昭和22(オ)17 知事選挙の効力に関する委員会の決定に対する不服

裁判年月日・裁判所
昭和23年1月17日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄自判 福岡高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破毀し被上告人の請求を棄却する。      第一審及び上告の費用は被上告人の負担とする。          理    由  江川上告代理人の上告理由第二点は『原判決は選

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主文 原判決を破毀し被上告人の請求を棄却する。 第一審及び上告の費用は被上告人の負担とする。 理由 江川上告代理人の上告理由第二点は『原判決は選挙法規の解釈を誤つて居る。原判決は「従つて令第六条第二項により右Dは県知事候補者たることを辞したものと看做して直ちに投票を行うことを取止め他の一人の候補であるEを当選者と決定したのはいわゆる公職追放に関する前記法令の意義を正確に理解せず延いて選挙に関する規定の適用を誤つたものであつてこの選挙規定の違反は選挙の結果に異動を生ずる虞がある場合であること言を待たない、のみならず前記の如く法の命ずる所に従ひ昭和二十二年四月十五日の選挙期日にD、Eの二人を候補者としていわゆる決戦投票が行はれたとすれば、たとえその直後に右Dに対し覚書該当者としての指定たる効力を有する正式な通知が到達したとしてもその結果必ずしもEが当選者となるものと限られてゐないことは例えば右選挙においてDが有効投票の過半数を得たが右覚書該当者指定の通知に省みて自発的に当選を辞した場合、或は選挙長が同人を被選挙権を有せざるに至つたものと認定した場合(之等の場合には道府県制第七十四条ノ十三第三項第七十四条ノ十五第二項第七十四条ノ十二第二項第一号或は第二号の適用によりEは当選者とせられないで更に選挙が行われることになる)を想定しただけでも自ら明かな所であるから上述した当裁判所の法的見解はその実益なしとしない訳である」と云ひ選挙の結果に異動を及ぼす虞があると説明して居る。 しかれども原判決認定の如く四月十五日決選投票を行はざりしこと自体を以て選挙手続の違反なりとしてその手続を無効であるとするなら更に決選投票を行はなければならぬことになる。しかるに今日ではDの追放は確定して居るのであるから結局決 十五日決選投票を行はざりしこと自体を以て選挙手続の違反なりとしてその手続を無効であるとするなら更に決選投票を行はなければならぬことになる。しかるに今日ではDの追放は確定して居るのであるから結局決選投票はこれを行ないで一人の候補者Eを当選者と決定するの外に途はない、従- 1 -つて選挙の結果に異動を及ぼす虞あるものとは云ひ得ない。地方自治法第六十七条の規定は選挙の規定に違反した場合でも結果に異動を及ぼす虞がないなら選挙は無効としないと云う趣旨に解すべきで現実に即し無益を斥ける公私法の大原則を表顕したものである。而して被告の抗弁のうちにこの趣旨を包含すると見るべきは当然である故に原判決は選挙法規の解釈を誤つたものと信ずる』と言ふのである。 被上告代理人の上告理由第二は『昭和二十二年四月十五日の選挙に原判示の如き違反があるとしても、この違法のため選挙の結果に何等異動を生ずるの虞なきにかかわらず、原判決がその虞ありとして該選挙の無効を判決したことは明かに違法であつて、原判決はこの点においても破毀を免れぬものと信ずる。原判決は単純に「内閣書記官長名義の電信を以て閣省令第五条第一項の通知に該当するものとし、従つて勅令第六条第二項により右Dは県知事候補者たることを辞したるものとみなして直ちに投票を行うことを取り止め、他の一人の候補者であるEを当選者と決定したのは、いわゆる公職追放に関する諸法令並に選挙に関する規定の適用を誤つたものであつて、この選挙規定の違反に選挙の結果に異動を生ずる虞がある場合であること言を待たない」といい、若し四月十五日にいわゆる決選投票が行われたとすれば、必ずしもEが当選者となるとは限らないから「上述した当裁判所の法的見解はその実益なしとしない」と主張している。この解釈は単純に過ぎて明かに法の解釈を誤るものであり、更に精密 投票が行われたとすれば、必ずしもEが当選者となるとは限らないから「上述した当裁判所の法的見解はその実益なしとしない」と主張している。