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主文 本件控訴を棄却する。当審における訴訟費用は被告人の負担とする。理由 本件控訴の趣意は、弁護人佐々木哲蔵作成、弁護人中野留吉作成、弁護人都馬有恒、同近藤友房共同作成の各控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。一、 中野弁護人の控訴趣意中刑事訴訟法第三七八条第四号の主張について。本論旨の第一は、原判決は罪となるべき事実の(一)において、被告人は歳出金支払証票を騙取したと判示するのみで、歳出金支払通知書については何等判示していない。しかし、支払証票のみ騙取しても無価値で支払通知書と一体をなさねば金員を受取ることはできず、詐欺罪の構成要件に該当しない。被告人が払渡局長たる地位を利用して支払証票のみを以て何等かの作為をなし、手数料を騙取したりとするならば、その具体的事実を判示しなければならない。この点において原判決は理由不備であると主張するのである。なるほど、原判決書によると、原判決は第四、罪となるべき事実(一)において、所論のとおり歳出金支払証票を騙取しと判示するのみで、歳出金支払通知書にふれていないが、その第六の適条の項において、右(一)の所為に対し刑法第二四六条第一項を適用していることから考えると、原判決は歳出金支払証票そのものを財物と認めているものと解せられるから、右支払証票が財物であるか否かは問題であり、この点については後述することになるが、原判決の考えの下にあつては、詐欺罪の判示として構成要件である財物の具体的表示があり、欠くるところがないので、原判決に所論のように理由不備の点はないものと思料する。本論旨第二は、原判決は弁護人の犯罪不成立の理由となる事実の主張について判断を示していない。すなわち弁護人は(一)被告人は妻Aが正当な代理人で代理権を有す ように理由不備の点はないものと思料する。本論旨第二は、原判決は弁護人の犯罪不成立の理由となる事実の主張について判断を示していない。 構成要件である財物の具体的表示があり、欠くるところがないので、原判決に所論のように理由不備の点はないものと思料する。本論旨第二は、原判決は弁護人の犯罪不成立の理由となる事実の主張について判断を示していない。すなわち弁護人は(一)被告人は妻Aが正当な代理人で代理権を有す ように理由不備の点はないものと思料する。本論旨第二は、原判決は弁護人の犯罪不成立の理由となる事実の主張について判断を示していない。すなわち弁護人は(一)被告人は妻Aが正当な代理人で代理権を有する者と考えて手数料の支払をしたもので代理権がないと知れば支払をしなかつたのである。これは刑罰法規の錯誤でなく、刑罰法規の前提となる法律関係の錯誤すなわち民法の錯誤であることを主張し、犯罪不成立を陳述したが、原判決はこれに対して何らの判断をなさず(二)印紙、切手の買入、売さばきは一般的に代理が許されるものだと主張したのに対し、原判決は本件被告人及びその妻Aに対し売さばき人が代理権を与えたと認定し難いと判示したのみであつて、切手、印紙の売さばき行為が一般的に代理の目的になるものか否かの判示がないというのである。しかし、刑事訴訟法第三三五条第二項の法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実とは、犯罪構成要件に該当する事実以外の事実であつて、法が特に犯罪の成立を阻却すべきものと規定した事実をいうのであつて、所論(一)(二)の事由は、原判決が認定する本件詐欺或いは業務上横領の犯罪構成要件に該当する事実の不知或いはそれに関する法律論を主張し、結局犯意の不存在事実を主張するもので、法が特に犯罪の成立を阻却すべきものとして規定した事実でもないので、右は刑事訴訟法第三三五条第二項に該当しない。原判決は被告人らが代理権の附与を受けたものとは認められず、又そのことを被告人らも承知していたものであることは証拠により認められるとし、その証拠を掲示判断しているのであり、原判決がこれ以上に判断を示さなくとも、所論のように審理不尽とか理由不備はない。以上本論旨第一、第二は理由がない。二各控訴趣意は、原判決は事実を誤認し又法律上罪とならざる事実を罪となるものと断じた違法が 以上に判断を示さなくとも、所論のように審理不尽とか理由不備はない。以上本論旨第一、第二は理由がない。二各控訴趣意は、原判決は事実を誤認し又法律上罪とならざる事実を罪となるものと断じた違法があるとするので、順次それに対する判断をする。 