均の営業手当を賃金の基礎とする合理的な理由はない。 年末手当は、C査定を基本とするとの記載は新入社員を対象としたものであるから、同記載をもって原告らが されるものであるから、前年の1か月平均の営業手当を賃金の基礎とする合理的な理由はない。 年末手当は、C査定を基本とするとの記載は新入社員を対象としたものであるから、同記載をもって原告らがC査定となる理由にはならない。 「その他手当」とは、原告bが当時入会していたf社員持株会への1月当たりの拠出金に関して被告が負担していた奨励金のことと推測されるが、原告bは、令和2年10月以降拠出金を支払っていない。 第3 当裁判所の判断1 認定事実前記前提事実のほか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 乗換契約について(争いなし)保険契約者が締結していた既契約を解約、失効、未入金解除、特約解約、特約失効、保険金額(特約を含む。)の減額変更又は保険料払済契約への変更(以下、併せて「解約等」という。)をさせて新規契約の申込みをさせ、又は新規契約の申込みをさせて既保険契約を解約等させる行為を「乗換契約」という。 27 乗換契約は、新規契約の締結により、既契約にはなかった保障内容を得ることが可能となるといったメリットが存する反面、既契約の返戻率(払込済保険料に対する受取金(満期保険金額、解約返戻金額又は死亡保険金額)の割合)が低くなること、既契約に代わる新規契約においては一般的に被保険者の加齢や予定利率(保険会社が契約者から受け取った保険料を運用する際に約する利率)の低下により保険料が上昇すること、態様によっては無保険期間が生ずること、乗換時の健康状態によっては新規契約の審査が通らず、解約以降長期間にわたって無保険状態になり得ること、新規契約の締結時点での契約者の告知義務が生じること及び自殺免責期間(契約から一定の期間内に被保険者が自殺した場合、死亡保険金が支払われないという取決 以降長期間にわたって無保険状態になり得ること、新規契約の締結時点での契約者の告知義務が生じること及び自殺免責期間(契約から一定の期間内に被保険者が自殺した場合、死亡保険金が支払われないという取決めがなされた期間)がリセットされること等の不利益が保険契約者に生じることもある。 そのため、金融庁作成の「保険募集管理態勢の確認検査用チェックリスト」において、乗換契約は、「不利益になる可能性があることの顧客への説明等、適切な勧誘を行う」ことが必要な類型であり(Ⅲ2⑥(ⅰ))、「通常の募集以上に注意を要する募集」に位置付けられている(Ⅲ1⑥(ⅰ))。 ⑵ c社における乗換契約に関する仕組みc社は、乗換契約における販売実績及び営業手当の計算において、当初、新規契約と同様にその100%を計上していた。しかし、c社は、平成22年3月下旬以降、保険契約者と被保険者の双方が同一の者である既契約と新規契約について、既契約の解約等が新規契約の契約日より前1か月から当該新規契約の契約日の後6か月までの間に行われているものを乗換契約と判定し、その後、平成27年4月以降、既契約の解約等が新規契約の契約日より前3か月から当該新規契約の契約日の後6か月までの間に行われているものを乗換契約と判定することとし、これら乗換契約と判定された契約について、一定条件を満たした場合に、営業手当及び販売実績について、新規契約受理時の2分の1を計上することとした。(争いなし。甲共8〔47、48〕)28 ⑶ c社における募集人に対する研修指導等ア c社は、募集人に対する研修を行っていたところ、その研修用資料には、下記の記載がある(乙共4)。 記「保険募集においては、お客さまのニーズを的確に把握して、ニーズに合った商品提案を c社は、募集人に対する研修を行っていたところ、その研修用資料には、下記の記載がある(乙共4)。 記「保険募集においては、お客さまのニーズを的確に把握して、ニーズに合った商品提案を行うこと。」(〔1〕)「お客様に現状を把握いただき、ライフイベントに合わせたニーズを引き出す。」(〔1〕)「ご契約に関する注意事項(注意喚起情報)」により説明しなければならない16項目の1つとして、「現在のご契約の『解約・減額を前提とした新たなご契約』の不利益」が挙げられ、「お客さまは解約返戻金が払込保険料合計額より少なくなったり、戻ってこないことを理解されているか。」(〔4〕)「営業活動時の禁止事項」として、「契約者等に不利益となる事実を告げずに、既契約(他社の保険契約を含みます。)を解約させて新契約の申込みをさせる又は新契約の締結後に既契約を解約させるなどの行為は、不当な乗換募集となります。」、「保険契約は、本来、継続することがお客さまの利益にかなう行為であり、お客さまの明確な解約意思や保険内容を変更することへのニーズがない場合は、保険契約の乗換を勧めてはいけません。」(〔6〕)「満70歳以上のお客さまに対して募集する場合は、商品内容等についてより確実に理解していただき、事後のトラブルの発生を防止するため、商品の内容や重要な事項等について、ゆっくりと大きな声で説明するとともに、説明した内容を理解していただいていることを丁寧に確認する必要があります。」(〔7〕)「十分に説明したつもりでも、お客さまに理解していただいていないと29 思われる場合や、ご家族等がいらっしゃらなくて同席ができずお1人で契約されることに心配がある場合には、保険募集を控えることも必要です。」(〔7〕) まに理解していただいていないと29 思われる場合や、ご家族等がいらっしゃらなくて同席ができずお1人で契約されることに心配がある場合には、保険募集を控えることも必要です。」(〔7〕)イ c社が作成した「新契約の手引」には、下記の記載がある(乙共1、5)。 記「乗換契約において、解約等(括弧内略)の対象となる保険契約は、契約成立日から起算して、前3か月から後6か月の契約応当日(括弧内略)までにおける保険契約が対象ですが、お客さまへの無保険期間やお客さまからの無用な保険料の二重払いの期間を発生させないように注意します。」