この解釈は単純に過ぎて明かに法の解釈を誤るものであり、更に精密周到なる検討を要するところである。なるほど書記官長名義の電報通知は覚書該当者としての指定の効力を有せず、従つて所定の期日に決選投票が行われたとすれば、Eが当選人とならなかつたかも知れないと想定することは理論的に疑はない(しかしながらこれは単なる理論上の想定であつて、選挙の実際においては全く考へられない事実と断定してよい。何故ならばDの覚書該当の事実は既に書記官長の公電やラジオ及び新聞紙を通じて県下一円に唱導され事実上選挙人に周知されているのであるから、仮りにそのまま選挙が行われたとしても- 2 -その結果は洵に明瞭であつたであろう)しかし選挙の結果に異動を生ずる虞があるかどうかは、このように若し所定の期日に決選選挙が行われたならば、選挙の結果に異動を生じたかも知れないという点の認定のみでは足りないのであつて更に判決を以て選挙が無効とせられた場合その違法を是正して更に選挙を行つたときに、果して現に生じているところの選挙の結果に異動を生づるの虞があるかどうかの点を併せて判断しなければならないものである。寧ろ本件の如き場合においてはその判断の重点は後者にかかつて来るのである。凡そ広く各般の選挙法則に通じ(衆議院議員選挙法第八十二条、参議院議員選挙法第七十五条、地方自治法第六十七条、旧道府県制第三十五条、旧市制第三十五条、旧町村制第三十二条等)たとえ選挙の規定に違反があつても、只選挙の結果に異動を生ずるの虞がある場合に限り、その選挙の全部又は一部の無効を判決すべきものと規定せられているが、その法意はいう迄もなく苛しも無駄な若しくは無意味な選挙をしな 定に違反があつても、只選挙の結果に異動を生ずるの虞がある場合に限り、その選挙の全部又は一部の無効を判決すべきものと規定せられているが、その法意はいう迄もなく苛しも無駄な若しくは無意味な選挙をしないということであつて、即ち選挙に違法があるためその全部又は一部を無効として更に選挙をやり直してみても、それがため何等選挙の結果に影響を生じないという場合には、その違法是正のために実益のない選挙手続を繰り返すという無益なことをしないということである。選挙の争訟は単に理論の当否を争うものではなく、選挙の結果の正否即ち当選人決定の正否を争うものであるから、いわゆる実益のない無意味な判決はこれを認めないのである。その実益ありや否やを即ち選挙の結果に異動を生ずるや否やであり、換言すれば当選人に変更を生ずるや否やである。従つてこれらの規定の解釈適用に当つて忘れてならないことは選挙が無効とせられた結果として前選挙の瑕疵を是正して更らに行う選挙において、果して現在生じている選挙の結果と異れる選挙の結果を生ずるの可能性(虞)ありや否やという判断である。もしその判断を忘るるときは、これらの規定は全く本来の趣旨を失い無意味なものとなるからである。而してその判断の結果、更らに選挙を行つたところでその新選挙の結果は現に得ている選- 3 -挙の結果と全然同一であることが明白であるならば、即ちこれらの法規が予想している場合であつて選挙を無効とする実益を存しない場合である。従つてその場合においては、これらの規定(本件の場合には地方自治法第六十七条)の明白な適用により、選挙無効の判決は之を為し得ないこととなるのである。即ち、これは法の禁ずるところとなるのである。この更に選挙を行う場合において現に得ている選挙の結果に異動を生ずるの虞があるかどうかの判断は通常の再選挙の場合等に 決は之を為し得ないこととなるのである。即ち、これは法の禁ずるところとなるのである。この更に選挙を行う場合において現に得ている選挙の結果に異動を生ずるの虞があるかどうかの判断は通常の再選挙の場合等においては困却され勝ちな判断であるが、それは通常の場合ではその虞が常に極めて濃厚であつて殆んど自明のこととなり、特にこれを詮議する実益がないからである。併し新立候補の許されない決選選挙の再選挙の場合等に関しては、普通には忘られ勝ちなこの判断が非常に重要となり、特に慎重にこれを検討する必要が生じて来るのである。本件の如きは正にその典型的な場合である。而して本件の場合についてこれを考察すれば原判決通り四月十五日の決選選挙が無効とせられた場合にも、決選選挙における二人の候補者を決定した昭和二十二年四月五日の宮崎県知事選挙(以下仮りに本選挙という)については、固より何等の法的瑕疵は存せず、争訟の客体とならず、従つて又判決も何等これに言及していないのであるから、更に選挙を行うとすれば、決選選挙の再選挙を行う以外に途のないことは明である。