平成21(ワ)742 労働関係存在確認等請求事件(通称 日野自動車雇止)

裁判年月日・裁判所
平成22年9月30日 東京地方裁判所 立川支部
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判決文本文30,302 文字)

- 1 - 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 原告らが被告との間で,それぞれ労働契約上の地位を有することを確認する。 2 被告は,原告Aに対し,次の金員を支払え。 (1) 47万2512円及びこれに対する平成21年3月21日から支払済みまで年6分の割合による金員,(2) 平成21年4月から毎月20日限り,各23万6256円 3 被告は,原告Bに対し,次の金員を支払え。 (1) 64万7534円及びこれに対する平成21年3月21日から支払済みまで年6分の割合による金員,(2) 平成21年4月から毎月20日限り,各32万3767円 4 被告は,原告Cに対し,次の金員を支払え。 (1) 24万3430円及びこれに対する平成21年3月21日から支払済みまで年6分の割合による金員,(2) 平成21年4月から毎月20日限り,各24万3430円 5 被告は,原告Dに対し,次の金員を支払え。 (1) 28万9300円及びこれに対する平成21年3月21日から支払済みまで年6分の割合による金員,(2) 平成21年4月から毎月20日限り,各28万9300円第2 事案の概要 1 概要本件は,トラック等の製造販売会社である被告に期間従業員として雇用されていた原告らが,平成20年秋以降の世界同時不況を契機としてされた雇止めは無効で- 2 -あると主張して,被告との間の雇用関係の確認並びに雇止め以後の各月の給料の支払及び一部につき商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 争いのない事実等(1) 当事者ア被告は,ト 雇用関係の確認並びに雇止め以後の各月の給料の支払及び一部につき商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 争いのない事実等(1) 当事者ア被告は,トラック・バス,小型商業車・乗用車等の製造販売等を目的とする株式会社であり,肩書地に本社及び日野工場を置き,羽村工場(東京都羽村市),α工場(群馬県太田市),β事務所(東京都港区γ)を有している。 イ原告らは,いずれも被告に期間従業員として雇用され,日野工場で,日野ブランドの大型トラック,中型トラック(以下「大中型トラック」という。)の生産に従事していた。 (以上,争いのない事実)(2) 被告との雇用契約ア原告A(ア) 契約関係原告Aは,平成17年6月14日,株式会社アクティス(その後,合併等により,順に株式会社コラボレート,株式会社ハイラインに変更になった。)との間で,労働契約を締結し,当初は出向形式で,平成18年9月1日からは労働者派遣契約による派遣労働者として,被告日野工場にて就労した。 その後,原告Aは,次のとおり,被告との期間雇用契約(甲6の1~6)を締結し,被告日野工場で,自動車部品の構内運搬供給作業に従事した。 平成19年8月24日~同年12月31日(4か月)平成20年1月 1日~同年 2月29日(2か月)平成20年3月 1日~同年 4月30日(2か月)平成20年5月 1日~同年 6月30日(2か月)平成20年7月 1日~同年 8月23日(2か月)- 3 -平成20年8月29日~同年12月31日(4か月)(争いのない事実,甲5の1~5,原告A(甲43,64を含む。以下,同じ。))(イ) 出向a 被告は,平成18年7月26日,東京労働局長より,「労働者派遣事業の 2月31日(4か月)(争いのない事実,甲5の1~5,原告A(甲43,64を含む。以下,同じ。))(イ) 出向a 被告は,平成18年7月26日,東京労働局長より,「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律第48条第1項に基づき,事業所における労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(第3章第4節の規定を除く)違反について,それぞれ指定期日までに是正の上,報告するよう指導」するという指導を受けた。その上で,東京労働局より,「出向を中止して,適正な労働者派遣契約となるような必要な措置を講じるか,または適正な請負となるよう必要な措置を講ずる」ように指導を受けた。 そのため,被告は,同年9月1日,原告A及び原告Bを含む出向労働者との契約関係を,出向形式から労働者派遣契約に切り替えた。 (争いのない事実)b 上記(ア)及び後記イ(原告B関係)を含む被告への労働者の出向は,グループ会社等の緊密な関係にない人材派遣会社から業としてされたものであり,労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣事業法」という。)の派遣期間の制限を潜脱する目的でされ,職業安定法で禁止する「労働者供給事業」に該当する疑いの強いものである。 (甲22,弁論の全趣旨)c これらの事実は,同年10月6日,朝日新聞(甲22)で報道された。 (争いのない事実)(ウ) 労働者派遣契約a 原告A及び原告B(後記イ)の期間従業員としての採用は,同原告らが被告の期間従業員の臨時募集に応募してされたものである。 (争いのない事実)- 4 -b これが労働者派遣事業法に定める雇用申込義務(同法40条の4)に基づく としての採用は,同原告らが被告の期間従業員の臨時募集に応募してされたものである。 (争いのない事実)- 4 -b これが労働者派遣事業法に定める雇用申込義務(同法40条の4)に基づくものか否かについては,そのように主張する原告らとこれを否定する被告との間に,主張の対立がある。 イ原告B原告Bは,平成18年1月23日,株式会社E(以下「E」という。)との間で雇用契約を締結し,当初は出向形式で,平成18年9月1日からは労働者派遣契約による派遣労働者として,被告の日野工場にて就労した。 その後,原告Bは,次のとおり,被告との期間雇用契約(甲9の1~6)を締結し,被告日野工場で,クランクシャフト製造作業に従事した。 平成19年8月24日~同年12月31日(4か月)平成20年1月 1日~同年 2月29日(2か月)平成20年3月 1日~同年 4月30日(2か月)平成20年5月 1日~同年 6月30日(2か月)平成20年7月 1日~同年 8月23日(2か月)平成20年8月29日~同年12月31日(4か月)(争いのない事実,甲8の1~8,原告B(甲44を含む。以下,同じ。))ウ原告C原告Cは,平成19年9月,株式会社ハイライン(その後,会社再編により株式会社プレミアラインとなった。)との間で雇用契約を締結し,同月21日から平成20年8月31日まで,労働者派遣契約による派遣労働者として,被告の日野工場にて就労した。 その後,原告Cは,次のとおり,被告との期間雇用契約(甲12)を締結し,被告日野工場で,KD(ノックダウン)梱包作業等に従事した。 平成20年9月19日~平成21年1月31日(4か月)(争いのない事実,甲11の1・2,原告C(甲45を含む。以下,同じ。))エ原告D- ,KD(ノックダウン)梱包作業等に従事した。 平成20年9月19日~平成21年1月31日(4か月)(争いのない事実,甲11の1・2,原告C(甲45を含む。以下,同じ。))エ原告D- 5 -原告Dは,次のとおり,被告との期間雇用契約を締結し,被告日野工場で,トラニオンシャフト加工作業に従事した。 昭和63年 7月 1日~同年12月27日平成元年 2月21日~同年 8月31日平成元年 9月 5日~平成 2年 1月 5日平成 2年 1月12日~同年 8月31日平成 2年 9月10日~同年12月20日平成 3年 2月12日~同年10月31日平成 3年11月26日~平成 4年10月23日平成 4年11月10日~平成 5年 8月20日平成 5年 9月21日~平成 6年 6月20日平成 6年 7月12日~平成 7年 4月11日平成 7年 5月23日~平成 8年 5月21日平成 8年 6月11日~同年12月10日平成 9年 1月14日~同年12月10日平成10年 2月17日~平成11年 2月15日平成16年 6月25日~同年10月31日平成16年11月 1日~同年12月31日平成17年 6月17日~同年10月31日(4か月)平成17年11月 1日~平成18年 1月31日(3か月)平成18年 2月 1日~同年 4月30日(3か月)平成18年 5月 1日~同年 6月15日(2か月)平成18年 6月21日~同年10月31日(4か月)平成18年11月 1日~同年12月31日(2か月)平成19年 1月 1日~同年 2月28日(2か月)平成19年 3月 1日~同年 4月30日(2か月 10月31日(4か月)平成18年11月 1日~同年12月31日(2か月)平成19年 1月 1日~同年 2月28日(2か月)平成19年 3月 1日~同年 4月30日(2か月)- 6 -平成19年 5月 1日~同年 6月19日(2か月)平成19年 6月27日~同年10月31日(4か月)平成19年11月 1日~同年12月31日(2か月)平成20年 1月 1日~同年 2月29日(2か月)平成20年 3月 1日~同年 4月30日(2か月)平成20年 5月 1日~同年 5月31日(1か月)平成20年 7月 4日~同年11月15日(4か月)平成20年11月16日~平成21年 1月31日(2か月)(争いのない事実,原告D(甲46,65を含む。