平成12(行ウ)47 運転免許更新処分無効確認等請求

裁判年月日・裁判所
平成14年11月21日 神戸地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-7094.txt

判決文本文12,364 文字)

判決平成14年11月21日神戸地方裁判所平成12年(行ウ)第47号運転免許更新処分無効確認等請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の請求 1 被告が平成12年3月23日付けをもって原告に対してなした自動車運転免許更新処分のうち,有効期間を3年とした部分が無効であることを確認する。 2 被告が平成12年7月13日付けをもって原告に対してなした決定が無効であることを確認する。 3 被告が平成12年7月13日付けをもって原告に対してなした決定を取消す。 第2 事案の概要 1 事案の骨子(1) 被告は,平成12年3月23日付けで,原告に対し,原告には下記違反行為(以下「本件違反行為」という。)があったことを前提に,有効期間を3年とする自動車運転免許更新処分(以下「本件処分」という。)をした。 記原告は,平成10年10月19日,排気量90ccの自動二輪車(以下「原告車両」という。)を運転中,被告が道路標識により一時停止場所として指定した兵庫県A市a町b番地先交差点(以下「本件交差点」という。)の停止線(以下「本件停止線」という。)の直前で一時停止せず通行し,道路交通法43条が規定する一時停止義務に違反する行為をした。 (2) 被告は,原告からの本件処分(有効期間を3年とする部分)に対する異議申立てについて,平成12年7月13日付けで,原告に対し,本件異議申立ては理由がない旨の決定(以下「本件決定」という。)をした。 (3) 本件は,原告が,本件違反行為をした事実はなく,本件処分(有効期間を3年とする部分)及び本件決定には重大か し,本件異議申立ては理由がない旨の決定(以下「本件決定」という。)をした。 (3) 本件は,原告が,本件違反行為をした事実はなく,本件処分(有効期間を3年とする部分)及び本件決定には重大かつ明白な違法がある等と主張して,被告に対し,本件処分(有効期間を3年とする部分)及び本件決定の無効確認等を求めた事案である。 2 前提事実次の事実は,当事者間に争いがない。 (1) 運転免許歴等原告は,昭和42年7月11日大型自動2輪運転免許を,また,昭和43年2月17日普通自動車運転免許をそれぞれ受け(免許番号第○△○△号),それ以降,運転免許の更新を重ねてきた(甲1)。 (2) 本件違反行為兵庫県A警察署の甲巡査部長は,平成10年10月19日,原告の下記違反行為を現認したとして,交通犯則切符を作成した(甲16)。 記原告は,平成10年10月19日,排気量90ccの自動二輪車を運転中,被告が道路標識により一時停止場所として指定した兵庫県A市a町b番地先交差点(本件交差点)の停止線の直前で一時停止せず通行し,道路交通法43条が規定する一時停止義務に違反する行為(本件違反行為)をした。 (3) 本件交差点本件交差点は,北方を内側に湾曲して,南東から北西に走る幅員約8.4メートルの全面アスファルト舗装の本件県道と,ほぼ平行に走る幅員約8.2メートル(車道部分は約5.6メートル)の全面アスファルト舗装の平坦な本件市道が,約30度の鋭角で交差する交差点で,被告により設置された一時停止を示す道路標識(以下「本件標識」という。)及び道路標示の停止線(本件停止線)によって,本件市道から本件県道に進行する車両等に対して,一時停止が義務づけられていた(乙2,4,5,14,別紙図 時停止を示す道路標識(以下「本件標識」という。)及び道路標示の停止線(本件停止線)によって,本件市道から本件県道に進行する車両等に対して,一時停止が義務づけられていた(乙2,4,5,14,別紙図面参照)。 ところで,本件市道から鋭角に本件県道に進行する場合,右方の安全確認が十分出来なくなり危険な事態が生じるのを防止するため,本件交差点南西部分に導流帯(いわゆるゼブラゾーン,以下「ゼブラゾーン」という。)