然るに決選選挙における候補者の一人たるべきDは仮りに四月十七日に覚書該当者として指定されたとしても少くとも四月十七日以後にあつては既に追放覚書該当者としての指定の効力を生じ、従つて明かに勅令第六条第二項により宮崎県知事の決選選挙の候補者たることを辞したものとみなされるのであるから、新決選選挙における候補者は結局矢張りE一人となる。従つて新決選選挙においてEが再び無競争を以て当選者と決定せられることとなる。換言すれば選挙の手続が新になるだけであつて選挙の結果には事実上何の異動も生じないのである。これは現行法規の適用より生ずる必然の結果であつて、何人もこの事実を動かすことはできない。然るに原判決が全くこ- 4 -の点の省察 なるだけであつて選挙の結果には事実上何の異動も生じないのである。これは現行法規の適用より生ずる必然の結果であつて、何人もこの事実を動かすことはできない。然るに原判決が全くこ- 4 -の点の省察を欠き、単に四月十五日において決選投票を行つていたならば、必ずしもEが当選者となるとは限らなかつたというだけの理由(判断)を以て直ちに選挙無効の判決を下したのは、いわゆる選挙の結果に異動を生ずるの虞ありや否やの点に対する法規上並びに事実上の検討を欠き且つ明かにその判断を誤つたものであつて、いう迄もなく地方自治法第六十七条に関する解釈適用を誤つた違法の判決といわねばならぬのである。以上の陳述を以て凡そ明瞭であると思うが、この主張の骨子を事項別にして次に叙述する。(イ)如何なる選挙の規定の違反があつても、裁判所がその選挙の全部又は一部の無効を判決するのは選挙の結果に異動を生づるの虞れある場合に限られ、その違法を是正するため正当なる新選挙の手続を施行しても、結局選挙の結果において即ち何人が当選者となるかということに何の変化も生じない場合には裁判所は選挙無効の判決を為し得ないものである。これは地方自治法第六十七条の明定するところであつて無益なる選挙の煩を避くる意味において当然の規定である。従つて裁判所が選挙無効の判決をする場合には、無効判決の結果行わるる新なる選挙において、果して現在得ている選挙の結果と異れる選挙の結果を生ずるの可能性ありや否やにつき充分に吟味してこれを為さなければならぬ。然るに原判決は、この点において全く判断を欠き且つ結果においてこれを誤つている。 (ロ)昭和二十二年四月五日の本選挙は完全に執行せられ法律上の瑕疵は全くなく、従つてその効力も争われず完全に確定している。しかしこの本選挙ではいわゆる法定得票数以上の得票者を得ることができな いる。 (ロ)昭和二十二年四月五日の本選挙は完全に執行せられ法律上の瑕疵は全くなく、従つてその効力も争われず完全に確定している。しかしこの本選挙ではいわゆる法定得票数以上の得票者を得ることができなかつたので、道府県制第七十四条ノ十三の規定により決選選挙を行うことになり、而して決選選挙にのぞむべき候補者として四月五日の選挙において有効投票の最多数を得た者二人即ちDとEの二人が決定せられた。この事実は確定不動であり、この二人以外の他の何人も決選選挙の候補者となることはできない。(ハ)しかるに、Dはその後覚者該当者として指定せられた。その指定の効力発生の時期については争を生じているが、いづれにしても四- 5 -月十七日以後(総理大臣名義の通知到達以後)においては同人が覚書該当者としての指定の効果を受ける者であることは、原判決も明かに認めるところであり、何人にも争のないところである。従つて、仮りに四月十五日の選挙を無効とし、新に決選選挙が行われることになつても、同人は勅令第六条第二項により既に候補者を辞したものとみなされており、該選挙における候補者たるの資格はないものとなつている。而してこれも今日においては既に確定した事実である。(ニ)原判決は四月十五日の選挙を無効とした(固より四月五日の本選挙については何等触るるところはない)。併し上述の如く決選選挙における二人の候補者中既に一人は失格したのであるから、新たに決選選挙の再執行をしても新選挙の候補者は唯一人のみとなり、その候補者は当然に無競争(即ち無投票)を以て当選者と決定せられるのである。 それが現在の当選者であるEである。而してこれは現行法の適用として寔に明かであつて、毫もこれを争う余地がない。