- 1 -令和5年5月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成31年第597号国家賠償請求事件口頭弁論終結日令和4年12月2日判決当事者等の表示別紙1当事者目録記載のとおり 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 被告は、原告らに対し、各100万円及びこれに対する平成31年3月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、同性カップルである原告らが、同性間の婚姻を認めていない民法及び戸籍法の規定は、憲法24条及び14条1項に違反するにもかかわらず、被 告が必要な立法措置を講じていないため、婚姻をすることができない状態にあると主張して、国家賠償法1条1項に基づき、被告に対し、慰謝料各100万円及びこれに対する訴状送達の日である平成31年3月6日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか後掲証拠(特に断らない限り枝番号を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 性的指向(SexualOrientation)と性自認(GenderIdentity)性的指向とは、人が情緒的・感情的・性的な意味で、人に対して魅力を感じることを表す用語であり、性的指向が、異性の人に対して向くことを異性 愛、同性の人に対して向くことを同性愛と呼ぶ(以下、異性愛の性的指向を - 2 -有する者のことを「異性愛者」、同性愛の性的指向を有する者のことを「同性愛者」という。)。これに対し、性自認とは、自己の性別についての個人 とを同性愛と呼ぶ(以下、異性愛の性的指向を - 2 -有する者のことを「異性愛者」、同性愛の性的指向を有する者のことを「同性愛者」という。)。これに対し、性自認とは、自己の性別についての個人に内在化された感覚のことを指し、性的指向と併せてSOGIと呼ばれることがある。性自認が出生時に割り当てられた性別と異なる場合をトランスジェンダー(Transgender)と呼び、女性の同性愛者(Lesbian)、男性の同性愛 者(Gay)及び同性愛と異性愛の双方の性的指向を有する者(Bisexual)と併せてLGBTと呼ばれることがある。また、LGBTは、身体上の性分化に関する特徴を表す用語であるインターセックス(InterSex)と併せてLGBTIと呼ばれることがある(以下、LGBTI等の性的指向及び性自認における少数者を総称して「性的少数者」という。)。(争いがない事実、甲A 2、5、114、弁論の全趣旨)我が国におけるLGBTの人口規模は、必ずしも明らかではないが、民間企業等により、全国の20歳ないし59歳を対象として、平成27年4月に行われた調査では調査対象約7万人中7.6%、平成28年5月に行われた調査では調査対象約10万人中約5.9%、同年6月に行われた調査では調 査対象約1000人中4.9%であったことが報告されている(甲A237)。 ⑵ 原告ら原告らは、いずれも男性であり、同性愛者である(弁論の全趣旨)。 原告らは、●●●●●●●●●●●、双方が社会通念上の婚姻に相当する 関係を築くことを目的とする結婚契約等公正証書を作成するとともに、任意後見契約公正証書を作成した(甲B1、2)。 原告らは、平成31年2月3日、居住地において、両名を当事者とする婚姻届を提出したが、同月7日、男性同士を当事者 婚契約等公正証書を作成するとともに、任意後見契約公正証書を作成した(甲B1、2)。 原告らは、平成31年2月3日、居住地において、両名を当事者とする婚姻届を提出したが、同月7日、男性同士を当事者とする婚姻届は不適法であるとの理由により、これを不受理とされた(甲B3)。 3 婚姻制度に関する規定の内容 - 3 -⑴ 民法及び戸籍法の規定民法は、第四編第二章第一節において、婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずると規定するほか(同法739条1項)、婚姻の要件に関する規定を置き、戸籍法は、民法739条1項を受けて、婚姻をしようとする者は、夫婦が称する氏を届け出なければならな い旨規定する(戸籍法74条1号)(以下、民法の規定は、昭和22年法律第222号による改正後の民法の家族法部分を総称して「現行民法」ということがあり、同改正前の家族法部分の規定を「明治民法」、同改正を「昭和22年民法改正」という。)。 そして、民法は、婚姻の効力に関し、氏の統一(同法750条)、夫婦の 同居、協力及び扶助の義務(同法752条)等を、夫婦の財産に関し、婚姻費用の分担(同法760条)等を、離婚に関し、財産分与(同法768条)等を規定するほか、親子関係に関し、夫婦の子についての嫡出の推定(同法772条1項)、親権に関する規定(同法818条3項)を置き、相続に関し、配偶者の相続権(同法890条)を規定するなど、婚姻の重要な効果に 関する規定を置いている。また、戸籍法では、婚姻の届出があったときは、夫婦について新戸籍を編製し(同法16条1項本文)、当該戸籍には、夫婦について夫又は妻である旨が記載され(同法13条6号)、子が出生した場合にはこれを届け出なければならず(同法49条1項)、子は親の戸 婦について新戸籍を編製し(同法16条1項本文)、当該戸籍には、夫婦について夫又は妻である旨が記載され(同法13条6号)、子が出生した場合にはこれを届け出なければならず(同法49条1項)、子は親の戸籍に入ることとされており(同法18条)、戸籍の正本は市役所等に備え置くこと とされて公証されている(同法8条2項)。 ⑵ 同性間の婚姻についての解釈民法及び戸籍法の諸規定は、同性間の婚姻を明文で禁止していないが、民法及び戸籍法が、婚姻をしたカップルを「夫婦」、その当事者を「夫」又は「妻」と呼称していることなどから、現在の実務では、同性間の婚姻は認め られないものと解されている(以下、同性間の婚姻を認めていない民法及び - 4 -戸籍法の諸規定を「本件諸規定」という。)。 4 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は以下のとおりであり、これに関する当事者の主張は別紙2のとおりである。 ⑴ 本件諸規定が憲法24条及び14条1項に違反するか(争点1) ⑵ 本件諸規定を改廃しないことが国家賠償法上違法であるか(争点2)⑶ 原告らに生じた損害とその額(争点3)第3 当裁判所の判断 1 認定事実後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 性的指向等に関する知見ア現在の知見性的指向が決定される原因や同性愛となる原因は、現在でも解明されていない。しかし、メンタルヘルス(精神衛生)に関わる大部分の専門家団体は、性的指向は、ほとんどの場合、人生の初期又は出生前に決定さ れ、自ら選択するものではないと考えている。また、心理学の分野では、性的指向を自らの意思で変更することは不可能であるとするのが主たる見解となっているほか、精神医学の分野でも、同性愛者の中には性行動を 、自ら選択するものではないと考えている。また、心理学の分野では、性的指向を自らの意思で変更することは不可能であるとするのが主たる見解となっているほか、精神医学の分野でも、同性愛者の中には性行動を変えられる者もいるが、それは性的指向自体の変化を意味するものではなく、性的指向が自らの意思や精神医学的な療法によって変わること はないであろうとの結論が大勢となっている。(甲A2、3、7、242、244)イ欧米諸国における知見の変遷20世紀中頃までの知見欧米諸国では、19世紀末頃、精神医学の分野において、同性愛を精 神的病理であるとする見解が主張されるようになり、アメリカ精神医学 - 5 -会は、1952(昭和27)年公刊の「精神障害のための診断と統計の手引き初版」(DSM(DiagnosticAndStatisticalManualofMentalDisorders)-Ⅰ)において、「同性愛」を「性的逸脱」の一種とみなし、1968(昭和43)年公刊の第二版(DSM-Ⅱ)からは、独立した診断名として扱うようになった。また、世界保健機関(WHO)も、1 975(昭和50)年公刊の「疾病及び関連保険問題の国際統計分類第九版」(ICD(InternationalStatisticalClassificationofDiseasesandRelatedHealthProblems)-9)において、「性的逸脱及び障害」の項目に「同性愛」という診断名を掲げるようになった。(甲A24、27、29、48、273) 20世紀中頃以降の知見これに対し、性科学や心理学の分野において、20世紀中頃、同性愛を精神的病理であるとする見解に疑問が呈されるようになった。そして、アメリカ精神医学会は 273) 20世紀中頃以降の知見これに対し、性科学や心理学の分野において、20世紀中頃、同性愛を精神的病理であるとする見解に疑問が呈されるようになった。そして、アメリカ精神医学会は、1973(昭和48)年、同性愛それ自体を精神障害として扱わないこととして、DSM-Ⅱの「同性愛」という診断 名に代えて、「自らの性的指向に悩み、葛藤し、変えたいと望む」同性愛者のために「性的指向障害」という項目を新設する旨の決議を行ったところ、同診断名は、DSM-Ⅲにおいて「自我異和的同性愛」という名称に修正され、1987(昭和62)年公刊のDSM-Ⅲ-Rにおいて削除されるに至った。また、1975(昭和50)年以降、アメリカ 心理学会やアメリカ行動療法促進学会等メンタルヘルス関連の主要な諸学会も上記決議を支持した。さらに、WHOは、1992(平成4)年公刊のICD-10において、「同性愛」の代わりに「自我異和的性志向」という分類名を採用するとともに、性指向自体は障害と考えられるべきではない旨を明らかにした。(甲A1、24、27ないし30、4 8) - 6 -ウ我が国における知見の変遷明治20年頃以降の知見我が国でも、明治20年代に入ると、同性愛を精神的病理であるとする西欧の知見が導入されるようになり、明治39年には、同性愛は健康者と精神病者との中間にある「変質狂」の一種である色情感覚異常又は 先天性の疾病であるとする知見が紹介されたほか、大正時代には、同性愛は「変態性欲」の一種であり、一種の伝染病であるとする知見も紹介された。また、平成5年当時においても、同性愛は、主要な精神医学の教科書において「性的異常」として紹介されていた。(甲A24、266、279、乙24ないし26) さらに、青 する知見も紹介された。また、平成5年当時においても、同性愛は、主要な精神医学の教科書において「性的異常」として紹介されていた。(甲A24、266、279、乙24ないし26) さらに、青年期の同性愛については、昭和11年当時、ある程度を超えなければ心配する必要はないが、同性の者同士が愛情を深め、不純な同性愛に向くこともあり、このような場合には注意すべきことであって、絶対に禁止すべきものとされていたほか、昭和54年になっても、文部省の生徒の問題行動に関する基礎資料において、一般的に健全な異性愛 の発達を阻害するおそれがあり、社会的にも、健全な社会道徳に反し、性の秩序を乱す行為となり得るものであり、是認されるものではないであろうとされていた(甲A26、乙27)。 平成7年頃以降の知見日本精神神経学会は、平成7年、市民団体からの求めに応じ、ICD -10に準拠し、同性への性的指向それ自体を精神障害とみなさないとの見解を示した(甲A48、279)。 ⑵ 婚姻制度ア婚姻制度についての伝統的理解人類は、男女の結合関係を営み、種の保存を図ってきたところ、婚姻制 度は、この関係を規範によって統制するために生まれた。いかなる社会 - 7 -でも、当該社会における典型的な結合関係を法規範によって肯認し、その維持に努めた。その形態は、当該社会の経済的・政治的条件又は道徳的理念によって、時代や地域ごとに様々であるが、それぞれの社会において、正当な男女の結合関係を承認するものとして存在し、伝統的には、単純な男女の性関係ではなく、男女の生活共同体として、その間に生ま れた子の保護・育成、分業的共同生活の維持などの機能を通じ、家族の中核を形成するものと捉えられてきた。(甲A247、乙1、2、21、22) 係ではなく、男女の生活共同体として、その間に生ま れた子の保護・育成、分業的共同生活の維持などの機能を通じ、家族の中核を形成するものと捉えられてきた。(甲A247、乙1、2、21、22)イ明治民法下での婚姻制度明治民法の制定経過 我が国では、明治時代以前にも、婚姻に関する一定の慣習は存在していたが、統一的な法制度は存在しなかった。そこで、明治23年、同年法律第98号(以下「旧民法」という。)が公布された。その後、同法が施行されることはなかったが、部分的な修正が加えられ、明治31年、既存の慣習を踏襲しつつ、弊害のある事項や不明瞭な事項等の欠缺を補 うものとして、明治民法が施行された。明治民法下では、婚姻とは終生の共同生活を目的とする一男一女の法律的結合関係をいうものであると捉えられていた。(甲A173、178、180、181、乙3)制定過程における議論旧民法の第1草案の起草過程においては、婚姻は男女の結合であるか ら、同性間の婚姻が不成立であることは当然であり、あえて婚姻の不成立事由として掲げる必要はないとされ、この立場は、明治民法にも踏襲された(甲A165、166)。 また、旧民法の第1草案においては、婚姻は両心の和合を性質とするものであり、生殖能力は婚姻にとって必要不可欠の条件であるとはいえ ないとして、老年等による生殖不能は婚姻障害事由として掲げられなか - 8 -ったところ、明治民法においても、同旨の立場が採用され、婚姻の無効もしくは取消原因又は離婚原因として、生殖不能が掲げられることはなかった(甲A172、173、178、179)。 明治民法における婚姻制度の内容明治民法においては、家を中心とする家族主義の理念に基づき、家長 である戸主に家を統率するための れることはなかった(甲A172、173、178、179)。 明治民法における婚姻制度の内容明治民法においては、家を中心とする家族主義の理念に基づき、家長 である戸主に家を統率するための戸主権が与えられ、婚姻は家のためにあるとの思想に基づき、一定の年齢(男は30歳、女は25歳)未満の子の婚姻には、戸主や親の同意が要件とされていた。また、男子及び男系尊重の封建武家的道徳に基づき、婚姻関係にも夫の妻に対する優越が認められ、相続についても、男子単独相続の家督相続が主眼とされ、女 子は相続順位において男子より劣後的地位に置かれることとなった。 (甲A19、142、179、180、181)ウ日本国憲法の制定日本国憲法の制定過程大日本帝国憲法においては、婚姻及び家族に関する規定が定められて いなかったところ、連合国総司令部(GHQ)は、昭和21年2月、政府に対し、「家族ハ人類社会ノ基底ニシテ其ノ伝統ハ善カレ悪シカレ国民ニ滲透ス婚姻ハ男女両性(注・bothsexes)ノ法律上及社会上争フ可カラサル平等ノ上ニ存シ両親ノ強要ノ代リニ相互同意ノ上ニ基礎ツケラレ且男性支配ノ代リニ協力ニ依リ維持セラルヘシ此等ノ原則ニ反スル諸 法律ハ廃止セラレ配偶ノ選択、財産権、相続、住所ノ選定、離婚並ニ婚姻及家族ニ関スル其ノ他ノ事項ヲ個人ノ威厳及両性ノ本質的平等ニ立脚スル他ノ法律ヲ以テ之ニ代フヘシ」とするマッカーサー草案23条を提示した(甲A144、146ないし148、弁論の全趣旨)。 政府は、マッカーサー草案23条を受け、日本側の修正案として、昭 和21年3月2日、「婚姻ハ男女相互ノ合意ニ基キテノミ成立シ、且夫 - 9 -婦ガ同等ノ権利ヲ有スルコトヲ基本トシ相互ノ協力ニ依リ維持セラルベキモノトス」とする案を、同月5 として、昭 和21年3月2日、「婚姻ハ男女相互ノ合意ニ基キテノミ成立シ、且夫 - 9 -婦ガ同等ノ権利ヲ有スルコトヲ基本トシ相互ノ協力ニ依リ維持セラルベキモノトス」とする案を、同月5日、同案を1項とし、2項に「配偶ノ選択、財産権、相続、住居ノ選定、離婚並ニ婚姻及家族ニ関スル其ノ他ノ事項ニ関シ個人ノ威厳及両性ノ本質的平等ニ立脚セル法律ヲ制定スヘシ」とする条項を加える案を作成した。同案は、同年4月、口語化され、 帝国議会での審議とそれに基づく修正を経て、同年11月、憲法24条が制定された。