(〔3〕)⑷ 高齢者に対する保険募集について生命保険協会が公表している「高齢者向けの生命保険サービスに関するガイドライン」には、「高齢者に対する保険商品の提案や重要事項等の説明に際しては、加齢に伴う認知機能等の低下に配慮し、適切かつ十分な説明を行うことが重要である。」との記載がある(乙共7〔4〕)。 ⑸ 原告らによる募集行為ア 原告aは、単独で又はdと共に、平成22年6月28日から平成30年8月7日までの間に当時67歳ないし75歳であった本契約者Xが行った本件乗換を担当し、原告bは、単独で又は課長であるeと共に、平成25年1月8日から平成30年10月11日までの間に当時75歳ないし81歳であった本契約者Yが行った本件乗換を担当したところ、原告らは、本件乗換の際、本件各本契約者に対し、被告ないしc社が作成した書式に基づく「ご契約に関する注意事項(注意喚起情報)」(甲共31)、「ご意向確認書」及び「新旧比較表」(甲共14・参考4)などを示しながら説明を行い(甲B4〔20、21〕、D8〔10、11〕、原告a〔17、18、38〕、原告b〔5、8、9〕)、本件各本契約者は、 「ご意向確認書」及び「新旧比較表」(甲共14・参考4)などを示しながら説明を行い(甲B4〔20、21〕、D8〔10、11〕、原告a〔17、18、38〕、原告b〔5、8、9〕)、本件各本契約者は、「ご意向確認書」に記入して、原告らはこれら30 を徴収した(乙B8、D7)。 イ 上記アの「ご意向確認書」には、取扱者において、契約者のニーズ(具体的な記載は、時期による多少の違いがあるものの、「資産形成・貯蓄」、「病気・ケガへの備え」、「死亡時の遺族保障」、「満期保険金のお受け取り」、「子ども・孫への教育資金の準備」等の概要である。)を記載した上で、契約者が「ご提案させていただいた保険商品(基本契約・特約保障内容)は、ご契約者さまのご要望・ご意向(ニーズ)を満たしている。また、満たせないご要望・ご意向(ニーズ)がある場合は、その旨を了解している。」、「基本契約・特約ごとの保障内容(支払事由等)は、ご提案の内容でよろしいですか。」、「ご提案の商品は、生命保険商品です。預貯金ではありません。解約返戻金は、多くの場合、払込保険料合計額を下回ります。」などの確認事項に回答するものであるところ、本件各本契約者は、これらに対して「はい」と回答するなどし、本件乗換がいずれも本件各本契約者の要望や意向に沿ったものである旨を記入した(乙B8、D7)。「ご意向確認書」には、その後、乗換契約に関し、「別紙の『ご留意事項』に関して、ご了解いただけましたか。」又は「乗換契約の不利益事項について、別紙により説明を受け、ご理解いただけましたか。」といった確認事項が設けられ(乙B8の10ないし29、D7の4ないし33)、その別紙(甲共14・参考3、乙共2)には、「多くの場合、返戻金は払込保険料合計額より少ない金額になります。」、「ご契約を解約等されると、多くの場 れ(乙B8の10ないし29、D7の4ないし33)、その別紙(甲共14・参考3、乙共2)には、「多くの場合、返戻金は払込保険料合計額より少ない金額になります。」、「ご契約を解約等されると、多くの場合、返戻金は払込保険料合計額より少ない金額になります。」といった乗換契約の不利益事項が記載されていたところ、本件各本契約者は、平成26年12月ないし平成27年4月頃以降、これら確認事項についても、「はい」と回答した(乙B8の16ないし29、乙D7の7ないし33)。 また、「ご契約に関する注意事項(注意喚起情報)」(甲共31)には、乗換契約に関し、「現在のご契約の『解約・減額を前提とした新たなご契約』をご31 検討のお客さまは、不利益になる事項もありますのでご注意ください」、「現在のご契約を解約、減額した場合にお支払いする返戻金の額は、多くの場合、払込保険料の合計額より少ない金額となります。特にご加入後短期間の場合は、返戻金がない場合やごく少ない金額となる場合となる場合があります。」といった乗換契約の不利益事項が記載されていた。 他方で、「新旧比較表」(甲共14・参考4)には、解約損の額の記載はなく、それを記載する欄も存在しなかったほか、被告ないしc社においては、乗換の際に契約者に対して解約損の額を記載して提示する書式も、その額の記載ないし口頭説明をすべきことを指導する研修資料もない(甲共14、弁論の全趣旨)。 ウ 原告aは、本契約者Xが70歳となって以降に本件乗換を担当するに当たっては、本契約者Xに対し、家族や親族の同席を依頼したが、親族等が遠方に住んでいるということで、別紙1通番43の保険契約を除いて、同席はできなかった(乙B8の10ないし29)。もっとも、親族等の同席ができない場合には、お客さまサービス部長ら管理者等が原 親族等が遠方に住んでいるということで、別紙1通番43の保険契約を除いて、同席はできなかった(乙B8の10ないし29)。もっとも、親族等の同席ができない場合には、お客さまサービス部長ら管理者等が原告aらに同行し、又は管理者等が本契約者Xに電話などによる確認をしていた(乙B8の17ないし28)。 また、原告bは、本契約者Yに係る本件乗換を担当するに当たっては、遅くとも平成26年7月頃以降、別紙2通番30の保険契約を除いて、本契約者Yの娘も同席させて契約内容等の説明をしていた(乙D7の4ないし33、原告b〔9、20〕。なお、別紙2通番30の保険契約については、原告bらが、本契約者Yの娘に対して、事前に契約内容等の説明を行った(乙D7の19)。)。 ⑹ 「ご意向確認書」を含む申込関係書類の被告における審査等(甲共8〔39ないし41、107〕)原告らを含めた募集人によって受理された「ご意向確認書」を含む申込関係32 書類は、郵便局長等から指定された内務の責任者に引き継がれ、内務の責任者によって、申込みを受けた保険契約が締結されることにより当該保険契約に係る被保険者の加入限度額を超過することにならないか、申込書への署名・押印の有無、「ご意向確認書」における顧客の記載内容、高齢者募集時の家族等の同席の有無等を確認する審査が実施された。