即ち、仮りに判示の如き違法ありとしての理由を以て選挙を無効としても、選挙の結果には結局何の異動も 在の当選者であるEである。而してこれは現行法の適用として寔に明かであつて、毫もこれを争う余地がない。即ち、仮りに判示の如き違法ありとしての理由を以て選挙を無効としても、選挙の結果には結局何の異動も生じないのである。 (ホ)以上のことは、元来本件が四月五日の本選挙の効力を争う問題でなく四月十五日の決選選挙の手続の効力を争う問題であり、而かも決選選挙において争うべき二人の候補者中一人が既に確実に候補者たる資格を喪失したという条件が加わる場合であるから、それから生ずる必然の結論であつて、少しも異とするに足りぬ。かくの如くにして、本件はたとえ判示の如き違法ありとしても、これがため何等選挙の結果に異動を生ずるの虞ある場合ではないのにかかわらず、原判決がこの点に関する充分なる審究を欠き漫然その虞ありとして選挙無効の判決をしたのは、明に違法の判決であつて破毀を免れないものである』と言うのである。 三宅上告代理人の上告理由第一点は『原判決は地方自治法第六十七条の解釈を誤つた違法がある。原判決は「この選挙規定の違反は選挙の結果に異動を生ずる虞がある場合であること言を待たないのみならず、前記の如く法の命ずる所に従い昭和- 6 -二十二年四月十五日の選挙期日にD、Eの二人を候補者としていわゆる決選投票が行はれたとすれば、たとえその直後に右Dに対し覚書該当者としての指定たる効力を有する正式な通知が到達したとしても、その結果必ずしもEが当選者となるものと限られてゐないことは、例えば右選挙においてDが有効投票の過半数を得たが右覚書該当者指定の通知に省みて自発的に当選を辞した場合或は選挙長が同人を被選挙権を有せざるに至つたものと認定した場合(之等の場合には道府県制第七十四条ノ十三第三項第七十四条ノ十五第二項第七十四条ノ十二第一項第一号或は第二号の適用によりEは当 した場合或は選挙長が同人を被選挙権を有せざるに至つたものと認定した場合(之等の場合には道府県制第七十四条ノ十三第三項第七十四条ノ十五第二項第七十四条ノ十二第一項第一号或は第二号の適用によりEは当選者とせられないで更に選挙が行われることになる)を想定しただけでも自ら明かな所である」と判示している。地方自治法第六十七条は「選挙の規定に違反することがあるときは、選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合に限り、選挙管理委員会又は裁判所はその選挙の全部又は一部の無効を決定し裁決し又は判決しなければならない」と規定していて、見たところ判りにくそうな規定ではあるけれども、きわめて自明の理を条文化したまでである。選挙とか訴訟とかいう、複雑な手続に従い順序を追つて進められるものはともすると、その途中で手続違背の問題をひきおこしかねないのである。そういう場合に、手続の違背を是正するために、また初からあらためてやりなおすことは、時間、労力、経費などの点から見てかなりの損失であるばかりでなく、もし是正された手続の結果として得られたものが、当初の違法な手続の結果として得られたものと同じであつたならば、全く無益なことをやつてのけたことになる。しかし必ずしも常にそういう結果になるとは限らないのであつて、是正された手続の結果として得られたものが、当初の違法な手続の結果として得られたものと異う場合もある。その二つの結果は、実質的に見れば価値においてすこしも差異のない場合もあろうが、それでも正しい手続の結果得られたものは違法な手続の結果得られたものよりも、手続が正しかつたというだけでも、価値の高いものであるということができよう。そこで前のような無益なこと- 7 -はやりたくないし、そうかといつて、後のような有益な結果をのがしたくないというのがわれわれの常識である。法もま でも、価値の高いものであるということができよう。そこで前のような無益なこと- 7 -はやりたくないし、そうかといつて、後のような有益な結果をのがしたくないというのがわれわれの常識である。法もまたわれわれの常識に従つて、後のような有益な結果の得られる希望のある場合に限つて、違法な手続を無効として、手続のやりなおしをさせることにしている。条文の書き方はともかく刑事訴訟法第四百十一条はその一つの例であり、問題の地方自治法第六十七条もまたこのカテゴリーに属する規定である。そうすれば第六十七条の読み方はこうでなければならない。ある選挙、かりに第一次選挙とよぼう。