平成17(ワ)24041等 損害賠償等請求事件(通称 スカイマーク団交拒否損害賠償)

裁判年月日・裁判所
平成19年3月16日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-36377.txt

判決文本文32,638 文字)

主文 甲事件被告スカイマーク株式会社は,甲事件原告スカイネットワークに対し,金55万円及びこれに対する平成17年4月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 甲事件原告スカイネットワークのその余の請求を棄却する。 乙事件原告スカイマーク株式会社の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,甲事件乙事件ともに,これを20分し,その1を甲事件原告・乙事件被告スカイネットワークの負担とし,その余を甲事件被告・乙事件原告スカイマーク株式会社の負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求(甲事件) 被告は,原告に対し,金300万円及びこれに対する平成17年4月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は,被告の負担とする。 第1項につき仮執行宣言(乙事件) 被告は,原告に対し,金2000万円及びこれに対する平成17年12月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,朝日新聞及び日本経済新聞の各朝刊(全国版)社会面の広告欄部分に別紙1広告内容記載の広告を記載の条件で1回掲載せよ。 訴訟費用は,被告の負担とする。 第1項につき仮執行宣言第2事案の概要いわゆる一般労働組合である原告組合が,航空会社である被告会社に対し,整備士の組合員が雇止めを通告されたこと等に関して団体交渉を申し入れたにもかかわらず,被告会社がこれに応じなかったことが原告組合の団結権,団体交渉権等を侵害する不法行為に当たるとして損害賠償を求めた事案(甲事件)。 被告会社が,原告組合が上記被告会社による雇止め及び団交拒否等を批判して被告会社本社前で行ったビラ配布等の宣伝行動等が,被告会社の名誉・信用等を毀損する不法行為に当たる 償を求めた事案(甲事件)。 被告会社が,原告組合が上記被告会社による雇止め及び団交拒否等を批判して被告会社本社前で行ったビラ配布等の宣伝行動等が,被告会社の名誉・信用等を毀損する不法行為に当たるとして損害賠償及び謝罪広告の掲載を求めた事案(乙事件)。 争いのない事実(1)甲事件原告・乙事件被告スカイネットワーク(航空一般労働組合)(以下「原告組合」という。)は,国内外航空会社およびその関連会社等で働く労働者を対象とする個人加盟の一般労働組合である。 (2)甲事件被告・乙事件原告スカイマーク株式会社(以下「被告会社」という。)は,定期航空運送事業等を行う株式会社である。 (3)訴外a(以下「a」という。)は,平成16年7月1日,被告会社との間で,契約期間を平成17年5月31日までとする有期雇用契約を結んだ(以下「本件雇用契約」という。)。aは,平成17年4月,被告会社から上記同年5月31日をもっての雇止めを予告されたことから(以下「本件雇止め」という。),原告組合に加入した。 (4)原告組合は,平成17年4月25日,被告会社に対して,「1採 用時の約束を守り,a組合員を正社員(期限の無い雇用契約)に切り替えること。2社員が納得して働けるよう,a組合員以外の職員についても採用時の約束を履行すること。3労働条件の一方的切り下げはしないこと。」を要求する(以下「本件要求」という。)とともに,本件要求を議題として団体交渉に応じることを申し入れた(以下「本件団交申入れ」という。)が,被告会社は,平成18年8月11日に至るまで,これに応じなかった(以下「本件団交拒否」という。)。 (5)原告組合は,被告会社の本件団交拒否が不当労働行為に当たるとして,平成17年5月20日,東京都労働委員会に対して不当労働行為救済申立てを行っ 応じなかった(以下「本件団交拒否」という。)。 (5)原告組合は,被告会社の本件団交拒否が不当労働行為に当たるとして,平成17年5月20日,東京都労働委員会に対して不当労働行為救済申立てを行った(以下「本件救済申立て」という。)。 (6)原告組合は,別紙2の1ないし5記載のとおり,平成17年5月13日から同年10月21日にかけて5回にわたり,被告会社本社前路上において,別紙2の番号1ないし25の内容が記載されたビラを配布するなどの街頭宣伝行動を行った(以下「本件宣伝行動」という。)。 争点Ⅰ「本件団交拒否等が,被告会社の原告組合に対する不法行為になるか。」(1)原告組合は,「ア本件団交申入れに係るaに対する本件雇止めの撤回もしくは正社員化の要求の事項(本件要求第1項)は,義務的団交事項である。被告会社の本件団交拒否には団体交渉を拒否できる正当な理由がない。したがって,本件団交拒否は,不当労働行為になる。 加えて,被告会社は,原告組合による平成17年9月21日付け及び 同年10月5日付け団体交渉申入れも拒否した(本件団交拒否とあわせて以下「本件団交拒否等」という。)。イこのような被告会社の態度は,およそ労働組合からの団体交渉には応じないとの法を無視した姿勢である。被告会社は,団体交渉に応じる義務があること及びかかる義務に違反していることを認識しながら本件団交拒否等に及んだものであって,これは組合否認的な団交拒否であるから,およそ正当な理由となる余地のない団交拒否である。これにより原告組合の団結権,団体交渉権を侵害したのであるから,不法行為の成立要件である権利侵害が認められる。ウ被告会社は,正当な理由がないことを認識していたにもかかわらず,本件団交拒否等を継続したのであるから,被告会社には権利侵害について故意が認め から,不法行為の成立要件である権利侵害が認められる。ウ被告会社は,正当な理由がないことを認識していたにもかかわらず,本件団交拒否等を継続したのであるから,被告会社には権利侵害について故意が認められる(どんなに控えめにみても容易に認識し得たのであるから,少なくとも過失が認められる。)。エ労働組合においては団体交渉権は重要な権利であるところ,とりわけ原告組合のような個人加盟の一般労組では,組合活動において団体交渉を高く位置づけて活動している。にもかかわらず,本件団交拒否等により,その団体交渉権が侵害され,被告会社の従業員に対し,原告組合が団体交渉を申し入れても交渉すらもたれることがないとの認識を与えることとなった結果,原告組合の労働組合としての社会的評価や信用を著しく毀損された。かかる信用の毀損は,原告組合の労働組合としての活動に重大な支障をもたらす。これによる信用等の毀損による無形の損害は,金銭的に評価して200万円を下らない。加えて被告会社の本件団交拒否等の態度の是正を促すため,原告組合では本件宣伝行動を実施すると共に,東京都労働委員会に対し て本件救済申立てを行ったところ,これらの活動に伴う役員人件費相当額及び行動経費等として原告組合には50万円を下らない損害が生じている。さらに原告組合は,本件救済申立て及び本件訴訟の提起に際して弁護士に依頼することを余儀なくされたのであって,そのための弁護士費用は被告会社の不法行為と相当因果関係のある損害である。 その金額は50万円を下回ることはない。オよって,原告組合は,被告会社に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,上記損害額の合計300万円及びこれに対する不法行為以後の日である平成17年4月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。」と 法行為による損害賠償請求権に基づき,上記損害額の合計300万円及びこれに対する不法行為以後の日である平成17年4月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。」と主張する。 (2)被告会社は,「ア本件団交申入れに対してはその要求議題が不適切であるとして拒否した。本件団交申入れが原告組合とaの連名の申し入れであるところ(甲6),被告会社は,二重の主体からの申入れに応じなければならないいわれはない,個人からの団交申入れに対して応じなければならないいわれもない。本件要求が一つの一体となった要求書であり,本件団交申入れがその全部を議題とせよというものである以上,非組合員の労働条件に関する事項を含む本件団交申入れに応じる義務が使用者にないことは明らかである。本件要求中,組合員に関する事項は第1項,すなわちaについて採用時の約束を守り正社員にせよ,という議題だけであるところ,その前提である採用時における正社員にするというaと被告会社との合意が存在しないことが契約書(乙3)上も明らかである以上,団体交渉事項足り得ない。本件要求中第3項について,『労働条件の一方的切り下げはしないこ と』としているが,仮にこれを組合員の労働条件についての要求に限定したとしても,当時の組合員(として被告会社に通知があった者)はaだけであるところ,aのどのような労働条件をどのように切り下げたことが問題なのかが一切不明なのであるから,被告会社としては協議しようもない。以上は労働組合法7条2号にいう「正当な理由」に当たるから,本件団交拒否が不当労働行為ではない。また,平成17年10月5日付け団交申入れに対しては,開催条件としての被告会社の要望を行ったまでであって,団交拒否ではない。