(甲A146ないし148、151、弁論の全趣旨)制定過程における議論憲法24条の制定過程においては、帝国議会での審議の際に、伝統的な家族制度が維持されることになるかが論点となり、同条1項が「婚姻 は、両性の合意のみに基いて成立」と規定している点について、司法大臣からは、明治民法が一定の年齢未満の子の婚姻につき戸主や親の同意を要件としていたのを排除し、両性の合意だけで成立させようとする趣旨である旨の説明がなされた。なお、同性間の婚姻に関して議論がなされた形跡は見当たらない。(甲A146、152、弁論の全趣旨) エ現行民法下における婚姻制度昭和22年民法改正昭和22年民法改正において、戸主権や家制度に関する規定が廃止されるとともに、戸主や親の婚姻同意権に関する規定が廃止され、未成年者の婚姻に限り父母の同意を要するものとされたほか、財産は夫婦が 各自で管理収益するものとされ、配偶者(妻)にも常に相続権が与えられることとなった。(甲A19、180、181)改正作業における議論明治民法の改正に係る提案理由においては、明治民法、特に親族編及び相続編に、憲法13条、14条及び24条の基本原則に抵 えられることとなった。(甲A19、180、181)改正作業における議論明治民法の改正に係る提案理由においては、明治民法、特に親族編及び相続編に、憲法13条、14条及び24条の基本原則に抵触する幾多 の規定が置かれているため、これを改正する必要があるとされていたと - 10 -ころ、改正作業は、日本国憲法に抵触する民法規定を中心に行われ、これに抵触しない規定についてはそのまま維持されることとなった。その過程で、同性間の婚姻について議論が行われた形跡は見当たらない。 (甲A180、181、乙7、8、弁論の全趣旨)⑶ 性的少数者の権利保護をめぐる各種国際機関等の動向 ア国連の条約機関の動向個人通報制度に基づく救済市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)委員会は、1994(平成6)年、男性同士の性行為等を処罰する法律は、「私生活の尊重をうける権利」を保障する自由権規約17条に違反し、同規約2 条1項及び26条が差別禁止分類として規定する「性(sex)」には性的指向も含まれるとして、同規約2条1項に違反するとの判断を示したほか、2003(平成15)年には、同性同士であることに基づき、同性パートナーに遺族年金の受給資格を与えないことは、同規約26条に違反するとの判断を示した。(甲A31、32、49) 規約の解釈の提示経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)委員会は、社会権規約の解釈等を示す一般的意見において、2009(平成21)年に、社会権規約2条2項が差別禁止分類として規定する「他の地位(otherstatus)」には性的指向も含まれ、性的指向は遺族の年金受 給権等規約上の権利を実現する上での障害とはならないことを明らかにした(甲A50、216) として規定する「他の地位(otherstatus)」には性的指向も含まれ、性的指向は遺族の年金受 給権等規約上の権利を実現する上での障害とはならないことを明らかにした(甲A50、216)。 我が国に対する勧告自由権規約委員会は、2008(平成20)年10月、我が国に対し、当時の公営住宅法や配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に 関する法律(以下「DV防止法」という。)等において、同性カップル - 11 -が排除されていたことに対し、法改正を検討するよう勧告し、2014(平成26)年8月には、性的志向及び性自認等あらゆる理由に基づく差別を禁止する包括的な反差別法の制定等の勧告を行った(甲A38、95、96、192)。 イ国連人権理事会の動向 SOGI決議の採択等国連人権理事会は、2011(平成23)年、我が国を含む23か国の賛成を得て、世界各地での性的指向及び性自認を理由とした暴力や差別に重大な懸念を表明し、人権高等弁務官による人権状況に関する報告書の提出等を要請する決議(SOGI決議)(HumanRights, Sexual OrientationandGenderIdentity)を採択し、2014(平成26)年にも、我が国を含む25か国の賛成を得て、同旨の決議を採択した。国連人権高等弁務官が2015(平成27)年に提出した報告書では、同性カップル及びその子供を法的に認知し、これらの者に対しても、結婚したパートナーに与えられてきた給付、年金、課税及び相続等に関する 便益が差別なく付与されることが推奨された。(甲A31、34、199、208)我が国に対する勧告国連人権理事会が制度構築した普遍的定期的審査(UPR)の下で、我が国に対し、2008(平成2 便益が差別なく付与されることが推奨された。(甲A31、34、199、208)我が国に対する勧告国連人権理事会が制度構築した普遍的定期的審査(UPR)の下で、我が国に対し、2008(平成20)年の第1回審査及び2012(平 成24)年の第2回審査の過程で、複数諸国が、性的指向及び性自認に基づく差別の撤廃に向けた措置を講ずるよう勧告し、2017(平成29)年の第3回審査の過程では、スイスやカナダが、同性婚の公式な承認を国レベルに拡大するなど、地方自治体及び民間企業が性的指向及び性自認に基づく差別を撤廃するための努力を促進するよう勧告を行った。 (甲A38、192、193、196ないし198) - 12 -ウその他の動向国際人権法ならびに性的指向及び性別自認に関する専門家国際委員会は、2006(平成18)年、「性的指向および性自認に関する国際人権法の適用に関連する原則(ジョグジャカルタ原則)」(Principlesontheapplicationofinternationalhumanrightslawinrelationtosexual orientationandgenderidentity(THEYOGYAKARTAPRINCIPLES))を採択した。国連の公式文書や政府間の合意文書に属しない同原則は、国際人権法上の規範には該当しないが、既存の人権規定が性的指向や性自認に基づき差別されることなく適用可能であることを全29の原則を掲げて謳うものであり、その中では、家族を形成する権利として、性的指 向及び性自認にかかわらず、家族を形成する権利を有することが明らかにされている。(甲A31、33、192)⑷ 同性カップルの保護をめぐる諸外国の動向ア登録パ 成する権利として、性的指 向及び性自認にかかわらず、家族を形成する権利を有することが明らかにされている。(甲A31、33、192)⑷ 同性カップルの保護をめぐる諸外国の動向ア登録パートナーシップ制度による保護導入国 デンマークは、1989(平成元)年、同性カップルの関係を法的に保護するための法制度として、世界で初めて登録パートナーシップ制度(以下、後記イの制度と併せて「登録パートナーシップ制度等」という。)を導入した。そして、制度の呼称や制度内容の詳細に違いはあるが、1993(平成5)年にはノルウェーが、1994(平成6)年に はスウェーデンが、1996(平成8)年にはアイスランドが、1998(平成10)年にはオランダが、2001(平成13)年にはフィンランド及びドイツが、2004(平成16)年にはルクセンブルク、イギリス、スイス及びニュージーランドが、2009(平成21)年にはオーストリアが、2010(平成22)年にはアイルランドが、201 4(平成26)年にはマルタが、それぞれ同様の制度を導入した。(甲 - 13 -A98、140、141、249ないし251)制度の具体的内容オランダやルクセンブルク等の国を除き、登録パートナーシップ制度を採用する多くの国が、同性カップルのみを対象としている。そして、一般に、同制度は、同性カップルに対し、婚姻とほとんど同じ法的効果 を付与するものであるとされており、前記の諸外国では、同制度を利用した同性カップルに対し、相続や社会保障、税制上の優遇措置が認められている。(甲A98、140、141)他方で、養子制度については、例えばオーストリアやイギリス、スウェーデンといった国では、異性カップルとほぼ同等の養子縁組が認めら 制上の優遇措置が認められている。(甲A98、140、141)他方で、養子制度については、例えばオーストリアやイギリス、スウェーデンといった国では、異性カップルとほぼ同等の養子縁組が認めら れていた一方、ドイツでは、数次の法改正を経たものの、生活パートナー双方が第三者の子を同時に養子縁組することは認められず、アイルランド、ノルウェー等でも、共同養子縁組が認められていなかった。さらに、ニュージーランドでは、養子縁組法(AdoptionAct 1955)において、養子縁組が「配偶者」にのみ認められていたため、そもそも登録パ ートナーカップルには養子縁組を利用する権利が認められていなかったほか、子ども身分法(StatusofChildrenAct 1969)において、嫡出推定の規定の適用を婚姻している女性のみに限定していたことから、登録パートナーカップルが嫡出推定を受けることはできなかった。(甲A98、140、141) その他にも、例えばイギリスでは、婚姻が性的であり宗教的な制度であるのに対し、パートナーシップ登録は非性的であり世俗的な制度であるとして、不貞行為を解消原因とせず、デンマークでも、登録パートナーカップルは宗教上の挙式を選択できないなど、同性間の婚姻との差異が設けられている。(甲A98、140、141) イ法定同棲・PACS等による保護 - 14 -法定同棲登録パートナーシップ制度においては、財産法・身分法・社会保障法・税法等の広範囲にわたる法的な権利及び義務がパッケージとなって規定されている一方、このような強力な法的効果を望まないカップルのために、ベルギーやスウェーデンが、主として財産法上の法的効果を付 与するものとして、法定同棲と呼ばれる制度を導入した。 となって規定されている一方、このような強力な法的効果を望まないカップルのために、ベルギーやスウェーデンが、主として財産法上の法的効果を付 与するものとして、法定同棲と呼ばれる制度を導入した。同制度は、同性カップルのみならず、異性カップルにおいても利用できるものとされており、ベルギーでは、兄弟姉妹間でも利用が認められていたほか、相続権や養子制度の利用も認められていた。(甲A98、140、141、249) パックス(PACS)フランスでは、当事者の契約によって権利及び義務を設定し公的機関に登録することで、第三者や国に対してカップルであることを対抗できるようにするものとして、パックス(PACS)と呼ばれる制度を導入している。同制度は、同性カップルのみならず、異性カップルにおいて も利用できるものとされており、パックスの登録・公示により、民法のほか、労働法、税法、社会保障法上の効果が一体として付与されるものとされている。他方で、パックスの両当事者間では、相続権は認められていないほか、パックス当事者を養親とする養子縁組や生殖補助医療への権利も認められておらず、パックス当事者間に生まれた子は、非嫡出 子として扱うものとされている。(甲A98、140、141、249)民事的結合・事実上の共同生活イタリアでは、憲法裁判所が、2014(平成26)年、「婚姻」は異性間の結合のみを指し、同性間の結合は婚姻と同質であるとは考えられない旨説示する一方で、同性間の結合について「(婚姻とは)別の形 式(altraforma)」を設けておらず、法的に保護されたカップルの関係 - 15 -の維持が認められていないことが違憲である旨説示し、これを受けて2016(平成28)年に「同性間の民事的結合に関する規則及び ma)」を設けておらず、法的に保護されたカップルの関係 - 15 -の維持が認められていないことが違憲である旨説示し、これを受けて2016(平成28)年に「同性間の民事的結合に関する規則及び共同生活の規律」が成立した。民事的結合に関する規定においては、貞操義務がないことや養子縁組に関する規定が存在しないなどの相違点もあるが、基本的には婚姻に関する規定が準用され、事実上の共同生活に関する規 定においては、パートナーの処遇、疾病又は入院に際しての扶助、共同生活を営む住居への居住の継続等において一定の権利が認められるものとされている。(甲A98、140、141)ウ婚姻制度による保護同性間の婚姻を認めている諸外国 オランダは、2000(平成12)年、同性間の婚姻制度を世界で初めて導入し、2003(平成15)年にはベルギーが、2005(平成17)年にはスペイン及びカナダが、2006(平成18)年には南アフリカが、2008(平成20)年にはノルウェーが、2009(平成21)年にはスウェーデンが、2010(平成22)年にはポルトガ ル、アイスランド及びアルゼンチンが、2012(平成24)年にはデンマークが、2013(平成25)年にはフランス、ウルグアイ、ニュージーランド、ブラジル及びイギリス(イングランド及びウェールズ)が、2015(平成27)年にはルクセンブルク及びアイルランドが、2016(平成28)年にはコロンビアが、2017(平成29)年に はフィンランド、マルタ、ドイツ及びオーストラリアが、2019(平成31又は令和元)年には台湾、オーストリア及びエクアドルが、2020(令和2年)にはコスタリカが、それぞれ同性間の婚姻を容認するに至っている(甲A98、135ないし138、140、141、24 平成31又は令和元)年には台湾、オーストリア及びエクアドルが、2020(令和2年)にはコスタリカが、それぞれ同性間の婚姻を容認するに至っている(甲A98、135ないし138、140、141、249ないし251)。 また、アメリカでは、連邦最高裁判所が、2015(平成27)年、 - 16 -オバーゲフェル判決(Obergefellv. Hodges)において、同性カップルに婚姻許可証を発給しないこと及び同性婚を承認しないことは、合衆国憲法修正第14条に違反するとの判断を示し、これによって、全ての州が、同性カップルと異性カップルとの区別なく婚姻を認めるとともに、他州において合法的に成立した婚姻を承認する義務を負うこととなった (甲A98、99、141)。 同性間の婚姻の内容前記の諸外国では、同性婚と異性婚とでほとんど差異は生じていないものの、例えば、嫡出推定の規定について、スペインでは同性カップルに対し、オランダでは男性カップルに対し、その適用を排除するほ か、生殖補助医療については、フランスでは同性カップルに対し、スペインでは男性カップルに対し、これを認めないなどの差異を設ける立法例も存在する。さらに、カナダや南アフリカ、ノルウェー、デンマークといった諸国では、宗教上の配慮に基づき、宗教者が同性カップルの婚姻の挙式を拒否する権利を認めている。また、同性カップルによる養子 縁組については、オランダ、ベルギー及びポルトガルでは当初は認められず、後の改正を経て認められたという経過を辿っている。(甲A98、140、141)⑸ 性的少数者の権利保護に向けた我が国の動向ア国の施策等 性的志向に対する偏見や差別の解消に向けた施策政府は、平成14年3月に人権教育及び人権啓発に関 98、140、141)⑸ 性的少数者の権利保護に向けた我が国の動向ア国の施策等 性的志向に対する偏見や差別の解消に向けた施策政府は、平成14年3月に人権教育及び人権啓発に関する基本計画を、平成22年12月及び平成27年12月に、それぞれ第3次男女共同参画基本計画及び第4次男女共同参画基本計画を閣議決定した。これらの基本計画においては、性的指向を理由とする差別や偏見の解消に向けた 啓発活動等に取り組むこととされたところ、法務省人権擁護局において、 - 17 -主な人権課題の一つとして、啓発活動等が行われている。(甲A57ないし59、211、212、514ないし516、弁論の全趣旨)性同一性障害特別措置法の制定我が国では、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(性同一性障害特別措置法)(平成15年法律第111号)が、平成16年 7月に施行され、一定の要件を満たす性同一性障害者について、戸籍上の性別の変更が認められるようになった。そして、平成20年6月には、性別変更に必要な要件として、同法3条1項3号が定めていた「現に子がいないこと」が「現に未成年の子がいないこと」と改正され(平成20年法律第70号)、性別変更に必要な要件の緩和が行われた。 