内務の責任者は、審査を終えた後、申込関係書類を、局(部)長に引き継ぎ、局(部)長は、「ご意向確認書」について、記載事項に漏れがないか、筆跡が同一か等を確認するとともに、保険契約者の意向と申込みを受けた保険商品の内容に疑義がある場合は、募集人に状況を確認するといった申込関係書類の査閲を実施した。 郵便局における申込審査の手続が完了した後、申込関係書類はc社に送付され、c社において、送付漏れ書類の有無 品の内容に疑義がある場合は、募集人に状況を確認するといった申込関係書類の査閲を実施した。 郵便局における申込審査の手続が完了した後、申込関係書類はc社に送付され、c社において、送付漏れ書類の有無や、筆跡確認を含む記載内容の欠落等の有無などを経た後、保険引受けの可否を決定していく引受手続が実施された。 第三者委員会の報告書は、前記の「ご意向確認書」を含む申込関係書類の被告における審査等につき、形式チェックを基本的な内容とするものであったと評価している。 ⑺ 意向確認書に関する金融庁の見解金融庁は、平成19年2月22日付け「コメントの概要とコメントに対する金融庁の考え方」と題する書面において、以下のとおりコメントしている(甲共12〔3〕)。 記「『意向確認書面』は、契約の申込みを行おうとする保険商品が顧客のニーズに合致した内容であることを確認する機会を確保し、顧客が保険商品を適切に選択・購入することができるようにするためのものです。確かに、顧客が『意向確認書とも分からず、契約するために必要な署名のひとつとして署名する』ものとなってしまえば、『意向確認書面』が制度として形骸化してしまい、上記目的を達成することが出来なくなってしまいます。保険会社に対しては、『意33 向確認書面』をまさに実効性あるかたちで運用することを求めており、金融庁としても、『意向確認書面』が実効性あるものとなっているか、形骸化していないか等について注視しつつ、監督を行って参りたいと考えております。」⑻ 原告らによる始末書(以下「本件各始末書」という。)の提出ア 原告aについて原告aは、l郵便局長に対し、令和2年6月18日付け始末書を提出した(乙B7)。その内容(抜粋)は、次のとおりである。 「平成22年6月2 )の提出ア 原告aについて原告aは、l郵便局長に対し、令和2年6月18日付け始末書を提出した(乙B7)。その内容(抜粋)は、次のとおりである。 「平成22年6月28日から平成30年8月7日の間、お客様からの意向をしっかり把握することなく保険契約を多数受理し、その過半を解約させ新たに保険の契約を受理した行為について申し述べます。 今回の非違を発生させた理由は自分自身の営業目標のためでありお客様との良好な人間関係を築いていたことによりお客様にあまえてしまい、本来お客様の事を第一に考えなければならない所で自分自身の事を優先して行動していたことが原因で結果としてお客様だけでなく会社に対しても多大な御迷惑をかけてしまいました。」「寛大なご措置を賜りますようお願い申し上げます。」イ 原告bについて原告bは、k郵便局長に対し、令和2年6月15日付け始末書を提出した(乙D6)。その内容(抜粋)は、次のとおりである。 「私は、平成20年7月14日(月)から平成30年10月11日(木)の間保険契約者及び、その親族5名を被保険者とする保険契約を募集する際、既契約を解約させ、保険契約者の意向を把握することなく申込を受理しました。 また、既契約を解約させ、新たに類似の保険へ申込を行い契約者に実損を与える経済合理性のない契約を受理するという保険募集に関する事故を発生させました。 34 今回、非違を発生させた理由は、日々のノルマ、四半期ごとのノルマ未達成者の研修に参加しない様、数字へのプレッシャーや焦りが常にあったことです。」「プレッシャーを感じていたとしても、お客様に不利益、実損を与えることになり、決してしてはいけないことでした。」「寛大な処置を賜ります様、お願い申し上げます。」 焦りが常にあったことです。」「プレッシャーを感じていたとしても、お客様に不利益、実損を与えることになり、決してしてはいけないことでした。」「寛大な処置を賜ります様、お願い申し上げます。」⑼ 本件各本契約者からの聴取ア 本契約者Xについてc社の調査員(m及びn)は、令和元年6月7日、同年7月29日及び同年8月5日、本契約者Xから聴取を行った。 本契約者Xから聴取した結果を記載した令和元年8月5日付け「多数契約調査用紙(保険契約者さま用)(様式1)」(乙B6の1)には、「保険であるのでリスクがあり、契約は自己責任であることは認識している。」、「勧められるままに複数の契約をした。」、「これほど契約を申込み、解約を繰り返し損失があるとは思わなかった。」(同〔1〕)、既契約を解約した場合、解約返戻金は、払込保険料より少なくなり、新たな保険を契約する場合、加入年齢が上がるので、既契約より保険料が高くなるという保険の仕組みについて、「認識はあった」、「郵便局担当者から説明を受けた」、「保険なので解約した場合、解約返戻金は払込保険料より少なくなるのは承知している。社員を信頼しているので言われるがままに契約していた。」(同〔2〕)などと記載されている。 また、「【個別契約確認用】多数契約調査用紙(様式2)」(乙B6の1)には、本契約者Xが手続当時の状況を記憶していた別紙1通番18の保険契約に関して、乗換理由等については、「郵便局担当者からの積極的な提案」、「制度が変わって、新しい保険が出たということで切り替えたと思う。」と記載され(同〔4〕)、意向確認に関しては、どのような保険商品を希望している35 か郵便局の社員からヒアリングを受けたかとの問いに対して、「受けた」と、ヒアリング時に回答した意向について と記載され(同〔4〕)、意向確認に関しては、どのような保険商品を希望している35 か郵便局の社員からヒアリングを受けたかとの問いに対して、「受けた」と、ヒアリング時に回答した意向については「孫に均等にお金を残してやりたい。」と、郵便局の社員から提案を受けた商品は意向と一致するものであったかとの問いに対して、「一致している」とぞれぞれ記載され(同〔5〕)、「ご意向確認書」の作成に当たり、意向確認に要した時間について、約30分と記載されている(同〔6〕)。