以下,同じ。),弁論の全趣旨)(3) 被告日野工場における期間従業員の契約形態ア最初の1年(更新)被告日野工場における期間従業員との期間雇用契約は,契約期間について,初回は4か月,以降の更新(延長)は各2か月とし,更新ごとに期間従業員雇用契約書を取り交わしていた。期間雇用契約の更新を行い,その結果,初回の採用から12か月となった場合,続けての更新をせず,期間雇用契約は終了した。 イその後の1年11か月(再赴任)(ア) 被告は,職場評価が良好な者で,本人も早期の再契約を希望している場合は,職場による本人の意思確認を経て,満了日から4~7日後には再入社ができるように採用プロセスの短縮を行っていた。具体的には,採用面接や握力テストなどは行わず,健康診断を受診し,健康状態が就労に問題がなければ再入社としていた(これは,「再赴任」と呼ばれていた。)。 (イ) 被告は,期間従業員雇用契約書の取り交 には,採用面接や握力テストなどは行わず,健康診断を受診し,健康状態が就労に問題がなければ再入社としていた(これは,「再赴任」と呼ばれていた。)。 (イ) 被告は,期間従業員雇用契約書の取り交わしはもちろん,再赴任のために必要となる退職手続や入社手続,例えば,社会保険の喪失と取得,旧従業員証の回収と新たな従業員証(社員番号も変更される。)の交付を行っていた。 (ウ) 被告は,満了退職時に支給する「帰任旅費」に加えて,5万円の「再赴任手当」を支給した。 - 7 -(エ) また,被告は,契約更新の際にはその都度安全教育を行っていたわけではないが,再赴任した場合には,労働安全衛生法59条に基づいて安全教育を実施した。 (オ) 再赴任は,2回までであり,2回目の再赴任の契約期間は,更新を重ねても11か月としていた。 (以上,争いのない事実,乙17~20,証人F(乙22を含む。以下,同じ。))ウ 2年11か月経過後2年11か月勤務した期間従業員が再度被告との雇用契約の締結を希望する場合,被告の期間従業員の募集に応募して採用面接を受け,採用される必要があった。 (争いのない事実)エ原告らとの更新手続等(ア) 被告は,原告らとの間においても,2か月ごとの更新手続をその都度行っていた。 (イ) すなわち,被告は,原告らに対し,入社後は契約満了の1.5か月前ころに「満了通知」を渡し,契約が満了となることを書面にて通知していた。その後,生産動向が判明するに従い,契約更新が必要となる場合には,以下の手続にて更新を行っていた。 ①所属(職場)による本人意思確認を行う。 ②本人同意の場合は,所属から工場勤労へ延長申請書を提出する。 ③工場勤労では,要員計画等を勘案して延長申請の可否判断を行う。 ④承 新を行っていた。 ①所属(職場)による本人意思確認を行う。 ②本人同意の場合は,所属から工場勤労へ延長申請書を提出する。 ③工場勤労では,要員計画等を勘案して延長申請の可否判断を行う。 ④承認の場合は,所属経由にて本人へ承認済みの延長申請書を渡す。 ⑤本人は承認済みの延長申請を持参して,工場勤労にて,新たな契約期間による契約の取り交わし及び従業員証の有効期限の更新等の延長手続を行う。 (争いのない事実,弁論の全趣旨)(ウ) 1.5か月前の職長による満了通知の交付については,職長によっては行っていなかった可能性もないではないが(原告B,原告C),原告Bについては,- 8 -最終の期間雇用契約の満了通知は平成20年11月17日に職長より手交され,原告Cについても,最終の期間雇用契約の満了通知は,少なくとも平成21年1月6日に口頭でされている。 (原告B,原告C)オ期間従業員雇用契約書等の定め(ア) 原告A及び原告Bが応募した平成18年8月の期間従業員の臨時募集要項(甲23)には,次の記載がある。 「契約期間初回4ヶ月,以降通算1年まで延長することがあります。 (再赴任は2回まで可,但し2回目は最長11ヶ月)」(イ) 被告と原告らとの平成20年8月以降の「期間従業員雇用契約書」3条には,次の定めがある。 「契約更新の有無契約更新の可能性あり(契約期間満了時の業務量,勤務態度,会社の経営状況等により,更新の有無を判断する。契約更新を行う場合は,甲(被告)は乙(原告)に対し契約期間満了の1ヶ月前までに,契約更新の申入れを行う。)」(以上,明らかに争わない事実)カ 4か月及び2か月の 甲(被告)は乙(原告)に対し契約期間満了の1ヶ月前までに,契約更新の申入れを行う。)」(以上,明らかに争わない事実)カ 4か月及び2か月の雇用期間を設定した被告の理由(ア) 被告が期間従業員との契約期間を初回4か月,以降は2か月ごと更新としていたのは,被告日野工場において主として生産していた日野ブランドの大中型トラックの需要動向に起因する。 (イ)a すなわち,大中型トラックは,主なユーザーは法人企業であり,設備投資の性格を持つものであることから,景気の好不況に大きく影響される。 b また,毎年9月,3月の半期末や年度末に,通常月の1.5倍から2倍の需要があり,大幅な生産変動に柔軟に対応しなければならない。 c さらに,国の排気ガス規制や過積載規制,優遇税制等によっても需要が大- 9 -きく左右される。 d そのため,大中型トラックの生産計画においては,当月の生産計画は前月中旬まで確定しない。 (ウ) したがって,要員計画も,前月以前に確定させることは困難であり,被告の都合のみを優先させれば,期間従業員との契約期間を生産計画に連動して1か月単位とすることが望ましいが,翌月の雇用契約の有無が確定しないと期間従業員の負担が大きいことを勘案して,2か月単位の契約期間としていた。 初回契約については,他社と同等水準の初回契約期間を設定しなければ,思うような採用活動ができないことから,4か月に設定した。 (以上,証人F)(4) 被告日野工場における期間従業員の勤務実態ア期間従業員の更新率等(ア) 被告日野工場の平成20年4月から11月における期間従業員の更新率は,別紙<表1>のとおりである。 (イ) 被告日野工場においては, 業員の勤務実態ア期間従業員の更新率等(ア) 被告日野工場の平成20年4月から11月における期間従業員の更新率は,別紙<表1>のとおりである。 (イ) 被告日野工場においては,平成18年4月1日から平成19年3月31日までに新規で入社し,初回4か月契約を満了した期間従業員計1106名のうち,955名(86%)が延長となり,151名(14%)が,会社都合(能力不足等)又は自己都合により満了終了となった。 (ウ) また,上記(イ)と同じ期間に入社し,通算12か月の契約期間を満了した期間従業員は全体で630名であるが,そのうち477名(76%)が再赴任し,153名(24%)が会社都合(能力不足等)又は自己都合により満了終了となった。 (以上,乙16,証人F)イ勤務部署等(ア) 期間従業員は,基本的に,直接的に物の生産を行っている部署に配属する。 施設管理課(設備の管理等),技術課・設備課(設備の導入・改修等),品質課など直接的な物の生産ではない部署や専門スキルが必要な部署への配属はほとんどな- 10 -い。 正社員は,担当する課のライン一通りの作業ができ,また,どの個所においても生産に必要な設備・治具の不具合等が起きたときに対応できる役割を持っている。 (イ) 直接的に物の製造を行う部署では,生産台数に応じてラインのスピード(タクトタイム)を調整し,一人の作業範囲(工程)を変化させる一方,人員を増減することで生産能力を調整する。 例えば,日当たり120台の生産(1日8時間として4分/台ペース)に対して,200人で対応しているラインがあると仮定した場合,その2倍の日当たり240台の生産(1日8時間として2分/台ペース)となった場合には,人数を2倍の400人にして,一人当たりの作業(工程) 対して,200人で対応しているラインがあると仮定した場合,その2倍の日当たり240台の生産(1日8時間として2分/台ペース)となった場合には,人数を2倍の400人にして,一人当たりの作業(工程)を半分にするということである。 (ウ) 近年の期間従業員の在籍人数の実態として,F1ライン(大型トラック生産ライン)の生産台数と被告日野工場の期間従業員在籍数の推移を示すと,以下のとおりである。 