平成25(ワ)3832 不正競争行為差止請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年1月20日 東京地方裁判所
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平成26年1月20日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成25年(ワ)第3832号不正競争行為差止請求事件口頭弁論終結日平成25年10月16日判決東京都江戸川区<以下略>原告株式会社フキ同訴訟代理人弁護士木 内 加奈子同訴訟代理人弁理士木内光春同補佐人弁理士片桐貞典同中 島 由布子東京都江戸川区<以下略>被告株式会社後藤製作所同訴訟代理人弁護士橘高郁文同補佐人弁理士峯 唯夫同齋藤 康 主文 1 被告は,錠前,キーホルダーの販売及び宣伝広告に当たり,別紙被告標章目録記載の標章1を付してはならない。 2 被告は,鍵加工機械装置の販売及び宣伝広告に当たり,別紙被告標章目録記載の標章6を付してはならない。 3 被告は,別紙被告標章目録記載の標章1を付した錠前,キーホルダーを製造し,販売し,又は販売のために展示してはならない。 4 被告は,別紙被告標章目録記載の標章6を付した鍵加工機械装置を製造し,販売し,又は販売のために展示してはならない。 5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用はこれを10分し,その9を原告の負担とし,その余を 被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,鍵,錠前,キーホルダー,鍵加工機械装置の販売及び宣伝広告に当たり,別紙被告標章目録記載の標章1ないし7 ,その余を 被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,鍵,錠前,キーホルダー,鍵加工機械装置の販売及び宣伝広告に当たり,別紙被告標章目録記載の標章1ないし7を付してはならない。 2 被告は,別紙被告標章目録記載の標章1ないし7を付した鍵,錠前,キーホルダー,鍵加工機械装置を製造し,販売し,又は販売のために展示してはならない。 第2 事案の概要本件は,原告が,別紙原告標章目録記載の標章1ないし3(以下,それぞれ「本件標章1」などといい,これらを併せて「本件標章」という。)は原告の販売する鍵,錠前,キーホルダー,鍵加工機械装置その他関連商品及び錠前修理保守サービスを表示する商品等表示として周知であるから,被告が,本件標章と同一又は類似の標章である別紙被告標章目録記載の標章1ないし7(以下,それぞれ「被告標章1」などといい,これらを併せて「被告標章」という。)を鍵,錠前,キーホルダー,鍵加工機械装置若しくはこれらの宣伝広告に付し,又は被告標章を付した上記商品を販売するなどして原告の商品と混同を生じさせる行為は,不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争に該当するところ,被告は,被告標章1ないし5及び7を使用しており,かつ,被告標章6を使用するおそれがあると主張し,同法3条1項に基づく侵害の停止・予防請求として,上記商品又はその宣伝広告に被告標章を付すこと及び被告標章を付した上記商品を販売等することの差止めを求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。)(1) 当事者等ア原告は,合鍵製作用のキーブランクを含む鍵,合鍵複製機,錠前,防犯金具等の各種防犯商品の販売取付け及び施工並びに合鍵複製を業とする株 式会社である。 (1) 当事者等ア原告は,合鍵製作用のキーブランクを含む鍵,合鍵複製機,錠前,防犯金具等の各種防犯商品の販売取付け及び施工並びに合鍵複製を業とする株 式会社である。 イ被告は,合鍵製作用のキーブランクを含む鍵,合鍵複製機の製造,販売及び輸出等を業とする株式会社である。 ウ原告の代表者であるA(以下「原告代表者」という。)と被告の前代表者であったB(以下「被告創業者」という。)は兄弟であり,被告の現在の代表者であるC(以下「被告代表者」という。)は被告創業者の子である。 (2) 被告による被告標章の使用等ア被告は,被告標章2ないし5を使用する原告の元販売代理店に対し,被告標章7を付したキーブランクを販売した。 イ被告は,キーブランク,封筒に被告標章7を付し,かつ,被告の運営するウェブページに被告標章7を表示して使用している。 ウ被告は,本件標章と同一又は類似の標章を使用する可能性がある。 (3) 本件標章と被告標章ア本件標章(ア) 本件標章1本件標章1は,鍵頭を右(向かって右をいう。以下同じ。)にして横向きに置いた黒色の鍵母材の図形の中に,白抜きの欧大文字で「FUKI」と横書きしてなる標章である。鍵母材の右端(鍵頭の上部)には,キーリング穴を模した小さい丸型が白抜きで表示されている。また,「FUKI」の文字は,右上に向かってやや傾いており,「F」の上の横棒は「UKI」の上に直線状に長く伸ばされている。 (イ) 本件標章2本件標章2は,片仮名で「フキ」と横書きしてなる標章である。「フキ」の文字は,棒状に直線的に表記されており,横棒に比べて縦棒の方がやや太く,また,「キ」の縦線が上から下へ向かって左側へ移動し垂 直方向に対し 仮名で「フキ」と横書きしてなる標章である。「フキ」の文字は,棒状に直線的に表記されており,横棒に比べて縦棒の方がやや太く,また,「キ」の縦線が上から下へ向かって左側へ移動し垂 直方向に対して右に傾いている。 (ウ) 本件標章3本件標章3は,ゴシック体の欧大文字で「FUKI」と横書きしてなる標章である。 イ被告標章(ア) 被告標章1は,本件標章1と同一の標章である(以下,本件標章1と被告標章1を併せて「本件標章1」という。)。 (イ) 被告標章2は,本件標章とほぼ同一の標章(ただし,「FUKI」の文字がやや細い。)の下部に,鍵頭部分に文字の一部が重なるようにして,横書きで「HACHIOUJI」と表示したものである。 (ウ) 被告標章3ないし5は,それぞれ「フキ八王子」,「名古屋フキ」,「北海道フキ」と横書きしてなる標章である。 「フキ」の文字の表示態様は,本件標章2とほぼ同一である。 (エ) 被告標章6は,本件標章2と同一の標章である(以下,本件標章2と被告標章6を併せて「本件標章2」という)。 (オ) 被告標章7は,本件標章3と同一の標章である(以下,本件標章3と被告標章7を併せて「本件標章3」という。)。 (4) 本件標章についての商標登録ア被告創業者は,昭和38年9月11日,別紙商標権目録3のとおり,本件標章3について商標登録出願を行い(出願番号38-038936),昭和39年12月1日にその登録を受けた(登録番号0660152号)(乙131。登録時から平成17年1月26日の書換登録までの指定商品は第13類「手動利器,手動工具,金具(他の類に属するものを除く)」である。)(以下「本件商標権3」という。)。 0660152号)(乙131。登録時から平成17年1月26日の書換登録までの指定商品は第13類「手動利器,手動工具,金具(他の類に属するものを除く)」である。)(以下「本件商標権3」という。)。 イ被告創業者は,昭和46年6月25日,本件標章1,2及びゴシック体の片仮名で「フキ」と横書きした商標(本件標章2の「フキ」の文字の全 ての線が直線的に構成されているのに対し,ゴシック体ながら「フ」の文字の斜め線部分が標準文字のように曲線的な部分を有し,「キ」の文字の斜め線部分も本件標章2と異なり,縦線が標準文字と同じく垂直方向に対して左に傾いている商標である。)について,次のとおり,本件商標権3の連合商標として,商標登録出願を行い,昭和49年から50年にかけて登録査定を受け,昭和50年から51年にかけてその登録を受けた(甲10ないし17)。 (ア) 本件標章1に係る商標権(以下,a及びbを併せて「本件商標権1」という。)a 出願番号 46-066230,登録番号 1183493号(別紙商標権目録1(1)のとおり。登録時から平成18年3月29日の書換登録までの指定商品は第9類「産業機械器具,動力機械器具(電動機を除く)風水力機械器具,その他の機械器具で他の類に属しないもの,これらの部品及び附属品(他の類に属するものを除く)機械要素」である。)b 出願番号 46-066232,登録番号 1191200号(別紙商標権目録1(2)のとおり。平成18年3月22日の書換登録までの指定商品は第13類「鍵」である。)(イ) 本件標章2に係る商標権(以下「本件商標権2」といい,本件商標権1ないし3及び下記(ウ)の商標権を併せて「本件商標権」という。)出願番号 46-066231,登録番号 1105386号(別紙商標権目 標章2に係る商標権(以下「本件商標権2」といい,本件商標権1ないし3及び下記(ウ)の商標権を併せて「本件商標権」という。)出願番号 46-066231,登録番号 1105386号(別紙商標権目録2のとおり。平成17年7月13日の書換登録までの指定商品は第13類「手動利器,手動工具,金具(他の類に属するものを除く)」である。)(ウ) 上記ゴシック体片仮名の「フキ」に係る商標権出願番号 46-66229,登録番号 1183492号 ウ被告代表者は,被告創業者から本件商標権の承継を受け,平成23年1月4日受付により,その登録をした(甲10,12,14,16,乙131)。 2 争点(1) 本件標章は被告にとって「他人の商品等表示」に当たるか。 (2) 本件標章の周知性(3) 被告による原告元販売店に対する本件標章1及び2の使用許諾の有無(4) 混同のおそれの有無(5) 被告による本件標章の使用は,商標権者による登録商標の使用として適法なものか。 第3 争点に対する当事者の主張 1 争点(1)(本件標章は被告にとって「他人の商品等表示」に当たるか。)(原告の主張)(1) 原告による本件標章の使用ア本件標章1原告は,昭和46年頃から現在に至るまで,本件標章1を合鍵複製機,各種工具,錠前,キーアクセサリーその他関連商品又はその包装に付して販売しており,上記商品は,全国各地において,少なくとも5年以上にわたり販売されている。また,原告は,本件標章1を上記商品の広告カタログ及び販売ディスプレイ用架台,名刺,注文書,納品書,封筒,店舗の看板,のぼり,社用車(解錠サービス及び錠前修理施工サービスの際に使用するもの)等に表示して使用している。 1を上記商品の広告カタログ及び販売ディスプレイ用架台,名刺,注文書,納品書,封筒,店舗の看板,のぼり,社用車(解錠サービス及び錠前修理施工サービスの際に使用するもの)等に表示して使用している。 イ本件標章2原告は,昭和46年頃から現在に至るまで,本件標章2を合鍵複製機,各種工具,錠前,キーアクセサリーその他関連商品又はその包装に付して販売し,また,本件標章2を上記商品の広告カタログ及び販売ディスプレ イ用架台,名刺,納品書,封筒,店舗の看板,のぼり,社用車(解錠サービス及び錠前修理施工サービス等の際に使用するもの)等に表示して使用している。 さらに,原告は,昭和46年頃から現在に至るまで,本件標章2の左側に「株式会社」を付け,原告の社名表示としても使用している。 ウ本件標章3原告は,昭和46年頃から現在に至るまで,本件標章3を合鍵作成用のキーブランクに打刻し,また,キーマシンの鍵固定具に付して使用している。 さらに,原告は,鍵,キーホルダー,キーマシン,ネームマシン等の広告及びカタログにおいて,本件標章3の右側に「CO.,LTD.」を付し,原告社名の英語表示として使用している。 (2) 以上のとおり,原告は,昭和46年から現在に至るまで,累計5000種類以上にわたる商品に本件標章を使用し,また,原告の社名表示としても使用しているのであって,本件標章を商品若しくはその包装に付した商品又はその広告に本件標章を付して展示若しくは販売した商品の年間平均売上高は14億9389万4872円,昭和46年から平成24年までの累計売上高は612億4968万9747円に達する。 よって,本件標章は,原告が提供する鍵,錠前,キーホルダー,鍵加工機械装置その他関連商品又は錠前修理保守のサービスを表示 から平成24年までの累計売上高は612億4968万9747円に達する。 よって,本件標章は,原告が提供する鍵,錠前,キーホルダー,鍵加工機械装置その他関連商品又は錠前修理保守のサービスを表示するものとして広く認識されているものであり,原告の商品等表示であることは明白である。 (3) 本件標章が被告又は原告・被告の一体事業を表示するものではないことア被告は,本件標章は被告を表示するものであり,または,本件標章は原告及び被告の製造・販売一体事業を表示するものであるから,被告にとって「他人の」商品等表示に当たらないと主張するが,次のとおり失当である。 イ原告と被告が一体のグループを形成するものではないこと(ア) 東京高判平成17年3月16日(平成16年(ネ)第2000号〔アザレ化粧品事件〕によれば,各企業の事業に一体性が認められるためには,①商品に製造元と販売元の各表示がある,②企業間で株式の持ち合いや役員の重複がある,③製造業者に独占的販売権がある,④商品の販売網の作成に当たり,両者が協力している,⑤商品の製造について両者が協議の上決定する,⑥企業の設立に当たり協力したことが考慮されるべきとされているところ,原告及び被告間にこのような関係はない。 (イ) すなわち,⑥被告創業者が原告の設立を容認し,被告の製造した商品を原告が販売した限りにおいては被告の協力があったことを認めるが,原告の設立に当たり,被告から金銭的・人的援助があったわけではない。 また,①原告の販売する商品には,被告の表示は一切ない。さらに,②原告と被告間に資本関係や役員の兼任関係はなく,③原告は,その販売する商品について被告に制限されることなく自由に製造業者を選定できるのであるから,被告に独占的な製造権はない。