労使双方が団体交渉に関して希望する条件を提出できる 不当労働行為ではない。また,平成17年10月5日付け団交申入れに対しては,開催条件としての被告会社の要望を行ったまでであって,団交拒否ではない。労使双方が団体交渉に関して希望する条件を提出できることは当然である。イ不法行為と不当労働行為の概念が異なることはいうまでもなく,不当労働行為救済制度は,救済命令の履行により原状回復をさせることを目的とする制度であり,不法行為制度は,原状回復をしない,あるいは原状回復ができないことを前提に金銭賠償を行う制度である。両者は両立しないものというべきであり,仮にそのように解することができないとしても,両者はその趣旨目的及び成立要件を異にしているから,不当労働行為に該当したとしても不法行為になるものでないことは判例上明らかである。ウ仮に団交拒否が存在し,これが不当労働行為に当たると判断されたとしても,救済申立てが認容されて,その履行としての団体交渉が実現すれば,もはや団体交渉権の侵害は存在しないというべきである。本件においても平成18年8月11日に本件団交申入れにかかる団体交渉の機会が持たれたのであるから,不当労働行為がなかった状態(原状)に戻ったのであり,さらに金銭賠償を加える必要はない。エしたがって,損害論においても救済命令が履行 され団体交渉が実現すれば,原状が回復すると共に労働組合の社会的評価なるものも回復されたことになるから,救済命令が履行された本件においてそのような損害が生じる余地がない。また,原告組合が従来いかなる社会的評価や信用を得ていたのか不明であるから,それが著しく毀損されたか否かも不明というほかない。また,労働組合としての活動にいかなる支障が生じたのかも不明である。団体交渉が実現すれば原状が回復されたことになるから原告組合指摘のような無形損害が生じる余地はない。原 か否かも不明というほかない。また,労働組合としての活動にいかなる支障が生じたのかも不明である。団体交渉が実現すれば原状が回復されたことになるから原告組合指摘のような無形損害が生じる余地はない。原告組合が主張する役員人件費相当額及び行動経費等が相当因果関係がある損害となることはない。そもそも労働組合活動はその執行部の指示の下,組合の意思と選択に基づき行われるものであり,その役員人件費相当額及び行動経費等を被告会社が負担するいわれはない。弁護士費用も,弁護士強制主義及び弁護士費用敗訴者負担主義がとられていない以上,同様に解するべきである。オよって,原告組合の損害賠償請求には理由がない。」と主張する。 争点Ⅱ「本件宣伝行動が,原告組合の被告会社に対する不法行為になるか。」争点Ⅲ「別紙2の6記載のビラ貼付(本件貼付行為)を行ったのは原告組合か。それが原告組合の被告会社に対する不法行為になるか。」(1)被告会社は,「ア原告組合は,本件宣伝行動において,被告会社の本社前路上において,「スカイマークエアラインズは安全軽視の整備士使い捨てをやめよ!!」の横断幕を道路脇の植え込みに貼付し,不特定多数がみられるようにした上,別紙2の1ないし5記載のとおり,原告組合作成のビラを不特定多数の通行者及び被告会社従業員に 配布し,また口頭で同様の趣旨を述べるなどして被告会社を誹謗中傷した。イ原告組合は,組合員らをして,別紙2の6記載のとおり,平成17年11月5日夜間から翌日早朝にかけて,被告会社施設内に無断で侵入し,その旅客課会議室の壁に,ビラ(平成17年10月21日付け分会ニュース)1枚を,原告組合作成の同趣旨のビラ(10月12日付け,10月29日付け各1枚)と共に貼付した(以下「本件貼付行為」という。)。貼付した者の特定は困難であるが,原 7年10月21日付け分会ニュース)1枚を,原告組合作成の同趣旨のビラ(10月12日付け,10月29日付け各1枚)と共に貼付した(以下「本件貼付行為」という。)。貼付した者の特定は困難であるが,原告組合のビラであるし,組合員以外がこのようなことをすることはあり得ない。ウ原告組合による本件宣伝行動及び本件貼付行為は,とりわけ被告会社の運航の安全に不安があるという点において,被告会社従業員や利用者(今後利用しようとする者を含む。)に対して,被告会社への不安感,不信感を醸成させ,被告会社の社会的信用を低下させてその信用を毀損する違法な行為である。これらが組合活動として行われたとしても,組合員の労働条件の維持改善とは全く関係がなく,被告会社の名誉信用を毀損する目的で行われたものであり,その内容も被告会社に対する誹謗中傷に過ぎず事実に反するものであるから,違法な組合活動である。これらの違法行為は被告会社の信用を失墜させるために行われたものであるから,原告組合の故意(少なくとも過失)によるもので,不法行為に該当する。エこれによって被告会社が被った無形損害は,2000万円を下らない。また,この信用毀損は,航空会社である被告会社にとってきわめて深刻かつ重大なものであるから,金銭賠償による慰謝だけでは足りず,原状回復たる謝罪広告の掲載が必要である。オよって,被告会社は,原告組合に対し, 不法行為による損害賠償請求権に基づき,上記損害額2000万円及びこれに対する不法行為以後の日で乙事件訴状送達の翌日である平成17年12月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払並びに民法723条の原状回復請求権に基づき,別紙1記載の謝罪広告の掲載を求める。」と主張する。 (2)原告組合は,「ア原告組合は,本件宣伝行動において, 所定の年5分の割合による遅延損害金の支払並びに民法723条の原状回復請求権に基づき,別紙1記載の謝罪広告の掲載を求める。」と主張する。 (2)原告組合は,「ア原告組合は,本件宣伝行動において,原告組合の要求実現,被告会社の労務政策批判等の宣伝行動を行ったものであり,被告会社を誹謗中傷するようなビラの記述や発言はしていない。 原告組合が配布したビラの記述や発言は,具体的事実関係に基づき,被告会社の労務政策を批判する等したものであって,誹謗中傷に該当するような表現はない。本件宣伝行動は,正当な表現行動であり,労働組合が団結権の行使として行った正当な労働組合活動である。イまた,本件宣伝行動によって被告会社の乗客数や売り上げが減少した等被告会社に具体的な損害が生じた事実は被告会社の主張からも一切窺えない。ウ本件貼付行為は否認する。原告組合が組合員をして被告会社施設に無断で侵入し旅客課会議室にビラを貼付した事実はない。」と主張する。 第3争点に対する判断 証拠(文中又は文末において掲記したもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる(なお,当事者間に争いのない事実は,文中又は文末に証拠等を掲記しない。)。 (1)原告組合原告組合は,国内外航空会社およびその関連会社等で働く労働者を 対象として平成15年4月に設立された個人加盟のいわゆる一般労働組合であり,規約上支部,分会を必要な所に置くとされているところ,平成17年当時には7分会が置かれていた。訴外b(以下「b」という。)は,原告組合の中央執行委員である。(甲65,証人bの供述)(2)被告会社被告会社は,平成8年11月12日に設立された定期航空運送事業等を行う株式会社であり,肩書地所在のαビルの12階と13階に本社を置いており,訴外cは,平成16年1月28日か 述)(2)被告会社被告会社は,平成8年11月12日に設立された定期航空運送事業等を行う株式会社であり,肩書地所在のαビルの12階と13階に本社を置いており,訴外cは,平成16年1月28日からその代表取締役社長である(以下「c社長」という。)。被告会社では,ボーイング社製767型機を平成15年までに5機備えているが(なお,平成17年3月11日に6号機が就航した。甲17),新たにボーイング社製737-800型機を導入する計画がある(甲1,甲2)。平成17年当時,東京国際空港(羽田空港)を拠点に,羽田=福岡(9往復),羽田=鹿児島(4往復),羽田=徳島(4往復)の運航に加え,同年3月11日から新たに羽田=関西線を就航(4往復)し,合計4路線21往復42便/日を運航しており,平成18年2月からは羽田=神戸,同年4月からは羽田=札幌の各路線を就航する予定になっていた(なお,後記のとおり,上記鹿児島線,徳島線及び関西線は,その後廃止された。甲40)。被告会社の平成17年5月1日当時の従業員数は831名であるところ,いわゆる企業内組合は存在しない。 なお,被告会社は,平成18年10月1日にその商号を「スカイマークエアラインズ株式会社」から「スカイマーク株式会社」に変更した。 (甲1,甲2,乙28,乙29の1,2,証人dの供述)。 (3)被告会社における整備士の人員不足ア航空整備士とは,整備を実施した飛行機が航空法に定める耐空性の基準に合致することについて法確認行為が行える国家資格である。 このうち一等航空整備士は,主に航空会社所有の旅客機等を対象とするものであり,飛行機の機種ごとに認定される。また,確認整備士とは,航空会社の社内資格であり,航空会社が一等航空整備士の資格を有する者の中から社内審査に合格したものを任命し,主に機体整 を対象とするものであり,飛行機の機種ごとに認定される。また,確認整備士とは,航空会社の社内資格であり,航空会社が一等航空整備士の資格を有する者の中から社内審査に合格したものを任命し,主に機体整備作業の最終確認を行わせる(甲39)。 イ被告会社では,整備士の給与体系の統一を図り,平成17年3月23日ころ,数回に分けて,一等航空整備士標準基礎給変更説明会を開催した(甲18,証人dの供述)。しかし,給与体系の改訂は現場の技術者の反発を招いたことが窺え,被告会社ではその後の1年間で10数人の整備士が退職した(甲25,甲28,甲38の1,2)。