を設けた上で一時停止規制をかけ,ゼブラゾーン周辺に高さ約60センチメートルのオレンジ色ポストコーン17本を設置して,車両がゼブラゾーン部分に進入できないようにしている。これは,本件県道と本件市道の接続が直角に近づくよう設計したものであり,本件交差点進入時の車両の速度を減速させる効果がある(乙2,4,5,14,別紙図面参照)。 (4) 刑事処分等原告は,定められた期間内に反則金を納付しなかったため,本件違反行為にかかる道路交通法違反被疑事件について,神戸区検察庁に送致された。しかし,神戸区検察庁は,平成11年5月11日,原告に対し,上記被疑事件について不起訴処分とした(甲7)。 (5) 本件処分被告は,本件違反行為の存在により,原告は優良運転手(平成13年法律第51号による改正前の道路交通法92条の2第1項〔以下,単に「道路交通法92条の2第1項」という。〕参照)に該当しないと判断し,平成12年3月23日,原告に対し,有効期間を3年間とする運転免許証(甲1)を交付した(本件処分)。 (6) 本件決定原告は,平成12年5月9日,被告に対し,「原告が本件違反行為をした事実はなく,原告は優良運転手に該当するので,有効期間を5年間とする運転免許証を交付すべきである。」と主張し 件決定原告は,平成12年5月9日,被告に対し,「原告が本件違反行為をした事実はなく,原告は優良運転手に該当するので,有効期間を5年間とする運転免許証を交付すべきである。」と主張して,本件処分(有効期間を3年とする部分)に対する異議申立てをした(甲8)。 しかし,被告は,原告が本件違反行為をしており,原告は優良運転手に該当しないとして,平成12年7月13日付けで,原告に対し,本件異議申立ては理由がない旨の決定(本件決定)をした(甲9)。 (7) 免許証の有効期間免許証の有効期間については,道路交通法92条の2第1項が定めている。それによれば,優良運転者で更新日における年齢70歳未満の者(原告も70歳未満である。)の運転免許証の有効期間は5年であり,優良運転者以外の者の運転免許証の有効期間は3年である。 そして,優良運転者に該当するか否かは,免許証の有効期間の更新を受けたものが,更新前の免許証の有効期間が満了する日の40日前5年間において違反行為がないという基準を充たすか否かによる(道路交通法92条の2の備考一の2,同法施行令33条の7)。 3 争点本件の争点は,次の2点である。 (1) 争点1(本件処分の無効事由の有無)本件処分(有効期間を3年とする部分)が重大かつ明白な瑕疵があって無効であるか否か。具体的には,原告の本件違反行為の有無が特に問題となる。 (2) 争点2(本件決定の無効事由,取消事由の有無)本件決定が重大かつ明白な瑕疵があって無効であるか否か,取り消すべき違法があるか否か。具体的には,本件違反行為が存在しないことを本件決定の瑕疵として主張できるか,本件決定は適正手続を経ているかが問題となる。 4 争点に対する当事者の主張 るか否か,取り消すべき違法があるか否か。具体的には,本件違反行為が存在しないことを本件決定の瑕疵として主張できるか,本件決定は適正手続を経ているかが問題となる。 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点1(本件処分の無効事由の有無)についてア被告の主張(ア) 原告は,平成10年10月19日午後3時47分ころ,排気量90ccの自動二輪車(原告車両)を運転中,被告が道路標識により一時停止場所として指定した兵庫県A市a町b番地先交差点(本件交差点)の停止線の直前で一時停止せず通行し,本件違反行為(指定場所一時不停止の違反行為-道路交通法43条違反)をした。 すなわち,原告は,本件交差点に進入するに当たり,本件停止線の直前で一時停止せずに,そのまま本件停止線を越えて本件交差点に入った(別紙図面参照)。 (イ) このように,原告には,更新前の免許証の有効期間が満了する日の40日前5年間において本件違反行為をしているので,免許証の有効期間を3年とする本件処分に重大かつ明白な瑕疵はない。 イ原告の主張次の各事実に照らせば,本件違反行為が存在することを前提とする本件処分(免許証の有効期間を3年とする部分)には,重大かつ明白な瑕疵があり無効である。 (ア) 本件違反行為の不存在原告は,本件市道から本件交差点に進入するに当たって,本件交差点内で先行していた乗用自動車が本件停止線付近で一旦停止したため,本件停止線手前3~4メートル(3本目と4本目のポストコーンの間)からゼブラゾーン(約1.9メートル間隔でポールがあった。)に入ったもので,本件停止線を越えていない。 したがって,原告は,道路標識等による停止線の直前で一時停止する義務(道路交通法43条) 約1.9メートル間隔でポールがあった。)に入ったもので,本件停止線を越えていない。 したがって,原告は,道路標識等による停止線の直前で一時停止する義務(道路交通法43条)に違反しておらず,本件違反行為をしていない。 (イ) 不起訴処分の存在原告が本件違反行為をしていないからこそ,本件違反行為について不起訴処分となったのである。 (ウ) 交通反則切符作成手続の違法甲巡査部長が作成した交通反則切符の作成手続には,次のとおり重大な違法がある。 a 交通反則告知書,交通事件原票甲巡査部長は,交通反則告知書に記載すべき「違反の現認時の状況」を示す同書「補充欄」に,違反態様を全く記載せず,ただ単に「指定場所一時不停止」の欄にレ点を入れただけである。 甲巡査部長は,交通事件原票の違反の状況について,何ら図面化することもなく,「別紙のとおり」としただけであり,本紙と別紙との間に契印もしなかった。 甲巡査部長は,交通反則告知書を交付した際,当然に記載すべき交通事件原票の続欄に記載すべき違反事実の図示を書き入れなかった。 b 本件違反場所の特定本件違反場所は,「A市a町c番地 d美容院先路上」であり,甲巡査部長が記載した「A市a町b番地」なる所在地は,存在しない架空の地番であり,明らかに誤っている。 (2) 争点2(本件決定の無効事由,取消事由の有無)についてア原告の主張(ア) 実体上の無効,取消事由本件違反行為が存在することを認めた本件決定は,重大かつ明白な瑕疵があり無効であり,また違法で の有無)についてア原告の主張(ア) 実体上の無効,取消事由本件違反行為が存在することを認めた本件決定は,重大かつ明白な瑕疵があり無効であり,また違法であって取消事由が存在する。 (イ) 手続上の無効,取消事由行政手続といえども憲法上適正手続を要請されている。ところが,本件異議申立手続では,さらに原告の言い分を聴取する機会も与えず,ただ単に形式的に実況見分をやり直し,甲巡査部長の言い分をそのまま決定理由とするものであって,原告の言い分は実質上無視され,本件決定が下されたものである。 したがって,本件決定は適正手続に基づくものではなく,重大かつ明白な瑕疵があり無効であり,また違法であって取消事由が存在する。 イ被告の反論(ア) 実体上の無効,取消事由について原告は,本件違反行為の不存在を理由に,本件決定が無効であり,取消事由が存在すると主張する。 しかし,原告が本件決定の瑕疵として主張するところは,本件処分(有効期間を3年間とした部分)の無効,違法事由であって,本件決定固有の瑕疵ではなく,行政事件訴訟法10条2項(原処分主義)に違反する主張であって,主張自体が失当である。 (イ) 手続上の無効,取消事由について本件決定は,行政不服審査法等の法令に基づき,適法,適切に行なわれたものであって,手続上の無効,取消事由はない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件処分の無効事由の有無)の検討(1) 本件違反行為の存在についてア事実の認定証拠(甲2,甲3,甲16,甲26,乙2,乙4~8,乙14,乙16,乙17,証人甲,原告本人〔一部〕)及び弁 事由の有無)の検討(1) 本件違反行為の存在についてア事実の認定証拠(甲2,甲3,甲16,甲26,乙2,乙4~8,乙14,乙16,乙17,証人甲,原告本人〔一部〕)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 (ア) 甲巡査部長は,平成10年10月19日午後3時ころから,別紙図面のミニパトと記載された位置にパトカーを止め,その中から,本件交差点における指定場所一時不停止の違反(道路交通法43条違反)車両等の取り締まり及び交通監視に従事していた。 (イ) 甲巡査部長は,同日午後3時47分ころ,原告が運転する原告車両が,本件市道を南東から北西方向に時速約30キロメートルで進行してきて本件交差点に至ったが,本件停止線の手前で停止することなく本件停止線上を通過し,その後ゼブラ帯に入るのを現認したので(別紙図面参照),原告車両が指定場所一時不停止の違反をしたと認め,停止を求めるべくパトカーの警音器を2回鳴らし,原告車両に停止の合図を送った。 そのため,原告は,警音器の音に気づきパトカー方向に振り向き,その後,甲巡査部長とともに同巡査部長の指示にしたがって本件交差点より約80メートル西方のファミリーマート駐車場に行き,同所で原告車両を停止させた。 (ウ) 上記駐車場において,甲巡査部長が原告に対し運転免許証の提示を求め,「さっきの交差点は一時停止場所になっている。」と説明したところ,原告は,「私はゼブラゾーンを通行したので,通行区分違反と違いますか。」と弁明した。 しかし,甲巡査部長が,「おたくは,一時停止の停止線を越えてからゼブラゾーンに入ったので,一時停止違反です。」と重ねて説明した。 (エ) そこで,甲巡査部長は,指定場所一時不停止の違反(道 しかし,甲巡査部長が,「おたくは,一時停止の停止線を越えてからゼブラゾーンに入ったので,一時停止違反です。」と重ねて説明した。 (エ) そこで,甲巡査部長は,指定場所一時不停止の違反(道路交通法43条違反)として,交通反則切符を作成した後,同告知書を原告に示し,同告知書に記載した違反日時,違反場所及び違反の内容が指定場所一時不停止であること等を説明した。そして,甲巡査部長は,原告に対し,同切符2枚目,交通事件原票下欄の道路交通法違反現認報告書の供述書(甲欄)に署名指印を求めた。 すると,原告は,何ら異議を申し立てることなく,これに応じて署名指印し(乙6),その後,甲巡査部長が交付した交通反則告知書(甲2)と納付書(甲3)も異議なく受領した。 この一連の手続が終了したのは同日午後4時01分であった。 イ前記認定の補足説明(ア) 交通反則切符に自署等a 原告は,本件違反行為をしたことに間違いがない旨記載された交通事件原票に署名指印し(乙6),交通反則告知書と納付書を受領している(甲2,3)。 b ところで,原告は,自らも警察官として交通取り締まり等の豊富な知識経験を有する,B警察の現職警察官である(原告自身が認めている。)したがって,原告は,交通反則通告制度等については,一般人よりもはるかに高度の専門知識を有している。 仮に,原告が本件違反行為をしておらず,本件違反を認めないのであれば,原告は,否認を貫き,交通事件原票への署名指印を拒否するか,交通反則告知書と納付書の受け取りを拒否する等の方法があることを,当然承知している筈である。 ところが,原告は,何ら異議を述べることなく,交通事件原票に署名指 否するか,交通反則告知書と納付書の受け取りを拒否する等の方法があることを,当然承知している筈である。 ところが,原告は,何ら異議を述べることなく,交通事件原票に署名指印し(乙6),交通反則告知書と納付書(甲2,3)を受領している(乙17,証人甲)。 以上のことからすると,交通取り締まりの経験豊富な警察官として,上記署名指印の重要性を知悉している原告としても,本件違反行為をしたことに間違いなく,否定することができないので,上記交通事件原票に署名指印したものと推認され,それを覆すに足りる証拠はない。 c 甲巡査部長が,本件違反行為を現認した時刻は午後3時47分であり,交通反則切符及び納付書を作成し,原告に交通反則告知書及び納付書を交付した時刻は午後4時01分である。少なくとも,原告は,原告が本件交差点に入った時間が午後3時47分ころで,交通反則告知書及び納付書を受け取った時間が午後4時01分ころであったことを本人尋問の中で認めている。 このわずか14分の間に,甲巡査部長は,本件交差点からファミリーマートの駐車場まで行き,交通反則処理に必要な諸手続を終えているのであるから,甲巡査部長は,きわめてスムーズにこれらの諸手続を終えていることが認められる。 ということは,原告は,甲巡査部長に対し,本件違反行為を率直に認め,何ら異議を述べることなく,交通事件原票に署名指印し,交通反則告知書と納付書を受領していることが明らかである。 