加えて,④原告は,自らの販路拡 告間に資本関係や役員の兼任関係はなく,③原告は,その販売する商品について被告に制限されることなく自由に製造業者を選定できるのであるから,被告に独占的な製造権はない。加えて,④原告は,自らの販路拡大のため,原告の販売代理店を全国各地に展開し,それら販売代理店の株式を保有することにより,原告を中心とするフキグループを構築したが,上記全国展開に当たり,被告が出資し,又は何らかの協力をしたことは全くなかった。さらに,⑤原被告間で商品開発会議等が開かれたことは一度もなく,商品の製造に当たり両者が協議して決定することはなかった。 したがって,上記裁判例において示された基準に従って検討しても,原告と被告が一体のグループを形成するものとは評価できない。 (ウ) 被告の主張は,原告代表者と被告創業者が兄弟であることや,商品の製造を被告が,販売を原告が分担した事実のみを捉えて,原告と被告が一体のグループであると主張するものであり,失当である。 (エ) したがって,原告と被告は一体のグループを形成するものではない。 ウ本件標章が被告又は原告と被告の一体事業を表示するものではないこと上記イのとおり,原告と被告が一体事業を構成する関係にない以上,本件標章が原告と被告の一体事業を表示することもない。被告がその主張の根拠として挙げる証拠は,頒布された先,時期,枚数が不明であり(甲273,乙12,18,22),又は被告に対し送付された内部文書にすぎないものであって(乙17),被告の主張を裏付けるに足りない。また,乙19,20,21には被告名の表示はなく,本件標章と被告とを結びつける証拠となるものではない。 したがって,本件標章は,原告と被告の一体事業を表示するものに当たらない。 被告が原告との一体性を主張すること自体,原告の商品等 はなく,本件標章と被告とを結びつける証拠となるものではない。 したがって,本件標章は,原告と被告の一体事業を表示するものに当たらない。 被告が原告との一体性を主張すること自体,原告の商品等表示としての周知性にただ乗りしようとする意図があるといわざるを得ない。 エ本件標章が被告の商品等表示ではないこと(ア) 被告は,平成21年11月以前に本件標章1及び2を使用したことはなく,本件標章3の使用により,本件標章1,2についても使用したとみなすべきと主張しているにすぎない。そして,被告は,遅くとも昭和46年の原告設立以降は本件標章3を自己のために使用したことはなく,原告のために本件標章3をキーブランクに刻印し,これを納入していたにとどまるものであるところ,上記使用(キーブランクへの刻印)は,原告のために行われたものであり,以下のとおり,上記刻印は原告を示す表示であって,被告を示す表示ではない。 (イ) キーブランクの刻印が原告を示す表示であることa 原告の販売店を訪れ,合鍵複製を依頼した需要者が,本件標章3が刻印されたキーブランクや当該キーブランクを用いて作製された合鍵を見た場合,販売店の名称が「フキ」を含むことと,本件標章3が 「FUKI」というものであることを併せて考え,本件標章3は原告の標章であると理解するのが当然である。これに加えて,合鍵を需要者に引き渡す際に,合鍵又はその包装に被告を示す表示が全く付されていないことも考慮すれば,上記需要者が,本件標章3を,称呼において異なる被告の表示であると理解することなど不可能である。 原告が傘下の代理店や卸売業者にキーブランクを販売する場合にも同様に,キーブランク又はその包装に被告を示す表示は付されないから,上記取引者が本件標章3を被告の表示であ など不可能である。 原告が傘下の代理店や卸売業者にキーブランクを販売する場合にも同様に,キーブランク又はその包装に被告を示す表示は付されないから,上記取引者が本件標章3を被告の表示であると認識することはない。 そもそも,鍵に付された標章が製造業者ではなく販売業者の商標として認識されることは,鍵の業界では常識である。これは,原告の現在販売するキーブランクに付した「iNAHO」,「TLH」の標章が原告を表示するものとして需要者に認識されていることや,美和ロック株式会社の元鍵に付された「MIWA」,株式会社アルファの元鍵に付された「ALPHa」が,販売業者である上記各社の標章として広く認識されていることからも明らかである。 b 以上のとおり,キーブランクに刻印された本件標章3は,販売業者である原告の表示として出所表示機能及び品質保証機能を果たすものであるから,原告を示す表示であって,被告を示すものではない。 (ウ) 被告がキーブランク以外の商品に本件標章3を使用していないこと被告は,原告設立後,キーマシンの流通への関与を中止し,下請業者から原告に直接商品が納入されるよう流通経路を整理したと主張しているから,原告設立後に,キーマシンについて本件標章3を使用したことがないことを自白している。 オ以上によれば,本件標章3は原告のみの商品等表示であって,被告にとって「他人の」商品等表示に当たる。 (被告の主張)(1) 原告の主張は争う。 (2) 本件標章の使用の経緯ア被告創業者は,昭和34年に合鍵複製業を創業し,その妻の名が「フキ」であったことから,妻への感謝の気持ちを込めて,鍵に「FUKI」(本件標章3)と刻印して使用するようになり,昭和38年に本件標章 ア被告創業者は,昭和34年に合鍵複製業を創業し,その妻の名が「フキ」であったことから,妻への感謝の気持ちを込めて,鍵に「FUKI」(本件標章3)と刻印して使用するようになり,昭和38年に本件標章3について商標出願をし,昭和41年6月頃には有限会社後藤製作所を設立し(昭和45年7月に株式会社後藤製作所(被告)に組織変更),良質かつ量産可能な合鍵複製機を製作し,その製造販売体制を整備するとともに,本件標章3を刻印したキーブランクを製造・販売してきた。 イ原告代表者は,昭和38年頃,被告に入社し,昭和40年頃,被告創業者の勧めを受けて合鍵複製業を営む新橋キーセンターを開業した。原告代表者は,昭和42年1月,有限会社ゴトウを設立し(昭和45年8月に株式会社ゴトウに組織変更),被告から本件標章3を刻印したキーブランク等の納入を受け,問屋としてこれを販売するようになった。 ウ原告は,昭和46年4月頃,上記株式会社ゴトウと伊藤刃物製作所が合併して設立されたものであるが,原告設立に当たり,「フキ」を原告の社名としたのは,原告が,被告と提携・協力して「FUKI」印の商品を販売していくことを当然の前提としたものにほかならない。これにより,兄である被告創業者の経営する被告が製造部門を,弟である原告代表者の経営する原告が販売を分担するという,密接に関連した系列企業組織が構築された。これは,原被告間の昭和48年12月25日付け契約の内容(甲18・被告は本件商標権等を原告に無償で使用許諾するが,原告代表者が原告の代表者の地位を失った場合には上記使用権は直ちに失われる旨のもの。)からも明らかである。 エ被告は,原告の設立以後も,従前どおり本件標章3を付したキーブラン ク等の商品を製造し,これを原告に納入することにより, 使用権は直ちに失われる旨のもの。)からも明らかである。 エ被告は,原告の設立以後も,従前どおり本件標章3を付したキーブラン ク等の商品を製造し,これを原告に納入することにより,製造業者として上記商品の品質に係る信用を担保してきた。なお,被告は,原告設立以前から,本件標章3を付した商品を大量に製造し,原告設立前の昭和45,46年頃には,加賀商会に対し,キーブランク等を大量に販売したこともあった。また,「電子キー・セット」(乙18)には,表表紙に原告,裏表紙に被告の各名称が表示されている上,被告は,原告設立後も,キーブック(乙12),封筒(甲273),便箋(乙22)に本件標章3を表示するなどして,被告標章3の使用を継続している。 (3) 以上の事実経過に照らせば,本件標章3は,被告の商品を表示するものとしてその使用を開始されたものであり,これが,より発展して,原告及び被告からなる一体的企業組織の商品に使用される標章となったものであって,後から本件標章3を付した商品の販売を分担するようになった原告が,被告に代わって表示の主体となったとみることはできない。原告と被告が,キーブランク等の商品の製造・販売一体事業を構成していたことは,被告が,有限会社野村商会に対し,多額の代償金を支払って,競合商品であるNSK印キーブランクを排除し,原告及び被告の利益を確保したことや,原告に対し,キーマシンの販売権限を承継させて利益を確保させたこと,昭和55年に3度にわたり原告に対し4ないし5000万円を貸し付けていることからも明らかである。なお,原告代表者自身も,「両者の共同商標であるフキ印マークを使用して販路の拡張に努めてきました…」(乙17)と述べ,本件標章が被告の商品等表示でもあることを認めている。 (4) 以上の 。なお,原告代表者自身も,「両者の共同商標であるフキ印マークを使用して販路の拡張に努めてきました…」(乙17)と述べ,本件標章が被告の商品等表示でもあることを認めている。 (4) 以上のとおり,本件標章は,原告と被告との,キーブランク等の鍵関連商品の製造・販売一体事業を表示するものであるところ,需要者も,本件表書を,原告と被告の鍵関連商品の製造・販売一体事業を示すものとして認識している。 アすなわち,キーブランクは,キーブランク製造業者において製造され, 問屋又は販売代理店を経て合鍵製造業者に至るものであるから,キーブランクに付された標章が出所識別機能を発揮する場面は,製造業者から合鍵複製業者へと流通する間に限られる。合鍵複製サービスの取引において,上記サービスの提供を受けようとする者は,複製された鍵(キーブランクを加工したもの)を受領するのみであり,キーブランクを自ら選択するようなことはしないのであって,キーブランクに表示された標章が,これらの者に対し,出所識別標識として機能する余地はない。 したがって,キーブランクという商品の取引者・需要者は,上記流通経路(製造業者から合鍵複製業者)における者であって,合鍵複製サービスを受ける者ではない。 イそして,上記取引者・需要者は,キーブランクに刻印された標章はキーブランクの製造業者を表示するものと理解するものであり,上記取引者・需要者が,上記標章を,合鍵複製サービス提供者を表示するものと理解することはない。これは,我が国においてキーブランクを自社製造しているメーカーは被告と株式会社クローバーのみであるところ,クローバー社のキーブランクには,同社を表すものとして四葉のクローバーマークが表示されていることからも明らかである。 クを自社製造しているメーカーは被告と株式会社クローバーのみであるところ,クローバー社のキーブランクには,同社を表すものとして四葉のクローバーマークが表示されていることからも明らかである。 ウなお,被告が主として使用してきた標章は本件標章3であるが,本件標章1及び2は,本件標章3と社会通念上同一の商標であり,出所表示機能において差異がない。 すなわち,本件標章1・2と本件標章3における書体の相違や文字の種類の相違は同一性の判断に影響を与えるものではない。また,本件標章1における「鍵図」は,鍵関連商品との間では識別力がないから(乙28),本件標章1が文字書体に鍵図を加えていることも,同一性の判断に影響を与えるものではない。 したがって,本件標章1ないし3は一体のものとしてキーブランクその 他の鍵関連商品の取引者に認識されるものであり,いずれも,被告又は原告・被告の一体事業を表示するものとして認識されるものである。 (5) したがって,本件標章は,被告にとって「他人の商品等表示」に当たらない。 2 争点(2)(本件標章の周知性)(原告の主張)(1) 本件標章は原告の商品等表示として周知性を有することア原告商品の売上げ等本件標章を商品又はその包装に付した商品,広告又は取引書類に本件標章を付して展示又は頒布した商品の平均年間売上高は14億9389万4872円であり,昭和46年から平成24年までの累計売上高は612億4968万9747円である。 イ原告商品の市場占有率原告代表者が,昭和38年に合鍵複製業を開始した後,合鍵の必要性の啓蒙に努めるなどした結果,原告は,昭和49年に本件標章を付したキーマシンの販売において市場の80%のシェアを獲得し,さらに,昭 率原告代表者が,昭和38年に合鍵複製業を開始した後,合鍵の必要性の啓蒙に努めるなどした結果,原告は,昭和49年に本件標章を付したキーマシンの販売において市場の80%のシェアを獲得し,さらに,昭和53年に本件標章を付した合鍵のキーブランクの販売において市場の85%以上のシェアを獲得した。 ウ事業規模の拡大原告の売上げは,設立当時昭和46年頃には3.7億円であったが,昭和51年には12億円に達し,従業員も設立当時は5人であったが,平成12年には本社のみで35名,平成20年には50名と増加し,原告グループ全体で多いときには300名を超えた。また,平成19年には自社ビルを建設した。 エ販路の拡大原告は,昭和46年頃から現在に至るまで,合鍵の必要性を啓蒙し,事 業内容を紹介するパンフレットや案内ハガキを作成し,代理店経営者を広く募っている。また,原告は,昭和49年7月以降,年に2,3回の頻度で定期的に技術講習会を開催し,その参加者総数は開始から1年余りで500名を超えた。 その結果,昭和53年には,原告の代理店が全国24か所に及ぶに至ったところ,上記代理店の多くは,原告の許諾を受けて商号の一部に「フキ」を採り入れ,本件標章を付された商品を販売し,また,合鍵複製業等に際し本件標章を表示して,「フキ」ブランドを全国的に周知させた。 さらに,原告は,昭和51年,昭和62年及び平成元年に原告の代理店らの参加により米国視察旅行を開催し,ブランドの価値を向上させた。 