その結果,平成18年3月現在の被告会社の整備士数は43人で,国土交通省が必要としている水準をわずかに上回る程度だった(甲28)。 ウ国土交通省は,被告会社を立ち入り検査した際,羽田空港の発着便で確認整備士が足りず,隣り合って駐機した2機の機体を,確認整備士が一人で点検したケースが少なくとも9回確認されたとし,「このままでは安全管理が不十分になる。整備士の配置や管理を徹底する必要がある。」として,平成17年6月,被告会社に対し,文書で厳重注意した。被告会社は,「整備士が予想以上に退職し, 補充が追いつかなかった。」などと原因を説明し,再発防止策を提出した。(甲18,甲23の1,2,甲26,甲30,甲37)(4)aの採用アaは,一等航空整備士の資格を有する者であるところ,平成16年7月1日,被告会社との間で,契約期間を平成17年5月31日までとする本件雇用契約を結んで被告会社に入社し(乙3),同年9月6日に確認整備士の発令を受けた。 イaは,ボーイング767型機について認定を受けた一等航空整備士であるが,航空会社においては,本来1機に対応して確認整備士一人が配置されるべきところ,被告会 9月6日に確認整備士の発令を受けた。 イaは,ボーイング767型機について認定を受けた一等航空整備士であるが,航空会社においては,本来1機に対応して確認整備士一人が配置されるべきところ,被告会社では整備士の数の不足からaに限らず複数の機を受け持たされていた(甲17,甲20)。 (5)aに対する本件雇止めの通告aは,入社時に,確認整備士の発令後速やかに正社員にする旨の約束があったとして,平成17年3月下旬ころから,その趣旨の要請書を同僚等に配布の上署名を呼びかけるようになった。aは,平成17年4月中旬ころ,被告会社から本件雇止めを予告されたことから,同月21日,原告組合に加入した。同月22日,被告会社は,aに対し,本件雇用契約上の契約期間満了日の平成17年5月31日をもっての雇止めを正式に通告した。(甲17,甲18,証人dの供述)(6)本件団交申入れ原告組合は,平成17年4月25日付け要求書(甲7)により,被告会社に対して,aが原告組合に加入したことを通知すると共に,「1採用時の約束を守り,a組合員を正社員(期限の無い雇用契 約)に切り替えること。2社員が納得して働けるよう,a組合員以外の職員についても採用時の約束を履行すること。3労働条件の一方的切り下げはしないこと。」との本件要求を行い,同日付け団体交渉申入書(甲6)をもって,本件要求を議題として団体交渉に応じるよう本件団交申入れを行った。原告組合のbは,同日,交渉の日程調整のため,被告会社に電話したところ,総務人事本部の人事労務グループ所属の訴外d(以下「d」という。)は,「aの契約書は確認したが,この件で組合と交渉する必要はない。」と回答した。以来被告会社は,平成18年8月11日に至るまで,本件団交申入れに応じず,1年4か月にわたって本件団交拒否が継続し 。)は,「aの契約書は確認したが,この件で組合と交渉する必要はない。」と回答した。以来被告会社は,平成18年8月11日に至るまで,本件団交申入れに応じず,1年4か月にわたって本件団交拒否が継続した(甲15)。 (7)本件第1回宣伝行動原告組合は,平成17年4月27日付け「SKY組合ニュース」(甲5の1)を発行して被告会社による本件団交拒否の態度を批判し,別紙2の1記載のとおり,平成17年5月13日午前8時30分から9時25分にかけて,被告会社本社前路上において,別紙2の番号1ないし7の内容が記載されたビラ(乙6の1,2)を配布するなどの街頭宣伝行動を行った(以下「本件第1回宣伝行動」という。)。上記ビラには,別紙2の「街宣・ビラ記事内容」欄記載のとおり,「安全軽視のスカイマークエアラインズ」(番号1),「安全を支える整備士も使い捨て」(番号2)「こんなことをやっていて,安全を守れるのか大いに疑問です。」(番号4),「スカイマークは安全軽視の整備士使い捨てをやめよ」(番号5),「利益優先の経営方針が安全をおびやす。」(番号6),「今回スカイマークがやっていることも, 経験豊富な整備士を利益優先で切り捨てるものであり,安全軽視の経営方針そのものです。」(番号7)との各記載があった(甲5の3,乙6の1,2)。 (8)被告会社は,平成17年5月17日,平成17年3月期決算短信を発表した(甲2,乙29の1,2)。これを受けて平成17年5月18日付け日本経済新聞(甲21)は,被告会社の経常損益が2億5800万円の黒字となったことを報じ,整備費用の削減が進んだことを理由に挙げた。 (9)本件第2回宣伝行動原告組合は,別紙2の2記載のとおり,平成17年5月23日午前8時30分から9時25分にかけて,被告会社本社前路上において,別紙 費用の削減が進んだことを理由に挙げた。 (9)本件第2回宣伝行動原告組合は,別紙2の2記載のとおり,平成17年5月23日午前8時30分から9時25分にかけて,被告会社本社前路上において,別紙2の番号8ないし12の内容が記載されたビラ(乙7の1,2)を配布するなどの街頭宣伝行動を行った(以下「本件第2回宣伝行動」という。)。上記ビラには,別紙2の「街宣・ビラ記事内容」欄記載のとおり,「スカイマークの黒字決算は砂上の楼閣?今のままでは安全を支える整備が弱体化」(番号8),「スカイマークエアラインズが発表した決算は,5億5800万円の黒字でしたが,その要因のひとつに整備費の削減が上げられていました。」(番号9),「ところがスカイマークがやっていることは,コスト削減優先で整備を軽視している」(番号10,ただし,原文は,「軽視しているとしか思えません。」と続いている。),「スカイマークの整備の実態をみれば,今のやり方で安全を守れるのか大いに疑問です。」(番号11),「整備コストを削り,整備体制を弱体化させて黒字決算を実現しても, それは『砂上の楼閣』です。」(番号12)との各記載があった(甲5の2,乙7の1,2)。 (10)本件救済申立て原告組合は,団体交渉促進に関するあっせん申請も不調に終わったため,被告会社の本件団交拒否が不当労働行為に当たるとして,平成17年5月20日,東京都労働委員会に対して本件救済申立て(平成17年不第49号)を行った。東京都労働委員会は,調査手続の上,平成17年9月27日,b及びdを証人として出席させた上,第1回審問を行った。この席でdは,「被告会社が団交に応じるかは要求書の内容に基づいて判断する。本件要求では正社員にするという合意も確約も存在していないのであるから,団交に応じる義務はない。これが 1回審問を行った。この席でdは,「被告会社が団交に応じるかは要求書の内容に基づいて判断する。本件要求では正社員にするという合意も確約も存在していないのであるから,団交に応じる義務はない。これが仮に賃金に関する要求であったとしても,団交に応じるかどうかは内容によりけりである。」と答えた(甲15)。 (11)本件仮処分申立てaは,平成7年5月27日,東京地方裁判所に対して,被告会社を債務者とし,労働契約上の地位確認と賃金相当額の仮払いを求めて仮処分申立て(平成17年(ヨ)第21098号)をした(以下「本件仮処分申立て」という。)。 (12)本件雇止め被告会社は,かねて通告したとおり,契約期間満了日の平成17年5月31日をもってaを雇止めにした。この間被告会社は,原告組合に対し,本件要求中第1項の「採用時の約束を守り,a組合員を正社員(期限の無い雇用契約)に切り替えること」に対して何ら回答しな かったばかりでなく(弁論の全趣旨),a個人との間での話し合いの機会も持たなかった(証人dの供述)。 (13)本件第3回宣伝行動原告組合は,別紙2の3記載のとおり,平成17年8月3日午前8時30分から9時にかけて,被告会社本社前路上において,別紙2の番号13ないし15の内容が記載されたビラ(乙8の1,2)を配布するなどの街頭宣伝行動を行った(以下「本件第3回宣伝行動」という。)。上記ビラには,別紙2の「街宣・ビラ記事内容」欄記載のとおり,「この経営体質で安全は守れるのか」(番号14),「安全軽視で,こんな身勝手な会社姿勢では,安全運航が守れるのか大いに疑問です。」(番号15)との各記載があった(乙8の1,2)。 (14)被告会社は,原告組合に対し,本件雇止めから3か月を経た平成17年9月1日になって,同日付け回答書(甲10)を送付し のか大いに疑問です。」(番号15)との各記載があった(乙8の1,2)。 (14)被告会社は,原告組合に対し,本件雇止めから3か月を経た平成17年9月1日になって,同日付け回答書(甲10)を送付したが,その回答内容は,本件要求第1項については「a氏は正社員として採用しておりません。また,正社員にする旨の約束や合意もありません。 従って,正社員に切り替えることはできません。」,同第2項については「非組合員の問題について貴組合から要求されるいわれはありません。」,同第3項については「一般論について貴組合に回答する予定はありません。」というものであった。 (15)本件第4回宣伝行動原告組合は,別紙2の4記載のとおり,平成17年9月12日午前8時30分から9時25分にかけて,被告会社本社前路上において,宣伝カーを停車させ(乙14の1),別紙2の番号16ないし19の 内容が記載されたビラ(乙9の1,2)を配布するなどの街頭宣伝行動を行った(以下「本件第4回宣伝行動」という。)。上記ビラには,別紙2の「街宣・ビラ記事内容」欄記載のとおり,「背景に利益優先・安全軽視の経営姿勢」(番号16),「利益を上げる事を優先し,現場軽視・法律無視・安全軽視の経営姿勢が背景にあることは明らかです。」