平成18年 1月 F1ライン生産台数 108台/日期間従業員在籍(1月2日時点)580名平成19年 1月 F1ライン生産台数 78台/日期間従業員在籍(1月1日時点)399名平成20年 6月 F1ライン生産台数 93台/日期間従業員在籍(6月2日時点)705名平成21年 4月 F1ライン生産台数 23台/日期間従業員在籍(4月1日時点) 5名(エ) 平成21年5月以降しばらくは,正社員のみでの生産を行っていた。 (以上,証人F,弁論の全趣旨)ウ正社員登用制度(ア) 被告は,期間従業員から正社員に登用する制度を設けている。 (イ) この正社員登用制度は,平成16年度より開始し,ほぼ年2回ずつ実施し- 11 -ていた。この制度は,定期採用(主に高校卒)による生産要員の確保が少子化の影響等で困難になりつつあること,平成12年前後の就職氷河期の世代の社員が少ないことから,優秀な期間従業員を正社員で採用することで年齢構成の歪みを補うことなどを目的として実施したものである。 募集・応募に当たっては,応募時点で期間従業員としての在籍期間が原則6か月以上で精勤していること,及び各職場からの推薦 採用することで年齢構成の歪みを補うことなどを目的として実施したものである。 募集・応募に当たっては,応募時点で期間従業員としての在籍期間が原則6か月以上で精勤していること,及び各職場からの推薦があることを条件としていた。 (ウ) その実績は,以下のとおりである。 平成19年1月正社員登用合格者43名(受験者 45名)同年7月正社員登用合格者58名(受験者 64名)平成20年1月正社員登用合格者81名(受験者105名)同年7月正社員登用合格者94名(受験者125名)(エ) 正社員となった場合,期間従業員の時より賃金が下がることがあるが,原則として定年まで雇用されることとなる。 (以上,証人F)エ過去の期間従業員の雇止め被告において,平成10年3月末に全体で1255名いた期間従業員が,平成11年6月1日以降0名となった。被告は,平成14年9月1日に採用が再開されるまで,期間従業員の採用を停止した。 これは,被告の経営状況を理由とするものである。 (証人G(乙23を含む。以下,同じ。))(5) 平成20年下期以降の生産状況,業績及び経済状況等ア生産状況(ア) 被告日野工場でされている日野ブランドの大中型トラックの生産は,生産計画を経て生産される。 生産計画には,①年度が変わる前に3年間の生産計画決定する「当初年計」,- 12 -②下期になる前に2年6か月間の生産計画を決定する「修正年計」,③毎月3か月間の生産計画を決定する「3ヶ月計画」がある。 (イ) 平成20年度の日野ブランドの大中型トラックの生産計画の推移及び生産実績は,別紙<表2>のとおりである。 (ウ) 上記<表2>から明らかなとおり,平成20年11月の生産台数計画は,平 (イ) 平成20年度の日野ブランドの大中型トラックの生産計画の推移及び生産実績は,別紙<表2>のとおりである。 (ウ) 上記<表2>から明らかなとおり,平成20年11月の生産台数計画は,平成20年度当初計画の7052台から,平成20年10月10日時点では5550台へと修正された。 平成20年11月10日時点での3ヶ月計画では,平成20年12月の生産台数計画は,平成20年度当初予定の6804台から3996台へと激減し,平成21年1月,2月の生産台数計画も,それぞれ4640台,5128台と激減が予想された。 (エ) 原告らが雇止めとなった平成20年12月31日以降の生産計画は,平成20年9月24日時点で策定した修正年計によれば,平成20年11月6693台,12月6533台,平成21年1月6909台,2月7117台,3月7394台であったところ,平成20年10月10日に策定した平成20年11月から平成21年1 月の3ヶ月計画においては,平成20年11月5550台,12月6495台,平成21年1月6994台と更なる下方修正を行った。それ以降の3ヶ月計画においても,前月策定した計画をほぼ毎月下方修正する状況であった。 (オ) これは,世界的な金融危機の深刻化及び景気後退により,大中型トラックの受注が大幅に落ち込んでいった結果である。 (カ) 平成20年度の生産台数の実績からも見ても,平成20年7月の7829台をピークに以降減少し,特に,平成20年11月以降については,平成20年7月に比べ40%から60%のマイナスとなっている。平成20年12月の生産台数は3697台(平成20年度当初の計画は6804台)と激減し,以後も,平成21年1月3158台,同年2月2952台,同年3月3111台となっている。 - 13 -( 成20年12月の生産台数は3697台(平成20年度当初の計画は6804台)と激減し,以後も,平成21年1月3158台,同年2月2952台,同年3月3111台となっている。 - 13 -(キ) なお,このような生産台数の激減は,日野工場に限ったものではなく,同様の減少は,羽村工場などの被告国内全工場でも起こっていた。 (乙1,21の3,証人G,弁論の全趣旨)イ被告の業績の推移(ア) 被告は,平成20年4月24日の決算発表時に公表した平成21年3月期の被告の連結業績予想につき,別紙<表3>のとおり,1年間で4回,業績予想修正(いずれも下方修正)をした。 (乙2~5)(イ) 平成21年4月27日発表の被告の平成21年3月期の連結経営成績では,連結売上高は1兆0694億円と前期に比べ2991億円の減収となり,連結営業損失は194億円と前期に比べ653億円の減益となり,連結当期純損失は618億円と前期に比べ840億円の減益となり,設立以来最大の赤字を計上した。 (乙6,弁論の全趣旨)(ウ) 被告の利益剰余金は,平成20年3月期の時点では1314億円であったが,平成21年3月期には650億円と半分以下に激減した。 また,平成21年3月期の営業活動によるキャッシュフローは,マイナス85億0400万円となった。 (乙6)ウ販売台数(ア) 販売台数で見ると,国内が△1.1万台(前年比△24%),海外が△2千台(△3%),受託車が△8 万台(△40%)の大幅な減産となった。 (イ) これらの台数減は,平成20年度下期(平成20年10月以降)での大幅な減少であり,平成20年度下期の対前年同期比は,国内△35%,海外△23%,受託車△66%であった。 (ウ) この状況は,平成21年度も続 は,平成20年度下期(平成20年10月以降)での大幅な減少であり,平成20年度下期の対前年同期比は,国内△35%,海外△23%,受託車△66%であった。 (ウ) この状況は,平成21年度も続いており,平成21年7月28日発表の平成22年3月期第1四半期の連結営業損失は188億円となり,平成21年3月期- 14 -の通期の営業損失(上記イ(イ))に匹敵するものである。 (エ) さらに,平成22年1月27日発表の平成22年3月期第3四半期決算における平成21年4月~12月累計企業業績は,国内販売台数は前期比△36%,海外販売は△16%,受託車は△30%であった。 (以上,乙6,7,28,証人G)エ同業他社の状況平成20年後半から平成21年前半にかけて,他の自動車メーカーも,世界的な販売不振により生産が大幅に減少し,期間従業員等を削減した。 (ア)a 平成20年11月7日付け日経新聞朝刊は,トヨタ自動車は,期間従業員につき,同年6月に採用を凍結して,同年3月の平均8800人を同年10月までに6000人に減らし,さらに,期間満了となる契約を更新しない方法で,平成21年3月末までに3000人に半減する予定であると報じた。 b 平成21年1月20日付け日経新聞夕刊は,トヨタ自動車は,今後も国内生産の落ち込みが続けば,期間従業員を追加削減する検討に入り,期間従業員が零になる可能性もあると報じた。 (イ)a 平成20年11月22日付け日経新聞朝刊は,三菱自動車は,派遣従業員及び期間従業員につき,現在の2800人を平成21年1月までに1000人削減する予定であると報じた。 b 平成21年1月17日付け日経新聞朝刊は,三菱自動車は,同年2月末に,派遣社員と期間従業員1600人を削減し,平成20年11月に33 21年1月までに1000人削減する予定であると報じた。 b 平成21年1月17日付け日経新聞朝刊は,三菱自動車は,同年2月末に,派遣社員と期間従業員1600人を削減し,平成20年11月に3300人いた非正規従業員は400人強となると報じた。 (ウ) 平成20年11月26日付け日経産業新聞は,三菱ふそうトラック・バスは,年内に,期間従業員60人,派遣従業員440人全員を削減予定であると報じた。 (エ) 平成20年12月4日付け日経新聞地方経済面は,関東自動車工業は,岩手工場の期間従業員及び派遣従業員合計1200人のうち,350人を平成21年- 15 -4月までに段階的に削減する予定であると報じた。 (オ) 平成20年12月23日付け日経新聞朝刊は,次のとおり報じた。 ① ダイハツは,平成21年3月までに期間満了となる1000人の非正規従業員のうち,最大600人との契約を更新せず,非正規従業員約3000人を2400人程度に削減する予定である。 ② スズキは,850人の全派遣社員を年内に,110人の全期間従業員を平成21年5月までに,いずれも零にする予定である。 ③ これで,国内の自動車メーカー全12社の人員削減計画が出そろい,直近で約3万4000人いた非正規社員は,約半分の規模となる。 (カ) 平成21年1月16日付け日経新聞朝刊は,日産ディーゼル工業は,派遣社員700人全員(同社の生産現場では,期間従業員を採用していない。)を同年6月末までに削減する予定であると報じた。 (キ) 平成21年1月17日付け日経新聞朝刊及び同月19日付け日経産業新聞は,ホンダは,同年4月末までに,期間満了を迎える期間従業員約3100人の契約を更新せず,自然減の100人を含むと,同年5月以降の期間従業員は零となる見通しであ 聞朝刊及び同月19日付け日経産業新聞は,ホンダは,同年4月末までに,期間満了を迎える期間従業員約3100人の契約を更新せず,自然減の100人を含むと,同年5月以降の期間従業員は零となる見通しであると報じた。 (乙21の1~9,証人G)(6) 被告における費用削減等及び期間雇用契約満了による終了の決定ア費用削減(ア) 平成20年10月以降,被告は,仕入先を含めた収益改善活動を実施するとともに,平成20年11月中旬,社長以下経営トップをメンバーにした緊急収益対策委員会を正式に立ち上げ,残業目標ゼロ,諸経費の更なる削減を全社に指示し,工場では,稼働日削減,職場により,最も遅いコンベアタクトタイム設定(平成20年12月~),定時間割れ操業(平成20年12月~),1台抜きコンベア流し操業(平成21年4月~平成21年12月)などを実施した。 (証人G)- 16 -(イ) 被告は,平成22年10月時点で,平成21年3月期の業績及び平成22年3月期の業績予想を受け,以下の対策を講じた。 a 人件費削減(約20億円程度の間接人件費の削減)(a) 取締役,監査役の賞与総額約2億円(平成21年7月支給分)から0円へ削減(平成20年12月決定)(b) 取締役,執行役員,監査役の報酬20%~10%削減(平成21年3月支給分より)(平成21年2月決定3月実施)(c) 基幹職の賞与8%の削減(平成20年12月支給分)(平成20年11月決定12月実施)(d) 基幹職の月額賃金7%~3%削減(平成21年4月支給分より)(平成21年2月決定4月実施)(e) 残業制限(平成20年11月以降実施)(f) 期間従業員の削減(g) 通年採用の中止(平成20年11 3%削減(平成21年4月支給分より)(平成21年2月決定4月実施)(e) 残業制限(平成20年11月以降実施)(f) 期間従業員の削減(g) 通年採用の中止(平成20年11月実施)(h) 新卒採用の抑制(大卒平成20年4月159人→平成21年4月50人)b 原価低減(平成21年度上期実績で対前年同期比約60億円程度の改善)(a) 工場原価低減(b) 資材購入方法見直しc 固定費削減(平成21年度上期実績で対前年同期比約130億円程度の改善)(a) 設備投資抑制(b) 開発課題調整(c) 拡販費の削減- 17 -(d) イベント削減(工場と地域住民との交流目的の祭り3000万円,東京モーターショー3億円など)d 稼働日数調整(休業とし休業補償)稼働日調整は,平成20年10月から翌4月にかけ月2日から6日,延べ24日の工場の稼働日削減を実施した(別紙<表4>)。 この間の稼働日削減の内容は,一斉年休8日(年休の無いものは70%補償),80%休業補償をする休業日14日,工場を止めて清掃や研修を行い100%賃金補償した非稼働出勤日2日などである。 (以上,乙8~12,証人G)イ派遣社員の削減被告は,被告日野工場の製造ラインにおける派遣労働者を労働者派遣契約の期間満了をもって終了した。 その人数の変動経緯は,以下のとおりである。 平成20年11月1日 53名平成20年12月1日 24名平成21年 1月1日 6名平成21年 2月1日 1名平成21年 3月1日 0名(証人F)ウ期間従業員の期間雇用契約満了による終了の決定(ア) 被告は,この平成20年下期以降のトラック需 平成21年 2月1日 1名平成21年 3月1日 0名(証人F)ウ期間従業員の期間雇用契約満了による終了の決定(ア) 被告は,この平成20年下期以降のトラック需要の落ち込みは,国内外の経済状況や景気の冷え込みなどから,当分の間元には戻らないものと判断した。 このような状況を踏まえ,被告人事部は,平成20年10月28日,日野工場及びα工場の期間従業員の新規募集を停止することを決定し,同年11月4日,期間従業員募集の全面停止を決定した(平成20年11月初旬まで求人誌に期間従業員募集の広告が掲載されたのは,求人誌の締切りの関係から掲載の中止が間に合わな- 18 -かったためである。同年11月4日以降,被告は,選考会場で面接を行わず,来場者へは事情を説明し,応募を断った。)。 (イ) さらに,被告は,同月10日,国内3工場で働いている期間従業員全員を現在の期間雇用契約の期間満了をもって契約を終了する旨を決定した。 (ウ) 被告は,上記決定に従い,同年11月以降,期間従業員について,期間満了を迎えた者から順次雇用を終了した。 (エ) 被告日野工場の製造ラインにおける期間従業員の人数の推移は,以下のとおりである(平成21年4月1日現在の5名は,同年11月上旬の時点で採用を内定していたため,入社を認めざるを得なかった。)。 平成20年11月1日 733名平成20年12月1日 640名平成21年 1月1日 382名平成21年 2月1日 55名平成21年 3月1日 19名平成21年 4月1日 5名平成21年 5月1日 0名(以上,証人G)エ原告らの雇止め(ア) 被告は,原告A及び原告Bについては,平成20年12月31日をも 平成21年 4月1日 5名平成21年 5月1日 0名(以上,証人G)エ原告らの雇止め(ア) 被告は,原告A及び原告Bについては,平成20年12月31日をもって,原告C及び原告Dについては,平成21年1月31日をもって,それぞれ雇用契約を更新せず(以下「本件雇止め」という。),以後,原告らが被告と雇用関係にあることを否定している。 (争いのない事実)(イ) 今回の場合,1か月半前に期間満了通知を渡した後,平成20年11月末ころ,各職長が,同年12月末での期間満了者を集め,「減産のため,先にお渡しした「期間満了のお知らせ」のとおりとなります。延長や再赴任はありません。今- 19 -まで生産に協力していただき,有難うございました。」と口頭で通知した。その後,平成21年1月末での期間満了者に対しても,同様の口頭での通知をした。 (証人G)(7) 原告らの賃金額原告らが本訴で請求する賃金額の計算は,別紙「原告らの賃金額の計算」のとおりである。 (争いのない事実)(8) 平成19年5月までの労働組合との団体交渉ア前記(2)ア(イ)cの朝日新聞の報道後,労働者派遣業を営むH株式会社に雇用され,派遣労働者として被告で働く労働者がI労働組合関東支部(以下「組合支部」という。)に加入し,平成18年10月,Jユニオン(ただし,組合支部傘下の分会である。)を結成し,組合支部及びJユニオンは,同月27日,Hと被告に団体交渉を申し入れた。 イさらに,原告Bを含むEに雇用され,派遣労働者として被告で働く労働者が,同年11月,組合支部に加入し,Kユニオン(組合支部傘下の分会。以下「Kユニオン」という。)を結成し,組合支部及びKユニオンは,同年12月12日,被告に団体交渉を申し入 者として被告で働く労働者が,同年11月,組合支部に加入し,Kユニオン(組合支部傘下の分会。以下「Kユニオン」という。)を結成し,組合支部及びKユニオンは,同年12月12日,被告に団体交渉を申し入れた。 ウそして,同年11月以降,組合支部,Jユニオン及びKユニオン(第1回団体交渉を除く。)と被告との間で,団体交渉が行われた。 第1回団体交渉平成18年11月14日第2回団体交渉同年12月26日第3回団体交渉平成19年 2月28日第4回団体交渉同年 4月 5日エ団体交渉の議題は,後に追加したものを含め,次のようなものであった。 ①偽装出向に関する経緯の説明と謝罪②派遣労働者の賃金・労働条件の改善(期間従業員との100万円以上もある年収- 20 -格差の解消)③派遣会社の誇大広告による求人方法の是正④雇用の安定(派遣労働者の継続的な就労の保障。当時,被告の派遣労働者の派遣雇用契約は,「1か月単位」だったのを是正する。)⑤作業服の無償支給(以上,争いのない事実,甲49の1~15,53~58,証人L第1回(甲42を含む。以下,同じ。),証人M(甲47,52を含む。以下,同じ。))