令和2年2月17日判決言渡同日原本領収裁判所書記官損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和元年10月18日判決 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,5991万1411円及びこれに対する平成24年8 月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,原告において執行役員として投資銀行本部の副本部長を務めていた被告が,平成23年2月から同年7月にかけて,自らの業務上取得した株式公開買付の実施に関する事実を,知人に伝達したとして,債務不履行(内部者取 引管理規程違反)及び不法行為に基づく損害賠償として,5991万1411円及びこれに対する平成24年8月7日(不法行為の後であり損害が確定した日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠等及び弁論の全趣旨により 容易に認定できる事実) 当事者ア原告は,いわゆる総合証券会社である株式会社であり,平成23年4月1日,「丙」から現商号に商号変更をした。 イ被告は,平成21年10月,A銀行から原告に執行役員投資銀行本部副 本部長として出向し,平成24年5月22日に出向を解除された後,同月 23日にA銀行を懲戒解雇となった。 被告の刑事事件ア横浜地方裁判所は,被告に対する金融商品取引法違反被告事件について,平成25年9月30日,罪となるべき事実を以下のとおり認定し,懲役2年6月(ただし裁判確定の日から4年間執行を猶予)及び罰金150万円 (完 は,被告に対する金融商品取引法違反被告事件について,平成25年9月30日,罪となるべき事実を以下のとおり認定し,懲役2年6月(ただし裁判確定の日から4年間執行を猶予)及び罰金150万円 (完納することができないときは金1万円を1日に換算した期間労役場留置)との判決をした。(乙2)罪となるべき事実:被告は,原告の執行役員投資銀行本部副本部長だった者であり,Bはその知人であるが,平成22年12月13日頃から平成23年4月27日頃までの間に,別表(内容は後記のとおり)記載のとお り,原告がC社ほか2社との間で締結したアドバイザリー業務委託契約等の締結の交渉又は履行に関し,C社ほか2社の業務執行を決定する機関が,それぞれ東京都中央区日本橋兜町2番1号所在の株式会社東京証券取引所(以下「東京証券取引所」という。)が開設する有価証券市場に株式を上場していたD社ほか2社の株券の公開買付けを行うことについての決定 をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知り,同年2月22日頃から同年4月28日頃までの間に,別表(同上)記載のとおり,Bに「D社株がTOBになる。」などと電話で言って,前記各事実を伝え,その公表前にD社ほか2社の株券を買い付けるように促すなどして唆し,よって,同人にその旨の決意をさせた上,上記各事実の伝達を受けた同人をして,法定 の除外事由がないのに,上記各事実の公表前である同年2月22日から同年9月2日までの間,E証券を介し,東京証券取引所において,F名義で,D社ほか2社の株券合計6万7167株を代金合計6426万7400円で買い付ける犯罪を実行させ,もって,Bを教唆して金融商品取引法違反の罪を実行させた。 別表の内容: 被告が公開買付けの実施に関する事実を知った日(頃) 1 平成2 円で買い付ける犯罪を実行させ,もって,Bを教唆して金融商品取引法違反の罪を実行させた。 別表の内容: 被告が公開買付けの実施に関する事実を知った日(頃) 平成22年12月13日 平成23年3月28日 平成23年4月27日 原告がアドバイザリー業務委託契約等を締結した会社・公開買付けを決定した会社 C社 aa社 ab社 上場していた株券(銘柄)(なお,当該3銘柄を以下「本件3銘柄」という。) D社 G社 H社 被告がBに対し公開買付けの実施に関する事実を伝達した日(頃) 平成23年2月22日 平成23年3月28日 平成23年4月28日 買付け日 平成23年2月22日及び同月23日 平成23年3月29日から同年9月2日 平成23年6月1日から同年7月29日 買付け株数・買付け代金 20株 240万1000円 247株 1860万9500円 6万6900株 4325万6900円 イ前記横浜地裁判決に対する被告からの控訴の申立てを受け,東京高等裁判所は,被告に対する金融商品取引法違反被告事件について,平成27年9月25日,本件控訴を棄却するとの判決をした。(乙3) ウ前記東京高裁判決に対する被告からの上告の申立てを受け,最高裁判所は,被告に対する金融商品取引法違反被告事件について,平成29年 年9月25日,本件控訴を棄却するとの判決をした。(乙3)ウ前記東京高裁判決に対する被告からの上告の申立てを受け,最高裁判所は,被告に対する金融商品取引法違反被告事件について,平成29年7月 5日,本件上告を棄却するとの決定をした。(乙34,以下,ア,イ,ウを併せて,「本件刑事事件」といい,その第1審を「本件刑事事件第一審」,控訴審を「本件刑事事件控訴審」などという。) Bについての刑事事件判決横浜地方裁判所は,Bに対する金融商品取引法違反被告事件について,平 成25年2月28日,懲役2年6月(ただし裁判確定の日から4年間執行を猶予)及び罰金300万円(完納することができないときは金1万円を1日に換算した期間労役場留置),金1億0043万8400円追徴との判決をした。(乙1) 被告の略歴及び業務内容等(乙2,3) 被告は,昭和59年3月,I銀行(現在のA銀行)に入行し,平成13年4月,人事部グループ長に,平成15年10月,法人企業統括部副部長に就任した。 被告は,平成21年10月,原告に執行役員投資銀行本部副本部長として出向した。投資銀行本部は,関連各部署と協働して,企業買収案件の取りま とめをする部署であり,同本部の副本部長であった被告は,本部長とともに,同本部が所管する第一投資銀行部から第八投資銀行部までの各部等の部長を指揮監督し,各部の業務全般を統括する立場にあった。 原告の各投資銀行部では,1か月に約1回の頻度で,各個別案件の内容の報告と必要な指示を行うためのフランチャイズミーティングが開催されてお り,被告も,原則としてこれに出席し,各投資銀行部が担当する個別案件の 内容,進捗状況等の報告を受け,必要な指示を出していたほか,同ミーティングを欠 ャイズミーティングが開催されてお り,被告も,原則としてこれに出席し,各投資銀行部が担当する個別案件の 内容,進捗状況等の報告を受け,必要な指示を出していたほか,同ミーティングを欠席したときは,被告の秘書が,同ミーティングの配布資料を,被告に直接手渡すか,被告の机上に置くなどしていた。 投資銀行本部の第五投資銀行部内には,ファンドを顧客とするフィナンシャル・スポンサー・グループ(FSG)が置かれており,被告は,同グルー プを指揮していた。同グループでは,企業買収の個別案件ごとにプロジェクトチーム(フィナンシャル・アントレプレナー・グループ(FEG)。以下「フェグ」という。)を編成しており,1週間に1回の頻度で会議(以下「フェグミーティング」という。)を開催していた。被告は,フェグミーティングにおいて,FSGの担当案件の概要や進捗状況について報告を受けていた。 被告とBの関係BとJは,30年以上前に,Bの経営していた不動産金融会社が,Jの経営していた不動産販売会社に金銭を貸し付けたことによって知り合い,その後も,在日韓国人同士ということもあり,一緒に事業をしたり,頻繁に食事をするなどして親しく付き合っていた。 また,Jは,そのころ,知人の不動産業者の紹介で住友銀行の行員であった被告と知り合い,時折,食事をするなどの付き合いをしていた。 被告は,平成15年4月頃,Jを介して,Bと知り合った。被告は,Jから,被告について,数十億円の現金を持っている資産家であるなどと聞いていた。(乙28,29,41,証人J) Fを介してのBの株取引Bは,従前から株取引をしており,平成13年ころからは,Bの息子であるKの名義でも株取引をしていた(甲9,72,乙8)。 Bは,平成23年1月6日頃, 証人J) Fを介してのBの株取引Bは,従前から株取引をしており,平成13年ころからは,Bの息子であるKの名義でも株取引をしていた(甲9,72,乙8)。 Bは,平成23年1月6日頃,在日韓国人であり付き合いのあるFに対し,パソコンを使ってBのために,F名義で株取引をしてほしいと持ち掛け,F は,これを了承した。また,Bは,同月中旬頃,Fに対し,Fに取引をして もらう株は,TOBやMBO(会社経営陣による株式の買取り)があるものなので,他人には言わないように伝え,Fもこれを了承した。 Fは,Bの指示に従って株取引をするために,Bの事務所近くのB所有のビルの1室に「a」との名称の事務所を開設し,同年1月,F名義で証券口座及び銀行口座を開設し,同年2月14日から,Bから与えられたパソコン とインターネット回線を使用して,F名義で株取引をするようになった。(甲9,18,64,73~76,乙9,45,証人F)D社株についてア被告は,平成22年12月13日に開催された原告の第三投資銀行部のフランチャイズミーティングにおいて,D社株のTOBに関する株式買付 価格の算定の案件を担当していたbから,C社が同月27日にTOBによりD社株を取得する旨の報告を受けた。その際,被告は,配布された同日付けのバックログ(各担当者が担当する案件の一覧表)に,「D社みずほCP40% C社 NCSはセカンドオピニオン 12/27 TOBローンチ」などと赤ペンで記入した。 同月25日に開催された第三投資銀行部のフランチャイズミーティングにおいて,bは,C社によるD社株のTOBが延期になったこと,TOBがいつ行われるかは未確定であるが,平成23年3月までには行われるはずであることなどを報告した。 被告は,同年2 イズミーティングにおいて,bは,C社によるD社株のTOBが延期になったこと,TOBがいつ行われるかは未確定であるが,平成23年3月までには行われるはずであることなどを報告した。 被告は,同年2月22日午前9時から同日午前9時30分の間に開催さ れた第三投資銀行部のフランチャイズミーティングにおいて,bから,D社株のTOBが同年3月9日に発表されることに決まったなどと報告を受けた。その際,被告は,同日付けのバックログの「ProjectGardenia」の「時期」欄の「2011年3月」に赤丸を付け,「プロダクト詳細」欄に,赤ペンで「D社TOB」と記入し,「収益の確度」欄の 「A」にチェックを付けた。(甲49) イ Bは,同年2月22日午前11時7分から午前11時28分にかけて,3回にわたり,被告の携帯電話にショートメールを送信し,被告は,同日午前11時30分,Bの携帯電話にショートメールを送信した。被告は,同日午後0時3分,Bに電話をかけ,9分5秒間通話した。