(番号17),「これで安全運航を維持できるでしょうか。」(番号19)との各記載があった。(乙9の1,2,乙14の1,証人dの供述,証人bの供述)(16)原告組合における分会結成原告組合は,被告会社に対し,平成17年9月21日付け「分会結成の通知と団体交渉の申し入れ」と題する文書(甲8)により,aのほか,被告会社福岡空港支店の整備課に勤務する整備士(正社員)である訴外e(以下「e」という。)及び被告会社整備本部のラインメンテナンス課に所属する正社員である れ」と題する文書(甲8)により,aのほか,被告会社福岡空港支店の整備課に勤務する整備士(正社員)である訴外e(以下「e」という。)及び被告会社整備本部のラインメンテナンス課に所属する正社員である訴外f(以下「f」という。)が組合員であることを明らかにし,aを分会委員長としてスカイマークエアラインズ分会を結成していることを通知した(甲8,証人dの供述,証人bの供述)。 (17)平成17年9月21日付け団交申入れ同時に原告組合は,上記団体交渉の議題として,「1.人員増について,2.残業の計算,3.交通費について,4.転勤について,5. 出張時の日当の支払,6.e組合員の転勤に伴う家賃補助の支払,7. 原告組合に対する便宜供与」を内容とする同日付け要求書(甲9)を提出したが,被告会社は,その文中の本件要求を示す「2005年4 月25日付け要求書に加え」という部分にこだわり,同年9月30日付け回答書(甲11)によって「本件要求に基づく団体交渉義務があるかどうかは現在東京都労働委員会で係争中であり,当社はその最終確定結果をもって対応しますので,上記9月21日付け団体交渉申入れについても同様とします。」として,団体交渉に応じなかった。ただし,上記要求書に対する回答は同年10月1日付け回答書(乙22)をもって行ったが,上記要求に応じるものではなかった。 (18)平成17年10月5日付け団交申入れそこで原告組合が「本件要求に加え」という要求を削除した内容について,再度平成17年10月5日付けで団体交渉申入れをした(甲12)が,被告会社は,同月14日付け回答書(甲13)で,本件要求に対する団体交渉義務の有無は労働委員会における最終確定結果をもって対応する予定である旨繰り返した後,「a分会委員長の当社の従業員としての地位の確定も不明確でありま 付け回答書(甲13)で,本件要求に対する団体交渉義務の有無は労働委員会における最終確定結果をもって対応する予定である旨繰り返した後,「a分会委員長の当社の従業員としての地位の確定も不明確でありますので,a分会委員長の裁判等の結果を待って貴組合と団交を行いたいと考えております。」と回答して,団体交渉に応じなかった。原告組合は,「団体交渉の日程調整について」と題する文書(甲14)を送付して,被告会社の対応を不誠実として抗議した。 (19)本件第5回宣伝行動原告組合は,別紙2の5記載のとおり,平成17年10月21日午前8時30分から9時25分にかけて,被告会社本社前路上において,別紙2の番号20ないし25の内容が記載されたビラ(乙10の1,2)を配布するなどの街頭宣伝行動を行った(以下「本件第5回宣伝 行動」という。)。上記ビラには,同月12日被告会社が鹿児島線,徳島線等からの撤退を表明したこと(甲40,甲41,甲42)に対して,これを公共性の軽視と批判した上,別紙2の「街宣・ビラ記事内容」欄記載のとおり,「安全も公共性も軽視するスカイマークエアラインズ」(番号21),「整備現場で最も重い責任とプライドを持って働くべき人間が,ごろごろと辞めていく,これで安全運航を維持して行けるのでしょうか。」(番号22)との各記載があった。(乙10の1,2,証人dの供述,証人bの供述)(20)分会ニュース第2号の発行原告組合スカイマークエアラインズ分会は,平成17年10月21日付けで「SKY分会ニュース」第2号(乙11の1,2)を発行したところ,その文中には別紙2の番号26ないし29の内容が記載されていた。 (21)救済命令本件救済申立てに対し,東京都労働委員会は,平成17年11月1日付け命令書(甲16)において,被告会社が,原告組合 その文中には別紙2の番号26ないし29の内容が記載されていた。 (21)救済命令本件救済申立てに対し,東京都労働委員会は,平成17年11月1日付け命令書(甲16)において,被告会社が,原告組合からの本件団交申入れに対し,aを正社員として採用しておらず,正社員にするとした約束や合意もないから正社員に切り替えることはできないこと,及び一般論は組合に回答する予定はないことを繰り返し回答するのみで団体交渉に応じなかったことは,労働組合法7条2号に該当する不当労働行為である旨認定した上,「被告会社は,原告組合が平成17年4月25日付けで申し入れた団体交渉について,非組合員に関する事項を除いて,誠実に応じなければならない。」とし,併せてポスト ノーティスを命じた。これに対して被告会社は再審査申立てをした。 (22)本件仮処分申立てに対する却下決定本件仮処分申立てに対し,東京地方裁判所は,本件雇用契約は契約期間が満了したことにより終了したとして,非保全権利の疎明がないことを理由として同申立てを却下する決定をした(乙5)。これに対してaは,即時抗告をせず,かつ。本訴提起も行わなかった(弁論の全趣旨)。 (23)本件貼付行為平成17年11月5日朝,東京国際空港(羽田空港)にある被告会社旅客課会議室の壁(乙15の1,3,4)に,前記分会ニュース第2号(乙11の1,2)が他のビラ2枚と共に貼付されているのを,出勤した被告会社の客室乗務員が発見して届け出たので,管理部門において剥がした。なお,その際にその状況の写真撮影や状況報告書の作成が行われたか否かは不明であるが,dの記憶にはない(証人dの供述)。 (24)被告会社による団体交渉申入れア被告会社は,平成17年11月16日付け「回答並びに団体交渉申入書」と題する書面(乙1)により,原 否かは不明であるが,dの記憶にはない(証人dの供述)。 (24)被告会社による団体交渉申入れア被告会社は,平成17年11月16日付け「回答並びに団体交渉申入書」と題する書面(乙1)により,原告会社に対し,先の同年10月5日付け団交申入れに対する回答として,「議題は貴組合員で当社従業員である者の労働条件及び貴組合の便宜供与要求に限定します。」,出席者として「組合側は貴組合員で当社従業員である者に限る。」とした上で,団体交渉を行いたいので,この開催要領で原告組合が受諾するか否かを文書により回答するよう求めた。こ れは,本件要求は議題からはずれていることを前提としていると解される。 イこれに対して原告組合は,同月22日付け「貴職発11月16日付け文書に対する回答と団体交渉の申し入れ」と題する書面(乙23)によって,出席者を被告会社従業員に限るとする条件を拒否すると共に,あらためて団体交渉を申し入れた。 ウこれに対して被告会社は,同月25日付け回答書(乙2)により,被告会社側の団体交渉開催要領は変わらないことを回答した。 (25)本件訴訟の提起原告組合は,平成17年11月17日,本件訴訟(甲事件)を提起し,被告会社は,同年12月12日,本件訴訟(乙事件)を提起した。 (26)c社長のメッセージ被告会社は,平成17年11月25日付けで総務人事本部長名で「東京都労働委員会(都労委)の命令書について(連絡)」と題する書面(甲57の2)を各本部長,各室長,各支店長宛てイントラネットによって通知すると共に,「社員の皆様へ」として「c社長メッセージ」を掲載しているが(甲57の1),その中で本件宣伝行動や本件救済命令申立て,本件仮処分申立てによって被告会社が被った損失について触れ,「この損失は結果として社員全員で負担することになりま セージ」を掲載しているが(甲57の1),その中で本件宣伝行動や本件救済命令申立て,本件仮処分申立てによって被告会社が被った損失について触れ,「この損失は結果として社員全員で負担することになります。」,「全てのコストは皆さんの報酬に影響します。」,「直接話し合う勇気のなさが社員全員に幾ばくかの負担をかけてしまうことは誰しも本意ではないと思います。」「組合があろうとなかろうと社員は1つのものとして扱われます。社員全員の承認がなくとも誰か が起こした行動の結果は,良くも悪くも全員で負担することは当然の帰結です。」と述べ,「日本のローコストキャリアを標榜しコストダウンを図るスカイマークには,スカイマーク流の労使関係があってもいいのではないかと,私は考えています。」と結ばれている。この「スカイマーク流の労使関係」について,dは,「はっきりとノーと言うこと」「団体交渉の要求にもはっきりとノーと言うこと」と理解している(証人dの供述)。 (27)被告会社における整備管理に関して不適切な事例の発覚ア被告会社が運航するボーイング767型1機(JA767E)において外板に凹み(約6㎝×1.5㎝,深さ1㎜)が発生し,後日の修理を前提とした暫定的な応急措置が施されていたところ,被告会社は,その修理期限である平成17年6月を経過しても修理を行わないまま徳島線等の運航の用に供していた。修理期限から約9か月を経過した平成18年3月9日に被告会社の技術担当者(整備士)が気がついたものである。国土交通省航空局は,被告会社の整備管理に不備があったとして同年3月14日付けで文書による厳重注意を発出すると共に,同月17日から航空法に基づく抜き打ちの立ち入り検査に入った(甲24,甲25,甲26,甲27,甲28,甲29,甲37)。 イ上記767型機は,修理の 4日付けで文書による厳重注意を発出すると共に,同月17日から航空法に基づく抜き打ちの立ち入り検査に入った(甲24,甲25,甲26,甲27,甲28,甲29,甲37)。 