また、同用紙には、申込時70歳以上の契約について、郵便局の社員から事前の家族の同席の依頼があったこと、理解の助けとなる方法として、申込時に家族が同席したことが記載されているほか(同〔6〕)、乗換契約の場合、郵便局の社員は、「ご意向確認書(乗換契約専用)」を使用し、お客さま控えの裏面の留意事項(不利益事項)を説明したかについて「すべて説明を受け理解した」、郵便局の社員は「ご契約内容のお知らせ(乗換用)」、「保障設計書(契約概要)」及び「現在ご加入のご契約とおすすめプランの比較について」又は「今回おすすめするプランの比較(新旧比較表)」を交付し、新旧契約の比較の説明をしたかについて「交付及び説明を受け、理解した」、「新旧契約の比較の説明は受けたが、具体的にどれだけ損をするかは聞いていない。一般的に保険は多少の掛け捨てはあると理解しているが、これまでの契約及び解約により多額の損益があると聞き驚いている。」(同〔7〕)などと記載されている。 イ 本契約者Yについてc社の調査員(m及びn)は、令和元年6月5日、同年7月30日、同年8月6日、本契約者Yから聴取を行った。本契約者Yから聴取した結果を記載した令和元年7月30日付け「多数契約調査用紙(保険契約者さま用)(様式1)」 びn)は、令和元年6月5日、同年7月30日、同年8月6日、本契約者Yから聴取を行った。本契約者Yから聴取した結果を記載した令和元年7月30日付け「多数契約調査用紙(保険契約者さま用)(様式1)」(乙D5の1)には、「保険であるのでリスクがあり、契約は自己責任であることは認識している。」、「郵便局の…社員が親切なので、ほぼ勧められるままに複数の契約をした。」、「これほど契約を申込み、解約を繰り返し損失があるとは思わなかった。」(同〔1〕)、既契約を解約した場合、解約返36 戻金は、払込保険料より少なくなり、新たな保険を契約する場合、加入年齢が上がるので、既契約より保険料が高くなるという保険の仕組みについて、「認識はあった」、「郵便局担当者から説明を受けた」、「保険なので解約した場合、解約返戻金は払込保険料より少なくなるのは承知している。…社員を信頼しているので言われるがままに契約していた。」(同〔2〕)などと記載されている。 また、「【個別契約確認用】多数契約調査用紙(様式2)」(乙D5の1)には、本契約者Yが手続当時の状況を記憶していた別紙2通番33の保険契約に関して、乗換理由等については、「郵便局担当者からの積極的な提案」、「制度が変わって、新しい保険が出たということで切り替えたと思う。」と記載され(同〔4〕)、意向確認に関しては、どのような保険商品を希望しているか郵便局の社員からヒアリングを受けたかとの問いに対して、「受けた」と、ヒアリング時に回答した意向については「孫に均等にお金を残してやりたい。」と、郵便局の社員から提案を受けた商品は意向と一致するものであったかとの問いに対して、「一致している」とそれぞれ記載され(同〔5〕)、「ご意向確認書」の作成に当たり、意向確認に要した時間について約60分と記載されている(同 受けた商品は意向と一致するものであったかとの問いに対して、「一致している」とそれぞれ記載され(同〔5〕)、「ご意向確認書」の作成に当たり、意向確認に要した時間について約60分と記載されている(同〔6〕)。また、同用紙には、申込時70歳以上の契約について、郵便局の社員から事前の家族の同席の依頼があったこと、理解の助けとなる方法として、申込時に家族が同席したことが記載されているほか(同〔6〕)、乗換契約の場合、郵便局の社員は、「ご意向確認書(乗換契約専用)」を使用し、お客さま控えの裏面の留意事項(不利益事項)を説明したかについては、「すべて説明を受け理解した」と、郵便局の社員は「ご契約内容のお知らせ(乗換用)」、「保障設計書(契約概要)」及び「現在ご加入のご契約とおすすめプランの比較について」又は「今回おすすめするプランの比較(新旧比較表)」を交付し、新旧契約の比較の説明をしたかについては、「交付及び説明を受け、理解した」、「新旧契約の比較の説明の概要は、理解したつも37 りであるが、具体的にどれだけ損失があるかの説明はなかったと思う。これまでの契約等により670万円もの損益があるとは、まったく理解していなかった」(同〔7〕)などと記載されている。 ⑽ 本件各本契約者による契約の解約本件各本契約者は、解約(減額、料済)された保険契約の復元や、締結されていた保険契約の合意解約を希望し、c社は、それらの措置を講じた(乙共8〔18、31〕、B6の1、D5の1)。 ⑾ 原告らに対する表彰ア 原告aについて原告aは、平成22年、平成27年、平成28年及び平成30年に、被告らから営業成績の優績者などとして表彰を受けた(甲B6ないし10)。 イ 原告bについて原告bは、平成26年及び平成2 は、平成22年、平成27年、平成28年及び平成30年に、被告らから営業成績の優績者などとして表彰を受けた(甲B6ないし10)。 イ 原告bについて原告bは、平成26年及び平成27年に、被告から営業成績の(準)優績者などとして表彰を受けた(甲D11、12)。 ウ 優績者の選奨基準として、乗換契約の発生率が算出され、当該発生率が低いことも要素の一つとされていた(甲共29、乙共9)。 2 争点1(本件各懲戒解雇の有効性)について⑴ 客観的合理的な理由(懲戒事由)の存否ア 被告は、原告らが、本件各本契約者の意向を把握せず、乗換契約に伴う不利益を本件各本契約者に告知しなかったなどとして、本件各懲戒解雇には、客観的合理的な理由が認められる旨主張する。 イ しかし、被告は、c社の保険商品の募集行為を行う原告らを含めた募集人に対して、募集行為を行うに当たっては、「ご契約に関する注意事項(注意喚起情報)」や「ご意向確認書」等を示しながら説明を行い、保険契約者の意向を確認し、それが乗換契約である場合には、「別紙」(甲共14・参考3、乙共2)を用いて、乗換契約に伴う種々の不利益を説明することを求める一方38 で、その説明すべき不利益の内容として、個々の乗換契約の際に生じた解約損の額や過去の乗換契約を含めて生じた解約損の累計額まで説明するよう具体的な指示をしていなかった。