平成21(行ヒ)110 所得税更正処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年4月13日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄差戻 名古屋高等裁判所 平成19(行コ)22
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判決文本文7,098 文字)

- 1 -主文原判決を破棄する。 本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人貝阿彌誠ほかの上告受理申立て理由について以下に摘示する租税特別措置法(以下「措置法」という。)及び都市計画法(以下「都計法」という。)の各条項は,それぞれ別表記載のものをいう。 本件は,被上告人らが,その所有する土地を被上告補助参加人(以下「参加人」という。)に売却した対価について措置法33条の4第1項1号所定の長期譲渡所得の特別控除額の特例(以下「本件特例」という。)が適用されるものとして所得税の申告をしたところ,上告人らから,本件特例の適用は認められないとして各更正及び過少申告加算税の各賦課決定を受けたので,上記各更正のうち確定申告額ないし修正申告額を超える部分及び上記各賦課決定(修正申告をした被上告人については修正申告額を超える本税額に係る部分)の取消しを求める事案である。 2(1)都計法によれば,①都市計画施設の区域内において建築物の建築をしようとする者は,政令で定める軽易な行為等を除き,都道府県知事の許可を受けなければならず(53条1項),②都道府県知事は,上記①の許可の申請があった場合において,当該建築が都市計画施設に関する都市計画に適合し,又は当該建築物が所定の要件に該当し,かつ,容易に移転し,若しくは除却することができるものであると認めるときは,その許可をしなければならないが(54条),③都道府県知事は,都市計画施設の区域内の土地でその指定したものの区域(以下「事業予定地」という。)内において行われる建築物の建築については,上記②にかかわ- 2 -らず,上記①の許可をしないことができ(55条1項本文),④都道府県知事(土地の買取りの申出の相手方として公告された者があるときは,その者)は,事業予定地内の土地の所有者か ②にかかわ- 2 -らず,上記①の許可をしないことができ(55条1項本文),④都道府県知事(土地の買取りの申出の相手方として公告された者があるときは,その者)は,事業予定地内の土地の所有者から,上記③により建築物の建築が許可されないときはその土地の利用に著しい支障を来すこととなることを理由として,当該土地を買い取るべき旨の申出があった場合においては,特別の事情がない限り,当該土地を時価で買い取るものとする(56条1項)とされている。 なお,上記各規定により都道府県知事が行うこととされている許可,買取り等については,都計法等の規定により,地方自治法252条の19第1項の指定都市においては,当該指定都市の長が行うものとされている。 (2)措置法33条の4第1項1号は,個人の有する資産で措置法33条1項各号又は33条の2第1項各号に規定するものがこれらの規定に該当することとなった場合において,その者がその年中にその該当することとなった資産のいずれについても措置法33条又は33条の2の規定の適用を受けないときは,これらの全部の資産の収用等又は交換処分等による譲渡については,措置法31条1項に規定する長期譲渡所得の特別控除額の上限は,同条4項所定の100万円ではなく,5000万円とする旨規定しており(これが本件特例である。),措置法33条1項3号の3は,土地等が都計法56条1項の規定に基づいて買い取られ,対価を取得する場合等を掲げている。 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。 (1)参加人による公園用地の取得についてア参加人においては,都市計画施設である公園又は緑地の区域内の土地について,必要に応じて都計法55条1項の規定による事業予定地の指定をし,事業予定- 3 -地内の土地の所有者からの申出を受けて当該土地の買取 おいては,都市計画施設である公園又は緑地の区域内の土地について,必要に応じて都計法55条1項の規定による事業予定地の指定をし,事業予定- 3 -地内の土地の所有者からの申出を受けて当該土地の買取りを行っていた。 