すなわち,原告は,本件違反行為をしたことに間違いがないからこそ,すみやかに交通事件原票に署名指印し,交通反則告知書と納付書を受領しているのである。 (イ) 甲巡査部長の目撃状況等 ,本件違反行為をしたことに間違いがないからこそ,すみやかに交通事件原票に署名指印し,交通反則告知書と納付書を受領しているのである。 (イ) 甲巡査部長の目撃状況等a 原告は,「駐車場内のパトカーの駐車位置は,駐車場のフェンスに設置された看板や,駐車場の前の歩道に繁っている街路樹に視界を妨げられて,本件停止線付近の通行状況を現認するには不十分な場所であった。」と主張する。 b しかし,原告が,平成10年10月20日(本件違反行為があった翌日),本件交差点の北東に位置した駐車場内のパトカーの駐車位置から撮影した写真(甲23)の中央には,本件交差点及び本件停止線がはっきりと写っている。 パトカーの運転席から本件交差点への見通しには,何らの障害物もなく,視認状況は良好であった(乙2-添付写真6)。 c 甲巡査部長は,先行の乗用車が本件停止線で一旦停止して発進左折したとき,その後方約17メートル地点を走行中の原告車両を確認しており,原告車両の前後に他の車両等はなかったため,原告車両を注視していたところ,原告車両が時速約30キロメートルのまま減速することなく本件停止線を通過し,その後ゼブラゾーンに入ったのを現認したのである(甲26,乙4,乙5~8,乙14,乙17,証人甲)。 甲巡査部長の目撃状況に誤りはない。 ウまとめ以上の認定判断によると,原告は,平成10年10月19日午後3時47分ころ,原告車両を運転中,被告が道路標識により一時停止場所として指定した本件交差点の停止線の直前で一時停止せず通行し,本件違反行為(指定場所一時不停止の違反行為-道路交通法43条違反)をしたことが認められる。 (2) 本件処分の効力について 場所として指定した本件交差点の停止線の直前で一時停止せず通行し,本件違反行為(指定場所一時不停止の違反行為-道路交通法43条違反)をしたことが認められる。 (2) 本件処分の効力についてア本件違反行為の存在等(ア) 優良運転者で更新日における年齢70歳未満の者(原告も70歳未満である。)の運転免許の有効期間は5年であり,優良運転者以外の者の運転免許の有効期間は3年である(道路交通法92条の2第1項)。 そして,優良運転者に該当するか否かは,免許証の有効期間の更新を受けたものが,更新前の免許証の有効期間が満了する日の40日前5年間において違反行為がないという基準を充足するか否かによる(道路交通法92条の2の備考一の2,同法施行令33条の7)。 (イ) 原告は,平成12年3月23日,被告に対し,運転免許更新請求をした。 そこで,被告は,運転免許証の有効期間が満了する日の40日前5年間の期間内である平成10年10月19日に,原告が本件違反行為をしているので,原告は優良運転者以外の者として,免許証の有効期間を3年とする免許証(甲1)を交付した(本件処分をした)のである。 したがって,本件処分のうち,免許証の有効期間を3年とした部分に違法はなく,適法なものである。 イ不起訴処分の存在等(ア) 原告は,平成11年5月21日,本件違反行為について,神戸区検察庁検察官から不起訴処分とされている(甲7)。 (イ) しかし,行政処分(運転免許更新処分等)は,将来における道路交通の危険を防止するためという行政上の目的を達成するために行うものであり,他方,刑事処分(道路交通法違反に対する刑罰)は,過去の犯罪行為に対する制裁として刑 転免許更新処分等)は,将来における道路交通の危険を防止するためという行政上の目的を達成するために行うものであり,他方,刑事処分(道路交通法違反に対する刑罰)は,過去の犯罪行為に対する制裁として刑罰を行使するものであって,その目的,手続,判断の主体等多くの点で異なっており,相互に独立した処分である。 (ウ) したがって,行政庁(被告)は,刑事訴追の有無(起訴処分か不起訴処分か),裁判の結果(有罪か無罪か)にかかわらず,独自の立場で行政処分(運転免許証更新処分等)を行うことができる。 すなわち,本件違反行為について,原告が不起訴処分とされたとしても,本件訴訟での本件違反行為の有無の認定に影響を与えるものではなく,本件処分の効力に影響を与えるものでもないのである。 