そして、原告らは、本件各本契約者に対し、本件乗換に際して、「ご契約に関する注意事項(注意喚起情報)」、「ご意向確認書」及び「新旧比較表」等を示しながら、その意向を確認し、乗換契約に伴う種々の不利益を当該別紙を用いるなどして説明しており、本件各本契約者は、本件乗換が自らの意向に沿うものである旨を「ご意向確認書」に記入し、署名押印していたものである その意向を確認し、乗換契約に伴う種々の不利益を当該別紙を用いるなどして説明しており、本件各本契約者は、本件乗換が自らの意向に沿うものである旨を「ご意向確認書」に記入し、署名押印していたものである(認定事実⑸ア、イ、⑼)。かかる事実関係に照らせば、原告らは、乗換契約の募集行為を行う際に、被告が募集人に対して一般的に求めていた程度の顧客の意向把握や、不利益事実の告知を履践していたものと認められる。 保険業法300条で保険契約者に説明すべき「不利益となるべき事実」に、乗換契約によって生じる解約損の額が一般的に含まれると解することはできず、また、契約者の判断能力や理解度等の個別の事情によっては、保険会社ないし募集人に解約損の額まで説明すべき私法上の義務が生じる場合があること自体は否定しないものの、本件各証拠によっても、本件各本契約者は、乗換によって解約損が生じることを理解しており、かつその判断能力や理解力に特段の問題があったとは認められないから、本件乗換に当たり本件各本契約者に対して解約損の額まで説明すべき義務があったとまで認めることはできない。 そうすると、原告らに意向把握義務違反や不利益事実の不告知があったと認めることはできない。 また、本件各証拠によっても、原告らが専ら自己の成績向上等のために募集人としての権限・地位を濫用したと認めることはできない。 以下、これらについて、具体的に述べる。 ウ 意向把握義務違反に関する被告の主張について39 被告は、乗換契約が保険契約者に解約損その他の不利益を与えるものであり、被告及びc社においては、乗換契約の受理を避けるべきとされていたことから、乗換契約は全体として不合理であり、本件乗換が本件各本契約者の意向に反していることが事実上推定されるなどと主張する。 被告及びc社においては、乗換契約の受理を避けるべきとされていたことから、乗換契約は全体として不合理であり、本件乗換が本件各本契約者の意向に反していることが事実上推定されるなどと主張する。 募集人に対する研修資料には、「お客さまの明確な解約意思や保険内容を変更することへのニーズがない場合は、保険契約の乗換を勧めてはいけません。」との記載があるが(認定事実⑶ア)、かかる記載によっても、保険契約者のニーズがある場合に、乗換契約の募集を行うことが禁じられていたとは認められない。また、金融庁も、乗換契約の募集行為を「通常の募集以上に注意を要する募集」に位置付けていたにとどまり(認定事実⑴)、乗換契約の募集行為を一律に禁止していたものではない。そもそも、乗換契約には、既契約にはなかった保障内容を得ることができるというメリットが認められるのであって(認定事実⑴)、そのようなメリットを重視した保険契約者による乗換契約が一律に不合理であるということはできない。また、c社においては、乗換契約である場合に、営業手当及び販売実績の計算において新規契約の場合の2分の1として取り扱われ(認定事実⑵)、優績者の選奨基準に乗換契約の発生率が低いことが用いられている(認定事実⑾ウ)が、これらは、乗換契約においては募集人において契約の獲得が相対的に容易であるという側面があることを考慮したにすぎないとの見方も可能であって、これらをもってc社が乗換契約を原則として避けるべきものとしていたとみることはできない。そうすると、乗換契約はおよそ不合理な契約であるなどと断じることはできず、乗換契約であることやそれが多数されていることのみをもって、本件乗換が本件各本契約者の意向に反していることが事実上推定されるということはできない。 したがって、本件乗換が本件各本契約 ことはできず、乗換契約であることやそれが多数されていることのみをもって、本件乗換が本件各本契約者の意向に反していることが事実上推定されるということはできない。 したがって、本件乗換が本件各本契約者の意向に反していることは、本件各懲戒解雇が有効である旨を主張する被告において具体的に立証すべ40 き事柄であるといえる。 また、被告は、本件各本契約者の意向に反していることが推定されることを前提にしつつ、それを裏付けるものとして本件乗換の個々の不合理性についても主張する。 しかしながら、前記のとおり、本件乗換が本件各本契約者の意向に反していることは本件各懲戒解雇が有効である旨主張する被告において立証すべき事柄であり、かつ、その判断に当たっては、本件乗換当時、本件各本契約者がどのような意向を具体的に示していたのか、本件乗換に当たって原告らが本件各本契約者にどのようなメリット等を説明したのか、説明を受けたメリット等についてその時点で本件各本契約者が理解できていなかったのかなどについての検討が必要である。この点については、本件各本契約者の陳述書の証拠提出や証人尋問はされておらず、令和元年6月以降に実施された本件各本契約者からの聴取結果はあるものの、本件乗換に係る個別の契約の具体的な経緯については、本件各本契約者において当時の状況の記憶があった各1件についての記録があるのみであり、かつ、原告らが指摘する各乗換理由について、それが存在する可能性を本件各本契約者に確認したものでもない(なお、被告ないしc社にとって本件各本契約者は顧客に当たることから、その協力が得られる範囲について一定の限界があり得ることは否めないが、他方で、従業員の懲戒解雇という重大な効果を導く事項であることに照らすと、十分な事実確認が求められると 約者は顧客に当たることから、その協力が得られる範囲について一定の限界があり得ることは否めないが、他方で、従業員の懲戒解雇という重大な効果を導く事項であることに照らすと、十分な事実確認が求められるというべきである。)