(甲65)Fは,同日午後1時19分と同月23日午前9時4分,D社株を10株 ずつ買い付けた。なお,同日,Bの携帯電話からFの携帯電話に電話をかけた記録はない。(甲65,79)Bは,同月下旬ないし同年3月上旬頃,Fに対し,「D社を買った理由を聞かれたら,物流業界は伸びるからって言えばいい。」などと指示した。 ウ日本経済新聞(以下「日経新聞」という。)は,同年3月9日の朝刊にC 社によるD社株のTOBの実施についてのスクープ記事を掲載したが,C社は,同日午前8時13分頃,この報道を否定するプレスリリースを発表した。 Bは,同日午前9時8分と同日午前9時10分の2回,Fに電話をかけた(甲65)。Fは,同日午前9時28分,D社株100株を指値 ,同日午前8時13分頃,この報道を否定するプレスリリースを発表した。 Bは,同日午前9時8分と同日午前9時10分の2回,Fに電話をかけた(甲65)。Fは,同日午前9時28分,D社株100株を指値で買い付 ける注文をした(甲70)。 Bは,同日午前9時37分及び同日午前10時1分,被告の携帯電話にショートメールを送信した。 Bは,同日午前9時46分から同日午前9時59分にかけて,3回にわたり,Fに電話をかけた。(甲65) Fは,同日午後1時3分,同日午前9時28分に出した100株の買い注文を取り消した。(甲80)被告は,同日午後1時9分及び同日午後5時41分,Bに対して電話をかけ,それぞれ4分間以上通話した(乙7)。 D社は,同日午後2時,TOBの実施を公表した(甲48)。 エ Fは,同年3月14日,D社株20株を全て売却し,これにより,22 5万9000円の利益を得た(甲70)。 G社株についてア原告の投資銀行本部第五投資銀行部のcは,同本部第六投資銀行部でG社を担当していたdから,G社の社長がMBOを行う意向がある旨の報告を受け,平成23年3月28日午前9時から午前9時30分の間に開催さ れたフェグミーティングにおいて,被告に対し,その旨報告した。被告は,同ミーティングで席上配布された同月25日付けの「1.案件概要」などと記載された資料に「G社MBO」と赤ペンで記入した。(甲50,57)イ Bは,同年3月28日午前9時27分と同日午前11時37分の2回,被告に携帯電話のショートメールを送信した。被告は,同日午後0時52 分,Bに電話をかけ,Bは,同日午後1時13分から同日午後4時56分にかけて4回にわたり,Fに電話をかけた。(甲65)Fは,同日,インターネットで「Ya 送信した。被告は,同日午後0時52 分,Bに電話をかけ,Bは,同日午後1時13分から同日午後4時56分にかけて4回にわたり,Fに電話をかけた。(甲65)Fは,同日,インターネットで「Yahoo!ファイナンス」(以下「ヤフーファイナンス」という。)のウェブサイトにアクセスし,G社についてのページを印刷した(甲51,78)。 Bは,同日又は同月29日,Fに対し,G社株の購入を指示した。 Fは,同月29日,G社株の買付けを開始し,同月30日から同年4月1日にかけて,連日G社株の買付けを行った。(甲70,81)ウ被告は,同年4月4日から同月27日にかけて4回にわたり開催されたフェグミーティングにおいて,cからG社株のMBO案件の進捗状況につ いて報告を受けた(甲57)。 エ Fは,同年4月4日から同月27日にかけて,Bの指示によりG社株を買増しした。 Bは,同月頃,Fに対し,「もしG社株を買った理由を聞かれたら,G社は香港や上海に上場するつもりなので,将来的にMBOになるかと思った と言ってくれ。」と伝えた。(甲81) オ被告は,同年5月9日に開催されたフェグミーティングで,cから,G社の社長がファンドを使わない意向である旨の報告を受け,同日付けの配布資料に,「DebtMBO」と記入した。その後,ファンド対応担当のcは,G社株のMBO案件に関わらなくなり,フェグミーティングでも,G社株に関する報告はしばらくなかった。 dは,同年7月14日に開催されたフランチャイズミーティングにおいて,同年9月2日に,G社株のローンチ(MBO実施の公表)の実現可能性が高まったなどと報告した。被告は,同ミーティングには出席していなかったが,同日中に,秘書を介して,席上配布された同日付けのバックログ 年9月2日に,G社株のローンチ(MBO実施の公表)の実現可能性が高まったなどと報告した。被告は,同ミーティングには出席していなかったが,同日中に,秘書を介して,席上配布された同日付けのバックログを含む資料を受け取った。当該バックログには,G社株のMBO案件の 収益の確度欄に「A」と記載され,被告が赤ペンでチェックを入れたほか,別の資料には,G社株の案件について,「9/2発表に向けて準備中」などと記載されていた。 同年7月19日午前9時30分から同日午前10時にかけて,フェグミーティングが開催され,同日午後1時,被告は原告投資銀行本部補佐のe と会った。被告は,いずれかの会合で,同人から,G社株の件でA銀行がローン契約を受任できることになった旨の報告を受け,同日付けの配布資料に,「G社 FATOB ローン」と記入した。(甲57,58)カ Bは,同年7月19日午前10時23分から同日午後2時1分にかけて,3回にわたり,被告の携帯電話にショートメールを送信した。被告は,同 日午後2時4分,Bに対し,証券取引等監視委員会を出たら電話をかける旨ショートメールを送信し,同日午後4時18分,Bに電話をかけた。 Bは,同日午後4時54分,Fに電話をかけた。(甲54,65)Fは,同年7月20日,G社株の買付けを再開し,同年3月29日から同年9月2日にかけて買い付けたG社株は合計248株となった。(甲7 0,81) Bは,同年9月2日午前9時11分及び同日午後0時42分,被告にショートメールを送信した。(甲65)被告は,同日午後1時31分,Bに対し,「お疲れ様です。昨日から血圧が190まで上がり,病院におります。夕方までには出られると思います。 出たらお電話します。例の発表もありますので」と記載したメール 被告は,同日午後1時31分,Bに対し,「お疲れ様です。昨日から血圧が190まで上がり,病院におります。夕方までには出られると思います。 出たらお電話します。例の発表もありますので」と記載したメールを送信 した(甲54,乙4の1の資料4)。 キ G社は,同年9月2日午後3時30分,MBOの実施を公表した。 ク Fは,同年9月7日までに,G社株を全て売却し,これにより592万0400円の利益を得た(甲70,81)。 H社株について ア Bは,平成23年4月27日午前9時37分から同日午前11時55分にかけて,3回にわたり,被告の携帯電話にショートメールを送信した。 被告は,同日午前11時20分及び同日午後0時8分の2回,Bに電話をかけた。(甲65)被告は,同年4月27日午後1時30分から原告で開催されたフェグミ ーティングにおいて,cから,A銀行からH社にMBOを提案しているなどと報告を受けた。被告は,同ミーティングの席上で配布された資料に記載された「H社(6749)」という文字に,赤ペンで線を引いた。 被告は,同日午後1時58分,ヤフーファイナンスのウェブサイトで,H社について検索した上,そのページを印刷し,赤字で「提案中(野村, NIKKO)」「FA内定」と記入した。(甲59,63)イ Bは,同年4月28日午前9時7分と同日午前9時55分,被告の携帯電話にショートメールを送信した。被告は,同日午後0時50分と同日午後0時57分,Bに電話をかけた。Bは,同日午後2時41分,Fに電話をかけた。(甲65) 被告は,同年5月2日午後0時45分,Bに電話をかけた。Bは,同日 午後1時1分,Fに電話をかけた。 Fは,同月4日,ヤフーファイナンスのウェブサイトで,H社について検索した上,その 被告は,同年5月2日午後0時45分,Bに電話をかけた。Bは,同日 午後1時1分,Fに電話をかけた。 Fは,同月4日,ヤフーファイナンスのウェブサイトで,H社について検索した上,そのページを印刷したほか,H社の会社案内及び投資家情報についても検索し,それぞれのページを印刷した。 Bは,同年5月上旬頃,Fの事務所を訪れ,Fに対し,「もし電話でH社 を買った理由を聞かれたら,地デジ化で今アンテナを買い替えるから,アンテナメーカーではトップだから,まだまだ伸びる,株価も四,五倍,2000円くらいまで上がると思ったと言え。」と指示をした。(甲82)ウ cは,同年5月16日午前9時から開催されたフェグミーティングにおいて,被告に対し,H社のオーナーからFA(フィナンシャルアドバイザ ー)の内諾が取れたなどと報告した。(甲63)エ Bは,同年5月16日午前9時32分と同日午前11時5分,被告の携帯電話にショートメールを送信した。被告は,同日午前11時13分,Bに電話をかけた。(甲65)Bは,同日又は同年6月1日,Fに対し,H社株の買付けを指示した。 Fは,同年6月1日,H社株の買付けを開始し,同日に5100株,同月2日に2000株,それぞれ買い付けたが,同日以降同月27日までは,買付けをしなかった。(甲70)オ被告は,同年6月27日午前9時から同日午前9時30分までの間,原告において開催されたフェグミーティングに出席した(甲63)。 カ Bは同年6月27日午前9時5分,被告の携帯電話にショートメールを送信した。被告は,同日午前11時50分,Bに電話をかけた。Bは,同日午後0時5分,Fに電話をかけた(甲61,65)。 Fは,同日午後0時18分から,H社株を1100株買い付け,さらに,同日から 送信した。被告は,同日午前11時50分,Bに電話をかけた。Bは,同日午後0時5分,Fに電話をかけた(甲61,65)。 Fは,同日午後0時18分から,H社株を1100株買い付け,さらに,同日から同年7月22日にかけて,H社株を買い増しした(甲70)。 Bは,同月25日午前8時51分,被告に携帯電話のショートメールを 送信し,同日午前8時58分,Fに電話をかけた。被告は,同日午前9時4分,Bに電話をかけた。 キ被告は,同年7月25日午前9時頃から開催されたフェグミーティングにおいて,cから,H社株のMBOの実施は同月29日に発表される予定であるなどと報告を受けた。被告は,同ミーティングの席上で配布された 資料のうち,H社のMBOの実施時期として記載された「7/29」の部分に,赤丸を付けた。(甲63)ク被告は,同年7月25日午前10時7分,Bに電話をかけた。Bは,同日午後1時17分,Fに電話をかけた。(甲65)Fは,同月26日午前8時59分,H社株の買付けを再開し,同年6月 1日から同年7月29日までに買い付けたH社株は,合計6万6900株となった(甲70,82)。 ケ H社は,同年7月29日午後3時30分,MBOの実施を公表した(甲62)。 コ Fは,同年8月4日,6万6900株を全て売却し,これにより279 9万1600円の利益を得た(甲70)。 サ E証券は,同年8月18日,Fに対し,H社株の購入理由を尋ねたところ,Fは,地デジ化対応の期限を迎えるため,関連企業としては有望であると考えていたが,公開買付けの対象となるとは思わなかった,TOB情報は公表日の翌日の同年7月30日に日経新聞の記事で知ったと思うな どと説明した(甲82)。 