公営住宅法、DV防止法の改正平成23年法律第37号による改正前の公営住宅法23条1項1号は、公営住宅の入居資格要件として、現に同居し、又は同居しようとする親族(婚姻の届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者その他婚姻の予約者を含む。)があることを掲げていたところ、同年改正によ り、同号の規定は削除された。ただし、その経緯については、地方分権改革の中で、図らずも、要件が削除されたにすぎないとの評価がある(甲A192)。 )があることを掲げていたところ、同年改正によ り、同号の規定は削除された。ただし、その経緯については、地方分権改革の中で、図らずも、要件が削除されたにすぎないとの評価がある(甲A192)。 また、DV防止法1条3項は、保護の対象となる「配偶者」について、「婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者」を 含むと規定していたところ、平成25年法律第72号による改正により、「生活の本拠を共にする交際(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものを除く。)」をする関係にある相手からの暴力について、準用規定が設けられた(同法28条の2)。ただし、同法が同性間へ適用されるかについては慎重に検討されるべきとの見解がある (甲A40)。 - 18 -イ各種政党の取組み立憲民主党、共産党及び社民党の議員らは、令和元年6月、同性婚の法制化のため、民法739条1項を、「婚姻は、異性又は同性の当事者が戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる」と改正することを内容とする「民法の一部を開始する法律案要綱」を衆議院 に提出した(甲A115、116、509)。 ウ地方自治体の施策等計画・指針等の策定東京都は、平成12年11月に公表した人権施策推進指針の中で、性同一性障害を有する者や同性愛者をめぐる人権問題の解決に向けた議論 を深める必要があることを指摘し、その後、複数の地方自治体において、性的指向及び性自認について言及した計画・指針等が定められるようになった(甲A66、67)。 条例等の制定等複数の地方自治体において、性的指向の尊重又は差別の禁止を掲げる 条例等が制定され、平成27年4月には、東京都渋谷区において、登録パートナーシップ制 (甲A66、67)。 条例等の制定等複数の地方自治体において、性的指向の尊重又は差別の禁止を掲げる 条例等が制定され、平成27年4月には、東京都渋谷区において、登録パートナーシップ制度が創設された。そして、同様の制度は、他の地方自治体にも拡大し、登録パートナーシップ制度を導入している地方自治体は、令和4年1月時点で147となった。また、登録パートナーシップ制度を導入している地方自治体の中には、相互に協定を取り交わすこ とにより、パートナーシップ登録の相互利用を可能とする取組みを行うものもある。(甲A67ないし91、303ないし355、395ないし436、477)また、東京都世田谷区では、令和2年4月1日から、同性パートナーがいる区職員に対し、結婚休暇、出産支援休暇、看護休暇等を、異性パ ートナーがいる区職員と同等に認める取組みが行われており、鳥取県に - 19 -おいても、同様の取組みが行われている。そして、東京都世田谷区では、新型コロナウイルスに対応した国民健康保険の特例措置をめぐり、同年6月、被保険者が死亡した場合に遺族に支給される傷病手当金を、同性パートナーにも支給することを明らかにした。(甲A356ないし358) 国に対する提言指定都市市長会は、平成30年7月、内閣府に対し、各府省が所管する性的少数者に係る様々な施策を総合的に調整し、一元管理する組織を明確にすることにより、国としての取組みを強化することのほか、性の多様性を認め合う社会の実現に向けて、先行自治体の取り組み事例や意 見等を踏まえ、性的少数者への理解促進や取組みの強化に関する取組方針を示すよう要請した。また、令和2年12月には、大和郡山市議会及び東京都清瀬市議会が、それぞれ、衆参議院議長、内閣総理大臣及び法 見等を踏まえ、性的少数者への理解促進や取組みの強化に関する取組方針を示すよう要請した。また、令和2年12月には、大和郡山市議会及び東京都清瀬市議会が、それぞれ、衆参議院議長、内閣総理大臣及び法務大臣に対し、同性婚の法制化に関する議論の促進を要請する意見書を提出した。(甲A92、93、359、360) エその他の諸団体の提言・取組み等民間企業等一般社団法人日本経済団体連合会は、平成29年5月16日、ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて、LGBTの人々に関する対応に経済界として初めて焦点を当てて、各企業の取り組み状況を 紹介するとともに、どのような対応が考えられるかを提言するとし、同性パートナーに慶弔休暇や家族手当等を適用し、同性カップル及びその子に福利厚生を拡大するなどといった取組みを行う企業など、多数の日本を代表する企業による取組み例を紹介した。また、株式会社東洋経済新報社作成の「CSR企業総覧」によれば、LGBTに対しての基本方 針(権利の尊重や差別の禁止等)を定めていると回答した会社は、平成 - 20 -28年1月4日時点で1325社中173社(約13%)であったのが、令和元年12月3日時点では1593社中364社(約22.8%)にまで増加した。(甲A94、291、292)弁護士会北海道弁護士会連合会は、平成30年7月、政府及び国会に対して同 性間の婚姻を認める法制度の整備を求める旨を決議した。また、令和元年2月には、日本組織内弁護士協会が、同性カップルに婚姻の権利を認めるべきであるとする提言を行ったほか、令和元年7月には、日本弁護士連合会も、法務大臣、内閣総理大臣及び衆参議院議長に対し、同性婚を認めるための関連法令の改正を速やかに行うべきであるとの提言を行 めるべきであるとする提言を行ったほか、令和元年7月には、日本弁護士連合会も、法務大臣、内閣総理大臣及び衆参議院議長に対し、同性婚を認めるための関連法令の改正を速やかに行うべきであるとの提言を行 った。さらに、令和3年3月以降、複数の弁護士会が、同性間の婚姻を認める立法を直ちに整備するよう求める会長声明を発表した。(甲A113、134、153、154、383ないし393)在日外国団体在日米国商工会議所は、平成30年9月、政府に対し、LGBTカッ プルに婚姻の権利を認めることにより、人材の採用や維持、多様な従業員の公平な処遇において直面している障害を取り除くことができるとの提言を行い、在日オーストラリア・ニュージーランド商工会議所、在日英国商工会議所、在日カナダ商工会議所、在日アイルランド商工会議所のほか、在日デンマーク商工会議所が、同提言を支持した(甲A112、 131ないし133)。 日本学術会議日本学術会議法学委員会は、平成29年9月、我が国における顕著な家族の多様化と欧米諸国の動向に照らせば、婚姻の性中立化は必須であり、そのための民法改正が求められる旨の提言を発表した(甲A11 4)。 - 21 -⑹ 同性婚の是非等に関する意識調査ア国民全体を対象とした意識調査平成29年までの意識調査同性婚を法的に認めることの可否について、日本世論調査会が平成26年に行った意識調査では、賛成派(賛成・やや賛成と回答した者。以 下同じ。)は42.3%、反対派(反対・やや反対と回答した者。以下同じ。)は52.4%であった。また、毎日新聞社が平成27年に行った意識調査では、賛成は44%、反対は39%であり、河口和也広島修道大学教授(以下「河口教授」という。)らが同年に行った意識調査で 下同じ。)は52.4%であった。また、毎日新聞社が平成27年に行った意識調査では、賛成は44%、反対は39%であり、河口和也広島修道大学教授(以下「河口教授」という。)らが同年に行った意識調査では、賛成派は51.2%、反対派は41.3%であった。さらに、NH Kが平成29年に行った意識調査では、賛成は50.9%、反対は40. 7%であり、朝日新聞社が同年に行った意識調査では、賛成は49%、反対は39%であった。(甲A104ないし109)平成30年以降の意識調査同性婚を法的に認めることの可否について、株式会社電通が平成30 年に全国の20ないし50代のLGBT以外の男女を対象に行った意識調査では、賛成派は男性で69.2%、女性で87.9%であった。また、河口教授らが令和元(平成31)年に行った意識調査では、賛成派は64.8%、反対派は30.0%であったほか、朝日新聞社と東京大学の谷口将紀研究室が令和2年に実施した意識調査では、賛成派は4 6%、反対派は23%であり、NHKが令和3年に行った意識調査では、賛成派は56.7%、反対派は36.6%であった。(甲A110、368、441、479)イ性的少数者を対象とした意識調査平成27年の意識調査 NHKが平成27年に性的少数者を対象に行った意識調査では、地方 - 22 -自治体の行うパートナーシップ登録の申請を希望するかについて、申請したい(パートナーができたら申請したいを含む。)と回答した者は82.4%、申請したくないと回答した者は17.6%であり、申請したいと回答した者の半数以上が、その理由として「今後、法律上、家族として認めて欲しいのでその第一歩として」との理由を挙げたほか、同性 婚を法的に認めることについて、賛成と回答した者は り、申請したいと回答した者の半数以上が、その理由として「今後、法律上、家族として認めて欲しいのでその第一歩として」との理由を挙げたほか、同性 婚を法的に認めることについて、賛成と回答した者は65.4%、結婚ではなくパートナー関係の登録制度を国が作ってほしいと回答した者は25.3%であった(甲A103)。 令和元年の意識調査日高庸晴宝塚大学看護学部教授が令和元年に性的少数者を対象に行っ た意識調査では、異性婚と同じ法律婚を同性間にも適用してほしいと回答した者は60.4%、公的制度を作る必要はないが、社会の理解は今より浸透してほしいと回答した者は16.2%、その余の回答は、概ね、国レベル又は自治体レベルのパートナーシップを制定してほしいというものであった(甲A369)。 ⑺ 婚姻に関する意識調査、統計ア婚姻に関する意識調査内閣府の意識調査内閣府の平成17年版国民生活白書によれば、結婚のメリットについて、家族や子供を持てると回答した者が最も多く(既婚者で63.5%、 未婚者で58.2%)、2番目に多く選ばれた項目は、既婚者で、精神的な安定が得られることであり(61.9%)、未婚者で、好きな人と一緒にいられること(57.7%)であった。そして、結婚すると強く実感できる「家庭」の持つ価値については、既婚者では、家族の団らんの場と回答した者が最も多く(63.8%)、休息・安らぎの場と回答 した者が2番目に多く(57.3%)、未婚者では、休息・安らぎの場 - 23 -と回答した者が最も多く(55.4%)、家族の団らんの場と回答した者が2番目に多かった(54.9%)。(甲A232)次に、内閣府が平成23年に公表した結婚・家族形成に関する調査報告書によれば、既婚者が結婚した理由について、 .4%)、家族の団らんの場と回答した者が2番目に多かった(54.9%)。(甲A232)次に、内閣府が平成23年に公表した結婚・家族形成に関する調査報告書によれば、既婚者が結婚した理由について、好きな人と一緒にいたかったと回答した者が61.0%、家族を持ちたかったと回答した者が 44.2%、子供が欲しかったと回答した者が32.5%であった。また、平成27年の調査報告書によれば、未婚者が将来結婚したいと考える理由については、家族を持ちたいと回答した者、子供が欲しいと回答した者が共に70.0%であり、好きな人と一緒にいたいと回答した者が68.9%であった。(甲A233、234) 厚生労働省の意識調査厚生労働白書によれば、結婚は個人の自由だから結婚してもしなくてもどちらでもよいと考え方について、平成21年調査では、賛成派は、平成4年の62.7%から70.0%にまで上昇したのに対し、反対派は、同年の31.0%から28.0%にまで減少した(甲A223)。 NHKの意識調査NHKが実施する「日本人の意識」調査によれば、平成30年調査において、人は結婚するのが当たり前だと回答した者は、平成5年の45%から27%に減少した一方、必ずしも結婚する必要はないと回答した者は平成5年の51%から68%にまで上昇した。また、結婚したら 子供を持つのが当たり前だと回答した者は、同年の54%から33%にまで減少した一方、結婚しても必ずしも子供を持たなくてもよいと回答した者は、同年の40%から60%にまで上昇した。(甲A228)国立社会保障・人口問題研究所の意識調査国立社会保障・人口問題研究所が実施する全国家庭動向調査によれば、 夫婦は子供を持って初めて社会的に認められるとの考えについて、平成 - 24 - 国立社会保障・人口問題研究所の意識調査国立社会保障・人口問題研究所が実施する全国家庭動向調査によれば、 夫婦は子供を持って初めて社会的に認められるとの考えについて、平成 - 24 -30年調査では、賛成派の既婚女性は、平成20年の35.8%から24.7%にまで減少した一方、反対派の既婚女性は、同年の64.2%から75.4%にまで上昇した(甲A229)。 上記研究所が平成27年に実施した意識調査によれば、未婚者(18歳ないし34歳。以下同じ。)のうち、いずれ結婚するつもりであると 回答した者は、男性では85.7%、女性では89.3%であったほか、生涯独身で過ごすというのは望ましい生き方ではないとの考え方について、賛成は、男性では64.7%、女性では58.2%、反対は、男性では32.8%、女性では40.2%であった。また、未婚者で結婚することに利点があると感じている者は、昭和62年以降、男性で概ね6 割台、女性で概ね7割台で推移しており、その具体的な利点については、平成27年時点で、男女ともに子供や家族を持てると回答した者が最も多く(男性で35.8%、女性で49.8%)、精神的安らぎの場が得られると回答した者が2番目に多かった(男性で31.1%、女性で28.1%)。また、子供を持つ理由について、結婚して子供を持つこと は自然なことだからと回答した未婚者は、男性で48.4%、女性で39.0%であった。そして、結婚したら、子どもは持つべきだと回答した者は、未婚男性の75.4%、未婚女性の67.4%、既婚女性の66.6%であった。(甲A226、230)イ婚姻に関する統計 婚姻件数、婚姻率等厚生労働省の調査によれば、我が国の婚姻件数は、昭和47年に110万組となり、その後は減少したが、平成 .6%であった。(甲A226、230)イ婚姻に関する統計 婚姻件数、婚姻率等厚生労働省の調査によれば、我が国の婚姻件数は、昭和47年に110万組となり、その後は減少したが、平成28年でも62万0531組であった。また、婚姻率(全婚姻件数を総人口で除した上で1000を乗じた割合)は、昭和22年頃の約12から、平成28年には5にまで 減少したものの、ヨーロッパ諸国(ただし、ロシア及びスウェーデンを - 25 -除く。)に比べて高水準にある。なお、我が国の年間出生総数に占める非嫡出子の割合は、統計上の数値(大正9年から平成29年)によれば、最大でも8.25%(大正8年)、最小では0.78%(昭和51年)であり、平成29年時点でも2.23%であった。(甲A224、227の3) また、我が国の50歳の未婚割合は、平成27年時点で、男性で23. 4%、女性で14.1%であった(甲A226)。 世帯人員の状況等厚生労働省の調査によれば、平成30年時点で、全世帯総数のうち単独世帯が占める割合は、昭和61年の18.2%から27.7%にまで 上昇し、夫婦のみ世帯が占める割合も、昭和61年の14.4%から24.1%にまで上昇した一方、夫婦と未婚の子のみの世帯は、昭和61年の41.4%から29.1%にまで減少した。(甲A225) 2 本件諸規定が憲法24条及び14条1項に違反するかについて(争点1)⑴ 原告らは、憲法24条1項は、人と人の親密な関係に基づく、永続性をも った共同生活について、法律が要件と効果を定めて保護を与え承認・公証する制度である法律婚制度の存在を前提に、人が国家や第三者に干渉されることなく、望む相手との意思の合致のみにより婚姻をなし得る自由(婚姻の自由)を保障しており、このよう を定めて保護を与え承認・公証する制度である法律婚制度の存在を前提に、人が国家や第三者に干渉されることなく、望む相手との意思の合致のみにより婚姻をなし得る自由(婚姻の自由)を保障しており、このような婚姻の自由は同性間に対しても及ぶものと解すべきところ、同性間の婚姻を認めていない本件諸規定は同項に違反する と主張し、本件諸規定が、同性間の婚姻を認めていないことは、同性愛者の尊厳を毀損するものであり、かかる尊厳の毀損を許容できるほどの合理性や必要性を見出すことは不可能であるから、同条2項にも違反すると主張する。 