オ宣伝広告等原告は,昭和46年から現在に至るまで,本件標章が付された原告商品のチラシ及びカタログ(1種類につき4000~8000枚)を,合鍵製造業者の取引者・消費者のみならず,金物業界,金庫業界,自動車業界等のメーカー,ディーラー等に配布 まで,本件標章が付された原告商品のチラシ及びカタログ(1種類につき4000~8000枚)を,合鍵製造業者の取引者・消費者のみならず,金物業界,金庫業界,自動車業界等のメーカー,ディーラー等に配布している。また,原告は,昭和48年から定期刊行物「フキニュース」を発行し,各種方法で配布している。 また,原告は,大型広告を掲出し,自社ビルの屋上に看板を設置しているほか,定期的に展示会を主催し,販売促進活動を行っている。 なお,原告は,上記展示会等の宣伝広告のため,昭和46年以降現在まで,年間平均750万円(累計3億1043万0607円)の費用をかけたほか,チラシ等のため,販売促進費として,別途相当額の費用をかけている。 カ以上によれば,本件標章は,遅くとも昭和53年には,原告の商品等(鍵,錠前,キーホルダー,鍵加工機械装置その他関連商品又は錠前修理保守サービス)を表示するものとして全国的に周知となった。 (2) 本件標章の周知性が現在も維持されていること ア原告は,本件標章について商標権を有する被告代表者からの要求を受けて,平成21年頃から,本件標章3を付したキーブランクの取り扱いを一部見合わせ,「TLH」や「iNAHO」等を刻印したキーブランク等を取り扱っている。 イしかし,原告は,請求書,明細書,納品書等のフォームや名刺,注文書等に本件標章を付し,また,原告のホームページや同ホームページからダウンロードできるチラシ・カタログ等に本件標章を表示するなどして,現在も本件標章の使用を継続しているのであって(甲19ないし22,24ないし27,189,214,240ないし244,288ないし303),本件標章の使用を中止したわけではない。このように,原告が新ブランド(「TLH」,「iNAHO」)と併用し 19ないし22,24ないし27,189,214,240ないし244,288ないし303),本件標章の使用を中止したわけではない。このように,原告が新ブランド(「TLH」,「iNAHO」)と併用して本件標章の使用を現在も継続している以上,本件標章についての周知性が喪失しておらず,現在も維持されていることは明らかである。 (被告の主張)(1) 原告の主張は争う。 (2) 原告が本件標章の使用を中止していることア原告は,平成15年頃から「TLH」を刻印したキーブランクを取り扱うようになり,平成21年12月吉日付け案内状(乙29)及び平成22年年賀状(乙30)で,「FUKI」から「TLH」,「iNAHO」に切り替えることを宣言し,その後,原告が販売する商品において本件標章3の使用が中止されている(乙31,35,36,40ないし44)。さらに,原告は,現在配布しているキーブック(乙37)において,キーブランクから本件標章3の刻印部分を抹消して掲載している上,キーマシン等,キーブランク以外の商品においても,本件標章3の表示を中止し,「TLH」の表示に変更している(乙31)。また,原告のホームページでも,「オリジナルブランド」として「TLH」,「iNAHO」が表示 されているのみで,本件標章3は表示されていない。 なお,原告は,上記のとおり案内状等を発出する前から,本件標章3を付した商品の被告への発注量を減少させ,本件標章3を付した商品の欠品を意図的に仕組んだ上,「TLH」印の商品への振替販売を積極的に行っている。 イ原告は,上記のとおり本件標章3の使用を中止するのに併せて,従前のカタログ(甲31ないし35)で各頁に表示していた本件標章1を,現在のカタログですべて削除し(乙31),かつ,全国各地における営業所名 原告は,上記のとおり本件標章3の使用を中止するのに併せて,従前のカタログ(甲31ないし35)で各頁に表示していた本件標章1を,現在のカタログですべて削除し(乙31),かつ,全国各地における営業所名を「株式会社フキ仙台」等から「株式会社イナホ仙台」等に変更するなどして,本件標章1及び2の使用も中止している。 (3) 以上によれば,キーブランク等の商品の需要者である合鍵複製業者において,原告のブランドは「TLH」,「iNAHO」に変更されており,「FUKI」ではなくなったと認識されていることが明らかである。 したがって,本件標章は原告の商品等表示として周知ではない。 3 争点(3)(被告による原告元販売店に対する本件標章1及び2の使用許諾の有無)(原告の主張)(1) 原告元販売店のうち,株式会社フキ八王子は被告標章1ないし3を,株式会社名古屋フキは被告標章1及び4を,株式会社北海道フキは被告標章5を,現在使用している。 (2) 被告は,被告標章7を付したキーブランクを原告元販売店に販売しており,原告・被告間における訴訟前の交渉内容からすると,本件標章1及び2の形式的商標権者である被告代表者が被告に対し本件標章1及び2の使用を許諾し,その権原に基づいて,被告が原告元販売店に対し,被告標章1ないし5の使用を,明示又は黙示に許諾していることが明らかである。 (被告の主張) 被告が,原告の元販売店に被告標章7を付したキーブランクを販売していることは認めるが,その余は不知又は争う。 4 争点(4)(混同のおそれの有無)(原告の主張)本件標章は,原告の長年にわたる使用の結果,原告の商品等表示として周知性を獲得しているものであるところ,原告と被告は同業者であり,販売地域,販売商品も共通し それの有無)(原告の主張)本件標章は,原告の長年にわたる使用の結果,原告の商品等表示として周知性を獲得しているものであるところ,原告と被告は同業者であり,販売地域,販売商品も共通している。特に,被告は,原告の元販売店に対し,被告の製造したキーブランク,キーマシン等を販売又は使用許諾しているところ,原告の元販売店が,被告標章を被告の商品等表示として使用した商品を販売した場合,需要者が,原告の商品及び業務との混同を生ずるおそれがあることは明白である。 (被告の主張)原告の主張は争う。争点(2)において主張したとおり,原告は,ホームページにおいて「TLH」,「iNAHO」を原告のオリジナルブランドとして掲載し,その営業所も「イナホ名古屋」等に変更しているのであるから,合鍵複製業者は,原告の商品及び業務に係るブランドは「TLH」,「iNAHO」であり,本件標章ではないと認識しているのであり,被告が被告標章をその商品等表示として使用したとしても,需要者に混同が生じるおそれはない。 5 争点(5)(被告による本件標章の使用は,商標権者による登録商標の使用として適法なものか。)(被告の主張)(1) 被告代表者は,前記前提事実(4)のとおり,本件標章について本件商標権を有し,被告に本件標章を使用させてきたのであるから,被告による本件標章の使用は,商標権に基づく登録商標の使用として適法なものである。 (2) この点に関し,原告は,本件商標権は原告代表者に帰属するものであり,また,被告による商標権の行使は権利の濫用に当たると主張するが,次のと おり失当である。 ア本件商標権が原告代表者に帰属するものではないこと(ア) 被告創業者は,原告設立前である昭和38年頃,本件標章3の商標登 当たると主張するが,次のと おり失当である。 ア本件商標権が原告代表者に帰属するものではないこと(ア) 被告創業者は,原告設立前である昭和38年頃,本件標章3の商標登録出願を行って本件商標権3を取得したものであり,本件商標権3が被告創業者に帰属するものであることは明らかである。そして,本件標章1及び2は,本件標章3と実質的に同一の標章であるにもかかわらず,本件標章1及び2に係る商標権である本件商標権1及び2のみ,その実質的権利者が原告代表者であるというのは不合理である。 (イ) 原告は,本件標章1及び2は原告代表者がデザイナーに依頼して作成させたものであると主張するが,本件標章1に使用されている書体は,被告が本件商標権1の登録出願以前から使用していたものであり(乙12),被告創業者が昭和45年に出願した商標の中にも同様の書体が使用されている(乙14)。また,本件標章1における鍵の図形も,被告が昭和45年以前から使用していたものであり(乙12),被告創業者は,これと同様の図形について意匠出願をしている(乙15)。さらに,本件標章2は,被告が創業時から使用してきた「FUKI」標章を片仮名表記にしたものにすぎず,その書体にも格別の創作性はない。 したがって,本件標章1及び2は,原告が新たに創作したといえるようなものではないから,その実質的権利者が原告代表者であるという原告の主張は前提を誤るものである。 (ウ) 原告と被告は,平成21年7月10日から,一連の紛争を解決するための交渉を開始したが,原告が本件商標権について言及したのは,交渉開始から1年が経過した後のことであり,かつ,原告と被告は,本件商標権が被告側に帰属することを前提として,どの範囲まで使用許諾を受けられるかという観 たが,原告が本件商標権について言及したのは,交渉開始から1年が経過した後のことであり,かつ,原告と被告は,本件商標権が被告側に帰属することを前提として,どの範囲まで使用許諾を受けられるかという観点で協議をしていたものであるから,原告の主張は,原告の行動とも合致していない。 (エ) 本件商標権の登録費用及び維持管理費用は,専ら被告が負担したものであり,原告はその一部を負担したにすぎない。 (オ) 以上によれば,本件商標権は被告創業者(承継により被告代表者)に帰属するものであり,原告代表者に帰属するものではない。 イ本件商標権の行使が権利の濫用に当たらないこと周知標章と登録商標が衝突する場合でも,商標権者は登録商標の使用をすることができるのが原則であり,権利の濫用に当たるときに例外的に使用が制限されるものにすぎない。そして,権利濫用に当たるか否かは,商標の登録出願と周知標章の周知性取得との時期的先後によって判断されるものとされるところ,被告創業者は,原告が本件商標権の使用許諾を受けて本件標章の使用を開始する2年半以上前に本件商標権1及び2について商標登録出願をしているのである。加えて,本件標章の使用に係る事実経過にも照らせば,被告創業者から本件商標権を相続した被告代表者や被告が本件商標権の行使として本件標章を使用することが権利の濫用に当たるわけがない。 (原告の主張)(1) 被告の主張は争う。 (2) 本件商標権が原告代表者に帰属するものであることア本件標章1及び2は,原告代表者が,昭和46年に新会社として原告を設立するに当たり,社名及びその商品に付するための商標として,デザイナーに依頼して作成させたものであり,被告とは無関係に創作されたものである。 イしかるに,当時 昭和46年に新会社として原告を設立するに当たり,社名及びその商品に付するための商標として,デザイナーに依頼して作成させたものであり,被告とは無関係に創作されたものである。 イしかるに,当時,本件商標権3が既に商標登録されていたため,これと称呼において類似する本件標章1及び2は,連合商標制度により,被告創業者名義以外の名義で商標登録することができなかった。そこで,原告代表者は,昭和46年6月中旬頃,被告創業者に対し,原告のために本件標 章1及び2に係る出願登録手続及び登録後の維持管理手続をすることを依頼し,被告創業者はこれを了承した。これにより,本件標章1及び2は,被告創業者の名義を借りて登録されるに至ったものであり,本件商標権は実質的には原告代表者に帰属するものである。 (3) 被告による商標権の行使が権利の濫用に当たることア被告は,商標登録時期が原告の本件標章に係る周知性の獲得時期よりも早いことを根拠として,被告による登録商標の使用は権利の濫用に当たらないと主張する。しかし,登録商標の使用が周知商品等表示との関係で権利濫用に当たるか否かは,商標登録時期と周知性の獲得時期の先後のみで単純に判断すべきではない。 イ田村善之「商標法概説第2版」は,現時点において周知性が確立されている場合には,商標登録が周知性獲得時点より先であるとしても,登録商標使用の抗弁は主張できないとするところ,この考えに従えば,被告は登録商標使用の抗弁を主張できないことになる。また,周知性獲得が商標登録以降であっても,周知性を獲得した標章が有する商品の出所識別機能を著しく害する等の理由から,周知標章に対する商標権の行使(差止請求)が権利濫用に当たるとされた裁判例が存在するところ(東京地裁平成11年4月28日〔ウイルスバスター事件〕), る商品の出所識別機能を著しく害する等の理由から,周知標章に対する商標権の行使(差止請求)が権利濫用に当たるとされた裁判例が存在するところ(東京地裁平成11年4月28日〔ウイルスバスター事件〕),登録商標の使用も商標権の行使の一態様であるから,原告が商標権の登録商標の使用として本件標章を使用することは,上記裁判例と同様に権利濫用として許されないというべきである。 ウ加えて,被告は,争点(1)において主張したとおり,原告設立後は本件標章を使用したことがなかったにもかかわらず,原告が本件標章につき全国的な周知性を獲得した後である平成21年11月に,突然本件標章の使用を開始し,原告の獲得した信用にただ乗りし,取引者・需要者の商品の出所混同を招いているものであって,このような被告の行為は,まさに不 正競争に該当するものである。 エしたがって,被告による登録商標の使用は権利の濫用に当たる。 第4 当裁判所の判断 1 前記前提事実に加え,証拠(各認定事実の末尾に摘示する。)及び弁論の全趣旨によれば,各争点の検討の前提として,以下の事実が認められる。 (1) 被告創業者による事業の開始ア被告創業者は,昭和34年頃から「後藤製作所」の屋号で鍵の製作等を行うようになり,遅くとも昭和38年頃までには,その妻の名である「フキ」にちなんで「FUKI」と刻印したキーブランク(鍵型をした母材に鍵の差込み方向に鍵溝を切ったもので鍵山を設ける前のもの。合鍵作製用の鍵母材。以下「FUKI印キーブランク」という。)を製造するようになった(甲277,278,乙1)。 イ被告創業者は,前記前提事実(4)のとおり,昭和38年9月11日,本件標章3について商標登録出願を行い,昭和39年10月15日に登録査定を受け,同年12月1日に商標登録を 7,278,乙1)。 