被告に対する強制調査及び捜査証 いたが,公開買付けの対象となるとは思わなかった,TOB情報は公表日の翌日の同年7月30日に日経新聞の記事で知ったと思うな どと説明した(甲82)。 被告に対する強制調査及び捜査証券取引等監視委員会は,平成23年9月28日,被告に対する強制調査を開始した。 被告は,平成24年6月25日,横浜地方検察庁に逮捕された。 3 争点及び争点に関する当事者の主張 被告からBへの情報伝達の事実の有無(被告による債務不履行又は不法行為の成否)【原告の主張】ア被告からBへの情報伝達被告は,Bに対し,以下のとおり,3社の株式の公開買い付けの実施 に関する事実を伝達した(以下「本件情報伝達行為」という。)。 ① D社株について被告は,平成23年2月22日午後0時3分,Bに架電してD社株に対してTOBが実施されることを伝達した。 ② G社株について 被告は,平成23年3月28日午後0時52分,Bに架電してG社株に関するMBOが実施されることを伝達し,同年7月19日午後4時18分,Bに架電して同MBOがそのまま実行される旨を伝達した。 ③ H社株について被告は,平成23年4月28日午後0時50分頃,Bに架電してH 社株に関するMBOが実施される旨を伝達し,同年5月16日午前11時13分,Bに架電して同MBOに関する情報を伝達し,同年6月27日午前11時50分,Bに架電して同MBO案件が進行していることを伝達し,同年7月25日午前10時7分,Bに架電して同MBOの公表時期を伝達した。 本件情報伝達行為は,以下のとおり,信用性の高い本件刑事事件におけるBの証言(以下,本件刑事事件におけるBの証言を「Bの証言」という。)から明らかに認められる。 すなわち,Bの証言 。 本件情報伝達行為は,以下のとおり,信用性の高い本件刑事事件におけるBの証言(以下,本件刑事事件におけるBの証言を「Bの証言」という。)から明らかに認められる。 すなわち,Bの証言は,本件情報伝達行為がされた事実及び重要事実の伝達が焦げ付きに関するBの被告への責任追及の過程でなされた事 実について,本件刑事事件第一審から控訴審の審理過程を通じて一貫し ていること,Bは,自己にとって不利益な事実であるにもかかわらず,自発的にG社株及びH社株に関して述べていること,その証言は,通話記録とBの取引の合致など客観的な証拠とも合致していること,被告が作成したD社の会社四季報の写しがBの関係先から発見されたこと等からすると,十分信用できるものである。 これに加えて,Bの証言は,本件刑事事件控訴審判決が指摘するように,①Bの新たな株取引と被告が上場企業の情報に接することの容易性との間には強い相関関係が認められること,②平成21年10月から平成23年9月までの間のBの新規銘柄の買付けと被告の非公開情報の取得との間に偶然とは考え難い強い関連性が認められること,③被告は, 平成23年9月28日から平成24年6月25日までの間にBとの会合に5回参加し,その会合において,少なくとも,Bと被告に対する証券取引等監視委員会の調査の内容,インサイダー取引においては,第2次情報受領者は株を買い付けても罪とならないことなどについて話しているところ,被告が,インサイダー取引に関与していなければ,Bと の会合に参加する必要がないから,被告は,証券取引等監視委員会の調査対象となった株取引に関与したことが推認できることなど,Bが,被告から提供を受けた情報に基づいてD社株その他の本件で起訴されている株取引を行った疑いが濃厚 いから,被告は,証券取引等監視委員会の調査対象となった株取引に関与したことが推認できることなど,Bが,被告から提供を受けた情報に基づいてD社株その他の本件で起訴されている株取引を行った疑いが濃厚であるという情況にもよく整合しているのであって,本件情報伝達行為があったとのBの証言は信用できるも のである。 被告は,BがLに対してした融資金をLが返済しないことについて,Bから毎日のように責任を追及されていたのであり,その追及を回避するために,本件情報伝達行為を行ったものであり,被告には,本件情報伝達行為をする動機がある。 イ債務不履行 原告においては,内部者取引管理規程(甲2)を定め,役職員の遵守すべき義務として,「役職員は,法人関係情報を取得し又は報告を受けた場合は,業務上当該情報を伝達することが必要な法人関係役職員以外の第三者に伝達してはならない。」(同規程11条1項)としているところ,本件情報伝達行為は,「法人関係情報」(同規程別表1の区分1の項目(27):発 行者である会社以外の者による公開買付け(これに準ずる行為として施行令で定めるものを含む。)の実施又は中止,又はそれに関する意見表明)を第三者に伝達するものであり,上記義務に違反する行為として,原告に対する債務不履行を構成する。 ウ不法行為 本件情報伝達行為は,Bによるインサイダー取引の教唆に当たり,公開買付者等関係者によるインサイダー取引を禁止する金融商品取引法167条3項に違反する犯罪行為である。 日本の三大証券会社の一つである原告にとって,投資銀行本部において適切かつ厳格にインサイダー情報が管理され,法令に適合した業務が行わ れることが証券会社としての社会的信用に直結する重要な事項であるところ,被告がBに本件 る原告にとって,投資銀行本部において適切かつ厳格にインサイダー情報が管理され,法令に適合した業務が行わ れることが証券会社としての社会的信用に直結する重要な事項であるところ,被告がBに本件株式の重要事項を伝達した行為は,原告の管理体制などに対する社会的信用を大きく毀損するものとして,原告に対する不法行為を構成する。 【被告の主張】 ア本件情報伝達行為について被告は,本件情報伝達行為をしたことはなく,原告の内部者取引管理規程に違反したこともない。被告がBに電話をしたのは,BがLに対してした融資について,LとBの間に入って,LからBへの返済に関する情報を伝達していたものである。 Bの証言は,それ自体,あいまいな部分や検察官からの誘導によって得 られた部分が多く信用できないし,①三田通法人営業部は,さほど上場企業の情報に接することができなかった事実はなく,Bの新たな株取引と被告が上場企業の情報に接することの容易性との間には何ら相関関係は認められず,②Bがした株取引の中には,独自の判断で行ったものや,TOB公表前に売って損失を被ったり,TOB情報を聞いて買ったといい ながら,TOBに至っていない取引があるなど,平成21年10月から平成23年9月までの間のBの新規銘柄の買付けと被告の非公開情報の取得との間に偶然とは考え難い強い関連性が認められず,③平成23年9月28日から平成24年6月25日までの5回の会合は,口裏合わせのものではないから,その信用性を支える事実もない。 被告は,Bから何ら利益を受けておらず,BのLに対する融資にも何ら関与しておらず,LがBに対して返済をしないことについて責められる立場にもなかったから,被告には,本件情報伝達行為をする動機がない。 イ債務不履行に 利益を受けておらず,BのLに対する融資にも何ら関与しておらず,LがBに対して返済をしないことについて責められる立場にもなかったから,被告には,本件情報伝達行為をする動機がない。 イ債務不履行についてTOB実施の決定に係る公表されていない情報が原告の内部者取引管 理規程11条1項の「法人関係情報」に該当することは認めるが,被告は本件情報伝達行為をしたことはなく,同条項に違反する事実も存在しない。 ウ不法行為について被告は,本件情報伝達行為をしておらず,不法行為は存在しない。 原告に生じた損害額 【原告の主張】原告は,被告の債務不履行又は不法行為により,少なくとも合計5991万1411円の損害を被った。 ア調査委員会の費用事実関係を調査し,社会的信用の低下を食い止め,その信用を回復する ために必要な対策として,外部専門家からなる調査委員会を設置し,その 費用として2391万1247円を支払った。 イ原告従業員の費用原告は,被告による金融商品取引法違反事件への対応のため,人件費として2055万0164円が発生した。 調査委員会に専従した従業員の人件費 558万円 原告は,少なくとも専従社員6名に対して,被告のスケジュールの把握や被告の行動一覧表を作成するなど,調査委員会の調査の補助業務を行わせ,人件費として558万円が発生した。 証券取引等監視委員会及び検察庁の聴取に要した各従業員の人件費295万5000円 証券取引等監視委員会による聴取は,少なくとも50回以上,一回当たり約1.25時間を要した。また,横浜地方検察庁からの聴取も,少なくとも36回以上,一回当たり約7時間を要した。 被告が犯罪行為をしなければ,原告が,役職員に対して聴取に赴くように職務命 一回当たり約1.25時間を要した。また,横浜地方検察庁からの聴取も,少なくとも36回以上,一回当たり約7時間を要した。 被告が犯罪行為をしなければ,原告が,役職員に対して聴取に赴くように職務命令を下すことはないのであるから,従業員の給与と被告の債 務不履行ないし不法行為との間には相当因果関係がある。 調査開始後の被告の給与 1201万5164円証券取引等監視委員会により被告の犯罪行為の調査が行われた平成23年9月28日から,原告への出向が解除された平成24年5月22日までの間,被告が実際に行っていたのは捜査機関による事件調査の対 応のみであり,投資銀行本部副本部長・執行役員として本来期待されている業務ではない。原告は,被告の犯罪行為のために,被告の役職において本来行うべき業務を行われることができなかったのであるから,被告に支払われた給与額は,被告の債務不履行ないし不法行為と因果関係のある損害である。 ウ信用毀損 本件は多くの報道機関により報道され,原告の証券会社としての社会的信用は著しく毀損され,当該信用毀損による原告の損害は5億6200万円を下らない。 すなわち,原告は,被告の犯罪行為の報道によって,既に獲得していた複数の案件を失注し,少なくとも社債引受業務において5億5150万円 の引受手数料を得る機会を失い,同様に株式引受業務についても1180万円の引受手数料を得る機会を失った。 同時に,原告は,被告の報道がなされてから本件に係る行政処分に対する報告書を提出するまでの約2か月間,機関投資家等から株式や債券の発注を受けることができず,手数料を受ける機会を失った。 仮に,前記ア及びイの調査費用全額が原告の損害として認められなくとも,原告は上記のとおりの信用毀損の損害を被 投資家等から株式や債券の発注を受けることができず,手数料を受ける機会を失った。 仮に,前記ア及びイの調査費用全額が原告の損害として認められなくとも,原告は上記のとおりの信用毀損の損害を被っていることになるから,被告の債務不履行ないし不法行為による原告の損害が5991万1411円を下らないことに変わりはない。 