そして、仮に同性間の婚姻を求める権利利益が同条の保障する範囲でないとしても、婚姻により生じる諸々の法的利益を享受する権利は重大な法的利益 であり、これが性的指向や性別により不合理な差別を受ける場合には、憲法 - 26 -14条1項違反となると主張する。 なお、原告らは、平成31年2月3日、両名を当事者とする婚姻届を提出し、同月7日、不受理とされたものであるが(前提事実⑵)、同性間に対して婚姻を認めるべきであるとする社会的要請が高まったことについて、同日以降の事実も併せて主張しており、現時点までに同性間の婚姻が認められて いない状態に対する違法を主張する趣旨であると解される上、原告らにおいて改めて婚姻届を提出することが可能であり、その場合、現状においては不受理とされることが確実であると想定できるから、控訴審も事実審であることに鑑み、本件諸規定の憲法適合性判断に当たっては、当審の口頭弁論終結時までの事情を基礎として判断するのが相当である。 ⑵ 憲法24条1項に違反するかについてア憲法24条1項は、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持 るのが相当である。 ⑵ 憲法24条1項に違反するかについてア憲法24条1項は、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」と規定しているところ、これは、婚姻をするかどうか、いつ誰と婚姻をするかについては、当事者間の自由かつ平等な意思決定に 委ねられるべきであるという趣旨を明らかにしたものと解される。婚姻は、これにより、配偶者の相続権(民法890条)や夫婦間の子が嫡出子となること(同法772条1項等)などの重要な法律上の効果が与えられるものとされているほか、近年家族等に関する国民の意識の多様化が指摘されつつも、国民の中にはなお法律婚を尊重する意識が幅広く浸透していると 考えられることを併せ考慮すると、上記のような婚姻をするについての自由は、憲法24条1項の規定の趣旨に照らし、十分尊重に値するものと解することができる。そして、同条2項は「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければな らない。」と規定している。婚姻及び家族に関する事項は、国の伝統や国 - 27 -民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ、それぞれの時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的な判断を行うことによって定められるべきものである。したがって、その内容の詳細については、憲法が一義的に定めるのではなく、法律によってこれを具体化することがふさわしいものと考えられる。同条2項は、このような 観点から、婚姻及び家族に関する事項について、具体的な制度の構築を第一次的には国会の合理的な立法裁量に委ねるととも ってこれを具体化することがふさわしいものと考えられる。同条2項は、このような 観点から、婚姻及び家族に関する事項について、具体的な制度の構築を第一次的には国会の合理的な立法裁量に委ねるとともに、その立法に当たっては、同条1項も前提としつつ、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請、指針を示すことによって、その裁量の限界を画したものといえる。(最高裁平成25年第1079号同27年12月16 日大法廷判決・民集69巻8号2427頁(以下「再婚禁止期間大法廷判決」という。)、最高裁平成26年第1023号同27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2586頁(以下「夫婦同氏制大法廷判決」という。)参照)そうすると、同条1項の「婚姻」とは、同条2項を通じて、民法及び戸 籍法等の法律によって法律婚制度として具体化されるものであり、婚姻をするについての自由が同性間に対しても及ぶものであるか否かは、法律によって具体化された法律婚制度を同性間に対しても及ぼすことが、同条1項の趣旨に照らして要請されているかという観点から検討するのが相当である。原告らにおいても、法律によって具体化された現行の法 律婚制度の内容それ自体を争っているわけではなく、当該法律婚制度が同性間にも適用されるかという適用対象の範囲を問題としているものである。 イこの点、憲法24条1項は、婚姻は、「両性」の合意のみに基づいて成立すると規定し、婚姻した当事者を「夫婦」と呼称しているほか、同条2 項でも「両性」という文言が用いられている。そして、これらの「両性」、 - 28 -「夫婦」といった文言は、男性と女性の双方を表すのが通常の語義であり、憲法その他の法令において、同性同士をも含むものとしてこれらの文言を使用している例 そして、これらの「両性」、 - 28 -「夫婦」といった文言は、男性と女性の双方を表すのが通常の語義であり、憲法その他の法令において、同性同士をも含むものとしてこれらの文言を使用している例は見当たらない。 また、人類は、男女の結合関係を営み、種の保存を図ってきたところ、婚姻制度は、この関係を規範によって統制するために生まれたものであ り、伝統的には、正当な男女の結合関係を承認するために存在するものと捉えられてきた(認定事実⑵ア)。そして、我が国では、明治民法において、初めて婚姻に関する統一的な法制度が施行されたところ、同法の下では、婚姻とは終生の共同生活を目的とする一男一女の法律的結合関係をいうものであると捉えられており(認定事実⑵イ)、同性間の婚姻 が無効であることは当然とされていた(認定事実⑵イ)。さらに、憲法24条の起草過程においても、同性間の結合が婚姻に含まれるかについての議論がなされた形跡は見当たらず(認定事実⑵ウ)、GHQ草案では「bothsexes(男女両性)」との文言が用いられ、それを受けて起草された日本側草案でも「男女相互ノ」との文言が用いられていた(認定事実 ⑵ウ)。なお、憲法24条の要請に基づき行われた昭和22年民法改正の過程においても、同性間の結合が婚姻に含まれるかについての議論がなされた形跡は見当たらない(認定事実⑵エ)。 以上に述べた憲法24条の文理や制定経過等によれば、少なくともその制定当時において、同性間に対して民法及び戸籍法等の法律によって具 体化された法律婚制度を及ぼすことが、同条1項の趣旨に照らして要請されていたとは解し難い。 ウこれに対し、原告らは、仮に、制定当時において、憲法24条1項の趣旨に照らして、同性間に対して民法及び戸籍法等の法律によっ を及ぼすことが、同条1項の趣旨に照らして要請されていたとは解し難い。 ウこれに対し、原告らは、仮に、制定当時において、憲法24条1項の趣旨に照らして、同性間に対して民法及び戸籍法等の法律によって具体化された法律婚制度を及ぼすことが要請されていなかったとしても、その後の 社会情勢の変化等により、同性間の結合も「婚姻」に含まれるとする社会 - 29 -的な意識が確立し、同性間に対しても法律婚制度を及ぼすことが要請されるに至ったと主張する。 確かに、GHQ草案23条が「婚姻ハ…両親ノ強要ノ代リニ相互同意ノ上ニ基礎ツケラレ且男性支配ノ代リニ協力ニ依リ維持セラルヘシ此等ノ原則ニ反スル諸法律ハ廃止セラレ…」と規定し(認定事実⑵ウ)、憲法 24条1項が「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」と規定している点について、帝国議会での審議において、明治民法が一定の年齢未満の子の婚姻につき戸主や親の同意を要件としていたのを排除し、両性の合意だけで成立させようとする趣旨であるとの説明がなされていたこと(認定事実⑵ウ)等によれば、同条の主眼は、明治民法下の家制度を改 め、戸主同意権を廃するなど、婚姻を含む家族生活について民主主義の基本原理である個人の尊厳と両性の本質的平等の原則を特に定める必要から設けられたものであると解される。そして、同性間の結合が「婚姻」に含まれるかについての議論がなされた形跡はないこと(認定事実⑵ウ)を考慮すれば、同性間に対して現行の法律婚制度を及ぼすことが、 同条1項の趣旨に照らして禁止されていたとまではいえないと解される。 そして、近年多数の諸外国において同性婚制度が導入され(認定事実⑷ウ)、我が国でも、地方自治体において、登録パートナーシップ制度の導入が進んでいること(認定事実⑸ウ)、諸団 えないと解される。 そして、近年多数の諸外国において同性婚制度が導入され(認定事実⑷ウ)、我が国でも、地方自治体において、登録パートナーシップ制度の導入が進んでいること(認定事実⑸ウ)、諸団体から同性婚の法制化を求める声が上がっていること(認定事実⑸エ)などの事情に鑑みると、 制定当時の理解が現時点でも妥当するものであるかについては、なお検討を要するところといわねばならない。 エもっとも、前記アのとおり、婚姻及び家族に関する事項は、国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ、それぞれの時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的な判 断を行うことによって定められるべきものであり、同条1項の「婚姻」は、 - 30 -同条2項を通じて、法律により具体化された法律婚制度であることを踏まえて検討しなければならない。 オそこで検討すると、人類は、男女の結合関係を営み、種の保存を図ってきたところ、婚姻制度が、この関係を規範によって統制するために生まれたものであることは、前記イのとおりであり、その形態は、当該社会の経 済的・政治的又は道徳的理念によって、時代や地域ごとに様々であるとしても、婚姻は、正当な男女の結合関係を承認するものとして存在し、男女の生活共同体として、その間に生まれた子の保護・育成、分業的生活共同体の維持を通じ、家族の中核を形成するものであると捉えられてきた(認定事実⑵ア)。 そして、我が国の年間出生総数に占める非嫡出子の割合は、統計上の数値(大正9年から平成29年)によれば、最大でも8.25%(大正8年)、最小では0.78%(昭和51年)であったのであり、平成29年時点でも2.23%であったこと(認定事実⑺イ)などからすると、法律婚制度が、我 平成29年)によれば、最大でも8.25%(大正8年)、最小では0.78%(昭和51年)であったのであり、平成29年時点でも2.23%であったこと(認定事実⑺イ)などからすると、法律婚制度が、我が国の社会において、上記のような家族の中核として の機能を通じ、男女が共同生活を送りながら、子を産み育て、次世代へ承継していく営みにおいて、重要かつ不可欠な役割を果たしてきた事実があることは、もとより否定し難いところである。また、近年家族等に関する国民の意識の多様化が指摘されつつも、平成27年時点でも、結婚する理由として子供を持ちたいと回答する者が70%であり、結婚し たら子供を持つべきであると回答する者が60%以上であったとする結果が存在し(認定事実⑺ア)、国民の中には、子を産み育てることに婚姻の意義を見出す者が今なお少なからず存在していることが認められる。 以上のとおり、婚姻は、男女が共同生活を送りながら、子を産み育て、 次世代へ承継していく営みにおいて、重要かつ不可欠な役割を果たして - 31 -きたものであり、国民の中には、子を産み育てることに婚姻の意義を見出す者が今なお少なからず存在していることに照らせば、諸外国で同性間の婚姻制度が導入され、我が国でも同性婚の法制化を求める声が高まっている事実があるとしても、依然として婚姻制度と自然生殖の可能性が完全に切り離されたと見るのは困難である。 カまた、報道機関等が国民に対して行ったいくつかの意識調査結果によれば、同性婚を法的に認めることの可否について、平成30年以降は、賛成派が概ね過半数を超えてきているものの、依然として反対派も2割ないし3割程度を占めており(認定事実⑹ア)、なお、少なくない国民が反対の意見を有していることがうかがわれる。そして、こ 年以降は、賛成派が概ね過半数を超えてきているものの、依然として反対派も2割ないし3割程度を占めており(認定事実⑹ア)、なお、少なくない国民が反対の意見を有していることがうかがわれる。そして、この割合は、過去にお いて医学心理学の専門家の知見として同性愛が精神病的なものであるとされていた時期が相当期間あり(認定事実⑴イ、同ウ)、その後、これが改められた後にも(認定事実⑴イ、同ウ)、なお国民の間でそのような認識が一定程度残り、上記意見形成に影響を及ぼしている可能性はあるものの、そればかりとは限らず、婚姻の重要な要素として、男女が共同 生活を送りながら、子を産み育て、次世代へ承継していく営みがあると理解する伝統的な家族観に根差した結果が反映されているとも推察され、反対派が一定数を占めることは無視し得ない事実である。 キ次に、法律により具体化された現行の法律婚制度の規律内容を見ると、民法は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を 生ずるとし(同法739条1項)、婚姻の効力等に関し、氏の統一(同法750条)、同居、協力及び扶助の義務(同法752条)等を、夫婦の財産に関し、婚姻費用の分担(同法760条)、夫婦共有財産の推定(同法762条2項)等を、婚姻の解消に関して財産分与(同法768条)や裁判離婚の要件(同法770条)等の離婚制度を規定するほか、親子関係に 関し、夫婦の子についての嫡出の推定(同法772条1項)、親権に関す - 32 -る規定(同法818条3項)、配偶者のある者の未成年者養子(同法795条)、特別養子における養親の夫婦共同縁組(同法817条の3)等を置き、親族に関し、三親等内の姻族を親族とし(同法725条3号)、三親等内の親族間の相対的扶養義務(同法877条2項 養子(同法795条)、特別養子における養親の夫婦共同縁組(同法817条の3)等を置き、親族に関し、三親等内の姻族を親族とし(同法725条3号)、三親等内の親族間の相対的扶養義務(同法877条2項)等を定め、相続に関し、配偶者の相続権(同法890条)、配偶者の法定相続分(同法90 0条)、配偶者居住権(同法1028条)、配偶者短期居住権(同法1037条)、遺留分(同法1042条)等を規定するなど、身分関係の創設、解消に関する規律を定め、婚姻に伴う様々な権利義務を発生させている。 戸籍法は、婚姻の届出があったときに、夫婦について新戸籍を編製し(同法16条)、子又は養子は父母又は養親の戸籍に入り(同法18条)、戸籍 に、夫婦については、夫又は妻である旨が(13条6号)、子については、実父母又は養親の氏名及び実父母又は養親との続柄が記載され(同条4号、5号)、戸籍の正本副本が、市役所、法務局等に保管され(同法8条)、戸籍謄抄本又は記載事項証明書の交付請求の手続(同法10条以下)が規定されており、身分関係を公証している。婚姻の効果には、民法が規定する 上記の効果以外にも、税や社会保障等にかかわる制度など様々な社会政策的判断に基づき付与された効果が多数存在する。 これらの規定の中には、嫡出推定の規定(民法772条)が存し、同法は、嫡出否認のための手段を限定し(同法775条)、出訴期間を限定するほか(同法777条)、再婚禁止期間を設けるなどして(同法733 条)、婚姻関係にある男女間に出生した子と父の関係について早期確定を図る制度を設け、男女間の婚姻関係を中核とする家族生活の安定を図っている。これらの規定の存在を考慮すると、民法は、法律婚制度の構築に当たり、子孫の生殖を伴う男女の結合関係とそれを中核とする家族関係の安定化 を設け、男女間の婚姻関係を中核とする家族生活の安定を図っている。これらの規定の存在を考慮すると、民法は、法律婚制度の構築に当たり、子孫の生殖を伴う男女の結合関係とそれを中核とする家族関係の安定化を少なくともその目的の一つとしていたと評価できる。