も、所論のように審理不尽とか理由不備はない。以上本論旨第一、第二は理由がない。二各控訴趣意は、原判決は事実を誤認し又法律上罪とならざる事実を罪となるものと断じた違法が 以上に判断を示さなくとも、所論のように審理不尽とか理由不備はない。以上本論旨第一、第二は理由がない。二各控訴趣意は、原判決は事実を誤認し又法律上罪とならざる事実を罪となるものと断じた違法があるとするので、順次それに対する判断をする。(一) 本件犯行の主体について。論旨は、原判決が本件犯行の主体は被告人であるとするのは誤認である。妻Aは単なる名義上のものではない。妻Aが被告人を補助したものではなく、被告人が妻Aを補助したものであると主張するのである。よつて案ずるに、原判決書により明らかなように、原判決は本件犯行の主体は被告人のみで、妻Aは単なる名義上のものであると認定しているものでなく、原判決第四の罪となるべき事実の項においては、被告人は妻Aと共謀の上、本件を敢行したものと認定しているのであり、又原判決第七の弁護人の主張に対する判断の(一)の項においては「本件切手類の売さばき行為の主体は、弁護人主張の如く妻Aであるということはできない、妻Aは補助的役割をしていた」と説示しているのである。すなわち、原判決の認定するところは、被告人と妻Aとは共謀共同正犯で、その役割は被告人は主導的であり、妻Aは補助的であるというのである。ところで右の事実認定は、原判決が証拠を掲げ、説示するとおりであつて、誤りはない。すなわち、原判決の説示のとおり、被告人は、従来B郵便局長として郵便切手、印紙の売さばき業務を担当し、その間自己の努力により印紙類の大口需要者を開拓し、之に売さばくことにより月平均約五万円ないし七万円の収益を上げ、これによつて主として生活費を賄つていたところ、昭和二三年八月二五日特定局長が公務員となり、特定局長個人に対する切手類売さばき制が廃止されたため局長個人として手数料を得ることができなくなり、その頃妻A名義で切手及び印紙の売 費を賄つていたところ、昭和二三年八月二五日特定局長が公務員となり、特定局長個人に対する切手類売さばき制が廃止されたため局長個人として手数料を得ることができなくなり、その頃妻A名義で切手及び印紙の売さばき人の資格を得て従来通りの手数料を得ていたところ、昭和二四年法律第九一号郵便切手類売さばき所及び印紙売さばき所に関する法律が制定せられ、同年六月一日以降は、手数料の最高額が定められ、売上げ額百万円を限度として手数料の最高限度は、月額一万一、一〇〇円となり、それ以上はいくら売さばいても手数料の支払を受け得られないこととなつたため、被告人の如き大口需要者に売さばいたものには極めて不利となり、その結果被告人は妻Aと相談の上、B郵便局管内の売さばき人の承諾を得て、その名義を使用して手数料を受けていたが昭和二四年春頃B郵便局が局舎を移し、被告人の住居と近接したので、妻A名義の切手類売さばき人を辞退するよう郵政監察局より指示され、昭和二五年三月妻A名義の売さばきを止めたが、その後も従前同様管内の売さばき人の名義を借り、印紙、切手の買受、売さばきをし、手数料を得ていたものである。 て不利となり、その結果被告人は妻Aと相談の上、B郵便局管内の売さばき人の承諾を得て、その名義を使用して手数料を受けていたが昭和二四年春頃B郵便局が局舎を移し、被告人の住居と近接したので、妻A名義の切手類売さばき人を辞退するよう郵政監察局より指示され、昭和二五年三月妻A名義の売さばきを止めたが、その後も従前同様管内の売さばき人の名義を借り、印紙、切手の買受、売さばきをし、手数料を得ていたものである。(本件の罪となるべき事実はこの最後の段階の分である)ところで、大口需要者を開拓したのは被告人で、昭和二五年三月以降も印紙の注文は被告人が主として受け、又対郵便局の関係の手続は被告人で段取りし、妻Aは被告人の指示に基きこれらの需要者に印紙を届け、その代金を受領するとか、売さばき人の名義を借るために、売さばき人方に赴き切手、印紙の売渡請求書、手数料請求書に捺印を貰い、又謝礼を届ける等の役割をしていたことが認めらる。してみると原判決が、本件は被告人と妻Aとの共謀による行為であり、且つその間の役割は被告人が主導的であり、妻Aが補助的であるとする認定に誤りはない。所論は、右の原判決の認 をしていたことが認めらる。してみると原判決が、本件は被告人と妻Aとの共謀による行為であり、且つその間の役割は被告人が主導的であり、妻Aが補助的であるとする認定に誤りはない。