エ弁護士費用 545万円 オ前記の各損害のうち,損害の発生時期が最も遅いのはア及びイ記載の調査委員会の設置に係る損害であるところ,同損害が発生したのは,同委員会が調査結果についての報告書を公表し活動を終了し,原告が同委員会に対価を支払うべき仕事の内容が確定した平成24年8月7日である。したがって,被告の不法行為により原告に損害が発生した時期(遅延利息の起 算日)は,平成24年8月7日である。 【被告の主張】原告の主張する損害についてはいずれも否認する。 ア調査委員会の費用原告が,外部専門家からなる調査委員会の設置を余儀なくされたのは, 被告が逮捕されたことを受け,事実関係を調査し,社会的信用の低下を食 い止め,その信用を回復するためではない。原告は,平成24年3月以降,原告を含む証券会社の従業員による企業の公募増資に関する未公開情報の漏洩事件に関連し,金融庁からの業務改善命令や情報管理体制の自主調査等の増資インサイダー問題に対応するために上記委員会の設置を余儀なくされたのであって,被告の行為に関するものではない。 また,調査委員会の作成した報告書要旨においては,調査委員会設置の経緯・目的として,被告が逮捕・起訴されたという事実を前提として,原告が講ずべき対策を可及的速やかに策定の上,今後の情報管理に万遺漏なきを期すことを目的とするものであり,当該起訴に係る事実の有無 の経緯・目的として,被告が逮捕・起訴されたという事実を前提として,原告が講ずべき対策を可及的速やかに策定の上,今後の情報管理に万遺漏なきを期すことを目的とするものであり,当該起訴に係る事実の有無の確定に触れるものではないと記載しているのであって,本件と調査委員会の調 査費用との因果関係の立証がされていない。 イ原告従業員の費用調査委員会に専従した従業員の人件費そもそも証券会社としての原告の公的義務に伴うものであって,被告がその費用を負担すべきものではない。 また,その具体的内容が不明であり,かつ,その調査内容及び範囲からして専従者の人数が相当なものであることの立証もない。 証券取引等監視委員会及び検察庁の聴取に要した従業員の人件費そもそも証券会社としての原告の公的義務に伴うものであって,被告がその費用を負担すべきものではない。 また,誰が,どこで,何のために,どのくらいの時間,誰の聴取に応じたのか具体的内容が不明であるし,原告従業員は原告の職務行為として聴取に応じたのであるから,被告の行為によって生じた損害とはいえない。 被告の給与 被告は,平成23年9月28日から平成24年5月22日までの間, 原告からの業務命令に基づいて証券取引等監視委員会の調査活動に協力していたのであり,職務命令に従い提供していた労務の対価として受け取った上記期間中の被告の給与を損害とみなすことはできない。 ウ信用毀損被告が逮捕されたときには,原告の社会的信用は「増資インサイダー事 件」により既に著しく毀損されていたのであり,被告の逮捕の報道によって原告の社会的信用が毀損されたとしても,1000万円を下らないほどの損害が生じるなどということはない。 エ弁護士費用否認する。 既に著しく毀損されていたのであり,被告の逮捕の報道によって原告の社会的信用が毀損されたとしても,1000万円を下らないほどの損害が生じるなどということはない。 エ弁護士費用否認する。 不法行為に基づく損害賠償請求権が時効により消滅するか。 【被告の主張】原告は,平成24年5月23日には被告を懲戒解雇したのであるから,遅くとも同日には「加害者を知った」ということができ,原告が請求した平成27年6月10日より前である同年5月23日の経過とともに,不法行為に よる損害賠償請求権は時効消滅した。 【原告の主張】本件のように,不法行為の加害者が自己の行為を否認し,刑事事件でも無罪主張をしている場合,民法724条の「加害者を知った時」とは,有罪判決が確定したとき,又は,早くとも第1審で有罪判決が出たときであり,そ の時点までは,権利の行使が事実上可能な状況の下に加害者であると認識することはできないと解される。 原告が被告を懲戒解雇したのは,本件情報伝達行為の対象とは別の会社に関する社内資料をBに提供したことを理由とするものであって,本件情報伝達行為とは関係がない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,前提事実に加え,以下の事実が認められる。 被告は,平成15年10月1日,A銀行本部の法人企業統括部副部長となった。A銀行法人企業統括部は,中堅以下の3000社程度の上場会社のう ちA銀行と取引のある会社を管理し,TOBやMBOなどの株式公開買付の案件も取り扱っていた。 被告は,Bから,Kが経営している産業廃棄物の会社に融資をしてほしいと依頼され,A銀行の横浜の法人営業部長を紹介して,A銀行は,同社に8億円の融資をしたことがあり,また,Bが 件も取り扱っていた。 被告は,Bから,Kが経営している産業廃棄物の会社に融資をしてほしいと依頼され,A銀行の横浜の法人営業部長を紹介して,A銀行は,同社に8億円の融資をしたことがあり,また,Bが取得を希望した不動産の所有者が A銀行と取引のあるサービサーであり,当該サービサーは当該不動産の処分に困っていたことから,被告の口利きで,不動産の売買が成立したこともあった(乙28,被告本人)。 被告は,平成17年夏頃,Jから病院に詳しい人を紹介して欲しいと依頼されて帝国ホテルのすし屋で会った際,同席したBから,今後有望な会社は ないかなどと尋ねられ,携帯のコンテンツ関係の会社であるM社は良さそうではないかと述べた。Bは,被告の話を聞いて,M社の株式を買ったが,その後,株価が低迷したため,Jを通じて,被告に対し,M社の今後の見通し等について,問い合わせをしたことが何回かあり,被告は,平成18年4月,Jを介して,Bに対し,M社に関するファックスを送ったことがあった。な お,BのM社の株取引での損失額は,最終的に4億7000万円であった。 (乙4の1,4の2,29,41)。 被告は,Jを通じてBから,特定の企業に関する情報を欲しいと依頼され,会社四季報などの情報にコメントを加えてファックスを送信することが度々あったが,A銀行三田通法人営業部への異動直前である平成19年3月下旬 頃,ac社,ad社,ae社といった会社についての情報を記載し,右肩に 「㊟4月以降の進捗状況把握不能」と注記したB宛ての書面(乙29添付⑪)をJにファックス送信した(甲67,68)。 被告は,同年4月1日,同行の営業店である三田通法人営業部部長となった。三田通法人営業部は,法人の顧客を所管する営業店であって,上場会社も40社ほど所管して にファックス送信した(甲67,68)。 被告は,同年4月1日,同行の営業店である三田通法人営業部部長となった。三田通法人営業部は,法人の顧客を所管する営業店であって,上場会社も40社ほど所管しており,被告が在籍した期間には,TOBやMBOを検 討した会社はあったものの,実行に至った会社はなかった。 被告は,平成21年10月1日,原告に出向した。(乙41,被告本人)一般的に,一つの銘柄のTOBやMBOの案件において,インサイダー情報に接する者は,主幹事証券会社を決めるのに大手の証券会社とか取引のある証券会社数社に入札,ビッドをかけること,それと同時並行的に株式の買 取資金を貸し付ける銀行に相談が行くこと,TOB価格などについてセカンドオピニオンを依頼される証券会社もあることなどを踏まえると,証券会社5社,銀行4,5行くらいで,数百人規模にのぼり得るところ(被告本人),D社,G社,H社のTOB及びMBOに至る経緯は以下のとおりであり,いずれの取引においても,原告の担当者以外にも,相当程度の者が関与してい た。 ア C社は,平成12年ころから,積極的に企業買収を行っており,証券会社を含む金融機関から,他の物流会社との資本提携や買収等の提案が多数持ち込まれており,平成22年4月ころからは,原告を含む多くの金融機関から,N社運営ファンドが売却するであろうD社株を購入することによ るD社買収の提案を受けていた。C社は,同年7月ころ,D社を買収する方針を決め,O社,P社,R銀行,Q証券,会計事務所,法律事務所等と協議を行い,平成22年11月25日,D社株のTOB(株式公開買付け)を行うことを決定し,同月27日,公開買い付け代理人にQ証券を選任して,公開買い付け実施に向けての準備を始め,同年12月1日,原告に対 平成22年11月25日,D社株のTOB(株式公開買付け)を行うことを決定し,同月27日,公開買い付け代理人にQ証券を選任して,公開買い付け実施に向けての準備を始め,同年12月1日,原告に対 し,セカンドオピニオンの依頼をし,同月9日,原告との間で,C社が行 うD社株のTOBの価格算定等を内容とするアドバイザリー業務委託契約を締結した。 C社とN社は,同月13日,スケジュールの延期に合意し,平成23年1月中旬,各関係者の間で,TOBの開始時期を同年2月20日前後とすることでスケジュール調整をし,TOB実施に向けての協議が行われた。 (甲48)イ G社は,平成22年ころから,香港市場への上場を考えるようになり,S証券に相談するなどし,平成23年3月には,S証券からMBOの事例について説明を受けるなどして,同月24日,MBOを実施することを決め,S証券や原告からMBOについての提案を受け,原告にファイナンシ ャルアドバイザーを依頼することとし,同年4月26日には,原告及びA銀行と打ち合わせをし,その後,T社,Q銀行,法律事務所などの各関係者との間で打ち合わせが行われた。(甲55)ウ H社は,平成22年ころから,U銀行,A銀行,S証券から経営体制の転換に関する様々な提案を受け,そのうち,U銀行及びA銀行からMBO の提案を受けており,平成23年3月15日,MBOによる資本政策の検討を行う旨決定し,その後,U銀行,その系列の投資ファンドであるV社,A銀行から提案されたスキームを検討した上,同年4月13日,A銀行とMBOの検討を進めることを決定した。その後,H社本社の他,A銀行名古屋支店などで打ち合わせが行われ,同年5月6日,H社と原告側の顔合 わせが行われ,以後,同年7月29日のMBO実施の発表 とMBOの検討を進めることを決定した。その後,H社本社の他,A銀行名古屋支店などで打ち合わせが行われ,同年5月6日,H社と原告側の顔合 わせが行われ,以後,同年7月29日のMBO実施の発表まで,A銀行及び原告の関係各部署,弁護士,公認会計士等,様々な関係者間での打ち合わせが行われた。(甲62)Bが,新たに買付又は売付の株取引を行った銘柄数は,平成13年は8銘柄,平成14年は2銘柄,平成15年は0銘柄,平成16年は4銘柄,平成 17年は56銘柄,平成18年は16銘柄であり,平成19年1月から同年 3月までの3か月間で新たに4銘柄の株取引が行われていた。同年4月以降はBの新たな株取引はなくなり,平成21年10月,被告が原告に出向となって以降,同年11月及び12月の2か月間で2銘柄,平成22年に9銘柄,平成23年は被告に証券取引等監視委員会の強制調査が入った9月までで18銘柄の株取引が行われていた。