イ参加人による上記の土地の買取りは,次のような手順により行われていた。 すなわち,①上記区域内の土地の地権者で参加人による土地の買取りを希望するものが,参加人に対し,仮の土地買取申出書を提出し,②参加人が当該土地を購入する予算措置を講ずることができた時点で,名古屋市長(以下「市長」という。)において当該土地を事業予定地に指定してその旨の公告をし,③参加人の担当職員が,地権者に対し,都計法53条1項の規定による建築許可の申請をするよう促し,④その申請に対しては,市長が都計法55条1項本文の規定により建築不許可の決定をし,⑤地権者から都計法56条1項の規定による土地買取りの申出を受けて,市長において地権者との間で当該土地の売買契約を締結するというものであった。 なお,参加人においては,上記③の申請に係る申請書に添付すべき建築図面(都市計画法施行規則39条参照)として,あらかじめ5,6種類の図面を用意しており,地権者が提出した申請書にどの図面を添付するかは,参加人の担当職員が,当該土地の面積等に応じて適当と思われる図面を任意に選択していた。 (2)被上告人X~X関係 ア被上告人Xを除く被上告人ら8名(以下「被上告人X~X」という。) は,第1審判決別紙a町の物件目録1記載の土地(以下「a町の土地1」という。)を共有しており,被上告人X(以下「被上告人X」という。)は,同目録 2及び3記載の各土地(以下,それぞれ「a町の土地2」などといい,a町の土地1と併せて「a町の各土地」という。)を所有していた 共有しており,被上告人X(以下「被上告人X」という。)は,同目録 2及び3記載の各土地(以下,それぞれ「a町の土地2」などといい,a町の土地1と併せて「a町の各土地」という。)を所有していた。 イ市長は,昭和53年5月24日,a町の各土地を含む近隣地域につき都市計- 4 -画決定(名古屋都市計画公園5・5・36号氷上公園)をした。 ウ被上告人Xは,a町の各土地につき,具体的な利用計画を有していなかっ たが,公園用地に指定されていてその利用,処分が困難であると聞き,参加人に問い合わせたところ,参加人の担当職員から,建築物の建築は制限されているが,他に譲渡するのであれば参加人が買い取る意向であり,その対価に対する課税については本件特例が適用される旨の教示を受けた。そこで,被上告人Xは,被上告人 X~Xを代表して,a町の各土地を参加人に売却する意向を参加人に伝えた。 エ市長は,平成10年5月25日,a町の土地1を事業予定地に指定した。被上告人X~Xは,a町の土地1につき,同年11月27日付けで,市長に対し都 計法53条1項の規定による建築許可の申請をし,同年12月4日付けで建築不許可の決定を受け,同月7日付けで,市長に対し都計法56条1項の規定による買取りの申出をした。市長は,同11年2月1日,被上告人X~Xとの間で,a町の 土地1を代金1億2130万2000円で買い取る旨の売買契約を締結し,同月19日,被上告人X~Xに対し,上記代金を支払った。 また,市長は,平成11年6月3日,a町の土地2及び3を事業予定地に指定した。被上告人Xは,同年10月6日付けで,a町の土地2につき,市長に対し都 計法53条1項の規定による建築許可の申請をし,同月12日付けで建築不許可の決定を受け,同月15日付けで,a町の に指定した。被上告人Xは,同年10月6日付けで,a町の土地2につき,市長に対し都 計法53条1項の規定による建築許可の申請をし,同月12日付けで建築不許可の決定を受け,同月15日付けで,a町の土地2及び3につき,市長に対し都計法56条1項の規定による買取りの申出をした。市長は,同年11月30日,被上告人Xとの間で,a町の土地2を代金5683万2000円で,a町の土地3を代金 777万6000円でそれぞれ買い取る旨の売買契約を締結し,同年12月22日,被上告人Xに対し,上記代金を支払った。 - 5 -なお,上記の各建築許可申請に係る申請書に添付された建築図面は,いずれも参加人の担当職員が用意し,a町の各土地の面積,形状に合うものを適宜選択して添付したものであり,被上告人Xは,これらの図面が添付されることを知らなかっ た。 (3)被上告人X関係 ア被上告人Xは,第1審判決別紙b町の物件目録1ないし3記載の各土地 (以下,これらを「b町の各土地」といい,a町の各土地と併せて「本件各土地」という。)を所有していた者である。 イ市長は,昭和47年12月6日,b町の各土地を含む近隣地域につき都市計画決定(名古屋都市計画緑地第7号猪高緑地)をした。 ウ被上告人Xは,b町の各土地につき具体的な利用計画を有しておらず,平 成10年には,参加人の担当職員の求めに応じて,b町の各土地を参加人が緑地として無償で使用することを許諾した。その際,参加人の担当職員は,買取りの予算措置を講ずることができ次第連絡するので,あらかじめ土地の買取りに関する書類を提出してほしい旨申し入れた。そこで,被上告人Xは,b町の各土地につき, 仮の土地買取申出書を提出した。 エ市長は,平成11年6月3日,b町の各土地を事業予定地に指定した。被上告人Xは, 書類を提出してほしい旨申し入れた。そこで,被上告人Xは,b町の各土地につき, 仮の土地買取申出書を提出した。 エ市長は,平成11年6月3日,b町の各土地を事業予定地に指定した。被上告人Xは,b町の各土地につき,同12年8月9日付けで,市長に対し都計法5 3条1項の規定による建築許可の申請をし,同月16日付けで建築不許可の決定を受け,同月17日付けで,市長に対し都計法56条1項の規定による買取りの申出をした。市長は,同年10月5日,被上告人Xとの間で,b町の各土地を代金合 計3億6683万4800円で買い取る旨の売買契約を締結し,同月26日,被上- 6 -告人Xに対し,上記代金を支払った。 なお,上記の建築許可申請に係る申請書に添付された建築図面は,参加人の担当職員が適宜用意したものであった。 原審は,上記事実関係の下において,被上告人らはいずれも本件各土地の売却の対価(以下「本件対価」という。)について本件特例の適用を受けることができると判断して,被上告人らの請求を認容した。その理由は,要旨次のとおりである。 (1)都計法56条1項の文理上,事業予定地内の土地の所有者が当該土地の買取りの申出を行うためには,現実に都計法53条1項の建築許可の申請を行うこと及び同申請に対し不許可決定がされることは要件とされていない。また,都計法56条1項は,土地買取りの申出を認めることにより,土地利用制限に対する補償を行って実質的に地権者の財産権を保護するとともに,併せて都道府県知事等による土地の先行取得を実現しようとする趣旨に出たものと解することができる。 (2)本件特例は,地権者がその土地を都道府県知事等に買い取ってもらう場合の譲渡所得について税法上の特典を与えることによって,都計法の上記立法目的を間接的に実現しようとする政策的意 ことができる。 (2)本件特例は,地権者がその土地を都道府県知事等に買い取ってもらう場合の譲渡所得について税法上の特典を与えることによって,都計法の上記立法目的を間接的に実現しようとする政策的意図に出たものということができる。そうすると,本件特例の適用を受けるためには,具体的な建築意思までは必要ではなく,建築物の建築が許可されないことを理由に買取りを求めるとの意思が明確であれば足りるものと解される。 (3)被上告人らは,事業予定地に指定された本件各土地につき,都計法56条1項の規定による買取り申出をして,参加人にこれを譲渡したものであり,本件特例の適用を否定すべき事情はない。 - 7 - しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 (1)都計法53条1項の許可又は不許可は,都市計画施設の区域内において「建築物の建築をしようとする者」からの申請に対する応答としてされるものであり,都計法56条1項の規定は,建築物の建築をしようとする土地の所有者が意図していた具体的な建築物の建築が都計法55条1項本文の規定により許可されない場合には,上記所有者は,その土地の利用に著しい支障を来すこととなることから,都道府県知事等に対し,当該土地の買取りを申し出ることを認めたものと解される。したがって,都計法56条1項の規定による土地の買取りの申出をするには,当該土地の所有者に具体的に建築物を建築する意思があったことを要するものというべきである。 