所論は、右の原判決の認定を独断とするが、むしろ、前記のとおり本件の経過、本件は被告人がB郵便局(特定局)長であり、この局長の地位を利用することにより行われたものであること、又被告人とAは夫婦関係にあることからみても、原判決の認定は一般条理にかない、所論を検討しても独断とは解し難い。論旨は理由がない。(二) 原判決が騙取の客体を歳出金支払証票としている点について。各所論の要旨は、歳出金支払証票(以下単に支払証票とも称する)は有価証券でも、金券でも財物でもない。すなわち、支払証票はこれとは別途に指定局より切手、印紙の売さばき人宛に発行せられる歳出金支払通知書(兼受領証)―これがいわゆる金券である―による金額を右の歳出金支払通知書(兼受領証)の所持人に対し、規定の手続により払い渡され度い旨の単なる依頼通知書にすぎないのである。一つの照会文書で一般人の手に渡ることのない特定局備付の単なる手続用書類にすぎず、もとより財物と目すべきものでないというのである。 い。すなわち、支払証票はこれとは別途に指定局より切手、印紙の売さばき人宛に発行せられる歳出金支払通知書(兼受領証)―これがいわゆる金券である―による金額を右の歳出金支払通知書(兼受領証)の所持人に対し、規定の手続により払い渡され度い旨の単なる依頼通知書にすぎないのである。一つの照会文書で一般人の手に渡ることのない特定局備付の単なる手続用書類にすぎず、もとより財物と目すべきものでないというのである。<要旨第一>よつて案ずるに、原判決が騙取の客体を歳出金支払証票としていることは原判決書により明らかであり、従</要旨第一>つて右支払証票が財物でないとすれば、原判決は罪とならない事実を罪となるものと断じ違法であることになる。ところで、歳出金支払証票は原判決が証拠(証第一三号等)により認定しているとおり、売さばき手数料の支払に関し、指定局(本件ではB郵便局)から特定局(本件ではB郵便局)に送付されるものであるが、売さばき手数料の支払の手続は、先ず売さばき人から手数料の請求書を特定局に差出させ、特定局長がその余白に 支払に関し、指定局(本件ではB郵便局)から特定局(本件ではB郵便局)に送付されるものであるが、売さばき手数料の支払の手続は、先ず売さばき人から手数料の請求書を特定局に差出させ、特定局長がその余白に相違ない旨を証明の上、これを指定局に回送し、指定局では、右請求書を審査して、歳出金支払通知書及び歳出金支払証票を発行し通知書は売さばき人に、証票は特定局長に送付され、売さばき人は右の歳出金支払通知書に記名押印して特定局に提出し、特定局はこれと支払証票とを照合し相違ないことを確認の上、所定の現金を支払うものである。もつとも原審証人Cの原審公判廷(第一六回)の供述、証人Dの原審公判廷(第二四回)の供述及び証第一〇号、第一二号、第一五号、第一六号によれば大阪郵政局の管内では本件原判示第四の(一)の当時指定局(本件ではB郵便局)から特定局(本件ではB郵便局)に支払通知書と支払証票とが共に送付され、特定局では局長がこの両書類によつて売さばき人をも代表して手数料を現金化し、その現金を切手、印紙の売さばき人に渡していたことが認められる。(被告人等は当時行われたこの便宜手続を利用することにより、名義を借りた売さばき人等に、自己の行為の内容を知られることなく行動し得たものである。)なるほど支払証票(証第一三号)の文面によると、支払証票は金員の所定の手続による払い渡しの依頼書であり、歳出金支払通知書(兼受領証)はこれを提出して金員の支払いを受け得る書面であつて、そして右の両書面が揃い照合されて手数料の支払いがあるのである。 認められる。(被告人等は当時行われたこの便宜手続を利用することにより、名義を借りた売さばき人等に、自己の行為の内容を知られることなく行動し得たものである。)なるほど支払証票(証第一三号)の文面によると、支払証票は金員の所定の手続による払い渡しの依頼書であり、歳出金支払通知書(兼受領証)はこれを提出して金員の支払いを受け得る書面であつて、そして右の両書面が揃い照合されて手数料の支払いがあるのである。そうするとこの両書面はこれを合一してみると、財産的価値があり財物であることはいうまでもないが、しかし右両書面を別々に考えても、支払通知書の方は、これは郵便局に提出することにより金員の支払を受け得る書面で財産的価値を有するものと認められるし、支 的価値があり財物であることはいうまでもないが、しかし右両書面を別々に考えても、支払通知書の方は、これは郵便局に提出することにより金員の支払を受け得る書面で財産的価値を有するものと認められるし、支払証票にしても、これは一般人の手に渡るものでなく、郵便局に備え付けられるものであるけれども、この文書と照合されて始めて支払通知書は十分効力を発揮し、手数料の支払も認められるものであつて、なお郵便局にとつては金員の支払の正当性を確認するための書面であり、有価証券的性格はもたないけれども、なお財産的価値のあるものといわねばならない。