イ上記767型機は,修理の上,平成18年3月14日から再び運航の用に供されたが,同月16日午後7時半ころ,羽田から徳島に向かう途中(被告会社807便),落雷に遭った。徳島空港での点検で,機体先端部に落雷の跡が見つかったものの,被告会社では上 記767型機をそのまま運航させた。しかし,羽田空港に戻ってからの調査によると,同損傷は修理が必要なレベルだったことが判明した(甲31,甲32,甲33の1)。 ウ被告会社の767型5機(上記ア,イの767型機を含む。)について,飲料水用のパイプに巻いてある凍結を防ぐための電熱線が発熱しすぎて火災となったケースが海外であったことからメーカーが点検を指示していたところ,被告会社は点検期間が経過した平成17年3月から同年7月まで,4か月にわたって点検をしないまま,運航の用に供していたことが,平成18年3月28日判明した(甲33の2,甲35,甲36)。 エ国土交通省は,ベテランの整備士などが相次いでやめ,整備の体制に余裕がなくなっていることが一連の不手際の背景にあるのではないかと見ており,上記立ち入り検査では,経営陣や本社の管理部門がこうした現場の実情をどう認識しているかについても調査することにしている(甲33の1,2)。 (28)平成18年5月11日付け団交申入れ原告組合は,平成18年5月11日付けであらためて団体交渉を申し入れたところ(乙20),被告会社は,同月16日付け「回答並びに団体交渉申入書」と題する文書(乙21)で,出席者を「組合側は貴組合員で当社従業員である者及びそれ以外の者1名とする。」として譲歩の意思がある ころ(乙20),被告会社は,同月16日付け「回答並びに団体交渉申入書」と題する文書(乙21)で,出席者を「組合側は貴組合員で当社従業員である者及びそれ以外の者1名とする。」として譲歩の意思があることを示した。原告組合は,同月19日付け「5月16日付け『回答並びに団体交渉申入書』に対する回答」と題する文書(乙24)で,議題の限定中「貴組合員で」ある部分を削除する こと,出席者として「それ以外の者1名」とあるのを複数名の参加が必要であることを求めた。被告会社は,同月24日付け回答書(乙25)でこれを拒絶し,団体交渉は行われなかった。 (29)中央労働委員会の再審査申立て棄却命令中央労働委員会は,前記被告会社の再審査申立て(平成17年(不再78号)について,平成18年6月7日,被告会社の再審査申立てを棄却する旨判断した(甲50)。 (30)スカイマークエアラインズ分会の事実上の消滅被告会社の本件団交拒否によって,原告組合は,本件要求について団体交渉の機会を得られないまま推移するうち,fは平成18年6月19日付けで,eは同月21日付けでそれぞれ原告組合を脱退することとなり(証人bの供述),aも平成17年5月31日の本件雇止めを不服として提起した本件仮処分申立てが却下されるに及んで,本訴提起を断念すると共に,被告会社への復職の希望を失ってしまっていた(証人bの供述)のであって,他の支持者が離れたことと相まって結局のところスカイマークエアラインズ分会は事実上消滅状態となった。 (31)団体交渉の実施ア被告会社は,上記中央労働委員会の命令に従い,東京都労働委員会の救済命令を実施することとし,平成18年7月31日付け団体交渉申入書(乙17)により,本件要求中第1項及び第3項を議題として本件団交申し入れに応じる旨回答すると共に,ポス に従い,東京都労働委員会の救済命令を実施することとし,平成18年7月31日付け団体交渉申入書(乙17)により,本件要求中第1項及び第3項を議題として本件団交申し入れに応じる旨回答すると共に,ポストノーティスにかかる文書(乙18)を同日付けで原告組合に交付した。 イこれにより平成18年8月11日午前11時から11時30分にかけて,原告組合と被告会社間で団体交渉が実施された。その結果,両者とも上記議題については協議を終了する旨確認し,団体交渉を終えた(乙19)。 (32)被告会社の減益傾向被告会社は,平成18年秋の中間決算では,芳しい業績ではなく,前記平成17年3月期の決算短信時から一転して赤字となっており,その原因としては,平成18年3月ころにおける前記被告会社の整備管理に関する不適切な事例の発覚に関する一連の報道等が影響して,客に不安がられたこともあると見られている(証人dの供述)。 争点Ⅰ「本件団交拒否等が,被告会社の原告組合に対する不法行為になるか。」について(1)ア本件救済申立てに対し,東京都労働委員会は,平成17年11月1日付け命令書において,被告会社が,原告組合からの本件団交申入れに対し,aを正社員として採用しておらず,正社員にするとした約束や合意もないから正社員に切り替えることはできないこと,及び一般論は組合に回答する予定はないことを繰り返し回答するのみで団体交渉に応じなかったことは,労働組合法7条2号に該当する不当労働行為である旨認定した上,「被告会社は,原告組合が平成17年4月25日付けで申し入れた団体交渉について,非組合員に関する事項を除いて,誠実に応じなければならない。」とし,併せてポストノーティスを命じたこと,これに対して被告会社は再審査申立てをしたが,中央労働委員会は,平成18年6月7日 渉について,非組合員に関する事項を除いて,誠実に応じなければならない。」とし,併せてポストノーティスを命じたこと,これに対して被告会社は再審査申立てをしたが,中央労働委員会は,平成18年6月7日,被告 会社の再審査申立てを棄却する旨判断したことは前記のとおりである。 イ不法行為と不当労働行為の概念が異なり,両者はその趣旨目的及び成立要件を異にしているから,不当労働行為に該当したとしても不法行為になるものでないことは被告会社所論のとおりである。 ウそこで,被告会社の行為が不法行為の成立条件である,①権利侵害(被侵害利益の存在と加害行為の存在),②これについての被告会社の故意又は過失,③損害の発生とその数額,④前記①と③との因果関係が認められるかの各要件の成否について検討し,これらが肯定された場合には,さらに進んで被告会社が当該行為に及んだことについて正当な理由があるか又は正当な理由があると信じるにつき相当な理由があるなど特段の事情が認められるのかについて検討するのが相当である。以下,上記順序に従って判断することにする。 (2)被侵害利益と損害の発生ア前記認定事実によれば,原告組合は,民間航空産業及びその関連事業に働く労働者等を組合員として結成された労働組合であるところ,aが平成17年4月にこれに加入したのを承けて,被告会社に対して平成17年4月25日付けで本件団交申入れをしたこと,原告組合の規約上支部,分会を必要な所に置くとされているところ,平成17年9月21日付けの「分会結成の通知と団体交渉の申し入れ」と題する文書により,aのほか,f及びeが組合員であることを明らかにした上,aを分会委員長としてスカイマークエアラインズ分会を結成していることを通知したこと,原告組合には労働組合 として団結権,団体交渉権が法的権利 のほか,f及びeが組合員であることを明らかにした上,aを分会委員長としてスカイマークエアラインズ分会を結成していることを通知したこと,原告組合には労働組合 として団結権,団体交渉権が法的権利として保障されていることが認められる。 イそして,被告会社の本件団交拒否等によって,原告組合は,本件要求について団体交渉の機会を得られないまま推移するうち,fは平成18年6月19日付けで,eは同月21日付けでそれぞれ原告組合を脱退することとなり,aも平成17年5月31日の本件雇止めの後,本件仮処分申立てが却下されるに及んで,本訴提起を断念すると共に,ようやく本件要求にかかる団体交渉が実現した平成18年8月11日の時点では被告会社への復職の希望を失ってしまっていたのであって,他の支持者が離れたことと相まって結局のところスカイマークエアラインズ分会は事実上消滅状態となったことが認められる。 ウ以上によれば,原告組合は団結権,団体交渉権を有しているところ,被告会社内において一旦結成されたスカイマークエアラインズ分会が事実上消滅状態となるという損害その他社会的信用の低下等無形の損害を被ったことが認められ,平成18年8月11日に団体交渉が持たれたことにより上記損害が回復されたものでないと認められる。 この点について,被告会社は,「団交拒否が存在し,これが不当労働行為に当たると判断されたとしても,救済申立てが認容されて,その履行としての団体交渉が実現すれば,もはや団体交渉権の侵害は存在しないというべきである。本件においても平成18年8月11日に本件団交申入れにかかる団体交渉の機会が持たれたのである から,不当労働行為がなかった状態(原状)に戻ったのであり,さらに金銭賠償を加える必要はない。」と主張するが,前記のとおり損害は発生し,かつ,そ 申入れにかかる団体交渉の機会が持たれたのである から,不当労働行為がなかった状態(原状)に戻ったのであり,さらに金銭賠償を加える必要はない。」と主張するが,前記のとおり損害は発生し,かつ,その後の団体交渉の実施によってもその損害が回復されたものではないから,上記主張は失当である。 (3)加害行為の存否ア次に問題になるのは,スカイマークエアラインズ分会の事実上消滅状態等の原告組合の損害が何が原因で発生したのか,当該損害発生に被告会社の加害行為が作用しているのか否かという点である。 具体的には被告会社の本件団交拒否等によってスカイマークエアラインズ分会の事実上の消滅状態等がもたらされたのか,本件団交拒否等が違法か否かという点である。 イ前記認定事実によれば,被告会社は,原告組合の団体交渉申入れに対して,次のような行為をしたことが認められる。 (ア)被告会社の人事担当者であるdは,平成17年4月25日の本件団交申入れ要求当日,原告組合からの問い合わせに対し「団交には応じない。」旨明言した。 (イ)被告会社は,原告組合の本件要求中第1項の「採用時の約束を守り,a組合員を正社員(期限の無い雇用契約)に切り替えること」に対して何ら回答しないまま,本件雇用契約における契約期間が満了した平成17年5月31日をもってaを本件雇止めにした。 (ウ)被告会社が本件要求に対して文書で回答したのは平成17年9月1日付け回答書(甲10)によってであり,その間4か月以 上が経過している。その内容も,上記第1項については「a氏は正社員として採用しておりません。また,正社員にする旨の約束や合意もありません。従って,正社員に切り替えることはできません。」というものであって,このような回答を作成するまでにかかる長期間を要するものではない。 (エ) ません。また,正社員にする旨の約束や合意もありません。従って,正社員に切り替えることはできません。」というものであって,このような回答を作成するまでにかかる長期間を要するものではない。 (エ)原告組合からの平成17年9月21日付け「分会結成の通知と団体交渉の申し入れ」(甲8)に対しては,それに伴う要求書(甲9)中「本件要求に加え」という趣旨の部分にこだわり,「本件要求に基づく団体交渉義務があるかどうかは現在東京都労働委員会で係争中であり,当社はその最終確定結果をもって対応しますので,上記9月21日付け団体交渉申入れについても同様とします。」として,団体交渉に応じなかった。 (オ)そこで原告組合が「本件要求に加え」という要求を削除した内容について,再度平成17年10月5日付けで団体交渉申入れをした(甲12)にもかかわらず,被告会社は,本件要求に対する団体交渉義務の有無は労働委員会における最終確定結果をもって対応する予定である旨繰り返した後,「a分会委員長の当社の従業員としての地位の確定も不明確でありますので,a分会委員長の裁判等の結果を待って貴組合と団交を行いたいと考えております。」と回答して(甲13),団体交渉に応じなかった。 ウ以上によれば,被告会社は,本件要求に対しては要求がなされた平成17年4月25日から平成18年8月11日まで団体交渉に応じなかったこと,本件要求に対して文書で回答したのも平成17年 9月1日付け回答書によってであり,相当期間経過後であること,本件要求中,第2項及び第3項の非組合員に関する事項を除いては義務的団交事項であったこと,上記のような被告会社の本件団交拒否には正当な理由がなく,不当労働行為に当たること,労働委員会においても同旨の判断が示されたことが認められ,このことは不法行為法上も違法性 務的団交事項であったこと,上記のような被告会社の本件団交拒否には正当な理由がなく,不当労働行為に当たること,労働委員会においても同旨の判断が示されたことが認められ,このことは不法行為法上も違法性を帯びるものと解される。 エ加えて被告会社は,平成17年9月21日付け団体交渉申入れに対しては,それに伴う要求書中の「本件要求に加え」という趣旨の部分にこだわり,団体交渉に応じなかったこと,同年10月5日付け団交申入れに対しても,当初は応じる姿勢を見せなかったことが認められ,東京都労働委員会の救済命令が出された後に平成17年11月16日付け「回答並びに団体交渉申入書」と題する書面(乙1)により平成17年10月5日付け団体交渉申入れに対しては団体交渉に応じる旨の回答をしたものの,少なくともそれ以前の態度は団交拒否と評価されても仕方がないものであって,これを正当化する理由も見い出し難いところである(被告会社は,「上記回答に伴う議題及び出席者の限定は,開催条件としての被告会社の要望を行ったまでであって,団交拒否ではない。労使双方が団体交渉に関して希望する条件を提出できることは当然である。」旨主張するが,仮にそうであるとしても,それ以前の団交拒否を正当化することはできない。)。このことは不法行為法上も違法性を帯びるものと解される。 オ以上によれば,被告会社は,本件団交拒否等によって原告組合に 対して加害行為を行ったと認めるのが相当である。 (4)因果関係の存否弁論の全趣旨によれば,前記(3)の被告会社の加害行為により,前記(2)の原告組合の権利(団体交渉権,社会的信用)が侵害されたことが明らかであり,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。 (5)故意又は過失の存否前記認定によれば,被告会社においては,原告組合の本件団交申入れ要求に (団体交渉権,社会的信用)が侵害されたことが明らかであり,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。 (5)故意又は過失の存否前記認定によれば,被告会社においては,原告組合の本件団交申入れ要求に対し当初から団体交渉に応じないことを言明しており,その他の事情を考えあわせると,原告組合に対しその存在を認めない姿勢を示していることが窺われる。これによれば,被告会社の加害行為について故意があったことが認められる。 (6)被告会社が当該行為に及んだことについて正当な理由があるか又は正当な理由があると信じるにつき相当な理由があるなど特段の事情の存否ア以上によれば,被告会社の本件団交拒否等が民法709条の要件を充たしていることが明らかになった。そこで以下に被告会社が当該行為に及んだことについて正当な理由があるか又は正当な理由があると信じるにつき相当な理由があるなど特段の事情の存否について,被告会社の主張を中心に供述する。仮に,上記特段の事情が存在するときは,違法性又は有責性が阻却され,結果として被告会社の不法行為責任が否定される結果になる。 イ本件団交拒否を正当化する事情についての被告会社の主張(ア)まず,被告会社は,本件団交申入れが原告組合とaの連名の 申し入れであることを問題視し(甲6),「二重の主体からの申入れに応じなければならないいわれはない,個人からの団交申入れに対して応じなければならないいわれもない。」と主張するが,原告組合からの団交申入れを拒否する理由とならないことはいうまでもない。 (イ)次に被告会社は,「本件要求が一つの一体となった要求書であり,本件団交申入れがその全部を議題とせよというものである以上,非組合員の労働条件に関する事項を含む本件団交申入れに応じる義務が使用者にないことは明らかである。」と主張する の一体となった要求書であり,本件団交申入れがその全部を議題とせよというものである以上,非組合員の労働条件に関する事項を含む本件団交申入れに応じる義務が使用者にないことは明らかである。」と主張するが,それは被告会社が団体交渉に際して,非組合員に関する事項を議題にしないことを回答すればすむ話であって,これを理由に団体交渉自体に応じないことを正当化することはできないことも,またいうまでもないところである。 (ウ)被告会社は,「本件要求中,組合員に関する事項は第1項,すなわちaについて採用時の約束を守り正社員にせよ,という議題だけであるところ,その前提である採用時における正社員にするというaと被告会社との合意が存在しないことが契約書(乙3)上も明らかである以上,団体交渉事項足り得ない。」と主張するが,これも被告会社がそのように回答することはともかくとして,義務的団交事項であることは否定されないと解される。 (エ)被告会社は,「本件要求中第3項について,『労働条件の一方的切り下げはしないこと』としているが,仮にこれを組合員の労働条件についての要求に限定したとしても,当時の組合員(と して被告会社に通知があった者)はaだけであるところ,aのどのような労働条件をどのように切り下げたことが問題なのかが一切不明なのであるから会社としては協議しようもない。」と主張するが,団体交渉の開催に先立ってその具体化を求めればすむ話であり,団体交渉を拒否することを正当化できるものではない。 ウ以上(ア)ないし(エ)については,労働組合法7条2号にいう「正当な理由」に当たらないことは,すでに労働委員会で判断されたとおりであるが,不法行為法上も違法性を阻却する事由には当たらない。 エまた,原告組合の平成17年9月21日付け及び同年10月5日付け各団体 理由」に当たらないことは,すでに労働委員会で判断されたとおりであるが,不法行為法上も違法性を阻却する事由には当たらない。 エまた,原告組合の平成17年9月21日付け及び同年10月5日付け各団体交渉申入れに対する少なくとも平成17年11月16日付け回答並びに団交申入書提出までの被告会社の行為が違法性を帯びることは前記のとおりであるところ,この点について違法性を阻却する事由は認めがたい。 オその他被告会社が当該行為に及んだことについて正当な理由があるか又は正当な理由があると信じるにつき相当な理由があるなど特段の事情の存在を認めるに足りる証拠はない。 (7)損害額についてア以上によれば,原告組合は,被告会社が本件団交拒否等をした結果,原告組合が被った損害について賠償を請求することができる。 そこで,原告組合が被った損害額について検討する。 イ本件団交拒否等の結果,原告組合は,本件要求の第1項及び第3項において要求した事項について被告会社と団体交渉をする機会を 持つことができず,その目的とする組合員の労働条件の維持,改善を図ることについて手がかりをつかむこともできないまま推移するうち,aは被告会社への復職をあきらめざるを得なくなり,また他の組合員2名も原告組合から脱退したことにより,原告組合のスカイマークエアラインズ分会が事実上消滅状態に陥ることを余儀なくされたというのであるから,これによって原告組合の団体交渉権が侵害されると共にその社会的評価が少なからず低下する等の損害を被ったものと認めることができる。 