イ被告創業者は,前記前提事実(4)のとおり,昭和38年9月11日,本件標章3について商標登録出願を行い,昭和39年10月15日に登録査定を受け,同年12月1日に商標登録を受けた(乙131)。 ウ被告創業者は,昭和41年6月頃,有限会社後藤製作所を設立し,昭和45年7月,上記有限会社後藤製作所を株式会社後藤製作所に組織変更した(以下,上記組織変更の前後を通じて「被告」ということがある。)。 (2) 原告代表者による事業の開始・推移ア原告代表者は,昭和38年10月頃から,被告創業者の作業所内で,被告創業者の指導の下,被告創業者が製造したFUKI印キーブランクの納入を受け,被告創業者の購入した合鍵複製用機械等の設備を使用するなどして,合鍵複製業を営むようになった(甲1,277)。 イ原告代表者は,昭和40年10月頃,被告創業者の了承を得て,「新橋キーセンター」を創設し,被告創業者(上記(1)ウのとおり法人成りした後は被告)から納入を受けたFUKI印キーブランク等を用いて合鍵複製 を行うとともに,上記のとおり被告創業者又は被告から納入を受けたFUKI印キーブランクや合鍵複製用機械(キーマシン)等の販売を行うようになった(甲1,3,277)。 ウ原告代表者は,昭和42年1月,有限会社ゴトウを設立し,昭和45年7月には株式会社ゴトウに組織変更をした(甲1,277,278)(以下,組織変更の前後を通じて「ゴトウ社」という。)。 (3) 被告によるキーブランク等の製造・販売(原告設立以前)ア被告は,上記(1)のとおり製造したFUKI印キーブランクを,原告代表者(法人成りした後はゴトウ社)に納入するほか,有限会社加賀商会(以下「加賀商会」という。)にも納入しており,加賀商会に対するFU 被告は,上記(1)のとおり製造したFUKI印キーブランクを,原告代表者(法人成りした後はゴトウ社)に納入するほか,有限会社加賀商会(以下「加賀商会」という。)にも納入しており,加賀商会に対するFUKI印キーブランクの納入数は,昭和45年7月には約11万本に及んだ(乙48)。また,被告は,昭和45年頃,「N.S.K」と刻印したキーブランク(以下「NSK印キーブランク」という。)を製造し,有限会社野村商会(以下「野村商会」という。)及び渡芳製作所に納入していた(乙49,50)。 なお,ゴトウ社,野村商会及び加賀商会,渡芳製作所は,いずれもキーブランク等の商品を,主としてその代理店や中間卸売業者を介して小売店に対し卸売りするものであった。 イ被告は,昭和45年2月頃,野村商会と原告代表者の経営するゴトウ社との間で取引先を巡り紛争が生じたことを原因として,同年3月18日,野村商会との間で,野村商会が中間卸売業者に対するNSK印キーブランクの販売を中止し,上記中間卸売業者に対する販売については被告に一任すること,被告がキーブランク及びキーマシンの販売数量に応じた代償金を野村商会に支払うことなどを内容とする契約を締結した(乙16,52)。 ウ被告は,上記イのとおり野村商会が販売を中止した中間卸売業者に対す る卸売を,ゴトウ社に行わせることとし,ゴトウ社は,上記業者に対し,NSK印キーブランクの代わりに,FUKI印キーブランクを販売するようになった(甲277)。 エ昭和45年8月ないし10月度及び46年1月ないし3月度における被告のキーブランクの販売先及び販売数量は次のとおりである(乙51)。 (ア) 昭和45年8月度ゴトウ社 19万8197本(FUKI印。以下同じ)加賀商会 13万 ないし3月度における被告のキーブランクの販売先及び販売数量は次のとおりである(乙51)。 (ア) 昭和45年8月度ゴトウ社 19万8197本(FUKI印。以下同じ)加賀商会 13万6868本(FUKI印。以下同じ)渡芳製作所 5万7076本(NSK印。以下同じ。)(イ) 同年9月度ゴトウ社 22万3856本加賀商会 9万2020本渡芳製作所 7万7138本(ウ) 同年10月度ゴトウ社 40万1698本加賀商会 7万5999本渡芳製作所 5万4085本(エ) 同年11月度ゴトウ社 39万2596本加賀商会 10万1348本渡芳製作所 11万0996本(オ) 昭和45年12月度ゴトウ社 26万7341本加賀商会 15万0843本渡芳製作所 8万2907本(カ) 昭和46年1月度 ゴトウ社 36万6293本加賀商会 12万5526本渡芳製作所 5万9332本(キ) 同年2月度ゴトウ社 31万3391本加賀商会 15万6982本渡芳製作所 10万7603本(ク) 同年3月度ゴトウ社 41万2868本加賀商会 15万2780本渡芳製作所 6万3271本オ昭和45年に被告が発行したキーブック(乙12。その取り扱うキーブランク等の商品を掲載したリストであり,合鍵作製時に,対応するキーブランクを識別するために,取引先に頒布されるもの。)には,その表表紙に「TRADEMARKFUKI」との表示があり,中表紙にも「FUKI印」の表示や,本件標章1における書体と同一の書体(「F」の文字の一 別するために,取引先に頒布されるもの。)には,その表表紙に「TRADEMARKFUKI」との表示があり,中表紙にも「FUKI印」の表示や,本件標章1における書体と同一の書体(「F」の文字の一番上の横線を「I」の文字の上まで延ばしたもの。ただし,鍵の図形は異なる。)による「FUKI」の表示がある。上記キーブックに掲載されているキーブランクのうち,「ALPHA」,「GOAL」,「MIWA」等に対応するとされるものや,国産自動車用(ニッサン,トヨタ,ホンダ,ダイハツ等)とされるものには本件標章3が,国内外の自動車以外のもの又は外車用とされるものには「G.S」が刻印されており(その他の一部の商品には,刻印がないものがある。),キーマシンにも「FUKI」の表示がみられる(乙12)。 カゴトウ社は,昭和45年12月15日,被告に対し,「商標利用の類似商品販売業者阻止について申し入れ」と題する書面を内容証明郵便により 送付した(乙17)。上記書面には,「株式会社ゴトウは昭和38年10月株式会社後藤製作所との間に後藤製作所が製造する製品の売買契約を締結し爾来両者の共同商標であるフキ印マークを使用して販路の拡張に努めてきました」「次のことを実行されますよう申し入れます一,NSK印を取り止めフキ印のみとする自衛手段を執ること」「なおフキ印とNSK印を現在のまま持続される場合はフキ印が他の製品の単価より安い価格で売れるようご配慮願いたく右申し添えます。」との記載がある。 (4) 原告の設立ア原告代表者は,昭和46年6月24日,伊藤刃物商事の経営者らと共に,原告を設立した(甲1,277,283,284)。 イ原告代表者は,原告設立に当たり,デザイナーに依頼して本件標章1及び2のデザインを行わせ,後記(7)アでみるとおり,原告の社 の経営者らと共に,原告を設立した(甲1,277,283,284)。 イ原告代表者は,原告設立に当たり,デザイナーに依頼して本件標章1及び2のデザインを行わせ,後記(7)アでみるとおり,原告の社名表示及びシンボルマークとして使用するようになった(甲6ないし9,277)。 ウ同年7月20日付け日本刃物工具新聞の「社名変更のお知らせ」(甲5)には,「多くの方々からご愛顧をいただいてまいりましたブランドFUKIにちなみ,社名を株式会社フキと改称いたしました。」との記載がある。 エ被告創業者が,昭和46年6月25日,本件商標権1の連合商標として本件商標権1及び2の出願を行ったことは,前記前提事実(4)イのとおりである。 (5) 本件契約ア被告創業者,被告,原告代表者及び原告は,昭和48年12月25日,次の内容を含む契約を締結した(以下「本件契約」という。)(甲18)。 (ア) 被告創業者は,原告代表者に対し,商標権1件,意匠権1件,商標登録出願により生じた権利3件及び意匠登録出願を受ける権利3件を原 告代表者に譲渡する。(第1条)(イ) 被告創業者は,原告,原告代表者及び被告に対し,本件商標権3ほか2件の商標権の使用を許諾し,かつ,本件商標権1・2ほか1件が登録された場合にその使用を許諾することを予約する。(第2条)(ウ) 原告代表者は,被告及び被告創業者に対し,上記(ア)によって取得した権利の使用又は実施を許諾する。(第3条)(エ) 上記(ア)ないし(ウ)の譲渡及び使用等許諾はいずれも無償の通常使用権又は通常実施権とし,その範囲は日本国内全域,存続期間は各権利の存続期間全部とする。(第4条)(オ) 原告代表者が上記(イ)により取得した通常使用 び使用等許諾はいずれも無償の通常使用権又は通常実施権とし,その範囲は日本国内全域,存続期間は各権利の存続期間全部とする。(第4条)(オ) 原告代表者が上記(イ)により取得した通常使用権は商標登録原簿に登録することとし,被告創業者は必要書類を原告代表者に交付する。登録費用は原告代表者の負担とする。(第5条)(カ) 原告及び原告代表者は,本件標章3を付した鍵母材(半製品を含む。)については,上記(イ)の規定にかかわらずすべて被告又は被告創業者の製造したものを購入販売することとし,被告又は被告創業者以外の者から購入した鍵母材に上記標章を付してはならない。(第7条)(キ) 原告及び原告代表者は,上記(イ)により使用を許諾された商標権を付した商品の品質が優秀であることを保証し,これらの各商標権が有する信用を毀損するような行為をしないことを約束する。被告及び被告創業者が上記(ウ)により取得した使用権又は実施権の行使についても同様とする。(第8条第1項)(ク) 原告代表者が上記(イ)のとおり取得した商標の使用権は,原告代表者が原告の代表取締役たる地位を失った場合は直ちにその権利を失う。 (第9条第1項)(ケ) 被告創業者は,原告若しくは原告代表者が上記(カ)若しくは(キ)のいずれかに該当したとき又は原告若しくは原告代表者が破産し若しくは 実質的に営業を停止し,3か月以内に営業再開の見込みがないときは,2週間の予告期間を置いた書面による催告後本契約を解除することができる。(第10条第1項)イ上記ア(ア)及び(イ)に係る権利の譲渡及び通常使用権(通常実施権)は,昭和49年頃,原簿に設定登録された(甲19)。 (6) 原告の営業形態等ア原告は,ゴトウ社と同様 項)イ上記ア(ア)及び(イ)に係る権利の譲渡及び通常使用権(通常実施権)は,昭和49年頃,原簿に設定登録された(甲19)。 (6) 原告の営業形態等ア原告は,ゴトウ社と同様,キーブランク,キーマシン,鍵関連小物類等の商品の卸売を行うことを業とするものであったが,その取り扱う商品は,キーブランク,キーマシン,鍵関連小物類等のほか,取替用錠前・シリンダー,解錠用具,防犯用品等の鍵関連用品に広く及ぶようになった(甲23,24,28ないし42,124)。なお,被告創業者は,昭和40年頃からキーマシンについて意匠登録出願を行い(乙3ないし9),株式会社泰明製作所等に製造させたキーマシンを被告に納入させた上で(乙25),ゴトウ社に卸売りしていたが,原告設立後,被告の仲立ちを取り止め,原告が製造業者と直接取引を行うことができるよう取り計らった(乙26)。 イ原告は,昭和51年頃から日本各地に代理店を設けて上記商品の販売等を行わせるようになり,平成元年以降,上記代理店を原告の出資により株式会社とし,これらの会社の商号を,地名と「フキ」を組み合わせたもの(「株式会社山陽フキ」,「株式会社青森フキ」等)とするとともに,その社名の「フキ」部分の表示に本件標章2を用いるものとした(甲1,206,208,209,219ないし230,262,263,265ないし268)。 ウ原告は,代理店との間で継続的取引基本契約を締結して,上記契約に基づき,キーブランク等の商品を継続的に納入した(甲203,210ないし214,221ないし230)。 エ原告の昭和47年から平成24年までの売上額及び広告宣伝費の推移は別紙一覧表のとおりである(甲202)。 (7) 原告による本件標章の使用等ア本件 いし230)。 エ原告の昭和47年から平成24年までの売上額及び広告宣伝費の推移は別紙一覧表のとおりである(甲202)。 (7) 原告による本件標章の使用等ア本件標章1及び2(ア) 原告の設立後現在に至るまで,原告又は原告の販売代理店の会社案内,名刺,キーブック又はカタログ,取引書類(注文書,納品書,請求書等),封筒,価格表,チラシ,定期刊行物,加盟店向け資料等の,社名等を表示する部分(表表紙又は裏表紙,チラシ隅等)には,原告の社名のうち「フキ」の部分が本件標章2を用いた書体で表示されるとともに,本件標章1が掲載されている(会社案内につき甲1,206,208,209,220,名刺につき甲22,キーブック又はカタログにつき甲23,24,28ないし42,124,293〔124については本件標章1,293については本件標章2のみ〕,取引書類につき甲19ないし21,25ないし27,299ないし303〔25ないし27,303については本件標章2のみ〕,封筒につき甲201,価格表につき甲43,125ないし134〔125ないし134については本件標章1のみ〕,チラシにつき甲44ないし50,117ないし123,135ないし183,185ないし187,190ないし200,204,215ないし217,244,294ないし298〔198ないし200,215,294については本件標章1のみ〕,定期刊行物につき甲51ないし59,61,64ないし103,105ないし115,205,218,231,232,239,245ないし259,加盟店向け資料等につき甲203,210ないし213,233,234)。また,原告のホームページでは,原告の社名のうち,「フキ」の部分を,本件標章1を用いて表示するとともに,本件標章2を表示して ,加盟店向け資料等につき甲203,210ないし213,233,234)。また,原告のホームページでは,原告の社名のうち,「フキ」の部分を,本件標章1を用いて表示するとともに,本件標章2を表示している(甲214,240ないし243,288ないし290,292)。 (イ) 原告のキーブック又はカタログ,チラシ等に掲載されている商品の中には,キーマシン等に,本件標章1及び2を印刷したラベルが貼られているものがあり(甲23,28,29,31ないし35,137,139,144,152,160,162,163,165ないし167,181,182),その他,ケース,スプレー類,ショップスタンド,看板類,ネームマシンに本件標章1が表示されているものや(甲30,31,33ないし35,190ないし194,197),キーホルダー等の鍵関連小物の包装に本件標章1が表示され,さらに,原告の社名(本件標章2を用いたもの)が表示されているもの(甲31ないし33,35),本件標章1のみが表示されているもの(甲45ないし47,49)などがみられる。なお,原告のキーブック,カタログ,価格表のうち,平成21年以前のものの中には,キーブランク等の商品の写真や価格表を掲載した各頁に,本件標章1が表示されているものがある(甲23,29ないし35,38ないし43)。 イ本件標章3原告のキーブック(甲23)には,本件標章3が刻印されたキーブランクが主に掲載されているが,「G.SS」,「G.S」が刻印されたキーブランクも掲載されている。「FUKI」印は,キーブランク以外に解錠用具(甲30の19頁),補助錠(甲40の110頁,41の118頁,42の21頁,121),取付部品(甲42の204頁)にも付されているものがみられるが,その数は極めて少ない。また,上 ク以外に解錠用具(甲30の19頁),補助錠(甲40の110頁,41の118頁,42の21頁,121),取付部品(甲42の204頁)にも付されているものがみられるが,その数は極めて少ない。また,上記キーブック,カタログ,チラシ,定期刊行物の一部には,商品等紹介ページの下などに,「FUKI.CO.,LTD」と表示されているものがある(甲29ないし35,38ないし42,45ないし50,68ないし70,78,87ないし92,94ないし103,135ないし155,157ないし160,162ないし179,182,185,190,192ないし197, 203,204,215,293,295,296)。 ウ原告のチラシ又は定期刊行物には,キーブランク,キーマシン,鍵関連小物類等が掲載されており,そのうち,キーブランクについては,本件標章3が付されたものが多いが,「GSS」等が付されたものもみられる(甲102ないし115)。 原告は,上記キーブランク,キーマシン,鍵関連小物類等のほか,取替用錠前・シリンダー,解錠用具,防犯用品等の鍵関連用品を広く取り扱っているが,上記鍵関連用品のうち,キーブランク等以外のものについては,本件標章が付されていないものが多い。 (8) 被告による本件標章の使用等ア被告は,FUKI印キーブランクのほか,「GSS」,「GTS」,「W&S」,「J&S」を刻印したキーブランクを製造しており(甲269),原告設立後は,FUKI印キーブランクについては,専ら原告に対し納入してきた。 イ平成15年頃設立されたジャパンキーサービス(千葉県松戸市所在)のカタログ(甲269)には,「FUKI」,「GSS」,「GTS」,「W&S」,「J&S」のロゴマーク入り商品は被告が製造する商品 イ平成15年頃設立されたジャパンキーサービス(千葉県松戸市所在)のカタログ(甲269)には,「FUKI」,「GSS」,「GTS」,「W&S」,「J&S」のロゴマーク入り商品は被告が製造する商品である旨の表示及び「GSS,GTS」のキーブランクを販売する旨の記載があり,顧客(合鍵販売業者)に安価でキーブランク商品を提供することを目指す旨記載している(甲269)。原告も,平成21年7月15日付けの通知書において,「ジャパンキーサービス等が弊社の販売先に弊社の仕入れ価格よりも安価で販売している事も発注数が減った一因でございます。」と指摘している(乙54)。 ジャパンキーサービスは,被告から仕入れた「GSS」「GTS」を主力とするキーブランクを,合鍵販売業者へ販売する業務を行い,平成24年4月16日時点で,「FUKI」印のキーブランクを掲載したキーブラ ンクリストを販売している(甲271)。 (9) 本件紛争の経緯(乙53ないし125)ア平成21年7月,原告は,FUKI印キーブランクの在庫過剰を理由として,同月の発注から,いわゆる売れ筋のキーブランク商品(1種類当たりの発注本数が多い商品)についての年間契約を中止して被告への発注を取り止め,これにより,被告に対する発注本数が,従前の10%程度まで急減することとなった。原告の同年7月15日付け通知書においては,原告の過剰在庫のほか,平成20年において,被告からの納品について大量の欠品が生じたことが指摘されている(乙54)。 イ他方,原告は,平成21年頃から,被告から納入を受けるFUKI印キーブランクではなく,原告が外国工場に発注して製造納入させる「TLH」を刻印したキーブランク(以下「TLH印キーブランク」という。)の販売に注力するように 年頃から,被告から納入を受けるFUKI印キーブランクではなく,原告が外国工場に発注して製造納入させる「TLH」を刻印したキーブランク(以下「TLH印キーブランク」という。)の販売に注力するようになっており,鍵図の中に「TLH」の文字を記した商標の出願を行った(平成21年11月4日出願。その後,平成22年3月5日に登録された。乙28)。 ウ被告は,上記アのような状況(売れ筋商品の年間契約が中止され,更に総発注本数も上記のように減少した状況)では,原告に対し納入する商品を優先製造することができないので,納期遅れが発生する旨を原告に通知し,さらに,原告が上記イのとおりFUKI印キーブランクではなくTLH印キーブランクの販売に注力していることや,被告の提供する新番情報を競合品であるTLH商品の製造に利用していることなどを指摘した上で,原告の背信行為により原被告間の友好関係が破綻に至った以上,本件商標権の使用許諾を解除し,被告においてFUKI印を付した商品の販売を開始することを検討する旨の書面を送付した(乙61,63)。 この頃,原告は,平成21年9月吉日付けで,取引先に対し,FUKI,GSS印のキーブランクの欠品番号となる商品が増加したことを詫びると ともに,TLH印キーブランクへの振替えを依頼する旨の案内状(乙45)を送付した。 エ上記ウの被告からの書面に対し,原告は,被告のFUKI印キーブランク在庫については全部買い取る方針である旨及び商標権の買取りを含めて検討したい旨回答したが(乙64),被告は,商標権を原告又は原告代表者に売却するつもりはないとの被告創業者の意向である旨を回答した(乙65)。 オ原被告間では,同年11月20日付けで,原告におけるFUKI印商品の在庫の扱いや,商標の取扱い等について協議がもた 者に売却するつもりはないとの被告創業者の意向である旨を回答した(乙65)。 オ原被告間では,同年11月20日付けで,原告におけるFUKI印商品の在庫の扱いや,商標の取扱い等について協議がもたれたが,協議が調うには至らなかった(乙71)。 原告は,本件商標権3についてはFUKI印キーブランクの在庫がなくなるまでの使用を,本件商標権1及び2については今後とも引き続いての使用を希望する旨を通知し(乙72),さらに,同年12月26日付けで,本件商標権3については,キーブランク以外の商品について被告創業者から口頭で使用許諾を受けているので使用を継続したい,本件商標権1及び2については被告創業者に承諾を得て出願登録された権利であり,登録手続等の費用を原告が負担していることなどから,今後とも使用したい旨を通知した(乙74)。 この頃,原告は,「お得意様各位」に宛てて,「新ブランドについてのご案内」(平成21年12月吉日付け)と題する文書を配布し,そこには,「弊社は,今日まで商品にFUKI印を取り扱ってまいりましたが,今後FUKI印の在庫がなくなり次第自動的に「iNAHO(イナホ)」印の商品の販売となります。」と記載されていた。 カ原被告間では,その後も在庫の処分,本件標章を付した商品の販売終了時期,鍵図iNAHO商標の出願等について協議及び書面のやり取りが行われた。原告は,一旦は,本件商標1,2については,6か月間使用する (平成22年1月25日付け通知書),平成23年12月31日を以って終了する(同年1月27日付け通知書)としていたが,平成22年3月12日付け通知書(乙87)では,本件商標権3について,「商標通常使用権設定の解除を受け,平成22年○月○日を以って各商標が及ぶ範囲の製品・商品の製造を中止することを承諾しました が,平成22年3月12日付け通知書(乙87)では,本件商標権3について,「商標通常使用権設定の解除を受け,平成22年○月○日を以って各商標が及ぶ範囲の製品・商品の製造を中止することを承諾しました。」とする一方で,本件商標権1及び2を原告名義に変更するべきである旨主張した。 その後も,原告と被告の間で協議が続けられたが,協議は進展せず,原告は,同年7月1日には協議を白紙撤回する旨の通知書(乙96)を送付した。 キ被告代表者は,平成24年3月13日付け書面(乙112)により,原告に対する本件商標権の使用許諾契約を解除する旨の意思表示をし,上記書面は,その頃原告に到達した。 ク原被告間の上記協議は平成24年末頃まで継続したが,協議が調うには至らなかった。 (10) 協議不調後の原告の本件標章の使用状況等ア原告は,平成22年の年賀状(乙30)において,「弊社は,FUKI・GSS印のキーブランクを取り扱ってまいりましたが,現在商標として使用しているTLH印のキーブランクに力を注ぎ,FUKI印の在庫がなくなり次第自動的にTLH印のキーブランクの販売といたします。また,キーブランク以外の商品につきましては,FUKI・TLH・iNAHOブランドを販売させて頂きますが,FUKI印の在庫が無くなり次第自動的にTLH・iNAHO印の商品の販売といたします。」と記載した。 イ原告は,上記通知どおり,FUKI印キーブランクの取扱いを順次終了し,そのカタログ等に掲載するキーブランク及びキーマシンの写真から本件標章1・3を抹消している(乙31,37)。また,キーブランク及びキーマシン以外の商品についても,順次TLH,iNAHO印に変更して いる(乙33ないし35)。 ウ原告の平成25年のカタログ(甲293)には,裏表紙及び注文 7)。また,キーブランク及びキーマシン以外の商品についても,順次TLH,iNAHO印に変更して いる(乙33ないし35)。 ウ原告の平成25年のカタログ(甲293)には,裏表紙及び注文書等書式頁において,原告の社名表示として本件標章2が表示されているのみで,本件標章1は表示されていない。また,掲載商品に本件標章3を付したものも見当たらない。 (11) 以上の事実を前提に,各争点について判断する。 2 争点(1)(本件標章は被告にとって「他人の商品等表示」に当たるか。)(1) 不正競争防止法2条1項1号は,他人の周知な表示と同一又は類似する表示を使用して需要者を混同させることにより,当該表示に化体した他人の信用にただ乗りして顧客を獲得する行為を不正競争として禁止し,もって公正な競業秩序の維持・形成を図ろうとするものであるから,同号における商品等表示の帰属主体とは,自らの判断と責任において主体的に,当該表示を付された商品を市場に置き,あるいは営業活動を行うなどの活動を通じて,当該表示につき,商品等の出所,品質等について信用を蓄積し,当該商品の取引者・需要者の間において,当該表示に化体された信用の主体として認識されるに至った者をいうと解するのが相当である。したがって,ある者が,同号における商品等表示の帰属主体に当たるか否か(当該商品等表示が誰に帰属するものであるか)は,当該商品の性質,流通形態,当該商品等表示の内容や態様,当該商品の宣伝広告の規模や内容等を考慮した上で,当該商品等の出所,品質等について信用を蓄積してきた主体は誰であるかという観点と,当該商品の取引者・需要者において,当該表示が何人のものとして認識されているかという観点を併せて検討するのが相当である。 (2) 本件標章3についての検討ア 主体は誰であるかという観点と,当該商品の取引者・需要者において,当該表示が何人のものとして認識されているかという観点を併せて検討するのが相当である。 (2) 本件標章3についての検討ア事案の内容に鑑み,本件標章3から検討する。 本件標章3は,主としてキーブランクに刻印されて使用されてきたものであるところ(前記1(7)イ。なお,前記1(7)イのとおり,本件標章3が 補助錠等に付されたことがあったものと認められるが,その数はごくわずかなものにとどまるものとみられるのであるから,このような商品における本件標章3の使用が,本件標章3に係る信用の蓄積や取引者・需要者の認識に影響するものとは考え難い。),FUKI印キーブランクは,原告設立以前は,被告から,原告の前身であるゴトウ社のほか,加賀商会にも相当数が販売されていたものであり,ゴトウ社及び加賀商会が,それぞれの代理店や中間卸売業者に卸売りし又は小売店等に直接販売した上で,最終的には小売店等において合鍵に加工され,販売されていたものであると認められる(前記1(3)ア,エ)。 しかし,昭和46年6月の原告の設立後,本件紛争までの間においては,FUKI印キーブランクは,被告から原告に納入され,原告から,その販売代理店又は当該販売代理店の傘下にある小売店(合鍵複製業者)に卸売されて,合鍵に加工され,顧客に交付されていたものである(前記1(6)アないしウ)。原告は,FUKI印キーブランクを市場に置くとともに,そのキーブック,チラシ,定期刊行物等に掲載し,これらを上記小売店等に頒布するなどして(前記1(6)イ及びウ,(7)イ,ウ),FUKI印キーブランクについて,その販売を促進するための活動を行ってきたものであり,このようにFUKI印キーブランクを長期間にわたり単独で卸売販売 などして(前記1(6)イ及びウ,(7)イ,ウ),FUKI印キーブランクについて,その販売を促進するための活動を行ってきたものであり,このようにFUKI印キーブランクを長期間にわたり単独で卸売販売し,営業活動を行うことにより,本件標章3について,販売者としての信用を蓄積してきたものであるということができる。 