そし て、平成27年の再婚禁止期間大法廷判決による違憲との判断を受けて - 33 -再婚禁止期間の規定(民法733条、746条)について改正が行われたが、その際にも嫡出推定に関する規定群の存在が前提とされていたものであり、今なおこれらの規定群が価値を失っているわけではない(なお、我が国では、旧民法以来、一貫して生殖不能は婚姻障害事由に掲げられてこなかったが、この点は、上記評価を妨げるものではないという べきである。すなわち、旧民法の起草過程の議論によれば、生殖不能が婚姻障害事由に掲げられなかったのは、生殖能力が婚姻にとって必要不可欠の条件であるとまではいえないと考えられたからにすぎず(認定事実⑵イ)、婚姻の目的に子孫の生殖という側面があること自体が否定されたわけではない。)。 さらに、その他の規定による婚姻の効果を見ても、同居、協力及び扶助の義務等といった基本的に当事者間で完結する権利義務関係を発生させるもののみならず、養子制度を含む親子関係の規律や親族関係の発生といった第三者の地位、権利義務関係に影響を及ぼす事項のほか、様々な社会政策的判断により付与された権利義務に関わる事項など種々の効果 の発生が一体的に予定されている。そうすると、現行の法律婚制度が対象としてきた人的結合関係の範囲をそのまま拡張することは、当事者間の規律の問題にとどまらず、これにより直接影響を受ける第三者が想定されるほか、既存の異性婚を前提に構築された婚姻制度全体についても見直す契機と た人的結合関係の範囲をそのまま拡張することは、当事者間の規律の問題にとどまらず、これにより直接影響を受ける第三者が想定されるほか、既存の異性婚を前提に構築された婚姻制度全体についても見直す契機となり得るものであり、広く社会に影響を及ぼし、現行の法 律婚制度全体の枠組みにも影響を生じさせることが避けられないと考えられる。 クそして、自然生殖の可能性が存しない同性カップルに対して、いかなる保護を付与し、制度を構築するのが相当かについては、現行の法律婚制度をそのまま開放するのが唯一の方法とは限らず、当該制度とは別に、特別 の規律を設けることによることも、立法政策としてはありうるところであ - 34 -る。 例えば、同性婚を肯定している国においても、パートナーシップ制度等を先行させた上で、後に同性婚制度に移行又は併存させる例も存在するところであり(認定事実⑷ウ)、現在においても、イタリアでは、同性カップルに対しては婚姻制度の適用を認めず、婚姻とは別の形式による保護 を図ることとして、「同性間の民事的結合に関する規則及び共同生活の規律」が定められているし(認定事実⑷イ)、同性婚を認める諸外国の中でも、異性カップルと同性カップルとの間で、嫡出推定の規定や生殖補助医療について、差異を設ける立法例(スペイン、オランダ及びフランス)が存在するほか、宗教者が同性カップルの婚姻の挙式を拒否する権利を認 める立法例(デンマーク、カナダ、南アフリカ、ノルウェー等)、養子縁組を認めるために段階的経過を経た立法例(オランダ、ベルギー、ポルトガル)も存在する(認定事実⑷ウ)。婚姻制度の内容は自国の伝統や宗教的背景等によって左右され得るものであり、諸外国の立法例が直ちに我が国の婚姻制度に妥当するわけではないが、諸外国ごとに ー、ポルトガル)も存在する(認定事実⑷ウ)。婚姻制度の内容は自国の伝統や宗教的背景等によって左右され得るものであり、諸外国の立法例が直ちに我が国の婚姻制度に妥当するわけではないが、諸外国ごとに多様な立法措置 が講じられていることは、同性カップルに現行の法律婚制度をそのまま開放することが、唯一の保護形態であるというわけではないことを裏付けるものというべきである。 ケ確かに、同性間に対して現行の法律婚制度を及ぼすことが、憲法24条1項の趣旨に照らして禁止されているとはいえないし、国民の意識が同性 婚を肯定する方向に変化しつつあるということはできる。 しかしながら、前記オないしキで詳述したところによれば、婚姻制度は伝統的には男女の結合関係を前提としてきたものであり、婚姻制度の趣旨に対する理解において、依然として、自然生殖の可能性と完全に切り離されたとはいえない状況にある(前記オ)。そして、伝統的な制度及び 価値観を重視する立場の国民も一定の割合を占めている中で(前記カ)、 - 35 -法律により具体化された現行の法律婚制度の対象をそのまま拡大させることにより、婚姻当事者以外の者や既存の婚姻制度の適用対象者に影響が生じ得るにもかかわらず(前記キ)、同性カップルを保護するために現行の法律婚制度以外の方法を選択するという可能性を排除して、憲法が一義的に、同性間に対しても現行の法律婚制度を及ぼすことを要請する に至ったとは解し難いといわざるを得ない。 コなお、原告らは、同性間の結合関係を保護するために、現行の法律婚制度とは別に、特別の規律を設けることは、同性カップルと異性カップルとを差別するものであるから、憲法24条1項は、そのような保護態様を予定していない旨主張する。 しかし、同性カップルと異性 度とは別に、特別の規律を設けることは、同性カップルと異性カップルとを差別するものであるから、憲法24条1項は、そのような保護態様を予定していない旨主張する。 しかし、同性カップルと異性カップルとでは、個々人の個別特性を別に一般的類型的に見れば、自然生殖の可能性という点に差異があることは否定し難いのであり、前記オのとおり、我が国において、婚姻が、男女が共同生活を送りながら、子を産み育て、次世代に承継していく営みにおいて、重要かつ不可欠な役割を果たしてきており、国民の中には、子 を産み育てることに婚姻の意義を見出す者が今なお少なからず存在していることは無視し得ない事実であって、憲法が、現行の法律婚制度の開放を唯一の選択肢として、発生する効果に差を設けることを絶対に許さないとまで要請していると解することはできない。現行の法律婚制度と発生させる効果を完全に一致させるのか、特別の規律を設けて発生させ る効果ごとに吟味し差異を許容するのか、何らかの差異を許容した場合の制度にいかなる呼称を与えるのか(婚姻と呼ぶのかその他の呼称とするのか)など、なお検討されてよい課題が存在するはずであるし、仮に法律により何らかの特別の規律が設けられた場合においても、その後の実績に応じるなどして、時の経過とともに社会情勢は変化し、同性カッ プルを含む国民全体の意識も変動していくものと推測でき、一旦成立し - 36 -た法律を唯一絶対のものと見る必然はなく、不断の検証を経るべきものであって、将来的な改正も視野に入れて検討されてよいはずである。 サ以上によれば、現時点においても、現行の法律婚制度を同性間に対して及ぼすことが、憲法24条1項の趣旨に照らして要請されていると解することは困難であるから、婚姻をするについての自由が同性間に 。 サ以上によれば、現時点においても、現行の法律婚制度を同性間に対して及ぼすことが、憲法24条1項の趣旨に照らして要請されていると解することは困難であるから、婚姻をするについての自由が同性間に対して及ぶ ものであるとは認められず、同性間に婚姻を認めていない本件諸規定が、同条項に違反するものとはいえない。 ⑶ 憲法24条2項に違反するかについてア前記⑵のとおり、現行の法律婚制度を同性間に対して及ぼすことは、憲法24条1項の趣旨に照らし、禁止されてはいないが、要請されていると もいえない。そして、同条2項は、同条1項を前提として、法律による婚姻制度の具体化を国会の合理的な立法裁量に委ねるとともに、国会に要請、指針を示す規定と解されるから、同条2項も、現行の法律婚制度を同性間に対して及ぼすことを要請していないと解するのが整合的であり、本件諸規定が同性間に現行の法律婚制度をそのまま適用することを認めていない ことは、同項に違反するものでもないというべきである。 イところで、原告らは、同性間の婚姻を求める権利利益が憲法24条の保障する範囲内でないとしても、婚姻により生じる諸々の法的利益を享受する権利は重大な法的利益であり、これが性的指向や性別により不合理な差別を受ける場合には、憲法14条1項違反となると主張している。その趣 旨は、婚姻により生じる諸々の法的利益を享受する権利が原告らに保障されていないことが重大な法的利益の侵害であり、憲法に違反するというものであると解され、憲法24条においても考慮されるべきことを否定する趣旨ではないと解される。特に、家族に関する法制度の平等が問題となる場合においては、憲法14条1項と憲法24条2項の関係をどのように理 解するかについては見解が分かれ得る問題であるとしても る趣旨ではないと解される。特に、家族に関する法制度の平等が問題となる場合においては、憲法14条1項と憲法24条2項の関係をどのように理 解するかについては見解が分かれ得る問題であるとしても、両条項が保護 - 37 -しようとした法益に重なり合う部分が存することは否定できないと考えられるから、原告らが主張する重大な法的利益を享受できないことの違憲性については、憲法24条2項の問題ともなりうるものである。 そして、法律により具体化された現行の法律婚制度の概要は、前記⑵キで規定群を確認したとおりとなっており、両当事者及びその親族の身分 関係を形成するとともに、戸籍制度によってその身分関係を公証し、民法及びその他の諸法令により、法律上、当事者間及びその他の第三者との間に様々な権利義務関係を生じさせるものとなっている。また、婚姻には、かかる法律上の効果にとどまらず、事実上の効果として、婚姻制度を利用することにより、社会的な信用が形成され、信任が得られるな どの社会的な効果のほか、そうした地位に立ったことによる精神的心理的効果をも生じさせるものである。異性カップルであれば、所定の要件を充たすことにより、法律婚制度の下で、法律上及び事実上の多彩な効果を一体のものとして享受することができる。 他方、同性カップルは、本件諸規定が、同性カップルに対して法律婚制 度の利用を認めず、他にこれを認める法令の規定が存しないことにより、法制度の下で、法律上及び事実上の多彩な効果を一体のものとして享受することができない状態となっており、異性カップルとの間に著しい乖離が生じている。同性カップルは、自然生殖の可能性が存しないという点を除けば、親密な関係に基づき永続性をもった生活共同体を構成しう るという実態において、異性カップル カップルとの間に著しい乖離が生じている。同性カップルは、自然生殖の可能性が存しないという点を除けば、親密な関係に基づき永続性をもった生活共同体を構成しう るという実態において、異性カップルと何ら異なるところはなく(原告ら本人、弁論の全趣旨)、現在の医学心理学の知見によれば、性的指向及び性自認は、ほとんどの場合、人生の初期又は出生前に決定され、自らの意思や精神医学的な療法によって変更されるものではないとされている(認定事実⑴ア)点に照らせば、同性カップルが上記の状態に置かれ ている点が憲法上是認されるかどうかは、なお検討を要するというべき - 38 -である。 そして、憲法24条2項は、婚姻のほか、「家族」についても、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した立法の制定を要請している。家族という概念は、憲法でも民法でも定義されておらず、その外縁は明確ではなく、社会通念上は、多義的なものである。上記のとおり、同性カップ ルにおいても、親密な関係に基づき永続性をもった生活共同体を構成しうることは、異性カップルと何ら異ならないのであるから、同性カップルの関係性について、家族の問題として検討することは十分に可能なはずである。同項は、「両性の本質的平等」との文言を用いているが、家族の問題については、例えば、家督相続制度の復活の是非を取り上げれば、 両性間のみならず同性間の平等も問題となりうるのであり、「両性」の文言を「両当事者」と読み替えるまでもなく、同項は、両性が必ずしも関わらない家族の問題をも含めて規律していると理解することができると解される。 そこで、以下、同性カップルが上記の状態に置かれている点については、 「家族」に関する事項として、憲法24条2項に違反しないかを検討する。 ウ前記⑵アで見たとお ことができると解される。 そこで、以下、同性カップルが上記の状態に置かれている点については、 「家族」に関する事項として、憲法24条2項に違反しないかを検討する。 ウ前記⑵アで見たとおり、憲法24条2項は「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」と規定している。 婚姻及び家族に関する事項は、関連する法制度においてその具体的内容が定められていくものであることから、当該法制度の制度設計が重要な意味を持つものであるところ、同項は、具体的な制度の構築を第一次的には国会の合理的な立法裁量に委ねるとともに、その立法に当たっては、同条1項も前提としつつ、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべき であるとする要請、指針を示すことによって、その裁量の限界を画した - 39 -ものといえる。 そして、同条が、本質的に様々な要素を検討して行われるべき立法作用に対してあえて立法上の要請、指針を明示していることからすると、その要請、指針は、単に、憲法上の権利として保障される人格権を不当に侵害するものでなく、かつ、両性の形式的な平等が保たれた内容の法律 が制定されればそれで足りるというものではないのであって、憲法上直接保障された権利とまではいえない人格的利益をも尊重すべきこと、両性の実質的な平等が保たれるように図ること、婚姻制度の内容により婚姻をすることが事実上不当に制約されることのないように図ること等についても十分に配慮した法律の制定を求めるものであり、この点でも立 法裁量に限定的な指針を与えるものといえる。 他方で、婚姻及び家族に関する事項は、国の伝統や国民感情を含めた社会状況に についても十分に配慮した法律の制定を求めるものであり、この点でも立 法裁量に限定的な指針を与えるものといえる。 他方で、婚姻及び家族に関する事項は、国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ、それぞれの時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的な判断によって定められるべきものである。特に、憲法上直接保障された権利とまではい えない人格的利益や実質的平等は、その内容として多様なものが考えられ、それらの実現の在り方は、その時々における社会条件、国民生活の状況、家族の在り方等との関係において決められるべきものである。 そうすると、同条の要請、指針に応えて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定が上記のとおり国会の多方面にわたる検討と判断 に委ねられているものであることからすれば、婚姻及び家族に関する法制度を定めた法律の規定が憲法24条に適合するものとして是認されるか否かは、当該法制度の趣旨や同制度を採用することにより生ずる影響につき検討し、当該規定が個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超えるものとみざるを得な いような場合に当たるか否かという観点から判断すべきものと解するの - 40 -が相当である。 (夫婦同氏制大法廷判決参照)エ前記ウのとおり、憲法24条2項は憲法上直接保障された権利とまではいえない人格的利益をも尊重すべきこと等についても十分に配慮した法律の制定を求めるものである。 前記⑵アのとおり、同条1項は、婚姻をするかどうか、いつ誰と婚姻をするかについては、当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべきであるという趣旨を明らかにしたものと解され、このような婚姻をするについての自由は、 同条1項は、婚姻をするかどうか、いつ誰と婚姻をするかについては、当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべきであるという趣旨を明らかにしたものと解され、このような婚姻をするについての自由は、同項の規定の趣旨に照らし、十分尊重に値するものと解することができる。(再婚禁止期間大法廷判決参照) 上記の婚姻をするについての自由は、同条2項を通じて、法律により具体化された法律婚制度を利用するについての自由であると解されるが、そのような法律婚制度を利用するについての自由が十分尊重に値するものとされるべき所以は、婚姻の本質が、両当事者において永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むこと にあり、法律婚制度が、この本質に重要な価値を認め、これを具体化し実現し保護しようとしたことにあるためであると解される。