ウ交通反則切符作成手続の違法(ア) 原告の主張原告は,甲巡査部長が作成した交通反則切符の作成手続には,交通反則告知書,交通事件原票の作成手続について,また本件違反場所の特定について,重大な違法があると主張する。 (イ) 主張自体が失当しかし,本件違反行為の存在が認められる以上,仮に甲巡査部長が作成した交通反則切符の作成手続に,原告が主張するような重大な違法があったとしても,そのことにより,原告が,本件「違反行為がないという基準」(道路交通法92条の2の備考一の2,同法施行令33条の7)を充たし,優良運転者と認められることになるわけではなく,本件違反行為の存在を前提とする本件処分(有効期間を3年とする部分)に影響を与えるものではない。 それゆえ,原告の前記(ア)の主張は,主張自体が失当である。 (ウ) 作成手続が違法なものではないしかも,甲巡査部長の交通反則切符の作成手続は,次 与えるものではない。 それゆえ,原告の前記(ア)の主張は,主張自体が失当である。 (ウ) 作成手続が違法なものではないしかも,甲巡査部長の交通反則切符の作成手続は,次のとおり何ら違法なものではない。 a 交通反則告知書,交通事件原票について甲巡査部長は,兵庫県警察の警察官として,兵庫県警察の定めた規定(乙12)のとおり,交通反則告知書に記載するべき「違反の現認時の状況」を示す同書「補足欄」に違反態様を記載せず,「指定場所一時不停止」の欄にレ点を入れるだけとしたのである。 また,交通事件原票「報告書:続」欄(乙7)は,現場で記載すべきものではない。甲巡査部長は,平成10年10月19日,本件交差点付近現場で,原告に対する交通反則手続をした後,e交番に戻り,現場付近の略図を記載した現認状況報告書(乙8)を作成し,交通事件原票「報告書:続」欄(乙7)に「別紙記載のとおり」と記載して,現認状況報告書(乙8)を契印して添付している(乙17,証人甲)。 このように,甲巡査部長の交通反則告知書,交通事件原票の作成手続には,違法な点はない。 b 本件違反場所の特定について本件交差点における一時停止の交通規制は,平成7年5月27日,兵庫県警A署長が,規制場所の交差点を「A市a町b番地先交差点」,規制方向を「南東側北西向」と定めて上申し,同年8月8日,兵庫県公安員会の意思決定があったものである(乙1,弁論の全趣旨)。 A署長は,上記上申に際し,本件交差点名を定めるため,兵庫県北摂整備局に対し,本件交差点の北東角の番地について照会し,「a町b番地」の回答を得たものである(乙10,11,弁論の全趣旨)。 A署長は,上記上申に際し,本件交差点名を定めるため,兵庫県北摂整備局に対し,本件交差点の北東角の番地について照会し,「a町b番地」の回答を得たものである(乙10,11,弁論の全趣旨)。現に,A市a町b番の土地が実在する(乙11)。 甲巡査部長は,一時停止の違反場所については,兵庫県公安員会の意思決定の場所を記載するように指導を受けており,本件交差点の違反場所については,「A市a町b番地先交差点」であることを確認していたので,交通反則告知書,交通事件原票に,本件違反行為の違反場所として,「A市a町b番地先交差点」と記載したのである(甲2,乙1,乙6,乙17,証人甲,弁論の全趣旨)。 したがって,甲巡査部長が交通反則切符に記載した違反場所に,間違いはない。 (3) 小括以上の認定判断によると,本件処分(有効期間を3年間とした部分)に重大かつ明白な瑕疵があるものとは認められず,同処分は適法なものである。 2 争点2(本件決定の無効事由,取消事由の有無)の検討(1) 実体上の無効,取消事由についてア主張自体が失当(ア) 原告は,本件違反行為の不存在を理由に,本件決定が無効であり,取消事由が存在すると主張する。 (イ) しかし,行政事件訴訟法は次のとおり規定し,原処分主義を採用している。 a 処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には,裁決の取消しの訴えにおいては,処分の違法を理由として取消しを求めることができない(行政事件訴訟法10条2項)。 