(この書面を窃取した場合、財物の窃取として窃盗罪を認めざるを得ないであろう)してみると、支払証票だけでも財物と認められないものでなく、原判決がこれを財物と認めたことに誤りがあるとはいえない。本論旨も理由がない。(三) 切手、印紙の売さばきの代理について。各所論の要旨は、切手及び印紙の売さばき行為は商行為であり、代理の許される行為である。又昭和二四年法律第九一号郵便切手類売さばき所及び印紙売さばき所に関する法律第一一条第二項の規定に売さばき人の代理を認めた規定こそあれ、その他には代理を禁じたとみられる規定は何一つ存しないのである。ところで本件で被告人の妻Aが売さばき人の切手類売渡要求書に売さばき人の認印を貰つているのは、売さばき人の委任を受け、切手類の買受け、売さばき、手数料の請求につき代理をしているのである。売さばき人の名をもつてする被告人の妻Aは売さばき人を装うてこれらの行為をしているものでなく、売さばき人の代理人として売さばき人の名をもつて(代理人が本人の名をもつてする代理は一般に認められるところである)行為をしたもので、そこには何ら欺罔行為はないというのである。 渡要求書に売さばき人の認印を貰つているのは、売さばき人の委任を受け、切手類の買受け、売さばき、手数料の請求につき代理をしているのである。売さばき人の名をもつてする被告人の妻Aは売さばき人を装うてこれらの行為をしているものでなく、売さばき人の代理人として売さばき人の名をもつて(代理人が本人の名をもつてする代理は一般に認められるところである)行為をしたもので、そこには何ら欺罔行為はないというのである。<要旨第二>よつて案ずるに、原判決挙示証拠に 売さばき人の名をもつて(代理人が本人の名をもつてする代理は一般に認められるところである)行為をしたもので、そこには何ら欺罔行為はないというのである。<要旨第二>よつて案ずるに、原判決挙示証拠によれば、国から切手及び印紙の売さばきを委託された売さばき人には、</要旨第二>その売さばきにつき売渡月額に応じ、前記昭和二四年法律第九一号第七条所定の手数料が支給され、その手数料は本件当時は一箇月一万一、一〇〇円を限度としていたこと、売さばき人によつてはこの枠の余つている分があることから、当初被告人及び妻Aはこの枠の余つている分を利用し、右法律の認めない余分の手数料を利得しようと意図したこと、(即ちこの当時はいわゆる枠貸である)それにつけて被告人や妻Aは本件関係の売さばき人に依頼して切手類売渡し請求書用紙、切手類売渡手数料請求用紙(昭和二七年七月以降の分は切手類売渡手数料請求書受領証用紙)にその郵便局に届出の認印を押して貰つたこと、その後妻Aも売さばき人をやめた為、本件当時においては、被告人等の売さばき行為については、B郵便局長たる公務員又はその家族の売さばきとして前記法律による手数料が貰えなくなつていたのにかかわらず、従来通りの方法を用いていたこと、そしてこのことによつて郵便局からの切手類の買受け及び郵便局への手数料の請求、これが受領は名義上は右売さばき人名によつてなされたが、実質は被告人及び妻Aの計算においてなされたこと、又被告人等はその行為の結果を名義人に報告するわけでもなく、即ち売さばき人は右切手類の買受行為、売さばき行為及びその手数料の請求受領の行為には何ら関知せず(本件当時大阪郵政局管内に行われていた前記便宜措置により、売さばき人は自己の名義を使用して被告人等が如何なることを行つていたかを知る機会もなかつた。)ただ前記の書類に対す ばき人名によつてなされたが、実質は被告人及び妻Aの計算においてなされたこと、又被告人等はその行為の結果を名義人に報告するわけでもなく、即ち売さばき人は右切手類の買受行為、売さばき行為及びその手数料の請求受領の行為には何ら関知せず(本件当時大阪郵政局管内に行われていた前記便宜措置により、売さばき人は自己の名義を使用して被告人等が如何なることを行つていたかを知る機会もなかつた。)ただ前記の書類に対す 受領の行為には何ら関知せず(本件当時大阪郵政局管内に行われていた前記便宜措置により、売さばき人は自己の名義を使用して被告人等が如何なることを行つていたかを知る機会もなかつた。)