そして、このような本質的な人間の営みは、法律婚制度が整えられる以前から歴史上自生的に生じたものと考えられる。したがって、法律婚制度を利用するについての自由が十分尊重に値するとされる背景にある価値は、人の 尊厳に由来するものということができ、重要な人格的利益であるということができる。 このような重要な人格的利益を実現するために制度化された法律婚制度は、既に見たように、両当事者等の身分関係を形成し、その関係を公証し、その身分関係を前提にこれを保護するのにふさわしい法律上の様々 な効果を付与し、事実上も多彩な効果が生じるものとなっている。そし - 41 -て、人間が社会的な存在であり、その人格的生存に社会的な承認が不可欠であることを踏まえれば、上記多彩な効果において、とりわけ重要なのは、両当事者が安定して永続的な共同生活を営むために、両当事者の関係が正当なものであるとして社会的に承 格的生存に社会的な承認が不可欠であることを踏まえれば、上記多彩な効果において、とりわけ重要なのは、両当事者が安定して永続的な共同生活を営むために、両当事者の関係が正当なものであるとして社会的に承認されることが欠かせないということである。それゆえに、法律婚制度には、様々な効果が付与され るにとどまらず、身分関係を公に認め、これを公示し公証する制度が結び付けられているものと解されるのである。 そうすると、永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むという重要な人格的利益を実現する上では、両当事者が正当な関係であると公証され、その関係を保護するのにふさわし い効果の付与を受けるための枠組みが与えられる利益が極めて重要な意義を有すると解されるのであり、単に、両当事者が共同生活を営むのを妨げられなければ事足りるとされるものではないというべきである。そして、こうした社会的承認は、様々な方法により与えられうるもので、歴史上も多様な方式、慣習が存在していたと考えられるが、わが国にお いては、国によって全国的に統一された均一の内容を持つ戸籍制度が完備されて久しくなり、国民の中にはなお法律婚を尊重する意識が幅広く浸透していることに鑑みると、国による統一された制度によって公証されることが、正当な関係として社会的承認を得たといえるための有力な手段になっていると理解することができる。 こうした両当事者の関係が国の制度により公証され、その関係を保護するのにふさわしい効果の付与を受けるための枠組みが与えられるという利益は、憲法24条2項により尊重されるべき重要な人格的利益であると解される。 しかしながら、同性カップルは、制度上、このような重要な人格的利益 を享受できていないのである。 - 利益は、憲法24条2項により尊重されるべき重要な人格的利益であると解される。 しかしながら、同性カップルは、制度上、このような重要な人格的利益 を享受できていないのである。 - 42 -オ前記ウのとおり、憲法24条の適合性を審査するためには、本件諸規定により具体化された現行の「家族」に関する法制度の趣旨を検討する必要がある。 既に見たとおり、歴史上、家族は、男女の結合関係(婚姻)を中核とし、その間に生まれた子の保護・育成を担うものであると捉えられてきてお り、本件諸規定の制定当時も、このような伝統的な家族観が支配的であった。そして、その後の社会情勢を踏まえても、依然として、婚姻制度の理解において自然生殖の可能性が完全に切り離されたとはいえない状況にあって、伝統的な家族観を重視する立場の国民が一定の割合を占めていることからすれば、男女の生活共同体に対して法律婚制度により公 証を与え、これを保護するための枠組みを設けることは、それ自体合理性を有するものではある。 しかしながら、婚姻の本質は、両当事者において永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことにあるのであり、伝統的な家族観が支配的であった旧民法の起草過程という時期 においてさえ、婚姻が両心の和合を性質とするものであるとされ、生殖不能が婚姻障害事由に掲げられなかったとおり(認定事実⑵イ)、婚姻の意義は、単に生殖と子の保護・育成のみにあるわけではなく、親密な関係に基づき永続性をもった生活共同体を構成することが、人生に充実をもたらす極めて重要な意義を有するものと理解されていたと解される。 このような親密な関係に基づき永続性をもった生活共同体を構成することは、同性カップルにおいても成しうるはずのものである。 実をもたらす極めて重要な意義を有するものと理解されていたと解される。 このような親密な関係に基づき永続性をもった生活共同体を構成することは、同性カップルにおいても成しうるはずのものである。 そして、近年家族の多様化が指摘されており、平成30年時点で、全世帯総数のうち独身世帯が占める割合は、昭和61年の18.2%から27.7%にまで上昇し、夫婦のみ世帯が占める割合も、同年の14. 4%から24.1%にまで上昇する一方、夫婦と未婚の子のみの世帯は、 - 43 -同年の41.4%から29.1%にまで減少するなど(認定事実⑺イ)、男女の結合関係を中核としてその間に生まれた子の保護・育成の機能を担うという伝統的な家族観が、唯一絶対のものであるというわけではなくなっていることが認められる。 また、同性愛を精神的病理であるとする見解は、20世紀後半頃には 否定されるに至り、性的指向それ自体は障害ではないとの知見が確立したことが認められる(認定事実⑴イ)。 さらに、前記認定事実⑶によれば、各種国際機関は、20世紀後半以降、性的少数者の権利保護に向けた活動を行ってきたところ、こうした活動の中には、同性カップルに対して異性カップルに認められていた遺 族年金の受給権を認めるもの(認定事実⑶ア及び同)のほか、同性カップル及びその子供を法的に認知し、異性カップルに与えられてきた法的利益が差別なく付与されることを推奨するもの(認定事実⑶イ)、性的指向及び性自認にかかわらず、家族を形成する権利を有することを宣明するもの(認定事実⑶ウ)など、同性カップルの生活共同体を保護 するものが含まれている。 加えて、諸外国においては、1989(平成元)年にデンマークが登録パートナーシップ制度を導入して以降、世界各国に 定事実⑶ウ)など、同性カップルの生活共同体を保護 するものが含まれている。 加えて、諸外国においては、1989(平成元)年にデンマークが登録パートナーシップ制度を導入して以降、世界各国において、同性カップルを公証するための制度(登録パートナーシップ制度等)が導入されるようになったほか(認定事実⑷ア及び同イ)、2000(平成12)年 には、オランダが世界で初めて同性婚制度を導入し、現在までに、証拠上確認できるだけでも、28か国が同性婚制度を導入していることが認められる(認定事実⑷ウ)。 我が国でも、平成12年頃以降、同性愛者等をめぐる人権問題の解決の必要性が指摘され(認定事実⑸ウ)、平成27年4月、地方自治体に おいて初めて登録パートナーシップ制度が導入され、令和4年1月時点 - 44 -までに147の地方自治体がこれを導入しているほか、令和2年4月以降、同性パートナーがいる区職員に対しても結婚休暇等を認める取組みを行う地方自治体も現れ始めている(認定事実⑸ウ)。 そして、国においても、2008(平成20)年以降、国連の条約機関等からの勧告を受け(認定事実⑶ア及び同イ)、平成14年以降、 性的少数者に対する偏見等の解消に向けた啓発活動が行われたほか(認定事実⑸ア)、性同一性障害者の戸籍上の性別変更を認める法律の制定(認定事実⑸ア)が行われた。さらに、平成29年には、一部諸外国から、同性婚の公式な承認を国レベルに拡大するなどの施策等の勧告がなされ(認定事実⑶イ)、それ以降、地方自治体や各種団体から、同性間 の婚姻を求める声明が発表されるに至っている(認定事実⑸ウ及び同エないし)。 以上のとおり、世界的に同性カップルの法的保護に向けた活動が活発化し、我が国でも、多数の地 から、同性間 の婚姻を求める声明が発表されるに至っている(認定事実⑸ウ及び同エないし)。 以上のとおり、世界的に同性カップルの法的保護に向けた活動が活発化し、我が国でも、多数の地方自治体が登録パートナーシップ制度を導入するに至り、国レベルでの法制化の声が上がっていることに加え、民 間企業においても、同性パートナーに家族手当等を適用するといった取組みを行う企業も現れ始め(認定事実⑸エ)、平成30年以降には、同性婚を法的に認めることに関する国民の意識調査において、賛成派が反対派を上回る結果が報告されるようになり、その中には賛成派が約6割半に及ぶとする結果や、20ないし50代の比較的若い層を対象とした ものでは、賛成派が、男性の約7割、女性の9割弱を占める結果も存在している(認定事実⑹ア)。 こうしてみると、家族の形態として、男女の結合関係を中核とした伝統的な家族観は唯一絶対のものであるというわけではなくなり、同性愛を精神的病理であるとする知見が否定されるに至った状況で、世界規模で 同性カップルを保護するための具体的な制度化が実現してきており、わ - 45 -が国でも同性カップルに対する理解が進み、これを承認しようとする傾向が加速しているということができる。そうすると、現行の家族に関する法制度における現行の法律婚制度はそれ単体としては合理性があるように見えたとしても、そこで重視されるべき価値に対する理解の変化に伴い、その享有主体の範囲が狭きに失する疑いが生じてきており、結果 として、同性愛者を法律婚制度の利用から排除することで、大きな格差を生じさせていながら、その格差に対して何ら手当てがなされていないことについて合理性が揺らいできているといわざるを得ず、もはや無視できない状況に至ってい 律婚制度の利用から排除することで、大きな格差を生じさせていながら、その格差に対して何ら手当てがなされていないことについて合理性が揺らいできているといわざるを得ず、もはや無視できない状況に至っていると考えられる。 カ前記ウのとおり、憲法24条の適合性を審査するためには、さらに、本 件諸規定により具体化された現行の法律婚制度が採用されたことによる影響を検討する必要がある。 同性カップルは、異性カップルと比較して、両当事者の関係が国の制度により公証され、その関係を保護するのにふさわしい効果の付与を受けるための枠組みを利用することができないという格差が生まれている。 そして、かかる枠組みを利用することができるという価値は、単に法律によって付与された価値というにとどまらず、人の尊厳に由来する重要な人格的利益を基礎としているというべきである。永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営もうとする同性カップルにおいて、婚姻に伴う個々の法的効果が付与されないのみな らず、その関係が国の制度によって公証されず、その関係を保護するのにふさわしい効果の付与を受けるための枠組みすら与えられない不利益は甚大なものである。このことは、性的少数者を対象とするアンケートにおいて、結婚相当証明書申請をしたい理由として、「法律上、家族として認めてほしいのでその第一歩として」と回答した者が、全体の半数以 上を占めていたこと(認定事実⑹イ)からも裏付けられる。 - 46 -確かに、同性カップルにおいても、原告らがそうであるように、結婚契約等公正証書を締結するなど、契約や遺言などの法律行為を行うことにより、一定程度、異性カップルに対するのと同等の効果を得ることが可能である。しかし、これらにより全てを賄えるも うであるように、結婚契約等公正証書を締結するなど、契約や遺言などの法律行為を行うことにより、一定程度、異性カップルに対するのと同等の効果を得ることが可能である。しかし、これらにより全てを賄えるものではないし、個々の法定効果の付与も大切ではあるが、それにとどまらず、同性カップルと いう関係が国の制度によって公証され、その関係を保護するのにふさわしい効果の付与を受けるための枠組みが与えられることに重大な価値があるのであり、これを享受できない不利益を解消することはできない。 そして、わが国におけるLGBTの人口規模は、必ずしも明らかではないが、平成27年及び平成28年に行われた調査では4.9%から7. 6%であったというのであり(前提事実⑴)、少なく見ても百万人単位には達するものと推定できる。そして、医学心理学的知見によれば、性的指向は、ほとんどの場合、人生の初期又は出生前に決定され、自らの意思や精神医学的な療法によって変わるものではないとされており(認定事実⑴ア)、性的指向が生来的な特性であり、環境によって変動するもの ではないと考えられること、LGBTの人口規模が実数という意味において近年に激増したとの知見が見当たらないことなどからすれば、現行の法律婚制度が制定された当初からLGBTの人口が相当数に上っていたと推認できるのであり、医学心理学的知見の変遷や社会意識の変革が生ずる前の時期もあったとはいえ、70年以上の長期にわたって少なく ない人口の同性カップルに対し、上記保護の枠組みが与えられていなかったものである。 このように個々の同性カップルが被る不利益を見ても、重大な人格的利益を享受できないものである上、その総体としての規模も期間も相当なものであるから、現行の法律婚制度が採用されつつ、同性カップルに対 このように個々の同性カップルが被る不利益を見ても、重大な人格的利益を享受できないものである上、その総体としての規模も期間も相当なものであるから、現行の法律婚制度が採用されつつ、同性カップルに対 する保護がなされない影響は深刻なものである。 - 47 -キ前記ウのとおり、他方で、婚姻及び家族に関する事項は、国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ、それぞれの時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的な判断によって定められるべきものであることは確かである。 しかしながら、同性カップルが国の制度によって公証されたとしても、 国民が被る具体的な不利益は想定し難い。現に、地方自治体においては、登録パートナーシップ制度が創設された以降、これを導入する地方自治体が増加の一途を辿っているが(認定事実⑸ウ)、これにより弊害が生じたという証拠はなく、むしろ、国民の間に同性カップルを承認しようとする機運が高まっている証左とも捉えられる。そして、婚姻制度が男 女の結合関係を中核としてその間に生まれた子の保護・育成の機能を担うという伝統的な家族観を重視する国民が一定数存在しており、その立場も尊重されるべきではあるものの、同性カップルを国の制度として公証したとしても、そのような伝統的家族観を直ちに否定することにはならず、共存する道を探ることはできるはずである。 また、現行の法律婚制度に付与されている効果は多彩なものがあるが、同居、協力扶助義務や関係解消時に離婚手続を要することなど、親密な関係に基づく生活共同体に付与されるべき本質的な効果においても、基本的に両当事者間で完結するものも少なくなく、このような法的効果を同性カップルに付与した場合の具体的な弊害も観念しにくいものである。 関係に基づく生活共同体に付与されるべき本質的な効果においても、基本的に両当事者間で完結するものも少なくなく、このような法的効果を同性カップルに付与した場合の具体的な弊害も観念しにくいものである。 そして、契約や遺言等の法律行為によって、婚姻によって付与される効果を一定程度実現できるということは、そのような効果を同性カップルに付与することに法律は弊害を認めていないとも理解できるものである。 確かに、婚姻に付与されるべき効果の中には、第三者の権利義務関係に影響を及ぼす事項のほか、様々な社会政策的判断により付与された権利 義務に関わる事項もあり、同性カップルに付与する効果如何によっては、 - 48 -直接第三者に影響を及ぼし、あるいは、既存の異性婚に変容をもたらす可能性があるものもあり、これを付与するか否かについては、民主政の過程において慎重に審議が尽くされるべきものと考えられるし、諸外国の立法経緯や立法内容が一様でないことは先に見たとおりである。 