その手続が法の規定に違背して進められて、ある結果が得られたとする。この場合その第一次選挙を無効として、手続のやりなおしをさせるかどうか、いいかえれば第二次選挙をやらせるかどうかは第二次選挙の結果の見とおしが、第一次選挙の結果と同じになりそうか異いそうかにかかつている。 もし同じ結果になることが確定的に見とおされるならば、第二次選挙をやらせることは全く無益であつて第一次選挙を無効とする合理的理由はないことになる。こういう場合には、第一次選挙の違法は、いわば是正されたものとみて、その選挙の結果を是認することが、賢明な方策といわなければならない。これに反して、もし同じ結果になるとは、どう考へてみても確定的には断定できない。或は異つた結果になるかもしれないと思われるならば、第二次選挙をやらせることは必ずしも無益とはいえないのであつて、第一次選挙を無効とする合理的理由もありうることになる。 法が「選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合に限りその選挙の全部又は一部の無効を判決し」といつてるのは、まさしくこういう場合のことをいつているのであると解さなければならない。では、本件選挙でこれを無効としてさらに 果に異動を及ぼす虞がある場合に限りその選挙の全部又は一部の無効を判決し」といつてるのは、まさしくこういう場合のことをいつているのであると解さなければならない。では、本件選挙でこれを無効としてさらに選挙を施行する合理的理由があるであろうか。地方自治法第六十二条第一項第四号によれば選挙が無効と決つて当選人がなくなつたときは更に選挙を行うことになつているが、原判決の確定した事実によれば、昭和二十二年四月五日に施行された宮崎県知事の選挙で各候補者の得票が、どれも道府県制第七十四条ノ十第一項但書所定の数に達し- 8 -なかつたので、同制第七十四条ノ十三第一項に従つてさらに同月十五日当時の候補者四名中有効投票の最多数を得たDとEの二人を候補者として選挙を行うことになつたのである。ここまでの選挙手続の適法なことについては被上告人も争わず、原裁判所も、その適法なことを前提としている。事実その選挙手続にはすこしも違法な点はないのである。ところが原判決の確定する如く選挙期日前の同月十四日頃中央公職適否審査委員会でDは覚書に該当するものと認められて、その審査の結果に基き、同月十三日内閣書記官長名義で上告人にDが覚書該当者として指定された旨の電報による通知があつたので(それと相前後してD本人にも内閣書記官長から指定通知が電報で届いた)上告人はDは県知事候補者たることを辞したものとみなされたという見解で、道府県制第七十四条ノ十四所定の手続に出でEを当選者に決定したために俄然問題は紛糾しだした。これに加えて同月十七日以後に内閣総理大臣からDに指定通知の原判決の所謂正式書面が送られてきたために紛糾はその度をましてきたのである。原判決は「結局本件において、昭和二十二年四月十五日の選挙期日後に甲第二号証……がDに到達して始めて同第四条にいわゆる「覚書該当者としての 書面が送られてきたために紛糾はその度をましてきたのである。原判決は「結局本件において、昭和二十二年四月十五日の選挙期日後に甲第二号証……がDに到達して始めて同第四条にいわゆる「覚書該当者としての指定」たるの法律上の効力を生じたのであつて、同選挙期日前には未だ右の効力を有する通知はなかつたことが明かであり、従つて同第六条第二項により同人が県知事候補者たることを辞したものと看做すことも出来なかつたわけである。とすればも早道府県制第七十四条ノ十四を適用すべき余地はなく、従つて当初に決定された通り同法第七十四条ノ十三に従い右の選挙期日にはD、Eの二人を候補者としていわゆる決戦投票が行はれねばならなかつた筋合である」と判示して上告人の採つた選挙手続は法の規定に違反するものと断定している。この判断の是非はともかくとして、原判決のラインで論旨を進めるならば、四月十五日を選挙期日とする所謂決戦選挙は違法であるということが確定されたのである。さて所謂決選選挙は違法であるが故に、これを無効として第二次選挙を施行すべきかどうか。原判決は- 9 -冒頭に摘示した理由で然りと結論している。「しかし」と上告代理人は反問したい。 第二次選挙は如何なる選挙であるか。所謂第二次決戦選挙ではないのか。その選挙における候補者は誰か、DとE以外に誰がいるか。所謂第一次決戦選挙を行うためにDとEが候補者とされるまでの手続には、すこしも違法の点がなかつたのではなかつたか。