また,措置法33条1項3号の3が都計法56条1項の規定による土地の買取りを掲げているのは,土地の所有者が意図していた具体的な建築物の建築が事業予定地内であるがために許可されないことによりその土地の利用に著しい支障を来すこととなる場合に,いわばその代償としてされる当該 を掲げているのは,土地の所有者が意図していた具体的な建築物の建築が事業予定地内であるがために許可されないことによりその土地の利用に著しい支障を来すこととなる場合に,いわばその代償としてされる当該土地の買取りについては,強制的な収用等の場合と同様に,これに伴い生じた譲渡所得につき課税の特例を認めるのが相当であると考えられたことによるものと解される。 そうすると,土地の所有者が,具体的に建築物を建築する意思を欠き,単に本件特例の適用を受けられるようにするため形式的に都計法55条1項本文の規定による不許可の決定を受けることを企図して建築許可の申請をしたにすぎない場合には,たとい同申請に基づき不許可の決定がされ,外形的には都計法56条1項の規定による土地の買取りの形式が採られていたとしても,これをもって措置法33条- 8 -1項3号の3所定の「都市計画法第56条第1項の規定に基づいて買い取られ,対価を取得する場合」に当たるということはできない。したがって,上記のような場合,当該所有者は当該対価について本件特例の適用を受けることができないものと解するのが相当である。 (2)前記事実関係によれば,被上告人らは,いずれも,本件各土地につき,具体的な利用計画を有しておらず,被上告人らが市長に対して提出した各建築許可申請書に添付された建築図面も,参加人の担当職員が適宜選択して添付したものであったというのであるから,被上告人らに具体的に建築物を建築する意思がなかったことは明らかである。被上告人らは,当初から参加人に本件各土地を買い取ってもらうことを意図していたものの,本件特例の適用を受けられるようにするため,形式的に建築許可申請等の手続をとったものにすぎない。参加人による本件各土地の買取りは,外形的には都計法56条1項の規定による土地の買取りの形式が たものの,本件特例の適用を受けられるようにするため,形式的に建築許可申請等の手続をとったものにすぎない。参加人による本件各土地の買取りは,外形的には都計法56条1項の規定による土地の買取りの形式が採られているものの,被上告人らには,その意図していた具体的な建築物の建築が許可されないことにより当該土地の利用に著しい支障を来すこととなるという実態も存しない。したがって,本件対価について本件特例の適用はないというべきである。 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,被上告人らは,上告人らによる前記各更正等が信義則に反する旨主張するので,その点について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官田原睦夫裁判官藤田宙靖裁判官堀籠幸男裁判官那須弘平裁判官近藤崇晴)- 9 -(別表)措置法31条1項平成14年法律第15号による改正前のもの措置法31条4項平成16年法律第14号による改正前のもの措置法33条a町の土地1の譲渡につき,平成11年法律第70号による改正前のものa町の土地2及び3の譲渡につき,平成12年法律第13号による改正前のものb町の各土地の譲渡につき,平成13年法律第7号による改正前のもの措置法33条の2a町の土地1の譲渡につき,平成11年法律第70号による改正前のものa町の土地2及び3の譲渡につき,平成12年法律第13号による改正前のものb町の各土地の譲渡につき,平成15年法律第8号による改正前のもの措置法33条の4平成16年法律第14号による改正前のもの第1項都計法53条1項平成11年法律第160号による改正前のも のものb町の各土地の譲渡につき,平成15年法律第8号による改正前のもの措置法33条の4平成16年法律第14号による改正前のもの第1項都計法53条1項平成11年法律第160号による改正前のもの都計法54条平成12年法律第73号による改正前のもの都計法55条1現行の規定項,56条1項

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