また,キーブランクの,合鍵作製用の鍵母材という商品の性質や,卸売業者から中間卸売業者又は販売代理店に卸売され,又は小売店に直接販売された上で,最終的に合鍵に加工されて販売されるものという流通経路に加え,原告のカタログ,チラシ,定期刊行物等が,その内容から,いずれも小売店(合鍵複製業者)を対象としたものとみられることに照らせば,キーブランクの需要者としては,小売店(合鍵複製業者)を想定するのが 適切であると解されるところ,上記需要者は,原告の頒布するキーブックやチラシ等に掲載されるキーブランクの多くに本件標章3が刻印されていることや,原告以外からFUKI印キーブランクを入手できない状況が,30年以上の長きにわたり続いたことなどから,FUKI印キーブランクの販売者は原告であるとの認識を有するに至っているものと解することができる。 イしかし,他方で,被告は,前記1(1)アないしウ,(3)ア,エのとおり,昭和38年頃までに,その妻の名にちなんで本件標章3を考案し,FUKI印キーブランクの製造販売を開始したものであり,昭和46年頃までは,原告の前身であるゴトウ社のほか,加賀商会にも,FUKI印キーブランクを相当数販売していたものであって,原告設立後には,FUKI印キーブランクの納入先を原告に一本化したものの,被告は,商品の製造業者として原告とは独立した地位にあったものとみることができるというべきである。そうすると,被 のであって,原告設立後には,FUKI印キーブランクの納入先を原告に一本化したものの,被告は,商品の製造業者として原告とは独立した地位にあったものとみることができるというべきである。そうすると,被告は,製造業者として,FUKI印キーブランクを自らの判断と責任において主体的に市場に置いてきた者と評価するのが相当である。そして,FUKI印キーブランクの製造業者は被告のみであったものと認められるのであるから,被告は,その製造業者として,FUKI印キーブランクの品質等についての信用を蓄積してきたものとみることができるというべきである。 加えて,被告は,国内最大手のキーブランク製造業者であるとされるところ(甲269),キーブックの他社品番対照表(甲23,乙127)からは,キーブランクに刻印される標章のうち,流通量の多いものは,本件標章3のほか,「G.S.S」(被告製造)やクローバー印,「MMJ」など限られており,その製造業者も限られていることがうかがわれることに照らせば,キーブランクの需要者である合鍵製造業者においては,被告がFUKI印キーブランクの製造業者であることを認識している可能性が 高いものと解されるところである。また,仮に,上記需要者が被告の名称までを認識していないとしても,当該表示がある者の商品等表示に当たるというためには,当該表示がある特定の者の商品等を他の者の商品等から識別するものとして知られていれば足り,それ以上に識別された商品の主体の名称までが需要者に知られている必要はないと解される。そして,本件標章3がキーブランクの鍵頭に刻印されているものであり,上記刻印は,通常は製造時に付されるものであること,本件標章3が,かつては加賀商会が販売するキーブランクにも付されていたことに照らせば,キーブランクの需要者において, 頭に刻印されているものであり,上記刻印は,通常は製造時に付されるものであること,本件標章3が,かつては加賀商会が販売するキーブランクにも付されていたことに照らせば,キーブランクの需要者において,本件標章3を,キーブランクの製造業者を識別するものとして認識しているものというべきである。 ウそうすると,本件標章3については,原告は販売業者として,被告は製造業者として,それぞれの信用を蓄積してきたものであり,昭和46年から30年以上にわたり,被告のみが製造し,原告のみが販売する状況が続いたことにより,需要者において,原告及び被告の双方が,その信用を蓄積してきた主体(製造業者及び販売業者)として認識されるに至ったものとみることができ,本件標章3の商品等表示としての帰属主体は,原告及び被告であると解するのが相当であるというべきである。 エ(ア) この点に関し,原告は,被告は原告設立後から本件紛争に至るまでの間,専ら原告のためにFUKI印キーブランクを製造し納入したのみであり,本件標章3を自己のために使用したことはないと主張しており,被告が本件標章3を付した商品を自らの判断と責任において主体的に市場においたことや,被告がその信用を本件標章3に蓄積したことを争うものと解される。しかし,被告は,前記1(1)アでみたとおり,その妻の名にちなんで本件標章3を考案し,キーブランクに刻印して,最初に市場に置いた者であり,その販売先も,平成46年頃まではゴトウ社に限られなかったものである。また,同年時点での被告のFUKI印キー ブランクの販売量は,既に30ないし40万本にも及んでいたものであって,原告設立後は,上記納入先を原告に限定したにすぎないものとみられるのであるから,原告の設立をもって,被告がFUKI印キーブランクを主体的に 売量は,既に30ないし40万本にも及んでいたものであって,原告設立後は,上記納入先を原告に限定したにすぎないものとみられるのであるから,原告の設立をもって,被告がFUKI印キーブランクを主体的に市場に置くものではなくなったとみるのは相当ではない。 加えて,原告は,原被告間で商品開発会議等が開かれたことがない旨の主張をしているところ,本件紛争の経緯において原被告間でやり取りされた書面の内容(乙57,61の新番に関する記載)からは,商品の開発等は,むしろ被告において行われていたことがうかがわれるのであって,被告が,単に原告からの依頼に基づき商品を製造し,納入するものと評価することのできるものではない。 そうすると,被告は,FUKI印キーブランクの製造業者として,FUKI印キーブランクを主体的に市場に置き,その信用を蓄積してきたものと評価すべきものであって,原告の上記主張を採用することはできない。 (イ) また,原告は,①本件標章3と原告の称呼が同一である一方,本件標章3と被告の称呼は全く異なること,②鍵に付された標章が製造業者ではなく販売業者を指すことが業界の常識であることから,キーブランクの需要者は,本件標章3を原告のみを表示する標章であると理解するのが通常であり,本件標章3を被告と結びつけて理解することは不可能であるとも主張する。 しかし,原告の上記主張は,キーブランクの需要者を,合鍵複製の依頼者(一般顧客)とみることを前提とするものであるところ,キーブランクの商品としての性質,流通経路,FUKI印キーブランクの宣伝広告の内容等に照らし,FUKI印キーブランクの需要者としては,小売店(合鍵製造業者)を想定することが適切であると解されることは前述のとおりである。また,合鍵複製の依頼者(一般顧客)を需要者とみる 広告の内容等に照らし,FUKI印キーブランクの需要者としては,小売店(合鍵製造業者)を想定することが適切であると解されることは前述のとおりである。また,合鍵複製の依頼者(一般顧客)を需要者とみる ことができるとしても,上記依頼者は,本件標章3が,加工済みの合鍵に刻印されているものであることから,上記標章を,合鍵製作用の材料(キーブランク)の製造業者又は合鍵複製を行う主体のいずれか又は両方を示すものと認識するものと解されるのであって,本件標章3が,およそ製造業者の標章と認識され得ないものであるとの原告の主張は採用することができない。また,合鍵複製を行う主体である専門店は,その名称に必ずしも「フキ」を含むものではないことがうかがわれるから(甲212),称呼の同一を理由とする原告の主張も採用することができない。 さらに,原告の挙げる「ALPHa」,「MIWA」の例が,いずれも錠前メーカーのいわゆる純正キーに付されるものであるとみられるものであって(甲23,35),キーブランクとはその需要者を異にし,キーブランクの標章に対する需要者の認識の例とするのは適切ではないことに照らせば,キーブランクの刻印が販売業者を示すものであるとの理解が鍵の業界では常識であるとの原告の主張も相当ではないというべきである。 (ウ) 原告は,原告と被告は一体事業を構成する関係になかったから,本件標章3が原告と被告の双方に帰属することはあり得ないとも主張する。 しかし,前述のとおり,原告及び被告は,被告において,既に30ないし40万本という販売実績のあるFUKI印キーブランクの納入先を,原告の設立を契機に原告のみとし,その後30年以上の長きにわたり,被告は,FUKI印キーブランクを原告のみに納入し,原告も,キーブランク 0万本という販売実績のあるFUKI印キーブランクの納入先を,原告の設立を契機に原告のみとし,その後30年以上の長きにわたり,被告は,FUKI印キーブランクを原告のみに納入し,原告も,キーブランクとしてはFUKI印のものをメインに取り扱い,積極的に営業活動を行ってその販売を伸ばすという関係にあったものであり,このような関係に基づき,需要者が,本件標章3を,被告が製造し原告が販売する商品を表示するものと認識するに至ったものと評価することができる のであって,原告と被告の役員関係に重複がないことや株の持ち合いがないことなどによって,需要者の上記認識が左右されるものではないと解されるから,原告の上記主張も採用することができない。 (3)ア以上のとおり,本件標章3は,原告及び被告の双方に帰属するものと認められるものである。 しかし,前記(2)エ(ウ)でみたとおり,本件標章3が,原告及び被告の双方に帰属するものと認められるのは,原告と被告が,被告において,主として原告のみにFUKI印キーブランクを納入し,原告においてFUKI印キーブランクをメインに取り扱い,積極的に営業活動を行うという協力関係を前提とするものであるということができるところ,前記1(9)のとおり,原告と被告は,上記のような協力関係を既に解消しているものと認められる。 そこで,上記協力関係を解消済みである現時点において,本件標章3が原告のみに帰属するものであると評価できるかどうかについて,更に検討する。 イ前記1(5)のとおり,原告,原告代表者,被告及び被告創業者は,昭和48年12月25日に本件契約を締結しているところ,本件契約が,被告創業者から原告及び原告代表者に本件商標権3の使用を許諾する旨のものであり,原告及び原告代表者は,本件標章 告及び被告創業者は,昭和48年12月25日に本件契約を締結しているところ,本件契約が,被告創業者から原告及び原告代表者に本件商標権3の使用を許諾する旨のものであり,原告及び原告代表者は,本件標章3を被告又は被告創業者の製造したキーブランク以外に付してはならず,又は被告又は被告創業者以外からキーブランクを購入してはならない旨の条項や,原告代表者が原告の代表取締役たる地位を失った場合に本件商標権3の使用権を失う旨の条項,さらには,被告創業者が,一定の場合に本件契約を解除することができる旨の条項を含むものであることを考慮すれば,原告と被告との間において,上記アでみた協力関係が解消された場合に,本件標章3が原告のみに帰属することになるものとみることはできない。 ウ原告は,本件標章3の周知性の獲得は,専ら原告の行為に基づくものであり,その信用も原告に集中的に帰属するものであるから,被告が原告の許諾なく本件標章3を使用することは,原告の上記信用に対するただ乗りになると主張する。 しかし,原告代表者が原告を創業し,その売り上げを順調に伸ばすことができたのは,被告創業者が,原告代表者に技術指導等を行い,設備を提供するなどして合鍵複製業を営むことができるよう環境を整えた上,原告代表者の営む「新橋キーセンター」やゴトウ社等に,継続的にキーブランク等の商品を大量に供給してきたこと(前記1(2)アないしウ,(3)ア),被告が,野村商会に代償金支払と引き換えに中間卸売業者に対するキーブランクの卸売を中止させ,当該中間卸売業者に対するキーブランクの卸売をゴトウ社に行わせたこと(前記1(3)イ,ウ),昭和45,6年頃には,他社に対しても本件標章3を付したキーブランクを相当数納入していたにもかかわらず(前記1(3)エ),原告設立後 ーブランクの卸売をゴトウ社に行わせたこと(前記1(3)イ,ウ),昭和45,6年頃には,他社に対しても本件標章3を付したキーブランクを相当数納入していたにもかかわらず(前記1(3)エ),原告設立後は,上記キーブランクの納入先を原告のみとするに至ったこと(争いがない),被告創業者が,既に月当たり30ないし40万本の納入実績を有するに至っていたFUKI印キーブランクの刻印である本件標章3について,本件契約により,原告及び原告代表者に無償で使用許諾したこと(前記1(5)),被告が中間卸売業者として介在していたキーマシンについて,原告が製造業者と直接取引ができるよう取り計らったこと(前記1(3)オ)などによるところも大きいものと解される。加えて,被告は,FUKI印キーブランクの製造業者として,一定の品質を有するFUKI印キーブランクを継続的に原告に納入することにより,その信用の構築に寄与してきたものとみることができるのであるから,被告が本件標章3を使用することが,原告の構築した信用にただ乗りするものに当たると評価できるものではない。 エ以上によれば,本件標章3が,現時点において原告のみに帰属する商品 等表示であるとは認められない。 (4) 小括したがって,本件標章3は,被告にとって「他人の商品等表示」に当たらないから,本件標章3と同一の標章である被告標章7に関する原告の請求は,その余の点について検討するまでもなくいずれも理由がない。 (5) 本件標章1,2についてア前記1(7)アのとおり,原告は,その創業時以降,約40年にわたり,その会社案内,名刺,キーブック又はカタログ,取引書類,価格表,チラシ,定期刊行物,ホームページ等において,本件標章2を,原告の社名のうち「フキ」部分の表示に用いるとともに, 降,約40年にわたり,その会社案内,名刺,キーブック又はカタログ,取引書類,価格表,チラシ,定期刊行物,ホームページ等において,本件標章2を,原告の社名のうち「フキ」部分の表示に用いるとともに,本件標章1を表示して掲載し,さらに,その販売するキーマシン,刻印機,ケース,スプレー類,ショップスタンド,看板類,ネームマシン,鍵関連小物等に本件標章1若しくは2又はその両方を表示して販売してきたものと認められる。そうすると,原告は,本件標章1及び2を,その営業表示及び鍵関連用品類の商品表示として使用し,その信用を蓄積してきたものと認められるのであって,本件標章1及び2は,原告の商品等表示であると認められる。他方,被告は,キーブランクの包装用箱に本件標章1を使用していることが認められるものの(甲274,275,乙47),その他,本件紛争に至るまでの間,本件標章1及び2をその製造する商品に付すなどして使用したことは証拠上認められないのであるから,本件標章1及び2を付した商品を自らの判断と責任において主体的に市場に置くなどの活動を通じて,当該標章について信用を蓄積してきたものと評価することはできず,かつ,需要者において,本件標章1及び2に化体された信用の主体として認識されるに至っているものとも評価することができない。 イこの点に関し,被告は,本件標章1及び2は本件標章3と社会通念上同一の商標であり,一体のものとして鍵関連商品の需要者に認識されるもの であるから,本件標章3と同様に,原告及び被告の商品等表示に当たると主張する。 しかし,前記前提事実(3)アのとおり,本件標章1は,鍵母材の図形の中に,特徴的な書体により「FUKI」と横書きしてなる標章であり,本件標章2は,変形片仮名文字により「フキ」と横書きしてなる標章 しかし,前記前提事実(3)アのとおり,本件標章1は,鍵母材の図形の中に,特徴的な書体により「FUKI」と横書きしてなる標章であり,本件標章2は,変形片仮名文字により「フキ」と横書きしてなる標章であって,ゴシック体の欧大文字で「FUKI」と横書きしてなる標章である本件標章3と実質的に同一の標章であるということはできない。また,前記(3)アでみたとおり,原告と被告は,代表者同士の親族関係を基礎としてFUKI印キーブランクの製造と販売を分担し,その信用を構築してきたものと評価できるものではあるが,原告の事業は,キーブランクの販売のみにとどまるものではなく,合鍵複製業や,鍵関連用品全般の販売に及ぶものであったのであり(前記1(6)ア),上記鍵関連用品のうち,被告が製造し納入するものではないものも相当数あったことがうかがわれるのであるから,原告と被告が,その事業全体において一体のグループを構成するものであったとは評価することができない。そうすると,原告が上記のとおりその事業全般において用いていた標章である本件標章1及び2を,本件標章3と同様に被告の商品等表示であるとみることはできないものというべきである。 ウしたがって,本件標章1及び2は,被告にとって「他人の商品等表示」に該当する。 3 争点(2)(本件標章の周知性)(1) 前記1(6)及び(7)並びに2(5)アでみたとおり,原告は,昭和46年6月の原告設立後から,会社案内や広告物,定期刊行物,取引書類等にその社名を表示する際に本件標章1及び2を使用してきた上,鍵関連用品に本件標章1又は2を表示して使用してきたものであり,原告が全国各地に代理店を有し,また,専ら原告の販売する鍵関連用品を小売りし又は合鍵複製業に用い る多数の専門店を有することや,原告の売上 本件標章1又は2を表示して使用してきたものであり,原告が全国各地に代理店を有し,また,専ら原告の販売する鍵関連用品を小売りし又は合鍵複製業に用い る多数の専門店を有することや,原告の売上高の推移が別紙一覧表のとおりであり,昭和52年以降,年間10億円から20億円程度で推移していることも考慮すれば,平成21年時点で,本件標章1及び2は,鍵,錠前,鍵加工機械装置(キーマシン),キーホルダー等の鍵関連用品の需要者において周知となっていたものと認められる。 (2) 前記1(9)のとおり,原告は,平成21年頃からTLH印キーブランクの販売に注力するようになり,その他の商品についても,本件標章1の表示を順次抹消し,「iNAHO」印に変更するなどして,本件標章1及び2の使用を順次縮小していることが認められる。しかし,前記のとおり,本件標章1及び2は,昭和46年6月から原告がその使用を開始したものであり,上記(1)でみた事情に照らし,平成21年時点において,本件標章1及び2が原告の商品等表示として周知性を獲得してから相当の時間が経過していたものと解することができる。これに加えて,原告が,平成21年以降,本件標章1及び2の使用を完全に中止したものではなく,原告のホームページや取引書類を中心に,原告の社名を表示する際などにおける使用を継続していること(甲19ないし21,24ないし27,214,240ないし244,288ないし303)も考慮すれば,原告が平成21年以降本件標章1及び2の使用を縮小したとしても,なお,上記周知性が消滅するには至っていないものと評価できるものである。これに反する被告の主張は採用しない。 4 争点(3)(被告による原告元販売店に対する本件標章1及び2の使用許諾の有無)(1) 被告標章2及び3は株式会社 ないものと評価できるものである。これに反する被告の主張は採用しない。 4 争点(3)(被告による原告元販売店に対する本件標章1及び2の使用許諾の有無)(1) 被告標章2及び3は株式会社フキ八王子により,被告標章4は株式会社名古屋フキにより,被告標章5は株式会社北海道フキにより,各使用されているものであるところ(甲262ないし268),被告は,原告の元販売店に被告標章7を付したキーブランクを販売していることを認めており,本件証拠上も,被告が上記フキ八王子及び名古屋フキに対しキーブランクを納入 したものと認められる(甲264,265)。 しかし,上記キーブランク販売の事実を超えて,被告が,上記各社と実質的に同一であり,又は上記各社における本件標章の使用について実質的に支配管理しているなどの事情は認められない。 (2) 原告は,被告が上記各社に対し被告標章2ないし5の使用を許諾していると主張し,その証拠として被告及び被告代表者代理人の平成22年7月9日付け回答書(甲261)に,原告の元販売代理店に本件標章の継続使用を認めないとする理由はない旨記載されていることを挙げるが,被告が上記各社に対し被告標章2ないし5の使用を許諾していることを具体的に裏付けるに足りるものではない。また,仮に,被告が,上記各社が被告標章2ないし5の使用を継続することを容認しているものであるとしても,被告自身が被告標章2ないし5を使用しているものと認められるものでもない。 (3) そうすると,被告が被告標章2ないし5を使用しているものとは認められず,かつ,被告標章2ないし5を使用するおそれがあるものとも認められないから,被告標章2ないし5に関する原告の請求は,その余の点につき検討するまでもなく理由がない。 したがって,被告標章1及び6の かつ,被告標章2ないし5を使用するおそれがあるものとも認められないから,被告標章2ないし5に関する原告の請求は,その余の点につき検討するまでもなく理由がない。 したがって,被告標章1及び6のみにつき,更に検討する。 5 争点(4)(混同のおそれの有無)(1) 争点(1)及び(2)でみたとおり,本件標章1及び2は,原告の販売する鍵関連用品又は原告の営業を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものに当たり,かつ,被告にとって「他人の商品等表示」に当たるものである。 前記前提事実(3)のとおり,本件標章1は被告標章1と,本件標章2は被告標章6と同一の標章であるから,被告が被告標章1若しくは6を鍵,錠前,鍵加工機械装置,キーホルダーに付して使用し,又は被告標章1又は6を付した鍵,錠前,鍵加工機械装置,キーホルダーを販売し若しくは販売のため に展示する行為は,被告の商品と原告の商品につき混同を生じさせる行為に当たるものと認められる。 (2) 被告は,原告が「TLH」,「iNAHO」をその商品等表示として用いていることから,混同のおそれを否定する主張をするが,本件標章1及び2が原告の商品等表示として周知性を失っていないものと認められる以上,上記「TLH」,「iNAHO」の使用により,混同のおそれが否定されるものではない。 6 小括以上によれば,被告が被告標章1若しくは6を鍵,錠前,鍵加工機械装置,キーホルダーに付して使用し,又は被告標章1若しくは6を付した鍵,錠前,鍵加工機械装置,キーホルダーを販売し若しくは販売のために展示する行為は,不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争に該当するものと認められる。 7 争点(5)(被告による本件標章の使用は,商標権者による登録商標の使用として適 し若しくは販売のために展示する行為は,不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争に該当するものと認められる。 7 争点(5)(被告による本件標章の使用は,商標権者による登録商標の使用として適法なものか。)(1) 前記前提事実(4)イ及びウのとおり,被告代表者は,本件標章1及び2について,本件商標権1及び2を有するところ,原告は,本件商標権1及び2は実質的には原告代表者に帰属するものであり,また,本件商標権1及び2の行使としての被告による本件標章1及び2の使用は,権利の濫用に当たると主張する。 (2)アそこで,まず,本件商標権1及び2の帰属の点についてみると,確かに,本件標章1及び2は,原告の設立に当たり,原告がデザイナーに依頼してデザインを行わせたものであり(前記1(4)イ),本件商標権3が既に登録されていたことから(前記前提事実(4)ア),平成8年6月12日法律第68号による改正前の商標法7条1項所定の連合商標制度により,本件商標権3の連合商標として,被告創業者によって出願されるに至ったものであると認められる。 イしかし,そもそも,前記1(1),(3)のとおり,被告創業者は,昭和38年頃までに本件標章3の使用を開始し,原告設立前である昭和45,6年頃には,月当たり30ないし40万本のFUKI印キーブランクを製造販売するなど,本件標章3について,既に相当程度の信用を蓄積していたものであって,原告がその社名を「フキ」とし,本件標章1及び2をその社名表示及びシンボルマークとして用いることを決めたのも,ゴトウ社が,被告から納入を受けるFUKI印キーブランクを販売することにより,顧客から信用を獲得していたことによるものであると解されるところである。 これは,原告創業時の新聞広告記事(前記1(4)ウ)から 社が,被告から納入を受けるFUKI印キーブランクを販売することにより,顧客から信用を獲得していたことによるものであると解されるところである。 これは,原告創業時の新聞広告記事(前記1(4)ウ)からもうかがうことができる。 このように,本件標章1及び2が,本件標章3の信用に由来して作成されたものであり,その称呼において本件標章3と同一のものである以上,本件商標権1及び2を被告創業者が取得することも合理性を有するものというべきであって,原告の依頼したデザイナーによりデザインされたものであることや,その商標登録出願が原告代表者の依頼を契機としてなされたものであることなどによって,その実質的権利者が原告代表者となるということができるものではない。 ウ加えて,原告,原告代表者及び被告創業者は,原告及び原告代表者が被告創業者から本件商標権1及び2の使用許諾を受ける旨の内容を含む本件契約を締結し,平成8年6月12日法律第68号により連合商標制度が廃止され,同改正後の商標法が施行された平成9年4月1日以降も,上記使用許諾関係を変更することがなかったものである上,被告創業者は,平成21年に原告代表者から本件商標権の買い取りを打診された際に,本件商標権を原告又は原告代表者に売却するつもりはない旨を回答しているのであって(前記1(9)エ),原告代表者及び被告創業者において,本件商標権1及び2が原告代表者に実質的に帰属するものであるとの共通認識がも たれ,又はこれが合意されていたような事情も認めることができない。 エ原告は,本件商標権1及び2の登録手続費用等を原告が負担したことがあること等を挙げるが,原告が本件商標権1及び2につき無償で使用許諾を受け,これを使用してきたものであることに照らせば,上記費用の負担をもって 件商標権1及び2の登録手続費用等を原告が負担したことがあること等を挙げるが,原告が本件商標権1及び2につき無償で使用許諾を受け,これを使用してきたものであることに照らせば,上記費用の負担をもって,本件商標権1及び2が原告代表者に帰属することを裏付けるものとみることはできない。 オしたがって,本件商標権1及び2が実質的に原告代表者に帰属するものであるとは認められない。 (3) 次に,本件商標権1及び2の行使としての被告による本件標章1及び2の使用が権利の濫用に当たるか否かという点について検討する。 ア前記前提事実(4)イのとおり,本件商標権1及び2は,いずれも,原告の設立(昭和46年6月24日)の翌日である同年25日に商標登録出願されたものであるところ,前記1(4)イのとおり,本件標章1及び2は,原告が,その設立に併せて作成し,使用を開始したものであるから,本件商標登録出願時において,本件標章1及び2が,原告の営業等を表示するものとして周知であったとは認められない。したがって,本件商標権1及び2について,本件標章1及び2が原告の商品等表示として周知であったにもかかわらず被告創業者によって商標登録出願されるに至ったものであるなどの事情は認められない。 