Dは、すでに覚書該当者として指定されているのではないか。ともすれば所謂第二次決戦選挙を行うとしても、Dは候補者たることを辞したものとみなされて取扱はれる以外に何があるか。そして残るところは、Eが無投票、当選者と決定されるだけではないか。無益なる第二次選挙ではないか。どこに原判決のいう選挙の結果に異動を及ぼす虞 とを辞したものとみなされて取扱はれる以外に何があるか。そして残るところは、Eが無投票、当選者と決定されるだけではないか。無益なる第二次選挙ではないか。どこに原判決のいう選挙の結果に異動を及ぼす虞があるのか。全く理解するのに苦しむ。原判決は「法の命ずる所に従い昭和二十二年四月十五日の選挙期日にD、Eの二人を候補者としていわゆる決戦投票が行はれたとすれば」と判示して現実になかつた、そして今後もありえない夢を説いて論拠としているが、われわれに重要なのは、現実にあつた選挙であり、また現実にありうる選挙である。その再選挙を比較検討しての結論である。本件選挙は原判決のいう如く違法であると仮定しても「選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合」でないことは、前述の如く、きわめて明白である。そうとすれば被上告人の請求は当然、棄却されなければならないのにかかはらず、原判決がこれを認容して本件選挙を無効としたのは地方自治法第六十七条の解釈を誤つた結果であつて破毀されるべきものと信じる』と言うのである。 昭和二十二年四月五日に施行せられた宮崎県知事の選挙において各候補者の得票がいづれも道府県制第七十四条ノ十第一項但書に定められた数に達しなかつたので、同法第七十四条ノ十三第一項に従い、更に同月十五日右候補者四名の内有効投票の最多数を得たDとEの二人を候補者として選挙(いはゆる決戦選挙)を行うこととなつたところ、その選挙期日前である同月十日頃中央公職適否審査委員会においてDはいわゆる追放覚書に該当するものと認定され、右審査の結果に基き同月十三日- 10 -内閣書記官長名義を以て宮崎県知事を通じ宮崎県会議員選挙管理委員会(上告人の前身)に対してDは覚書に該当するものとして指定された旨電信による通知があり、また別にD本人に対しても同月十二、三日頃同人は覚書該当者と指 義を以て宮崎県知事を通じ宮崎県会議員選挙管理委員会(上告人の前身)に対してDは覚書に該当するものとして指定された旨電信による通知があり、また別にD本人に対しても同月十二、三日頃同人は覚書該当者と指定された旨の内閣書記官長名義の電報が送達せられた。そこで選挙管理委員会は前記同月十三日内閣書記官長から右の委員会に対して為された電信による通知を以て正式な覚書該当者の指定があつたものとし従つて昭和二十二年勅令第一号第六条第二項によりDは県知事候補たることを辞したものと看做されるに至つたとの解釈の下に道府県制第七十四条ノ十四、第一項にいわゆる「府県知事候補者タルコトヲ辞シタル為府県知事候補者一人ト為リタルトキ」に該当するものとして投票を行うことを取止め同条第二項同第七十四条ノ十一第二項の規定により他の一人の候補者たるEを宮崎県知事選挙の当選者と決定したことなお同月十七日以後に内閣総理大臣名義を以てD本人に対し同人を覚書該当者として指定する旨の該当事項の内容を記載した通知書面が送達されたことはすべて原判決の確定した事実関係である。しかして原判決は前に述べた四月十三日宮崎県知事を通じ選挙委員会に対し電信でなされた覚書該当の通知は該当者本人に対して為されたものでないから昭和二十二年閣令内務省令第一号第五条第一項の通知として同第四条第一項の「覚書該当者としての指定」たる効力を生じない。又同月十二、三日頃D本人に対し電信でなされた通知は内閣書記官長名義でなされたもので指定につき権限のある内閣総理大臣の名義でなされていない、かりに総理大臣の命を受けて書記官長がしたとしても、そのことが電文自体に明らかにされていないからこの通知もまた前記「覚書該当者としての指定」の効力を生じないという理由で選挙期日前右指定の効力を生じたことを前提としてEを当選者と決定した選 としても、そのことが電文自体に明らかにされていないからこの通知もまた前記「覚書該当者としての指定」の効力を生じないという理由で選挙期日前右指定の効力を生じたことを前提としてEを当選者と決定した選挙委員会の処分は違法であり無効であると判決したのであるが「同月十二、三日D本人に対してなされた通知は若し内閣総理大臣が中央公職適否審査委員会の審査の結果に基きDを覚書に該当するものと指定した事実があり内閣書- 11 -記官長が内閣総理大臣の補佐機関として、その命を受けて右指定の通知を本人にした事実が明確にせらるるならば、たとえその通知が内閣書記官長の名義を以てなされ、しかもその電文自体に内閣総理大臣の命によつてすることの記載がないからといつて必ずしもその通知を以て全然指定の効力を生じないとすることはできないのであつて原判決が右のような事実関係の取調べをしないで直ちにこれを無効と判断したのは明かに誤りであるといはねばならぬ。