オ当時の社会的背景として,派遣や偽装請負という働かせ方が格差と貧困の温床となっているのではないかとの社会的関心が強く,JユニオンとKユニオンの活動は主要なメディアで何度も取り上げられ,賃金の引き上げや連休手当の支給などの成果も上がり,JユニオンのN委員長やL副委員長は,派遣労働者の闘いを象徴する人物とみなされるようになっていった。また,被告人事部も,Jユニオンの中心人物がL,Nであることを認識していた。 (以上,甲49の1~15,証人L第1回,証人M,証人G,弁論の全趣旨)(9) 平成 とみなされるようになっていった。また,被告人事部も,Jユニオンの中心人物がL,Nであることを認識していた。 (以上,甲49の1~15,証人L第1回,証人M,証人G,弁論の全趣旨)(9) 平成20年12月以降の団体交渉被告は,次のとおり,組合支部及び労働組合日野自動車ユニオン(平成20年12月27日結成)との団体交渉を実施した。 平成20年12月11日同年12月18日平成21年 1月23日同年 1月27日同年 2月11日同年 3月18日同年 6月19日(争いのない事実) 3 争点- 21 -(1) 原告らと被告との期間雇用契約は,実質的に期間の定めのない契約又は雇用期間を2年11か月とする契約であったか。 (2)ア仮に,(1)が認められないとしても,原告らは,雇用の継続につき合理的期待を有していたか。 イさらに,本件雇止めを正当化する客観的で合理的な理由はあったか。 4 争点(1)(期間の定めのない契約等)についての当事者の主張(1) 原告らの主張アまとめイ以下の事実及び「使用者は,期間の定めのある労働契約について,その労働契約により労働者を使用する目的に照らして,必要以上に短い期間を定めることにより,その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。」との労働契約法17条2項の趣旨によれば,原告らと被告との期間雇用契約(争いのない事実等(2)ア~エ)は,契約書上の形式的な期間の定めにかかわらず,実質的には期間の定めのない契約と同一の状態にあったか,少なくとも2年11か月の雇用期間の定めがあったものである。 イ原告らの仕事内容(ア) 原告らの従事していた自動車部品の構内運搬供給作業(原告A),クラ ない契約と同一の状態にあったか,少なくとも2年11か月の雇用期間の定めがあったものである。 イ原告らの仕事内容(ア) 原告らの従事していた自動車部品の構内運搬供給作業(原告A),クランクシャフト製造作業(原告B),KD梱包作業(原告C),トラニオンシャフト加工作業(原告D)(争いのない事実等(2)ア~エ)は,被告の業務である自動車製造業務に不可欠な中核的基幹的作業である。 (イ) その上,原告らは,正社員の補助的な業務としてではなく,専属の作業を任されていた。 (ウ) さらに,原告らは,出向及び労働者派遣の時代から,日野自動車で同一の作業に従事し続け,その期間は長期に及んでいた。 (エ) そして,原告らは,正社員,派遣労働者と混在して作業をしていた。 (オ) また,工場に勤務する直接雇用労働者(正社員及び期間従業員)のうち,- 22 -少なくとも3割が期間従業員であった。 ウ期間雇用契約更新の実態(ア) 原告Dは,平成17年6月17日から数えても,15回の更新で勤続3年7か月に及び,当初の時期からの通算では15年に及んでいる。 また,原告A及び原告Bは,5回更新1年4か月の勤続である。しかも,出向期間及び派遣期間も加えると,原告Aは3年6か月,原告Bは2年11か月の勤続である。 (イ)a 期間雇用契約書の作成は,名目的形式的なものであった。 b 原告A及び原告Bに見られるように,前期の期間雇用契約の終了よりもかなり早い時期に更新の契約書が作成されることもあった。 c 原告Bのように,期間満了のお知らせが全くやってこなかった労働者もいた。 d 期間満了のお知らせがやってきた労働者にとっても,そもそも2か月の雇用契約で契約期間開始の半月後には既に雇用期間満了のお知ら ように,期間満了のお知らせが全くやってこなかった労働者もいた。 d 期間満了のお知らせがやってきた労働者にとっても,そもそも2か月の雇用契約で契約期間開始の半月後には既に雇用期間満了のお知らせの書面がやってきて,しかも,平成20年11月までは,期間雇用契約が更新されていた。 e 原告Bに対して平成20年11月17日に「期間満了のお知らせ」を渡した職長も,「形式的なものですから。」と断っていた。 エ期間従業員の意識(ア) 被告日野工場においては,職務能力や職務態度に問題がない限りは,2年11か月は雇用が保障されるとの意識が期間従業員に存在していた。 (イ) すなわち,被告における再赴任2回まで,上限2年11か月という制度(争いのない事実等(3))は,期間の上限の規制であると同時に,問題のない労働者については2年11か月の雇用が保障されるというものであった。 (ウ) 1年後に再赴任しなかった24%の期間従業員のうち,会社都合(能力不足等)は20%くらいであるから,1年後に再赴任しなかった期間従業員のうち会社都合(能力不足等)によるものは,同時期に入社した者の約5%である。 - 23 -(エ) 原告Cは,平成20年9月の面接の際,2年11か月勤務できるかが確認された。 (オ)a 原告Dは,平成20年5月31日に2年11か月となった後,同年7月4日に4か月契約を締結したが(争いのない事実等(2)エ),この間,職場に復帰することを前提に寮に荷物を置かせてもらった。 b また,原告Dは,職長から,平成20年5月に辞める前に「また戻ってきてくれ。」と言われ,約1か月後に職場復帰した際には「2年11か月よろしく頼むよ。」と言われた。 オ平成19年6月の被告人事部長の約束(ア) 平成19 年5月に辞める前に「また戻ってきてくれ。」と言われ,約1か月後に職場復帰した際には「2年11か月よろしく頼むよ。」と言われた。 オ平成19年6月の被告人事部長の約束(ア) 平成19年6月1日,被告の申入れにより,被告と組合支部との少人数での協議が行われた。出席者は,被告側がO人事部長とG人事厚生室長,組合支部側がP委員長とM書記長のみであった。 (イ) 被告は,①メディアの寵児となったN,Lの二人が被告から撤退してくれるなら,Kユニオン委員長のB委員長らを含む希望者全員を期間従業員として採用してもいい,②その場合,B委員長らの組合活動は一定期間控えてほしい,というものであった。 (ウ) 組合支部は,Kユニオンの委員長である原告Bをはじめ団体交渉やビラまきなどで先頭に立って活動してきた組合員が期間従業員に切り替わって4か月後とか6か月後に,契約期間満了と称して雇止めされる事態を避けるため,被告が期間従業員の常態となっている2年11か月の雇用を保障することと引換えに被告の提案を了承することとした。 (エ) 組合支部は,合意に向けて何度かの交渉を重ね,手順についても協議をする一方,雇用期間の保障については,同年7月4日の協議の場で,次のようなやりとりをした。 M書記長「期間満了ですぐに雇止めすることはないだろうな。」O人事部長「途中で雇い止めするようなことはしない。2年11か月は必ず保障- 24 -する。」M「それならば,組合はN,Lを日野から撤退させる。残る組合員も1年程度は表立った組合活動を控える。」(オ) 直接雇用に当たってのこのやりとりは,同年8月24日に原告らと被告が締結した期間雇用契約が,その形式的期間の設定にかかわらず,特段の事情のない限り2年11か月の継続雇用という被告の 」(オ) 直接雇用に当たってのこのやりとりは,同年8月24日に原告らと被告が締結した期間雇用契約が,その形式的期間の設定にかかわらず,特段の事情のない限り2年11か月の継続雇用という被告の期間従業員の通常の扱いを明確にしている。 (2) 被告の主張アまとめ原告らの主張アは否認する。 争いのない事実等(3)及び(4)のとおり,被告における期間従業員は,生産量に応じて変動する要員需給に対応するための従業員であり,契約更新はその都度判断していること,契約更新手続は毎回厳格に行っており,期間従業員も毎回期間雇用契約書に署名捺印をしていること等から,原告らと被告との期間雇用契約が実質的には期間の定めのない契約と同一の状態にあったとか,少なくとも2年11か月の雇用期間の定めがあったものと認めることはできない。 イ原告らの仕事内容(ア) 同イのうち,(エ)及び(オ)は認め,その余は否認する。 (イ) 原告らが従事していた業務がトラックの製造において必要な過程であることを否定するものではないが,期間従業員がいなければトラックの生産ができないというようなことはない。 ウ期間雇用契約更新の実態(ア) 同ウ(ア)は認める。ただし,原告Dは,平成11年2月15日の期間満了後平成16年6月25日まで,5年以上採用されていない。 (イ) 同(イ)のうち,a,c及びeは否認し,b及びdは認める。 エ期間従業員の意識- 25 -(ア) 同エ(ア)は否認する。 (イ) 同(イ)は否認する。 (ウ) 同(ウ)は認める。 (エ) 同(エ)は否認する。 期間従業員の採用・面接時には,「期間従業員面接案内」という契約期間,日給,勤務場所,仕事内容,勤務時間等を説明する資料を応 (ウ) 同(ウ)は認める。 (エ) 同(エ)は否認する。 期間従業員の採用・面接時には,「期間従業員面接案内」という契約期間,日給,勤務場所,仕事内容,勤務時間等を説明する資料を応募者に渡し,それを基に処遇条件の説明を行っていた。被告は,面接官にはその書面に記載されている項目について,記載されているとおりの説明を行うよう指導していたから,原告Cに対して,契約更新を行う場合は最長1年であり,さらに再赴任をする場合でも2回まで(通算2年11か月)であるという一般的な契約について説明したが,2年11か月までの雇用を保証する趣旨の説明はしなかった。 (オ) 同(オ)のうち,aは認め,bは不知。 オ平成19年6月の被告人事部長の約束(ア) 同オ(ア)は認める。 (イ) 同(イ)は否認する。 (ウ) 同(ウ)は不知。 (エ) 同(エ)のうち,協議の内容は否認し,その余は認め,同(オ)は否認する。 被告のO人事部長は,当時の生産状況が続けば,最長2年11か月まで再契約が可能であるという趣旨の説明をし,通常の期間従業員と同様に扱うことを説明したにすぎない。 5 争点(2)(客観的で合理的な理由の有無)についての当事者の主張(1) 原告らの主張ア雇止めの要件労働者が期間の定めのある労働契約の下で就労していても,実質的に期間の定めのないのと同様な状態の下で就労している場合や雇用の継続に合理的期待がある場合には,期間の定めがない労働者を解雇する場合に準じた法規制が及ぶ。 - 26 -イ継続雇用の合理的期待前記4(1)で主張した事実によれば,原告らが被告による雇用の継続に期待を有することには合理性があり,仮に雇用の継続に期待を有する合理性の期間が限定されるとしても,少な イ継続雇用の合理的期待前記4(1)で主張した事実によれば,原告らが被告による雇用の継続に期待を有することには合理性があり,仮に雇用の継続に期待を有する合理性の期間が限定されるとしても,少なくとも2年11か月の雇用の継続に期待を持つことには合理性がある。 ウ雇止めの客観的で合理的な理由(ア) まとめ後記被告の主張(ア)は否認する。 (イ) 原告らの反論a 期間従業員の募集の再開(a) 被告は,平成21年9月,日野工場,羽村工場,α工場の3工場で合計900人規模の期間従業員の募集を再開する方針であることを明らかにし,これに先立って同年8月からハローワークや求人誌によって期間従業員の募集を開始した。 期間従業員の募集は,その後も継続され,同年12月4日までに採用された期間従業員の数は,日野工場100人,羽村工場600人,α工場400人の合計1100人に及んでいる。 (b) このように,期間従業員の一斉雇止めをしながら(争いのない事実等(6)ウ(エ)),短期間のうちに大量採用の再開が行われること自体,本件雇止めがいかに無定見に行われたものであるかを示すものである。 b 雇止めの必要性の不存在(a) 被告主張の平成21年3月期の連結営業損失194億円(争いのない事実等(6)イ(イ))は,同期の連結売上高1兆0694億円(乙6の1(1))の1~2%であり,純資産2189億4200万円(乙6の1(2))の10%にも満たない。 同期の純損失618億3900万円(乙6の1(1))にしても,純資産の30%に満たない。 (b) したがって,被告の経営状況は,直ちに原告らを雇止めするほどの必要性- 27 -を有するものではなかった。 c 雇止め回避努力の不十分(a) 本件は 0%に満たない。 (b) したがって,被告の経営状況は,直ちに原告らを雇止めするほどの必要性- 27 -を有するものではなかった。 c 雇止め回避努力の不十分(a) 本件は,期間従業員のほぼ全員を一時に雇止めしたものであって,人員整理の方法及び程度を慎重に考慮して,雇止めの対象を一部にとどめる等の解雇回避努力を尽くしていない。 (b)ⅰ 被告の単体決算の資本準備金,利益準備金,固定資産圧縮積立金,別途積立金,当期未処分利益を合計した「内部留保」を検討すると,平成21年3月期のそれは1313億円であり,これは,アジア危機後の平成10年1093億円の1.2倍,平成11年731億円の1.8倍,平成12年976億円の1.35倍に当たる。それ以前とも比較すると,昭和55年の3.7倍,平成2年の1.7倍である(甲63)。 ⅱ この内部留保を有効活用すれば,期間従業員の少なくともその一部の雇用維持が十分に可能なはずであった。 (c) 被告の行った人件費の削減,原価低減,固定費削減,稼働日数調整(争いのない事実等(6)ア)の多くは,本件雇止め後のことであって,雇止め回避のための方策と評価することはできない。 (d)ⅰ 被告の費用削減策では,希望退職の募集や配転,出向,転籍などの措置を講じていない。 ⅱ したがって,被告の費用削減策は,雇止めの回避策としては不十分なものである。 d 組合との団体交渉(a) 被告の平成20年12月以降の団体交渉における態度も不誠実なものであった。 (b) 被告の説明は,世界金融危機の影響で市場が悪化していることを述べるのみで,雇止め回避努力を問う組合の質問に対しては何らの回答も行わなかった。 雇止めの必要性や雇止め回避努力の検討のために組合側が期 被告の説明は,世界金融危機の影響で市場が悪化していることを述べるのみで,雇止め回避努力を問う組合の質問に対しては何らの回答も行わなかった。 雇止めの必要性や雇止め回避努力の検討のために組合側が期間従業員数の推移に- 28 -ついて質問しても,被告は「数を示す必要はない。」と答えるのみであった。 (c) また,被告は平成21年1月23日の団体交渉でようやく雇止め回避努力として,稼働日数を少なくした,社員を他の工場に応援に出した,新規採用の中止をした,間接部門の経費を削減した,基幹職の賞与をカットした,役員の賞与をカットしたとの6点の項目を挙げただけで,その内容の説明もなかった。 (d) しかも,被告は,役員の報酬のカットを既に実施したかのごとき誤解を招く説明をした。 (e) その上,この団体交渉は,既に原告A及び原告Bに対する雇止めがされた後の説明であり,原告C,原告Dに対して更新拒絶の通告がされた後の説明である。 (f) 後記被告の主張(イ)d(f)は認める。 (2) 被告の主張ア雇止めの要件原告らの主張アは争う。 本件は,期間満了による各期間雇用契約の終了であり,解雇ではない。 イ継続雇用の合理的期待(ア) 同イは否認する。 (イ) 争いのない事実等(3)及び(4)のとおり,被告における期間従業員は,生産量に応じて変動する要員需給に対応するための従業員であり,契約更新はその都度判断していること,契約更新手続は毎回厳格に行っており,期間従業員も毎回期間雇用契約書に署名捺印をしていること等から,原告らが期間雇用契約が漫然と更新されるとの合理的期待を有する状況にはなかった。 (ウ) 原告Dは,その期間雇用の期間が連続していない上,かなり長期間にわたって雇用していない時期が こと等から,原告らが期間雇用契約が漫然と更新されるとの合理的期待を有する状況にはなかった。 (ウ) 原告Dは,その期間雇用の期間が連続していない上,かなり長期間にわたって雇用していない時期があり,そもそも長期にわたって更新を繰り返している事実はない。 原告A,原告B及び原告Cについては,そもそも期間雇用契約を長期にわたって更新している状況にはない。 - 29 -ウ雇止めの客観的で合理的な理由(ア) まとめ本件雇止めは,争いのない事実等(5)及び(6)の事実のとおり,平成20年秋以降の世界同時不況下にあって,国内外の景気の悪化によるトラック需要の大幅減少及びそれによる被告の経営状況の悪化を理由とするものであり,本件雇止めには客観的で合理的な理由が存する。 (イ) 原告らの反論a 期間従業員の募集の再開原告らの主張ウ(イ)aのうち,(a)は明らかに争わず,(b)は否認する。 平成21年後半からの募集は,本件雇止め時には予期できなかったその後の事情によるものである。 b 雇止めの必要性の不存在同(イ)bのうち,(a)は認め,(b)は否認する。 一般的に,会社の経営状況は貸借対照表,損益計算書,キャッシュフロー等の様々な経営指標はもとより,国内外の景気,市場での需要動向等の会社を取り巻く様々な経営環境,中長期・短期的な生産・販売の見通し等を踏まえた将来の生産体制,技術・商品戦略などの多くの観点から総合的に判断するものであり,その一要素のみで被告の経営状況を論じることは失当である。 c 雇止め回避努力の不十分(a) 同(イ)c(a)は否認する。 (b) 同(b)のうち,ⅰは明らかに争わず,ⅱは否認する。 (c) 同(c)は否認する。 (d) 同(d)のう c 雇止め回避努力の不十分(a) 同(イ)c(a)は否認する。 (b) 同(b)のうち,ⅰは明らかに争わず,ⅱは否認する。 (c) 同(c)は否認する。 (d) 同(d)のうち,ⅰは認め,ⅱは否認する。 期間従業員の雇用維持のため正社員の労務費の削減をすべきとの主張は全く理由がない。 d 組合との団体交渉- 30 -(a) 同(イ)d(a)は否認する。 (b) 同(b)は否認する。 被告は,平成20年12月11日及び12月18日の団体交渉においては,期間雇用契約を更新することが困難な経営状況であることを説明し,また,質疑応答に応じて,被告として稼働日変更や定時割れ設定(労働時間より早く工場のラインを停めて就業を終了させ,残り時間は手待ち時間とすること)などを行っていることを説明した。 (c) 同(c)のうち,被告が工場の稼働日数を少なくしたこと等の説明をしたことは認め,その余は否認する。 被告は,質疑応答に応じて,被告の経営状況などを踏まえて,工場の稼動日調整,残業制限などの間接部門の経費削減,基幹職の賞与カット(8%削減),役員賞与カット等,被告が講じた施策を可能な限り説明した。 (d) 同(d)は否認する。 (e) 同(e)は認める。 (f) 被告は,団体交渉を踏まえ,期間従業員が使用する寮について,退寮期限を1か月間延長する対応をした。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(期間の定めのない契約等)について(1) 追加の事実認定又は評価まず,原告らが,争いのない事実等(3)及び(4)の事実に加えて主張し,又は争いのない事実等の評価のために主張する点について検討する。 ア原告らの仕事内容(ア) 原告らが正社員,派遣労働者と混在し が,争いのない事実等(3)及び(4)の事実に加えて主張し,又は争いのない事実等の評価のために主張する点について検討する。 ア原告らの仕事内容(ア) 原告らが正社員,派遣労働者と混在して作業をしていたこと(原告らの主張イ(エ))及び工場に勤務する直接雇用労働者(正社員及び期間従業員)のうち,少なくとも3割が期間従業員であったこと(同イ(オ))は,当事者間に争いがない。 (イ) 原告らは,原告らの従事していた作業につき,自動車製造業務に不可欠な- 31 -中核的基幹的作業であり,正社員の補助的な業務としてではなく,専属の作業を任されていたものであり,出向等の時代から同一の作業に従事し続け,その期間は長期に及ぶ旨主張する。 原告らの従事していた作業が自動車製造業務に不可欠な作業であり,通常に作業が流れる限りは,正社員の関与が目立たない状態で作業が行われ,原告らが争いのない事実等(2)のとおりの雇用期間を有することは,そのとおりであるが,期間従業員と正社員との間には,職務範囲及び責任の重さにおいて厳然とした差異があったこと(争いのない事実等(4)イ)も,事実である。 イ期間雇用契約更新の実態(ア) 原告らの主張のとおり,原告A及び原告Bの期間従業員としての雇用期間は,1年4か月であり,出向期間及び派遣期間も加えると,原告Aは3年6か月,原告Bは2年11か月の勤続である。 原告Cの期間従業員としての雇用期間は,4か月であり,派遣期間も加えると,1年4か月である。 原告Dは,昭和63年7月から期間従業員として勤務しているが,平成11年2月15日の期間満了後平成16年6月25日まで5年以上採用されていないし,平成16年12月31日の期間満了後平成17年6月17日まで5か月以上採用されていないものである 勤務しているが,平成11年2月15日の期間満了後平成16年6月25日まで5年以上採用されていないし,平成16年12月31日の期間満了後平成17年6月17日まで5か月以上採用されていないものである。 (イ)a 期間雇用契約書の作成につき,原告A及び原告Bに見られるように,前期の期間雇用契約の終了よりもかなり早い時期に更新の契約書が作成されることもあったこと(原告らの主張ウ(イ)b),並びに期間満了のお知らせがやってきた労働者にとっても,そもそも2か月の雇用期間開始の半月後には既に雇用期間満了のお知らせの書面がやってきて,しかも,平成20年11月までは,期間雇用契約が更新されていたこと(同ウ(イ)d)は,当事者間に争いがない。 b 1.5か月前の職長による満了通知の交付については,職長によっては行っていなかった可能性もないではないが,原告Bについては,最終の契約の満了通- 32 -知は平成20年11月17日に職長より手交され,原告Cについても,少なくとも最終の契約の満了通知は平成21年1月6日に口頭でされている(争いのない事実等(3)エ(ウ))。 c 原告Bに対して平成20年11月17日に「期間満了のお知らせ」を渡した職長が,「形式的なものですから。」と断っていたとしても,原告Bの供述によれば,同月28日には,同職長から,原告Bに対し,「私(職長)としては,(原告)Bさんは一生懸命やってくださっているのだから,現場としてはこのまま働き続けていただきたいんだ,だけども現場の意見だけではどうにもならないんです。」と今回は形式的なものではないことを伝える電話がされていることが認められる。 d これらの事実によれば,平成20年秋以降の世界同時不況以前の比較的好況が続いた経済状況の下で,被告日野工場の現場(職長レベル)におい のではないことを伝える電話がされていることが認められる。 d これらの事実によれば,平成20年秋以降の世界同時不況以前の比較的好況が続いた経済状況の下で,被告日野工場の現場(職長レベル)において,2か月ごとの雇用期間の更新手続に当たり,期間従業員にがんばって働いてもらいたいとの気持ちから,書類の交付が一部されなかったり,形式的なものである等の言葉がかけられることがあったとしても,原告らにつき,争いのない事実等(3)で認定した期間雇用契約の更新手続のほとんどは履践されていたものである。 ウ期間従業員の意識(ア) 1年後に再赴任しなかった24%の期間従業員(争いのない事実等(4)ア(ウ))のうち,会社都合(能力不足等)は20%くらいであるから,1年後に再赴任しなかった期間従業員のうち会社都合(能力不足等)によるものは,同時期に入社した者の約5%であること(原告らの主張エ(ウ))は,当事者間に争いがない。 (イ) 証拠(原告C)によれば,原告Cは,平成20年9月の面接の際,2年11か月勤務できるかが確認されたこと(同エ(エ))が認められる。ただし,同月9月19日付けで作成された被告と原告Cの期間従業員雇用契約書(甲12)の内容及び弁論の全趣旨によれば,上記確認の趣旨は,契約更新を行う場合は最長1年であり,さらに再赴任をする場合でも2回までであり,不況等の事情の変化がない限り,通算2年11か月勤務することができるが,そのような場合,原告Cに2年11か- 33 -月働く意思があるかを問うものであったと認められる。 (ウ)a 原告Dは,平成20年5月31日に2年11か月となった後,1か月余り寮を離れたが,この間,職場に復帰することを前提に寮に荷物を置かせてもらったこと(同エ(オ)a)は,当事者間に争いがない。 原告Dは,平成20年5月31日に2年11か月となった後,1か月余り寮を離れたが,この間,職場に復帰することを前提に寮に荷物を置かせてもらったこと(同エ(オ)a)は,当事者間に争いがない。 b 証拠(原告D)によれば,原告Dは,職長から,平成20年5月に辞める前に「また戻ってきてくれ。」と言われ,約1か月後に職場復帰した際には「2年11か月よろしく頼むよ。」と言われたことが認められる。 (エ) 争いのない事実等(3)及び(4)の事実に,上記説示の事実を併せ考慮すれば,被告日野工場において,職務能力や職務態度に問題がない限りは2年11か月は雇用が保障されるとの意識が期間従業員に存在していたと認めることはできず,被告日野工場での期間従業員の意識は,職務能力や職務態度に問題がないことに加え,不況等の事情の変化がない場合は,2年11か月の雇用が保障されるとの意識であったと認められる。 エ平成19年6月の被告人事部長の約束(ア) 平成19年6月1日,被告の申入れにより,被告と組合支部との少人数での協議が行われ,出席者は,被告側がO人事部長とG人事厚生室長,組合支部側がP委員長とM書記長のみであったことは,当事者間に争いがない。 (イ) 証拠(甲60,証人M,証人L(第1回,第2回))によれば,被告のO人事部長らは,①メディアの寵児となったN,Lの二人が被告から撤退してくれるなら,Kユニオン委員長のB委員長らを含む希望者全員を期間従業員として採用してもいい,②その場合,B委員長らの組合活動は一定期間控えてほしいとの申入れをしたこと,組合支部は,Kユニオンの委員長である原告Bをはじめ団体交渉やビラまきなどで先頭に立って活動してきた組合員が期間従業員に切り替わって4か月後とか6か月後に,契約期間満了と称して雇止めされる事態 こと,組合支部は,Kユニオンの委員長である原告Bをはじめ団体交渉やビラまきなどで先頭に立って活動してきた組合員が期間従業員に切り替わって4か月後とか6か月後に,契約期間満了と称して雇止めされる事態を避けるため,被告が期間従業員の常態となっている2年11か月の雇用を保障することと引換えに被告の提案を了承することとしたこと,組合支部は,合意に向けて何度かの交渉を重ね,- 34 -手順についても協議をしたことが認められる。 (ウ) 原告らは,同年7月4日の協議の場で,M書記長の質問に答え,O人事部長が「途中で雇い止めするようなことはしない。2年11か月は必ず保障する。」と答えた旨通常の期間従業員の雇用期間の保証以上の保証を与えた趣旨を含むかのような主張をし,証人Mは,それに沿う証言をする。 しかし,証人Mの証言は,反対趣旨の証人Gの証言,原告ら主張のO人事部長との合意内容を記載した覚書のような書面は作成されていないこと,並びに派遣従業員から期間従業員となり,通常の期間従業員と同じ待遇を受けることであっても,大幅な待遇改善となり,労働組合運動の成果として誇り得るものであったと認められること(証人M,証人L第1回,弁論の全趣旨)に照らし,採用することができず,他にこの点を認めるに足りる証拠はない。 (エ) したがって,O人事部長の約束は,労働者派遣により被告日野工場で働いている派遣従業員を期間従業員として雇用した後,契約期間,更新及び再赴任等の点でこれまでの期間従業員と同じ待遇をし,契約期間の更新の際を利用して,組合役員の首切りをするようなことはしないことは含んでいるが,それ以上の保証を含むことの立証はない。 (2) 判断以上に説示した事実によれば,労働契約法17条2項の趣旨を考慮しても,原告らと被告との期間雇用契約( うなことはしないことは含んでいるが,それ以上の保証を含むことの立証はない。 (2) 判断以上に説示した事実によれば,労働契約法17条2項の趣旨を考慮しても,原告らと被告との期間雇用契約(争いのない事実等(2)ア~エ)が,実質的には期間の定めのない契約と同一の状態にあったとか,少なくとも2年11か月の雇用期間の定めがあったものと認めることはできない。 2 争点(2)(客観的で合理的な理由の有無)について(1) 継続雇用の合理的期待前記1に説示した事実によれば,被告日野工場では,職務能力や職務態度に問題がなく,不況等の事情の変化がない場合,2年11か月雇用されることが期待されていたものであり,原告Dの雇用期間は平成17年6月以降だけでも3年半に及ん- 35 -でおり,原告原告A及び原告Bの期間従業員としての雇用期間は1年4か月であり,原告Cの期間従業員としての雇用期間は4か月であるが,最大2年11か月の更新又は再赴任があり得るとの契約の下に雇用されていたものであるから,このような期間従業員を契約期間満了によって雇止めするに当たっては,解雇に関する法理が類推され,解雇であれば解雇権濫用に当たる事実関係の下に被告が新契約を締結しなかったとするならば,期間満了後における被告と期間従業員との間の法律関係は従前の期間雇用契約が更新されたのと同様の法律関係となると解せられる。 ただし,その場合に要求される雇止めを判断する基準は,正社員を解雇する場合とは自ずから合理的な差異がある。 (2) 雇止めの客観的で合理的な理由ア世界同時不況等の存在本件雇止めは,争いのない事実等(5)及び(6)のとおり,平成20年秋以降の世界同時不況下にあって,国内外の景気の悪化によるトラック需要の大幅減少及びそれによる被告の経営状 世界同時不況等の存在本件雇止めは,争いのない事実等(5)及び(6)のとおり,平成20年秋以降の世界同時不況下にあって,国内外の景気の悪化によるトラック需要の大幅減少及びそれによる被告の経営状況の悪化を理由とするものであり,他に特段の事情の認められない限り,本件雇止めには客観的で合理的な理由が存すると認められる。 イ特段の事情の有無(ア) 期間従業員の募集の再開a 被告は,平成21年9月,日野工場,羽村工場,α工場の3工場で合計900人規模の期間従業員の募集を再開する方針であることを明らかにし,これに先立って同年8月からハローワークや求人誌によって期間従業員の募集を開始したこと,並びに期間従業員の募集は,その後も継続され,平成21年12月4日までに採用された期間従業員の数は,日野工場100人,羽村工場600人,α工場400人の合計1100人に及んでいること(原告らの主張ウ(イ)a(a))は,被告において明らかに争わないから,これを自白したものとみなす。 b 原告らは,期間従業員の一斉雇止めをしながら,短期間のうちに大量採用の再開が行われること自体,本件雇止めが無定見に行われたことを示すものである- 36 -と主張するが,弁論の全趣旨によれば,経済情勢の予想には困難を伴い,平成20年秋の世界同時不況についても,当初は100年に一度の大恐慌と喧伝されていたことが認められるところであり,原告らの上記主張は採用することができない。 (イ) 雇止めの必要性の不存在a 原告らは,被告の平成21年3月期の連結営業損失194億円は,同期の連結売上高1兆0694億円の1~2%であり,純資産2189億4200万円の10%にも満たず,同期の純損失618億3900万円も,純資産の30%に満たないこと(同ウ(イ)b( 失194億円は,同期の連結売上高1兆0694億円の1~2%であり,純資産2189億4200万円の10%にも満たず,同期の純損失618億3900万円も,純資産の30%に満たないこと(同ウ(イ)b(a))は,当事者間に争いがない。 b 原告らは,この事実に基づき,被告の経営状況は,直ちに原告らを雇止めするほどの必要性を有するものではなかった旨主張する。 しかしながら,争いのない事実等(5)を併せ考慮すれば,被告の経営状況を原告ら主張のように認めることは,到底できない。 (ウ) 雇止め回避努力の不十分a 被告の単体決算の資本準備金,利益準備金,固定資産圧縮積立金,別途積立金,当期未処分利益を合計した「内部留保」を検討すると,平成21年3月期のそれは1313億円であり,これは,アジア危機後の平成10年1093億円の1. 2倍,平成11年731億円の1.8倍,平成12年976億円の1.35倍に当たり,それ以前とも比較すると,昭和55年の3.7倍,平成2年の1.7倍であること(同ウ(イ)c(b)ⅰ)は,被告において明らかに争わないから,これを自白したものとみなす。 b 原告らは,この事実に基づき,この内部留保を有効活用すれば,期間従業員の少なくともその一部の雇用維持が十分に可能なはずであった旨主張する。 しかしながら,争いのない事実等(5)を併せ考慮すれば,期間従業員の一部ではなく,全員の雇止めを必要とした被告の判断は,十分首肯し得るものであるといわなければならない。 c 被告の行った人件費の削減,原価低減,固定費削減,稼働日数調整の多く- 37 -の実施開始は,本件雇止め後のことである(争いのない事実等(7)ア)。 d(a) 被告の費用削減策では,希望退職の募集や配転,出向,転籍などの措置を講じていないこ 日数調整の多く- 37 -の実施開始は,本件雇止め後のことである(争いのない事実等(7)ア)。 d(a) 被告の費用削減策では,希望退職の募集や配転,出向,転籍などの措置を講じていないこと(同ウ(イ)c(d)ⅰ)は,当事者間に争いがない。 (b) 原告らは,この事実に基づき,被告の費用削減策は,雇止めの回避策としては不十分なものであると主張する。 しかしながら,期間従業員の雇用維持のために,正社員につき希望退職の募集や配転,出向,転籍などの措置を講じるべきであると解することはできない。 (エ) 組合との団体交渉a 被告は,平成20年12月11日から平成21年6月19日まで,7回にわたり,組合支部又は労働組合日野自動車ユニオンとの団体交渉を実施した(争いのない事実(9))。 b その誠実さについては,経営者側,労働者側の立場の違いにより,評価が分かれ,開催時期も,原告Aらに対する雇止めがされ,原告Cらに対して更新拒絶の通告がされた後の説明であるが(同ウ(イ)d(e)),証拠(証人G,証人M)及び弁論の全趣旨によれば,雇止めの理由,その回避努力,退寮期限等について,それぞれの立場から必要な質疑応答はされていることが認められる。 (オ) まとめ以上(ア)ないし(エ)の事実を併せ考慮しても,本件雇止めには客観的で合理的な理由が存すると認められる。 3 結論以上によれば,原告らの請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないから,棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所立川支部民事第3部 裁判長裁判官市川正巳- 38 - 裁判官 判所立川支部民事第3部 裁判長裁判官市川正巳 裁判官木目田玲子 裁判官八槇朋博

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