しかし、そのような性質を有する効果が含まれているとしても、公証さ れた関係に、その関係を保護するのにふさわしい効果を付与するための枠組み自体が与えられるべきことを否定すべきことにはならない。 そうすると、同性カップルに対し、その関係を国の制度によって公証し、その関係を保護するのにふさわしい効果を付与するための枠組み自体を存在させないようにするということと、存在を認めた上で、様々な立場 や他の諸利益と調整するなどしながら、いかなる効果を付与すべきか検討し決定していくということとでは、自ずと立法裁量の広狭に差が生じるものであると解される。 ク以上によれば、本件諸規定が、異性間に対してのみ現行の法律婚制度を設け、その範囲を限定することで、同性間に対しては、国の制 うこととでは、自ずと立法裁量の広狭に差が生じるものであると解される。 ク以上によれば、本件諸規定が、異性間に対してのみ現行の法律婚制度を設け、その範囲を限定することで、同性間に対しては、国の制度として公 証することもなく、その関係を保護するのにふさわしい効果を付与するための枠組み自体を与えない状態としているが、婚姻制度の趣旨に対する国民の意識の変化に伴い、同性カップルが法律婚制度に付与されている重大な人格的利益を享受することから一切排除されていることに疑問が生じており、累計的には膨大な数になる同性カップルが現在に至るまで長期間に わたってこうした重大な人格的利益の享受を妨げられているにもかかわらず、このような全面的に否定する状態を正当化するだけの具体的な反対利益が十分に観念し難いことからすると、同性カップルの関係を保護するのにふさわしい効果としていかなるものを付与するかという点においては、なお、国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえ つつ、それぞれの時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見 - 49 -据えた総合的な判断によって定められるべく、国会の裁量に委ねられるべきものとしても、上記の状態を継続し放置することについては、もはや、個人の尊厳の要請に照らして合理性を欠くに至っているものといわざるを得ず、国会の立法裁量の範囲を超えるものとみざるを得ないような場合に当たるというべきである。 したがって、本件諸規定は、同性カップルに対して、その関係を国の制度によって公証し、その関係を保護するのにふさわしい効果を付与するための枠組みすら与えていないという限度で、憲法24条2項に違反するものである。 ⑷ 憲法14条1項に違反するかについて ア憲法14条1項は、法 係を保護するのにふさわしい効果を付与するための枠組みすら与えていないという限度で、憲法24条2項に違反するものである。 ⑷ 憲法14条1項に違反するかについて ア憲法14条1項は、法の下の平等を定めており、この規定が、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものであると解すべきである(最高裁昭和37年第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁、最高裁昭和45年第1310号同48年4月4日大法廷判決・刑集27巻3号 265頁等)。 また、前記⑵ア及び⑶ウのとおり、憲法24条1項は、婚姻をするかどうか、いつ誰とするかについては、当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべきであるという趣旨を明らかにしたものと解され、このような婚姻をするについての自由は、同項の趣旨に照らし、十分尊重に 値するものと解することができ、同条2項は、婚姻及び家族に関する事項について、具体的な制度の構築を第一次的に国会の合理的な立法裁量に委ねるとともに、その立法に当たっては、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請、指針を示すことによって、その裁量の限界を画したものである(再婚禁止期間大法廷判決、夫婦同氏制大 法廷判決参照)。 - 50 -そうすると、婚姻及び家族に関する事項についての区別取扱いについては、立法府に与えられた上記の裁量権を考慮しても、そのような区別をすることに合理的な根拠が認められない場合には、当該区別は、憲法14条1項に違反するものということができる(最高裁平成24年第984号、第985号同25年9月4日大法廷決定・民集67巻6号13 20頁参照)。 イ原告らは、本件諸規定は、異性との結婚を希望する者 に違反するものということができる(最高裁平成24年第984号、第985号同25年9月4日大法廷決定・民集67巻6号13 20頁参照)。 イ原告らは、本件諸規定は、異性との結婚を希望する者(異性カップル)には婚姻を認め、同性との結婚を希望する者(同性カップル)には婚姻を認めないという、婚姻を希望する者の性的指向に基づく別異取扱いを行うものであると主張し、被告は、本件諸規定は、性的指向それ自体に着目し た区別を設けるためのものではなく、性的指向について中立的な規定であり、原告が主張する別異取扱いは、本件諸規定の適用の結果生じる事実上又は間接的な効果にすぎないと主張する。 この点、本件諸規定は、異性愛者であっても同性愛者であっても異性と婚姻することができるという意味で別異取扱いはなされていないが、婚 姻の本質は、両当事者において永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことにあるのであり、性的指向が向き合う者同士の婚姻をもって初めて本質を伴った婚姻といえるのであるから、性的指向が向かない相手との婚姻が認められるといっても、それは婚姻が認められないのと同義であって(異性愛者に同性との婚姻 のみを認めるとしても意味がないのと同じことである。)、同性愛者にとって同性との婚姻が認められていないということは、性的指向により別異取扱いがなされていることに他ならず、原告らの主張は採用できるものであり、これに反する被告の主張は採用しない。 そうすると、婚姻及び家族に関わる立法として、本件諸規定は、性的指 向という、ほとんどの場合、生来的なもので、本人にとっては自ら選択 - 51 -ないし修正する余地のない事柄を理由として、婚姻に対する直接的な制約を課すことになっているのであり、その 向という、ほとんどの場合、生来的なもので、本人にとっては自ら選択 - 51 -ないし修正する余地のない事柄を理由として、婚姻に対する直接的な制約を課すことになっているのであり、その合理的な根拠の有無について以上のような事柄の性質を十分考慮に入れた上で検討をすることが必要である。 ウそして、こうした事柄の性質を踏まえ、国会の立法裁量の範囲を超える ものとみざるを得ないような場合に当たるか否かという点については、既に検討したとおり、本件諸規定が、同性カップルに対して、その関係を国の制度によって公証し、その関係を保護するのにふさわしい効果を付与するための枠組みすら与えていないという限度で、このような場合に当たるというべきであるから、その限度で、憲法24条2項に違反すると同時に、 憲法14条1項にも違反するものといわざるを得ない。 3 本件諸規定を改廃しないことが国家賠償法上違法であるかについて(争点2)⑴ 国家賠償法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個々の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定する ものであるところ、国会議員の立法行為又は立法不作為が同項の適用上違法となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が個々の国民に対して負う職務上の法的義務に違反したかどうかの問題であり、立法の内容の違憲性の問題とは区別されるべきものである。そして、上記行動についての評価は原則として国民の政治的判断に委ねられるべき事柄であって、仮に当該立 法の内容が憲法の規定に違反するものであるとしても、そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではな れるべき事柄であって、仮に当該立 法の内容が憲法の規定に違反するものであるとしても、そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。 もっとも、法律の規定が憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが 明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃 - 52 -等の立法措置を怠る場合などにおいては、国会議員の立法過程における行動が上記職務上の法的義務に違反したものとして、例外的に、その立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上違法の評価を受けることがあるというべきである(最高裁昭和53年第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁、最高裁平成13年第82号、第 83号、同年第76号、第77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁、再婚禁止期間大法廷判決参照)。 前記2のとおり、本件諸規定は、同性カップルに対して、その関係を国の制度によって公証し、その関係を保護するのにふさわしい効果を付与するための枠組みを与えていないという限度で、憲法24条2項及び14条1項に 違反するものである。そこで、以下、本件諸規定がこの限度で憲法の規定に違反するにもかかわらず、国会議員がその改廃等の立法措置を怠ったことが、例外的に国会賠償法1条1項の規定の適用上違法の評価を受けることがあるかについて、検討する。 ⑵ この点、国際機関の動向を見ると、1994(平成6)年には、自由権規 約委員会が、男性同士の性行為等を処罰する法律が自由権規約に違反する旨の判断を示しているものの(認定事実⑶ア)、同性カップルに対する公 機関の動向を見ると、1994(平成6)年には、自由権規 約委員会が、男性同士の性行為等を処罰する法律が自由権規約に違反する旨の判断を示しているものの(認定事実⑶ア)、同性カップルに対する公証とそれに基づく効果を付与するための枠組みの必要性が明確にされたのは、2006(平成18年)年11月採択のジョグジャカルタ宣言において、性的指向及び性自認にかかわらず、家族を形成する権利を有することが謳われ たのが初めてである(認定事実⑶ウ)。そして、2008(平成20)年には、自由権規約委員会やUPRの下で、性的少数者の人権問題に関する具体的な勧告が行われたものの、そこでは、公営住宅法やDV防止法が同性カップルを排除していることの問題等が指摘され、性的指向及び性自認を理由とする差別の撤廃に向けた措置を講ずることが求められていたにすぎず(認定 事実⑶ア)、具体的に上記枠組みの必要性が勧告されたのは、2017 - 53 -(平成29)年のUPR第3回審査の過程で、スイスやカナダが、同性間の婚姻制度等の公式な承認を国レベルに拡大する措置を指摘したのが初めてである(認定事実⑶イ)。 また、デンマークが1989(平成元)年に登録パートナーシップ制度を導入しているものの、登録パートナーシップ制度等や同性婚制度が世界的に 広がりを見せたのは、2000(平成12)年頃以降のことであると認められ(認定事実⑷ア及び同ウ)、我が国において、地方自治体において登録パートナーシップ制度が初めて導入されたのは、平成27年4月のことである(認定事実⑸ウ)。そして、国に対して、地方自治体や民間企業、各種団体から、同性カップルの公証とそれに基づく法的利益を付与する枠組み の必要性が提言されるに至ったのも、平成28年頃以降のことであり 事実⑸ウ)。そして、国に対して、地方自治体や民間企業、各種団体から、同性カップルの公証とそれに基づく法的利益を付与する枠組み の必要性が提言されるに至ったのも、平成28年頃以降のことであり(認定事実⑸ウ及び同エ)、具体的な法案が国会に提出されるに至ったのは、令和元年6月のことであった(認定事実⑸イ)。 ⑶ 前記⑵によれば、我が国において、同性カップルに対する公証とそれに基づく効果を付与するための枠組みの必要性が具体的に認識されるに至ったの は、比較的最近のことであったと認められる。そして、婚姻及び家族に関する事項については、その具体的な制度の構築が第一次的には国会の合理的な立法裁量に委ねられる事柄であるところ、男女の結合関係を中核としてその間に生まれた子の保護・育成の機能を担うという伝統的な家族観が存在し、このような家族観は、今日においても失われてはおらず、同性婚の是非に関 し、令和2年時点での意識調査においても、一定数の反対派が存在したことにも照らせば、現時点において、本件諸規定が憲法24条2項及び14条1項に違反するものであることが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠っていたと評価することはできない。 ⑷ したがって、本件諸規定の改廃を怠ったことは、国会議員の立法過程にお - 54 -ける行動が上記職務上の法的義務に違反したものとはいえず、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないというべきである。 第4 結論よって、原告らの請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないことに帰するから、原告らの請求をいずれも棄却することとして主文の とおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第8部 裁判 その余の争点について判断するまでもなく、理由がないことに帰するから、原告らの請求をいずれも棄却することとして主文の とおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第8部 裁判長裁判官西村修 裁判官藤根康平 裁判官梁川将成は、転勤のため、署名押印することができない。 裁判長裁判官西村修 - 55 -(別紙1)当事者目録(省略) - 56 -(別紙2)当事者の主張 1 争点1(本件諸規定が憲法24条及び14条1項に違反するか)について⑴ 原告らの主張 ア原告らは、主位的には、本件諸規定が同性同士で利用できる婚姻制度を整備していないという法制度の不備ないし不存在状態が憲法24条及び14条1項に違反しており、予備的には、本件諸規定が同性同士の婚姻を阻害するものとして同条に違反していると主張するものである。 憲法24条1項の保障する婚姻の自由の主体には性的指向や性別の限定は なく、法律上同性の者と婚姻することも同項が保障する婚姻の自由に含まれると解すべきである。同条2項は、配偶者の選択にかかる法律を制定するにあたって個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚せよと定めるところ、この条項もまた性的指向や性別を限定するものではないから、同項は配偶者として法律上同性である者を選択する者がその個人の尊厳を尊重されるべきこと、 すなわち「男(女)だから女(男)と結婚する」と決めつけられない両性の本質的平等に立脚した法制度を作るべきことを立法に義務づけていると解釈すべきである。そして、仮に同性同士の婚姻 べきこと、 すなわち「男(女)だから女(男)と結婚する」と決めつけられない両性の本質的平等に立脚した法制度を作るべきことを立法に義務づけていると解釈すべきである。そして、仮に同性同士の婚姻を求める権利利益が同条の保障する範囲でないとしても、婚姻により生じる諸々の法的利益を享受する権利は重大な法的利益であり、これが性的指向や性別により不合理な差別を受け る場合には、憲法14条1項違反となるというべきである。 イ憲法24条1項違反憲法24条1項は、人と人の親密な関係に基づく、永続性をもった共同生活について、法律が要件と効果を定めて保護を与え承認・公証する制度(法律婚)の存在を前提に、この法律婚について、人が国家や第三者に干渉され ることなく、望む相手との意思の合致のみにより婚姻をなし得る自由(婚姻 - 57 -の自由)を保障する。これは、婚姻の自由が、憲法13条の保障する自己決定権の重要な一内容を構成するとともに、社会の多元性を確保し、公正な民主主義社会を築く上での必須の基盤だからである。