しかしながら右の通知を以て真に有効なりと判断するために右に挙げたやうな事実関係について取調べを要することであり、それがためには事件を更に原裁判所に差戻す必要がある。しかしながら選挙に関する訴訟にかくの如く時日を遷延することはもつとも避けなければならぬところであるから此点に関して原判決を破毀することはしばらくおいて前記各弁護人の上告理由に基いて、かりに本件選挙において前に述べたEを当選者と定めたことが選挙の規定に違反したものであつたとしてもその違反が地方自治法第六十七条にいう選挙の結果に異動を及ぼすおそれがある場合に該当するかどうかについて考察することとする。原判決は「この選挙規定の違反は選挙の結果に異動を生ずる虞がある場合であること言うを待たない」とし、更に「昭和二十二年四月十五日の選挙期日にDEの二人を候補者としていわゆ ついて考察することとする。原判決は「この選挙規定の違反は選挙の結果に異動を生ずる虞がある場合であること言うを待たない」とし、更に「昭和二十二年四月十五日の選挙期日にDEの二人を候補者としていわゆる決選投票が行われたとすれば、たとえその直後に右Dに対し覚書該当者としての指定たる効力を有する正式な通知が到達したとしても、其の結果必ずしもEが当選者となるものと限られてゐない」と説示している。若し四月十五日に決戦選挙を行つておれば必ずしもEが当選者にならなかつたことは、原判決説示の通りであつて、此の点に関する限り原審の判断に誤りはない。しかしながら地方自治法第六十七条にいう選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合に該当するかどうかは、原判決のように若し其の当時適法に選挙を行つたと仮定して、其の生じ得べき結果と現実に生じている結果とを対比して判断すべきではなく現に行はれた選挙を無効とし、あらためて選挙を行つた場合に、現実に生じて- 12 -いる結果と異る結果を生ずる可能性があるかどうかについて、検討すべきものである。何故かならば若し更に選挙を行つても結局現にあらはれている結果と同一の結果になることが必然であるならば、選挙を無効とし更に選挙を行うことは全く無意義であり、無用の手数をかけるに過ぎないからである。即ち地方自治法第六十七条によつて裁判所が選挙の無効を判決するには右のように選挙を更めて行つて其の結果がどうなるかを検討して見る必要が生ずるのである。そこで本件において決戦選挙を行はないでEを当選者と定めたことが違法であつて無効と判決すべきものと仮定し、更に選挙を行うものとして、其の結果はどうなるであろうか。四月五日の選挙と其の結果DとEの二人を決戦選挙の候補者と定めた迄の手続には、何等選挙の規定に違反する点はないのであつて、このことについては 、更に選挙を行うものとして、其の結果はどうなるであろうか。四月五日の選挙と其の結果DとEの二人を決戦選挙の候補者と定めた迄の手続には、何等選挙の規定に違反する点はないのであつて、このことについては当事者間にも争はないのである。然らば以上の手続に関しては選挙を無効とする理由は全然ないのである。 砂山被上告代理人は若しDの覚書該当指定の効力が四月十三日に発生したならばその前にDとEを決戦選挙の候補者と定めたことも無効に帰しEと第三位の鈴木憲太郎とを候補者と定めて決戦選挙を行うべきものとし、従つて決戦選挙を行はなかつたことは選挙の規定に違反し選挙の結果に異動を及ぼす虞があると答弁しているけれども、たとえ本件選挙が違法であつたとしてもEとDとを決戦選挙の候補者に定める迄の手続については何等違法の点はないのであつて、従つて右両名を候補者と定めたこと迄も無効になる理由はないのである。