ただ前記の書類に対する押印の謝礼として月五〇〇円の金員を受領していたことが明らかである。この売さばき人と被告人及び妻Aとの間の関係を法律的に見ると、売さばき人は被告人、Aに対し売さばき人の名義を貸し、その名義の使用を許し、被告人等はB郵便局又は自宅で、その名義を使用し、自己の計算で、切手類の買受け、売さばきを為し、その名義で手数料を取得し、他方売さばき人はその名義使用料として月五〇〇円を収受していたに過ぎないものとみるべきであつて、売さばき人が自己の名において且売さばき人自身に直接法律効果を取得する趣旨で、郵便局からの切手類の買受け、その売さばき及びこれに関連する手数料の請求、受領の行為について被告人、Aに代理権を附与したものとは認められず、被告人等も亦この趣旨で受任したものとは認められない。従て本件においては被告人等のなした印紙類の買受け、その売さばき等の行為の法律効果は名義の使用を許した売さばき人本人に帰属せず、専ら売さばき人の名を使用した被告人らに直接帰属していたものと解すべきである。ところでこのよらな実質は正規の売さばき人以外に郵便局の委託しない別の売さばき人が存在し、別の売さばき場所が設置されるよらな名義の貸借、地位の貸与を、切手類の売さばきにつき法律が容認するところであろうか。昭和二四年法律第九一号郵便切手類売さばき所及び印紙売さばき所に関する法律をみるのに、同法第二条には「郵政大臣は郵便切手類及び印紙を売りさばくのに必要な資力及び信用を有する者のうちから、郵便切手類及び印紙の売さばき人を選定し、郵便切手類及び印紙の売さばきの業務を委託することが に、同法第二条には「郵政大臣は郵便切手類及び印紙を売りさばくのに必要な資力及び信用を有する者のうちから、郵便切手類及び印紙の売さばき人を選定し、郵便切手類及び印紙の売さばきの業務を委託することができる」とあり又第三条には「売さばき人は、その業務を行うため、郵政大臣の定める場所に、郵便切手類及び印紙の売さばき人にあつては郵便切手類売さばき所を、印紙のみの売さばき人にあつては印紙売さばき所を設けなければならない」とあり、第七条には「郵政大臣は、売さばき人に対し、第五条の規定による郵便切手類及び印紙の売渡月額に左の割合を乗じて得た金額の売さばき手数料を支払うものとする。 きの業務を委託することができる」とあり又第三条には「売さばき人は、その業務を行うため、郵政大臣の定める場所に、郵便切手類及び印紙の売さばき人にあつては郵便切手類売さばき所を、印紙のみの売さばき人にあつては印紙売さばき所を設けなければならない」とあり、第七条には「郵政大臣は、売さばき人に対し、第五条の規定による郵便切手類及び印紙の売渡月額に左の割合を乗じて得た金額の売さばき手数料を支払うものとする。但し、その金額は、一箇月一万千百円をこえてはならない。売渡月額五千円以下の金額百分の五、売渡月額五千円をこえ五万円以下の金額百分の三、売渡月額五万円をこえる金額百分の一、前項の売さばき手数料の支払手続は、省令で定める。」と規定しているところから考えると、法規の趣旨とするところは売さばき人及び売さばきの場所を特定するところにあると解すべきであり、これを裏返せば郵政大臣の委託したものでなければ売さばき人として容認しないし、又指定せられた場所以外に売さばき所を設けることは認めないということである。従つて名義だけが残り、その実質は他人であるような、且指定場所以外のB郵便局或いは被告人方に売さばき所を設けると同様な結果となる如き、本件被告人と売さばき人との間のような関係は、法律の認めないところと解せざるを得ない。(尤も右法律においては、従来の規程にあつた「売さばき所以外の場所で売さばきできない」との趣旨の文言を削除したことは明かであるが、前掲法律第二条、第三条の規定に徴しても、この変更により、本件の如き名義貸行為が許されるに至つたものとは解せられない。)従つてこの法律を施行する郵政省 い」との趣旨の文言を削除したことは明かであるが、前掲法律第二条、第三条の規定に徴しても、この変更により、本件の如き名義貸行為が許されるに至つたものとは解せられない。)従つてこの法律を施行する郵政省(郵便局)は当然これを認めないものであることは原審証人牧光雄らの供述によつても明らかであり、被告人らはこのことを承知するものであるからこそ、郵便局に対しては右の実質を秘し、真実の売さばき人を装うて郵便局係員を欺罔して支払証票を騙取し、又真実の売さばき人に支払うが如くにして手許に保管する渡切経費中より横領したものである。