婚姻の自由は、前近代的な身分制度や共同体的拘束からの解放を意味するものであり、近代的婚姻の本質的属性である。このことは憲法24条の制定過程からも明らかである。 そして、婚姻の自由が憲法上の権利に高められた根拠は同性カップルにも等しく妥当するから、同条1項は、同性間にも婚姻の自由を保障していると解すべきである。 この点、同項は「両性」という文言を用いるが、明治民法下の家制度における婚姻についての戸主同意権を否定する趣旨であり、同性間の婚姻を否定 するものではない。また、仮に憲法制定当時、同性間の婚姻が想定されていなかったとしても、婚姻及び家族の形態の多様化により、婚姻と生殖との不可分の結合関係が失われた一 あり、同性間の婚姻を否定 するものではない。また、仮に憲法制定当時、同性間の婚姻が想定されていなかったとしても、婚姻及び家族の形態の多様化により、婚姻と生殖との不可分の結合関係が失われた一方、性的指向及び性自認に対する社会認識の根本的な転換が起こり、性的指向及び性自認を理由とする差別が禁止され、これを理由とする人権の制約は許されないことが国際社会における普遍的な認 識となっており、諸外国の中には、同性間の婚姻を認める立法を制定したものも多数存在し、我が国でも、多数の地方自治体が同性カップルの関係を公証する登録パートナーシップ制度を導入し、諸団体から同性婚の法制化を求める声が上がり、各種世論調査において同性間の婚姻への賛成が多数を占めている。これらの社会情勢の変化等に照らせば、同性間の婚姻も「婚姻」に 含まれるとする社会的な意識が確立したというべきであるから、同項が同性間の婚姻を保障していることは明らかである。 しかるに、本件諸規定は、同性間の婚姻を認めておらず、同性間の婚姻の自由を不当に侵害しているから、その限りで違憲・無効である。 ウ憲法24条2項違反 憲法24条2項は、「配偶者の選択…並びに婚姻及び家族に関するその他 - 58 -の事項」に関する国の立法裁量を、「個人の尊厳と両性の本質的平等」の要請によって限界付けているところ、同性カップルが、その生活実態において異性カップルと変わらない結婚生活を営んでいるにもかかわらず、婚姻制度から同性カップルを除外することは、実質的平等、すなわち本質的平等に違反する。そして、当該平等違反は、同条1項で保障された婚姻の自由に対す る直接的制約を課するものである上、性的指向及び性自認が、個人のアイデンティティの根幹をなすもので、本人の意思や努力で変更 反する。そして、当該平等違反は、同条1項で保障された婚姻の自由に対す る直接的制約を課するものである上、性的指向及び性自認が、個人のアイデンティティの根幹をなすもので、本人の意思や努力で変更できるものでもないことからすれば、上記平等違反が許容されるかは厳格に審査されるべきである。 この点、婚姻に係る意思決定は、人の全存在を左右する人生そのものと同 値される営みであり、そのことは同性カップルにおいても何ら異なるところはないことに照らせば、同性カップルの婚姻を否定することは、同性愛者の「尊厳」を毀損するものである。そして、そのような尊厳の毀損を許容できるほどの合理性や必要性を見出すことは不可能であり、同性間の婚姻を認めないことは、同条2項に違反する。 そして、国会は、同条1項を根拠として、婚姻を他の結合より優遇し得るとしても、そのことから生じる不利益的取扱いは、同条2項ないし憲法14条1項の観点から合理的な根拠に基づくものでなければならないというべきであり、仮に憲法24条1項に違反しないと判断されたとしても、同条2項ないし憲法14条1項の適合性審査を免れるものではないことに留意すべき である。 エ憲法14条1項違反本件諸規定は、異性との婚姻を希望する者(異性カップル)には婚姻を認め、同性との結婚を希望する者(同性カップル)には婚姻を認めないという、婚姻を希望する者の性的指向に基づく別異取扱いを行うものである。そして、 当該別異取扱いにより、同性愛者は、憲法24条1項が保障する婚姻の自由 - 59 -を享受できないことはもとより、正式なカップルとして社会的承認を享受することもできず、婚姻当事者に認められる法律上、経済上、社会上及び事実上の利益を全く得られないという重大な不利益を被っている。 を享受できないことはもとより、正式なカップルとして社会的承認を享受することもできず、婚姻当事者に認められる法律上、経済上、社会上及び事実上の利益を全く得られないという重大な不利益を被っている。そして、性的指向に基づく上記別異取扱いが憲法14条1項後段の「社会的身分」及び「性別」に基づくものであること、性的指向は自らの意思や努力によって変 更できるものではないこと、同性愛者が社会的に少数であり、民主制の過程での救済が困難であることなどに照らせば、本件別異取扱いの合理性の有無は、厳格に審査されるべきである。 この点、婚姻及び家族の形態の多様化により、婚姻と生殖との不可分の結合関係が失われ、婚姻の意義は、パートナーとの人格的結びつきの安定化に 見出されるようになった。そして、当該安定化の要請は、同性カップルにも等しく妥当するものであるし、婚姻によって生じる各種権利・利益について、同性カップルを排除すべき理論的根拠は存在しない。また、同性カップルに婚姻を認めないことは、同性愛者に「社会が承認しない関係性」というスティグマを付与し、同性愛者の尊厳を毀損するものもある。以上によれば、当 該別異取扱いに合理的根拠が存在せず、本件諸規定は、同項に違反する。 なお、かつては異性愛を「正常」なものとして、同性愛を含むそれ以外の性愛を「異常」とする異性愛規範が存在していたが、同性愛を精神的病理とみなす見解は、すでに精神医学等の分野で否定され、国際社会では、同性愛等の差別が許されないことは普遍的認識となっている。そして、前記イのと おり、同性間の婚姻も「婚姻」に含まれるとする社会的な意識が確立したことにも照らせば、もはや異性愛規範が否定され、上記別異取扱いが許されないことは明らかである。 ⑵ 被告の主張ア憲法24条1 おり、同性間の婚姻も「婚姻」に含まれるとする社会的な意識が確立したことにも照らせば、もはや異性愛規範が否定され、上記別異取扱いが許されないことは明らかである。 ⑵ 被告の主張ア憲法24条1項違反の主張について 憲法24条1項は、婚姻が「両性」の合意のみに基づいて成立する旨を規 - 60 -定するにすぎず、「同性」同士の婚姻を想定していない。また、同項の制定経緯等を見ても、婚姻は男女間の関係であることが当然の前提とされており、現在でもそのような理解が一般的である。したがって、同性間の婚姻も「婚姻」に含まれるとする社会的な意識が確立しているともいえない。 さらに、婚姻は、一定の法制度の存在を前提とするものであり、同項は、 婚姻をするについての自由を、法制度を離れた生来的・自然権的な権利又は利益として保障するものではない。原告らの主張は、現行の法制度の枠を超えて同性の者を婚姻相手として選択できることを含む内容の法制度の創設を求めるものにほかならず、このような権利が憲法13条によって基礎づけられるものではなく、憲法24条1項が、そのような立法を国家に命じている ものでもない。 以上によれば、同性カップルについて、婚姻をするについての自由が保障されているとはいえず、本件諸規定は、同項に違反しない。 イ憲法24条2項違反の主張について前記アのとおり、憲法24条1項は、同性カップルについて、婚姻をする についての自由を保障するものではないところ、同条2項は、あくまで婚姻が異性間の人的結合関係を対象とするものであることを前提に、これを具体化する制度の整備を立法府に要請するものであり、立法府に対し、同性間の人的結合関係をも対象として婚姻を認める立法措置を執ることを要請していると解することはでき するものであることを前提に、これを具体化する制度の整備を立法府に要請するものであり、立法府に対し、同性間の人的結合関係をも対象として婚姻を認める立法措置を執ることを要請していると解することはできない。したがって、同性間の婚姻を認めていない本件 諸規定は、同項に違反しない。 ウ憲法14条1項違反の主張について憲法24条は、異性間の婚姻のみを想定している以上、異性間の法律婚についてのみ制度化され、同性間の法律婚については制度化されていないという差異が生じることは当然の帰結にすぎず、このような差異が生じることは、 憲法自体が予定し、許容するものであるから、そもそも憲法14条1項適合 - 61 -性が問題となる余地はない。 仮に同項適合性が問題となる余地があるとしても、婚姻及び家族に関する法制度の構築についての立法裁量を前提に適合性が判断されなければならない。婚姻及び家族に関する事項は、国の伝統や国民感情を含めた社会的状況における種々の要因を踏まえつつ、それぞれの時代における要因の変化につ いても考慮した総合的な判断によって定められるべきであり、特に、憲法上直接保障された権利とまではいえない利益や実質的平等については、その内容として多様なものが考えられ、その実現の在り方は、その時々における社会的条件、国民生活の状況、家族の在り方等との関係において決められるべきものである。その詳細については、憲法が一義的に定めるのではなく、法 律によってこれを具体化することがふさわしいものと考えられ、憲法24条2項は、このような観点から、婚姻及び家族に関する事項について、具体的な制度の構築を第一次的には立法府の合理的な裁量に委ねるとともに、その立法に当たっては、同条1項を前提としつつ、個人の尊厳と両性の本質的平等に うな観点から、婚姻及び家族に関する事項について、具体的な制度の構築を第一次的には立法府の合理的な裁量に委ねるとともに、その立法に当たっては、同条1項を前提としつつ、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請、指針を示すことによって、その立法裁量 の限界を画したものといえる。そうすると、婚姻及び家族に関する事項が憲法14条1項に違反するか否かについては、憲法24条の解釈と整合的に判断する必要がある。そして、同条が同性間の人的結合関係を対象とする婚姻制度を構築することを想定していないこと、本件諸規定は、性的指向それ自体に着目した区別を設けるものではなく、性的指向について中立的な規定で あり、原告らの主張する別異取扱いは、本件諸規定の適用の結果生じる事実上又は間接的な効果にすぎないこと、婚姻の法的効果を享受する利益や婚姻をすることについての自由は、法制度を離れた生来的、自然権的な権利又は利益として憲法で保障されているものではないことからすると、本件諸規定が憲法14条1項に違反すると評価されるのは、婚姻によって生じる法的効 果を享受することができるか否かという点について、同性愛者と異性愛者と - 62 -の間の性的指向による差異を結果として生じさせる本件諸規定の立法目的に合理的な根拠がなく、又はその手段・方法の具体的内容が立法目的との関連において著しく不合理なものといわざるを得ないような場合であって、立法府に与えられた広範な裁量の範囲を逸脱し又は濫用するものであることが明らかである場合に限られる。 この点、本件諸規定の目的は、婚姻は生殖と子の養育を目的とする男女の結合であるとの我が国の伝統、慣習を制度化し、男女が子を産み育てながら共同生活を送るという関係に対して歴史的に形成されてきた社会的な承 の点、本件諸規定の目的は、婚姻は生殖と子の養育を目的とする男女の結合であるとの我が国の伝統、慣習を制度化し、男女が子を産み育てながら共同生活を送るという関係に対して歴史的に形成されてきた社会的な承認が存在していることに鑑み、このような男女の結合関係に対して特に法的保護を与えるところにあり、合理性がある。そして、本件諸規定が実際の自然生 殖可能性の有無にかかわらず婚姻を認めていることについては、生物学的な自然生殖可能性を基礎として抽象的・定型的に立法目的を捉えて、婚姻をすることができる夫婦の範囲を定めていることによるもので立法目的との関連において合理性を有するものであり、また、本件諸規定が同性婚を定めていないことについても、憲法24条が同性間の人的結合関係を対象とする婚姻 を定めることを想定していないこと、同性間の人的結合関係を異性間のそれと同視し得るほどの社会的な承認が存在しているともいい難いこと、同性カップルにおいて婚姻類似の人的結合関係を構築し、共同生活を営むことが制限されているわけではなく、民法上の他の制度を利用することにより、婚姻制度を利用できないことによる不利益が相当程度解消又は軽減されているこ とからすれば、立法目的との関連において合理性を有するものである。 したがって、本件諸規定の立法目的には合理的な根拠があり、異性間の人的結合関係についてのみ婚姻を定め、同性婚を定めていない本件諸規定の内容は、その目的との関連において合理性を有するから、立法府に与えられた裁量を明らかに逸脱し又は濫用した場合には当たらず、本件諸規定が、結果 として原告らの主張する別異取扱いをもたらすとしても、憲法14条1項に - 63 -違反するものではない。 2 争点2(本件諸規定を改廃しないことが国家賠償法上違法で 件諸規定が、結果 として原告らの主張する別異取扱いをもたらすとしても、憲法14条1項に - 63 -違反するものではない。 2 争点2(本件諸規定を改廃しないことが国家賠償法上違法であるか)について⑴ 原告らの主張法律の規定が憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにも かかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合などにおいては、国会議員の立法過程における行動が職務上の法的義務に違反したものとして、例外的に、その立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けることがあるというべきである。 国会は、①性的指向及び性自認に基づく差別等が個人の尊重の観点から許さ れないという法規範が確立されていること、②婚姻が個人の尊重に不可欠な自己決定の一内容であることを認識できれば、本件諸規定が違憲であることを明白に認識し得たはずである。この点、上記②については、日本国憲法が制定された昭和22年の時点で既に明らかであり、国会にとっても認識可能であったから、本件諸規定が違憲であることが明白となったのは、上記①についての認 識が可能となった時点ということになる。そして、上記①についての認識が可能となった時点としては、いくつか考えられるが、我が国が、平成20(2008)年以降、国連の条約機関等から、性的指向及び性自認に関する人権保障についての勧告を受け、性的指向及び性自認に基づく差別が許されないことを前提に国内外で積極的な活動を開始していることなどに照らせば、同年よりも 遅くなることはない。 そして、同性間の婚姻を認める立法措置を執ることについて立法技術的な困難を伴うものでもないことから に国内外で積極的な活動を開始していることなどに照らせば、同年よりも 遅くなることはない。 そして、同性間の婚姻を認める立法措置を執ることについて立法技術的な困難を伴うものでもないことからすると、国会は、平成20年以降、原告らが結婚契約等公正証書を作成した●●●●●●●●の時点まで、既に長期にわたって本件諸規定の改廃等を怠っていたというべきであるから、かかる立法不作為 は、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受ける。 - 64 -⑵ 被告の主張前記1⑵(被告の主張)のとおり、本件諸規定は、憲法24条及び14条1項に違反するものではないから、これを改廃しなかったことが、国会議員が個々の国民に対して負う職務上の法的義務に違反したものとして国家賠償法1条1項の適用上違法と評価される余地はない。 3 争点3(原告らの損害額)について⑴ 原告らの主張原告らは、憲法上保障される婚姻の自由を侵害され、婚姻当事者に認められる法律上、経済上、社会上及び事実上の利益を全く得られないという重大な不利益を被った。また、「社会が承認しない関係性」というスティグマを付与さ れ、個人の尊厳を傷つけられた。かかる精神的苦痛を金銭に評価すれば、原告らそれぞれについて、各100万円を下らない。 ⑵ 被告の主張損害の発生及びその額については、否認し争う。
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