b この法律において「裁決の取消しの訴え」とは,審査請求,異議申立てその他の の取消しの訴えにおいては,処分の違法を理由として取消しを求めることができない(行政事件訴訟法10条2項)。 b この法律において「裁決の取消しの訴え」とは,審査請求,異議申立てその他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決,決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう(行政事件訴訟法3条3項)。 (ウ) ところが,原告が本件決定の実体上の瑕疵と主張するところは,明らかに本件処分の瑕疵であり,本件決定固有の瑕疵ではない。 したがって,原告が本件決定の無効,取消事由として主張するところは,主張自体が失当である。 イ主張が理由がないしかも,本件違反行為が存在することは,前記1(1)で認定したとおりであり,原告の本件決定の実体上の無効,取消事由の主張は理由がない。 (2) 手続上の無効,取消事由についてア事実の認定証拠(甲8,甲9,乙2,乙3)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 (ア) 原告は,平成12年5月9日,被告に対し,「原告が本件違反行為をした事実はなく,原告は優良運転者に該当するので,有効期間を5年間とする運転免許証を交付すべきである。」と主張して,本件処分(有効期間を3年とする部分)に対する異議申立てをした(甲8)。 (イ) そこで,兵庫県警察本部警務部監察官室長は,行政不服審査に関する手続を定めた行政不服審査に関する手続規定(昭和40年4月1日兵庫県公安員会訓令第2号,乙3)6条(審理前の事実調査)の規定に基づき,同警務部訟務官以下の職員に事実調査を命じた。 同訟務官以下の職員は,平成12年5月24日,本件違反行為があった現場にお 安員会訓令第2号,乙3)6条(審理前の事実調査)の規定に基づき,同警務部訟務官以下の職員に事実調査を命じた。 同訟務官以下の職員は,平成12年5月24日,本件違反行為があった現場において甲巡査部長を立会させ,現認時の状況を再現するなどの事実調査を実施し,同月29日,現場調査報告書(乙2)を作成した。 (ウ) 被告は,平成12年7月13日,第24回公安委員会において,公安委員5名全員出席のもと,本件異議申立てを審理した。 そして,被告は,前同日,① 前記事実調査の結果,② 甲巡査部長の現認が確実であること,② 原告が,本件違反行為をした直後,現場において指定場所一時不停止の違反を認め,署名していることなどの状況から,本件違反行為があったものと判断し,本件異議申立ては理由がないものとして,本件異議申立てを棄却する決定(本件決定)をした(甲9)。 イ検討(ア) 前記アの認定によると,被告は,事実調査の結果も踏まえた上で,慎重審理を経て本件決定を行ったものであり,異議申立ての受理から本件決定までの手続は,行政不服審査法等が定めるところに則り適法かつ適正に行ったものであって,その審理手続等に瑕疵があるものとは認められない。 (イ) 確かに,被告は,異議申立て手続において,原告から直接口頭でその言い分を聞く機会を与えていないが,行政不服審査法や道路交通法等も,異議申立人から直接口頭で意見を聞く機会を設けるべき旨を規定していない。被告が行った審理手続に,憲法上要請されている適正手続に違反する違法があったものとは,到底認めることができない。 (ウ) 以上の次第で,本件決定に,手続上の無効,取消事由があるものとも認められない。 (3) 小括 る適正手続に違反する違法があったものとは,到底認めることができない。 (ウ) 以上の次第で,本件決定に,手続上の無効,取消事由があるものとも認められない。 (3) 小括以上の認定判断によると,本件決定に重大かつ明白な瑕疵や違法な瑕疵があるものとは認められず,同処分は適法なものである。 第4 結論よって,原告の本訴請求はいずれも理由がないので棄却し,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部裁判長裁判官紙浦健二 裁判官中村哲 裁判官秋田志保

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る