所論は本件売さばき行為は代理であるとし、その論拠として、本件売さばき行為は商行為であり、又前記昭和二四年法律第九一号第二条からしても代理に親しむものであることを強調する。 、被告人らはこのことを承知するものであるからこそ、郵便局に対しては右の実質を秘し、真実の売さばき人を装うて郵便局係員を欺罔して支払証票を騙取し、又真実の売さばき人に支払うが如くにして手許に保管する渡切経費中より横領したものである。所論は本件売さばき行為は代理であるとし、その論拠として、本件売さばき行為は商行為であり、又前記昭和二四年法律第九一号第二条からしても代理に親しむものであることを強調する。しかし、本件が代理でないことは前記のとおりであるが、なお、売さばき行為について代理が許されるかにつき一言論及すると、なるほど所論前記法律第一一条第二項には「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても同項の刑を科する。」と規定され、大阪逓信局報第三二三七号(昭和二四年五月三〇日)掲載の会三出第六五号(証第一五号参照)「郵便切手類及び印紙売さばき手数料の支出方法等について。」の二の2に「局長は予め売さばき人より委任状を徴し置き代人の方法を以つて局長名で請求すること」と規定しているところからすると、売さばき行為が商行為であるか否かはさておき、売さばき行為又はこれに関連する印紙、切手類買受、手数料請求受領行為は絶対に代理に親しまないものとは断定できない。しかし、だからといつて直ちに本件売さばき行為は代理行為であるとはいえない。即ち前記の如く、売 又はこれに関連する印紙、切手類買受、手数料請求受領行為は絶対に代理に親しまないものとは断定できない。しかし、だからといつて直ちに本件売さばき行為は代理行為であるとはいえない。即ち前記の如く、売さばき人は郵政大臣が法律所定の条件を考慮し、或る特定人を選定し委託するものであること又売さばき場所は郵政大臣の定める場所に設けなければならないなどの法規の趣旨に徴すると、切手類の売さばき人に関しては、これら法規の趣旨に反せぬ範囲においてのみ代理が認められるに過ぎず、弁護人等主張の如き代理、即ち実質は郵政大臣の選定しない別個の売さばき人を選定したことになるような代理、且つ指定の売さばき場所以外の場所に売さばき所を設置して売さばき行為を行うことになるような代理しかも法律効果は一応形式的には本人に帰するが実質は代理人自身に帰するような代理は法律の趣旨にも反し、右法律の認めないところであると解すべきである。 法規の趣旨に反せぬ範囲においてのみ代理が認められるに過ぎず、弁護人等主張の如き代理、即ち実質は郵政大臣の選定しない別個の売さばき人を選定したことになるような代理、且つ指定の売さばき場所以外の場所に売さばき所を設置して売さばき行為を行うことになるような代理しかも法律効果は一応形式的には本人に帰するが実質は代理人自身に帰するような代理は法律の趣旨にも反し、右法律の認めないところであると解すべきである。ちなみに証第一一号によると本件売さばき人らがB郵便局長Eに切手印紙の売さばきに対する手数料の請求及び受領方を委任した旨の委任状が存すること、又証第一二号によると、本件売さばき人がB郵便局より受ける切手類売捌手数料の請求をB郵便局長Eに委任する旨の委任状、又本件売さばき人が切手類売捌手数料の受領方はAに委任する旨の委任状が存するが、これらの書類は、前説明の如く被告人等が行つた切手類の売さばき行為につき、郵便局から手数料を取得する方法として、正規の売さばき人が正規に売さばいた切手類の手数料を、被告人等がその代理として請求し受領するものの如く装うため、前記会三出第六五号二の2の規定にあわすべく作製されたものに過ぎず、これがあるからといつて、被告人らと売さばき人との間が、売さばき行為を始め総べてを包括した代理であつたとは解し難い。結局本論旨も理由がない。第六五号二の2の規定にあわすべく作製されたものに過ぎず、これがあるからといつて、被告人らと売さばき人との間が、売さばき行為を始め総べてを包括した代理であつたとは解し難い。結局本論旨も理由がない。(四) 渡切経費について。所論の要旨は、渡切経費は私金であり、原判示の業務上横領罪は成立しないのである。原判決が渡切経費を公金とし、業務上横領罪の成立を認めるのは誤りであると主張するのである。