イまた,前記(2)イでみたとおり,本件標章1及び2は,本件標章3について相当程度の信用が蓄積されていたことから,本件標章3に由来するものとしてデザインされ,その使用が開始されたものであって,本件標章1及び2が被告創業者によって商標登録出願されたのも,本件標章3の考案者であり,かつ,その使用を開始した者である被告創業者が,既に本件商標権3を取得していたことによるものであって,本件商標権1及び2の商標登録出願を被告創業者が行い,本件商標権1及び2の設定登録を受けた あり,かつ,その使用を開始した者である被告創業者が,既に本件商標権3を取得していたことによるものであって,本件商標権1及び2の商標登録出願を被告創業者が行い,本件商標権1及び2の設定登録を受けた ことについて,被告創業者と原告又は原告代表者との間で信義に反するような点は何ら見受けられない。 ウさらに,前記1(6),(7)でみた原告の営業形態,その売上高,宣伝広告費の推移,本件標章1及び2の使用状況等に照らせば,本件標章1及び2が,現在,原告の商品等表示として周知となっていることは認めることができるものの,それを超えて全国的に著名となるに至っているとまで評価することはできない。原告は,被告が製造し,納入するキーブランクをその主力商品として販売してきたものであり,本件標章1及び2は,そのような原告の営業及び商品を表示するものとして使用されてきたものであって,本件標章1及び2に蓄積されている出所及び品質に関する信用のうち一部は,被告に由来するものであると解することができるものであるから,被告が,本件商標権1及び2の指定商品の範囲内で本件標章1及び2を使用したとしても,本件標章1及び2が取引において果たしている出所識別機能を著しく害し,商標法の趣旨に反する結果が招来されるということはできない。 エ以上の事情を総合すれば,被告代表者による本件商標権1及び2の行使として,被告が本件標章1及び2を本件商標権1及び2の指定商品の範囲で使用することが,権利の濫用に当たるとは認められない。 (4) 原告は,被告が鍵,錠前,キーホルダー,鍵加工機械装置の販売等に当たり被告標章1及び6を使用し,又は被告標章1及び6を付した鍵,錠前,キーホルダー,鍵加工機械装置を販売等することの差止めを求めているところ,鍵及び鍵加工機械装 ホルダー,鍵加工機械装置の販売等に当たり被告標章1及び6を使用し,又は被告標章1及び6を付した鍵,錠前,キーホルダー,鍵加工機械装置を販売等することの差止めを求めているところ,鍵及び鍵加工機械装置については本件商標権1の指定商品である「鍵」及び「金属加工機械器具」に,鍵,錠前及びキーホルダーについては本件商標権2の指定商品である「金属製金具」(錠前のうち,電気式又は金属製のもの以外のものについては,「錠(電気式又は金属製のものを除く。)」)及び「キーホルダー」に含まれるものと認められる。 したがって,被告が鍵及び鍵加工機械装置の販売等に当たり被告標章1を使用し,又は被告標章1を付した鍵及び鍵加工機械装置を販売等すること並びに被告が鍵,錠前及びキーホルダーの販売等に当たり被告標章6を使用し,又は被告標章6を付した鍵,錠前及びキーホルダーを販売等することは,登録商標の使用として適法なものに当たる。 他方,被告が錠前及びキーホルダーの販売等に当たり被告標章1を使用し,又は被告標章1を付した錠前及びキーホルダーを販売等すること並びに被告が鍵加工機械装置の販売等に当たり被告標章6を使用し,又は被告標章6を付した鍵加工機械装置を販売等することについては,本件商標権1及び2の使用権の範囲外の行為であるから,その違法性は阻却されない。 なお,現時点において,被告が錠前,キーホルダー,鍵加工機械装置に被告標章1,6を使用しているものとは認められないが,前記2(5)アのとおり,被告はキーブランクの包装用箱に本件標章1を使用していることや,前提事実(2)ウのとおり,被告が本件標章と同一又は類似の標章を使用する可能性があることを被告自身も争っていないことに照らせば,被告が錠前,キーホルダーに被告標章1を,鍵加工機 使用していることや,前提事実(2)ウのとおり,被告が本件標章と同一又は類似の標章を使用する可能性があることを被告自身も争っていないことに照らせば,被告が錠前,キーホルダーに被告標章1を,鍵加工機械装置に被告標章6を使用するおそれがないということはできない。 また,被告標章1,6を付した商品の製造は不正競争防止法2条1項1号の不正競争に該当する行為ではないが,上記標章を付した商品の販売又は販売のための展示の予防に必要な行為(不正競争防止法3条2項)として,その差止めを求めることができるものと解されるところ,原告の主張は上記趣旨を含むものと認められる。 第5 結論以上によれば,原告の請求は,被告が錠前,キーホルダーの販売及び宣伝広告に当たり被告標章1を付し,又は被告標章1を付した錠前,キーホルダーを製造し,販売し若しくは販売のために展示すること並びに被告が鍵加工機 械装置の販売等に当たり被告標章6を付し,又は被告標章6を付した鍵加工機械装置を製造し,販売し若しくは販売のために展示することの差止めを求める限度で理由がある。なお,仮執行宣言は相当でないのでこれを付さない。 したがって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官小川雅敏 裁判官森川さつき (別紙)商標権目録1(1)登録番号 1183493号出願番号 46-066230号出願日昭和46年6月25日登録日昭和51年2月5日商標 商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務 6 金属製荷役用パレット,荷役用ターンテーブル,荷役用トラバーサー,金属製人工魚礁,金属製養鶏用か 25日登録日昭和51年2月5日商標 商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務 6 金属製荷役用パレット,荷役用ターンテーブル,荷役用トラバーサー,金属製人工魚礁,金属製養鶏用かご,金属製の吹付け塗装用ブース,金属製セメント製品製造用型枠,金属製の滑車・ばね及びバルブ(機械要素に当たるものを除く。),金属製管継ぎ手,金属製フランジ,キー,コッタ,てんてつ機,金属製道路標識(発光式又は機械式のものを除く。),金属製航路標識(発光式のものを除く。),金属製貯蔵槽類 7 金属加工機械器具,鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,漁業用機械器具,化学機械器具,繊維機械器具,食料加工用又は飲料加工用の機械器具,製材用・木工用又は合板用の機械器具,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具,印刷用又は製本用の機械器具,ミシン,農業用機械器具,靴製造機械,製革機械,たばこ製造機械,ガラス器製造機械,塗装機械器具,包装用機械器具,陶工用ろくろ,プラスチック加工機械器具,半導体製造装置,ゴム製品製造機械器具,石材加工機械器具,動力機械器具(陸上の乗物 用のものを除く。),風水力機械器具,業務用電気洗濯機,業務用攪はん混合機,業務用皮むき機,業務用食器洗浄機,業務用切さい機,業務用電気式ワックス磨き機,業務用電気掃除機,修繕用機械器具,機械式駐車装置,乗物用洗浄機,消毒・殺虫・防臭用散布機(農業用のものを除く。),機械要素(陸上の乗物用のものを除く。),芝刈機,電動式カーテン引き装置,廃棄物圧縮装置,廃棄物破砕装置 8 組ひも機(手持ち工具に当たるものに限る。),くわ,鋤,レーキ(手持ち工具に当たるものに限る。),靴製造用靴型(手持ち工具に当たるものに限る。) 9 アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置,オゾン発生器, 手持ち工具に当たるものに限る。),くわ,鋤,レーキ(手持ち工具に当たるものに限る。),靴製造用靴型(手持ち工具に当たるものに限る。) 9 アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置,オゾン発生器,電解槽,検卵器,自動販売機,ガソリンステーション用装置,駐車場用硬貨作動式ゲート,救命用具,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,保安用ヘルメット,鉄道用信号機,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,潜水用機械器具,業務用テレビゲーム機,電動式扉自動開閉装置,乗物運転技能訓練用シミュレーター,運動技能訓練用シミュレーター 10 業務用美容マッサージ器 11 乾燥装置,換熱器,蒸煮装置,蒸発装置,蒸留装置,熱交換器,牛乳殺菌機,工業用炉,原子炉,飼料乾燥装置,ボイラー,暖冷房装置,冷凍機械器具,業務用衣類乾燥機,美容院用又は理髪店用の機械器具(いすを除く。),業務用加熱調理機械器具,業務用食器乾燥機,業務用食器消毒器,水道用栓,タンク用水位制御弁,パイプライン用栓,汚水浄化槽,し尿処理槽,業務用ごみ焼却炉,太陽熱利用温水器,浄水装置 12 荷役用索道,カーダンパー,カープッシャー,カープラー,牽引車,陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),陸上の乗物用の機械要素,落下 傘,乗物用盗難警報器 15 調律機 16 印刷用インテル,活字,マーキング用孔開型板 17 ゴム製又はバルカンファイバー製のバルブ(機械要素に当たるものを除く。),ガスケット,管継ぎ手(金属製のものを除く。),パッキング,消防用ホース,石綿製防火幕,オイルフェンス 19 人工魚礁(金属製のものを除く。),養鶏用かご(金属製のものを除く。),吹付け塗装用ブース(金属製のも 継ぎ手(金属製のものを除く。),パッキング,消防用ホース,石綿製防火幕,オイルフェンス 19 人工魚礁(金属製のものを除く。),養鶏用かご(金属製のものを除く。),吹付け塗装用ブース(金属製のものを除く。),セメント製品製造用型枠(金属製のものを除く。),送水管用バルブ(金属製又はプラスチック製のものを除く。),道路標識(金属製又は発光式若しくは機械式のものを除く。),航路標識(金属製又は発光式のものを除く。),石製液体貯蔵槽,石製工業用水槽 20 荷役用パレット(金属製のものを除く。),養蜂用巣箱,美容院用いす,理髪店用いす,プラスチック製バルブ(機械要素に当たるものを除く。),貯蔵槽類(金属製又は石製のものを除く。) 21 かいばおけ,家禽用リング 26 漁網製作用杼,メリヤス機械用編針 28 遊園地用機械器具(業務用テレビゲーム機を除く。) (別紙)商標権目録1(2)登録番号 1191200号出願番号 46-066232号出願日昭和46年6月25日登録日昭和51年3月25日商標 商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務 6 鍵 (別紙)商標権目録2登録番号 1105386号出願番号 46-066231号出願日昭和46年6月25日登録日昭和50年2月3日商標 商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務 3 研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布 6 かな床,はちの巣,金属製金具 8 手動利器,手動工具 11 水道蛇口用座金,水道蛇口用ワッシャー 14 キーホルダー 16 装飾塗工用ブラシ 17 ゴム製又はバルカンファイバー製の座金及びワッシャー,蹄鉄(金属製のものを除く。) 18 かばん金具 道蛇口用座金,水道蛇口用ワッシャー 14 キーホルダー 16 装飾塗工用ブラシ 17 ゴム製又はバルカンファイバー製の座金及びワッシャー,蹄鉄(金属製のものを除く。) 18 かばん金具,がま口口金 20 カーテン金具,金属代用のプラスチック製締め金具,くぎ・くさび・ナット・ねじくぎ・びょう・ボルト・リベット及びキャスター(金属製のものを除く。),座金及びワッシャー(金属製・ゴム製又はバルカンファイバー製のものを除く。),錠(電気式又は金属製のものを除く。) 21 魚ぐし,おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ,工業用はけ,船舶ブラシ 26 針類,被服用はとめ (別紙)商標権目録3登録番号 0660152号出願日昭和38年9月11日登録日昭和39年12月1日商標 商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務 3 研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布 6 かな床,はちの巣,金属製金具 8 手動利器,手動工具 11 水道蛇口用座金,水道蛇口用ワッシャー 14 キーホルダー 16 装飾塗工用ブラシ 17 ゴム製又はバルカンファイバー製の座金及びワッシャー,蹄鉄(金属製のものを除く。) 18 かばん金具,がま口口金 20 カーテン金具,金属代用のプラスチック製締め金具,くぎ・くさび・ナット・ねじくぎ・びょう・ボルト・リベット及びキャスター(金属製のものを除く。),座金及びワッシャー(金属製・ゴム製又はバルカンファイバー製のものを除く。),錠(電気式又は金属製のものを除く。) 21 魚ぐし,おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ,工業用はけ,船舶ブラシ 26 針類,被服用はとめ 金属製のものを除く。 魚ぐし、おけ用ブラシ、金ブラシ、管用ブラシ、工業用はけ、船舶ブラシ 針類、被服用はとめ

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