(乙3) Bが,平成21年10月から平成23年9月までの間,自己名義,K義及びF名義で,現に購入し,又は購入を検討した株の銘柄は,D社,G社及びH社を含め46銘柄であり,そのうち実際に買付けをしたのは,29銘柄であった。なお,上記46銘柄のうち9銘柄は,Bが自らの判断で購入した株式であるところ,それ以外の37銘柄については,被告は,TOB又はBM Oの情報を入手していた。また,上記29銘柄から自らの判断で購入した9銘柄を除いた20銘柄のうち,5つの銘柄については損失が出ており,そのうち1銘柄については,発表前に買い付けをした上で売却をしたものであった。(甲9,乙4の2)Bが株に関する情報を入手していた入手先として,当時スイスのプライベ ートバンクにいたf,赤坂で経営コンサルタントをやっていたg 買い付けをした上で売却をしたものであった。(甲9,乙4の2)Bが株に関する情報を入手していた入手先として,当時スイスのプライベ ートバンクにいたf,赤坂で経営コンサルタントをやっていたg,医師のh,不動産関係のiなどがいた(証人J)。 Bは,平成23年2月15日以降,F名義で株取引をする際は,Fに対し,携帯電話を使って株取引の指示をすることがほとんどであった。 Fは,Bから株取引の指示を受けると,ヤフーファイナンスで対象会社の 証券コードを調べた上で,E証券のウェブサイトを使って,対象会社の証券コードを入力して注文を出していた。 Fは,Bから指示されてF名義で株取引を行った場合,午後3時以降に,Bの事務所に行って,その日の株取引の報告をしていた。(甲18,証人F)Lは,平成22年当時,不動産の開発の事業に関わったり,ファンドの立上 げ準備をしたりするなどをしていた。 W組合は,平成21年末ころ,資金調達のために振り出した多数の小切手のうち1通が不渡りとなるなどの問題を抱えていたことから,W組合の理事長は,知人の銀行員から紹介を受けたLに対し,当該問題の解決方法について相談した。 W組合は,Lと相談して,同組合が所有する東京都江東区新木場1丁目, 同区新木場3丁目及び千葉県市川市高谷の土地(以下,これらの土地を併せて「W組合所有土地」といい,江東区新木場の各土地を「新木場の土地」といい,市川市高谷の土地を「高谷の土地」という。)を売却して債務の整理をすることとなった。 このため,Lは,Lが実質的に経営するX社から,W組合所有土地を23 億円で買い受ける契約を締結して,手付金1億円をW組合に支払うことで資金を用立て,W組合は,この1億円を使って振り出した小切手の回収をした。 なお, 的に経営するX社から,W組合所有土地を23 億円で買い受ける契約を締結して,手付金1億円をW組合に支払うことで資金を用立て,W組合は,この1億円を使って振り出した小切手の回収をした。 なお,その小切手の回収先の一つがBであった。 そのころ,Lは,知人の紹介で,被告と知り合った。 Lは,W組合所有土地の売却金で返済をする予定でBから2億円の融資を 受けることとし,X社とBが実質的に経営するY社との間で,平成22年3月4日,X社が前記土地をY社に売り渡し,Y社が同日までに手付金として2億円を,同年7月末までに残金として21億円をX社に支払う,ただし,同年6月3日までにX社が受領済みの手付金2億円と解約清算金5000万円をY社に現実に提供すれば契約を解除できるとする内容の売買契約(以下 「運送施設売買契約」という。)を締結し,Lは,Bに対し,LがW組合から預かっていたW組合所有土地の権利証などを預けた。 Lは,弁済期までにW組合所有土地を売却することができず,2億円を返済できなかったため,Bに対し,同様の条件で弁済期を延期して欲しい旨申し出た。 Lは,同年10月6日,Bに対し,5000万円を支払った。 Lは,高谷の土地が売却できる目途が付いたことから,Bから高谷の土地の権利証の返還を受け,平成23年1月27日,高谷の土地を17億円で売却し,抵当権を設定していた金融機関への返済や土壌汚染の除去費用等を支払い,残った資金の中からBに対して7500万円を支払った。高谷に土地を売却した後,W組合内部の3支部で支部間のトラブルが発生した。 Bは,高谷の土地が売却されたにもかかわらず,返済を受けられなかったことから激高し,そのころから,BとLとの間で話し合いができない状態となった。このため,BとLの共通 のトラブルが発生した。 Bは,高谷の土地が売却されたにもかかわらず,返済を受けられなかったことから激高し,そのころから,BとLとの間で話し合いができない状態となった。このため,BとLの共通の知人であった被告が,両者の間に入って,返済の進捗状況などについての話を伝達するようになった。 Lは,同年2月頃,Bが,Lに無断で新木場の土地の所有権移転登記の申 請手続きをしたことを知って,弁護士に相談し,同月8日,X社を原告とし,Y社を被告として,運送施設売買契約は出資法に違反する公序良俗違反の契約であるから無効であり,LがBに既に支払った合計1億2500万円は不当利得であるとして,その返還を求める訴訟を提起した。その後,BとLとの間で,同年3月7日,Bは,新木場の土地についての所有権移転登記申請 を取り下げ,Lは,Bに対して,3億円を支払い(うち1億2500万円は支払済みであることを確認),かつ,Lが経営する会社2社がその債務を保証することで和解した。(以上,甲101,104,乙3,4の1,24,30)Bは,被告がA銀行三田通法人営業部時代に,W組合に対して8億円を融資し,A銀行が,Lへの融資金の担保としていた新木場の土地に抵当権を設 定していたことを知っていたため,被告に対し,新木場の土地を任意売却するか競売申立てをして欲しいなどと依頼するようになった(乙26)。 Bは,遅くとも平成22年12月1日から平成23年9月27日までの間,被告に対し,毎日のように,多い日は5,6通ものショートメールを送信し,被告は,Bに対し,少なくとも1日に1回程度,電話またはショートメール を送信していた(甲65,乙4の1添付の資料2-1及び2-2,乙7)。 被告は,平成23年2月22日午前9時から同日午前9時30 なくとも1日に1回程度,電話またはショートメール を送信していた(甲65,乙4の1添付の資料2-1及び2-2,乙7)。 被告は,平成23年2月22日午前9時から同日午前9時30分の間に開催された第三投資銀行部のフランチャイズミーティングにおいて,D社株のTOBが同年3月9日に発表されることに決まったなどと報告を受けた。 Bは,同年2月22日午前11時7分から同日午前11時28分にかけて,3回にわたり,被告に携帯電話のショートメールを送信し,被告は,同日午 前11時30分,Bに携帯電話のショートメールを送信した。同日午後0時3分,被告は,Bに電話をかけ,9分5秒間通話した。 Fは,同日午後1時19分と同年2月23日午前9時4分,D社株を10株ずつ買い付けたが,Bが,同月22日,Fに対して電話をしたことはなかった。(前提事実,証人F) 同年3月9日,日経新聞の朝刊に,C社によるD社株のTOBの実施についてのスクープ記事が掲載され,C社は,同日午前8時13分頃,この報道を否定するプレスリリースを発表した。 Bは,同日午前9時8分と同日午前9時10分の2回,Fに電話をかけた。 Fは,同日午前9時28分,D社株100株を指値で買い付ける注文をした。 Bは,同日午前9時46分から同日午前9時59分にかけて,3回にわたり,Fに電話をかけた。Fは,同日午前9時59分,D社株100株を指値で売る注文をし,同日午前10時,同100株の売り注文を取り消した。Fは,同日午後1時3分,同日午前9時28分にした100株の買い注文を取り消した。 他方,Bは,同日午前9時37分及び同日午前10時1分,被告に対してショートメールを送信し,被告とBは,同日午後1時9分58秒から4分30秒間,及び,同日午後5時41分 文を取り消した。 他方,Bは,同日午前9時37分及び同日午前10時1分,被告に対してショートメールを送信し,被告とBは,同日午後1時9分58秒から4分30秒間,及び,同日午後5時41分46秒から4分14秒間,電話で話をした。(前記前提事実,乙3,7)被告は,証券取引等監視委員会の調査について,Bに対してインサイダー 情報を伝えたことはないと述べていたが,回答ができるものについては回答 に応じていた。なお,被告は,調査開始後の平成23年11月16日の時点において,Bは,D社株及びH社株の株を買っていないものと認識しており,G社株についても買ったか否か不明であった。(乙43)被告は,平成23年9月28日から平成24年6月25日までの間に5回にわたり,Bと会合をもったところ,少なくとも,その1回目には,Bと被 告に対する証券取引等監視委員会の調査の内容,インサイダー取引においては重要事実の第1次情報受領者が株を買い付けると罪に問われるが,第2次情報受領者は株を買い付けても罪とならないこと,したがって,Jが第1次情報受領者,Bが第2次情報受領者ということにできればBは罪に問われないことが話題となった。 また,Bは,証券取引等監視委員会の調査を全て拒否していたところ,被告に対して,証券取引等監視委員会からどのようなことを聞かれているのか,いまどういうふうになっているのか,ということを尋ね,被告は,固有の銘柄,個別の銘柄について伝えていないなどを話していた。(被告本人) Bの証言の信用性についてア Bの証言は,次のとおりである(乙4の1,4の2,5)。 D社株について被告と焦げ付き案件の話を電話でした際,被告からD社株についてTOBになり,買えば3割近く株式の価格が 用性についてア Bの証言は,次のとおりである(乙4の1,4の2,5)。 D社株について被告と焦げ付き案件の話を電話でした際,被告からD社株についてTOBになり,買えば3割近く株式の価格が上がると聞いたため,D社株を 買った。被告から,どのようにD社について聞いたか覚えていない。 D社株を買う2,3日前にTOBになると聞いた(なお,この証言は,検察官から通話記録を示されるなどして,被告からTOBになると聞いたその日に,Fに対し買い付けるよう指示したと変更され,その後,控訴審において,平成23年2月22日に被告とどのような話をしたか具体 的な記憶はないと更に変更されている。)。 証券会社から,D社株について問い合わせがあったときに,どのように回答すれば良いか聞いたが,その内容は覚えていない。 D社株のTOBに関する平成23年3月9日の日経新聞のスクープ記事は,読んだか読んでいないか記憶にない(なお,この証言は,控訴審において, 同記事を読んで同日午前9時28分に100株の買い注文を入 れたと一旦変更されたが,一審で異なる証言をしている旨指摘されて,覚えていない,一審のとおりではないかと思うなどと述べるに至っている。)。 D社株のTOBの公開日は聞いたが,価格は聞いていない(なお,この証言は,控訴審において,価格も聞いたと一旦変更されたが,一審で異 なる証言をしている旨指摘されて,一審のとおりであるから質問しないでほしいなどと述べるに至っている。)。 被告は,焦げ付き案件について,Bの怒りを鎮めようとして,D社株について会社四季報のコピーを持参した。