ウそして,上記認定事実及び本件において現れている諸般の事情を総合考慮すれば,原告組合の被った損害は50万円を下らないと認めるのが相当であり,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。 また,上記認容額及び本件事案の内容並びに 本件において現れている諸般の事情を総合考慮すれば,原告組合の被った損害は50万円を下らないと認めるのが相当であり,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。 また,上記認容額及び本件事案の内容並びに本件紛争経過を考慮すると,被告会社の不法行為と相当因果関係のある損害と認められる弁護士費用は,5万円であると認めるのが相当であり,その余の弁護士費用の請求は理由がない。なお,原告組合は,その他に「被告会社の本件団交拒否の是正を促すため,原告組合では本件宣伝行動を実施すると共に,東京都労働委員会に対して本件救済申立てを行ったところ,これらの活動に伴う役員人件費相当額及び行動経費等として原告組合には50万円を下らない損害が生じている。」旨主張するが,仮に原告組合に上記損害が生じているとしても,これを被告会社の不法行為と相当因果関係のある損害と認めるに足りる証拠はない。 エよって,その余の点について判断するまでもなく,原告組合の甲 事件請求は,原告組合が被告会社に対し55万円及びこれに対する不法行為以後の日である平成17年4月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので,その限度で認容し,その余の請求部分は理由がないのでこれを棄却することにする。なお,上記弁護士費用に関する前記損害についても,その加害者が負担すべき損害賠償債務も,当該不法行為の時に発生し,かつ,遅滞に陥るものと解するのが相当である。 争点Ⅱ「本件宣伝行動が,原告組合の被告会社に対する不法行為になるか。」争点Ⅲ「本件貼付行為を行ったのは原告組合か。それが原告組合の被告会社に対する不法行為になるか。」について(1)乙事件の請求は,不法行為を理由とする被告会社の原告組合に対する損害賠償請求であるから,原告組合の行為が を行ったのは原告組合か。それが原告組合の被告会社に対する不法行為になるか。」について(1)乙事件の請求は,不法行為を理由とする被告会社の原告組合に対する損害賠償請求であるから,原告組合の行為が不法行為の成立条件である,①権利侵害(被侵害利益の存在と加害行為の存在),②これについての原告組合の故意又は過失,③損害の発生とその数額,④前記①と③との因果関係が認められるかの各要件の成否について検討し,これらが肯定された場合には,さらに進んで原告組合が当該行為に及んだことについて正当な理由があるか又は正当な理由があると信じるにつき相当な理由があるなど特段の事情が認められるのかについて検討するのが相当である。以下,上記順序に従って判断することにする。 (2)被侵害利益と損害の発生ア被告会社は,平成8年11月12日に設立された定期航空運送事 業等を行う株式会社であって,平成17年12月当時,東京国際空港(羽田空港)を拠点とする福岡,鹿児島,徳島,関西の4路線を運航しており,平成18年2月からは羽田=神戸,同年4月からは羽田=札幌の各路線を運航する予定になっていたものであり,その名誉・信用は,民法709条にいう権利又は法律上保護される利益ということができる。 イ本件宣伝行動によって,被告会社本社前路上において,5回にわたり,別紙2の「番号」欄1ないし25各記載の「街宣・ビラ記載内容」欄記載のビラを配布され,同趣旨の内容を口頭で宣伝された結果,そのビラを受け取り,宣伝を聞いた者は,被告会社が整備士を使い捨てにする会社であること,整備費用を削減し,整備体制が弱体化した会社であること,利益を優先し安全を軽視する経営姿勢であって,航空会社としてその運航の安全に不安が持たれている会社であることなど,被告会社に対して悪印象を持つと思われ,と 減し,整備体制が弱体化した会社であること,利益を優先し安全を軽視する経営姿勢であって,航空会社としてその運航の安全に不安が持たれている会社であることなど,被告会社に対して悪印象を持つと思われ,とりわけその運行の安全について不安を抱くことが予想されるから,被告会社は,その利用者,取引先・従業員等の印象を損ない,その名誉・信用について損害を被ったことが窺われる。 ウ他方,本件貼付行為による損害は,その行為の性質上被告会社旅客課会議室に出入りできる限られた人間(主として被告会社従業員)が,当該ビラを見聞しうる限度で,その発生が議論されるもので,その損害は,発生したとしてもごく一定の限られたものということができる。 (3)加害行為の存否 ア原告組合が本件宣伝活動を行った主体であることは当事者間に争いのない事実である。本件宣伝活動の労働組合活動としての正当性については,後記「原告組合が当該行為に及んだことについて正当な理由があるか又は正当な理由があると信じるにつき相当な理由があるなど特段の事情が認められるか。」において検討するのが相当である。 イこれに対し,本件貼付行為については,被告会社主張のごとく,これを原告組合が,その組合員らをして,平成17年11月5日夜間から翌日早朝にかけて,被告会社施設内に無断で侵入させ,これを行わせた事実を認めるに足りる的確な証拠がない。よって,争点Ⅲの本件貼付行為については,原告組合による侵害行為の存在を認めることができないのであるから,その余の成立要件について判断するまでもなく,不法行為は成立しない。 (4)因果関係の存否弁論の全趣旨によれば,前記原告組合の本件宣伝行動により,被告会社の権利(名誉・信用)が侵害されたことが明らかであり,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。 (5)故 。 (4)因果関係の存否弁論の全趣旨によれば,前記原告組合の本件宣伝行動により,被告会社の権利(名誉・信用)が侵害されたことが明らかであり,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。 (5)故意又は過失の存否前記認定事実によれば,原告組合の本件宣伝行動は,本件団交拒否等を続ける被告会社に対し団体交渉に応じさせるため,被告会社の本社前路上において,組合員及び支援者を動員して被告会社の労務政策・経営姿勢を批判するに際し,その問題点を指摘して被告会社の運航の安全性について不安である旨述べたものであるから,これにより被 告会社の名誉・信用が侵害されることを認識し得たというべきであるから,原告組合は,本件宣伝行動によって被告会社の名誉・信用が侵害されることについて故意・過失があったと認められる。 (6)原告組合が当該行為に及んだことについて正当な理由があるか又は正当な理由があると信じるにつき相当な理由があるなど特段の事情の存否ア以上によれば,原告組合の本件宣伝行動が民法709条の要件を充たしていることが明らかになった。そこで以下に原告組合が当該行為に及んだことについて正当な理由があるか又は正当な理由があると信じるにつき相当な理由があるなど特段の事情の存否について,原告組合の主張を中心に供述する。仮に,上記特段の事情が存在するときは,違法性又は有責性が阻却され,結果として原告組合の不法行為責任が否定される結果になる。 イ原告組合は,「原告組合は,本件宣伝行動において,原告組合の要求実現,被告会社の労務政策批判等の宣伝行動を行ったものであり,被告会社を誹謗中傷するようなビラの記述や発言はしていない。 原告組合の記述や発言は,具体的事実関係に基づき,被告会社の労務政策を批判する等したものであって,誹謗中傷に該当するような表現はない り,被告会社を誹謗中傷するようなビラの記述や発言はしていない。 原告組合の記述や発言は,具体的事実関係に基づき,被告会社の労務政策を批判する等したものであって,誹謗中傷に該当するような表現はない。本件宣伝行動は,正当な表現行動であり,労働組合が団結権の行使として行った正当な労働組合活動である。」旨主張する。これは労働組合に認められた正当な活動の範疇に属することを理由とした違法性阻却事由に該当する旨の主張と解せられる。 ウ原告組合は,前記のとおり,民間航空産業及びその関連事業に働 く労働者等を組合員として結成された労働組合で,原告組合には労働組合として団結権,団体交渉権が法的権利として保障されていることが認められ,その目的とする組合員の労働条件の維持,改善を図るために必要かつ相当な行為は,正当な活動として,不法行為に該当する場合でも,その違法性を阻却するものと解せられる。 そして,労働組合の組合活動としての表現行為,宣伝行動によって使用者の名誉や信用が毀損された場合であっても,当該表現行為,宣伝行動において摘示されたり,その前提とされた事実が真実であると証明された場合はもとより,真実と信じるについて相当の理由があるにおいても,それが労働組合の活動として公共性を失わない限り,違法性を阻却するものと解せられる。 また,当該表現行為,宣伝行動の必要性,相当性,動機,態様,影響など一切の事情を考慮し,その結果,当該表現行為,宣伝活動が正当な労働組合活動として社会通念上許容された範囲内のものであると判断される場合には,行為の違法性を阻却し,不法行為とならないというべきである。 エ前記認定事実によれば,本件宣伝行動の当時,以下のような状況が存在した。 (ア)被告会社は,原告組合の本件要求について団体交渉に応じようとしなかった。 (イ) 為とならないというべきである。 エ前記認定事実によれば,本件宣伝行動の当時,以下のような状況が存在した。 (ア)被告会社は,原告組合の本件要求について団体交渉に応じようとしなかった。 (イ)他方,aに対する雇止め期限は迫っており,本件宣伝行動のうち,第1回及び第2回宣伝行動は,その直前の行動である。 (ウ)aが雇止めされた後,本件第3回ないし第5回宣伝行動が実 施されているが,それまでの間,団体交渉は依然行われなかった。 (エ)aは,ボーイング767型機の確認整備士であるが,本来1機に対応して確認整備士一人が配置されるべきところ,被告会社では整備士の数の不足から複数の機を受け持たされていた。 (オ)aが雇止めされた後,被告会社がaの後任の確認整備士を補充した形跡が窺われない。 (カ)aが雇止めされた平成17年5月31日当時において,被告会社は,ボーイング767型機6機をその運航の用に供していたところ,同年3月11日に新たに就航した6号機を除いた5機について,いずれも機内の電熱線の点検期限が経過していたが,これを点検せず期限経過に気がつかないまま運航の用に供していたこと,そのうちの1機は,機体外板の凹みについて応急措置の期限が経過していたにもかかわらず,これを補修しないまま運航の用に供していたこと等の事実が存在していたが,被告会社では当時これに気がつかないまま,これら航空機を運航の用に供していた。 オ以上の状況下において,原告組合が本件宣伝行動において,「安全を支える整備士も使い捨て」(番号2),「スカイマークは安全軽視の整備士使い捨てをやめよ」(番号5),「今回スカイマークがやっていることも,経験豊富な整備士を利益優先で切り捨てるものであり,安全軽視の経営方針そのものです。」(番号7),「整備現場で最も重い責任 整備士使い捨てをやめよ」(番号5),「今回スカイマークがやっていることも,経験豊富な整備士を利益優先で切り捨てるものであり,安全軽視の経営方針そのものです。」(番号7),「整備現場で最も重い責任とプライドを持って働くべき人間が,ごろごろと辞めていく,これで安全運航を維持して行けるのでしょう か。」(番号22)と表現したのは,被告会社内では確認整備士の退職が続いていること(乙6の2),新規航空会社の被告会社が人員不足で,確認整備士のaが出発2便と整備中の1機を掛け持ちで作業せざるを得なかったこと(乙8の1),こうした中で羽田空港の整備は確認整備士の不足を航空局からも指摘されたこと(乙9の1)等の事実をビラに記載した上で,これらの事実を前提に確認整備士に対する本件雇止めを批判したものであるところ,上記表現は,整備士の雇用に関する被告会社の労務政策に対する批判であって,前記1(3),(4)のとおりその前提となる事実の存在を認めることができることから,論評として相当性を有するものと認められる。 カそして,「スカイマークの黒字決算は砂上の楼閣?今のままでは安全を支える整備が弱体化」(番号8),「スカイマークエアラインズが発表した決算は,5億5800万円の黒字でしたが,その要因のひとつに整備費の削減が上げられていました。」(番号9)「ところがスカイマークがやっていることは,コスト削減優先で整備を軽視している」(番号10),「スカイマークの整備の実態をみれば,今のやり方で安全を守れるのか大いに疑問です。」(番号11),「整備コストを削り,整備体制を弱体化させて黒字決算を実現しても,それは『砂上の楼閣』です。」(番号12)と表現したのも,前記1(8)認定のとおり被告会社が黒字決算であり整備費用の削減が進んだことが理由に挙げられていると新 制を弱体化させて黒字決算を実現しても,それは『砂上の楼閣』です。」(番号12)と表現したのも,前記1(8)認定のとおり被告会社が黒字決算であり整備費用の削減が進んだことが理由に挙げられていると新聞で報じられたことを踏まえ,上記整備士の人員不足とその状況下での本件雇止めに対する批判を前提にこれを敷衍して,整備費用の削減を不安視し, 被告会社の整備費用に関する経営政策を批判したものであるから,労働者たる整備士の労働条件や有期雇用契約の更新ないし雇止めと関連性を有するものと解せられ,その前提となる事実も根拠を有するものであるから,上記表現は,論評として相当性を欠くものとはいえない。 キさらに,「安全軽視のスカイマークエアラインズ」(番号1),「こんなことをやっていて,安全を守れるのか大いに疑問です。」(番号4),「利益優先の経営方針が安全をおびやす。」(番号6),「この経営体質で安全は守れるのか」(番号14),「安全軽視で,こんな身勝手な会社姿勢では,安全運航が守れるのか大いに疑問です。」(番号15),「背景に利益優先・安全軽視の経営姿勢」(番号16),「利益をあげる事を優先し,現場軽視・法律無視・安全軽視の経営姿勢が背景にあることは明らかです。」(番号17),「これで安全運航を維持できるでしょうか。」(番号19),「安全も公共性も軽視するスカイマークエアラインズ」(番号21)と表現したというのも,運航の安全を疑問視する内容だけに航空会社たる被告会社の経営に与える影響は大きいことが予想されるものの,当該表現は,原告組合が,上記オ,カを前提に,整備士の労働条件及び処遇,整備費用の削減に関連して被告会社の経営方針,経営体質を批判し,その安全運航に疑問を投げかけたものであるから,労働組合の活動との関連性を失うものではなく,被告会 前提に,整備士の労働条件及び処遇,整備費用の削減に関連して被告会社の経営方針,経営体質を批判し,その安全運航に疑問を投げかけたものであるから,労働組合の活動との関連性を失うものではなく,被告会社による本件団交拒否等の異常事態が継続する中で団体交渉に応じるよう呼びかけることを目的として行われたものであることを併せ て考慮すると,必要性・相当性を欠くとまではいえず,論評として不当なものとは解せられない。 ク被告会社が問題とする他の表現(番号3,13,18,20,23,24)についても,必要性・相当性の限度を超えているとまでは認められず,労働組合の活動の範疇を逸脱したものとはいえないところである。 ケとりわけ「航空運送事業は,公益性の高い公共交通であり,もうけのためなら何をしても良いといった産業ではありません。『利用者に喜ばれ,社会的な信頼を得ていかなければ,結局,競争の激しい幹線で大手との安売り競争を行って,コスト削減→安全低下→経営悪化という悪循環になりかねない』(以上二重かっこ内は番号25)のではないでしょうか。」との指摘(乙10の2)は,前記1(27),(32)で認定したその後の被告会社における整備管理に関する不適切な事例の発覚やこれにも原因すると思われる減益傾向等の事情に鑑みると,もっともな指摘であったと考えられ,被告会社において重く受け止めるべきものと思われるところである。 コ以上によれば,原告組合は,確認整備士に対する本件雇止めが,a個人にとっての問題であると共に,被告会社で就労する労働者一般の問題であり,ひいては広く運航の安全に直結する問題であることを訴えることにより,被告会社及びその従業員,関係者等に問題の所在を周知させ,その支持を獲得することにより被告会社の本件団交拒否等を断念させ,団体交渉を通じてその 運航の安全に直結する問題であることを訴えることにより,被告会社及びその従業員,関係者等に問題の所在を周知させ,その支持を獲得することにより被告会社の本件団交拒否等を断念させ,団体交渉を通じてその要求を実現することを目的として,当該表現行為,宣伝行動に及んだものと認められ, その前提とした事実も根拠を有するものと認められるから,民間航空産業及びその関連事業に働く労働者等を組合員として結成された労働組合である原告組合が,その目的とする組合員の労働条件の維持,改善を図るために必要かつ相当な行為としてなされたものと判断することができる。 サしたがって,争点Ⅱについては,原告組合が,本件宣伝行動において,上記の表現行為に及んだことについて正当な理由があると認められるのであるから,前記特段の事情の存在を認めることができ,これにより違法性が阻却され,結果として原告組合の不法行為責任が否定される結果になる。 (7)よって,その余の点について判断するまでもなく,被告会社の乙事件請求には理由がないから,これをいずれも棄却することにする。 よって,主文のとおり,判決する。 東京地方裁判所民事第36部裁判官山口均 別紙1広告当組合は、貴社に対し、平成17年5月以降、「安全軽視のスカイマークエアラインズ」「安全軽視の経営方針」「安全が守れるか大いに疑問です」「安全運航が守れるのか大いに疑問」「航空運送事業者としてふさわしくありません」「安全も公共性も軽視するスカイマークエアラインズ」等との記載のあるビラを不特定多数の者に配布するとともに、同趣旨の宣伝活動を行い、貴社があたかも安全運航を軽視し、旅客の信頼を失っているかのごとき印象を与え、貴社の信用を著しく毀損しました。 誠に申し訳ありませんでした。ここにお詫びいたします。今後この 、同趣旨の宣伝活動を行い、貴社があたかも安全運航を軽視し、旅客の信頼を失っているかのごとき印象を与え、貴社の信用を著しく毀損しました。 誠に申し訳ありませんでした。ここにお詫びいたします。今後このようなことはいたしません。 平成年月日スカイマークエアラインズ株式会社代表者代表取締役c様スカイネットワーク(航空一般労働組合)代表者執行委員長g条件五号活字による二段抜きの大きさによる。

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る