<要旨第三>よつて案ずるに、渡切経費については、会計法第二三条に「各省各庁の長は、郵政官署その他特殊の経理を</要旨第三>必要とする官署で政令で定めるものの事務費については、政令の定めるところにより、その全部又は一部を主任の職員に渡切を以て支給することができる」旨規定し、郵政関係につき、昭和二四年九月二二日公達第四五号郵政事業特別会計規程(第五編)(証第三号)昭和二七年七月七日公達第八〇号、郵政事業特別会計規程の一部改正(証第五号)昭和二九年九月二〇日公達第八四号特定郵便局会計事務規程(証第九号)にも夫々渡切経費について規定をしている。 で定めるものの事務費については、政令の定めるところにより、その全部又は一部を主任の職員に渡切を以て支給することができる」旨規定し、郵政関係につき、昭和二四年九月二二日公達第四五号郵政事業特別会計規程(第五編)(証第三号)昭和二七年七月七日公達第八〇号、郵政事業特別会計規程の一部改正(証第五号)昭和二九年九月二〇日公達第八四号特定郵便局会計事務規程(証第九号)にも夫々渡切経費について規定をしている。ところで、原判決はこの渡切経費の性格について、私金説、公金説があり、原判決は公金説をとる旨、詳細にその論拠をも示し説示しているが、当裁判所も原判決と同じ意見であり、従つて論旨は採用できないのである。なお附言すれば、本件に関する切手類売さばき手数料に関する渡切経費については、前記公達第八〇号による改正により、第六条の臨時費の第二号表の種目の七号に追加され、同公達や公達第八四号により規定されるところであるが、公達第八〇号第一六条の二によれば、「局長は、左に掲げる種目の経費については、それぞれの種目に定める目的についてのみ使用し、他の種目の経費との間において相互に流用してはならない。」「三、切手類売さばき手数料」とあり、 条の二によれば、「局長は、左に掲げる種目の経費については、それぞれの種目に定める目的についてのみ使用し、他の種目の経費との間において相互に流用してはならない。」「三、切手類売さばき手数料」とあり、又同第一七条には渡切経費の引継を規定し、第一九条では残額処分につき、「局長は毎会計年度末において、支給を受けた渡切経費に残額を生じたときは、第一六条の二の規定にかかわらず別の指示するところに基き、郵政局長が定める範囲内において事務の研究、事業上有益な図書の購入、見学、当該特定局に勤務する職員全部のための訓育、福利厚生施設等のため使用することができる」とあり、又公達第八四号には、第八八条に流用制限、第九一条に残額処分、第九五条に引継の処理を規定し、その使途、流用は制限されるところで、少くとも本件の切手類売さばき手数料として特定郵便局長に交付される渡切経費は公金の性格を有し、従つて正規の売さばき人に対する手数料の支払でなく、ただ形式上売りさばき人に対する手数料の支払の形式をとり、実質は郵政省の容認しない特定局長ら個人の収入として自己のため勝手にその保管する渡切経費を着服すれば業務上横領罪が成立するものといわねばならない。 に引継の処理を規定し、その使途、流用は制限されるところで、少くとも本件の切手類売さばき手数料として特定郵便局長に交付される渡切経費は公金の性格を有し、従つて正規の売さばき人に対する手数料の支払でなく、ただ形式上売りさばき人に対する手数料の支払の形式をとり、実質は郵政省の容認しない特定局長ら個人の収入として自己のため勝手にその保管する渡切経費を着服すれば業務上横領罪が成立するものといわねばならない。本論旨も理由がない。(五) 本件の適法性の主張について。所論の要旨は、Aの売さばきは印紙の大口需要者に便利であり、歓迎されていた。郵政省としても日本銀行を利用する登録税の納付手続をとられるよりは、印紙による登録税の納付手続を取つて貰うことの方が雑収入三分が得られるわけである。本件のAが売さばいた切手、印紙は有効とみなければならない。それにつけてはAを代理人とする印紙、切手の買受け、売さばきが有効でなければならない。そしてAに手数料の支給されるのは当然であるというのである。よつて案ずるに、行為の適法性と有効性とは必ずしも一 それにつけてはAを代理人とする印紙、切手の買受け、売さばきが有効でなければならない。そしてAに手数料の支給されるのは当然であるというのである。よつて案ずるに、行為の適法性と有効性とは必ずしも一致するものではない。違法行為は常に無効行為であるとは限らない。ましてや違法行為によつて入手したものは無効と限らない。従つて有効行為は常に適法行為とは云えないし、ある行為によつて得たものが有効であるからと云つて、その行為は有効であり、そして適法であると云えないのである。前叙のように本件A等の切手類の買受け、売さばきは名義借りによるもので(仮に代理であるとしても同様である)法規の認めないところであり、郵便局の容認しないところであるが、右の買受、売さばきが当然無効のものとはいえないし、又はこの買受、売さばきにかかる切手、印紙は無効のものとは云えない。