Jとやっている不動産の関係で会社四季報のコピーをもらったものではない。(なお,この証言は,弁 護人の反対尋問で,平成23年2月22日にD として,D社株について会社四季報のコピーを持参した。Jとやっている不動産の関係で会社四季報のコピーをもらったものではない。(なお,この証言は,弁 護人の反対尋問で,平成23年2月22日にD社株のTOBの話を聞く前に会社四季報のコピーをもらっていた可能性がある,アービル横浜に関して物流会社に売ってくれという話をしたことがあるが,D社やZ社という名前は忘れたと訂正し,検察官の再主尋問において,更に訂正をしている。) Lの案件については,Lへの融資金は,Lが作ったファンドのために使われるものであり,そのファンドを主催していたのは被告であったから,被告にも責任があると考えた。被告から,融資に先立って不動産売買ao社」,「中央vs港南江東」について説明を受けた。Lは,弁済期日を過ぎても5000万円し か返済されなかったため,Lに対してだけでなく,被告にも責任を追及し た。被告に対して,きついことを言っても返済がされる訳ではないので,被告を退職に追い込むようなことは言っておらず,被告に対し,Lの状況を聞くために,電話を欲しいというショートメールをいつも入れていた。 G社株について被告と焦げ付き案件の話を電話でした際,Bが納得できる話でなかっ たことから,被告が自らG社がMBOになると話をしたので,G社株を買った。被告から,当該情報を聞いて,すぐにFに直接,買い付けを指示した(なお,この証言は,検察官から通話記録を示されるなどして,電話で指示をしたと変更されている。)。Bは,被告に対し,G社の株を買ったことは話していない。 被告は,平成23年7月20日,G社株のMBOは続けて実行されるはずだという話をし,同年9月2日には,Bが,株に関してのメールはしないでほしいと言ったにもかかわらず,MBO 話していない。 被告は,平成23年7月20日,G社株のMBOは続けて実行されるはずだという話をし,同年9月2日には,Bが,株に関してのメールはしないでほしいと言ったにもかかわらず,MBOの公表がある旨のメールを送信してきた。 Bは,同年9月2日の1か月くらい前に,被告から証券会社から質問 があった際の回答を記載した書面の交付を受けたことがある。同書面に記載されている会社について,TOBやMBOの情報を聞いていた。 H社株についてBは,H社株を買い付ける1か月くらい前,被告と会った際に,被告から口頭でH社がMBOになると聞いた。(検察官から通話記録を示され て,)同年4月28日及び同年5月2日,被告と焦げ付き案件の話を電話でした際,Bが被告を責めていたため,被告は,H社の話をしてきた。H社株の買い付けを始める同年6月27日のどれくらい前にMBOについて聞いたことはよく覚えていない。(なお,この証言は,検察官から同日の通話記録を示されて,同日の電話でH社のMBOが順調に進んでいる と話を聞いたと変更されている。) 強制調査後の状況等についてG社とH社については,検察官から追及される前に,インサイダー取引である旨を供述した。 証券取引等監視委員会の強制調査が入ってから約1週間後に,被告と連絡を取り合ったところ,被告は,「オールノー」(否認)でいくと言って きたため,Bも否認をすることとした。 被告から,情報提供者は罪にならす,第1次情報受領者は罪になると教えてもらった。被告は,Jを間に入れて,Bが第2次情報受領者になれば罪にならないと話していた。 被告から聞いたその他のインサイダー情報について Bは,被告が原告に出向すると知って,被告に対してもうかる株を紹介してくれ れて,Bが第2次情報受領者になれば罪にならないと話していた。 被告から聞いたその他のインサイダー情報について Bは,被告が原告に出向すると知って,被告に対してもうかる株を紹介してくれと言ったところ,被告は,分かったと言っていた。 被告は,平成21年10月以降,インサイダー情報を提供してくるようになった。同月以降,購入又は購入を検討した46銘柄のうち,自らの判断で購入したのは7銘柄であり,残りの39銘柄については被告から インサイダー情報を教えてもらったが,出来高が少ない株については目立つので買わなかった。同月以降買った29銘柄は,全て被告からTOB,MBOになると教えられて買った株であり,自分の判断で買った株はない。 被告から,平成17年夏頃,jを紹介された際に,もうかる話として, M社の株が10万円くらいまで上がると聞いた。このため,M社の株を買い付けたところ,株価が下がったため,被告に対し,相談したところ,被告は,必ず上がるので持っていてほしいと話し,M社についての情報を報告してきた。M社の株を買い増ししたのは,損を少なくするためであり,MBOの情報を聞いて買ったのかははっきりしない。 被告から,af社,ag社,ah社,ai社,ac社についても,株価 が上がる旨の情報を聞いて,それらの株を購入した。 被告が原告に出向した後,aj社の株が上がると聞いて買ったが,株価は下がった。 被告から教えられてak社の株を買ったが,公募増資がされて株価は値下がりした。被告から公募増資がされるという話は聞いていなかった。 al社の株をTOB,MBOの前に売却した理由は覚えていない。 被告から,インサイダー情報によって得られた利益の配分を要求されたことはなく,Bが被った損失の補てん分であると考 ていなかった。 al社の株をTOB,MBOの前に売却した理由は覚えていない。 被告から,インサイダー情報によって得られた利益の配分を要求されたことはなく,Bが被った損失の補てん分であると考えている。 被告から教えられたインサイダー情報に基づいて,いつ,何株買ったという話を被告にしたこともない。 株取引について,被告以外に情報源はない。 イ上記アのとおり,Bの証言は,結論においては,被告から,事前に,D社株,G社株,H社株のTOB又はMBOの情報を聞いて,それらの株を買ったというものであるが,Bは,D社株のTOBの実施に関する事実を伝達した日とされる平成23年2月22日に被告との間でどのような会 話をしたのか具体的に覚えておらず,TOBの価格を事前に聞いていたかという重要な事項について変遷し,D社の会社四季報のコピーをもらった時期等についてもあいまいなものとなっている。 また,G社株のMBOの実施に関する事実を伝達した日とされる同年3月28日についても,当初,被告から直接伝えられた旨述べていたが,検 察官から通話記録を示されて電話で話したように思うなどと述べ,H社株のMBOの実施に関する事実を伝達した日とされる同年4月28日についても,検察官から通話記録を示されて,その日に,H社の話をしてきたなどと述べるにとどまり,具体的な会話内容等については何ら証言していない。 以上によれば,Bの証言は,具体性に欠け,変遷も多く,かつ,検察官 の誘導により得られた部分も多いことからすれば,自身の記憶に基づく証言であるのか疑問であるといわざるを得ない。 ウこれに対し,原告は,Bの証言が通話記録とBの取引と合致しているから信用できると主張するが,Bと被告は,遅くとも平成23年3月8日から同年8 く証言であるのか疑問であるといわざるを得ない。 ウこれに対し,原告は,Bの証言が通話記録とBの取引と合致しているから信用できると主張するが,Bと被告は,遅くとも平成23年3月8日から同年8月18日までの間,毎日のようにショート メールや電話のやり取りをしているのであって,その中には,BがD社株,G社株,H社株の取引をした日時と時間的に近接するものがあったとしても,それは,被告が,本件情報伝達行為をしようと思えばすることが可能であったことを示すに過ぎず,被告が,本件情報伝達行為をするためにBと連絡を取ったことを示唆するものとは認められず,当該事実によって, Bの証言の信用性が高まるものとは認められない。 エ被告からD社株のTOBの情報を聞いたとのBの証言について被告が作成した会社四季報のD社のコピーがB関係先から発見されているから,被告が,Bに対し,D社に関して何らかの情報を伝えていたものと認めることができ,被告からD社株のTOBの情報を聞いたと のBの証言を裏付ける事実の一つとみることもできる。 しかし,そもそも,Bは,前記アのとおり,D社株のTOBの話を聞く前に交付を受けた可能性があるなどと証言しているのであるから,D社株のTOBに関連して交付を受けた旨の証言は,具体的な記憶に基づいてされたものとは認められない。 この点について,Jは,陳述書(乙41)及び証人尋問において,JとBは,15年以上も前から,アービル横浜の土地の再開発を手掛けていたが,うまくいかなかったために,物流会社に譲渡することを考えて,被告に相談したところ,被告から,物流会社のZ社とD社の紹介を受け,被告とD社の人を現地に案内する前に会社四季報のコピーをもらい,こ れをBに渡した,本件刑事事件の際に,アービル横浜の関 て,被告に相談したところ,被告から,物流会社のZ社とD社の紹介を受け,被告とD社の人を現地に案内する前に会社四季報のコピーをもらい,こ れをBに渡した,本件刑事事件の際に,アービル横浜の関係で渡したか どうか覚えていないと回答したのは,D社もアービル横浜の土地を買わなかったので,D社についての記憶があまり残っていなかったことから,そのように回答したが,その後,被告を現地に案内したことを思い出した旨述べており,被告も,本人尋問において,当該コピーは,D社の人を現地に案内する前に,Jに対して渡したものである旨供述していると ころ(被告本人),これらの供述ないし証言について,全く信用することができないと断じるまでの根拠は見当たらない。 以上に加えて,被告も,Jを介して,Bに対し,会社四季報に記載された情報その他の内部情報ではない情報を提供していたことは認めているところ(乙29の添付⑪,被告本人等),会社四季報は公刊物であ り,そのコピーを提供すること自体は,インサイダー情報の提供にはなり得ないのであるから,仮に,被告が株取引の関連でBに会社四季報のコピーを渡したということがあったとしても,被告がインサイダー情報を提供したことの裏付けになるとはにわかには解し難い。 また,Bの証言によっても,Bが,TOBがされると聞いたD社の業 務内容や決算内容等について興味を有していたとは全く認められないから,被告が,Bに対し,TOBになるという情報に加えてD社の会社四季報のコピーを交付する合理的な理由がないし,Bのために株取引をしていたFは,自らヤフーファイナンスで各社の証券コードを調べた上で注文を出していたのであり,やはり会社四季報のコピーを必要とする 合理的な理由はない。 以上のような事情に照らせば,被告 をしていたFは,自らヤフーファイナンスで各社の証券コードを調べた上で注文を出していたのであり,やはり会社四季報のコピーを必要とする 合理的な理由はない。 以上のような事情に照らせば,被告が作成した会社四季報のD社のコピーがB関係先から発見された事実は,必ずしも,Bが被告からD社株のTOBの情報を取得したことを裏付けるものとは認められない。 