昭和二十二年勅令第一号第六条第二項によれば指定があつた時は其の者は当該候補者たることを辞したるものとみなされるのであつて即ち自ら候補者を辞退したときと法律上の効果は同一であつて、道府県制第七十四条ノ十四により投票を行わないのである。従つて鈴木を決戦選挙の候補者とすべき旨の右の主張は同被上告代理人の独自の意見であつて採るに足らない。又同被上告代理人は「かりに一歩を譲り(中略)D本人が公選による公職から追放せられて知事候補者たる資格を喪失した以上其の効果は其の時から将来に向- 13 -つてその資格を喪失するのみではなく、追放者は無資格者なのであるからそれは四月五日に遡及し告示当時にさかのぼりてすでに立候補しなかつたものとなるのでDの投票は無資格者に対してなされたものゆえ全然得票のなかつたものと均しい結果になるのであるから最多数の得票者はEであり次順位は鈴木憲太郎であるか 時にさかのぼりてすでに立候補しなかつたものとなるのでDの投票は無資格者に対してなされたものゆえ全然得票のなかつたものと均しい結果になるのであるから最多数の得票者はEであり次順位は鈴木憲太郎であるからこの両人を候補者として法定し決戦投票を行わせねばならないのである。」と主張しているが、覚書該当指定の効果は将来に向てのみ生じ既往に遡るものと解し得ないことは前記勅令の条項に照して明かであり従つて四月五日の選挙当時Dは未だ覚書該当者として指定されていなかつたのであるからDの得票は有効な得票であつて右選挙の最多数の得票者がDであり第二位がEであることは動かし難い事実である。従つて右被上告代理人の主張も全く理由がない。然らば結局本件選挙を更めて行うとすれば右両名を候補者とするより他に方法はないのであるが、Dはもはや覚書該当者として候補者となり得ないことは明白である。何となればかりにDに対する四月十二、三日の電文の指定通知に何らかの瑕疵があつたとしても四月十七日以後において内閣総理大臣名義を以て書面により覚書指定の事項内容を具備した指定通知がD本人に送達されたことは原判決の確定する事実であるからいづれにしてもそのころ同人に対する覚書該当の通知が正当になされたことは疑のないところであり、従つて前記勅令第六条第二項によりDは当該候補者たることを辞したものとみなされるからである。しからば地方自治法第六十五条第七項によつて投票を行わず同項の準用する同法第五十八条第五項によつて選挙長は選挙会を開いてEを当選人と定めなければならないという結果になるのであつて、これは現に生じている結果と何等異るところはないのである。以上説明したように結局本件選挙で決戦選挙を行わないでEを当選者と定めたことが、かりに選挙の規定に違反していたとしても、地方自治法第六十七条に所謂選 に生じている結果と何等異るところはないのである。以上説明したように結局本件選挙で決戦選挙を行わないでEを当選者と定めたことが、かりに選挙の規定に違反していたとしても、地方自治法第六十七条に所謂選挙の結果に異動を及ぼす虞ある場合に該当しないのであつて、本件選挙は無効と判決すべきものではないことはきわめて明瞭である。原審- 14 -が此の点に関する法の解釈を誤り被上告人の請求を認容したのは違法であつて上告論旨は理由があり原判決は破毀を免れないのである。而してこの関係においては事件は原審で確定した事実に基いて裁判をするに熟しているから他の論旨に対する判断を省略して民事訴訟法第四百八条第一号に従い当裁判所自ら本件につき裁判をなすべき場合であるが本件選挙の効力に関し被上告人は上告人の前身たる宮崎県会議員選挙管理委員会に対し四月十八日異議の申立をなし同委員会はこれに対し同月二十八日付を以て被上告人の異議は相立たずとの決定をしたことは記録の上で明かであつて被上告人は本訴において右選挙の無効宣言の判決を求むると共に同委員会のした右法定の取消をも併せて求むるものであるが、その請求のいづれも理由のないことは前段説明するところによつてまことに明瞭であるから被上告人の本件請求はすべてこれを棄却すべきものとし訴訟費用の負担について民事訴訟法第九十五条第八十九条を適用して主文の通り判決する。 この判決は裁判官全員の一致した意見である。 最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官霜山精一裁判官塚崎直義裁判官栗山茂裁判官小谷勝重裁判官藤 塚崎直義裁判官栗山茂裁判官小谷勝重裁判官藤田八郎- 15 -

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