。また、乗換理由に係る原告らの主張や供述は、原告らの記憶に基づくものであるが、本件乗換に係る契約書類を踏まえて記憶を喚起するとしても、そもそも、被告ないしc社において、契約時に作成される「ご意向確認書」には、顧客のニーズを簡略に記載する程度しか求められておらず、募集に当たって把握した顧客のニーズを詳細に記録化して保存しておくことが求められていたものではないことや、古い契約が多数41 含まれることから、喚起できる記憶の正確性や具体性には限界があることが否めない。本件乗換の理由に関する原告らの説明が十分に合理的であるといえないことは、原告らが本件各本契約者の意向を十全に把握できていたのかに疑義を生じさせるものであるが、上記に照らすと、この点のみを過度に評価することは相当でない。前記のとおり、乗換契約には、既契約にはない新たな保障を得られるというメリットも存するのであり(認定事実⑴)、証拠上本件各本契約者の各契約当時の具体的な意向がどのようなものであったかは明確とはいえないが、乗換契約に伴って生ずる解約損その他の不利益があることを想定しつつ、原告らから説明を受けたメリットを享受するために、契約の時点においては、本件各本契約者が本件乗換をあえて選択した可能性も否定できない。したがって、本件乗換に関する原告らの説明に不合理な部分があるとしても、これをもって直ちに、原告らが本件各本契約者の意向を把握していなかったことを推認させるものとまではいえない。 被告は、本契約者Xには530万円以上の、本契約者Yには580万円以上の るとしても、これをもって直ちに、原告らが本件各本契約者の意向を把握していなかったことを推認させるものとまではいえない。 被告は、本契約者Xには530万円以上の、本契約者Yには580万円以上の累計の解約損がそれぞれ生じているところ、本件各本契約者が、「勧められるままに複数の契約をした。」、「社員を信頼しているので言われるがままに契約していた」などと述べていることから、原告らには意向把握義務違反が認められる旨主張する。 しかしながら、原告らは、本件各本契約者に対して、解約損その他の不利益が生じること自体は告げており、本件各本契約者も解約損その他の不利益について原告らから説明を受け「認識はあった。」と述べており(認定事実⑸ア、イ、⑼)、解約損その他の不利益を認識しつつ本件各本契約者は本件乗換を行ったものと認めるのが相当である。また、後記エのとおり、原告らには具体的な解約損の額やその累計額を告げる義務があったとは認められないのであるから、本件各本契約者に対して個々の解約損の額や42 その累計額を告げた上でなお乗換契約を行うか否かについての意向を把握すべき義務も認められない。そのため、本件各本契約者が「これほど契約を申込み、解約を繰り返し損失があるとは思わなかった。」などと述べているとしても(認定事実⑼)、本件各本契約者の意向を把握していなかったとはいえない。 そもそも、本件各本契約者は、本件乗換が自らの意向に反していたとは明確に述べておらず、原告らから提案を受けた商品は意向と一致するものであったかとの問いに対して、「一致している」と回答している(認定事実⑼)。本件各本契約者が原告らの勧めた内容の保険を契約したとしても、契約に至る過程においては、募集人が保険商品のメリットを説明したり、契約者のニーズに関する会話が している」と回答している(認定事実⑼)。本件各本契約者が原告らの勧めた内容の保険を契約したとしても、契約に至る過程においては、募集人が保険商品のメリットを説明したり、契約者のニーズに関する会話がされたりするのが通常であり、上記回答は、本件乗換においても、そのような過程を経て、本件各本契約者がその意向に沿う保険を契約したことに整合するから、上記回答は、本件乗換が本件各本契約者の意向に反するものではなく、原告らが意向把握義務を履践していたことを裏付けるといえる。 したがって、本件各本契約者の供述を踏まえても、原告らに意向把握義務違反は認められない。 被告は、原告らが提出した本件各始末書において、本件乗換が不合理であること及び本件各本契約者の意向に反していたことを認めていることから、原告らには意向把握義務違反が認められるなどと主張する。 しかしながら、本件各始末書は、原告らが、本件各本契約者のいかなる意向を把握していなかったとしているのかが明らかではなく、本件各本契約者の意向と本件乗換の内容がいかなる点において相違していたのかを具体的に述べるものではない。また、本件各始末書を作成し提出した動機について、原告aは、物事を穏便に済ませるために自分の非を認めるような内容にした方がいいと判断したと述べ(甲B4〔22〕)、原告bは、逆43 らわずに始末書を提出すれば解雇されることはないと思って作成したなどと述べているところ(甲D8〔14、15〕、原告b〔24〕)、本件各始末書の内容(認定事実⑻)に照らすと、これらの供述が必ずしも不合理であるとはいい難い。そのため、本件各始末書をもって、原告らが本件各本契約者の意向を把握していなかったと認めることはできない。 以上のとおり、意向把握義務違反に らの供述が必ずしも不合理であるとはいい難い。そのため、本件各始末書をもって、原告らが本件各本契約者の意向を把握していなかったと認めることはできない。 以上のとおり、意向把握義務違反に関する被告の主張はいずれも採用することができない。 エ 不利益事実の不告知の存否についての被告の主張について被告は、少なくとも本件のように高齢者を契約者として同種又は類似の乗換契約の勧誘を行う場合には、募集人は個々の解約損の額のみならず、その累計額についても契約者に説明を行う必要があり、これらを怠った原告らには不利益事実の不告知が認められる旨主張する。 