むしろ,BのD社株の取引については次のような事情も指摘できる。 原告の主張は,被告が,平成23年2月22日午後0時3分,Bに対 して,D社株についてTOBが実施されることを伝達し,Bが,同情報を聞いて,同日午後1時19分にD社株を買い付けたというものである。 ところで,Fが,Bの指示に従って株取引をする際の通常の手順は,Bから携帯電話で取引の指示を受け,ヤフーファイナンスで指示を受けた会社の証券コードを調べて,E証券のウェブサイトを使用して注文す るというものであり(認定事実),現に,Fは,ヤフーファイナンスでG社株やH社のに,Bが,前同日,Fに電話をしたとの記録はない上,FがBから依頼された株取引を行うために使用していたパソコンには,同日にヤフーファイナンスのD社についてのページにアクセスした履歴はない(認定事 F,弁論の全趣旨)。 そうすると,Bが,Fに対してD社の株を買うように指示したのが同日であったのかについては疑問が残るといわざるを得ない。 また,D社株のTOBが発表された平成23年3月9日の時系列をみるに,日経新聞の朝刊にD社株のTOBのスクープ記事が掲載され,同 日午前8時13分には,C社がこれを否定するプレスリリースを発表し,Fは,平成23年3月9日午前9時8分及び同日午前9時10分にBからの電話を受けた後の同日午前9時28分 記事が掲載され,同 日午前8時13分には,C社がこれを否定するプレスリリースを発表し,Fは,平成23年3月9日午前9時8分及び同日午前9時10分にBからの電話を受けた後の同日午前9時28分,D社株100株を買い付ける注文を出し,同日午前9時46分から同日午前9時59分にかけてBから電話を受けて,100株の売り注文を出して直ちにこれを取り消し, 同日午後1時3分には100株の買い注文も取り消し,その直後である同日午後1時9分,被告とBは,4分あまり電話で会話し,同日午後2時にD社 仮に,Bの証言のとおり,被告が,Bへの損失補てんのために,Bに対し,D社株のTOBのインサイダー情報を伝えていたというのであれ ば,被告とBの間でされた同日午後1時9分にされた通話において,D 社株のTOBが予定通り実施される旨の会話がされないはずがなく,そうであるとすれば,その直後に,Bが,Fに対し,D社株の買い付けを指示することが合理的であるのに,Bが,被告との電話からTOBの発表までに,D社株について何らの指示もしていないのは不可解であるというべきである。 このような事実からも,被告が,平成23年2月22日午後0時3分,Bに対して,D社株に対してTOBが実施されることを伝達したとは認め難いというべきである。 以上のとおり,被告が,Bに対し,D社株のTOBの情報を伝えたとのBの証言には裏付けとなる事実はないばかりか,Bの通常の取引方法 や経験則に反して疑問が残るものであるといわざるを得ない。 オ被告からG社株のMBOの情報を聞いたとのBの証言について平成23年9月2日午後1時31分,被告がBに対して送信したメールついても,確かに,同日午後3時30分,G社がMBOの実施を公表して いるから, のMBOの情報を聞いたとのBの証言について平成23年9月2日午後1時31分,被告がBに対して送信したメールついても,確かに,同日午後3時30分,G社がMBOの実施を公表して いるから,同メールは,被告が,Bに対し,G社のMBOの発表日を伝えたことを裏付けているものと一応考えられる。 この点について,被告は,「例の発表」について,本件刑事事件の被告人質問において,Lの件であると考えられるが,重要情報を公表する際に,通常はローンチとか公表という言葉を使い,発表という言葉を使うことは ないので,別のことではないかと思われる,具体的な内容は覚えていないと述べており(乙28),Lは,本件刑事事件控訴審において,被告の刑事弁護人から依頼されて,平成23年9月当時のメールのやり取り等を調査したところ,そのころ,Lの関係する会社が,Bに対する返済資金を得るために,am社の株式を大量に取得する予定であり,同月2日ころ,大量 保有報告書を提出したことを発表する予定としていたので,その発表が 「例の発表」ではないかと考えられると証言しており(乙24),被告及びLの供述によっても,その発表の具体的内容は明らかであるとはいえない。 他方,当該メールの文面は,「病院におります。夕方までには出られると思います。出たらお電話します。例の発表もありますので」というものであるが,「例の発表」がG社株のMBO実施の公表を指すものとした場合, Bの証言によっても,Bは,被告から教えられたインサイダー情報に基づいて株を買った事実を被告に報告したことはないというのであるから,被告とBの間で,G社株のMBO実施について話さなければならない事項があるとは考えられず,Bも,この点については何ら具体的な証言をしていない。 これに加え ことはないというのであるから,被告とBの間で,G社株のMBO実施について話さなければならない事項があるとは考えられず,Bも,この点については何ら具体的な証言をしていない。 これに加えて,仮に,既に被告がBに対してG社株のMBOの情報を伝えていたとすれば,G社株のMBO実施の公表について,公表当日に,そのことをBに対して伝える理由も乏しいし,まして,証拠として残るメールへの記載という明らかに不用意な方法で伝えなければならない合理的な理由はない。 これらの事情を総合すると,上記事実も,被告が,Bに対し,G社株のMBO情報を伝えていたことを示す事実とは認められず,Bの証言を裏付けるものとは認め難い。 カ以上のとおり,Bの証言は,それ自体,具体性に欠け,変遷も多いなど信用性に欠けるものであるし,これを裏付けるべき的確な証拠もないから, Bの証言のみをもって,直ちに本件情報伝達行為があったとは認められるものではない。 そこで,本件情報伝達行為があったことを窺わせるとして原告が主張する事実等について検討する。 ア原告は,Bの新たな株取引と被告が上場企業の情報に接することの容易性 との間には強い相関関係が認められると主張する。 Bは,被告が,A銀行法人企業統括部に在籍中の平成15年は0銘柄,平成16年は4銘柄,平成17年は56銘柄,平成18年は16銘柄であり,平成19年1月から同年3月まで4銘柄の株取引をし,被告が,A銀行三田通法人営業部に在籍中の同年4月から平成21年9月までは0銘柄,被告が,原告に出向した平成21年10月 は0銘柄,同年11月及び同年12月に2銘柄,平成22年に9銘柄,平成23年1月から同年9月までに18銘柄の取引をしていたものである。 しかしながら,そもそ ,原告に出向した平成21年10月 は0銘柄,同年11月及び同年12月に2銘柄,平成22年に9銘柄,平成23年1月から同年9月までに18銘柄の取引をしていたものである。 しかしながら,そもそも,Bは,被告がインサイダー情報を提供するようになったのは,被告が原告に出向をした平成21年10月以降であると証言している 頃,右肩に「㊟4月以降の進捗状況把握不能」との注記した上,いくつかの会社についての情報を記載したB宛ての書面をJにファックス送信しているが,これについて,本人尋問において,それまでJを通じてBから株式に関する問合せがあり,会社四季報その他一般的に公開されている情報をベースにコメントする程度のことをしていたが,営業店に行って外部 の者とファックスのやりとりはできないし,これ以上,Bからの株式に関する質問には対応したくなかったので,B宛のファックス書面に同注記をした旨説明する(被告本人)ところ,同供述に特段不自然な点はない。そうすると,平成21年10月以前の,被告の業務とBの株取引の間に関係があるとの証拠はない。 しかも,被告がA銀行法人企業統括部に在籍中の平成17年と平成18年の取引数を比較しても,大きく異なっているし,被告が平成19年4月1日から在籍したA銀行三田通法人営業部は40社ほどの上場会社を所管していたにもかかわらず,Bは全く株取引をしていなかったことからしても,被告が所属していた部署の業務内容とBの株取引との間に相 関性があるとも認められない。 仮に,被告において,平成19年4月以前に,Bに対し,会社四季報その他一般的に公開されている情報の提供をしていたことが,Bの株取引に何らかの影響を与えたことがあったとしても,公開情報を伝達することと非公開情報を伝達することの意 4月以前に,Bに対し,会社四季報その他一般的に公開されている情報の提供をしていたことが,Bの株取引に何らかの影響を与えたことがあったとしても,公開情報を伝達することと非公開情報を伝達することの意味は全く異なるから,従前,公開情報を伝達していたことが,本件情報伝達行為があったことを裏付ける事 実になるものではないことは論を待たない。 以上のとおり,Bの新たな株取引と被告が上場企業の情報に接することの容易性との間には何らの相関関係も見いだせないというべきである。 イ原告は,Bの新規銘柄の買付けと被告の非公開情報の取得との間に偶然とは考え難い強い関連性が認められると主張する。 平成21年10月から平成23年9月までの間にBが購入又は購入を検討した46銘柄から,自らの判断で購入した9銘柄を除く37銘柄については,被告においても,TOB又はMBOの情報を入手していたものである。 他方,のとおり,一つの銘柄のTOBやMBOの案件におい て,インサイダー情報に接する者は多数に上り,実際に,D社,G社,H社に関しても,原告以外の金融機関等が関与していること,認定とおり,Bには株に関する情報の入手先として少なくとも4名の者が存在していたことからすると,被告は,Bが購入又は購入を検討していた37銘柄について,TOB又はMBOの情報を提供することが可能であったと いうことはできるが,その事実をもって,その情報の入手先が被告であると認めることはできない。 さらに,Bの証言によれば,Bは,9銘柄を除いて全て被告のインサイダー情報に基づいて株取引をしたというものであり,被告は,Bが被った損失の補てんのためにインサイダー情報を提供していたというのである から,被告がBに伝達すべき非公開情報は,利益の出るものでな ダー情報に基づいて株取引をしたというものであり,被告は,Bが被った損失の補てんのためにインサイダー情報を提供していたというのである から,被告がBに伝達すべき非公開情報は,利益の出るものでなければ意 味がないはずであることからすると,情報を取得し,かつ,Bが買付けをした銘柄の中には,その後に損失を計上した取引が含まれていることは,Bの新規銘柄の買付けと被告の非公開情報の取得との間に関連性があることを疑わせる事実といえる。 以上のとおり,Bの新規銘柄の買付けと被告の非公開情報の取得との間 に偶然とは考え難い強い関連性があるとは認められない。 ウ原告は,被告が,インサイダー取引に関与していなければ,平成23年9月28日から平成24年6月25日までの間に行われたBの5回の会合に参加する必要もなく,その調査内容について話題になることもないから,被告が,証券取引等監視委員会の調査対象である株取引に関与したものと推認 できる旨主張する。 