だからと云つて本件行為が適法であるというのは論理の飛躍である。即ち本件は、その実質に従い、被告人が公務員たるB郵便局長として売さばいたものと解すべきであり、従つて売さばかれた切手類、印紙類は勿論有効であるが、被告人はこれにより売さばき手数料を取得し得ないものと謂うべきであり、論旨は理由がない。(六) 犯罪後の法令により刑の廃止となつた旨の主張について。 きにかかる切手、印紙は無効のものとは云えない。だからと云つて本件行為が適法であるというのは論理の飛躍である。即ち本件は、その実質に従い、被告人が公務員たるB郵便局長として売さばいたものと解すべきであり、従つて売さばかれた切手類、印紙類は勿論有効であるが、被告人はこれにより売さばき手数料を取得し得ないものと謂うべきであり、論旨は理由がない。(六) 犯罪後の法令により刑の廃止となつた旨の主張について。論旨は、本件については被告人が切手印紙売さばきの手数料を取得したことが詐欺罪ないし横領罪に問擬されているのは要するに、昭和二四年法律第九一号第七条によつて売さばき手数料の最高限度額の制度があつたからに外ならない。この限度額の制度がなかつたならば当時としても他の売さばき人の枠をかりるという問題は起り得なかつたのである。然るにこの最高限度額の制度は昭和三三年法律第二号によつて撤廃され無制限になつたのである。従つて現在においては枠をかりるという問題は起り の売さばき人の枠をかりるという問題は起り得なかつたのである。然るにこの最高限度額の制度は昭和三三年法律第二号によつて撤廃され無制限になつたのである。従つて現在においては枠をかりるという問題は起り得なくなつて居り、これを前提とする本件の如き詐欺ないし横領罪は成立の余地がなくなつているのである。本件はまさしく刑事訴訟法第三三七条第二号にいわゆる犯罪後の法令により刑の廃止にありたるものに該当するものというべきであるというのである。よつて案ずるに、所論のとおり昭和三三年法律第一一号によつて、昭和二四年法律第九一号第七条の売さばき手数料の最高限度額の制限が撤廃されたことは明らかである。なるほど、本件は前叙のとおりA名義で売さばきが認められていた当時、その売さばき額が多いのに手数料に制限があつたので考え出されたものであるが、ただかかる沿革をたどつたという丈のことで、本件で罪となるものとしている当時には、Aは売さばき名義人でなくなつており、被告人は郵便局長たる公務員であつて、両名とも全然手数料の貰えない立場のものであるにかかわらず、被告人は同女と共謀の上ただ他人の売さばき数額が手数料最高額の制限範囲内にあるのを利用して本件に及んだものであり、この手数料の最高額の制限が撤廃されれば、益々他人の名義を利用して手数料を多く取得し得ることにもなる(因みに名義人が他人の名義を借りていたとしても法律の改正により枠がなくなれば名義を借りる必要がなくなる丈のことで、引続き名義を借れば同罪である)ので、本件と同種の詐欺罪、業務上横領罪は成立し得るものである。 謀の上ただ他人の売さばき数額が手数料最高額の制限範囲内にあるのを利用して本件に及んだものであり、この手数料の最高額の制限が撤廃されれば、益々他人の名義を利用して手数料を多く取得し得ることにもなる(因みに名義人が他人の名義を借りていたとしても法律の改正により枠がなくなれば名義を借りる必要がなくなる丈のことで、引続き名義を借れば同罪である)ので、本件と同種の詐欺罪、業務上横領罪は成立し得るものである。従つて本件はその行為時の法令によつても又その後改正された裁判時の法令によつても犯罪の成立に変りはない。従つて本件は前記法律の改正をもつて、刑事訴訟法第三三七条第二号にいわゆる犯罪後の法令により刑の廃止があつ その行為時の法令によつても又その後改正された裁判時の法令によつても犯罪の成立に変りはない。従つて本件は前記法律の改正をもつて、刑事訴訟法第三三七条第二号にいわゆる犯罪後の法令により刑の廃止があつた場合に該当しない。本論旨も理由がない。以上及びその他所論にかんがみ記録、証拠を検討しても原判決に破棄の理由がないので、刑事訴訟法第三九六条、第一八一条第一項本文により、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官田中勇雄裁判官三木良雄裁判官山田忠治)
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