しかしながら、被告が原告らを含めた募集人に対する研修において使用していた研修資料にも、解約損については、「お客さまは解約返戻金が払込保険料合計額より少なくなったり、戻ってこないことを理解されているか」との記載があるにすぎず(認定事実⑶ア)、募集行為を行う際に原告らを含めた募集人が用いていた「ご契約に関する注意事項(注意喚起情報)」にも「現在のご契約を解約、減額した場合にお支払いする返戻金の額は、多くの場合、払込保険料の合計額より少ない金額となります。特にご加入後短期間の場合は、返戻金がない場合やごく少ない金額となる場合があります。」との記載があるにとどまること、「新旧比較表」にも、解約損の額を記載される仕様になっていなかったこと(認定事実⑸イ)、募集人において顧客の解約損の累計額を容易に知り得る体制になっていたとは証拠上認められないことに照らすと、被告が、原告らを含めた募集人に対して、具体的な解約損の額やその累計額を保険契約者に対して告知することを求めていたとは認められない。また、保険契約者が高齢者である場合であっても、被告は、加齢に伴う44 認知機能等の低下に配慮し、説明 的な解約損の額やその累計額を保険契約者に対して告知することを求めていたとは認められない。また、保険契約者が高齢者である場合であっても、被告は、加齢に伴う44 認知機能等の低下に配慮し、説明した内容を保険契約者が理解しているかを確認するよう原告らを含めた募集人に対して求めていたにとどまり(認定事実⑶ア、⑷)、原告らを含めた募集人は、保険契約者が乗換契約に伴って解約損が生じることを理解しているかを確認していれば、被告が要求していた水準の不利益事実の告知としては足りるものというべきである。 また、契約者の判断能力や理解度等の個別の事情によっては、保険会社ないし募集人に解約損の額まで説明すべき義務が生じる場合があること自体は否定しないものの、本件各本契約者は、乗換によって解約損が生じることを理解しており、かつその判断能力や理解力に特段の問題があったとは認められないし(証人n〔31〕、弁論の全趣旨)、本契約者Yについては、遅くとも平成26年7月頃以降、契約の際に娘が同席していたのであるから、本件各本契約者や本契約者Yの娘において解約損の額やその累計額を具体的に知りたい場合には、募集人である原告らに問い合わせることは可能でありかつ容易であった。そうすると、原告らが本件乗換の募集をするに当たり、本件各本契約者に対して解約損の額まで説明すべき義務があったとまで認めることはできない。 したがって、被告の主張を踏まえても、原告らが本件各本契約者に対して個々の解約損額やその累計額を告知する義務を負っていたものと解することはできないから、仮に、原告らが本件各本契約者に対して個別の解約損額等を告げていなかったとしても、不利益事実の不告知は認められない。 オ その他、被告は、原告らが専ら自己の成績向上と報酬獲得のために、募集人としての権限・地位を濫 件各本契約者に対して個別の解約損額等を告げていなかったとしても、不利益事実の不告知は認められない。 オ その他、被告は、原告らが専ら自己の成績向上と報酬獲得のために、募集人としての権限・地位を濫用したなどと主張する。 しかし、以上の検討結果のほか、本件各証拠によっても、原告らが、販売実績や営業手当を不当に得る目的で契約時期を恣意的に操作するなど、乗換契約に係る契約期間の規制(認定事実⑵参照)を潜脱した事実や、顧客の意向把握のために設けた被告の審査体制(認定事実⑹参照。なお、被告は、こ45 れを形式チェックとし、第三者委員会の報告書にもその旨の記載があるが(認定事実⑹)、当該審査体制は保険業法294条の2が規定する顧客の意向の把握に向けた義務にも由来するものと考えられること、申込関係書類の査閲において、保険契約者の意向と申込みを受けた保険商品の内容に疑義がある場合は、募集人に状況を確認するとされていたこと(認定事実⑹)、金融庁が「意向確認書面」の実効性ある運用を求めていたこと(認定事実⑺)に照らすと、単なる形式チェックを目的にしたものとみることはできない。)を原告らが潜脱しようと企図した事実なども認定できないことを踏まえると、被告が主張するような募集人としての権限・地位の濫用の事実を認定することはできない。 したがって、被告の主張は採用できない。 ⑵ 結論したがって、被告の主張する本件各懲戒解雇の客観的合理的な理由(懲戒事由)が認められないから、その余の点について判断するまでもなく、本件各懲戒解雇は無効である。 3 争点2(未払賃金等請求権の有無及び額)について⑴ 原告aについてア 賃金について原告aに対する懲戒解雇処分の前年である令和元年分の原告aの営業手当は、163万59 3 争点2(未払賃金等請求権の有無及び額)について⑴ 原告aについてア 賃金について原告aに対する懲戒解雇処分の前年である令和元年分の原告aの営業手当は、163万5985円(1か月当たり13万6332円(小数点以下切捨て))であったところ(前提事実⑵ア)、原告aが優績者として表彰されることもあったこと(認定事実⑾ア)などを考慮すると、懲戒解雇処分がなされなければ、原告aには少なくとも月額13万6332円の営業手当が支給されたものと認めるのが相当である。 したがって、原告aは、被告に対して、月額合計45万7072円(基本給31万1400円、調整手当9340円、営業手当13万6332円)の46 賃金支払請求権を有すると認められる。 イ 賞与について 夏季手当について被告と、原告らが加入していた労働組合との間では、2018年度から2021年度までにつき、いずれも夏季手当の支給割合を2.15か月分と合意していたものであることを踏まえると(前提事実⑵エ)、原告らの夏季手当の支給割合は2.15か月分と認めるのが相当である。そのため、原告aは、被告に対し、下記【計算式】のとおり72万4070円の夏季手当の支払請求権を有するところ、原告aは、そのうち71万2918円を請求しているものと認められる。 