Bと会った際に,証券取引等監視委員会の調査の内容やインサイダー取引においては重要事実の第1次情報受領者が株を買い付けると罪に問われるが,第2次情報受領者は株を買い付けても罪とならないことなどが話題となっ たことが認められる。 しかしながら,Jは,これらの会合のうち4回立会い,そのうち3回は,Jの不動産仲間のkかJが,an社に対する融資についての対応を話し合うために被告に対して連絡をしてkの事務所に集まったものであり,その際,証券取引等監視委員会の調査の話が出なかった訳ではないが,株 取引の話は出ていない,インサイダー取引で処罰をさせるのは一次情報受領者だけという話は,Jが知っているl弁護士にBと共に相談に行ったときに聞いた話であり,被告がBに教えた訳ではな ないが,株 取引の話は出ていない,インサイダー取引で処罰をさせるのは一次情報受領者だけという話は,Jが知っているl弁護士にBと共に相談に行ったときに聞いた話であり,被告がBに教えた訳ではないと述べており(乙29,41,証人J),被告も,いずれもJから連絡があったものであり,1回目の会合の際,Bが,Jからインサイダー情報を聞いたことにしよう と言っていたため,JとBの関係ではそのようなことは成り立たたない と話した,2回目は,Bは,証券取引等監視委員会の任意の調査に応じていなかったので,どのようなことを聞かれているのか知りたかったのではないかと思う,これらの会合で具体的な株取引についての話は話題に出なかった,3回目の会合はan社についてのものであった,5回目の会合は,被告が来週逮捕されると警察に聞いたというので出向いたと供述 している(乙11,28,被告本人)。 Bが,D社株,H社株,G社株を買ったとは認識していなかったものであるが,仮に,被告とBが,本件情報伝達行為を含む証券取引等監視委員会の調査対象となっている株取引について,話し合うために会合を持ったものであ るとすれば,被告とBとの間で,問題となっている株取引について具体的に協議をしないということは考え難いこと,Bの証言は,第1回目の会合において,被告から,「オールノー」(否認)でいくと言われたというものであるが,被告は回答できる部分は調査に応じており,これらの会合についてのBの証言も直ちに信用できないことからすれば,株取引について の話がなかったとのJと被告の供述が信用できないものとはいえず,そうであるとすれば,被告が,平成23年9月28日以降,Bと5回会ったことがあったとしても,その事実から,直ちに,D社株その他の本件で起訴 がなかったとのJと被告の供述が信用できないものとはいえず,そうであるとすれば,被告が,平成23年9月28日以降,Bと5回会ったことがあったとしても,その事実から,直ちに,D社株その他の本件で起訴されている株取引を含む証券取引等監視委員会の調査対象となった株取引に,被告がインサイダー情報を提供したという意味において被告が 関与していることを相当程度推認させると解することはできない。 エ被告の動機について原告は,平成23年2月22日,Bが,Lが返済しないことについて被告の責任を追及していたところ,その怒りをおさめるために,D社株のインサイダー情報を伝えてきたのではないかとするBの証言は信用できる ものとして,被告がBにインサイダー情報を提供する動機がある旨主張 する。 しかし,そもそも,認定事実のとおり,Lは,運送施設売買契約を締結し,Bから,実質的には2億円の融資を受け,期日通りに約束の返済ができなかったものであるが,この件に,被告がどのように関与していたのかは証拠上明らかではなく,被告が,Bから責任を追及されなければなら ない合理的な理由があったとは認められない。 すなわち,Lは,本件刑事事件控訴審の証人尋問において,被告は,運送施設売買契約締結前に被告は全く関係していない,Bが,運送施設売買契約に基づくLに対する融資金の返済を被告に求める根拠はなく,そのようなことはあり得ない,BとLが直接話すと感情的な話合いになって しまうので,被告は,Bから頼まれて,Lの状況や進捗を聞くようになったのではないかなどと証言している(乙24)。 他方,被告は,LとBが直接話をしていたが,ある日突然,BがLに激高して全く話にならなくなったため,Lから,責任をもって返済するので間に入ってBに説明してほし ないかなどと証言している(乙24)。 他方,被告は,LとBが直接話をしていたが,ある日突然,BがLに激高して全く話にならなくなったため,Lから,責任をもって返済するので間に入ってBに説明してほしいと依頼され,Lの件に関与するようにな った旨の供述をしている(被告本人)。 このように,Lと被告の供述は,LとBのどちらから依頼をされたのかについては食い違いが見られるものの,被告が,BとLとの間で直接話ができなくなったため,BとLとの間を取り次ぐようになったことは一致しているのであって(Bの証言には,被告が,Lの件に当初から係わっ たかのような部分があるが,Bの証言が信用できないことは前記のとおりであるし,Lの件に限っても,運送施設売買契約書にされた書込みの内容が,同契約締結当時に判明していた事実であるとの証拠もないから,同契約締結前に,被告が,Bに対し,書き込みをしながらLについて説明をしたとのBの証言も採用できない。),Lの件で,被告がBに対して何らか の責任を感じるなどして,Bに生じた損害を補てんするためにインサイ ダー情報を提供するということは考え難い。 なお,仮に,被告において,Lの件でのBの怒りをおさめたいという動機があったのであれば,被告は,平成22年12月13日には,フランチャイズミーティングにおいて,C社がTOBによりD社株を取得する旨の報告を受けていたのであるから,平成23年2月22 日よりも前に,BにD社株のTOB情報を伝えることもできたことからすれば,この点においても,原告の主張には疑問があるといわざるを得ない。 なお,本件刑事事件第1審では,被告が本件情報伝達行為をした動機として,M社の株取引によってBに生じた損失を補てんするためと認定が されているため,この点に 問があるといわざるを得ない。 なお,本件刑事事件第1審では,被告が本件情報伝達行為をした動機として,M社の株取引によってBに生じた損失を補てんするためと認定が されているため,この点についても検討する。 被告は,本件刑事事件の被告人質問及び本人尋問において,Bから,平成17年6,7月頃,帝国ホテルのすし屋で,Bから元気のよい会社があるかと聞かれてM社の名前を出したが,M社がMSCBを発行しており株価が暴落する可能性があると認識していたため,BにM社の株を買 われては困ると考え,今は買うタイミングではないと話し,むしろ,M社の株を買っていけないと話している,同年9月ころに,帝国ホテルのラウンジでBに会った際,Bから,M社の株を買ったと聞いて驚いた,Bから,株価が急速に下がってきたため,売った方がよいか,持っていた方がよいか教えてほしいと言われたため,分からないと答えたが,しつこく聞かれ たので,しばらく様子をみたらどうかと答えた,BからM社の株取引による損失について責任をとってほしいと言われたことはない,Bからは,不動産でもうかる案件を紹介して欲しい,M社の株取引で大きな損失を出したので,もうかる案件があったら自分に優先して回してほしいと言われたなどと供述している(乙28,被告本人)。 そして,Jも,被告とBと帝国ホテルのすし屋で会った際,被告が,B から元気のよい会社はないかと聞かれて,M社の名前を口にしていた,Bは,M社の株価を調べたところ,M社の株が2日続けてストップ高だったため,Jに対し,これは買わなければならないと言っていた,その後,BからM社の株を買ったという話を聞いていなかったが,M社の株価が下がってから,実は,M社の株を買ったと聞いた,Bから,M社の状況を被 告に聞いて れは買わなければならないと言っていた,その後,BからM社の株を買ったという話を聞いていなかったが,M社の株価が下がってから,実は,M社の株を買ったと聞いた,Bから,M社の状況を被 告に聞いて欲しいと依頼された,BがM社の株価が下がったとうるさかったので,被告に対し,何度かM社の状況について問い合わせをしたと述べるにとどまっている(乙29,41,証人J)。 以上のとおり,被告は,Bに対し,業績の良い会社としてM社の名前を出したことは認められるものの(この点についても,Bの証言には,被 告が,M社の株が上がると言ったと述べる部分があるが,Bの証言が信用できないことは前記のとおりであるし,被告が,M社の株価が下落する要素があることを知っていながら,敢えて,そのような虚偽の情報を提供するとは考えられない。),Bは,自らの判断でM社の株を購入したのであるから,BがM社の株取引によって巨額の損失を被ったとしても,被告がB に対して何らかの責任を感じるなどして,Bに生じた損害を補てんするためにインサイダー情報を提供するということは考え難い。 また,BがM社の株を購入したのは平成17年夏ころのことであり,被告が,Jを介してM社の情報を提供したと認められる最後の時期が平成18年4月であり,被告が原告に出向するまでには3年以上も経過し ていることに照らせば,BがM社の株取引によって損失を被ったことが,平成21年10月以降のインサイダー情報提供の動機になり得るものとは通常考えられない。 さらに,経済的な利益の点について検討してみても,Bと被告との間でインサイダー取引による利益の分配に関する事前の約束はなく,Bが本 件3銘柄の取引によって得た利益は1円も被告に分配されていないだけ でなく(乙2,被告本人),被告 Bと被告との間でインサイダー取引による利益の分配に関する事前の約束はなく,Bが本 件3銘柄の取引によって得た利益は1円も被告に分配されていないだけ でなく(乙2,被告本人),被告がインサイダー情報を外部に提供したことが明らかになれば,被告は,A銀行から懲戒解雇されることになり,二,三年で原告から同銀行に戻り,同銀行で幹部になるなどといわれていた地位を失い,定年退職するまでの給与のほか,退職金や年金も失うことになる(乙4の1,30,41,被告本人)ところ,被告において,このよ うなことになるリスクを踏まえてもなお,Bに対し,インサイダー情報を提供して,その便宜を図らなければならない理由があるとは到底考えられない。 以上のとおり,被告には,Bに対してインサイダー情報を提供するような合理的な動機があるとは認められない。 オ前記アないしエに説示したとおり,被告が,本件情報伝達行為をしたと合理的に推認できるような事実もない。 Bの証言は信用できず,その他に,被告が本件情報伝達行為をしたと認めるに足りる事実もないから,その余の点について検討するまでもなく,原告の請求は理由がない。 第4 結論よって,原告の請求は,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第7部 裁判長裁判官小川理津子 裁判官木村匡彦 裁判官山田裕貴
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