【計算式】{31万1400円(基本給)+0円(扶養手当)+9340円(調整手当)+(31万1400円+9340円)×0.05(役割等級別等加算)}×1(在職期間割合)×2.15(支給割合)=72万4070円(小数点以下切捨て) 年末手当についてa 基本分被告と、原告らが加入していた労働組合との間では、2018年度から2021年度までにつき、いずれも年 =72万4070円(小数点以下切捨て) 年末手当についてa 基本分被告と、原告らが加入していた労働組合との間では、2018年度から2021年度までにつき、いずれも年末手当の基本分の支給割合を1. 00か月分と合意していたものであることを踏まえると(前提事実⑵エ)、原告らの年末手当の基本分の支給割合は1.00か月分と認めるのが相当である。そのため、原告aの年末手当の基本分は下記【計算式】のとおり33万6777円と認められる。 【計算式】{31万1400円(基本給)+0円(扶養手当)+9340円(調整手当)+(31万1400円+9340円)×0.05(役割等級別47 等加算)}×1(在職期間割合)×1.00(支給割合)=33万6777円b 業績分原告らは、査定区分に応じた成績率(支給割合)について、新入社員に関して前年度評価がないため、業績分についてはC査定(標準)を基本とするとされていること(甲共11、28)を根拠に、原告らについてもC査定(標準)と扱うべきであるなどと主張する。しかしながら、原告らが新入社員ではないことや、原告らがこれまでC査定(標準)の査定を被告から受けてきたことを認めるに足りる的確な客観証拠がないこと、原告らに対して令和2年度以降人事査定が実施されていないことなどを考慮すると、原告らが優績者として表彰されることもあったこと(認定事実⑾)を踏まえても、原告らの査定区分に応じた成績率としては、E査定(その他)の成績率0.66(支給月数0.66月)を用いるのが相当である。そのため、原告aの年末手当の業績分は下記【計算式】のとおり22万2272円と認められる。 【計算式】{31万1400円(基本給)+9340円(調整手当)+(31万1400円 るのが相当である。そのため、原告aの年末手当の業績分は下記【計算式】のとおり22万2272円と認められる。 【計算式】{31万1400円(基本給)+9340円(調整手当)+(31万1400円+9340円)×0.05(役割等級別等加算)}×1(在職期間割合)×0.66(支給割合)=22万2272円(小数点以下切捨て)c 小括以上によれば、原告aは、被告に対し、合計55万9049円(33万6777円(基本分)+22万2272円(業績分))の年末手当の支払請求権を有すると認められる。 ⑵ 原告bについてア 賃金について48 営業手当について原告bに対する懲戒解雇処分の前年である令和元年分の原告bの営業手当は、30万7161円(1か月当たり2万5596円(小数点以下切捨て))であったところ(前提事実⑵イ)、原告bが(準)優績者として表彰されることもあったこと(認定事実⑾イ)などを考慮すると、懲戒解雇処分がなされなければ、原告bには少なくとも月額2万5596円の営業手当が支給されたものと認めるのが相当である。 その他手当2について「その他手当2」とは、原告bが入会していたf社員持株会への1月当たりの拠出金(1口1000円)に関し、被告が負担していた奨励金(当該持株会の会員が負担する拠出金の5%)を指すものと解されるところ、令和2年10月以降、原告bがf社員持株会に対して拠出金を支払っていたことを認めるに足りる証拠はないのであるから、原告bが「その他手当2」として賃金50円の支給を受ける権利を有するとは認められない。 小括以上によれば、原告bは、被告に対して、月額合計30万0296円(基本給27万4700円、営業手当2万5596円)の賃金支 支給を受ける権利を有するとは認められない。 小括以上によれば、原告bは、被告に対して、月額合計30万0296円(基本給27万4700円、営業手当2万5596円)の賃金支払請求権を有すると認められる。 イ 賞与について 夏季手当について前記⑴イのとおり、原告らに対する夏季手当の支給割合は2.15か月分と認めるのが相当であるところ、原告bは、下記【計算式】のとおり毎年59万0605円の夏季手当の支払請求権を有すると認められる。 【計算式】(27万4700円(基本給)+0円(扶養手当)+0円(調整手当)+0円(役割等級別等加算))×1(在職期間割合)×2.15(支給割合)49 =59万0605円 年末手当についてa 基本分前記⑴イaのとおり、原告らに対する年末手当の基本分の支給割合は1.00か月分と認めるのが相当であるところ、原告bの年末手当の基本分は下記【計算式】のとおり27万4700円と認められる。 【計算式】(27万4700円(基本給)+0円(扶養手当)+0円(調整手当)+0円(役割等級別等加算))×1(在職期間割合)×1.00(支給割合)=27万4700円b 業績分前記⑴イbのとおり、原告らの査定区分に応じた成績率はE査定(その他)の成績率0.66(支給月数0.66月)と認めるのが相当であるところ、原告bの年末手当の業績分は下記【計算式】のとおり18万1302円と認められる。 【計算式】(27万4700円(基本給)+0円(調整手当)+0円(役割等級別等加算))×1(在職期間割合)×0.66(支給割合)=18万1302円c 小括以上によれば、原告bは、被告に対し、合計45万6 27万4700円(基本給)+0円(調整手当)+0円(役割等級別等加算))×1(在職期間割合)×0.66(支給割合)=18万1302円c 小括以上によれば、原告bは、被告に対し、合計45万6002円(27万4700円(基本分)+18万1302円(業績分))の年末手当の支払請求権を有すると認められる。 第4 結語よって、原告らの請求は、主文第1項ないし第4項の限度で理由があるからこれらを認容することとし、その余は理由がないからこれらをいずれも棄却するこ50 ととして、主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官 谷 口 哲 也 裁判官 藪 田 貴 史 裁判官 北 村 規 哲 (別紙1ないし4 いずれも添付省略)

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